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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014527
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】刈込機
(51)【国際特許分類】
   A01G 3/04 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
A01G3/04 501C
A01G3/04 501B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118520
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 久夫
(57)【要約】
【課題】重量やコストの増加を招くことなく、簡便な構成でもって、ブレードがロックした際にギアが損傷することを抑制することができる刈込機を提供する。
【解決手段】電動モータ50と、該電動モータ50により回転駆動されるブレード駆動用ギア61と、該ギア61に設けられた偏心カム62と、相対的に摺動自在に対接する一対のブレードと、を備え、偏心カム62で一対のブレードをその長手方向に沿って相対的に逆方向に往復移動させ、一対のブレードに間隔をあけて突設された切刃24を擦り合わせるようにされ、ブレードにおける偏心カム62との接続部28と切刃24との間に衝撃吸収部70が設けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
該電動モータにより回転駆動されるブレード駆動用ギアと、
該ギアに設けられた偏心カムと、
相対的に摺動自在に対接する一対のブレードと、を備え、
前記偏心カムで前記一対のブレードをその長手方向に沿って相対的に逆方向に往復移動させ、前記一対のブレードに間隔をあけて突設された切刃を擦り合わせるようにされた刈込機であって、
前記ブレードにおける前記偏心カムとの接続部と前記切刃との間に衝撃吸収部が設けられていることを特徴とする刈込機。
【請求項2】
前記刈込機は、前記偏心カムと前記ブレードとを接続するコネクティングロッドを備え、
前記ブレードにおいて前記コネクティングロッドとの接続部と前記切刃との間に前記衝撃吸収部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の刈込機。
【請求項3】
前記衝撃吸収部は脆弱部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の刈込機。
【請求項4】
前記衝撃吸収部は、前記ブレードの往復動方向と直交する方向に延びるスリット部を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の刈込機。
【請求項5】
前記スリット部を含む前記衝撃吸収部の前記直交する方向の幅は、前記接続部と前記衝撃吸収部との間の前記ブレードの前記直交する方向の幅及び/又は前記衝撃吸収部と前記切刃との間の前記ブレードの前記直交する方向の幅よりも広いことを特徴とする請求項4に記載の刈込機。
【請求項6】
前記スリット部を含む前記衝撃吸収部の前記直交する方向の幅は、前記ブレードに突設された前記切刃の前記直交する方向の幅よりも狭いことを特徴とする請求項4に記載の刈込機。
【請求項7】
前記スリット部に脆弱部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の刈込機。
【請求項8】
前記脆弱部は、ノッチ、切欠き、窪み、又は溝の少なくとも一つで構成されていることを特徴とする請求項7に記載の刈込機。
【請求項9】
前記スリット部は、前記一対のブレードをその長手方向に沿って相対的に逆方向に往復移動可能に保持する部材が嵌挿される長穴から、前記ブレードの往復動方向と直交する方向に延びていることを特徴とする請求項4に記載の刈込機。
【請求項10】
前記スリット部は、前記一対のブレードをその長手方向に沿って相対的に逆方向に往復移動可能に保持する部材が嵌挿される長穴とは異なる位置から、前記ブレードの往復動方向と直交する方向に延びていることを特徴とする請求項4に記載の刈込機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈込機に関する。
【背景技術】
【0002】
生垣や植木の刈り込みや剪定に用いられるヘッジトリマー、バリカン等の刈込機は、本体ケース内の駆動源により回転駆動されるブレード駆動用ギアと、該ギアの一面側に設けられた上下の偏心円板からなるカム(偏心カム)と、相互に摺動自在に対接する上下で対をなすブレードとを備え、偏心カムで細長い上下のブレードをその長手方向に沿って相互に(相対的に)逆方向に往復移動させてそれらに櫛歯状に設けられた切刃を擦り合わせることにより刈り込みや剪定等を行うように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の刈込機としては、駆動主軸を、本体ケース(作業機本体)の伝動ケース内に回転可能に軸支し、駆動源としての内燃エンジンのクランク軸から遠心クラッチを介して駆動することで、上下のブレードを往復運動させているものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-193598号公報
【特許文献2】特開平11-009089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のようなクラッチ機構を採用した刈込機においては、刈り込みや剪定を行っているときに切刃が太い枝やフェンス、鉄筋等の堅いものに引っ掛かってブレードがロックした際、エンジンの回動力やロック時の衝撃(大きなトルク)はクラッチ機構が滑ることで逃がされるので、ロック時の衝撃等が直にギアに伝わりにくく、ギアの損傷が抑制される。
【0006】
一方、電動モータ(以下、単にモータと称する場合がある)を駆動源として電動で駆動する刈込機において、クラッチ機構を採用せずに刈り込みや剪定を行っているときにロックが発生した際、モータの回動力やロック時の衝撃(大きなトルク)をクラッチ機構で逃がすことができず、ロック時の衝撃等が直にギアに伝わってギアが損傷(歯欠け等)する虞がある。
【0007】
その対策としては、例えばエンジン駆動式のものと同様にクラッチ機構を設けることが考えられるが、重量が増加して操作性が低下する等、ユーザー負担が大きくなる、また、コストが増加するという問題がある。
【0008】
本発明は、前記した問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、重量やコストの増加を招くことなく、簡便な構成でもって、ブレードがロックした際にギアが損傷することを抑制することができる刈込機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る刈込機は、基本的に、電動モータと、該電動モータにより回転駆動されるブレード駆動用ギアと、該ギアに設けられた偏心カムと、相対的に摺動自在に対接する一対のブレードと、を備え、前記偏心カムで前記一対のブレードをその長手方向に沿って相対的に逆方向に往復移動させ、前記一対のブレードに間隔をあけて突設された切刃を擦り合わせるようにされた刈込機であって、前記ブレードにおける前記偏心カムとの接続部と前記切刃との間に衝撃吸収部が設けられていることを特徴としている。
【0010】
好ましい態様では、前記刈込機は、前記偏心カムと前記ブレードとを接続するコネクティングロッドを備え、前記ブレードにおいて前記コネクティングロッドとの接続部と前記切刃との間に前記衝撃吸収部が設けられてもよい。
【0011】
他の好ましい態様では、前記衝撃吸収部は脆弱部を備えてもよい。
【0012】
他の好ましい態様では、前記衝撃吸収部は、前記ブレードの往復動方向と直交する方向に延びるスリット部を含んでもよい。
【0013】
他の好ましい態様では、前記スリット部を含む前記衝撃吸収部の前記直交する方向の幅は、前記接続部と前記衝撃吸収部との間の前記ブレードの前記直交する方向の幅及び/又は前記衝撃吸収部と前記切刃との間の前記ブレードの前記直交する方向の幅よりも広くてもよい。
【0014】
他の好ましい態様では、前記スリット部を含む前記衝撃吸収部の前記直交する方向の幅は、前記ブレードに突設された前記切刃の前記直交する方向の幅よりも狭くてもよい。
【0015】
他の好ましい態様では、前記スリット部に脆弱部が設けられてもよい。
【0016】
他の好ましい態様では、前記脆弱部は、ノッチ、切欠き、窪み、又は溝の少なくとも一つで構成されてもよい。
【0017】
別の好ましい態様では、前記スリット部は、前記一対のブレードをその長手方向に沿って相対的に逆方向に往復移動可能に保持する部材が嵌挿される長穴から、前記ブレードの往復動方向と直交する方向に延びてもよい。
【0018】
別の好ましい態様では、前記スリット部は、前記一対のブレードをその長手方向に沿って相対的に逆方向に往復移動可能に保持する部材が嵌挿される長穴とは異なる位置から、前記ブレードの往復動方向と直交する方向に延びてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ブレードにおける接続部と切刃との間に衝撃吸収部を設ければ済むため、重量やコストの増加を招くことなく、簡便な構成でもって、ブレードがロックした際にギアが損傷することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るヘッジトリマーを示した斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るヘッジトリマーを示した側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るヘッジトリマーを示した側断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るヘッジトリマーを示した下面図であり、駆動伝達機構のケースの底板を取り外した状態を示している。
図5】偏心カムと可動プレートとの係合による上ブレードおよび下ブレードの動作説明に供される図である。
図6】本発明の一実施形態に係るヘッジトリマーの下ブレードの主要部分(基端部分)を拡大して示した下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、刈込機の一種であるヘッジトリマーを例示して説明する。また、本明細書では、ブレード(切刃)側を前側ないし先端側、本体ケース側を後側ないし基端側とし、作業者が把持する前ハンドルが突出している側を上側、それとは反対側を下側とする。ただし、上下前後左右方向は、本実施形態のヘッジトリマーを説明する上で便宜上設定したものであり、ヘッジトリマーの構成や使用状態を限定するものではない。
【0022】
本実施形態のヘッジトリマー1は、図1に示すように、生垣や植木の刈り込みや剪定に用いられる手持式の小型切断作業機であり、バッテリ100を装着して電動で駆動する。ヘッジトリマー1は、図2に示すように、駆動源としての電動モータ50と、電動モータ50の前方に配置されたブレード組立体20と、電動モータ50が収容された本体ケース10と、を備えている。
【0023】
本体ケース10は、樹脂製の箱体であり、上面が下面に対して傾斜している。本体ケース10の上面は、後側から前側に向かうに連れて下がるように傾斜している。つまり、本体ケース10は、後部よりも前部が低く形成されている。そして、本体ケース10は、側面視で略三角形に形成されている。
【0024】
本体ケース10の上面には、バッテリ100を取り付けるためのバッテリ取付部15が設けられている。バッテリ取付部15は、本体ケース10の上面に合わせて、後部から前部に向かうに連れて下がるように傾斜している。
【0025】
バッテリ100は、公知のバッテリであり、前後方向に延びている直方体のケースにリチウムイオン蓄電池などの二次電池を収容したものである。バッテリ100の下面の後端部には、図2および図3に示すように、バッテリ取付部15に係合する係合部110が突出している。
【0026】
バッテリ取付部15にバッテリ100を取り付けるときには、バッテリ100をバッテリ取付部15に対して後側から前方に向けてスライドさせながら、バッテリ100の下部をバッテリ取付部15に嵌め合わせる。そして、バッテリ100の前端部がバッテリ取付部15の前端部に支持される位置まで移動すると、バッテリ100の係合部110がバッテリ取付部15に係合して、バッテリ100がバッテリ取付部15に固定される。
【0027】
バッテリ取付部15の上面には、金属製の接続端子(図示せず)が設けられている。接続端子は、制御基板(図示せず)や電動モータ50に電気的に接続されている。そして、バッテリ取付部15の接続端子にバッテリ100の接続端子が接続されることで、バッテリ100から制御基板や電動モータ50に電力が供給される。
【0028】
バッテリ取付部15からバッテリ100を取り外すときには、バッテリ100の後端部に設けられた連結用レバー120(図3)を引き上げると、バッテリ取付部15と係合部110との係合状態が解除され、バッテリ100をバッテリ取付部15に対して後方に向けてスライド可能となる。
【0029】
本体ケース10の前方には、図1に示すように、前ハンドル30が設けられている。前ハンドル30は、バッテリ取付部15に取り付けられたバッテリ100の前方に配置される。前ハンドル30は、正面から見て門状に形成され、左右方向に延びている横部の左右の端部から下方に延びている左右の縦部が形成されており、両縦部の下端部が本体ケース10の前端部に固定されている。前ハンドル30の両縦部の下端部同士の間には、前方ガード31が設けられている。前方ガード31は、ブレード組立体20(の基端部)を上側から覆うように形成されている。
【0030】
本体ケース10の後方には、後ハンドル40が設けられている。後ハンドル40には、本体ケース10の後部に連結された連結部41と、左右方向に貫通した開口部が形成された把持部42と、が形成されている。作業者がヘッジトリマー1を持つときには、把持部42の開口部に手を差し入れて後ハンドル40を把持する。後ハンドル40の連結部41は、図3に示すように、本体ケース10の後面に対して、前後方向の軸回りに回動自在に連結されている。これにより、本体ケース10に対して後ハンドル40全体が前後方向の軸回りに回動自在となっている。
【0031】
後ハンドル40の把持部42の内周部には、図1に示すように、作業者が把持した状態で、電動モータ50を回転させてブレード組立体20を駆動させるための操作手段であるトリガーレバー43が設けられている。また、把持部42の上面には、トリガーレバー43のロックを解除するロック解除レバー44が設けられているとともに、電源スイッチ45が設けられている。
【0032】
なお、本体ケース10の形状、バッテリ100の配置構成や取付構成などは、図示例に限られないことは当然である。
【0033】
また、本実施形態のヘッジトリマー1では、バッテリ100から制御基板や電動モータ50に電力が供給されているが、例えば、バッテリ100を用いることなく、電源コードによって外部電源から制御基板や電動モータ50に電力を供給してもよい。
【0034】
ブレード組立体20は、図2に示すように、電動モータ50に対して前方に向けて直線状に延びており、本体ケース10の前端部から前方に向けて突出している。ブレード組立体20は、金属製の上ブレード21および下ブレード22と、樹脂製のカバー23と、を備えている切断器具である。
【0035】
上ブレード21と下ブレード22とは、細長い板状の刃物であり、上下に重ね合わされている。上ブレード21と下ブレード22とは、相互に(相対的に)摺動自在に対接する上下で対をなしている。上ブレード21および下ブレード22には、図1に示すように、その長手方向に沿って所定の間隔をあけて左右方向に突出した複数の切刃24が形成されている。カバー23は、作業者の手と上ブレード21および下ブレード22との接触を防ぐための保護用の部材であり、上ブレード21の上面を覆っている。
【0036】
上ブレード21および下ブレード22には、図4に示すように、その長手方向に沿って所定の間隔をあけて所要個数の長穴(長手方向に長い穴)25が形成されている。長穴25の長さは、上ブレード21および下ブレード22の往復移動を許容する長さとなっている。そして、上ブレード21および下ブレード22の長穴25(上下で重なる長穴)には、平面視矩形で挿通丸穴を有する角筒状スペーサ26が摺動自在に嵌挿されている。角筒状スペーサ26の挿通丸穴(長手方向の場所によっては、カバー23に設けられた通し穴を含む)を通して締結部材としてのボルト27が挿通されて締結される。これにより、上ブレード21および下ブレード22は、相互に(相対的に)摺動自在に保持された状態で、長手方向に沿う所定箇所で締結固定されている。
【0037】
上ブレード21および下ブレード22の後端部(基端部)には、図3および図4に示すように、後述する可動プレート63と接続される接続部28が形成されている。本実施形態では、接続部28は、短円柱状の突起で形成(突設)されており、後述する可動プレート63の先端部の開口部に挿入されることで、上ブレード21および下ブレード22と可動プレート63とが連結される。ただし、接続部28の構成、すなわち、上ブレード21および下ブレード22と可動プレート63との接続構成は、図示例に限られない。例えば、上ブレード21および下ブレード22に、接続部としての円形の開口を形成し、当該開口に、可動プレート63に形成した円柱状の突起を挿入して連結してもよい。
【0038】
上ブレード21および下ブレード22の後端部は、図3および図4に示すように、本体ケース10内に挿入されている。上ブレード21および下ブレード22の後端部は、駆動伝達機構60を介して電動モータ50に連結されている。
【0039】
駆動伝達機構60は、ブレード駆動用ギア61と、ブレード駆動用ギア61に設けられた上下の偏心カム(以下、単にカムと称する)62,62と、上下の可動プレート(コネクティングロッドとも称する)63,63と、を備えている。
【0040】
ブレード駆動用ギア61は、円盤状の歯車であり、中心部から上下方向に支軸64が突出している。支軸64の上端部および下端部は、本体ケース10内に設けられた上下の軸受65,65に回転自在に支持されている。つまり、ブレード駆動用ギア61は支軸64の軸回りに回転する。
【0041】
ブレード駆動用ギア61の上面および下面には、偏心円板からなる上下のカム62,62がそれぞれ突出している。上下のカム62,62は、ブレード駆動用ギア61の回転中心(支軸64の中心)に対してそれぞれ一方側および他方側に偏心した位置に設けられている。本実施形態では、削り出し加工により、上下のカム62,62がギア61に一体成形されている。
【0042】
上側の可動プレート63の後端部の開口部に上側のカム62が挿入されて係合し、上側の可動プレート63の先端部の開口部には上ブレード21の後端部の接続部28が挿入されて連結されている。下側の可動プレート63の後端部の開口部に下側のカム62が挿入されて係合し、下側の可動プレート63の先端部の開口部には下ブレード22の後端部の接続部28が挿入されて連結されている。
【0043】
駆動伝達機構60では、ブレード駆動用ギア61の回転に伴って、上下のカム62,62が回転移動することで、上下の可動プレート63,63が前後方向に往復移動し、上ブレード21および下ブレード22が相反して前後方向に往復移動(換言すると、その長手方向に沿って相互に逆方向に所定のストロークをもって往復移動)するように構成されている(図4および図5参照)。言い換えると、電動モータ50の回転運動を、駆動伝達機構60の上下の可動プレート63,63を介して、上ブレード21および下ブレード22の前後方向(長手方向)の往復運動に変換するように構成されている。
【0044】
前述のブレード駆動用ギア61、カム62,62、可動プレート63,63等は、駆動伝達機構60のケース66に収容されている。このケース66は、天板67と、底板68と、を備えている。ケース66の天板67および底板68は、ブレード駆動用ギア61、カム62,62、可動プレート63,63等と共にブレード組立体20の後端部を上側および下側から覆うように形成されている。ブレード組立体20は、ケース66の前端部から前方に向けて突出している。
【0045】
なお、本実施形態では、上下の可動プレート63,63を介して、上下のカム62,62と上ブレード21および下ブレード22(の接続部28,28)とが間接的に接続されるコネクティングロッド式を採用しているが、例えば、上ブレード21および下ブレード22の後端部(基端部)に接続部としての長穴(左右方向に長い穴)を形成し、その長穴(接続部)に上下のカム62,62を挿入することで、上ブレード21および下ブレード22を前後方向に往復移動させる、言い換えれば、上下のカム62,62と上ブレード21および下ブレード22(の接続部)とを直接的に接続する長穴式を採用してもよいことは当然である。
【0046】
電動モータ50は、駆動伝達機構60の後部上方に設置されている。電動モータ50は、ステータ51と、アウターロータ52と、出力軸53と、ベース部材54と、を備えている。
【0047】
ステータ51には、複数のコイル51aが設けられている。ステータ51の内周に設けられたベース部材54の下端部は駆動伝達機構60のケース66(の天板67)に固定されている。
【0048】
出力軸53は、ベース部材54の内周面に設けられた軸受に挿通されている。これにより、出力軸53は、ベース部材54に回転自在に支持されている。出力軸53の下端部には、出力ギア53aが設けられている。出力ギア53aは、駆動伝達機構60のブレード駆動用ギア61に噛み合っている。
【0049】
アウターロータ52には、ステータ51および各コイル51aの外周を囲んでいる円筒状の周壁部52aと、周壁部52aの上面開口部を塞いでいる頂部52bと、が形成されている。本実施形態のアウターロータ52は鉄製であるが、ホイールとしてのアウターロータの材質は限定されるものではない。周壁部52aの内周面には、複数の磁石52cが取り付けられている。
【0050】
アウターロータ52の頂部52bの中心部には、出力軸53の上端部が連結されている。これにより、アウターロータ52は、ステータ51に回転自在に支持されており、出力軸53とアウターロータ52とが連動して回転する。アウターロータ52および出力軸53の回転軸線Lは、ブレード組立体20の延長方向(前後方向)に直交する上下方向に延びている。
【0051】
アウターロータ52は、回転軸線L方向(上下方向)の長さよりも直径(横方向)が大きく形成されている。つまり、アウターロータ52は、横方向(回転軸線Lに直交する方向)から見たときに、高さよりも横幅が大きな偏平形状となるように形成されている。
【0052】
アウターロータ52は、ステータ51に回転自在に支持されるとともに、駆動伝達機構60を介してブレード組立体20の後端部に連結されている。そして、バッテリ100からステータ51の各コイル51aに通電されると、アウターロータ52および出力軸53が回転し、この駆動力が駆動伝達機構60を介してブレード組立体20に伝達されることで、上ブレード21および下ブレード22が相反して前後方向に往復移動する(図4および図5参照)。すなわち、駆動伝達機構60のカム62,62で細長い上下一対の上ブレード21および下ブレード22をその長手方向に沿って相互に(相対的に)逆方向に往復移動させてそれらに櫛歯状に設けられた切刃24を擦り合わせるようにされ、これによって、生垣や植木の刈り込みや剪定等を行う。
【0053】
上記構成の電動モータ50を駆動源として電動で駆動するヘッジトリマー1において、クラッチ機構を採用せずに刈り込みや剪定を行っているときにロックが発生した際、モータ50の回動力やロック時の衝撃(大きなトルク)をクラッチ機構で逃がすことができず、ロック時の衝撃等が直にギア61に伝わってギア61が損傷(歯欠け等)する虞がある。
【0054】
そこで、本実施形態では、ブレード(上ブレード21、下ブレード22)がロックした際にギア61が損傷することを抑制すべく、ブレード(上ブレード21、下ブレード22)における接続部28と切刃24(詳細には、最も基端側あるいは接続部28側に位置する切刃24)との間に衝撃吸収部70が設けられている。
【0055】
なお、衝撃吸収部70は、上ブレード21および下ブレード22の両方に設けられてもよいし、一方のみに設けられてもよい。以下、衝撃吸収部70が下ブレード22に設けられている場合を例示して詳細に説明する。
【0056】
衝撃吸収部70は、下ブレード22上で最も脆弱な部分であり、ロックが発生した際、可動プレート63等を介してギア61に伝わるロック時の衝撃等を、変形ないし破損することで抑制(吸収)するための部分である。本実施形態では、衝撃吸収部70は、図4と共に図6を参照すればよく分かるように、スリット部71と脆弱部72とを含んで構成されている。
【0057】
スリット部71は、左右方向(往復動方向と直交する方向)に延びるように形成されている。また、スリット部71の左右方向の端部は、中央部分よりも若干幅広(前後方向の幅が広い)の略円形状に形成されている。本実施形態では、スリット部71を含む衝撃吸収部70の左右方向の幅(Ls)は、下ブレード22の左右方向の幅よりも広い。すなわち、スリット部71を含む衝撃吸収部70の左右方向の幅(Ls)は、接続部28と衝撃吸収部70との間の下ブレード22の左右方向の幅(La)及び/又は衝撃吸収部70と切刃24との間の下ブレード22の左右方向の幅(Lb)よりも広い。また、スリット部71を含む衝撃吸収部70の左右方向の幅(Ls)は、下ブレード22に左右方向に突設された切刃24の左右方向の幅(Lc)よりも狭い。換言すると、スリット部71を含む衝撃吸収部70は、下ブレード22に突設された切刃24よりも左右方向内側に位置し、下ブレード22に突設された切刃24よりも左右方向外側に突出しないように形成されている。
【0058】
脆弱部72は、ノッチ、切欠き、窪み、溝などで形成されている。本実施形態では、脆弱部72は、スリット部71の左右方向の端部(換言すると、スリット部71において下ブレード22の中心から最も離間した部位)に形成されている。
【0059】
かかる構成により、刈り込みや剪定を行っているときにロックが発生した際、ロック時の衝撃等によって、衝撃吸収部70が変形せしめられることになる。また、ロック時の衝撃等が、衝撃吸収部70(のスリット部71)の変形のみで吸収しきれないとき、当該衝撃吸収部70に設けられた脆弱部72(ノッチなど)が破損せしめられる。これにより、可動プレート63等を介してギア61に伝わるロック時の衝撃等を、当該衝撃吸収部70が変形ないし破損することで抑制(吸収)することができる。
【0060】
また、本実施形態では、設置スペースの関係上、衝撃吸収部70のスリット部71は、前述の角筒状スペーサ26が挿入される長穴25から左右方向に延びるように形成されている。ただし、衝撃吸収部70のスリット部71は、前述の角筒状スペーサ26が挿入される長穴25とは異なる位置から左右方向に延びるように形成してもよい。例えば、後者の場合、ロック時に前後方向の引張力が作用して衝撃吸収部70(のスリット部71)が変形したとすると、衝撃吸収部70(のスリット部71)に隣接する長穴25は、左右方向に幅広となるように変形せしめられるので、上ブレード21と下ブレード22とは、スムーズに相互に(相対的に)摺動し得る(換言すると、上ブレード21と下ブレード22との摺動を阻害しない)という効果が得られる。
【0061】
また、本実施形態では、ブレード(上ブレード21、下ブレード22)における接続部28と切刃24との間の一箇所に衝撃吸収部70が設けられている。ただし、ブレード(上ブレード21、下ブレード22)における接続部28と切刃24との間の複数箇所に衝撃吸収部70を設けてもよいことは当然である。また、衝撃吸収部70の形状は、図示例に限られないことは勿論である。
【0062】
以上で説明したように、本実施形態のヘッジトリマー1は、電動モータ50と、該電動モータ50により回転駆動されるブレード駆動用ギア61と、該ギア61に設けられた偏心カム62と、相対的に摺動自在に対接する一対のブレードと、を備え、偏心カム62で一対のブレードをその長手方向に沿って相対的に逆方向に往復移動させ、一対のブレードに間隔をあけて突設された切刃24を擦り合わせるようにされる。そして、ブレードにおける偏心カム62との接続部28(本実施形態では、カムとブレードとを接続する可動プレートとの接続部28)と切刃24(詳細には、最も基端側あるいは接続部28側に位置する切刃24)との間に衝撃吸収部70が設けられている。これにより、刈り込みや剪定を行っているときに切刃が太い枝やフェンス、鉄筋等の堅いものに引っ掛かってブレードがロックした際(ロック時)に発生する衝撃等を、衝撃吸収部70が変形することで逃がすことができるので、ギア61の破損を抑制することができる。
【0063】
また、衝撃吸収部70は脆弱部72(ノッチなど)を備える。これにより、衝撃吸収部70で吸収しきれないほどの衝撃等が掛かった場合でも、脆弱部72(ノッチなど)が破損することで、ギア61の破損を抑制することができ、さらに接続部と切刃との間に脆弱部72があるため、切刃24の箇所でブレードが折れることがなくなるので、より安全になる。
【0064】
なお、通常、ブレードは、摩耗した場合に交換する交換部品であるため、前述のように変形ないし破損して交換する場合でも、ギア61等が破損して交換する場合と比べて、交換し易く、コストを低く抑えられる(すなわち、コストメリット大きい)。
【0065】
また、衝撃吸収部70は、ブレードの往復動方向(長手方向)と直交する方向(短手方向)に延びるスリット部71を含んでいる。スリット部71を含む衝撃吸収部70の前記直交する方向の幅は、前記接続部28と前記衝撃吸収部70との間の前記ブレードの前記直交する方向の幅及び/又は前記衝撃吸収部70と前記切刃24との間の前記ブレードの前記直交する方向の幅よりも広い。これにより、例えば、ユーザーが衝撃吸収部70の箇所を掴みブレードを強制的にスライドさせることで、上ブレード21と下ブレード22との間に付着した切り屑を除去しやすくなる等、メンテナンス性を向上させることができる。
【0066】
また、スリット部71を含む衝撃吸収部70の前記直交する方向の幅は、左右方向に突設された切刃24の左右方向の幅よりも狭い。これにより、作業中に衝撃吸収部70が枝等に引っ掛かりにくくなるので、作業性を維持することができる。
【0067】
以上のように、本実施形態によれば、ブレードにおける接続部と切刃との間に衝撃吸収部70を設ければ済むため、重量やコストの増加を招くことなく、簡便な構成でもって、ブレードがロックした際にギア61が損傷することを抑制することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
【0069】
本実施形態のヘッジトリマー1のブレード組立体20は、図1に示すように、前方に向けて直線状に延びており、上ブレード21および下ブレード22が前後方向に往復移動するように構成されているが、ブレード組立体の構成は限定されるものではない。例えば、ブレード組立体の一例としては、電動モータ50から前方に向けて延びている直線部の先端部に、左右方向に延びているブレードを設け、ブレードを左右方向に往復移動させるように構成したT字形状のブレードを用いてもよい。また、本実施形態のヘッジトリマー1のブレード組立体20は、上下の偏心カム62,62により、上ブレード21および下ブレード22がその長手方向に沿って相互に逆方向に往復移動することによって、刈り込みや剪定等を行うタイプ(つまり、上ブレード21および下ブレード22の両方が動作するタイプ)であるが、上ブレード21および下ブレード22の一つが動作しないタイプでもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
1 ヘッジトリマー(刈込機)
10 本体ケース
15 バッテリ取付部
20 ブレード組立体
21 上ブレード
22 下ブレード
23 カバー
24 切刃
25 長穴
26 角筒状スペーサ
27 ボルト
28 接続部
30 前ハンドル
31 前方ガード
40 後ハンドル
41 連結部
42 把持部
43 トリガーレバー
44 ロック解除レバー
45 電源スイッチ
50 電動モータ
60 駆動伝達機構
61 ブレード駆動用ギア
62 偏心カム
63 可動プレート(コネクティングロッド)
64 支軸
65 軸受
66 ケース
67 天板
68 底板
70 衝撃吸収部
71 スリット部
72 脆弱部
100 バッテリ
110 係合部
120 連結用レバー
L 回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6