(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145285
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】カッター装置
(51)【国際特許分類】
B21D 28/14 20060101AFI20231003BHJP
B23D 23/00 20060101ALI20231003BHJP
B21D 28/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B21D28/14 F
B23D23/00 C
B21D28/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052660
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】森本 真策
(72)【発明者】
【氏名】川上 武志
(72)【発明者】
【氏名】葭田 雅俊
【テーマコード(参考)】
3C039
4E048
【Fターム(参考)】
3C039DA08
4E048AA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ワークの切断後に、切断したスクラップの端部が切刃に引っかかるのを抑制可能なカッター装置を提供する。
【解決手段】カッター装置10は、上型切刃20及びスクラップカッター30と、上型切刃20及びスクラップカッター30の間に配されたワークWに押圧力を作用させる押圧部60と、を有し、上型切刃20及びスクラップカッター30が相対移動することにより、ワークWを切断可能なものとされている。スクラップカッター30は、ワークWと接触する接触部40と、接触部40にワークWが接触した状態において、接触部40よりもクリアランスCの形成位置から離れた位置において、接触部40よりもワークWから離れる方向に退入するように形成された退入部50と、を有する。押圧部60は、ワークWを押圧部60に向けて押圧可能とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の方向に相対移動可能に設けられた切刃A、及び切刃Bと、
前記第一の方向において前記切刃A及び前記切刃Bの間に配されたワークに押圧力を作用させる押圧部と、
を有し、
前記切刃A、及び前記切刃Bが、前記第一の方向に対して交差する第二の方向に所定のクリアランスを介して離れた位置において、前記第一の方向に相対移動することにより、前記ワークを切断可能なものであり、
前記切刃A及び前記切刃Bの少なくともいずれかが、
前記ワークと接触する接触部と、
前記接触部に前記ワークが接触した状態において、前記接触部よりも前記クリアランスの形成位置から前記第二の方向に外れた位置において、前記接触部よりも前記ワークから離れる方向に退入するように形成された退入部と、
を有し、
前記押圧部が、前記ワークを前記退入部に向けて押圧可能とされていること、を特徴とするカッター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に係るスクラップカッター装置のように、プレス成形したワークの端縁を切断し、そのスクラップを細かく分断処理するものが提供されている。特許文献1のスクラップカッターは、上型のトリム刃における下側スクラップカッタに対する食い込み段差を無くすと共に、上側スクラップカッタにおける下側スクラップカッタに対する食い込み段差を下死点側で部分的に無くし、この無くした部分のスクラップを強制的に引っ張って切断する凸状部等の切断補助手段を設けたものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した特許文献1に開示されているものをはじめとする従来技術のスクラップカッターにおいては、固定された下型切刃に対して上型切刃を下降させてワークを切断したのち、上型切刃を上昇させる際に、切断されたスクラップの端部が上型切刃に引っ掛かり、スクラップが上方へ持ち上がってしまうことがあった。このようにしてスクラップが持ち上がってしまうと、装置や金型にそのスクラップが入り込み、生産ラインの停止や金型の破損につながる懸念がある。
【0005】
そこで本発明は、ワークの切断後に、切断したワークの端部が切刃に引っかかるのを抑制可能なカッター装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明のカッター装置は、第一の方向に相対移動可能に設けられた切刃A、及び切刃Bと、前記第一の方向において前記切刃A及び前記切刃Bの間に配されたワークに押圧力を作用させる押圧部と、を有し、前記切刃A、及び前記切刃Bが、前記第一の方向に対して交差する第二の方向に所定のクリアランスを介して離れた位置において、前記第一の方向に相対移動することにより、前記ワークを切断可能なものであり、前記切刃A及び前記切刃Bの少なくともいずれかが、前記ワークと接触する接触部と、前記接触部に前記ワークが接触した状態において、前記接触部よりも前記クリアランスの形成位置から前記第二の方向に外れた位置において、前記接触部よりも前記ワークから離れる方向に退入するように形成された退入部と、を有し、前記押圧部が、前記ワークを前記押圧部に向けて押圧可能とされていること、を特徴とするものである。
【0007】
本発明のカッター装置は、切刃A及び切刃Bを第一の方向において近接離反する方向に相対移動させることにより、切刃A及び切刃Bの間にクリアランスが形成された位置において、ワークを剪断して切断することができる。本発明のカッター装置は、切刃A及び切刃Bの少なくともいずれかが、切断対象となるワークと接触する接触部に加え、接触部よりもワークから離れる方向に退入するように形成された退入部を備えている。また、退入部は、ワークの切断時に切刃A及び切刃Bの間に形成されるクリアランスの形成位置から、第二の方向に外れた位置に設けられている。本発明のカッター装置は、押圧部によってワークを退入部に向けて押圧することにより、クリアランスの形成位置において切断されたワークの端部を、切刃A及び切刃Bのうち退入部が形成されたものから第二の方向に離反する方向に屈曲させることができる。これにより、本発明のカッター装置は、ワークの切断後に、切断したワークの端部が切刃に引っかかるのを抑制できる。また、本発明のカッター装置は、切断したワークが、装置内等の予期せぬ箇所に入り込むのを抑制し、生産ラインの停止や装置の各部において破損等が生じるのを抑制できる。
【0008】
(2)上述した本発明のカッター装置は、前記切刃A及び前記切刃Bにより前記ワークを切断するタイミング以後、前記切刃A及び前記切刃Bが離反する方向に移動を開始するタイミングまでの間に、前記押圧部による前記ワークの押圧が行われること、を特徴とするものであると良い。
【0009】
本発明のカッター装置は、かかる構成とすることにより、押圧部による押圧によりワークを屈曲させた後に、切刃A,切刃Bを第一の方向に離反するように相対移動させることができる。これにより、本発明のカッター装置は、ワークの切断後に、切断したワークの端部が切刃に引っかかるのをより一層確実に抑制できる。
【0010】
ここで、上述した押圧部は、切刃Aや切刃Bとは別に設けたシリンダ等によって動作するものすることも可能であるが、この場合は押圧部を動作させるための機構や装置を別途設けたり、切刃Aや切刃Bの動作に連動して適切なタイミングで押圧部を作動させるための制御が必要となる。本発明のカッター装置の装置構成や動作制御を簡素化することを想定すると、本発明のカッター装置は、動作部を動作させるための機構や装置を別途設けたり、動作部を別途制御しなくても良いものであると良い。
【0011】
(3)かかる知見に基づけば、上述した本発明のカッター装置は、前記切刃A及び前記切刃Bの一方に前記退入部が設けられ、他方に前記押圧部をなす押圧片が一体的に設けられており、前記切刃A及び前記切刃Bが近接する方向に相対移動することにより、前記押圧片が前記退入部に押し込まれること、を特徴とするものであると良い。
【0012】
本発明のカッター装置は、上述したように切刃A及び切刃Bの一方に設けられた退入部に対応して、切刃A及び切刃Bの他方に押圧部をなす押圧片が一体的に設けた構成とされている。これにより、本発明のカッター装置は、押圧部を作動させるための機構や装置を別途設けたり、特別な制御を行うことなく、切刃Aや切刃Bの動作に連動して適切なタイミングで押圧部を作動させることができる。これにより、本発明のカッター装置は、装置構成や動作制御を簡素化することができる。
【0013】
ここで、上述した本発明のカッター装置は、ワークの切断後に、切断したワークの端部が切刃に引っかかるのを抑制するためには、ワークの切断位置(切断線)に沿ってワークを屈曲できる構成であることが望ましい。
【0014】
(4)かかる知見に基づけば、上述した本発明のカッター装置は、前記退入部、及び前記押圧片が、前記ワークの切断位置に沿って延びるように設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0015】
本発明のカッター装置は、かかる構成とすることにより、ワークの切断位置(切断線)に沿ってワークを屈曲させることができる。これにより、本発明のカッター装置は、ワークの切断後に、切断したワークの端部が切刃に引っかかってしまうのをより一層確実に抑制できる。
【0016】
ここで、上述したように押圧部をなす押圧片によりワークに押圧力を作用させる構成とした場合において、押圧片の接触面積が大きいと、ワークに付与される押圧力が分散されることになる。そのため、押圧片の接触部分においてワークを屈曲させるのに必要な押圧力を効率的に作用させるためには、押圧片の接触面積を最小限に抑制すると良い。その一方で、ワークの切断線に沿ってワークを屈曲させるためには、ワークの切断線に沿う方向に押圧片が延びるように配されていることが望ましい。
【0017】
(5)かかる知見に基づけば、上述した本発明のカッター装置において、前記押圧片は、縦方向及び横方向の長さに対して厚み方向の長さが小さい板状の板状部を有し、前記板状部は、厚み方向に形成された側面が前記ワークに押し当てられる押圧面をなすとともに、前記押圧面が前記クリアランスの形成位置において形成される前記ワークの切断線に沿う方向に延びるように配されていると良い。
【0018】
本発明のカッター装置は、押圧片をなす板状部を有するとともに、板状部を構成する面のうち厚み方向に形成された側面が、ワークに対して押圧される押圧面とされている。これにより、本発明のカッター装置は、押圧片によりワークを押圧する際に、ワークに対する押圧片の接触面積を最小限に抑制し、ワークに付与される押圧力が分散されるのを抑制できる。そのため、本発明のカッター装置は、押圧片の接触部分においてワークを屈曲させるのに必要な押圧力を効率的に作用させることができる。また、本発明のカッター装置は、押圧片において押圧面をなす側面が、クリアランスの形成位置において形成されるワークの切断線に沿う方向に延びるように板状部を配したものとされている。これにより、本発明のカッター装置は、ワークの切断線に沿ってワークを屈曲させることができる。従って、本発明のカッター装置は、過大な外力を押圧片に作用させることなく、ワークを切断線に沿って確実に屈曲させることができる。
【0019】
ここで、上述したような押圧片を設けた場合、押圧片に対して第一の方向に大きな力が作用する。そのため、押圧片は、ワークの切断や屈曲を阻害しない構成でありつつ、第一の方向への力の作用に対して十分な強度を発揮できるものであると良い。
【0020】
(6)かかる知見に基づけば、上述した本発明のカッター装置は、前記板状部を構成する側面のうち、前記クリアランス側に向く側面とは反対側に向く側面に、前記第一の方向に延びる部分を有するリブが設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0021】
本発明のカッター装置は、かかる構成とされているため、リブにより押圧片を補強し、押圧片を第一の方向への力の作用に対して十分な強度を発揮できるものとすることができる。また、本発明のカッター装置は、板状部を構成する側面のうち、クリアランス側に向く側面とは反対側に向く側面にリブを設けたものとされている。これにより、本発明のカッター装置は、ワークの切断や屈曲を阻害しない構成としつつ、リブによって押圧片を補強できる。
【0022】
ここで、上述したようにしてワークの切断位置(切断線)から第二の方向に外れた位置において、切刃に対してワークが引っかかるのを回避するために十分な大きさの屈曲部をワークに形成するためには、クリアランスの形成位置を基準として第二の方向にある程度離れた位置においてワークを屈曲させるのが良い。
【0023】
(7)かかる知見に基づけば、上述した本発明のカッター装置は、前記退入部が、前記クリアランスの形成位置から、前記クリアランスよりも大きく前記第二の方向に外れた位置に形成されていること、を特徴とするものであると良い。
【0024】
本発明のカッター装置は、かかる構成とすることにより、ワークの切断位置(切断線)から第二の方向に外れた位置において、切刃に対してワークが引っかかるのを回避するために十分な大きさの屈曲部をワークに形成することができる。
【0025】
上述したカッター装置は、単体で構成されるものであっても良いが、例えばプレス装置等の他の装置の一部を構成するものや、プレス装置等の他の装置に付設されるもの等とすると良い。
【0026】
(8)かかる知見に基づいて提供される本発明のプレス装置は、第一の方向に近接離反するように相対移動可能とされた型a及び型bを有し、前記型a及び型bによるプレス成形により、所定のトリミングラインに沿って板状の素材を切断可能なプレス装置であって、請求項1~7のいずれか1項に記載のカッター装置を備えており、前記カッター装置が、前記素材の切断により発生したスクラップ材をワークとして切断するものであること、を特徴とするものである。
【0027】
本発明のプレス装置は、かかる構成とされているため、プレス成形により発生したスクラップ材を上述したカッター装置によって切断することができる。これにより、破断したスクラップ材がプレス装置を構成する型aや型b、カッター装置の内部等の予期せぬ箇所に入り込むのを抑制し、生産ラインの停止や装置の各部において破損等が生じるのを抑制できる。
【0028】
(9)上述したプレス装置は、前記型a及び型bが、第一の方向に相対移動可能に設けられており、前記切刃A、及び前記切刃Bが、それぞれ前記型a及び型bに設けられ、前記型a及び前記型bの前記第一の方向への相対移動に連動して、前記第一の方向に対して交差する第二の方向に所定のクリアランスを介して離れた位置において、前記第一の方向に相対移動することにより、前記ワークを切断可能とされていること、を特徴とするものであると良い。
【0029】
本発明のプレス装置は、かかる構成とすることにより、プレス成形に際して型a及び型bが第一の方向に相対移動するのに連動して、切刃A及び切刃Bによってスクラップ材を切断できる。また、本発明のプレス装置は、カッター装置において切刃A及び切刃Bを第一の方向に相対移動させるための駆動源や駆動機構等を別途設ける必要がない。これにより、カッター装置を備えたプレス装置の構成をより一層シンプルなものとすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ワークの切断後に、切断したワークの端部が切刃に引っかかるのを抑制可能なカッター装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカッター装置及びプレス装置の模式図であり、(a)はワークの切断前の状態、(b)はワークの切断時の状態を示したものである。
【
図2】本発明の一実施形態に係るカッター装置を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るカッター装置を構成する上型切刃を斜め下方から見た状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態に係るカッター装置10、及びこれを備えたプレス装置100について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、特に断りのない限り、
図1に示した状態における上下方向を第一の方向、第一方向に対して交差する方向(図示例では水平方向)を第二の方向とも称す。以下、カッター装置10及びプレス装置100の概略構成について説明した後、カッター装置10に特有の構成についてさらに詳細に説明する。
【0033】
≪カッター装置10及びプレス装置100の概略構成について≫
図1及
図2に示すように、カッター装置10は、上型切刃20(切刃A)、及びスクラップカッター30(切刃B)を備えている。カッター装置10は、単体で構成することもできるが、他の装置の一部を構成するもの、あるいは他の装置に付設される装置として使用することができる。本実施形態で例示するカッター装置10は、プレス装置100の一部を構成するものとされている。
【0034】
具体的には、
図1に示すように、本実施形態において例示するプレス装置100は、第一の方向(図示例において上下方向)に近接離反するように相対移動可能とされた上型110(型a)、及び下型120(型b)を有する。プレス装置100は、上型110を下型120に向けて近接する方向に移動させて両者の間に配された金属板等の板状の素材を挟み込むことにより、所定のトリミングラインに沿って板状の素材を切断可能なものとされている。プレス装置100は、カッター装置10を備えており、プレス成形によって発生したスクラップ材をワークWとしてカッター装置10によって切断可能なものとされている。プレス装置100は、例えば上型110に向けて下型120が近接離反する方向に移動するものや、上型110及び下型120の双方が第一の方向に移動することにより相対移動するものとすることが可能である。本実施形態では、下型120を第一の方向に移動しないものとし、上型110が下型120に向かって第一の方向に移動するものとされている。
【0035】
上型切刃20は、上型110に設けられた切刃である。上型切刃20は、上型110に対して固定され、上型110と一体的に動作可能とされている。そのため、プレス装置100によりプレス成形を行うために上型110を下型120に向けて移動させると、上型切刃20は、上型110と連動して下型120側(第一の方向)に向けて移動する。上型切刃20は、後述するように下型120に設けられたスクラップカッター30に刃を向けた姿勢として上型110に取り付けられている。
【0036】
スクラップカッター30は、下型120に設けられた切刃である。スクラップカッター30は、スクラップカッター30は、下型120に対して固定されている。スクラップカッター30は、上型110に設けられた上型切刃20に刃を向けた姿勢として、下型120に取り付けられている。
【0037】
カッター装置10は、上述したような上型切刃20及びスクラップカッター30を備えている。これにより、カッター装置10は、第一の方向(上下方向)に対して交差する第二の方向(水平方向)に所定のクリアランスCを介して離れた位置において、上型切刃20とスクラップカッター30とが第一の方向に相対移動することにより、上型切刃20及びスクラップカッター30の間に配されたワークWを切断可能なものとされている。
【0038】
≪カッター装置10に特有の構成について≫
以下、
図1~
図3を参照しつつ、カッター装置10に特有の構成について、さらに詳細に説明する。カッター装置10は、上型切刃20(切刃A)、及びスクラップカッター30(切刃B)のうち一方に接触部40を設け、他方に退入部50を設けたものとされている。また、カッター装置10は、押圧部60を備えている。
【0039】
接触部40は、上型切刃20(切刃A)、及びスクラップカッター30(切刃B)のうちいずれに設けられていても良いが、本実施形態ではスクラップカッター30に設けられている。接触部40は、スクラップカッター30において、ワークWが接触する部分である。本実施形態では、接触部40は、スクラップカッター30の天面側に設けられている。接触部40は、スクラップカッター30にワークWを載置した状態において、ワークWと接触した状態になる。
【0040】
退入部50は、上型切刃20及びスクラップカッター30のうち、上述した接触部40が設けられているのと同じ切刃に設けられる。本実施形態では、接触部40がスクラップカッター30に設けられていることから、退入部50についても、スクラップカッター30に設けられている。退入部50は、接触部40にワークWが接触した状態において、接触部40よりもクリアランスCの形成位置から第二の方向(図示例では水平方向)に外れた位置において、接触部40よりもワークWから離れる方向に退入するように形成された凹状の部分である。
【0041】
退入部50は、ワークWの切断位置に沿って延びるように設けられている。
図1に示すように退入部50を側方視した状態において、退入部50は紙面に対して交差する方向に延びるように形成されている。退入部50は、上型切刃20及びスクラップカッター30の間において第二方向(水平方向)形成されるクリアランスCの形成位置、すなわちワークWの切断位置(切断線)を基準として、クリアランスCよりも大きく第二の方向に外れた位置に形成されている。すなわち、クリアランスCの幅xと比べて、クリアランスの形成位置から退入部50までの間隔Xが十分大きくなる位置に、退入部50が設けられている。
【0042】
押圧部60は、上型切刃20及びスクラップカッター30の間に配されたワークWに対して押圧力を作用させるためのものである。押圧部60は、接触部40に接触するように配置されたワークWに対し、退入部50に向けて押圧可能なものとされている。押圧部60は、押圧片62と、リブ64とを備えたものとされている。
【0043】
押圧片62は、押圧部をなす板状部62xを有する部材である。押圧片62は、上型切刃20及びスクラップカッター30のうち、上述した接触部40や退入部50が設けられている切刃とは異なる切刃に設けられる。本実施形態では、接触部40及び退入部50がスクラップカッター30に設けられていることから、押圧片62は、上型切刃20に設けられている。
【0044】
押圧片62は、上述した退入部50に対応する位置に設けられている。具体的には、押圧片62は、上型切刃20及びスクラップカッター30の一方の切刃(本実施形態ではスクラップカッター30)に設けられた退入部50に対して第一の方向に外れた位置において、他方の切刃(本実施形態では上型切刃20)に形成されている。そのため、ワークWの切断に際して上型切刃20及びスクラップカッター30が近接する方向に両切刃を相対移動させると、退入部50に対して押圧片62が押し込まれた状態になる。これにより、押圧部60は、押圧片62とともに退入部50に押し込まれたワークWを屈曲させることとができる。
【0045】
押圧片62は、縦方向及び横方向の長さに対して厚み方向の長さが小さい板状の部分(板状部)を有する。押圧片62は、厚み方向に形成された側面によって構成された押圧面62aを有する。押圧面62aは、ワークWの切断時に、ワークWに押圧されることにより、ワークWに対して押圧力を作用させる面である。押圧片62は、押圧面62aがクリアランスCの形成位置において形成されるワークWの切断線(切断位置)に沿う方向に延びるように配されている。また、押圧片62は、クリアランスC側に向く側面62bとは反対側に向く側面62cにリブ64を有する。
【0046】
リブ64は、側面62cに一つだけ設けられていても良いが、本実施形態では複数設けられている。具体的には、本実施形態では、リブ64として第一リブ64a及び第二リブ64bが設けられている。第一リブ64aは、第一の方向(上下方向)に延びるように形成された略「I」字状のリブである。また、第二リブ64bは、第一の方向(上下方向)に延びる部分に加えて、これとは交差する方向に延びる部分を有するリブである。第二リブ64bは、略「L」字状のリブとされている。第一リブ64a及び第二リブ64bは、ワークWの切断線の延びる方向に所定の間隔を介して配されている。
【0047】
カッター装置10は、上述した構成とされているため、上型110及び下型120の第一の方向(上下方向)への相対移動に連動して、上型切刃20及びスクラップカッター30が第一の方向(上下方向)に相対移動する。カッター装置10は、上型切刃20及びスクラップカッター30が、クリアランスCを介して第二の方向(水平方向)に離れた位置において、第一の方向(上下方向)に相対移動することにより、ワークWを切断できる。さらに、カッター装置10は、ワークWの切断に際し、上型切刃20に設けられた押圧部60(押圧片62)が、スクラップカッター30に設けられた退入部50に押し込まれる。これにより、ワークWは、退入部50を境界としてクリアランスC側(切断線側)の部分が屈曲した屈曲部Wbが形成された状態になり、上型切刃20の側面から離反した状態になる。そのため、ワークWの切断後に、上型切刃20及びスクラップカッター30が離反するように、第一の方向(上下方向)に上型切刃20が移動しても、上型切刃20にワークWが干渉しない。
【0048】
上述したカッター装置10、及びプレス装置100は、以下の(a)~(i)のような特徴的構成を備えている。そのため、カッター装置10及びプレス装置100は、以下に説明するような特徴的な効果を奏することができる。
【0049】
(a)本実施形態のカッター装置10は、第一の方向に相対移動可能に設けられた上型切刃20、及びスクラップカッター30と、第一の方向において上型切刃20及びスクラップカッター30の間に配されたワークWに押圧力を作用させる押圧部60と、を有し、上型切刃20、及びスクラップカッター30が、第一の方向に対して交差する第二の方向に所定のクリアランスCを介して離れた位置において、第一の方向に相対移動することにより、ワークWを切断可能なものであり、上型切刃20及びスクラップカッター30の少なくともいずれかが、ワークWと接触する接触部40と、接触部40にワークWが接触した状態において、接触部40よりもクリアランスCの形成位置から第二の方向に外れた位置において、接触部40よりもワークWから離れる方向に退入するように形成された退入部50と、を有し、押圧部60が、ワークWを押圧部60に向けて押圧可能とされていること、を特徴とするものである。
【0050】
カッター装置10は、上述したような構成とされているため、押圧部60によってワークWを退入部50に向けて押圧することにより、クリアランスCの形成位置において切断されたワークWの端部を、上型切刃20及びスクラップカッター30のうち退入部50が形成されたものから第二の方向に離反する方向に屈曲させることができる。これにより、カッター装置10は、ワークWの切断後に、切断したワークWの端部が切刃に引っかかるのを抑制できる。また、カッター装置10は、切断したワークWが、装置内等の予期せぬ箇所に入り込むのを抑制し、生産ラインの停止や装置の各部において破損等が生じるのを抑制できる。
【0051】
なお、本実施形態では、第一の方向を上下方向、第二の方向を水平方向として、カッター装置10やプレス装置100を構成する各部を配した例を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、カッター装置10やプレス装置100は、第一の方向を上下方向とは異なる方向とし、第二の方向を第一の方向と交差する方向として、各部を配した構成としても良い。
【0052】
また、本実施形態では、上型切刃20が第一の方向に移動可能である一方で、スクラップカッター30は第一の方向に移動しないものである例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、カッター装置10は、上型切刃20が第一の方向に移動せず、スクラップカッター30が第一の方向に移動することにより、上型切刃20及びスクラップカッター30が第一の方向に相対移動する構成としたり、上型切刃20及びスクラップカッター30の双方が第一の方向に移動可能な構成としたりしても良い。
【0053】
(b)本実施形態のカッター装置10は、上型切刃20及びスクラップカッター30によりワークWを切断するタイミング以後、上型切刃20及びスクラップカッター30が離反する方向に移動を開始するタイミングまでの間に、押圧部60によるワークWの押圧が行われるものとされている。これにより、カッター装置10は、押圧部60による押圧によりワークWを屈曲させた後に、上型切刃20,スクラップカッター30を第一の方向に離反するように相対移動させることができる。従って、カッター装置10は、ワークWの切断後に、切断したワークWの端部が切刃に引っかかるのを確実に抑制できる。
【0054】
(c)本実施形態のカッター装置10は、スクラップカッター30に退入部50が設けられ、上型切刃20に押圧部60をなす押圧片62が一体的に設けられており、上型切刃20及びスクラップカッター30が近接する方向に相対移動することにより、押圧片62が退入部50に押し込まれるものとされている。これにより、カッター装置10は、押圧部60を作動させるための機構や装置を別途設けたり、特別な制御を行うことなく、上型切刃20やスクラップカッター30の動作に連動して適切なタイミングで押圧部60を作動させることができる。これにより、本実施形態のカッター装置10は、装置構成や動作制御を簡素化することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、スクラップカッター30に退入部50が設けられ、上型切刃20に押圧部60をなす押圧片62が一体的に設けられた構成を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、カッター装置10は、スクラップカッター30に押圧部60をなす押圧片62が一体的に設けられ、上型切刃20に退入部50が設けられたものとすることが可能である。また、カッター装置10は、押圧部60について、上型切刃20やスクラップカッター30とは別に設けたシリンダ等によって動作するものすることも可能である。
【0056】
(d)本実施形態のカッター装置10は、退入部50及び押圧片62をワークWの切断位置に沿って延びるように設けたものとされている。カッター装置10は、個のような構成とされているため、ワークWの切断位置(切断線)に沿ってワークWを屈曲させることができる。これにより、カッター装置10は、ワークWの切断後に、切断したワークWの端部が切刃に引っかかってしまうのをより一層確実に抑制できる。
【0057】
なお、本実施形態では、ワークWの切断位置(切断線)に沿ってワークWを屈曲できるようにした例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ワークWの切断後に切断したワークWの端部が切刃に引っかかる箇所が特定の箇所に限定される場合などには、当該箇所に退入部50及び押圧片62を設けた構成としても良い。
【0058】
(e)本実施形態のカッター装置10において、押圧片62は、縦方向及び横方向の長さに対して厚み方向の長さが小さい板状の板状部62xを有し、板状部62xは、厚み方向に形成された側面がワークWに押し当てられる押圧面62aをなすものとされている。カッター装置10は、このような構成とされているため、押圧片62によりワークWを押圧する際に、ワークWに対する押圧片62の接触面積を最小限に抑制し、ワークWに付与される押圧力が分散されるのを抑制できる。そのため、カッター装置10は、押圧片62の接触部40分においてワークWを屈曲させるのに必要な押圧力を効率的に作用させることができる。
【0059】
また、本実施形態のカッター装置10は、押圧面62aがクリアランスCの形成位置において形成されるワークWの切断線に沿う方向に延びるように配されている。これにより、カッター装置10は、押圧片62において押圧面62aをなす側面が、クリアランスCの形成位置において形成されるワークWの切断線に沿う方向に延びるように板状部62xを配したものとされている。これにより、カッター装置10は、ワークWの切断線に沿ってワークWを屈曲させることができる。従って、カッター装置10は、過大な外力を押圧片62に作用させることなく、ワークWを切断線に沿って確実に屈曲させることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、押圧部60をなす押圧片62によりワークWに大きな押圧力を作用させることができるように、押圧面62aを有する板状部62xを用いたものを押圧片62として利用した例を示したが、本発明はこれに限定されない、本実施形態で例示した押圧面62aは平面状の面であるが、押圧面62aはワークWに向けて凸形状となるように湾曲した湾曲面等であっても良い。
【0061】
(f)上述したカッター装置10は、板状部62xを構成する側面のうち、クリアランスC側に向く側面62bとは反対側に向く側面62cに、第一の方向に延びる部分を有するリブ64が設けられたものとされている。カッター装置10は、このような構成とされているため、リブ64により押圧片62を補強し、押圧片62を第一の方向への力の作用に対して十分な強度を持たせることができる。また、カッター装置10は、板状部62xを構成する側面のうち、クリアランスC側に向く側面62bとは反対側に向く側面62cにリブ64を設けたものとされている。これにより、カッター装置10は、ワークWの切断や屈曲を阻害しない構成としつつ、リブ64によって押圧片62を補強できる。
【0062】
本実施形態では、上述したようなリブ64を設けることにより、板状部62xを補強した例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えばリブ64を設ける代わりに、あるいはリブ64を設けることに加えて、板状部62xの一部について厚み方向への肉厚を大きくすることにより、板状部62xの強度を高めた構成としても良い。また、リブ64を設ける等して補強しなくても板状部62xが十分な強度を発揮できる場合には、リブ64等からなる板状部62xを補強するための構成を省略することも可能である。
【0063】
(g)上述したカッター装置10は、退入部50が、クリアランスCの形成位置から、クリアランスCよりも大きく第二の方向に外れた位置に形成されたものとされている。これにより、カッター装置10は、ワークWの切断位置(切断線)から第二の方向に外れた位置において、切刃に対してワークWが引っかかるのを回避するために十分な大きさの屈曲部をワークWに形成することができる。
【0064】
なお、上述した(a)~(g)に係る特徴の一部又は全部を備えたカッター装置10は、単体でワークWを切断するための装置として利用可能であるが、上述したようにプレス装置100等の他の装置の一部を構成するものや、プレス装置100等の他の装置に付設されるもの等とすると良い。
【0065】
(h)本実施形態のプレス装置100は、第一の方向に近接離反するように相対移動可能とされた上型110及び下型120を有し、上型110及び下型120によるプレス成形により、所定のトリミングラインに沿って板状の素材を切断可能なプレス装置100であって、(a)~(g)の少なくともいずれかに係る特徴を備えたカッター装置10を備えており、カッター装置10が、素材の切断により発生したスクラップ材をワークWとして切断するものとされている。プレス装置100は、このような構成とされているため、プレス成形により発生したスクラップ材を上述したカッター装置10によって切断することができる。これにより、破断したスクラップ材がプレス装置100を構成する上型110や下型120、カッター装置10の内部等の予期せぬ箇所に入り込むのを抑制し、生産ラインの停止や装置の各部において破損等が生じるのを抑制できる。
【0066】
なお、プレス装置100は、上述したカッター装置10を他の装置の一部を構成するものや、他の装置に付設されるものとして活用したものの一例を示したものに過ぎず、プレス装置100以外の他の装置においても同様に活用可能である。
【0067】
(i)上述したプレス装置100は、上型110及び下型120が、第一の方向に相対移動可能に設けられており、上型切刃20、及びスクラップカッター30が、それぞれ上型110及び下型120に設けられ、上型110及び下型120の第一の方向への相対移動に連動して、第一の方向に対して交差する第二の方向に所定のクリアランスCを介して離れた位置において、第一の方向に相対移動することにより、ワークWを切断可能なものとされている。プレス装置100は、このような構成とされているため、プレス成形に際して上型110及び下型120が第一の方向に相対移動するのに連動して、上型切刃20及びスクラップカッター30によってスクラップ材を切断できる。また、プレス装置100は、カッター装置10において上型切刃20及びスクラップカッター30を第一の方向に相対移動させるための駆動源や駆動機構等を別途設ける必要がない。これにより、カッター装置10を備えたプレス装置100の構成をより一層シンプルなものとすることができる。
【0068】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素又は発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。これらについても本願の補正又は分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、ワークを切断するためのカッター装置全般において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
10 :カッター装置
20 :上型切刃(切刃A)
30 :スクラップカッター(切刃B)
40 :接触部
50 :退入部
60 :押圧部
62 :押圧片
62a :押圧面
62b :側面
62c :側面
62x :板状部
64 :リブ
100 :プレス装置
110 :上型(型a)
120 :下型(型b)
C :クリアランス
W :ワーク