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特開2023-145320ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145320
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20231003BHJP
   C08L 81/04 20060101ALI20231003BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L81/04
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175668
(22)【出願日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2022052459
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 浩徳
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131BA07
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC31
4J002AC001
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002BB181
4J002CN012
4J002CN022
4J002FD010
4J002FD070
4J002FD142
4J002FD150
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】優れた破断強度が得られる、ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ガラス転移温度が60℃以下である逆加硫体を含有する、タイヤトレッド用ゴム組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移点が60℃以下である逆加硫体を含有する、ゴム組成物。
【請求項2】
前記逆加硫体における硫黄の含有量が、30~90質量%である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記逆加硫体が、2つ以上の不飽和結合を有する炭化水素からなる有機化合物と、硫黄とを反応させてなる、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記逆加硫体が、リモネンと硫黄とを反応させてなるか、ジシクロペンタジエンと硫黄とを反応させてなるか、又はリモネンとジシクロペンタジエンと硫黄とを反応させてなる、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のゴム組成物を用いて作製した、空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物においては、耐久性向上のために破断強度の向上が求められている。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1には、耐摩耗性に優れたゴム組成物として含硫黄高分子を含有するゴム組成物が記載されている。特許文献2には、耐チッピング性能(破断時伸び)に優れたゴム組成物として、硫黄含有オリゴマーを含有するゴム組成物が記載されている。しかしながら、破断強度については改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005-507966号公報
【特許文献2】特開2019-19310号公報
【特許文献3】特開2017-517603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、優れた破断強度が得られる、ゴム組成物を提供することを目的とする。
【0006】
なお、特許文献1,2に記載のゴム組成物は、逆加硫体を含有するものではない。また、特許文献3には逆加硫体について記載されているが、ゴム組成物に加硫剤として配合することは記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] ガラス転移点が60℃以下である逆加硫体を含有する、ゴム組成物。
[2] 上記逆加硫体における硫黄の含有量が、30~90質量%である、[1]に記載のゴム組成物。
[3] 上記逆加硫体が、2つ以上の不飽和結合を有する炭化水素からなる有機化合物と、硫黄とを反応させてなる、[1]又は[2]に記載のゴム組成物。
[4] 上記逆加硫体が、リモネンと硫黄とを反応させてなるか、ジシクロペンタジエンと硫黄とを反応させてなるか、又はリモネンとジシクロペンタジエンと硫黄とを反応させてなる、[1]~[3]のいずれか1項に記載のゴム組成物。
[5] [1]~[4]のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて作製した、空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
本発明のゴム組成物によれば、優れた破断強度が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0010】
本実施形態に係るゴム組成物は、ガラス転移点が60℃以下である逆加硫体を含有するものとする。ここで、本明細書において、逆加硫体とは、鎖状硫黄を少量の有機物で架橋した構造を有するもののことをいい、通常の加硫によって得られるような、有機物のポリマー鎖間を少量の硫黄で架橋したものとは異なる。また、ガラス転移点とは、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分(測定温度範囲:-100℃~150℃)にて測定される値である。
【0011】
本実施形態に係るゴム組成物は、ゴム成分としてジエン系ゴムを含有するものであることが好ましく、ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム等を使用することができる。
【0012】
逆加硫体のガラス転移点は60℃以下であり、50℃以下であることが好ましく、45℃以下であることがより好ましい。また、ガラス転移点は-50℃以上であることが好ましく、-20℃以上であることがより好ましく、-10℃以上であることがさらに好ましく、0℃以上であることが特に好ましい。逆加硫体としてガラス転移点が60℃以下のものを使用することにより、ゴム組成物に混合する際に逆加硫体が溶融し、ゴム組成物中に均一に分散しやすい。その結果、ゴム組成物中に均一に架橋構造が形成され、優れた破断強度が得られやすい。なお、通常の加硫に用いられる硫黄の融点は112.8℃であり、ゴム組成物に混合する際の温度よりも高いため、上記逆加硫体と比較して均一に分散しにくい。
【0013】
逆加硫体は、常温23℃において、固形状であることが好ましい。固形状である場合、ゴム組成物を調製する際に取り扱いやすい。ここで、固形状とは、常温23℃において流動性を有しないもののことをいう。
【0014】
逆加硫体は、下記反応式に示すように、2つ以上の不飽和結合を有する炭化水素からなる有機化合物と、硫黄とを反応させてなるものであることが好ましい。具体的には、環状硫黄を159℃以上で加熱することにより、直鎖状硫黄に変化させる。そして、直鎖状硫黄と2つ以上の不飽和結合を有する炭化水素からなる有機化合物とを混合し反応させることで逆加硫体が得られる。直鎖状硫黄と有機化合物とを混合する際の温度条件は100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。なお、必要に応じて塩基や金属塩などの触媒を使用してもよい。
【化1】
【0015】
2つ以上の不飽和結合を有する炭化水素からなる有機化合物としては、酸素原子や窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子などのヘテロ原子を有するものであってもよいが、ヘテロ原子を有しないものであることが好ましい。すなわち、有機化合物は炭素と水素からなるものであることが好ましい。また、有機化合物の沸点は80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。このような有機化合物の分子量は特に限定されないが、100~3000であることが好ましく、100~500であることがより好ましく、100~300であることがさらに好ましい。このような有機化合物としては、リモネン、テルピノレン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、ジイソプロペニルベンゼン(DIB)、ジビニルベンゼン(DVB)、エチレングリコールジメチルラクリレート(EGDMA)、1,5,9-シクロドデカトリエン(CDDT)、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、1,2,4-トリビニルヘキサン(TVCH)、テトラアリルオキシエタン、スクアレン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン、4-アミノスチレンなどが挙げられ、この中でも、リモネンやジシクロペンタジエンであることが好ましい。すなわち、逆加硫体は、リモネンと硫黄とを反応させてなるもの、ジシクロペンタジエンと硫黄とを反応させてなるもの、又はリモネンとジシクロペンタジエンと硫黄とを反応させてなるものであることがより好ましい。
【0016】
2つ以上の不飽和結合を有する炭化水素からなる有機化合物と硫黄の配合割合(有機化合物/硫黄)は、特に限定されないが、質量比で、0.1~2.5であることが好ましく、0.25~1であることがより好ましい。上記範囲内である場合、ガラス転移点の温度が60℃以下の逆加硫体が得られやすい。
【0017】
好ましい実施形態において、ジシクロペンタジエンと硫黄の配合割合(ジシクロペンタジエン/硫黄)は、特に限定されないが、質量比で、0~0.5であることが好ましく、0.01~0.4であることがより好ましい。上記範囲内である場合、ガラス転移点の温度が60℃以下の逆加硫体が得られやすい。
【0018】
好ましい実施形態において、リモネンと硫黄の配合割合(リモネン/硫黄)は、特に限定されないが、質量比で、0~4であることが好ましく、0.1~2.5であることがより好ましい。上記範囲内である場合、ガラス転移点の温度が60℃以下の逆加硫体が得られやすい。
【0019】
好ましい実施形態において、ジシクロペンタジエンとリモネンの配合割合(ジシクロペンタジエン/リモネン)は、特に限定されないが、質量比で、0~1.5であることが好ましく、0.01~1であることがより好ましい。上記範囲内である場合、ガラス転移点の温度が60℃以下の逆加硫体が得られやすい。
【0020】
逆加硫体は、加硫時に硫黄鎖が分裂し、炭素鎖を含む架橋構造としてゴム成分のポリマー鎖に結合し架橋構造を形成する。架橋構造に炭素鎖を含む架橋構造が形成されることで通常の加硫によって得られる硫黄のみからなる架橋構造と比較し架橋鎖が長くなり、その結果、ゴムの柔軟性が向上し破断強度が向上する。さらに、本実施形態に係るゴム組成物を未加硫ゴムとして保存している際に、逆加硫体は高分子であるため、硫黄と比較して移行性が低く、ブリードアウトしにくい。
【0021】
逆加硫体における硫黄の含有割合は、30~90質量%であることが好ましく、40~85質量%であることがより好ましく、50~80質量%であることがさらに好ましい。
【0022】
逆加硫体の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.1~15質量部であることがより好ましく、0.1~10質量部であることがさらに好ましい。また、硫黄換算での含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.05~16質量部であることが好ましく、0.05~12質量部であることがより好ましく、0.05~8質量部であることがさらに好ましい。
【0023】
補強性充填剤としては、カーボンブラック及び/又はシリカを用いることが好ましい。すなわち、補強性充填剤は、カーボンブラック単独でも、シリカ単独でも、カーボンブラックとシリカの併用でもよい。好ましくは、カーボンブラック単独、又はカーボンブラックとシリカの併用である。補強性充填剤の含有量は、特に限定されず、例えばジエン系ゴム100質量部に対して10~140質量部であることが好ましく、より好ましくは20~100質量部であり、さらに好ましくは20~80質量部である。
【0024】
上記カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。カーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して5~100質量部であることが好ましく、より好ましくは20~80質量部である。
【0025】
シリカとしても、特に限定されないが、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが好ましく用いられる。シリカを配合する場合、その含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して5~40質量部であることが好ましく、より好ましくは5~30質量部である。
【0026】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分以外に、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、オイル、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0027】
上記加硫剤としては、上記逆加硫体に加えて硫黄を配合するものであってもよい。逆加硫体と硫黄を併用する場合、加硫剤の含有量(逆加硫体と硫黄の合計量)は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~10質量部である。また、上記加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、及びグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の含有量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1~7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0028】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し、加硫剤(逆加硫体を含む)及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤(逆加硫体を含む)及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0029】
このようにして得られたゴム組成物は、乗用車用タイヤ、トラックやバスの大型タイヤなど、各種用途・各種サイズの空気入りタイヤに適用することができる。すなわち、該ゴム組成物は、常法に従い、例えば、押出加工によって所定の形状に成形され、他の部品と組み合わせてグリーンタイヤを作製した後、例えば140~180℃でグリーンタイヤを加硫成形することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例0030】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
<合成例A>
ガラス容器に硫黄を2.5g加え、165℃で15分間攪拌した。硫黄が溶解したのを確認してからジシクロペンタジエン2.5gを加え、さらに165℃で30分間攪拌した。溶液の色が変わったのを確認したあと、シリコンモールドに溶液を注いだ。その後、140℃のオーブンで16時間加熱することで逆加硫体Aを得た。得られた逆加硫体Aのガラス転移点を測定したところ、97℃であった。また、元素分析を行ったところ、硫黄含有量が65質量%であった。
【0032】
<合成例B>
ガラス容器に硫黄を2.5g加え、165℃で15分間攪拌した。硫黄が溶解したのを確認してからジシクロペンタジエン1.5gとリモネン1.0gを加え、さらに165℃で30分間攪拌した。溶液の色が変わったのを確認したあと、シリコンモールドに溶液を注いだ。その後、140℃のオーブンで16時間加熱することで逆加硫体Bを得た。得られた逆加硫体Bのガラス転移点を測定したところ、70℃であった。また、元素分析を行ったところ、硫黄含有量が67質量%であった。
【0033】
<合成例C>
ガラス容器に硫黄を1.5g加え、165℃で15分間攪拌した。硫黄が溶解したのを確認してからジシクロペンタジエン0.5gとリモネン3.0gを加え、さらに165℃で30分間攪拌した。溶液の色が変わったのを確認したあと、シリコンモールドに溶液を注いだ。その後、140℃のオーブンで16時間加熱することで逆加硫体Cを得た。得られた逆加硫体Cのガラス転移点を測定したところ、41℃であった。また、元素分析を行ったところ、硫黄含有量が56質量%であった。
【0034】
<合成例D>
ガラス容器に硫黄を2.5g加え、165℃で15分間攪拌した。硫黄が溶解したのを確認してからジシクロペンタジエン0.5gとリモネン2.0gを加え、さらに165℃で30分間攪拌した。溶液の色が変わったのを確認したあと、シリコンモールドに溶液を注いだ。その後、140℃のオーブンで16時間加熱することで逆加硫体Dを得た。得られた逆加硫体Dのガラス転移点を測定したところ、29℃であった。また、元素分析を行ったところ、硫黄含有量が66質量%であった。
【0035】
<合成例E>
ガラス容器に硫黄を3.5g加え、165℃で15分間攪拌した。硫黄が溶解したのを確認してからジシクロペンタジエン0.5gとリモネン1.0gを加え、さらに165℃で30分間攪拌した。溶液の色が変わったのを確認したあと、シリコンモールドに溶液を注いだ。その後、140℃のオーブンで16時間加熱することで逆加硫体Eを得た。得られた逆加硫体Eのガラス転移点を測定したところ、19℃であった。また、元素分析を行ったところ、硫黄含有量が76質量%であった。
【0036】
<合成例F>
ガラス容器に硫黄を4.0g加え、165℃で15分間攪拌した。硫黄が溶解したのを確認してからジシクロペンタジエン0.5gとリモネン0.5gを加え、さらに165℃で30分間攪拌した。溶液の色が変わったのを確認したあと、シリコンモールドに溶液を注いだ。その後、140℃のオーブンで16時間加熱することで逆加硫体Fを得た。得られた逆加硫体Fのガラス転移点を測定したところ、17℃であった。また、元素分析を行ったところ、硫黄含有量が84質量%であった。
【0037】
<合成例G>
ガラス容器に硫黄を2.5g加え、165℃で15分間攪拌した。硫黄が溶解したのを確認してからリモネン2.5gを加え、さらに165℃で30分間攪拌した。溶液の色が変わったのを確認したあと、シリコンモールドに溶液を注いだ。その後、140℃のオーブンで16時間加熱することで逆加硫体Gを得た。得られた逆加硫体Gのガラス転移点を測定したところ、5℃であった。また、元素分析を行ったところ、硫黄含有量が65質量%であった。
【0038】
密閉式混練機を使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ジエン系ゴム成分に対し加硫剤及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練した(排出温度=160℃)。次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、加硫剤と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0039】
・SBR:JSR(株)製「SBR1502」
・NR:RSS#3
・カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製「ショウブラックN330T」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛3種」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」、硫黄含有量=95質量%
・架橋剤:ビス[N,N-ジ(ベンジル)トリチオペルオキシカルバミド酸]ヘキサメチレン、ランクセス社製「KA9188」、硫黄含有量=28質量%
・逆加硫体A:上記合成例Aで得られた逆加硫体、Tg=97℃、硫黄含有量=65質量%
・逆加硫体B:上記合成例Bで得られた逆加硫体、Tg=70℃、硫黄含有量=67質量%
・逆加硫体C:上記合成例Cで得られた逆加硫体、Tg=41℃、硫黄含有量=56質量%
・逆加硫体D:上記合成例Dで得られた逆加硫体、Tg=29℃、硫黄含有量=66質量%
・逆加硫体E:上記合成例Eで得られた逆加硫体、Tg=19℃、硫黄含有量=76質量%
・逆加硫体F:上記合成例Fで得られた逆加硫体、Tg=17℃、硫黄含有量=84質量%
・逆加硫体G:上記合成例Gで得られた逆加硫体、Tg=5℃、硫黄含有量=65質量%
・加硫促進剤:大内新興化学(株)製「ノクセラー CZ-G(CZ)」
【0040】
なお、ガラス転移点は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分(測定温度範囲:-100℃~150℃)にて測定した。また、硫黄含有量は有機元素分析装置で燃焼法により測定した。
【0041】
得られた各ゴム組成物について、下記方法に従って引張試験を行い、破断強度を評価した。
【0042】
・切断時引張強さ:JIS K6251に準拠した引張試験(ダンベル状7号形)を行い、切断時引張強さを測定し、比較例2~4及び実施例1~7については比較例1の値を100とし、実施例8については比較例5の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、破断強度に優れることを示す。
【0043】
【表1】
【0044】
結果は、表1に示す通りであり、実施例1~7は比較例1と比較して、破断強度が優れていた。実施例8は比較例5と比較して破断強度が優れていた。
【0045】
比較例2は逆加硫体ではない加硫剤を使用した例であり、比較例1と比較して、破断強度が劣っていた。
【0046】
比較例3,4は逆加硫体のガラス転移点が上限値を超える例であり、比較例1と比較して、破断強度が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のゴム組成物は、乗用車、ライトトラック・バス等の各種タイヤ用ゴム組成物に用いることができる。