(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145359
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】水溶性プリフラックス、および表面処理方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20231003BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20231003BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20231003BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20231003BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C09D201/00
C23C26/00 A
C09D7/63
C09D7/61
H05K3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031998
(22)【出願日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2022051684
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】榮西 弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 泰貴
(72)【発明者】
【氏名】中波 一貴
(72)【発明者】
【氏名】山下 宣宏
【テーマコード(参考)】
4J038
4K044
5E314
【Fターム(参考)】
4J038HA156
4J038JA35
4J038JB01
4J038JB32
4J038MA08
4J038PB09
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA21
4K044BB01
4K044BC11
4K044CA53
5E314AA21
5E314BB02
5E314CC04
5E314EE01
5E314FF01
5E314GG08
(57)【要約】
【課題】耐熱性の良好な有機被膜を形成できる水溶性プリフラックスを提供すること。
【解決手段】(A)イミダゾール化合物と、(B)アミン化合物と、(C)有機酸と、(D)水とを含有し、前記(B)成分が、(B1)ヒンダードアミン化合物、および(B2)炭素数10以上のアルキル基を有するアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、水溶性プリフラックス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イミダゾール化合物と、(B)アミン化合物と、(C)有機酸と、(D)水とを含有し、
前記(B)成分が、(B1)ヒンダードアミン化合物、および(B2)炭素数10以上のアルキル基を有するアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、
水溶性プリフラックス。
【請求項2】
請求項1に記載の水溶性プリフラックスにおいて、
(E)コンプレクサン化合物を、さらに含有する、
水溶性プリフラックス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の水溶性プリフラックスにおいて、
(F)錯体被膜形成助剤を、さらに含有する、
水溶性プリフラックス。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の水溶性プリフラックスを用いて、電子基板の電極端子上に有機被膜を形成する工程を備える、
表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性プリフラックス、および表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板は、ソルダーレジスト被膜が形成された状態で流通する場合が多い。このような場合、プリント配線基板の大部分はソルダーレジスト被膜に覆われている。しかしながら、電子部品を搭載するために電極端子(ランド)には、ソルダーレジスト被膜が存在しない。そのため、プリント配線基板を流通する際や保管する際に、電極端子の表面が酸化されやすい。そこで、プリント配線基板の電極端子には、電極端子の表面の酸化を防止するために、電極端子の表面に金メッキ処理が施される場合がある。しかしながら、金メッキ処理には貴金属を使用するためにコストが高くなるという問題がある。そこで、プリント配線基板においては、金メッキ処理に代えて、水溶性プリフラックスにより電極端子の表面に有機被膜を形成する方法が採用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プリント配線基板は、電子部品のはんだ付けのために、複数回のリフロー処理が行われ、その度に高温に曝される。そして、このような複数回のリフロー処理により、有機被膜が劣化するため、電子部品のはんだ付け性が低下してしまうおそれがある。そこで、より耐熱性の良好な有機被膜が要求される。
【0005】
本発明は、耐熱性の良好な有機被膜を形成できる水溶性プリフラックス、並びに、表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、(A)イミダゾール化合物と、(B)アミン化合物と、(C)有機酸と、(D)水とを含有し、前記(B)成分が、(B1)ヒンダードアミン化合物、および(B2)炭素数10以上のアルキル基を有するアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、水溶性プリフラックスが提供される。
【0007】
本発明の一態様によれば、前記本発明の一態様に係る水溶性プリフラックスを用いて、電子基板の電極端子上に有機被膜を形成する工程を備える、表面処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、耐熱性の良好な有機被膜を形成できる水溶性プリフラックス、並びに、表面処理方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[水溶性プリフラックス]
まず、本実施形態に係る水溶性プリフラックス組成物について説明する。本実施形態に係る水溶性プリフラックスは、以下説明する(A)イミダゾール化合物と、(B)アミン化合物と、(C)有機酸と、(D)水とを含有するものである。また、(B)成分が、(B1)ヒンダードアミン化合物、および(B2)炭素数10以上のアルキル基を有するアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含有することが必要である。
【0010】
本実施形態に係る水溶性プリフラックス組成物が、耐熱性の良好な有機被膜を形成できる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、水溶性プリフラックスにおける有機被膜は、通常、(A)イミダゾール化合物により形成されるものである。これに対し、本実施形態においては、(B1)ヒンダードアミン化合物、または(B2)炭素数10以上のアルキル基を有するアミン化合物が、有機被膜の一部を形成しているものと推察される。そして、これらの(B1)成分または(B2)成分により、有機被膜に更なる酸化防止作用が付与されたものと推察される。
【0011】
[(A)成分]
本実施形態に用いる(A)イミダゾール化合物としては、イミダゾール類、およびベンゾイミダゾール類が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
イミダゾール類としては、2-ペンチルイミダゾール、2-ウンデシル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-トルイルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ベンジルイミダゾール、2,4-ジフェニルイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、2-ベンジルイミダゾール、2-ベンジル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルエチルイミダゾール、2-(2-フェニルエチル)イミダゾール、および2-(2-フェニルペンチル)イミダゾールなどが挙げられる。
【0012】
ベンゾイミダゾール類としては、2-プロピルベンゾイミダゾール、2-ペンチルベンゾイミダゾール、2-オクチルベンゾイミダゾール、2-ノニルベンゾイミダゾール、2-ヘキシル-5-メチルベンゾイミダゾール、2-(2-メチルプロピル)ベンゾイミダゾール、2-(1-エチルプロピル)ベンゾイミダゾール、2-(1-エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2-シクロヘキシルベンゾイミダゾール、2-(2-シクロヘキシルエチル)ベンゾイミダゾール、2-(5-シクロヘキシルペンチル)ベンゾイミダゾール、2-フェニルベンゾイミダゾール、2-フェニル-5-メチルベンゾイミダゾール、2-ベンジルベンゾイミダゾール、2-(2-フェニルエチル)ベンゾイミダゾール、2-(5-フェニルペンチル)ベンゾイミダゾール、2-(3-フェニルプロピル)-5-メチルベンゾイミダゾール、2-(4-クロロベンジル)ベンゾイミダゾール、2-(3,4-ジクロロベンジル)ベンゾイミダゾール、2-(2,4-ジクロロベンジル)ベンゾイミダゾール、2-(メルカプトメチル)ベンゾイミダゾール、2-(2-アミノエチル)ベンゾイミダゾール、2,2’-エチレンジベンゾイミダゾール、2-(1-ナフチルメチル)ベンゾイミダゾール、2-(2-ピリジル)ベンゾイミダゾール、2-(2-フェニルビニル)ベンゾイミダゾール、2-(フェノキシメチル)ベンゾイミダゾール、2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1H-ベンゾイミダゾール、2-[(4-クロロフェニル)メチル]-1H-ベンゾイミダゾール、および2-(フェノキシメチル)-5-メチルベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0013】
(A)成分の配合量は、水溶性プリフラックス100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。(A)成分の配合量が前記下限以上であれば、防錆膜などの有機被膜をより形成しやすくできる。また、(A)成分の配合量が前記上限以下であれば、不溶解分が多くなるようなこともなく、経済的にも好ましい。
【0014】
[(B)成分]
本実施形態に用いる(B)アミン化合物は、(B1)ヒンダードアミン化合物、および(B2)炭素数10以上のアルキル基を有するアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含有することが必要である。これらの(B1)成分または(B2)成分により、有機被膜のリフロー耐熱性を向上できる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(B1)成分は、下記一般式(B1)で表される構造を有するものである。
【0015】
【0016】
一般式(B1)において、R1は、独立して、メチル基、またはエチル基であり、メチル基であることが好ましい。
Xは、水素、炭素数1から12のアルキル基、または炭素数1から12のアルコキシ基である。また、Xが水素の場合は、下記一般式(B1-1)で表される構造である。Xが炭素数1から12のアルキル基の場合は、下記一般式(B1-2)で表される構造である。Xが炭素数1から12のアルコキシ基の場合は、下記一般式(B1-3)で表される構造である。
なお、(B1)成分において、波線より先の部分の構造は、特に限定されない。
(B1)成分の1分子中における一般式(B1)で表される構造の数は、1以上10以下であることが好ましく、2以上4以下であることがより好ましい。
【0017】
【0018】
一般式(B1-1)において、R1は、独立して、メチル基、またはエチル基であり、メチル基であることが好ましい。
一般式(B1-1)で表される構造を有する化合物としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、および、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0019】
【0020】
一般式(B1-2)において、R1は、独立して、メチル基、またはエチル基であり、メチル基であることが好ましい。
R2は、炭素数1から12のアルキル基であり、炭素数1から8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1から3のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
一般式(B1-2)で表される構造を有する化合物としては、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]エチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-(メチル)-8-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、および、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0021】
【0022】
一般式(B1-3)において、R1は、独立して、メチル基、またはエチル基であり、メチル基であることが好ましい。
R3は、炭素数1から12のアルキル基であり、炭素数4から11のアルキル基であることが好ましく、炭素数8から11のアルキル基であることがより好ましく、オクチル基またはウンデシル基であることが特に好ましい。
一般式(B1-3)で表される構造を有する化合物としては、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、および、ビス(1-ウンデカオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネートなどが挙げられる。
【0023】
(B1)成分の配合量は、水溶性プリフラックス100質量%に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることが特に好ましい。(B1)成分の配合量が前記下限以上であれば、形成される有機被膜の耐熱性をより高めることができる。また、(B1)成分の配合量が前記上限以下であれば、水溶性プリフラックスの連続使用時に、(B1)成分の量が過剰になりにくいという点で好ましい。
同様の観点から、(B1)成分の(A)成分に対する質量比((B1)/(A))は、1/5以上5/1以下であることが好ましく、1/2以上4/1以下であることがより好ましく、1/1以上3/1以下であることが特に好ましい。
【0024】
(B2)成分は、炭素数10以上のアルキル基を有するアミン化合物である。
炭素数10以上のアルキル基としては、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、およびイコシル基などが挙げられる。これらの中でも、デシル基、またはドデシル基が好ましい。
アミン化合物の1分子中に、炭素数10以上のアルキル基が、1つ以上あればよく、2つあってもよく、3つあってもよい。
アミン化合物は、1級アミンであってもよく、2級アミンであってもよく、3級アミンであってもよい。
(B2)成分としては、デシルアミン、ドデシルアミン、N,N-ジメチルデシルアミン、およびN,N-ジメチルドデシルアミンなどが挙げられる。
【0025】
(B2)成分の配合量は、水溶性プリフラックス100質量%に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上2質量%以下であることが特に好ましい。(B2)成分の配合量が前記下限以上であれば、形成される有機被膜の耐熱性をより高めることができる。また、(B2)成分の配合量が前記上限以下であれば、水溶性プリフラックスの連続使用時に、(B2)成分の量が過剰になりにくいという点で好ましい。
同様の観点から、(B2)成分の(A)成分に対する質量比((B2)/(A))は、1/5以上5/1以下であることが好ましく、1/2以上4/1以下であることがより好ましく、1/1以上3/1以下であることが特に好ましい。
【0026】
(B)成分は、本発明の課題を達成できる範囲において、(B1)成分および(B2)成分以外に、その他のアミン化合物(以下(B3)成分とも称する)をさらに含有してもよい。(B3)成分としては、(B1)成分および(B2)成分以外のアミン化合物が挙げられる。ただし、(B3)成分が有機被膜に悪影響を与えうるという観点から、(B)成分は、(B1)成分および(B2)成分を使用することが好ましい。また、(B1)成分および(B2)成分の合計配合量は、(B)成分100質量%に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0027】
(B)成分の配合量は、水溶性プリフラックス100質量%に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることが特に好ましい。(B)成分の配合量が前記下限以上であれば、形成される有機被膜の耐熱性をより高めることができる。また、(B)成分の配合量が前記上限以下であれば、水溶性プリフラックスの連続使用時に、(B)成分の量が過剰になりにくいという点で好ましい。
【0028】
[(C)成分]
本実施形態に用いる(C)有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、エナント酸、グリコール酸、酒石酸、乳酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ブロモ酢酸、およびメトキシ酢酸などが挙げられる。これらの中でも、(A)成分を水溶化させるという観点から、ギ酸、酢酸、またはエナント酸を用いることが好ましく、酢酸またはエナント酸を用いることが特に好ましい。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
(C)成分の配合量は、水溶性プリフラックス100質量%に対して、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、2質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。(B)成分の配合量が前記範囲内であれば、(C)成分を十分に水溶化させることができる。
【0030】
[(D)成分]
本実施形態に用いる(D)水は、水溶性プリフラックスにおける(A)成分、(B)成分および(C)成分、並びに、以下説明する他の成分以外の残部である。
【0031】
[(E)成分]
本実施形態に係る水溶性プリフラックスは、(E)コンプレクサン化合物を、さらに含有することが好ましい。この(E)成分により、水溶性プリフラックス処理液の安定性を向上できる。
コンプレクサン化合物としては、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム鉄、およびエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム水和物などが挙げられる。
【0032】
(E)成分を使用する場合、その配合量は、水溶性プリフラックス100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
[(F)成分]
本実施形態に係る水溶性プリフラックスは、(F)錯体被膜形成助剤を、さらに含有することが好ましい。ただし、銅との錯体被膜形成助剤を添加すると条件によっては、基板の金めっき上にも被膜を形成し、金めっきの変色が発生することがあるので注意が必要である。
錯体被膜形成助剤としては、ギ酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、シュウ酸銅、酢酸銅、水酸化銅、炭酸銅、リン酸銅、硫酸銅、ギ酸マンガン、塩化マンガン、シュウ酸マンガン、硫酸マンガン、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸ニッケル、酢酸バリウム、水素化亜鉛、塩化第一鉄、塩化第二鉄、酸化第一鉄、酸化第二鉄、ヨウ化銅、臭化第一銅、および臭化第二銅などの金属化合物が挙げられる。これらの錯体被膜形成助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
(F)成分を使用する場合、その配合量は、水溶性プリフラックス100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
[他の成分]
本実施形態に係る水溶性プリフラックスは、本発明の効果を阻害しない範囲で、有機溶剤、緩衝液、および添加剤などを含有していてもよい。
有機溶剤としては、メタノール、エタノール、およびアセトンなどが挙げられる。
緩衝液中の塩基としては、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、イソプロピルエタノールアミン、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムなどが挙げられる。
これらを使用する場合、その配合量は、水溶性プリフラックス100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0036】
[表面処理方法]
次に、本実施形態に係る表面処理方法について説明する。
本実施形態に係る表面処理方法は、本実施形態に係る水溶性プリフラックスを用いて、電子基板の電極端子上に有機被膜を形成する工程を備える方法である。
電子基板としては、プリント配線基板および半導体用基板などが挙げられる。
有機被膜の形成方法としては、例えば、処理対象のプリント配線基板の電極端子の表面を脱脂、化学研磨(ソフトエッチング)、酸洗、水洗する前処理工程を施した後、水溶性プリフラックスに、10~60℃で1秒間~100分間(好ましくは20~50℃で、5秒間~60分間、より好ましくは20~50℃で、10秒間~10分間)プリント配線基板を浸漬する方法を採用できる。このようにして、イミダゾール化合物は電極端子の表面に付着するが、その付着量は処理温度を高く、処理時間を長くするほど多くなる。このときに、超音波を利用するとより好ましい。なお、他の塗布手段、例えば噴霧法、刷毛塗り、ローラー塗りなどで有機被膜を形成してもよい。
以上のようにして、電子基板上に、有機被膜(防錆膜など)を形成できる。
【実施例0037】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A)成分)
イミダゾール化合物A:2,4-ジフェニルイミダゾール
イミダゾール化合物B:2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1H-ベンゾイミダゾール
イミダゾール化合物C:2-[(4-クロロフェニル)メチル]-1H-ベンゾイミダゾール
イミダゾール化合物D:2-フェニルベンゾイミダゾール
((B1)成分)
アミン化合物A:1分子中に一般式(B1-1)で表される構造を2つ有するヒンダードアミン化合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、商品名「Tinuvin 770DF」、BASF社製
((B2)成分)
アミン化合物B:N,N-ジメチルデシルアミン
((B3)成分)
アミン化合物C:N-フェニルエチレンジアミン
アミン化合物D:オクチルアミン
((C)成分)
有機酸A:酢酸
有機酸B:エナント酸
((D)成分)
水:純水
((E)成分)
コンプレクサン化合物A:エチレンジアミン四酢酸ナトリウム鉄、キシダ化学社製
コンプレクサン化合物B:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム水和物
((F)成分)
錯体被膜形成助剤A:塩化第二鉄(塩化鉄(III))
錯体被膜形成助剤B:酢酸亜鉛二水和物
(他の成分)
pH調整剤:アンモニア水、キシダ化学社製
【0038】
[実施例1]
水83.4質量%に対し、イミダゾール化合物A0.3質量%、有機酸A15質量%、有機酸B0.1質量%、アミン化合物A0.9質量%、およびコンプレクサン化合物A0.3質量%を溶解させて、水溶性プリフラックスを得た。また、得られた水溶性プリフラックスは、緩衝液(pH調整剤)として25質量%アンモニア水でpH調整し、被膜を形成可能な水溶性プリフラックス処理液とした。
【0039】
[実施例2~8]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして水溶性プリフラックスおよび処理液を得た。
[比較例1~3]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして水溶性プリフラックスおよび処理液を得た。
【0040】
<水溶性プリフラックスの評価>
水溶性プリフラックスの性能(外観、リフロー耐熱性)を以下のような方法で評価した。得られた結果を表1に示す。
(1)外観
両面銅張積層板(大きさ:7.5mm×50mm、厚み:2mm)を脱脂、ソフトエッチングおよび水洗し表面を清浄にした後、水溶性プリフラックス処理液に40℃で2分間浸漬し、被膜形成して、水洗、温風乾燥し、試験基板を得た。この試験基板について、外観を観察し、下記の基準に従って、評価した。
○:ムラやスジが見えない。
×:ムラやスジが見える。
(2)リフロー耐熱性
銅板(大きさ:50mm×50mm、厚み:0.5mm)を脱脂、ソフトエッチングおよび水洗し表面を清浄にした後、水溶性プリフラックス処理液に40℃で2分間浸漬し、被膜形成して、水洗、温風乾燥し、試験基板を得た。
この試験基板に対し、リフロー処理(プリヒート:150~190℃で約70秒間、溶融温度:220℃以上で約40秒間、ピーク温度:250℃)を3回施し、はんだ組成物(タムラ製作所社製、ソルダーペースト「TLF-204-171A」)を用いて、ディウェッティング試験を行った。そして、以下の基準に従って、リフロー耐熱性を評価した。
○:はんだのぬれ性が良好であった。
×:はんだに、はじきが見られた。
【0041】
【0042】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明の水溶性プリフラックス(実施例1~8)については、外観、およびリフロー耐熱性の全てが良好であることが確認された。そのため、本発明によれば、耐熱性の良好な有機被膜を形成できる水溶性プリフラックスが得られることが確認された。