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  • 特開-塗布具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145380
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】塗布具
(51)【国際特許分類】
   B43K 8/06 20060101AFI20231003BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B43K8/06
B43K8/02 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042473
(22)【出願日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2022051541
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 佑美
(72)【発明者】
【氏名】米田 晶
(72)【発明者】
【氏名】小澤 崇将
(72)【発明者】
【氏名】丸山 美祐
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350HA15
2C350KA01
2C350KA09
2C350KA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】開示されている塗布具によると、突出部による過度な圧縮によって、圧縮部内の繊維密度が、塗布体側より塗布液供給管側の方が大きくなる箇所が生じ得るため、圧縮部内の毛管力のバラつきによって塗布液が吐出しにくくなるおそれがあった。本発明は、塗布液の吐出が良好な塗布具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の塗布具1は、塗布液吸蔵体8に圧縮部8aが形成され、塗布液吸蔵体8の端面と、塗布体3の後端面と、塗布液供給管6前端面とが、塗布具1の軸方向に対して垂直な面であり、塗布体3の後方の塗布液吸蔵体8への挿入量が、塗布液供給管6の前方の塗布液吸蔵体8への挿入量より大きい塗布具を要旨とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を直接収容する塗布液タンクと、塗布液を塗布する塗布体と、塗布液タンクから塗布体側へ塗布液を自由状態で供給する塗布液供給管と、塗布液供給管から塗布体へ塗布液を供給する塗布液吸蔵体と、で少なくとも構成された塗布具であって、塗布液吸蔵体は、塗布体後方と塗布液供給管前方とが挿入され、塗布体後端面と塗布液供給管前端面とに押圧されることで内部に圧縮部が形成され、塗布液吸蔵体の端面と、塗布体後端面と、塗布液供給管前端面とが、塗布具の軸方向に対して垂直な面であり、塗布体後方の塗布液吸蔵体への挿入量が、塗布液供給管前方の塗布液吸蔵体への挿入量より大きい塗布具。
【請求項2】
前記塗布液タンク内から前記塗布液吸蔵体までの流路に、少なくとも前記塗布液供給管が構成する流路より小さい流路を構成する周状の突起である塗布液逆流防止部を形成した、請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記塗布液吸蔵体に挿入される前記塗布体後端面と前記塗布液供給管前端面との間の軸方向長さが、前記塗布液吸蔵体の軸方向長さの0.13倍以上0.20倍以下であり、前記塗布液吸蔵体に挿入される前記塗布体後方の軸方向長さが、前記塗布液吸蔵体に挿入される前記塗布液供給管前方の軸方向長さの1.60倍以上2.70倍以下である、請求項1又は請求項2に記載の塗布具。
【請求項4】
前記塗布液吸蔵体に挿入される前記塗布液供給管の厚みが、前記塗布液供給管の最大外径の0.02倍以上0.10倍以下である、請求項1又は請求項2に記載の塗布具。
【請求項5】
前記塗布液吸蔵体に挿入される前記塗布液供給管の厚みが、前記塗布液供給管の最大外径の0.02倍以上0.10倍以下である、請求項3に記載の塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布液タンク内に収容された塗布液を、塗布液吸蔵体を介して塗布先へ供給可能な塗布具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記用、描画用、化粧用、医療用など様々な用途の塗布具が存在する。そして、その用途、塗布液の種類、使用場面などに応じて、様々な内部構造の塗布具が開示されている。例えば特許文献1には、塗布液吸蔵体に塗布液供給管が挿入された際に、塗布液供給管の前端面に形成された突出部によって、塗布液吸蔵体の圧縮部に、より繊維密度の高い部位が形成される塗布具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-54777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された塗布具では、突出部による過度な圧縮によって、圧縮部内の繊維密度が、塗布体側より塗布液供給管側の方が大きくなる箇所が生じ得るため、圧縮部内の毛管力のバラつきによって塗布液が吐出しにくくなるおそれがあった。
【0005】
本発明は、塗布液の吐出が良好な塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、塗布液を直接収容する塗布液タンクと、塗布液を塗布する塗布体と、塗布液タンクから塗布体側へ塗布液を自由状態で供給する塗布液供給管と、塗布液供給管から塗布体へ塗布液を供給する塗布液吸蔵体と、で少なくとも構成された塗布具であって、塗布液吸蔵体は、塗布体後方と塗布液供給管前方とが挿入され、塗布体後端面と塗布液供給管前端面とに押圧されることで内部に圧縮部が形成され、塗布液吸蔵体の端面と、塗布体後端面と、塗布液供給管前端面とが、塗布具の軸方向に対して垂直な面であり、塗布体後方の塗布液吸蔵体への挿入量が、塗布液供給管前方の塗布液吸蔵体への挿入量より大きい塗布具を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塗布具は、塗布体後方の塗布液吸蔵体への挿入量が、塗布液供給管前方の塗布液吸蔵体への挿入量より大きいため、圧縮部の密度は塗布液供給管側から塗布体側に向かって大きくなる。塗布液吸蔵体の端面と、塗布体後端面と、塗布液供給管前端面とが、塗布具軸方向に対して垂直な面でもあるため、圧縮部内の毛管力が塗布液供給管側から塗布体側に向かって径方向にも略均一に大きくなり、塗布液の吐出が良好な塗布具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】塗布具1の縦断面図
図2】他の実施形態に係る塗布具1の縦断面図
図3図1のA部分拡大図
図4図1のB-B´線断面矢視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の塗布具は、筆ペン、フェルトペン、マーキングペンなどの筆記具や描画用具、アイライナー、アイブロウ、アイシャドウなどの化粧用具、衛生消毒用などの薬液を塗布する医療用具などとして使用できる。その塗布具の用途に応じて任意の塗布液を使用できるが、25℃において、粘度が1.00mPa・s以上100mPa・s以下の比較的低粘度のものや、表面張力が20.0mN/m以上60.0mN/m以下の濡れ性が比較的高いものの使用が好ましい。
【0010】
以降、図面を参照しつつ、本発明に係る塗布具の実施形態について説明する。本発明は実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0011】
図1は、本発明の実施形態の1つである塗布具1の縦断面図である。塗布具1は、化粧用具のアイライナーである。塗布具1は、軸筒2を基礎として各部材が収納、配置されている。軸筒2には、塗布液Lを直接収容する塗布液タンク4と、塗布液Lを塗布する塗布体3と、塗布液タンク4から塗布体3側へ塗布液Lを自由状態で供給する塗布液供給管6と、塗布液供給管6から塗布体3へ塗布液L を供給する塗布液吸蔵体8などが配置されている。
【0012】
軸筒2は、前軸2aと後軸2bとが結合して構成された部材である。前軸2aと後軸2bとは、いずれもポリプロピレン樹脂製の成形品である。前軸2aは円筒状の部材であり、軸方向両端が開口し軸方向に貫通した部材である。後軸2bは円筒状の部材であり、軸方向の一端が閉塞し、他の一端が開口した有底の部材である。前軸2aにはキャップ9が着脱可能である。
【0013】
前軸2a外壁の軸方向中腹には、周状の突起である鍔部が設けられている。また、前軸2a外壁であって鍔部より後方には、周状の突起である前軸2a側嵌合部が設けられている。後軸2bの内壁には、周状の突起である後軸2b側嵌合部が設けられている。後軸2bの開口端部から、前軸2aの後方が挿入され、前軸2a側嵌合部と後軸2b側嵌合部とが互いに乗り越えることで嵌合が完了し、前軸2aと後軸2bとが結合する。このとき、後軸2bの開口端部の端面が前軸2aの鍔部に当接することで、両部材の軸方向の位置決めができる。
【0014】
前軸2aと後軸2bとは、本実施形態のような乗り越え嵌合の他、圧入関係や螺子螺合などの方法で適宜結合することができる。また、軸筒2、本実施形態のような前軸2aと後軸2bとの2部品の結合ではなく、中空筒状の成形品1部品で構成することもできる。
【0015】
塗布体3は、塗布液Lを被塗布面へ塗布するための部材である。本実施形態において塗布体3は、筆穂3aと、固定管3bと、中継芯3cとで構成されている。筆穂3aは、濡れ性に優れた比較的軟質なポリアミド繊維と、耐候性に優れた比較的硬質なポリブチレンテレフタレート繊維とからなる繊維収束体であり、人の肌に触れ眼球付近で繊細な操作性が求められるアイライナーの塗布体3として好ましい。固定管3bは筒状部材であり、軸方向両端が開口した部材である。固定管3bはポリプロピレン樹脂製の成形品である。
【0016】
筆穂3aは、前軸2aの前方開口端部に、固定管3bを介して配置される。筆穂3aの後端部には、中継芯3cが挿入されている。中継芯3cは、円柱状の繊維収束体である。筆穂3a及び中継芯3cには、塗布液Lが流通し吐出されるための複数の経路が多数存在する。その一部が、塗布液Lの吐出と同時になされる空気交換用の経路としても機能する。
【0017】
塗布体3は、本実施形態のように固定管3bを介して筆穂3aを前軸2aに配置する他、固定管3bを設けずに筆穂3aを前軸2aに直接配置したり、中継芯3cに相当する部位を筆穂3aに直接設けたりすることもできる。
【0018】
筆穂3aの材質は、成型性、塗布先乾燥性、書き味などを考慮して公知の材料を選択できる。繊維収束体としては、ポリアミド繊維、ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなど)繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリアクリロニトリル繊維などの合成繊維や、ヤギ、羊、馬、リスなどの天然獣毛などを適宜選択できる。また、多孔質体としては、ウレタンやスポンジなどを適宜選択できる。
【0019】
塗布液タンク4は、塗布液Lが直接収容された部材である。塗布液Lは、アイライナー用バルクである。塗布液タンク4には、ステンレス(SUS304)製の撹拌球5も収容されている。塗布液タンク4はポリプロピレン樹脂製の成形品であり、塗布液Lとの反応性が低く、撹拌に伴う撹拌球5の衝突に対する物理的な強度に優れているため好ましい。塗布液タンク4の内壁面には軸方向に延びるリブ4aが周方向等間隔に4本設けられており、塗布液タンク4の成形に際して壁の肉厚が不均一になり表面に凹みができるなどの現象(所謂ヒケ)の抑制と、撹拌球5が塗布液タンク4の内壁面に接着してしまうのを防止でき好ましい。
【0020】
塗布液タンク4は円筒状の部材であり、軸方向の一端が閉塞し、他の一端が開口した有底の部材である。前軸2aの後方開口端部から、塗布液タンク4の開口端部が挿入され、圧入関係で結合される。
【0021】
塗布液タンク4は、本実施形態のように後軸2bと別部材とする他、後軸2bの内部空間に直接塗布液Lを収容して、塗布液タンクとすることもできる。
【0022】
塗布液供給管6は、塗布液タンク4から塗布体3側へ塗布液Lを自由状態で供給するための流路を構成する部材である。塗布液供給管6はテンレス(SUS304)製の筒状部材であり、軸方向両端が開口し軸方向に貫通した部材である。
【0023】
塗布液供給管6の材質は、成形性や塗布液Lとの反応性などを考慮して、ステンレス、鋼、真鍮、黄銅などの金属、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー、又はこれらの樹脂を含む複合材などを適宜選択することができる。
【0024】
本実施形態においては、塗布液タンク4と、塗布液供給管6及び塗布液吸蔵体8との間には、筒体7が配置されている。筒体7はポリプロピレン樹脂製の筒状部材であり、軸方向両端が開口し軸方向に貫通した部材である。筒体7は外筒7aと内筒7bとが結合した重筒構造である。外筒7a内壁と内筒7b外壁との間はいわゆる肉盗みがなされており、いわゆるヒケを防止することができる。筒体7の、外筒7aと内筒7bとの結合部分側の開口端部から、塗布液供給管6の後方が挿入され、筒体7と圧入関係で結合される。筒体7の前端面は、塗布液吸蔵体8の後端面と当接している。なお、筒体7は塗布液供給管6と一体に成型して1部品にて流路を構成することもできる。
【0025】
筒体7は、前軸2aの後方開口端部から挿入され、圧入関係で前軸2aと結合される。前軸2a内の筒体7が挿入される開口部近傍の内壁には、周状の突起であるエアタイトリブが2条設けられており、前軸2aと筒体7とが圧入関係で結合されることにより、前軸2aの内壁と、筒体7aの外壁とでエアタイトがなされる。
【0026】
図2に示す他の実施形態のように、内筒7bの内壁面から突出した周状の突起である塗布液逆流防止部7cを設けることもできる。塗布液逆流防止部7cが構成する塗布液Lの流路は、塗布液供給管6が構成する流路より小さいため、塗布具1を上向きで使用した際(塗布先3が水平より下向きから上向きにした際)に、塗布液供給管6内の塗布液Lが塗布液タンク4内に逆流しようとするところ、塗布液逆流防止部7c近傍で塗布液Lが受ける管路抵抗が増大し、逆流に伴う空気交換も阻害されるため、塗布液Lの逆流を一時的に防止することができる。そのため、上向きで吐出できる塗布液Lの量を増やすことができ好ましい。
【0027】
各樹脂成形品の材質は、成形性や塗布液Lとの反応性などを考慮して、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー、またはこれらの樹脂を含む複合材などを適宜選択することができる。また、使用する塗布液Lに応じて、反応性や透過性などを考慮して、各部材の内壁面及び/又は外壁面に各種のコーティングや印刷などを施すこともできる。
【0028】
塗布液吸蔵体8は、塗布液供給管6から中継芯3cへ塗布液Lを供給するための流路を構成する部材である。塗布液吸蔵体8は、ポリエチレンテレフタレート樹脂製の繊維収束体である。塗布液吸蔵体8は円柱状の部材であり、前軸2aの内部に収容される。なお、塗布液吸蔵体8は外周にフィルムを巻回することもできる。当該フィルムは例えばポリプロピレン樹脂等の材質のものを用いることができる。
【0029】
図3は、図1のA部分拡大図である。塗布液吸蔵体8の内部には圧縮部8aが形成される。圧縮部8aは、塗布液吸蔵体8に、塗布体3後方を構成する中継芯3c後方と、塗布液供給管6前方とが挿入され、塗布液吸蔵体8が、中継芯3c後端面と塗布液供給管6前端面とに押圧されることで形成される。圧縮部8aは、塗布液吸蔵体8における他の箇所よりも繊維が密集した箇所であるため、圧縮部8a以外の箇所よりも高い毛管力が作用することで、塗布液Lを塗布液供給管6から中継芯3cへと供給することができる。塗布液吸蔵体8における他の箇所は、塗布液Lが圧縮部8aに過剰に供給されてしまった場合に、塗布液Lを一時的に保持するバッファとして機能させることができる。
【0030】
塗布液吸蔵体8の軸方向両端面と、中継芯3c後端面と、塗布液供給管6前端面とが、塗布具1の軸方向に対して略垂直な面で構成されている。よって、各端面が互いに略平行であり、圧縮部8aを形成する際に、圧縮部8a内における繊維の密度に径方向の偏りが生じにくく、略均一になり好ましい。塗布液吸蔵体8に中継芯3c後方及び塗布液供給管6前方を挿入すると、塗布液吸蔵体8の軸方向両端面は少なからず撓むが、挿入前の時点において各端面が互いに略平行であることで、圧縮部8a内の繊維の密度を略均一とすることができる。
【0031】
中継芯3c後方の塗布液吸蔵体8への挿入量が、塗布液供給管6前方の塗布液吸蔵体8への挿入量より、大きくなっている。このようにすることで、圧縮部8aを構成する繊維の密度が、塗布液吸蔵体8側から中継芯3c側に向かって大きくなるため、圧縮部8a内の毛管力も塗布液吸蔵体8側から中継芯3c側に向かって大きくすることができる。また、圧縮部8a内には微視的に塗布液Lの液膜の形成と破壊が繰り返されると推認されるところ、塗布液吸蔵体8側の方が中継芯3c側より液膜が破壊されやすくなり、空気交換も容易となる。よって、塗布液Lの流通がスムーズになり、塗布液Lの吐出の良好な塗布具1とすることができ好ましい。
【0032】
各挿入量は、塗布液吸蔵体8に中継芯3c後方及び塗布液供給管6前方を挿入した後における、塗布液吸蔵体8前端面の位置から中継芯3c後端面の位置までの中継芯3c後方の体積と、塗布液吸蔵体8後端面の位置から塗布液供給管6前端面の位置までの塗布液供給管6前方の体積とを意味している。本実施形態では、中継芯3c後方の塗布液吸蔵体8への挿入量が42.6mmであり、塗布液供給管6前方の塗布液吸蔵体8への挿入量が24.6mmである。
【0033】
圧縮部8a全体としては、塗布液吸蔵体8における他の箇所よりも繊維の密度が大きい必要があり、圧縮部8a内では先述のとおり塗布液吸蔵体8側から中継芯3c側に向かって繊維の密度を大きくする必要があるが、本実施形態では、塗布液吸蔵体8に対する中継芯3c後方及び塗布液供給管6前方の挿入量という制御が比較的容易な量をもって圧縮部8a全体及び圧縮部8a内の繊維の密度を調整するため、圧縮部8aを形成する工程を簡便にすることができ好ましい。
【0034】
本実施形態では、中継芯3cと、塗布液吸蔵体8と、塗布液供給管6とのそれぞれの軸心が略同一であるため、圧縮部8a内における繊維の密度に径方向の偏りが生じにくく、略均一になり好ましい。
【0035】
本実施形態では、塗布液吸蔵体8に挿入される、中継芯3c後端面と塗布液供給管6前端面との間の軸方向長さLを、塗布液吸蔵体8の軸方向長さLの0.13倍以上0.20倍以下とし、塗布液吸蔵体8に挿入される中継芯3c後方の軸方向長さLを、塗布液吸蔵体8に挿入される塗布液供給管6前方の軸方向長さLの1.60倍以上2.70倍以下としている。このようにすることで、中継芯3c後端面と塗布液供給管6前端面とに挟まれて形成される圧縮部8a全体の繊維の密度を十分に高めることができ、かつ、圧縮部8a内における塗布液吸蔵体8側から中継芯3c側に向かって大きくなる繊維の密度勾配を、より確実に形成することができるため、塗布液Lの吐出の良好な塗布具1とすることができ好ましい。
【0036】
本実施形態では、軸方向長さLは2.0mmであり、軸方向長さLは19.0mmである。軸方向長さL及び軸方向長さLは、塗布液吸蔵体8に中継芯3c後方及び塗布液供給管6前方を挿入した後における、塗布液吸蔵体8前端面の位置から中継芯3c後端面の位置までの中継芯3c後方の長さと、塗布液吸蔵体8後端面の位置から塗布液供給管6前端面の位置までの塗布液供給管6前方の長さとを意味している。塗布液吸蔵体8前端面の位置は、中継芯3c後方の挿入に伴い最も後方に撓んだ位置を意味し、塗布液吸蔵体8後端面の位置は、塗布液供給管6前方の挿入に伴い最も前方に撓んだ位置を意味している。本実施形態では、軸方向長さLは11.5mmであり、軸方向長さLは5.5mmである。
【0037】
図4は、図1のB-B´線断面矢視図である。本実施形態では、塗布液吸蔵体8に挿入される塗布液供給管6の厚みLが、塗布液供給管6の最大外径Lの0.02倍以上0.10倍以下としている。このようにすることで、圧縮部8aに接する塗布液供給管6の前端面が適度に小さくなるため、圧縮部8aの過圧縮を防止することができ、また、塗布液供給管6内壁面が形成する塗布液Lの流路を十分な広さで確保されるため塗布液Lの流通に伴う空気交換が容易となり、塗布液Lの吐出の良好な塗布具1とすることができ好ましい。
【0038】
塗布液吸蔵体8に挿入される塗布液供給管6の厚みLは、塗布液供給管6の外壁面又は内壁面のある点から他方への最短距離を意味する。ここで、圧縮部8aに接する塗布液供給管6の前端面の総面積が小さいほど、圧縮部8aの過圧縮を防止することができる。よって、塗布液供給管6自体をより細くし、塗布液供給管6の前端面の面積を小さくすることもできるが、塗布液供給管6の厚みLと最大外径Lとの割合を調整することで、塗布液供給管6内壁面が形成する塗布液Lの流路を十分な広さで確保しつつ、圧縮部8aの過圧縮を防止することができる。本実施形態では、厚みLは0.1mmであり、最大外径Lは2.3mmである。
【0039】
塗布液吸蔵体8の材質は、ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなど)繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維などを束ねた繊維収束体や、ウレタンやスポンジなどの多孔質体を、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 塗布具
2 軸筒
3 塗布体
3a 筆穂
3b 固定管
3c 中継芯
4 塗布液タンク
5 撹拌球
6 塗布液供給管
7 筒体
7a 外筒
7b 内筒
7c 塗布液逆流防止部
8 塗布液吸蔵体
8a 圧縮部
9 キャップ
L 塗布液
中継芯3c後端面と塗布液供給管6前端面との間の軸方向長さ
塗布液吸蔵体8の軸方向長さ
塗布液吸蔵体8に挿入される中継芯3c後方の軸方向長さ
塗布液吸蔵体8に挿入される塗布液供給管6前方の軸方向長さ
塗布液吸蔵体8に挿入される塗布液供給管6の厚み
塗布液供給管6の最大外径
図1
図2
図3
図4