(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145382
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】信号送受信器および信号送受信器用シート。
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/24 20060101AFI20231003BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20231003BHJP
H01Q 17/00 20060101ALI20231003BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20231003BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20231003BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20231003BHJP
【FI】
H01Q1/24 Z
H05K9/00 C
H05K9/00 M
H01Q17/00
H01Q1/52
G01S7/03 246
B32B7/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042727
(22)【出願日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2022051292
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠山 秀旦
(72)【発明者】
【氏名】松居 久登
(72)【発明者】
【氏名】合田 亘
(72)【発明者】
【氏名】中越 宏明
【テーマコード(参考)】
4F100
5E321
5J020
5J046
5J047
5J070
【Fターム(参考)】
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK19
4F100AK19C
4F100AK42
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4F100JG05
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5E321AA05
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5J020EA02
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5J046UA04
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5J047FD00
5J070AB24
5J070AD05
(57)【要約】
【課題】 軽量で指向性の向上した信号送受信器を提供する。
【解決手段】 ケース、制御回路、アンテナ、及びカバーを備えた信号送受信器であって、前記ケース及び前記カバーのうち少なくとも一方が下記の特徴1~4を全て具備することを特徴とする、信号送受信器。
特徴1:導電性の異なるA層とB層を交互に5層以上1000層以下積層した交互積層ユニットを含む。
特徴2:1GHz~1000THzの範囲でS21が12dB以上200dB以下である。
特徴3:熱可塑性樹脂を含む。
特徴4:密度が0.50g/cm
3以上2.50g/cm
3以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース、制御回路、アンテナ、及びカバーを備えた信号送受信器であって、前記ケース及び前記カバーのうち少なくとも一方が下記の特徴1~4を全て具備することを特徴とする、信号送受信器。
特徴1:導電性の異なるA層とB層を交互に5層以上1000層以下積層した交互積層ユニットを含む。
特徴2:1GHz~1000THzの範囲でS21の最小値が12dB以上200dB以下である部分を含む。
特徴3:熱可塑性樹脂を含む。
特徴4:密度が0.50g/cm3以上2.50g/cm3以下である。
【請求項2】
前記交互積層ユニットが電磁波吸収材料を含む、請求項1に記載の信号送受信器。
【請求項3】
前記電磁波吸収材料が非金属系材料である、請求項2に記載の信号送受信器。
【請求項4】
前記電磁波吸収材料がカーボンブラック、カーボンナノチューブ、及び炭素繊維のうち少なくとも一つを含む、請求項2または3のいずれかに記載の信号送受信器。
【請求項5】
前記ケース及び前記カバーのうち少なくとも一方が反射層を含んでなる、請求項1または2に記載の信号送受信器。
【請求項6】
前記ケース及び前記カバーの少なくとも一方の内側に1GHz以上1000THz以下の電磁波を照射して周波数ごとに電磁波の反射減衰量を測定し、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットしたときに、最も反射減衰量が大きいピークのピークトップにおける反射減衰量が5.0dB以上200dB以下である部分を有する、請求項1または2に記載の信号送受信器。
【請求項7】
前記交互積層ユニットの厚みd(m)と前記ピークトップにおける反射減衰量R(dB)が式1を満足する、請求項6に記載の信号送受信器。
式1:-3.0≦Log10(d×R)≦-1.0
【請求項8】
前記ケース及び前記カバーの少なくとも一方の内側に、表面抵抗率が1.0×105Ω/sq以上1.0×1015Ω/sq以下である部分を有する、請求項1または2に記載の信号送受信器。
【請求項9】
前記交互積層ユニットの面内方向の誘電率を30°間隔で測定した際の最大値と最小値の差が、前記最大値の0%以上20%以下である、請求項1または2に記載の信号送受信器。
【請求項10】
前記ケース及び前記カバーの少なくとも一方の内側に、1GHz以上1000THz以下の電磁波を照射して周波数ごとに電磁波の反射減衰量を測定し、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットしたときに、入射角0度でのピークトップの周波数と入射角45度でのピークトップの周波数の差が0GHz以上5GHz以下である部分を有する、請求項1または2に記載の信号送受信器。
【請求項11】
前記ケース及び前記カバーの少なくとも一方の内側に、1GHz以上1000THz以下の電磁波を照射して周波数ごとに電磁波の反射減衰量を測定し、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットしたときに、入射角0度でのピークトップにおける反射減衰量と入射角45度でのピークトップにおける反射減衰量の差が0dB以上10dB以下である部分を有する、請求項1または2に記載の信号送受信器。
【請求項12】
前記ケース及び前記カバーの少なくとも一方が、一方の面のS11と反対側の面のS11の差が8dB以上である部分を含む、請求項1または2に記載の信号送受信器。
【請求項13】
前記アンテナと前記ケースの距離、および前記アンテナと前記カバーの距離がいずれも1波長以上100波長以下である、請求項1または2に記載の信号送受信器。
【請求項14】
前記アンテナが送信アンテナと受信アンテナを備え、両者の距離が1波長以上あり、かつ前記送信アンテナと前記受信アンテナを結んだ直線状に前記交互積層ユニットを含む、請求項1または2に記載の信号送受信器。
【請求項15】
送信アンテナと受信アンテナ、または受送信アンテナを備え、前記交互積層ユニットの配置が下記の条件1~3のいずれかを満たす、請求項1または2に記載の信号送受信器。
条件1:前記送信アンテナと前記受信アンテナのうち後方に位置する方のアンテナの真横から前方に、前記交互積層ユニットが配置されている。
条件2:前記送信アンテナの真横に前記受信アンテナが位置し、かつ前記送信アンテナと前記受信アンテナの真横から前方に、前記交互積層ユニットが配置されている。
条件3:前記受送信アンテナの真横から前方に、前記交互積層ユニットが配置されている。
【請求項16】
請求項1または2に記載の信号送受信器を備え、前記ケースおよび前記カバーの少なくとも一方の重金属含有量が0.1質量%以下であり、非接触で物体の変位を検知する、センサー。
【請求項17】
前記物体が、生体、または生体の動きと連動する装具である、請求項15に記載のセンサー。
【請求項18】
下記の特徴1~4を全て具備することを特徴とする、信号送受信器用シート。
特徴1:導電性の異なるA層とB層を交互に5層以上1000層以下積層した交互積層ユニットを含む。
特徴2:1GHz~1000THzの範囲でS21が12dB以上200dB以下である。
特徴3:熱可塑性樹脂を含む。
特徴4:密度が0.50g/cm3以上2.50g/cm3以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で成形性に優れ、指向性の向上した信号送受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理速度の向上、AI技術の発展に伴い、自動運転技術の普及が爆発的に進んでいる。それに伴い自動運転技術に必要な各種センサーの開発も盛んに行われており、後側方レーダー(24GHz)や前方レーダー(77~79GHz)、車内レーダー(60GHz)などに多様な周波数の電磁波が用いられる。
【0003】
その一方で、同時に電気自動車、水素自動車化の流れも進んでおり、制御系(0.1~0.1GHz)や無線通信系(数GHz)から出る電磁波が、前記各種レーダーに与える電波障害も懸念されている。特に前方レーダーの設置位置がバンパー後方にある場合は、バンパーの意匠によって予期せぬ電磁波の反射・干渉が発生する場合がある。これを軽減する方法として、レーダー側方に電磁波吸収材を用いることで不要な電磁波を遮断する方法や(特許文献1)、レーダー後方に電磁波吸収材を用いる方法も開示されている(特許文献2)。
【0004】
また、世界で普及が進む5G通信技術および6G通信技術では、大容量かつ低遅延の通信、及び多数接続が可能となる一方で、使用する高周波電磁波の直進性が高く、従来の低周波電磁波のように障害物の裏まで回り込むことが期待できない。そのため、これらの通信技術を用いた電子機器を広いエリアで安定して使用可能とするには、多くの通信機器(基地局・中継器)を設置することが必要になるが、高密度に設置された通信機器からの電磁波が想定しない方向へ放射されることで、電子機器に障害を発生したり、健康被害を発生させたりする懸念があった。
【0005】
上記のような電子機器の障害等を軽減するために、信号送受信器(レーダー、通信機器)に用いられる電磁波吸収材としては、例えば、基材内に導電性材料や磁性材料を含有させ、内部に進入した電磁波を誘導電流として吸収することで電磁波エネルギーを損失させるものがある。このような電磁波吸収材は、カーボン材料やフェライト等の金属材料をゴムなどの誘電体ポリマーに含有させることで吸収性能を発現している(特許文献3~5)。さらに、高導電層と低導電層を交互に積層することで、薄膜で高い電磁波吸収性能を発現する技術も公開されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2004-312696号公報
【特許文献2】WO2021/199914号公報
【特許文献3】特開2003-158395号公報
【特許文献4】特開2017-118073号公報
【特許文献5】特開2019-057730号公報
【特許文献6】WO2021/100566号公報
【特許文献7】WO2017/221992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示したような構成では側方の電磁波は遮蔽できるものの、後方への対策は特になされていない。一般的に用いられるようなアルミ筐体であれば後方からの電磁波は遮蔽できるものの、アンテナ自身から出る電磁波による自家中毒が問題となる。また、車載用途では走行距離に影響する軽量性や意匠性、基地局用途では街中に馴染む外観とするための成形性が求められるが、アルミ筐体とした場合には重量が重くなる、細かい成形が困難、価格が高いなどの課題が存在する。また、特許文献2に示した技術であればアンテナ自身の電磁波は吸収できるが、樹脂層厚みが2.3mmと厚いためやはり成形性が悪く、またメッシュパターンの形成が必要となるため生産性を上げることが難しい。特許文献6に示した技術であれば1mm以下の厚みで電磁波を吸収し、生産性高く製造できるが、電磁波の遮蔽能力は十分でないため、アルミ筐体の代わりとして用いることは困難であった。すなわち、これらの技術では、電磁波遮蔽性、成形性、軽量性を備えた信号送受信器を得ることが困難であった。
【0008】
上記の背景を踏まえ、本発明は電磁波遮蔽性、成形性、軽量性を備えた信号送受信器を提供することがその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成からなる。すなわち、ケース、制御回路、アンテナ、及びカバーを備えた信号送受信器であって、前記ケース及び前記カバーのうち少なくとも一方が下記の特徴1~4を全て具備することを特徴とする、信号送受信器である。なお、ここで信号送受信機とは、電磁波を送受信する機器、及び電磁波を送信または受信する機器全般を指す。
特徴1:導電性の異なるA層とB層を交互に5層以上1000層以下積層した交互積層ユニットを含む。
特徴2:1GHz~1000THzの範囲でS21の最小値が12dB以上200dB以下である部分を含む。
特徴3:熱可塑性樹脂を含む。
特徴4:密度が0.50g/cm3以上2.50g/cm3以下である。
【0010】
また、本発明の信号送受信機は以下の態様とすることもでき、これを搭載してセンサーとすることもできる。また、本発明の信号送受信機用シートとして以下の態様のものが挙げられる。
(1) ケース、制御回路、アンテナ、及びカバーを備えた信号送受信器であって、前記ケース及び前記カバーのうち少なくとも一方が下記の特徴1~4を全て具備することを特徴とする、信号送受信器。
特徴1:導電性の異なるA層とB層を交互に5層以上1000層以下積層した交互積層ユニットを含む。
特徴2:1GHz~1000THzの範囲でS21の最小値が12dB以上200dB以下である部分を含む。
特徴3:熱可塑性樹脂を含む。
特徴4:密度が0.50g/cm3以上2.50g/cm3以下である。
(2) 前記交互積層ユニットが電磁波吸収材料を含む、(1)に記載の信号送受信器。
(3) 前記電磁波吸収材料が非金属系材料である、(2)に記載の信号送受信器。
(4) 前記電磁波吸収材料がカーボンブラック、カーボンナノチューブ、及び炭素繊維のうち少なくとも一つを含む、(2)または(3)のいずれかに記載の信号送受信器。
(5) 前記ケース及び前記カバーのうち少なくとも一方が反射層を含んでなる、(1)~(4)のいずれかに記載の信号送受信器。
(6) 前記ケース及び前記カバーの少なくとも一方の内側に1GHz以上1000THz以下の電磁波を照射して周波数ごとに電磁波の反射減衰量を測定し、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットしたときに、最も反射減衰量が大きいピークのピークトップにおける反射減衰量が5.0dB以上200dB以下である部分を有する、(1)~(5)のいずれかに記載の信号送受信器。
(7) 前記交互積層ユニットの厚みd(m)と前記ピークトップにおける反射減衰量R(dB)が式1を満足する、(6)に記載の信号送受信器。
式1:-3.0≦Log10(d×R)≦-1.0
(8) 前記ケース及び前記カバーの少なくとも一方の内側に、表面抵抗率が1.0×105Ω/sq以上1.0×1015Ω/sq以下である部分を有する、(1)~(7)のいずれかに記載の信号送受信器。
(9) 前記交互積層ユニットの面内方向の誘電率を30°間隔で測定した際の最大値と最小値の差が、前記最大値の0%以上20%以下である、(1)~(8)のいずれかに記載の信号送受信器。
(10) 前記ケース及び前記カバーの少なくとも一方の内側に、1GHz以上1000THz以下の電磁波を照射して周波数ごとに電磁波の反射減衰量を測定し、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットしたときに、入射角0度でのピークトップの周波数と入射角45度でのピークトップの周波数の差が0GHz以上5GHz以下である部分を有する、(1)~(9)のいずれかに記載の信号送受信器。
(11) 前記ケース及び前記カバーの少なくとも一方の内側に、1GHz以上1000THz以下の電磁波を照射して周波数ごとに電磁波の反射減衰量を測定し、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットしたときに、入射角0度でのピークトップにおける反射減衰量と入射角45度でのピークトップにおける反射減衰量の差が0dB以上10dB以下である部分を有する、(1)~(10)のいずれかに記載の信号送受信器。
(12) 前記ケース及び前記カバーの少なくとも一方が、一方の面のS11と反対側の面のS11の差が8dB以上である部分を含む、(1)~(11)のいずれかに記載の信号送受信器。
(13) 前記アンテナと前記ケースの距離、および前記アンテナと前記カバーの距離がいずれも1波長以上100波長以下である、(1)~(12)のいずれかに記載の信号送受信器。
(14) 前記アンテナが送信アンテナと受信アンテナを備え、両者の距離が1波長以上あり、かつ前記送信アンテナと前記受信アンテナを結んだ直線状に前記交互積層ユニットを含む、(1)~(13)のいずれかに記載の信号送受信器。
(15) 送信アンテナと受信アンテナ、または受送信アンテナを備え、前記交互積層ユニットの配置が下記の条件1~3のいずれかを満たす、(1)~(13)のいずれかに記載の信号送受信器。
条件1:前記送信アンテナと前記受信アンテナのうち後方に位置する方のアンテナの真横から前方に、前記交互積層ユニットが配置されている。
条件2:前記送信アンテナの真横に前記受信アンテナが位置し、かつ前記送信アンテナと前記受信アンテナの真横から前方に、前記交互積層ユニットが配置されている。
条件3:前記受送信アンテナの真横から前方に、前記交互積層ユニットが配置されている。
(16) (1)~(15)のいずれかに記載の信号送受信器を備え、前記ケースおよび前記カバーの少なくとも一方の重金属含有量が0.1質量%以下であり、非接触で物体の変位を検知する、センサー。
(17) 前記物体が、生体、または生体の動きと連動する装具である、(16)に記載のセンサー。
(18) 下記の特徴1~4を全て具備することを特徴とする、信号送受信器用シート。
特徴1:導電性の異なるA層とB層を交互に5層以上1000層以下積層した交互積層ユニットを含む。
特徴2:1GHz~1000THzの範囲でS21が12dB以上200dB以下である。
特徴3:熱可塑性樹脂を含む。
特徴4:密度が0.50g/cm3以上2.50g/cm3以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の信号送受信器は熱可塑性樹脂を含み、また導電性の異なる交互積層ユニットを含む。そのため軽量かつ成形性に優れながら、電磁波を吸収することでミリ波レーダーの指向性を高めることが可能になる。またS21の最小値を12dB以上とすることで、後方からの不要電磁波を遮蔽しレーダーへの悪影響を抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施態様に係る信号送受信器を、レーダー発信方向を含む面で切断した際の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の信号送受信器は、ケース、制御回路、アンテナ、及びカバーを備えた信号送受信器であって、前記ケース及び前記カバーのうち少なくとも一方が下記の特徴1~4を全て具備することを特徴とする、信号送受信器である。以下、本発明の信号送受信器について詳細に説明する。
特徴1:導電性の異なるA層とB層を交互に5層以上1000層以下積層した交互積層ユニットを含む。
特徴2:1GHz~1000THzの範囲でS21の最小値が12dB以上200dB以下である部分を含む。
特徴3:熱可塑性樹脂を含む。
特徴4:密度が0.50g/cm3以上2.50g/cm3以下である。
【0014】
本発明の信号送受信器は、ケース、制御回路、アンテナ、及びカバーを備えた信号送受信器である。ケースは制御回路とアンテナを収納し、カバーはケース内に外部ノイズとなる電磁波が届かないようにする役割を担っており、ケースとカバーが所謂筐体となる。アンテナは信号となる電磁波を送信および/または受信する役割を担っている。制御回路は、アンテナへの高周波の信号の送出、アンテナにて受信された電磁波の受信処理(例えば、検波処理や周波数解析処理)、外部機器との通信を行う。
【0015】
図1は本発明の一実施態様に係る信号送受信器を、レーダー発信方向を含む面で切断した際の概略断面図である。本態様においては、ケース1は制御回路4とアンテナ3を収納しており、カバー2が制御回路4とアンテナ3を保護している。また、ケース1の101~103は順に反射層、吸収層、ねじ止めしろを表し、カバー2の201~205は順に反射層、吸収層、ねじ止めしろ、加飾層、支持層を表す。
【0016】
本発明の信号送受信器は、ケースまたはカバーの少なくとも一方が、導電性の異なるA層とB層を交互に5層以上1000層以下積層した交互積層ユニットを含むことが重要である。「A層とB層を交互に積層する」とは、例えばA層を最表層に有する構成の場合は、A(BA)n、もしくは、A(BA)nB(nは2以上の整数)の規則的な配列に従って積層された状態を指す。導電性の異なるA層とB層を交互二積層する方法については後述する。なお、以下A層とB層を交互に積層した交互積層ユニットを単に「交互積層ユニット」ということがある。
【0017】
A層やB層を構成する材料は、透明/不透明、可撓性/剛性、平坦/非平坦、有機(高分子)材料/無機(金属)材料など特に限定されないが、加工性の観点から、A層やB層は可撓性を示す有機高分子材料を主成分とすることが好ましい。ここで主成分とは、層全体を100質量%としたときに50質量%を超えて100質量%以下含まれる成分をいい、以下主成分については同様に解釈することができる。また、当該交互積層ユニットの表面には、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を用いたハードコートなどを設けることもできる。
【0018】
交互積層ユニットにおけるA層とB層は、導電性が異なる。A層とB層の導電性が異なるとは、A層、B層の各層の層方向(シートの平面方向)への導電性や絶縁性の指標である表面抵抗値が異なっていることを意味する。より具体的には、A層とB層の表面抵抗率のうち、高い方の表面抵抗率をα[Ω/sq]、低い方の表面抵抗率をβ[Ω/sq]とした際に、α/βが1.1以上であることをいう。層界面での分極による電磁波吸収効果を高める観点から、好ましくはα/βが1.0×102以上、より好ましくは1.0×105以上、さらに好ましくは1.0×109以上である。なお、α/βの上限値は実現可能性の観点から1.0×1020となる。また、表面抵抗率が1.0×105[Ω/sq]以上である層が表層に存在することで電磁波吸収性を良好に発現するため、A層およびB層のうち、導電性の低い層は表面抵抗率が1.0×105[Ω/sq]以上、導電性の高い層は表面抵抗率が1.0×105[Ω/sq]未満を示しつつ、前記の表面抵抗値の比を示すことがより好ましい。
【0019】
A層とB層の導電性を異なる層とする方法は特に限られるものではなく、例えば、A層とB層に主成分として互いに比誘電率の異なる材料を用いる方法や、A層とB層の主成分を同一としつつ各層が含有する導電性材料や磁性材料の種類や含有量を異なるようにする方法を採用することができ、両者を組み合わせることもできる。特に、目的の周波数帯域へ反射減衰ピークの周波数を調整するためには、A層とB層の導電性を細かく調整することができる構成が好ましく、A層とB層の比誘電率が異なっている上で、導電性/磁性材料を含有させて表面抵抗値の差を変化させる構成が最も好ましい。ここで述べるところの比誘電率とは、真空での誘電率(電気定数)を基準とした際の、誘電率の大きさを表す無次元量のことである。以下、比誘電率のことを誘電率と記載する。
【0020】
A層やB層における可撓性を示す有機高分子材料としては、ケースやカバーの加工性や製膜性の観点から、ゴム等のエラストマー樹脂や熱可塑性樹脂であることが好ましく、熱可塑性樹脂であることがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、ポリ(4-メチルペンテン)、ポリイソブチレン,ポリイソプレン、ポリブタジエン,ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン,ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリノルボルネン、ポリシクロペンテンなどに代表されるポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などに代表されるポリアミド系樹脂、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキサンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキセンコポリマー、エチレン/アルキルアクリレートコポリマー、エチレン/アクリルメタクリレートコポリマー、エチレン/ノルボルネンコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー,プロピレン/ブタジエンコポリマー、イソブチレン/イソプレンコポリマー、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマーなどに代表されるビニルモノマーのコポリマー系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド,ポリアクリロニトリルなどに代表されるアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートなどに代表されるポリエステル系樹脂、ポリエチレンオキシド,ポリプロピレンオキシド、ポリアクリレングリコールに代表されるポリエーテル系樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロースに代表されるセルロースエステル系樹脂、ポリ乳酸,ポリブチルサクシネートなどに代表される生分解性ポリマー、その他、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリシロキサン、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は、各層とも1種類単独で利用しても、2種類以上のポリマーブレンドあるいはポリマーアロイとして利用してもよい。ブレンドやアロイを実施することで、1種類の熱可塑性樹脂からは得られない耐熱性、粘度特性、層間界面での密着性などを得ることができる。
【0021】
各層の主成分として用いる材料は、誘電率が低いほど広い周波数帯域の電磁波を吸収する材料となる。本発明の信号送受信器では、ケースやカバーが導電性の異なる層を交互に積層した交互積層ユニットを含むことで、導電性の異なるA層とB層の界面において、マクロな観点で積層シート内の誘電分極を引き起こし、より電磁波吸収性を高める効果を得ることができる。そこで、交互積層ユニットを構成する各層の主成分として誘電率の低い材料を選定すると、比較的広い周波数帯域にわたり高い吸収性を示す材料を得ることができる。
【0022】
誘電率が低い樹脂としては、誘電率として3.0以下を示す樹脂を選定することが好ましく、汎用性などを考慮すると、中でもポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、ビニルモノマーのコポリマー系樹脂などの熱可塑性樹脂から選択されることが好ましい。反対に、より狭帯域で急峻なシールド性を達成するためには、各層の主成分として用いる材料は誘電率が高いことが好ましく、例えば、ナイロン樹脂(誘電率:3.5~5.0)、セルロース系樹脂(誘電率:6.7~8.0)、フッ素樹脂(誘電率:4.0~8.0)などを選択することが好ましい。なお、誘電率は後述の方法で測定することができる。
【0023】
ゴムなどエラストマー樹脂を交互積層する手法としては、例えば、組成の異なる樹脂AおよびBを圧延プレスすることでシートを作成し、異なるシートを交互に重ね合わせて熱圧着することで、交互積層ユニットを得る方法を挙げることができる。
【0024】
一方で、熱可塑性樹脂を交互積層する手法としては、例えば、熱可塑性樹脂、および、適宜添加剤を分配/分散混合して調製したマスターペレットを、熱可塑性樹脂A,Bとして2台以上の押出機を用いて異なる流路からそれぞれ送り出し、公知の積層装置であるマルチマニフォールドタイプのフィードブロックやスタティックミキサーなどを用いて積層する方法を挙げることができる。特に、本発明での交互積層ユニットは、後述の通り、積層厚みの分散が小さく厚みが揃っていることが好ましいことから、高精度な積層を実現するために、微細スリットを有するフィードブロックを用いて交互積層ユニットを形成することが好ましい。スリットタイプのフィードブロックを用いて積層体を形成する場合、各層の厚みおよびその分布は、スリットの長さや幅を変化させて圧力バランスを整えることで達成可能となる。スリットの長さとは、スリット板内でA層とB層を交互に流すための流路を形成する櫛歯部の長さのことである。
【0025】
交互積層ユニットの積層数は、5層以上1000層以下であることが重要である。上記の規則的な配列のいずれにおいても、導電性を示す層が2層以上含まれるためには5層以上の構成であることが必要であり、従来の単膜品では導電性材料の高濃度添加やシート厚みを厚くしないと達成できなかったのに対し、5層以上交互積層することで、導電性の異なる層界面での誘電分極が生じる。そのため、交互積層ユニットの積層数が5層以上であることによりシート内部に電流が通りやすくなり、導電性材料の抵抗による損失を受けて、より高い吸収性を有する電磁波吸収材料を得ることができる。具体的には、積層構造とすることで誘電分極が発生する上、材料が面に平行な方向に配列しやすくなるため、交互積層ユニットの導電性・誘電率が高まることにより、従来単膜品では高濃度に導電性材料を含有させなければ達成できなかった導電性・誘電率を、低濃度の導電性材料でも発現できる効果が得られる。
【0026】
電磁波吸収性を向上させる観点から、交互積層ユニットの積層数は、好ましくは9層以上であり、より好ましくは31層以上である。積層数が多い方が、誘電分極を起こす層が増えることに加え、同じ厚みの交互積層ユニットの場合、層数を増やすことで、層内の導電性材料の充填密度が高まることで導電性材料間の距離が狭まり、添加した導電性材料間の電子移動効率も上がる。そのため、積層数が多い方が電磁波吸収材料としての効果が高まる、すなわち反射減衰量が高くなることから好ましい。
【0027】
このように、積層数が多いほど誘電分極の効果が高まるため、交互積層ユニットの積層数には特に上限を設けないが、微細スリットを有するフィードブロックを使用する場合、層数が増えることで装置が大型化することによる製造コスト増加が生じる。さらに、フィラーの分散状態や形状、サイズによっては、積層数が増えて1層1層の厚みが薄くなった場合に、チキソトロピー性を示す材料を使用することで、層厚みがより大きく乱れて本来の高遮蔽かつ急峻な電磁波吸収性が損なわれる場合もある。以上の点から、積層数の上限としては、現実的には1001層である。
【0028】
本発明の信号送受信器は、ケース及びカバーのうち少なくとも一方が交互積層ユニットを含む必要があるが、交互積層ユニットを単独で含んでいてもよく、複数個の交互積層ユニットを粘着層や熱圧着などで重ね合わせて含んでいてもよい。また、交互積層ユニット上には、別の電磁波を反射する反射層(反射層)や電磁波を吸収する層など異なる機能を有する層を設ける形で含んでいてもよい。複数個の交互積層ユニットを重ね合わせて使用する場合、異なる周波数帯域にピークトップを有する交互積層ユニット同士を重ね合わせて使用し、所望の複数の周波数帯域を同時に吸収する材料としてもよい。
【0029】
交互積層ユニットは電磁波吸収を目的とすることから、
図1の態様であればアンテナ3から見てレーダー発信方向5に存在するカバーの加飾層204やカバーの支持層205以外の部位に用いることが好ましい。加飾層204や支持層205は本発明の信号送受信器に必須ではないが、車のバンパー前方や街中の街灯周辺など強度や意匠性が求められる場合に具備することができる。
【0030】
本発明の信号送受信器は、ケースまたはカバーの少なくとも一方が、1GHz~1000THzの範囲でS21の最小値が12dB以上200dB以下である部分を含む。ここでS21とは対象物の片面に入射角0度でTEM(transverse electro-magnetic)波を照射した場合に、反対側に漏れ出てくるTEM波の強度E1と入射波の強度E2の比の対数を-20倍した値(-20×Log10(E2/E1))である。S21の測定はネットワークアナライザを用いた自由空間法で行うことができ、その詳細は後述する。
【0031】
S21の最小値を12dB以上とすることで信号送受信器の外から飛来する電磁波を遮蔽することが可能になる。S21が12dB未満の場合には飛来した電磁波の一部が信号送受信機内部に侵入し、制御回路の誤作動につながる恐れがある。上記観点からS21の最小値は、好ましくは20dB以上、更に好ましくは30dB以上、特に好ましくは40dB以上である。S21の最小値の上限は特に指定しないが、信号送受信器のケースおよびカバーの厚みを考慮すると、200dBが現実的な範囲となる。
【0032】
また、周波数範囲は好ましくは1GHz以上1THz以下であり、さらに好ましくは1GHz以上0.3THz以下であり、最も好ましくは1GHz以上0.1THz以下である。周波数範囲をこれらの範囲とすることで、テラヘルツ帯域の通信を阻害することなくミリ波・マイクロ波帯域の不要電磁波を吸収することができるため好ましい。
【0033】
S21の最小値を12dB以上200dB以下又は上記の好ましい範囲とする方法としては、例えばケースとカバーの少なくとも一方に反射層を含ませる方法があげられる。ここで反射層とは周波数帯域1GHz~1000THzの範囲で電磁波の反射減衰量が1dB以下である周波数範囲を有する、又は/かつ表面抵抗率が1.0×105Ω/sq以下である層を指す。
【0034】
反射層としては、均一な組成の層であれば例えば、アルミニウム、銅、鉄、金、銀、白金、ニッケル、亜鉛、鉛などの金属箔や、ステンレス、真鍮などの合金箔、カーボン膜やPEDOT/PSSなどの非金属系導電膜があげられる。これらは接着層を介して貼り付ける方法や熱圧着する方法により設けることができる。またスパッタや蒸着でアルミニウム、銅、鉄、金、銀、白金、ニッケル、亜鉛、鉛などの金属を蒸着することで、反射層を形成することも好ましい。特に2種類以上の金属種を蒸着することで、薄膜かつ導電性や耐候性の高い反射層を形成することができる。非金属系導電膜の場合は特にPEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の分散体)のような可撓性を有する素材を用いることが好ましい。また、このような反射層の厚みを大きくすることでも、S21の最小値を大きくすることができる。反射層の厚みは10nm以上10μm以下が好ましく、50nm以上1μm以下が特に好ましい。この範囲とすることで良好な電磁波遮蔽性と薄膜化を両立することができる。
【0035】
一方、不均一系の組成であれば樹脂に導電性材料を高濃度に添加した層を設けることが好ましい。該反射層は、前記交互積層ユニットに含まれていてもよい。含まれている場合は各層の薄膜化による導電性材料間の電子移動効率の向上の効果も得られるが、反射減衰ピークの周波数の調整と両立させる必要がある。特に導電性が高く、成形性の高い材料として金属ナノ粒子を含有したペーストを塗布する方法が挙げられる。このような方法を用いることにより、金属ナノ粒子が網目構造となることで、成形後にも高い導電性を有することが期待できる。また、炭素繊維やカーボンナノチューブ、カーボンブラック、黒鉛、グラフェンといった非金属系導電性材料やアルミニウム、銅、鉄、金、銀、白金、ニッケル、亜鉛、鉛などの金属系粒子を含有したコンパウンドを用いることもできる。中でも非金属系導電性材料がマトリクス樹脂との親和性の観点から好ましい。マトリクス樹脂との親和性が低い場合は、樹脂-導電性材料間にボイドが発生したり、導電性材料の凝集が発生したりすることで導電性の低下につながる場合がある。また導電性の観点から、炭素繊維やカーボンナノチューブなどの筒状、繊維状の導電性材料がより好ましい。コンパウンドのマトリクス樹脂としてはゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などがあげられる。中でも成形性の観点から熱可塑性樹脂が好ましい。
【0036】
反射層が不均一系の組成の場合は、均一な組成の場合よりも反射層の厚みを大きくすることが電磁波遮蔽性のばらつき低減の観点から好ましく、1μmを超え200μm以下が好ましく、10μm以上100μm以下がより好ましい。薄すぎると粒子の偏在により電磁波の抜けが発生してしまう場合がある。
【0037】
本発明の信号送受信器では、ケース及びカバーのうち少なくとも一方が熱可塑性樹脂を含む。ケースやカバー熱可塑性樹脂を含むことで成形性が向上し、インサート成形や射出成形といった簡易な手法で細かい形状を作製することができる。熱可塑性樹脂は交互積層ユニット用に列挙したいずれの樹脂を用いることもできるが、成形性と耐候性の観点からポリエステル樹脂又はポリカーボネート樹脂が好ましい。また、これらを発泡シートとすることで強度と軽量性の両立を図ることも可能である。
【0038】
ケースやカバーには、成形性や軽量化に問題ない範囲で、金属やゴム、熱硬化性樹脂などを有する部分があっても問題なく、軽量化の観点から、全体積の50%以上100%以下が熱可塑性樹脂であることが好ましく、更に好ましくは80%以上である。ただし、熱可塑性樹脂をマトリクスとするコンパウンドを素材としている場合は、コンパウンド全体を熱仮想性樹脂として扱う。また、発泡シートのように熱可塑性樹脂が空隙を含む場合も、空隙部分も熱可塑性樹脂として体積を計算する。
【0039】
本発明の信号送受信器は、ケース及びカバーのうち少なくとも一方の密度が0.50g/cm3以上2.50g/cm3以下である。強度や通信機器(アンテナや制御回路)の設置位置の観点から、ケース及びカバーの両方の密度が0.50g/cm3以上2.50g/cm3以下であることが好ましい。これらの密度を2.50g/cm3以下とすることで、車の走行距離向上や通信機器の設置位置の選択肢の拡大に資することができる。また強度の観点から、これらの密度を0.50g/cm3以上とすることが必要である。なお、ケースやカバーの密度はJIS K7112-1980に記載の方法で測定することができ、その詳細は後述する。また、ケースやカバーの密度を0.50g/cm3以上2.50g/cm3以下とするには、このような密度となる素材を使用することや、空隙率を調整する方法を用いることができる。
【0040】
本発明の信号送受信器においては、交互積層ユニットが電磁波吸収材料を含むことが好ましい。交互積層ユニットが電磁波吸収材料を含むことで、反射減衰量を大きくすることができる。電磁波吸収材料は、1種類のみ含有しても良く、複数種の導電性材料を併用してもよい。電磁波吸収材料は、1次粒子のサイズが小さく溶融押出にも好適な非金属系材料から適宜選択することができる。無論、電磁波吸収材料として非金属系材料に限らなくてもよく、また、後述の磁性材料である無機金属系と併用して用いることもできる。無機金属系の材料のみを用いて押出機を利用した積層シート製膜を行うと、装置と導電性材料の金属同士の摩擦などにより材料粉砕、装置の欠損などの問題が生じる場合がある。また、後述するように、信号送受信器をバイタルセンサーなどのセンサーの部材として生体に近い場所で用いる場合には、金属アレルギーの懸念や、製造/廃棄時の環境負荷が大きくなる懸念がある。そのため、電磁波吸収材料のうち少なくとも1種は非金属系材料を含むことが好ましく、電磁波吸収材料が非金属系材料であることがより好ましい。粒子が金属であるかどうかは例えばエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)を用いる方法が挙げられる。同法における各金属に特有のピーク位置は、公知文献(例えばJ.McNab and A.Sandborg:The EDAX EDITOR, Vol. 14, No.1, p.37)に示されている。
【0041】
非金属系の電磁波吸収材料は導電性高分子系と無機カーボン系に大別される。導電性高分子系の材料としては、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリイソチアナフテン、ポリチオフェンなどがあげられる。導電性高分子では高い電磁波吸収性が得られにくく、次に説明する無機カーボン系の方が本発明の信号送受信器には好ましい。
【0042】
無機カーボン系の電磁波吸収材料としては、例えば、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック,ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック(球状カーボン)、単層ナノチューブ、多層ナノチューブ、カップ積み上げ型ナノチューブなどの円筒状カーボンであるカーボンナノチューブ、黒鉛,グラファイト,グラフェンなどの扁平状カーボン、その他、球状グラファイト、円筒状グラファイト、カーボンマイクロコイル、フラーレン、炭素繊維(長繊維、短繊維)などを使用できる。
【0043】
中でも、導電性を向上させることで電荷移動による電磁波吸収性能を高める観点から、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及び炭素繊維のうち少なくとも一つを含むことが好ましく、積層構造による面方向への粒子配列の効果を利用し、電磁波吸収材料が含有した層の導電性を向上するためには、一次構造(線状のストラクチャー)が発達しやすい導電性のカーボンブラックを使用することがより好ましい。また、層方向への導電性パスをより強く形成するために、任意な方向へストラクチャーが発達するカーボンブラックに加えて、構造が均一でアスペクト比の高いカーボンナノチューブや扁平状カーボンなどを併用してなることが好ましい。ストラクチャーの発達しやすい無機カーボン材料と構造の決まった無機カーボン材料を併用することで、両導電性材料の比率を振り分けて交互積層ユニットの吸収する周波数帯域を簡便に変化させることができる。
【0044】
本発明の信号送受信器の交互積層ユニットに好適に用いられるカーボンブラックとしては、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が150mL/100g以上であるカーボンブラックが挙げられる。DBP吸油量は、カーボンブラックのストラクチャーの発達度を示す指標である。この数値が大きい材料は、カーボンブラック粒子同士が直鎖上に繋がりやすく、それによりストラクチャー間に空隙が多く存在することを意味するため、より少量の含有量でも導電パスが形成され、交互積層ユニットに導電性を付与することができるため好ましい。上記観点からカーボンブラックのDBP吸油量は、より好ましくは200mL/100g以上、さらに好ましくは350mL/100g以上である。
【0045】
カーボンブラックのストラクチャーが発達し導電パスが形成されると、電磁波の照射を受けて電界が生じた際に、誘電体である基材と電磁波吸収材料との界面で電荷が蓄積され、電磁波エネルギーの熱エネルギーへの変換が行われることで、高い電磁波吸収性が発揮される。カーボンブラックのDBP吸油量の上限は特に限定されるものではないが、交互積層ユニットを構成する高分子材料中に分散した際にストラクチャーが破壊される場合がある点を考慮すると、800mL/100gとなる。なお、DBP吸油量はASTM D 2414-79に準じて測定することができる。このようなカーボンブラックとしては、例えばアセチレンブラック(例えば、デンカ社製、関東化学社製、メルク社製など)、ファーネスブラック(例えば、三菱ケミカル社製、旭カーボン社製、東海カーボン社製など)、ケッチェンブラック(例えば、ケッチェンブラックインターナショナル社製、ライオンスペシャリティケミカルズ社製など)などとして市販されているものを使用することができる。
【0046】
ストラクチャーを発達させる上記カーボンブラックと併用することができる無機カーボン系材料として、円筒状材料であるカーボンナノチューブや、黒鉛,グラファイト,グラフェン等の扁平状材料を使用することが好ましい。これは、マクスウェル-ワグナー効果として知られる、アスペクト比の高い導電性材料を厚み方向に分散させて電磁波吸収性を高める効果を得ることに加え、誘電性を示す樹脂基材(例えば、誘電率が低い樹脂として先に例示した、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、ビニルモノマーのコポリマー系樹脂といった熱可塑性樹脂基材)と導電性を示す材料との界面でのミクロな誘電分極を多く形成し、かつ、電磁波吸収材料として円筒状材料や扁平状材料を交互積層ユニット厚み方向に平行に揃えてこれらの分極を平行板コンデンサーのように並列し向かい合った態様とすることで、電磁波を照射して電界を加えた際に、多くの電荷が誘電体である基材と電磁波吸収材料界面で蓄積されやすくなり、交互積層ユニット内の導電性が高まる。このような作用により、電磁波が入射した際に電磁波吸収材料による抵抗を受けて、電磁波エネルギーが熱エネルギーへと変換されやすくなり、結果として、電磁波吸収性を高めることができる。
【0047】
この思想により、交互積層ユニットでのA層とB層の層界面形成に加え、層内でのポリマー基材と電磁波吸収材料との界面で形成される誘電分極も交互積層ユニットの各層の面方向に向いて並んでいることが好ましい。つまり、電磁波吸収材料が平面方向(層方向)に配列しやすい構造を有しているほど、延伸工程などを経ることで、このような態様となる可能性が高いことから、アスペクト比の高い材料である円筒形材料を併用して使用することが好ましく、本観点からカーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維が特に好適な材料である。
【0048】
添加量としては2%以上50%以下が好ましく、2%以上30%以下が更に好ましく、2%以上10%以下が特に好ましい。添加量が多いと樹脂が脆くなり成形性が低下する場合がある。また添加量が最適な量から大きくずれるとインピーダンスの整合が悪くなるため電磁波を十分に吸収できず指向性が低下する場合がある。
【0049】
併用することができる無機金属系の磁性材料としては、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、亜鉛などの金属単体、および、これらの金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属酸化窒化物、金属水酸化物、金属酸化ホウ化物などを使用することができる。透明な導電性金属酸化物として知られる、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)なども使用することができる。金属酸化物としては、酸化マグネシウムや酸化チタンなど、金属水酸化物としては水酸化カルシウムなども使用できる。これら無機金属系の磁性材料も、前記カーボン材料の思想と同じく、円筒状・扁平状の材料を使用することが、本交互積層ユニットにおいてより電磁波吸収性を高めることができることから好ましい。
【0050】
本発明の信号送受信器は、ケース及びカバーの少なくとも一方の内側に1GHz以上1000THz以下の電磁波を照射して周波数ごとに電磁波の反射減衰量を測定し、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットしたときに、最も反射減衰量が大きいピークのピークトップにおける反射減衰量が5.0dB以上200dB以下である部分を有することが好ましい。特に、アンテナから発信されたのち予期せぬ反射をしてノイズに繋がるサイドローブを抑制する観点からアンテナの発信周波数と反射減衰ピークの周波数の差が10GHz以下であることが好ましく、3GHz以下であることがさらに好ましく、1GHz以下であることが特に好ましい。反射減衰量の評価方法および定義は(特許文献6)に詳しく記載されており、測定方法は実施例の「(3)反射減衰量」に後述する(ここでいう反射減衰量は入射角0度(発信部と受信部が異なり厳密な入射角0度の測定が行えない帯域は入射角15度)で電磁波を照射したときの値とする。)。なお、以下「ケース及びカバーの少なくとも一方の内側に1GHz以上1000THz以下の電磁波を照射して周波数ごとに電磁波の反射減衰量を測定し、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットしたときに、最も反射減衰量が大きいピークのピークトップ」を単にピークトップということがある。
【0051】
反射減衰量が5.0dB以上の領域を有することにより、アンテナからの電磁波が筐体内で反射・干渉することに起因するサイドローブを軽減することができる。
図2に示すようにアンテナ3からは発信方向5以外にも電磁波が照射されているが、信号の送受信に用いられるのはメインローブ6のみであり、サイドローブ7や後方散乱8はメインローブ6の強度を低下させる上、ノイズの原因となる。ケース内面の反射減衰量が5dB未満の場合は後方散乱8がケース背面で反射してくることで、メインローブ6と干渉を起こし、メインローブ6の強度を不安定化させる。また、特に信号送受信器が車のバンパー後方に設置されている場合、カバー側面内側の反射減衰量が5dB以上であることにより、バンパー内面で電磁波が反射して信号送受信器に戻ってくることで生じる誤検知を軽減できる。
【0052】
また、反射減衰量の上限は特に規定されないが、高い減衰量を得るためには厚い電磁波吸収層または電磁波反射層が必要となることから200dBが現実的な上限と考える。以上まとめると、ケース及びカバーの内側の反射減衰量を5.0dB以上200dB以下とすることで、サイドローブと後方散乱の強度を抑えて、メインローブの強度が高い、つまり指向性の高い信号送受信器とすることができる。
【0053】
本発明の信号送受信器は、誤検知の軽減と成形性を両立する観点から、交互積層ユニットの厚みd(m)とピークトップにおける反射減衰量R(dB)が式1を満足することが好ましい。
式1:-3.0≦Log10(d×R)≦-1.0。
【0054】
交互積層ユニットが厚すぎる場合には成形が困難となり、追従不良が問題となる。一方で薄くすると反射減衰量が低下することで信号送受信器の指向性低下が低下し、誤検知に繋がる。すなわち、Log10(d×R)が小さいほど薄膜で成形性は良いが、電磁波吸収効果、指向性向上効果は小さくなり、強度も低くなる。一方でLog10(d×R)が大きくなるとその逆となる。各種厚みおよび反射減衰量のサンプルを作製し評価したところ、式1の範囲内の設計の交互積層ユニットとすることにより、成形性と指向性が信号送受信器に適した範囲とすることができることが判明した。上記観点から、Log10(d×R)は好ましくは-2.5以上-1.0以下であり、さらに好ましくは-2.5以上-1.6以下である。
【0055】
本発明の信号送受信器は、前記ケース及び前記カバーの少なくとも一方の内側に、表面抵抗率が1.0×105Ω/sq以上1.0×1015Ω/sq以下である部分を有することが好ましい。このような態様とすることで、周囲の雰囲気とインピーダンスを整合させ、電磁波吸収効果を高めることができる。インピーダンスが整合していない場合、電磁波は交互積層ユニットにたどり着く前に反射してしまい、電磁波吸収効果を十分に発揮することができない。同様の理由からケース及びカバーの内面から交互積層ユニットまでの間に、極端にインピーダンスの異なる層が存在しないことが好ましい。
【0056】
表面抵抗率が上記範囲である部分を有する態様とするためには、耐候性付与を兼ねたコーティングを施すことが好ましい。成形後に表面抵抗率を調整するための添加剤を含有する硬化性樹脂を塗布する方法や、交互積層ユニットともに表面抵抗率を調整するための添加剤を含有する熱可塑性樹脂を一体成形するといった方法も採用することができる。なお、表面抵抗率は公知の高抵抗率計(例えば、三菱化学(株)製 Hiresta-UP(MCP-HT450)等)を用いることができ、同装置を用いた場合の測定方法は後述する。
【0057】
本発明の信号送受信器は、予期せぬ反射による誤検知を軽減する観点から、交互積層ユニットの面内方向の誘電率を30°間隔で測定した際の最大値と最小値の差が、最大値の0%以上20%以下であることが好ましい。誘電率の評価は測定したい周波数に合わせて導波管若しくはレンズアンテナの治具を用い、電磁波発生装置から発せられる電磁波が導波管内もしくはレンズアンテナ間に設置した試料に入射した際の電磁波の反射・伝送特性を、既知のSパラメータ法に則って算出することで得られる。なお、測定装置や計算ソフトは測定や計算が可能なものであれば特に制限されず、例えば実施例に記載の装置やこれらの装置に付随の計算ソフト等を用いることができる。
【0058】
電磁波は等方性の電磁波だけではなく、偏光された電磁波が用いられることもある。しかしながら特に直線偏光した電磁波が、面内異方性のある電磁波吸収材料に入射した際には、偏光方向によって異なる吸収量を示すことがある。車載ミリ波レーダーなどの信号送受信器の筐体に面内異方性の大きい電磁波吸収材料を用いる場合には予期せぬ反射につながる恐れがあった。検討の結果、吸収量には主に誘電率が影響しており、交互積層ユニットの誘電率の異方性を20%以下に抑えることで、面内異方性による反射を抑えることができると分かった。具体的には面内方向の誘電率を30°間隔で測定した際の最大値と最小値の差が、前記最大値の0%以上20%以下の範囲である。好ましくは0%以上10%以下であり、更に好ましくは0%以上5%以下である。
【0059】
誘電率の異方性を該範囲内とする方法としては、異方性の少ない粒子を用いる方法が挙げられる。しかしながら前述の電磁波吸収材料の配列の観点からは異方性の高い粒子を用いることが好ましいため、成形条件や延伸工程を組み合わせることで、誘電率の異方性を上記範囲内とすることが最も好ましい。
【0060】
本発明の信号送受信器は、ケース及びカバーの少なくとも一方の内側に、1GHz以上1000THz以下の電磁波を照射して周波数ごとに電磁波の反射減衰量を測定し、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットしたときに、入射角0度でのピークトップの周波数と入射角45度でのピークトップの周波数の差が0GHz以上5GHz以下である部分を有することが好ましい。
【0061】
信号送受信器内には制御回路などがあるため、アンテナから発された電磁波が複雑に反射することが予想される。そのため、ケースおよびカバーの内面はどの入射角から電磁波が来ても設計通りの吸収することが求められる。具体的には入射角0度と入射角45度で吸収する周波数の差が5GHz以下であることが好ましい。さらに好ましくは3GHz以下である。
【0062】
入射角による吸収周波数のずれを上記範囲内とする方法としては、入射角が大きくなるほど見かけの誘電率を小さくする方法が挙げられる。一般的なλ/4電磁波吸収体(特許文献2など)では入射角が大きくなるほど、光路長が長くなり吸収する電磁波の波長が長く、周波数が小さくなる。ここで光路長とは光がある媒質中を進むときと同時間内に真空中を進む距離であり、実際の距離に誘電率の平方根を掛けて得られる値である。そこで交互積層ユニットの面内方向誘電率に比べて厚み方向誘電率を小さくすることで、入射角が大きくなるほど見かけの誘電率を小さくし、光路長の変化を抑え、ひいては吸収する周波数の変化を抑えることが可能になる。
【0063】
本発明の信号送受信器は、入射角によらず電磁波を吸収することで指向性・内部ノイズの吸収性を高める観点から、ケース及びカバーの少なくとも一方の内側に、1GHz以上1000THz以下の電磁波を照射して周波数ごとに電磁波の反射減衰量を測定し、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットしたときに、入射角0度でのピークトップにおける反射減衰量と入射角45度でのピークトップにおける反射減衰量の差が0dB以上10dB以下である部分を有することが好ましい。さらに好ましくは5dB以下である。
【0064】
入射角による反射減衰量の差を上記範囲内とする方法としては、前記の見かけの誘電率を小さくする方法に加えて、吸収する周波数の固定された磁性体を用いる方法が挙げられる。磁性体としては特許文献7のイプシロン酸化鉄をはじめカルボニル鉄、扁平軟磁性粒子など、ミリ波領域に対応した磁性体を用いることが必要になる。この場合は入射角が大きくなるほど電磁波が磁性体を通過する距離が増えるので反射減衰量が大きくなり、入射角による反射減衰量の低下を抑えることができる。
【0065】
またアスペクト比の高い導電性材料を用いる方法も挙げられる。導電性材料の抵抗による損失の効果が大きくなるため、電磁波が導電性材料を通過する距離が大きくなる場合(入射角が大きい場合)に反射減衰量向上の効果が大きくなる。逆に角度をつけるほど反射減衰量が大きくなってしまう場合は、アスペクト比の小さい導電性材料を用いたり、厚み方向の誘電率を高めたりすることで対応が可能である。
【0066】
本発明の信号送受信器は、制御回路の誤作動を軽減する観点から、ケース及びカバーの少なくとも一方が、一方の面のS11と反対側の面のS11の差が8dB以上である部分を含むことが好ましい。一方の面のS11と反対側の面のS11の差は、より好ましくは15dB以上であり、さらに好ましくは25dB以上である。上記観点から、一方の面のS11と反対側の面のS11の差の上限は特にないが、実現可能性の面で150dBとなる。
【0067】
なお、本発明の信号送受信器においては、制御回路の自己中毒を防ぐ観点から、S11が相対的に高い面(以下、面Aということがあり、その反対側の面を面Bということがある。)が制御回路側を向いていることが好ましい。このような態様とすることにより、面B側に飛来した電磁波が反射され制御回路の誤作動が抑制されるとともに、制御回路側で発生したノイズやアンテナのサイドローブが吸収されることで指向性が向上される。
【0068】
ケースやカバーが従来のアルミダイキャストのような両面反射の構成では、内部の自己中毒を防ぐことができず、また内面での反射により指向性が低下する場合がある。一方で、両面がいわゆるλ/4型の吸収体や磁性吸収体のような両面吸収の構成では、外部からの電磁波を十分に遮蔽することが困難となる場合がある。また、電磁波を十分に遮蔽するためにケースやカバー厚くすると、信号送受信器の重量化、内部に熱がこもることによる誤作動、及び成形性の低下に繋がる場合がある。
【0069】
ケースやカバーを面AのS11と面BのS11の差が8dB以上である態様とすることは、片面に反射体を設置し、反対側に吸収体を設けること達成することができる。反射体としては、例えば前記の導電性の高い層を設けることが、吸収体としては、例えば前記の交互積層ユニットを設けることが効果的である。
【0070】
本発明の信号送受信器は、想定した吸収量の実現と利便性の両立の観点から、アンテナとケースの距離、およびアンテナとカバーの距離がいずれも1波長以上100波長以下であることが好ましい。ここで波長とは、信号送受信器が発信する波長帯域のうち最も強度が高い波長を指す(但し、信号送受信器が信号(電磁波)を受信する機能のみの場合は、受信する波長帯域のうち最も強度が高い波長を指す。)。上記観点から、アンテナとケースの距離、およびアンテナとカバーの距離は、より好ましくは5波長以上20波長以下であり、さらに好ましくは8波長以上15波長以下である。
【0071】
本発明の信号送受信器に用いることができる交互積層ユニットは遠方界電磁波に対して安定した電磁波吸収特性を示すため、ノイズ発信源(制御回路やアンテナ)に近すぎると、想定した吸収量が得られない場合がある。また遠すぎる場合は送受信器のサイズが大きくなるため、利便性が悪くなる場合がある。よってギリギリ遠方界となる領域にケースやカバーを設置することが好ましい。
【0072】
本発明の信号送受信器の好ましい用途として、無線通信基地局・ルーター、センサー、レーダー、車や船舶、航空機などの移動機器、測定機器、医療関連の通信機器などがあげられる。特に5G通信のような高密度な通信が想定される場合や移動機器のミリ波レーダーのようなあらゆる方向から電磁波が飛来する可能性のある用途に好適に用いられる。本発明の信号送受信器は指向性の向上に特徴があるため、特に好ましくはミリ波レーダーのような非接触で物体の変位を検知するセンサーに用いることである。ミリ波レーダーの中でもバイタルセンサーや工程監視センサー等に好適に用いることができる。ここでバイタルセンサーとは生体、または生体の動きに連動する装具の動きを検知するセンサーであり、脈拍や呼吸、移動速度などを計測したり、対象者が測定範囲内に存在するか検知したりするものである。
【0073】
本発明のセンサーは、本発明の信号送受信器を備え、ケースおよびカバーの少なくとも一方の重金属含有量が0.1質量%以下であり、非接触で物体の変位を検知することを特徴とする。また、本発明のセンサーにおいては、物体が、生体、または生体の動きと連動する装具であることが好ましい。本発明の信号送受信器は熱可塑性樹脂により反射特性を実現していることから、金属の含有量を低減させることができる。そのため、本発明の信号送受信器を備えるセンサーは、重金属による重量増加や環境負荷を抑えることに加え、動きを検知する対象が生体やその動きと連動する装具である場合の金属アレルギー対策の面でも優れている。なお、ここで重金属とは比重が4以上の金属のことをいう。
【0074】
上記観点から、ケースおよびカバーの少なくとも一方の重金属含有量は、好ましくは0.05質量%以下であり、より好ましくは0.02質量%以下である。ケースおよびカバーの少なくとも一方の重金属含有量の下限は理論上0質量%、すなわち重金属を全く含まない態様となる。なお、本発明のセンサーにおいては、ケースおよびカバーの少なくとも一方の重金属含有量が0.1質量%以下又は上記の好ましい範囲であればよいが、上記観点からは両方において重金属含有量が0.1質量%以下又は上記の好ましい範囲であることが好ましい。
【0075】
ケースやカバーの重金属含有量を0.1質量%以下又は上記の好ましい範囲とすることは、電磁波吸収材料として非金属の粒子を使用することや、蒸着厚みを小さくすることで達成することができる(なお、両者を組み合わせてもよい。)。カバーやケースに含まれる重金属量は、例えば熱重量分析装置(TGA)で評価できる。より具体的には、大気下、500℃で30分処理することで有機物を燃焼させ、残った灰分を重金属量と判断することができる。
【0076】
また、本発明の信号送受信器は、アンテナが送信アンテナと受信アンテナを備え、両者の距離が1波長以上あり、かつ送信アンテナと受信アンテナを結んだ直線状に交互積層ユニットを含むことが好ましい。ここで送信アンテナとは、信号(電磁波)を発するアンテナをいい、受信アンテナとは信号(電磁波)を受信するアンテナをいう。このような構成とすることで、送信(受信)アンテナのサイドローブが受信(送信)アンテナに干渉したり、受信(送信)アンテナから反射される電磁波が送信(受信)アンテナに干渉したり、マルチパスや外部発信源からの不要な電磁波が受信(送信)アンテナに干渉したりすることを防ぐことができる。
【0077】
また、本発明の信号送受信機は、送信アンテナと受信アンテナ、または受送信アンテナを備え、前記交互積層ユニットの配置が下記の条件1~3のいずれかを満たすことが好ましい。
条件1:送信アンテナと受信アンテナのうち後方に位置する方のアンテナの真横から前方に、交互積層ユニットが配置されている。
条件2:送信アンテナの真横に受信アンテナが位置し、かつ送信アンテナと受信アンテナの真横から前方に、前記交互積層ユニットが配置されている。
条件3:受送信アンテナの真横から前方に、交互積層ユニットが配置されている。
【0078】
交互積層ユニットは上記条件1~3のいずれかを満たすように配置されていることが好ましく、制御回路上に支持体を設けることがより好ましい。ここでアンテナの真横とは該アンテナを含む平面上の位置であってアンテナとは接触しない位置を指し、前方とは該アンテナを含む平面によって区切られる二つの空間のうち電波の発信方向を含む空間を指す。また、「真横から前方」とは、真横のみ、前方のみ、真横から前方にわたる態様全般を指す。
【0079】
このような態様とすることで、不要な電磁波がなるべく交互積層ユニットの正面から入射するため、交互積層ユニットが効果的に不要な電磁波を吸収し、干渉抑制の効果を向上させることができる。吸収に加えて電磁波反射の効果を得るために、電磁波反射層を交互積層ユニットと支持体の間に設ける、または支持体自体を電磁波反射体とすることも好ましい。
【0080】
次に、本発明の信号送受信機用シートについて説明する。本発明の信号送受信機用シートは、下記の特徴1~4を全て具備することを特徴とする。
特徴1:導電性の異なるA層とB層を交互に5層以上1000層以下積層した交互積層ユニットを含む。
特徴2:1GHz~1000THzの範囲でS21が12dB以上200dB以下である。
特徴3:熱可塑性樹脂を含む。
特徴4:密度が0.50g/cm3以上2.50g/cm3以下である。
【0081】
なお、特徴1~4は信号送受信機の特徴1~4と同じであり、その好ましい範囲や達成手段はこれまでに記載したとおりである。本発明の信号送受信機用シートを信号送受信機のケースやカバーに適用することで、本発明の信号送受信機を容易に得ることができる。
【0082】
次に、例に挙げて、本発明の信号送受信器の好ましい製造方法を以下に説明するが、本発明は係る例に限定して解釈されるものではない。
【0083】
先ず、ゴムや熱可塑性エラストマーなどを基材のベースポリマーとして利用する場合の交互積層ユニットを例に挙げて説明する。最初に、ベースポリマーに電磁波抑制材料を所定量配合し、ニーダーやバンバリーミキサー、ミルミキサー、ロールミル、ジェットミル、ボールミルなどの公知の装置で混錬し含有させることで、電磁波吸収材料含有ベースポリマー混合物を得る。ベースポリマー単体、もしくは、作成した電磁波吸収材料含有ベースポリマーを、それぞれバッチプレスによる圧延や溶融押出により、所望の厚みのシートへ成形する。その後、作製したA層にあたるシート、ならびにB層にあたるシート(両者の組成は互いに異なる。)を、交互に合計5層以上重ね合わせ、プレスまたはラミネートすることにより交互積層ユニットを得る。このときの融着温度は、使用する樹脂の種類にもよるが、150℃~400℃が好ましく、250~380℃がより好ましい。但し、プレスでは一般に薄膜シートを作製することは難しく、ラミネートによる重ね合わせによりシートの厚みが厚くなる傾向があるため、交互積層ユニットは以下の熱可塑性樹脂を用いた交互積層ユニットの製造方法を用いることが好ましい。
【0084】
次に、本発明において好ましい樹脂である可撓性を示す熱可塑性樹脂を使用する場合の交互積層ユニットの製造方法を例に挙げて説明する。最初に、ペレットの状態で準備された熱可塑性樹脂ならびに所定量の電磁波吸収材料を二軸押出機で混錬してガット状に押し出し、これを水槽内で冷却してチップカッターでカットすることで電磁波吸収材料含有のマスターペレットを形成する。このとき、電磁波吸収材料は樹脂と共にドライブレンドした上でホッパーより計量フィードしてもよく、押出機の任意の位置からサイドフィーダを用いて溶融した樹脂中にサイドフィードしてもよい。フィード方法については、前記に限られるものではなく、使用する電磁波吸収材料の比重や形状に併せて適宜選択することができる。
【0085】
A層ならびにB層を構成するそれぞれの熱可塑性樹脂若しくは熱可塑性樹脂組成物は、互いにその組成が異なる。これらの熱可塑性樹脂若しくは熱可塑性樹脂組成物を熱風中あるいは真空下で乾燥した後に別々の押出機に供給し、押出機において熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱溶融する。その後、ギヤポンプなどで押出量を均一化して熱可塑性樹脂若しくは熱可塑性樹脂組成物を吐出し、フィルターなどで異物や変性した樹脂などを除去する。
【0086】
続いて、これらの熱可塑性樹脂若しくは熱可塑性樹脂組成物を所望の積層数へと積層できる多層積層装置で積層させ、ダイにて目的の形状に成形し、シート状に吐出させる。ダイから吐出されたシート状物は、キャスティングドラム等の冷却体上に押出され、冷却固化されることでキャストシートとなる。この際、キャストシート自体が導電性を示すことから、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出しキャスティングドラムなどの冷却体に密着させ急冷固化させる方法、ニップロールにて冷却体に密着させて急冷固化させる方法、もしくは、液体をキャストドラム上に塗布し、吐出されたシートをキャストに密着させて平面性を高める方法、などを用いることが好ましい。ただし、本発明において、最表層に電磁波吸収材料を含まない層が配置される場合は、静電印加によるSIキャスト法を用いることが出来る。
【0087】
多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の交互積層ユニットを効率よく得るためには、微細スリットを有するフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため熱劣化による異物発生量が少なく、積層数が極端に多い場合でも高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。さらにこの装置には、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため任意の層厚みを達成することが容易となることや、積層工程中に樹脂流の効果で粒子を積層シート面方向に配向させることが容易となること等の利点もある。電磁波吸収材料を添加する場合には、スリットを流れる樹脂の流れによって、電磁波吸収材料が層内で分散配列しやすくなり、誘電率向上の一助となる場合がある。
【0088】
スリットタイプのフィードブロックを用いて積層シートを作製する場合、各層の厚みおよびその分布は、スリットの長さや幅を変化させて圧力バランスを整えることで調整可能となる。スリットの長さとは、スリット板内でA層とB層を交互に流すための流路を形成する櫛歯部の長さのことである。また、フィードブロックで積層体を形成した後、スタティックミキサーを介して積層数が倍増するように重ね合わせて積層数を増やす方法も好適に利用できる。
【0089】
得られたキャストシートは、必要に応じて長手方向および幅方向に二軸延伸することができる。二軸延伸を行う場合は、逐次に二軸延伸しても、同時に二軸延伸してもよい。また、さらに必要に応じて長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
【0090】
先ず、先に長手方向に延伸して幅方向に延伸する逐次二軸延伸について説明する。ここで、長手方向への延伸とは、シートに長手方向の分子配向を与えるための一軸延伸を指し、通常は、ロールの周速差により施される。この延伸は、1段階で行ってもよく、複数のロール対を使用して多段階に行ってもよい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、1.1~7.0倍が好ましく、1.5~4.0倍が特に好ましい。また、延伸温度としてはシートを構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+100℃の範囲内に設定することが好ましい。このようにして得られた一軸延伸積層シートは、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、上部に積層する膜との密着性を向上するためのプライマー層を形成することもできる。インラインコーティングの工程において、プライマー層は片面に塗布してもよく、両面に同時あるいは片面ずつ順に塗布してもよい。
【0091】
幅方向の延伸とは、シートに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常はテンターを用いて、シートの両端をクリップで把持しながら搬送して行う。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、1.1~7.0倍が好ましく、1.5~5.0倍が特に好ましい。また、延伸温度としてはシートを構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。こうして二軸延伸された積層シートは、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を施され、均一に徐冷された後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、低配向角およびシートの熱寸法安定性を付与するために熱処理から徐冷する際に、長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理などを併用してもよい。
【0092】
続いて、同時二軸延伸の場合について説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストシートに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。インラインコーティングの工程において、コート層はシートの片面に塗布してもよく、両面に同時あるいは片面ずつ順に塗布してもよい。
【0093】
次に、キャストシートを同時二軸テンターへ導き、シートの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機(テンター)としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式のもの等があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式のものが好ましい。延伸の倍率は樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として2.0~50倍が好ましく、特に4.0~20倍がより好ましい。延伸速度は同じ速度でもよく、異なる速度で長手方向と幅方向に延伸してもよい。また、延伸温度としては積層ユニットを構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。
【0094】
こうして同時二軸延伸されたシートは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷する際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行ってもよい。熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することもできる。
【0095】
さらに、交互積層ユニットの最表面には、電磁波反射を起こすなどの目的で、導電性の高い反射層を積層することができる。この時、適した導電性を示す材料を含有させたコーティング層を塗布してもよく、粘着シートなどを介して異なる樹脂層/メッシュ層などを積層してもよい。また、シート金属被覆技術として使用される、物理蒸着、スパッタリング(平面または回転マグネトロンスパッタリングなど)、蒸発(電子ビーム蒸発など)、化学蒸着、有機金属化学蒸着、プラズマ強化/支援/活性化化学蒸着、イオンスパッタリング等で樹脂/金属層を必要な機能に合わせて適宜積層することもできる。
【0096】
物理蒸着を行う場合は1×10-2Pa以下に減圧した蒸着器内でアルミなど導電性金属のフィラメントまたはチップ、ペレットを沸点以上に加熱し、蒸発した金属が交互積層ユニット表面に吸着固化することで反射層を形成することができる。
【0097】
カバーの前面など電磁波吸収性能がなくてもよい部分は熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いて、射出成形や真空圧空成形などの手法を用いて作成することができる。好ましい熱可塑性樹脂としてはポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ABS樹脂、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリルレートなどがあげられる。また熱硬化性樹脂としてはエポキシ、フェノール、メラミン、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミドなどがあげられる。中でも成形性と強度の観点からポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエステルが特に好ましい。
【0098】
カバー側面に電磁波吸収性能を持たせる場合には、電磁波吸収性能の無い材料で作製したカバーの側面に電磁波吸収性能を持たせた交互積層ユニットを貼り付けることができる。粘着剤を用いる方法や真空圧空成形により一体成形する方法が挙げられる。
【0099】
ケースに電磁波吸収性能および電磁波遮蔽性能を持たせる場合には交互積層ユニットを真空圧空成形にて所望の形状に成形できる。例えば遠赤外線ヒーターを用いて、交互積層ユニットの表面温度が交互積層ユニットに用いている樹脂のうち軟化点温度が最も高い樹脂の軟化点温度より30℃高くなるまで加熱し、該軟化点温度程度まで加熱した金型を押し付け、金型と交互積層ユニット間を減圧し、交互積層ユニットの金型とは反対側の面を加圧することで成形される。ケースのサイズは制御回路およびアンテナが収まればよく、用途によってサイズは異なるが例えば車載用ミリ波レーダーや携帯可能な5G通信機器などに用いる場合は深さ3cm、幅15cm、奥行き10cm程度の箱型にすることができる。カバーとの接続のために穴や段差を付けておくこともできる。また外部コネクタ用の穴を設けることもできる。また強度や耐候性を高めるためのシート体を交互積層ユニットに重ねた状態で成形することもできる。強度を高めるシート体としてはフィラー強化熱可塑性樹脂や熱可塑性プリプレグなどがあげられる。
【0100】
制御回路は外部との通信を行うデジタル信号処理ICチップおよび外部コネクタ、全体制御マイコン、電源、受送信回路、ミリ波変調モジュール、アンテナコネクタなどを用途に応じて回路基板に実装することで作製できる。アンテナはチップアンテナ、パターンアンテナ、アレーアンテナなどをアンテナ基板上に貼り付けることで作成できる。指向性向上の観点からはアレーアンテナ、特に位相の調整が可能なフェーズドアレーアンテナを用いることができる。アンテナ基板と回路基板は同一でもよいが、制御回路からのノイズを遮断するためにアンテナ基板と回路基板の間に電磁波吸収層または金属板を設けることができる。
【0101】
制御回路及びアンテナをケース内に設置する際は粘着剤または接着剤を用いる方法、ねじ止めする方法、オスメス嵌合接続装置を用いる方法が挙げられる。粘着剤や接着剤としては耐候性や耐振動性の高いエポキシ系接着剤、ウレタン系粘着剤を用いることができる。
【0102】
カバーとケースの接合についても粘着剤または接着剤を用いる方法、ねじ止めする方法、オスメス嵌合接続装置を用いる方法を用いることができる。粘着剤または接着剤としては、電磁波の漏れを防ぐために導電性のある粘着剤や接着剤を好適に用いることができる。また電磁波吸収性能のある交互積層ユニットを接合部に挟み込むことによっても電磁波の漏れを抑制することができる。
【実施例0103】
以下、実施例に沿って本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0104】
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
【0105】
(1)S21
ケースおよびカバーのそれぞれに対し、測定周波数ごとに、下記のとおり測定ユニット・測定方法を変更して解析した。
【0106】
(1-1)1GHz~40GHz周波数帯域
アジレント・テクノロジー(株)製のベクトルネットワークアナライザ(E8361A)を用いた。0.5GHz~18GHzの周波数帯域は外径φ7mm、内径φ3.04mmのドーナツ状である同軸導波管を、18~26.5GHzの周波数帯域は4.32mm×10.67mmの長方形である矩形導波管を、26.5~40GHzの周波数帯域は内部形状が3.56mm×7.11mmの長方形である矩形導波管を、それぞれ用いた。サンプルを、打ち抜き加工し、前記各導波管の内部に垂直に挿入して測定した。測定間隔は、各周波数帯域に対して200点測定できるように設定した。
【0107】
(1-2)40~110GHz周波数帯域
100mm角のサンプルを用いた。キーコム社製の周波数変化法を利用したレンズアンテナ方式の比誘電率・減衰量測定装置LAF-26.5Aを用いて、33~50GHz(WR-22)、50~75GHz(WR-15)、75~110GHz(WR-10)の各周波数帯域に対して誘電率を測定した。なお、当該測定方法では33~40GHzの値も測定されるが、33GHz以上40GHz未満の周波数帯域における誘電率は、(1-1)における測定データを用いた。
【0108】
(1-3)110GHz~1000THz周波数帯域
30mm角のサンプルを用いた。周波数ごとのテラヘルツレーザーから射出した電磁波をサンプルに入射角0度で入射させ、透過したレーザー光の強度を解析した。テラヘルツレーザーはRM9-THz(Ophir Optronics Solutions社製、0.11~30THz)、SLS2-3L(THORLABS社製、30~100THz)、U4100(日立ハイテクサイエンス社製、100THz~1000THz)を用い、検出器はTeraPyro(日本レーザー社製、0.11~30THz)、S401C(THORLABS社製、30~100THz)、U4100(日立ハイテクサイエンス社製、100THz~1000THz)を用いた。透過高強度を入射光強度で割り、10を底とした対数をS21とした。
【0109】
(2)密度
ケースおよびカバーのそれぞれから1辺が5cmである正方形サンプルを5枚切りだし、それぞれJIS K7112-1980に基づいて電子比重計SD-120L(ミラージュ貿易(株)製)を用いて測定した。得られた計5点の測定値の相加平均を求め、当該シートの密度とした。
【0110】
(3)反射減衰量
S21と同様の評価装置において、サンプル測定前に3mmのアルミニウム金属板を設置して入射した電磁波が全反射する状態でS11が0dBとなるよう校正を行った。その後サンプルを設置し、ケースまたはカバーの内面となる側から電磁波を照射し、入射角0度で入射した電磁波に対して反射した電磁波の強度比を表すS11のSパラメータ値を用いて反射減衰ピークを解析した。入射角45度の場合は、port1、port2の2つのアンテナを用いてS21のSパラメータ値を用いて反射減衰ピークを解析した。110GHz~1000THzの領域については発信部と受信部が異なり厳密な入射角0度の測定が行えないため、入射角15度で評価結果を入射角0度の結果として用いた。反射高強度を入射光強度で割り、10を底とした対数をS11として反射減衰ピークを解析した。同様に入射角を45度としても測定を行った。
【0111】
(4)交互積層ユニット厚み
サンプルの厚みは、ケースおよびカバーのそれぞれからミクロトームを用いてサンプル面と垂直な方向の断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H-7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でサンプルの断面を観察し、断面写真を撮影、交互積層ユニットの層構成およびアルミ蒸着層の厚みを測定した。なお、場合によっては、コントラストを高く得るために、RuO4やOsO4などを使用した染色技術を用いた。
【0112】
(5)表面抵抗率
以下、「(5-1)高抵抗値測定」、「(5-2)低抵抗値測定」に示す方法で各層の表面抵抗値を測定し、大きい方をα、小さい方をβとし、α/βを算出した。なお、交互積層ユニットの内部の層を評価する場合は、表面の層の厚さ分、研磨機で表面を研磨してから行った。研磨条件は、研磨紙#800~#10000、研磨液は水で行った。
【0113】
(5-1)高抵抗値測定
抵抗値の高い領域(1.0×106~1.0×1013)に対しては、三菱化学(株)製の高抵抗率計Hiresta-UP(MCP-HT450)を用いて計測した。ケースおよびカバーのそれぞれから10cm四方にカットしたサンプルの表面に対し、URSプローブ(MCP-HTP14)を押し当てて、JIS K 6911(1995)に準拠して抵抗値を測定した。測定位置を変化させながらn数5で測定し、平均値を測定値とした。
【0114】
(5-2)低抵抗値測定
抵抗値の低い領域(1.0×10-1~1.0×106)に対しては、三菱化学(株)製の低抵抗率計Loresta-EP(MCP-T360)を用いて計測した。10cm四方にカットしたサンプルの表面に対し、ASPプローブ(MCP-TP03P)を押し当てて、JIS K 7194(1994)に準拠して抵抗値を計測した。測定位置を変化させながらn数5で測定し、平均値を測定値とした。
【0115】
(6)誘電率(交互積層ユニットの面内方向の誘電率を30°間隔で測定した際の最大値と最小値の差)
アジレント・テクノロジー(株)製のベクトルネットワークアナライザ(E8361A)を用いて以下の手順で測定した。まず、サンプルを打ち抜き加工し、内部形状が3.56mm×7.11mmの長方形である矩形導波管の内部に垂直に挿入してサンプルのSパラメータを測定した。その後、サンプルの複素誘電率をニコルソンロスモデルにて算出し、得られた複素誘電率の誘電率実部を誘電率とした。同様に、26.5~40GHzの周波数範囲で67.5MHzおきに行い、得られた値より誘電率の平均値を計算した。上記測定を、30°ずつサンプルの打ち抜き角度を変更し、1サンプルに付き12点で測定を行い、最大値と最小値の差が、前記最大値の何%であるかを算出した。
【0116】
なお樹脂の誘電率を測定する際は、融点から融点+20にペレットを加熱し、厚み0.5mmのシート状にプレス成形したサンプルを用いた。
【0117】
(7)指向性・内部ノイズ遮蔽性評価
全電波無響室内のターンテーブル上に作製した信号送受信器を設置し、3m離れた位置に送受信アンテナを配置した。ベクトルネットワークアナライザ(アンリツ社製 ME7838A)のPort1に送受信アンテナからの入出力を接続した。信号送受信器より79GHzの電磁波を10dBmの強度で発信しながらターンテーブルを回転させ、1度おきに送受信アンテナで受け取る電磁波強度を測定した。信号送受信器の正面を0度、背面を180度として時計回りに測定を行った。0度の電磁波強度を0dBとして指向性パターンを描画し、下記基準で指向性と内部ノイズ遮蔽性を評価した。
【0118】
(7-1)指向性
15~40度および320~345度の範囲の電磁波強度の最大値で判断した。
◎:-50dB未満
〇:-50dB以上-40dB未満
△:-40dB以上-20dB未満
×:-20dB以上
(7-2)内部ノイズ遮蔽性
90~270度の範囲の電磁波強度の最大値で判断した。
〇:-70dB未満
△:-70dB以上-50dB未満
×:-50dB以上。
【0119】
(8)外部ノイズ遮蔽性評価
指向性・内部ノイズ遮蔽性と同様の装置構成で評価を行った。具体的には、送受信アンテナより79GHzの電磁波を0dBmの強度で発信しながら、信号送受信器を乗せたターンテーブルを回転させ、1度おきに信号送受信器で受け取る電磁波強度を測定し、90~270度の範囲の電磁波強度の最大値で以下の基準により判断した。
〇:-70dB未満
△:-70dB以上-50dB未満
×:-50dB以上。
【0120】
(9)内部ノイズ吸収性
作成した信号送受信器を全電波無響室内に設置して評価した。具体的には、信号送受信器より発信強度10dBmで電磁波を照射した場合の、信号送受信器の受信強度を測定し、下記基準により評価した。
◎:-30dBm未満
〇:-30dBm以上-20dBm未満
△:-20dBm以上-10dBm未満
×:-10dBm以上。
【0121】
(10)成形性(成形テスト)
真空成形機(成光産業株式会社製300X)にて、下記条件でサンプルあたり3回の成形を行い、成形後の外観を目視で確認することにより以下の評価を行った。なお、加熱は赤外線ヒーターにて行い、温度はサンプルにヒートラベルを貼り付けて判断した。
加熱時間:30秒
加熱温度:110℃
真空ポンプ圧力:0.17MPa
成形の形状:幅70mm、長さ70mm、深さ20mmの箱型。
〇:いずれのサンプルも辺と頂点に密着しておりしわがない。
△:1つまたは2つのサンプルで辺の部分に空間が残っている、または頂点付近に空気が残りしわになっている。
×:3回とも辺の部分に空間が残っている、または頂点付近に空気が残りしわになっている。
【0122】
(11)微細変位評価精度
信号送受信器の正面、3m離れた位置にいるポロシャツを着た人の脈拍による変位を測定した。周波数は79GHz帯域を使用し、1分間測定した。信号送受信器が検知する反射波の位相の時間変化をフーリエ変換し、最大強度のピークを脈拍による変位と判断した。同時に接触式の脈拍計(タニタ社製 手首式血圧計 BP-A11)で脈拍を測定し、以下の指標で評価した。
〇:接触式との差が10%未満
△:接触式との差が10%以上20%以下
×:接触式との差が20%を超えた。
【0123】
(12)DBP給油量
積層シートを基材の樹脂が溶解できる溶媒に溶解し、抽出・分離したカーボン系導電性粒子に対し、Brabender社製のアブソープトメータC型を利用し、ASTM D2414(2019年)に準拠して計測した。ミキサー内に投入したカーボン系導電性粒子を回転数125[min-1]で混錬しながら、DBPを4[mL/min]の滴下速度で滴下し、得られた粘度カーブを基に解析されたDBP吸油量を読み取った。
【0124】
(交互積層ユニットの製造に用いた樹脂等)
交互積層ユニットの製造には、以下の成分を用いた。
樹脂1:メルトフローレイト3.0を示すホモ・ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製“ノバテック”(登録商標)FY6、誘電率2.3)
樹脂2:IV0.78のポリエチレンテレフタレート(溶融粘度800Pa・s、誘電率3.2)
樹脂3:ポリビニリデンフルオリド(溶融粘度300Pa・s)(Arkema社製“KYNER”(登録商標)710、誘電率7.1)
粒子1:一次粒子径が40nm、DBP吸油量360のカーボンブラック
粒子2:平均粒径200nmの銀粒子(NanoXact社製NCXAGPD200、アスペクト比1.1)
粒子3:比表面積350m2/gの酸化グラフェン粒子(アスペクト比80)
粒子4:平均径10nm、平均長1.5μmカーボンナノチューブ粒子。
【0125】
(実施例1)
(交互積層ユニット)
90質量部の樹脂1に対し、10質量部の粒子1をサイドフィードし、二軸押出機混錬を介して、導電性マスターペレットを作製した。A層側に用いる樹脂として樹脂1を、B層側に用いる樹脂として、前記導電性マスターペレットを用いた。準備した樹脂1、導電性マスターペレットをそれぞれ、ペレット状で別々の二軸押出機へ投入し、両者とも270℃で溶融させて混練した。混錬条件は、吐出量に対するスクリュー回転数が0.7になるように設定した。次いで、9層のフィードブロックにて合流させたのちスクエアミキサーを3回通した後、Tダイから冷却ロール上にキャストし、25℃に調整したニップロールを押し付けて積層比(A/B)1.0で厚さ方向に交互に65層積層された厚さ1mmの交互積層ユニットとした。
【0126】
(ケース)
前記交互積層ユニットを真空成形機(成光産業株式会社製300X)にて120度で深さ20mm、底面積70×70mmの箱型に成形した。その際カバーとの接合のためにねじ止めしろを設けた。続いて外側に100nm厚みでアルミ蒸着を行った。更にメッキ層保護のためにエポキシ樹脂によるコーティングを施し、ケース側面に接続用の小穴(直径3mm)を設けた。
【0127】
(カバー)
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂を射出成形により厚み1mm、深さ10mm、底面積69×69mmの箱型に成形した。ケースと同様に接合のためにねじ止めしろを設けた。4方向の内側面にアルミ蒸着を施し、10×68mmの正方形に裁断した交互積層ユニットを貼り付けた。
【0128】
(制御回路、アンテナ)
アンテナおよび制御回路はミリ波レーダーモジュール(Acconeer社製A111、中心周波数60GHz)を用いた。
【0129】
(信号送受信器)
ケース背面にミリ波レーダーモジュールを熱伝導性接着剤(Henkel社製)で設置し、ケースとカバーのねじ止めしろに穴をあけ、ねじで固定した。
【0130】
評価結果を表1に示す。
【0131】
(実施例2~15、比較例1)
交互積層ユニットの製造条件を表1のとおりとした以外は、実施例1の通りに信号送受信器を作製した。評価結果を表1に示す。なお、蒸着厚みの調整は蒸着時間により、層数の調整はフィードブロックの層数及びミキサーの有無により、交互積層ユニットの厚みの調整は冷却ロールの回転速度により行った。
【0132】
(実施例16)
90質量部の樹脂1に対し、10質量部の粒子4をサイドフィードし、二軸押出機混錬を介して、高導電性マスターペレットを作製した。樹脂1、導電性マスターペレット、高導電性マスターペレットをそれぞれA層、B層、C層とした。樹脂1、導電性マスターペレット、高導電性マスターペレットをそれぞれ、ペレット状で別々の二軸押出機へ投入し、いずれも270℃で溶融させて混練した。混錬条件は、吐出量に対するスクリュー回転数が0.7になるように設定した。次いで、樹脂1と導電性マスターペレットを9層のフィードブロックにて合流させてスクエアミキサーを3回通すことにより交互積層ユニットを形成後、高導電性マスターペレットが中央に来るようにピノールで合流させた(
図3 符号9:交互積層ユニット 符号10:C層)。Tダイから冷却ロール上にキャストし、25℃に調整したニップロールを押し付けて積層比(A/B/C=1.0:1.0:0.1)で交互積層ユニットがC層を挟んで2枚積層された、厚さ2.1mmの積層体とした。以降はアルミ蒸着を行わない以外は実施例1の通りに信号送受信器を作製した。評価結果を表1に示す。
【0133】
(実施例17)
ミリ波レーダーとしてエスタカヤ社製T18PE_01030103_2D(中心周波数79GHz)を用いる以外は実施例1と同様にして信号送受信器を作製した。評価結果を表1に示す。
【0134】
(実施例18)
ケース及びカバーの底面を55×70mmとし、カバーの深さを10mm、ケースの深さを10mmとして貼り付ける交互積層ユニットのサイズを調整した以外は実施例17と同様にして信号送受信器を作製した。評価結果を表1に示す。
【0135】
(実施例19)
ケース及びカバーの底面を160×160mmとし、カバーの深さを10mm、ケースの深さを70mmとして貼り付ける交互積層ユニットのサイズを調整する以外は実施例17と同様にして信号送受信器を作製した。評価結果を表1に示す。
【0136】
(実施例20)
図4、5に示す態様の信号送受信器を作製した。より具体的には送信アンテナ11と受信アンテナ12の中央部分に交互積層ユニット9と支持体13を設置する以外は実施例17と同様にして信号送受信器を作製した(
図4、5)。評価結果を表1に示す。なお、
図4、5において符号4、204、205は順に制御回路、加飾層、支持層を表す。
【0137】
(比較例2)
アルミ蒸着をケース、カバーともに行わない以外は実施例1の通りに信号送受信器を作製した。評価結果を表1に示す。
【0138】
(比較例3)
ケースをアルミダイキャストで作製し、カバーをアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂の成形体のみとした以外は実施例1の通りに信号送受信器を作製した。評価結果を表1に示す。
【0139】
【0140】
表中に記載の密度の値はケースの値である。但し、カバーの密度については、比較例3において2.50g/cm3を超えた以外、すべての実施例と比較例で0.50g/cm3以上2.50g/cm3以下であった。実施例16においては、合計層数が65層の交互積層ユニットがC層を介して2つ存在している。
本発明により、軽量で指向性が高くノイズ遮蔽・吸収性に優れた信号送受信器を提供することができる。本発明の信号送受信器は上記特性に優れるため、センサー、電子機器、交通機関等に好適に用いることができる。