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特開2023-145383家庭用温水を提供するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145383
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】家庭用温水を提供するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/02 20220101AFI20231003BHJP
   F24H 1/12 20220101ALI20231003BHJP
   F24H 15/238 20220101ALI20231003BHJP
   F24H 15/242 20220101ALI20231003BHJP
   F24H 15/32 20220101ALI20231003BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20231003BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20231003BHJP
   F24H 1/20 20220101ALI20231003BHJP
   F24H 15/248 20220101ALI20231003BHJP
   F24H 15/429 20220101ALI20231003BHJP
   F24H 15/281 20220101ALI20231003BHJP
   F24H 15/212 20220101ALI20231003BHJP
   F24H 15/176 20220101ALN20231003BHJP
【FI】
F24H4/02 B
F24H1/12 Z
F24H15/238
F24H15/242
F24H15/32
F28D20/02 E
F24H4/02 G
F24H1/18 H
F24H1/20 Z
F24H15/248
F24H1/12 A
F24H15/429
F24H15/281
F24H15/212
F24H15/176
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023043040
(22)【出願日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】22164659
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー オルキス
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス フリーマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージアナ カワリー
(72)【発明者】
【氏名】デュアン ウー
【テーマコード(参考)】
3L034
3L122
【Fターム(参考)】
3L034BA14
3L034BA33
3L034BA38
3L122AA03
3L122AA23
3L122AA46
3L122AA53
3L122AA62
3L122EA09
3L122GA06
(57)【要約】
【課題】家庭用温水を提供する際に中断時間無しに温水を提供する。
【解決手段】家庭用温水を提供するためのシステム、及びこのシステムを使用する方法が提供される。システムは、ヒートポンプと、水道水供給部と、水道水供給部を出る流体ラインとヒートポンプを出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する熱交換器と、ヒートポンプに接続される熱エネルギー貯蔵装置と、異なる運転モードを有し、これらの運転モード間で選択し、選択された運転モードを基にヒートポンプを制御するように構成されるコントローラとを含む。第1運転モードではヒートポンプから熱交換器にではなく熱エネルギー貯蔵装置に熱エネルギーが提供されるが、第2運転モードではヒートポンプから熱交換器に熱エネルギーが提供される。第2運転モードに切替わるようにコントローラが構成されることにより、このシステム及び方法は、家庭用温水を連続的に、即ち中断時間無しに提供できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家庭用温水(10)を提供するためのシステムであって、
a)ヒートポンプ(1)と、
b)水道水供給部(2)と、
c)前記水道水供給部(2)を出る流体ラインと前記ヒートポンプ(1)を出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する熱交換器(3)と、
d)前記ヒートポンプ(1)に接続される熱エネルギー貯蔵装置(4)と、
e)前記ヒートポンプ(1)から、前記熱交換器(3)にではなく前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に熱エネルギーが提供される第1運転モードと、
f)前記ヒートポンプ(1)から前記熱交換器(3)に熱エネルギーが提供される第2運転モードと、
g)少なくとも前記第1運転モードと前記第2運転モードとの間で選択するように構成されるとともに、選択された運転モードを基に前記ヒートポンプ(1)を制御するように構成されるコントローラ(5)と
を含むシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記コントローラ(5)は、前記第2運転モードにおいて、好ましくは、
i)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の熱エネルギーが前記加熱済み水道水に伝達されるように、或いは、
ii)前記加熱済み水道水の熱エネルギーが前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に伝達されるように、
加熱済み水道水が前記熱交換器(3)から前記熱エネルギー貯蔵装置(4)内へ流れることができるように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシステムであって、前記コントローラ(5)は、
i)家庭用温水の積極的な要求が無く、前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、第1運転モードに切替わるように構成される、及び/又は、
ii)家庭用温水の積極的な要求が高く、前記ヒートポンプ(1)が作動中である又は作動中でない場合、或いは、家庭用温水の要求が低く、前記ヒートポンプ(1)が作動中である場合に、第2運転モードに切替わるように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のシステムであって、前記ヒートポンプ(1)から前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に及び前記熱交換器(3)に熱エネルギーの提供されない第3運転モードを含み、前記コントローラ(5)は、好ましくは、家庭用温水の積極的な要求が低い場合、及び/又は、前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の充満状態が事前設定済み閾値以上であり前記ヒートポンプ(1)が運転されてはならない場合に、前記第3運転モードに切替わるように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のシステムであって、
i)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)から前記システムの家庭用温水排出口への流体の体積流量を検知することにとって適切な流体流れ検知センサ(7)、及び/又は、
ii)前記水道水供給部(2)の水を加熱するための抵抗加熱器(14)であって、前記コントローラ(5)は、好ましくは、家庭用温水の積極的な要求が高い場合に、前記抵抗加熱器(14)を有効にするように構成される、抵抗加熱器、及び/又は、
iii)廃水から回収されるエネルギーにより前記水道水供給部(2)の水を加熱するための手段であって、好ましくは前記システム内で前記熱交換器(3)の上流に設置される手段
を更に含むことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のシステムであって、前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態を判定するように構成される充満状態装置(6)を更に含み、前記コントローラ(5)が、好ましくは、
i)前記充満状態装置(6)により判定された充満状態を基に前記ヒートポンプ(1)を制御するように構成される、及び/又は
ii)判定された前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、前記第1運転モードに切替わるように構成される、及び/又は、
iii)判定された前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成される、及び/又は、
iv)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態が事前設定済み閾値以上である場合に、前記ヒートポンプ(1)から前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に及び前記熱交換器(3)に熱エネルギーの提供されない第3運転モードに切替わるように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のシステムであって、前記コントローラ(5)は、
i)温水消費装置(14、15)による大量の家庭用温水の必要性がある場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、前記温水消費装置(14、15)が、好ましくは大量の温水の必要性を前記コントローラ(5)に伝えるように構成されるとともに、特に好ましくは台所の流し(14)、浴槽(15)、洗濯機、食洗機、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、及び/又は、
ii)家庭用温水要求予測が大量の家庭用温水の必要性を予測する場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、好ましくは、前記コントローラ(5)が前記予測を遂行するように構成される、及び/又は、
iii)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)から前記システムの家庭用温水排出口への体積流量が或る閾値超になり、前記システムの前記家庭用温水排出口が大量の家庭用温水排出に関連する場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、前記体積流量が、好ましくは前記システムの流体流れ検知センサ(7)により検知され、該流体流れ検知センサが、検知された体積流量を前記コントローラ(5)に伝えるように構成されるとともに、特に好ましくは流量計、圧力センサ、温度センサ、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、及び/又は、
iv)直接的ユーザ入力が大量の家庭用温水の必要性を伝える場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、前記直接的ユーザ入力が、好ましくは前記システムの入力装置により検知され、該入力装置が、大量の家庭用温水の必要性を前記コントローラ(5)に伝えるように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のシステムであって、前記熱エネルギー貯蔵装置(4)が
i)相変化材料熱エネルギー貯蔵装置であり、前記相変化材料熱エネルギー貯蔵装置が、好ましくは該相変化材料熱エネルギー貯蔵装置内に組み込まれる熱交換器を含み、該熱交換器が、前記ヒートポンプ(1)から前記相変化材料熱エネルギー貯蔵装置への熱伝達を促進する、又は、
ii)貯水タンク、好ましくはカプセル化された相変化材料を含有する貯水タンクであることを特徴とするシステム。
【請求項9】
家庭用温水(10)を提供するための方法であって、以下のステップ、
a)システムを提供するステップであって、このシステムが、
ヒートポンプ(1)と、
水道水供給部(2)と、
前記水道水供給部(2)を出る流体ラインと前記ヒートポンプ(1)を出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する熱交換器(3)と、
前記ヒートポンプ(1)に接続される熱エネルギー貯蔵装置(4)と、
前記ヒートポンプ(1)から、前記熱交換器(3)にではなく前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に熱エネルギーが提供される第1運転モードと、
前記ヒートポンプ(1)から前記熱交換器(3)に熱エネルギーが提供される第2運転モードと、
少なくとも前記第1運転モードと前記第2運転モードとの間で選択するように構成されるコントローラ(5)と
を含む、ステップと、
b)選択された運転モードを基に前記コントローラ(5)により前記ヒートポンプ(1)を制御するステップと
を含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記方法において、前記コントローラ(5)は、前記第2運転モードにおいて、好ましくは、
i)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の熱エネルギーが前記加熱済み水道水に伝達されるように、或いは、
ii)前記加熱済み水道水の熱エネルギーが前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に伝達されるように、
加熱済み水道水が前記熱交換器(3)から前記熱エネルギー貯蔵装置(4)内へ流れることができるように構成されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の方法であって、前記方法において、前記コントローラ(5)は、
i)家庭用温水の積極的な要求が無く、前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、第1運転モードに切替わるように構成される、及び/又は、
ii)家庭用温水の積極的な要求が高く、前記ヒートポンプ(1)が作動中である又は作動中でない場合、或いは、家庭用温水の要求が低く、前記ヒートポンプ(1)が作動中である場合に、第2運転モードに切替わるように構成されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の方法であって、前記方法において提供される前記システムが、前記ヒートポンプ(1)から前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に及び前記熱交換器(3)に熱エネルギーの提供されない第3運転モードを含み、前記方法において、前記コントローラ(5)は、好ましくは、家庭用温水の積極的な要求が低い場合、及び/又は、前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の充満状態が事前設定済み閾値以上であり前記ヒートポンプ(1)が運転されてはならない場合に、前記第3運転モードに切替わるように構成されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項9又は10に記載の方法であって、前記方法において提供される前記システムが、
i)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)から前記システムの家庭用温水排出口への流体の体積流量を検知することにとって適切な流体流れ検知センサ(7)、及び/又は、
ii)前記水道水供給部(2)の水を加熱するための抵抗加熱器(14)であって、前記方法において、前記コントローラ(5)は、好ましくは、家庭用温水の積極的な要求が高い場合に、前記抵抗加熱器(14)を有効にするように構成される、抵抗加熱器、及び/又は、
iii)廃水から回収されるエネルギーにより前記水道水供給部(2)の水を加熱するための手段であって、好ましくは前記システム内で前記熱交換器(3)の上流に設置される手段
を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項9又は10に記載の方法であって、前記方法において提供される前記システムが、前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態を判定するように構成される充満状態装置(6)を更に含み、前記方法において、前記コントローラ(5)が、好ましくは、
i)前記充満状態装置(6)により判定された充満状態を基に前記ヒートポンプ(1)を制御するように構成される、及び/又は、
ii)判定された前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、前記第1運転モードに切替わるように構成される、及び/又は、
iii)判定された前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成される、及び/又は、
iv)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態が事前設定済み閾値以上である場合に、前記ヒートポンプ(1)から前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に及び前記熱交換器(3)に熱エネルギーの提供されない第3運転モードに切替わるように構成されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項9又は10に記載の方法であって、前記方法において、前記コントローラ(5)は、
i)温水消費装置(14、15)による大量の家庭用温水の必要性がある場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、前記方法において、前記温水消費装置(14、15)が、好ましくは大量の温水の必要性を前記コントローラ(5)に伝えるように構成されるとともに、特に好ましくは台所の流し(14)、浴槽(15)、洗濯機、食洗機、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、及び/又は、
ii)家庭用温水要求予測が大量の家庭用温水の必要性を予測する場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、前記方法において、好ましくは、前記コントローラ(5)が前記予測を遂行するように構成される、及び/又は、
iii)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)から前記システムの家庭用温水排出口への体積流量が或る閾値超になり、前記システムの前記家庭用温水排出口が大量の家庭用温水排出に関連する場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、前記体積流量が、好ましくは前記システムの流体流れ検知センサ(7)により検知され、前記方法において、該流体流れ検知センサが、検知された体積流量を前記コントローラ(5)に伝えるように構成されるとともに、特に好ましくは流量計、圧力センサ、温度センサ、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、及び/又は、
iv)直接的ユーザ入力が大量の家庭用温水の必要性を伝える場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、前記直接的ユーザ入力が、好ましくは前記システムの入力装置により検知され、前記方法において、該入力装置が、大量の家庭用温水の必要性を前記コントローラ(5)に伝えるように構成されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項9又は10に記載の方法であって、前記方法において提供されるシステムの前記熱エネルギー貯蔵装置(4)が
i)相変化材料熱エネルギー貯蔵装置であり、前記相変化材料熱エネルギー貯蔵装置が、好ましくは該相変化材料熱エネルギー貯蔵装置内に組み込まれる熱交換器を含み、該熱交換器が、前記ヒートポンプ(1)から前記相変化材料熱エネルギー貯蔵装置への熱伝達を促進する、又は、
ii)貯水タンク、好ましくはカプセル化された相変化材料を含有する貯水タンクであることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
家庭用温水を提供するためのシステム、及びこのシステムを使用する方法が提供される。システムは、ヒートポンプと、水道水供給部と、水道水供給部を出る流体ラインとヒートポンプを出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する熱交換器と、ヒートポンプに接続される熱エネルギー貯蔵装置と、異なる運転モードを有するとともに、これらの運転モード間で選択して、選択された運転モードを基にヒートポンプを制御するように構成されるコントローラとを含む。第1運転モードでは、ヒートポンプから、熱交換器にではなく熱エネルギー貯蔵装置に熱エネルギーが提供されるが、第2運転モードでは、ヒートポンプから熱交換器に熱エネルギーが提供される。第2運転モードに切替わるようにコントローラが構成されることにより、このシステム及び方法は、家庭用温水を連続的に、即ち中断時間無しに提供することができる。
【背景技術】
【0002】
水道水を10℃から40℃にまで加熱するための要件は約15~20kW(毎分7~10リットルの典型的なD供給流量に対して)であるが、コンビボイラーは高い熱出力を有し、家庭用温水(DHW)を提供するには小型モデルでも25kWの熱出力を提供することができる。従って、コンビボイラーは家庭用温水を、熱エネルギー貯蔵(TES)無しに直接提供することができる。
【0003】
家庭用温水を提供するシステムがコンビボイラーを持たず、熱出力が約4~10kWの住宅用ヒートポンプしか無い場合、住宅用ヒートポンプのみでは、ヒートポンプ内での家庭用温水(DHW)の直接の加熱が不十分である。従って、これらのシステムにおいて、家庭用温水を提供するには、TES、具体的には家庭用温水TES(DHW‐TES)が必要である。ところが、DHW‐TESが一旦完全に排出されるとシステムは温水をそれ以上提供することができないうえ、DHW‐TESを完全に再充満するには約2時間かかる。
【0004】
特許文献1は、熱交換器が動作可能に連結されており分配サブシステムから水を受け取る予熱タンクを開示している。コントローラは、流体が熱交換器を通して送られて予熱タンクに熱を渡す第1モード、及び、流体が冷蔵機の蒸発器を通して送られて冷媒に熱を渡す第2モードを有する。予熱タンクには、水を受け取る貯水タンクが連結され、この貯水タンクは冷蔵機の凝縮器に連結され、凝縮器により排除された熱が貯水タンクの内容物に渡される。
【0005】
特許文献2は、家庭用水タンク内で家庭用水を予熱する家庭用水タンク予熱システムを開示しており、清潔だが温い水の浪費を制限する節水システムが提供される。
【0006】
特許文献3は、給湯システムの温水シリンダと合わせて使用されるとともに第1タンク、第2タンク、及び中央タンクを含む補助熱交換ユニットを開示している。
【0007】
特許文献4は、家庭用温水を構造物に供給するように、及び/又は空間暖房システムの低温帰還水を予熱するように動作可能な家庭用温水予熱器を開示している。
【0008】
先行技術において公知のヒートポンプシステムでは、水道水が家庭用温水熱エネルギー貯蔵装置に直接侵入してこの家庭用温水熱エネルギー貯蔵装置内で加熱されるため、ヒートポンプと家庭用温水とは分離されている。更に、先行技術において公知のヒートポンプシステムでは、家庭用温水熱エネルギー貯蔵装置の加熱は家庭用温水要求とは無関係であり、ヒートポンプからの全ての熱エネルギーは充満のために家庭用温水熱エネルギー貯蔵装置に向けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第9581340号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0196955号明細書
【特許文献3】英国特許出願公開第2464162号明細書
【特許文献4】国際公開第2020/227216号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先行技術において公知のシステムに関する問題とは、家庭用温水熱エネルギー貯蔵装置(DHW‐TES)が完全に排出される場合、システムが温水をそれ以上提供することができないうえに、DHW‐TESが再度完全に充満されるまで数時間かかり得る、即ち、システムが、かなり長い時間、即ち水道水を所望の温度にまで加熱することにとって適切なレベルにDHW‐TESの充満が到達するまで、温水を提供することができないということである。このことが、家庭用温水を提供する際の相当な中断時間につながる。
【0011】
そこから出発して、先行技術のシステム及び方法の欠点を持たないシステム及び方法を提供することが本願の目的であった。具体的には、このシステム及び方法を用いて、家庭用温水を提供する際に中断時間無しに温水を提供することが可能であるべきである。
【0012】
この目的は、請求項1の特徴を有する装置、及び請求項9の特徴を有する方法により解決される。従属請求項は、本発明の有利な実施形態を明示する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、家庭用温水を提供するためのシステムであって、
a)ヒートポンプと、
b)水道水供給部と、
c)水道水供給部を出る流体ラインとヒートポンプを出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する熱交換器と、
d)ヒートポンプに接続される熱エネルギー貯蔵装置と、
e)ヒートポンプから、熱交換器にではなく熱エネルギー貯蔵装置に熱エネルギーが提供される第1運転モードと、
f)ヒートポンプから熱交換器に熱エネルギーが提供される第2運転モードと、
g)少なくとも第1運転モードと第2運転モードとの間で選択するように構成されるとともに、選択された運転モードを基にポンプを制御するように構成されるコントローラと
を含むシステムが提供される。
【0014】
本発明によるシステムにより、家庭用温水を中断時間無しに提供することが実現可能になり、家庭用温水排出能力が拡張可能になる。その理由は、本発明によるシステムが、第1運転モードと第2運転モードとの間で切替わり、従って、ヒートポンプ運転を家庭用温水要求の程度と連動させることができるからである。家庭用温水の要求が無い場合、システムは第1運転モードに切替わることができる。家庭用温水の(高)要求が有る場合、システムは第2運転モードに切替わることができる。
【0015】
第1運転モードでは(即ち家庭用温水の要求が無いとき)、システムのコントローラは、ヒートポンプから、熱交換器にではなく熱エネルギー貯蔵装置に熱エネルギーが提供されるようヒートポンプを制御する、即ち、コントローラは熱エネルギー貯蔵装置の充満を実施する。第2運転モードでは(即ち家庭用温水の要求が高いとき)、システムのコントローラは、ヒートポンプからシステムの熱交換器に熱エネルギーが提供されるようヒートポンプを制御する、即ち、コントローラは熱交換器内の水道水の加熱を実施する。この加熱は、システムの熱エネルギー貯蔵装置に侵入する前の水道水の予熱であってもよく、或いは、熱エネルギー貯蔵装置を退出した後の水道水の後加熱であってもよい。従って、熱交換器は、(本発明による方法において使用される)本発明によるシステム内で熱エネルギー貯蔵装置の上流に設置してもよく、或いは、熱エネルギー貯蔵装置の下流に設置してもよい。
【0016】
第2運転モードにおいて水道水を熱交換器により付加的に加熱することによって、特に家庭用温水の要求が高い期間中の、この運転モードにおける、熱エネルギー貯蔵装置に掛かる加熱の負担が軽減されるということが明らかになる。換言すれば、目標温度の家庭用温水をより多くの量で提供することができ、或いは、要するに目標温度の家庭用温水をより長い期間提供し、従って、中断時間をなくすことができる。
【0017】
簡潔に言えば、第2運転モードは、以下の利点、つまり、
‐ヒートポンプと熱エネルギー貯蔵装置との間で、必要となる瞬間的な加熱負荷の合計が分担されるため、熱エネルギー貯蔵装置からの家庭用温水出力を増加することが可能である、
‐ヒートポンプが既に作動中であり、再充満サイクルの頻度が少なくなることを含めて起動時間が不要であるため、家庭用温水が大量に取り出された後の熱エネルギー貯蔵装置を、より急速に再充満することが可能である、
‐周囲空気温度と予熱済み水道水出口温度との間の温度上昇が小さいため、第2運転モードにおける高いヒートポンプ効率(性能係数)が可能である、
‐熱エネルギー貯蔵装置が完全に充満され、ユーザ挙動(例えば全ての家族が午前中にシャワーを浴びる)を基に大量の家庭用温水要求が予測される場合、家庭用温水提供の中断時間を短くすることができる、
という利点を有する。
【0018】
システムのコントローラは、第2運転モードにおいて、加熱済み水道水が熱交換器から熱エネルギー貯蔵装置内へ流れることができるように構成することができる。好ましくは、熱エネルギー貯蔵装置の熱エネルギーが加熱済み水道水に伝達されるように(=例えば熱エネルギー貯蔵装置がPCM‐TESである場合、水道水が更に加熱されるように)、或いは、加熱済み水道水の熱エネルギーが熱エネルギー貯蔵装置に伝達されるように(=例えば熱エネルギー貯蔵装置が貯水タンクである場合、熱エネルギー貯蔵装置が充満されるように)、加熱済み水道水が流れることができる。
【0019】
システムのコントローラは、家庭用温水の積極的な要求が無く、熱エネルギー貯蔵装置の充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、第1運転モードに切替わるように構成することができる。
【0020】
更に、システムのコントローラは、家庭用温水の積極的な要求が高く、ヒートポンプが作動中である又は作動中でない場合、或いは、家庭用温水の要求が低く、ヒートポンプが作動中である場合に、第2運転モードに切替わるように構成することができる。
【0021】
システムは、ヒートポンプから熱エネルギー貯蔵装置に及び熱交換器に熱エネルギーの提供されない第3運転モードを含むことができる。第3運転モードにおいて、システムは、熱エネルギー貯蔵装置内に貯蔵される熱エネルギーのみにより家庭用温水を提供するように構成される、即ち、水道水を家庭用温水にまで加熱するには熱エネルギー貯蔵装置のみが使用される。コントローラは、好ましくは、家庭用温水の積極的な要求が低い場合、及び/又は、熱エネルギー貯蔵装置の充満状態が事前設定済み閾値以上でありヒートポンプが運転されてはならない場合に、第3運転モードに切替わるように構成される。第3運転モードでは(家庭用温水の要求が低いとき)、システムのコントローラは、ヒートポンプから熱エネルギー貯蔵装置に熱エネルギーが提供されないように、及び、ヒートポンプからシステムの熱交換器に熱エネルギーが提供されないように、ヒートポンプを制御する、即ち、コントローラは、熱エネルギー貯蔵装置内に貯蔵される熱エネルギーのみにより水道水が加熱されることを実施し、熱エネルギー貯蔵装置はこれによって排出される。
【0022】
システムは、熱エネルギー貯蔵装置からシステムの家庭用温水排出口への流体の体積流量を検知することにとって適切な流体流れ検知センサを更に含むことができる。
【0023】
それに加えて、システムは、水道水供給部の水を加熱するための抵抗加熱器を更に含むことができる。コントローラは、好ましくは、家庭用温水の積極的な要求が高い場合に、抵抗加熱器を有効にするように構成される。抵抗加熱器により、水道水を更に加熱することができ、加熱要求に対して、ヒートポンプよりも迅速に応答することができる。何故なら、ヒートポンプは、フル能力で作動するモーメントを必要とするからである。抵抗加熱器は、熱エネルギー貯蔵装置の上流に設置してもよく、或いは下流に設置してもよい。熱エネルギー貯蔵装置の上流に設置することは、抵抗加熱器が熱エネルギー貯蔵装置の(熱エネルギーの)充満に寄与できるという利点を有する。更に、抵抗加熱器は、熱交換器の上流に設置してもよく、或いは下流に設置してもよい。好ましくは、抵抗加熱器は熱交換器の下流に、及び熱エネルギー貯蔵装置の上流に設置される。抵抗加熱器とヒートポンプとが共に、ユーザにより非常に低温であるとは知覚されない温度の温かい飲用水を提供することも可能である。このことにより、熱エネルギー貯蔵装置を迂回してその排出を回避することができ、或いは、熱エネルギー貯蔵装置が完全に排出されているが家庭用温水の要求が依然として高い場合には、中断時間を回避する更なる対策が提供される。
【0024】
システムは、廃水から回収されるエネルギーにより水道水供給部の水を加熱するための手段を含むことができる。前記手段は、好ましくはシステム内で熱交換器の上流に設置される。
【0025】
システムは、熱エネルギー貯蔵装置の充満状態を判定するように構成される充満状態装置を更に含むことができる。好ましくは、コントローラは、充満状態装置により判定された充満状態を基にヒートポンプを制御するように構成される。更に、コントローラは、判定された熱エネルギー貯蔵装置の充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、第1運転モードに切替わるように構成することができる。更に、コントローラは、判定された熱エネルギー貯蔵装置の充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、第2運転モードに切替わるように構成することができる。それに加えて、コントローラは、熱エネルギー貯蔵装置の充満状態が事前設定済み閾値以上である場合に、ヒートポンプから熱エネルギー貯蔵装置に及び熱交換器に熱エネルギーの提供されない第3運転モードに切替わるように構成することができる。
【0026】
コントローラは、温水消費装置による大量の家庭用温水の必要性がある場合に、第2運転モードに切替わるように構成することができる。温水消費装置は、好ましくは大量の温水の必要性をコントローラに伝えるように構成される。温水消費装置は、特に好ましくは台所の流し、浴槽、洗濯機、食洗機、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0027】
更に、コントローラは、家庭用温水要求予測が大量の家庭用温水の必要性を予測する場合に、第2運転モードに切替わるように構成することができる。好ましくは、コントローラは前記予測を遂行するように構成される。
【0028】
更に、コントローラは、熱エネルギー貯蔵装置からシステムの家庭用温水排出口への体積流量が或る閾値超になり、システムの家庭用温水排出口が大量の家庭用温水排出に関連する場合に、第2運転モードに切替わるように構成することができる。体積流量は、好ましくはシステムの流体流れ検知センサにより検知され、流体流れ検知センサは、検知された体積流量をコントローラに伝えるように構成される。流体流れ検知センサは、流量計、圧力センサ、温度センサ、及びそれらの組み合わせから成る群から選択することができる。
【0029】
それに加えて、コントローラは、直接的ユーザ入力が大量の家庭用温水の必要性を伝える場合に、第2運転モードに切替わるように構成することができる。直接的ユーザ入力は、好ましくはシステムの入力装置により検知され、入力装置は、大量の家庭用温水の必要性をコントローラに伝えるように構成される。
【0030】
好適な実施形態において、熱エネルギー貯蔵装置は相変化材料熱エネルギー貯蔵装置(PCM‐TES)である。相変化材料熱エネルギー貯蔵装置は、相変化材料熱エネルギー貯蔵装置内に組み込まれる熱交換器を含むことができ、熱交換器は、ヒートポンプから相変化材料熱エネルギー貯蔵装置への熱伝達を促進する。エネルギーの観点から言えば、熱エネルギー貯蔵装置としてのPCM‐TESというものは有益である。PCM‐TESは、相変化材料(PCM)の融解熱を活用することにより、そのエネルギー量のほとんどを貯蔵する。つまり、ほぼ全てのエネルギーが、PCMの融解温度(例えば50℃)にて貯蔵され放出される。それ故に、侵入する水の入口温度が高くなれば、PCMから水への排出熱流量が少なくなることになる。放電率が低いほど、PCM内で50℃にて貯蔵される熱から取り出すことのできる水の量が増加する。
【0031】
別法として、熱エネルギー貯蔵装置は、貯水タンク、好ましくはカプセル化された相変化材料を含有する貯水タンクとすることができる。
【0032】
本発明によれば、家庭用温水を提供するための方法であって、以下のステップ、
a)システムを提供するステップであって、このシステムが、
ヒートポンプと、
水道水供給部と、
水道水供給部を出る流体ラインとヒートポンプを出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する熱交換器と、
ヒートポンプに接続される熱エネルギー貯蔵装置と、
ヒートポンプから、熱交換器にではなく熱エネルギー貯蔵装置に熱エネルギーが提供される第1運転モードと、
ヒートポンプから熱交換器に熱エネルギーが提供される第2運転モードと、
少なくとも第1運転モードと第2運転モードとの間で選択するように構成されるコントローラと
を含む、ステップと、
b)選択された運転モードを基にコントローラによりヒートポンプを制御するステップと
を含む方法が提供される。
【0033】
本発明の方法を用いて、家庭用温水を中断時間無しに提供することができ、家庭用温水排出能力を拡大することができる。
【0034】
本方法において、コントローラは、第2運転モードにおいて、加熱済み水道水が熱交換器から熱エネルギー貯蔵装置内へ流れることができるように構成することができる。好ましくは、熱エネルギー貯蔵装置の熱エネルギーが加熱済み水道水に伝達されるように、或いは、加熱済み水道水の熱エネルギーが熱エネルギー貯蔵装置に伝達されるように、加熱済み水道水が熱交換器から熱エネルギー貯蔵装置内へ流れることができる。
【0035】
本方法において、コントローラは、家庭用温水の積極的な要求が無く、熱エネルギー貯蔵装置の充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、第1運転モードに切替わるように構成することができる。
【0036】
更に、本方法において、コントローラは、家庭用温水の積極的な要求が高く、ヒートポンプが作動中である又は作動中でない場合、或いは、家庭用温水の要求が低く、ヒートポンプが作動中である場合に、第2運転モードに切替わるように構成することができる。
【0037】
本方法において提供されるシステムは、ヒートポンプから熱エネルギー貯蔵装置に及び熱交換器に熱エネルギーの提供されない第3運転モードを含むことができる。第3運転モードにおいて、システムは、熱エネルギー貯蔵装置内に貯蔵される熱エネルギーのみにより家庭用温水を提供するように構成される、即ち、水道水を家庭用温水にまで加熱するには熱エネルギー貯蔵装置のみが使用される。本方法において、コントローラは、好ましくは、家庭用温水の積極的な要求が低い場合、及び/又は、熱エネルギー貯蔵装置の充満状態が事前設定済み閾値以上でありヒートポンプが運転されてはならない場合に、第3運転モードに切替わるように構成される。
【0038】
本方法において提供されるシステムは、熱エネルギー貯蔵装置からシステムの家庭用温水排出口への流体の体積流量を検知することにとって適切な流体流れ検知センサを更に含むことができる。
【0039】
更に、本方法において提供されるシステムは、水道水供給部の水を加熱するための抵抗加熱器を更に含むことができる。本方法において、コントローラは、好ましくは、家庭用温水の積極的な要求が高い場合に、抵抗加熱器を有効にするように構成される。抵抗加熱器により、水道水を更に加熱することができ、加熱要求に対して、ヒートポンプよりも迅速に応答することができる。何故なら、ヒートポンプは、フル能力で作動するモーメントを必要とするからである。抵抗加熱器は、熱エネルギー貯蔵装置の上流に設置してもよく、或いは下流に設置してもよい。熱エネルギー貯蔵装置の上流に設置することは、抵抗加熱器が熱エネルギー貯蔵装置の(熱エネルギーの)充満に寄与できるという利点を有する。更に、抵抗加熱器は、熱交換器の上流に設置してもよく、或いは下流に設置してもよい。好ましくは、抵抗加熱器は熱交換器の下流に、及び熱エネルギー貯蔵装置の上流に設置される。抵抗加熱器とヒートポンプとが共に、ユーザにより非常に低温であるとは知覚されない温度の温かい飲用水を提供することも可能である。このことにより、熱エネルギー貯蔵装置を迂回してその排出を回避することができ、或いは、熱エネルギー貯蔵装置が完全に排出されているが家庭用温水の要求が依然として高い場合には、中断時間を回避する更なる対策が提供される。
【0040】
本方法において提供されるシステムは、廃水から回収されるエネルギーにより水道水供給部の水を加熱するための手段を含むことができる。前記手段は、好ましくは本方法のシステム内で熱交換器の上流に設置される。
【0041】
本方法において提供されるシステムは、熱エネルギー貯蔵装置の充満状態を判定するように構成される充満状態装置を更に含むことができる。本方法において、コントローラは、好ましくは、充満状態装置により判定された充満状態を基にヒートポンプを制御するように構成される。更に、本方法において、コントローラは、好ましくは、判定された熱エネルギー貯蔵装置の充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、第1運転モードに切替わるように構成される。更に、本方法において、コントローラは、好ましくは、判定された熱エネルギー貯蔵装置の充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、第2運転モードに切替わるように構成される。それに加えて、本方法において、コントローラは、好ましくは、判定された熱エネルギー貯蔵装置の充満状態が事前設定済み閾値以上である場合に、ヒートポンプから熱エネルギー貯蔵装置に及び熱交換器に熱エネルギーの提供されない第3運転モードに切替わるように構成される。
【0042】
本方法において、コントローラは、温水消費装置による大量の家庭用温水の必要性がある場合に、第2運転モードに切替わるように構成することができる。本方法において、温水消費装置は、好ましくは大量の温水の必要性をコントローラに伝えるように構成される。温水消費装置は、台所の流し、浴槽、洗濯機、食洗機、及びそれらの組み合わせから成る群から選択することができる。
【0043】
更に、本方法において、コントローラは、家庭用温水要求予測が大量の家庭用温水の必要性を予測する場合に、第2運転モードに切替わるように構成することができる。好ましくは、本方法において、コントローラは前記予測を遂行するように構成される。
【0044】
更に、本方法において、コントローラは、熱エネルギー貯蔵装置からシステムの家庭用温水排出口への体積流量が或る閾値超になり、システムの家庭用温水排出口が大量の家庭用温水排出に関連する場合に、第2運転モードに切替わるように構成することができる。体積流量は、好ましくはシステムの流体流れ検知センサにより検知され、本方法において、流体流れ検知センサは、検知された体積流量をコントローラに伝えるように構成される。流体流れ検知センサは、流量計、圧力センサ、温度センサ、及びそれらの組み合わせから成る群から選択することができる。
【0045】
それに加えて、本方法において、コントローラは、直接的ユーザ入力が大量の家庭用温水の必要性を伝える場合に、第2運転モードに切替わるように構成することができる。直接的ユーザ入力は、好ましくはシステムの入力装置により検知され、本方法において、入力装置は、大量の家庭用温水の必要性をコントローラに伝えるように構成される。
【0046】
好適な実施形態において、本方法において提供されるシステムの熱エネルギー貯蔵装置は相変化材料熱エネルギー貯蔵装置である。相変化材料熱エネルギー貯蔵装置は、好ましくは相変化材料熱エネルギー貯蔵装置内に組み込まれる熱交換器を含み、熱交換器は、ヒートポンプから相変化材料熱エネルギー貯蔵装置への熱伝達を促進する。
【0047】
別法として、熱エネルギー貯蔵装置は、貯水タンク、好ましくはカプセル化された相変化材料を含有する貯水タンクとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明によるシステム及び方法のコントローラの単純なルールベース制御を概略的に明示する。
図2】本発明による第1システムを概略的に明示する。
図3】第1運転モード(充満モード)における、本発明による更なるシステムを概略的に明示する。
図4図3において明示するシステムを、ただし第2運転モード(予熱水排出モード)において概略的に明示する。
図5】第2運転モード(後加熱水排出モード)における、本発明による更なるシステムを概略的に明示する。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下の図及び例を参照して、本発明による主題を、より詳細に説明することを意図するが、ここに示す特定の実施形態に前記主題を限定することを望むものではない。
【0050】
図1は、本発明によるシステム及び方法のコントローラの単純なルールベース制御を概略的に明示する。コントローラは、システムが第1運転モード(充満モード)において運転すべきであるのか、それとも第2運転モード(予熱モード)において運転すべきであるのかを判定するように構成される。この実施形態において、コントローラは、システムが第3運転モード(DHW‐TESのみにより加熱される低温水道水モード)において運転すべきであるかどうかを判定するようにも構成される。家庭用温水の積極的な要求が高いとき、或いは温水の積極的な要求が低くヒートポンプが既に作動中である場合には、予熱を有効にしてもよい。家庭用温水(DHW)要求が終了したときには、コントローラは第1運転モード(充満モード)に復帰してもよい。更に、大量のDHW要求が検知される場合、又は熱エネルギー貯蔵装置(TES)の充満状態(SOC)が最小閾値未満になる場合、コントローラはDHW予熱モードを有効にする。
【0051】
図2は、本発明による第1システムを概略的に明示する。この実施形態において、熱エネルギー貯蔵装置は相変化材料熱エネルギー貯蔵装置(PCM‐TES)である。水道水供給部2を退出する家庭用温水が流体線内で熱交換器3を流通し、家庭用温水はそこで、ヒートポンプ1を出る流体ラインから熱エネルギーを受け取ることができる。予熱済み水道水は、熱エネルギー貯蔵装置4(この場合はPCM‐TES)に向かう途中で、抵抗加熱器13により更に加熱することができる。予熱済み水道水は家庭用温水10になるまで熱エネルギー貯蔵装置内で更に加熱され、この家庭用温水が台所の流し14に又は浴槽15に流れることができる。システムのコントローラ5は、ヒートポンプ1を制御するように構成される。明示するシステムは、熱エネルギー貯蔵装置4の充満状態を判定するように構成される充満状態装置6、及び流体流れ検知センサ7をも含む。水道水の流れを方向付けるために、システムは切替弁12をも含み、この切替弁は、水道水が、熱交換器3を通って抵抗加熱器13を介して熱エネルギー貯蔵装置4に、又は局所的空間暖房システム8のいずれかに流れるよう切替えることができる。熱交換器3、抵抗加熱器13、コントローラ5、及び切替弁は室内ユニット9に含まれる。
【0052】
図3は、第1運転モード(充満モード)における、本発明による更なるシステムを概略的に明示する。このシステムにおいて、熱エネルギー貯蔵装置4は貯水タンクである。水道水供給部2を退出する家庭用水が流体線内でヒートポンプ1を流通し、家庭用水はそこでヒートポンプ1から熱エネルギーを受け取ることができる。この第1運転モードにおいて、熱エネルギー貯蔵装置4からの排出は無い(線幅の太い方を参照)、即ち、台所の流し14及び/又は浴槽15に家庭用温水10は提供されない。更に、熱エネルギー貯蔵装置4には水道水が侵入しないが、この熱エネルギー貯蔵装置4から第2のパイプが水を積極的に取り出し、この水が、熱交換器3を流通し、その後抵抗加熱器13を流通し、それから熱エネルギー貯蔵装置に戻る。システムのコントローラ5は、ヒートポンプ1を制御するように構成される。明示するシステムは、熱エネルギー貯蔵装置4の充満状態を判定するように構成される充満状態装置6、及び流体流れ検知センサ7をも含む。水道水の流れを方向付けるために、システムは切替弁12をも含む。熱交換器3、抵抗加熱器13、コントローラ5、及び切替弁は家庭用温水のシリンダユニット11に含まれる。
【0053】
図4は、図3において明示するシステムを、ただし第2運転モード(予熱水排出モード)において概略的に明示する。水道水供給部2を退出する家庭用水が流体線内で熱交換器3を流通し、家庭用水はそこで、ヒートポンプ1を出る流体ラインから熱エネルギーを受け取ることができる。予熱済み水道水は、熱エネルギー貯蔵装置4(この場合は貯水タンク)内に搬送されると、熱エネルギー貯蔵装置4に熱を伝達する。家庭用温水10になるまで熱エネルギー貯蔵装置4内で加熱される水は、台所の流し14に又は浴槽15に流れることができる。システムのコントローラ5は、ヒートポンプ1を制御するように構成される。明示するシステムは、熱エネルギー貯蔵装置4の充満状態を判定するように構成される充満状態装置6、及び流体流れ検知センサ7をも含む。水道水の流れを方向付けるために、システムは切替弁12をも含む。熱交換器3、抵抗加熱器13、コントローラ5、及び切替弁は家庭用温水のシリンダユニット11に含まれる。
【0054】
図5は、第2運転モード(後加熱水排出モード)における、本発明による更なるシステムを概略的に明示する。明確にするため、図2図4に示すシステムの幾つかの構成要素は省略した。この実施形態において、システムの熱エネルギー貯蔵装置4を退出する水道水が熱交換器3により加熱される。この熱交換器は、ヒートポンプ1から熱エネルギーを受け取るのであり、この場合は熱エネルギー貯蔵装置4の下流に設置される。これにより、熱エネルギー貯蔵装置が、低い熱容量を有する場合又は完全に排出される場合であっても、台所の流し14に及び/又は浴槽15に、目標温度にある家庭用温水10を提供することができる。
【0055】
実施例1―システム及び方法の例示的使用
【0056】
例えば、シャワーには毎分約7リットル(LPM)の水の流量が必要である。シャワーにDHWを供給するために、低温水道水が熱交換器に10℃で侵入し、そこでこの水道水が熱交換器内でヒートポンプからの5kWにより20℃まで加熱され、任意で抵抗加熱器からの付加的な3kWにより26℃まで加熱される。その後、予熱済み水道水はDHW‐TES内で、26℃から40℃の出口温度にまで更に加熱される。
【0057】
これにより、DHW‐TESの排出熱流量は6.8kWになるのであるが、これは、予熱モード無しで必要になるであろう15kWよりもかなり低い。
【0058】
従って、DHW‐TESにより供給することのできるDHW容量は、加熱モード(第2運転モード)が適用される場合には二倍になる。更に、DHW‐TESが一旦完全に排出されても、依然として26℃の温かい水がシャワーに供給される。
【0059】
実施例2―第1実施形態(図2
【0060】
図2に、本発明によるシステム及び方法の第1実施形態が示される。この実施形態において、熱エネルギー貯蔵装置はPCM‐TESである。
【0061】
第1運転モード(PCM‐TES充満モード)
【0062】
第1運転モードというのは、ヒートポンプが、PCM‐TESに(好ましくはPCM‐TES内に組み込まれる熱交換器への熱伝達を介して)熱を伝達するが、水道水供給部を出る流体ラインとヒートポンプを出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する熱交換器を流通する水には熱を伝達しないモードのことである。
【0063】
第1運転モードは、積極的なDHW要求が無くPCM‐TESの相状態(SOC)が閾値未満である場合に有効にすることができる。
【0064】
第2運転モード(予熱水排出モード)
【0065】
第2運転モードというのは、水道水供給部を出る流体ラインとヒートポンプを出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する熱交換器を流通する水にヒートポンプが熱を伝達するモードのことである。熱交換器内で加熱される水道水は、その後PCM‐TES内に搬送されてそこで更に加熱され、その最終温度を獲得する。
【0066】
例えば図2に見ることができるように、水道水供給部由来の水道水が、(水道水供給部を出る流体ラインとヒートポンプを出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する)熱交換器に侵入することになり、ヒートポンプ(の一次回路の流体線)由来の熱により前記熱交換器内で加熱されることになる。熱交換器を退出した後の水道水流れを、任意の抵抗加熱器が更に加熱することができる。予熱済み水道水は、PCM‐TES(好ましくはPCM‐TES内に組み込まれる熱交換器)に中間温度にて侵入し、PCM‐TESによりその所望の最終温度にまで加熱される。
【0067】
第2運転モードは、例えば、
‐熱エネルギー貯蔵装置の充満状態が閾値未満になる場合に有効にすることができ、充満状態は、好ましくはシステムの充満状態装置により検知され、充満状態装置は充満状態をコントローラに伝えるように構成されており、及び/又は、
‐温水消費装置による大量の家庭用温水の必要性がある場合に有効にすることができ、温水消費装置は、好ましくは大量の温水の必要性をコントローラに伝えるように構成されるとともに、特に好ましくは浴槽、洗濯機、及びそれらの組み合わせから成る群から選択されるものであり、及び/又は、
‐家庭用温水要求予測が大量の家庭用温水の必要性を予測する場合に有効にすることができ、好ましくは、コントローラがこの予測を遂行するように構成されるものであり、及び/又は、
‐熱エネルギー貯蔵装置(4)から家庭用温水排出口への体積流量が或る閾値超になる場合に有効にすることができ、体積流量は、好ましくはシステムの流体流れ検知センサにより検知され、流体流れ検知センサは、検知された体積流量をコントローラに伝えるように構成されるとともに、特に好ましくは流量計、圧力センサ、温度センサ、及びそれらの組み合わせから成る群から選択されるものであり、及び/又は、
‐直接的ユーザ入力が大量の家庭用温水の必要性を伝える場合に有効にすることができ、直接的ユーザ入力は、好ましくはシステムの入力装置により検知され、入力装置は、大量の家庭用温水の必要性をコントローラに伝えるように構成されるものである。
【0068】
第3運転モード(常温水排出モード)
【0069】
第3運転モードというのは、ヒートポンプが、PCM‐TESに熱を伝達せず、水道水供給部を出る流体ラインとヒートポンプを出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する熱交換器にも熱を伝達しないモードのことである。この第3運転モードにおいて、ヒートポンプは、熱エネルギーを(熱交換器を介して)水道水にもPCM‐TESにも供給していない(即ちPCM‐TESの充満が生じない)。
【0070】
例えば図2に見ることができるように、水道水供給部由来の水道水が、(水道水供給部を出る流体ラインとヒートポンプを出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する)熱交換器に侵入することになるが、前記熱交換器内で加熱されないことになる。任意的な抵抗加熱器がオフに切替えられる。予熱されていない水道水は、PCM‐TES(好ましくはPCM‐TES内に組み込まれる熱交換器)にその元の温度のまま侵入し、PCM‐TES(のみ)によりその所望の最終温度にまで加熱される。
【0071】
水道水への全てのエネルギー投入がPCM‐TESにより提供されることから、第3運転モードは、DHW排出が少量しか必要でない場合、例えばヒートポンプに必要となる起動時間よりも排出が短い場合に有利である。この構成は、そのモーメントでのヒートポンプDHWサイクルが他の制御決定により阻止される場合、例えば安価な再生可能エネルギーが不在の場合に更に有利なことがある。
【0072】
実施例3―第2実施形態(図3及び図4
【0073】
図3及び図4に、本発明によるシステム及び方法の第2実施形態を示す。この実施形態において、熱エネルギー貯蔵装置は貯水タンクである。
【0074】
第1運転モード(貯水タンク充満モード)
【0075】
図3に第1運転モードが明示される。第1運転モードというのは、ヒートポンプが、貯水タンクに熱を伝達するが、水道水供給部を出る流体ラインとヒートポンプを出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する熱交換器を流通する水道水には熱を伝達しないモードのことである。
【0076】
第1運転モードは、積極的なDHW要求が無く貯水タンクの加熱能力が閾値未満である場合に有効にすることができる。
【0077】
第2運転モード(予熱水排出モード)
【0078】
図4に第2運転モードが明示される。第2運転モードというのは、水道水供給部を出る流体ラインとヒートポンプを出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する熱交換器を流通する水道水にヒートポンプが熱を伝達するモードのことである。熱交換器内で加熱された水道水は、その後貯水タンク内に搬送され、加熱済み水道水はそこで貯水タンクに熱を伝達する。
【0079】
例えば図4に見ることができるように、水道水供給部由来の水道水が、(水道水供給部を出る流体ラインとヒートポンプを出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する)熱交換器に侵入することになり、ヒートポンプ(の一次回路の流体線)由来の熱により前記熱交換器内で加熱されることになる。熱交換器を退出した後の水道水流れを、任意の抵抗加熱器が更に加熱することができる。予熱済み水道水は貯水タンクに侵入し、この予熱済み水道水が貯水タンクに熱を伝達する。予熱済み水道水は、混合されないやり方で貯水タンク内に搬送される。この目的で、図3及び図4に示すように、貯水タンク内に予熱済み水道水を導くための入口が貯水タンクの底部付近に設置されると有益である。このことは成層を維持することに役立つ一方で、タンクの同時再充満を可能にする。
【0080】
第2運転モードは(システムのコントローラにより)、例えば、
‐(例えば温度センサにより検知される)貯水タンクの加熱能力が閾値未満になる場合に有効にすることができ、及び/又は、
‐DHWを消費する少なくとも1つの装置(例えば浴槽及び/又は洗濯機)が大量のDHWの必要性を(例えばシステムのコントローラに)伝える場合に有効にすることができ、及び/又は、
‐(例えばシステムのコントローラによる)DHW要求予測が大量のDHWの必要性を予測する場合に有効にすることができ、及び/又は、
‐(例えば流体流れ検知センサにより検知される)貯水タンクからDHW排出への体積流量が或る閾値超になる場合に有効にすることができ(適切な流体流れ検知センサは、流量計、圧力センサ、温度センサ、及びそれらの組み合わせから成る群から選択することができる)、及び/又は、
‐直接的ユーザ入力(例えば台所内又は浴室内のユーザにより押されるボタン)が大量のDHWの必要性を伝える場合に有効にすることができる。
【0081】
第3運転モード(常温水排出モード)
【0082】
第3運転モードというのは、ヒートポンプが、貯水タンクに熱を伝達せず、水道水供給部を出る流体ラインとヒートポンプを出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する熱交換器にも熱を伝達しないモードのことである。この第3運転モードにおいて、ヒートポンプは、熱エネルギーを(熱交換器を介して)水道水にも貯水タンクにも供給していない(即ち貯水タンクの充満が生じない)。
【0083】
水道水への全てのエネルギー投入が貯水タンクにより提供されることから、第3運転モードは、少量のDHW排出のみが必要な場合、例えばヒートポンプに必要となる起動時間よりも短い排出の場合に有利である。この構成は、そのモーメントでのヒートポンプDHWサイクルが他の制御決定により阻止される場合、例えば安価な再生可能エネルギーが不在の場合に更に有利なことがある。
【0084】
実施例4―第3実施形態(図示せず)
【0085】
第3実施形態では、水道水は、廃水から回収されるエネルギーにより付加的に加熱される。例えば、水道水が熱交換器に侵入して熱交換器内で更に加熱される前に、付加的な加熱を用意することができる(図示せず)。
【0086】
実施例5―第4実施形態(図5
【0087】
第4実施形態では、第2運転モード(後加熱水排出モード)においてヒートポンプを使用することにより、システムの熱エネルギー貯蔵装置を退出する水道水が更に加熱される。
【0088】
このことは、単一の熱エネルギー貯蔵装置があることにより可能であるが、システム内に2つ以上の熱エネルギー貯蔵装置があることによっても可能である。一例では、システムは、主に空間暖房用に使用される、30~45℃の蓄熱能力を有する第1低温PCM‐TESと、40~60℃の蓄熱能力を有する第2高温PCM‐TESとを含む。
【0089】
第2高温PCM‐TESが完全に排出され、DHW要求があると仮定すると、第1低温PCM‐TESから中間温度にて来る水を、ヒートポンプを使用して、適切なDHW出口温度にまで後加熱することができる。換言すれば、水道水は、第1低温PCM‐TES内で予熱され、その後、ヒートポンプにより後加熱されるであろう。
【0090】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0091】
(付記1)
家庭用温水(10)を提供するためのシステムであって、
a)ヒートポンプ(1)と、
b)水道水供給部(2)と、
c)前記水道水供給部(2)を出る流体ラインと前記ヒートポンプ(1)を出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する熱交換器(3)と、
d)前記ヒートポンプ(1)に接続される熱エネルギー貯蔵装置(4)と、
e)前記ヒートポンプ(1)から、前記熱交換器(3)にではなく前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に熱エネルギーが提供される第1運転モードと、
f)前記ヒートポンプ(1)から前記熱交換器(3)に熱エネルギーが提供される第2運転モードと、
g)少なくとも前記第1運転モードと前記第2運転モードとの間で選択するように構成されるとともに、選択された運転モードを基に前記ヒートポンプ(1)を制御するように構成されるコントローラ(5)と
を含むシステム。
(付記2)
付記1に記載のシステムであって、前記コントローラ(5)は、前記第2運転モードにおいて、好ましくは、
i)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の熱エネルギーが前記加熱済み水道水に伝達されるように、或いは、
ii)前記加熱済み水道水の熱エネルギーが前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に伝達されるように、
加熱済み水道水が前記熱交換器(3)から前記熱エネルギー貯蔵装置(4)内へ流れることができるように構成されることを特徴とするシステム。
(付記3)
付記1又は2に記載のシステムであって、前記コントローラ(5)は、
i)家庭用温水の積極的な要求が無く、前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、第1運転モードに切替わるように構成される、及び/又は、
ii)家庭用温水の積極的な要求が高く、前記ヒートポンプ(1)が作動中である又は作動中でない場合、或いは、家庭用温水の要求が低く、前記ヒートポンプ(1)が作動中である場合に、第2運転モードに切替わるように構成されることを特徴とするシステム。
(付記4)
付記1~3のいずれか1つに記載のシステムであって、前記ヒートポンプ(1)から前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に及び前記熱交換器(3)に熱エネルギーの提供されない第3運転モードを含み、前記コントローラ(5)は、好ましくは、家庭用温水の積極的な要求が低い場合、及び/又は、前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の充満状態が事前設定済み閾値以上であり前記ヒートポンプ(1)が運転されてはならない場合に、前記第3運転モードに切替わるように構成されることを特徴とするシステム。
(付記5)
付記1~4のいずれか1つに記載のシステムであって、
i)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)から前記システムの家庭用温水排出口への流体の体積流量を検知することにとって適切な流体流れ検知センサ(7)、及び/又は、
ii)前記水道水供給部(2)の水を加熱するための抵抗加熱器(14)であって、前記コントローラ(5)は、好ましくは、家庭用温水の積極的な要求が高い場合に、前記抵抗加熱器(14)を有効にするように構成される、抵抗加熱器、及び/又は、
iii)廃水から回収されるエネルギーにより前記水道水供給部(2)の水を加熱するための手段であって、好ましくは前記システム内で前記熱交換器(3)の上流に設置される手段
を更に含むことを特徴とするシステム。
(付記6)
付記1~5のいずれか1つに記載のシステムであって、前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態を判定するように構成される充満状態装置(6)を更に含み、前記コントローラ(5)が、好ましくは、
i)前記充満状態装置(6)により判定された充満状態を基に前記ヒートポンプ(1)を制御するように構成される、及び/又は
ii)判定された前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、前記第1運転モードに切替わるように構成される、及び/又は、
iii)判定された前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成される、及び/又は、
iv)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態が事前設定済み閾値以上である場合に、前記ヒートポンプ(1)から前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に及び前記熱交換器(3)に熱エネルギーの提供されない第3運転モードに切替わるように構成されることを特徴とするシステム。
(付記7)
付記1~6のいずれか1つに記載のシステムであって、前記コントローラ(5)は、
i)温水消費装置(14、15)による大量の家庭用温水の必要性がある場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、前記温水消費装置(14、15)が、好ましくは大量の温水の必要性を前記コントローラ(5)に伝えるように構成されるとともに、特に好ましくは台所の流し(14)、浴槽(15)、洗濯機、食洗機、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、及び/又は、
ii)家庭用温水要求予測が大量の家庭用温水の必要性を予測する場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、好ましくは、前記コントローラ(5)が前記予測を遂行するように構成される、及び/又は、
iii)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)から前記システムの家庭用温水排出口への体積流量が或る閾値超になり、前記システムの前記家庭用温水排出口が大量の家庭用温水排出に関連する場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、前記体積流量が、好ましくは前記システムの流体流れ検知センサ(7)により検知され、該流体流れ検知センサが、検知された体積流量を前記コントローラ(5)に伝えるように構成されるとともに、特に好ましくは流量計、圧力センサ、温度センサ、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、及び/又は、
iv)直接的ユーザ入力が大量の家庭用温水の必要性を伝える場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、前記直接的ユーザ入力が、好ましくは前記システムの入力装置により検知され、該入力装置が、大量の家庭用温水の必要性を前記コントローラ(5)に伝えるように構成されることを特徴とするシステム。
(付記8)
付記1~7のいずれか1つに記載のシステムであって、前記熱エネルギー貯蔵装置(4)が
i)相変化材料熱エネルギー貯蔵装置であり、前記相変化材料熱エネルギー貯蔵装置が、好ましくは該相変化材料熱エネルギー貯蔵装置内に組み込まれる熱交換器を含み、該熱交換器が、前記ヒートポンプ(1)から前記相変化材料熱エネルギー貯蔵装置への熱伝達を促進する、又は、
ii)貯水タンク、好ましくはカプセル化された相変化材料を含有する貯水タンクであることを特徴とするシステム。
(付記9)
家庭用温水(10)を提供するための方法であって、以下のステップ、
a)システムを提供するステップであって、このシステムが、
ヒートポンプ(1)と、
水道水供給部(2)と、
前記水道水供給部(2)を出る流体ラインと前記ヒートポンプ(1)を出る流体ラインとの間に熱的接続を確立する熱交換器(3)と、
前記ヒートポンプ(1)に接続される熱エネルギー貯蔵装置(4)と、
前記ヒートポンプ(1)から、前記熱交換器(3)にではなく前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に熱エネルギーが提供される第1運転モードと、
前記ヒートポンプ(1)から前記熱交換器(3)に熱エネルギーが提供される第2運転モードと、
少なくとも前記第1運転モードと前記第2運転モードとの間で選択するように構成されるコントローラ(5)と
を含む、ステップと、
b)選択された運転モードを基に前記コントローラ(5)により前記ヒートポンプ(1)を制御するステップと
を含む方法。
(付記10)
付記9に記載の方法であって、前記方法において、前記コントローラ(5)は、前記第2運転モードにおいて、好ましくは、
i)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の熱エネルギーが前記加熱済み水道水に伝達されるように、或いは、
ii)前記加熱済み水道水の熱エネルギーが前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に伝達されるように、
加熱済み水道水が前記熱交換器(3)から前記熱エネルギー貯蔵装置(4)内へ流れることができるように構成されることを特徴とする方法。
(付記11)
付記9又は10に記載の方法であって、前記方法において、前記コントローラ(5)は、
i)家庭用温水の積極的な要求が無く、前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、第1運転モードに切替わるように構成される、及び/又は、
ii)家庭用温水の積極的な要求が高く、前記ヒートポンプ(1)が作動中である又は作動中でない場合、或いは、家庭用温水の要求が低く、前記ヒートポンプ(1)が作動中である場合に、第2運転モードに切替わるように構成されることを特徴とする方法。
(付記12)
付記9~11のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法において提供される前記システムが、前記ヒートポンプ(1)から前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に及び前記熱交換器(3)に熱エネルギーの提供されない第3運転モードを含み、前記方法において、前記コントローラ(5)は、好ましくは、家庭用温水の積極的な要求が低い場合、及び/又は、前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の充満状態が事前設定済み閾値以上であり前記ヒートポンプ(1)が運転されてはならない場合に、前記第3運転モードに切替わるように構成されることを特徴とする方法。
(付記13)
付記9~12のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法において提供される前記システムが、
i)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)から前記システムの家庭用温水排出口への流体の体積流量を検知することにとって適切な流体流れ検知センサ(7)、及び/又は、
ii)前記水道水供給部(2)の水を加熱するための抵抗加熱器(14)であって、前記方法において、前記コントローラ(5)は、好ましくは、家庭用温水の積極的な要求が高い場合に、前記抵抗加熱器(14)を有効にするように構成される、抵抗加熱器、及び/又は、
iii)廃水から回収されるエネルギーにより前記水道水供給部(2)の水を加熱するための手段であって、好ましくは前記システム内で前記熱交換器(3)の上流に設置される手段
を更に含むことを特徴とする方法。
(付記14)
付記9~13のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法において提供される前記システムが、前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態を判定するように構成される充満状態装置(6)を更に含み、前記方法において、前記コントローラ(5)が、好ましくは、
i)前記充満状態装置(6)により判定された充満状態を基に前記ヒートポンプ(1)を制御するように構成される、及び/又は、
ii)判定された前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、前記第1運転モードに切替わるように構成される、及び/又は、
iii)判定された前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態が事前設定済み閾値未満である場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成される、及び/又は、
iv)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)の前記充満状態が事前設定済み閾値以上である場合に、前記ヒートポンプ(1)から前記熱エネルギー貯蔵装置(4)に及び前記熱交換器(3)に熱エネルギーの提供されない第3運転モードに切替わるように構成されることを特徴とする方法。
(付記15)
付記9~14のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法において、前記コントローラ(5)は、
i)温水消費装置(14、15)による大量の家庭用温水の必要性がある場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、前記方法において、前記温水消費装置(14、15)が、好ましくは大量の温水の必要性を前記コントローラ(5)に伝えるように構成されるとともに、特に好ましくは台所の流し(14)、浴槽(15)、洗濯機、食洗機、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、及び/又は、
ii)家庭用温水要求予測が大量の家庭用温水の必要性を予測する場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、前記方法において、好ましくは、前記コントローラ(5)が前記予測を遂行するように構成される、及び/又は、
iii)前記熱エネルギー貯蔵装置(4)から前記システムの家庭用温水排出口への体積流量が或る閾値超になり、前記システムの前記家庭用温水排出口が大量の家庭用温水排出に関連する場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、前記体積流量が、好ましくは前記システムの流体流れ検知センサ(7)により検知され、前記方法において、該流体流れ検知センサが、検知された体積流量を前記コントローラ(5)に伝えるように構成されるとともに、特に好ましくは流量計、圧力センサ、温度センサ、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、及び/又は、
iv)直接的ユーザ入力が大量の家庭用温水の必要性を伝える場合に、前記第2運転モードに切替わるように構成され、前記直接的ユーザ入力が、好ましくは前記システムの入力装置により検知され、前記方法において、該入力装置が、大量の家庭用温水の必要性を前記コントローラ(5)に伝えるように構成されることを特徴とする方法。
(付記16)
付記9~15のいずれか1つに記載の方法であって、前記方法において提供されるシステムの前記熱エネルギー貯蔵装置(4)が
i)相変化材料熱エネルギー貯蔵装置であり、前記相変化材料熱エネルギー貯蔵装置が、好ましくは該相変化材料熱エネルギー貯蔵装置内に組み込まれる熱交換器を含み、該熱交換器が、前記ヒートポンプ(1)から前記相変化材料熱エネルギー貯蔵装置への熱伝達を促進する、又は、
ii)貯水タンク、好ましくはカプセル化された相変化材料を含有する貯水タンクであることを特徴とする方法。
【符号の説明】
【0092】
1 ヒートポンプ
2 水道水供給部
3 (ヒートポンプ及び水道水供給部に接続される)熱交換器
4 熱エネルギー貯蔵装置(例えばPCM‐TES又は貯水タンク)
5 ヒートポンプを制御するように構成されるコントローラ
6 熱エネルギー貯蔵装置の充満状態を判定するように構成される充満状態装置(例えば相状態装置)
7 流体流れ検知センサ
8 局所的空間暖房システム
9 室内ユニット
10 家庭用温水
11 家庭用温水用のシリンダユニット
12 切替弁
13 抵抗加熱器
14 台所の流し
15 浴槽
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】