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特開2023-145388メーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、メーターカバー、車輛用メーターカバー、二輪車用メーターカバー、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー及び車輌用液晶保護カバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145388
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】メーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、メーターカバー、車輛用メーターカバー、二輪車用メーターカバー、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー及び車輌用液晶保護カバー
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/04 20060101AFI20231003BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20231003BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20231003BHJP
   C08F 20/14 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C08L33/04
C08K5/00
C08K3/01
C08F20/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047347
(22)【出願日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2022052223
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】辻本 桂
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG061
4J002DE097
4J002DK007
4J002EA016
4J002EC066
4J002EG016
4J002EH026
4J002EH056
4J002EJ018
4J002EJ068
4J002EU079
4J002EU089
4J002EU198
4J002EW046
4J002EW068
4J002FD037
4J002FD059
4J002FD078
4J002FD097
4J002FD166
4J002GN00
4J100AL03P
4J100AL03Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA25
4J100DA40
4J100DA52
4J100DA62
4J100EA05
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA21
4J100JA28
4J100JA32
(57)【要約】
【課題】良好な熱線遮蔽性を有し、液晶保護カバー、メーターカバーとして用いた際に内部に配置された液晶、内部部材を効果的に熱線から保護でき、液晶保護カバー、メーターカバーに求められる良好な内部視認性、機械的強度、耐溶剤性、耐熱変形性を兼ね備えた、メーターカバー用及び液晶保護カバー用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】上記目的を達成するべく、本発明は、重量平均分子量(Mw)が80,000~180,000のメタクリル系樹脂と、前記メタクリル系樹脂100質量部に対して0.003質量部以上0.1質量部以下の赤外線吸収剤と、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ又はトリグリセリド系離型剤、高級飽和炭化水素、高級不飽和炭化水素、金属石鹸、リン酸ジエステル化合物、並びに、リン酸エステル化合物の金属塩、からなる群より選択される1種以上の離型剤を0.02質量部以上1.8質量部以下と、を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量(Mw)が80,000~180,000のメタクリル系樹脂と、
前記メタクリル系樹脂100質量部に対して0.003質量部以上0.1質量部以下の赤外線吸収剤と、
高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ又はトリグリセリド系離型剤、高級飽和炭化水素、高級不飽和炭化水素、金属石鹸、リン酸ジエステル化合物、並びに、リン酸エステル化合物の金属塩、からなる群より選択される1種以上の離型剤を0.02質量部以上1.8質量部以下と、
を含むことを特徴とする、メーターカバー用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項2】
酸化防止剤及び紫外線吸収剤を、さらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項3】
前記赤外線吸収材料が、タングステン系、ランタン系、スズ系無機系、アンチモン系赤外線吸収剤から選ばれることを特徴とする、請求項1又は2に記載のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項4】
前記メタクリル系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下の光拡散性剤を、さらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項5】
中間点ガラス転移温度が109℃以上150℃以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物を、成形してなることを特徴とする、メーターカバー。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物を、成形してなることを特徴とする、車輛用メーターカバー。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物を、成形してなることを特徴とする、二輪車用メーターカバー。
【請求項9】
重量平均分子量(Mw)が80,000~180,000のメタクリル系樹脂と、
前記メタクリル系樹脂100質量部に対して0.003質量部以上0.1質量部以下の赤外線吸収剤と、
高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ又はトリグリセリド系離型剤、高級飽和炭化水素、高級不飽和炭化水素、金属石鹸、リン酸ジエステル化合物、並びに、リン酸エステル化合物の金属塩、からなる群より選択される1種以上の離型剤を0.02質量部以上1.8質量部以下と、
を含むことを特徴とする、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項10】
酸化防止剤及び紫外線吸収剤を、さらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項11】
前記赤外線吸収材料が、タングステン系、ランタン系、スズ系無機系、アンチモン系赤外線吸収剤から選ばれることを特徴とする、請求項9又は10に記載の液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項12】
前記メタクリル系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下の光拡散性剤を、さらに含むことを特徴とする、請求項9又は10に記載の液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項13】
中間点ガラス転移温度が109℃以上150℃以下であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項14】
請求項9又は10に記載の液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物を、成形してなることを特徴とする、液晶保護カバー。
【請求項15】
請求項9又は10に記載の液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物を、成形してなることを特徴とする、車輛用液晶保護カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、メーターカバー、車輛用メーターカバー、二輪車用メーターカバー、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー及び車輌用液晶保護カバーに関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル系樹脂組成物は、他のプラスチック透明樹脂に比べて、透明樹脂として、高い光透過率、耐候性、剛性等を有することに特徴があり、従来から、電気電子用部材、電池用部材、車両用部材、照明器具、建築用材料、看板、銘板、絵画、表示装置の窓等の、広い用途で用いられている。これらの中でも、高い光透過率、高外観性、良好な耐候性により、電気電子用部材、車両用部品、照明器具として、メタクリル系樹脂組成物が多く使用されている。
【0003】
建造物や自動車、列車、バス等の屋根材、照明装置や看板等の保護材としては、太陽光や、蛍光灯・ランプ等の光源光に含まれる赤外線領域の光(以下、「熱線」と略す)を遮断する性質(以下、「熱線遮蔽性」と略す)を有しつつ、可視光領域では高い全光線透過率を有する樹脂成形体が要求されている。これは乗員又は住人の快適性を良好なものとし、空調に対する要求を低減させることで、エネルギー消費を抑制するためである。かかる要求に応えるべく様々な検討がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、無機IR吸収剤としてのセシウムがドープされた酸化タングステンと、ホスフィン系酸化防止剤を含む透明な熱可塑性合成物質からなる熱吸収ポリマー組成物が開示されており、実施形態として、セシウムがドープされた酸化タングステンを含むポリカーボネート樹脂からなるシート(ポリカーボネート樹脂板)が開示されている。
しかしながら、特許文献1記載のポリカーボネート樹脂板では、ポリカーボネート樹脂板への射出成形を、300℃という高温で行うため、セシウムがドープされた酸化タングステン粒子が熱分解して樹脂板の熱吸収特性や全光線透過率が低下し、黄色に変化するだけでなく、ポリカーボネート樹脂からなる樹脂板であるため、メーターカバーのような太陽光が当たるような部材としては耐候性が不十分であった。また、実用条件に近い湿度を含んだ熱に長期間さらされると、赤外線吸収剤が変性してしまい効果が十分に発揮できないという課題は残ったままであった。
【0005】
特許文献2には、近年切削加工時の焼き付きやカケ(バリ)の発生が抑制されていること、すなわち切削加工性が良好であること、加熱時の収縮異方性が小さいこと、屋外での使用に際しての耐候性に優れ、高い全光線透過性と熱線遮蔽性を有し、且つ、切削加工性が良好である、樹脂成形体を提供するためのメタクリル系樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献3には、透明性、低着色性及び熱線遮蔽性に優れた樹脂成形体;並びに前記樹脂成形体を含む熱線遮蔽板、屋根材、窓材として、特定構造の分散剤を使用したメタクリル系樹脂組成物の成形体が開示されている。
しかしながら、特許文献2及び特許文献3に開示されたメタクリル系樹脂組成物は、液晶保護カバー、メーターカバーとしての使用は想定されておらず、液晶保護カバー、メーターカバーのような、溶融樹脂と金属面が接する面積が大きい成形体の材料として用いるには好適なものではなかった。
【0006】
さらに、特許文献4には、赤外線吸収能が良好であることに加えて、紫外線が当たる屋外環境に対する長期安定性、長期耐熱安定性、長期湿熱安定性に優れた特定構造のメタクリル系樹脂に、紫外線吸収剤、リン酸系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、赤外線吸収剤を含有させたメタクリル系樹脂組成物や、それを用いた成形体が開示されている。
しかしながら、特許文献4においても、液晶保護カバー、メーターカバーのような、溶融樹脂と金属面が接する面積が大きい成形体の材料として用いることが想定されておらず、成形性についてはさらなる改善が望まれていた。
【0007】
加えて、特許文献1~4に開示されたメタクリル系樹脂組成物は、液晶保護カバー、メーターカバーのような薄手長物形状で他部材との接合部を持つような用途に対して成形性、流動性や強度のバランス、耐熱変形性が十分なものとは言えず改善の余地があった。
一方で、メーターカバーにおいて特に自動車用や二輪車用のメーターユニットでは直射日光を受けた時にメーターユニット内部部材の変形や、液晶がメーターユニット内部に配置される場合液晶の不具合が生じるおそれがあり、これらの変形や不具合が生じた場合には、内部部材の仕様変更やメーター形状の変更などが必要となるが、変形や不具合が解決できる内部部材、液晶材料が存在するとは限らない上、仕様や形状の変更には開発コストや人的コストが増大し、納期遅れを招く可能性があり、不具合を未然に防ぐことが重要である。
液晶保護カバーにおいても直射日光を受けた時に内部液晶の不具合を防ぐことが車載用途においては運転の安全性確保に対し重要である。そのため、メーターカバーの材料については、上述した問題を解決できるような材料の開発が強く求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2013-513708号公報
【特許文献2】特開2017-122176号公報
【特許文献3】国際公開2020/027212号
【特許文献4】特開2019-077866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、良好な熱線遮蔽性を有し、液晶保護カバー、メーターカバーとして用いた際に内部部材を効果的に熱線から保護でき、液晶保護カバー、メーターカバーに求められる良好な内部視認性、機械的強度、耐溶剤性、耐熱変形性を兼ね備えた、メーターカバー用メタクリル系樹脂組成物及び液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物、並びに、これらの組成物を用いたメーターカバー及び液晶保護カバーを提供とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、メーターカバー、液晶保護カバーとして用いる材料について、上述した従来技術の問題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、特定のメタクリル系樹脂と、離型剤と、赤外線吸収材と、を含むメタクリル系樹脂組成物を用いることによって、液晶保護カバー、メーターカバーとして用いた際に、内部に配置された液晶や内部部材を効果的に熱線から保護でき、液晶保護カバー、メーターカバーに求められる良好な内部視認性、機械的強度、耐溶剤性及び耐熱変形性を兼ね備えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
〔1〕
重量平均分子量(Mw)が80,000~180,000のメタクリル系樹脂と、
前記メタクリル系樹脂100質量部に対して0.003質量部以上0.1質量部以下の赤外線吸収剤と、
高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ又はトリグリセリド系離型剤、高級飽和炭化水素、高級不飽和炭化水素、金属石鹸、リン酸ジエステル化合物、並びに、リン酸エステル化合物の金属塩、からなる群より選択される1種以上の離型剤を0.02質量部以上1.8質量部以下と、
を含むことを特徴とする、メーターカバー用メタクリル系樹脂組成物。
〔2〕
酸化防止剤及び紫外線吸収剤を、さらに含むことを特徴とする、前記〔1〕に記載のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物。
〔3〕
前記赤外線吸収材料が、タングステン系、ランタン系、スズ系無機系、アンチモン系赤外線吸収剤から選ばれることを特徴とする、前記〔1〕又は〔2〕に記載のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物。
〔4〕
前記メタクリル系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下の光拡散性剤を、さらに含むことを特徴とする、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物。
〔5〕
中間点ガラス転移温度が109℃以上であることを特徴とする、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物。
〔6〕
前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物を、成形してなることを特徴とする、メーターカバー。
〔7〕
前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物を、成形してなることを特徴とする、車輛用メーターカバー。
〔8〕
前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物を、成形してなることを特徴とする、二輪車用メーターカバー。
〔9〕
重量平均分子量(Mw)が80,000~180,000のメタクリル系樹脂と、
前記メタクリル系樹脂100質量部に対して0.003質量部以上0.1質量部以下の赤外線吸収剤と、
高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ又はトリグリセリド系離型剤、高級飽和炭化水素、高級不飽和炭化水素、金属石鹸、リン酸ジエステル化合物、並びに、リン酸エステル化合物の金属塩、からなる群より選択される1種以上の離型剤を0.02質量部以上1.8質量部以下と、
を含むことを特徴とする、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物。
〔10〕
酸化防止剤及び紫外線吸収剤を、さらに含むことを特徴とする、前記〔9〕に記載の液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物。
〔11〕
前記赤外線吸収材料が、タングステン系、ランタン系、スズ系無機系、アンチモン系赤外線吸収剤から選ばれることを特徴とする、前記〔9〕又は〔10〕に記載の液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物。
〔12〕
前記メタクリル系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下の光拡散性剤を、さらに含むことを特徴とする、前記〔9〕~〔11〕のいずれかに記載の液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物。
〔13〕
中間点ガラス転移温度が109℃以上150℃以下であることを特徴とする、〔9〕~〔12〕のいずれかに記載の液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物。
〔14〕
〔9〕~〔13〕のいずれかに記載の液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物を、成形してなることを特徴とする、液晶保護カバー。
〔15〕
〔9〕~〔13〕のいずれかに記載の液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物を、成形してなることを特徴とする、車輛用液晶保護カバー。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な熱線遮蔽性を有し、液晶保護カバー、メーターカバーとして用いた際に内部に配置された液晶、内部部材を効果的に熱線から保護でき、液晶保護カバー、メーターカバーに求められる良好な内部視認性、機械的強度、耐溶剤性、耐熱変形性を兼ね備えた、メーターカバー用メタクリル系樹脂組成物及び液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物、並びに、これらの組成物を用いたメーターカバー及び液晶保護カバーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】耐溶剤性の評価のために用いた装置の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。すなわち、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
なお、以下の記載において、本実施形態のメタクリル系樹脂をなす重合体を構成する構成単位のことを、「~単量体単位」、及び/又は複数の該「~単量体単位」を含む「~構造単位」ということがある。また、かかる「~単量体単位」の構成材料のことを、「単位」を省略して、単に「~単量体」と記載する場合もある。
【0015】
<メーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物>
本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂と、赤外線吸収剤と、離型剤と、を含むことを特徴とする。含有成分は、それぞれ少なくとも1種類ずつ含む必要があるが、2種類以上の各成分を含むこともできる。
【0016】
(メタクリル系樹脂)
本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂を含む。
前記メタクリル系樹脂は、特に限定はされないが、メタクリル酸エステル単量体単位80~99.9質量%と、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なビニル単量体からなるビニル単量体単位0.1~20質量%と、を含有することが好ましい。
なお、メタクリル系樹脂は、一種単独のメタクリル系樹脂を用いてもよく、二種以上のメタクリル系樹脂を併用したものであってもよい。
【0017】
メタクリル系樹脂に含有されるメタクリル酸エステル単量体単位を構成するメタクリル酸エステル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2-エチルヘキシル)、メタクリル酸(t-ブチルシクロヘキシル)、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸(2,2,2-トリフルオロエチル)等が挙げられる。これらの中でも、入手のしやすさ、価格の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルを用いることが好ましい。
なお、前記メタクリル酸エステル単量体は、一種のみを単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0018】
前記メタクリル酸エステル単量体単位の含有量は、前記メタクリル系樹脂100質量%において、80~99.9質量%であることが好ましく、90~99.8質量%であることがより好ましく、95~99.5質量%であることがさらに好ましく、96~99.5質量%であることが特に好ましい。前記メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が99.9質量%以下であることにより、成形時における樹脂の分解を防止でき、揮発成分であるメタクリル酸エステル単量体の発生やシルバーと呼ばれる成形不良を効果的に防止できる。また、前記メタクリル酸エステル単量体単位が80質量%以上であることにより、成形品に一般的に必要とされている耐熱性を担保できる。十分な耐熱性を有することにより、剛性も確保でき、成形体として一般的に求められる強度を確保できる。
【0019】
前記メタクリル系樹脂に含まれる、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリレート基を1つ有するアクリル酸エステル単量体が挙げられる。
その他にも、(メタ)アクリレート基を2つ以上有する、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;といったアクリル酸エステル単量体が挙げられる。
これらの中でも、前記メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なビニル単量体は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルを用いることが好ましく、さらには、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルを用いることが、入手のしやすさから好ましい。
なお、これらは、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0020】
前記メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なビニル単量体からなるビニル単量体単位の含有量は、メタクリル系樹脂100質量%において、0.1~20質量%であることが好ましく、0.2~18質量%であることがより好ましく、0.5~16質量%であることがさらに好ましく0.5質量%以上5質量%以下であることがさらにより好ましく、0.5質量%以上4質量%以下であることが特に好ましい。0.1質量%以上であることにより、成形時における樹脂の分解を防止でき、揮発成分であるメタクリル酸エステル単量体の発生やシルバーと呼ばれる成形不良を効果的に防止できる。また、ビニル単量体単位が20質量%以下であることにより、成形品に一般的に必要とされている耐熱性を担保できる。
また、前記ビニル単量体単位の含有量は、メタクリル系樹脂(100質量%)に対して、特に(メタ)アクリレート基を2つ有する単量体を使用する場合には0.3質量%以下での使用が、(メタ)アクリレート基を3つ有する単量体を使用する場合には0.15質量%以下での使用が、(メタ)アクリレート基を4つ以上有する単量体を使用する場合には0.06質量%以下での使用が、射出成形時の流動性の確保や、透明性維持の観点から好ましい。
【0021】
また、前記メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な、アクリル酸エステル単量体以外の他のビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等のα,β-不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、桂皮酸等の不飽和基含有二価カルボン酸及びそれらのアルキルエステル;スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、イソプロペニルベンセン(α-メチルスチレン)等のスチレン系単量体;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;マレイミドや、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド等;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等が挙げられる。
これらの中でも、耐熱変形性を向上させる目的から、前記アクリル酸エステル単量体以外の他のビニル単量体として、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド等や無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸無水物類に由来する構造体単位を1質量%以上20質量%以下含有することが好ましく、1質量%以上12質量%以下含有することがより好ましく、1質量%以上6質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0022】
なお、前記メタクリル系樹脂においては、耐熱性、成形加工性等の特性を向上させる目的で、上述したビニル単量体以外のビニル系単量体を適宜添加して共重合させてもよい。
前記メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なアクリル酸エステル単量体や、前記例示したアクリル酸エステル単量体以外のビニル系単量体は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0023】
次に、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物に含まれるメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)について説明する。
前記メタクリル系樹脂は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した重量平均分子量(Mw)が、80,000~180,000であることを要する。
優れた機械的強度及びアルコール系消毒剤やガソリンへの耐溶剤性を得るためには、前記メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限は、85,000以上であることが好ましく、92,000以上であることがより好ましく、95,000以上であることがさらに好ましく、97,000以上であることがさらにより好ましく、98,500以上であることが特に好ましい。
また、メタクリル系樹脂組成物がメーターカバー、液晶保護カバーに要求されるような良好な流動性を示すためには、メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)の上限は、16,5000以下であることが好ましく、155,000以下であることがより好ましく、148,000以下であることがさらに好ましく、144,000以下であることが特に好ましい。
前記メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が80,000~180,000の範囲であることにより、メーターカバー、液晶保護カバーとして必要な流動性、機械的強度、及び耐溶剤性のバランスを図ることができ、良好な成形加工性が維持される。
【0024】
前記メタクリル系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、1.5~6.0であることが好ましく、1.7~5.5であることがより好ましく、2.4~4.0であることがさらに好ましい。前記メタクリル系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が1.2以上であることにより良好な流動性を発現し、6.0以下であることにより、メタクリル系樹脂が発現する物性が安定する。
ここで、Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
なお、前記メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPCで測定することができ、例えば、後述する〔実施例〕に記載の方法により測定することができる。具体的には、あらかじめ単分散の重量平均分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル系樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておく。続いて得られた検量線を元に、所定の測定対象のメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めることができ、これらにより分子量分布(Mw/Mn)を算出することができる。数平均分子量(Mn)とは、単純な分子1本あたりの分子量の平均であり、系の全重量/系中の分子数で定義される。重量平均分子量(Mw)とは、重量分率による分子量の平均で定義される。
【0025】
また、前記メタクリル系樹脂の含有量は、メーターカバー、液晶保護カバーとしての視認性を担保するため、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物100質量%中、85~99.9質量%であることが好ましく、90~99.8質量%であることがより好ましく、95~99.7質量%であることがさらに好ましく、98質量%以上99.7質量%以下であることが特に好ましい。
【0026】
また、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物に含まれるメタクリル系樹脂は、溶液重合法、塊状重合法やキャスト重合法、懸濁重合法により製造できるが、これらの方法に限定されるものではない。好ましくは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法であり、より好ましくは、除熱の観点から溶液重合法、懸濁重合法が挙げられる。
なお、前記メタクリル系樹脂の重合温度については、重合方法に応じて適宜最適の重合温度を選択すればよいが、懸濁重合法においては好ましくは50℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃以上90℃以下である。溶液重合右法においては80℃以上190℃以下であることが好ましく、120℃以上180℃以下であることがより好ましい。
【0027】
前記メタクリル系樹脂を製造する際には、重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、以下に限定されるものではないが、ラジカル重合を行う場合は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル等のアゾ系の一般的なラジカル重合開始剤が挙げられる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのラジカル重合開始剤と適当な還元剤を組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。
これらのラジカル重合開始剤及び/又はレドックス系開始剤は、前記メタクリル系樹脂の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して、0~1質量部の範囲で用いるのが一般的であり、重合を行う温度と重合開始剤の半減期を考慮して適宜選択することができる。
【0028】
前記メタクリル系樹脂の重合方法として、塊状重合法、キャスト重合法、溶液重合法、又は懸濁重合法を選択する場合には、前記メタクリル系樹脂の着色を防止する観点から、過酸化系重合開始剤を用いて重合することが好ましい。
前記過酸化系重合開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられ、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ラウロイルパーオキサイドがより好ましい。
また、メタクリル系樹脂を、90℃以上の高温下で溶液重合法により重合する場合には、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤等を重合開始剤として用いることが好ましい。
前記過酸化物、前記アゾビス開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等が挙げられる。
【0029】
さらに、前記メタクリル系樹脂を製造する際には、本発明の目的を損わない範囲で、メタクリル系樹脂の分子量の制御を行ってもよい。前記メタクリル系樹脂の分子量を制御する方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤、ジチオカルバメート類、トリフェニルメチルアゾベンゼン、テトラフェニルエタン誘導体等のイニファータ等を用いることによって分子量の制御を行う方法が挙げられる。また、これらの添加量を調整することにより、分子量を調整することも可能である。
【0030】
前記連鎖移動剤としては、取扱性や安定性の観点から、アルキルメルカプタン類が好ましく、当該アルキルメルカプタン類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
【0031】
上述した連鎖移動剤や、イニファータは、目的とするメタクリル系樹脂の分子量に応じて適宜添加することができるが、一般的には、前記メタクリル系樹脂の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して0.001質量部~5質量部の範囲で用いられる。
また、その他の分子量制御方法としては、重合方法を変える方法、重合開始剤、上述した連鎖移動剤やイニファータ等の量を調整する方法、重合温度等の各種重合条件を変更する方法等が挙げられる。
これらの分子量制御方法は、一種の方法のみを用いてもよく、二種以上の方法を併用してもよい。
【0032】
(赤外線吸収剤)
本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物は、さらに赤外線吸収剤を含む。前記赤外線吸収剤を含有することで、太陽光などの熱線を吸収し、メーターカバー用メタクリル系樹脂組成物をメーターカバーに用いた際の内部部材の保護、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物を液晶保護カバーに用いた際の内部液晶の保護を効果的に行うことができる。
【0033】
前記赤外線吸収剤は、可視光線透過率の低下を抑えながら、赤外線領域に吸収極大波長を有する化合物であればよく、極大吸収を700~2000nmの範囲に持つものであることが好ましく、1000~1700nmの範囲に持つものであることがより好ましい。
【0034】
前記赤外線吸収剤の種類については、以下に限定されるものではないが、具体的には、複合タングステン酸化物、ホウ素化ランタン、複合スズ酸化物、複合アンチモン酸化物等の無機化合物や、ペリレン色素、シアニン色素、クアテリレン色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン化合物、ニッケルジチオレン化合物、スクアリウム色素、キノン系化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物等の有機化合物が挙げられる。
【0035】
上述した中でも、前記赤外線吸収剤は、フタロシアニン化合物、酸化タングステン系化合物、ホウ素化ランタン及びジインモニウム色素の少なくとも1つを用いることが、耐候性の観点から好ましく、酸化タングステン系化合物、ホウ素化ランタンを用いることがより好ましい。
前記酸化タングステン系化合物(例えば、セシウムドープ酸化タングステン)や前記ホウ素化ランタン(例えば、六ホウ化ランタン)を採用することにより、太陽光に含まれる光強度が大きい近赤外線領域の光の遮蔽率を向上させることができる。さらに、前記酸化タングステン系化合物や前記ホウ素化ランタンを採用することにより、最終的に得られるメタクリル系樹脂組成物を硬くすることができ、熱運動を適切に抑制でき、さらに、酸素遮断ができ、高い耐光性と耐熱性をも達成できる。このような効果は、セシウムが導入された酸化タングステンを用いる場合に、より顕著に発揮される。
【0036】
なお、赤外線吸収剤として前記無機化合物を用いる場合、効果的に赤外線を吸収するためにシェラー法で計算される粒子の直径(シェラー径)が、10nm以上であることが好ましい。また、メタクリル系樹脂組成物をメーターカバー、液晶保護カバーとした時の内部の視認性確保する観点から、シェラー法で計算される粒子の直径は、100nm以下であることが好ましい。粒子径は、15~80nmであることがより好ましく、20~60nmであることがさらに好ましく、20~50nmであることがさらにより好ましく、25~45nmであることがよりさらに好ましい。
【0037】
また、赤外線吸収剤として前記無機化合物を選択する場合、前記メタクリル系樹脂との相溶性を向上させ、良好な分散性を確保するために、無機化合物表面に分散剤をコーティングさせることが好ましい。分散剤として好ましいものは、ポリメチルメタクリレート系分散剤、ポリアクリレート系分散剤、ポリエーテル系分散剤及びポリエステル系ポリマー分散剤であり、ポリメチルメタクリレート系分散剤、ポリアクリレート系分散剤及びポリエステル系分散剤が、高温でも安定な分散剤として特に好ましい。これらのポリマーの混合物又はポリメチルメタクリレート系コポリマー、ポリアクリレート系コポリマーも使用できる。
なお、上述した分散剤は、商業的に入手できる。特に、前記分散剤は、ポリアクリレートに基づく分散剤が適当である。このような適当な分散剤としては、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社から商品名EFKA(登録商標)、EFKA(登録商標)4500、及びEFKA(登録商標)4530として入手できる。ポリエステル含有分散剤は、同様に適当である。それらは、例えば、Avecia社から、商品名Solsperse(登録商標)、Solsperse(登録商標)20000、24000Sc、26000、27000の商品名で入手可能である。中でも特に、前記メタクリル系樹脂への相溶性が良好で、メーターカバーとした時の透明性を良好なものにするためにポリメチルメタクリレート系分散剤、ポリアクリレート系分散剤を用いることが特に好ましい。
【0038】
また、前記赤外線吸収剤の含有量については、効果的に赤外線を吸収し、メーターカバーとした時の内部部材の保護、液晶保護カバーとしたときに内部に配置された液晶の保護
を効果的に行うために、有機化合物の赤外線吸収剤を用いる場合、メタクリル系樹脂100質量部に対し、0.003質量部以上であることが必要であり、好ましくは0.004質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、さらに好ましくは0.008質量部以上である。
また、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物をメーターカバー、液晶保護カバーとした時の透明性や高外観維持の観点から、前記赤外線吸収剤として有機化合物の赤外線吸収剤を用いる場合には、前記メタクリル系樹脂100質量部に対し、0.1質量部以下含むことが必要であり、0.08質量部以下含むことが好ましく、0.06質量部以下含むことがより好ましく、0.04質量部以下含むことがさらにより好ましく、0.03質量部以下含むことが特に好ましい。
【0039】
前記赤外線吸収剤として無機化合物の赤外線吸収剤を用いる場合には、効果的に赤外線を吸収し、メーターカバーとした時の内部部材の保護、液晶保護カバーとしたときの内部液晶の保護を効果的に行うため、前記メタクリル系樹脂100質量部に対し、0.003質量部以上含むことが必要であり、0.005質量部以上含むことが好ましく、0.008質量部以上含むことがより好ましく、0.012質量部以上含むことがさらに好ましい。
さらにまた、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物をメーターカバー、液晶保護カバーとした時の透明性や高外観維持の観点から、前記無機化合物の赤外線吸収剤を用いる場合の含有量は、前記メタクリル系樹脂100質量部に対し、0.1質量部以下であることが必要であり、0.07質量部以下であることがより好ましく、0.042質量部以下であることがさらに好ましく、0.03質量部以下であることがさらにより好ましく、0.02質量部以下であることが特に好ましい。
なお、前記赤外線吸収剤の含有量は、本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物の用途に要求される赤外線吸収能(熱線遮蔽性)に合わせて、上述した範囲内で適宜選択することができる。
なお、本実施形態における赤外線吸収剤の含有量は、分散剤等の表面処理剤を除いた有効成分での含有量である。
【0040】
(離型剤)
本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物は、離型剤をさらに含む。
前記離型剤をメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物中、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物中に用いることで、メーターカバー、液晶保護カバーのような金型や金属ロールなどの金属面との接触面積が大きい部材を製造する際に、メーターカバー、液晶保護カバーを取り出しやすくし、生産サイクルを向上させることができる。また、特に射出成形においては離型剤が金型とのせん断発熱を抑制し、熱による赤外線吸収剤の変性や成形時の外観不良を抑制することができる。上記効果は、メーターカバー、液晶保護カバーのような金型との接触面積が大きい部材では溶融樹脂を金型内に流すことで発生するせん断発熱が大きくなるため、より効果が顕著になる。
【0041】
前記離型剤としては、高級脂肪酸;高級脂肪酸エステル;グリセリン脂肪酸エステル;高級脂肪酸の、モノグリセリド系離型剤、ジグリセリド系離型剤又はトリグリセリド系離型剤;高級飽和炭化水素;高級不飽和炭化水素;金属石鹸;リン酸ジエステル化合物;リン酸エステル化合物の金属塩;等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物をメーターカバーに用いた際の金型腐食を抑える観点から、高級脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ又はトリグリセリド系離型剤、高級飽和炭化水素、高級不飽和炭化水素、及び、金属石鹸からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ又はトリグリセリド系離型剤、高級飽和炭化水素、及び、高級不飽和炭化水素からなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
【0042】
本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物に含まれる離型剤の量は、赤外線吸収剤の変性を抑制や離型効果を十分に発揮し、金型内での剥離割れや成形不良を防止する観点から、前記メタクリル系樹脂100質量部に対して、0.02質量%以上であることが必要で、0.03質量%以上であることが好ましく、0.07質量%以上であることがより好ましく、0.15質量%以上であることがさらに好ましく、0.2質量%以上であることがさらにより好ましい。一方、本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物に含まれる離型剤の量は、前記離型剤の揮散による成形不良や外観不良を防止する観点からは、前記メタクリル系樹脂100質量部に対し、1.8質量%以下であることが必要で、1.3質量%以下であることが好ましく、0.9質量%以下であることがより好ましく、0.7質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることがさらにより好ましく、0.4質量%以下であることが特に好ましい。
【0043】
(紫外線吸収剤)
本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物は、さらに紫外線吸収剤を含むことが好ましい。赤外線吸収剤の劣化を抑制し長期的性能を良好にし、メーターカバーに用いた際の内部部材保護効果をより高めることができるため、液晶保護カバーに用いた際の内部液晶の紫外線劣化からの保護効果を高めることができるためである。
前記紫外線吸収剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられ、好ましくはベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物である。製品名としては、BASF製チヌビンP、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン329、チヌビン213、チヌビン571等が挙げられる。
これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
前記紫外線吸収剤の含有量は、効果的に紫外線を吸収し、且つ、前記赤外線吸収剤の変性を防ぎ、メーターカバーの内部部材保護をより長期的に安定して行う観点から、前記メタクリル系樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.02質量部以上、さらに好ましくは0.04質量部以上、さらにより好ましくは0.05質量部以上である。また、メタクリル系樹脂組成物の成形時のブリードアウトを抑制するために、前記紫外線吸収剤の含有量は、前記メタクリル系樹脂100質量部に対し、0.4質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.3質量部以下、さらに好ましくは0.2質量部以下、さらにより好ましくは0.15質量部以下である。
【0045】
また、前記紫外線吸収剤の融点(Tm)については、良好な分散性を達成する観点から50℃以上であることが好ましく、93℃以上であることがより好ましく、96℃以上であることがさらに好ましく、100℃以上であるであることが特に好ましい。さらにまた、前記紫外線吸収剤の融点(Tm)については、280℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、230℃以下であることがさらに好ましい。
【0046】
(酸化防止剤)
本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物は、さらに酸化防止剤を含有することが好ましい。
前記酸化防止剤は、メタクリル系樹脂組成物の変性を防止するだけでなく、赤外線吸収剤の変性を防止することもでき、メーターカバーとした時の内部部材保護を長期的に安定して行うことができる。
【0047】
前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ホスフィン系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中でも、メタクリル系樹脂組成物や赤外線吸収剤の変性を効果的に防止する観点から、リン酸系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることがより好ましく、これらを併用することがさらに好ましい。有毒な分解ガスを生じるホスフィン系酸化防止剤は用いないことが好ましい。
【0048】
前記リン酸系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、CAS No.31570-04-4、3806-34-6、26741-53-7、119345-01-6、203255-81-6、145650-60-8、52664-24-1、80693-00-1、126050-54-2、80410-33-9、154862-43-8等が挙げられる。
【0049】
また、前記リン酸系酸化防止剤は、酸素原子と直接結合している2つ以上の芳香族環を有し、酸素原子と直接結合している2つ以上の芳香族環同士が直接もしくは-(CH2)n-(nは1~4、好適には1~2の整数)を介して結合しているものを用いることが好ましい。このようなリン酸系酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と併用された時、赤外線吸収剤の酸化劣化を抑制する効果が顕著になり、また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の酸化劣化を抑制することができ、高温環境下や高温多湿環境下に長時間さらされても赤外線吸収剤の変性を抑制し、赤外線吸収能を長期に維持させることができる。
前記芳香族環としては、炭素数3~16、好適には炭素数3~6の芳香族炭化水素基又は複素芳香族基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等の芳香族炭化水素基;イミダゾール基、ピラゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、ピラジン基、ピリジル基、キノリン基、イソキノリン基等の複素芳香族基が挙げられる。
前記リン酸系酸化防止剤として、酸素原子と直接結合している2つ以上の芳香族環を有し、酸素原子と直接結合している2つ以上の芳香族環同士が直接もしくは-(CH)n-(nは1~4の整数)を介して結合しているものの具体的な製品名は、例えば、アデカ製アデカスタブHP-10、住友化学製スミライザーGP、BASF製イルガフォス12、三光製HCA等が挙げられる。
【0050】
前記リン酸系酸化防止剤の融点(Tm)については、良好な分散性を達成する観点から50℃以上であることが好ましく、より好ましくは93℃以上、さらに好ましくは96℃以上、さらにより好ましくは100℃以上である。また、280℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、230℃以下であることがさらに好ましい。
【0051】
なお、前記リン酸系酸化防止剤の含有量は、赤外線吸収剤の変性を効果的に防止する観点からは、前記メタクリル系樹脂100質量部に対し、0.03質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.06質量部以上である。また、メタクリル系樹脂組成物のブリードアウトによる金型汚染を防止する観点からは、前記リン酸系酸化防止剤の含有量は、前記メタクリル系樹脂100質量部に対し、0.5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.45質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下、さらにより好ましくは0.2質量部以下である。
【0052】
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、CAS No.96-69-5、6683-19-8、2082-79-3、90498-90-1、79-74-3、1879-09-0、85-60-9、119-47-1、36443-68-2、68610-51-5、61167-58-6、123968-25-2、991-84-4、40601-76-1、27676-62-6、1709-70-2、32687-78-8、41484-35-9、23128-74-7、35074-77-2、35958-30-6等が挙げられる。
【0053】
また、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、分子中に、酸素原子又は窒素原子等のヘテロ原子を1~3個、好適には2~3個含有する環構造(5員環、6員環等)を少なくとも一つ有するものを用いることが好ましい。このようなヒンダードフェノール系酸化防止剤は、リン酸系酸化防止剤と併用された際、リン酸系酸化防止剤の酸化劣化を抑制する効果が顕著になり、高温環境下や高温多湿環境下に長時間さらされても赤外線吸収剤の変性を抑制し、赤外線吸収能を維持させることができる。分子中に、酸素原子又は窒素原子等のヘテロ原子を含有する環構造を少なくとも一つ有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体的な製品名としては、例えば、住友化学製スミライザーGA-80、アデカ製アデカスタブAO-80、アデカ製アデカスタブAO-20、BASF製イルガノックス565、SONGWON製SONGNOX1790、SONGWON製SONGNOX3114等が挙げられる。
【0054】
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の融点(Tm)は、良好な分散性を達成する観点から50℃以上であることが好ましく、より好ましくは93℃以上、さらに好ましくは96℃以上、さらにより好ましくは100℃以上である。また、280℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、230℃以下であることがさらに好ましい。
【0055】
なお、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、リン酸系酸化防止剤の劣化抑制、赤外線吸収剤の劣化抑制を効果的に行う観点から、前記メタクリル系樹脂100質量部に対し、0.02質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.04質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上である。また、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、樹脂組成物の着色を抑える観点から、前記メタクリル系樹脂100質量部に対し、0.4質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.35質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下、さらにより好ましくは0.2質量部以下である。
【0056】
また、前記赤外線吸収剤の変性を抑制する観点から、前記紫外線吸収剤、前記リン酸系酸化防止剤及び前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の融点(Tm)が、いずれも50℃以上であることが好ましい。
前記紫外線吸収剤、前記リン酸系酸化防止剤及び前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の融点が50℃以上であると、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の製造において、熱溶融によってメタクリル系樹脂中に他の成分を分散させる際、必要以上に粘度が低下せず、良好な分散性を達成することができることに加え、赤外線吸収剤の劣化をより効果的に抑制することができる。同様の観点から、前記紫外線吸収剤、前記リン酸系酸化防止剤及び前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の融点は、93℃以上であることがより好ましく、96℃以上であることがさらに好ましく、100℃以上であることがさらにより好ましい。また、280℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、230℃以下であることがさらに好ましい。
【0057】
(その他の成分)
本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した成分以外のもの(その他の成分)を含むことができる。
【0058】
前記その他の成分として、従来公知の樹脂(その他の樹脂)を混合することができる。
当該その他の樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が好適に使用される。
熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂、メタクリル系樹脂、AS系樹脂、BAAS系樹脂、MBS樹脂、AAS樹脂、生分解性樹脂、ポリカーボネート-ABS樹脂のアロイ、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。
特に、AS樹脂、BAAS樹脂は、流動性を向上させるために好ましく、ABS樹脂、MBS樹脂は耐衝撃性を向上させるために好ましく、また、ポリエステル樹脂は耐薬品性を向上させるために好ましい。
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等は、難燃性を向上させる効果が得られる。
また、硬化性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、キシレン樹脂、トリアジン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ウレタン樹脂、オキセタン樹脂、ケトン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、スチリルピリジン樹脂、シリコン樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
これらの樹脂は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
前記その他の成分として、剛性や寸法安定性等の所定の各種特性を付与するため、各種の添加剤を混合することができる。
前記添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩等の帯電防止剤、光安定剤等の安定剤;難燃剤、難燃助剤、硬化剤、硬化促進剤、導電性付与剤、応力緩和剤、結晶化促進剤、染料、加水分解抑制剤、潤滑剤、耐衝撃性付与剤、摺動性改良剤、相溶化剤、核剤、強化剤、補強剤、流動調整剤、増感材、着色用染料、着色用顔料、ゴム質重合体、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、充填剤、消泡剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌・防黴剤、防汚剤、導電性高分子、カーボンブラック等が挙げられる。
【0060】
本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物における、上述したその他の樹脂及び添加剤の含有量は、メーターカバーや液晶保護カバーとして要求される内部視認性を保ち、ブリードアウト等の成形不良を防止する観点から、それぞれ、前記メタクリル系樹脂組成物100質量%中、0.001~5質量%であることが好ましく、0.01~3質量%であることがより好ましく、0.02~2質量%であることがさらに好ましい。上記数値範囲で含有することにより、それぞれの材料の機能を発揮することができる。
【0061】
本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物は、光拡散剤をさらに含むことが好ましい。光拡散剤を含むことで、本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物を成形体に用いた際、成形体表面で光を拡散反射させ、より太陽光を内部へ透過させにくくすることに加え、内部視認性が低下する一因となる成形体表面への外部の反射像映り込みを効果的に防止することができる。
【0062】
ここで、前記光拡散剤としては、二酸化チタン、三酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の無機粒子や、架橋シリコーン樹脂、架橋メタクリル系樹脂、架橋スチレン-メタクリル酸メチル系樹脂、架橋スチレン樹脂等の有機粒子が好ましい。これらの中でも、本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物をメーターカバーに、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物を液晶保護カバーに用いた際、内部視認性を確保する観点から、有機粒子であることがより好ましく、さらに長期使用特性を高めることができる観点から、架橋シリコーン樹脂、架橋スチレン-メタクリル酸メチル系樹脂を用いることがさらに好ましい。
なお、前記メタクリル系樹脂とは架橋度(%)が0.5以下の樹脂をいい、前記光拡散性フィラーにおける有機粒子とは架橋度が2以上の樹脂をいう。なお、架橋度は、ガラス容器にN,N-ジメチルホルムアミド29gと試料1gを添加し、24時間振とうして膨潤液とした後、遠心分離により上澄み液を除いたゲル分を130℃真空乾燥機で蒸発乾固し、残存物の重量を測定し、ASTM D6725と同様の方法により測定される値をいう。
【0063】
また、前記光拡散剤の平均粒径は、反射像の映り込みを効果的に予防する観点から、1.2μm以上9μm以下であることが好ましく、1.7μm以上8μm以下であることがより好ましく、2μm以上6μm以下であることがさらに好ましい。
前記平均粒径は、成形体から切り出したメタクリル系樹脂組成物試料2gをアセトン100mlに溶解させ、遠心分離によって不溶物を沈殿させ、乾燥させたものを0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液3mL中に分散させ、分散液としたものを気泡が生じない程度に緩く振とうしながらベックマンコールター製LS13320に滴下して、濃度計の示度を適正範囲に合わせることで測定を行い体積基準の累積50%粒子径を算出することで測定することができる。
【0064】
なお、本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物における前記光拡散剤の含有量は、反射像の映り込みを効果的に防止する観点から、前記メタクリル系樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.08質量部以上であることがさらに好ましい。一方で、本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物における前記光拡散剤の含有量は、内部視認性を確保する観点から、5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以下であることがさらに好ましい。
【0065】
また、前記光拡散剤として好適な有機微粒子を用いる際、ベースとなる前記メタクリル系樹脂よりも屈折率が大きい有機微粒子の場合には、良好な耐候性を有するメタクリル系樹脂組成物とするため、メタクリル系樹脂と光拡散剤との屈折率差は、0.06以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましく、0.04以下であることがさらに好ましい。
さらに、光拡散性を良好なものにする観点から、メタクリル系樹脂と光拡散剤との屈折率差は、0.003以上であることが好ましく、0.005以上であることがより好ましく、0.01以上であることがさらに好ましい。
ベースとなる前記メタクリル系樹脂よりも屈折率が小さい有機微粒子の場合には、耐候性と内部視認性を良好な成形体とする観点から、メタクリル系樹脂と光拡散剤との屈折率差が0.1以下であることが好ましく、0.08以下であることがより好ましい。また、光拡散性を良好なものにする観点から、メタクリル系樹脂と光拡散剤との屈折率差は0.003以上であることが好ましく、0.005以上であることがより好ましく、0.01以上であることがさらに好ましい。
前記屈折率差については、ポリメタクリル酸メチルの持つ屈折率を1.491として求められる値であり、前記光拡散剤とはポリメタクリル酸メチルに対して、屈折率差が0.002以上であるものをいう。光拡散剤の屈折率は種々の屈折率を有する分散溶媒に光拡散剤を分散させ、散乱光強度を測定し、散乱光強度が0になる屈折率を求め、光拡散剤の屈折率とすることができる。
【0066】
なお、本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物の耐熱変形性は、中間点ガラス転移温度を指標とした時に、109℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、111℃以上であることがさらに好ましい。また、メーターカバーとして必要な靭性、成形性を確保するために、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。
中間点ガラス転移温度が高いほど成形体とした時に熱に曝された際に変形しにくいため、車内温度が比較的高温になる自動車や直射日光に曝される2輪車用のメーターカバーや、屋外で使用される液晶保護カバーとして好適な成形体となる。
この耐熱変形性については、前記メタクリル系樹脂のコモノマーの種類や共重合比率、添加剤の添加量などで調整することができる。
【0067】
メタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、及び離型剤と、必要に応じて、上述した種々の添加剤、その他の樹脂とを混合し、混練することにより得られる。
例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより製造できる。
特に押出機による混練が、生産性の観点から好ましい。
混練温度は、生産性の観点から、170℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、メタクリル系樹脂や赤外線吸収剤の劣化、各種添加剤の揮発防止の観点から、290℃以下が好ましく、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは270℃以下である。
【0068】
なお、本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物は、上述した、メタクリル系樹脂、赤外線吸収剤、離型剤、紫外線吸収剤、その他成分等を混合し、混練することにより得られる。
例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより製造できる。
特に押出機による混練が、生産性の観点から好ましい。
混練温度は、生産性の観点から、170℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、メタクリル系樹脂や赤外線吸収剤の劣化、各種添加剤の揮発防止の観点から、290℃以下が好ましく、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは270℃以下である。
【0069】
<成形体>
本実施形態の成形体は、上述した本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物、液晶保護カバー用メタクリル系樹脂組成物を用いてなる。
得られた成形体は、良好な熱線遮蔽性を有しつつ、メーターカバー、液晶保護カバーとして要求される良好な内部視認性、成形性、耐溶剤性、強度、耐熱変形性を兼ね備えて紫外線の当たる屋外環境に対する長期安定性、長期耐熱安定性及び長期湿熱安定性に優れることに加え、内部部材を効果的に熱線から保護でき、その性能を長期持続できる。
【0070】
本実施形態の成形体は、公知の成形方法によって製造できる。公知の成形方法とは、以下に限定されるわけではないが、例えば、射出成形、押出成形、ブロー(中空)成形、真空成形、圧縮成形、カレンダー成形、インフレーション成形等が挙げられる。生産性と寸法安定性の観点から押出成形、射出成形による成形が好ましく、射出成形による成形がより好ましい。
なお、成形温度については、生産性の観点から、170℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、メタクリル系樹脂や赤外線吸収剤の劣化、各種添加剤の揮発の観点から、290℃以下であることが好ましく、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは270℃以下である。
【0071】
<メーターカバー>
上述した本実施形態の成形体の用途として、メーターカバーが挙げられる。本実施形態のメーターカバー用メタクリル系樹脂組成物からなる成形体は、熱線遮蔽による内部部材保護能に優れ、良好な内部視認性、成形性、耐溶剤性、強度、耐熱変形性を兼ね備えており、金属面と接する面積が大きく製造時のせん断発熱が大きいメーターカバーでも耐溶剤性、強度、耐熱変形性を兼ね備え、赤外線吸収剤の変性を抑え、生産性良く生産できるため、メーターカバーとして好適に用いることができる。
メーターカバーとしての性能を担保するため、メーターカバー100質量%中の本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の含有比率が、90~100質量%であることが好ましく、95~100質量%であることがより好ましく、97~100質量%であることがさらに好ましく、98質量%以上100質量%であることが特に好ましい。
【0072】
本実施形態のメーターカバーは、太陽光に曝され、内部部材の不具合発生が懸念され、内部視認性の確保が要求されている用途、例えば、自動車、二輪車、電車、船舶のメーターカバーとして用いられることが好ましい。これらの用途の中でも、本実施形態のメーターカバーは、使用環境が比較的高温下でも好適に使用できるため、使用環境が高温になりやすい、自動車、二輪車等の車輛用メーターカバーとして用いられることがより好ましく、窓がなく直射日光に曝され、内部部材の不具合発生懸念が大きい二輪車のメーターカバーとして用いられることが特に好ましい。
【0073】
<液晶保護カバー>
上述した本実施形態の成形体の用途として、液晶保護カバーが挙げられる。本実施形態の液種保護カバー用メタクリル系樹脂組成物からなる成形体は、熱線遮蔽による内部部材保護能に優れ、良好な内部視認性、成形性、耐溶剤性、強度、耐熱変形性を兼ね備えており、金属面と接する面積が大きく製造時のせん断発熱が大きい液晶保護カバーでも耐溶剤性、強度、耐熱変形性を兼ね備え、赤外線吸収剤の変性を抑え、生産性良く生産できるため、液晶保護カバーとして好適に用いることができる。
液晶保護カバーとしての性能を担保するため、メーターカバー100質量%中の本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の含有比率が、90~100質量%であることが好ましく、95~100質量%であることがより好ましく、97~100質量%であることがさらに好ましく、98質量%以上100質量%であることが特に好ましい。
【0074】
本実施形態の液晶保護カバーは、太陽光に曝され、内部部材の不具合発生が懸念され、内部視認性の確保が要求されている用途、例えば、屋外デジタルサイネージ、屋外LEDディスプレイ、自動車における液晶デジタルメーターの保護カバー、エアコンパネルの液晶保護カバー、コンソールパネルの液晶保護カバー、インパネの液晶保護カバー、二輪車の液晶デジタルメーターの保護カバー、電車の液晶デジタルメーターの保護カバー、船舶の液晶デジタルメーターの保護カバー、カーナビの液晶保護カバー、として用いられることが好ましい。これらの用途の中でも、直射日光に曝され、内部部材の不具合発生懸念が大きい屋外デジタルサイネージ、屋外LEDディスプレイ、二輪車の液晶デジタルメーターの保護カバー、として用いられることが特に好ましい。
【実施例0075】
以下、具体的な実施例、比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
(各サンプルの構成成分)
実施例及び比較例の各サンプルが含む成分を以下に示す。
(A)メタクリル系樹脂
メタクリル系樹脂の原料は、下記のとおりである。
・メタクリル酸メチル(MMA):旭化成製(重合禁止剤として中外貿易製2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノールを2.5ppm添加されているもの)
・アクリル酸メチル(MA):三菱ケミカル製(重合禁止剤として川口化学工業製4-メトキシフェノール(4-methoxyphenol)が14ppm添加されているもの)
・n-オクチルメルカプタン:アルケマ製
・ラウロイルパーオキサイド:日油製
・t - ブチルパーオキシ2 - エチルヘキサノエート:日油製
・第三リン酸カルシウム:日本化学工業製、懸濁剤として使用
・炭酸カルシウム:白石工業製、懸濁剤として使用
・ラウリル硫酸ナトリウム:和光純薬工業製、懸濁助剤として使用
【0077】
なお、(A)メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)(Mnは数平均分子量)を下記の装置、及び条件で測定した。
測定装置:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320GPC)
測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH-H 1本、TSKgel SuperHM-M 2本、TSKgel SuperH2500 1本を順に直列接続して使用した。本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量は溶出する時間が遅い。
検出器 :RI(示差屈折)検出器
検出感度 :3.0mV/min
カラム温度:40℃
サンプル :0.02gのメタクリル系樹脂のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量 :10μL
展開溶媒 :テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/min、内部標準として、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を、0.1g/L添加した。
検量線用標準サンプルとして、単分散のピーク分子量が既知で分子量が異なる以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymer Laboratories製;PMMA Calibration Kit M-M-10)を用いた。
ここで、検量線用標準サンプルに用いた標準試料のポリメタクリル酸メチルは、それぞれ単ピークのものであるため、それぞれに対応するピークを重量ピーク分子量Mpと表記した。この点、一試料についてピークが複数ある場合に算出されるピークトップ分子量と区別した。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準資料10 850
上記の条件で、(A)メタクリル系樹脂の溶出時間に対するRI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線とを基に、(A)メタクリル系樹脂の、重量平均分子量(Mw)大尾分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0078】
また、(A)メタクリル系樹脂については、H-NMR測定により構造単位を同定し、その存在量(質量%)を算出した。H-NMR測定の測定条件は、以下のとおりである。
装置:JEOL-ECA500
溶媒:CDCl3-d1(重水素化クロロホルム)
試料:メタクリル系樹脂15mgをCDCl3-d1 0.75mLに溶解し、測定用サンプルとした。
【0079】
(B)紫外線吸収剤
・チヌビンP:BASF製 融点128℃
【0080】
(C)リン酸系酸化防止剤
・アデカスタブ2112:アデカ製 融点180℃
・アデカスタブHP-10:アデカ製 融点146℃
【0081】
(D)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
・アデカスタブAO-80:アデカ製 融点110℃
・イルガノックス1076:BASF製 融点55℃
【0082】
(E)赤外線吸収剤
・YMDS874:住友金属鉱山製セシウムドープ酸化タングステン(有効成分比率23質量%、シェラー径32nm)
・KHDS06:住友金属鉱山製 六ホウ化ランタン(有効成分比率21.5質量%、シェラー径86nm)
【0083】
(F)離型剤
・ステアリルアルコール::富士フイルム和光純薬製
・ドコサン:富士フイルム和光純薬製
・グリセリンモノステアレート(ポエムPV100):理研ビタミン製
【0084】
(G)拡散剤
・テクポリマーMSX51F:積水化成品製 平均粒径5μm、屈折率1.51の粒子
【0085】
(メタクリル系樹脂の製造)
後述する実施例及び比較例の各サンプルのメタクリル系樹脂組成物に用いるメタクリル系樹脂(製造例1~5)について、以下の通り製造した。
【0086】
(1)製造例1
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(a)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(a)、メタクリル酸メチル:21.4kg、アクリル酸メチル:0.43kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn-オクチルメルカプタン:59gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、94℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子(メタクリル系樹脂1)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は10.1万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.87であった。また、構造単位はMMA/MA=98/2質量%であった。
【0087】
(2)製造例2
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(a)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(a)、メタクリル酸メチル:21.2kg、アクリル酸メチル:0.66kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn-オクチルメルカプタン:64gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、94℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子(メタクリル系樹脂2)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は9.4万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.87であった。また、構造単位はMMA/MA=97/3質量%であった。
【0088】
(3)製造例3
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(c)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:23kgを投入して80℃に昇温し、混合液(c)、メタクリル酸メチル:5.3kg、t - ブチルパーオキシ2 - エチルヘキサノエート:55g、及び2-エチルヘキシルチオグリコレート:100gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行った。発熱ピーク観測後に、94℃に1℃/min速度で昇温した後、45分間93℃~94℃の温度を保持した。その後、1℃/minの速度で80℃まで降温した後、次いで、メタクリル酸メチル:15.6kg、アクリル酸メチル:0.75kg、ラウロイルパーオキサイド:18g、n-オクチルメルカプタン:22.5gを投入し、引き続き約80℃を保って懸濁重合を行った。発熱ピーク観測後、94℃に1℃/minの速度で昇温した後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次に、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子(メタクリル系樹脂3)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は14.1万であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.3であった。単位はMMA/MA=96.6/3.4質量%であった。
【0089】
(4)製造例4
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(c)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(c)、メタクリル酸メチル:21.2kg、アクリル酸メチル:0.44kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn-オクチルメルカプタン:82.1gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、94℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子(メタクリル系樹脂4)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は7.7万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。また、構造単位はMMA/MA=98/2質量%であった。
【0090】
(5)製造例5
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(b)を得た。
次いで、60Lの反応器にイオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(b)、メタクリル酸メチル:20.3kg、アクリル酸メチル:1.3kg、ラウロイルパーオキサイド:33g、及びn-オクチルメルカプタン:28gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、94℃に1℃/minの速度で昇温した。
その後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子(メタクリル系樹脂5)を得た。
得られた樹脂の重量平均分子量は18.6万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.89であった。また、構造単位はMMA/MA=94/6質量%であった。
【0091】
[実施例1~14、比較例1~6]
表1に記載の配合割合になるよう各材料を混合した後、タンブラーへ投入し、それらを撹拌によって混合した。十分に混合させた後、φ26mmの二軸押出機にその混合原料を投入し、溶融混練(コンパウンド)してストランドを生成し、ウォーターバスでそのストランドを冷却した後、ペレタイザーで切断してペレットを得た。なお、コンパウンドの際、押出機のベント部に真空ラインを接続し、-0.08MPaの条件で水分やモノマー成分等の揮発成分を除去した。
こうして、各実施例及び各比較例に係るメタクリル系樹脂組成物のサンプルを得た。なお、コンパウンド時の樹脂組成物の樹脂温度は250℃であった。
なお、表1中の数値は、基材となるメタクリル系樹脂の配合量を100質量部としたときの配合量(質量部)を表す。また、表1では、(E)赤外線吸収剤の添加量を、分散剤等の表面処理剤を含んだ添加量としている。上述した(E)赤外線吸収剤の有効成分比率より、分散剤等の表面処理剤を除いた添加量を求めることができる。
【0092】
【表1】
【0093】
[評価]
得られたメタクリル系樹脂組成物の各サンプルについて、射出成形を行った後、以下の評価(1)~(6)を行った。評価結果を表2に示す。
なお、射出成形では、ペレットを射出成形機(芝浦機械製EC-100SX)に投入し、JISK7139タイプA1多目的試験片(厚みt=4mm、長さL=175mm、L/t=44)を成形し、シャルピー衝撃試験用の試料を切り出した。成形条件は、JISK6717-2に準拠した。なお、比較例4以外はVSTコード番号108を用いた。比較例4は、VSTコード番号100、VNコード番号83を用いた。
【0094】
(1)成形性
上述の条件で連続して100ショット射出成形を行い、樹脂の剥離割れの有無を観察し、メーターカバーとしての成形性の指標とした。
所定の寸法でかつ樹脂の剥離割れが起こらなかった場合は○(良好)、所定の寸法で樹脂の剥離割れやシルバーストリークスなどの外観不良が3ショット以内であった場合は△(実用上十分)、所定の寸法が得られなかったり、樹脂の剥離割れやシルバーストリークスなどの外観不良が4ショット以上であった場合は×(不良)とした。
なお、冷却時間は保圧時間も含む。得られた成形体の内、所定の寸法でかつ外観が良好であったものを平板試料(150mm×150mm×t2mm)として用いた。また、金型磨き番手は8000番手、ゲートの位置は辺の中央部、突き出しピンは隅から縦横5mm内側の位置が中心の4本である。
成形条件:シリンダー中央部設定温度250℃、金型温度75℃、型内充填速度40mm/秒、保圧80MPa、冷却時間20秒
【0095】
(2)全光線透過率の測定
上述する方法で得られた厚さ2mmの平板試料(シャルピー衝撃試験用の試料)の全光線透過率は日本電色製NDH7000を用いて、JIS K7361に準じて測定した。全光線透過率の値は、高いほど、メーターカバーとした時に内部部材の視認性が良好になる。
全光線透過率は、84%以上で「〇」(良好)、78%以上で「△」(実用上問題ないレベル)78%未満で「×」(不良)とした。
【0096】
(3)日射透過率
上述する方法で得られた厚さ2mmの平板試料(シャルピー衝撃試験用の試料)を、島津製作所製UV-3100PCを用いて300-2500nmの透過率を測定した。JISR3106に従って、各波長の透過率と重価係数の積の積算値を重価係数の積算値で割ったものから日射透過率を求めた。値が小さいほど太陽光を通しにくいことを意味しており、メーターユニット内部部材の保護、内部液晶の保護に好適である。
市販の一般的なPMMAであるデルペット80N 99141の日射透過率と比較して、25%以上低減されていれば◎(優れている)、15%以上25%未満低減されていれば○(良好)、10%以上15%未満低減されていれば△(実用上十分)、10%未満しか低減されていない場合×(不良)とした。
【0097】
(4)耐熱変形性
耐熱変形性の指標として、成形体から切り出したメタクリル系樹脂組成物試料(シャルピー衝撃試験用の試料)の中間点ガラス転移温度を測定した。示差走査熱量計(パーキンエルマージャパン(株)製 Diamond DSC)を用いて、窒素ガス雰囲気下、α-アルミナをリファレンスとし、JIS-K-7121に準拠して、試料約10mgを40℃から210℃まで昇温速度10℃/minで昇温した後、40℃まで降温し、再度40℃から210℃まで昇温速度10℃/minで昇温して2回目のDSC曲線から中間点ガラス転移温度を求めた。
中間点ガラス転移温度は、111℃以上150℃以下で〇(良好)、109℃以上111℃未満で△(実用上問題なし)、109℃未満で×(不良)とした。
なお、中間点ガラス転移温度が高いほど、高温で変形しにくいことを示し、直射日光が当たるような環境下、特に赤外線吸収材料を含有し、材料自体が赤外線を吸収する場合でも成形体の変形などの懸念がなく好適に用いることができる。また、ガラス転移曲線に複数の変曲点が見られた場合、最も大きな変曲点の値を採用し、メタクリル系樹脂の中間点ガラス転移温度も、上記と同様の方法で測定することができることを示す。
【0098】
(5)耐衝撃性
シャルピー衝撃試験用の試料について、JIS K7111-1に準拠し、ノッチなしシャルピー衝撃試験を実施した。
その結果が、23kJ/m以上であれば◎(優れる)、21kJ/m以上23kJ/m未満であれば〇(良好)、20kJ/m以上21kJ/m未満であれば△(実用上十分なレベル)、20kJ/m未満であれば×(不良)とし、強度の指標とした。なお、シャルピー衝撃試験の結果が20kJ/m以上であれば、メーターカバー、液晶保護カバーのようにハウジング部材との取り付け部が存在する部材においても取り付け部の強度が良好な成形体を得ることができることを示す。
【0099】
(6)耐溶剤性
図1のように、上述する方法で得られたJISK7139タイプA1多目的試験片の方末端を固定し、末端から60mmの地点を作用点とし、上にエタノール(図中、EtOH)で湿潤させた不織布を設置した。次いで、作用点から80mmの地点に1.4kgfの荷重を設置した瞬間を試験開始とした。試験開始から試験片が破断するまでの時間を計測し、耐溶剤性の指標とした。なお、試験は室温23℃、湿度50%RHの空間で実施した。試験中は、不織布が湿潤しないよう30秒ごとにパスツールピペットで1滴エタノールを滴下した。
なお、計測時間は、長いほど耐溶剤性が良好であり、感染症予防等を目的としたアルコール系消毒液での消毒作業を実施した際、組付け部などの応力ひずみがかかりやすい部分でも割れの生じにくいメーターカバー、液晶保護カバーとすることができる。
評価は、計測時間が60秒以上で◎(優れている)、25秒以上で60秒未満で〇(良好)、10秒以上25秒未満で△(実用上十分)10秒未満であった場合は不良(×)とした。
【0100】
【表2】
【0101】
実施例1~13、比較例1、2、3、5のサンプルについては、良好な内部部材保護能を達成することができた。
しかし、比較例1のサンプルについては、離型剤過少に含有されていたため剥離が多く発生し、メーターカバー、液晶保護カバーとしての成形性が良好ではなかった。
比較例2のサンプルについては、離型剤過多に含有されていたため成形時に外観不良が多く発生し、メーターカバー、液晶保護カバーとしての成形性が良好ではなかった。
比較例3のサンプルについては、分子量が低く、強度と耐溶剤性が良好ではなかった。
比較例4のサンプルについては、分子量が高すぎたため所定の寸法の平板試料を製造できず、メーターカバー、液晶保護カバーとしての成形性が良好でなかった。所定の寸法の平板試料が得られなかったため、全光線透過率と日射透過率の測定は実施しなかった。また、耐熱変形性も良好ではなかった。
比較例5では赤外線吸収剤の量が過多であったため、内部部材の視認性が良好ではなかった。
比較例6では、赤外線吸収剤の量が過少であったため、内部部材保護能が良好でなかった。
また、実施例1では、実用上十分なレベルではあったものの他の実施例と比較すると離型剤の量がやや少ないため、離型性が他の実施例にわずかに劣り、わずかに剥離が起こった。実施例4では分子量が他の実施例と比べるとわずかに低く、実用上十分なレベルであるもの、他の実施例と比べると強度と耐溶剤性がわずかに劣っていた。
さらに、実施例6は他の実施例と比べると赤外線吸収剤の量が多く、日射透過率が低く内部部材の保護能に優れていたが、実用上十分なレベルであるものの、内部部材の視認性と強度が他の実施例と比べるとわずかに劣っていた。
また、実施例7では耐溶剤性、強度が優れており、物性のバランスが他の実施例と比較して優れていた。
さらに、実施例8では内部部材の保護能に優れており、物性のバランスが他の実施例と比較して優れていた。加えて、疑似的に直射日光を当てた際の反射像の映り込みが少なく内部部材がより視認しやすかった。
【0102】
[メーターカバーとしての視認性評価]
市販の2輪車用メーターユニットのカバー部を外し、カバーの代わりに各サンプルの平板試料を設置し、メーターカバーとしての視認性を調べた。
その結果、実施例6では斜め上から見た際に他の実施例と比較すると青みが強く感じられ、内部がわずかにぼやけて見えた。比較例5では、斜め上から見た際に青みがかなり強く感じられ、内部もぼやけて見えたため、内部の視認性が良好ではなかった。
一方、実施例8では斜め上から見た際に反射像の映り込みが軽減され、内部のメーターの視認性が特に優れていた。
【0103】
[液晶保護カバーとしての視認性評価]
市販のPC画面の画面から20mmの位置に、各サンプルの平板試料を設置し、液晶保護カバーとしての視認性を調べた。
その結果、実施例6では斜め上から見た際に他の実施例と比較すると青みが強く感じられ、画面がわずかに暗く見えた。比較例5では、斜め上から見た際に青みがかなり強く感じられ、画面が暗く見えたため、画面の視認性が良好ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、内部部材保護能が良好のため、メーターカバー、液晶保護カバーとして使用された際に、内部部材を保護することができ、また、内部視認性、成形性、耐熱変形性、耐溶剤性、強度に優れるメーターカバー、液晶保護カバーができるため、メーターカバー、液晶保護カバー、特に直射日光に曝される2輪車用メーターカバー、屋外デジタルサイネージ、屋外LEDディスプレイ、二輪車の液晶デジタルメーターの保護カバーとして産業上の利用可能性を有している。
図1