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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001454
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】ヒンジ装置
(51)【国際特許分類】
   E05D 5/14 20060101AFI20221226BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20221226BHJP
   E05F 5/02 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
E05D5/14
F16C11/04 F
E05F5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102190
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】309042440
【氏名又は名称】戸本 守
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】戸本 守
【テーマコード(参考)】
3J105
【Fターム(参考)】
3J105AA02
3J105AB02
3J105AB11
3J105AB23
3J105AC06
3J105BA06
3J105BB02
3J105BB22
3J105BB24
3J105BB45
3J105BC04
3J105BC14
3J105DA24
(57)【要約】
【課題】ヒンジ回転させる時の回転速度を抑制することが可能なヒンジ装置を提供する。
【解決手段】第一部材としての箱本体2と第二部材としての蓋体3とを相対的にヒンジ回転させるためのヒンジ装置1に、箱本体2に固定されており、外周が多角形で柱状に延出している軸部材10と、軸部材10が嵌入されている軸孔21を有し、軸孔21の内周が軸部材10の多角形の角数の整数倍だけ同数の凹角部22及び凸角部23を有する星形多角形に形成されており、蓋体3に固定されているゴム製の軸受部材20と、を具備させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材とを相対的にヒンジ回転させるためのヒンジ装置であって、
前記第一部材に固定されており、外周が多角形で柱状に延出している軸部材と、
該軸部材が嵌入されている軸孔を有し、該軸孔の内周が前記軸部材の前記多角形の角数の整数倍だけ同数の凹角部及び凸角部を有する星形多角形に形成されており、前記第二部材に固定されているゴム製の軸受部材と
を具備していることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記軸孔は、
前記星形多角形の角部のうち少なくとも前記凸角部がR面取りされている
ことを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一部材と第二部材とを相対的にヒンジ回転させるためのヒンジ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
箱物等の蓋をヒンジ回転させて開閉するためのヒンジ装置として、金属製で円柱状の軸部材と、軸部材が挿入される円筒状の軸受部材とを備えている蝶番が知られている。蝶番のようなヒンジ装置では、軸部材と軸受部材との間の抵抗がほとんどなため、例えば、箱本体から蓋体を持上げるようにヒンジ回転させるようにした場合、持上げて開いた蓋体が、何らかの理由により垂直位置よりも箱本体側に傾くと、蓋体に作用している重力により、蓋体が箱本体に向かって回転落下して勢い良く閉じてしまい、騒音が発生したり、箱本体と蓋体との間に挟まれて怪我をしたり、蓋体や箱本体が破損したりする問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、ヒンジ回転させる時の回転速度を抑制することが可能なヒンジ装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、本発明にかかるヒンジ装置は、
「第一部材と第二部材とを相対的にヒンジ回転させるためのヒンジ装置であって、
前記第一部材に固定されており、外周が多角形で柱状に延出している軸部材と、
該軸部材が嵌入されている軸孔を有し、該軸孔の内周が前記軸部材の前記多角形の角数の整数倍だけ同数の凹角部及び凸角部を有する星形多角形に形成されており、前記第二部材に固定されているゴム製の軸受部材と
を具備している」ことを特徴とする。
【0005】
本構成のヒンジ装置は、第一部材に固定されている多角形の柱状の軸部材が、第二部材に固定されているゴム製の軸受部材の軸孔に嵌入されている。この軸受部材では、軸孔の内周を、軸部材の多角形の角数の整数倍の凹角部及び凸角部を有する星形多角形としているので、軸部材の全ての角部が、軸孔の凹角部に嵌っている。この状態で、第一部材を、第二部材に対して軸部材の軸芯を中心として回転させると、軸受部材の軸孔における回転方向の凸角部が軸部材の角部に圧縮されて弾性変形し、凸角部を越えて次の凹角部に嵌ると共に、弾性変形した凸角部が反撥して復元することとなり、これらを繰り返しながら軸部材が回転することとなる。
【0006】
このように、軸部材が回転する際に、ゴム製の軸受部材の軸孔における凸角部の弾性変形により、回転抵抗を付与することができるため、軸部材の回転速度を抑制させることができる。従って、第一部材と第二部材とが互いに接近する方向へヒンジ回転した時に、第一部材と第二部材とが互いに勢いよく当接することはなく、騒音が発生したり、第一部材と第二部材との間に挟まれて怪我をしたり、第一部材や第二部材が破損したりすることはない。
【0007】
また、第一部材と第二部材とが接している状態で、何らかの力が作用しても、ゴム製の軸受部材により軸部材に対して回転抵抗を付与しているため、第一部材と第二部材とが接している状態を維持させることができ、第一部材に対して第二部材が相対的に揺れ動くことはない。
【0008】
また、本発明にかかるヒンジ装置は、上記の構成に加えて、
「前記軸孔は、
前記星形多角形の角部のうち少なくとも前記凸角部がR面取りされている」
ことを特徴としても良い。
【0009】
本構成によれば、少なくとも凸角部をR面取りしているため、凸角部を欠け難くすることができると共に、軸部材を回転させた時に、軸部材の角部により凸角部を圧縮し易くすることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の効果として、ヒンジ回転させる時の回転速度を抑制することが可能なヒンジ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は本発明の一実施形態であるヒンジ装置において箱本体に軸部材を固定していると共に蓋体に軸受部材を固定している例を模式的に示す説明図であり、(b)は(a)の要部を正面から拡大して示す要部拡大正面図であり、(c)は(b)の要部拡大側面図であり、(d)は(c)をさらに拡大して要部を示す説明図であり、(e)は要部の側面断面図である。
図2】(a)は図1のヒンジ装置の側面断面図であり、(b)はヒンジ装置において軸部材と軸受部材とを分解して斜視図で示す説明図である。
図3】(a)~(d)は図1のヒンジ装置の動きを示す説明図である。
図4】(a)~(c)は箱本体と蓋体とに対するヒンジ装置の配置関係の例を模式的に示す説明図である。
図5】(a)~(e)はヒンジ装置における軸部材の外周の多角形の角数と、軸受部材における軸孔の内周の星形多角形の凹角部及び凸角部の夫々の角数との組み合わせを断面で示す説明図である。
図6】(a1)は図1(b)とは逆に蓋体に軸部材を固定していると供に箱本体に軸受部材を固定している例の要部を正面から拡大して示す要部拡大正面図であり、(a2)は(a1)の要部拡大側面図であり、(b)は箱本体に片持ちの軸部材を固定していると共に蓋体に軸受部材を固定している例を横断面で示す説明図であり、(c)は(b)とは逆に蓋体に片持ちの軸部材を固定していると共に箱本体に軸受部材を固定している例を横断面で示す説明図である。
図7】(a)は本発明の第二実施形態のヒンジ装置において蓋体に軸部材を固定していると供に箱本体に軸受部材を固定している例の要部の正面断面図であり、(b)は(a)の側面断面図であり、(c)は(a)とは逆に箱本体に軸部材を固定していると共に蓋体に軸受部材を固定している例の要部の正面断面図であり、(d)は(c)の側面断面図である。
図8】(a)は本発明のヒンジ装置をロールボックスパレットにおける底板のヒンジ装置に適用し底板を立ち上げた状態で要部を正面から拡大して示す要部拡大正面図であり、(b)は(a)においてヒンジ装置の長手方向の中央で切断して示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態であるヒンジ装置1について、図1乃至図5を参照して詳細に説明する。本実施形態のヒンジ装置1は、上方へ開放されている箱本体2と、箱本体2を上方から閉鎖可能な蓋体3と、を相対的にヒンジ回転させるためのものである。本実施形態では、箱本体2が本発明の第一部材に相当しており、蓋体3が本発明の第二部材に相当している。
【0013】
ヒンジ装置1は、柱状に延出している軸部材10と、軸部材10が嵌入されている軸孔21を有しているゴム製の軸受部材20と、軸部材10を箱本体2の上端における後側の端辺に固定している軸固定部30と、軸受部材20を蓋体3の後側の端辺に固定している軸受固定部40と、を備えている。
【0014】
軸部材10は、外周が多角形(ここでは、正方形である四角形)で柱状に延出している。軸部材10は、外周の各角部11がR面取りされている。軸部材10は、軸方向の一方の端部(基端部)に設けられており外周よりも直径の大きい鍋状の頭部12と、頭部12とは反対側の端部(先端部)付近において貫通している貫通孔13と、を有している。軸部材10は、箱本体2の端辺の長さとほぼ同じである。
【0015】
軸受部材20は、軸方向の長さが、軸部材10の長さよりも短い。軸受部材20の軸孔21は、内周が軸部材10の多角形の角数の整数倍(ここでは3倍)だけ同数(ここでは12)の凹角部22及び凸角部23を有する星形多角形に形成されている。凹角部22は、軸孔21の内周面において軸孔21の中心から遠ざかるように凹んでいる部位であり、凸角部23は、軸孔21の内周面において軸孔21の中心へ向かって突出している部位である。星形多角形の各凹角部22及び凸角部23は、R面取りされている。
【0016】
本実施形態では、軸孔21における凹角部22及び凸角部23のR面取りの半径が、軸部材10の角部11のR面取りの半径よりも小さい。また、本実施形態では、凹角部22及び凸角部23の角度は、軸部材10の角部11の角度(ここでは、90度)と同じである。
【0017】
各凹角部22は、軸部材10の軸芯を中心として各角部11と接する接円の直径と、同じ直径の円、又は、やや大きい直径の円、に接するように設けられている。つまり、軸部材10の多角形の外接円と、軸孔21の星形多角形の外接円とが、同じ直径、又は、星形多角形の外接円の方がやや大きい直径、であり、且つ、軸部材10の多角形の外接円が軸孔21の星形多角形の内接円よりも大きい直径である。
【0018】
軸受部材20は、図示するように、外周が軸孔21と同軸上の四角形(正方形)に形成されており、四角形の各角部がR面取りされている。また、軸受部材20は、外周面に、軸方向へ延出している複数の肉抜溝24が設けられている。
【0019】
軸固定部30は、軸部材10の両端を回転不能に支持していると共に夫々が箱本体2に取付けられる一対の取付部材31と、軸部材10の貫通孔13に挿通されている割ピン32と、を備えている。取付部材31は、平板状の基板部31aと、基板部31aの端辺から立設されている平板状の立板部31bと、立板部31bを貫通しており内周が多角形の挿通孔31cと、を有しており、L字状に形成されている。挿通孔31cは、内周が軸部材10の外周と同じ形状で大きさに形成されている。
【0020】
軸固定部30は、一対の取付部材31が、箱本体2の上面における後側の端辺に沿って設けられている帯板状のヒンジ取付部2aに間隔をあけて取付けられている。また、一対の取付部材31は、夫々の立板部31bを貫通している夫々の挿通孔31cが、同軸上に位置するように取付けられている。一対の立板部31b同士の間隔は、軸部材10の長さよりも短く、軸受固定部40の長さよりも長い。また、図1(b)に示すように、一対の取付部材31は、夫々の基板部31aが外方へ延出するように向けた状態で取付けられている。
【0021】
軸受固定部40は、軸受部材20が挿入されている角筒状の軸受ケース41と、軸受ケース41の両端開口を閉鎖しているケース蓋42と、軸受ケース41を蓋体3に取付けている接続部材43と、を備えている。軸受ケース41は、軸受部材20と同じ長さであり、内周が軸受部材20の外周と同じ形状である。ケース蓋42は、軸部材10が通過しており、軸部材10の外接円よりも内径が大きい貫通孔が設けられている。本実施形態では、接続部材43がT字状である。
【0022】
軸受固定部40は、図1(b)及び(c)に示すように、接続部材43におけるT字状の脚に相当する部位(図では、T字の棒が上下に延びている部位)が、軸受ケース41と蓋体3の後側壁部3aとで挟まれるように、蓋体3に取付けられている。この状態では、接続部材43のT字において脚に対して左右に延びている部位が、軸受ケース41の外周面と、蓋体3の上面とに当接している。
【0023】
本実施形態では、軸部材10、軸固定部30、及び軸受固定部40が、ゴム製の軸受部材20よりも剛性の高い、金属や合成樹脂のような素材により形成されている。本実施形態では、軸部材10として中実のものを示しているが、角パイプのような中空のものとしても良い。また、軸受部材20を形成しているゴムの材質は、弾力性、耐摩耗性を備えているものであれば良く、ヒンジ装置1の用途に応じて適宜の硬度のものを使用すれば良い。
【0024】
また、箱本体2や蓋体3への軸固定部30及び軸受固定部40の取付けは、ボルトやナット、接着剤、溶接、等適宜の接合手段が用いられている。また、箱本体2や蓋体3の材料としては、金属、合成樹脂、木材等の強度上問題のないものを使用すれば良い。
【0025】
次に、本実施形態のヒンジ装置1を使用した箱本体2と蓋体3との取付けについて説明する。まず、箱本体2に軸固定部30が取付けられている状態にすると共に、蓋体3に軸受固定部40が取付けられている状態にする。この際に、軸受固定部40の軸受ケース41に軸受部材20が挿入(収容)されている状態にする。
【0026】
そして、箱本体2に取付けられている一対の取付部材31の立板部31bの間に、蓋体3に取付けられている軸受ケース41を位置させて、軸受ケース41に収容されている軸受部材20の軸孔21を、一対の立板部31bを貫通している挿通孔31cと同軸上に位置させる。
【0027】
この状態で、一方の立板部31bの外方から挿通孔31cに、軸部材10の先端側を挿通させ、更に、軸受ケース41(軸部材10)及び反対側の立板部31bの挿通孔31cを通して、軸部材10の先端を反対側の立板部31bから外方へ突出させる。その後、軸部材10の先端の貫通孔13に、割ピン32を挿入し、割ピン32の先端を開いて貫通孔13から抜けないようにする。これにより、箱本体2と蓋体3とが、ヒンジ装置1により取付けられている状態となる。
【0028】
ヒンジ装置1を取付けた状態では、外周が多角形の軸部材10が、軸固定部30における一対の取付部材31に夫々設けられている内周が多角形の挿通孔31cに挿通されており、挿通孔31cの内周が軸部材10の外周と同じ形状で同じ大きさであることから、軸部材10が箱本体2に対して回転不能に取付けられている。また、軸部材10は、軸受固定部40の軸受ケース41に収容されている軸受部材20の軸孔21に嵌入されている。
【0029】
本実施形態のヒンジ装置1は、例えば、図3(a)に示すように、蓋体3を開いて垂直位置の状態にすると、軸部材10の四つの角部11が、軸孔21の複数の凹角部22のうち四つの凹角部22に嵌った状態となっている。この状態から軸部材10に対して軸受部材20が回転するためには、角部11が嵌っている凹角部22の両側の凸角部23が圧縮される必要があるため、その凸角部23の弾性抵抗により蓋体3が垂直位置の状態に保持されている。
【0030】
そして、箱本体2に対して蓋体3が開いている状態から蓋体3を閉じ方向へヒンジ回転させると、軸受部材20の軸孔21における回転方向の凸角部23が、軸部材10の角部11に圧縮されて弾性変形する。そして、軸受部材20では、軸部材10の角部11により弾性変形した凸角部23が角部11を越えると、回転方向に対して後側の凹角部22に角部11が嵌ると共に、弾性変形した凸角部23が反撥して復元し、これらを繰り返しながら軸受部材20が回転することとなる(図3(b)及び(c)を参照)。
【0031】
そして、蓋体3が閉じた状態では、図3(d)に示すように、軸孔21の凹角部22に、軸部材10の角部11が嵌っているため、上記と同様の理由により、箱本体2に対して蓋体3が閉じた状態で保持されている。
【0032】
このように、ヒンジ装置1の軸受部材20が回転する際に、ゴム製の軸受部材20の軸孔21における凸角部23が軸部材10の角部11により弾性変形させられることにより、軸受部材20に回転抵抗を付与することができるため、軸受部材20(蓋体3)の回転速度を抑制させることができる。
【0033】
続いて、箱本体2と蓋体3とに対するヒンジ装置1の配置関係について説明する。上記のヒンジ装置1は、図4(a)に示すように、その軸方向の長さを箱本体2の端辺の長さとほぼ同じ長さとしている。これに対して、図4(b)に示すように、ヒンジ装置1の長さの半分の長さのヒンジ装置1Aを、端辺の中央に取付けるようにしても良い。更には、図4(c)に示すように、ヒンジ装置1の長さの1/6の長さのヒンジ装置1Bを、端辺の両端に取付けるようにしても良い。換言すると、複数のヒンジ装置により箱本体2と蓋体3とをヒンジ回転させるようにしても良い。
【0034】
このように、本実施形態では、ヒンジ装置1の数や取付位置を任意に設定することが可能である。また、ヒンジ装置1(軸受部材20)の長さを短くすると、軸受部材20のゴムの硬度が同じであっても、軸部材10との接触面積が少なくなる。これにより、軸部材10の回転による凸角部23の圧縮や反撥にかかる弾性力が相対的に小さくなるため、長い場合と比較して回転速度の抑制が弱くなり、ヒンジ回転の回転速度が速くなる。従って、ヒンジ装置1の長さにより、ヒンジ回転の回転速度の抑制を調節することが可能である。
【0035】
次に、ヒンジ装置1における軸部材10の外周の多角形の角数と、軸受部材20における軸孔21の内周の星形多角形の凹角部22及び凸角部23の夫々の角数との組み合わせについて、図5を参照して説明する。本実施形態では、上記の組み合わせとして、軸部材10の外周を角数が4~10の範囲内の多角形(正多角形)とすると共に、軸孔21の内周を、軸部材10の外周の角数の2~5倍(整数倍)の範囲内の数の凹角部22及び凸角部23を有する星形多角形(正星形多角形)とすることが望ましい。
【0036】
例えば、図5(a)は、軸部材10の外周を四角形(正方形)としていると共に、軸孔21の内周を凹角部22及び凸角部23の夫々の角数が8の星形多角形としているものである。図5(b)は、軸部材10の外周を四角形(正方形)としていると共に、軸孔21の内周を凹角部22及び凸角部23の夫々の角数が16の星形多角形としているものである。図5(c)は、軸部材10の外周を四角形(正方形)としていると共に、軸孔21の内周を凹角部22及び凸角部23の夫々の角数が20の星形多角形としているものである。なお、図5(c)では、凹角部22及び凸角部23の角度を、軸部材10の角部11の角度と異ならせている(図では、角部11の角度よりも小さくしている)。
【0037】
また、図5(d)は、軸部材10の外周を六角形(正六方形)としていると共に、軸孔21の内周を凹角部22及び凸角部23の夫々の角数が12の星形多角形としているものである。図5(e)は、軸部材10の外周を六角形(正六方形)としていると共に、軸孔21の内周を凹角部22及び凸角部23の夫々の角数が24の星形多角形としているものである。
【0038】
このように、軸部材10の外周の多角形の角数と、軸孔21の内周の星形多角形の凹角部22及び凸角部23の夫々の角数と、を様々に組み合わせることが可能である。そして、例えば、軸孔21の内周の星形多角形の凹角部22及び凸角部23の夫々の角数を多くすると、軸部材10と軸受部材20との相対的なヒンジ回転を滑らかにしたり、蓋体3を任意の角度で回転停止させ易くしたりすることが可能となる。
【0039】
このようなことから、本実施形態によれば、箱本体2に対して開いている蓋体3が、垂直位置よりも箱本体2側に傾くと、蓋体3に作用している重力により、蓋体3が箱本体2に向かって回転落下して勢い良く閉じようとしても、多角形の軸部材10がゴム製からなる軸受部材20の星形多角形の軸孔21に嵌入されているため、ゴムの弾性力により軸受部材20(蓋体3)の回転速度を抑制させることができる。従って、蓋体3が箱本体2に勢い良く当接することはなく、騒音が発生したり、箱本体2と蓋体3との間に挟まれて怪我をしたり、箱本体2や蓋体3が破損したりすることはない。
【0040】
また、本実施形態によれば、箱本体2と蓋体3とが接して閉じている状態で、蓋体3に何らかの力が作用しても、ゴム製の軸受部材20により軸部材10に対して回転抵抗を付与しているため、蓋体3が閉じている状態を維持させることができ、箱本体2に対して蓋体3が揺れ動くことはない。
【0041】
更に、本実施形態によれば、少なくとも軸受部材20における軸孔21の凸角部23をR面取りしているため、凸角部23を欠け難くすることができると共に、軸受部材20を回転させた時に、軸部材10の角部11により凸角部23を圧縮され易くすることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、軸部材10の角部11をR面取りしているため、角部11が軸受部材20における軸孔21の内周面に刺さることはなく、軸受部材20を破損し難くすることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、ヒンジ装置1を上記の構成としているため、軸孔21の凸角部23のR面取りの大小、凸角部23の数、凹角部22と凸角部23の形状変更、軸受部材20(軸孔21)の長さ、軸受部材20のゴムの硬度、等を適宜設定することにより、様々なヒンジ回転の回転動作(例えば、回転速度の調節、任意の位置での回転停止、等)を実現させることが可能であると共に、回転途中からの重力等による回転速度の加速に対しての調節も可能となるため、回転最終時の箱本体2と蓋体3との緩衝性も得ることが可能である。
【0044】
ところで、上記の実施形態では、箱本体2に軸固定部30を介して軸部材10を取付けていると共に蓋体3に軸受固定部40を介して軸受部材20を取付けているヒンジ装置1を示したが、これに限定するものではなく、図6(a1)及び(a2)に示すヒンジ装置1Cのように、蓋体3に軸固定部30を介して軸部材10を取付けると共に箱本体2に軸受固定部40を介して軸受部材20を取付けても良い。以下では、上記と同様の構成については、同じ符号を付し、説明は省略する。
【0045】
図6(a1)及び(a2)のヒンジ装置1Cでは、蓋体3の後側壁部3aに軸固定部30における一対の取付部材31を取付けていると共に、箱本体2のヒンジ取付部2aに接続部材43を間にして軸受固定部40の軸受ケース41が取付けられている。本例では、接続部材43が帯板である。本例でも、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0046】
また、上記の実施形態では、軸固定部30として軸部材10の両端部を支持するヒンジ装置1を示したが、これに限定するものではなく、図6(b)及び(c)に示すヒンジ装置1D及びヒンジ装置1Eのように、軸部材10の一方の端部のみを支持するようにしても良い。つまり、軸部材10を片持ち支持するようにしても良い。
【0047】
詳述すると、図6(b)のヒンジ装置1Dは、蓋体3には、端辺の端部から突出している蓋側取付部3bが設けられており、その蓋側取付部3bから端辺側へ当該端辺と平行に突出するように軸部材10が取付けられている。また、箱本体2には、蓋体3における蓋側取付部3bの端辺側に位置するように突出している箱側取付部2bと、箱側取付部2bにおける蓋側取付部3bと対向している面から凹んでいる取付凹部2cと、が設けられており、取付凹部2cに軸受ケース41に収容されている軸受部材20が取付けられている。本例では、軸受ケース41が有底筒状である。そして、図示するように、蓋側取付部3bから突出している軸部材10が、取付凹部2cに取付けられている軸受部材20の軸孔21に嵌入されており、箱本体2に対して蓋体3をヒンジ回転させることができ、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0048】
一方、図6(c)のヒンジ装置1Dは、図6(b)のヒンジ装置1Dとは逆に、箱本体2に軸部材10を取付けていると共に、蓋体3に軸受部材20を取付けているものである。詳述すると、蓋体3には、蓋側取付部3bにおける端辺側を向いている面から凹んでいる取付凹部3cが設けられており、その取付凹部3cに軸受ケース41に収容されている軸受部材20が取付けられている。また、箱本体2には、箱側取付部2bにおける蓋側取付部3bと対向している面から突出するように軸部材10が取付けられている。図示するように、箱側取付部2bから突出している軸部材10が、取付凹部3cに取付けられている軸受部材20の軸孔21に嵌入されており、箱本体2に対して蓋体3をヒンジ回転させることができ、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
次に、第二実施形態のヒンジ装置1Fについて、主に図7を参照して説明する。なお、第一実施形態のヒンジ装置1と同じ構成については、同じ符号を付して説明は省略する。まず、図7(a)及び(b)に示すヒンジ装置1Fは、柱状に延出している軸部材10と、軸部材10が嵌入されている軸孔21を有しているゴム製の軸受部材20と、軸部材10を蓋体3の後側の端辺に固定している軸固定部30と、軸受部材20を箱本体2の上端における後側の端辺に固定している軸受固定部40と、一方の端部が軸部材10に取付けられていると共に反対側の他方の端部が軸受固定部40に当接しているコイルバネ50と、を備えている。
【0050】
ヒンジ装置1Fは、図7(a)に示すように、軸受ケース41における軸方向の中間部分に空間が形成されるように、軸受部材20が軸方向へ二つに分割されている。軸受ケース41における二つの軸受部材20の間の空間において、コイルバネ50が軸部材10を挿通させた状態で設けられている。
【0051】
コイルバネ50は、内径が軸部材10の外接円の直径よりも大きく、外形が軸受ケース41の内接円の直径よりも小さく、円筒状に形成されている。コイルバネ50は、一方の端部が軸部材10に設けられている取付孔(図示は省略)に挿入されて取付けられており、反対側の他方の端部が軸受ケース41の内面に当接している(図7(b)を参照)。従って、軸部材10を軸受固定部40(軸受ケース41)に対して相対的に回転させると、コイルバネ50が拡径又は縮径するように弾性変形して、回転させた方向とは反対方向へ付勢力が作用する。
【0052】
このヒンジ装置1Fでは、蓋体3を開かせる方向へ付勢力が作用するようにコイルバネ50が取付けられている。従って、箱本体2に対して蓋体3が開いている状態から蓋体3を閉じる方向(下方)へヒンジ回転させると、上述と同様に、ゴム製の軸受部材20の軸孔21における凸角部23の弾性変形により、軸部材10に回転抵抗が付与されることに加えて、コイルバネ50から蓋体3が閉じる方向とは反対方向の付勢力が作用するため、軸部材10の回転速度をより一層抑制させることができる。
【0053】
また、箱本体2に対して閉じられている蓋体3を上方へ開く際には、コイルバネ50の付勢力によりアシストされ、軽い力で蓋体3を開くことができる。
【0054】
なお、コイルバネ50の強さは、蓋体3の重さにより蓋体3が閉じることができるような強さとしており、蓋体3を閉じた状態ではコイルバネ50の付勢力により蓋体3が開くことはない。
【0055】
続いて、図7(c)及び(d)に示すヒンジ装置1Gは、箱本体2の上端における後側の端辺に軸固定部30を取付けていると共に、蓋体3の後側の端辺に軸受固定部40を取付けているものである。このヒンジ装置1Gにおいても、開く方向へ蓋体3を付勢しているコイルバネ50を備えている。ヒンジ装置1Gのコイルバネ50は、ヒンジ装置1Fのコイルバネ50に対して巻き方向が逆である。本例でも、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0056】
このように、第二実施形態のヒンジ装置1F(ヒンジ装置1G)によれば、上記のヒンジ装置1と同様の作用効果に加えて、コイルバネ50が蓋体3を開かせる方向へ付勢しているため、蓋体3の回転速度をより一層抑制させることができる。従って、蓋体3が箱本体2に勢い良く当接することはなく、騒音が発生したり、箱本体2と蓋体3との間に挟まれて怪我をしたり、箱本体2や蓋体3が破損したりすることはない。
【0057】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0058】
例えば、上記の実施形態では、箱本体2に対して蓋体3をヒンジ回転させる場合を例示しているが、これに限定するものではなく、ドアでも良いし、後述する折り畳み式のロールボックスパレット60の底板61や側板のヒンジ回転にも適用することができる。ここで、ヒンジ装置1を、ロールボックスパレット60における底板61をヒンジ回転させるためのヒンジ装置として適用する場合について、図8を参照して説明する。以下では、上記と同様の構成については、同じ符号を付し、説明は省略する。
【0059】
まず、ロールボックスパレット60は、底板61と、底板61の後辺よりも外側から上方へ延出している格子状の後板62と、底板61の左右両辺よりも外側から上方へ延出している格子状の一対の側板(図示は省略)と、一対の側壁の下端において前後に離隔して設けられているキャスター(図示は省略)と、を備えている。ロールボックスパレット60は、底板61が合成樹脂により形成されており、後板62及び側板が鋼材やアルミ材のような金属材料により形成されている。
【0060】
底板61は、後辺において後方へ突出していると共に辺に沿った方向へ離隔している複数(例えば、二つ)の支点部61aを、有している。支点部61aには、後辺と平行な方向へ四角く貫通しているヒンジ取付部61bが設けられている。ヒンジ取付部61bには、ヒンジ装置1における軸受固定部40の軸受ケース41が嵌め込まれている。一方、後板62の下辺にはL字状のアングル材からなる下枠62aが設けられており、下枠62aにヒンジ装置1における軸固定部30のL字状の取付部材31が取付けられている。
【0061】
なお、図示は省略するが、左右の一対の側板の何れか一方は、後辺が後板62に対して、上下に延びた軸芯周りに回転可能に取付けられている。また、一対の側板は、後板62と同様に、下辺にL字状のアングル材からなる下枠が夫々設けられている。この実施形態は、上記の蓋体3を底板61とし、上記の箱本体2を後板62及び側板としたものである。
【0062】
ロールボックスパレット60は、荷物などを搬送可能な状態では、底板61の左右両辺が側板の下枠に載置されており、水平な状態となっている。この状態で、底板61の前辺側を持ち上げるようにして、後辺側のヒンジ装置1においてヒンジ回転させることで、底板61が立ち上がった状態にすることができる。そして、更に、左右の何れか一方の側板を、内側に回転させて平面視においてコ字状からL字状にすることで、ロールボックスパレット60を折り畳んだ状態にすることができる。
【0063】
この実施形態によれば、底板61を立ち上げてロールボックスパレット60が折り畳まれている状態から、底板61を水平な状態にヒンジ回転させる際に、底板61が側板の下端に向かって勢い良く回転落下しようとしても、多角形の軸部材10がゴム製からなる軸受部材20の星形多角形の軸孔21に嵌入されているため、ゴムの弾性力により軸受部材20(底板61)の回転速度を抑制させることができ、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0064】
なお、底板61のヒンジ取付部61bを、一方が閉鎖された有底筒状とし、底板61の後辺と平行な方向から軸受ケース41を嵌め込んだ後に、蓋をするようにしても良い。また、底板61のヒンジ取付部61bを、底板61の裏面側へ開放されている箱状としても良く、軸受ケース41を嵌め込んだ後に蓋をするようにしても良い。更に、上記の実施形態では、ヒンジ取付部61bに軸受ケース41を嵌め込むものを示したが、これに限定するものではなく、底板61のヒンジ取付部61bを、軸受ケース41として、ヒンジ取付部61bに軸受部材20を直接嵌め込むようにしても良い。
【0065】
また、上記の実施形態では、一対のL字状の取付部材31により軸部材10を取付けるようにしたものを示したが、これに限定するものではなく、挿通孔31cが設けられている一対の立板部31b同士が繋がって一つで軸部材10を固定することができるコ字状の取付部材としても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 ヒンジ装置
1A ヒンジ装置
1B ヒンジ装置
1C ヒンジ装置
1D ヒンジ装置
1E ヒンジ装置
1F ヒンジ装置
1G ヒンジ装置
2 箱本体(第一部材)
3 蓋体(第二部材)
10 軸部材
11 角部
20 軸受部材
21 軸孔
22 凹角部
23 凸角部
30 軸固定部
40 軸受固定部
50 コイルバネ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8