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特開2023-145401DNAアプタマー、それを含む医薬組成物及びTXNDC5の触媒能力を抑制する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145401
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】DNAアプタマー、それを含む医薬組成物及びTXNDC5の触媒能力を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/115 20100101AFI20231003BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C12N15/115 Z ZNA
A61K31/711
A61P9/00
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P9/04
A61P1/16
A61P13/12
A61P11/00
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050398
(22)【出願日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】17/705,421
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523112921
【氏名又は名称】財團法人祺華教育基金會
【氏名又は名称原語表記】CHI-HUA FUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呉 宛霖
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZB21
4C086ZC41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、DNAアプタマー、それを含む医薬組成物、TXNDC5の触媒能力を抑制する方法に関するものであり、特に、TXNDC5の触媒能力を抑制することができるDNAアプタマーに関するものである。
【解決手段】本発明のDNAアプタマーは、TXNDC5に特異的に結合するポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドは、特定のヌクレオチド配列である。医薬組成物は、上記DNAアプタマーを活性成分として含む。TXNDC5の触媒能力を抑制する方法は、上記DNAアプタマーをTXNDC5に結合することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TXNDC5に特異的に結合するポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1-14のいずれか1つのヌクレオチド配列よりなる群から選択される、
DNAアプタマー。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:3のヌクレオチド配列である、
請求項1に記載のDNAアプタマー。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:7のヌクレオチド配列である、
請求項1に記載のDNAアプタマー。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:11のヌクレオチド配列である、
請求項1に記載のDNAアプタマー。
【請求項5】
請求項1に記載のDNAアプタマーを活性成分として含む、
医薬組成物。
【請求項6】
前記DNAアプタマーは心臓線維化的治療剤である、
請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記DNAアプタマーは心不全に対する治療剤である、
請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記DNAアプタマーは肝線維化に対する治療剤である、
請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記DNAアプタマーは腎線維化に対する治療剤である、
請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記DNAアプタマーは慢性腎臓疾患に対する治療剤である、
請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記DNAアプタマーは肺線維化に対する治療剤である、
請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のDNAアプタマーをTXNDC5に結合することを含む、
TXNDC5の触媒能力を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAアプタマー、それを含む医薬組成物、TXNDC5の触媒能力を抑制する方法に関するものである。特に、TXNDC5の触媒能力を抑制することができるDNAアプタマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
チオレドキシンドメイン含有タンパク質5(Thioredoxin domain-containing 5、TXNDC5)は、小胞体にタンパク質ジスルフィドイソメラーゼの酵素活性を有する、小胞体タンパクである。TXNDC5は、細胞タンパク質ジスルフィド結合の好適なフォールディング及び正確な形成を促進する。
【0003】
近年、TXNDC5は、多くの疾患の発病原因において、重要な役割を果たすことが既に立証されている。
【0004】
ある研究において、TXNDC5は、心臓線維化及び心不全の重要な調節者であって、細胞外基質タンパクのフォールディングを促すと共に、酸化還元感受性のN末端キナーゼ・信号により心臓線維化を誘導することが指摘されている(Ying-Chun Shih et al. Endoplasmic Reticulum Protein TXNDC5 Augmentsmyocardial Fibrosis by Facilitating Extracellularmatrix Protein Folding and Redox-Sensitive Cardiac Fibroblast Activation.Circ Res 2018 Apr 13; 122(8):1052-1068)。上記研究は、TXNDC5を取り除くと、βアゴニストが誘導する心臓線維化及び収縮機能障害を回避できるということも示している。
【0005】
また、TXNDC5が、TGFBR1の肺線維芽細胞におけるフォールディング及び安定の促進を通じてTGFβ1のシグナル伝達を向上させることにより、肺線維化を促進すると共に、TXNDC5の線維芽細胞を特異的に取り除くことにより、bleomycin(BLM)が誘導する肺線維化(PF)及び肺機能損害を軽減することができることも立証されている(Tzu-Han Lee et al. Fibroblast-enriched endoplasmic reticulum protein TXNDC5 promotes pulmonary fibrosis by augmenting TGFβ signaling through TGFBR1 stabilization. nature communications 11:4254(2020))。
【0006】
また、TXNDC5は、腎線維化の重要な調節者であると共に、慢性腎臓疾患の動物モデルにおいて、Txndc5の線維芽細胞を特異的に取り除くことにより、腎線維化を緩和することができることが立証されている(YT Chen, PY Jhao, CT Hung, YF Wu, SJ Lin, WC Chiang, SL Lin, KC Yang. Endoplasmic Reticulum Protein TXNDC5 Promotes Renal Fibrosis by Enforcing TGFβ Signaling in Kidney Fibroblasts. Journal of Clinical Investigation 2021mar 1: 131(5): e143645)。
【0007】
別の研究において、TXNDC5は、前線維化ERK及びSTAT3シグナル伝達の活性化を通じて、肝星細胞(hepatic stellate cells)の活性及び細胞外基質を促進することにより、肝線維化を引き起こすことが示されている(CT Hung, TH Su, YT Chen, YF Wu, YT Chen, SJ Lin, SL Lin, KC Yang. gutjnl. Gut 2021 Dec 21: gutjnl-2021-325065)。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、TXNDC5に特異的に結合するポリヌクレオチドを含むDNAアプタマーを提供することである。前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1-14のいずれか1つのヌクレオチド配列よりなる群から選択される。
【0009】
前記DNAアプタマーに関して、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:3のヌクレオチド配列である。
【0010】
前記DNAアプタマーに関して、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:7のヌクレオチド配列である。
【0011】
前記DNAアプタマーに関して、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:11のヌクレオチド配列である。
【0012】
上記目的のいずれか1つを達成するために、本発明は、上記DNAアプタマーを活性成分として含む医薬組成物を提供する。
【0013】
前記医薬組成物に関して、前記DNAアプタマーは、心臓線維化に対する治療剤である。
【0014】
前記医薬組成物に関して、前記DNAアプタマーは、心不全に対する治療剤である。
【0015】
前記医薬組成物に関して、前記DNAアプタマーは、肝線維化に対する治療剤である。
【0016】
前記医薬組成物に関して、前記DNAアプタマーは、腎線維化に対する治療剤である。
【0017】
前記医薬組成物に関して、前記DNAアプタマーは、慢性腎臓疾患に対する治療剤である。
【0018】
前記医薬組成物に関して、前記DNAアプタマーは、肺線維化に対する治療剤である。
【0019】
上記目的のいずれか1つを達成するために、本発明は、更に、上記DNAアプタマーをTXNDC5に結合することを含む、TXNDC5の触媒能力を抑制する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】DNAアプタマーのTXNDC5に対する結合親和性を説明する図である。
図2A】Apt-3を示す3D構造図である。
図2B】Apt-3及び野生型ヒトTXNDC5を示すドッキングシミュレーション図であり、矢印は、CGHC触媒モチーフである。
図3A】Apt-7を示す3D構造図である。
図3B】Apt-7及び野生型ヒトTXNDC5を示すドッキングシミュレーション図であり、矢印は、CGHC触媒モチーフである。
図4A】Apt-11を示す3D構造図である。
図4B】Apt-11及び野生型ヒトTXNDC5を示すドッキングシミュレーション図であり、矢印は、CGHC触媒モチーフである。
図5A】Apt-3の解離定数を示す図である。
図5B】Apt-7の解離定数を示す図である。
図6A】ヒトTXNDC5及びマウスTXNDC5の最適濃度を示す図である。
図6B】TXNDC5タンパク全体の遅延時間を示す図である。
図6C】Trxドメインの最適濃度を示す図である。
図6D】Trxドメインの遅延時間を示す図である。
図7A】TrxドメインとH22との交互作用によるTXNDC5ジスルフィド結合異性化酵素(disulfide isomerase)の活性アッセイを示す図である。
図7B】TXNDC5とH22又は16F16との交互作用によるTXNDC5ジスルフィド異性化酵素の活性アッセイを示す図である。
図7C】細胞により表現されたTXNDC5とびH22との相互作用によるTXNDC5ジスルフィド異性化酵素の活性アッセイを示す図である。
図8A】アプタマー-3の剤量反応アッセイを示す図である。
図8B】アプタマー-3の抑制率を示す図である。
図8C】アプタマー-7の剤量反応アッセイを示す図である。
図8D】アプタマー-7の抑制率を示す図である。
図8E】アプタマー-11の剤量反応アッセイを示す図である。
図8F】アプタマー-11の抑制率を示す図である。
図9A】体外生物活性アッセイの制御グループを示す結果である。
図9B】体外生物活性アッセイの第一実験グループを示す結果である。
図9C】体外生物活性アッセイの第二実験グループを示す結果である。
図9D】体外生物活性アッセイの第三実験グループを示す結果である。
図10A】抗線維化作用アッセイを示す結果である。
図10B】抗線維化作用アッセイを示す結果である。
図11A】細胞内ウエスタンブロッティングアッセイを示す結果である。
図11B】細胞内ウエスタンブロッティングアッセイを示す結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示内容の目的、特徴及び効果の理解を助けるために、本開示内容の詳細な説明に添付図の実施例を合わせて説明する。
【0022】
磁気アシスト迅速アプタマー選択(Magnetic-assisted rapid aptamer selection、MARAS)
先行研究に基づき、TXNDC5を標的とすることは、例えば、心臓線維化、心不全、肝線維化、腎線維化、慢性腎臓疾患及び肺線維化のような様々な線維化に関連する疾患に対する新規な治療方法になり得る。
【0023】
TXNDC5を標的とする戦略は、高特異性及び高親和性でTXNDC5と結合することができると共に、TXNDC5の触媒能力を抑制することができる、DNAアプタマーを提供する。このために、磁気アシスト迅速アプタマー選択によってこの新規な磁気のアプタマーに基づいて選択する方法を複数の標的であるTXNDC5のDNAアプタマー識別に用いる。
【0024】
MARASによりTXNDC5を標的とするDNAアプタマー(以下、アプタマーという場合がある)を選択する方法を以下の通り説明する。
【0025】
まず、EZ-Link NHS-SS-Biotinキットの操作マニュアルに基づいて、EZ-Link NHS-SS-Biotinキットによって、野生型TXNDC5、触媒機能を失ったTXNDC5タンパク及びヒト血清をビオチン化する。
【0026】
計100μgのそれぞれの生物化タンパク(上記ビオチン化された野生型TXNDC5、触媒機能を失ったTXNDC5タンパク及びヒト血清を含む)と、ストレプトアビジン(streptavidin、SA)が被覆された50μgのビーズ(MNP)(SA-MNP)とを混合して、4℃で一晩置く。
【0027】
次に、ビーズと綴合せていないビオチン化タンパクを除去するために、磁気プラットフォームによって、それぞれの上記混合物(ビオチン化タンパク及び、ビオチン化タンパクに対応して反応するビーズを含む)を磁気分離する。
【0028】
MNPと綴合せたタンパク(TXNDC5-MNP)を結合緩衝液によって洗浄する(前記結合緩衝液は、20mMのTris-Cl(pH7.6)、150mMのNaCl、50mMのKCl、2mMのMgCl2、1mMのCaCl2及び0.05vol%Twen-20を含み、以下の用語「結合緩衝液」は、ここに記載されているものと同じ成分を含む結合緩衝液を意味する)と共に、上記洗浄されたMNPと綴合せたタンパクを上記結合緩衝液の中に保存して、4℃下で放置するか、上記洗浄されたMNPと綴合せたタンパクを後続の実験に継続して用いる。
【0029】
更に、Integrated DNA Technologies社(IDT)によって、250nMの規模を採用することにより、出発遺伝子ライブラリとして、ランダムな50種ヌクレオチのssDNA遺伝子ライブラリ(アプタマー遺伝子ライブラリ)を化学合成している。それぞれのアプタマー(ssDNA)は、20個の中央ヌクレオチドがランダムであるポリヌクレオチドからなる。
【0030】
PCR増幅及びシークエンシングに用いるために、固着された二段のステムループ(stem-loop)が、中央のヌクレオチドの両側にあり、その両端に配列されている(5’-AGCAGC ACAGAGGTC-N20-GCGTGCTACCGTGAA-3’)(Tsao, S.m et al. Generation of Aptamers from A Primer-Free Randomized ssDNA Library Usingmagnetic-Assisted Rapid Aptamer Selection. Sci Rep7, 45478, doi:10.1038/ srep45478(2017))。使用した二組のプライマーは以下の通りである。
5’-AGCAGCACAGAGGTC-3’及び5’-TTC ACGGTAGCACGC-3’。
【0031】
上記ssDNAライブラリが構築された後、出発遺伝子ライブラリとして、ランダムに選ばれた0.5μlのオリゴヌクレオチド溶液(出発濃度は、100μMである)を使用すると共に、9.5μlの結合緩衝液を加えることにより、オリゴヌクレオチド遺伝子ライブラリを10μlにまで希釈する(ランダムに選ばれたオリゴヌクレオチド溶液の最終濃度は5μMである)。
【0032】
ssDNA二次構造を形成するために、上記溶液を95℃に加熱して、5分間維持する共に、すばやく4℃に冷却し、上記溶液のssDNAが二次構造を形成した後、上記溶液を室温で静置して、30分間維持する。結合緩衝液の中でTXNDC5(マウス野生型TXNDC5)-MNPと、オリゴヌクレオチド(ssDNA)とが作用することによって、室温でラウンド1のポジティブ選択を30分間行う。
【0033】
これにより、アプタマー-TXNDC5-MNP複合物を形成するために、TXNDC5-MNPとオリゴヌクレオチドとが共に結合する。上記アプタマー-TXNDC5-MNP複合物を、MARASプラットフォーム内部に配置し、強度が14ガウスかつ40-50KHzの回転磁界を施して、10分間維持している。上記回転磁界処理を経た後、凝集を避けるために、上記アプタマー-TXNDC5-MNP複合物を、2.5分ごとに移液する(pipetting)方式によって、かき混ぜる。
【0034】
上記アプタマー-TXNDC5-MNP複合物を、200μlの結合緩衝液で3回洗浄すると共に、結合緩衝液の中に保存する。両種TXNDC5(ヒト及びマウス)に結合されるアプタマーを精製するために、改めて、上記アプタマー-TXNDC5-MNP複合物を100μlの結合緩衝液の中で懸濁すると共に、同一の流れで次のラウンドのポジティブ選択(ヒト野生型TXNDC5)を行う。
【0035】
続いて、過去ラウンド2のポジティブ選択による遺伝子ライブラリ(ssDNA)と、ネガティブ血清-MNPとを共に室温で30分間作用させることにより、ネガティブ選択を行う。磁気分離した後、ネガティブ血清-MNPと結合したアプタマーが除去される。上記ネガティブ選択手順の通り、収集された上清液に対して、他のネガティブ-MNPによって、処理を持続する(ラウンド2の血清-MNP及びラウンド1の触媒機能を失ったTXNDC5-MNP)。最終上清液を収集し、上記上清液には、血清及び触媒機能を失ったTXNDC5と結合しないアプタマー-TXNDC5-MNP複合物が含まれる。
【0036】
標的結合アプタマーをPCRで増幅すると共に、PCR純化キット(MinElute PCR純化キット(QIAGEN))によって、商品操作マニュアルに従って、標的結合されたアプタマーのアンプリコンを純化する。続いて、標的結合アプタマーの純化されたアンプリコンをpGEM-T Easyベクター内にサブクローニングすると共に、DH5α受容性細胞内に導入する。High-Speed Plasmidminiキット(Geneaid社製)を使用して、ランダムに選ばれたコロニーを純化すると共に、上記コロニーにシークエンシングを行う。14個のTXNDC5と結合されたアプタマーの詳細な配列は、表1に列記される。
【0037】
【表1】
【0038】
TXNDC5の触媒機能に対するアプタマーの抑制作用を更に検討するために、後続の実験に用いるべく、アプタマー-3(Ap-3)、アプタマー-7(Ap-7)及びアプタマー-11(Ap-11)を代表して選出した。
【0039】
単独アプタマーの逆検証
上記流れを経て、100nMのアプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11を結合緩衝液の中でフォールディングさせる。20nMのアプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11を取り出して、それぞれ、ポジティブ(マウス及びヒトTXNDC5(5μl))-MNP及びネガティブ(血清及び触媒機能を失ったTXNDC5タンパク(5μl))-MNPと交雑すると共に、上記MARAS手順に基づき、交雑されたアプタマー-MNPを処理する。MNPと綴合せたアプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11を収集すると共に、100μlのddH2Oの中で95℃に加熱して5分間維持することにより、アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11を溶出する。
【0040】
q-PCRにより、上記アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11の量を検出すると共に、相対的発現量の程度を使用して検出結果を作成する。q-PCRによってアプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11の量を検出する手順を以下の通り説明する。アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11の相対的発現を測定するために、BioRad社製のCFX connectシステムによって、96ウェル盤においてq-PCRを行う。
【0041】
上記溶出されたアプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11を五倍希釈し、上記希釈を経たアプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11をそれぞれ100μlのリボヌクレアーゼが含まれる水の中に溶解する。BioRad社製のCFX connectシステムを使用して96ウェル盤の中でq-PCRを行うことによって、アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11の相対的発現を示している。
【0042】
総量が10μlであるq-PCR混合物を使用してq-PCR反応を行い、上記q-PCR混合物中には、5μlの2x_SYBR Green PCRmastermix(BioRad)、1μlのポジティブアプタマープライマー(1μM、IDT社)、1μlの逆方向アプタマープライマー(1μM、IDT社)及び3μlの溶出されたアプタマーが含まれる。q-PCRのパラメーターは、95℃で3分間、94℃で30秒間で40回の循環を行い、60℃で30秒間維持し、並びに、72℃で30秒間維持する。
【0043】
図1に示すように、アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11は、ポジティブ制御グループとの強い結合及び無視できるほどのネガティブ制御グループとの結合が観察された。アプタマー-3は、ヒトTXNDC5及びマウスTXNDC5に対して特異的な結合親和性があることを示している。アプタマー-11は、マウスTXNDC5に対して特異で強力な結合親和性を有することを示している。
【0044】
アプタマー構造及びアプタマー/TXNDC5のドッキング部位予測
上記確認されたTXNDC5を標的とするアプタマーとTXNDC5の触媒ドメインとが相互に作用するかを判断するために、コンピュータモデルを使用して、アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11の3Dモデル及び模擬タンパクドッキング部位を予測する。アプタマー構造及びアプタマー/TXNDC5ドッキング部位予測については、後続の手順で示している。
【0045】
まず、M-fold DNAフォールディングウェブサイト ソフトウェア(http://unafold.rna.albany.edu/?q=mfold/DNA-Folding-Form)を通じて、自由エネルギー最小化技術に基づいて、アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11の二次構造を予測する。M-fold DNAフォールディング形式のパラメーターを設定するために、アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11の出発配列を25℃であって、150mMのNa、2mMのMg2+イオン環境において現れる線性形式に設定する。
【0046】
計算を行う状況を以下の通り設定した。最小自由エネルギーに基づいて、フォールディング立体構造は5%以内にのみあり、かつ50個フォールディングの最大数量がペア塩基間の最大距離に制限されないことが考慮されている。次に、前記単独のアプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11をRNAアプタマーと同じように改変すると共に、RNAComposer(http://rnacomposer.cs.put.poznan.pl)によって、二次構造に基づき予測を行う。
【0047】
最後に、PatchDockサーバー(http://bioinfo3d.cs.tau.ac.il/ PatchDock/)によって、個別のアプタマーのドッキング部位及び野生型ヒトTXNDC5構造(I-TASSER、https://zhanglab.ccmb.med.umich.edu/I-TASSER/)を予測する。
アプタマー(リガンド分子)及びTXNDC5(受容体分子)の両者のタンパク質データバンク(protein data bank,PDB)に基づきコードを選択し、酵素抑制剤の類型の平均二乗偏差(mean square deviation)(RMSD, 4 Å)の低閥値によって評価する。
【0048】
上記予測の結果は、図2A図2B図3A図3B図4A図4Bに示されるところ、上記あらゆる三種類のアプタマーは、それぞれその3’末端及び5’末端箇所に単一ステムループ構造(Ap-11)又は二重ステムループ構造(Ap-3及びAp-7)が現れ、自由エネルー値を有すること(Ap-3:ΔG=-4.29kcal/mol、Ap-7:ΔG=-2.66kcal/mol、Ap-11:ΔG=-7.20kcal/mol)を観察できる。
【0049】
3D構造、及びドッキング部位に対する予測結果は、アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11が野生型ヒトTXNDC5に強固に固着され(図2A-4B)、かつアプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11の結合位置が触媒性チオレドキシン(catalytic thioredoxin,CGHC)に概ねドッキングできることを証明している。これは、TXNDC5を標的とするアプタマーを、TXNDC5に対するジスルフィドイソメラーゼ活性の潜在的なアンタゴニストとすることを更に表す。
【0050】
アプタマー-3及びアプタマー-7の解離定数(K d )
TXNDC5を標的とするアプタマーの結合親和性を更に判断するために、アプタマー-3及びアプタマー-7のKd値をアプタマーと目標分子との交互作用の指数とし、アプタマー-3及びアプタマー-7のKd値をq-PCRによって測定し、測定結果を非線形回帰フィッティングした。アプタマー-3及びアプタマー-7のKd値の測定手段を以下に説明する。
【0051】
アプタマー-3及びアプタマー-7を分離すると共に、100nMから3.125nMまで連続希釈を徐々に行い、アプタマー-3及びアプタマー-7を上記手順と同様の方法によって結合緩衝液の中でフォールディングする。アプタマー-3及びアプタマー-7に特異的に結合させるために、マウス-MNP又はヒト-MNPのいずれか1つとアプタマー-3及びアプタマー-7とを等量で混合すると共に、上記MARAS及びq-PCRを継続して行う。
【0052】
q-PCRから得られるそれぞれのCt値の測定結果及び濃度の測定結果をPRISM 8(Graphpad)によって非線形回帰の手段でフィッティングすることにより、アプタマー-3及びアプタマー-7のKd値を測定する。それぞれの測定結果に対しても三重複で行うことで、誤差を減少させる。
【0053】
図5A及び図5Bに示すように、マウスTXNDC5に対するアプタマー-3のKd値は、7.504nMであり、ヒトTXNDC5に対するアプタマー-7のKd値は、16.9nMであることから、XNDC5を標的とするアプタマーはTXNDC5と効率よく結合できることが証明された。
【0054】
インスリン還元アッセイ
それぞれのアプタマーによるTXNDC5のジスルフィドイソメラーゼ活性を抑制する潜在能力を判断するために、インスリン濁度アッセイ(turbidimetric assay)を行う。
【0055】
インスリン濁度アッセイを行うために、2つの単独のTXNDC5のチオレドキシンドメイン(Trx1及びTrx2)及びTXNDC5タンパクを製造する。
【0056】
TXNDC5の単独ドメイン(Trx1及びTrx2)は、高い触媒機能を有する。Trx1及びTrx2は、Yao-Hong Biotechnology Incによって合成されたものであり、高速液体クロマトグラフ(high performance liquid chromatography,HPLC)によって分析すると、その純度は85%より大きい。粉末形式の純化Trx1及びTrx2ペプチドを、濃度が1mg/mlである1:3アセトニトリル/水の混合物中で懸濁する。
【0057】
TXNDC5のTrx1配列は、skhlytadm fthgiqsaah fvmffapwcg hcqrlqptwn dlgkynsme dakvyvakvd ctahsdvcsa qgvrgyptlk lfkpgqeavk yqgprdfqtl enwmlqtlneである。また、TXNDC5のTrx2配列は、g lyelsanfe lhvaqgdhfi kffapwcghc kalaptweql alglehsetv kigkvdctqh yelcsgnqvr gyptllwfrd gkkvdqykgk rdleslreyv esqlqrteである。
【0058】
野生型ヒトTXNDC5、マウスTXNDC5、触媒性のある突然変異ヒトTXNDC5は、Sino Biological社製のバキュロウイルス発現ベクターシステムによって生産される(Biotools社)。まず、PCRによってTXNDC5のcDNAをその両側の選択された制限断片(Sino Biological社より提供)に加える。
【0059】
続いて、上記制限断片を上記バキュロウイルス発現ベクターに送り、TXNDC5のcDNAを含む上記バキュロウイルス発現ベクターを複数の昆虫細胞の中にトランスフェクションすることにより、必要なTXNDC5タンパクをコードする。ニッケル精製したカラムを使用して、細胞破片の可溶性断片の中から各種の組換えTXNDC5タンパクを純化する。
【0060】
必要なTXNDC5全体を含む上記断片を、調製した緩衝溶液の中で(20mMのPBS,300mM NaCl, 10% glycerol, pH7.5)に富化すると共に、更に溶解する。一定分量の純化されたTXNDC5タンパクを少量のサンプルに分けて-80℃で保存するか、後続の測定を行うために処理を継続する。
【0061】
アプタマー滴定TXNDC5の作用を測定するためのインスリン濁度アッセイを行う前に、Smith, A.m等の方法(Smith, A.m. et al. A high-throughput turbidometric assay for screening inhibitors of protein disulfide isomerase activity. J. Biomol. Screen. 9, 614-620, doi:10.1177/1087057104265292(2004))に基づいて、顕著な信号雑音比(signal-to-noise ratio,SNR)を達成するように、インスリン濁度アッセイに用いられるTXNDC5のTrx1とTrx2、又はTXNDC5タンパク全体の最適な還元濃度を設ける。
【0062】
384ウェル盤(Greiner)の中で、総体積が30μlである溶液(0.16mMのインスリン(Sigma-Aldrich)及びレダクターゼが存在する)で測定を実施する。TXNDC5タンパク全体(ヒト又はマウス)(33、5.5、1及び0.02μg/ml、図6A)又はTXNDC5ペプチド(Trx1又はTrx2)(5.6、2.8、1.12及び0.28μM、図6C)の濃度を測定緩衝液(100mMのリン酸及び0.2mMのEDTA、pH7.0)の中で変更する。
【0063】
反応を開始させるために、5μlの3.5mM DTT(最終濃度は0.5mMである)を加える。37℃でSynergy HTXmulti-mode検体メーター(BioTek製)を使用して650nmの箇所で上記反応90分間をモニターする。37℃でSynergy HTXmulti-mode検体メーター(BioTek)によって650nmの箇所で上記反応90分間をモニターする。レダクターゼの最適な濃度を確認するために、OD650nMの累積値及び遅延時間を示す。3倍又は6倍のSNRを得るとき、後続のインスリン還元濁度測定に用いるために、レダクターゼの指示濃度を決定することができる。
【0064】
インスリン濁度アッセイに用いられるTXNDC5のTrx1とTrx2、又はTXNDC5タンパク全体の最適な還元濃度の測定結果は、図6A-6Dに示す通りであり、高用量のTXNDC5(33μg/ml)は、エンドポイント濁度で、5.5μg/ml、1μg/ml及び0.02μg/mlのTXNDC5と比較して、それぞれ、およそ5%、20%及び40%の増加が見られた(図6A)。異性化酵素還元反応は、用量増加とともに加速され、劇的な濁度が見られた。
【0065】
この異性化酵素還元反応は、TXNDC5が最高量に達したとき、ジチオトレイトール(DTT)を加えた後10分間で得られるものである。TXNDC5による希釈用量を使用すると、インスリンの化学還元出発時間は2250秒以上(図6B)まで著しく遅延し、並びに、Trx1及びTrx2による希釈剤量を使用すると、インスリンの化学還元出発時間は3700秒以上(図6D)まで著しく遅延する。
【0066】
個別のTXNDC5のドメインTrx1及びTrx2に関して、全長のTXNDC5タンパクと比較して、Trx1及びTrx22つのドメインでは比較的長い反応時間及び比較的弱い動的反応(図6A-6D)が示される。これは、TXNDC5タンパク全体が用量増加により、還元反応が早く行われることにより、触媒されることができるためである(これにより、出発時間をより短くすることができる)(図6B及び図6D)。
【0067】
TXNDC5の触媒機能により生成される、沈殿したインスリン鎖の形成を確認するために、TXNDC5のTrx1とTrx2、又はTXNDC5タンパク全体を、それぞれ、過酸化水素(H22)又はタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ抑制剤16F16(50μm)と共に反応させる。TXNDC5のTrx1、Trx2、及びTXNDC5タンパク全体のレダクターゼ活性をインスリン還元アッセイで測定する。
【0068】
384ウェル盤(Greiner)の中で、総体積が30μlである溶液(最終濃度が0.16mMであるインスリン(Sigma-Aldrich)及びレダクターゼが存在する)で測定を行う。
【0069】
5.6μMのTXNDC5ペプチド(Trx1及びTrx2、図7A)、0.02μg/mlのTXNDC5タンパク全体(図7B)、又はそれぞれの細胞破片(野生型TXNDC5又は触媒機能を失ったTXNDC5タンパク(AAA)を有するヒト肝星細胞LX2、図7C)由来の10μgのタンパクの濃度を、測定緩衝液(100mMのリン酸及び0.2mMのEDTA、pH7.0)の中で変更する。
【0070】
TXNDC5の触媒機能により生成される沈殿したインスリン鎖の形成を更に確認するために、最終濃度が125mMである5μlの過酸化水素、又は最終濃度が50mMである5μl 16F16(タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ阻害剤)を25μlのレダクターゼ/インスリン/測定緩衝液の混合物中に加える。
【0071】
反応を開始させるために、5μlの3.5mM DTT(最終濃度は0.5mMである)を上記混合物中に加えて、37℃でSynergy HTXmulti-mode検体メーター(BioTek製)によって650nm箇所で上記反応を90分間モニターする。650nmでの吸光値(OD650nm)において、37℃で全体90分間のうち5分間の増加が測定された。累積したOD650nmが酵素動的能力として表されている。
【0072】
LX2は、台湾国立台湾大学病院の蘇東弘(Tung-Hung Su)医師から取得したものである。前記細胞株は、10%のFBS及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEMの中に置かれ、かつ培養箱の中で培養され、前記培養箱は、37℃で95%のO2及び5%のCO2の循環で良好に制御される。
【0073】
過酸化水素(H22)は、還元を減少させることによって、反応を中断させることができる。タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ抑制剤16F16は、TXNDC5の触媒活性を消滅させることができる。
【0074】
同時に、TXNDC5の、触媒性ドメインを有する構造形態の影響を更に評価するために、肝細胞(ヒト肝星細胞LX2)が慢病毒形質導入システムによって発見された野生型TXNDC5又は触媒機能を失ったTXNDC5タンパク(AAA)に形質導入され、上記肝細胞の断片に動的還元測定を行う。動的還元測定は、上記インスリン還元アッセイを参考にして行う。
【0075】
LX2細胞株内過剰発現制御グループ(pLAS2w.pPuro)、ヒト野生型TXNDC5(pLAS2w.pPuro-TXNDC5)又は触媒機能を失ったTXNDC5タンパク(pLAS2w.pPuro-TXNDC5-AAA)に用いるために、慢病毒形質導入システムを採用し、必要なタンパクの生産量を向上させるために、感染多重度(multiplicity of infection,MOI)が15であり、ポリブレン(Polybrene)(8μg/ml)を含む無血清DMEM培養基の中で培養感染させたLX2細胞株を24時間培養し、維持する。
【0076】
現有のDMEM培養基を注意深く吸引すると共に、新鮮な培養基に交換した後、ピューロマイシン(0.5ng/ml)を使用して、手順を行うのに用いられる、形質導入された細胞を選択する。1倍の細胞分解緩衝液(Cell Signaling Technology、MA、米国)を使用して細胞を均質化し、上記細胞分解緩衝液の中にプロテアーゼ抑制剤混合物及びHALTホスファターゼ(Thermo Fisher Scientific、MA、米国)を補充し、次に、上記方式によって処理した細胞を4℃で、10,000xgで10分間遠心分離して、上清液を収集する。
【0077】
BCAタンパク質アッセイによってタンパクライセートの濃度を決定し、上記インスリン還元アッセイに用いるために、計10μgであるそれぞれのタンパク質のサンプルをddH2Oの中(最終体積は5μlである)で希釈する。
【0078】
TXNDC5のTrx1及びTrx2と、又はTXNDC5タンパク全体とH22又は16F16との上記反応の測定結果は、図7A-7Cにおいて示通りである。TXNDC5タンパク全体及び単独のTrx1、Trx2ドメインとH22との動的反応は、完全かつ効率的に中止される(図7A及び7B)。図7Bに示すように、エンドポイント動的吸光値の高原箇所は、16F16の増加に伴って、衰減する。これは、インスリンにおける交互鎖ジスルフィド結合の還元分裂に触媒能力が必要であることを証明している。
【0079】
図7Cに示すように、TXNDC5を過剰に有する細胞は、比較的高いインスリン沈澱率を示した。しかし、このような加速反応は、触媒機能を失ったTXNDC5タンパクを含む細胞ライセート又はH22を加えた細胞ライセートにおいて、存在しない。
【0080】
TXNDC5に対するアプタマー(アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11)の滴定効果を測定する手順を以下の通り説明する。
【0081】
(ステップ1)
アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11のそれぞれ(60μl)を結合バッファー(20μl)に別々に混合し、アプタマーと結合バッファーの混合物とを95℃に5分間加熱して維持した後、4℃に急冷して二次構造を形成し、25℃で30分間維持する。
【0082】
(ステップ2)
40μlの結合緩衝液を希釈剤として使用し、それぞれの受体混合物に半分ずつ連続希釈を行う。アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11のそれぞれを7.8125μM、15.625μM、31.25μM、62.5μM、125μM、250μM、500μMと濃度を変えた各種希釈液として調製している。
【0083】
(ステップ3)
アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11の40μlの各希釈液(それぞれ、7.8125μM、15.625μM、31.25μM、62.5μM、125μM、250μM及び500μMと異なる濃度である)を5μlのヒト野生型TXNDC5(0.4μlのヒト野生型TXNDC5(3.125μg/ml)を5μlに希釈する)と共に振動させて、30分間培養する。
【0084】
(ステップ4)
1.6mMのインスリン(インスリンを0.1NのHClの中に溶解させて、調製する)を、100mMのリン酸及び0.2mMのEDTA(pH7)からなる測定緩衝液に加えることによって、インスリン/測定緩衝液を調製する。それぞれのインスリン/測定緩衝液の体積は15μlであり、インスリンの体積は6μlであって、測定緩衝液の体積は9μlである。
【0085】
(ステップ5)
異なる濃度のそれぞれのアプタマー(アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11)を有する上記混合物とヒト野生型TXNDC5とを、それぞれ、対応するインスリン/測定緩衝液を加える。即ち、アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11については、それぞれ、7つの実験グループサンプル(7.8125μM、15.625μM、31.25μM、62.5μM、125μM、250μM及び500μMと異なる濃度である)を有する。制御グループサンプルとして、上記アプタマーを加えなかった混合物及びヒト野生型TXNDC5のインスリン/測定緩衝液を調製する。
【0086】
(ステップ6)
すべての実験グループサンプル及び制御グループのサンプルをそれぞれのウェルにつき30μlの量で384ウェル盤の中に加える。その後、それぞれの実験グループサンプル及び制御グループサンプルの中に、反応を開始させるために、5μlの3.5mMのDTTを加えて、素早く混合する。
【0087】
(ステップ7)
実験グループサンプル及び制御グループサンプルの酵素反応をSynergy HTXmulti-mode検体メーター(BioTek製)によって650nm箇所でモニターする。
【0088】
酵素反応の測定結果は、図8A図8Fに示される。また、あらゆる三種類のアプタマー(アプタマー-3、アプタマー-7及びアプタマー-11)による活性を抑制する程度は、用量の増加に伴って増加し、アプタマー-3のIC50値は213.7μM(D)であり、アプタマー-7のIC50値は241.0μM(B)であり、アプタマー-11のIC50値は263.2μM(F)である。これは、TXNDC5を標的とするアプタマーがTXNDC5のジスルフィドイソメラーゼ活性を抑制できることを証明している。
【0089】
体外生物活性アッセイ
TXNDC5を標的とするDNAアプタマーの線維芽細胞に対する生物活性を判断するために、体外生物活性アッセイを以下の通り行う。
【0090】
まず、細胞培養盤の中で3T3細胞(ATCC,CRL-1658)を培養する。細胞密度は、5,000細胞/cmであり、続いて、3T3細胞を6,400μlのDulbecco’smodified Eagle培養基(Dulbecco’smodified Eaglemedium,DMEM)の中で懸濁する。
【0091】
DMEMの中には10%のウシ胎仔血清(fetal bovine serum,FBS)が含まれ、3T3細胞を4つの8ウェル培養スライド(chamber slides)(iBidi,80841)の各ウェルの中に接種し、各ウェルの中には200μlの上記DMEM及び5,000個細胞が含まれ、これらの8ウェル培養スライドを培養箱の中に37℃で放置して、一晩置く。
【0092】
翌日に、各培養スライドのそれぞれのウェルの培養基を完全に吸収した後、100μlのFBSなしのDMEM培養基を各培養スライドのそれぞれのウェルの中に加える。その後、これらの8ウェル培養スライドを培養箱の中に放置して、3時間維持する。これらの8ウェル培養スライドを培養箱の中に放置して、37℃で3時間維持した後、そのうち3個8ウェル培養スライドのそれぞれのウェルの中にFAM_apt7_dTを加える(蛍光タンパクFAMとアプタマー7の5’末端とを綴合して、アプタマー7の3’末端をdT修飾する)。
【0093】
これらのFAM_apt7_dが加えられた培養スライドを第一実験グループ、第二実験グループ及び第三実験グループとして指定する。FAM_apt7_dTが加えられなかった培養スライドを制御グループとして指定する。
【0094】
FAM_apt7_dが第一実験グループに6時間後に、第一実験グループの中のそれぞれのウェルの培養基を完全に吸収すると共に、PBSで第一実験グループのそれぞれのウェルを洗浄して5分間持続することによって、その中における細胞破片を洗浄し出す。3T3細胞を洗浄された第一実験グループのそれぞれのウェルの中に固着するために、洗浄された第一実験グループのそれぞれのウェルの中に、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)を、加えて15分間維持する。
【0095】
第一実験グループの中に4%のパラホルムアルデヒド(PFA)を加えて、15分間維持した後、PBSで第一実験グループのそれぞれのウェルを洗浄して、5分間持続し、3回繰り返すと共に、十倍希釈された透過緩衝液(permeabilization buffer)(Abcam社製,ab219801)を洗浄された第一実験グループのそれぞれのウェルの中に加えて、20分間維持する。
【0096】
十倍希釈された透過緩衝液を第一実験グループのそれぞれのウェルの中に加えて、20分間維持した後、PBSで第一実験グループのそれぞれのウェルを洗浄し、5分間持続して、3回繰り返すと共に、200μl/ウェルの5%ウシ胎仔血清アルブミン(BioFroxx)ブロッキング緩衝液(blocking buffer)を洗浄された第一実験グループのそれぞれのウェルの中に加えて、室温で1時間維持する。
【0097】
200μl/ウェルの5%ウシ胎仔血清アルブミン(BioFroxx)ブロッキング緩衝液(blocking buffer)を第一実験グループのそれぞれのウェルの中に加えて、室温で1時間維持した後、PBSで第一実験グループのそれぞれのウェルを洗浄し、5分間持続し、3回繰り返すと共に、一級抗体、即ち、TXNDC5多株抗体(Proteintech,19834-1-AP)(ブロッキング緩衝液で1:100希釈倍数の希釈を行い)を洗浄された第一実験グループのそれぞれのウェルの中(TXNDC5多株抗体の最終濃度は6.5μg/mlである)に加えて、4℃で一晩置く。
【0098】
TXNDC5多株抗体を第一実験グループの中に加えて、一晩置いた後、PBSで第一実験グループのそれぞれのウェルを洗浄して5分間持続し、3回繰り返すと共に、二級抗体(ロバ抗ウサギAlexa Flour 555)(Invitrogen社製,A-31572)(ブロッキング緩衝液で1:500希釈倍数の希釈を行う)を洗浄された第一実験グループのそれぞれのウェルの中(二級抗体の最終濃度は4μg/mlである)に加えて、室温で2時間維持する。これにより、第一実験グループにおけるTXNDC5を表記した。
【0099】
二級抗体を第一実験グループの中に加えて2時間維持した後、PBSで第一実験グループのそれぞれのウェルを洗浄して5分間持続し、3回繰り返し、更に、洗浄された第一実験グループのそれぞれのウェルにおける余剰液を取り除く。第一実験グループの余剰液を取り除いた後、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(4’,6-diamidino-2-phenylindole,DAPI)を含む封入剤(mountingmedium)(Southern Biotech社製,0100-20)を使用して、第一実験グループにおける3T3細胞の細胞核を標記する。
【0100】
染色済みの3T3細胞の影像は、蛍光顕微鏡EVOS M7000(Invitrogen社製)によってキャプチャーされる。
【0101】
第二実験グループ、第三実験グループ及び制御グループに対しては、上記第一実験グループと同一の手順を繰り返す。第一実験グループ、第二実験グループ、第三実験グループ及び制御グループとの間で唯一異なる実験条件は、FAM_apt7_dTが第一実験グループ、第二実験グループ又は第三実験グループに加われた反応時間であり、FAM_apt7_dTを第二実験グループに加えて24時間維持し、FAM_apt7_dTを第三実験グループに加えて48時間維持し、かつFAM_apt7_dTを制御グループに加えなかった。
【0102】
体外生物活性アッセイの測定結果は、図9A図9Dに示される。FAM′を表記したDNAアプタマー(緑色)は、6時間後から3T3細胞に取り込まれ、TXNDC5と同一の区域にあると共に、48時間目に細胞質において検出可能な状態を維持できる。図9A図9Dの測定結果は、これらDNAアプタマーは自由に線維芽細胞に取り込まれると共に、TXNDC5と交互に作用することを示している。同時に、これらDNAアプタマーの細胞内の安定性は、少なくとも48時間維持できる。
【0103】
上記測定結果は、DNAアプタマーがTXNDC5と直接相互に作用して、いかなる補助剤を必要としないことを示唆している。
【0104】
抗線維化作用アッセイ
TXNDC5を標的とするDNAアプタマーの線維芽細胞の中の抗線維化作用を判断するために、抗線維化作用のアッセイを以下の通り行う。
【0105】
まず、細胞培養盤の中で3T3細胞(ATCC,CRL-1658)を培養する。細胞密度は5,000細胞/cm2であり、続いて、3T3細胞を3,200μlのDulbecco’smodified Eagle 培養基(DMEM)の中で懸濁し、DMEMの中には10%のウシ胎仔血清(FBS)が含まれ、3T3細胞を2つの8ウェル培養スライド(iBidi,80841)の各ウェルの中に接種し、各ウェルの中に200μlの上記DMEM及び5,000個細胞が含まれ、これらの8ウェル培養スライドを培養箱の中に放置して37℃で一晩置く。
【0106】
1つの培養スライドを24時間グループに指定し、24時間グループのそれぞれ2つのウェルを単位とし、それぞれを、第一実験グループ、第二実験グループ、第三実験グループ及び制御グループに指定する。もう1つの培養スライドを48時間グループに指定し、24時間グループと同様に、48時間グループも第一実験グループ、第二実験グループ、第三実験グループ及び制御グループを有している。
【0107】
翌日に、24時間グループ及び48時間グループのそれぞれのウェルにおける培養基を完全に吸収した後、50μlのFBSなしのDMEM培養基を24時間グループ及び48時間グループのそれぞれのウェルの中に加えた。その後、24時間グループ及び48時間グループを培養箱の中に放置して37℃で3時間維持する。
【0108】
24時間グループ及び48時間グループを培養箱の中に放置して37℃で3時間維持した後、24時間グループ及び48時間グループの第一実験グループのそれぞれのウェルの中にTGFβ(最終濃度は10μg/mlである)を加えた。また、24時間グループ及び48時間グループの第二実験グループのそれぞれのウェルの中にTGFβ(最終濃度は10μg/mlである)及び非標的アプタマー(Spt_dT)(最終濃度は5μg/mlである)を共に加えた。
【0109】
また、24時間グループ及び48時間グループの第三実験グループのそれぞれのウェルの中にTGFβ(最終濃度は10μg/mlである)及び上記FAM_apt7_dT(最終濃度は5μg/mlである)を共に加えた。24時間グループ及び48時間グループの制御グループのそれぞれのウェルの中には、いかなる物も加えなかった。
【0110】
24時間グループ及び48時間グループの第一実験グループ、第二実験グループ、第三実験グループ及び制御グループに対して上述通りの処理を24時間行った後、24時間グループのそれぞれのウェルを完全に吸収すると共に、PBSで24時間グループのそれぞれのウェルを洗浄して5分間持続し、その細胞破片を洗浄し出す。洗浄された24時間グループのそれぞれのウェルの中に4%のパラホルムアルデヒド(PFA)を加えて、15分間維持し、3T3細胞を洗浄された24時間グループのそれぞれのウェルの中に固着する。
【0111】
4%のPFAを24時間グループの中に加えて15分間維持した後、PBSで24時間グループのそれぞれのウェルを洗浄して5分間持続し、3回繰り返すと共に、十倍希釈した透過緩衝液(Abcam社製,ab219801)を洗浄された24時間グループのそれぞれのウェルの中に加えて20分間維持した。
【0112】
十倍希釈された透過緩衝液を24時間グループの中に加えて20分間維持した後、PBSで24時間グループのそれぞれのウェルを洗浄して5分間持続し、3回繰り返すと共に、200μl/ウェルの5%ウシ胎仔血清アルブミン(BioFroxx)ブロッキング緩衝液を洗浄された24時間グループのそれぞれのウェルの中に加えて室温で1時間維持する。
【0113】
200μl/ウェルの5%ウシ胎仔血清アルブミン(BioFroxx)ブロッキング緩衝液を24時間グループの中に加えて1時間維持した後、PBSで24時間グループのそれぞれのウェルを洗浄して5分間持続し、3回繰り返すと共に、一級抗体、即ちα平滑筋アクチン(αSMA)多株抗体(Abcam社製,ab5694)(ブロッキング緩衝液の1:100希釈倍数で希釈を行う)を洗浄された24時間グループのそれぞれのウェルの中(αSMA多株抗体の最終濃度は2μg/mlである)に加えて4℃で一晩置く。
【0114】
αSMA多株抗体を24時間グループの中に加えて一晩置いた後、PBSで24時間グループのそれぞれのウェルを洗浄して5分間持続し、3回繰り返すと共に、二級抗体(ロバ抗ウサギAlexa Flour 555)(Invitrogen社製,A-31572)(ブロッキング緩衝液の1:500希釈倍数で希釈を行う)を洗浄された24時間グループのそれぞれのウェルの中(二級抗体の最終濃度は4μg/mlである)に加えて室温で2時間維持する。これにより、24時間グループにおけるαSMAを標記する。
【0115】
二級抗体を24時間グループの中に加えて2時間維持した後、PBSで24時間グループのそれぞれのウェルを洗浄して5分間持続し、3回繰り返し、更に洗浄された24時間グループのそれぞれのウェルにおける余剰液(主な液体はPBSである)を取り除く。24時間グループにおける余剰液を取り除いた後、DAPIを含む封入剤(Southern Biotech社製,0100-20)を使用して、24時間グループにおける3T3細胞の細胞核を標記する。
【0116】
24時間グループにおける染色済みの3T3細胞の影像は、蛍光顕微鏡EVOSm7000(Invitrogen社製)によってキャプチャーされる。
【0117】
上記24時間グループの中の抗線維化作用アッセイを3回繰り返す。
【0118】
48時間グループについては、上記24時間グループと同一の手順を繰り返す。24時間グループと48時間グループとの間で唯一異なる実験条件は、TGFβ、FAM_apt7_dT、Spt_dT又はその組み合わせが24時間グループと48時間グループに加わった反応時間である。24時間グループの反応時間は24時間であり、48時間グループの反応時間は48時間である。
【0119】
抗線維化作用アッセイの測定結果は、図10A及び10Bに示す通りである。図10Aは、アプタマー7がαSMAの発現を抑制することを示す。αSMAは、TGFβで刺激処理された3T3線維芽細胞における線維芽細胞活化及び肌線維芽細胞分化転換(transdifferentiation)の標記である。
【0120】
制御グループと比較して、第一実験グループ(TGFβのみのグループ)及び第二実験グループ(Spt_dTのグループ)は、3T3細胞において24時間目及び48時間目でαSMAが顕著に発見されたが、第三実験グループ(FAM_apt7_dTのグループ)は、3T3細胞において24時間目及び48時間目でαSMAが顕著に抑制される。
【0121】
図10Bは、第一実験グループ、第二実験グループ及び第三実験グループのαSMA発現率を示し、図10Bにおける符号「ns」は、データに顕著な差異がないことを意味し、図10Bにおける星マークはP値を意味する(*:P<0.05,**:P<0.01)。
【0122】
TXNDC5を標的とするDNAアプタマー(FAM_apt7_dT)で処理すると、3T3細胞のTGFβ刺激に対するαSMAの発現が24時間及び48時間のいずれにおいても顕著に抑制されたが、非標的アダプター(Spt_dT)の処理ではこの発見はなかった。
【0123】
細胞内ウエスタンブロッティングアッセイ
TXNDC5を標的とするDNAアプタマーのフィブロネクチン(fibronectin)に対する細胞発現量の抑制作用を判断するために、細胞内ウエスタンブロッティングアッセイを以下の通り行う。
【0124】
まず、細胞培養盤の中で3T3細胞(ATCC,CRL-1658)を培養する。細胞密度は5,000細胞/cm2であり、続いて、3T3細胞を4,800μlのDulbecco’smodified Eagle培養基(DMEM)の中に懸濁し、DMEMの中には10%のウシ胎仔血清(FBS)が含まれ、3T3細胞を96ウェル盤の64ウェルの中に接種し、それぞれのウェルの中には100μlの上記DMEM及び1,600個細胞が含まれ、上記96ウェル盤を培養箱の中に放置して、37℃で一晩置く。
【0125】
同時に、現在の細胞内ウエスタンブロッティングアッセイに用いるアプタマーを製造する。アプタマーの製備手順は、以下の通りである。15.75μlのFAM_apt_dT基料(100μM)、1μlのTris-Cl(400mM)、2μlのNaCl(1.5μM)、1μlのKCl(1μM)、0.04μlのMgCl2(1μM)、0.2μlのCaCl2(100mM)及び0.01μlのTween-20を混合する。
【0126】
上記混合物の最終体積は、20μlであり、かつ上記混合物におけるFAM_apt_dT濃度は78.75μMである。続いて、上記混合物を95℃に加熱して5分間維持する。上記混合物を95℃に加熱して5分間維持した後、上記混合物を4℃に冷却して30秒維持し、その後25℃で放置して30分間維持し、アプタマーフォールディングを生じさせる。
【0127】
上記手順に基づいて、濃度が78.75μMであるFAM_apt_dT基料を調製する。濃度の異なるFAM_apt_dT溶液を得るために、70μlのFAM_apt_dT基料(78.75μM)と70μlの結合緩衝液とを混ぜて、濃度が39.375μMであるFAM_apt_dT溶液を調製し、続いて、濃度が39.375μMのFAM_apt_dT溶液を前記手段で順次希釈し、19.68μM、9.84μM、4.92μM、2.46μM、1.23μMの濃度であるFAM_apt_dT溶液を別々に調製する。
【0128】
翌日に、上記96ウェル盤の64ウェルの培養基を完全に吸収した後、50μlのFBSなしのDMEM培養基を上記64ウェルのそれぞれのウェルの中に加える。その後、上記96ウェル盤を培養箱の中に放置して、37℃で3時間維持する。上記96ウェル盤を培養箱の中に放置して、37℃で3時間維持した後、異なる条件で上記96ウェル盤の64ウェルを処理する。
【0129】
上記96ウェル盤における32ウェルを制御グループに指定し、制御グループの3T3細胞はTGFβで処理しない。上記96ウェル盤における他の32ウェルを実験グループに指定し、実験グループの3T3細胞を10μg/mlのTGFβで処理する。実験グループ及び制御グループの両者(50μlのFBSなしを含むDMEM培養基)を、FAM_apt_dTで以下の通り処理する。
【0130】
濃度が78.75μMである70μlのFAM_apt_dTを実験グループ/制御グループの第一バッチの四個ウェルのそれぞれに加え(FAM_apt_dTの最終濃度は20μMである)、濃度が39.375μMである70μlのFAM_apt_dTを実験グループ/制御グループの第二バッチの四個ウェルのそれぞれに加え(FAM_apt_dTの最終濃度は10μMである)、濃度が19.68μMである70μlのFAM_apt_dTを実験グループ/制御グループの第三バッチの四個ウェルのそれぞれに加え(FAM_apt_dTの最終濃度は5μMである)、濃度が9.84μMである70μlのFAM_apt_dTを実験グループ/制御グループの第四バッチの四個ウェルのそれぞれに加え(FAM_apt_dTの最終濃度は2.5μMである)、濃度が4.92μMである70μlのFAM_apt_dTを実験グループ/制御グループの第五バッチの四個ウェルのそれぞれに加え(FAM_apt_dTの最終濃度は1.25μMである)、濃度が2.46μMである70μlのFAM_apt_dTを実験グループ/制御グループの第六バッチの四個ウェルのそれぞれに加え(FAM_apt_dTの最終濃度は0.625μMである)、濃度が1.23μMである70μlのFAM_apt_dTを実験グループ/制御グループの第七バッチの四個ウェルのそれぞれに加え(FAM_apt_dTの最終濃度は0.3125μMである)、実験グループ/制御グループの第八バッチの四個ウェルのそれぞれにFAM_apt_dTは加えない。
【0131】
実験グループ/制御グループが上記処理を経た後、実験グループ及び制御グループを培養箱の中に放置して37℃で72時間維持する。
【0132】
実験グループ及び制御グループを培養箱の中に放置して72時間維持した後、実験グループ及び制御グループのそれぞれのウェルにおける培養基を完全に吸収すると共に、PBSで実験グループ及び制御グループのそれぞれのウェルを洗浄して5分間持続し、3回繰り返して、その細胞破片を洗浄し出す。その後、4%パラホルムアルデヒド(PFA)を洗浄された実験グループ及び制御グループのそれぞれのウェルの中に加えて20分間維持し、3T3細胞を洗浄された実験グループ及び制御グループのそれぞれのウェルの中に固着する。
【0133】
4%パラホルムアルデヒド(PFA)を実験グループ及び制御グループの中に加えて20分間維持した後、PBSで実験グループ及び制御グループのそれぞれのウェルを洗浄して5分間持続し、3回繰り返すと共に、十倍希釈した透過緩衝液(Abcam社製, ab219801)を洗浄された実験グループ及び制御グループのそれぞれのウェルの中に加えて20分間維持した。
【0134】
十倍希釈された透過緩衝液を実験グループ及び制御グループの中に加えて20分間維持した後、PBSで実験グループ及び制御グループのそれぞれのウェルを洗浄して5分間持続し、3回繰り返すと共に、150μl/ウェルのLI-CORブロッキング緩衝液を実験グループ及び制御グループのそれぞれのウェルの中に加えて室温で1時間維持する。
【0135】
150μl/ウェルのLI-CORブロッキング緩衝液を実験グループ及び制御グループの中に加えて1時間維持した後、PBSで実験グループ及び制御グループのそれぞれのウェルを洗浄して5分間持続し、3回繰り返すと共に、一級抗体、即ち、フィブロネクチンモノクローナル抗体(BD Biosciences,610077)(LI-CORブロッキング緩衝液で1:100希釈倍数の希釈を行う)を実験グループ及び制御グループのそれぞれのウェルの中(フィブロネクチンモノクローナル抗体の最終濃度は2.5μg/mlである)に加えて4℃で一晩置く。
【0136】
フィブロネクチンモノクローナル抗体を実験グループ及び制御グループの中に加えて一晩置いた後、PBSで実験グループ及び制御グループのそれぞれのウェルを洗浄して5分間持続し、3回繰り返す。その後、二級抗体(ヤギ抗マウスIRDye 800CW)(LI-CORブロッキング緩衝液で1:1000希釈倍数の希釈を行う)とCelltag 700(LI-CORブロッキング緩衝液で1:500希釈倍数の希釈を行う)を共に実験グループ及び制御グループのそれぞれのウェルの中(二級抗体の最終濃度が1μg/ml、Celltag 700の最終濃度が0.2μg/ml)に加えて室温で2時間維持する。
【0137】
これにより、実験グループ及び制御グループにおけるフィブロネクチン及び3T3細胞の数量を検出する。Odyssey CLx紅外線成像システムによって、実験グループ及び制御グループのスキャン及び分析を行う。実験グループ及び制御グループのIC50をPrismによって計算する。
【0138】
細胞内ウエスタンブロッティングアッセイの測定結果は、図11A及び図11Bに示す通りである。図11A及び図11Bは、TXNDC5を標的とするDNAアプタマーのフィブロネクチンの細胞発現量に対する強烈な抑制作用を示す。フィブロネクチンは、繊維生成過程における重要なECMタンパクである。図11A及び図11Bは、TGFβ刺激なし(IC50 5.389μM)又はTGFβ刺激有り(IC50 4.12μM)を示す。
【0139】
上述の通り、TXNDC5を標的とするアプタマーは、TXNDC5タンパクと結合すると共に、TXNDC5の触媒能力を抑制することができる。先行技術は、TXNDC5を標的とすることが有効な治療方法であり、器官線維化(例えば心臓線維化、肝線維化、肺線維化及び腎線維化)、心不全及び慢性腎臓疾患を予防又は治療できることを既に証明している。
【0140】
活性成分としてTXNDC5を標的とするアプタマーを含む医薬組成物を利用して、器官線維化、心不全及び慢性腎臓疾患の予防又は治療を行うことができる。上記医薬組成物は、例えば、生理食塩水、ナノ粒子、又はいかなる既知のアプタマーに適するベクターなど、薬学上受け入れられているベクターを含んでもよい。
【0141】
同時に、器官線維化の予防又は治療に用いられる方法を提供し、前記方法は、有効な投与量のTXNDC5を標的とするアプタマーを、必要とする対象に投与することを含む。
【0142】
具体的な実施例を通じて本出願の開示内容を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は特許請求の範囲にて説明した本出願の開示内容の範囲及び要旨を逸脱しない状況で、具体的な実施例に対して様々な修正及び変更を行うことができる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
【配列表】
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