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特開2023-145410動物の分娩検知システム及び分娩検知方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145410
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】動物の分娩検知システム及び分娩検知方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
A01K29/00 A
A01K29/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050907
(22)【出願日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2022051950
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(71)【出願人】
【識別番号】398000288
【氏名又は名称】株式会社むつ家電特機
(71)【出願人】
【識別番号】519076794
【氏名又は名称】有限会社小比類巻家畜診療サービス
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【弁理士】
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】宮川 大志
(72)【発明者】
【氏名】平泉 真吾
(72)【発明者】
【氏名】水木 若菜
(72)【発明者】
【氏名】杉山 弘昭
(72)【発明者】
【氏名】杉山 暢
(72)【発明者】
【氏名】杉山 秀史
(72)【発明者】
【氏名】小比類巻 正幸
(57)【要約】      (修正有)
【課題】分娩検知の精度の高い動物の分娩検知システム及び分娩検知方法を提供する。
【解決手段】動物Cの腟内に挿入され、動物Cの生体組織による吸収及び減衰により伝搬が遮蔽される第1周波数の第1電波信号を発信する発信器と、動物Cから30m以内となる第1距離の位置に配置され、第1電波信号を受信する第1受信素子55aを有し、第1周波数よりも低周波の第2周波数fの第2電波信号に変換し、第2電波信号を送信する中継装置5と、中継装置5から、第1距離よりも長い第2距離の位置に配置され、第2電波信号を受信する第2受信素子35cを有する受信装置3を備える。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の腟内に挿入され、前記動物の生体組織による吸収及び減衰により伝搬が遮蔽される第1周波数の第1電波信号を発信する発信器と、
前記動物から30m以内となる第1距離の位置に配置され、前記第1電波信号を受信する第1受信素子を有し、前記第1電波信号を前記第1周波数よりも低周波の第2周波数の第2電波信号に変換し、前記第2電波信号を送信する中継装置と、
前記中継装置から、前記第1距離よりも長い第2距離の位置に配置され、前記第2電波信号を受信する第2受信素子を有する受信装置
を備えることを特徴とする分娩検知システム。
【請求項2】
前記第1周波数が2.4GHz帯に含まれる周波数であり、前記第2周波数が920MHz帯に含まれる周波数であることを特徴とする請求項1に記載の分娩検知システム。
【請求項3】
前記中継装置が第1無線LANアダプタを更に備えることを特徴とする請求項2に記載の分娩検知システム。
【請求項4】
前記受信装置が第2無線LANアダプタを更に備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の分娩検知システム。
【請求項5】
動物の生体組織による吸収及び減衰により伝搬が遮蔽される第1周波数の第1電波信号を発信する発信器と、前記動物から30m以内となる第1距離の位置に配置され、前記第1電波信号を受信する第1受信素子を有し、前記第1電波信号を前記第1周波数よりも低周波の第2周波数の第2電波信号に変換し、前記第2電波信号を送信する中継装置と、前記中継装置から、前記第1距離よりも長い第2距離の位置に配置され、前記第2電波信号を受信する第2受信素子を有する受信装置を備える分娩検知システムを使用した分娩検知方法であって、
前記発信器が露出しないように、前記発信器を出産間近の前記動物の腟内に挿入するステップと、
前記発信器が前記腟内から押し出されて露出し、前記第1電波信号を前記第1受信素子が受信するステップと、
前記中継装置において、前記第1電波信号を前記第2電波信号に変換し、該第2電波信号を送信するステップと、
送信された前記第2電波信号を前記第2受信素子が受信するステップと
を含むことを特徴とする分娩検知方法。
【請求項6】
前記受信装置が無線LANアダプタを更に備え、
前記受信装置において前記第2電波信号を前記第1及び第2周波数とは異なる周波数を有する第3電波信号に変換し、前記無線LANアダプタが前記第3電波信号を前記受信装置から最寄りの無線LANルータに送信するステップと
を含むことを特徴とする請求項5に記載の分娩検知方法。
【請求項7】
前記第1周波数が2.4GHz帯に含まれる周波数であり、前記第2周波数が920MHz帯に含まれる周波数であることを特徴とする請求項5又は6に記載の分娩検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛等の動物の分娩開始を検出する分娩検知システム及び分娩検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畜産や酪農等の様々な目的で、様々な動物が家畜として飼養されている。家畜として飼養される動物は、出産によるリスクを軽減することが望まれる。例えば、牛等の大型の動物の場合、出産時に胎子が正常に分娩されないことがあり、自然分娩に任せると胎子の死亡や母体の死亡等の分娩事故が起こることがある。牛の場合、出産における死亡率は約5%、すなわちおよそ20頭に1頭が死亡している。このような分娩時の死亡リスクを低減するため、飼養者が付き添って分娩介助をするのが通常である。分娩介助は深夜に及ぶ常時の監視が必要となる場合もあり、飼養者に対して精神的及び肉体的に大きな負担を強いるものである。
【0003】
特許文献1には、動物の腟内に挿入する検出装置を用いた分娩検出システムの発明が記載されている。特許文献1に記載の発明においては、検出装置は押圧により形状が可変であり、検出装置が押圧力の変化(気圧の変化)を検出することで、分娩開始を検知するようにしている。しかし、特許文献1に記載の発明においては、押圧力の変化(気圧の変化)が直ちに分娩開始を示すとは限らず、誤検知も多く発生し、問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-98173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、分娩検知の精度の高い動物の分娩検知システム及び分娩検知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、(a)動物の腟内に挿入され、その動物の生体組織による吸収及び減衰により伝搬が遮蔽される第1周波数の第1電波信号を発信する発信器と、(b)その動物から30m以内となる第1距離の位置に配置され、第1電波信号を受信する第1受信素子を有し、第1電波信号を第1周波数よりも低周波の第2周波数の第2電波信号に変換し、第2電波信号を送信する中継装置と、(c)中継装置から、第1距離よりも長い第2距離の位置に配置され、第2電波信号を受信する第2受信素子を有する受信装置を備えることを特徴とする分娩検知システムであることを要旨とする。
【0007】
本発明の第2の態様は、(A)動物の生体組織による吸収及び減衰により伝搬が遮蔽される第1周波数の第1電波信号を発信する発信器と、その動物から30m以内となる第1距離の位置に配置され、第1電波信号を受信する第1受信素子を有し、第1電波信号を第1周波数よりも低周波の第2周波数の第2電波信号に変換し、第2電波信号を送信する中継装置と、中継装置から、第1距離よりも長い第2距離の位置に配置され、第2電波信号を受信する第2受信素子を有する受信装置を備える分娩検知システムを使用した分娩検知方法であって、(a)発信器が露出しないように、発信器を出産間近の動物の腟内に挿入するステップと、(b)発信器が腟内から押し出されて露出し、第1電波信号を第1受信素子が受信するステップと、(c)中継装置において、第1電波信号を第2電波信号に変換し、第2電波信号を送信するステップと、(d)送信された第2電波信号を第2受信素子が受信するステップとを含むことを特徴とする分娩検知方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分娩検知の精度の高い動物の分娩検知システム及び分娩検知方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の第1実施形態に係る分娩検知システムの分娩検知前の状態を示す模式図である。
図1B】本発明の第1実施形態に係る分娩検知システムの分娩検知中の状態を示す模式図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る発信器の一例の外観を示す写真である。
図3】本発明の第1実施形態に係る発信器が牛の腟内に挿入された状態を示す部分断面図その1である。
図4】本発明の第1実施形態に係る発信器が牛の腟内に挿入された状態を示す部分断面図その2である。
図5】本発明の第1実施形態に係る発信器が牛の腟内から脱落した状態を示す部分断面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る分娩検知システムのシステム構成を示すブロック図である。
図7A】本発明の第2実施形態に係る発信器の斜視図である。
図7B図7Aの状態から一部分解した発信器の斜視図である。
図8】第2実施形態に係る発信器の使用状態を示す斜視図である。
図9A】第2実施形態に係る発信器の、使用時の一例を示す斜視図である。
図9B】第2実施形態に係る発信器の、使用時の他の例を示す斜視図である。
図10】第2実施形態に係る発信器の平面図である。
図11図11(a)は第2実施形態に係る発信器の回路図の例1を示すブロック図であり、図11(b)は第2実施形態に係る発信器の回路図の例2を示すブロック図である。
図12】第2実施形態に係る分娩検知システムの分娩検知中の状態を示す模式図1である。
図13】第2実施形態に係る分娩検知システムの分娩検知中の状態を示す模式図2である。
図14】第2実施形態に係る分娩検知システムの分娩検知中の状態を示す模式図3である。
図15】第2実施形態に係る分娩検知システムのシステム構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1及び第2実施形態をより具体的に説明するが、本発明の技術的思想を具体化するためのシステム及び方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の第1及び第2実施形態に特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、様々な変更を加えることができる。
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る分娩検知システムは、図1A及び図1Bに示す通り、動物Cの腟内に挿入される発信器1a、電波信号の中継装置5及び受信装置3を有する。第1実施形態に係る分娩検知システムは、発信器1aからの第1周波数f及び第1電力Pの第1電波信号を動物Cから30m以内、好ましくは10m以内となる第1距離に配置された中継装置5で受信し、中継装置5内で第1電波信号を別の周波数となる第2周波数f及び第1電力Pより大きな第2電力Pの第2電波信号に変換し、変換された第2電波信号を比較的遠距離に配置された受信装置3で受信するシステムである。例えば、対象となる動物Cが牛である場合、中継装置5を牛舎の内部において第1距離だけ動物Cから離れて配置し、受信装置3を牛舎から離れた管理室に配置し、受信装置3と中継装置5の間に定義される第2距離を第1距離よりも長くしてもよい。動物Cの分娩が始まらないうちは、図1Aに示す通り、腟内に挿入された発信器1aからの第1電波信号は、動物Cの身体による吸収・減衰により伝搬が遮蔽され、第1電波信号を受信する中継装置5に届かない。しかし分娩の開始直前、即ち破水が発生した場合や、分娩が開始された場合には、図1Bに示す通り、発信器1aが一部又は全部が腟外に押し出されて露出することになり、第1電波信号は腟外に送信され、中継装置5に届く仕組みである。なお、図1Bが示すのは、発信器1aが腟外に押し出されて落下し、発信器1a全体が露出した場合である。中継装置5が受信した第1電波信号は第2電波信号に変換され、第2電波信号が受信装置3で受信されることで、分娩介助をする飼養者に、分娩開始等の情報が報知されることになる。
【0012】
図6に示すように、発信器1aは、制御部11a、電源部13a、信号生成回路15a及び発光部17aを有する。発信器1aは、例えば図2に示すように、外形部分の全体が医療用シリコンゴム等の素材で覆われた、高さ10cm弱、直径5cm程度の略円柱形であってもよい。全体を覆う医療用シリコンゴム等の外皮となる素材の内側に、制御部11a、電源部13a、信号生成回路15a及び発光部17aを含む筐体が設けられている。挿入方向後端の中央付近には、発信器1aを挿入しやすくする目的で、押込み具等を一時的に接続できるような孔又は窪みが設けられていてもよい。発信器1aの外皮となる素材は、分娩を控えた牛等の動物に対して過度に違和感を与えるものでない素材が好ましい。
【0013】
制御部11aは、電源部13a、信号生成回路15a及び発光部17aの制御等、発信器1aの制御全体に関わる構成部分である。電源部13aは、電池を備え、制御部11aの制御に基づき、電池から制御部11a、信号生成回路15a及び発光部17aへ電気エネルギを供給する回路(プロセッサ)である。
【0014】
信号生成回路15aは、制御部11aの制御に基づき、2.4GHz帯等の第1電波信号を生成して発信する発振・増幅回路(集積回路)を構成する部分であり、出力端はアンテナに接続されている。アンテナはダイポールアンテナ、スパイラルアンテナや平面アンテナ(パッチアンテナ)等が採用可能である。第1電波信号の発信及び停止は、発信器1aの電源のオン・オフと連動するようにしてもよいし、発信器1aの電源のオン・オフとは独立して、例えば、発信器1aに物理的に付属するスイッチ等により作動するようにしてもよいし、超音波や低周波の電波等を使用して遠隔操作により作動するようにしてもよい。以下に示す式(5)から分かるように電磁波の浸透の深さδは周波数に依存し、低周波側の帯域では、動物の腟内に挿入された発信器1aを外部から制御可能になる。第1電波信号の第1周波数fは2.4GHz帯に限らないが、発信器1aが動物の腟内に挿入された場合に、動物の生体細胞による吸収・減衰によって、腟外との通信が遮蔽されるような吸収・減衰特性を有する周波数及び電力の電磁波であることが好ましい。空中線電力が10mW以下の2.4GHz帯の電磁波は、電波法第38条の2の2第1項第1号において、無線局の免許が不要となる「2.4GHz帯高度化小電力データ通信システム」として規定されているので好都合の周波数帯である。第1電波信号の電力を小電力の第1電力Pとすることにより動物の生体細胞(生体組織)に及ぼすダメージ等の影響を小さくすることができる。
【0015】
一般に生体の生体組織に電磁波を照射する場合は、電磁波のエネルギが生体組織に吸収されるので、電磁波が生体組織中を伝搬すると同時に次第に減衰する現象を考慮しなくてはならない。生体の生体組織を誘電体とみなすと、生体組織中を電磁波が伝搬する際の減衰定数γは次式で表される:

γ=jω1(εμ)1/2{1-j(σ/ω1ε)}1/2 ……(1)

式(1)において、σは生体組織の導電率、εは誘電率、μは透磁率、ω1=2πfは電磁波の角周波数である。

p=σ/ω1ε ……(2)

を定義すると、生体組織では0.1 < p < 10程度であるので、式(1)の実部をαとすると、式(3)が得られる:

α=ω1[(με/2){(1+p1/2-1}]1/2 ……(3)

式(3)において、電磁波の周波数f1が高い場合を考慮すると、

α=ω1{(με/2)p}1/2 ……(4)

となる。
【0016】
生体組織への電磁波の浸透の程度は、電力密度がe-2に減衰する距離δを用いて表される。δはαの逆数で与えられ、「表皮の深さ」あるいは「浸透の深さ」と呼ばれる。式(4)において、浸透の深さδ=1/αであるので、式(2)のpを用いると、

δ=(1/πfμσ)1/2 ……(5)

という式が近似的に得られる。表1に示すように生体組織の導電率σの周波数特性は生体組織によって異なり、周波数fの増加に従い導電率σは上昇する。生体組織間の導電率σは、脂肪<骨格筋<血液という関係になるが、表1からf=2.4GHzにおける導電率σ=10mS/cmと仮定する。
【表1】
【0017】
生体組織の誘電率は水の誘電率と同程度であり、生体組織を構成する分子のほとんどが非磁性体と考えられるので、ε≒80[F/m],μ≒1[H/m]程度と推察できる。真空中での誘電率及び透磁率は、ε≒8.8542×10-12[F/m],μ≒4π×10-7[H/m]である。式(5)から、生体組織に吸収帯が存在しない場合においては、周波数が2.4GHzの電磁波を生体組織に照射した場合は浸透の深さδ=2.05cm程度となる。実際には電子レンジに採用されているように、水の吸収特性は2.4GHzで非常に大きいので、浸透の深さδの値は2cmより遙かに小さな値になり、動物の腟内から外部に出られなくなる。
【0018】
2.4GHz帯の電磁波が動物の生体細胞に及ぼすダメージに関しては生物学的データが不足しているので、第1電波信号の第1電力Pは、通信が可能な範囲で極力小さくして、中継装置5を動物から30m以内、好ましくは10m以内となる第1距離に配置することが好ましい。第1電波信号の第1電力Pを小さくすることにより、発信器1aの筐体のサイズを小さくすることも容易になる。信号生成回路15aは、発信器1aの挿入方向先端側、中央付近又は挿入方向後端側のいずれの位置に配置されていてもよいが、発信器1aが動物の腟内に挿入された場合に、動物の腟外に容易に露出しない部位が好ましい。
【0019】
動物の生体組織に及ぼすダメージ、特に動物Cの胎子Bに及ぼすダメージを考慮したとき、発信器1aが動物の腟内から外部に露出したとき、発信器1aの電源が自動的にオンとなるようにしてもよい。このためには、大気の酸素濃度若しくは窒素濃度を検知するガスセンサを設けてもよく、動物の腟内から発信器1aが落下した時の加速度や衝撃を検知する加速度センサを設けてもよい。
【0020】
発光部17aは、制御部11aの制御に基づき、発信器1aの部分的又は全体的な発光に関与する駆動回路及び発光素子を構成する部分である。発光部17aは、例えば、電源のオン・オフの状態を区別するために、電源オンの場合のみ発光するように制御してもよいし、信号生成回路15aからの第1電波信号が中継装置5に受信されたことを示すために発光するように制御してもよい。あるいは、発光部17aは、例えば、動物の腟内から発信器1aが落下した時等の何らかの衝撃により発光するように制御してもよいし、何らかの予期せぬ異常を検知した場合に発光するように制御してもよく、その他の制御であってもよい。発光部17aの発光の程度は任意でよく、発光時には常時発光していてもよいし、点滅するようにしてもよい。発光部17aは、発信器1aに任意で設けることができる構成部分である。
【0021】
図6に示すように、中継装置5は、制御部51、電源部53、無線通信回路55、表示部57及び変換部59を有する。無線通信回路55は、図1A及び図1Bに示す通り、中継装置5の筐体の外部に設けられた第1受信素子55a及び送信素子55bに接続されるが、図6では第1受信素子55a及び送信素子55bの図示を省略している。無線通信回路55は、第1受信素子55aが受信した受信信号の検波及び信号処理、及び送信素子55bへ供給する信号を生成し、送信素子55bから空中線の電磁波を送信する制御を実行する回路である。なお、第1受信素子55a及び送信素子55bは、中継装置5の筐体の内部に内蔵される構成でも構わない。
【0022】
制御部51は、電源部53、無線通信回路55、表示部57及び変換部59の動作に関わる制御をして、中継装置5の全体を制御するプロセッサである。即ち、制御部51は、電源部53を駆動して中継装置5自体の電源機能の制御をする。この結果、電源部53は、制御部51の制御に基づき、制御部51、無線通信回路55、表示部57及び変換部59へ電気エネルギを供給する。更に制御部51は、無線通信回路55を駆動して、第1電波信号の受信機能の制御、第2電波信号の送信機能の制御等を行う。更に制御部51は、変換部59を駆動して、第1電波信号を構成する第1周波数fから第2電波信号を構成する第2周波数fへの周波数変換の制御等をし、表示部57を駆動して表示機能の制御等をする。
【0023】
図1A及び図1Bに示した第1受信素子55aは、2.4GHz帯等の第1電波信号を受信するダイポールアンテナ、平面アンテナ、八木アンテナ等の種々の空中線アンテナが採用可能であり、制御部51の制御に基づき動作する。第1受信素子55aの第1電波信号の受信機能は、中継装置5の電源のオン・オフと連動するようにしてもよい。例えば、中継装置5の電源がオンの場合は、常時、受信の準備状態(スタンバイ状態)とする等である。第1受信素子55aの第1電波信号の受信機能は、中継装置5の電源のオン・オフと連動させず、独立したスイッチ系統により受信のスタンバイ状態となるようにしてもよい。
【0024】
変換部59は、制御部51の制御に基づき、2.4GHz帯等の小電力である第1電力Pの第1電波信号を、第1電波信号よりも大電力(中出力型)である第2電力Pの920MHz帯等の第2電波信号に変換する電子回路である。空中線電力が20mW以下の920MHz帯は、電波法第38条の2の2第1項第3号により無線局の免許が不要となる「特定小電力無線機器」として規定されている。第2電波信号の920MHz帯は、第1電波信号の第1電力Pよりも送信電力の大きな第2電力Pとすることが可能であるため通信距離が伸び、通信エリアが広くなる。更に、2.4GHz帯と比べて広い周波数帯域Δfを確保しているため占有帯域幅を広くすることができ、通信速度を上げることも可能である。第2周波数fを、第1電波信号の第1周波数fよりも低くすることにより、伝送経路での電波の減衰を小さくできるため、第2電波信号の伝送距離が長くなる。仮に送信出力と受信感度が同じで場合であっても、920MHz帯は2.4GHz帯と比較すると約3倍の伝送距離が得られる。動物の生体細胞に及ぼすダメージを考慮して第1電波信号の電磁波の第1電力Pを小さくした場合であっても、第2電波信号の第2電力Pを大きくすることにより、通信距離を長くすることができる。
【0025】
第2電波信号へ変換する前に、受信した第1電波信号が分娩開始を意味するかどうかについて、受信した第1電波信号の内容、即ち信号強度や持続時間等のデータを判断材料として用い、制御部51において判断を行うようにしてもよい。勿論、第1電波信号を受信したら即座に機械的に第2電波信号に変換し、受信装置3に送信するようにプログラムしてもよい。第2電波信号としては920MHz帯に限らないが、第1電波信号より長波長側であり、より遠くまで届く電波法が許容する電波であることが好ましい。第2電波信号に含める送信情報としては、分娩開始と判断された第1電波信号を発信した発信器の識別番号、分娩開始の時刻等を採用することができる。また、分娩開始以外の要因での発信器の腟外脱落等の異常な状態等も送信情報に含めてもよい。
【0026】
図1A及び図1Bに示した送信素子55bは、第2電波信号を受信装置3に送信するダイポールアンテナ、平面アンテナ、八木アンテナ等が採用可能であり、制御部51の制御に基づき信号を給電されて動作する。第2電波信号の送信及び停止は、中継装置5の電源のオン・オフと連動するようにしてもよいし、中継装置5の電源のオン・オフとは独立して、例えば、中継装置5に物理的に付属するスイッチ等により作動するようにしてもよいし、電波等を使用して遠隔操作により作動するようにしてもよい。
【0027】
表示部57は、制御部51の制御に基づき、現在時刻や発信器1a及び中継装置5の状態等を表示する構成部分である。発信器1a及び中継装置5の状態としては、例えば、第1電波信号の受信中の状態、第2電波信号の送信中の状態等である。あるいは、図6に示すように、発信器1aの他に発信器1b、発信器1c、……等、複数の発信器がある場合は、第1電波信号の発信元の発信器がいずれの発信器であるのかを示す識別番号等を表示してもよい。また、第1電波信号の受信履歴を表示できるように、制御部51より制御されていてもよい。なお、表示部57は、中継装置5に任意で設けることができる構成部分である。
【0028】
図6に示すように、受信装置3は、制御部31、電源部33、受信処理回路35、表示部37及び報知部39を有し、動物の近傍に定義される第1距離よりも長い第2距離だけ中継装置5から離れた位置に配置される。図1A及び図1Bにおいては、第2受信素子35cが中継装置5の筐体の外部に空中線アンテナとして設けられた構造が例示されているが、図6では第2受信素子35cの図示を省略している。図6では、筐体の外部に位置する第2受信素子35cに接続されるように、筐体の内部に配置された第2受信素子35cから第2電波信号を入力する受信回路を「受信処理回路35」として示している。制御部31は、電源部33、受信処理回路35、表示部37及び報知部39の制御等、受信装置3の制御全体に関わるプロセッサである。即ち、制御部31は、電源部33の電源機能の制御、受信処理回路35による第2受信素子35c(図1A及び図1B参照。)が受信した第2電波信号の検波及び信号処理、報知部39による分娩開始の報知機能の制御、及び表示部37による表示機能の制御等を実行する。電源部33は、制御部31の制御に基づき、受信装置3の制御部31、受信処理回路35、表示部37及び報知部39へ電気エネルギを供給する回路部分である。
【0029】
図6に示した受信処理回路35は、筐体の外部に設けられた第2受信素子35c(図1A及び図1B参照。)が受信した920MHz帯等の第2電波信号を、制御部31の制御に基づき、検波して信号処理する電子回路である。受信処理回路35の第2電波信号の検波・信号処理の機能は、受信装置3の電源のオン・オフと連動するようにしてもよい。例えば、受信装置3の電源がオンの場合は、常時、受信の準備状態(スタンバイ状態)とする等である。受信処理回路35の第2電波信号の検波・信号処理は、受信装置3の電源のオン・オフと連動させず、独立したスイッチ系統により受信のスタンバイ状態となるようにしてもよい。
【0030】
表示部37は、制御部31の制御に基づき、現在時刻や分娩開始を示す何らかの報知的な表示、発信器1a及び受信装置3の状態等を表示する構成部分である。発信器1a及び受信装置3の状態としては、例えば、第2電波信号の受信中の状態等である。あるいは、図6に示すように、発信器1aの他に発信器1b、発信器1c、……等、複数の発信器がある場合は、第2電波信号の変換元となる第1電波信号の発信元の発信器がいずれの発信器であるのかを示す識別番号等を表示してもよい。また、第2電波信号の受信履歴を表示できるように、制御部31より制御されていてもよい。なお、表示部37は、受信装置3に任意で設けることができる構成部分である。
【0031】
報知部39は、制御部31の制御に基づき、分娩開始を示す何らかの報知等を音声等により行う構成部分である。例えば、図6に示すように、発信器1aの他に発信器1b、発信器1c、……等、複数の発信器がある場合は、第2電波信号の変換元となる第1電波信号の発信元の発信器がいずれの発信器であるのかを示す識別番号等を報知してもよい。
【0032】
分娩開始かどうかの判断は、発信器1aの制御部11a、中継装置5の制御部51、受信装置3の制御部31のいずれで行ってもよい。
【0033】
本発明の第1実施形態に係る分娩検知システムについては、まず、図3に示すように、胎子Bを子宮A内に擁し、分娩を控えた牛等の動物Cの腟内に、ヒトの手等で発信器1を挿入する。発信器1は、発信器1の少なくとも信号生成回路のアンテナを構成する部分(出力端)が腟外へ露出されない位置、かつ、動物Cの分娩に対して不都合が生じにくい位置に挿入する。例えば、子宮Aの手前の子宮口まで発信器1を挿入する、等である。図3の状態においては、発信器1は信号生成回路の出力端から第1電波信号を発信しているが、動物Cの生体組織により吸収及び減衰されて、図1A等に示す中継装置5には届かない。
【0034】
分娩の開始直前、即ち破水が発生した場合や、分娩が開始された場合には、図3から図4の状態に遷移する。即ち、発信器1が胎子B等により少し腟外に押し出されるようになり、発信器1の一部又は全部が露出する。分娩開始の予兆段階や開始初期の段階を「分娩開始」と定義して報知したい場合は、図4に示す時点で、発信器1の信号生成回路の出力端から第1電波信号が腟外に送信される状態としてもよい。分娩開始の予兆段階や開始初期の段階を「分娩開始」と定義せずに報知もしない場合には、図4に示す時点では、発信器1の信号生成回路の出力端(アンテナ部分)が挿入方向先端に位置する等調整し、信号生成回路の出力端から第1電波信号が腟外に送信されない状態にしてもよい。
【0035】
分娩が進み、胎子Bの前肢等が外陰部に達する程度となれば、図4から図5の状態に遷移する。即ち、発信器1が胎子B等により腟外に押し出され、発信器1の全部が露出し、落下する。図5の状態では発信器1は完全に露出しているため、信号生成回路の出力端からの第1電波信号は図1A等に示す中継装置5により受信されるようになる。
【0036】
本発明の第1実施形態に係る分娩検知システムについては、図6に示すように、発信器1aからの第1周波数f及び第1電力Pの第1電波信号は、制御部11aの制御によって、信号生成回路15aの出力端(アンテナ部分)から送信される。送信された第1電波信号は、牛舎内等の動物Cから30m以内、好ましくは10m以内となる第1距離に配置された中継装置5の筐体の外部に配置された第1受信素子55a(図1A及び図1B参照。)により受信される。第1受信素子55aが受信した第1電波信号は、中継装置5の内部に配置された無線通信回路55に送信され、無線通信回路55における検波及び信号処理のプロセスを経た後、変換部59において、第1周波数fよりも低周波の周波数となる第2周波数f、及び第1電力Pより大きな電力の第2電力Pの第2電波信号に変換される。そして、第2周波数f及び第2電力Pの第2電波信号は、送信素子55bより中継装置5の外に空中線として送信される。例えば対象となる動物が牛である場合、牛舎の内部において、中継装置5を第1距離だけ動物から離れて配置し、牛舎から第1距離よりも長い第2距離だけ離れた位置にある管理室や管理棟に、受信装置3を配置してもよい。例えば牛舎の外部等、第1距離よりも長い第2距離を送信された第2電波信号は、図6に示すように、受信装置3において、第2受信素子35cにより受信される。第2受信素子35cが受信した第2電波信号は、制御部31が受信処理回路35を制御することによって、受信処理回路35において検波及び信号処理が実行される。受信処理回路35が処理した第2電波信号の内容に従い、制御部31の制御によって、受信装置3の表示部37に適切な表示され、又は、報知部39により適切な報知がされる。
【0037】
早くから状態を把握するという点で言えば、図3から図4に遷移した時点で、発信器1からの第1周波数f及び第1電力Pの第1電波信号が図1A等に示す中継装置5で受信され、変換されて得られた第2周波数f及び第2電力Pの第2電波信号が、図1A等に示す受信装置3で受信され、分娩開始状態、又は、分娩準備状態として報知されることが好ましい。また、中継装置5を動物Cから10m以内、より好ましくは5m以内の近傍に配置して、微弱な第1電力Pの第1電波信号を検出することにより、図4図5の状態が示す発信器1から中継装置5までの僅かな距離の変化を、微弱な第1電力Pの第1電波信号の強度の変化として検知することもできる。微弱な第1電波信号の強度変化を高感度で検知するためには、信号生成回路15aの出力端(アンテナ部分)の位置及び構造、あるいは第1受信素子55aのアンテナの指向性等を調整してもよい。更に、図5に示すように、発信器1の落下の衝撃も検知できるようにしてもよい。
【0038】
本発明の第1実施形態に係る分娩検知システムについては、図6に示す通り、発信器1aの他に発信器1b、発信器1c、……等、複数の発信器をそれぞれ複数の分娩間近の動物の腟に挿入して用いることができる。図6においては、分娩検知システム中の中継装置は中継装置5のみ、受信装置は受信装置3のみであるが、分娩場所が複数の牛舎にある場合等、互いに離れている場合等には、中継装置は複数の牛舎毎に2個以上設けてもよい。中継装置が2個以上の場合であっても、第1距離を伝搬する第1周波数f及び第1電力Pの第1電波信号に対して、第2電波信号の第2周波数f及び第2電力Pを選定することにより、第1距離よりも長い第2距離だけ離れた長距離の無線通信が可能になるので、受信装置は複数の牛舎から離れた管理棟に受信装置3を1個のみとすることができるので効率的である。一方、受信装置を2個以上とすることも可能である。飼養者が複数いる場合には、飼養者が携帯できる小型の受信装置を、飼養者それぞれが携帯し、飼養者それぞれの作業場所で分娩を検知するようにしてもよい。920MHz帯の出力を20mWとしたとき、アンテナの高さや障害物にもよるが300m以上の通信は可能である。牧場のあるような見通しがよい環境であれば5km程度離れた飼養者の相互の通信もできる。勿論、受信装置が2個以上の場合であっても、中継装置は図6に示すような中継装置5の1個のみとすることも可能である。即ち、発信器、中継装置及び受信装置のいずれも、1個で用いてもよいし2個以上で用いてもよいのである。更に中継装置と受信装置を光ファイバで接続して光通信をしてもよい。
【0039】
本発明の第1実施形態に係る分娩検知システムによれば、発信器からの電波信号の有無や強度により、遠隔地にいる飼養者が容易に動物の分娩が開始されたかどうかを判別可能である。また、発信器からの電波信号の強度によっては、分娩初期のいずれの状態かも判別可能である。
【0040】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る分娩検知システムは、図12等に示す通り、第1実施形態に係る分娩検知システムと同様に、動物Cの腟内に挿入される発信器2、電波信号の中継装置6及び受信装置4を有する。第2実施形態に係る発信器2は、図7A等で示すように、2つの羽根部25a、25bを一方の端部に有する筒状の筐体21内に、発信機能等を有する各種回路を内包する回路収納カプセル7を封じたものである。図12~14においては、発信器2は動物Cの腟内に一度挿入されたものが腟外に押し出されて落下した状態を示す。第2実施形態に係る分娩検知システムは、図12に示す通り、発信器2からの第1周波数f及び第1電力Pの第1電波信号を動物Cから30m以内、好ましくは10m以内となる第1距離に配置された中継装置6で受信し、中継装置6内で第1電波信号を別の周波数となる第2周波数f及び第1電力Pより大きな第2電力Pの第2電波信号に変換し、変換された第2電波信号を比較的遠距離に配置された受信装置4で受信するシステムである。例えば、対象となる動物Cが牛である場合、第1実施形態に係る分娩検知システムと同様に、中継装置6を牛舎Gsの内部において第1距離だけ動物Cから離れて配置し、受信装置4を牛舎Gsから離れた管理場所である詰所Tm等に配置し、受信装置4と中継装置6の間に定義される第2距離を第1距離よりも長くしてもよい。動物Cの分娩が始まらないうちは、第1実施形態に係る分娩検知システムと同様に、腟内に挿入された発信器2からの第1電波信号は、動物Cの身体による吸収・減衰により伝搬が遮蔽され、第1電波信号を受信する中継装置6に届かない。しかし分娩の開始直前、即ち破水が発生した場合や、分娩が開始された場合には、図12~14に示す通り、発信器2が一部又は全部が腟外に押し出されて露出することになり、第1電波信号は動物Cの腟外に送信され、中継装置6に届く。中継装置6が受信した第1電波信号は第2電波信号に変換され、第2電波信号が受信装置4で受信されることで、分娩介助をする飼養者に、分娩開始等の情報が報知されることになる。
【0041】
第2実施形態に係る分娩検知システムは、中継装置6及び受信装置4にそれぞれ無線通信回路及び無線LANアダプタを有する。中継装置6の無線通信回路65は、受信した第1電波信号を、図12及び14のように第2電波信号へ変換したり、あるいは図13のように第1電波信号及び第2電波信号とは別の周波数となる第3周波数f及び第3電力Pの第3電波信号へ変換したりできる。第1電波信号が第3電波信号へ変換される場合は、図13に示す通り、牛舎Gs内に無線LANルータRt1を配置した構成が望ましい。牛舎Gs内に無線LANルータRt1が配置されている場合は、第3電波信号は中継装置6に内蔵の第1無線LANアダプタを介して最寄りの無線LANルータRt1等に送信され、その無線LANルータRt1等からインターネット等の外部通信網Inにアクセスされる。そして、その外部通信網Inを介して飼養者等が携帯する個別の端末Smに送信できる。中継装置6の無線通信回路65においては、第1電波信号を、第2電波信号及び第3電波信号の両方に同時に変換することも可能であるし、いずれか一方のみへ変換することも可能である。なお、図12においては、無線通信回路65にそれぞれ接続される外部素子(空中線アンテナ)として表記された、第1受信素子65a、第1送信素子65b及び第2送信素子65cによって、象徴的に内部に隠れた無線通信回路65を表示している。実際には、無線通信回路65は中継装置6の内部に配置されている。又、実際の実装構造においては、第1受信素子65a、第1送信素子65b及び第2送信素子65cは、中継装置6の筐体の内部に配置されていてもよい。中継装置6において第3電波信号を用いることで、牛舎Gs及び詰所Tm以外の外部の離れた場所にいる飼養者へも、分娩開始等の情報が報知されることになる。
【0042】
受信装置4の無線通信回路45は、中継装置6から受信した第2電波信号を、図14のように第1電波信号及び第2電波信号とは別の周波数となる第3周波数f及び第3電力Pの第3電波信号へ変換することが可能である。図12等のモデル図では、無線通信回路45にそれぞれ接続される外部素子として表記された、第2受信素子45a及び第3送信素子45bによって、象徴的に内部に隠れた無線通信回路45を模式的に表示している。実際には、無線通信回路45は受信装置4の内部に配置されている。又、実際の実装構造においては、第2受信素子45a及び第3送信素子45bは、受信装置4の筐体の内部に配置されていてもよい。第2電波信号が第3電波信号へ変換される場合は、図14に示す通り、詰所Tm内に無線LANルータRt2を配置した構成が望ましい。詰所Tm内に無線LANルータRt2が配置されている場合は、第3電波信号は受信装置4に内蔵の第2無線LANアダプタを介して最寄りの無線LANルータRt2等に送信される。そして、その無線LANルータRt2等からインターネット等の外部通信網Inにアクセスされ、その外部通信網Inを介して飼養者等が携帯する個別の端末Smに送信される。受信装置4の無線通信回路45においては、第2電波信号を、第3電波信号に変換することも可能であるし、変換せずに詰所Tm内で分娩開始等の情報の報知のみに使用すること可能である。受信装置4において第3電波信号を用いることで、牛舎Gs及び詰所Tm以外の外部の離れた場所にいる飼養者へも、分娩開始等の情報が報知されることになる。外部通信網Inを介して個別の端末Smに分娩開始等の情報を報知する場合は、中継装置6及び受信装置4のいずれの無線通信回路を使用してもよいし、両方の無線通信回路を使用してもよい。個別の端末Smについては、図13及び図14においては1台ずつしか図示していないが、端末Smは複数であってもよい。図13で示す第3電波信号及び図14で示す第3電波信号は、両方とも無線LANルータ等に接続してインターネット等の外部通信網Inにアクセスするものであるため、両者同様のものを想定しているが、互いに同一の第3周波数f及び同一第3電力Pの電波信号である必要はない。
【0043】
図13及び図14で示される外部通信網Inは、インターネット等の通信ネットワークであり、LAN,WAN等、情報の通信が可能なネットワークであればいずれでもよい。外部通信網Inは有線/無線を問わず、専用回線を一部あるいは全部に含むネットワークでもよいし、専用回線を含まず公衆回線によるネットワークでもよい。更に外部通信網Inは、広帯域、高速な通信回線によって実現されるコンピュータネットワーク、即ち、光ファイバ、CATV,ADSL等を用いて実現されるブロードバンドネットワークによるインターネット接続方式によるものでもよい。図13及び図14で示される端末Smは外部通信網Inに接続可能な通信用端末である。端末Smは、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等の一般的な通信端末であってもよいし、第2実施形態に係る分娩検知システム専用の通信端末であってもよい。端末Smは、分娩開始等の情報を受信するのみの一方向の通信が可能なものでもよいし、外部通信網Inを介して中継装置6又は受信装置4にアクセスして、中継装置6内又は受信装置4内の情報の書き換え等が可能な双方向の通信が可能なものでもよい。
【0044】
動物の生体内で長時間繰り返し使用するという観点からは、第2実施形態に係る発信器2の筐体21や2つの羽根部25a、25b等は、全体が医療用シリコンゴム等の素材から成るものが好ましい。図7A等に示すように、第2実施形態に係る発信器2の筐体21は、略円柱の筒状形状をなしている。筐体21の一方の端部には底があり2つの羽根部25a、25bが取り付けられている。筐体21の他方の端部にはふた23が脱着自在に設けられている。脱着自在のふた23を有することにより、筐体21の内部の略円柱形状の空洞に回路収納カプセル7を収納することができる。回路収納カプセル7は、筐体21の内部の空洞に合わせた形状であってもよいが、筐体21の内部の空洞に収納できるのであれば形状は問わない。回路収納カプセル7を収納した筐体21で構成された発信器2は、2つの羽根部25a、25bを有する側(一方の端部)を挿入方向先端として、分娩間近の動物の腟内に挿入され、分娩検知に用いられる。
【0045】
図7A及び図10等に示すように、発信器2の第1羽根部25a及び第2羽根部25bは互いに同一形状であり、筐体21の一方の端部、即ち筒の底に相当する部分にそれぞれ固定されている。第1羽根部25a及び第2羽根部25bは、図10の紙面に垂直方向から見た場合に、筐体21の長手方向に伸びる中心軸に対して対称形を成す。第1羽根部25aは、図10で示す例では、筐体21への接続部分は筐体21の長手方向に沿って短い距離で立ち上がっている。短い立ち上がり部分の先端で左方向に角度θだけ折れ曲がり、筐体21の中心軸から外側に伸長した羽根部分となる。第2羽根部25bにおいても同様に、図10で示す例では、筐体21への接続部分は筐体21の長手方向に沿って短い距離で立ち上がっている。短い立ち上がり部分の先端で第1羽根部25aとは反対方向となる右方向に角度θだけ折れ曲がり、筐体21の中心軸から外側に伸長した羽根部分を有する。図10に示す例では発信器2を静置した状態では、動物の腟内での静置状態を考慮すると、角度θの初期設定値は70~90度であることが好ましく、より好ましくは80度とすることが可能である。また、図10に示す例では、第1羽根部25aの羽根部分の長さLは、動物の腟内での静置状態を考慮すると、動物が牛の場合は5~7cmであることが好ましく、より好ましくは6.4~6.7cmとすることが可能である。
【0046】
第1羽根部25a及び第2羽根部25bは、医療用シリコンゴム等の弾力性のある素材から成るため、図10に示す例で説明した角度θは任意に変更可能である。図9A及び9Bで示すように、第1羽根部25a及び第2羽根部25bは、筐体21の側面に沿うように、あるいは、それぞれの羽根部分を筐体21の長手方向に平行にするように、自在に形状を変化させられる。図9Aの例においては、第1羽根部25a及び第2羽根部25bは、筐体21の側面に沿わせるため、筐体21への接続部分と羽根部分の境界にある元々の折れ曲がり部分の他に、羽根部分に一箇所ずつ折れ曲がり部分を有している。図9Bの例においては、第1羽根部25a及び第2羽根部25bについて、筐体21への接続部分と羽根部分の境界にある元々の折れ曲がり部分は、折り曲げられずに伸ばされている。図7Aから図9A及び9Bの状態へは、人間の手指の押圧力等で容易に変化させることができ、図9A及び9Bの状態において人間の手指の押圧力等を解放すると、容易に図7Aの状態に戻る。第1羽根部25a及び第2羽根部25bのそれぞれの羽根部分は、図7A図10に示すように「平板」形状であってもよいし、図7Aに示す静置状態においてふた23側を向く面が凸となる「蒲鉾型」形状であってもよい。第1羽根部25a及び第2羽根部25bのそれぞれの羽根部分が「蒲鉾型」形状である場合、動物の腟内に挿入した後の分娩前や分娩中において、それぞれの羽根部分の子宮内膜や腟内部に触れる部分の面積が小さくなり、分娩動物へのストレスを軽減することが可能である。
【0047】
動物の腟内に発信器2を挿入する場合は、動物への負担を軽減するという観点から、図9Aに示す例の状態で行うことが好ましい。図9Aに示す例の状態で発信器2が挿入され、発信器2の挿入方向先端側、即ち第1羽根部25a及び第2羽根部25bが子宮口付近まで到達すると、折りたたまれていた第1羽根部25a及び第2羽根部25bの形状が、図7A等に示す状態に戻り、第1羽根部25a及び第2羽根部25bのそれぞれの羽根部分がつっかえとなり、発信器2は容易には腟外には露出しないようになる。分娩開始時には、胎子や子宮からの分泌物等の押圧力により、図9Bに示す例の状態又はそれに近い状態で発信器2が腟外に出るように押し戻されることになる。発信器2が腟外に完全に露出して落下すると、押圧から解放され、発信器2の形状は再び図7Aの状態に戻る。
【0048】
発信器2を動物の腟内に挿入する場合は、図8で示すように、発信器2の取付部23aに、数十cm~1m程度の長いひも27を取り付け、ひも27が常に腟外に垂らされるようにして用いることが望まれる。ひも27は、例えば動物の尻尾に巻付けておけば、分娩時に発信器2の落下を防ぐことができ、落下やその後の動物による踏みつけ等による発信器2の破損を防ぐことができる。ひも27を用いることで、発信器2を動物の子宮内・腟内から取り出せなくなる事故を防止すると共に、分娩開始等以外の任意のタイミングで発信器2を容易に取り出せることにもつながる。ひも27は医療用シリコンゴム等の素材が望ましいが、素材の如何は問わないものとする。ひも27は、筐体21等とは別の色であってもよい。ひも27は、ふた23や取付部23aと一体成型であっても構わない。
【0049】
第2実施形態に係る発信器2については、図15においては第1発信器2aと同様の構成を有する発信器として表現している。即ち、第2実施形態に係る発信器2と図15における第1発信器2aは同一のものである。図15では、第1発信器2a(発信器2)の他に、第1発信器2a(発信器2)と同一構造の第2発信器2b、第3発信器2c、……等、複数の発信器がある場合のシステム構成を例示している。第2発信器2b、第3発信器2c、……等は第1発信器2a(発信器2)と同一構造であるので、以下の説明は主に第1発信器2a(発信器2)に着目した説明をする。第2実施形態に係る第1発信器2a(発信器2)は、第1実施形態に係る発信器1aと同様に、制御部11a、電源部13a、信号生成回路15a及び発光部17aを有する。制御部11aは、電源部13a、信号生成回路15a及び発光部17aの制御等、第1発信器2a(発信器2)の制御全体に関わる構成部分である。電源部13aは、電池を備え、制御部11aの制御に基づき、電池から制御部11a、信号生成回路15a及び発光部17aへ電気エネルギを供給する回路(プロセッサ)である。制御部11a、電源部13a、信号生成回路15a及び発光部17aは、図7A等に示す回路収納カプセル7に封じられている。
【0050】
図15に示す信号生成回路15aは、制御部11aの制御に基づき、2.4GHz帯等の第1電波信号を生成して発信する発振・増幅回路(集積回路)を構成する部分であり、出力端はアンテナに接続されている。信号生成回路15aは、第1実施形態で説明した信号生成回路15aと等価な構造と機能を備えている。信号生成回路15aに接続されるアンテナは第1実施形態で説明した種々のアンテナが採用可能である。第1電波信号の発信及び停止は、第1発信器2a(発信器2)の電源のオン・オフと連動するようにしてもよいし、第1発信器2a(発信器2)の電源のオン・オフとは独立して、例えば、発信器2に物理的に付属するスイッチ等により作動するようにしてもよいし、超音波や低周波の電波等を使用して遠隔操作により作動するようにしてもよい。第1実施形態に係る分娩検知システムの説明で述べたように、電磁波の浸透の深さδは周波数に依存するので、低周波側の帯域では、動物の腟内に挿入された第1発信器2a(発信器2)を外部から制御可能になる。
【0051】
外部から制御する場合は、第1電波信号の第1周波数fは、浸透の深さδを鑑みると2.4GHzよりも低いことが好ましい。第1周波数fは、第1発信器2a(発信器2)が動物の腟内に挿入された場合に、動物の生体細胞による吸収・減衰によって、腟外との通信が遮蔽されるような吸収・減衰特性を有する周波数及び電力の電磁波であることが好ましい。第1電波信号の電力を小電力の第1電力Pとすることにより動物の生体細胞(生体組織)に及ぼすダメージ等の影響を小さくすることができる。2.4GHz帯の電磁波が動物の生体細胞に及ぼすダメージに関しては生物学的データが不足しているので、第1電波信号の第1電力Pは、通信が可能な範囲で極力小さくして、図12等に示す中継装置6を動物Cから30m以内、好ましくは10m以内となる第1距離に配置することが好ましい。第1電波信号の第1電力Pを小さくすることにより、図7A等に示す発信器2の回路収納カプセル7のサイズ及び筐体21のサイズを小さくすることも容易になる。信号生成回路15aは、第1発信器2a(発信器2)の挿入方向先端側、中央付近又は挿入方向後端側のいずれの位置に配置されていてもよいが、第1発信器2a(発信器2)が動物の腟内に挿入された場合に、動物の腟外に容易に露出しない部位が好ましい。
【0052】
図12等に示す動物Cの生体組織に及ぼすダメージ、特に動物Cの胎子Bに及ぼすダメージを考慮したとき、発信器2が動物Cの腟内から外部に露出したとき、発信器2の電源が自動的にオンとなるようにしてもよい。このためには、大気の酸素濃度若しくは窒素濃度を検知するガスセンサを設けてもよく、動物Cの腟内から発信器2が落下した時の加速度や衝撃を検知する加速度センサを設けてもよい。
【0053】
図15に示す発光部17aは、制御部11aの制御に基づき、第1発信器2a(発信器2)の部分的又は全体的な発光に関与する駆動回路及び発光素子を構成する部分である。発光部17aは、例えば、電源のオン・オフの状態を区別するために、電源オンの場合のみ発光するように制御してもよいし、信号生成回路15aからの第1電波信号が中継装置6に受信されたことを示すために発光するように制御してもよい。あるいは、発光部17aは、例えば、動物の腟内から第1発信器2a(発信器2)が落下した時等の何らかの衝撃により発光するように制御してもよいし、何らかの予期せぬ異常を検知した場合に発光するように制御してもよく、その他の制御であってもよい。発光部17aの発光の程度は任意でよく、発光時には連続的に常時発光していてもよいし、パルス的に点滅するようにしてもよい。発光部17aは、第1発信器2a(発信器2)に任意で設けることができる構成部分である。発光部17aはLED等、どのような発光素子であっても構わないが、回路収納カプセル7及び筐体21を透過して、外側から発光状態が確認できるような発光素子で、小型かつ容易に破損しない構造のものが望ましい。
【0054】
例えば、第1発信器2a(発信器2)の電源部(電池)13aの劣化を早期に検知するため、電源部13aの電圧の低下を検知し、発光部17aの発光を制御してもよい。図11(a)においては、電源部13a、発光部17a、第1発信器2a(発信器2)の信号生成回路15a及びコンデンサ14aの並列回路が構成されている。発光部17aには抵抗16aが直列接続され、発光部17aと抵抗16aとの直列回路が、電源部13a、信号生成回路15a及びコンデンサ14aと共に並列接続された梯子型回路である。図11(a)に示す回路においては、電源部13aの電圧変動による発光部17aの制御はされておらず、単にスイッチ12aにより、第1発信器2a(発信器2)の電源部13aがオンの場合のみ発光するように制御されている。
【0055】
図11(b)においては、電源部13aの電圧を測定する電圧検出器18aが電源部13aに並列接続されている。発光部17aと抵抗16aとの直列回路に流れる電流が電圧検出器18aで制御されるので、電圧検出器18aによって発光部17aの発光の制御がされる。このため、第1発信器2a(発信器2)の電源部13aがオン状態であっても、電源部13aの電圧が一定以下となった場合に、それまで発光していた発光部17aを電圧検出器18aが消灯し、飼養者等に第1発信器2a(発信器2)の電源部13aの劣化等の何らかの異常を知らせることができる。
【0056】
例えば、図11(b)における電源部13aの初期電圧が3.0Vである場合、電源部13aの劣化を「電池両端電圧が2.4V以下」と定義して電圧検出器18aに設定すれば、電圧が2.4Vまで低下した途端に、第1発信器2a(発信器2)の電源部13aがオン状態であっても発光部17aは消灯する。電圧検出器18aを電源部13aに並列接続することにより、第1発信器2a(発信器2)の電源部13aが劣化してきたことを早期に知ることができ、第1発信器2a(発信器2)の電源部13a又は第1発信器2a(発信器2)自体の迅速な交換を行えることにつながるのである。
【0057】
図15に示すように、第1実施形態に係る中継装置5と同様に、中継装置6は、制御部61、電源部63、無線通信回路65、表示部67及び変換部69を有する。また図示は省略しているが、中継装置6は第1無線LANアダプタを内蔵する。無線通信回路65は、図12等に示す通り、中継装置6の筐体の外部に設けられた第1受信素子65a、第1送信素子65b及び第2送信素子65cに接続されるが、図15では第1受信素子65a、第1送信素子65b及び第2送信素子65cの図示を省略している。無線通信回路65は、第1受信素子65aが受信した受信信号の検波及び信号処理、及び第1送信素子65b及び第2送信素子65cへ供給する信号を生成し、第1送信素子65b及び第2送信素子65cから空中線の電磁波を送信する制御を実行する回路である。なお、第1受信素子65a、第1送信素子65b及び第2送信素子65cは、中継装置6の筐体の内部に内蔵される構成でも構わない。第1無線LANアダプタは、第2送信素子65cを含む構造であってもよいし、無線通信回路65の一部又は全部の機能、あるいは、変換部69の一部又は全部の機能を担うものであってもよい。
【0058】
図15に示す制御部61は、電源部63、無線通信回路65、表示部67及び変換部69の動作に関わる制御をして、中継装置6の全体を制御するプロセッサである。即ち、制御部61は、電源部63を駆動して中継装置6自体の電源機能の制御をする。この結果、電源部63は、制御部61の制御に基づき、制御部61、無線通信回路65、表示部67及び変換部69へ電気エネルギを供給する。更に制御部61は、無線通信回路65を駆動して、第1電波信号の受信機能の制御、第2電波信号及び第3電波信号の送信機能の制御等を行う。更に制御部61は、変換部69を駆動して、第1電波信号を構成する第1周波数fから、第2電波信号を構成する第2周波数fへの周波数変換及び第3電波信号を構成する第3周波数fへの周波数変換の制御等をし、表示部67を駆動して表示機能の制御等をする。
【0059】
図12等に示した第1受信素子65aは、第1実施形態に係る第1受信素子55aで説明した種々の空中線アンテナが採用可能であり、制御部61の制御に基づき動作する。第1受信素子65aの第1電波信号の受信機能は、中継装置6の電源のオン・オフと連動するようにしてもよい。例えば、中継装置6の電源がオンの場合は、常時、受信の準備状態(スタンバイ状態)とする等である。第1受信素子65aの第1電波信号の受信機能は、中継装置6の電源のオン・オフと連動させず、独立したスイッチ系統により受信のスタンバイ状態となるようにしてもよい。
【0060】
変換部69は、制御部61の制御に基づき、2.4GHz帯等の小電力である第1電力Pの第1電波信号を、第1電波信号よりも大電力(中出力型)である第2電力Pの920MHz帯等の第2電波信号、あるいは、第1電波信号及び第2電波信号とは異なる電波帯の第3信号に変換する電子回路である。第2電波信号の920MHz帯は、第1電波信号の第1電力Pよりも送信電力の大きな第2電力Pとすることが可能であるため通信距離が伸び、通信エリアが広くなる。更に、2.4GHz帯と比べて広い周波数帯域Δfを確保しているため占有帯域幅を広くすることができ、通信速度を上げることも可能である。第2周波数fを、第1電波信号の第1周波数fよりも低くすることにより、伝送経路での電波の減衰を小さくできるため、第2電波信号の伝送距離が長くなる。仮に送信出力と受信感度が同じで場合であっても、920MHz帯は2.4GHz帯と比較すると約3倍の伝送距離が得られる。動物の生体細胞に及ぼすダメージを考慮して第1電波信号の電磁波の第1電力Pを小さくした場合であっても、第2電波信号の第2電力Pを大きくすることにより、通信距離を長くすることができる。第3電波信号の第3周波数については無線LANルータと通信可能であればいずれでもよいが、第1電波信号の第1周波数が2.4GHz帯である場合は、例えば5.0GHz帯を利用することができる。変換部69においては、第1電波信号を第2電波信号及び第3電波信号のいずれか一方に変換することも、第1電波信号を第2電波信号及び第3電波信号の両方に変換することも可能であり、飼養者等の任意で設定できる。変換部69において第3電波信号のみに変換する場合は、図13における受信装置4は使用されないことになる。
【0061】
第2電波信号や第3電波信号へ変換する前に、受信した第1電波信号が分娩開始を意味するかどうかについて、受信した第1電波信号の内容、即ち信号強度や持続時間等のデータを判断材料として用い、制御部61において判断を行うようにしてもよい。勿論、第1電波信号を受信したら即座に機械的に第2電波信号や第3電波信号に変換し、受信装置4や無線LANルータRt1に送信するようにプログラムしてもよい。第2電波信号としては920MHz帯に限らないが、第1電波信号より長波長側であり、より遠くまで届く電波法が許容する電波であることが好ましい。第2電波信号や第3電波信号に含める送信情報としては、分娩開始と判断された第1電波信号を発信した発信器の識別番号、分娩開始の時刻等を採用することができる。また、分娩開始以外の要因での発信器の腟外脱落等の異常な状態等も送信情報に含めてもよい。
【0062】
図12等に示した第1送信素子65bは、第2電波信号を受信装置4に送信するダイポールアンテナ、平面アンテナ、八木アンテナ等が採用可能であり、制御部61の制御に基づき信号を給電されて動作する。第2電波信号の送信及び停止は、中継装置6の電源のオン・オフと連動するようにしてもよいし、中継装置6の電源のオン・オフとは独立して、例えば、中継装置6に物理的に付属するスイッチ等により作動するようにしてもよいし、電波等を使用して遠隔操作により作動するようにしてもよい。図12及び図14は、第1送信素子65bから第2電波信号を受信装置4へ送信する場合を示す。
【0063】
図12等に示した第2送信素子65cは、中継装置6に内蔵された第1無線LANアダプタの機能を利用し、第3電波信号を牛舎Gs内の無線LANルータRt1等に送信する素子であり、制御部61の制御に基づき信号を給電されて動作する。第3電波信号の送信及び停止は、中継装置6の電源のオン・オフと連動するようにしてもよいし、中継装置6の電源のオン・オフとは独立して、例えば、中継装置6に物理的に付属するスイッチ等により作動するようにしてもよいし、電波等を使用して遠隔操作により作動するようにしてもよい。図13は、第2送信素子65cから第3電波信号を無線LANルータRt1へ送信する場合を示す。
【0064】
図15に示す表示部67は、制御部61の制御に基づき、現在時刻や第1発信器2a(発信器2)等及び中継装置6の状態等を表示する構成部分である。第1発信器2a(発信器2)等及び中継装置6の状態としては、例えば、第1電波信号の受信中の状態、第2電波信号又は第3電波信号の送信中の状態等である。あるいは、図15に示すように、第1発信器2a(発信器2)の他に、第1発信器2a(発信器2)と同一構造の第2発信器2b、第3発信器2c、……等、複数の発信器がある場合は、第1電波信号の発信元の発信器がいずれの発信器であるのかを示す識別番号等を表示してもよい。また、第1電波信号の受信履歴及び第2電波信号又は第3電波信号の送信履歴を表示できるように、制御部61より制御されていてもよい。なお、表示部67は、中継装置6に任意で設けることができる構成部分である。
【0065】
図15に示すように、受信装置4は、制御部41、電源部43、無線通信回路45、表示部47、報知部49及び変換部42を有し、動物の近傍に定義される第1距離よりも長い第2距離だけ中継装置6から離れた位置に配置される。また図示は省略しているが、受信装置4は第2無線LANアダプタを内蔵する。図12等においては、第2受信素子45a及び第3送信素子45bが中継装置6の筐体の外部に空中線アンテナとして設けられた構造が例示されているが、図15では第2受信素子45a及び第3送信素子45bの図示を省略している。無線通信回路45は、第2受信素子45aが受信した受信信号の検波及び信号処理、及び第3送信素子45bへ供給する信号を生成し、第3送信素子45bから空中線の電磁波を送信する制御を実行する回路である。
【0066】
制御部41は、電源部43、無線通信回路45、表示部47、報知部49及び変換部42の制御等、受信装置4の制御全体に関わるプロセッサである。即ち、制御部41は、電源部43の電源機能の制御、無線通信回路45による第2電波信号の検波及び信号処理、第3電波信号の送信、変換部42による周波数変換、報知部49による分娩開始の報知機能の制御、及び表示部47による表示機能の制御等を実行する。電源部43は、制御部41の制御に基づき、受信装置4の制御部41、無線通信回路45、表示部47、報知部49及び変換部42へ電気エネルギを供給する回路部分である。なお、第2受信素子45a及び第3送信素子45bは、受信装置4の筐体の内部に内蔵される構成でも構わない。第2無線LANアダプタは、第3送信素子45bを含む構造であってもよいし、無線通信回路45の一部又は全部の機能、あるいは、変換部42の一部又は全部の機能を担うものであってもよい。
【0067】
図15に示す無線通信回路45は、筐体の外部に設けられた第2受信素子45a(図12等参照。)が受信した920MHz帯等の第2電波信号を、制御部41の制御に基づき、検波して信号処理する。図15に示す変換部42は、制御部41の制御に基づき、920MHz帯等の第2電波信号を、第1電波信号及び第2電波信号とは異なる電波帯の第3信号に変換する電子回路である。第3電波信号の第3周波数については無線LANルータと通信可能であればいずれでもよいが、2.4GHz帯あるいは5.0GHz帯を利用することができる。変換部42においては、第2電波信号を第3電波信号へ変換するか否かについて、飼養者等の任意で設定できる。
【0068】
中継装置6において第1電波信号から第2電波信号に変換する際に、信号が分娩開始を意味するかどうかについて判断されなかった場合、受信装置4において第2電波信号を受信した後に、受信した第2電波信号が分娩開始を意味するかどうかについて、受信した第2電波信号の内容、即ち信号強度や持続時間等のデータを判断材料として用い、制御部41において判断を行うようにしてもよい。第3電波信号に含める送信情報又は表示部47を用いて表示する情報としては、分娩開始と判断された第1電波信号を発信した発信器の識別番号、分娩開始の時刻等を採用することができる。また、分娩開始以外の要因での発信器の腟外脱落等の異常な状態等も送信情報に含めてもよい。勿論、第2電波信号を受信したら即座に機械的に第3電波信号に変換して第2無線LANルータRt2に送信するようにプログラムしてもよいし、第2電波信号の内容をそのまま表示部47(図15参照。)を用いて表示してもよい。
【0069】
図12等に示した第3送信素子45bは、受信装置4に内蔵された第2無線LANアダプタの機能を利用し、第3電波信号を詰所Tm内の無線LANルータRt2等に送信する素子であり、図15に示す制御部41の制御に基づき信号を給電されて動作する。第3電波信号の送信及び停止は、受信装置4の電源のオン・オフと連動するようにしてもよいし、受信装置4の電源のオン・オフとは独立して、例えば、受信装置4に物理的に付属するスイッチ等により作動するようにしてもよいし、電波等を使用して遠隔操作により作動するようにしてもよい。図14は、第3送信素子45bから第3電波信号を無線LANルータRt2へ送信する場合を示す。
【0070】
図15に示した無線通信回路45の第2電波信号の検波・信号処理、第3電波信号の送信処理等の機能は、受信装置4の電源のオン・オフと連動するようにしてもよい。例えば、受信装置4の電源がオンの場合は、常時、受信の準備状態(スタンバイ状態)とする等である。無線通信回路45の第2電波信号の第2電波信号の検波・信号処理、第3電波信号の送信処理等は、受信装置4の電源のオン・オフと連動させず、独立したスイッチ系統により受信のスタンバイ状態となるようにしてもよい。
【0071】
図15に示す表示部47は、制御部41の制御に基づき、現在時刻や分娩開始を示す何らかの報知的な表示、第1発信器2a(発信器2)等及び受信装置4の状態等を表示する構成部分である。第1発信器2a(発信器2)等及び受信装置4の状態としては、例えば、第2電波信号の受信中の状態、第3電波信号の送信中の状態等である。あるいは、図15に示すように、第1発信器2a(発信器2)の他に、第1発信器2a(発信器2)と同一構造の第2発信器2b、第3発信器2c、……等、複数の発信器がある場合は、第2電波信号の変換元となる第1電波信号の発信元の発信器がいずれの発信器であるのかを示す識別番号等を表示してもよい。また、第2電波信号の受信履歴及び第3電波信号の送信履歴を表示できるように、制御部41より制御されていてもよい。なお、表示部47は、受信装置4に任意で設けることができる構成部分である。
【0072】
図15に示す報知部49は、制御部41の制御に基づき、分娩開始を示す何らかの報知等を音声等により行う構成部分である。例えば、図15に示すように、第1発信器2a(発信器2)の他に、第1発信器2a(発信器2)と同一構造の第2発信器2b、第3発信器2c、……等、複数の発信器がある場合は、第2電波信号の変換元となる第1電波信号の発信元の発信器がいずれの発信器であるのかを示す識別番号等を報知してもよい。
【0073】
分娩開始かどうかの判断は、図15に示す第1発信器2a(発信器2)の制御部11a、中継装置6の制御部61、受信装置4の制御部41のいずれで行ってもよい。
【0074】
第2実施形態に係る分娩検知システムにおいては、第1実施形態に係る分娩検知システムの場合と同様に、胎子を子宮内に擁し、分娩を控えた牛等の動物の腟内に、ヒトの手又はアプリケーター(挿入器具)等で発信器2を挿入する。発信器2は、発信器2の少なくとも信号生成回路のアンテナを構成する部分(出力端)が腟外へ露出されない位置、かつ、動物の分娩に対して不都合が生じにくい位置に挿入する。例えば、子宮口付近まで発信器2を挿入する、等である。発信器2は図9A又は図9Bに示すような形状の状態で腟内に挿入され、子宮口付近に到達すると、2つの羽根部25a及び25bが図7Aの静置状態に戻る。発信器2は信号生成回路の出力端から第1電波信号を発信しているが、動物の生体組織により吸収及び減衰されて、図12等に示す中継装置6には届かない。
【0075】
分娩の開始直前、即ち破水が発生した場合や、分娩が開始された場合には、発信器2は子宮口付近から腟内に戻されていく。発信器2が胎子や子宮内部からの分泌物等により、次第に発信器2のふた23側の方が少し腟外に押し出されるようになり、発信器2の一部又は全部が露出する。分娩開始の予兆段階や開始初期の段階を「分娩開始」と定義して報知したい場合は、発信器2の一部が腟外に露出した時点で、発信器2の信号生成回路の出力端から第1電波信号が腟外に送信される状態としてもよい。分娩開始の予兆段階や開始初期の段階を「分娩開始」と定義せずに報知もしない場合には、発信器2の信号生成回路の出力端(アンテナ部分)が挿入方向先端に位置する等調整し、発信器2の一部が腟外に露出した時点では、信号生成回路の出力端から第1電波信号が腟外に送信されない状態にしてもよい。
【0076】
図12~14に示すように、分娩が進み、胎子Bの前肢等が外陰部に達する程度となれば、発信器2が胎子B等により腟外に押し出され、発信器2の全部が露出し、落下する。発信器2は完全に露出しているため、図15に示す第1発信器2a(発信器2)の信号生成回路15aの出力端からの第1電波信号は図12~14に示す中継装置6により受信されるようになる。
【0077】
第2実施形態に係る分娩検知システムにおいて、送信された第1電波信号は、図12~14に示す牛舎Gs内等の動物Cから30m以内、好ましくは10m以内となる第1距離に配置された中継装置6の筐体の外部に配置された第1受信素子65aにより受信される。中継装置6及び受信装置4の両方で第3電波信号を使用しない場合、即ち、外部通信網Inを利用して外部の端末Smに情報を送信しない場合は、図12に示す通り、第1電波信号が処理されていく。第1受信素子65aが受信した第1電波信号は、中継装置6の内部に配置された無線通信回路65に送信され、無線通信回路65における検波及び信号処理のプロセスを経た後、図115に示す変換部69において、第1周波数fよりも低周波の周波数となる第2周波数f、及び第1電力Pより大きな電力の第2電力Pの第2電波信号に変換される。そして、第2周波数f及び第2電力Pの第2電波信号は、第1送信素子65bより中継装置6の外に空中線として送信される。例えば対象となる動物Cが牛である場合、牛舎Gsの内部において、中継装置6を第1距離だけ動物Cから離れて配置し、牛舎Gsから第1距離よりも長い第2距離だけ離れた位置にある詰所Tmに、受信装置4を配置してもよい。
【0078】
例えば牛舎Gsの外部等、第1距離よりも長い第2距離を送信された第2電波信号は、図12に示すように、受信装置4において、第2受信素子45aにより受信される。第2受信素子45aが受信した第2電波信号は、図15に示す制御部41が無線通信回路45を制御することによって、無線通信回路45において検波及び信号処理が実行される。無線通信回路45が処理した第2電波信号の内容に従い、図15に示す制御部41の制御によって、受信装置4の表示部47に適切な表示され、又は、報知部49により適切な報知がされる。
【0079】
中継装置6で第3電波信号を使用する場合、即ち、中継装置6から外部通信網Inを利用して外部の端末Smに情報を送信する場合は、図13に示す通り、第1電波信号が処理されていく。第1受信素子65aが受信した第1電波信号は、中継装置6の内部に配置された無線通信回路65に送信され、無線通信回路65における検波及び信号処理のプロセスを経た後、図15に示す変換部69において第3電波信号に変換される。そして第3電波信号は、第2送信素子65cより無線LANルータRt1へ送信される。その後、無線LANルータRt1からインターネット等の外部通信網Inを介して飼養者等が携帯する個別の端末Smに情報が送信される。この場合、受信装置4は使用されない。
【0080】
受信装置4で第3電波信号を使用する場合、即ち、受信装置4から外部通信網Inを利用して外部の端末Smに情報を送信する場合は、図14に示す通り、第1電波信号が処理されていく。第1受信素子65aが受信した第1電波信号は、中継装置6の内部に配置された無線通信回路65に送信され、無線通信回路65における検波及び信号処理のプロセスを経た後、図15に示す変換部69において第1周波数fよりも低周波の周波数となる第2周波数f、及び第1電力Pより大きな電力の第2電力Pの第2電波信号に変換される。そして、第2周波数f及び第2電力Pの第2電波信号は、第1送信素子65bより中継装置6の外に空中線として送信される。例えば対象となる動物Cが牛である場合、牛舎Gsの内部において、中継装置6を第1距離だけ動物Cから離れて配置し、牛舎Gsから第1距離よりも長い第2距離だけ離れた位置にある詰所Tmに、受信装置4を配置してもよい。
【0081】
勿論、上述した3通りの通信方法、即ち、図12~14の3通りの通信方法のいずれか1つのみ採用してもよいし、複数の通信方法を組み合わせて利用してもよい。第2実施形態に係る分娩検知システムを利用すれば、牛舎Gs及び詰所Tmの無線通信環境により、飼養者等への報知方法を自由に設定することが可能である。
【0082】
早くから分娩の状態を把握するという点で言えば、発信器2の一部が腟外に露出した時点で、分娩開始状態、又は、分娩準備状態として報知されることが好ましい。また、中継装置6を動物から10m以内、より好ましくは5m以内の近傍に配置して、微弱な第1電力Pの第1電波信号を検出することにより、発信器2から中継装置6までの僅かな距離の変化を、微弱な第1電力Pの第1電波信号の強度の変化として検知することもできる。第2実施形態に係る分娩検知システムによれば、発信器2からの電波信号の有無や強度により、遠隔地にいる飼養者が容易に動物の分娩が開始されたかどうかを判別可能である。また、発信器2からの電波信号の強度によっては、分娩初期のいずれの状態かも判別可能である。
【0083】
本発明の第2実施形態に係る分娩検知システムについては、図15に示す通り、第1発信器2a(発信器2)の他に、第1発信器2a(発信器2)と同一構造の第2発信器2b、第3発信器2c、……等、複数の発信器をそれぞれ複数の分娩間近の動物の腟に挿入して用いることができる。図15においては、分娩検知システム中の中継装置は中継装置6の1個のみ、受信装置は受信装置4の1個のみであるが、分娩場所が複数の牛舎にある場合等、互いに離れている場合等には、中継装置は複数の牛舎毎に2個以上設けてもよい。中継装置が2個以上の場合であっても、第1距離を伝搬する第1周波数f及び第1電力Pの第1電波信号に対して、第2電波信号の第2周波数f及び第2電力Pを選定することにより、第1距離よりも長い第2距離だけ離れた長距離の無線通信が可能になるので、受信装置は複数の牛舎から離れた詰所に受信装置4を1個のみとすることができるので効率的である。一方、受信装置を2個以上とすることも可能である。飼養者が複数いる場合には、飼養者が携帯できる小型の受信装置を、飼養者それぞれが携帯し、飼養者それぞれの作業場所で分娩を検知するようにしてもよい。920MHz帯の出力を20mWとしたとき、アンテナの高さや障害物にもよるが300m以上の通信は可能である。牧場のあるような見通しがよい環境であれば5km程度離れた飼養者の相互の通信もできる。勿論、受信装置が2個以上の場合であっても、中継装置は図15に示すような中継装置6の1個のみとすることも可能である。即ち、発信器、中継装置及び受信装置のいずれも、1個で用いてもよいし2個以上で用いてもよいのである。更に中継装置と受信装置を光ファイバで接続して光通信をしてもよい。更に外部通信網Inを利用できるように第3電波信号を使用することで、より遠隔地にいる飼養者や関係者等にも、個別の端末Smで、分娩状況を知らせることができるのである。
【0084】
第2実施形態に係る分娩検知システムによれば、発信器2に羽根部を有するため、分娩開始前に何らかの理由で誤って発信器が腟外に出てしまうことを効果的に防ぐことが可能である。発信器2の挿入方向先端に固定された2つの羽根部25a、25bが、動物の子宮口付近で「つっかえ」として機能し、分娩開始までは腟外に脱落することはないのである。また、分娩開始後は図9Bのような状態又はそれに近い状態で発信器2が腟内を体外方向へ逆戻りすることになり、その間、2つの羽根部25a、25bに図7Aの状態へ戻ろうとする力が働き、腟の内部を外側に押圧する力が生じるため、胎子の腟内への進入程度の強い力が生じなければ、発信器2が容易に腟内を体外方向へ逆戻りすることはない。第2実施形態に係る発信器2においては、図15に示す信号生成回路15aの出力端の位置を調整することで、胎子の腟内への進入度合、即ち、分娩の進捗度合についても、信号強度等で把握することができるのである。
【0085】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1及び第2実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。実施形態で説明したそれぞれの技術的思想を互いに組み合わせることも可能である。
【0086】
例えば、本発明の第1及び第2実施形態においては、分娩動物として特に牛を例に挙げて説明したが、分娩動物としては、大型陸上哺乳類であればいずれでも本発明を応用し、適用可能である。競走馬等の馬等に対しても、本発明の分娩検知システムを利用することができる。
【0087】
また、本発明の第1及び第2実施形態に係る中継装置においては、カメラ機能を搭載することが可能である。中継装置に搭載されたカメラにより、分娩が検知された動物の方向を向くようにして動画又は静止画を撮影し、飼養者等がリアルタイムで遠隔から観察することも可能である。
【0088】
更に、本発明の第1及び第2実施形態においては、中継装置及び受信装置とは別個に無線LANルータを設置した場合で説明したが、勿論中継装置又は受信装置に無線LANルータが内蔵されていてもよい。
【0089】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当と解釈しうる、特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0090】
1、1a、1b、1c、2……発信器、2a……第1発信器、2b……第2発信器、2c……第3発信器、3、4……受信装置、5、6……中継装置、7……回路収納カプセル、11a……制御部、12a……スイッチ、13a……電源部、14a……キャパシタ、15a……信号生成回路、16a……抵抗、17a……発光部、18a……電圧検出器、21……筐体、23……ふた、23a……取付部、25a、25b……羽根部、27……ひも、31……制御部、33……電源部、35……受信処理回路、35c……第2受信素子、37……表示部、39……報知部、41……制御部、42……変換部、43……電源部、45……無線通信回路、45a……第2受信素子、45b……第3送信素子、47……表示部、49……報知部、51……制御部、53……電源部、55……無線通信回路、55a……第1受信素子、55b……送信素子、57……表示部、59……変換部、61……制御部、63……電源部、65……無線通信回路、65a……第1受信素子、65b……第1送信素子、65c……第2送信素子、67……表示部、69……変換部
図1A
図1B
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