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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145424
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】触媒的汚染除去のための水素還元剤
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20231003BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20231003BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20231003BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
F01N3/08 Z
F01N3/20 D ZAB
F01N3/08 B
C01B3/04 B
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 400
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023097509
(22)【出願日】2023-06-14
(62)【分割の表示】P 2019554834の分割
【原出願日】2018-04-03
(31)【優先権主張番号】62/481,237
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】スン,シヤン
(72)【発明者】
【氏名】アレラソール,サエード
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するためのシステム及び関係する方法を提供する。
【解決手段】内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している触媒物品と、触媒物品の上流で水素を導入するように構成された水素噴射物品を含む、内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するためのシステムは、一酸化炭素および/または炭化水素および/または酸化窒素を除去するのに有効である。水素の導入は、断続的および/またはコールドスタート期間中であってもよい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するためのシステムであって、
内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している触媒物品と、
触媒物品および内燃機関の排気ガス流と流体連通しており、触媒物品の上流で排気ガス流中に水素を導入するように構成された水素噴射物品と、
水素貯蔵物品と
を含むシステムであって、
前記水素噴射物品が、コールドスタート期間中に水素を導入するように構成され、
前記触媒物品に進入する排気ガス流が約0℃から約180℃の温度にあるときに、前記水素噴射物品が水素を導入するように構成され、
前記システムが、排気ガス流中の1種または複数の汚染物質を除去するのに有効であり、汚染物質が、CO、HC、NO、およびこれらの組合せからなる群から選択される、
前記システム。
【請求項2】
水素噴射物品が、オンデマンドで断続的に水素を導入するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
水素噴射物品が、水素貯蔵物品から水素を導入するように構成された、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
水素噴射物品が、排気ガス流が水素貯蔵物品に進入するのを防止するように構成された弁を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
触媒物品が、ディーゼル酸化触媒(DOC)組成物または希薄NO捕捉触媒組成物を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
車両電子管理システムと一体化された、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
水素発生システムをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
水素発生システムが、水素を発生させるように構成された水分解物品またはアンモニア分解物品を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のシステムを含む車両。
【請求項10】
内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するための方法であって、水素噴射物品を介して、内燃機関の下流および触媒物品の上流で排気ガス流中に貯蔵された水素を導入することを含む、方法であって、
コールドスタート期間中に、貯蔵された水素を導入することを含み、触媒物品に進入する排気ガス流が、約0℃から約200℃の温度にあり、
貯蔵された水素の噴射または放出の非存在下での変換率%に対して、CO、HC、およびNOの1種または複数の変換率%の増大をもたらすのに有効であり、変換率%の増大が、≧5%、≧10%、≧15%、≧20%、≧25%、≧30%、≧35%、≧40%、≧45%、≧50%、≧55%、または≧60%である、
前記方法。
【請求項11】
任意で車両電子管理システムからの命令によって、貯蔵された水素を断続的に導入することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
触媒物品が、ディーゼル酸化触媒(DOC)組成物および/または希薄NO捕捉触媒組成物を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
水素を、水分解物品またはアンモニア分解物品において、車載状態で発生させることをさらに含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
水素を発生させることが、
水を収集および/または貯蔵すること、
水を水素および酸素に分解すること、
水素を収集すること、および
水素を貯蔵すること
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
水素を発生させることが、
アンモニア/有機溶媒溶液からアンモニアを単離する、またはアンモニアをアンモニア貯蔵タンクから放出すること、
アンモニアを触媒反応器内で分解して、水素を得ること、
水素を収集すること、および
水素を貯蔵すること
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
収集し、貯蔵し、単離し、放出し、分解し(splitting)、および分解する(decomposing)機能が、機能ごとに構成された物品を含む車載型一体化システムを介して行われる、請求項14または請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガス(exhaust gas)流中の還元剤としての、車載型(on-board vehicle)水素発生および水素の使用のためのシステム、物品、および方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排出(emission)に関する環境規制は、世界中で益々厳しくなっている。
【0003】
希薄燃焼エンジン、例えばディーゼルエンジンの動作は、燃料希薄条件下、高い空燃比でのそれらの動作に起因して、使用者に優れた燃料経済性を提供する。しかしディーゼルエンジンは、粒状物質(PM)、未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素、および酸化窒素(NO)を含有する排気ガスの排出も放出し、このNOは、とりわけ一酸化窒素および二酸化窒素を含む酸化窒素の様々な化学種を表す。排気粒状物質の2種の主な成分は、可溶性有機成分(SOF)および煤成分である。SOFは、煤上で層状に凝縮し、一般には未燃ディーゼル燃料および潤滑油から誘導される。SOFは、排気ガスの温度に応じて、蒸気としてまたはエアロゾル(即ち、液体凝縮物の微細な液滴)としてディーゼル排気中に存在する可能性がある。煤は、主に炭素の粒子から構成される。
【0004】
アルミナなどの耐火金属酸化物支持体(support)上に分散される白金族元素(PGM)などの貴金属を含む酸化触媒は、炭化水素および一酸化炭素の気状汚染物質の両方を、これらの汚染物質の酸化を触媒して二酸化炭素および水に変換するために、ディーゼルエンジンの排気を処理する際に使用されることが公知である。そのような触媒は、一般に、大気中にベントされる前に排気が処理されるようディーゼル発電システムからの排気流路中に配置される、ディーゼル酸化触媒(DOC)と呼ばれるユニット内に含有されている。典型的には、ディーゼル酸化触媒は、セラミックまたは金属基材上に形成され、その表面に1種または複数の触媒コーティング組成物が堆積される。気状HCおよびCO排出ならびに粒状物質(SOF部分)の変換に加え、PGMを含有する酸化触媒はNOからNOへの酸化を促進させる。触媒は、典型的には、それらのライトオフ(light-off)温度、またはT50とも呼ばれる50%の変換が実現される温度によって定められる。
【0005】
内燃機関の排気を処理するのに使用される触媒は、エンジン動作の初期コールドスタート(cold-start)期間など、比較的低い温度での動作期間中はそれほど有効ではないが、それはエンジンの排気が、排気中の有害成分を効率的に触媒変換するのに十分な高い温度ではないからである。このために当技術分野では、気状汚染物質、通常は炭化水素を吸着および/または吸収するために、およびそれらを初期コールドスタート期間中に保持するために、触媒処理システムの一部としてゼオライトであってもよい収着材料を含むことが公知である。排気ガス温度が上昇するにつれ、貯蔵された炭化水素は収着剤から押し出され、より高い温度で触媒処理に供される。
【0006】
NOは、内燃機関(例えば、自動車およびトラック)から、燃焼設備(例えば、天然ガス、油、または石炭によって加熱される発電所)から、および硝酸生成プラントからなどの排気ガス中に含有される。様々な処理方法が、NO含有ガス混合物を処理して大気中の汚染物質を減少させるのに使用されてきた。
【0007】
ガソリン直噴エンジンおよび部分希薄燃焼エンジンなどの希薄燃焼エンジンの排気から、ならびにディーゼルエンジンからのNOを低減させる、1つの有効な方法は、希薄燃焼エンジン動作条件下でNOを捕捉し貯蔵すること、および補足されたNOを、化学量論または過濃エンジン動作条件下でまたは過濃条件が誘発されるよう排気中に噴射された外部燃料による希薄エンジン動作の下で低減させる必要がある。希薄動作サイクルは、典型的には1分から20分の間であり、過濃動作サイクルは典型的には短く(1から10秒)、その結果、可能な限り多くの燃料が保存される。NO変換効率を増強するには、長いがそれほど頻繁ではない再生よりも、短く頻繁な再生が好ましい。したがって、希薄NO捕捉触媒物品は一般に、NO捕捉機能および三元変換機能を提供しなければならない。三元変換(TWC)は、一般に、HC+COからCO+HOへの変換、およびNOからNへの還元を指す。
【0008】
いくつかの希薄NO捕捉(LNT)触媒物品は、アルカリ土類元素を含有する。例えば、NO収着剤成分は、Mg、Ca、Sr、またはBaの酸化物などのアルカリ土類金属酸化物を含む。その他のLNT触媒物品は、Ce、La、Pr、またはNdの酸化物などの希土類金属酸化物を含有することができる。NO収着剤は、触媒NO酸化還元のためにアルミナ支持体上に分散された白金などの白金族元素触媒と合わせて使用することができる。LNT触媒物品(article)は、周期的な希薄(捕捉モード)および過濃(再生モード)排気条件下で動作し、その最中に、燃焼中にエンジンによって生成されたNOがNに変換される。
【0009】
希薄燃焼エンジンの排気からNOを低減させる別の有効な方法は、選択的触媒還元(SCR)触媒の存在下、アンモニアまたは炭化水素などの適切な還元剤による希薄燃焼エンジン動作条件下でのNOの反応を必要とする。SCRプロセスは、大気酸素の存在下、還元剤(例えば、アンモニア)による酸化窒素の触媒還元を使用し、その結果、主に窒素および水蒸気が形成される:
4NO+4NH+O→4N+6HO(標準SCR反応)
2NO+4NH→3N+6HO(低速SCR反応)
NO+NO+NH→2N+3HO(高速SCR反応)
【0010】
SCRプロセスで用いられる現行の触媒は、鉄または銅などの触媒金属とイオン交換されたゼオライトなどのモレキュラーシーブを含む。
【0011】
有用なSCR触媒成分は、600℃よりも低い温度で、NO排気成分の還元を有効に触媒することができ、したがって還元されたNOのレベルは、典型的にはより低い排気温度を伴う低負荷の条件下でも実現することができる。
【0012】
益々厳しくなる排出規制は、低いエンジン排気温度でCO、HC、およびNO排出が管理されるよう、CO、HC、およびNO酸化容量が改善された排出ガス処理システムを開発するための必要性を促してきた。さらに、NO(NOおよびNO)排出から窒素に還元するための排出ガス処理システムの開発は、益々重要になってきた。さらに、貴金属は、動作条件下で凝集して荷電粒子を形成し、触媒活性の損失をもたらす傾向があることが、観察される。
【0013】
コールドスタート状態の最中にHCおよびNOを除去(abatement)するための方法が存在するが、改善された方法が望まれる。コールドスタート状態の最中にCOを除去するための方法は、未だ存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、内燃機関の排気ガス流中の還元剤としての、車載型水素発生、貯蔵、および使用する方法を対象とする。発生した水素は、特にコールドスタート期間中に、排気ガス流中のCOおよび/またはHCの酸化および/またはNO/NO形成を補助する働きをしてもよい。水素還元剤は、例えば、貴金属、例えばディーゼル酸化触媒(DOC)中に存在する貴金属を再生するのに適している。さらに、水素還元剤は、低温酸化に必要とされる分子状酸素を貴金属が解離するのを阻害する硝酸塩形成を、最小限に抑える可能性がある。
【0015】
本開示は、内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するためのシステムおよび関係する方法を提供し、システムは、触媒物品の上流で水素を導入するように構成された水素噴射物品を含む。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、一態様では、内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するためのシステムであって、内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している触媒物品と、触媒物品および内燃機関の排気ガス流と流体連通しており、触媒物品の上流で排気ガス流中に水素を導入するように構成された水素噴射物品と、任意に、水素貯蔵物品とを含むシステムが提供される。
【0017】
一部の実施形態では、水素噴射物品は、オンデマンドで断続的に水素を導入するように構成される。一部の実施形態では、水素噴射物品は、水素貯蔵物品から水素を導入するように構成される。一部の実施形態では、水素噴射物品は、排気ガス流が水素貯蔵物品に進入するのを防止するように構成された弁を含む。
【0018】
一部の実施形態では、水素噴射物品は、コールドスタート期間中に、貯蔵された水素を導入するように構成される。一部の実施形態では、水素噴射物品は、触媒物品に進入する排気ガス流が約0℃から約200℃の温度にあるときに、水素を導入するように構成される。有利には、貯蔵された水素の噴射または放出は、断続的および/またはコールドスタート期間中である。
【0019】
一部の実施形態では、システムは、排気ガス流中の1種または複数の汚染物質の除去に有効であり、汚染物質は、CO、HC、NO、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0020】
一部の実施形態では、触媒物品は、ディーゼル酸化触媒(DOC)である。
【0021】
一部の実施形態では、システムは、車両電子管理システムと一体化される。
【0022】
一部の実施形態では、システムは、水素発生システムに関連付けられる。一部の実施形態では、水素発生システムは、水素を発生させるように構成された、水分解(water-splitting)物品またはアンモニア分解(ammonia decomposition)物品を含む。
【0023】
別の態様では、本明細書に記述される排気ガス流中の汚染物質を除去するためのシステムを含む車両が提供される。
【0024】
さらなる態様では、内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するための方法であって、水素噴射物品を介して、内燃機関から下流でおよび触媒物品の上流で排気ガス流中に貯蔵された水素を導入することを含む、方法が提供される。
【0025】
一部の実施形態では、方法は、任意に、車両電子管理システムからの命令による、貯蔵された水素の断続的な導入を含む。一部の実施形態では、方法は、コールドスタート期間中に、貯蔵された水素を導入することを含み、触媒物品に進入する排気ガス流は、約60℃から約180℃の温度にある。
【0026】
一部の実施形態では、方法は、貯蔵された水素の噴射または放出の非存在下での変換率%に対して、CO、HC、およびNOの1種または複数の変換率%の増大をもたらすのに有効であり、変換率%の増大は、≧5%、≧10%、≧15%、≧20%、≧25%、≧30%、≧35%、≧40%、≧45%、≧50%、≧55%、または≧60%である。
【0027】
一部の実施形態では、触媒物品は、ディーゼル酸化触媒(DOC)、NO-吸着剤DOC(NA-DOC)、または希薄NO-捕捉(LNT)触媒組成物を含む。
【0028】
一部の実施形態では、方法はさらに、水素を車両上で、水分解物品またはアンモニア分解物品で発生させることを含む。一部の実施形態では、水素を発生させることは、水を収集および/または貯蔵すること、水を水素および酸素に分解すること、水素を収集すること、ならびに水素を貯蔵することを含む。一部の実施形態では、水素を発生させることは、アンモニアをアンモニア/有機溶媒溶液から単離する、またはアンモニアをアンモニア貯蔵タンクから放出すること、アンモニアを触媒反応器内で分解して水素を得ること、水素を収集すること、および水素を貯蔵することを含む。一部の実施形態では、収集し、貯蔵し、分解し(splitting)、単離し、放出し、および分解する(decomposing)機能の1つまたは複数は、機能ごとに構成された物品を含む車載型一体化システムを介して行われる。
【0029】
本開示は、限定するものではないが下記の実施形態を含む:
【0030】
実施形態1: 内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するためのシステムであって、内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している触媒物品と、触媒物品および内燃機関の排気ガス流と流体連通しており、触媒物品の上流で排気ガス流中に水素を導入するように構成された水素噴射物品とを含む、システム;
【0031】
実施形態2: 水素貯蔵物品をさらに含む、実施形態1のシステム。
【0032】
実施形態3: 水素噴射物品が、オンデマンドで断続的に水素を導入するように構成された、実施形態1または2のシステム。
【0033】
実施形態4: 水素噴射物品が、水素貯蔵物品から水素を導入するように構成された、実施形態1から3のいずれかのシステム。
【0034】
実施形態5: 水素噴射物品が、排気ガス流が水素貯蔵物品に進入しないように構成された弁を含む、実施形態1から4のいずれかのシステム。
【0035】
実施形態6: 水素噴射物品が、コールドスタート期間中に、貯蔵された水素を導入するように構成された、実施形態1から5のいずれかのシステム。
【0036】
実施形態7: 水素噴射物品が、触媒物品に進入する排気ガス流が温度≦200℃にあるときに水素を導入するように構成された、実施形態1から6のいずれかのシステム。
【0037】
実施形態8: 水素噴射物品が、触媒物品に進入する排気ガス流が約0℃から約180℃の温度にあるときに水素を導入するように構成された、実施形態1から7のいずれかのシステム。
【0038】
実施形態9: 水素噴射物品が、触媒物品に進入する排気ガス流が約0℃、約10℃、約20℃、約30℃、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、または約80℃から、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、約170℃、約180℃、または約200℃にあるときに水素を導入するように構成される、実施形態1から8のいずれかのシステム。
【0039】
実施形態10: システムが、排気ガス流中の1種または複数の汚染物質を除去するのに有効であり、汚染物質は、CO、HC、NO、およびこれらの組合せからなる群から選択される、実施形態1から9のいずれかのシステム。
【0040】
実施形態11: 触媒物品が、触媒コーティングが表面に配置されている基材を含む、実施形態1から10のいずれかのシステム。
【0041】
実施形態12: 触媒物品が酸化触媒を含む、実施形態1から11のいずれかのシステム。
【0042】
実施形態13: 触媒物品が、ディーゼル酸化触媒(DOC)、希薄NO-捕捉(LNT)触媒、またはNO-吸着剤DOC(NA-DOC)触媒である、実施形態1から12のいずれかのシステム。
【0043】
実施形態14: 触媒物品が、白金族金属(platinum group metal)(PGM)成分を含む触媒コーティングが表面に配置されている基材を含み、基材の体積に対して約5g/ftから約250g/ftの範囲のPGM負荷量を有する、実施形態1から13のいずれかのシステム。
【0044】
実施形態15: 触媒物品が、基材の体積に対して約5g/ft、10g/ft、約15g/ft、約20g/ft、約40g/ft、または約50g/ftから、約70g/ft、約90g/ft、約100g/ft、約120g/ft、約130g/ft、約140g/ft、約150g/ft、約160g/ft、約170g/ft、約180g/ft、約190g/ft、約200g/ft、約210g/ft、約220g/ft、約230g/ft、約240g/ft、または約250g/ftのPGM負荷量を有する、実施形態1から14のいずれかのシステム。
【0045】
実施形態16: 触媒物品が、乾燥組成物の質量に対して約0.1質量%から約20質量%の量で存在する白金族金属(PGM)成分を含む触媒組成物を含む、実施形態1から15のいずれかのシステム。
【0046】
実施形態17: 触媒物品が、乾燥組成物の質量に対して約0.1%、約0.5質量%、約1.0質量%、約1.5質量%、または約2.0質量%から、約3質量%、約5質量%、約7質量%、約9質量%、約10質量%、約12質量%、約15質量%、約16質量%、約17質量%、約18質量%、約19質量%、または約20質量%の量で存在するPGM成分を含む触媒組成物を含む、実施形態1ら16のいずれかのシステム。
【0047】
実施形態18: 触媒物品が、耐火金属酸化物支持体上に分散されたPGM成分を含む触媒組成物を含む、実施形態1から17のいずれかのシステム。
【0048】
実施形態19: 触媒物品が、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリア、酸化マンガン、ジルコニア-アルミナ、セリア-ジルコニア、セリア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、バリア-アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、バリア-ジルコニア、バリア-チタニア、バリア-ジルコニア-アルミナ、ランタナ-ジルコニア、およびこれらの組合せからなる群から選択される耐火金属酸化物支持体を含む触媒組成物を含む、実施形態1から18のいずれかのシステム。
【0049】
実施形態20: 触媒物品が、耐火金属酸化物支持体上に分散された白金族金属成分を含み、ランタン、バリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、ハフニウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、マンガン、鉄、クロム、スズ、亜鉛、ニッケル、コバルト、および銅からなる群から選択される1種または複数の金属をさらに含む、触媒組成物を含む、実施形態1から19のいずれかのシステム。
【0050】
実施形態21: 触媒物品が、触媒コーティングが表面に配置された流通(flow-through)モノリス基材、または触媒コーティングが表面に配置された壁流フィルター基材を含む、実施形態1から20のいずれかのシステム。
【0051】
実施形態22: 車両電子管理システムと一体化された、実施形態1から21のいずれかのシステム。
【0052】
実施形態23: 水素発生システムに関連付けられた、実施形態1から22のいずれかのシステム。
【0053】
実施形態24: 水素が発生するように構成された、水分解物品またはアンモニア分解物品をさらに含む、実施形態1から23のいずれかのシステム。
【0054】
実施形態25: 実施形態1から24のいずれかのシステムを含む車両。
【0055】
実施形態26: 内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するための方法であって、内燃機関の下流および触媒物品の上流で排気流に貯蔵された水素を導入することを含む、方法。
【0056】
実施形態27: 貯蔵された水素を断続的に導入することを含む、実施形態26の方法。
【0057】
実施形態28: コールトスタート期間中に、貯蔵された水素を導入することを含む、実施形態26または27の方法。
【0058】
実施形態29: 触媒物品に進入する排気ガス流が、温度≦200℃にある、実施形態26から28のいずれかの方法。
【0059】
実施形態30: 触媒物品に進入する排気ガス流が、約0℃、約10℃、約20℃、約30℃、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、または約80℃から、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、約170℃、または約180℃の温度にある、実施形態26から29のいずれかの方法。
【0060】
実施形態31: 触媒物品に進入する排気ガス流が、約60℃から約180℃の温度にある、実施形態26から30のいずれかの方法。
【0061】
実施形態32: 排気ガス流中の1種または複数の汚染物質を除去するのに有効であり、汚染物質が、CO、HC、NO、およびこれらの組合せからなる群から選択される、実施形態26から31のいずれかの方法。
【0062】
実施形態33: 貯蔵された水素の噴射または放出の非存在下での変換率%に対し、CO、HC、およびNO/NOの1種または複数の変換率%の増大をもたらすのに有効であり、変換率%の増大が、≧5%、≧10%、≧15%、≧20%、≧25%、≧30%、≧35%、≧40%、≧45%、≧50%、≧55%、または≧60%である、実施形態26から32のいずれかの方法。
【0063】
実施形態34: 触媒物品が、酸化触媒組成物または希薄NO-捕捉(LNT)触媒組成物を含む、実施形態26から33のいずれかの方法。
【0064】
実施形態35: 触媒物品が、ディーゼル酸化触媒(DOC)組成物またはNO-吸着剤DOC(NA-DOC)を含む、実施形態26から34のいずれかの方法。
【0065】
実施形態36: 触媒物品が、PGM成分を含む触媒コーティングが表面に配置された基材を含み、基材の体積に対して約5g/ftから約250g/ftの範囲のPGM負荷量を有する、実施形態26から35のいずれかの方法。
【0066】
実施形態37: 触媒物品が、PGM成分を含む触媒コーティングが表面に配置された基材を含み、基材の体積に対して約5g/ft、10g/ft、約15g/ft、約20g/ft、約40g/ft、または約50g/ftから、約70g/ft、約90g/ft、約100g/ft、約120g/ft、約130g/ft、約140g/ft、約150g/ft、約160g/ft、約170g/ft、約180g/ft、約190g/ft、約200g/ft、約210g/ft、約220g/ft、約230g/ft、約240g/ft、または約250g/ftのPGM負荷量を有する、実施形態26から36のいずれかの方法。
【0067】
実施形態38: 触媒物品が、乾燥組成物の質量に対して約0.1質量%から約20質量%の量で存在するPGM成分を含む触媒組成物を含む、実施形態26から37のいずれかの方法。
【0068】
実施形態39: 触媒物品が、乾燥組成物の質量に対して約0.1%、約0.5質量%、約1.0質量%、約1.5質量%、または約2.0質量%から、約3質量%、約5質量%、約7質量%、約9質量%、約10質量%、約12質量%、約15質量%、約16質量%、約17質量%、約18質量%、約19質量%、または約20質量%の量で存在するPGM成分を含む触媒組成物を含む、実施形態26から38のいずれかの方法。
【0069】
実施形態40: 触媒物品が、耐火金属酸化物支持体上に配置されたPGM成分を含む触媒組成物を含む、実施形態26から39のいずれかの方法。
【0070】
実施形態41: 触媒物品が、耐火金属酸化物支持体上に配置されたPGM成分を含む触媒組成物を含む、実施形態26から40のいずれかの方法。耐火金属酸化物支持体は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリア、酸化マンガン、ジルコニア-アルミナ、セリア-ジルコニア、セリア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、バリア-アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、バリア-ジルコニア、バリア-チタニア、バリア-ジルコニア-アルミナ、ランタナ-ジルコニア、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0071】
実施形態42: 触媒物品が、ランタン、バリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、ハフニウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、マンガン、鉄、クロム、スズ、亜鉛、ニッケル、コバルト、および銅からなる群から選択される1種または複数の金属を含む触媒組成物を含む、実施形態26から41のいずれかの方法。
【0072】
実施形態43: 触媒物品が、触媒コーティングが表面に配置された流通モノリス基材、または触媒コーティングが表面に配置された壁流フィルター基材を含む、実施形態26から42のいずれかの方法。
【0073】
実施形態44: 車両電子管理システムからの命令により貯蔵された水素を導入することを含む、実施形態26から43のいずれかの方法。
【0074】
実子形態45: 水素を車両上で発生させることをさらに含む、実施形態26から44のいずれかの方法。
【0075】
実施形態46: 車両上で、水分解物品においてまたはアンモニア分解物品において水素を発生させることをさらに含む、実施形態26から45のいずれかの方法。
【0076】
実施形態47: 水素噴射物品を介して、貯蔵された水素を導入することを含む、実施形態26から46のいずれかの方法。
【0077】
実施形態48: 水素噴射物品が、排気ガス流が水素貯蔵物品に進入しないように構成された弁を含む、実施形態26から47のいずれかの方法。
【0078】
実施例49: 水素を発生させることが、水を収集および/または貯蔵し、水を水素および酸素に分解し、水素を収集し、および水素を貯蔵することを含む、実施形態26から48のいずれかの方法。
【0079】
実施形態50: 収集し、貯蔵し、分解する機能が、機能ごとに構成された物品を含む車載型一体化システムを介して行われる、実施形態26から49のいずれかの方法。
【0080】
本開示のこれらおよびその他の特徴、態様、および利点は、以下に簡単に説明される添付図面と一緒に、下記の詳細な説明を読むことによって明らかにされよう。本発明は、上述の実施形態の2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多くの任意の組合せ、ならびに本開示で述べる任意の2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多くの特徴または要素の組合せを、それらの特徴または要素が本明細書の特定の実施形態の記述で明らかに組み合わされているか否かに関わらず含む。本開示は、開示される発明の任意の分離可能な特徴または要素が、その様々な態様および実施形態のいずれかにおいて、文脈が他に明示しない限り組合せ可能であるものと見なされるべきであるように、総体的に読まれるものとする。本発明のその他の態様および利点は、下記より明らかになるであろう。
【0081】
本発明の実施形態の理解を得るために添付図面を参照し、その図面において、参照符号は本発明の例示的な実施形態の構成要素を指す。図面は単なる例示であり、本発明を限定すると解釈すべきでない。本明細書に記述される開示は例として示され、添付される図で限定しようとするものではない。例示の簡略化および明瞭化のため、図に示される特徴は必ずしも縮尺に合わせて描かれていない。例えば、いくつかの特徴の寸法は、明瞭化のためにその他の特徴に対して誇張されている可能性がある。さらに、適切であると見なされる場合、対応するまたは類似の要素を示すために図の中で参照標識が繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1A】本開示によるアンモニアを発生させるための車載型システムの、実施形態の概略図である。
図1B】本開示による、アンモニアから水素を発生させる車載型システムの、実施形態の概略図である。
図1C】本開示による、アンモニアから水素を発生させるための、ならびに水素を貯蔵および/または利用するための、車載型システムの実施形態の概略図である。
図2A】触媒組成物を含んでいてもよい、ハニカム型基材の斜視図である。
図2B図2Aよりも拡大され、図2Aの担体の端面に平行な平面に沿って得られた部分断面図であり、図2Aに示される複数のガス流通路の拡大図を示す図である。
図3】壁流フィルター基材の部分の断面図である。
図4A】基材の壁の様々なコーティング構成を示す図である。
図4B】基材の壁の様々なコーティング構成を示す図である。
図4C】基材の壁の様々なコーティング構成を示す図である。
図5】本発明の水素発生、貯蔵、および噴射システムが利用される、内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している排出処理システムの実施形態の、概略図である。
図6】車両とシミュレーターとの間での、エンジンアウト温度トレースのグラフ上の比較である。
図7】車両トレースとシミュレーターとの間での、エンジンアウトCO排出のグラフ上の比較である。
図8】実施例1のNEDC試験に関するNOトレースである。
図9】実施例2の累積CO排出プロットである。
図10】実施例1に関する、CO変換の結果を示すプロットである。
図11】実施例1に関する、HC変換の結果を示すプロットである。
図12】実施例1に関する、NO/NO変換の結果を示すプロットである。
図13】実施例2に関する、CO変換の結果を示すプロットである(新鮮)。
図14】実施例2に関する、HC変換の結果を示すプロットである(新鮮)。
図15】実施例2に関する、CO変換の結果を示すプロットである(老化)。
図16】実施例2に関する、HC変換の結果を示すプロットである(老化)。
図17】新鮮な実施例1に関するCO脱着を示す、赤外線スペクトルである。
図18】様々な条件下での、COおよびNO変換のグラフ表示である。
図19】様々な条件下での、CO酸化中の硝酸塩濃度を示す、赤外線スペクトルである。
図20】様々な条件下での、NO酸化中の硝酸塩濃度を示す、赤外線スペクトルである。
図21】水素の不在および存在での、NO変換のためのメカニズムの略画である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
本発明は、内燃機関の排気ガス流中の還元剤としての、車載型水素発生、貯蔵、および使用する方法を目的とする。発生した水素は、特にコールドスタート期間中、排気ガス流中でのCOおよび/またはHCの酸化および/またはNO/NO形成を助ける働きをしてもよい。水素還元剤は、例えば、貴金属、例えばディーゼル酸化触媒(DOC)中に存在する貴金属を再生するのに適している。さらに、水素還元剤は、低温酸化に必要な分子状酸素を貴金属が解離するのを阻害する硝酸塩形成を、最小限に抑えてもよい。
【0084】
定義
本明細書の冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、文法上の目的語の1つまたは1つよりも多く(例えば、少なくとも1つ)を指す。本明細書で引用される任意の範囲は、包括的である。全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を記述し説明するのに使用される。例えば、「約」は、数値が±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、または±0.05%により修飾され得るのを意味してもよい。全ての数値は、明示されてもされていなくても、「約」という用語によって修飾される。「約」という用語によって修飾される数値は、特定の明らかにされた値を含む。例えば「約5.0」は、5.0を含む。範囲が本明細書で開示される場合、下端点および上端点の各組合せは、本発明の実施形態として企図される範囲を明確に定める。
【0085】
本発明は、内燃機関の排気ガス流中で還元剤として使用される車載型水素発生のためのシステム、物品、および方法を対象とする。本発明は、アンモニアからの搭載型水素発生のためのシステム、物品、方法も目的とする。本発明のシステムは、1個または複数の「機能的物品」または単に「物品」を含む。機能的物品は、1つまたは複数のある特定の機能的要素、例えばリザーバー、チュービング、ポンプ、弁、バッテリー、回路、メーター、ノズル、反応器、フィルター、漏斗、および同様のものを含む。システムは一体化され、即ち、相互接続された物品および/または要素を有する。
【0086】
「関連付けられた」という用語は、例えば「が備えられた」、「に接続された」、または「と連通」している、例えば「電気的に接続された」または「と流体連通」している、または別に機能を発揮させる手法で接続されたことを意味する。「関連付けられた」という用語は、例えば1個または複数の他の物品または要素を通して、直接関連付けられたまたは間接的に関連付けられたことを意味してもよい。「関連付けられた」という用語は、例えば、「が備えられた」、「に接続された」、または「と連通」している、例えば「電気的に接続された」または「と流体連通」している、そうでない場合には機能を発揮するような手法で接続されたことを意味する。「関連付けられた」という用語は、1つまたは複数の他の物品または要素によって、直接関連付けられたまたは間接的に関連付けられたことを意味し得る。
【0087】
「触媒」という用語は、化学反応を促進させる材料を指す。触媒は、「触媒活性種」と、活性種を担持しまたは支持する「担体」とを含む。例えばゼオライトを含むモレキュラーシーブは、銅活性触媒種用の担体/支持体である。同様に、耐火金属酸化物粒子は、白金族元素触媒種用の担体であってもよい。
【0088】
触媒活性種は、化学反応を促進させるので「促進剤」とも呼ばれる。例えば、本発明の銅または鉄含有モレキュラーシーブは、銅または鉄促進型モレキュラーシーブと呼んでもよい。「促進型モレキュラーシーブ」は、触媒活性種が意図的に添加されたモレキュラーシーブを指す。
【0089】
本発明における「触媒物品」という用語は、触媒コーティング組成物を有する基材を含む物品を意味する。
【0090】
本記述および特許請求の範囲で使用される「構成された」という用語は、「含む」または「含有する」という用語と同様に、非限定的な用語であるものとする。「構成された」という用語は、他の可能性ある物品または要素を排除することを意味しない。「構成された」という用語は、「適応された」と等しくてもよい。
【0091】
一般に、「有効な」という用語は、定義された触媒活性または貯蔵/放出活性に関して、質量でまたはモル数で、例えば約35%から100%有効であり、例えば約40%、約45%、約50%、または約55%から、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%有効であることを意味する。
【0092】
「排気流」または「排気ガス流」という用語は、固体または液体粒状物質を含有し得る、流動するガスの任意の組合せを指す。流れは、気状成分を含み、例えば希薄燃焼エンジンの排気であり、液滴、固体微粒子、および同様のものなどの、ある特定の非気状成分を含有し得る。希薄燃焼エンジンの排気流は、一般に、燃焼生成物、不完全燃焼の生成物、窒素の酸化物、可燃性および/または炭素質粒状物質(煤)、ならびに未反応の酸素および/または窒素をさらに含む。
【0093】
本発明における「機能的物品」という用語は、特に触媒および/または収着剤コーティング組成物が表面に配置された機能的コーティング組成物を有する基材を含む物品を意味する。
【0094】
「白金族元素成分」は、白金族元素またはそれらの酸化物の1種を指す。「希土類金属成分」は、ランタン、セリウム、プラセオジム、およびネオジムを含む、元素の周期表で定義されたランタン系列の1種または複数の酸化物を指す。
【0095】
本明細書で使用される「促進された」という用語は、モレキュラーシーブに固有の不純物とは対照的に、典型的にはイオン交換を通して、モレキュラーシーブ材料に意図的に添加された成分を指す。アンモニアの存在下で酸化窒素の選択的触媒還元を促進するため、1つまたは複数の実施形態では、適切な金属を独立してモレキュラーシーブに交換する。1つまたは複数の実施形態によれば、モレキュラーシーブは銅(Cu)および/または鉄(Fe)で促進されるが、マンガン、コバルト、ニッケル、セリウム、白金、パラジウム、ロジウム、またはこれらの組合せなどの他の触媒材料を、本発明から逸脱することなく使用することができる。促進剤の金属の典型的な量は、SCR触媒材料の約0.5から約15質量%含む。
【0096】
本明細書で使用される「選択的触媒還元」(SCR)という用語は、窒素性還元剤を使用して窒素の酸化物を二窒素(N)に還元する触媒プロセスを指す。本明細書で使用される「酸化窒素」または「NO」という用語は、窒素の酸化物を指定する。
【0097】
「収着剤」という用語は、所望の物質、本発明ではNOおよび/またはCOおよび/またはHCおよび/またはNHを吸着および/または吸収する材料を指す。収着剤は、有利には、ある特定の温度で物質を吸着および/または吸収(貯蔵)し、より高い温度で物質を脱着(放出)する。
【0098】
本明細書で使用される「基材」という用語は、典型的にはウォッシュコートの形態の、触媒組成物、即ち触媒コーティングが表面に配置された、モノリシック材料を指す。1つまたは複数の実施形態では、基材は、流通モノリスおよびモノリシック壁流フィルターである。ウォッシュコートは、液体中に触媒の指定された固形分含量(例えば、30~90質量%)を含有するスラリーを製造し、次いでこれを基材上にコーティングし、乾燥してウォッシュコートを得ることにより、形成される。
【0099】
本明細書で使用される「ウォッシュコート」という用語は、処理されるガス流を通過させるのに十分に多孔質であるハニカム型担体部材などの基材材料に付着される、触媒または他の材料の、薄い接着コーティングの技術分野におけるその通常の意味を有する。本発明の金属促進型モレキュラーシーブを含有するウォッシュコートは、任意に、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、またはこれらの組合せから選択される結合剤を含むことができる。結合剤の負荷量は、ウォッシュコートの質量に対して約0.1から10質量%である。
【0100】
「車両」という用語は、例えば、内燃機関を有する任意の車両を意味し、例えば、乗用車、スポーツ用多目的車、ミニバン、バン、トラック、バス、ゴミ運搬車、貨物輸送トラック、建設車両、重機、軍用車両、農耕用作業車、および同様のものを含む。
【0101】
他に示さない限り、全ての部およびパーセンテージは質量による。「質量パーセント(wt.%)」は、他に示されない限り、いかなる揮発性物質も含まない全組成物に対し、即ち乾燥固形分含量に対するものである。
【0102】
次に本発明について、以下、より十分に記述する。しかし本発明は、多くの異なる形態に具体化されてもよく、本明細書に記述される実施形態を限定するものと解釈されるべきではなく;むしろこれらの実施形態は、本開示が十分および完全になるように、および本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように、提供される。
【0103】
水素発生システム
本発明のシステムおよび方法は、車載型水素発生を含んでいてもよく、したがってシステムは、水素発生システムと一体化されてもよい。水素は、水またはアンモニアから、搭載状態で発生されてもよい。あるいは、水素は、気状、液体、または固体状態で車両の外で貯蔵され、必要に応じて搭載状態に運ばれ、配置され、補充されてもよい。発生した水素は、有利には、内燃機関の排気ガス流中に噴射されてもよく、そこで、ある特定の触媒プロセスおよび/または触媒再生プロセスにおける還元剤として適切に機能することになる。触媒プロセスは、汚染物質を除去するためのSCR触媒による下流での還元に向けて、COおよび/またはHCの酸化および/またはNO/NOの形成を含む。
【0104】
水素は、水素貯蔵物品に貯蔵されてもよく、例えばガス貯蔵タンクまたはリザーバーに貯蔵されてもよい。水素は、気状、液体、または固体状態で貯蔵されてもよい。水素は、例えば固体状態で、例えばケイ素または水素貯蔵合金に貯蔵されてもよい。固体状態の水素の貯蔵は、例えば、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国公開第2004/0241507号、第2008/0003470号、第2008/0274873号、第2010/0024542号、および第2011/0236790号に教示されている。水素貯蔵合金は、水素を可逆的に貯蔵し、例えば、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,407,761号および第6,193,929号、ならびに米国付与前公開第2016/0230255号に開示されている。水素貯蔵合金は、例えば、修飾されたAB型金属水素化物(MH)合金であり、一般にAは、水素化物形成元素であり、Bは弱いまたは非水素化物形成元素である。Aは一般に、4個以下の価電子を持つ、より大きい金属原子であり、Bは一般に、5個以上の価電子を持つ、より小さい金属原子である。適切なAB合金は、xが約0.5から約5であるものを含む。本発明の合金は、水素を可逆的に吸収(充電)し脱着(放電)することが可能である。AB型合金は、例えば、範疇(単純な例で)、AB(HfNi、TiFe、TiNi)、AB(ZrMn、TiFe)、AB(HfFe、MgNi)、AB(NdCo、GdFe)、A(PrNi、CeCo)、およびAB(LaNi、CeNi)のものである。
【0105】
水素発生システムは、水分解機能物品(水分解物品)を含んでいてもよい。水分解物品は、電気化学反応を介して水を水素および酸素に分解するように構成された電解槽を含んでいてもよい。例えば、水分解物品は、電気化学反応を開始するように構成された光電極を含んでいてもよい。光電極は、光源に関連付けられる。有利には、光源は、発光ダイオード(LED)であり、例えば青色発光ダイオードである。光源は、有利にはバッテリーに関連付けられる。バッテリーは、例えば、主再充電可能車両バッテリーである。
【0106】
水素発生用デバイスは、例えば、参照によりそのそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる米国付与前公開第2007/0246351号および第2008/0257751号に開示されている。
【0107】
水の供給源は、有利には大気水であってもよい。例えば、水の供給源は、エアコン用凝縮器によって凝縮された大気水であってもよい。そのような水は、通常なら、車道または駐車場で失われる。したがって本発明のシステムは、水を収集および/または貯蔵するように構成された物品(水収集物品)を含んでいてもよい。水収集物品は、エアコンに関連付けられてもよい。水収集物品は、フィルターに関連付けられてもよい。水の供給源は、例えばボトルに入った水であってもよい。
【0108】
水は、水蒸気の形態で水分解物品に供給されてもよい。水は、内燃機関によって発生した、捕捉された熱を介して、水蒸気に加熱されてもよい。したがってシステムは、水を水蒸気に変換するように構成された加熱物品を含んでいてもよい。加熱物品は、内燃機関または排気ガス流に関連付けられてもよい。
【0109】
発生した水素は、水素収集物品を介して収集されてもよい。例えば、水素収集物品は、水素分離膜を含んでいてもよい。水素分離膜は、パラジウムまたはパラジウム合金を含んでいてもよく、例えば厚さ≦1.0mmであってもよい。水素分離膜は、例えばポリマー、シリカ、セラミックまたは多孔質炭素を含んでいてもよい。例えば、膜は厚さ≦0.1mmであり、例えば膜は、約0.001mmから、約0.01から、または約0.1mmの厚さから、約0.2、約0.5、または約1mmの厚さである。膜は、例えば約1mmの厚さの、穿孔されたステンレス鋼板で支持されてもよい。あるいは、膜は、多孔質セラミックチューブまたは棒に支持されてもよい。膜は、水素の流れおよび酸素からの分離を最大限にするために、加熱要素、例えば電気加熱要素に関連付けられてもよい。
【0110】
水素発生システムは、アンモニアを窒素および水素に分解するように構成された触媒物品(「触媒反応器」)を含んでいてもよい(アンモニア分解物品)。
【0111】
アンモニアの供給源は、本発明の搭載型アンモニアリザーバーからであってもよく、または例えば気状もしくは液体アンモニアを含有するよう適合された(必要に応じてアンモニアを放出するよう適合された)タンク内に持ち込まれたアンモニアからであってもよい。例えば、システムは、アンモニアを含有しかつアンモニアを放出するよう適合されたタンク(アンモニア貯蔵タンク)と、アンモニアを水素および窒素に分解するように構成された触媒反応器とを含んでいてもよい。
【0112】
例えば、システムは、アンモニア発生システムと、アンモニアを水素および窒素に分解するように構成された触媒反応器とを含んでいてもよい。アンモニア発生システムは、他の排出制御システム構成要素の近傍に取り付けることができる(例えば、車両上に)、アンモニア/有機溶媒溶液を含有するリザーバーを含んでいてもよい。アンモニア/有機溶媒溶液は、一部の実施形態では、気状アンモニアを容易に遊離する。有利には、アンモニア/有機溶媒溶液中の有機溶媒は、アルカノールおよび/またはグリコール、例えばエタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、これらの異性体、およびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含む。ある特定の実施形態では、有機溶媒は、n-ブタノールおよび/またはエチレングリコールを含む。
【0113】
アンモニアおよび/または有機溶媒溶液は、例えば、アンモニア/有機溶媒溶液の質量に対して約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、または約13%から、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、または約70質量%のアンモニアを含んでいてもよい。これらの濃度は、25℃および圧力1atmの周囲条件でのものである。
【0114】
一部の実施形態では、アンモニア発生システムは、アンモニア/有機溶媒溶液を含有するリザーバーと、アンモニアを溶液から単離するように構成された相分離器とを含む。相分離器は、蒸留カラムに類似の手法で動作してもよく、低沸点アンモニアガスを高沸点有機溶媒から単離するように構成される。相分離器は、熱交換器と熱連通していてもよい。本開示の文脈において、「熱連通している」2つの物体は、2つの物体のうちの一方からの熱を使用して、他方の物体で触媒反応を駆動するまたは他方の物体からガスを脱着させてもよいことを意味する。このように熱は、相分離器に印可されてもよい。印可される熱は、例えば、約50℃または約60℃から約70℃であってもよく、熱の供給源は、例えば、動作中にエンジンから発生した廃熱であってもよく、または熱は、電気的に印可されてもよい。
【0115】
システムはさらに、例えば単にアンモニアガスを保持するのに適切なタンクであってもよい、単離されたアンモニアを貯蔵するように構成されたアンモニア貯蔵容器を含んでいてもよい。容器は、アンモニアを触媒で水素および窒素に分解するように構成された触媒反応器に関連付けられてもよい。
【0116】
アンモニア発生システムは、有利には、アンモニア/有機溶媒溶液を含有するリザーバーと、アンモニアを溶液から単離するように構成された相分離器と、アンモニア貯蔵容器と、アンモニア噴射物品とを含んでいてもよい。システムは、互いに関連付けられた物品および要素に一体化される。
【0117】
例示的なアンモニア発生システム100を、図1Aに示す。リザーバー101は、アンモニア/有機溶媒溶液を含有するように構成される。アンモニアは、アンモニアをアンモニア/有機溶媒溶液から単離するように構成された相分離器102に導かれる。単離されたアンモニアは、アンモニア貯蔵容器103に導かれてもよい。1個または複数の物品は、熱交換器、例えばリザーバー101および/または相分離器102に関連付けられてもよく、熱交換器は、エンジンからの廃熱に関連付けられてもよい。
【0118】
水素発生システムは、一部の実施形態では、上述のアンモニア発生システムの物品および要素を含んでいてもよい。触媒反応器を、「アンモニア分解物品」と呼んでもよい。
【0119】
水素発生システムは、リザーバーとおよび触媒反応器と一体化された、相分離器および/またはアンモニア貯蔵容器を含んでいてもよい。
【0120】
触媒反応器は、その内面におよび/または反応器の容積内に存在し得る高表面積支持体上に配置された、アンモニア分解触媒を含んでいてもよい。触媒反応器は、内燃機関から発生した廃熱を触媒に提供するように(触媒を加熱するために)構成された熱交換器を含んでいてもよい。アンモニア分解触媒は、固定量のアンモニアおよび空気の燃焼を通して加熱されてもよい。
【0121】
例えば、触媒反応器は、その内面上におよび/またはその容積内に存在する高表面積支持体上に配置された、アンモニア分解触媒を含むコーティング組成物を含有していてもよい。触媒反応器は、有利には熱交換器に関連付けられてもよく、例えばこの熱交換器は、内燃機関に関連付けられ、エンジンからの廃熱を反応器に提供して分解触媒を加熱するように適合されてもよい。あるいは分解触媒は、固定量のアンモニアおよび空気の燃焼を通して、所望する場合に加熱されてもよい。
【0122】
例示的な搭載型水素発生システムは、図1Bに示されるように、アンモニアの触媒分解を介して水素を発生させるように構成され、アンモニアを水素および窒素に分解するように構成された触媒反応器を含む。システム200では、アンモニアは、触媒反応器105に導かれてもよい。一実施形態では、アンモニアは、アンモニアを水素および窒素に分解するように構成された触媒反応器105に導かれてもよい。触媒反応器105は、その内面におよび/または反応器容積内に存在する高表面積支持体上に配置された、アンモニア分解触媒を含有していてもよい。触媒反応器105は、水素分離膜106を含んでいてもよく、この膜は、膜の外面に配置されたアンモニア分解触媒を含む触媒コーティング組成物を含んでいてもよい。膜は、アンモニアが、分解触媒を含有する外面に接触するように構成される。アンモニア分解触媒は、例えばシリカ上に貴金属を含み、例えば担持ルテニウムである。1個または複数の物品は、熱交換器、例えば触媒反応器105に関連付けられてもよく、熱交換器は、エンジンからの廃熱に関連付けられてもよい。任意の必要な逆止め弁、水素噴射器も、窒素ベント弁も図示していない。
【0123】
アンモニア分解触媒は、例えば、シリカ上に貴金属を含み、例えば担持ルテニウムを含む。水素分離膜は、パラジウムまたはパラジウム合金を含んでいてもよく、例えば≦1.0mmの厚さであってもよい。水素分離膜は、例えばポリマー、シリカ、セラミック、または多孔質炭素を含んでいてもよい。例えば膜は≦0.1mmの厚さであり、例えば膜は約0.001mmから、約0.01から、または約0.1mmの厚さから、約0.2、約0.5、または約1mmの厚さである。膜は、例えば約1mmの厚さの穿孔されたステンレス鋼板で支持されていてもよい。あるいは、膜は多孔質セラミックチューブまたは棒で支持されていてもよい。膜は、水素の流れおよび酸素からの分離を最大限にするために、加熱要素、例えば電気加熱要素に関連付けられていてもよい。
【0124】
触媒反応器は、上述の水素分離膜を含んでいてもよい。反応器は、反応器の内部空間および膜の外側に配置されたアンモニア分解触媒を含む触媒コーティング組成物を含んでいてもよい。膜は、アンモニアが分解触媒の表面に接触するように構成される。
【0125】
水分解または触媒アンモニア分解を介して発生した水素は、上述の搭載された水素貯蔵物品に貯蔵されてもよい。
【0126】
水素発生物品は、有利には、内燃機関の排気ガス流中に水素を導入するように構成された水素噴射物品を含有することになり、ある特定の触媒プロセスおよび/または触媒再生プロセスにおける還元剤として適切に機能することになる。水素噴射物品は、酸化触媒と流体連通していてもよく、酸化触媒、例えばディーゼル酸化触媒(DOC)の上流で水素を導入するように構成されていてもよい。水素噴射物品は、典型的には、内燃機関の下流になり、流体連通することになる。
【0127】
排出制御システムで使用される、アンモニアから水素を発生させるための、本開示による例示的なシステム300を、図1Cに概略的に示す。一実施形態では、システム300は、図1Bに示されおよび本明細書に上述されたような水素発生システム200を組み込む。一実施形態では、アンモニアは、アンモニアを水素および窒素に分解するように構成された触媒反応器105に導かれてもよい。触媒反応器105は、水素分離膜106を含んでいてもよく、この膜は、水素をアンモニア-水素混合物から分離することができる。アンモニア分解触媒は、例えばシリカ上の貴金属を含み、例えば担持ルテニウムを含む。
【0128】
触媒反応器は、発生した窒素を放出するようにベントされてもよい。膜は、水素を単離する働きをしてもよく、この水素は水素貯蔵物品107に導かれてもよい。単離された水素は、DOC物品108に導かれてもよく、例えば、DOC物品の上流に導入されてもよい。1個または複数の物品は、熱交換器、例えば触媒反応器105に関連付けられてもよく、熱交換器は、エンジンからの廃熱に関連付けられてもよい。任意の必要な逆止め弁、水素噴射器、アンモニア噴射器も、窒素ベント弁も図示されていない。
【0129】
一部の実施形態では、システム100を含むシステムが提供され、一部の実施形態では、システム200を含むシステムが提供され、一部の実施形態では、システム100およびシステム200の両方を含むシステムが提供され、一部の実施形態では、システム100、システム200、およびシステム300を含むシステムが提供される。
【0130】
本発明のシステムは、1個または複数の水素噴射物品、例えば排気ガス流が水素貯蔵物品に進入しないように構成され、および排気ガス流中に水素を導入するように構成された弁を、適切に含有していてもよい。水素は、有利には、排気ガス流中に「パルス送出され」または断続的に放出されて、所望の還元機能を要求に応じて(オンデマンド)で行うことになる。
【0131】
システムは、例えばSCR機能に関する尿素噴射のように、有利にはエンジン電子管理アルゴリズム(電子管理システム)に一体化されてもよい。
【0132】
酸化触媒組成物
DOC物品などの酸化触媒は、例えば、排気ガスのNOおよび/またはCOおよび/またはHC成分を酸化するのに適している。適切な酸化触媒は、有利には、耐火金属酸化物支持体上に分散された白金族金属(PGM)を含む。
【0133】
アルミナなどの耐火金属酸化物支持体上に分散された白金族元素(PGM)などの貴金属を含む酸化触媒は、これらの汚染物質の酸化を触媒することによって炭化水素および一酸化炭素ガス汚染物質を二酸化炭素および水に変換するために、ディーゼルエンジンの排気を処理するのに使用されることが公知である。そのような触媒は、DOC中に一般に含有されており、これは大気へとベントされる前に排気が処理されるよう、ディーゼル発電システムからの排気流路中に配置されている。典型的には、ディーゼル酸化触媒は、セラミックまたは金属基材上に形成され、その表面に1種または複数の触媒コーティング組成物が堆積される。
【0134】
表面に触媒活性PGMが堆積される支持体材料は、例えば、ガソリンまたはディーゼルエンジン排気に関連した温度などの高温で化学的および物理的安定性を示す、耐火金属酸化物を含む。例示的な金属酸化物には、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、プラセオジミア(praseodymia)、酸化スズ、および同様のもの、ならびにこれらの物理的混合物または化学的組合せが含まれ、それらには原子ドープされた組合せが含まれ、高表面積または活性化化合物、例えば活性化アルミナが含まれる。
【0135】
シリカ-アルミナ、セリア-ジルコニア、プラセオジミア-セリア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-セリア-ジルコニア、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミア-アルミナ、およびアルミナ-セリアなどの、金属酸化物の組合せが含まれる。例示的なアルミナには、大細孔ベーマイト、ガンマ-アルミナ、およびデルタ/シータアルミナが含まれる。例示的なプロセスにおいて出発材料として使用される有用な商用のアルミナには、活性化アルミナ、例えば高嵩密度ガンマ-アルミナ、低または中嵩密度大細孔ガンマ-アルミナ、ならびに低嵩密度大細孔ベーマイトおよびガンマ-アルミナが含まれる。
【0136】
「ガンマアルミナ」または「活性化アルミナ」とも呼ばれるアルミナ支持体材料などの高表面積金属酸化物支持体は、典型的には、60m/gを超える、しばしば最大約200m/gまたはそれよりも広いBET表面積を示す。例示的な耐火金属酸化物は、約50から約300m/gの比表面積を有する高表面積γ-アルミナを含む。そのような活性化アルミナは、通常、アルミナのガンマおよびデルタ相の混合物であるが、かなりの量のイータ、カッパ、およびシータアルミナ相を含有していてもよい。「BET表面積」は、N吸着によって表面積を決定するためのBrunauer、Emmett、Teller法を指す、その通常の意味を有する。活性アルミナは、約60から約350m/g、例えば約90から約250m/gの比表面積を有することが望ましい。
【0137】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される触媒組成物で有用な金属酸化物支持体は、ドープされたアルミナ材料、例えばSiドープアルミナ材料(限定するものではないが1~10%のSiO-Alを含む)、ドープされたチタニア材料、例えばSiドープチタニア材料(限定するものではないが1~10%のSiO-TiOを含む)、またはドープされたジルコニア材料、例えばSiドープZrO(限定するものではないが5~30%のSiO-ZrOを含む)である。
【0138】
有利には、耐火金属酸化物には、酸化ランタン、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、またはこれらの組合せなど、1種または複数の追加の塩基性金属酸化物がドープされてもよい。金属酸化物ドーパントは、典型的には、触媒組成物の質量に対して約1から約20質量%の量で存在する。ドーパント酸化物材料は、耐火金属酸化物支持体の高温安定性、またはNO、SO、もしくはSOなどの酸性ガス用の収着剤としての機能を改善する働きをしてもよい。
【0139】
ドーパント金属酸化物は、初期湿潤含浸技法を使用して、またはコロイド状混合酸化物粒子を添加することによって、導入することができる。好ましい、ドープされた金属酸化物には、バリア-アルミナ、バリア-ジルコニア、バリア-チタニア、バリア-ジルコニア-アルミナ、ランタナ-ジルコニア、および同様もものが含まれる。
【0140】
したがって、触媒組成物中の耐火金属酸化物または耐火混合金属酸化物は、典型的には、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリア、例えばバルクセリア、酸化マンガン、ジルコニア-アルミナ、セリア-ジルコニア、セリア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、バリア-アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、およびこれらの組合せからなる群から選択される。塩基性金属酸化物によるさらなるドーピングは、バリア-アルミナ、バリア-ジルコニア、バリア-チタニア、バリア-ジルコニア-アルミナ、ランタナ-ジルコニア、および同様のものを含むがこれらに限定されない追加の有用な耐火酸化物支持体を提供する。
【0141】
酸化触媒組成物は、上述の耐火金属酸化物のいずれかを、任意の量で含んでいてもよい。例えば、触媒組成物中の耐火金属酸化物は、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、または少なくとも約35質量%(質量パーセント)のアルミナを含んでいてもよく、この質量%は触媒組成物の総乾燥質量に対する。触媒組成物は、例えば、約10から約99質量%のアルミナ、約15から約95質量%のアルミナ、または約20から約85質量%のアルミナを含んでいてもよい。酸化触媒組成物は、例えば、触媒組成物の質量に対して、約15質量%、約20質量%、約25質量%、約30質量%、または約35質量%から、約50質量%、約55質量%、約60質量%、約65質量%、または約70質量%のアルミナを含む。有利には、酸化触媒組成物は、セリア、アルミナ、およびジルコニアを含んでいてもよく、またはこれらのドープされた組成物であってもよい。
【0142】
触媒組成物は、結合剤、例えば酢酸ジルコニルなどの適切な前駆体または硝酸ジルコニルなどの任意の他の適切なジルコニウム前駆体から誘導された、ZrO結合剤を使用して、製造されてもよい。酢酸ジルコニル結合剤は、熱老化後、例えば触媒が少なくとも約600℃の高温に、例えば約800℃およびそれよりも高い温度、および約5%以上の水蒸気環境に曝された場合、均質で無傷のままのコーティングを提供する。他の潜在的に適切な結合剤には、限定するものではないがアルミナおよびシリカが含まれる。アルミナ結合剤は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびオキシ水酸化アルミニウムを含む。アルミニウム塩、およびアルミナのコロイド状形態を、使用してもよい。シリカ結合剤は、シリケートおよびコロイド状シリカを含む様々な形態のSiOを含む。結合剤組成物は、ジルコニア、アルミナ、およびシリカの任意の組合せを含んでいてもよい。
【0143】
基材上にコーティングされた酸化触媒組成物は、PGM成分を、乾燥組成物の質量に対して約0.1質量%(質量パーセント)、約0.5質量%、約1.0質量%、約1.5質量%、または約2.0質量%から、約3質量%、約5質量%、約7質量%、約9質量%、約10質量%、約12質量%、約15質量%、約16質量%、約17質量%、約18質量%、約19質量パーセント、または約20質量%含んでいてもよい。
【0144】
酸化触媒組成物のPGM成分は、例えば、基材の体積に対して約5g/ft、10g/ft、約15g/ft、約20g/ft、約40g/ft、または約50g/ftから、約70g/ft、約90g/ft、約100g/ft、約120g/ft、約130g/ft、約140g/ft、約150g/ft、約160g/ft、約170g/ft、約180g/ft、約190g/ft、約200g/ft、約210g/ft、約220g/ft、約230g/ft、約240g/ft、または約250g/ftで存在する。
【0145】
酸化触媒組成物は、耐火金属酸化物支持体および触媒活性金属に加え、ランタン、バリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、ハフニウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、マンガン、鉄、クロム、スズ、亜鉛、ニッケル、コバルト、または銅の酸化物のいずれか1種または組合せをさらに含んでいてもよい。
【0146】
基材
1つまたは複数の実施形態では、本明細書に開示される酸化触媒組成物は、触媒物品が形成されるように基材上に配置される。触媒物品用の本発明の基材は、円筒形に類似した、長さおよび直径および体積を有する三次元である。形状は、必ずしも円筒形に順応する必要はない。長さは、入口端および出口端によって定められた軸長である。直径は、最大断面長であり、例えば、形状が円筒形に正確に順応しない場合の最大断面である。
【0147】
本明細書に開示される触媒物品用の任意の適切な基材、例えば、内部を通る流体流に通路が開放するように、その内部を基材の入口または出口面からそこを通って延びる、微細な平行ガス流路を有するタイプのモノリス基材(「流通モノリス」)を用いてもよい。別の適切な基材は、基材の縦軸に沿って延びる、複数の微細な、実質的に平行なガス流路を有するタイプのものであり、典型的には、各通路は基材本体の一端で遮断され、交互に配された通路は反対側の端面(「壁流フィルター」)が遮断されている。流通基材および壁流フィルターについて、本明細書では以下にさらに論じる。
【0148】
1つまたは複数の実施形態では、基材は、ハニカム構造を有するセラミックまたは金属である。セラミック基材は、任意の適切な耐火材料、例えばコージエライト、コージエライト-α-アルミナ、チタン酸アルミニウム、チタン酸ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、アルミノシリケート、および同様のもので作製されてもよい。
【0149】
基材は、1種または複数の金属または金属合金を含む、金属性であってもよい。金属性基材は、ペレット、波形板、またはモノリシックフォームなどの様々な形状で用いられてもよい。金属基材の特定の例には、耐熱性の卑金属合金、特に鉄が実質的なまたは主要な成分であるものが含まれる。そのような合金は、ニッケル、クロム、およびアルミニウムの1種または複数を含有していてもよく、これらの金属の全体は、有利には合金の少なくとも約15質量%(質量パーセント)を構成してもよく、例えば約10から約25質量%のクロム、約1から約8質量%のアルミニウム、および0から約20質量%のニッケルを含む。
【0150】
金属性基材の例には、真っ直ぐなチャネルを有するもの;軸方向のチャネルに沿って突出する羽根を有することにより、ガス流を乱しかつチャネル間のガス流の連通を開始するもの;ならびに羽根、および穴を有することにより、チャネル間のガス輸送を増強して、モノリス全体を通した半径方向のガス輸送を可能にするものが含まれる。
【0151】
流通モノリス基材
流通モノリス基材は、基材の入口端から出口端に延びる、微細な平行ガス流路を有し、通路は流体流に対して開かれるようになされている。それらの流体入口からそれらの流体出口まで本質的に真っ直ぐな経路である流路は、触媒コーティングが配置されている壁によって定められ、したがって通路内を流れるガスは、触媒材料に接触するようになされている。モノリシック基材の流路は薄壁チャネルであり、任意の適切な断面形状およびサイズのもの、例えば台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、楕円形、円形などとすることができる。流通モノリスは、上述のようにセラミックまたは金属性である。
【0152】
例えば流通モノリス基材は、約50inから約1200inの体積、平方インチ当たり約60セル(cpsi)から約500cpsi、または最大約900cpsi、例えば約200から約400cpsiのセル密度(入口開口)、および約50から約200ミクロンまたは約400ミクロンの壁厚を有する。
【0153】
1つまたは複数の実施形態では、基材は、ウォッシュコートとして触媒材料が付着される、流通ハニカムモノリスまたは微粒子フィルターの1種または複数から選択される。図2Aおよび2Bは、本明細書に記述される触媒組成物でコーティングされた流通基材の形態の、例示的な基材2を示す。図2Aを参照すると、例示的な基材2は、円筒形状を有し、円筒状外面4、上流端面6、および端面6と同一の、対応する下流端面8を有する。基材2は、その内部に形成された複数の微細な平行ガス流路10を有する。図2Bに見られるように、流路10は、壁12によって形成され、担体2内を上流端面6から下流端面8まで延び、流路10は、流体の流れ、例えばガス流がそのガス流路10を介して担体2内を縦方向に流れるように、遮られていない。図2Bでより容易にわかるように、壁12は、そのように寸法決めされ構成されているので、ガス流路10は実質的に正多角形を有する。図示されるように、触媒組成物は、望みに応じて多数の異なる層として付着させることができる。例示される実施形態では、触媒組成物は、担体部材の壁12に接着された個別の底層14と、底層14上にコーティングされた第2の個別の上層16との両方からなる。本発明は、1層または複数(例えば、2、3、または4層)の触媒層で実施することができ、図2Bに例示される2層の実施形態に限定されない。さらなるコーティング構成を、本明細書で以下に開示する。
【0154】
モノリス壁流フィルター基材
触媒コーティングを支持するのに有用な壁流フィルター基材は、基材の縦軸に沿って延びる複数の微細な、実質的に平行なガス流路を有する。典型的には、各流路は基材本体の一端で遮断され、代替の流路は反対側の端面が遮断されている。そのようなモノリス担体は、断面の平方インチ当たり最大で約900本以上の流路(または「セル」)を含有してもよいが、はるかに少ないものを使用してもよい。例えば基材は、平方インチ当たり約7から600、より通常では約100から400セル(「cpsi」)を有していてもよい。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形である、または他の多角形状のものである断面を有することができる。
【0155】
壁流フィルターは、例えば約50cm、約100cm、約200cm、約300cm、約400cm、約500cm、約600cm、約700cm、約800cm、約900cm、または約1000cmから、約1500cm、約2000cm、約2500cm、約3000cm、約3500cm、約4000cm、約4500cm、または約5000cmの体積を有していてもよい。
【0156】
壁流基材は、典型的には、約50ミクロンから約2000ミクロンの、例えば約50ミクロンから約450ミクロンの、または150ミクロンから約400ミクロンの壁厚を有する。
【0157】
壁流フィルターの壁は、多孔質であり、一般に、少なくとも約50%または少なくとも約60%の壁多孔度を有し、その平均孔径は、機能性コーティングを配置前に少なくとも約5ミクロンである。例えば、壁流フィルターは、≧50%、≧60%、≧65%、または≧70%の多孔度を有することになる。例えば、壁流フィルターは、約50%、約60%、約65%、または約70%から、約75%、約80%、または約85%の壁多孔度と、約5ミクロン、約10、約20、約30、約40、または約50ミクロンから、約60ミクロン、約70、約80、約90、または約100ミクロンの平均孔径を、触媒コーティングの配置前に有する。「壁多孔度」および「基材多孔度」という用語は、同じことを意味し、同義である。多孔度は、空隙体積を基材の総体積で割った比である。孔径は、窒素孔径分析用のISO15901-2(静的容量)手順に従い決定されてもよい。窒素孔径は、マイクロメーターTRISTAR 3000シリーズの機器上で決定されてもよい。窒素孔径は、BJH(Barrett-Joyner-Halenda)計算および33脱着点を使用して決定されてもよい。有用な壁流フィルターは、高多孔度を有し、動作中の過剰な背圧なしに触媒組成物の高負荷量を可能にする。
【0158】
壁流フィルターセクションの断面図を図3に示すが、栓をされた通路と開放された通路(セル)とが交互に配された状態が示されている。遮断されまたは栓をされた端部400は、開放通路401と交互になっており、それぞれの反対側の端部は、それぞれ開放され遮断されている。フィルターは、入口端部402および出口端部403を有する。多孔質セル壁404と交差する矢印は、開放セル端部に進入し、多孔質セル壁404内を拡散し、開放出口セル端部から出て行く排気ガス流を表す。栓をされた端部400は、ガス流を妨げ、セル壁内の拡散を誘起させる。各セル壁は、入口側404aおよび出口側404bを有することになる。通路は、セル壁によって封じられる。図3における暗色四角形は、栓をされた端部400であり、白色四角形は、開放端部401である。
【0159】
有用な壁流フィルターは、典型的には、約1~約20、例えば約1.0、約2.0、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、または約5.5から、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、約9.0、約9.5、約10.0、約11.0、約12.0、約13.0、約14.0、約15.0、約16.0、約17.0、約18.0、約19.0、または約20.0のアスペクト比(長さ/直径またはL/D)を有する。アスペクト比は、フィルターの直径に対する長さの比を意味する。例えば壁流フィルターは、約3から約10のアスペクト比を有していてもよい。高アスペクト比は、壁流フィルターを、エンジンに近い密結合位置に適合させるようにする。このことは、触媒組成物の高速加熱を可能にし;排気ガスは、床下位置にある場合よりも速く、触媒組成物を動作(触媒)温度に加熱することになる。密結合位置は、例えば、排気マニホールトから約12インチ(in)以内である(即ち、個々のシリンダ排気管が一緒に接合する)。一部の実施形態では、排気マニホールドからDOCユニットの上流端までの距離は、約0.5inから約12インチである。一部の実施形態では、距離は、約0.5in、約1in、約2in、約3in、約4in、約5in、約6in、約7in、約8in、約9in、約10in、約11in、または約12inである。ある特定の実施形態では、金属基材は、特に密結合位置で有利に用いられ、高速加熱を可能にする。
【0160】
多孔質壁流フィルターは、基材の壁がその表面に1種または複数の材料を有するので、触媒することができる。触媒材料は、基材の壁の入口側のみ、出口側のみ、入口および出口の両方の側に存在していてもよく、または壁自体が、触媒材料の全てまたは一部を構成していてもよい。別の実施形態では、本発明は、1層または複数の触媒層、および1層または複数の触媒層の組合せを、基材の入口および/または出口の壁で使用する方法を含んでいてもよい。
【0161】
触媒された壁流フィルターは、例えば参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,229,597号に開示される。この参考文献は、コーティングが多孔質壁に浸透するように、即ち壁全体を通して分散されるように、触媒コーティングを付着させる方法を教示する。流通および壁流基材も、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際出願公開番号WO2016/070090に教示される。壁流基材上の触媒コーティングの負荷量は、多孔度および壁厚などの基材特性に依存することになり、典型的には流通基材上の触媒負荷量よりも低くなる。
【0162】
酸化触媒組成物コーティング
DOC物品の酸化触媒組成物を提供する触媒コーティングは、複数の薄い接着層を含んでいてもよく、これらの層は互いに接着しており、コーティングが基材に接着している。コーティング全体は、個々の「コーティング層」を含む。触媒コーティングは、有利には「ゾーン化」されてもよく、ゾーン化された触媒層を含む。これを「横方向にゾーン化」されたと記述してもよい。例えば、層は、入口端から出口端に向かって延びていてもよく、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%延びる。別の層は、出口端から入口端に向かって延びていてもよく、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%を延びる。種々のコーティング層は、互いに隣接していてもよく、互いに重ならなくてもよい。あるいは、種々の層は、互いの一部の上に重なり合っていてもよく、第3の「中間」ゾーンを提供する。中間ゾーンは、例えば基材の長さの約5%から約80%を延びてもよく、例えば基材の長さの約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、または約70%を延びてもよい。
【0163】
種々の層は、それぞれ、基材の全長を延びてもよく、またはそれぞれ基材の長さの一部を延びてもよく、互いの上にまたは下に、部分的または全体的のいずれかで重なってもよい。種々の層のそれぞれは、入口端または出口端のいずれかから延びてもよい。
【0164】
種々の触媒組成物は、個別のコーティング層のそれぞれに在ってもよい。例えば、1つのコーティング層は、いかなる任意の収着剤組成物もなしに、酸化触媒組成物を含むことができ、第2の層は、1種または複数の任意の収着剤組成物を含む(または、から全体がなる)ことができる。したがって、種々の層に関する考察は、これらの層のいずれかに該当し得る。触媒コーティングは、1、2、もしくは3層、またはそれよりも多くの層を含んでいてもよい。1層または複数のコーティング層は一緒に、3種の触媒組成物を含む。
【0165】
本開示のゾーンは、コーティング層の関係によって定められる。種々のコーティング層に関して、いくつかの可能性あるゾーン化構成がある。例えば、上流ゾーンおよび下流ゾーンがあってもよく、上流ゾーン、中間ゾーン、および下流ゾーンがあってもよく、4つの異なるゾーンがあってもよく、以下同様である。2層が隣接しかつ重なり合っていない場合、上流および下流ゾーンがある。2層が、ある程度まで重なり合う場合、上流、下流、および中間ゾーンがある。例えばコーティング層が基材の全長を延び、かつ異なるコーティング層が出口端からある長さを延びかつ第1のコーティング層の一部に重なる場合、上流および下流ゾーンがある。
【0166】
種々のコーティング層を、基材に直接接触させてもよい。あるいは、1つまたは複数の「アンダーコート」が存在してもよく、したがって1層の触媒コーティング層または複数の触媒コーティング層の少なくとも一部は基材に直接接触しなくなる(むしろアンダーコートに接触する)。1層または複数の「オーバーコート」が存在していてもよく、したがって1層または複数の機能性コーティング層の少なくとも一部は、気状流または大気に直接曝されなくなる(むしろオーバーコートに接触する)。
【0167】
種々のコーティング層は、「中間」重なりゾーンなしに、互いに直接接触してもよい。あるいは種々のコーティング層は、2つのゾーンの間に「隙間」を持たせて、直接接触させなくてもよい。「アンダーコート」または「オーバーコート」の場合、種々の層の間の隙間を「中間層」と呼ぶ。アンダーコートは、コーティング層の「下」にある層であり、オーバーコートは、コーティング層の「上」にある層であり、中間層は、2つのコーティング層の「間」にある層である。中間層、アンダーコート、およびオーバーコートは、1種もしくは複数の機能性組成物を含有していてもよく、または機能性組成物がなくてもよい。本発明の触媒コーティングは、複数の同一層を含んでいてもよい。
【0168】
一部の実施形態では、基材は、例えば2層のコーティング層、例えば本明細書に記述される1種の酸化触媒材料と、第2の触媒材料(酸化触媒材料とすることができる、または別のタイプの触媒材料とすることができる)とを有していてもよい。図4A、4B、および4Cは、2層のそのようなコーティング層を含有する基材に関する、いくつかの可能性あるコーティング層構成を示す。基材壁500が示されており、その上にはコーティング層501および502が配置されている。これは単純化した図であり、多孔質壁流基材の場合、細孔および細孔壁に接着しているコーティングは示されておらず、栓がされた端部も示されていない。図4Aにおいて、コーティング層501(例えば、酸化触媒材料)は、入口402から出口403まで、基材長の約50%を延び;コーティング層502(例えば、第2の触媒材料)は、出口から入口まで、基材長の約50%を延び、コーティング層は互いに隣接し、入口上流ゾーン503および出口下流ゾーン504を提供する。図4Bにおいて、コーティング層502(例えば、第2の触媒材料)は、出口から、基材の長さの約50%を延び、層501(例えば、酸化触媒材料)は、入口から、長さの50%を超えて延び、層502の一部に重なり、上流ゾーン503、中間ゾーン505、および下流ゾーン504を提供する。図4Cにおいて、コーティング層501および502はそれぞれ、基材の長さ全体を延び、層501は層502上に重なっている。図4Cの基材は、ゾーン化コーティング構成を含有しない。図4A、4B、および4Cは、例えば本明細書に記述される酸化触媒物品の、壁流または流通基材上のコーティング組成物を示すのに有用であってもよい。
【0169】
排気ガス処理システム
記述されるように、内燃機関の排気を処理するのに使用される触媒は、比較的低い温度動作の期間中、例えばエンジン動作の初期コールドスタート期間中はそれほど有効ではなく、それはエンジン排気が、排気中の有害成分を効率的に触媒変換するのに十分高い温度にないからである。したがって本発明の態様は、排気ガス処理システムおよび方法を対象とする。
【0170】
本発明の排気ガス処理システムおよび方法では、排気ガス流が、上流端に進入して下流端から出て行くことによって、触媒物品または処理システムに受け入れられる。基材の入口端は、「上流」端または「前」端と同義である。出口端は、「下流」端または「後」端と同義である。基材は、長さおよび直径を有することになる。処理システムは、一般に、内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している。
【0171】
本発明のシステムは、排気ガス流中に水素を導入するように構成された1個または複数の水素噴射物品を、適切に含有していてもよく、例えば噴射物品は、排気ガス流が水素貯蔵物品に進入しないように構成された弁を含む。水素発生物品は、内燃機関の排気ガス流中に水素を導入するように構成された水素噴射物品を、有利に含有することになり、そこではある特定の触媒プロセスおよび/または触媒再生プロセスにおける還元剤として適切に機能することになる。水素噴射物品は、酸化触媒と流体連通しており、酸化触媒、例えばディーゼル酸化触媒(DOC)の上流で水素を導入するように構成される。水素噴射物品は、典型的には、内燃機関の下流になり、内燃機関と流体連通することになる。水素は、有利には、排気ガス流中に「パルス送出され」または断続的に放出されて、要求に応じて(オンデマンドで)所望の還元機能を行うことになる。
【0172】
システムは、例えばSCR機能に関する尿素噴射のように、有利には、エンジン電子管理アルゴリズム(電子管理システム)に一体化されてもよい。
【0173】
1つの例示的な排出処理システムを図5に例示するが、この図は、内燃機関34の下流にあり、内燃機関34と流体連通している排出処理システム32の概略図である。図示されるように、気状汚染物質および粒状物質を含有する排気ガス流は、排気管36を介してエンジン34から、任意のディーゼル酸化触媒(DOC)38に搬送される。したがって、図示しない他の物品は、リザーバー、ポンプ、弁、混合ボックスなどを含んでいてもよい。
【0174】
排気ガス処理システムは、酸化触媒ユニット38の上流で水素を導入するように構成された水素噴射物品を含んでいてもよい。例えば、水素噴射物品は、貯蔵された水素の断続的噴射または放出に向けて構成することができる。システムは、例えば、コールドスタート期間中に貯蔵された水素を導入するように構成されてもよい。一部の実施形態では、水素噴射物品は、逆止め弁を含む。水素は、水素貯蔵物品に搭載状態で運ばれてもよく、または水分解(water-splitting)からもしくはアンモニア分解(ammonia decomposition)から搭載状態で発生させてもよい。水素を提供するためのアンモニア分解は、本明細書に記述されるように、例えば触媒分解によって行ってもよい。アンモニアを提供するのに適したシステムを、図1Aのシステム100として示し、本明細書で説明する。アンモニア分解からの水素の発生は、システム200として本明細書に記述されおよび図1Bに示される。水素をアンモニア発生させ、水素を貯蔵し、それを酸化触媒物品に提供するのに適したシステムを、システム300として図1Cに示し、本明細書に記述する。
【0175】
排気流は、次に排気管40を介して任意の下流の構成要素、例えば図示されない触媒化煤フィルターおよび/または選択的触媒還元(SCR)物品に搬送される
【0176】
DOC38の酸化触媒組成物は、例えば排気ガスのNOおよび/またはCOおよび/またはHC成分を酸化するのに適している。任意のDOC38では、非燃焼気状および不揮発性炭化水素および一酸化炭素が大量に燃焼して、二酸化炭素および水を形成する。さらに、ある割合のNO成分が、酸化されて、DOC中でNOになる。適切な酸化触媒組成物は、有利には、本明細書に開示されるように、耐火金属酸化物支持体上に分散される白金族元素(PGM)を含む。DOC 38の酸化触媒組成物は、本明細書に記述される流通モノリス基材または壁流フィルター基材上にコーティングされてもよい。
【0177】
DOCユニットは、有利には、本明細書に記述されるように密結合位置にある。
【0178】
排気ガス処理方法
一態様では、内燃機関の排気ガス流中の汚染物質を除去するための方法であって、内燃機関の下流および触媒物品の上流で排気流中に貯蔵された水素を導入することを含む、方法が提供される。
【0179】
一部の実施形態では、水素は、コールドスタート期間中(即ち、排気ガス流は、温度≦150℃にある)、酸化触媒組成物、例えば本明細書に上述されるディーゼル酸化触媒(DOC)の上流で排気ガス流中にパルス送出される。水素は、NOおよび/またはCOおよび/またはHC汚染物質の低温酸化を増強するように働く。一部の実施形態では、方法は、貯蔵された水素の噴射または放出の非存在下での変換率%に対して、CO、HC、およびNOの1種または複数の変換率%の増大をもたらすのに有効である。一部の実施形態では、変換率%の増大は、≧5%、≧10%、≧15%、≧20%、≧25%、≧30%、≧35%、≧40%、≧45%、≧50%、≧55%、または≧60%である。一部の実施形態では、方法はさらに、車載状態で水素を発生させることを含む。一部の実施形態では、方法はさらに、車両電子管理システムからの命令によって、車載状態で水素を発生させることを含む。一部の実施形態では、方法は、水分解物品またはアンモニア分解物品において、車載状態で水素を発生させることを含む。
【0180】
一部の実施形態では、水素を発生させることは、水を収集しおよび/または貯蔵し、水を水素および酸素に分解し、水素を収集し、水素を貯蔵することを含む。一部の実施形態では、方法は、水素噴射物品を介して、貯蔵された水素を導入することを含む。一部の実施形態では、水素噴射物品は、排気ガス流が水素貯蔵物品に進入しないように構成された弁を含む。
【0181】
本発明の物品、システム、および方法は、トラックおよび自動車などの可動排出源からの排気ガス流を処理するのに適している。物品、システム、および方法は、発電所などの固定発生源からの排気流を処理するのにも適している。
【0182】
本明細書に記述される組成物、方法、および適用例に対する適切な修正および適用を、任意の実施形態またはその態様の範囲から逸脱することなく行うことができることが、関連分野の当業者に容易に理解されよう。提供される組成物および方法は、例示的なものであり、特許請求の範囲内の実施形態を限定するものではない。本明細書に開示される様々な実施形態、態様、および選択肢の全ては、全ての変形例で組み合わせることができる。本明細書に記述される組成物、配合物、方法、およびプロセスの範囲は、本明細書の実施形態、態様、選択肢、実施例、および選択物の全ての実際のまたは潜在的な組合せを含む。本明細書に引用される全ての特許および刊行物は、組込みに関するその他特定の主張が特に提供されない限り、記述されるようなそれらの特定の教示のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例0183】
本発明を、本発明を例示するのに記述され、それを限定すると解釈するものではない以下の実施例によって、より十分に例示する。他に記述しない限り、全ての部およびパーセンテージは質量によるものであり、全ての質量パーセンテージは乾燥ベースで表され、これは他に指示しない限り水分を除外することを意味する。
【0184】
[実施例1]
基材上の2層触媒コーティング(DOC物品)。
【0185】
Pd(0.5質量%)、Ba(0.8質量%)、およびPt(0.3質量%)を含浸させた、ミリングされたアルミナ粉末を含有する底部コート触媒スラリーを製造し、硝酸でpHを4.5から5.0に調節した。底部コートスラリーは、38質量%の固体含量を有していた。アルミナ/5質量%MnおよびPt-アミン(3.3質量%)を含有するトップコートスラリーを製造し、ミリングし、硝酸でpHを4.5から5.0に調節した。トップコートスラリーは、固体濃度37質量%を有していた。次いでゼオライトベータ(0.35g/in)をトップコートスラリーに添加した。
【0186】
底部コートスラリーを、全コア長1”×3”、400cpsi(平方インチ当たりのセル)ハニカム基材に、ウォッシュコート技法を介して付着させた。コーティングされた基材を、120℃で空気乾燥し、500℃で1時間か焼して、1.6g/inのコーティング負荷量を得た。トップコートスラリーを、底部コート全体に付着させ、乾燥し、底部コートとしてか焼して、合計コーティング負荷量2.5g/inおよび合計PGM負荷量50g/ftを、Pt/Pd質量比3/1で得た。
【0187】
[実施例2]
基材上の3層触媒コーティング(DOC物品)。
【0188】
ミリングされたアルミナ粉末およびCe/Al(50/50質量%)粉末(約1/6の質量比)を含有する底部コート触媒スラリーを、32から35質量%の固体濃度を有するように製造した。少量の酢酸ジルコニウムおよびアルミナゾルを、結合剤として添加した。スラリーを、400cpsi 1”×3”ハニカム上にコーティングして、1.5g/inで底部コートを得た。
【0189】
中間コート触媒スラリーを、硝酸PdをMn/Al支持体(5質量%のMn)に含浸し、その後、水酸化Ba溶液を添加することによって、製造する。含浸粉末をPt溶液に添加し、pHを、硝酸で4.5から5に調節する。このスラリーを底部コート付きコア上にコーティングして、追加のコーティング負荷量1.8g/inおよびPt/Pd質量比18/14を得る。
【0190】
トップコートスラリーを、硝酸PdをMn/Al支持体(5質量%のMn)に含浸し、その後、水酸化Ba溶液を用いて製造した。含浸粉末をPt溶液に添加し、pHを硝酸で4.5から5に調節した。ゼオライトベータをスラリーに添加した。トップコートスラリーを、コート付きコアに付着、コーティングさせて、さらなるコーティング負荷量が1.1g/inでありPt/Pd質量比17/3である3層コート付きコアを得た。合計PGM負荷量は、52g/ftであった。
【0191】
[実施例3]
排気ガス処理。
【0192】
コート付きコアを、チューブ炉内で800℃で16時間、10% HO、10% O、残分Nの供給ガス組成物を用いて熱水作用により老化させた。老化試料を、模擬NEDC(新欧州ドライビングサイクル)を実行するように、Hパルスの供給源として働くH/N用の別個の供給ラインが備えられた実験室用反応器で評価した。車両とシミュレーターとの間でのエンジンアウト温度トレースを図6に提示し、車両トレースとシミュレーターとの間での、エンジンアウトCO排出を、図7に提示する。
【0193】
水素を、0.5%または1%の供給ガス中水素濃度で、サイクルの最初の400秒の間に排気流中にパルス送出した。水素噴射は、H/N供給ガスを運ぶ別個の(非予熱)ラインを介して行った。結果を、コート付きコアの実施例1の、HC、CO、およびNOの変換%に関して得た。1%Hパルス対Hパルスがない場合の、実施例1のコート付き基材に関して得られたデータは、下記の通りである:
【表1】
【0194】
データは、水素パルス送出が、排気ガス流中の汚染物質の除去に向けて非常に有効であったことを実証する。
【0195】
水素噴射は、NEDCプロトコールのコールドスタート期間中(0~200秒)に有意な影響(impact)を及ぼした。HC、CO、およびNOの変換率%に関するNEDCの結果は、0~200秒の、コート付きコアの実施例1に関して、下記の通りであった:
【表2】
【0196】
なしでの試行(run)に関する平均入口温度は、124℃であった。1%Hによる試行での入口温度は、120℃であった。
【0197】
実施例1のNEDC試験に関するNOトレースを、図8に示す。水素噴射期間中のNO排出の還元を観察した。本明細書の実施例は、駆動状態がシミュレートされるように、温度および速度が供給濃度と共に常に上下動する、動的試験環境で行った。
【0198】
試験は、コート付きコアの実施例2でも行った。結果は下記の通りであった:
【表3】
【0199】
図9に示される累積CO排出プロットは、コールドスタート期間の最初の100秒間での、水素噴射の利益を明示する。水素噴射は、NEDCプロトコールのコールドスタート期間(0~200秒)中に有意な影響を及ぼした。HC、CO、およびNOの変換率%に関するNEDCの結果は、0~200秒のコート付きコアの実施例2に関して下記の通りであった:
【表4】
【0200】
なしでの試行に関する平均入口温度は、120℃であった。1%Hでの試行に関する入口温度は、118℃であった。
【0201】
水素の影響は、NEDCサイクルに入った僅か50秒後、DOC入口温度が75℃よりも高くなったときに支配的になったので、そのため水素噴射はDOC入口温度に関連付けられて、水素利用の効率が最大限になった。この重要な適用態様を例示するために、定常状態のライトオフ試験を、異なる温度でのH噴射により実施し、試験は実施例4の通りに行った。
【0202】
[実施例4]
異なる触媒入口温度での水素噴射:老化させた実施例1のDOC。
【0203】
実施例1からの、同じ老化コアを、定常状態ライトオフ試験で使用した。ライトオフ試験条件は、以下に列挙した通りであった:
【表5】
【0204】
DOC入口温度に対するCO変換率としての結果を、図10に示す。データは、老化させた実施例1のDOCに対するH噴射が、100℃よりも高い入口温度でのCO変換増強に有効とすることができ、いかなる水の凝縮も回避され、図9の動的(NEDC)試験結果と一致することを示す。H噴射は非加熱ラインを通して提供されたので、入口DOC温度は、Hのない標準の試行に比べてH噴射試験中にさらに低減したようである。したがって、100℃よりも高い温度でH噴射はより効率的に開始されると見なされた。120℃よりも高い温度で噴射が開始される、図10、11、および12におけるH噴射の試行は全て、低温度範囲(160℃から200℃)で良好なCO/HC変換と良好なNO/NO値とを示した。値は、ライトオフ試験の開始から180℃、90℃から180℃、および120℃から180℃まで変化するH噴射期間での全ての試行中において類似していたので、最少量の水素を使用する最も効率的な方式は、H噴射をDOC入口温度120℃で開始することであった。この概念をさらに証明するために、新鮮な実施例2のDOCを、同じライトオフプロトコールで試験した(実施例5)。
【0205】
[実施例5]
異なる触媒入口温度での水素噴射:新鮮な実施例2のDOC。
【0206】
実施例2からの新鮮なコアを、実施例4の同じ定常状態ライトオフ試験で使用した。得られた、DOC入口温度に対するCO変換率としての結果を、図13に示す。やはり、DOC入口温度が100℃に達する前に水素噴射を停止させることにより、COライトオフの改善の利益は得られなかった。DOC入口温度が120℃に達したときに水素噴射を停止させると、図13に示されるように初期CO変換率が上昇したが、耐久性はなかった。同じ現象は、図14のHC変換で観察された。CO/HCに関するライトオフ曲線は、図13および14の両方に示されるように当初のライトオフ現象にまで反落したので、理論に拘泥するものではないが、水素噴射は、触媒自体に対する影響が続かないニュートラルブースター(neutral booster)として見られる。この水素噴射の効果をさらに示すために、老化させた実施例2のDOCを、同じライトオフプロトコールで試験した(実施例6)。
【0207】
[実施例6]
異なる触媒入口温度での水素噴射:老化させた実施例2のDOC。
【0208】
実施例2からの老化コアを、実施例4および5で行ったものと同じ定常状態ライトオフ試験で使用した。水素噴射による持続可能なライトオフを確実にするために、いくつかの水素噴射期間を、この老化させた実施例2のDOCに対して試験した。DOC入口温度に対するCO変換率として提示された、得られた結果を、図15に示す。
【0209】
データは、水素噴射期間が当初のライトオフ温度を過ぎた場合(即ち、50%の変換点)、この場合は164℃を過ぎた場合に、持続可能なライトオフを得ることができることを実証する。したがって、ライトオフ試験の開始から150℃のDOC入口温度までの水素噴射の早期停止は、図15に示されるように、水素噴射なしの当初のライトオフ曲線に類似するCOライトオフ曲線をもたらした。類似の現象は、図16に示されるように、HCライトオフで観察された。
【0210】
水素噴射がなぜ、コールドスタート期間中にCO/HC変換を促進させるのかをさらに探るため、拡散反射赤外フーリエ変換分光法(DRIFTS)実験を、水銀カドミウムテルライド(MCT-HgCdTe)検出器およびフッ化カルシウム(CaF)窓を有するLinkam高温環境チャンバを備えたAgilent CARY680 FTIR分光計で実施した。試料粉末を、流動するAr中で脱水させ、または流動する2.4%H/Ar中で、400℃で1時間、流量70ml/分で還元させた。DRIFTSスペクトルを、様々な温度(90、120、および180℃)で実施したオペランド反応中に収集した。DRIFTSスペクトルからの吸光度スペクトルを、バックグラウンドスペクトル(反応前のAr中の初期スペクトル)に対する比として得、次いで分析に使用した。メカニズムの理解に向けて反応を切り離すために、数組の実験を、オペランド分光法を使用して調査した(実施例7)。
【0211】
[実施例7]
オペランド実験:CO+O、Hあり/なし
粉末を、新鮮な実施例1のDOCコアから掻き取り、オペランド分光法を使用して調査した。脱水し還元された新鮮な実験1のDOC粉末に関するCO DRIFTS実験を実施して、PGM表面でのHおよびCOの相互作用について調査した。図17は、2つの環境の3種の温度での、CO脱着(1%CO/Arを70ml/分、30分間流動することによって予備吸着されたCO)に関するDRIFTSスペクトルデータを示す-アルゴン対2.4%H/Ar。実線は、アルゴンでの脱着を表し、一方、破線は、2.4%H/Ar中での脱着を表す。2060~2070cm-1でのピーク、および2082~2086cm-1でのショルダーを、それぞれ金属PtおよびPd部位に線形に吸着されたCOに割り当てた。1950~1990cm-1での広く弱い特徴は、2個のPGM原子上でのCO架橋吸着に起因した。約1820cm-1でのブロードピークを、3個のPGM原子上に吸着したCOに割り当て、これは大きいPGM粒子の形成を示す。図17は、線形吸着部位に予備吸着されたCOを、20分以内でアルゴンに完全に脱着させることができ、一方、Hにおける脱着では僅かな減少しか観察されなかったことを実証する。二重および三重架橋CO吸着部位でのピーク強度は、両方の脱着環境に関して20分以内にほとんど変化しなかった。したがって、Hの導入は、COをPGM表面から除去せず;理論に拘泥するものではないが、データは、PGM表面でのCO吸着が、水素化物結合(存在する場合)よりも強力であることを示唆する。この単純なCO DRIFTS実験は、PGM表面でのCOとHとの間で競合する吸着がほとんどまたは全くないことを確認する。
【0212】
水素は、実施例3から6で観察されたように、動的NEDC試験条件下または定常状態ライトオフ条件下のいずれかで、貴金属表面に吸着されたCOの除去を明らかに支援しなかったので、CO/HC変換を増強する際のDOCに対する水素噴射の効果を決定することが望まれた。
【0213】
したがって別の実験を、オペランド分光法を使用して実施して、水素の役割をさらに探った。この実験では、NOと、NO+NOの混合物とを、当初のCO+O供給ガス混合物にそれぞれ添加した(実施例8で)。
【0214】
[実施例8]
オペランド実験:O+O+NO/NO、Hあり/なし。
【0215】
老化させた実施例1のDOCコアの粉末(実施例3)を掻き取り、このCO+O+NO/NO、Hあり/なしの実験に使用した。CO+O+NOの混合物に関する実験での供給ガスの組成は;CO:0.1%、O:10%、NO:300ppm;残分Arであった。水素を水素影響実験で使用する場合、2000ppmのHを供給ガスに添加した。CO+O+NO実験では、さらに200ppmのNOを添加した。
【0216】
図18は、90~180℃で、CO-O-NO実験でいくらかのNOが観察されたことを実証し(図18の下部の実線)、これは理論に拘泥するものではないが、NO自己分解、および/または式:3CO+2NO=NO+3COによるCOとNOとの相互作用から生じ得る。硝酸塩領域での対応するIRスペクトル(図19)は、両方の場合(CO-CO-NOおよびCO-O-NO)に、大量の硝酸塩種が触媒上で成長することを示唆しており、Hが存在しない場合にNO酸化が90~180℃で顕著であることを示した。希薄NO捕捉(LMT)材料に関する類似の形成メカニズムにより、90~180℃でのPGM表面でのNO酸化によって形成された硝酸塩は、支持体に移し(図20に示される)、PGM支持体界面部位を占有した(図20)。その結果、CO変換(図18中、黒い実線)は、180℃で損なわれた。
【0217】
が存在する場合、硝酸塩は、90~180℃でのCO-O-NO-H反応の場合にほとんど蓄積されず(図19、上部)、180℃でのCO-O-NO-H反応の場合は非常に少量の硝酸塩しかなかった(図19、下部)。硝酸塩の蓄積の減少は、CO変換率を、CO-O-NO-HおよびCO-O-NO-H反応に関して、それぞれ180℃で100%および70%に戻した(図18、上部)。非常に高いNO強度が、MKS結果において、180℃で観察された(図18下部、破線として示される)。結論として、理論に拘泥するものではないが、本発明の実験からのデータは、水素の導入が硝酸塩の成長を阻害し、したがって酸素の解離、結果的に水素およびCO酸化を促進させたことを示す。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【外国語明細書】