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▶ ウニヴェルズィテート シュトゥットガルトの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145436
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ヘテロ二量体化Igドメイン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20231003BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231003BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20231003BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231003BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231003BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/46
C12P21/08
A61K39/395 V
A61K39/395 Y
A61K45/00
A61K47/68
A61P1/04
A61P3/00
A61P17/00
A61P25/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/08
A61K39/395 N
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K39/395 D
A61K48/00
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023106829
(22)【出願日】2023-06-29
(62)【分割の表示】P 2019566343の分割
【原出願日】2018-06-01
(31)【優先権主張番号】17174087.1
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】507054917
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート シュトゥットガルト
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・リヒター
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ザイフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ローラント・コンテルマン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヘテロ二量体化領域HRIおよびHRIIを含むタンパク質複合体を提供する。
【解決手段】ヘテロ二量体化領域HRIおよびHRIIはそれぞれ逆平行βストランドおよび介在領域からなり、ここでHRIおよびHRIIは免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の2つのヒト定常領域の散在融合タンパク質である。前記タンパク質複合体をコードする配列を含む核酸分子および該核酸を含むベクターを提供する。医薬として使用するための前記タンパク質複合体、前記核酸および前記ベクターをも提供する。さらに、HRIのアミノ酸配列および/またはHRIIのアミノ酸配列を決定する方法を提供する。本発明はまた、HRIのアミノ酸鎖および/またはHRIIのアミノ酸鎖を生成する方法を提供する。さらに、障害または疾患の予防、治療または診断に使用するための前記タンパク質複合体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのアミノ酸鎖Iおよびアミノ酸鎖IIを含み、該アミノ酸鎖Iおよびアミノ酸鎖IIは、アミノ酸鎖Iに含まれるヘテロ二量体化領域I(HRI)およびアミノ酸鎖IIに含まれるヘテロ二量体化領域II(HRII)を介して互いに非共有結合しているタンパク質複合体であって、
(a)HRIは、7つの逆平行βストランドAI、BI、CI、DI、EI、FI、およびGI、6つの介在領域bI、cI、dI、eI、fI、およびgI、N末端領域aI、およびC末端領域hIを、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
aI-AI-bI-BI-cI-CI-dI-DI-eI-EI-fI-FI-gI-GI-hI、
HRIは免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の1番目のヒト定常領域(1番目のCRI、アクセプター)に免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の2番目のヒト定常領域(2番目のCRI、ドナー)のアミノ酸が点在した融合タンパク質であり、
ここで、1番目のCRIは、7つの逆平行βストランドA1、B1、C1、D1、E1、F1、およびG1、6つの介在領域b1、c1、d1、e1、f1、およびg1、N末端領域a1、およびC-末端領域h1を、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
a1-A1-b1-B1-c1-C1-d1-D1-e1-E1-f1-F1-g1-G1-h1、
ここで2番目のCRIは、7つの逆平行βストランドA2、B2、C2、D2、E2、F2、およびG2、6つの介在領域b2、c2、d2、e2、f2、およびg2、N末端領域a2、およびC末端領域h2を、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
a2-A2-b2-B2-c2-C2-d2-D2-e2-E2-f2-F2-g2-G2-h2、
ここで、HRIは1番目のCRIのアミノ酸配列を有し、1番目のCRIの少なくとも以下のアミノ酸が2番目のCRIの以下のアミノ酸で置換されている:
(i)a1の少なくとも1つのアミノ酸がa2の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換1);
(ii)c1の少なくとも1つのアミノ酸がc2の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換2);および
(iii)g1の少なくとも1つのアミノ酸がg2の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換3)、および
(b)HRIIは、7つの逆平行βストランドAII、BII、CII、DII、EII、FII、およびGII、6つの介在領域bII、cII、dII、eII、fII、およびgII、N末端領域aIIおよびC末端領域hIIを、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
aII-AII-bII-BII-cII-CII-dII-DII-eII-EII-fII-FII-gII-GII-hII、
HRIIは免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の3番目のヒト定常領域(3番目のCRI、アクセプター)に免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の4番目のヒト定常領域(4番目のCRI、ドナー)のアミノ酸が点在した融合タンパク質であり、
ここで、3番目のCRIは、7つの逆平行βストランドA3、B3、C3、D3、E3、F3、およびG3、6つの介在領域b3、c3、d3、e3、f3、およびg3、N末端領域a3、およびC末端領域h3を、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
a3-A3-b3-B3-c3-C3-d3-D3-e3-E3-f3-F3-g3-G3-h3、
ここで4番目のCRIは、7つの逆平行βストランドA4、B4、C4、D4、E4、F4、およびG4、6つの介在領域b4、c4、d4、e4、f4、およびg4、N末端領域a4、およびC末端領域h4を、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
a4-A4-b4-B4-c4 -C4-d4-D4-e4-E4-f4-F4-g4-G4-h4、
ここで、HRIIは3番目のCRIのアミノ酸配列を有し、3番目のCRIの少なくとも以下のアミノ酸が4番目のCRIの以下のアミノ酸で置換されている:
(i)a3の少なくとも1つのアミノ酸がa4の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換4);
(ii)c3の少なくとも1つのアミノ酸がc4の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換5);および
(iii)g3の少なくとも1つのアミノ酸がg4の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換6)、
ここで、1番目のCRIおよび3番目のCRIは互いに異なり、生理学的条件下で互いに特異的に結合する、タンパク質複合体。
【請求項2】
免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質が、IgG1、Igカッパ、T細胞受容体(TCR)α、TCRβ、新生児Fc受容体(FcRn)、β2ミクログロブリン、Igラムダ、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgM、ヒト白血球抗原(HLA)AまたはBおよびHLA-Dから選択される、請求項1に記載のタンパク質複合体。
【請求項3】
1番目のCRIおよび3番目のCRIが、好ましくは配列番号1のアミノ酸配列を有するIgG1の重鎖1(CH1)の定常領域;好ましくは配列番号18のアミノ酸配列を有するIgκ定常領域;好ましくは配列番号10のアミノ酸配列を有するT細胞受容体(TCR)αの定常領域;好ましくは配列番号11のアミノ酸配列を有するTCRβの定常領域;好ましくは配列番号12のアミノ酸配列を有する新生児Fc受容体(FcRn)アルファ3;好ましくは配列番号13のアミノ酸配列を有するβ2ミクログロブリン;好ましくは配列番号19のアミノ酸配列を有するIgλ定常領域;好ましくは配列番号2のアミノ酸配列を有するIgG2;好ましくは配列番号3のアミノ酸配列を有するIgG3;好ましくは配列番号4のアミノ酸配列を有するIgG4;好ましくは配列番号5のアミノ酸配列を有するIgA1;好ましくは配列番号6のアミノ酸配列を有するIgA2;好ましくは配列番号7のアミノ酸配列を有するIgD;好ましくは配列番号8のアミノ酸配列を有するIgE;好ましくは配列番号9のアミノ酸配列を有するIgM;好ましくは配列番号14のアミノ酸配列を有するヒト白血球抗原(HLA)A、または好ましくは配列番号15のアミノ酸配列を有するHLA-Bα3;好ましくは配列番号16のアミノ酸配列を有するHLA-Dα2;および好ましくは配列番号17のアミノ酸配列を有するHLA-Dβ2からなる群から独立して選択され、
好ましくは以下の1番目のCRIと3番目のCRIの組み合わせ:
(i)1番目のCRI:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、またはIgMのCH1および3番目のCRI:Igκ定常領域および/またはIgλ定常領域;
(ii)1番目のCRI:TCRαの定常領域および3番目のCRI:TCRβの定常領域;
(iii)1番目のCRI:FcRnアルファ3;HLA-Aα3;またはHLA-Bα3および3番目のCRI:β2ミクログロブリン;および
(iv)1番目のCRI:HLA-Dα2および3番目のCRI:HLA-Dβ2
が選択される、請求項1または2に記載のタンパク質複合体。
【請求項4】
(i)2番目のCRIおよび4番目のCRIが同一であり、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2のCH3;IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、またはIgMのCH1;またはIgD;IgEまたはIgMのCH4;およびIgκまたはIgλ定常領域からなる群から選択される、または
(ii)2番目のCRIおよび4番目のCRIが、IgG1のCH1、IgκまたはIgλ定常領域、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、またはIgMのCH1;IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、またはIgDのCH3およびIgEまたはIgMのCH4からなるグループから個別に選択される、請求項1~3のいずれかに記載のタンパク質複合体。
【請求項5】
(i)置換1および/または置換4において、1番目のCRIおよび/または3番目のCRIのN末端からベータストランドA(Ig様定常領域コンセンサス(IgLCRC、図4に示す)の1位~12位)までのすべてのアミノ酸が、2番目のCRIまたは4番目のCRIのN末端からベータシートA(IgLCRCの1位~12位)までのすべてのアミノ酸でそれぞれ置換されており;
(ii)置換2および/または置換5において、1番目のCRIまたは3番目のCRIのIgLCRCの41-45、41-46、41-47、41-48、41-49、41-50、41-51、42-45、42-46、42-47、42-48、42-49、42-50、42-51、43-45、43-46、43-47、43-48、43-49、43-50、43-51、44-45、44-46、44-47、44-48、44-49、44-50、44-51、45-45、45-46、45-47、45-48、45-49、45-50、または45-51位のアミノ酸が、2番目のCRIまたは4番目のCRIの41-45、41-46、41-47、41-48、41-49、41-50、41-51、42-45、42-46、42-47、42-48、42-49、42-50、42-51、43-45、43-46、43-47、43-48、43-49、43-50、43-51、44-45、44-46、44-47、44-48、44-49、44-50、44-51、45-45、45-46、45-47、45-48、45-49、45-50、または45-51位のアミノ酸でそれぞれ置換されており;および
(iii)置換3および/または置換6において、1番目のCRIまたは3番目のCRIのIgLCRCの103-127、103-128、103-129、103-130、103-131、103-132、104-127、104-128、104-129、104-130、104-131、104-132、105-127、105-128、105-129、105-130、105-131、105-132、106-127、106-128、106-129、106-130、106-131、106-132、107-127、107-128、107-129、107-130、107-131、107-132、108-127、108-128、108-129、108-130、108-131、108-132、109-127、109-128、109-129、109-130、109-131または109-132位のアミノ酸が、2番目のCRIまたは4番目のCRIのIgLCRCの103-127、103-128、103-129、103-130、103-131、103-132、104-127、104-128、104-129、104-130、104-131、104-132、105-127、105-128、105-129、105-130、105-131、105-132、106-127、106-128、106-129、106-130、106-131、106-132、107-127、107-128、107-129、107-130、107-131、107-132、108-127、108-128、108-129、108-130、108-131、108-132、109-127、109-128、109-129、109-130、109-131または109-132位のアミノ酸でそれぞれ置換されている、
請求項1~4のいずれかに記載のタンパク質複合体。
【請求項6】
置換1~6に加えて、1番目のCRIおよび/または3番目のCRIのIgLCRCの37位および/または47位および/または49位および/または81位および/または107位のアミノ酸が、それぞれ、2番目のCRIおよび/または4番目のCRIのIgLCRCの37位および/または47位および/または49位および/または81位および/または107位のアミノ酸で置換される、請求項1~5のいずれかに記載のタンパク質複合体。
【請求項7】
以下の1番目のCRIと3番目のCRIの組み合わせ:
(i)1番目のCRI:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、またはIgMのCH1および3番目のCRI:Igκ定常領域および/またはIgλ定常領域;
(ii)1番目のCRI:TCRαの定常領域および3番目のCRI:TCRβの定常領域
の結果、HRIおよびHRIIがそれぞれ、図4に示すように、IgLCRCの20位(IgG2、IgG3、IgG4、またはIgMのCH1)、21位(IgDのCH1)、135位(IgA1またはIgA2のCH1)、138位(IgG1またはIgEのCH1、IgκのCL、IgλのCL)、139位(TCRβの定常ドメイン)または141位(TCRaの定常ドメイン)でHRIとHRIIとの間に共有結合を形成するように配置された少なくとも1つのCys残基を含む、請求項1~6のいずれかに記載のタンパク質複合体。
【請求項8】
HRIおよびHRIIが、それぞれ配列番号20および配列番号21、配列番号22および配列番号23、配列番号24および配列番号25、配列番号26および配列番号27、配列番号28および配列番号32、配列番号28および配列番号33、配列番号31および配列番号29、および配列番号31および配列番号30のアミノ酸配列、または、それぞれ示されたアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有するそのヘテロ二量体化変異体を有する、請求項1~7のいずれかに記載のタンパク質複合体。
【請求項9】
アミノ酸鎖Iおよび/またはアミノ酸鎖IIが、抗体のCH2またはCH3ドメイン;好ましくは、Fv、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド安定化Fv、ジスルフィド安定化scFv、Fab、一本鎖Fab、単一ドメイン抗体、可変重鎖ドメイン(VH)、可変軽鎖ドメイン(VL)、T細胞受容体またはその抗原結合断片、ナノボディ、VHH、1つ以上の抗体様結合タンパク質(例えば、ダーピン、アンチカリン、アフィボディ、フィブロネクチン様ドメインなど)からなる群から選択される1つまたはそれ以上の抗原特異的リガンド(ASL);抗体ヒンジ領域(HR)、1つまたはそれ以上のリンカー配列(L)、1つまたはそれ以上のサイトカイン(C、例えば、TNFスーパーファミリーのメンバーおよびその一本鎖誘導体、インターロイキン(IL、例えば、IL-2)、インターフェロン(例えば、IFNγ)、成長因子、ホルモン、リガンド、ペプチド、リガンド結合活性を有する受容体断片、キレート剤、酵素、凝固因子、抗凝固剤、およびそれらの誘導体からなる群から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸要素をさらに含み、
アミノ酸鎖Iが1つまたはそれ以上の抗原特異的リガンド(ASL)および/または1つまたはそれ以上のエフェクター分子を含み、アミノ酸鎖IIが1つまたはそれ以上の抗原特異的リガンド(ASL)および/または1つまたはそれ以上のエフェクター分子を含み、ここで、ASLモジュールは、例えば、細胞表面タンパク質(受容体、接着分子、チャネル、輸送体など)、ホルモン、成長因子、サイトカイン、リガンド、血清タンパク質、凝固因子、線維素溶解因子、ケモカイン、酵素に特異的に結合する分子の群から選択され、エフェクター分子が、例えば、細胞表面タンパク質(受容体、接着分子、チャネル、輸送体など)、ホルモン、成長因子、サイトカイン、リガンド、血清タンパク質、凝固因子、線維素溶解因子、ケモカイン、酵素などの分子などの群から選択される、
請求項1~8のいずれかに記載のタンパク質複合体。
【請求項10】
請求項1~9に記載のアミノ酸鎖Iまたはアミノ酸鎖II、好ましくはこれらアミノ酸鎖の組み合わせ、ここで、鎖Iおよび鎖IIは、配列番号41および配列番号42、配列番号34および配列番号35、配列番号43および配列番号44、配列番号36および配列番号37(scFv13.7-Fc1k)、配列番号36および配列番号38(scFv13.7-CD3-ヒンジ-Fc1k)、配列番号39および配列番号38(scFv3-43-CD3-ヒンジ-Fc1k)または配列番号40および配列番号38(scFvhuMCSP-CD3-ヒンジ-Fc1k)によるアミノ酸配列を有する。
【請求項11】
請求項10に記載のアミノ酸鎖Iおよび/またはアミノ酸鎖IIをコードする核酸。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸を含むベクター。
【請求項13】
アミノ酸鎖IのHRIおよび/またはアミノ酸鎖IIのHRIIのアミノ酸配列を定義する方法であって、以下の工程を含む方法:
(i)1番目のCRI、2番目のCRI、3番目のCRI、および4番目のCRIを選択し;
(ii)1番目のCRI、2番目のCRI、3番目のCRI、および4番目のCRIの7つのベータストランドA、B、C、D、E、FおよびG、1番目のCRI、2番目のCRI、3番目のCRI、および4番目のCRIの介在配列b、c、d、e、fおよびg、1番目のCRI、2番目のCRI、3番目のCRI、および4番目のCRIのそれぞれのN末端配列およびC末端配列aおよびhを定義し;
(iii)1番目のCRIのaの少なくとも1つのアミノ酸を2番目のCRIのaの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換1);1番目のCRIのcの少なくとも1つのアミノ酸を2番目のCRIのcの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換2);1番目のCRIのgの少なくとも1つのアミノ酸を2番目のCRIのgの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換3);3番目のCRIのaの少なくとも1つのアミノ酸を4番目のCRIのaの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換4);3番目のCRIのcの少なくとも1つのアミノ酸を4番目のCRIのcの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換5);および3番目のCRIのgの少なくとも1つのアミノ酸を4番目のCRIのgの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換6)、
ここで、1番目のCRIおよび3番目のCRIは互いに異なり、生理学的条件下で互いに特異的に結合する。
【請求項14】
アミノ酸鎖Iおよび/またはアミノ酸鎖IIをコードする核酸を宿主細胞に導入し、ついでアミノ酸鎖Iおよび/またはアミノ酸鎖IIを発現する工程を含む、請求項13に記載のHRI配列を含むアミノ酸鎖Iおよび/または請求項13に記載のHRII配列を含むアミノ酸鎖IIの製造方法。
【請求項15】
医薬として、好ましくは炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、増殖性疾患、癌型疾患、皮膚疾患、内分泌疾患、目の疾患および障害、遺伝的障害、代謝性疾患、感染症、腸疾患、神経障害、および精神疾患などの、しかしこれらに限定されない障害または疾患の予防、治療または診断に使用するためのものである、請求項1~9のいずれかに記載のタンパク質複合体または請求項10に記載のアミノ酸鎖Iおよび/またはアミノ酸鎖II。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ二量体化領域HRIおよびHRIIを含むタンパク質複合体を提供し、ヘテロ二量体化領域HRIおよびHRIIはそれぞれ逆平行βストランドおよび介在領域からなり、ここでHRIおよびHRIIは免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の2つのヒト定常領域の散在融合タンパク質(interspersed fusion proteins)である。本発明はまた、前記タンパク質複合体をコードする配列を含む核酸分子および該核酸を含むベクターを提供する。本発明はまた、医薬として使用するための前記タンパク質複合体、前記核酸および前記ベクターをも提供する。本発明はさらに、HRIのアミノ酸配列および/またはHRIIのアミノ酸配列を決定する方法を提供する。本発明はまた、HRIのアミノ酸鎖および/またはHRIIのアミノ酸鎖を生成する方法を提供する。本発明はさらに、障害または疾患の予防、治療または診断に使用するための前記タンパク質複合体を提供する。
【背景技術】
【0002】
二重特異性抗体は、診断および治療用途への関心が高まっている。Kontermann REおよびBrinkmann U(2015)Drug Discovery Today20(7):883およびそこで引用されている参考文献で包括的なレビューが提供されている。天然の抗体は単一特異性であるが、二重特異性抗体は同じ抗原または異なる抗原の2つの異なるエピトープを認識する。二重特異性抗体の用途は、診断、画像診断および治療から広範囲に及ぶ。当初、治療用途は主に、正常な抗体では腫瘍細胞に補充できないT細胞を含む癌治療のエフェクター細胞の再標的化に焦点を当てていた。しかしながら、過去10年間に、エフェクター分子、細胞および遺伝的媒体の再標的化に加えて、デュアルターゲティング戦略(dual targeting strategies)、半減期延長、および血液脳関門を介した送達などを含む、二重特異性抗体に基づく他の多くの治療戦略が確立されている。適応には、癌、慢性炎症性疾患、自己免疫、出血性障害、および感染症が含まれる。
【0003】
定められた特異性を備えた二重特異性抗体は、それ自体、自然界では見られない人工分子である。したがって、それらは分子的または遺伝子的手段によって生成する必要がある。二重特異性IgG分子の生成は、抗原結合部位が軽鎖と重鎖の可変ドメイン(VL、VH)によって構築されるという事実により、2つの大きな問題に直面する。第一に、二重特異性抗体には2つの異なる重鎖が必要であり、第二に、二重特異性抗体はまた2つの異なる軽鎖も必要である。したがって、二重特異性IgG抗体は、少なくとも2つの異なる可変ドメイン(Fv)領域の存在による非対称性を示す。1つの細胞で発現する2つの抗体の重鎖と軽鎖の無差別ペアリングは、理論的には10種類の組み合わせになり、1つの組み合わせのみが二重特異性になり、残りのペアリングは非機能性または単一特異性分子になる(Schaeferら、2016)。正しい結合部位、すなわち重鎖および軽鎖の正しいアセンブリを指示し、強制することは、二重特異性抗体を生成することの課題の1つである。
【0004】
次のセクションで説明する重鎖のヘテロ二量体化を強制する遺伝子工学は、二重特異性IgG形成の問題の1つを対象としている。ヘテロ二量体重鎖は2つの異なる軽鎖と集合して4つの可能な組み合わせ、すなわち、1つの二重特異性分子、1つの非機能的組み合わせ、および2つの単一特異性分子を形成できるが、可能な組み合わせを10の異なる分子から4つの組み合わせに減らす。重鎖のペアリングは、定常領域の最後のドメイン、すなわち、IgG分子のCH3によって媒介され、高親和性ホモ二量体複合体を形成する。さらなる相互作用が、重鎖のアセンブリ後に形成される2つの重鎖の共有結合に関与するヒンジ領域に存在する。
【0005】
様々な戦略が、立体的または静電的ステアリング効果のいずれか、またはそれらの組み合わせを使用して、ホモ二量体化よりもヘテロ二量体化に有利な相補的界面を生成している。
【0006】
Ridgwayと同僚は、1つのCH3界面(interface)で小さな側鎖を大きな側鎖で置き換えてノブを生成し、他のCH3ドメインで大きな側鎖を小さな側鎖で置き換えてホールを生成することにより、ヘテロ二量体アセンブリに有利なCH3界面を生成した(Ridgwayら、1996)。様々な変異体を試験すると、一方の鎖に置換T366Yがあり、もう一方の鎖にY407Tがある優先的なヘテロ二量体化が示された。これらの当初のknobs-into-holes変異は、例えば、HER2およびIGF-1Rに対するIgGを産生するために使用された。その後、knobs-into-holesアプローチは拡張され、ファージディスプレイによるさらなる適切な組み合わせが同定された。次に、これらの変異を使用して、ジスルフィド結合形成を可能にする追加の置換をテストする二重特異性IgG抗体を生成した。1つの変異体は、>95%のヘテロ二量体形成を示した(S354C、T366W/Y349C、T366S、L368A、Y407V)。次に、このヘテロ二量体重鎖を適用して、同一のVLドメインを使用して一本鎖可変フラグメント(scFv)からMlpおよびHER3に対する二重特異性抗体を構築し、したがって共通の(common)軽鎖を発現させた(Merchantら、1998)。ヘテロマー重鎖は、機能的な二重特異性抗体を産生し、プロテインAクロマトグラフィーによる精製を可能にし、ADCCなどのFc媒介エフェクター機能を保持した。このアプローチは、様々な二重特異性抗体を生成するために採用され、今日では、二重特異性IgG分子、およびその誘導体(三価Ig様抗体、二重特異性FcおよびCH3融合タンパク質を含む)を生成する汎用性のある基盤を形成している。
【0007】
一例は、T細胞を再標的化する二重特異性抗体である。CD3への二価結合によるT細胞の全身活性化を避けるため、CD3への結合部位を1つだけ示す分子を設計した。これには、各Fc鎖に1つのscFvを持つscFv-Fc(kih)、およびFc鎖の1つにタンデムscFvが融合したタンデムscFv-Fc(kih)(BiTE-KIH)が含まれる(Xuら、2015 )。この研究では、CD3結合部分は、ノブ含有Fc鎖かまたはホール含有Fc鎖のいずれかに融合した(それぞれ、KIH、KIHr)。興味深いことに、BiTE-KIHrは発現力価の点でBiTE-KIHよりも優れていた。しかしながら、T細胞の活性化と腫瘍細胞の溶解に関して違いは認められなかった。同様のアプローチで、Fc-KIHを使用して、NK細胞を腫瘍細胞に再標的化するために、CD16およびHER2に対する二価の二重特異性scFv-Fc融合タンパク質を生成した(Xieら、2005)。
【0008】
受容体の架橋と活性化を避けるために、c-METなどの細胞表面受容体を標的とする抗体にとって一価の結合も不可欠である。2つの異なる受容体のデュアルターゲティングと中和に適用される、細胞表面受容体に一価結合する二重特異性抗体は、FcアームをFcホール鎖のN末端に融合し、ジスルフィド安定化scFvを同じFc鎖のC末端に融合し、融合していないFcノブと共発現することによって生成された。
【0009】
1つのFc(kih)鎖のC末端へのVHドメインと、別々に発現するかまたはもう一方のFc(kih)鎖のC末端に融合したVLドメインへの融合により、Fvフラグメントがドメイン間ジスルフィド結合により安定化された二重特異性の三価IgG-Fv(mAb-Fv)融合タンパク質が生じた(Metzら、2012)。IgG-Fv融合におけるFvフラグメントの柔軟性は、VLドメインをFc鎖に接続するリンカー中に例えばフーリンまたはMMPに対するタンパク質分解性切断部位を導入することにより増大させることができた。切断後、これにより、VHドメインを介してのみIgGに接続されたC末端Fvフラグメントを持つ二重特異性分子が得られた。同様に、EGFRに対する2つの結合部位(Fc鎖のN末端に融合したscFv)とLPSに対する1つの結合部位(Fc(ノブ)のC末端に融合したVHおよびFc(ホール)のC末端に融合したVL)を示すscFv-Fc-Fv融合タンパク質が生成された。二重特異性IgG(kih)抗体のさらなる誘導体には、TriMAbが含まれる。この場合、1つまたは2つのジスルフィド安定化scFvが1つまたは両方のFc(kih)鎖に融合し、それぞれ三特異性の三価または四価抗体をもたらす。これは、EGFR、IGF-1RおよびcMetまたはHER3のいずれかを標的とするTriMAbで示された。このアプローチでは、Fabフラグメントは、ジスルフィド安定化Fvドメインを持つ一本鎖Fabフラグメントで構成されていた。
【0010】
最近、knobs-into-holes戦略が他のIgGアイソタイプに拡張され、例えば、IL-4およびIL-13に対する二重特異性抗体を産生するためにIgG4ヘテロ二量体(これ自体はFccを介したエフェクター機能が欠損している)が生成された。
【0011】
構造ベースおよび配列ベースのアプローチを使用して、CH3二量体全体の界面でペアになった変異体の組み合わせのエネルギーを探索したところ、HA-TF変異体(S364H、F405A/Y349T、394F)を生成した。これは、HER2(二価結合)とCD3(一価結合)の同時ターゲティング用に開発されたもので、二重特異性mAb-Fv(IgG-Fv)分子のコンテキストで約83%のヘテロ二量体形成を示した。このCH3ヘテロ二量体化モジュールを使用するさらなる例には、一価および二価のscFv-Fc融合タンパク質が含まれる。
【0012】
別の合理的な構造誘導アプローチにより、熱安定性が高く、ホモ二量体が検出できない純粋なヘテロ二量体を形成することが報告されている一連の変異が得られた。Fcデザイン(ZW1)には、第一のFc鎖にT350V、L351Y、F405A、およびY407Vの置換が含まれ、第二のFc鎖にT350V、T366L、K392L、およびT394Wの置換が含まれていた。
【0013】
上記の戦略は主に疎水性相互作用に依存するが、他のアプローチでは静電相互作用(ステアリング)を利用して、静電反発によりCH3ドメインのホモ二量体化を回避し、静電引力によりヘテロ二量体化を仕向ける。野生型CH3ドメインでは、K409とD399との間の2つの電荷相互作用がCH3-CH3界面に見られる。1つのCH3ドメインでK409をアスパラギン酸に置換し、もう1つのCH3ドメインでD399をリジンに置換すると、CH3ヘテロ二量体の形成が促進されることがわかった。さらなる置換、例えば、1つの鎖にK392D、もう1つの鎖にE356Kが導入された。さらなる電荷対を導入すると生産性が低下した。このアプローチに2つの電荷対置換(K409D、K392D/D399K、E356K、CH3電荷対)を使用して、CD3およびTARTKに対する二重特異性scFv-Fc融合タンパク質が生成され、さらに最近ではEGFRおよびHER2またはスクレロスチンおよびDKK-1に対する二重特異性IgGが生成された。これには、Fabアームに新たな電荷対を導入して、正しい軽鎖ペアリングに仕向けることが含まれていた。
【0014】
静電ステアリング効果はまた、共通の軽鎖とヘテロ二量体化重鎖を利用した二重特異性抗体であるBiclonicsでも使用されている(Geuijenら、2014)。この場合、1つのCH3の残基(366、366+351)が正電荷のリジン残基で置換され、第二のCH3の1つまたは複数の残基(例えば、349、351、355、368)が負電荷のグルタミン酸またはアスパラギン酸残基で置換される。HER2およびHER3に対するこの技術に基づく1つの二重特異性抗体(MCLA-128)は、現在臨床フェーズI/IIの臨床試験中である。
【0015】
優先的な重鎖ヘテロ二量体化はまた、IgG1およびIgG2のヒンジ領域に電荷対を導入して達成されている。IgG1の場合、これらのヒンジ置換は、第一のヒンジにD221E、P228E、第二のヒンジにD221RおよびP228Rを含む。IgG2の場合、置換は一方のヒンジ領域にC223EおよびP228E、もう一方のヒンジ領域にC223R、E225R、P228Rを含む。ここで、E225Rは225位にある天然のグルタミン酸と静電相互作用を形成できるため、第一のIgG2ヒンジには2つの置換のみが必要である。これらの変異をそれぞれL368EおよびK409Rと組み合わせて、CH3ドメインでのヘテロ二量体アセンブリを強制した。抗EGFRx抗HER2二重特異性IgG抗体および抗CEx抗CD20抗体について、2つの抗体の別々の発現とその後の半抗体からのアセンブリを利用して、適用性が示された。
【0016】
別の研究では、第一に、保存された疎水性コアの縁の周りの荷電残基(L351、T366、L368、Y407)を、より大きいまたは小さい疎水性アミノ酸で置換して対称静電相互作用を非対称の疎水性相互作用に置き換え、そして第二に、相互作用に弱く関与するアミノ酸を荷電した長い側鎖を持つアミノ酸で置換して非対称の長距離静電相互作用を形成することにより、CH3ドメインのヘテロ二量体アセンブリを支持する変異が同定された。これにより、1つのCH3のK360E、K409Wと、もう1つのCH3のQ347R、D399V、F405Tとの最終的な組み合わせ(EW-RVT)が得られた。VEGFR-2およびMetを標的とする二重特異性scFv-Fcヘテロ二量体の機能性が実証された。CH3ドメイン(第一のドメインのY349Cと第二のドメインのS354C)にジスルフィド結合を導入すると、ヘテロ二量体形成と熱力学的安定性が向上した。さらに、酵母表面に表示されたコンビナトリアルFcライブラリーを使用して、様々な変異を保持し高いヘテロ二量体化収率(80~90%)を示す変異体を選択した。
【0017】
IgG4抗体はFabアームを交換できるという観察に基づいて、動的プロセスには2つの重鎖の分離と完全なIgG4への再アセンブリが含まれる。このプロセスは、CH3ドメインの残基と結合したIgG4コアヒンジ配列に起因していた。このIgG4におけるFabアーム交換の自然のプロセスを、制御されたFabアーム交換(cFAE)による二重特異性IgG1分子の生成に適合させた。対応するCH3におけるK409R変異のコンテキストでcFAEを可能とするCH3ドメインにおける変異のスクリーニングにより変異F405Lが同定され、これはR-メルカプトエタノールとの混合および軽度の還元後に、別々に発現した抗体の半抗体の効率的な交換を可能とした。このプロセスの拡張性(Scalability)は、抗EGFRx抗CD20二重特異性IgG(DuoBody)で実証され、>95%の二重特異性分子が得られた。
【0018】
Fc鎖のヘテロ二量体アセンブリを可能にするCH3界面の相補性は、鎖交換操作ドメイン(strand-exchange engineered domain; SEED)ヘテロ二量体を設計することにより開発された。これらのSEED CH3ドメインは、ヒトIgAおよびIgG CH3配列に由来する交互セグメント(AG SEED CH3およびGA SEED CH3)で構成され、いわゆるSEEDbodyの生成に使用された(Davisら、2010)。分子モデルが、新生児Fc受容体(FcRn)との相互作用がAG SEED CH3で損なわれることを示唆したため、CH2-CH3接合部の残基はIgG配列に戻した。薬物動態研究により、他のFc融合タンパク質およびIgG1に匹敵するSEEDbodyの長い半減期が確認された(Mudaら、2011)。SEEDbodiesの1つの例は、EGFR上の2つの異なるエピトープを標的とする二重特異性Fab-scFv-Fc融合タンパク質の生成である。このバイパラトピック抗体(biparatopic antibody)は、2つの親抗体の組み合わせと同様の強化された活性を示した。
【0019】
さらなるCH3ヘテロ二量体化界面が、T細胞受容体α鎖およびβ鎖の自然な会合を模倣することにより得られた。このBEATテクノロジー(T細胞受容体に基づく抗体による二重特異性関与(Bispecific Engagement by Antibodies based on the T cell receptor))を適用して、Fab/scFv-Fc融合タンパク質を生成し、軽鎖の誤ペアリングを回避した。このアプローチは、T細胞再標的用のCD3およびHER2に対する二重特異性抗体を生成するために使用された。
【0020】
Leaver-Fayと同僚(Leaver-Fayら、2016)は、複数のタンパク質段階を同時に設計するアプローチである多段階設計(multistage design; MSD)を適用して、Fc界面でCH3変異のセットを生成した。2つのセット(7.8.60および20.8.34)を使用し、直交するFab界面変異と組み合わせて、ペルツズマブ(pertuzumab;抗HER2)、マツズマブ(matuzumab;抗EGFR)、BHA10(抗LTRR)、およびMetMAb(抗cMet)に由来する二重特異性IgGを生成し、すべての場合で少なくとも93%の二重特異性抗体が得られた。
【0021】
重鎖のヘテロ二量体アセンブリは、別のヘテロ二量体化モジュールを使用して達成することもでき、このモジュールはその後、二重特異性抗体から除去される。この戦略は、2つの重鎖のC末端に融合したAcid.p1(Ap1)およびBase.p1(Bp1)ペプチドに由来するロイシンジッパー構造を採用して適用された。このLUZ-Yプラットフォームを使用して、一価のFab-Fc融合タンパク質だけでなく、EGFRおよびHER3に対する共通の軽鎖またはscFabアームに基づく二重特異性IgGも生成した。Fc鎖のC末端とロイシンジッパー配列との間にタンパク質分解切断部位を導入することにより、ロイシンジッパーを除去して、天然の組成の二重特異性IgG抗体を得ることが可能になる。
【0022】
Fc領域のヘテロ二量体化を強制するための改変の使用は重鎖の問題を標的にしているが、これらのアプローチは依然として軽鎖の問題を抱えている。したがって、2つの異なる軽鎖を使用することで、4つの異なる組み合わせを生成できるが、そのうち1つだけが二重特異性である。したがって、Fc修飾重鎖と組み合わせた同種重鎖と軽鎖の正しいペアリングを標的とするアプローチが開発されている。
【0023】
最初に記載されたアプローチは、共通の軽鎖の使用であった(Merchantら、1998)。これは、ファージライブラリーのL鎖レパートリーの非常に限られたサイズを反映して、ファージディスプレイライブラリーから分離された多様な抗原に対する抗体がしばしば同じVLドメインを使用するという観察に基づいている。重鎖のknobs-into-holes修飾と組み合わせて、例えばHER3およびMplに対する二重特異性IgG分子が作成された。その後、共通の軽鎖を有する様々な二重特異性IgGが、例えばknobs-into-holes修飾だけでなく、他のFc修飾を用いて製造された。
【0024】
上記のFc修飾のいくつかは、軽鎖の問題を回避するために、Fc鎖に融合したscFvフラグメントを利用して二重特異性抗体を生成した。Fabフラグメントは一本鎖誘導体(軽鎖のC末端とVHドメインのN末端を接続するscFab)として発現できるという知見に基づき、重鎖に接続された軽鎖を含む単一のポリペプチドの発現により完全なIgG分子が生成された。CH1とCL間を接続するジスルフィド結合の欠失を含む、30残基(例えば、(G4S)6)~38残基の長さのリンカーが利用されてきた。改良されたscFabプラットフォームが、60の柔軟な残基のリンカーを使用してジスルフィド結合scFab分子について記載された。G4S6リンカーを適用して、Fc領域のknobs-into-holes変異と組み合わせた二重特異性Fab-Fc融合タンパク質が生成され、これをscFvフラグメントのC末端融合によりさらに修飾して、例えば、EGFR、IGF-1R、およびcMetまたはHER3のいずれかを標的とする三重特異性で三価および四価の分子を得た。scFabフォーマットをLUZ-Y Fcヘテロ化戦略とも組み合わせた。ここで、タンパク質分解切断部位をFabリンカーに導入して、正しく組み立てられた二重特異性IgG分子からリンカーを除去できるようにした。さらに、EGFRおよびIGF-1Rを標的とする二重特異性IgG(高収量で発現できた)のように、scFabを未修飾のFabフラグメントと組み合わせて、Fc(kih)と組み合わせて二重特異性Fab-scFab-Fc融合タンパク質(OAscFab-IgGフォーマット)を生成した。。
【0025】
別のアプローチがCrossMabテクノロジーにより適用される。この場合、knobs-into-holes重鎖のコンテキストにおいて、1つのFabアームの軽鎖が対応する重鎖のFdフラグメントで交換されるか(CrossMabFab)、または1つのFabの可変ドメイン(CrossMabVH-VL)または定常ドメイン(CrossMabCH1-CL)の1つのペアのみが軽鎖と重鎖の間で交換される。これにより、非修飾軽鎖と対応する非修飾重鎖のペアリング、および修飾軽鎖と対応する修飾重鎖のペアリングが行われる。VEGFおよびAng-2に対する二重特異性CrossMabを例とすると、親和性が変更されることなく同時抗原結合が実証され、CrossMabCH1-CLは優れた副産物プロファイルを示した。その後の研究で、この抗体(A2V)は腫瘍関連マクロファージを再プログラムできることを示し、多くの頭蓋外腫瘍モデルの生存期間を延長した。抗体(RG7716)は現在臨床開発中である。最近の研究では、CrossMabCH1-CLフォーマットを適用して、ウイルス中和用にHIV Envタンパク質およびCD4/CCR5に対する二重特異性抗体を生成した。ここで、元のCrossMabsでは、非修飾軽鎖の誤ったペアリングにより不均一性が観察されたが、この鎖に追加の変異を導入することで改善できた。CrossMabアプローチは汎用性の高いプラットフォームテクノロジーへと発展しており、例えば、追加のFabフラグメントをknobs-into-holes重鎖の1つのN末端に融合することにより、または2本のCrossMab Fabアームをホモ二量体化重鎖のC末端に融合することにより、2価の二重特異性IgG分子だけでなく、3価および4価の二重特異性IgG融合タンパク質を生成することが可能になっており、二重特異性の三価および四価のIgG-Fab融合タンパク質を含む他の多くのフォーマットがCrossMabテクノロジーによって可能になり、例えば、CD3に対する1つの結合部位と腫瘍関連抗原に対する2つの結合部位を持つ二重特異性分子が生成されている。概念はさらに進化して、knobs-into-holes Fc領域とCrossMabテクノロジーをtwo-in-one Fabアームに適用することにより、四価で四特異性のfour-in-one抗体が生成された(下記参照)。
【0026】
軽鎖の問題に対する別のアプローチは、軽鎖が同種の重鎖とより高い親和性で相互作用できるようにする直交界面を生成するための軽鎖および重鎖界面の遺伝子工学である。この場合、可変ドメイン(VH-VLペア)と第一の定常ドメイン(CH1-CL)との間の相互作用が修飾される。多段階設計の適用によって特定された様々な修飾を試験して、直交Fabフラグメントのペアリングを支持する一連の変異が確立された。これらの修飾を適用して、様々な二重特異性IgG分子、例えば、EGFRxcMET、EGFRxHER2、AxlxcMet、およびEGFRxLTβRに対する、またはトラスツズマブの結合部位とペルツズマブの結合部位を組み合わせることによりHER2の2つのエピトープに対する二重特異性IgG分子を生成した。ここで、Fcヘテロ二量体化は、CH3ドメインに導入された静電ステアリング効果(electrostatic steering effects)を通じて行われた(Gunasekaranら、2010)。例えば、ともにラムダ軽鎖であるペルツズマブ(抗HER2)およびマツズマブ(抗EGFR)に基づく直交Fabアームを持つ二重特異性抗体が、ペルツズマブの重鎖におけるQ39K、R62E、H172A、F174Gおよび軽鎖におけるD1R、Q38R、L135Y、S176Wの置換(VRD1CRD2修飾)をマツズマブの重鎖におけるQ39Yおよび軽鎖におけるQ38Rの置換(VRD2修飾)と組み合わせることにより生成され、90%の正しい軽鎖アセンブリを生成した。
【0027】
同種の重鎖Fcフラグメントとの軽鎖のペアリングを指示するさらなる試みは、1つのFabアームのCH1ドメインおよびCLドメインをT細胞受容体(TCR)からのCαドメインおよびCβドメインで置換することであった。これを適用して、トラスツズマブとペルツズマブに由来する二重特異性抗体の例として、Fabアームが重鎖のN末端へ(G4S)5リンカーで融合したFab-IgG分子、またはFabアームが重鎖のC末端へ(G4S)4リンカーで融合したIgG-Fab分子のいずれかを生成した。しかしながら、おそらくトラスツズマブ結合部位の強力なVH/VL相互作用のために、ほんのわずかな画分のみが正しいFabアームのペアリングを示した。これは、トラスツズマブFvにおいてVLドメインに追加の変異(Y36F)を導入してVH-VL相互作用を弱めるとともに、VLドメインとVHドメインの間に電荷-電荷相互作用(VL Q38D、VH Q39K)を導入することにより、ある程度改善された。
【0028】
しかしながら、多重特異性抗体のヘテロ二量体化を指示する多くのアプローチが存在するが、これらの分子は人工的である。特に免疫原性は解決すべき重要な問題のままである。さらに、ヘテロ二量体化の程度は、しばしば満足のいくものではなく、熱安定性および生物物理学的特性、例えば、半減期はしばしば期待どおりではない。
【0029】
先行技術の欠点を克服するために、本発明者らは、1つ、2つまたはそれ以上の特異性および力価を有する分子を生成するための構築ブロックとして使用できる、ヘテロ二量体に集合するIgドメインの生成をさらに検討した。重要な特徴は、これらのヘテロ二量体のペアがヒト配列のみで構成され、これらのペアが変異を導入することなしに完全に天然のヘテロ二量体化界面を提供し、したがって免疫応答を誘発する傾向を最小限に抑えることである。さらに、ヘテロ二量体化Igドメインは、天然に存在する配列内に含まれるジスルフィド結合(システイン残基間で形成される)によって接続され、進化的に発達した、したがって最適なコンホメーションで提示される。さらに、これらのドメインには、例えば、FcRnまたはCH2ドメインや可変ドメインなどの隣接Igドメインと相互作用する能力がさらに付与されて、ヘテロ二量体化ドメインにさらに有利な特性を提供する。驚くべきことに、生成された二価フォーマットの終末相半減期を改善することができ、バイオアベイラビリティが増加することがわかった。さらに、これらのヘテロ二量体化Ig構築ブロックは、CD3発現T細胞をFAP(線維芽細胞活性化タンパク質)またはHer3発現腫瘍細胞にまたはFAP発現線維芽細胞によって囲まれた腫瘍細胞に再標的する、二価または三価の二重特異性scFv-Fc融合タンパク質を生成するために使用した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の基本原理は、タンパク質複合体の2つまたはそれ以上のタンパク質に含まれ得る新規なヘテロ二量体化領域またはヘテロ二量体化タンパク質ドメイン(HRIおよびHRII)の生成であり、ここで、定常免疫グロブリンドメインは自然にヘテロ二量体化し(1番目および3番目のCRI)、修飾されてHRIおよびHRIIに追加の特性を提供する。これらの特性は、ヘテロ二量体化定常免疫グロブリンドメイン(1番目および3番目のCRI)のアミノ酸を代替定常免疫グロブリンドメイン(2番目および4番目のCRI)のアミノ酸で置換することにより、1番目および3番目のCRIとは異なる1つまたはそれ以上のさらなる定常免疫グロブリンドメイン(2番目および4番目のCRI)からヘテロ二量体化定常免疫グロブリンドメイン(1番目および3番目のCRI)に転送される。これらの特性は、例えば、新生児Fc受容体(FcRn)との相互作用、またはN末端またはC末端に接続されたタンパク質ドメイン(例えば、1番目、2番目、3番目または4番目のCRIではないさらなる定常免疫グロブリンドメイン)との相互作用である。
【0031】
したがって、第1の態様では、本発明は、少なくとも2つのアミノ酸鎖Iおよびアミノ酸鎖IIを含むタンパク質複合体であって、該アミノ酸鎖Iおよびアミノ酸鎖IIは、アミノ酸鎖Iに含まれるヘテロ二量体化領域I(HRI)およびアミノ酸鎖IIに含まれるヘテロ二量体化領域II(HRII)を介して互いに非共有結合しており、HRIおよびHRIIはそれぞれ、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のヒト定常領域のヘテロ二量体化ドメインを含み、ここで、各ヘテロ二量体化ドメインは、さらなる免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のアミノ酸配列が各HRIおよびHRIIのヘテロ二量体化界面の外側にある各ヘテロ二量体化ドメインの少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの領域に挿入されるように、すなわち、好ましくはHRIおよびHRIIのヘテロ二量体化後に溶媒接触可能であるように、修飾されている、タンパク質複合体を提供する。
【0032】
より具体的には、本発明のタンパク質複合体は、少なくとも2つのアミノ酸鎖Iおよびアミノ酸鎖IIを含み、該アミノ酸鎖Iおよびアミノ酸鎖IIは、アミノ酸鎖Iに含まれるヘテロ二量体化領域I(HRI)およびアミノ酸鎖IIに含まれるヘテロ二量体化領域II(HRII)を介して互いに非共有結合しており、
(a)HRIは、7つの逆平行βストランドAI、BI、CI、DI、EI、FI、およびGI、6つの介在領域bI、cI、dI、eI、fI、およびgI、N末端領域aI、およびC末端領域hIを、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
aI-AI-bI-BI-cI-CI-dI-DI-eI-EI-fI-FI-gI-GI-hI、
HRIは免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の1番目のヒト定常領域(1番目のCRI、アクセプター)に免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の2番目のヒト定常領域(2番目のCRI、ドナー)のアミノ酸が点在した(interspersed with)融合タンパク質であり、
ここで、1番目のCRIは、7つの逆平行βストランドA1、B1、C1、D1、E1、F1、およびG1、6つの介在領域b1、c1、d1、e1、f1、およびg1、N末端領域a1、およびC-末端領域h1を、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
a1-A1-b1-B1-c1-C1-d1-D1-e1-E1-f1-F1-g1-G1-h1、
ここで2番目のCRIは、7つの逆平行βストランドA2、B2、C2、D2、E2、F2、およびG2、6つの介在領域b2、c2、d2、e2、f2、およびg2、N末端領域a2、およびC末端領域h2を、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
a2-A2-b2-B2-c2-C2-d2-D2-e2-E2-f2-F2-g2-G2-h2、
ここで、HRIは1番目のCRIのアミノ酸配列を有し、1番目のCRIの少なくとも以下のアミノ酸が2番目のCRIの以下のアミノ酸で置換されている:
(i)a1の少なくとも1つのアミノ酸がa2の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換1);
(ii)c1の少なくとも1つのアミノ酸がc2の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換2);および
(iii)g1の少なくとも1つのアミノ酸がg2の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換3)、および
(b)HRIIは、7つの逆平行βストランドAII、BII、CII、DII、EII、FII、およびGII、6つの介在領域bII、cII、dII、eII、fII、およびgII、N末端領域aIIおよびC末端領域hIIを、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
aII-AII-bII-BII-cII-CII-dII-DII-eII-EII-fII-FII-gII-GII-hII、
HRIIは免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の3番目のヒト定常領域(3番目のCRI、アクセプター)に免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の4番目のヒト定常領域(4番目のCRI、ドナー)のアミノ酸が点在した融合タンパク質であり、
ここで、3番目のCRIは、7つの逆平行βストランドA3、B3、C3、D3、E3、F3、およびG3、6つの介在領域b3、c3、d3、e3、f3、およびg3、N末端領域a3、およびC末端領域h3を、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
a3-A3-b3-B3-c3-C3-d3-D3-e3-E3-f3-F3-g3-G3-h3、
ここで4番目のCRIは、7つの逆平行βストランドA4、B4、C4、D4、E4、F4、およびG4、6つの介在領域b4、c4、d4、e4、f4、およびg4、N末端領域a4、およびC末端領域h4を、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
a4-A4-b4-B4-c4 -C4-d4-D4-e4-E4-f4-F4-g4-G4-h4、
ここで、HRIIは3番目のCRIのアミノ酸配列を有し、3番目のCRIの少なくとも以下のアミノ酸が4番目のCRIの以下のアミノ酸で置換されている:
(i)a3の少なくとも1つのアミノ酸がa4の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換4);
(ii)c3の少なくとも1つのアミノ酸がc4の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換5);および
(iii)g3の少なくとも1つのアミノ酸がg4の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換6)、
ここで、1番目のCRIおよび3番目のCRIは互いに異なり、生理学的条件下で互いに特異的に結合する。
【0033】
第二の態様において、本発明は、第一の態様のアミノ酸鎖Iおよび/またはアミノ酸鎖IIをコードする核酸を提供する。
【0034】
第三の態様において、本発明は、第二の態様の核酸を含むベクターを提供する。
【0035】
第四の態様において、本発明は、アミノ酸鎖IのHRIおよび/またはアミノ酸配列IIのHRIIのアミノ酸配列を決定(定義)する方法を提供し、該方法は以下の工程を含む:
(i)1番目のCRI、2番目のCRI、3番目のCRI、および4番目のCRIを選択し;
(ii)1番目のCRI、2番目のCRI、3番目のCRI、および4番目のCRIの7つのβストランドA、B、C、D、E、FおよびG、1番目のCRI、2番目のCRI、3番目のCRI、および4番目のCRIの介在配列b、c、d、e、fおよびg、1番目のCRI、2番目のCRI、3番目のCRI、および4番目のCRIのそれぞれのN末端配列およびC末端配列aおよびhを決定(定義)し;
(iii)1番目のCRIのaの少なくとも1つのアミノ酸を2番目のCRIのaの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換1);1番目のCRIのcの少なくとも1つのアミノ酸を2番目のCRIのcの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換2);1番目のCRIのgの少なくとも1つのアミノ酸を2番目のCRIのgの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換3);3番目のCRIのaの少なくとも1つのアミノ酸を4番目のCRIのaの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換4);3番目のCRIのcの少なくとも1つのアミノ酸を4番目のCRIのcの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換5);および3番目のCRIのcの少なくとも1つのアミノ酸を4番目のCRIのcの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換6)、
ここで、1番目のCRIおよび3番目のCRIは互いに異なり、生理学的条件下で互いに特異的に結合する。
【0036】
第五の態様において、本発明は、第四の態様に従って決定(定義)されたHRI配列を含むアミノ酸鎖Iおよび/または第四の態様に従って決定(定義)されたHRII配列を含むアミノ酸鎖IIを製造する方法を提供する。
【0037】
第六の態様において、本発明は、医薬として使用するための第一の態様のタンパク質複合体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】定常Igドメイン配列の模式図。Igドメインの配列の漫画を表すが、矢印はβストランドの位置を示し、バーはループ領域を記載する。
【0039】
図2】ヘテロ二量体化Igドメインの模式図。免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のヒト定常領域(CRI)とヘテロ二量体化領域IおよびII(HRIおよびHRII)の例示的なセット。可能な1番目および3番目のCRI配列は、例えば鎖間ジスルフィド結合(黒いバー)を形成する可能性を保持する2つの異なるヘテロ二量体化Igドメイン(白い部分、1番目のCRIおよび3番目のCRI)に由来する。例えば、FcRnまたは他のIgドメインと相互作用するIgドメインの可能な2番目および4番目のCRI配列(2番目のCRIおよび4番目のCRI)は黒で示す。
【0040】
図3】一連のIgドメインに関するグラフィック研究。一連のIgドメインのアミノ酸骨格の重ね合わせの漫画を示す(図4を参照)。βストランドは黒で、ループ領域は灰色で表示してある。
【0041】
図4】幾つかのIgドメインの配列アライメント。βストランドを形成すると予測された残基は、黒のフォントと濃い灰色の背景で強調表示してある。βストランドを形成すると予測されたが、構造または配列のアライメントによりβストランドA-Gから除外された残基は、黒いフォントと明るい灰色の背景で強調表示してある。βストランドを形成するとは予測されなかったが、構造または配列のアライメントによりβストランドA-Gに含まれる残基は、白いフォントと濃い灰色の背景で強調表示してある。
【0042】
図5】2番目/4番目のCRIおよび1番目/3番目のCRI配列定義の概略図。ヘテロ二量体化Igドメインの配列を示してあり、矢印はβストランドの位置を示し、バーはループ領域を示す。白色は1番目/3番目のCRI配列を示し、黒色は2番目のCRI/4番目のCRI配列から始まる配列ストレッチを示す。異なる2番目/4番目のCRI配列の長さは、特別な適用(A:CH31、B:CH3k、C:その他のドメイン)を記載する。
【0043】
図6】2番目のCRI/4番目のCRIアミノ酸による1番目/3番目のCRI残基の追加の置換に関する画像研究。a)IgG1 CH3のVal37(灰色、棒)とIle46およびVal48(灰色の球)の相互作用。IgG1 CH3(灰色)から1番目/3番目のCRIドメイン(黒)にグラフトされている。b)IgG CH3からのGlu49、Ala47およびMet107(灰色の棒)と、ヘテロ二量体化Igドメイン(黒)のN末端に融合したIgG CH2ドメインの残基(灰色の球体)との相互作用。c)IgG CH1のTyr81(灰色の棒)または任意の軽鎖定常ドメインと、ヘテロ二量体化IgドメインのN末端に融合した可変ドメイン(灰色の球)との相互作用(黒)。
【0044】
図7】ヘテロ二量体化Igドメインの伸長。多機能タンパク質複合体(例えば、FcRn結合能をもつ共有結合ヘテロダイマー)のN末端およびC末端は、異なるIgドメイン、TNFSFメンバー、他のサイトカイン、毒素などを含むさらなるタンパク質ドメインに融合してよい。
【0045】
図8】CH31(HRI)およびCH3k(HRII)Igドメインの配列アライメント。示されているのは、IgG1-CH1(1番目のCRI)とIgG1-CH3(2番目のCRI、上のパネル)のアライメントとIgκ-CL(3番目のCRI)とIgG1-CH3(4番目のCRI、下のパネル)のアライメントである。FcRn結合能を持つヘテロ二量体化Igドメインを作成するために使用された配列部分には下線を付している。βストランドを形成すると予測された残基は、黒いフォントと濃い灰色の背景で強調表示してある。βストランドを形成すると予測されたが、構造または配列のアライメントによりβストランドA-Gから除外された残基は、黒いフォントと明るい灰色の背景で強調表示してある。βストランドを形成するとは予測されなかったが、構造または配列のアライメントによりβストランドA-Gに含まれる残基は、白いフォントと暗い灰色の背景で強調表示してある。
【0046】
図9】ヘテロ二量体化Fc部分。実施例1は、ヘテロ二量体化抗体のFc部分を作成するための提示されたシステムの適用を示す。したがって、IgG1 CH1およびIgκ CLを、それぞれ、グラフトされたIgG1-CH3の2番目のCRIおよび4番目のCRI配列(IgG1ヒンジおよびCH2配列のC末端に融合)とともに1番目のCRIおよび3番目のCRIとして使用した(Fc1kと命名)。
【0047】
図10】対照の構築物scFv13.7-Fc1kおよびscFv13.7-Fcの遺伝子型。a)クローニングに使用される制限部位を含むscFv13.7-Fc1k重鎖および軽鎖のヘテロ二量体化IgGドメインの遺伝子配置。b)クローニングに使用される制限部位を含むscFv13.7-Fc重鎖および軽鎖のホモ二量体化IgGドメインの遺伝子配置。
【0048】
図11】対照構築物scFv13.7-Fc1kおよびscFv13.7-Fcの発現。a)scFv13.7-Fc1kの概略図。b)精製scFv13.7-Fc1kのSDS-PAGE(5%スタッキングゲル、12%分離ゲル)。c)scFv13.7-Fc1kのサイズ排除クロマトグラフィー。d)scFv13.7-Fcの概略図。e)精製scFv13.7-FcのSDS-PAGE(5%スタッキングゲル、12%分離ゲル)。f)scFv13.7-Fcのサイズ排除クロマトグラフィー。
【0049】
図12】実施例2の概略図;Fv13.7-Fc1k。上のパネル、多機能Igドメインの生成。したがって、IgG1-CH1およびIgκ CLを、それぞれ、グラフトされたIgG1-CH3の2番目のCRIおよび4番目のCRI配列(IgG1-CH2のC末端に融合)とともに1番目のCRIおよび3番目のCRIとして使用した(Fc1kと命名)。VH13.7またはVL13.7の一方をリンカー配列を介して接続された各CH2ドメインに融合すると、一価のFv13.7-Fc1kが作成された。下パネル、クローニングに使用される制限部位を含むFv13.7-Fc1k重鎖および軽鎖のIgGドメインの遺伝子配列。
【0050】
図13】Fv13.7-Fc1kの発現。a)Fv13.7-Fc1kの概略図。b)精製Fv13.7-Fc1kのSDS-PAGE(5%スタッキングゲル、12%分離ゲル)。c)Fv13.7-Fc1kのサイズ排除クロマトグラフィー。
【0051】
図14】Fv13.7-Fc1kのヒトTNFR1-Fcへの平衡結合。ELISAでのhuTNFR1-Fcへの結合について、濃度の増加を試験した(n=3、平均値±SD)。Fab13.7を対照とした。
【0052】
図15】Fv13.7-Fc1kの生物活性。a)Fv13.7-Fc1kによって引き起こされるHT1080細胞からのIL-8放出。非刺激細胞、TNF(33nM)、ATROSABおよびFab13.7を対照とした。2つの個別の実験の平均値と標準偏差を示す。b)0.1nM TNFによって誘導されるIL-8の阻害を示す。ATROSAB、Fab13.7、0.1nM TNFおよび非刺激細胞を対照とした。2つの個別の実験の平均値と標準偏差を示す。
【0053】
図16】Fv13.7-Fc1kの薬物動態研究。単回投与(25μg)後の初期および終末相血漿半減期、およびバイオアベイラビリティ(曲線下面積)を、マウス遺伝子座にヒトTNFR1の細胞外ドメインをホモ接合的に保有するC57BL/6Jマウス(ATROSABの場合n=3/n=4)を使用して決定した。血清試料中に残存する活性抗体をELISAにより検出した。ATROSABおよびFab13.7は対照とした。
【0054】
図17】実施例3の概略図-FAPN-CH3N-hFcおよびFAPN-CH3N-Fc。FAPまたはCD3のいずれかを標的とする2つのscFvフラグメントを、ヘテロ二量体化Fc部分Fc1kのヒンジ領域にN末端で融合させた(実施例3a)。ヒンジを介した共有結合による架橋を回避するために、システインを含まないヒンジ配列を使用して同じ構築物を作成した(実施例3b)。
【0055】
図18】実施例4の概略図-FAPN-CH3C-hFcおよびFAPN-CH3C-Fc。FAPまたはCD3のいずれかを標的とする2つのscFvフラグメントを、ヘテロ二量体化Fc部分Fc1kにN末端(FAP)またはC末端(CD3)で融合させた(実施例4a)。ヒンジを介した共有結合による架橋を回避するために、システインを含まないヒンジ配列を使用して同じ構築物を作成した(実施例4b)。
【0056】
図19】実施例5の概略図-FAPNN-CH3C-hFcおよびFAPNN-CH3C-Fc。FAPを標的とする2つのscFvフラグメントをヘテロ二量体化Fc部分Fc1kにN末端で融合させ、別のCD3を標的とするscFvフラグメントをFc1kにC末端で融合させた(実施例5a)。ヒンジを介した共有結合による架橋を回避するために、システインを含まないヒンジ配列を使用して同じ構築物を作成した(実施例5b)。
【0057】
図20】実施例6の概略図-FAPNC-CH3C-hFcおよびFAPNC-CH3C-Fc。FAPを標的とする2つのscFvフラグメントをヘテロ二量体化Fc部分Fc1kにN末端またはC末端で融合させ、別のCD3を標的とするscFvフラグメントをFc1kにC末端で融合させた(実施例6a)。ヒンジを介した共有結合による架橋を回避するために、システインを含まないヒンジ配列を使用して同じ構築物を作成した(実施例6b)。
【0058】
図21】二重特異性IgGの生成のための1番目のCRI/3番目のCRIおよび2番目のCRI/4番目のCRI配列の配列アライメント。FcRnα3およびβ2ミクログロブリンの1番目のCRIおよび3番目のCRIドメイン配列をIgG CH3の2番目のCRIおよび4番目のCRIドメイン配列にアラインメントし(a)、TCRα2およびTCRβ2の1番目のCRIおよび3番目のCRIドメイン配列をIgG CH1およびIgκ定常ドメインの2番目のCRIおよび4番目のCRI配列にそれぞれアラインメントした(b)。FcRn結合能(a)またはIgドメイン間相互作用能(b)を有するヘテロ二量体化Igドメインを作成するために使用した配列部分には下線を付している。βストランドを形成すると予測された残基は、黒いフォントと濃い灰色の背景で強調表示してある。βストランドを形成すると予測されたが、構造または配列のアライメントによりβストランドA-Gから除外された残基は、黒いフォントと明るい灰色の背景で強調表示してある。βストランドを形成するとは予測されなかったが、構造または配列のアライメントによりβストランドA-Gに含まれる残基は、白いフォントと暗い灰色の背景で強調表示してある。
【0059】
図22】実施例7の概略図-二重特異性IgG。Fcヘテロ二量体化と軽鎖の問題を解決するために、2つの多機能Igドメインを作成する必要がある。Fcb2Rnは、FcRnα3およびβ2ミクログロブリンの1番目のCRIおよび3番目のCRIドメイン配列と、グラフトされたIgG CH3の2番目のCRIおよび4番目のCRI配列とで構成される(7a)。FabTCRは、TCRα2およびTCRβ2の1番目のCRIおよび3番目のCRIドメイン配列と、グラフトされたIgG CH1およびIgκ定常ドメインの2番目のCRIおよび4番目のCRI配列とで構成される(7b)。
【0060】
図23】実施例8の概略図-Fv13.7X-Fc1k。上のパネル、多機能Igドメインの生成。したがって、IgG1-CH1およびIgκ CLを、それぞれ、グラフトされたIgG1-CH3の2番目のCRIおよび4番目のCRI配列(IgG1-CH2のC末端に融合)とともに1番目のCRIおよび3番目のCRIとして使用した(Fc1kと命名)。VH13.7またはVL13.7の一方をリンカー配列を介して接続された各CH2ドメインに融合すると、一価のFv13.7x-Fc1kが作成された。下パネル、クローニングに使用される制限部位を含むFv13.7x-Fc1k重鎖および軽鎖のIgGドメインの遺伝子配列。
【0061】
図24】Fv13.7X-Fcの生成および生物活性。a)Fv13.7X Fc1kの遺伝子型。b)精製タンパク質をSDS-PAGE(10%、クーマシー染色)で分析し、続いてSEC(c、Yarra SEC-3000カラム、流速0.5ml/分)で分析した。d)Fn13.7X Fc1kを、ヒトTNFR1-Fcへの結合についてELISAで試験した(n=1、重複の平均値±SD、ATROSABおよびFab13.7を対照とした)。e)Fv13.7X Fc1kによって引き起こされたHT1080細胞からのIL-8放出(n=1、重複の平均値±SD、ATROSAB、Fab13.7、非刺激細胞および組換えヒトTNFを対照とした)および0.1nM組換えヒトTNFを使用したTNF誘導性のIL-8放出(f、n=1、重複の平均値±SD、ATROSAB、Fab13.7、非刺激細胞および組換えヒトTNFを対照とした)を分析した。
【0062】
図25】実施例9の概略図-FvCD3-Fc1k-scFvHer32。上のパネル、多機能Igドメインの生成。したがって、IgG1-CH1およびIgκ CLを、それぞれ、グラフトされたIgG1-CH3の2番目のCRIおよび4番目のCRI配列(IgG1-CH2のC末端に融合)とともに1番目のCRIおよび3番目のCRIとして使用した(Fc1kと命名)。VHCD3またはVLCD3の一方をリンカー配列を介して接続された各CH2ドメインに融合し、1つのHer3-標的scFvフラグメントをFc1kの各C末端に融合すると、二重特異性で三価のFvCD3-Fc1k-scFvHer32が作成された。下パネル、クローニングに使用される制限部位を含むFvCD3-Fc1k-scFvHer32鎖のIgGドメインの遺伝子配列。
【0063】
図26】実施例10の概略図-13.7NCD3N-hFc1k。上のパネル、多機能Igドメインの生成。したがって、IgG1-CH1およびIgκ CLを、それぞれ、グラフトされたIgG1-CH3の2番目のCRIおよび4番目のCRI配列(IgG1-CH2のC末端に融合)とともに1番目のCRIおよび3番目のCRIとして使用した(Fc1kと命名)。ヒトTNFR1(scFv13.7)またはCD3を標的とする2つのscFvフラグメントを、ヘテロ二量体化Fc部分Fc1kのヒンジ領域にN末端で融合した。下パネル、クローニングに使用される制限部位を含む13.7NCD3N-hFc1k鎖のIgGドメインの遺伝子配列。
【0064】
図27】13.7NCD3N-hFc1kの生成および生物活性。a)13.7NCD3N-hFc1kの遺伝子型。b)精製タンパク質をSDS-PAGE(10%、クーマシー染色)で分析し、続いてSEC(c、Yarra SEC-3000カラム、流速0.5ml/分)で分析した。d)13.7NCD3N-hFc1kを、ヒトTNFR1-Fcへの結合についてELISAで試験した(n=1、重複の平均値±SD)。e)TNFR1を発現するHT1080細胞(n=1、重複の平均±SD)およびCD3を発現するJurkat細胞への13.7NCD3N-hFc1kの結合をフローサイトメトリーにより分析した(f、n=1、重複の平均±SD)。g)TNFR1を発現するHT1080細胞へのヒト末梢血単核細胞の動員および活性化を、刺激の5日後の生き残った標的細胞のクリスタルバイオレット染色によってインビトロで試験した(n=1、重複の平均±SD)。
【0065】
図28】実施例10の概略図-Her3NCD3N-hFc1k。上のパネル、多機能Igドメインの生成。したがって、IgG1-CH1およびIgκ CLを、それぞれ、グラフトされたIgG1-CH3の2番目のCRIおよび4番目のCRI配列(IgG1-CH2のC末端に融合)とともに1番目のCRIおよび3番目のCRIとして使用した(Fc1kと命名)。Her3またはCD3のいずれかを標的とする2つのscFvフラグメントを、ヘテロ二量体化Fc部分Fc1kのヒンジ領域にN末端で融合した。下パネル、クローニングに使用される制限部位を含むHer3NCD3N-hFc1k鎖のIgGドメインの遺伝子配列。
【0066】
図29】Her3NCD3N-hFc1kの生成および生物活性。a)Her3NCD3N-hFc1kの遺伝子型。b)精製タンパク質をSDS-PAGE(10%、クーマシー染色)で分析し、続いてSEC(c、Yarra SEC-3000カラム、流速0.5ml/分)で分析した。d)Her3NCD3N-hFc1kを、Her3-Fcへの結合についてELISAで試験した(n=1、重複の平均値±SD)。
【0067】
図30】実施例10の概略図-MSCPNCD3N-hFc1k。上のパネル、多機能Igドメインの生成。したがって、IgG1-CH1およびIgκ CLを、それぞれ、グラフトされたIgG1-CH3の2番目のCRIおよび4番目のCRI配列(IgG1-CH2のC末端に融合)とともに1番目のCRIおよび3番目のCRIとして使用した(Fc1kと命名)。MCSPまたはCD3のいずれかを標的とする2つのscFvフラグメントを、ヘテロ二量体化Fc部分Fc1kのヒンジ領域にN末端で融合した。下パネル、クローニングに使用される制限部位を含むMCSPNCD3N-hFc1k鎖のIgGドメインの遺伝子配列。
【0068】
図31】MSCPNCD3N-hFc1kの生成および生物活性。a)MSCPNCD3N-hFc1kの遺伝子型。b)精製タンパク質をSDS-PAGE(10%、クーマシー染色)で分析し、続いてSEC(c、Yarra SEC-3000カラム、流速0.5ml/分)で分析した。d)MCSPを発現するWM35細胞へのヒト末梢血単核細胞の動員および活性化を、刺激の5日後の生き残った標的細胞のクリスタルバイオレット染色によってインビトロで試験した(n=1、重複の平均±SD)。
【0069】
図32】実施例10の概略図-Her3NCD3C-hFc1k。上のパネル、多機能Igドメインの生成。したがって、IgG1-CH1およびIgκ CLを、それぞれ、グラフトされたIgG1-CH3の2番目のCRIおよび4番目のCRI配列(IgG1-CH2のC末端に融合)とともに1番目のCRIおよび3番目のCRIとして使用した(Fc1kと命名)。Her3またはCD3のいずれかを標的とする2つのscFvフラグメントを、ヘテロ二量体化Fc部分Fc1kのヒンジ領域にそれぞれN末端またはC末端で融合した。下パネル、クローニングに使用される制限部位を含むHer3NCD3C-hFc1k鎖のIgGドメインの遺伝子配列。
【0070】
図33】Her3NCD3C-hFc1kの生成および生物活性。a)Her3NCD3C-hFc1kの遺伝子型。b)精製タンパク質をSDS-PAGE(10%、クーマシー染色)で分析し、続いてSEC(c、Yarra SEC-3000カラム、流速0.5ml/分)で分析した。d)Her3NCD3C-hFc1kを、Her3-Fcへの結合についてELISAで試験した(n=1、重複の平均値±SD)。
【0071】
図34-1】配列。
図34-2】配列。
図34-3】配列。
図34-4】配列。
図34-5】配列。
図34-6】配列。
図34-7】配列。
【0072】
配列の一覧-フリーテキストの情報
配列番号:1 IgG1のCH1のアミノ酸配列
配列番号:2 IgG2のCH1のアミノ酸配列
配列番号:3 IgG3のCH1のアミノ酸配列
配列番号:4 IgG4のCH1のアミノ酸配列
配列番号:5 IgA1のCH1のアミノ酸配列
配列番号:6 IgA2のCH1のアミノ酸配列
配列番号:7 IgDのCH1のアミノ酸配列
配列番号:8 IgEのCH1のアミノ酸配列
配列番号:9 IgMのCH1のアミノ酸配列
配列番号:10 TCRαのアミノ酸配列
配列番号:11 TCRβのアミノ酸配列
配列番号:12 FcRnα3のアミノ酸配列
配列番号:13 β2ミクログロブリンのアミノ酸配列
配列番号:14 HLA-Aのアミノ酸配列
配列番号:15 HLA-Bα3のアミノ酸配列
配列番号:16 HLA-Dα2のアミノ酸配列
配列番号:17 HLA-Dβ2のアミノ酸配列
配列番号:18 Igκ定常領域のアミノ酸配列
配列番号:19 Igλ定常領域のアミノ酸配列
配列番号:20 CH31、1番目のCRI:CH1(IgG1)、2番目のCRI:CH3(IgG1)のアミノ酸配列
配列番号:21 CH3κ、3番目のCRI:CLκ, 2番目のCRI:CH3(IgG1)のアミノ酸配列
配列番号:22 CH1H3、1番目のCRI:CH1(IgG1)、2番目のCRI:CH3(IgG1)のアミノ酸配列
配列番号:23 CLkH3、3番目のCRI:CLκ、4番目のCRI:CH3(IgG1)のアミノ酸配列
配列番号:24 b2mH3、1番目のCRI:β2ミクログロブリン、2番目のCRI:CH3(IgG1)のアミノ酸配列
配列番号:25 FcRnH3、3番目のCRI:FcRnα3ドメイン、4番目のCRI:CH3(IgG1)のアミノ酸配列
配列番号:26 TCRaH3、1番目のCRI:TCRα鎖定常ドメイン、2番目のCRI:CH3(IgG1)のアミノ酸配列
配列番号:27 TCRbH3、3番目のCRI:TCRβ鎖定常ドメイン、4番目のCRI:CH3(IgG1)のアミノ酸配列
配列番号:28 TCRaH1、1番目のCRI:TCRα鎖定常ドメイン、2番目のCRI:CH1(IgG1)のアミノ酸配列
配列番号:29 TCRaLk、3番目のCRI:TCRα鎖定常ドメイン、4番目のCRI:CLκのアミノ酸配列
配列番号:30 TCRaLL、3番目のCRI:TCRα鎖定常ドメイン、4番目のCRI:CLλのアミノ酸配列
配列番号:31 TCRbH1、1番目のCRI:TCRβ鎖定常ドメイン、2番目のCRI:CH1(IgG1)のアミノ酸配列
配列番号:32 TCRb1Lk、3番目のCRI:TCRβ鎖定常ドメイン、4番目のCRI:CLkのアミノ酸配列
配列番号:33 TCRbLL、3番目のCRI:TCRβ鎖定常ドメイン、4番目のCRI:CLλのアミノ酸配列
配列番号:34 VH13.7-CH2-CH31のアミノ酸配列
配列番号:35 VL13.7-CH2-CH3κのアミノ酸配列
配列番号:36 scFv13.7-ヒンジ-CH2-CH31のアミノ酸配列
配列番号:37 ヒンジ-CH2-CH3κのアミノ酸配列
配列番号:38 scFvhuU3-ヒンジ-CH2-CH3κのアミノ酸配列
配列番号:39 scFv3-43-ヒンジ-CH2-CH31のアミノ酸配列
配列番号:40 scFhuMCSP-ヒンジ-CH2-CH31のアミノ酸配列
配列番号:41 VH13.7-CH2-CH3kのアミノ酸配列
配列番号:42 VL13.7-CH2-CH31のアミノ酸配列
配列番号:43 VHCD3-CH2-CH3k-scFvHer3のアミノ酸配列
配列番号:44 VLCD3-CH2-CH31-scFvHer3のアミノ酸配列
配列番号:45 IgG1 CH3のアミノ酸配列
配列番号:46 IgG2 CH3のアミノ酸配列
配列番号:47 IgG3 CH3のアミノ酸配列
配列番号:48 IgG4 CH3のアミノ酸配列
配列番号:49 IgM CH4のアミノ酸配列
配列番号:50 IgA1 CH3のアミノ酸配列
配列番号:51 IgA2 CH3のアミノ酸配列
配列番号:52 IgD CH3のアミノ酸配列
配列番号:53 IgE CH4のアミノ酸配列
配列番号:54 Igλ定常領域のアミノ酸配列
配列番号:55 Igλ定常領域のアミノ酸配列
配列番号:56 Igλ定常領域のアミノ酸配列
配列番号:57 TCRβ1のアミノ酸配列
配列番号:58 HLA-Dβ2のアミノ酸配列
【0073】
図35】Fv13.7X-Fc1kの生化学的特性評価。Fv13.7X-Fc1kを、安定したレンチウイルス形質導入後にCHO細胞プールから産生し、プロテインAクロマトグラフィーおよびその後の分取SECによって精製した。分析SEC(a、TSKgel SuperSW mAb HR、流量0.5ml/分、移動相Na2HPO4/NaH2PO4)および還元(R)および非還元(NR)条件下でのSDS-PAGE(b、NuPAGETM4~12%Bis-TRIS Midi Gel)により特性評価を行った。M:マーカー。c)動的光散乱および得られた結果の視覚的解釈により融解温度を決定した。指示された時点でのヒト血漿でのインキュベーション後に血漿安定性分析を実施し、ついでELISAによる残留結合タンパク質のEC50値の分析を行った(d)。
【0074】
図36】Fv13.7X-Fc1kの抗原およびFc受容体結合。Fv13.7X-Fc1kのヒトTNFR1-Fcへの結合をELISA(a、n=3、平均±SD)およびQCM(b)で分析した。b)の反応速度データを生成するために、128nMから4nMの間の5つの濃度を使用し、適合のため1対1の結合アルゴリズムを使用した。C)固定化Fv13.7X-Fc1kへのヒトFcγ受容体I、IIb、IIIおよび補体タンパク質C1qの結合をELISAで分析した。リツキシマブ(野生型Fc部分)とATROSAB(サイレントFc)を対照とした(n=2、平均値±SD)。
【0075】
図37】Fv13.7X-Fc1kのアゴニストおよびアンタゴニスト生物活性の欠如。TNFR1活性化に関してFv13.7X-Fc1kのアゴニスト活性の固有の欠如は、3つの個別のアッセイで実証された。A)HeLa細胞からのIL6放出、b)HT1080細胞からのIL-8放出、およびKym1細胞を使用した細胞死誘導アッセイ(c)において。Fv13.7X-Fc1kの阻害能はまた、HeLa細胞を使用したIL-6放出アッセイ(d)、HT1080細胞を使用したIL-8放出アッセイ(e)、およびKym-1細胞を使用した細胞死誘導アッセイでも示され、これらは0.1nM TNF(dおよびe)または0.01nM TNF(f)の一定濃度の存在下で行われた(f)。Fab13.7、ATROSABおよびTNF単独をTNFR1の活性化(a、bおよびcのTNFおよびATROSAB)およびTNF誘発TNFR1活性化の阻害(d、eおよびfのFab 13.7およびATROSAB)の対照分子とした。すべてのグラフは3つの個別の実験の平均を表し、エラーバーはSDを示す。
【0076】
図38】抗ヒトIgG抗体の存在下でのFv13.7X-Fc1kのアゴニスト生物活性の欠如。一定濃度(約15.8nM)の3つの異なる抗ヒトIgG血清製剤(a、b、c)の存在下でのFv13.7X-Fc1kによるHT1080細胞の表面上のTNFR1の活性化を、培養上清へのIL-8放出の検出によって決定した。細胞のみおよび33nM TNFを対照とした。潜在的に架橋する抗体のアゴニスト効果を、Fab13.7およびATROSABと比較した。すべての実験は、3つの個々の実験の平均値±標準偏差を示す。
【0077】
図39】Fv13.7X-Fc1kの薬物動態分析。400μgのFv13.7X-Fc1kを、野生型マウス遺伝子の代わりにマウス膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに接続されたヒトTNFR1細胞外ドメインの遺伝子を有するC56BL/6Jノックインマウスに注射した。血清中に残っている無傷のタンパク質を、示された時点でのTNFR1への結合時にELISAによって決定した。5匹のマウスの平均値±SDを示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本発明を以下に詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコル、および試薬に限定されず、これらは異なる場合があることを理解すべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのみのものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解すべきである。別に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0079】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、“A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)”、Leuenberger, H.G.W, Nagel, B.およびKoelbl, H.編(1995), Helvetica Chimica Acta, CH-4010バーゼル、スイス)の記載のとおりである。
【0080】
本明細書の本文全体で幾つかの文献が引用されている。本明細書で引用された各文献(すべての特許、特許出願、科学刊行物、製造業者の仕様、説明書、GenBankアクセッション番号配列提出などを含む)は、上記または以下にかかわらず、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなるものも、本発明が先行発明のおかげでそのような開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0081】
I.定義
「含む(comprise)」という単語、および「含む(comprises)」や「含む(comprising)」などのバリエーションは、言及した整数または工程または整数または工程のグループを包含することを意味するが、他の整数または工程または整数または工程のグループを除外することを意味するものではない。
【0082】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0083】
本明細書において、濃度、量、およびその他の数値データは「範囲」形式で表現または示されてよい。そのような範囲形式は、単に便宜上および簡潔さのために使用され、したがって、範囲の境界として明示的に列挙された数値だけでなく、その範囲内に包含されるすべての個々の数値または部分範囲をも、各数値および部分範囲が明示的に列挙されているかのように、含むように柔軟に解釈されるべきであることが理解されるべきである。例として、「150mg~600mg」の数値範囲は、明示的に引用された150mg~600mgの値を含むだけでなく、示された範囲内の個々の数値および部分範囲をも含むと解釈される。したがって、この数値範囲には、150、160、170、180、190、...580、590、600mgなどの個々の数値および150~200、150~250、250~300、350~600などの部分範囲が含まれる。これと同じ原則は、1つの数値のみを引用する範囲に適用される。さらに、そのような解釈は、範囲の広さや記述されている特性に関係なく適用されるべきある。
【0084】
「約」という用語は、数値に関連して使用される場合、示された数値よりも5%小さい下限を有し、示された数値より5%大きい上限を有する範囲内の数値を包含することを意味する。
【0085】
「核酸」および「核酸分子」という用語は、本明細書で同義的に使用され、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基またはその両方の一本鎖または二本鎖のオリゴマーまたはポリマーとして理解される。ヌクレオチドモノマーは、核酸塩基、5炭素の糖(リボースまたは2'-デオキシリボースなどであるが、これらに限定されない)、および1つから3つのリン酸基で構成される。典型的には、核酸は個々のヌクレオチドモノマー間のホスホジエステル結合を介して形成される。本発明の文脈において、核酸という用語には、リボ核酸(RNA)およびデオキシリボ核酸(DNA)分子が含まれるが、これらに限定されず、他の結合を含む核酸の合成形態(例えば、Nielsenら(Science 254: 1497-1500, 1991)に記載されているペプチド核酸)も含まれる。典型的に、核酸は一本鎖または二本鎖分子であり、天然に存在するヌクレオチドで構成されている。核酸の一本鎖の描写は、相補鎖の配列も(少なくとも部分的に)定義する。核酸は、一本鎖でも二本鎖でもよく、二本鎖および一本鎖配列の両方の部分を含んでもよい。例えば、一本鎖核酸分子は3'または5'オーバーハングを有することができ、そのため、その全長にわたって完全に二本鎖である必要はないか、または想定されていない。核酸は、生物学的、生化学的または化学的合成法、または増幅法、およびRNAの逆転写法を含む(これらに限定されない)当技術分野で知られている方法のいずれかにより得ることができる。核酸という用語は、染色体または染色体セグメント、ベクター(例えば、発現ベクター)、発現カセット、裸のDNAまたはRNAポリマー、プライマー、プローブ、cDNA、ゲノムDNA、組換えDNA、cRNA、mRNA、tRNA、マイクロRNA(miRNA)または低分子干渉RNA(siRNA)を含む。核酸は、例えば、一本鎖、二本鎖、または三本鎖であり得、特定の長さに限定されない。特に明記しない限り、特定の核酸配列は、明示的に示された配列に加えて、相補的配列を含むかまたはコードする。
【0086】
核酸は、エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼ、特に細胞内に見られるDNaseおよびRNaseによって分解されてよい。したがって、分解に対して安定化させるために本発明の核酸を修飾することは有利であり、それにより長期間にわたって細胞内で高濃度の核酸が維持されることが保証される。典型的には、そのような安定化は、1つ以上のインターヌクレオチドリン酸基を導入することにより、または1つまたはそれ以上の非リンインターヌクレオチドを導入することにより得ることができる。したがって、核酸は、天然に存在しないヌクレオチドおよび/または天然に存在するヌクレオチドへの修飾、および/または該分子の骨格への変化から構成され得る。核酸中の修飾されたインターヌクレオチドリン酸ラジカルおよび/または非リン架橋には、ホスホン酸メチル、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、ホスホロジチオエートおよび/またはリン酸エステルが含まれるが、これらに限定されず、非リンインターヌクレオチド類似体にはシロキサン架橋、炭酸架橋、カルボキシメチルエステル、アセトアミデート架橋および/またはチオエーテル架橋が含まれるが、これらに限定されない。ヌクレオチド修飾のさらなる例には、これらに限定されないが、以下が含まれる:それぞれ、エキソヌクレアーゼ分解/ポリメラーゼ伸長のライゲーションまたは防止を可能にする5'または3'ヌクレオチドのリン酸化;共有結合および共有結合に近い結合のためのアミノ、チオール、アルキン、またはビオチニル修飾;蛍光体および消光剤;およびデオキシイノシン(dI)、5-ブロモデオキシウリジン(5-ブロモ-dU)、デオキシウリジン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、インバーテッドdT、インバーテッドジデオキシ-T、ジデオキシシチジン(ddC 5-メチルデオキシシチジン)(5-メチルdC)、ロックされた核酸(LNA)、5-ニトロインドール、イソ-dCおよびイソdG塩基、2'-O-メチルRNA塩基、ヒドロキシメチルdC、5-ヒドロキシブチニル-2'-デオキシウリジン、8-アザ-7-デアザグアノシンおよびフッ素修飾塩基。したがって、核酸はまた、ポリアミドまたはペプチド核酸(PNA)、モルホリノおよびロックされた核酸(LNA)、およびグリコール核酸(GNA)およびトレオース核酸(TNA)を含む(これらに限定されない)人工核酸でもあり得る。
【0087】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれると「作動可能に連結」される。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を与える場合、コード配列に作動可能に連結されている;または、リボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合、コード配列に作動可能に連結されている。
【0088】
「ポリヌクレオチド」という用語は、本発明の文脈で使用される場合、約50ヌクレオチドを超える長さの核酸、例えば、長さが51またはそれ以上のヌクレオチドを指す。
【0089】
本発明のポリペプチドは、既存または天然の配列の単離、DNA複製または増幅、逆転写、適切な配列のクローニングおよび制限消化、またはNarangら(Meth. Enzymol. 68:90-99, 1979)のリン酸トリエステル法;Brownら(Meth. Enzymol. 68:109-151, 1979)のホスホジエステル法;Beaucageら(Tetrahedron Lett. 22:1859-1862, 1981)のジエチルホスホロアミダイト法;Matteucciら(J. Am. Chem. Soc. 103:3185-3191, 1981)のトリエステル法;自動合成法;または米国特許第4,458,066号の固体支持法、または当業者に知られている他の方法などの方法による直接化学合成を含むがこれらに限定されない任意の適切な方法によって調製される。
【0090】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、その中に含まれるタンパク質および/または核酸を細胞に導入されるかまたは導入することのできる、タンパク質またはポリヌクレオチドまたはそれらの混合物を指す。ベクターの例には、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたは人工染色体が含まれるが、これらに限定されない。特に、ベクターは、目的の遺伝子産物、例えば外来または異種DNAを適切な宿主細胞に輸送するのに用いる。ベクターは、宿主細胞におけるベクターの自律複製を促進する「レプリコン」ポリヌクレオチド配列を含んでいてよい。外来DNAは、宿主細胞で自然に見られないDNAであって、例えば、ベクター分子を複製したり、選択可能またはスクリーニング可能なマーカーをコードしたり、導入遺伝子をコードしたりする異種DNAとして定義される。ベクターは一旦宿主細胞に入ると、宿主染色体DNAとは独立してまたは同時に複製することができ、ベクターとその挿入DNAの幾つかのコピーを生成することができる。さらに、ベクターは、挿入されたDNAのmRNA分子への転写を可能にするか、または挿入されたDNAの複数のRNAのコピーへの複製を引き起こす必要な要素も含むことができる。ベクターは、目的の遺伝子の発現を調節する「発現制御配列」をさらに含んでいてもよい。典型的には、発現制御配列は、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、インシュレーター、またはリプレッサーなど(これらに限定されない)のポリペプチドまたはポリヌクレオチドである。1つまたは複数の目的遺伝子産物をコードする複数のポリヌクレオチドを含むベクターでは、発現は1つまたは複数の発現制御配列によって一緒にまたは別々に制御され得る。より具体的には、ベクターに含まれる各ポリヌクレオチドは別個の発現制御配列によって制御されてよいし、またはベクターに含まれるすべてのポリヌクレオチドが単一の発現制御配列によって制御されてもよい。単一の発現制御配列によって制御される単一のベクターに含まれるポリヌクレオチドは、オープンリーディングフレームを形成する。幾つかの発現ベクターは、発現されたmRNAの半減期を延長し、および/またはmRNAのタンパク質分子への翻訳を可能にする配列要素を、挿入されたDNAに隣接してさらに含む。したがって、挿入されたDNAによってコードされたmRNAおよびポリペプチドの多くの分子を迅速に合成できる。
【0091】
「アミノ酸」という用語は一般に、置換または非置換アミノ基、置換または非置換カルボキシ基、および1つまたは複数の側鎖または基、またはこれらの基のいずれかの類似体を含むモノマー単位を指す。例示的な側鎖には、例えば、チオール、セレノ、スルホニル、アルキル、アリール、アシル、ケト、アジド、ヒドロキシル、ヒドラジン、シアノ、ハロ、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、またはこれらの基の任意の組み合わせが含まれる。他の代表的なアミノ酸には、これらに限られないが、光活性化可能な架橋剤を含むアミノ酸、金属結合アミノ酸、スピン標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属含有アミノ酸、新規官能基を持つアミノ酸、他の分子に共有結合的にまたは非共有結合的に相互作用するアミノ酸、光ケージ化および/または光異性化可能なアミノ酸、放射性アミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体を含むアミノ酸、グリコシル化アミノ酸、他の炭水化物修飾アミノ酸、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能なおよび/または光切断可能なアミノ酸、炭素結合糖含有アミノ酸、酸化還元活性アミノ酸、アミノチオ酸含有アミノ酸、および1つまたは複数の毒性部分を含むアミノ酸が含まれる。本明細書で使用する「アミノ酸」という用語には、以下の20の天然または遺伝的にコードされたαアミノ酸が含まれる:アラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD )、システイン(CysまたはC)、グルタミン(GlnまたはQ)、グルタミン酸(GluまたはE)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リジン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)、およびバリン(ValまたはV)。「X」残基が定義されていない場合、これらは「任意のアミノ酸」として定義する必要がある。これら20種類の天然アミノ酸の構造は、例えば、Stryerら、Biochemistry、第5版、Freeman and Company(2002)に示されている。セレノシステインやピロリジンなどの追加のアミノ酸も遺伝的にコードされ得る(Stadtman(1996)“Selenocysteine”, Annu Rev Biochem. 65: 83-100およびIbbaら(2002)“Genetic code: introducing pyrrolysine,” Curr Biol. 12(13):R464-R466)。「アミノ酸」という用語にはまた、非天然アミノ酸、修飾されたアミノ酸(例えば、修飾された側鎖および/または骨格を有する)、およびアミノ酸類似体も含まれる。例えば、Zhangら、(2004)“Selective incorporation of 5-hydroxytryptophan into proteins in mammalian cells,” Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101(24):8882-8887、Andersonら、(2004)“An expanded genetic code with a functional quadruplet codon” Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101(20):7566-7571、Ikedaら、(2003)“Synthesis of a novel histidine analogue and its efficient incorporation into a protein in vivo,” Protein Eng. Des. Sel. 16(9):699-706、Chinら、(2003)“An Expanded Eukaryotic Genetic Code,” Science 301(5635):964-967、Jamesら、(2001)“Kinetic characterization of ribonuclease S mutants containing photoisomerizable phenylazophenylalanine residues,” Protein Eng. Des. Sel. 14(12):983-991、Kohrerら、(2001)“Import of amber and ochre suppressor tRNAs into mammalian cells: A general approach to site-specific insertion of amino acid analogues into proteins,” Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98(25):14310-14315、Bacherら、(2001)“Selection and Characterization of Escherichia coli Variants Capable of Growth on an Otherwise Toxic Tryptophan Analogue,” J. Bacteriol. 183(18):5414-5425、Hamano-Takakuら、(2000)“A Mutant Escherichia coli Tyrosyl-tRNA Synthetase Utilizes the Unnatural Amino Acid Azatyrosine More Efficiently than Tyrosine,” J. Biol. Chem. 275(51):40324-40328、およびBudisaら、(2001)“Proteins with {beta}-(thienopyrrolyl) alanines as alternative chromophores and pharmaceutically active amino acids,” Protein Sci. 10(7):1281-1292を参照。アミノ酸は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に融合することができる。
【0092】
本発明の文脈において「ペプチド」という用語は、ペプチド結合により連結されたアミノ酸の短いポリマーを指す。ペプチドはタンパク質と同じ化学(ペプチド)結合を持っているが、一般的に長さが短い。最も短いペプチドはジペプチドであり、2つのアミノ酸が単一のペプチド結合で結合されている。トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドなどもあり得る。典型的に、ペプチドは最大8、10、12、15、18または20アミノ酸長を有する。ペプチドは、環状ペプチドでない限り、アミノ末端とカルボキシル末端を有する。
【0093】
本発明の文脈において用語「ポリペプチド鎖」または「アミノ酸鎖」は、ペプチド結合により一緒に結合されたアミノ酸の単一の直鎖を指し、典型的には少なくとも約21個のアミノ酸を含む。
【0094】
本明細書で使用される「タンパク質複合体」という用語は、一群の2以上の関連するポリペプチドまたはアミノ酸鎖を指す。異なるポリペプチド鎖は異なる機能を持ち得る。タンパク質複合体は、四次構造の一形態である。タンパク質複合体内のタンパク質は、非共有結合タンパク質-タンパク質相互作用によって、および任意にさらに例えば2つの異なるポリペプチド鎖の2つの隣接するCys残基の間に形成される共有結合によって連結される。非共有結合および任意で共有結合の安定性に応じて、異なるタンパク質複合体は経時的に異なる程度の安定性を有する。
【0095】
「免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質(CRI)のヒト定常領域」という用語は、本発明の文脈において使用されて、2つのシステイン結合ベータシートのサンドイッチ状球状構造を形成する7つの逆平行βストランドを含む、60~150アミノ酸長のアミノ酸配列を指す。例示的なシート構造を図3に示す。本発明に関連して使用される最も好ましいCRIのアミノ酸配列を図4に示す。この用語は、ベータシートベースのIgドメイン様サンドイッチコンホメーションに折りたたむことができる限り、特に示された配列の変異体も含む。
【0096】
本明細書で使用される「ヘテロ二量体化領域」(HRI、HRII)という用語は、それぞれより大きなアミノ酸鎖Iおよびアミノ酸鎖II内のアミノ酸配列ストレッチであって、好ましくは生理学的条件下で互いに特異的に結合し、それゆえ、アミノ酸鎖Iおよびアミノ酸鎖IIのヘテロ二量体化に関与しているものを指す。ヘテロ二量体化領域という用語はまた、アミノ酸鎖IおよびIIのアミノ酸配列が異なることも意味する。上記で定義したタンパク質複合体に関しては、HRIとHRIIの間の結合は主に非共有相互作用によって媒介される。しかしながら、HRIおよびHRIIがそれぞれHRIとHRIIの結合界面内の隣接位置にCys残基を含む場合、これらのCys残基間の共有結合はHRIとHRII間の結合を安定させることができる。HRIおよびHRIIはそれぞれ、図3に示すようなβシート構造を形成する。
【0097】
「Fc機能」なる用語は、抗体媒介食作用、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性または補体媒介細胞溶解により、食細胞または細胞傷害性細胞を刺激して微生物または感染細胞を破壊する免疫グロブリンの能力を指すために使用される。この機能は、免疫細胞の特定の細胞、特にBリンパ球、濾胞樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、ヒト血小板および肥満細胞の表面に存在するFc受容体への抗体の結合に基づいている。「Fc機能」はさらに、半減期の延長を媒介する新生児Fc受容体(FcRn)に結合する能力を指す。当業者は、抗体フラグメントの抗体のFc機能を測定する方法をよく知っている。免疫グロブリンのFc機能は、主にCH2および/またはCH3ドメイン、特にIgGのCH2および/またはCH3ドメインにある。
【0098】
本発明の文脈において、タンパク質またはポリペプチドの「一次構造」は、ポリペプチド鎖のアミノ酸の配列である。タンパク質の「二次構造」は、タンパク質の局所セグメントの一般的な3次元形式である。しかしながら、「二次構造」は3次元空間内の特定の原子位置については記載しておらず、それは三次元構造とみなされる。タンパク質では、二次構造は、主鎖のアミド基とカルボキシル基との間の水素結合のパターンによって定義される。タンパク質の「三次構造」は、原子座標によって決定されるタンパク質の三次元構造である。「四次構造」は、マルチサブユニット複合体における複数の折り畳まれたまたはコイル状のタンパク質またはポリペプチド分子の配置である。
【0099】
本明細書で使用される「折り畳み」または「タンパク質の折り畳み」という用語は、タンパク質がその三次元形状または立体構造をとるプロセス、すなわち、タンパク質が水素結合、金属配位、疎水性力、ファンデルワールス力、π-π相互作用、静電効果、分子内Cys結合などの非共有結合および/または共有結合相互作用を介して特定の三次元形状を形成するプロセスを指す。したがって、「折り畳まれたタンパク質」という用語は、タンパク質の二次、三次、または四次構造などの三次元形状を指す。
【0100】
本発明の文脈において使用される「βストランド(beta strand)」という用語は、主鎖中のN-Cα-C-Nのねじれ角が約120度であるポリペプチド鎖内の5~10アミノ酸長セクションを指す。特定のタンパク質配列内のβストランドは、pdbファイルから注釈を取得することにより、(複数の)配列アラインメント(たとえば、Clustalオメガを使用)後に予測できる。7つのβストランドのすべてが割り当てられるわけではない場合(例えば、図4に星印で示す)、JPredのような一般に利用可能なソフトウェアツールを使用してβストランドの予測を追加で実行できる(図4のアライメントでは、デフォルト設定を使用した最長の累積予測を使用した)。7つのβストランドの開始位置と終了位置は、pyMolを使用してPDBファイルの追加の構造アライメントによって確認できる。それにより、(i)正式には割り当てられていない残基をストランドに含めるか、(ii)以前に割り当てられた残基をストランドから除外するか、(iii)複数配列アライメントによって配列中に導入されたβストランドの内側のギャップを削除するか、または(iv)βストランドの外側に新しいギャップを挿入することにより(図4の4つの例外、d_CH3:111位;m_CH1:#72位;HLAA/HLAB:#60位に対して実行されるように)、構造的に保存された残基に従って複数配列アライメントを改良できる。挿入/伸長または削除/短縮されたギャップ位置は、C末端により近く位置する領域の配列のアラインメントを維持するため、それぞれ複数配列アラインメントの際に配列中に導入された以下の既存のギャップのギャップ位置の削除または挿入によって補償されなければならない。したがって、7つのβストランドは、これらの手段によって次のように定義できる:
A)予測される最初のβストランドのN末端の保存されたプロリン残基に続く6残基(図4の13~18位)。
B)2番目に予測されるβストランドに含まれる保存されたシステイン残基にN末端に隣接する4つの残基およびC末端に隣接する5つの残基(図4の13-18位)31~40)。
C)3番目に予測されるβストランドに含まれるトリプトファン残基にN末端に隣接する4つの残基およびC末端に隣接する2つの残基(図4の46~52位)。
D)図4の63~70位。しかしながら、アラインメント全体を通して保存された残基への接続は実行不可能であった。
E)4番目に予測されるβストランドの最初またはN末端に位置する保存されたチロシン/フェニルアラニン残基で始まる8つの残基(図4の81~89位)。
F)6番目に予測されるβストランドに含まれる保存されたシステイン残基にN末端に隣接する2つの残基およびC末端に隣接する4つの残基として定義(図4の102~108位)。
G)図4の128~133位。しかしながら、アライメント全体を通して保存された残基への接続は実行不可能であった。
【0101】
したがって、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質(CRI)の一定の領域について、当業者は7つのβストランドを簡単に決定できる。あるいは、図4に含まれていない所定のCRIを図4のアラインメントに追加できる。βストランドAはIgLCRC13~18位にまたがり、βストランドBはIgLCRCの31~40位にまたがり、βストランドCはIgLCRCの46~52位にまたがり、βストランドDはIgLCRCの63~70位にまたがり、βストランドEはIgLCRCの81~89位にまたがり、βストランドFはIgLCRCの102~108位にまたがり、βストランドGはIgLCRCの128~133位にわたる。
【0102】
本発明の文脈で使用される「βシート」という用語は、βシートを形成する逆平行配向βストランドを指す。βシートは、タンパク質の通常の二次構造の一般的なモチーフである。ペプチド鎖は、N末端とC末端によって方向性が付与されるため、βストランドも方向性があると言える。それらは通常、C末端を指す矢印によってタンパク質トポロジー図で表される。隣接するβストランドは、逆平行、平行、または混合配置で水素結合を形成できる。逆平行配列では、連続するβストランドが方向を交互に変えて、1つのストランドのN末端が次のストランドのC末端に隣接するようにする。これは、カルボニルとアミンの間のストランド間水素結合を平面にすることができるため、最も強いストランド間安定性をもたらす配置である。β構造は、長く伸びたポリペプチド鎖によって特徴付けられる。βストランドのアミノ酸組成は、疎水性(水を恐れる)アミノ酸残基を好む傾向がある。これらの残基の側鎖は、親水性の高い(水を好む)残基の側鎖よりも水に溶けにくい傾向がある。β構造は、ストランド間の水素結合が水分子との競合から保護されているタンパク質のコア構造内に見られる傾向がある。図3から明らかなように、各CRI、それゆえ、2つのCRIからそれぞれ派生したHRIとHRIIにも含まれる7つの逆平行βストランドは、βシート構造を形成する。
【0103】
ヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン様タンパク質の文脈で使用される「介在領域」という用語は、2つのベータストランド間のアミノ酸鎖を指す。介在領域は、構造化されておらず、例えば、ループを形成し、短いαヘリックスを含んでいてよい。所定のCRIについて、当業者は、構造的および/または配列アラインメントにより介在領域を決定することができる。図4に含まれていないCRIはアライメントに追加できる。アラインメントされたら、介在領域「b」、「c」、「d」、「e」、「f」および「g」は、それぞれ、IgLCRCの19~30位、IgLCRCの41~45位、IgLCRCの53~62位、IgLCRCの71~80位、IgLCRCの90~101位、およびIgLCRCの109~127位にまたがる。各介在領域は、7つの逆平行ベータストランドがベータシートを形成できる限り、1つまたはそれ以上のアミノ酸欠失を含むことができる。したがって、介在領域は、その介在領域のIgLCRC位置によって示唆される、より少ないまたはより多いアミノ酸を有し得る。介在領域のN末端およびC末端アミノ酸、したがってその長さは、本発明のヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン様タンパク質のベータシートのN末端およびC末端アミノ酸によって決定される。したがって、介在領域「b」の長さは5~12、特に6~11、特に7~10、より具体的には8~9アミノ酸であり、介在領域「c」の長さは1~5、特に2~4、より具体的には3アミノ酸であり、介在領域「d」は1~10、特に3~8、より具体的には4~6アミノ酸であり、介在領域「e」の長さは1~10、特に2~8、より詳細には4~6アミノ酸であり、介在領域「f」の長さは1~12、特に3~10、より具体的には5~8アミノ酸であり、介在領域「g」の長さは、4~19、特に5~15、より具体的には7~11アミノ酸である。前述のように、一部のヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン様タンパク質の介在領域は、上記の典型的な長さよりも長くてもよい。介在領域がその介在領域のIgLCRC位置よりも多くのアミノ酸を含む場合は、例えば特定のヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン様タンパク質の介在領域「b」は15アミノ酸の長さを持ち、介在領域「b」はIgLCRCの19~30位にのみ及ぶ。この場合、介在領域のアミノ酸はアラインメントされ、うまくアラインメントしない余分なアミノ酸には、追加の表示「a」、「b」などのIgLCRC位置が与えられる。したがって、15アミノ酸の介在領域「b」は、以下のIgLCRC表示にまたがる:19、19a、19b、19c、および20~30。
【0104】
「N末端領域a」および「C末端領域h」という用語は、それぞれ、CRIおよびそれから派生したHRIおよびHRIIのそれぞれの端部の構造化されていない部分を指す。N末端領域aは、IgLCRCの1~12位にまたがってよい(図4を参照)。とりわけ、長さは4~12アミノ酸、特に5~10アミノ酸、より具体的には6~8アミノ酸であり得る。C末端領域hは、IgLCRCの134~144位にまたがってよい(図4を参照)。とりわけ、長さは4~11アミノ酸、特に5~10アミノ酸、より具体的には6~8アミノ酸であり得る。
【0105】
本明細書で使用される「フラグメント」という用語は、天然に存在するフラグメント(例えば、スプライス変異体)および人工的に構築されたフラグメント、特に遺伝子工学的手段によって得られたフラグメントを指す。通常、フラグメントは、親ポリペプチドと比較してそのN末端および/またはそのC末端および/または内部に、好ましくはそのN末端、そのNおよびC末端、またはそのC末端に、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、または300アミノ酸の欠失を有する。
【0106】
抗原決定基としても知られる「エピトープ」は、免疫系、特に抗体、B細胞、またはT細胞によって認識される高分子のセグメントである。そのようなエピトープは、抗体またはその抗原結合断片に結合することができる高分子の部分またはセグメントである。この文脈において、「結合」という用語は、好ましくは特異的結合に関する。本発明の文脈において、「エピトープ」という用語は、免疫系によって認識されるタンパク質またはポリタンパク質のセグメントを指すことが好ましい。エピトープは通常、アミノ酸や糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基から成り、通常、特定の三次元構造特性と特定の電荷特性を有する。コンホメーションエピトープと非コンホメーションエピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合が失われ、後者への結合は失われないという点で区別される。
【0107】
本明細書で使用される場合、「コンホメーションエピトープ(conformational epitope)」とは、前記高分子の三次元構造によって形成される線状高分子(例えば、ポリペプチド)のエピトープを指す。本出願の文脈において、「コンホメーションエピトープ」は「不連続エピトープ」、すなわち、高分子の一次配列(例えばポリペプチドのアミノ酸配列)の少なくとも2つの別個の領域から形成される高分子(例えばポリペプチド)上のコンホメーションエピトープである。言い換えれば、エピトープが本発明の結合部分(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)は同時に結合する少なくとも2つの別個の領域からなり、これら少なくとも2つの別個の領域が本発明の結合部分が結合しない一次配列中のもう1つの領域によって中断されるならば、エピトープは本発明の文脈において「コンホメーションエピトープ」であるとみなされる。特に、そのような「コンホメーションエピトープ」はポリペプチド上に存在し、一次配列中の2つの別個の領域は、本発明の結合部分(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)が結合する2つの別個のアミノ酸配列であり、これらの少なくとも2つの別個のアミノ酸配列は、本発明の結合部分が結合しない一次配列中のもう1つのアミノ酸配列によって中断される。特に、中断アミノ酸配列は、結合部分が結合しない2つまたはそれ以上のアミノ酸を含む隣接した(contiguous)アミノ酸配列である。本発明の結合部分が結合する少なくとも2つの別個のアミノ酸配列は、それらの長さに関して特に限定されない。このような別個のアミノ酸配列は、前記少なくとも2つの別個のアミノ酸配列内のアミノ酸の総数が結合部分とコンホメーションエピトープとの間の特異的結合をもたらすのに十分に大きい限り、1つのアミノ酸のみからなり得る。
【0108】
「パラトープ」は、エピトープを認識する抗体の部分である。本発明の文脈において、「パラトープ」は、エピトープを認識する本明細書に記載の結合部分(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)の部分である。
【0109】
本発明の文脈における「ペプチドリンカー」とは、複合体の2つの部分(parts)または部分(moieties)、例えば、2つのペプチドまたはタンパク質を立体的に分離するアミノ酸配列を指す。典型的に、そのようなリンカーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸の最小長、および少なくとも100、95、90、85、80、75の最大長70、65、60、55、50、45、40、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、または15アミノ酸またはそれ以下の最大長を有する1~100アミノ酸からなる。本発明によるペプチドリンカーの示された好ましい最小および最大長は、そのような組み合わせが数学的に理にかなっているなら組み合わせてもよく、例えば、そのようなリンカーは、1~15、または12~40、または25~75、または1~100アミノ酸からなり得る。ペプチドリンカーはまた、一緒に結合されている2つの部分の間で柔軟性を提供する。このような柔軟性は一般にアミノ酸が小さい場合に向上する。したがって、柔軟なペプチドリンカーは、小さなアミノ酸、特にグリシンおよび/またはアラニン、および/またはセリン、スレオニン、アスパラギンおよびグルタミンなどの親水性アミノ酸の増加した含有量を含む。好ましくは、ペプチドリンカーのアミノ酸の20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上が小さなアミノ酸である。
【0110】
本明細書で使用される「変異体」という用語は、その長さまたは配列において1つまたはそれ以上の変化により、それが由来するポリペプチドまたはポリヌクレオチドと比較して異なるポリペプチドまたはポリヌクレオチドとして理解される。ポリペプチドまたはポリヌクレオチド変異体が由来するポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、親ポリペプチドまたはポリヌクレオチドとしても知られている。「変異体」という用語は、親分子の「断片」または「誘導体」を含む。典型的に、「断片」は親分子よりも長さまたはサイズが小さく、「誘導体」は親分子と比較してその配列に1つまたはそれ以上の違いを示す。また、翻訳後修飾タンパク質(例えば、グリコシル化、ビオチン化、リン酸化、ユビキチン化、パルミトイル化、またはタンパク質分解により切断されたタンパク質)やメチル化DNAなどの修飾核酸などの(これに限られない)修飾分子も含まれる。また、RNA-DNAハイブリッドなどの(これに限られない)異なる分子の混合物も「変異体」という用語に含まれる。典型的に、変異体は、好ましくは遺伝子工学的手段により人工的に構築されるが、親タンパク質またはポリヌクレオチドは野生型タンパク質またはポリヌクレオチド、またはそのコンセンサス配列である。しかしながら、天然に存在する変異体も、本明細書で使用される「変異体」という用語に包含されると理解されるべきである。さらに、本発明で使用可能な変異体は、変異体が親分子の少なくとも1つの生物学的活性を示す、すなわち機能的に活性であるという条件で、親分子のホモログ、オルソログ、またはパラログまたは人工的に構築された変異体から誘導されてもよい。特に、「ペプチド変異体」、「ポリペプチド変異体」、「タンパク質変異体」という用語は、それが由来するペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質と比較してアミノ酸配列中の1またはそれ以上の変化によって異なるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質として理解される。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質変異体が由来するペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、親ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質としても知られている。さらに、本発明で使用可能な変異体は、変異体が親ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を示すという条件で、親ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のホモログ、オルソログ、またはパラログから、または人工的に構築された変異体から派生してもよい。アミノ酸配列における変化は、1つまたは幾つかの部位で起こる、アミノ酸交換、挿入、欠失、N末端切断、C末端切断、またはこれらの変化の組み合わせであってよい。
【0111】
「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウで2つの最適にアラインメントされた配列を比較することで決定され、比較ウィンドウ内の配列の部分は、2つの配列の最適なアライメントのために参照配列(追加または削除を含まない)と比較して追加または削除(つまりギャップ)を含むことができる。パーセンテージは、両方の配列で同一の核酸塩基またはアミノ酸残基である位置の数を決定して一致する位置の数を得、一致する位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。
【0112】
2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における「同一」という用語は、同じである、すなわちヌクレオチドまたはアミノ酸の同じ配列を含む2つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。配列は、比較ウィンドウ、すなわち、以下の配列比較アルゴリズムの一つを使用するかまたは手動のアラインメントおよび目視検査によって測定された指定領域で比較し、最大の対応のためにアラインメントしたときに、特定のパーセンテージのヌクレオチドまたはアミノ酸残基が同じである(例えば、特定の領域で少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性)なら、互いに「実質的に同一」である。これらの定義は、試験配列の相補鎖も指す。したがって、「少なくとも80%の配列同一性」という用語は、ポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列の比較に関して本明細書全体で使用される。この表現は、好ましくは、それぞれの参照ポリペプチドまたはそれぞれの参照ポリヌクレオチドに対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を指す。
【0113】
用語「配列比較」とは、1つの配列が参照配列として機能し、これに試験配列が比較されるプロセスを指す。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列がコンピューターに入力され、必要なら部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。デフォルトのプログラムパラメーターがよく使用されるが、代替パラメーターを指定することもできる。ついで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性または類似性を計算する。2つの配列を比較し、比較のために参照配列が指定されていない場合、別途特に記載がないなら、比較する2つの配列のうち長い方を参照して配列同一性を計算する。参照配列が示されている場合、特に記載がないなら、配列同一性は配列番号で示される参照配列の全長に基づいて決定される。
【0114】
配列アラインメントにおいて、「比較ウィンドウ」という用語は、同じ数の位置を有する配列の隣接位置の参照ストレッチと比較される配列の隣接位置のストレッチを指す。選択される隣接位置の数は4~1000の範囲であり、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、 400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000の隣接位置を含んでいてよい。典型的に、隣接位置の数は、約20~800隣接位置、約20~600隣接位置、約50~400隣接位置、約50~約200隣接位置、約100~約150隣接位置の範囲である。
【0115】
比較のための配列のアラインメント方法は、当技術分野でよく知られている。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、SmithおよびWaterman(Adv. Appl. Math. 2:482. 1970)の局所相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol. 48:443, 1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、PearsonおよびLipman(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988)の類似性検索法によって、これらアルゴリズムのコンピューター化された実装(例えば、GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、ウィスコンシン遺伝学ソフトウェアパッケージ、遺伝学コンピューターグループ、575 Science Dr.、マディソン、ウィスコンシン州)によって、または手動アライメントおよび目視検査(例えば、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(1995追補参照)によって、行うことができる。パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムは、BlastおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれAltschulら(Nuc. Acids Res. 25:3389-402, 1977)およびAltschulら(J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990)に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、国立生物工学情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公開されている。このアルゴリズムには、最初に問い合わせ配列(query sequence)内の長さWの短い単語を識別することにより、高スコアシーケンスペア(HSP)を識別する。これは、データベースシーケンス内の同じ長さの単語とアラインメントしたときに、ある正の値のしきい値スコアTに一致するか、それを満たす。Tは、近隣単語スコアしきい値と呼ばれる(Altschulら、前掲)。これらの最初の近隣単語ヒットは、検索を開始してそれらを含むより長いHSPを見つけるためのシードとして機能する。単語ヒットは、累積アライメントスコアを増加できる限りにおいて、各配列に沿って両方向に延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメーターM(1対の一致する残基の報酬スコア、常に>0)およびN(不一致の残基のペナルティースコア、常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列の場合には、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアが計算される。各方向への単語ヒットの拡張は、次の場合に停止される:累積アライメントスコアが最大達成値から数量Xだけ減少する;1またはそれ以上の負のスコアの残基アライメントの累積により、累積スコアはゼロまたはそれ以下になる;または、いずれかの配列の末端に到達。BLASTアルゴリズムのパラメーターW、T、およびXは、アライメントの感度と速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして11の語長(wordlength; W)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、および両方のストランドの比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムはデフォルトとして語長3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915、1989を参照)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、両方のストランドの比較。BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計分析も実行する(例えば、KarlinおよびAltschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-87, 1993を参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の尺度の1つは、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列が偶然に一致する確率を示す。例えば、試験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が約0.2未満、典型的には約0.01未満、より典型的には約0.001未満であれば、核酸は参照配列に類似しているとみなされる。
【0116】
アミノ酸が化学的に関連するアミノ酸で置換される半保存的、およびとりわけ保存的アミノ酸置換が好ましい。典型的な置換は、脂肪族アミノ酸間、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸間、酸性残基を有するアミノ酸間、アミド誘導体間、塩基性残基を有するアミノ酸間、または芳香族残基を有するアミノ酸間でのものである。典型的な半保守的および保守的置換は以下のとおりである。

【0117】
新たなシステインが遊離チオールのままであれば、A、F、H、I、L、M、P、V、W、またはYからCへの変更は半保存的である。さらに、当業者は、立体的に厳しい位置にあるグリシンを置換すべきではなく、αヘリックス構造またはβシート構造を有するタンパク質の部分にPを導入すべきでないことを理解するであろう。
【0118】
タグ(またはマーカーまたは標識)は、別の物質または物質の複合体の存在を示すことができる任意の種類の物質である。マーカーは、検出される物質に結合されているかまたは導入されている物質であり得る。検出可能なマーカーは、例えば、タンパク質、酵素反応の産物、セカンドメッセンジャー、DNA、分子の相互作用などを検出するために分子生物学およびバイオテクノロジーで使用される。適切なタグまたは標識の例には、フルオロフォア、発色団、放射性標識、金属コロイド、酵素、または化学発光または生物発光分子が含まれる。本発明の文脈において、適切なタグは、好ましくは、そのペプチド配列が組換えタンパク質の中または上に遺伝子的に移植されたタンパク質タグである。タンパク質タグには、例えば、アフィニティータグ、可溶化タグ、クロマトグラフィータグ、エピトープタグ、または蛍光タグが含まれる。
【0119】
「アフィニティータグ」は、アフィニティー技術を使用してタンパク質を粗生物源から精製できるようにタンパク質に付加される。これらには、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)が含まれる。ポリ(His)タグは、金属マトリックスに結合する汎用タンパク質タグである。
【0120】
「可溶化タグ」は、特にシャペロン欠乏種で発現された組換えタンパク質に使用され、タンパク質の適切な折りたたみを助け、沈殿を防ぐ。これらには、チオレドキシン(TRX)およびポリ(NANP)が含まれる。一部のアフィニティータグには、MBPなどの可溶化剤およびGSTとしての二重の役割がある。
【0121】
「クロマトグラフィータグ」は、タンパク質のクロマトグラフィー特性を変更し、特定の分離手法で異なる分解能を提供するために使用する。多くの場合、これらはFLAGタグなどのポリアニオン性アミノ酸で構成されている。
【0122】
本発明の文脈で使用される「エピトープタグ」という用語は、高親和性抗体を多くの異なる種で確実に産生できるために選択される短いペプチド配列である。これらは通常、高い免疫反応性を説明するウイルス遺伝子に由来する。エピトープタグには、V5タグ、Mycタグ、およびHAタグが含まれる。これらのタグは、ウエスタンブロット、免疫蛍光、免疫沈降実験に特に有用であるが、抗体精製にも使用できる。
【0123】
「蛍光タグ」は、タンパク質を視覚的に読み取るために使用される。GFPとその変異体は、最も一般的に使用される蛍光タグである。GFPのより高度な応用には、折り畳みレポーター(折り畳まれている場合は蛍光、そうでない場合は無色)としての使用が含まれる。フルオロフォアのさらなる例には、フルオレセイン、ローダミン、およびスルホインドシアニン色素Cy5が含まれる。
【0124】
本発明による「結合」という用語は、好ましくは特異的結合に関する。「結合親和性」という用語は、一般に、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、標的または抗原)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。特に明記しない限り、本明細書で使用する「結合親和性」とは、結合ペア(例えば、抗体および抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。パートナーYに対する分子Xの親和性は、一般に解離定数(KD)で表すことができる。「特異的結合」とは、結合部分(例えば、抗体)が、別の標的への結合と比較して特異的であるエピトープなどの標的により強く結合することを意味する。結合部分は、2番目の標的の解離定数より低い解離定数(KD)で1番目の標的に結合する場合、2番目の標的に比べて1番目の標的に強く結合する。結合部分が特異的に結合する標的の解離定数(KD)は、結合部分が特異的に結合しない標的の解離定数(KD)よりも10倍以上、好ましくは20倍以上、より好ましくは50倍以上、さらにより好ましくは100倍以上、200倍以上、500倍以上または1000倍以上低い。
【0125】
したがって、用語「KD」(「mol/L」(「M」と略されることもある)で測定される)は、結合部分(例えば抗体またはそのフラグメント)と標的分子(例えば、抗原またはそのエピトープ)との間の特定の相互作用の解離平衡定数を指すものとする。親和性は、表面プラズモン共鳴ベースのアッセイ(BIAcoreアッセイなど);水晶微量天秤アッセイ(Attanaアッセイなど);酵素免疫測定法(ELISA);および競合分析(RIAなど)を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は一般に抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は一般に抗原に速く結合し、結合が長くなる傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野で知られており、そのいずれも本発明の目的に使用することができる。
【0126】
典型的に、アミノ酸鎖Iおよび/またはアミノ酸鎖IIに含まれる抗体または抗体ミメティックは、それらの標的に対して十分な結合親和性で、例えば、500nM-1pM、すなわち500nM、450nM、400nM、350nM、300nM、250nM、200nM、150nM、100nM、50nM、10nM、1nM、900pM、800pM、700pM、600pM、500pM、400pM、300pM、200pM、100pM 、50pM、1pMのKD値で結合する。
【0127】
本明細書で使用される「免疫グロブリン(Ig)」という用語は、免疫グロブリンスーパーファミリーの免疫付与糖タンパク質を指す。「表面免疫グロブリン」は、例えばエフェクター細胞または内皮細胞の細胞膜に膜貫通領域により付着しており、新生児Fc受容体、B細胞受容体、T細胞受容体、クラスIおよびII主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質、β-2ミクログロブリン(β2M)、CD3、CD4およびCD8など(これらに限られない)の分子を包含する。
【0128】
典型的に、本明細書で使用される「抗体」という用語は、膜貫通領域を欠き、それゆえ血流および体腔に放出され得る分泌免疫グロブリンを指す。ヒト抗体は、それが保有する重鎖に基づいて異なるアイソタイプに分類される。ギリシャ文字で示されるヒトIg重鎖には、α、γ、δ、ε、およびμの5種類がある。存在する重鎖の種類は、抗体のクラスを定義する、すなわち、これらの鎖はそれぞれIgA、IgD、IgE、IgG、IgMの各抗体に見いだされ、それぞれ異なる役割を果たし、異なる種類の抗原に対する適切な免疫応答を誘導する。異なる重鎖は、サイズおよび組成が異なり、約450個のアミノ酸を含む(Janewayら(2001)Immunobiology, Garland Science)。IgAは、腸、気道および泌尿生殖器などの粘膜領域、並びに唾液、涙、および母乳に見られ、病原体の定着を防ぐ(Underdown&Schiff(1986)Annu. Rev. Immunol. 4: 389-417)。IgDは主に、抗原にさらされていないB細胞の抗原受容体として機能し、好塩基球とマスト細胞の活性化に関与して抗菌因子を産生する(Geisbergerら(2006)Immunology 118: 429-437;Chenら、(2009)Nat. Immunol. 10: 889-898)。IgEは、アレルゲンへの結合を介してアレルギー反応に関与しており、肥満細胞および好塩基球からのヒスタミンの放出を引き起こす。IgEはまた寄生虫からの保護にも関与している(Pierら(2004)Immunology、Infection、and Immunity、ASM Press)。IgGは、侵入病原体に対する抗体ベースの免疫の大部分を提供し、胎盤を通過して胎児に受動免疫を与えることができる唯一の抗体アイソタイプである(Pierら(2004)Immunology、Infection、and Immunity、ASM Press)。ヒトには4つの異なるIgGサブクラス(IgG1、2、3、および4)があり、血清中の豊富さの順に名前が付けられ、IgG1が最も豊富(~66%)で、ついでIgG2(~23%)、IgG3(~7%)およびIgG(~4%)である。異なるIgGクラスの生物学的プロファイルは、それぞれのヒンジ領域の構造によって決まる。IgMは、B細胞の表面に単量体型および非常に高い結合力を有する分泌型の五量体型で発現される。IgMは、十分なIgGが産生される前に、B細胞媒介(液性)免疫の初期段階で病原体を除去することに関与している(Geisbergerら(2006)Immunology 118: 429-437)。抗体は単量体としてだけでなく、2つのIg単位の二量体(例えばIgA)、4つのIg単位の四量体(例えば硬骨魚のIgM)、または5つのIg単位の五量体(例えば哺乳類IgM)を形成することも知られている。抗体は、通常、2つの同一の重鎖と2つの同一の軽鎖を含む4つのポリペプチド鎖で構成され、これらはジスルフィド結合を介して接続され、「Y」字型高分子に似ている。各鎖はいくつかの免疫グロブリンドメインを含み、そのうちのいくつかは定常ドメインであり、他は可変ドメインである。免疫グロブリンドメインは、2つのβシートに配置された7~9の逆平行βストランドの2層サンドイッチで構成されている。典型的に、抗体の重鎖は4つのIgドメインを含み、そのうち3つは定常(CHドメイン:CHI、CH2、CH3)ドメインであり、そのうちの1つは可変ドメイン(VH)である。軽鎖は通常、1つの定常Igドメイン(CL)と1つの可変Igドメイン(VL)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置されている。重鎖と軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれている。抗体の定常領域は、免疫系のさまざまな細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的な補体系の最初の成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介する。
【0129】
「Ig様定常領域コンセンサス(IgLCRC)」という用語は、図4に示すように、ヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン様タンパク質のアラインメントに由来する番号付けを表す。当業者は、配列同一性および/または構造情報を使用して、このアライメントにさらにヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン様タンパク質を追加する方法を知っている。したがって、当業者は、所定のヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン様タンパク質の各アミノ酸について、それぞれのIgLCRC番号を決定することができる。例えば、IgG1のCH3の6つの介在領域「b」、「c」、「d」、「e」、「f」および「g」は、IgLCRC19~30(IgLCRCの26位および28位のアミノ酸を含まず)、IgLCRC41~45(IgLCRCの43位のアミノ酸を含まず)、IgLCRC53~62(IgLCRCの59位~61位のアミノ酸を含まず)、eはIgLCRCの71位~80位に及び(IgLCRCの72位~76位のアミノ酸を含まず)、IgLCRC90~101(IgLCRCの98および99にアミノ酸を含まず)、IgLCRC109~127(IgLCRCの112位~124位にアミノ酸を含まず)に及ぶ。IgG1のCH3には、IgLCRCの一部の位置にアミノ酸を欠いている。これは、ヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン様タンパク質のこれらのあまり構造化されていない領域の変動性が高いためであり、これは、ヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン様タンパク質の全体構造を変更することなく、アミノ酸を欠失および挿入するのに適している。同様に、IgG1のCH3の7つのベータ鎖「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、および「G」は、IgLCRCの13位~18位、31位~40位、46位~52位、63位~70位、81位~89位、102位~108位、および128位~133位にわたっている。さらに、IgG1のCH3のN末端領域「a」はIgLCRCの7位~12位にまたがり、C末端領域「h」はIgLCRCの134位~139位にまたがる。同様の方法で、当業者は、所定のヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン様タンパク質のそれぞれについて、所定のヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン様タンパク質内の各要素のN末端およびC末端を決定することができる。所定のアラインメントしたヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン様タンパク質のアミノ酸配列中のギャップの数は異なる場合がある。しかしながら、βストランドAはCH3のIgLCRCの13位~18位にまたがり、βストランドBはIgLCRCの31位~40位にまたがり、βストランドCはIgLCRCの46位~52位にまたがり、βストランドDはIgLCRCの63位~70位にまたがり、βストランドEはIgLCRCの81位~89位にまたがり、ベータストランドFはIgLCRCの102位~108位にまたがり、ベータストランドGはIgLCRCの128位~133位にまたがり、介在領域bはIgLCRCの19位~30位にまたがり、介在領域cはIgLCRCの41位~45位にまたがり、介在領域dはIgLCRCの53位~62位にまたがり、介在領域eはIgLCRCの71位~80位にまたがり、介在領域fはIgLCRCの90位~101位にまたがり、介在領域gはIgLCRCの109位~127位にまたがる。N末端領域aは、それぞれのヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの1位~12位にまたがり、C末端領域hはIgLCRCの134位からC末端までにまたがる。
【0130】
本明細書で定義された介在領域b(22残基)、c(5残基)、d(10残基)、e(12残基)、f(19残基)を超える長さの1またはそれ以上の介在領域を含むか、または本明細書で定義したN末端領域a(12残基)を超える長さのN末端領域を含む、図4に含まれていないアミノ酸配列の場合、6位の後に追加の残基6a、6b、6cなどを指定することにより、または25位の後に追加の残基25a、25b、25cなどを指定することにより、または42位の後に追加の残基42a、42b、42cなどを指定することにより、または58位の後に追加の残基58a、58b、58cなど指定することにより、または71位の後に追加の残基71a、71b、71cなどを指定することにより、または91位の後に追加の残基91a、91b、91cなどを指定することにより、または111位の後に追加の残基111a、111b、111cなどを指定することにより、IgLCRC番号付けスキームに追加の残基を導入できる。さらに、所定のヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン様タンパク質のそれぞれのアミノ酸配列は、必ずしもIgLCRCの1位から始まるわけではなく、図4に示すようにアラインメントするときにギャップを有していてよいため、IgLCRCの位置は配列表に含まれる配列内のアミノ酸位置を直接反映しない。例えば、IgG1の好ましいCH3は、配列番号45によるアミノ酸配列を有する。N末端領域はIgLCRCの7位~12位にまたがり、これは配列番号45のアミノ酸1~6に対応し、IgG1のCH3のβストランド「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、および「G」は、IgLCRCの13位~18位、31位~40位、46位~52位、63位~70位、81位~89位、102位~108位、および128位~133位にまたがり、これはそれぞれ、配列番号45のアミノ酸7~12、23~32、37~43、51~58、64~72、83~88、95~100に対応する。C末端領域はアミノ酸101~107にまたがる。IgG1のCH3の5つの介在領域「b」、「c」、「d」、「e」、「f」および「g」は、1つのIgLCRCの19位~30位、41位~45位、53位~62位、71位~80位、90位~101位、および109位~127位にまたがり、これはそれぞれ、配列番号45のアミノ酸13~22、33~36、44~50、53~63、59~63、73~82および89~94に対応する。これらの考慮事項を考慮して、当業者は、過度の負担なく、1番目、2番目、3番目および4番目のCRIの各要素を決定することができる。要素が決定され、1番目と2番目のCRIと3番目と4番目のCRIの配列がアラインメントされると、以下の指示に従い、それぞれ1番目と3番目のCRIのアミノ酸を3番目と4番目のCRIのアミノ酸で置換することも当業者にとって簡単である。
【0131】
本明細書で使用される「抗原結合タンパク質」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。また、例えば、ファージディスプレイを含む技術によって標的分子または標的エピトープに特異的に結合すると選択される免疫グロブリン様タンパク質も含まれる。抗原結合タンパク質、例えば抗体またはその免疫学的機能断片の結合および/または特異性の評価において、リガンドに結合した結合パートナーの量を過剰な抗体が(例えば、インビトロ競合結合アッセイで測定して)少なくとも約1~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~85%、85~90%、90~95%、95~97%、97~98%、98~99%またはそれ以上減らす場合、抗体またはフラグメントは、リガンドのその結合パートナーへの結合を実質的に阻害できる。中和能力は、IC50またはEC50値で記載できる。
【0132】
「IC50」値は、ある物質の最大阻害濃度の半分を指し、したがって特定の生物学的または生化学的機能の阻害における物質の有効性の尺度である。通常、値はモル濃度として表される。薬物のIC50は、用量反応曲線を作成し、さまざまな濃度で試験物質の阻害効果を調べることにより、機能的拮抗アッセイで決定できる。あるいは、競合結合アッセイを実施してIC50値を決定することもできる。典型的に、本発明の阻害抗体は、50nM~1pM、すなわち50nM、10nM、1nM、900pM、800pM、700pM、600pM、500pM、400pM、300pM、200pM、100pM、50pM、1pMのIC50値を示す。
【0133】
「EC50」値は、ある物質の最大有効濃度の半分を指し、したがって、特定の暴露時間後のベースラインと最大値の中間の応答を誘発する該物質の濃度の尺度である。それは一般的に薬物の効力の尺度として使用される。したがって、段階的用量反応曲線のEC50は、最大効果の50%が観察される物質の濃度を表す。定量的用量反応曲線のEC50は、指定された暴露期間の後、母集団の50%が応答を示す化合物の濃度を表す。典型的に、本発明の阻害抗体は、50nM~1pM、すなわち50nM、10nM、1nM、900pM、800pM、700pM、600pM、500pM、400pM、300pM、200pM、100pM、50pM、または1pMのEC50値を示す。
【0134】
抗体(または単に「結合部分」)の「抗原結合フラグメント」という用語は、本明細書で使用する場合、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたはそれ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実行できることが示されている。
【0135】
本明細書で使用される「ヒト抗体」には、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体が含まれる。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発またはインビボでの体細胞突然変異により導入された変異)を含み得る。本発明のヒト抗体には、例えばKucherlapati&Jakobovitsによる米国特許第5,939,598号に記載されているように、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1つまたはそれ以上のヒト免疫グロブリンに対してトランスジェニックで内因性免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体が含まれる。
【0136】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性と親和性を示す。一実施形態では、モノクローナル抗体は、不死化細胞に融合した非ヒト動物(例えば、マウス)から得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0137】
本明細書で使用される「組換え抗体」という用語は、(a)免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックまたはトランス染色体である動物(例えば、マウス)またはそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)他のDNA配列への免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを含む他の手段により調製、発現、作成または単離された抗体などの、組換え手段により調製、発現、作成または単離されるすべての抗体を含む。
【0138】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖および軽鎖の各アミノ酸配列の一部が、特定の種に由来するまたは特定のクラスに属する抗体中の対応する配列と相同である一方で、鎖の残りのセグメントは、別の種またはクラスの対応する配列と相同であるような抗体を指す。通常、軽鎖と重鎖の両方の可変領域は、ある種の哺乳類に由来する抗体の可変領域を模倣し、一方、定常部分は別の種に由来する抗体の配列と相同である。そのようなキメラ型の明確な利点の1つは、例えばヒト細胞調製物に由来する定常領域と組み合わせて、容易に入手可能なB細胞または非ヒト宿主生物由来のハイブリドーマを使用して、現在知られているソースから可変領域を都合よく誘導できることである。可変領域には調製が容易であり、特異性はソースに影響されないという利点があるが、ヒトの定常領域は、抗体を注入した場合、非ヒトのソースの定常領域よりもヒト対象から免疫応答を誘発する可能性が低くなる。しかしながら、定義はこの特定の例に限定されない。
【0139】
「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト種由来の免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合部位を有する分子であって、分子の残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく分子を指す。抗原結合部位は、定常ドメインに融合した完全な可変ドメイン、または可変ドメイン内の適切なフレームワーク領域にグラフトされた相補性決定領域(CDR)のみを含んでもよい。抗原結合部位は野生型であってもよいし、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換によって修飾されていてもよく、例えば、よりヒト免疫グロブリンに似るように修飾されていてよい。一部の形態のヒト化抗体は、すべてのCDR配列を保持する(たとえば、マウス抗体の6つのCDRすべてを含むヒト化マウス抗体)。他の形態は、元の抗体に関して変更された1つまたはそれ以上のCDRを有する。
【0140】
Almagro&Fransson、2008(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)によって概説されているように、抗体をヒト化するための異なる方法が当業者に知られている。Almagro&Franssonによる概説記事は、以下に簡単に要約される。Almagro&Franssonは、合理的アプローチと経験的アプローチを区別する。合理的アプローチの特徴は、操作された抗体の幾つかの変異体を生成し、それらの結合その他の関連する特性を評価することである。デザインした変異体が期待される結果をもたらさない場合、デザインおよび結合評価の新しいサイクルが開始される。合理的アプローチには、CDRグラフティング、リサーフェシング(Resurfacing)、スーパーヒューマナイゼーション(Superhumanization)、およびヒューマンストリングコンテンツの最適化(Human String Content Optimization)が含まれる。対照的に、経験的アプローチは、ヒト化変異体の大きなライブラリーの生成と、濃縮技術またはハイスループットスクリーニングを使用した最良なクローンの選択に基づいている。したがって、経験的アプローチは、抗体変異体の広大なスペースを検索できる信頼できる選択および/またはスクリーニングシステムに依存している。ファージディスプレイおよびリボソームディスプレイなどのインビトロディスプレイ技術は、これらの要件を満たし、当業者によく知られている。経験的アプローチには、FRライブラリー、ガイド付き選択(Guided selection)、フレームワークシャッフル(Framework-shuffling)、およびヒューマニアリング(Humaneering)が含まれる。
【0141】
「二価抗体」は、2つの抗原結合部位を含む。二価抗体は単一特異性でも二重特異性でもよい。二価抗体が単一特異性である場合、抗体の2つの結合部位は同じ抗原特異性を有する。「二重特異性」または「二機能性」の抗原結合タンパク質または抗体は、それぞれ2つの異なる抗原結合部位を有するハイブリッド抗原結合タンパク質または抗体である。二重特異性抗原結合タンパク質または抗体の2つの結合部位は、同じ抗原または異なる抗原に存在する2つの異なるエピトープに結合する。二重特異性抗原結合タンパク質および抗体は、多重特異性抗原結合タンパク質抗体の一種であり、ハイブリドーマの融合、IgGまたはFab'などのIgGフラグメントの化学的結合、または遺伝的手段を含むが、これらに限定されないさまざまな方法によって製造することができる。例えば、SongsivilaiおよびLachmann、1990, Clin. Exp. lmmunol. 79:315-321;Kostelnyら、1992, J. lmmunol. 148:1547-1553;Kontermann, 2014, MAbs 4:182-197を参照。
【0142】
「三機能性抗体」は、異なる抗原を標的とする2つの結合部位と、アクセサリー細胞(例えば、単球/マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、その他)上のFc受容体に結合できる完全なFc部分とを含む二重特異性抗体の一種である。例えば、三機能性抗体は、癌細胞の表面上のエピトープを標的とする結合部位を含み、第2の結合部位はT細胞の表面上のエピトープ(例えばCD3)を標的とし、Fc部分はマクロファージ表面のFc受容体に結合する。したがって、そのような三機能性抗体は、T細胞およびマクロファージを腫瘍細胞に結合することができ、腫瘍細胞の破壊をもたらす。
【0143】
抗体のパパイン消化は、それぞれが単一の抗原結合部位を持ち「Fabフラグメント」(「Fab部分」または「Fab領域」とも呼ばれる)と呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントと、「Fcフラグメント」(別名「Fc部分」または「Fc領域」とも呼ばれる;その名前は、容易に結晶化する能力を反映している)とを生成する。ヒトIgG Fc領域の結晶構造は決定されている(Deisenhofer(1981)Biochemistry 20:2361-2370)。IgG、IgAおよびIgDアイソタイプでは、Fc領域は抗体の2つの重鎖のCH2およびCH3ドメインに由来する2つの同一のタンパク質フラグメントで構成されている;IgMおよびIgEアイソタイプでは、Fc領域は各ポリペプチド鎖に3つの重鎖定常ドメイン(CH2-4)を含んでいる。さらに、より小さい免疫グロブリン分子が自然に存在するか、人工的に構築されている。「Fab'フラグメント」という用語は、Ig分子のヒンジ領域をさらに含むFabフラグメントを指し、「F(ab')2フラグメント」は、化学的に結合されるかまたはジスルフィド結合を介して接続される2つのFab'フラグメントを含むと理解される。「単一ドメイン抗体(sdAb)」(Desmyterら(1996)Nat. Structure Biol. 3:803-811)および「ナノボディ」は単一のVHドメインのみを含むが、「一本鎖Fv(scFv)」フラグメントは短いリンカーペプチドを介して軽鎖可変ドメインに結合した重鎖可変ドメインを含む(Hustonら(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 5879-5883)。二価の一本鎖可変フラグメント(di-scFvs)は、2つのscFvを結合することにより設計できる(scFvA-scFvB)。これは、2つのVH領域と2つのVL領域を持つ単一のペプチド鎖を生成し、「タンデムscFv」を生成することで実行できる(VHA-VLA-VHB-VLB)。別の可能性は、2つの可変領域を折り畳むには短すぎるリンカーを使用してscFvを作成し、scFvを強制的に二量体化することである。通常、これらの二量体の生成には、5残基の長さのリンカーが使用される。このタイプは「ダイアボディ」として知られている。VHドメインとVLドメイン間のさらに短いリンカー(1つまたは2つのアミノ酸)は、いわゆる「トリアボディ」または「トライボディ」と呼ばれる単一特異性の三量体を形成する。二重特異性ダイアボディは、それぞれVHA-VLBおよびVHB-VLAまたはVLA-VHBおよびVLB-VHAの配置で発現することにより形成される。一本鎖ダイアボディ(scDb)は、VHA-VLBおよびVHB-VLAフラグメントを含み、これらは12~20アミノ酸、好ましくは14アミノ酸のリンカーペプチド(P)で連結されている(VHA-VLB-P-VHB-VLA)。「二重特異性T 細胞誘導(Bi-specific T-cell engagers (BiTEs))」は、異なる抗体の2つのscFvからなる融合タンパク質で、scFvの1つはCD3受容体を介してT細胞に結合し、もう1つは腫瘍特異分子を介して腫瘍細胞に結合する(Kuferら(2004)Trends Biotechnol. 22:238-244)。二重親和性再標的化分子(Dual affinity retargeting molecules)(「DART」分子)は、C末端ジスルフィド架橋を介してさらに安定化されたダイアボディである。
【0144】
本明細書で使用する場合、「抗体様タンパク質」または免疫グロブリン様タンパク質という用語は、標的分子に特異的に結合するように(例えば、ループの突然変異誘発により)操作されたタンパク質を指す。典型的に、そのような抗体様タンパク質は、両端でタンパク質足場に付着した少なくとも1つの可変ペプチドループを含む。この二重構造の制約により、抗体様タンパク質の結合親和性が抗体のそれに匹敵するレベルまで大幅に増加する。可変ペプチドループの長さは、通常10~20個のアミノ酸で構成される。足場タンパク質は、良好な溶解特性を有する任意のタンパク質であり得る。好ましくは、足場タンパク質は小さな球状タンパク質である。抗体様タンパク質には、アフィボディ、アンチカリン、および設計されたアンキリンリピートタンパク質が含まれるが、これらに限定されない(概説には、Binz HKら(2005) Engineering novel binding proteins from nonimmunoglobulin domains. Nat. Biotechnol. 23(10):1257-1268を参照)。抗体様タンパク質は、変異体の大きなライブラリーから得ることができ、例えば、大きなファージディスプレイライブラリーからパニングされ、通常の抗体と同様に分離できる。また、球状タンパク質の表面に露出した残基のコンビナトリアル変異誘発により、抗体様結合タンパク質を得ることができる。抗体様タンパク質は「ペプチドアプタマー」と呼ばれることもある。
【0145】
本明細書で使用される「ペプチドミメティック」は、ペプチドを模倣するように設計された小さなタンパク質様鎖である。ペプチドミメティックは、通常、分子の特性を変更するために既存のペプチドを修飾することから生じる。例えば、ペプチドミメティックは、分子の安定性や生物活性を変更するための修飾から生じ得る。これは、既存のペプチドからの薬物様化合物の開発に役割を果たす。 これらの修飾には、自然には生じないペプチドへの変更(骨格の変更や非天然アミノ酸の取り込みなど)が含まれる。
【0146】
「標的」という用語は、抗原結合タンパク質が結合できる分子または分子の一部を指す。特定の実施形態において、標的は、1つまたはそれ以上のエピトープを有し得る。特定の実施形態において、標的は抗原である。「抗原結合タンパク質」という語句における「抗原」の使用は、単に、抗原を含むタンパク質配列が抗体によって結合され得ることを示す。これに関連して、タンパク質が外来性であること、または免疫応答を誘導できることは必要ない。
【0147】
「組換え」という用語は、組換え方法により意図的に修飾されたアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を指す。本明細書で使用される「組換え核酸」という用語は、インビトロで形成され、場合により自然には通常見られない核酸分子を形成するためにエンドヌクレアーゼによってさらに操作される核酸を指す。例として、組換え核酸には、直鎖状のcDNA、および通常は結合していないDNA分子を連結することによりインビトロで形成されたベクターが含まれる。組換え核酸が作成されて宿主細胞に導入されると、非組換え的に、すなわち、インビトロ操作ではなく宿主細胞のインビボ細胞機構を使用して複製することが理解される。したがって、組換えにより産生された核酸は、その後、非組換え的に複製され得る。「組換えタンパク質」とは、例えば、上記の組換え核酸の発現により、組換え技術を使用して作成されたタンパク質である。本明細書で使用される「組換えベクター」という用語は、プラスミドベクター、コスミドベクター、ラムダファージなどのファージベクター、アデノウイルスまたはバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、または細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、またはP1人工染色体(PAC)などの人工染色体ベクターを含む、当業者に知られている任意のベクターを含む。前記ベクターには、発現ベクターおよびクローニングベクターが含まれる。発現ベクターは、プラスミドおよびウイルスベクターを含み、一般に、特定の宿主生物(例えば、細菌、酵母、植物、昆虫、または哺乳動物)において、またはインビトロ発現系において、機能的に連結されたコーディング配列の発現に必要な所望のコーディング配列および適切なDNA配列を含む。クローニングベクターは一般に、特定の所望のDNA断片を操作および増幅するために使用され、所望のDNA断片の発現に必要な機能的配列を欠く。
【0148】
「宿主細胞」という用語は、ベクター(例えば、プラスミドまたはウイルス)を宿す細胞を指す。そのような宿主細胞は、原核生物(例えば、細菌細胞)または真核生物細胞(例えば、真菌、植物または動物細胞)のいずれかであり得る。宿主細胞には、単細胞の原核生物および真核生物(例えば、細菌、酵母、および放線菌)の両方、および細胞培養で増殖する場合の高次の植物または動物からの単細胞が含まれる。本明細書で使用する「組換え宿主細胞」は、目的のポリペプチド断片、すなわち本発明によるウイルスPAサブユニットまたはその変異体の断片をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を指す。このポリヌクレオチドは、(i)そのまま自由に分散して、(ii)組換えベクターに組み込まれて、または(iii)宿主細胞のゲノムまたはミトコンドリアDNAに組み込まれて、宿主細胞内に見出すことができる。組換え細胞は、目的のポリヌクレオチドの発現、または本発明のポリヌクレオチドまたは組換えベクターの増幅に使用することができる。「組換え宿主細胞」という用語には、本発明のポリヌクレオチドまたは組換えベクターで形質転換、トランスフェクション、または感染された元の細胞の子孫が含まれる。組換え宿主細胞は、大腸菌細胞などの細菌細胞、サッカロミセスセレビシエまたはピキアパストリスなどの酵母細胞、植物細胞、SF9またはHigh Five細胞などの昆虫細胞、または哺乳動物細胞であり得る。哺乳動物細胞の好ましい例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、アフリカミドリザル腎臓(COS)細胞、ヒト胚腎(HEK293)細胞、HELA細胞などである。
【0149】
用語「個体」、「対象」、または「患者」は、本明細書で互換的に使用され、本発明から利益を得る可能性のある哺乳動物、爬虫類または鳥を指す。特に、個体は実験動物(例えば、マウス、ラットまたはウサギ)、家畜(例えば、モルモット、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、シギ、ラクダ、ネコ、イヌ、カメ(turtle)、カメ(tortoise)、ヘビ、またはトカゲを含む)、またはチンパンジー、ボノボ、ゴリラ、およびヒトを含む霊長類からなる群から選択される。特に、「個体」はヒトである。
【0150】
「疾患」および「障害」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、組織、器官または個体がもはやその機能を効率的に果たすことができない異常な状態、特に疾患または傷害などの異常な医学的状態を指す。必ずというわけではないが、通常、疾患はそのような疾患の存在を示す特定の症状や兆候に関連している。したがって、このような症状または兆候の存在は、組織、臓器、または疾患を罹患している個体の指標となる。これらの症状または兆候の変化は、そのような疾患の進行の指標となる。疾患の進行は、典型的に、疾患の「悪化」または「改善」を示す可能性のあるそのような症状または兆候の増加または減少によって特徴付けられる。疾患の「悪化」は、組織、器官または生体がその機能を有効に果たす能力の低下を特徴とするのに対し、疾患の「改善」は、典型的に、組織、器官または個体がその機能を有効に果たす能力の増加を特徴とする。疾患を「発症するリスク」にある組織、器官または個体は、健康な状態にあるが疾患が出現する可能性を示す。通常、疾患を発症するリスクは、そのような疾患の初期または弱い徴候または症状に関連している。そのような場合、疾患の発症は治療によってまだ予防され得る。疾患の例には、感染症、外傷性疾患、炎症性疾患、皮膚疾患、内分泌疾患、腸疾患、神経疾患、関節疾患、遺伝性疾患、自己免疫疾患、およびさまざまな種類の癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0151】
「腫瘍」とは、急速な制御されない細胞増殖によって増殖し、新しい増殖を開始した刺激が停止した後も増殖し続ける異常な細胞群または組織を意味する。腫瘍は構造組織の部分的または完全な欠如と正常組織との機能的協調を示し、通常、良性または悪性の組織の明確な塊を形成する。
【0152】
「転移」とは、癌細胞が元の部位から身体の別の部位に広がることを意味する。転移の形成は非常に複雑なプロセスであり、原発腫瘍からの悪性細胞の剥離、細胞外マトリックスの浸潤、内皮基底膜の浸透による体腔および血管への進入、ついで血液による輸送後、標的臓器の浸潤に依存する。最後に、標的部位での新たな腫瘍の成長は血管新生に依存する。腫瘍細胞または成分が残って転移能を発現する可能性があるため、腫瘍の転移は原発腫瘍を除去した後でも起こることがよくある。一実施形態では、本発明による「転移」という用語は、原発腫瘍および所属リンパ節系から離れた転移に関する「遠隔転移」に関する。
【0153】
疾患または障害の「症状」とは、そのような疾患または障害を有する組織、器官または生体が気付く疾患または障害の意味であり、組織、器官または個体の痛み、衰弱、圧痛、緊張、硬直、および痙攣、並びにバイオマーカーや分子マーカーなどの特定の指標の存在、不在、増加、減少を含むがこれらに限定されない。本明細書で使用される「疾患」および「障害」という用語は、組織、器官または個体がもはやその機能を有効に果たすことができない異常な状態、特に疾患または傷害などの異常な医学的状態を指す。必ずというわけではないが、通常、疾患または障害は、そのような疾患または障害の存在を示す特定の症状または兆候に関連している。疾患または障害には、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、癌型疾患、皮膚疾患、内分泌疾患、血液疾患および障害、眼疾患および障害、遺伝性障害、炎症性疾患、感染症、腸疾患、神経障害、および精神疾患が含まれるが、これらに限定されない。例示される癌型疾患には、基底細胞癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、バーキットリンパ腫、子宮頸癌、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、食道癌、網膜芽細胞腫、胃癌、消化管間質腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、白血病、リンパ腫、黒色腫、中咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、胸膜肺芽腫、前立腺癌、咽頭癌、甲状腺癌、および尿道癌が含まれるがこれらに限定されない。
【0154】
本明細書で使用する場合、疾患または障害の「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、「治療(treatment)」または「治療(therapy)」は、以下のうちの1つまたはそれ以上を達成することを意味する:(a)障害の重症度を軽減する;(b)治療中の障害に特徴的な症状の発現を制限または防止する;(c)治療中の障害に特徴的な症状の悪化を抑制する;(d)以前に障害を患った個体の障害の再発を制限または防止する;および(e)以前に障害の症状を示していた個体の症状の再発を制限または防止する。したがって、治療効果を有する部分は、上記の効果(a)~(e)の1つまたはそれ以上を達成することにより、疾患または障害の症状を治療する。
【0155】
本明細書で使用する場合、疾患または障害の「予防する(prevent)」、「予防する(preventing)」、「予防(prevention)」、または「予防(prophylaxis)」は、そのような疾患または障害が患者に発生するのを防ぐことを意味する。
【0156】
本明細書で使用される「IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgMIgκ、Igλ、TCR」という用語は、Igスーパーファミリーのドメインを含む抗体または分子を表し、ヒト、マウス、ラット、その他のげっ歯類、ウシその他の起源、特にヒトの起源であってよい。
【0157】
本明細書で使用される「HLA」という用語は、MHC(主要組織適合性複合体)とも呼ばれるヒト白血球抗原を表し、Igスーパーファミリーのドメインを含むMHCクラスIおよびII型分子を含み、ヒト、マウス、ラット、その他のげっ歯類、ウシその他の起源であってよい。
【0158】
本明細書で使用される「ASL」という用語は、抗原特異的リガンドを表す。したがって、ASLAn1は、抗原1に特異的な抗原特異的リガンドを指し、ASLAn2は抗原2に特異的であり、ASLAn3は抗原3に特異的である、以下同様。
【0159】
用語「医薬品(pharmaceutical)」、「薬剤(medicament)」および「薬物(drug)」は、本明細書で互換的に使用され、疾患または障害の識別、予防または治療に使用される物質および/または物質の組み合わせを指す。
【0160】
「Atrosab」は、TNF受容体2(TNFR2)と相互作用することなく、炎症性TNF受容体1(TNFR1)を特異的にブロックするヒト化モノクローナル抗体である。Atrosabは現在、さらなる臨床研究のために開発中である。
【0161】
第1の態様において、本発明は、少なくとも2つのアミノ酸鎖Iおよびアミノ酸鎖IIを含み、該アミノ酸鎖Iおよびアミノ酸鎖IIは、アミノ酸鎖Iに含まれるヘテロ二量体化領域I(HRI)およびアミノ酸鎖IIに含まれるヘテロ二量体化領域II(HRII)を介して互いに非共有結合しているタンパク質複合体であって、
(a)HRIは、7つの逆平行βストランドAI、BI、CI、DI、EI、FI、およびGI、6つの介在領域bI、cI、dI、eI、fI、およびgI、N末端領域aI、およびC末端領域hIを、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
aI-AI-bI-BI-cI-CI-dI-DI-eI-EI-fI-FI-gI-GI-hI、
HRIは免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の1番目のヒト定常領域(1番目のCRI、アクセプター)に免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の2番目のヒト定常領域(2番目のCRI、ドナー)のアミノ酸が点在した(interspersed with)融合タンパク質であり、
ここで、1番目のCRIは、7つの逆平行βストランドA1、B1、C1、D1、E1、F1、およびG1、6つの介在領域b1、c1、d1、e1、f1、およびg1、N末端領域a1、およびC-末端領域h1を、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
a1-A1-b1-B1-c1-C1-d1-D1-e1-E1-f1-F1-g1-G1-h1、
ここで2番目のCRIは、7つの逆平行βストランドA2、B2、C2、D2、E2、F2、およびG2、6つの介在領域b2、c2、d2、e2、f2、およびg2、N末端領域a2、およびC末端領域h2を、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
a2-A2-b2-B2-c2-C2-d2-D2-e2-E2-f2-F2-g2-G2-h2、
ここで、HRIは1番目のCRIのアミノ酸配列を有し、1番目のCRIの少なくとも以下のアミノ酸が2番目のCRIの以下のアミノ酸で置換されている:
(i)a1の少なくとも1つのアミノ酸がa2の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換1)、好ましい実施形態では、a1の少なくとも4~12個のアミノ酸、すなわち、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個、より好ましくは6~8個のアミノ酸がa2の少なくとも4~12個のアミノ酸、すなわち4、5、6、7、8、9、10、11、または12個、より好ましくは6~8個のアミノ酸で置換されている;
(ii)c1の少なくとも1つのアミノ酸がc2の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換2);好ましい実施形態では、c1の1~5個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、または5個、およびC1の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5または6個からなる連続アミノ酸ストレッチ、より好ましくは、c1の2~5個のアミノ酸およびC1の4~6個のアミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチが、c2の1~5個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、または5個、およびC2の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、または6個からなる連続アミノ酸ストレッチで、より好ましくはc2の2~5個のアミノ酸およびC2の4~6アミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチで置換されており、
より好ましくは、c1の1~5個のアミノ酸がc2の1~5個のアミノ酸で置換されており、
好ましくは、置換2で置換された残基は、IgLCRCの47位および49位を含み、
好ましくは、置換された連続アミノ酸ストレッチの全長は、5~11、より好ましくは5~9、さらにより好ましくは5~7アミノ酸である;
および
(iii)g1の少なくとも1つのアミノ酸がg2の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換3)、好ましい態様において、g1の1~10個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個、好ましくはF1の1~6個のアミノ酸、すなわち、1、2、3、4、5、または6個、g1の1~10個のアミノ酸、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個、およびG1の0~3個のアミノ酸、すなわち0、1、2、または3個を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチが、g2の1~10個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個、好ましくはF2の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、または6個、g1の1~10個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個、およびG2の0~3個のアミノ酸、すなわち0、1、2、または3個を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチで置換されており、置換された連続アミノ酸ストレッチの全長は、3~20、より好ましくは3~18、さらに一層好ましくは3~15である;
および
(b)HRIIは、7つの逆平行βストランドAII、BII、CII、DII、EII、FII、およびGII、6つの介在領域bII、cII、dII、eII、fII、およびgII、N末端領域aIIおよびC末端領域hIIを、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
aII-AII-bII-BII-cII-CII-dII-DII-eII-EII-fII-FII-gII-GII-hII、
HRIIは免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の3番目のヒト定常領域(3番目のCRI、アクセプター)に免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の4番目のヒト定常領域(4番目のCRI、ドナー)のアミノ酸が点在した融合タンパク質であり、
ここで、3番目のCRIは、7つの逆平行βストランドA3、B3、C3、D3、E3、F3、およびG3、6つの介在領域b3、c3、d3、e3、f3、およびg3、N末端領域a3、およびC末端領域h3を、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
a3-A3-b3-B3-c3-C3-d3-D3-e3-E3-f3-F3-g3-G3-h3、
ここで4番目のCRIは、7つの逆平行βストランドA4、B4、C4、D4、E4、F4、およびG4、6つの介在領域b4、c4、d4、e4、f4、およびg4、N末端領域a4、およびC末端領域h4を、N末端からC末端に以下の順序の位置で含み:
a4-A4-b4-B4-c4 -C4-d4-D4-e4-E4-f4-F4-g4-G4-h4、
ここで、HRIIは3番目のCRIのアミノ酸配列を有し、3番目のCRIの少なくとも以下のアミノ酸が4番目のCRIの以下のアミノ酸で置換されている:
(i)a3の少なくとも1つのアミノ酸がa4の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換4);好ましい実施形態では、a3の少なくとも4~12個のアミノ酸、すなわち、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個、より好ましくは6~10個のアミノ酸がa4の少なくとも4~12個のアミノ酸、すなわち、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個、より好ましくは6~10個のアミノ酸で置換されており;
(ii)c3の少なくとも1つのアミノ酸がc4の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換5);好ましい実施形態では、c3の1~5個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、または5個、およびC3の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、または6個からなる連続アミノ酸ストレッチ、より好ましくは、c3の2~5個のアミノ酸およびC3の4~6個のアミノ酸からなる連続アミノ酸ストレッチが、c4の1~5個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、または5個、およびC4の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、または6個からなる連続アミノ酸ストレッチで、より好ましくはc4の2~5個のアミノ酸およびC4の4~6個のアミノ酸からなる連続アミノ酸ストレッチで置換されており、
より好ましくは、c3の1~5個のアミノ酸がc4の1~5個のアミノ酸で置換されており、
好ましくは、置換5で置換された残基は、IgLCRCの47位および49位を含み、
好ましくは、置換された連続アミノ酸ストレッチの全長は、5~11、より好ましくは5~9、さらにより好ましくは5~7である;
および
(iii)g3の少なくとも1つのアミノ酸がg4の少なくとも1つのアミノ酸で置換されている(置換6)、好ましい実施形態では、g1の1~10個のアミノ酸、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個、好ましくはF3の1~6個のアミノ酸、すなわち、1、2、3、4、5または6個、g1の1~10個のアミノ酸、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個、およびG3の0~3個のアミノ酸、すなわち、0、1、2、または3個を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチが、F4の1~10個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個、好ましくはF4の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5または6個、およびG4の0~3個のアミノ酸、すなわち0、1、2、または3個を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチで置換されており、
好ましくは、置換された連続アミノ酸ストレッチの全長は3~20アミノ酸、より好ましくは3~18アミノ酸、さらにより好ましくは3~15アミノ酸である;
ここで、1番目のCRIおよび3番目のCRIは互いに異なり、生理学的条件下で互いに特異的に結合する
タンパク質複合体を提供する。
【0162】
したがって、HRIは好ましくは以下のアミノ酸構造を有する:
(i)免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの1位~12位にまたがるa1の少なくとも1個のアミノ酸が、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの1位~12位にまたがるa2の少なくとも1個のアミノ酸で置換されており、好ましい実施形態では、IgLCRCの1位~12位にまたがるa1の少なくとも4~12個のアミノ酸、すなわち4、5、6、7、8、9、10、11、または12個、より好ましくは6~8個のアミノ酸が、IgLCRCの1位~12位にまたがるa2の少なくとも4~12個のアミノ酸、すなわち4、5、6、7、8、9、10、11、または12個、より好ましくは6~8個のアミノ酸で置換されている;および
(ii)免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの41位~45位にまたがるc1の少なくとも1個のアミノ酸が、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの41位~45位にまたがるc2の少なくとも1個のアミノ酸で置換されており、好ましい実施形態では、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの41位~45位にまたがるc1の1~5個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、または5個のアミノ酸、およびIgLCRCの46位~52位にまたがるC1の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸からなる連続アミノ酸ストレッチ、より好ましくはIgLCRCの41位~45位にまたがるc1の2~5個のアミノ酸およびIgLCRCの46位~52位にまたがるC1の4~6個のアミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチが、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの41位~45位にまたがるc2の1~5個のアミノ酸、すなわち、1、2、3、4、または5個、およびIgLCRCの46位~52位にまたがるC2の1~6個のアミノ酸、すなわち、1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸からなる連続アミノ酸ストレッチで、より好ましくはIgLCRCの41位~45位にまたがるc2の2~5個のアミノ酸およびIgLCRCの46位~52位にまたがるC2の4~6個のアミノ酸からなる連続したアミノ酸ストレッチで置換されており、
より好ましくは、c1の1~5個のアミノ酸がc2の1~5個のアミノ酸で置換されており、
好ましくは、置換2で置換された残基は、IgLCRCの47位および49位を含み、
好ましくは、置換された連続アミノ酸ストレッチの全長は、5~11、より好ましくは5~9、さらにより好ましくは5~7アミノ酸である;および
(iii)免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの109位~127位にまたがるg1の少なくとも1つのアミノ酸が、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの109位~127位にまたがるg2の少なくとも1つのアミノ酸で置換されており、好ましい実施形態では、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの109位~127位にまたがるg1の1~10個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸、好ましくはIgLCRCの102位~108位にまたがるF1の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸、g1の1~10個のアミノ酸、すなわち1 、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸、およびIgLCRCの128位~133位にまたがるG1の0~3個のアミノ酸、すなわち0、1、2、または3個のアミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチが、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの109位~127位にまたがるg2の1~10個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸、好ましくはIgLCRCの102位~108位にまたがるF2の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、または6個、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの109位~127位にまたがるg1の1~10個のアミノ酸、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸、およびIgLCRCの128位~133位にまたがるG2の0~3個のアミノ酸、すなわち0、1、2、または3個のアミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチで置換されており、置換された連続アミノ酸ストレッチの全長は、好ましくは3~20アミノ酸、より好ましくは3~18アミノ酸、さらにより好ましくは3~15アミノ酸である。
【0163】
同様に、HR2は好ましくは以下のアミノ酸構造を有する:
(i)免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの1位~12位にまたがるa3の少なくとも1つのアミノ酸が、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの1位~12位にまたがるa4の少なくとも1つのアミノ酸で置換されており、好ましい実施形態では、IgLCRCの1位~12位にまたがるa4の少なくとも4~12個のアミノ酸、すなわち4、5、6、7、8、9、10、11、または12個、より好ましくは6~8個のアミノ酸が、IgLCRC1位~12位にまたがるa4の少なくとも4~12個のアミノ酸、すなわち4、5、6、7、8、9、10、11、または12個、より好ましくは6~8個のアミノ酸で置換されている;および
(ii)免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの41位~45位にまたがるc3の少なくとも1つのアミノ酸が、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの41位~45位にまたがるc4の少なくとも1つのアミノ酸で置換されており、好ましい実施形態では、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの41位~45位にまたがるc3の1~5個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、または5個のアミノ酸、およびIgLCRCの46位~52位にまたがるC3の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、または6個アミノ酸からなる連続アミノ酸ストレッチ、より好ましくは免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの41位~45位にまたがるc3の2~5個のアミノ酸およびIgLCRCの46位~52位にまたがるC3の4~6個のアミノ酸からなる連続アミノ酸ストレッチが、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの41位~45位にまたがるc4の1~5個のアミノ酸、すなわち、1、2、3、4、または5個、およびIgLCRCの46位~52位にまたがるC4のおよび1~6個のアミノ酸、すなわち、1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸からなる連続アミノ酸ストレッチで、より好ましくはIgLCRCの41位~45位にまたがるc4の2~5個のアミノ酸およびIgLCRCの46位~52位にまたがるC4のおよび4~6個のアミノ酸からなる連続アミノ酸ストレッチで置換されており、
より好ましくは、c3の1~5個のアミノ酸がc4の1~5個のアミノ酸で置換されており、
好ましくは、置換2で置換された残基は、IgLCRCの47位および49位を含み、
好ましくは、置換された連続アミノ酸ストレッチの全長は、5~11、より好ましくは5~9、さらにより好ましくは5~7アミノ酸である;および
(iii)免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの109位~127位にまたがるg3の少なくとも1つのアミノ酸が、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの109位~127位にまたがるg4の少なくとも1つのアミノ酸で置換されており、好ましい実施形態では、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの109位~127位にまたがるg3の1~10個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸、好ましくはIgLCRCの102位~108位にまたがるF3の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸、g1の1~10個のアミノ酸、すなわち1 、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸、およびIgLCRCの128位~133位にまたがるG3の0~3個のアミノ酸、すなわち0、1、2、または3個のアミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチが、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの109位~127位にまたがるg4の1~10個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸、好ましくはIgLCRCの102位~108位にまたがるF4の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、または6個、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの109位~127位にまたがるg3の1~10個のアミノ酸、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸、およびIgLCRCの128位~133位にまたがるG4の0~3個のアミノ酸、すなわち0、1、2、または3個のアミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチで置換されており、置換された連続アミノ酸ストレッチの全長は、好ましくは3~20アミノ酸、より好ましくは3~18アミノ酸、さらにより好ましくは3~15アミノ酸である。
【0164】
HRIのさらに好ましい実施形態は以下のアミノ酸構造を有する:
(i)IgLCRCの1位~12位にまたがるa3の少なくとも4~12個のアミノ酸、すなわち4、5、6、7、8、9、10、11、または12個、より好ましくは6~8個のアミノ酸が、IgLCRCの1位~12位にまたがるa4の少なくとも4~12個のアミノ酸、すなわち4、5、6、7、8、9、10、11、または12個、より好ましくは6~8個のアミノ酸で置換されている;および
(ii)IgLCRCの41位~45位にまたがるc3の2~5個のアミノ酸およびIgLCRCの46位~52位にまたがるC3の4~6個のアミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチが、IgLCRCの41位~45位にまたがるc4の2~5個のアミノ酸およびIgLCRCの46位~52位にまたがるC4の4~6個のアミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチで置換されており、またはc3の1~5個のアミノ酸がc4の1~5個のアミノ酸で置換されており、
さらに好ましくは、置換2で置換された残基は、IgLCRCの47位および49位を含み、
好ましくは、置換された連続アミノ酸ストレッチの全長は、5~11、より好ましくは5~9、さらにより好ましくは5~7アミノ酸である;および
(iii)IgLCRCの102位~108位にまたがるF1の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸、g1の1~10個のアミノ酸、すなわち1 、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸、およびIgLCRCの128位~133位にまたがるG1の0~3個のアミノ酸、すなわち0、1、2、または3個のアミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチが、IgLCRCの102位~108位にまたがるF2の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、または6個、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの109位~127位にまたがるg2の1~10個のアミノ酸、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸、およびIgLCRCの128位~133位にまたがるG2の0~3個のアミノ酸、すなわち0、1、2、または3個のアミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチで置換されており、置換された連続アミノ酸ストレッチの全長は、好ましくは3~20アミノ酸、より好ましくは3~18アミノ酸、さらにより好ましくは3~15アミノ酸である。
【0165】
同様に、より好ましいHR2は以下のアミノ酸構造を有する:
(i)IgLCRCの1位~12位にまたがるa3の少なくとも4~12個のアミノ酸、すなわち4、5、6、7、8、9、10、11、または12個、より好ましくは6~8個のアミノ酸が、IgLCRCの1位~12位にまたがるa4の少なくとも4~12個のアミノ酸、すなわち4、5、6、7、8、9、10、11、または12個、より好ましくは6~8個のアミノ酸で置換されている;および
(ii)IgLCRCの41位~45位にまたがるc3の2~5個のアミノ酸およびIgLCRCの46位~52位にまたがるC3の4~6個のアミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチが、IgLCRCの41位~45位にまたがるc4の2~5個のアミノ酸およびIgLCRCの46位~52位にまたがるC4の4~6個のアミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチで置換されており、またはc3の1~5個のアミノ酸がc4の1~5個のアミノ酸で置換されており、
さらに好ましくは、置換2で置換された残基は、IgLCRCの47位および49位を含み、
好ましくは、置換された連続アミノ酸ストレッチの全長は、5~11、より好ましくは5~9、さらにより好ましくは5~7アミノ酸である;および
(iii)IgLCRCの102位~108位にまたがるF3の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸、g3の1~10個のアミノ酸、すなわち1 、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸、およびIgLCRCの128位~133位にまたがるG3の0~3個のアミノ酸、すなわち0、1、2、または3個のアミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチが、IgLCRCの102位~108位にまたがるF4の1~6個のアミノ酸、すなわち1、2、3、4、5、または6個、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質のIgLCRCの109位~127位にまたがるg4の1~10個のアミノ酸、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸、およびIgLCRCの128位~133位にまたがるG4の0~3個のアミノ酸、すなわち0、1、2、または3個のアミノ酸を含むまたはからなる連続アミノ酸ストレッチで置換されており、置換された連続アミノ酸ストレッチの全長は、好ましくは3~20アミノ酸、より好ましくは3~18アミノ酸、さらにより好ましくは3~15アミノ酸である。
【0166】
HRIは、6~8アミノ酸のa2;5~11個、より好ましくは5~9個、さらにより好ましくは5~7個のアミノ酸のc2およびC2を含むことが好ましく、置換3において、1番目のCRIの3~20個、より好ましくは3~18個、さらにより好ましくは3~15個のアミノ酸の連続アミノ酸ストレッチが、2番目のCRIの3~20個、より好ましくは3~18個、さらにより好ましくは3~15個のアミノ酸の連続アミノ酸ストレッチで置換されることが好ましい。HRIIは、6~8アミノ酸のa4;5~11個、より好ましくは5~9個、さらにより好ましくは5~7個のアミノ酸のc4およびC4を含むことが好ましく、置換6において、3番目のCRIの3~20個、より好ましくは3~18個、さらにより好ましくは3~15個のアミノ酸の連続アミノ酸ストレッチが、4番目のCRIの3~20個、より好ましくは3~18個、さらにより好ましくは3~15個のアミノ酸の連続アミノ酸ストレッチで置換されることが好ましい。
【0167】
また、置換はヌル置換ではないことも好ましい、すなわち、置換されるIgLCRC位置で1番目のCRIおよび2番目のCRIのアミノ酸が同一である場合、これは本発明の意味での置換とはみなされない。2番目のCRIのアミノ酸による1番目のCRIのアミノ酸の置換、および4番目のCRIのアミノ酸による3番目のCRIのアミノ酸の置換は、それぞれ1番目のCRIおよび3番目のCRIの領域の配列を変更する。
【0168】
好ましい実施形態では、HRIのHRIIへの結合の親和性は、1番目のCRIの3番目のCRIへの親和性の少なくとも50%であり、好ましくは、結合の親和性は少なくとも60%、70%、80%、90%またはそれ以上である。HRIのHRIIへの結合親和性は、1番目のCRIおよび3番目のCRIの結合親和性と比較して変化しないことが特に好ましい。当業者は、2つのタンパク質間の結合親和性を決定する方法をよく知っている。本発明の文脈において結合親和性を決定する好ましい方法は、BiaCoreまたは水晶振動子マイクロバランス(QCM)測定の使用である。
【0169】
アクセプタータンパク質の全体構造、すなわち1番目のCRIおよび3番目のCRIを維持するには、逆平行βストランドの部分である1番目のCRIおよび3番目のCRIのアクセプターアミノ酸は同じ数のドナーアミノ酸で置換されることが好ましい。これは、C1の一部をC2の一部で置換することを含む置換2、F1および/またはG1の一部をF2および/またはG2の一部で置換することを含む置換3、C3の一部をC4の一部で置換することを含む置換5、およびF3および/またはG3の一部をF4および/またはG4の一部で置換することを含む置換6に適用される。介在領域の長さは、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質の2つの異なるヒト定常領域間でより可変であるため、置換1~6における置換される介在領域の長さは必ずしも同一ではない。通常、置換されるアミノ酸の数は、挿入されるアミノ酸の数と同じである。すなわち、全長は変化しない、または、置換されるアミノ酸の数は、対応する介在領域から挿入されるアミノ酸数よりも1、2、または3アミノ酸多くまたは少なくなる、例えばa1の10個のアミノ酸は、a2の7~13個のアミノ酸で置換される。置換1~6のこれらの原理(principals)は、図8に例示してある。
【0170】
所定のIgLCRC位置の1番目のCRIのアミノ酸が、同一のIgLCRC位置にある2番目のCRIのアミノ酸で置換されることが好ましい。同様に、所定のIgLCRC位置にある3番目のCRIのアミノ酸が、同一のIgLCRC位置にある4番目のCRIのアミノ酸で置換されることが好ましい。最も好ましい実施形態では、それぞれ2番目および4番目のCRIのアミノ酸で置換される、それぞれ1番目および3番目のCRIのアミノ酸は、HRIおよびHRIIの両方について同一のIgLCRC位置にある。
【0171】
例えば、HRIは、IgLCRCの7位~13位にあるa2のアミノ酸を含むことができ、IgLCRCの7位~13位にあるa1のアミノ酸を置換し、および/またはHRIIは、IgLCRCの7位~13位にあるa4のアミノ酸を含むことができ、IgLCRCの7位~13位にあるa3のアミノ酸を置換する。
【0172】
特定の実施形態では、1番目のCRIおよび/または3番目のCRIはアミノ酸鎖Iに含まれない。別の特定の実施形態では、1番目のCRIおよび/または3番目のCRIはアミノ酸鎖IIに含まれない。1番目のCRIおよび/または3番目のCRIはアミノ酸鎖IおよびIIに含まれない。それぞれのアクセプター配列の省略は、望ましくないヘテロ二量体化を防ぐ。しかしながら、1番目のCRIまたは3番目のCRIの1つだけがHRIおよびHRIIに含まれている限り、ヘテロ二量体化は起こらない。したがって、1番目のCRIまたは3番目のCRIを含めることにより、本発明のタンパク質複合体とさらなるタンパク質鎖または複合体とのヘテロ二量体化が可能になる。HRIおよびHRII内のアミノ酸の置換により、本発明の文脈において、HRIはもはや1番目のCRIと見なされず、HRIIはもはや3番目のCRIと見なされないことに留意すべきである。したがって、1番目のCRIおよび/または3番目のCRIは、HRIの外側のアミノ酸鎖IおよびHRIIの外側のアミノ酸鎖IIに含まれないことが好ましい。
【0173】
好ましい実施形態では、2番目のCRIおよび4番目のCRIは同一であり、より好ましくは生理学的条件下で互いに特異的に結合する、すなわちホモ二量体を形成する。
【0174】
2番目のCRIおよび4番目のCRIがFc機能を有する特定の実施形態では、2番目のCRIおよび4番目のCRIのアミノ酸配列がそれぞれHRIの1番目のCRIおよびHRIIの3番目のCRIに挿入されるときにFc機能が維持されることが好ましい。本発明の文脈において、HRIが2番目のCRIのFc機能の少なくとも30%を有し、HRIIが4番目のCRIのFc機能の少なくとも30%を有する場合、Fc機能は維持される。2番目のCRIおよび4番目のCRIが互いに特異的に結合し、Fc機能を有する場合、ヘテロ二量体化HRIおよびHRIIは、二量体化された、好ましくはホモ二量体化された2番目のCRIおよび4番目のCRIのFc機能の少なくとも30%を有することが特に好ましい。
【0175】
好ましい実施形態では、置換1、置換2、置換3、置換4、置換5、および/または置換6、好ましくは置換1~6は、HRIおよび/またはHRIIに新たなB細胞エピトープを導入しない。好ましくは、新たなヒトB細胞エピトープを導入しない。好ましい実施形態では、置換1、置換2、置換3、置換4、置換5、および/または置換6、好ましくは置換1~6は、HRIおよび/またはHRIIに新たなT細胞エピトープを導入しない。好ましくは、新たなヒトT細胞エピトープを導入しない。
【0176】
特定の実施形態では、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様タンパク質は、IgG1、Igカッパ、T細胞受容体(TCR)α、TCRβ、新生児Fc受容体(FcRn)、β2ミクログロブリン、Igラムダ、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgM、白血球抗原(LA)AまたはBおよびLA-Dから選択される。特に、ヒトIgG1、Igカッパ、T細胞受容体(TCR)α、TCRβ、新生児Fc受容体(FcRn)、β2ミクログロブリン、Igラムダ、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgM、ヒト白血球抗原(HLA)AまたはBおよびHLA-Dから選択される。
【0177】
特定の実施形態では、1番目のCRIおよび3番目のCRIは、好ましくは配列番号1のアミノ酸配列を有するIgG1の重鎖1(CH1)の定常領域;好ましくは配列番号18のアミノ酸配列を有するIgκ定常領域;好ましくは配列番号10のアミノ酸配列を有するTCRαの定常領域;好ましくは配列番号11のアミノ酸配列を有するTCRβの定常領域;好ましくは配列番号12のアミノ酸配列を有するFcRnアルファ3;好ましくは配列番号13のアミノ酸配列を有するβ2ミクログロブリン;好ましくは配列番号19、54、55、56、57または58のアミノ酸配列を有するIgλ定常領域;好ましくは配列番号2のアミノ酸配列を有するIgG2;好ましくは配列番号3のアミノ酸配列を有するIgG3;好ましくは配列番号4のアミノ酸配列を有するIgG4;好ましくは配列番号5のアミノ酸配列を有するIgA1;好ましくは配列番号6のアミノ酸配列を有するIgA2;好ましくは配列番号7のアミノ酸配列を有するIgD;好ましくは配列番号8のアミノ酸配列を有するIgE;好ましくは配列番号9のアミノ酸配列を有するIgM;好ましくは配列番号14のアミノ酸配列を有するヒト白血球抗原(HLA)A、または好ましくは配列番号15のアミノ酸配列を有するHLA-Bα3;好ましくは配列番号16のアミノ酸配列を有するHLA-Dα2;および好ましくは配列番号17のアミノ酸配列を有するHLA-Dβ2からなる群から独立して選択される。
【0178】
特定の実施形態では、1番目のCRIおよび3番目のCRIの組み合わせは以下から選択される:
(i)1番目のCRI:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、またはIgMのCH1および3番目のCRI:Igκ定常領域およびIgλ定常領域、すなわちIgG1の1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgκ、IgG2の1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgκ、IgG3の1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgκ、IgG4の1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgκ、IgA1の1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgκ、IgA2の1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgκ、IgDの1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgκ、IgEの1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgκ、IgMの1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgκ、IgG1の1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgλ、IgG2の1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgλ、IgG3の1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgλ、IgG4の1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgλ、IgA1の1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgλ、IgA2の1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgλ、IgDの1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgλ、IgEの1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgλ、またはIgMの1番目のCRI CH1および3番目のCRIIgλ;
(ii)1番目のCRI:TCRαの定常領域および3番目のCRI:TCRβの定常領域;
(iii)1番目のCRI:FcRnアルファ3;HLA-Aα3;またはHLA-Bα3および3番目のCRI:β2ミクログロブリン;および
(iv)1番目のCRI:HLA-Dα2および3番目のCRI:HLA-Dβ2。
【0179】
特定の実施形態では、(i)2番目のCRIおよび4番目のCRIは同一であり、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2のCH3;IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、またはIgMのCH1;またはIgD;IgEまたはIgMのCH4;およびIgκまたはIgλ定常領域からなる群から選択される、または(ii)2番目のCRIおよび4番目のCRIは、IgG1のCH1、IgκまたはIgλ定常領域、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、またはIgMのCH1;IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、またはIgDのCH3およびIgEまたはIgMのCH4からなるグループから個別に選択される。
【0180】
特定の実施形態では、2番目のCRIおよび4番目のCRIは、好ましくは配列番号45のアミノ酸配列を有するIgG1の重鎖の定常領域3(CH3)、好ましくは配列番号46のアミノ酸配列を有するIgG2のCH3、好ましくは配列番号47のアミノ酸配列を有するIgG3のCH3、好ましくは配列番号48のアミノ酸配列を有するIgG4のCH3、好ましくは配列番号49のアミノ酸配列を有するIgMの重鎖の定常領域4(CH4)、好ましくは配列番号50のアミノ酸配列を有するIgA1のCH3、好ましくは配列番号51のアミノ酸配列を有するIgA2のCH3、好ましくは配列番号52のアミノ酸配列を有するIgDのCH3、および好ましくは配列番号53のアミノ酸配列を有するIgEのCH4、からなる群から独立して選択される。
【0181】
したがって、特定の実施形態では、本発明は
(i)置換1および/または置換4において、好ましくは置換1および置換4において、1番目のCRIおよび/または3番目のCRI、好ましくは1番目のCRIおよび3番目のCRIのN末端からベータシートA(Ig様定常領域コンセンサス(IgLCRC)の1位~12位)までのすべてのアミノ酸が、2番目のCRIおよび/または4番目のCRI、好ましくは2番目のCRIおよび4番目のCRIのN末端からベータシートA(IgLCRCの1位~12位)までのすべてのアミノ酸でそれぞれ置換されており;
(ii)置換2および/または置換5において、好ましくは置換2および置換5において、1番目のCRIおよび/または3番目のCRI、好ましくは1番目のCRIおよび3番目のCRIのIgLCRCの41-45、41-46、41-47、41-48、41-49、41-50、41-51、42-45、42-46、42-47、42-48、42-49、42-50、42-51、43-45、43-46、43-47、43-48、43-49、43-50、43-51、44-45、44-46、44-47、44-48、44-49、44-50、44-51、45-45、45-46、45-47、45-48、45-49、45-50、または45-51位のアミノ酸が、2番目のCRIおよび/または4番目のCRI、好ましくは2番目のCRIおよび4番目のCRIのIgLCRCの41-45、41-46、41-47、41-48、41-49、41-50、41-51、42-45、42-46、42-47、42-48、42-49、42-50、42-51、43-45、43-46、43-47、43-48、43-49、43-50、43-51、44-45、44-46、44-47、44-48、44-49、44-50、44-51、45-45、45-46、45-47、45-48、45-49、45-50、または45-51位のアミノ酸でそれぞれ置換されており;および
(iii)置換3および/または置換6において、好ましくは置換3および置換6において、1番目のCRIおよび/または3番目のCRI、好ましくは1番目のCRIおよび3番目のCRIのIgLCRCの103-127、103-128、103-129、103-130、103-131、103-132、104-127、104-128、104-129、104-130、104-131、104-132、105-127、105-128、105-129、105-130、105-131、105-132、106-127、106-128、106-129、106-130、106-131、106-132、107-127、107-128、107-129、107-130、107-131、107-132、108-127、108-128、108-129、108-130、108-131、108-132、109-127、109-128、109-129、109-130、109-131または109-132位のアミノ酸が、2番目のCRIおよび/または4番目のCRI、好ましくは2番目のCRIおよび4番目のCRIのIgLCRCの103-127、103-128、103-129、103-130、103-131、103-132、104-127、104-128、104-129、104-130、104-131、104-132、105-127、105-128、105-129、105-130、105-131、105-132、106-127、106-128、106-129、106-130、106-131、106-132、107-127、107-128、107-129、107-130、107-131、107-132、108-127、108-128、108-129、108-130、108-131、108-132、109-127、109-128、109-129、109-130、109-131または109-132位のアミノ酸でそれぞれ置換されている
タンパク質複合体を提供する。
【0182】
HRIは主に1番目のCRI、HRIIは主に3番目のCRI、すなわちアクセプター、のアミノ酸配列を含むまたはからなる。1番目のCRIおよび3番目のCRIにおいて置換されるアミノ酸の総数、すなわち、2番目のCRIから1番目のCRIに挿入され、4番目のCRIから3番目のCRIに挿入されるアミノ酸の数は14~30個のアミノ酸、すなわち14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、特に15~29個、特に16~19個である。
【0183】
特定の実施形態では、本発明は、置換1~6に加えて、(i)1番目のCRIまたは3番目のCRIのIgLCRCの37位、および/または47位、および/または49位、および/または81位、および/または107位のアミノ酸は、2番目のCRIまたは4番目のCRIのIgLCRCの37位、および/または47位、および/または49位、および/または81位、および/または107位のアミノ酸で置換される。これらの置換は、HRIおよびHRIIの特性、例えば二量体化の安定性または強度をさらに改善する。特定の実施形態では、1番目のCRIまたは3番目のCRIのIgLCRCの37位および47位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの49位および/または81位および/または107位のアミノ酸が、2番目のCRIまたは4番目のCRIのIgLCRCの37位および47位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの49位および/または81位および/または107位のアミノ酸で置換される。特定の実施形態では、1番目のCRIまたは3番目のCRIのIgLCRCの37位および81位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの47位および/または49位および/または107位のアミノ酸が、2番目のCRIまたは4番目のCRIのIgLCRCの37位および81位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの47位および/または49位および/または107位のアミノ酸で置換される。特定の実施形態では、1番目のCRIまたは3番目のCRIのIgLCRCの37位および107位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの47位および/または49位および/または81位のアミノ酸が、2番目のCRIまたは4番目のCRIのIgLCRCの37位および107位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの47位および/または49位および/または81位のアミノ酸で置換される。特定の実施形態では、1番目のCRIまたは3番目のCRIのIgLCRCの47位および49位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの37位および/または81位および/または107位のアミノ酸が、2番目のCRIまたは4番目のCRIのIgLCRCの47位および49位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの37位および/または81位および/または107位のアミノ酸で置換される。特定の実施形態では、1番目のCRIまたは3番目のCRIのIgLCRCの47位および81位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの37位および/または49位および/または107位のアミノ酸が、2番目のCRIまたは4番目のCRIのIgLCRCの47位および81位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの37位および/または49位および/または107位のアミノ酸で置換される。特定の実施形態では、1番目のCRIまたは3番目のCRIのIgLCRCの47位および107位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの37位および/または49位および/または81位のアミノ酸が、2番目のCRIまたは4番目のCRIのIgLCRCの47位および107位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの37位および/または49位および/または81位のアミノ酸で置換される。特定の実施形態では、1番目のCRIまたは3番目のCRIのIgLCRCの49位および81位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの37位および/または47位および/または107位のアミノ酸が、2番目のCRIまたは4番目のCRIのIgLCRCの49位および81位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの37位および/または47位および/または107位のアミノ酸で置換される。特定の実施形態では、1番目のCRIまたは3番目のCRIのIgLCRCの49位および107位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの37位および/または47位および/または81位のアミノ酸が、2番目のCRIまたは4番目のCRIのIgLCRCの49位および107位のアミノ酸、およびさらに任意にIgLCRCの37位および/または47位および/または81位のアミノ酸で置換される。
【0184】
特定の実施形態では、以下の1番目のCRIと3番目のCRIの組み合わせ:
(i)1番目のCRI:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、またはIgMのCH1および3番目のCRI:Igκ定常領域および/またはIgλ定常領域;
(ii)1番目のCRI:TCRαの定常領域および3番目のCRI:TCRβの定常領域
の結果、HRIおよびHRIIはそれぞれ、図4に示すように、IgLCRCの20位(IgG2、IgG3、IgG4、またはIgMのCH1)、21位(IgDのCH1)、135位(IgA1またはIgA2のCH1)、138位(IgG1またはIgEのCH1、IgκのCL、IgλのCL)、139位(TCRβの定常ドメイン)または141位(TCRaの定常ドメイン)でHRIとHRIIとの間に共有結合を形成するように配置された少なくとも1つのCys残基を含む。
【0185】
特定の実施形態では、本発明は、タンパク質複合体を提供し、ここで、HRIおよびHRIIは該タンパク質複合体に含まれ、それぞれ配列番号20および配列番号21、配列番号22および配列番号23、配列番号24および配列番号25、配列番号26および配列番号27、配列番号28および配列番号32、配列番号28および配列番号33、配列番号31および配列番号29、および配列番号31および配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0186】
特定の実施形態では、アミノ酸鎖Iおよび/またはアミノ酸鎖IIは、抗体のCH2またはCH3ドメイン;好ましくは、Fv、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド安定化Fv、ジスルフィド安定化scFv、Fab、一本鎖Fab、単一ドメイン抗体、可変重鎖ドメイン(VH)、可変軽鎖ドメイン(VL)、例えばダイアボディ様結合部位、ナノボディ、VHH、1つ以上の抗体様結合タンパク質(例えば、ダーピン、アンチカリン、アフィボディ、フィブロネクチン様ドメインなど)を形成する、2つまたはそれ以上の接続された可変鎖ドメインからなる群から選択される1つまたはそれ以上の抗原特異的リガンド(ASL);抗体ヒンジ領域(HR)、1つまたはそれ以上のリンカー配列(L)、1つまたはそれ以上のサイトカイン(C、例えば、TNFスーパーファミリーのメンバー、インターロイキン(IL、例えば、IL-2)、インターフェロン(例えば、IFNg)、成長因子、ホルモン、リガンド、ペプチド、リガンド結合活性を有する受容体断片、キレート剤、酵素、凝固因子、抗凝固剤、およびそれらの誘導体からなる群から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸要素をさらに含む。
【0187】
特定の実施形態では、アミノ酸鎖IはN末端からC末端へ以下:
(i)抗原1に特異的なASL(ASLAn1)-L-CH2-HRI;
(ii)CH2-HRI;
(iii)ASLAn1-L-CH2-HRI;
(iv)CH2-HRI-L-ASLAn1;
(v)CH2-HRI;
(vi)CH2-HRI-L-ASLAn1;
(vii)ASLAn1-L-CH2-HRI-L-抗原2に特異的なASL(ASLAn2);
(viii)ASLAn1-L-CH2-HRI;
(ix)CH2-HRI;
(x)CH2-HRI-L-ASLAn1;
(xi)ASLAn1-L-CH2-HRI-L-ASLAn2;
(xii)ASLAn1-L-CH2-HRI-L-ASLAn2;
(xiii)CH2-HRI-L-ASLAn1;
(xiv)ASLAn1-L-CH2-HRI;
(xv)ASLAn1-L-CH2-HRI-L-ASLAn2;
(xvi)CH2のN末端にヒンジ領域を含む上記(i)~(xv)に記載のアミノ酸鎖;
(xvii)1つまたはそれ以上のASLの代わりにサイトカイン(C)またはインターロイキン(IL)を含む上記(i)~(xvi)に記載のアミノ酸鎖;
(xviii)ASLAn1a(例えば、VL)-HRIa + ASLAn1b(例えば、VH)-HRIIa-L/HR-CH2-HRIb
を含み、アミノ酸鎖IIはN末端からC末端へ以下:
(i)CH2-HRII;
(ii)ASLAn1-L-CH2-HRII;
(iii)抗原2に特異的なASL(ASLAn2)-L-CH2-HRII;
(iv)CH2-HRII;
(v)CH2-HRI-L-ASLAn1;
(vi)CH2-HRI-L-ASLAn2;
(vii)CH2-HRII;
(viii)CH2-HRII-L-ASLAn2;
(ix)ASLAn1-L-CH2-HRII-L-ASLAn2;
(x)ASLAn2-L-CH2-HRII;
(xi)CH2-HRII-L-抗原3に特異的なASL(ASLAn3);
(xii)ASLAn3-L-CH2-HRII;
(xiii)ASLAn2-L-CH2-HRII-L-ASLAn3;
(xiv)ASLAn2-L-CH2-HRII-L-ASLAn3;
(xiv)ASLAn3-L-CH2-HRII-L-抗原4に特異的なASL(ASLAn4);
(xvi)CH2のN末端にヒンジ領域を含む上記(i)~(xv)に記載のアミノ酸鎖;
(xvii)1つまたはそれ以上のASLの代わりにサイトカイン(C)またはインターロイキン(IL)を含む上記(i)~(xvi)に記載のアミノ酸鎖;
(xviii)ASLAn2a(例えば、VL)-HRIc + ASLAn2b(例えば、VH)-HRIIc-L/HR-CH2-HRIIb
を含む。
【0188】
特定の実施形態では、アミノ酸鎖Iは1つまたはそれ以上の抗原特異的リガンド(ASL)および/または1つまたはそれ以上のエフェクター分子を含み、アミノ酸鎖IIは1つまたはそれ以上の抗原特異的リガンド(ASL)および/または1つまたはそれ以上のエフェクター分子を含み、ここで、ASLモジュールは、例えば、細胞表面タンパク質(受容体、接着分子、チャネル、輸送体など)、ホルモン、成長因子、サイトカイン、リガンド、血清タンパク質、凝固因子、線維素溶解因子、ケモカイン、酵素に特異的に結合する分子の群から選択され、エフェクター分子は、例えば、細胞表面タンパク質(受容体、接着分子、チャネル、輸送体など)、ホルモン、成長因子、サイトカイン、リガンド、血清タンパク質、凝固因子、線維素溶解因子、ケモカイン、酵素などの分子などの群から選択される。
【0189】
特定の実施形態では、本発明は、アミノ酸鎖Iまたはアミノ酸鎖II、好ましくはこれらアミノ酸鎖の組み合わせを提供し、ここで、鎖Iおよび鎖IIは、それぞれ、配列番号41および配列番号42、配列番号34および配列番号35、配列番号43および配列番号44、配列番号36および配列番号37(scFv13.7-Fc1k)、配列番号36および配列番号38(scFv13.7-CD3-ヒンジ-Fc1k)、配列番号39および配列番号38(scFv3-43-CD3-ヒンジ-Fc1k)または配列番号40および配列番号38(scFvhuMCSP-CD3-ヒンジ-Fc1k)によるアミノ酸配列、および前記配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有し、ヘテロ二量体化および同じ標的への特異的結合が可能であるそれらの変異体を含む、本質的にからなるまたはからなる。
【0190】
第二の態様において、本発明は、アミノ酸鎖Iおよび/またはアミノ酸鎖IIをコードする核酸を提供する。
【0191】
第三の態様において、本発明は、第二の態様の核酸を含むベクターを提供する。
【0192】
第四の態様において、本発明は、アミノ酸鎖IのHRIおよび/またはアミノ酸鎖IIのHRIIのアミノ酸配列を決定(定義)する方法を提供し、該方法は以下の工程を含む:
(i)1番目のCRI、2番目のCRI、3番目のCRI、および4番目のCRIを選択し;
(ii)1番目のCRI、2番目のCRI、3番目のCRI、および4番目のCRIの7つのベータストランドA、B、C、D、E、FおよびG、1番目のCRI、2番目のCRI、3番目のCRI、および4番目のCRIの介在配列b、c、d、e、fおよびg、1番目のCRI、2番目のCRI、3番目のCRI、および4番目のCRIのそれぞれのN末端配列およびC末端配列aおよびhを決定(定義)し;
(iii)1番目のCRIのaの少なくとも1つのアミノ酸を2番目のCRIのaの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換1);1番目のCRIのcの少なくとも1つのアミノ酸を2番目のCRIのcの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換2);1番目のCRIのgの少なくとも1つのアミノ酸を2番目のCRIのgの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換3);3番目のCRIのaの少なくとも1つのアミノ酸を4番目のCRIのaの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換4);3番目のCRIのcの少なくとも1つのアミノ酸を4番目のCRIのcの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換5);および3番目のCRIのgの少なくとも1つのアミノ酸を4番目のCRIのgの少なくとも1つのアミノ酸で置換し(置換6)、
ここで、1番目のCRIおよび3番目のCRIは互いに異なり、生理学的条件下で互いに特異的に結合する。
【0193】
2つのアミノ酸鎖のヘテロ二量体化を可能にするためにHRIとHRIIの両方が必要であるため、HRIとHRIIの両方が定義されていることが好ましい。
【0194】
工程(ii)には、各CRIについて、配列アライメントと、βストランドおよび介在配列のそれぞれのNおよびC末端アミノ酸の指定が含まれる。
【0195】
第五の態様において、本発明は、アミノ酸鎖Iおよび/またはアミノ酸鎖IIをコードする核酸を宿主細胞に導入し、アミノ酸鎖Iおよび/またはアミノ酸鎖IIを発現する工程を含む、HRI配列が決定(定義)されたアミノ酸鎖Iおよび/またはHRII配列が決定(定義)されたアミノ酸鎖IIの製造方法を提供する。
【0196】
第六の態様において、本発明は、医薬として使用するためのタンパク質複合体を提供する。
【0197】
一実施形態において、タンパク質複合体は、炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、増殖性疾患、癌型疾患、皮膚疾患、内分泌疾患、目の疾患および障害、遺伝的障害、代謝性疾患、感染症、腸疾患、神経障害、および精神疾患などの、しかしこれらに限定されない障害または疾患の予防、治療または診断に使用するためのものである。
【0198】
以下の実施例は本発明の単なる例示であり、添付の特許請求の範囲によって示される本発明の範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【実施例0199】
実施例1:ヘテロ二量体化Fc部分
ヘテロ二量体化抗体のFc部分を、それぞれ2番目のCRIおよび4番目のCRIとしてのIgG1 CH1およびIgカッパ定常ドメインと、1番目のCRIおよび3番目のCRI配列としてのIgG1 CH3残基との組み合わせを、CH1-CH3の組み合わせ(CH31)の場合は配列構成1、2(#43-51)および3(#103-132)、CLk-CH3の組み合わせ(CH3k)の場合は1、2(#45-51)および3(#103-129)として用いて生成した。示された配列に加えて、CH3の残基37は、配列1~3に関して導入されたCH3要素の構造安定化への潜在的な関与に関して、CLkの3番目のCRI配列に移された。CH31およびCH3kの配列は図8に示してある。Fc1kと呼ばれる完全に機能的なFc部分を生成するため、両方のドメインをIgG1ヒンジ-CH2ドメインのC末端に融合させた(図9)。Fc1kのヘテロ二量体化の可能性を実証するため、IgG1ヒンジ配列と2番目の鎖(ヒンジ配列とFcドメインのみを含む)を介して最初のFc鎖に接続されたscFv13.7(抗腫瘍壊死因子受容体1、TNFR1)を含む2つの分子をクローニングおよび生成した(図10)。1つの構築物はFc部分をヘテロ二量体化するCH2-CH31/CH2-CH3kを有していたが、2番目の分子は未修飾のCH2-CH3野生型Fc部分を含んでいた。両方のタンパク質をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。還元条件下で、scFv13.7-ヒンジ-Fc1kは、計算された分子量に対応する2つの主要なバンドを示した(図11a-c、重鎖50kDa、軽鎖24kDa)。さらに、低分子量の2番目のバンドが軽鎖の下に現れ、グリコシル化されていない、またはグリコシル化が少ないことを示した。非還元条件下では、1つの支配的なバンドが見え、正しく形成されたヘテロダイマー(74kDa)に似ていた。しかしながら、低分子量の追加のバンドは、単量体重鎖または二量体化軽鎖(約50kDa)およびより小さな分解産物または非連結軽鎖(約25kDa)の存在を示した。この観察はSEC分析によって確認された。約14.5分で支配的なピークは正しく組み立てられたscFv13.7-Fc1kタンパク質を表していたが、約16.5分でのピークは、単量体重鎖または二量体化軽鎖に再び起因する可能性があった。対照的に、scFv13.7-Fcは、SDS-PAGE(約160kDa、図11d-e)およびSEC分析(約13.8分)でわかるように、重鎖の二量体をさらに形成した。scFv13.7-Fc1kと比較して、SDS-PAGEにおけるマイナーバンド(約50 kDa)またはSEC分析におけるマイナーピーク(約16.5分)の減少は、軽鎖がホモ二量体を形成する傾向の少ないことを示しており、scFv13.7-Fc1kの場合のマイナーバンドが二量体化軽鎖よりむしろ単量体重鎖を表すという仮定を支持していた。SEC分析で観察された保持時間の短い追加のマイナーピークは、凝集または多量体化されたタンパク質種を示し、両方のタンパク質で観察された。
【0200】
実施例2:Fv13.7-Fc1k
機能的で二価のFc部分を含むFab様抗体フォーマットを、Fab13.7の可変ドメインをそれぞれGTG3SGリンカーを介してCH2とCH31またはCH2とCH3kで構成される1つのFc鎖に融合することで作成した(図12)。さらに、Fcγ受容体および補体タンパク質C1qへの結合を回避するために、CH2に変異(A327G、A330SおよびP331S、EUナンバリング)を導入した(Richterら、2013)。N末端リンカー(GTG3SG)を含むCH2-CH31およびCH2-CH3k(GeneArtTM)のコドン最適化DNA配列を、KpnIおよびEcoRIによる消化後にVH13.7またはVL13.7のいずれかを含むpSecTagA-L1に挿入した。
【0201】
Fv13.7-Fc1kを、トランスフェクション試薬としてポリエチレンイミンを使用して、VH13.7-CH2-CH31またはVL13.7-CH2-CH3kのいずれかをコードする2つのプラスミドを同時投与した後、一時的にトランスフェクションしたHEK293-6E細胞で発現させた。細胞培養上清に分泌されたタンパク質をプロテインAアフィニティークロマトグラフィー(14.6mg/L、表1を参照)で精製し、続いて分取サイズ排除クロマトグラフィー工程(SEC、最終収量4.1mg/L)を行った。個々の画分を、TNFR1活性化を誘導する能力について試験した。正しく組み立てられたタンパク質(漫画、図13aを参照)を示す負の画分(データは示していない)をプールした。Fv13.7-Fc1kは、SDS-PAGEにおいて還元条件下でサイズがわずかに異なる2つのバンドと非還元条件下で1つのバンドを示し、すべて計算した分子量に対応していた(図13b)。同様に、SEC分析の天然条件下では、凝集または多量体化されたタンパク質種のわずかな割合を表すマイナーピークを伴う1つの大きなピークが認められた(図13c)。
【0202】
表1:Fv13.7-Fc1kの製造および精製

【0203】
Fv13.7-Fc1kは、ELISAにおいて、Fab13.7と比較して1.9倍減少した結合親和性を表す1.2nMのEC50値で固定化ヒトTNFR1に結合した(表2、図14)。Fab13.7と一致して、Fv13.7-Fc1kはHT1080細胞からのTNFR1媒介IL-8放出を誘導しなかったが、これはATROSABの場合に観察される受容体活性化とは対照的であった(図15a)。さらに、Fv13.7-Fc1kは、HT1080細胞からの0.1nM TNFによって誘導されるTNFR1媒介IL-8放出を39.7nMのIC50値で阻害した。Fab13.7と比較して、Fv13.7-Fc1kは1.5倍の生物活性の低下を示したが、ATROSABと比較すると、阻害能は2.5倍増加した(図15b、表2)。Fv13.7-Fc1kが治療薬として適用される可能性をさらに明確にするため、マウスタンパク質の代わりにヒトTNFR1の細胞外ドメインを発現するように遺伝子操作されたヒトTNFR1ecdノックインマウスを使用して、薬物動態特性をインビボで決定した。ATROSABの場合、29.1時間の終末相半減期と526.4h*μg/mlの曲線下面積(治療薬のバイオアベイラビリティの相対測定値を表す)が決定された(図16、表2)。分子量が大きく、FcRnを介した薬物リサイクルの可能性があるため、ATROSABにはより高い値が期待される。しかしながら、ここで適用された低用量注射(25μg/動物)および標的抗原(ヒトTNFR1)の存在の実験条件では、ATROSABは標的媒介クリアランスの二次効果によって排除された(Richterら、準備中)。Fv13.7-Fc1kは、ATROSABと比較した場合、それぞれ、2.1および2.0の因子によって、終末相半減期および曲線下面積の値が減少することが明らかになった。しかしながら、Fab13.7と比較してより重要なことは、Fv13.7-Fc1kでは、終末相半減期が10倍向上し、曲線下面積が65倍増加したことである。
【0204】
表2:Fv13.7-Fc1kの機能的データ
【0205】
実施例3~6:二価または三価および二重特異性scFv-Fc融合タンパク質の生成
さらに、ヘテロ二量体化Fc部分Fc1kを使用して、CD3発現T細胞をFAP発現腫瘍細胞に、またはFAP発現線維芽細胞に囲まれた腫瘍細胞に再ターゲティングするため、二価または三価の二重特異性scFv-Fc融合タンパク質を生成した。したがって、scFvhu36(FAPターゲティング)およびscFvhuU3(CD3ターゲティング)部分を、Fc1kのN末端またはC末端のいずれかに融合した。また、ヒンジを介した共有結合の重要性を調べるために、システインを含まないIgG1ヒンジ領域を使用してすべての構築物を作成した。作成したコンストラクトは、N末端に1つのFAPターゲティング部分と1つのCD3ターゲティング部分を含んでいるか(FAPN-CH3N-hFc[ヒンジ領域にシステインを含む]、実施例3aおよびFAPN-CH3N-Fc[ヒンジ領域にシステインを含まない]、実施例3b、図17)またはN末端に1つのFAPターゲティング部分およびC末端に1つのCD3ターゲティング部分を含んでいた(FAPN-CH3C-hFc、実施例4aおよびFAPN-CH3C-Fc、実施例4b、図18)。さらに、N末端に2つのFAPターゲティング部分とC末端に1つのCD3ターゲティング部分を含むコンストラクト(FAPNN-CH3C-hFc、実施例5aおよびFAPNN-CH3C-Fc、実施例5b、図19)並びにN末端に1つのFAPターゲティング成分、C末端に1つのFAPターゲティング成分、およびC末端に1つのCD3ターゲティング成分を含むコンストラクト(FAPNC-CH3C-hFc、実施例6aおよびFAPNC-CH3C-Fc、実施例6b、図20)を作成した。これらの融合タンパク質の生産と特性評価はまだ進行中である。
【0206】
実施例7:二価IgG様抗体の生成
本明細書に提示されるヘテロ二量体化Igドメインの生成のためのツールボックスは、二価IgG様抗体を生成する可能性を提供する。したがって、ヘテロ二量体化Fc部分を生成する必要があり、1番目のCRIおよび3番目のCRI配列はCH1およびCLカッパ/ラムダから取得できない。1番目のCRIおよび3番目のCRI配列を、CH3からの2番目のCRIおよび4番目のCRI配列と組み合わせて、例えば、FcRn-アルファ3およびベータ2-ミクログロブリンから使用でき、新たなドメインFcRnH3およびb2mH3を生成する。目的のドナー配列組成(1、2[41-45]、3[109-127]および追加の残基[47、49、107])を図21aに示す。Fc1kと同様に、完全なFc部分(Fcb2Rn)をさらに生成できる。
【0207】
IgG様分子を生成するために、Fabアームの1つをそのままにしておくことができる。しかしながら、重鎖と軽鎖の誤対合を避けるために、Fab様の2番目のIgGアームの基礎として、別のヘテロ二量体化ドメインペアを生成する必要がある。1番目のCRIおよび3番目のCRI配列を、例えば、TCR-アルファ2およびTCR-ベータ2からそれぞれCH1およびCLkからの2番目のCRIおよび4番目のCRI配列とともに使用して、新たなドメインTCRaH1およびTCRbLkを生成することができ、これらは、所望の特異性のVHおよびVLのC末端への融合後にFabTCRに集合する。目的の2番目のCRIおよび4番目のCRI配列組成(1、2[41-45]、3[109-127]、および追加の残基[81])を図21aに示す。分子配列全体を図22に示す。
【0208】
実施例8:Fv13.7X-Fc1k
機能的で二価のFc部分を含むFab様抗体フォーマットを、Fab13.7の可変ドメインをそれぞれGTG3SGリンカーを介してCH2とCH31またはCH2とCH3kで構成される1つのFc鎖に融合することで作成した(図23)。さらに、Fcγ受容体および補体タンパク質C1qへの結合を回避するために、CH2に変異(A327G、A330SおよびP331S、EUナンバリング)を導入した(Richterら、2013)。N末端リンカー(GTG3SG)を含むCH2-CH31およびCH2-CH3k(GeneArtTM)のコドン最適化DNA配列を、KpnIおよびEcoRIによる消化後にVH13.7またはVL13.7のいずれかを含むpSecTagA-L1に挿入した。前述のFv13.7-Fc1k(実施例2)とは異なり、Fv13.7X-Fc1kの場合、VH13.7はCH2およびCH3kを含むポリペプチド鎖にN末端で融合し、VL13.7はCH2およびCH31を含むポリペプチド鎖にN末端で融合した。
【0209】
トランスフェクション試薬としてポリエチレンイミンを用い、VH13.7-CH2-CH3kまたはVL13.7-CH2-CH31のいずれかをコードする2つのプラスミドを同時投与した後、一時的にトランスフェクションしたHEK293-6E細胞でFv13.7X-Fc1kを発現させた。細胞培養上清に分泌されたタンパク質を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、続いて分取サイズ排除クロマトグラフィー工程により精製した。無傷でヘテロ二量体に組み立てられたタンパク質を表すピークの収集画分(図24a)をプールした。プロテインL精製後、Fv13.7X-Fc1kはSDS-PAGEにおいて還元条件下で異なるサイズの2つのバンドを示し、非還元条件下で1つのバンドを示したが、これらはすべて計算した分子量に対応していた(図24b)。同様に、SEC分析の天然条件下では、凝集/多量体化タンパク質種のわずかな割合、または最小の割合の遊離単一ポリペプチド鎖を表すマイナーピークを伴う1つの大きなピークが認められた(図24c)。
【0210】
Fv13.7X-Fc1kは、ELISAにおいて、Fab13.7と比較して2.1倍減少した結合親和性を表す1.9nMのEC50値で固定化ヒトTNFR1に結合した(表3、図24d)。Fab13.7と一致して、Fv13.7X-Fc1kはHT1080細胞からのTNFR1媒介IL-8放出を誘導しなかったが(図24e)、これはATROSABの場合に観察される受容体活性化とは対照的であった(図15a)。注目すべきは、IL-8放出アッセイにおけるATROSABによるHT1080細胞の表面でのTNFR1の活性化は一貫して観察できなかったが、これは使用された材料(ELISAキット)の変動または細胞バッチごとの変動が原因である可能性が最も高い。しかしながら、Fv13.7X-Fc1kは、0.1nM TNFによって誘導されるTNFR1媒介IL-8放出を48nMのIC50値で阻害した。Fab13.7と比較して、Fv13.7X-Fc1kは3.7倍の生物活性の低下を示したが、ATROSABと比較すると、阻害能は2.8倍増加した(図24f、表3)。これらの融合タンパク質の生産と特性評価はまだ進行中である。
【0211】
表3:Fv13.7X-Fc1kの機能的データ
【0212】
実施例9:FvCD3-Fc1k-scFvHer32
実施例2および8に記載のFab様抗体フォーマットに基づく二重特異性分子を、Her3ターゲティング抗体の2つの一本鎖可変フラグメント(scFv)をCD3特異的Fv-Fc1kモジュールのCH31-およびCH3k-含有ポリペプチド鎖のC末端に融合することで生成した(図25)。接続は、制限部位KasIおよびEcoRIを使用して、ヒンジ由来のポリペプチドリンカー(表5)によって達成された。一般に、このフォーマットは、標的結合scFvの部分を代替scFvまたは1つまたはおそらく2つの異なる腫瘍抗原または腫瘍関連抗原に対するあらゆる種類の結合ドメインで置き換えることにより、多様な二重特異性および多重特異性免疫細胞関与分子の開発のためのプラットフォームテクノロジーとして使用される可能性を保持する。この融合タンパク質の生産と特性評価はまだ進行中である。
【0213】
実施例10:ヒトTNFR1およびCD3に特異的な二重特異性scFv-Fc融合タンパク質
実施例3aとして記載された分子に基づいて、Fc1kのヒンジ含有鎖のN末端に融合されたCD3およびヒトTNFR1に対するscFv部分を含む、別の二重特異性scFv-Fc融合タンパク質を生成した(13.7N-CD3N-hFc1k)(図26)。
【0214】
トランスフェクション試薬としてポリエチレンイミンを用い、2つのポリペプチド鎖の1つをそれぞれコードする2つのpSecTagAL1ベクターを一過性にトランスフェクションした後、13.7N-CD3N-hFc1kをHEK293-6E細胞で産生させた。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーとそれに続く分取SECを使用した精製後のSDS-PAGE分析により、還元条件下で2つのバンド、非還元条件下で1つの支配的なバンドが明らかになったが、両方とも計算した分子量を表す(図27b)。両方の条件下で観察されたマイナーバンドは、発現タンパク質のグリコシル化状態の部分的な違いを表しているかもしれない。さらに、13.7N-CD3N-hFc1kは分析SECで1つの単一ピークを示した(図27c)。13.7N-CD3N-hFc1kのヒトTNFR1-Fc融合タンパク質への結合をELISAによって分析し、3.5nMのEC50値を明らかにした(図27d、表4)。さらに、13.7N-CD3N-hFc1kは、HT1080(図27e)およびCD3をトランスフェクションしたJurkat細胞(図27f)の表面上のTNFR1およびCD3に結合し、EC50値はそれぞれ3.7nMおよび1.6nMであった。最後に、末梢血単核細胞(PBMC)の存在下で標的細胞の生存率(TNFR1を発現するHT1080細胞)を低下させる能力に反映される13.7N-CD3N-hFc1kの生物活性を決定し、0.8nMのIC50値および10nMを超える濃度での40%の残留生存率であった(図27g)。この融合タンパク質の生産と特性評価はまだ進行中である。
【0215】
実施例11:ヒトHer3およびCD3に特異的な二重特異性scFv-Fc融合タンパク質
実施例3aとして記載された分子に基づいて、Fc1kのヒンジ含有鎖のN末端に融合されたCD3およびヒトHer3(ErbB3とも呼ばれるヒト上皮成長因子受容体3)に対するscFv部分を含む、別の二重特異性scFv-Fc融合タンパク質を生成した(Her3N-CD3N-hFc1k)(図28)。
【0216】
トランスフェクション試薬としてポリエチレンイミンを用い、2つのポリペプチド鎖の1つをそれぞれコードする2つのpSecTagAL1ベクターを一過性にトランスフェクションした後、Her3N-CD3N-hFc1kをHEK293-6E細胞で産生させた。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーとそれに続く分取SECを使用した精製後のSDS-PAGE分析により、還元条件下で2つのバンド、非還元条件下で1つの支配的なバンドが明らかになったが、両方とも計算した分子量を表す(図29b)。両方の条件下で観察されたマイナーバンドは、発現タンパク質のグリコシル化状態の部分的な違いを表しているかもしれない。さらに、Her3N-CD3N-hFc1kは分析SECで1つの単一ピークを示した(図29c)。Her3N-CD3N-hFc1kのヒトTNFR1-Fc融合タンパク質への結合をELISAによって分析し、1.0nMのEC50値を明らかにした(図29d、表4)。この融合タンパク質の生産と特性評価はまだ進行中である。
【0217】
実施例12:ヒトMCSPおよびCD3に特異的な二重特異性scFv-Fc融合タンパク質
実施例3aとして記載された分子に基づいて、Fc1kのヒンジ含有鎖のN末端に融合されたCD3およびヒトMCSP(黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)に対するscFv部分を含む、別の二重特異性scFv-Fc融合タンパク質を生成した(MCSPN-CD3N-hFc1k)(図30)。
【0218】
トランスフェクション試薬としてポリエチレンイミンを用い、2つのポリペプチド鎖の1つをそれぞれコードする2つのpSecTagAL1ベクターを一過性にトランスフェクションした後、MCSPN-CD3N-hFc1kをHEK293-6E細胞で産生させた。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーとそれに続く分取SECを使用した精製後のSDS-PAGE分析により、還元条件下で2つのバンド、非還元条件下で1つの支配的なバンドが明らかになったが、両方とも計算した分子量を表す(図31b)。両方の条件下で観察されたマイナーバンドは、発現タンパク質のグリコシル化状態の部分的な違いを表しているかもしれない。さらに、MCSPN-CD3N-hFc1kは分析SECで1つの単一ピークを示した(図31c)。MCSP-発現WM35細胞を用い、末梢血単核細胞(PBMC)の存在下で標的細胞の生存率を低下させる能力に反映されるMCSPN-CD3N-hFc1kの生物活性を決定し、0.8nMのIC50値であった(図31d、表4)。この融合タンパク質の生産と特性評価はまだ進行中である。
【0219】
実施例13:逆方向のHer3およびCD3に特異的な二重特異性scFv-Fc融合タンパク質
実施例4aとして記載された分子に基づいて、それぞれFc1kのヒンジ含有CH2-CH31ドメインのN末端およびCH2-CH3k鎖のC末端に融合されたCD3およびHer3(ヒト上皮成長因子受容体3、ErbB3とも呼ばれる)に対するscFv部分を含む別の二重特異性scFv-Fc融合タンパク質を生成した(Her3N-CD3C-hFc1k)(図32)。
【0220】
トランスフェクション試薬としてポリエチレンイミンを用い、2つのポリペプチド鎖の1つをそれぞれコードする2つのpSecTagAL1ベクターを一過性にトランスフェクションした後、Her3N-CD3C-hFc1kをHEK293-6E細胞で産生させた。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーとそれに続く分取SECを使用した精製後のSDS-PAGE分析により、還元条件下で2つのバンド、非還元条件下で1つの支配的なバンドが明らかになったが、両方とも計算した分子量を表す(図33b)。両方の条件下で観察されたマイナーバンドは、発現タンパク質のグリコシル化状態の部分的な違いを表しているかもしれない。固定化されたHer3-Fc融合タンパク質へのHer3N-CD3C-hFc1kの結合をELISAにより分析し、0.1nMのEC50値が明らかとなった(図33c、表4)。この融合タンパク質の生産と特性評価はまだ進行中である。
【0221】
表4:実施例10~13の機能的データ
【0222】
表5:実施例10~13に用いたリンカー変異体

下付き文字(N/C)は、Fc1k部分(N末端/C末端)に対するscFvの位置を示す。
【0223】
実施例14:Fv13.7X-Fc1kのさらなる特性評価
実施例8に記載のFab様一価分子を、Catalent Pharma Solutions(サマーセット、エビング、ニュージャージー、米国)による安定したレンチウイルストランスフェクション後の細胞プールからCHO細胞で発現させた。該タンパク質を主にプロテインAを使用して精製し、モノマー画分をFPLC-SECによってさらに分離した。Fv13.7X-Fc1kの最終調製により、分析用HPLC-SECの単一ピークが明らかになり(図35a)、これは計算された分子量72kDaに対応していた。還元条件下でのSDS-PAGEでは、35kDaおよび37kDaの個々の鎖の計算分子量によく対応する35kDaおよび40kDaの参照バンドと同様に移動した2つのバンドが観察された。非還元条件下では、観察された単一のバンドは70kDaの参照バンドと同様に移動し、鎖間ジスルフィド結合の正しい形成を示した。Fv13.7X-Fc1kは、動的光散乱および検出された平均計数率の視覚的解釈によって決定されるように、64℃の凝集温度を明らかにした(図35c)。さらに、Fv13.7X-Fc1kは、huTNFR1-Fc結合ELISAによって決定される保持された結合活性によって示されるように、37℃においてヒト血漿中で少なくとも7日間安定であった(図35d)。
【0224】
Fv13.7X-Fc1kは、ELISAで0.37nMのEC50値でヒトTNFR1-Fcに結合し(図36a)、対照タンパク質ATROSABおよびFab13.7(それぞれ0.09nMおよび0.17nMのEC50値を示した)と比較して結合が減少したことを示した。QCM(アッタナ、ストックホルム、スウェーデン)を使用したリアルタイム結合分析では、Fv13.7X-Fc1kは2.66nMのKD値(図36b)でヒトTNFR1-Fcに結合し、これは、9.83x10 4 s-1のkoff値および3.69x105 M-1s-1のkon値によるものであった。さらに、Fv13.7X-Fc1kはFc部分内で修飾を含んでおり、ADCP、ADCCおよびCDCの媒介傾向を低減している(Armourら(1999) Eur J Immunol. 29(8):2613-24, Shieldsら(2001) J Biol Chem. 276(9):6591-604)。一貫して、Fv13.7X-Fc1kへのヒトFcγ受容体I、IIbおよびIIIの結合並びにヒト補体タンパク質C1qの結合は、野生型Fc部分を含む対照抗体レツキシマブと比較した場合、明らかに減少した(図36c)。同様に、FcγRI、IIbおよびIII並びにC1qは、同様に変異した抗体ATROSABへの結合の減少を明らかにし、以前に公開された実験でのADCCおよびCDCの媒介の減少を明らかにした(Richterら(2013) PLoS One 8(8):e72156)。
【0225】
一価対照タンパク質Fab13.7と同様に、Fv13.7X-Fc1kは、それぞれHeLa細胞、HT1080細胞およびKym-1細胞を使用したIL-6およびIL-8放出実験並びに細胞死誘導アッセイにおいてTNFR1活性化自体の兆候を示さなかった(図37a~c)。これは、1~100nMの濃度でIL-6およびIL-8放出実験でわずかな細胞応答を誘導した対照タンパク質ATROSABとは明らかに対照的であった(図37aおよびb)。さらに、Fv13.7X-Fc1kは、IL-6、IL-8放出アッセイおよび細胞死誘導アッセイにおけるTNF媒介TNFR1活性化の強力な阻害を明らかにし(図37d~f)、IC50値はそれぞれ54.5nM、24.2nMおよび16.2nMであった。しかしながら、これらの値は、それぞれHeLa細胞およびHT1080細胞並びにKym-1細胞を使用したIL-6およびIL-8放出実験並びに細胞死誘導アッセイにおいて、31.7nM、12.7nM、9.5nMのIC50値で決定されたFab13.7に比べてわずかに弱い生物活性を明らかにした。注目すべきことに、それにもかかわらずFv13.7X-Fc1kの阻害活性は、IL-6およびIL-8放出実験および細胞死誘導アッセイで164.7nM、84.1nM、および64.4nMのIC50値を示した二価対照タンパク質ATROSABと比較した場合、明らかに改善された。
【0226】
表6:Fv13.7X-Fc1kの生物活性
【0227】
抗体媒介架橋の条件下でFv13.7X-Fc1kの生物活性をさらに評価するために、Fv13.7X-Fc1kを一定濃度の薬物特異的抗体の存在下でのIL-8放出実験で分析した(図38a-c)。対照抗体ATROSABとは対照的に、Fv13.7X-Fc1kおよび対応するFab13.7は、3つの異なるヤギ抗ヒトIgG血清調製物を使用したIL-8放出アッセイでアゴニスト活性の完全な欠如を明らかにした(図38a:SouthernBiotech Cat.:2010-01[IgG_A]、図38b:MyBioSource Cat.:MBS571163[IgG_B]、図38c:MyBioSource Cat.:MBS571678[IgG_C])。結論として、この結果は、抗薬物免疫応答の条件下にてインビボでTNFR1を活性化するFv13.7X-Fc1kのリスクの低下を示している可能性がある。
【0228】
最後に、Fv13.7X-Fc1kは、マウスの各遺伝子座にヒトTNFR1の細胞外ドメインの遺伝子を保持しているC56BL/6Jノックインマウスでの400μg(20mg/kg)の単回注射後、それぞれ2.2±1.2時間および41.8±18.1時間の初期および終末相半減期、および5856±1370μg/ml*hの曲線下面積を明らかにした。
【0229】
材料:
西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)結合抗ヒトIgG(Fab特異的)抗体は、Sigma(タウフキルヘン、ドイツ)から購入した。HT1080wt細胞は、RPMI1640培地、5%FCS、2mM L-グルタミンで増殖させた。ATROSABとヒトTNFR1-Fcの融合は、Baliopharm AG(バーゼル、スイス)によって提供された。化学物質はRoth(カールスルーエ、ドイツ)から購入し、酵素(クローニングおよびPCR)および補助試薬はThermoFisher(ミュンヘン、ドイツ)から購入した。消耗品の異なるソースは、以下に明確に記載されている。
【0230】
方法:
ヘテロ二量体化および機能的IgおよびIg様ドメインのアライメント
1)複数の配列アライメントは、Clustalオメガオンラインツールを使用して行った。
【0231】
2)pdbファイルのベータシートの定義は配列中で強調表示した。
【0232】
3)二次構造ベータシートが割り当てられていないかすべての二次構造ベータシートが割り当てられているわけではない場合(図4で星印で示されている場合)、JPred(デフォルト設定を使用した最長累積予測)による二次構造の予測を実行した。
【0233】
4)ベータシートA~Gの開始位置と終了位置は、正式に割り当てられていない残基をシートに含めるか、以前に割り当てられた残基をシートから除外するとともに、複数の配列アラインメントによって導入されたギャップを削除するか、または4つの例外でベータシートの外側に新たなギャップを挿入することによる、PDBファイルの追加の構造アライメントに従ってアラインメントされた(d_CH3:IgLCRCの111位;m_CH1:IgLCRCの72位;HLAA/HLAB:IgLCRCの60位、図4)。挿入/伸長されたまたは削除/短縮されたギャップ位置は、c末端に近い領域の配列のアライメントを維持するため、それぞれ複数の配列アライメント中に導入された次の既存のギャップのギャップ位置の削除または挿入によって補償された。
【0234】
5)ベータシートAは、これらの手段によって、予測される最初のベータシートのN末端に保存されたプロリン残基に続く6残基として定義された(IgLCRCの13~18位)。
【0235】
6)ベータシートBは、2番目の予測ベータシートに含まれる保存されたシステイン残基に隣接するN末端の4残基とC末端の5残基として定義された(IgLCRCの31~40位)。
【0236】
7)ベータシートCは、3番目の予測ベータシートに含まれる保存されたトリプトファン残基に隣接するN末端の4残基とC末端の2残基として定義された(IgLCRCの46~52位)。例外は、TCRアルファ鎖とベータ2ミクログロブリンであった。これらの場合は、アライメントをベータシートの予測のために行い、pyMolを使用した構造アライメント時に確認された。
【0237】
8)ベータシートDは、IgLCRCの63~70位から定義されたが、アライメント全体を通して保存された残基への接続は実行可能ではなかった。
【0238】
9)ベータシートEは、保存されたチロシン/フェニルアラニン残基から始まり、4番目の予測ベータシートの開始またはN末端に位置する、IgLCRCの81~89位からの8残基として定義された。
【0239】
10)ベータシートFは、6番目の予測ベータシートに含まれる保存されたシステイン残基に隣接するN末端の2つの残基とC末端の4つの残基として定義された(IgLCRCの102~108位)。
【0240】
11)ベータシートGはIgLCRCの128~133位から定義されたが、アライメント全体を通して保存された残基への接続は実行可能ではなかった。
【0241】
Fab13.7、Fv13.7-Fc1k、scFv13.7-Fc1k、scFv13.7-Fcの発現:
4mM GlutaMAX-Iおよび0.1%Kolliphor P188(F17++)を含むFreeStyle F17培地で、指数関数的増殖の条件下、HEK293-6E細胞を浮遊培養した。1μg/mlのプラスミドDNA(最終濃度)および3μg/mlのポリエチレンイミン(PEI、最終濃度)を用い、トランスフェクション用に1.5*10^6細胞/mlを調製した。DNAおよびPEIをそれぞれ20mlの細胞浮遊液あたり1mlのF17++培地で希釈し、その後一緒に混合した。室温で15~30分間インキュベーションした後、DNA混合物を細胞に加え、37℃、5%CO2で一晩振とうしながらインキュベーションした。24時間後、細胞浮遊液20mlあたり0.5mlのトリプトンN1を添加した。37°C、5%CO2でさらに4日間インキュベーション後、上清からタンパク質を精製した。
【0242】
タンパク質精製-抗体およびプロテインAアフィニティークロマトグラフィー:
HEK293-6E細胞を遠心分離により培養上清から除去した(工程1:500g、15分、工程2:5000g、5分)。上清を、TOYOPEARLR AFrProtein A-650F(プロテインA樹脂、22805、東ソー、シュトゥットガルト、ドイツ)またはHiTrap KappaSelect(アガロースマトリックスに結合したカッパ鎖選択抗体フラグメント、17-5458-12、GE Healthcare、Chalfont St Giles、GB)のいずれかと一晩回転させてインキュベートした。遠心分離により樹脂を回収し、重力流によりPoly-PrepRクロマトグラフィーカラムにロードした。PBSを使用して洗浄を行い、タンパク質をpH2~3の100mMグリシンで樹脂から溶出した。溶出画分を直接プールし、すぐにPBSに対して透析した。
【0243】
分取サイズ排除クロマトグラフィー:
調製物中の凝集または多量体集合タンパク質の場合、Akta精製器を使用して追加のサイズ排除工程を行った。液相としてPBSを用い、0.5ml/分の流速でSuperdex200 10/300GLカラムでタンパク質を分離した。200μlの画分を収集し、試料を含むピークをさらなる実験のためにプールした。
【0244】
タンパク質の特性評価-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE):
厳密にLaemmli1970に従い、3μgのタンパク質調製物と、示された割合のスタッキングおよび分離ゲルを使用してSDS-PAGEを行った。
【0245】
タンパク質の特性評価-サイズ排除クロマトグラフィー(SEC):
流体力学的半径を決定するため、Phenomenex Yarra SEC-2000カラム(300x7.8mm、流速0.5ml/分)と組み合わせたWaters2695HPLCを用い、30μgの精製タンパク質試料を分析した。移動相は、0.1M Na2HPO4/NaH2PO4、0.1M Na2SO4、pH6.7であった。以下の標準タンパク質を使用した:サイログロブリン(669kDa)、アポフェリチン(443kDa)、アルコールデヒドロゲナーゼ(150kDa)、BSA(66kDa)、炭酸脱水酵素(29kDa)、FLAGペプチド(1kDa)。
【0246】
酵素免疫測定法(ELISA):
マイクロタイタープレートを100μlのTNFFR1-Fc融合タンパク質(PBS中1μg/ml)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。残りの結合部位を2%MPBS(PBS中のスキムミルク、ウェルあたり200μl)で室温にて2時間ブロックし、その後PBSで2回洗浄した。2%MPBS中の100μlのHRP結合検出抗体とともに最後のインキュベーション工程を行う前に、2%MPBSで希釈した100μlの試料を室温で1時間インキュベートした。結合タンパク質が100μlのTMB基質溶液で検出され、HRP反応を50μlの1M H2SO4の添加により停止させ、Infiniteマイクロタイタープレートリーダー(TECAN、Maennedorf、スイス)を用いて450nmの波長での吸収を測定した。各インキュベーション工程の間および検出の前に、プレートをPBSTで3回、PBSで2回洗浄した。
【0247】
フローサイトメトリー:
細胞を剥離し、100μlのPBA(滅菌PBS中の2%FCS、0.2%NaN3)で、ウェルあたり100.000-250.000の濃度で96ウェルマイクロタイタープレートに移した。試料をPBAで2倍に希釈して最終的に望ましい濃度にし、1時間インキュベートするために100μlを細胞に加えた。その後、MACSQuantRAnalyzer(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、ドイツ)を使用して検出する前に、蛍光色素に結合した抗体とともにインキュベートした。細胞を遠心分離(500*g、5分)で2回洗浄し、各インキュベーション工程の後に150μlのPBAに再浮遊した。
【0248】
インターロイキン放出アッセイ:
ウェルあたり2x104のHeLa細胞またはHT1080細胞を96ウェルマイクロタイタープレートに播種し、100μlのRPMI1640+5%FCSで一晩増殖させた。翌日、構成的に産生されたサイトカインを除去するために上清を交換した。細胞を、RPMI1640+5%FCS中の試料の希釈系列、37℃、5%CO2でインキュベートした。競合実験の場合、分析した両方のタンパク質試料を個別に調製し(滴定または単一濃度に希釈)、その後プレートに加えた。非刺激細胞は対照として機能した。16~20時間後、プレートを500gで5分間遠心分離し、細胞上清をELISAにより直接分析したが、これは製造業者のプロトコルに従って実施した。上清をRPMI1640(FCSなし)で希釈し、抗体を試薬希釈液(0.1%BSA、0.05%Tween20、20mM TRIS、150mM NaCl、pH7.5)で希釈した。コーティングしたマイクロタイタープレートをPBS中の1%BSA(ウシ血清アルブミン)を使用してブロックし、洗浄並びに検出および測定をELISAについての上記と同様に実施した。細胞培養上清中のIL-6およびIL-8を検出するためのサンドイッチELISAキットは、ImmunoTools(Friesoythe、ドイツ)から購入した。
【0249】
細胞毒性/細胞生存率アッセイ:
細胞(ウェルあたり2*104個)を96ウェルマイクロタイタープレートに播種し、37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。タンパク質をRPMI1640+10%FCSで希釈し、2*105 PBMC/ウェルと組み合わせて細胞に加えた。上清を廃棄し50μlのクリスタルバイオレット溶液を細胞に加える前に、細胞毒性アッセイを37℃、5%CO2で3~5日間インキュベートした。その後、プレートをddH2Oで20回洗浄し、乾燥させた。染色液に含まれるメタノールによって固定された生細胞および接着細胞から生じた残りのバイオレット色素は、室温で10分間振盪しながらメタノール100μlを添加することにより溶解した。Infinite microtiterplate reader(Tecan、Maennedorf、スイス)を用いてプレートを測定した。
【0250】
薬物動態:
特定のマウス遺伝子(C57BL/6J-huTNFRSF1Aecdtm1UEG/izi)の遺伝子座にヒトTNFR-1の細胞外ドメインの遺伝子を持つトランスジェニックC57BL/6Jマウスに、25μgの分析タンパク質を静脈内注射した。血液試料を、3分、30分、1時間、3時間、および6時間後、並びに3日および7日後に収集し、すぐに氷上でインキュベートした。血清を遠心分離(13.000g、4°C、10分)で分離し、-20°Cで保存した。血清中の残りのタンパク質を上記のような結合ELISAによって検出した。ELISAシグナルを、分析したタンパク質の新たに調製した標準結合曲線から補間した。決定された濃度を時間に対してプロットし、Microsoft Excel用のPKsolverアドインを使用した分析で薬物動態定数を得た。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図20
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図22
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図30
図31
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図33
図34-1】
図34-2】
図34-3】
図34-4】
図34-5】
図34-6】
図34-7】
図35
図36
図37
図38
図39
【配列表】
2023145436000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載された発明。
【外国語明細書】