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特開2023-145443デプスフィルタ用のヘッドスペースおよびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145443
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】デプスフィルタ用のヘッドスペースおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/00 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
B01D29/00 Z
B01D29/08 520A
B01D29/08 520C
B01D29/08 530D
B01D29/08 540A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023109092
(22)【出願日】2023-07-03
(62)【分割の表示】P 2021546291の分割
【原出願日】2020-03-26
(31)【優先権主張番号】62/825,505
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アクシャット・グプタ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ポール・アマラ
(72)【発明者】
【氏名】カラ・エム・ピッゼッリ
(72)【発明者】
【氏名】シャノン・ライアン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】最適化されたヘッドスペースを有するデプスフィルタを提供する。
【解決手段】吸入口13と、前記吸入口から離間した排出口14と、濾過メディア16を含有する内部容積と、前記内部容積内のヘッドスペース15とを有するハウジング12を備えるデプスフィルタ10であって、前記ヘッドスペースの容積が、前記内部容積内の濾過メディア面積1平方メートル当たり4~14リットルである、デプスフィルタとする。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口と、前記吸入口から離間した排出口と、濾過メディアを含有する内部容積と、前記内部容積内のヘッドスペースとを有するハウジングを備えるデプスフィルタであって、前記ヘッドスペースの容積が、前記内部容積内の濾過メディア面積1平方メートル当たり4~14リットルである、デプスフィルタ。
【請求項2】
前記ヘッドスペースの容積が、前記内部容積内の濾過メディア面積1平方メートル当たり4~10リットルである、請求項1に記載のデプスフィルタ。
【請求項3】
前記濾過メディアが、不織繊維、セルロース、および珪藻土の段階的な層の複合体を備える、請求項1に記載のデプスフィルタ。
【請求項4】
最小濾過メディア面積が0.1mである、請求項1に記載のデプスフィルタ。
【請求項5】
液体から粒子を濾過するためのフィルタアセンブリであって、
濾過される液体を導入するための吸入口および、濾過された液体のための排出口を有するハウジングであって、前記排出口が前記吸入口から離間されているハウジングと、
前記ハウジング内のデプスフィルタメディアと、
前記ハウジング内、かつ濾過中の流体の流れの方向において前記デプスフィルタメディアの上流にあるヘッドスペースと、を備え、前記ヘッドスペースの容積が、前記ハウジング内のデプスフィルタメディア面積の平方メートル当たり4~14リットルである、フィルタアセンブリ。
【請求項6】
前記ヘッドスペースの容積が、前記ハウジング内の濾過メディア面積1平方メートル当たり4~10リットルである、請求項5に記載の濾過アセンブリ。
【請求項7】
前記濾過メディアが、不織繊維、セルロース、および珪藻土の段階的な層の複合体を備える、請求項5に記載の濾過アセンブリ。
【請求項8】
生物学的試料から不純物を除去する方法であって、容積、前記容積内のメディア、および前記容積内のヘッドスペースを有するハウジングを具備するデプスフィルタを通して前記試料を濾過することを備え、前記ヘッドスペースの容積が、濾過メディア面積1平方メートル当たり4~14リットルである、方法。
【請求項9】
目的の標的生体分子ならびに複数の細胞破片および/またはコロイド状粒子を含有する供給物を、デプス濾過によって清澄化するための方法であって、
a)ヘッドスペースおよび多孔質デプスフィルタメディアを有するデプス濾過装置であって、前記ヘッドスペースの容積が、前記装置内のデプスフィルタメディア面積の平方メートル当たり4~14リットルであるデプス濾過装置を準備すること、
b)目的の標的生体分子ならびに複数の細胞破片および/またはコロイド状粒子を含有する供給物を準備すること、
c)供給物を前記ヘッドスペースに導入し、デプスフィルタメディアを供給物と接触させること、および、
d)目的の標的生体分子を供給物中の細胞破片およびコロイド状粒子から分離すること、
を備える、方法。
【請求項10】
前記デプス濾過が、一次清澄化遠心分離工程または一次清澄化タンジェンシャルフロー精密濾過工程を使用せずに実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ヘッドスペースの容積が、前記装置内の前記デプスフィルタメディア面積の1平方メートル当たり4~10リットルである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
デプスフィルタの性能を最適化する方法であって、前記デプスフィルタが、流体吸入口、前記流体吸入口から離間した流体排出口、内部容積、前記内部容積内の多孔質デプスフィルタメディア、および前記流体吸入口と前記多孔質デプスフィルタメディアとの間のヘッドスペースを有するハウジングを有し、前記ヘッドスペースの容積を、前記ハウジング内の前記多孔質デプスフィルタメディアの1平方メートル当たり4~14リットルになるように構成することを含む、方法。
【請求項13】
細胞直径を有し、総細胞密度を有する複数の細胞を含む細胞培養物の体積を濾過するのに必要なデプスフィルタの面積を決定する方法であって、
単一細胞が占める体積(V)を計算すること、
に総細胞密度を乗じて、細胞培養物の体積当たりの細胞の体積(細胞L/細胞培養物L)を決定すること、
フィルタの単位面積当たりのヘッドスペース(ヘッドスペースL/デプスフィルタ面積m)を決定して、デプスフィルタ面積当たりのフィルタヘッドスペースを定義すること、
デプスフィルタ面積当たりのフィルタヘッドスペースを細胞培養物の体積当たりの細胞の体積で除して、フィルタ容量(細胞培養物L/デプスフィルタ面積m)を決定すること、および、
細胞培養物の前記体積を前記フィルタ容量で除して、細胞培養物の前記体積を濾過するのに十分なフィルタの面積を決定すること、
を備える、方法。
【請求項14】
細胞によって占められる体積が、総細胞密度を乗じた細胞の体積を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
細胞によって占められる体積が、細胞間の空隙体積をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
空隙体積が約0.5~0.38である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
定義されたヘッドスペース容積を有するデプスフィルタによって濾過される細胞培養物の最適な体積を決定する方法であって、細胞培養物の体積が、細胞直径を有し、総細胞密度を有する複数の細胞を含む方法において、
細胞によって占められる体積を計算することと、
細胞によって占められる体積に細胞培養培地の総細胞密度を乗じることと、
単位デプス濾過面積当たりのヘッドスペースを、細胞に占められる体積と細胞培養培地の総細胞密度との積で除して、単位面積当たりの定義されたヘッドスペース容積を使用して単位デプスフィルタ面積によって処理され得る最適な体積を得ることと、を備え、前記ヘッドスペース容積が、前記デプス濾過メディア面積の平方メートル当たり4~14リットルである、方法。
【請求項18】
細胞によって占められる体積が、総細胞密度を乗じた細胞の体積を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
細胞によって占められる体積が、細胞間の空隙体積をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
空隙体積が約0.5~0.38である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年3月28日に出願された米国仮出願第62/825,505号の利益を主張し、その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に開示される実施形態は、デプスフィルタ、特に、最適化されたヘッドスペースを有するデプスフィルタ、特に、高固形分供給物を用いる用途で利用される、最も一般的には、清澄化および沈殿物含有ウイルス不活化後供給物に関連する封入または密封デプスフィルタに関する。実施形態はまた、デプスフィルタを最適化する方法、および最適化されたデプスフィルタを有する、試料を濾過する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
デプスフィルタは、細胞培養物、酵母および細菌、例えば遠心分離後の大腸菌溶解物、大腸菌リフォールディング、培地、ワクチン、血漿タンパク質、低pHによる凝集、塩凝集、ポリマー凝集および血清などを含む、多種多様な一次および二次清澄化用途に理想的である。デプスフィルタは、その深さまたは厚さを利用して濾過を実行する。フィルタメディアは、典型的には、勾配密度で構築された材料であり、一般に、上部近くにより大きな細孔、および底部により小さな細孔を有する。デプスフィルタは、アブソリュートフィルタとは異なり、多孔質メディア全体で粒子を保持し、孔径より大きい粒子と小さい粒子の両方を保持することを可能にする。デプス濾過における粒子保持では、サイズ排除、疎水性吸着、イオン吸着および他の相互作用を含む様々な粒子保持方法を使用することが認められている。この様々な保持方法により、規定の孔径よりも大きい粒子および小さい粒子の両方の保持が可能になる。
【0004】
多くの場合、デプスフィルタは、より粗い粒子の大部分が第1の濾過段階中に除去され、より細かい粒子が第2の段階で濾別されるように連続して動作されることができる。したがって、細胞および細胞破片などからの粒径の広範な分布がある細胞培養物では、デプスフィルタは、懸濁粒子の大部分を保持することを意図している。
【0005】
デプスフィルタの三次元マトリックスは、試料が通過する迷路状の経路を作り出す。様々な実施形態では、フィルタメンブレンまたはシートは、巻かれた綿、ポリプロピレン、レーヨンセルロース、ガラス繊維、焼結金属、陶材、珪藻土、または他の既知の構成要素、例えばシリカ、ポリアクリル繊維(HC Proメディア、EMD Millipore Corporation製、MA、米国)とすることができる。デプスフィルタメディアを含む組成物を化学的に処理して、フィルタメディアがイオンまたは静電相互作用によってDNAなどの荷電粒子、宿主細胞タンパク質、または凝集体を捕捉できるようにすることができる。
【0006】
従来のデプス濾過では、デプスフィルタの充填容量を抑制する制限要因はデプスフィルタメディアのファウリングであり、したがって、デプス濾過装置内のヘッドスペース容積または物理的汚れ捕捉能力(ケーキ濾過としても知られる)が重要な役割を果たすことは知られていなかった。デプスフィルタのファウリングメカニズムは、細孔閉塞、ケーキ形成および/または細孔狭窄を含んでも良い。細胞培養の最近の改善は、細胞生存率が上昇した高バイオマスをもたらした。これらの供給流は、細胞破片またはコロイド状物質のレベルの低下をもたらし得るものであり、それは一般に、デプス濾過メディアのファウリングにつながる。
【0007】
従来、封入デプスフィルタは、システムのホールドアップ容積および全体的な装置寸法を減らして、回収を改善し、フラッシュ容積(緩衝液および水)を制限するために、ヘッドスペースを最小限にして設計されてきた。したがって、デプスフィルタの性能を向上させる際の焦点は、装置の寸法を最小化して、結果的に利用可能なヘッドスペースを間接的に減少させる、ホールドアップ容積および装置のフットプリントを減らすことにある。しかしながら、本発明者らは、特に高固形分を有する供給物の清澄化にフィルタが使用される場合、ヘッドスペースの減少がデプスフィルタの性能(充填容量)に悪影響を及ぼし得ることを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本明細書に開示される実施形態の目的は、デプスフィルタのヘッドスペースを最適化して性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来技術の問題は、本明細書に開示される実施形態によって対処され、その実施形態は、最適化されたヘッドスペースを有するデプスフィルタ、デプスフィルタのヘッドスペースを最適化する方法、および最適化されたヘッドスペースを有するデプスフィルタを使用する濾過の方法に関する。
【0010】
本発明者らは、例えば、細胞、細胞破片、凝集細胞培養物または沈殿物の除去に使用される密閉または封入デプスフィルタの設計にとって、デプスフィルタ内で利用可能なヘッドスペース容積が重要な変数であることを予想外に発見した。したがって、フィルタのヘッドスペース容積または汚染物捕捉能力(ケーキ濾過能力)は、デプスフィルタ封入装置にとって重要な設計変数である。この変数の影響は、特に高固形分(細胞/バイオマス)濃度を有する供給流に対して、および著しく大量の供給物がフィルタメディアのファウリングなしで処理され得る、低ファウリング供給流に対して顕著である。デプスフィルタ容量がヘッドスペースによって制御され得る適切な用途には、前処理が、細胞培養物pHの低下、ポリマー(非荷電または荷電)の添加、または塩の添加のいずれかを含んで、不溶性の高いバイオマスをもたらす可溶化された不純物を沈殿させることができる、凝集供給流の清澄化が含まれる。変数はまた、スケーラビリティ評価にとって重要である。
【0011】
いくつかの実施形態では、最適化されたヘッドスペースは、およそ3.5~11.5%のバイオマスに相当する、1mL当たり2,500万~1億個の細胞を含有する産物を用いた細胞培養物清澄化を目的とした一次清澄化装置のためのものである。
【0012】
したがって、いくつかの実施形態では、デプスフィルタであって、吸入口、吸入口と離間した排出口、および濾過メディアを含有する内部容積を有する封入ハウジング、ならびに内部容積内のヘッドスペースを備えるデプスフィルタが提供され、ヘッドスペースの容積は、濾過メディア面積1平方メートル当たり4~14リットル、好ましくは濾過メディア面積1平方メートル当たり4~10リットルである。いくつかの実施形態では、濾過メディアは、不織繊維、セルロース、および珪藻土、またはポリアクリル繊維およびシリカ(合成)、または活性炭、ポリプロピレン、ナイロン、ガラス繊維、およびそれらの組み合わせの段階的な層の複合体を備える。いくつかの実施形態では、デプス濾過装置の最小のデプス濾過メディア面積は、0.1mより大きい。いくつかの実施形態では、デプス濾過メディア面積は、0.1m~1.1mである。
【0013】
いくつかの実施形態では、目的の標的生体分子、ならびに複数の細胞破片および/またはコロイド状粒子を含有する供給物を、デプス濾過によって清澄化するためのプロセスが提供される。本開示によるいくつかの実施形態では、プロセスは、装置内のデプスフィルタメディア面積の平方メートル当たり4~14リットルの容量であるヘッドスペース、および多孔質デプスフィルタメディアを有するデプス濾過装置を準備すること;目的の標的生体分子ならびに複数の細胞破片および/またはコロイド状粒子を含有する供給物を準備すること;供給物をヘッドスペースに導入し、デプスフィルタメディアを供給物と接触させること;および目的の標的生体分子を供給物中の細胞破片およびコロイド状粒子から分離することを備える。いくつかの実施形態では、プロセスは、一次清澄化遠心分離工程または一次清澄化タンジェンシャルフロー精密濾過工程を使用せずに実行される。いくつかの実施形態では、目的の標的生体分子は、モノクローナル抗体(mAb)、酵素、ウイルス、共役多糖類、生物学的製剤、ポリクローナル抗体、ならびに哺乳動物細胞培養物、植物細胞培養物、細菌細胞培養物、昆虫細胞培養物、および目的の類似の培養物で発現される他の二分子細胞物質の1つまたは複数を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、ある量の細胞培養物を濾過するのに必要なデプスフィルタの最適面積を決定する方法が提供され、細胞培養物は、細胞直径(d)を有する複数の細胞を含み、総細胞密度を有し、方法は以下を備える。
1.単一細胞が占める体積(V)を計算すること。
2.Vに総細胞密度を乗じて、細胞培養物の体積当たりの細胞体積(細胞L/細胞培養物L)を決定すること。
3.フィルタの単位面積当たりのヘッドスペース(ヘッドスペースL/デプスフィルタ面積m)を決定すること。
4.デプスフィルタ面積当たりのフィルタヘッドスペースを細胞培養物の体積当たりの細胞体積で除して、フィルタ容量(細胞培養物L/デプスフィルタ面積m)を決定すること。
【0015】
いくつかの実施形態では、細胞によって占有される空隙体積は、細胞によって占有される容積を決定する際に考慮される。
【0016】
本明細書に開示される実施形態によるデプスフィルタのヘッドスペースの最適化は、デプスフィルタメディアの全容量の利用を促進し、従来の設計と比較して、非ファウリングメディアに関して70%もの改善をもたらすことができる。必要な面積が減るので、緩衝液の必要量の減少および生成物回収率の増加という、プロセスの経済的な改善が生じる。
【0017】
本開示のこれらおよび他の非限定的な態様および/または特徴は、以下でより詳細に説明される。本明細書に開示された実施形態をより良く理解するために、本開示の一部を形成する添付の図面および説明が参照される。
【0018】
本明細書で開示される実施形態は、様々な構成要素および構成要素の配置、ならびに様々なプロセス動作およびプロセス動作の配置の形態をとることができる。図面は実施形態を説明しており、限定するものとして解釈されるべきではない。本開示は、以下の図面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】いくつかの実施形態によるデプスフィルタの透視図である。
図1B図1Aのデプスフィルタの断面図である。
図2】代替的なデプスフィルタ、例えば、本開示によるいくつかの実施形態によるレンズ形封入デプスフィルタの正面断面図である。
図3】いくつかの実施形態による供給流における、総細胞密度とバイオマス/細胞集団体積パーセントとの相関関係のグラフである。
図4】デプスフィルタのヘッドスペースおよび供給物中の総細胞密度(バイオマス%)の関数として、最大供給物充填容量を示すグラフである。
図5】いくつかの実施形態による、2000Lの産物を処理するために必要なデプスメディア面積をヘッドスペースおよび総細胞密度の関数として示すグラフである。
図6】いくつかの実施形態による、ヘッドスペース容積を増やすことによって達成され得る、2L/mのヘッドスペースで必要とされるデプスメディア面積に対するデプスメディア面積の縮小の割合を示すグラフである。
図7A】実施例1による様々なデプス濾過装置の圧力プロファイル曲線である。
図7B】実施例1による様々なデプス濾過装置の圧力プロファイル曲線である。
図7C】実施例1による様々なデプス濾過装置の圧力プロファイル曲線である。
図7D】実施例1による様々なデプス濾過装置の圧力プロファイル曲線である。
図7E】実施例1による様々なデプス濾過装置の圧力プロファイル曲線である。
図7F】実施例1による様々なデプス濾過装置の圧力プロファイル曲線である。
図8A】実施例2による様々なデプス濾過装置の圧力プロファイル曲線である。
図8B】実施例2による様々なデプス濾過装置の圧力プロファイル曲線である。
図8C】実施例2による様々なデプス濾過装置の圧力プロファイル曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に開示された構成要素、プロセス、および装置は、添付の図面を参照することによってより完全に理解されることができる。図面は、本開示の説明の利便性および容易性に基づく単なる概略図であり、したがって、装置またはその構成要素の相対的なサイズおよび寸法を示すこと、および/または例示的な実施形態の範囲を定義もしくは限定することを意図するものではない。
【0021】
以下の説明では、明確にする目的で特定の用語が使用されているが、これらの用語は、図面での説明のために選択された実施形態の特定の構造のみを指すことを意図しており、本開示の範囲を定義または限定することを意図していない。図面および以下の説明において、同様の数字は同様の機能の構成要素を指すことを理解されたい。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的のために、別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、材料の割合または比率、反応条件、および他の数値を表すすべての数字は、明示的に指示されているかどうかにかかわらず、すべての場合において「約」または「およそ」という用語によって修飾されると理解されるべきである。用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、一般に、列挙された値と等価である(すなわち、同じ作用または結果を有する)と考えられる数の範囲を指す。多くの場合、これらの用語は、最も近い有効数字に端数処理された数字を含むことができる。
【0023】
したがって、逆のことが示されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本明細書に開示される実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、通常の端数処理法を適用することによって解釈されるべきである。
【0024】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0025】
本明細書で使用される場合、様々な装置および部品は、他の構成要素を「具備する」ように説明されても良い。用語「備える(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含有する(contain(s))」、およびそれらの変形は、本明細書で使用される場合、追加の構成要素の可能性を排除しないオープンエンドの移行句、用語、または単語であることを意図している。
【0026】
本明細書に開示されるすべての範囲は、列挙された端点を含み、独立して組み合わせることができる(例えば、「2インチ~10インチ」の範囲は、端点である2インチおよび10インチ、およびすべての中間値を含む)。
【0027】
本明細書で使用される場合、近似を表す文言は、関連する基本的な機能に変化をもたらすことなく変化し得る、任意の定量的表現を修飾するために適用され得る。したがって、「約」および「実質的に」などの用語で修飾された値は、場合により、指定された正確な値に限定されなくてもよい。「約」という修飾語はまた、2つの端点の絶対値によって定義される範囲を開示していると見なされるべきである。例えば、「約2~約4」という表現は、「2~4」の補間値の範囲も開示する。
【0028】
本明細書で使用される用語の多くは、相対的な用語であることに留意されたい。例えば、用語「上部」および「底部」は、位置が互いに対して相対的である、すなわち、上部構成要素が下部構成要素よりも高い高度に位置しており、構造の特定の向きまたは位置を要すると解釈されるべきではない。さらなる例として、用語「内部」、「外部」、「内向き」、および「外向き」は、中心に対するものであり、構造の特定の向きまたは位置を要すると解釈されるべきではない。
【0029】
用語「上部」および「底部」は、絶対的な基準、すなわち地表に対するものである。言い換えると、上部位置は、地表に対して、底部位置よりも常に高い高度に位置する。
【0030】
「水平」および「垂直」という用語は、絶対基準、すなわち地面に対する方向を示すために使用される。しかしながら、これらの用語は、構造が互いに対して完全に平行または完全に垂直であることを必要とすると解釈されるべきではない。
【0031】
グラムという用語はgmと省略することができ、リットルという用語はLと省略することができ、ミリリットルという用語はmLと省略することができ、立方センチメートルという用語はcmと省略することができ、リットルという用語はLと省略することができ、平方メートル当たりのリットルという用語はL/mと省略することができ、1時間当たりの平方メートル当たりのリットルという用語はL/m/HまたはLMHと省略することができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「デプスフィルタ」(例えば、勾配密度デプスフィルタ)は、フィルタ材料の深さ内での濾過を達成する。そのようなフィルタの一般的な部類は、束ねられた(そうでなければ固定された)繊維のランダムマトリックスを具備して、複雑で蛇行した流路の迷路を形成するものである。これらのフィルタにおける粒子分離は、一般に、繊維マトリックスによる捕捉または繊維マトリックスへの吸着から生じる。繊維ベースのフィルタ材料は、マットまたはパッド形態であってもよい。細胞培養ブロスおよび他の供給原料のバイオ処理のために最も頻繁に使用されるデプスフィルタメディアは、セルロース繊維、珪藻土(DE)などのフィルタ助剤、および樹脂バインダからなる。デプスフィルタメディアは、アブソリュートフィルタとは異なり、多孔質メディア全体で粒子を保持し、孔径より大きい粒子と小さい粒子の両方を保持することを可能にする。粒子保持は、疎水性、イオン性および他の相互作用によるサイズ排除および吸着の両方を含むと考えられる。ファウリングメカニズムは、細孔閉塞、ケーキ形成および/または細孔狭窄を含んでも良い。デプスフィルタは、汚染物質を除去し、使い捨て(すなわち、シングルユース)様式でもあることによって検証問題を省くため、有利である。
【0033】
一次清澄化デプスフィルタは、細胞全体および細胞破片を除去することができ、したがって、一次清澄化遠心分離工程または一次清澄化タンジェンシャルフロー精密濾過工程を使用することなく、目的の標的生体分子ならびに複数の細胞破片およびコロイド状粒子を含有する供給物の一次清澄化を達成する。
【0034】
EMD Millipore Corporationから市販されているMILLISTAK(R)+フィルタなどの適切なセルロースデプスフィルタは、密に構造化されたセルロースデプスメディアの層を含む複合フィルタであり、コロイド粒子および細胞破片の保持、または細胞全体およびより大きな破片の保持など、特定の用途に最適化されることができる。それらは、単一のフィルタカートリッジまたはハウジング内に2つ以上の連続するグレードのメディアを組み合わせる。これらのフィルタは、水性生成物(タンパク質)流から少量の懸濁物質を除去するための、研磨または二次清澄化プロセスで最も一般的に使用される。これらのフィルタの1つの機能は、滅菌濾過およびアフィニティクロマトグラフィなどのより高価な下流分離プロセスの耐用年数を保護または延長することである。すなわち、これらのフィルタの一般的な用途は、「プレフィルタ」として、下流プロセス容量(フィルタが詰まる前にフィルタを通過することができる流体の量)をコロイド状汚染物質および他の細胞破片から保護することであり、これにより、下流プロセスの寿命を大幅に延ばすことができる。さらに、そのようなデプスフィルタは、微量の凝集したタンパク質を除去することによる、ウイルスクリアランスフィルタの保護にも使用される。
【0035】
従来のデプス濾過用途では、デプスフィルタメディアのファウリングが、所与の面積の「密閉」または「封入」デプスフィルタによってどれだけの量の細胞培養産物が処理/濾過されることができたか、に影響される。この量は、デプスフィルタ充填容量と呼ばれ、通常、デプスフィルタの充填容量(L/m)として表示される。細胞密度の最近の増加により、細胞培養液中の固形分/細胞集団/バイオマス充填が増加した。さらに、これらに限定されないが、新規なデプスメディア組成物ならびに勾配層状デプスフィルタを含むデプスフィルタメディア設計の最適化により、これらのデプスフィルタメディアを使用して処理され得る細胞培養物流体の量が著しく増加した。これらの2つの要因は、独立して、または密閉もしくは封入デプスフィルタ設計と組み合わされて、利用可能な上流ヘッドスペースの細胞/バイオマスによる完全な占有をもたらし得ることとなり、全体の容量を制限し、デプスフィルタメディア自体を十分に活用しない。さらに、異なるスケール装置間のヘッドスペースの違いは、スケーラビリティの課題をもたらす可能性がある。ヘッドスペースの欠如はまた、デプスフィルタの性能に有害となり得るメディア圧縮をもたらす可能性がある。
【0036】
本明細書に開示される実施形態では、当業者が利用可能な任意のデプス濾過システムが使用され得る。特定の実施形態では、デプスフィルタは、スケーラブルな、使い捨てまたはシングルユース様式で、例えば、5~12,000リットル以上にスケーラブルなモジュール設計である、EMD Millipore Corporationから入手可能なMILLISTAK+(R)Pod Filter Systemであり得る。これらのデプスフィルタには、複数の段階的な密度の層および吸着フィルタメディアが組み込まれている。例えば、MILLISTAK+(R)DEは、選択グレードのセルロース繊維および珪藻土から構成される。MILLISTAK+(R)CEシリーズは、粗濾過用途(例えば、1~30ミクロン)に適したセルロース繊維を含む単層メディアである。MILLISTAK+(R)HCシリーズは、フィルタ容量および保持率を向上させる2つの異なる技術を組み合わせることによって、生産性を向上させることを専門としている。本開示によるいくつかの実施形態のメディアは、荷電または非荷電であることができる。EMD Milliporeから市販されており、前処理された供給流の粒径分布に合わせて特別に設計された勾配密度構造を有する清澄化ツールとして有用な、CLARISOLVE(R)デプスフィルタも適している。
【0037】
市販のデプス濾過装置が、清澄化用途に利用可能である。上記のように、これらには、EMD Millipore Corporation製のMillistak+(R)HC、Millistak+(R)HC Pro、およびClarisolve(R)デプスフィルタが含まれる。これらのデプス濾過装置は、目的とする用途および濾過されるプロセス流体の量に応じて、複数の装置サイズで利用可能である。少量(<3L)の場合、23cmのマイクロポッド装置が使用される。中程度の量(3~10L)の場合、実験室規模の装置は、135cm、270cm、および540cmの装置サイズで利用可能である。パイロット規模および生産規模の量(10~2000L)の場合、プロセス規模の装置は、0.11m、0.33m、0.55m、0.77m、および1.1mの装置サイズで利用可能である。
【0038】
いくつかの実施形態では、デプスフィルタは、供給物を清澄化するための方法において使用され得る。特定の実施形態では、供給物、供給流、供給原料、細胞培養ブロスなどの清澄化デプス濾過が提供され、それは、場合により一次清澄化遠心分離工程または一次清澄化タンジェンシャルフロー精密濾過工程を使用せずに、最適化されたヘッドスペースを有する清澄化デプス濾過装置を利用する。いくつかの実施形態では、細胞集団がより大きな凝集体へと凝集した化学的処理供給物の、一次清澄化デプス濾過が提供される。ある特定の実施形態では、そのような供給物の清澄化は、1つ以上のクロマトグラフィー操作の上流で行われる。
【0039】
いくつかの実施形態では、デプスフィルタメディアは、流体吸入口と、流体吸入口から離間した流体排出口とを備えたハウジング(例えば、ハウジングがフィルタモジュールの一部である封入ハウジング)内に収容される。本明細書で使用される場合、濾過モジュールは、プラスチック格納容器などの格納容器に封入されたデプスメディアを含み、濾過を実行するように設計された流路を有する、自己完結型アセンブリである。モジュールは、独立して、またはホルダーと共に使用可能である。いくつかの実施形態では、フィルタモジュールは、配管などに直接取り付けられ、ポッドなどの実験室規模の濾過に使用され得るように設計される。より大きなモジュールが、ホルダー内に組み立てられることができる。ハウジングおよび任意の適切な封止は、濾過される流体が排出口を通ってハウジングから出る前にデプスフィルタメディアを通過することを保証する。いくつかの実施形態では、濾過される流体のすべてが吸入口から排出口までにデプスフィルタメディアを通過しなければならない、一体型濾過装置が形成される。吸入口は、ハウジングの外面またはハウジングの中央に位置する部分内に配置され得、排出口は、上述のように流体通路をもたらすために、吸入口から離れて配置される。いくつかの実施形態では、ハウジングは成形プラスチック圧力容器であってもよい。いくつかの実施形態では、ハウジングは、当業者に知られているようなカートリッジであってもよい。
【0040】
図1Aは、いくつかの実施形態によるデプスフィルタ10の透視図である。ここで図1Aおよび図1Bに着目すると、いくつかの実施形態によるデプスフィルタ10が示されている。デプスフィルタ10は、吸入口13と、吸入口13から離間した排出口14とを有する適切なハウジング12を含む。いくつかの実施形態では、吸入口13は、円盤形本体部材12Aの上面から軸線方向に延在し、その自由端の開口部で終端する円筒形体13Aによって形成される。排出口14は、円盤形本体部材12Aの底面から軸方向に延在し、その自由端の開口部で終端する円筒形体14Aによって形成される。ハウジング12は、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ならびにポリエチレンおよび/またはポリプロピレンを含むブレンドなど、プロセスに有害ではない任意の適切な材料で形成され得る。ハウジング12は、カートリッジであってもよい。当業者であれば、図1Aおよび図1Bに示されるハウジング12の形状または構成は単なる例示であり、ポッドを含む他の形状または構成は、本明細書に開示される実施形態の範囲内であることを理解するであろう。デプスフィルタは、シングルユース装置であってもよい。
【0041】
図1Bは、図1Aのデプスフィルタ10の断面図である。図1Bは、吸入口13から排出口14への濾過中のフローの方向(矢印19A、19Bによって示される)に、ヘッドスペース15と、デプスフィルタマトリックス16と、下流ホールドアップ容積17とを含むハウジング12の内部容積を示し、ヘッドスペース15は、デプスフィルタマトリックス16のおよび下流ホールドアップ容積17の上流にある。
【0042】
図2は、代替的なデプスフィルタ、例えば、本開示によるいくつかの実施形態によるレンズ形封入デプスフィルタの正面断面図である。図2は、封入レンズ形設計であるデプスフィルタを示し、積層円盤フィルタは、ハウジング12’内に封入されている。ハウジング12’の内部容積は、ヘッドスペース15’、デプスフィルタマトリックス16’、およびホールドアップ容積17’を含む。封入された装置の場合の吸入口13’の位置は、排出口14’の周りの同心環であってもよいが、他の設計も可能であり、本明細書に開示された実施形態の範囲内である。いくつかの実施形態では、供給物は吸入口13’に入り、デプスフィルタメディア16’によって濾過され、次いで濾過された流体は、ホールドアップ容積領域17’に流れる。見て分かるように、デプスフィルタメディア16、16’およびホールドアップ容積17、17’の設計/配置に関係なく、供給物は最初にヘッドスペース15、15’を横切る。
【0043】
いくつかの実施形態では、ヘッドスペースは、フィルタの物理的寸法に基づいて、または実験的アプローチとして使用することによって測定することができる。フィルタの物理的寸法は、バーニアキャリパ、定規などの機器を使用して測定されることができ、または封入レンズ形デプスフィルタおよびMILLISTAK(R)Podフィルタなどのより複雑なフィルタ形状の場合、Solidworks(Dassault Systemes)、Pro/Engineering、Creo(PTC)などのソフトウェアによって生成された、フィルタのコンピュータ支援設計(CAD)図面から導出され得る。
【0044】
例えば、図1Aに示されるデプスフィルタのヘッドスペースの計算は、以下の通りである。
【0045】
装置のヘッドスペース容積=
【数1】
【0046】
単位面積当たりのヘッドスペース=
【数2】
【0047】
いくつかの実施形態では、ヘッドスペースを定量するための実験的アプローチは、既知濃度の粒子のスラリーを使用して実行され得る。この作業に使用される粒子は、デプスメディアを汚さずにデプスフィルタの上面に半多孔質ケーキを形成するような粒径を有する。適切な粒径のラテックスまたはポリスチレンミクロスフェアまたはベントナイトは、使用され得る粒子の例である。適切な粒径は、15~100ミクロンの範囲としても良い。範囲の下端は、フィルタのグレード/多孔度に依存する。
【0048】
実験的にヘッドスペースを定量化する好適な例は、以下の通りである。既知の面積(それぞれ「A」m)の2つの封入デプスフィルタ装置が予め秤量され、それぞれ重量は、WおよびWである。デプスメディアは、各装置において同等であるべきであり、同様の流量分布を有するべきである。適切なサイズの粒子を含有する水性スラリーが、25(平方インチ当たりのポンド)psiの最終圧力に達するまで、両方の封入デプスフィルタ装置を通して濾過される。固形分の均一な分布を確保するために、粒子濃度は低く(5%未満)なければならず、約150リットル/m・時間の濾過流束が維持されなければならない。第2の装置は、ヘッドスペースからスラリーを回収するための解体を容易にする、第1の装置の縮小版であってもよい。
【0049】
第1の装置では、空気ブローダウンが実行されて、フィルタメディアおよび下流のホールドアップに入り込んだすべての水を除去する。空気ブローダウン後、装置は、制御された温度および湿度の環境で乾燥される。安定した重量が達成されると、装置の最終重量が測定される(W)。
【0050】
第2の装置は解体され、ヘッドスペースからスラリーが回収される。湿ったスラリーの重量が測定され(W)、制御された温度および湿度の環境で乾燥させ、その最終重量が測定される(W)。ヘッドスペースは、式2および3を使用して計算されることができる。
【0051】
装置1の空重量=W
装置2の空重量=W
空気ブローダウンおよび乾燥後の装置1の最終重量=W
スラリーの湿重量=W
スラリーの乾燥重量=W
装置1からの乾燥した粒子状物質の重量=W-W
スラリーのわずかな含水量=((W-W)/W)(水の重量/乾燥スラリーの重量)
式2:
装置の総ヘッドスペースH=(W-W)*(1+(W-W)/W
式3:
単位面積当たりのヘッドスペース=H/A=((W-W)*(1+((W-W)/W))))/A
表1は、ヘッドスペース容積を決定するための実験方法の数値例を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
清澄化用途は、一般に、デプスフィルタメディアのファウリングを制限するかまたは全く引き起こさない、細胞集団もしくはバイオマスの高い含有量または供給流を含む。これらの場合、濾過中に、最終的にヘッドスペースを使い果たす可能性がある。その結果、ヘッドスペースは、典型的なメディアのファウリングではなく、処理可能な供給物の量を制限する要因である。したがって、本明細書に開示される実施形態に従ってヘッドスペースを最適化することによって、ヘッドスペースに起因する容量制限を示さず、結果としてデプスメディアを最大限利用する装置が設計され得る。これは、縮小装置を設計する際にも有用である。なぜなら一貫性のないヘッドスペース対面積比は、装置のスケーラビリティの欠陥をもたらす可能性があるからである。
【0054】
いくつかの実施形態では、一次清澄化装置のための最適なヘッドスペースは、以下の手順を使用して定義されることができる。
【0055】
供給流中の細胞集団含有量を細胞密度の関数として定量する。
【0056】
細胞は、13ミクロンの平均直径を有する剛体球であると仮定される。各細胞の体積は、以下の通りである。
【0057】
細胞の体積=V=
【数3】
=1.15*10-15/細胞
=1.15*10-9ml/細胞
この体積に、通常は細胞/mlとして表される、産物の総細胞密度(TCD)、例えば、細胞培養物の総細胞密度=TCD=12*10細胞/mlを乗算する。
【0058】
これは、総細胞密度と、供給物の単位体積当たりの細胞集団の体積との間の相関をもたらす。異なる細胞株は、異なる直径を有することができる。したがって、
細胞の体積Vcells=V*TCD=1.15*10-9ml/細胞*12*10細胞/細胞培養物ml
=細胞0.0138ml/細胞培養物ml
したがって、バイオマス%は、Vcells*100
=体積細胞1.38%/体積細胞培養として計算された。
【0059】
さらに、細胞集団が球形であると仮定できない場合、または様々な球形度を伴う著しく広い粒子分布が存在し得る場合、バイオマス/細胞集団は、既知の体積の供給材料を遠心分離すること、および供給物の総体積(例えば、沈殿物、凝集物など)に対する沈降したバイオマス(底部でペレットとして分離された)の体積を計算することによって、実験的に定量化され得る。図3は、総細胞密度と供給流中のバイオマス/細胞集団体積パーセントとの相関をプロットしている。
【0060】
細胞集団全体がフィルタ装置のヘッドスペースに保持されていると仮定する(フィルタメディアの1つまたは複数の最上層が非常に高い空隙率を有し、バイオマスを収容するための開放構造を有する場合、1つまたは複数の最上層の空隙体積も、利用可能なヘッドスペースの下で定量化され得る)。規定された形状の粒子が限られた空間にランダムに充填されると、その充填に関連する空隙体積が存在する。ランダムに注入された球形の形状を有する充填物について、0.375の空隙体積分率が仮定された。この仮定の適切な空隙体積分率фは、0.5~0.38を含む。したがって、細胞によって占有される体積は、
cells*(1+φ)=0.0138*(1+0.375)
=0.0189ml/細胞培養物ml
デプスフィルタのヘッドスペース容積はXであり、ヘッドスペースL/デプスフィルタ面積mの単位で表される。
【0061】
この実施例では、ヘッドスペース容積(X)が、ヘッドスペース2L/デプスフィルタ面積mであると仮定する。
【0062】
フィルタを通して処理されることができる細胞培養物の体積、フィルタ容量は、細胞培養物L/デプスフィルタ面積m単位で表示される。
【0063】
この値は、以下のように計算されても良い。すなわち、(フィルタ容量)=X/Vcells*(1+ф)=2/0.0189=105.8Lの細胞培養物/デプスフィルタ面積m
【0064】
同様に、ヘッドスペースの容積が、4Lヘッドスペース/デプスフィルタ面積mである場合、処理されることができる細胞培養物の体積=X/Vcells*(1+φ)=4/0.0189=211.8L細胞培養物/デプスフィルタ面積m
【0065】
同様に、ヘッドスペースの容積が、12Lヘッドスペース/デプスフィルタ面積mである場合、処理されることができる細胞培養物の体積=X/Vcells*(1+φ)=12/0.0189=634.9L細胞培養物/デプスフィルタ面積m
【0066】
次に、2000Lバッチを濾過するのに必要な面積を特定する。
【0067】
A=Vbatch/(X/Vcells)=2000/105.8=18.9m(ヘッドスペース2L/m
=2000/211.8=9.44m(ヘッドスペース4L/m
=2000/634=3.15m(ヘッドスペース12L/m
したがって、ヘッドスペースの増加に伴うデプスフィルタ面積の縮小率は次の通りである。
【0068】
(A2l/m2-A2l/m2)*100/A2l/m2=(18.9-18.9)*100/18.9=0%
(A2l/m2-A4l/m2)*100/A2l/m2=(18.9-9.44)*100/18.9=50%
(A2l/m2-A12l/m2)*100/A2l/m2=(18.9-3.15)*100/18.9=83%
【0069】
供給物最大充填容量が、ヘッドスペースおよび総細胞密度(またはバイオマス)の関数としてプロットされ、図4に示される。示されている最大充填容量は、フィルタメディアが限られたファウリングを示すか、またはファウリングを示さないこと、および容量が利用可能なヘッドスペースによって抑制されることを仮定している。2000Lを処理するのに必要なそれぞれの面積の計算に、これらの充填容量が使用された。バッチの量は、任意に選択される。結果は、バッチ量をそれぞれの充填容量で除することによって得られ、図5にプロットされている。
【0070】
2L/mのヘッドスペースに対してヘッドスペースを増加させることによって達成され得る、2000Lバッチを処理するためのデプスフィルタメディア面積の縮小が計算された。パーセンテージは総細胞密度とは無関係であるので、ただ1つの曲線が示されている。この面積縮小率は、図6に示される。
【0071】
結果は、最適なヘッドスペース容積が、デプスフィルタ面積の平方メートル当たり約4リットルのヘッドスペース(4L/m)からデプスフィルタ面積の平方メートル当たり約14リットルのヘッドスペース(14L/m)、好ましくは約4L/m~約10L/mであることを実証している。他の最適なヘッドスペース容積は、以下の範囲(すべてL/m)、4~13、4~12 4~11、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5;5~14、5~13、5~12、5~11、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6;6~14、6~13、6~12、6~11、6~10、6~9、6~8、6~7;7~14、7~13、7~12、7~11、7~10、7~9、7~8;8~14、8~13、8~12、8~11、8~10、8~9;9~14、9~13、9~12、9~11、9~10;10~14、10~13、10~12、10~11;11~14、11~13、11~12;12~14、12~13;および13~14L/mを含む。デプスフィルタ面積に対するヘッドスペース容積の比率が高すぎると、流量分布の課題、装置の過剰な重量などが生じる。
【0072】
(実施例1)
凝集細胞培養物の清澄化CHO-S細胞培養産物を水溶性ポリマーの添加によって凝集させた。少なくとも1つの適切な水溶性ポリマーは、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロリド)(pDADMAC)ポリマー凝集剤である。凝集した細胞培養物は、表2に記載の6つのデプス濾過装置を使用して濾過された。これらの実験では、上部フロー分配器および吸入口ホースバーブを含む上部、フィルタメディア層、ならびに下部フロー分配器および排出口ホースバーブを含む底部を組み立てることによって、23cmのデプス濾過装置が構築された。フィルタ装置の上部とフィルタ装置の底部との間にプラスチック製スペーサリングを設置することによって、装置のヘッドスペースを変化させた。熱可塑性のオーバーモールドジャケットを利用して、構成要素を一緒に入れ、水密に封止した。装置内部容積は、以下のように決定された。組み立てられ、乾燥した装置を秤量し、水で完全に満たし、再び秤量した。デプスフィルタメディア容積は、メディア層の総厚(1.6~2.0cm)とフィルタ前面面積(23cm)との積として決定された。装置のヘッドスペースは、装置内部容積とデプスフィルタメディア容積との間の差の二分の一として計算される。装置のヘッドスペースは、デプス濾過装置内のデプス濾過メディアの層の上に位置する装置内部容積として定義される。装置のテールスペースは、デプス濾過装置内のデプス濾過メディアの層の下に位置する装置内部容積として定義される。
【0073】
凝集したCHO-S細胞培養物産物は、20psiの最終圧力が得られるまで、150LMHの流量で各デプス濾過装置を通して処理された。図7Aから図7Fは、実施例1による様々なデプス濾過装置の圧力プロファイル曲線である。
【0074】
実施例1-1では、462L/mのフィルタ容量が得られた。この装置は、利用可能なヘッドスペースを有さず、フィルタメディアのわずかな圧縮が計算される。実施例1-2の装置は、スペーサリングを利用して、デプスフィルタメディアの層の下に装置内部容積(テールスペース)を配置した。フィルタ容量は、574L/mであった。対照的に、実施例1-4の装置は、同じ数のスペーサリングを利用して、デプスフィルタメディアの層の上に装置内部容積を配置した。この装置では、675L/mのデプス濾過容量の増加が観察された。実施例1-3、1-4、1-5および1-6は、装置ヘッドスペース増加の進行および装置濾過容量に対する対応する影響を表す。図7Aから図7Fは、表2に示すように、実施例1-1から実施例1-6のフィルタ装置の装置抵抗対フィルタースループットのプロットを示す。プロセス流束は、150LMHであった。これらのプロットは、実施例1-2および実施例1-3のフィルタ装置が、実施例1-1のフィルタ装置よりも凝集供給流に対してわずかに高いフィルタ容量を提供することを示している。実施例1-4、1-5、および1-6のフィルタ装置は、実施例1-1のフィルタ装置よりも凝集供給流に対するフィルタ容量をさらに増加させる。
【0075】
【表2】
【0076】
(実施例2)
凝集細胞培養物の清澄化。CHO-S細胞培養産物を水溶性ポリマーの添加によって凝集させた。少なくとも1つの適切な水溶性ポリマーは、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロリド)(pDADMAC)ポリマー凝集剤である。凝集した細胞培養物は、表3に記載の3つのデプス濾過装置を使用して濾過された。これらの実験では、上部フロー分配器および吸入口ホースバーブを含む上部、フィルタメディア層、ならびに下部フロー分配器および排出口ホースバーブを含む底部を組み立てることによって、23cmのデプス濾過装置が構築された。フィルタ装置の上部とフィルタ装置の底部との間にプラスチック製スペーサリングを設置することによって、装置のヘッドスペースを変化させた。熱可塑性のオーバーモールドジャケットを利用して、構成要素を一緒に入れ、水密に封止した。装置内部容積は、以下のように決定された。組み立てられ、乾いた装置を秤量し、水で完全に満たし、再び秤量した。デプスフィルタメディア容積は、メディア層の総厚(1.9~2.0cm)とフィルタ前面面積(23cm)との積として決定された。装置のヘッドスペースは、装置内部容積とデプスフィルタメディア容積との間の差の二分の一として計算される。
【0077】
凝集したCHO-S細胞培養物産物は、20psiの最終圧力が得られるまで、150LMHの流量で各デプス濾過装置を通して処理された。図8Aから図8Cは、実施例2による様々なデプス濾過装置の圧力プロファイル曲線である。
【0078】
実施例2-1では、544L/mのフィルタ容量が得られた。この装置は、利用可能なヘッドスペースを有さず、フィルタメディアのわずかな圧縮が計算される。実施例2-2および2-3では、デプス濾過容量の増加が観察された。これらの2つの装置は、ヘッドスペースの増加を示し、フィルタメディアの圧縮は、最小限である。図8Aから図8Cは、表3に示すように、実施例2-1、2-2、および2-3のフィルタ装置の装置抵抗対フィルタースループットのプロットを示す。プロセス流束は、150LMHであった。これらのプロットは、実施例2-2および実施例2-3のフィルタ装置が、実施例2-1のフィルタ装置よりも凝集供給流に対して高いフィルタ容量を提供することを示している。
【0079】
【表3】
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図8C
【手続補正書】
【提出日】2023-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口と、前記吸入口から離間した排出口と、濾過メディアを含有する内部容積と、前記内部容積内のヘッドスペースとを有するハウジングを備えるデプスフィルタであって、前記ヘッドスペースの容積が、前記内部容積内の濾過メディア面積1平方メートル当たり4~14リットルである、デプスフィルタ。
【外国語明細書】