(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145444
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】中枢神経系腫瘍の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 51/12 20060101AFI20231003BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231003BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20231003BHJP
【FI】
A61K51/12 100
A61P35/00
A61K33/24
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023109095
(22)【出願日】2023-07-03
(62)【分割の表示】P 2021551835の分割
【原出願日】2020-03-11
(31)【優先権主張番号】62/816,833
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/823,954
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】303039785
【氏名又は名称】バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】398076227
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】パサイアク、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ワイス、クリフォード
(72)【発明者】
【氏名】ドレハー、マシュー アール.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】神経膠腫などの中枢神経系腫瘍を治療する方法を提供する。
【解決手段】β線放射性核種含有組成物を脳血管系を介して腫瘍に送達することを含む方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CNS腫瘍の治療を必要とする患者を治療する方法において、β線放出組成物を脳血管系に選択的に投与する工程を備える、方法。
【請求項2】
前記CNS腫瘍が神経膠腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CNS腫瘍が軸内脳腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記CNS腫瘍が髄膜腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記CNS腫瘍が脳転移である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記β線放出組成物が脳のT2高信号領域にさらに局在化する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記β線放出組成物が、3H、14C、32P、59Fe、47Ca、89Sr、90Y、131I、153Sm、177Lu7、166Ho、及び169Erから選択される1つ以上の放射性核種を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記β線放出組成物は、β線放出放射性核種を含有した油、ガラスまたはポリマーの粒子を含んでなり、前記粒子の平均直径が1~100μmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記平均直径が10~50μmである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記平均直径が15~35μmである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子の直径が15~35μmである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記粒子の直径が20~30μmである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記β線放出粒子が、3H、14C、32P、59Fe、47Ca、89Sr、90Y、131I、153Sm、177Lu7、166Ho、及び169Erから選択される1つ以上の放射性核種を含有する、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記β線放出粒子が、89Sr、166Ho、153Sm、177Lu、169Er及び90Yから選択されるβ線放出放射性核種を含有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記β線放出粒子が90Y放射性核種を含有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記β線放出粒子がガラス粒子またはポリマー粒子である、請求項8~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記粒子がイットリウムを含有するアルミノケイ酸塩ガラス粒子である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ガラス粒子は、35~45%のY2O3、15~25%のAl2O3、及び35~45%のSiO2の混合物から得られたガラスから形成される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ガラス粒子は、約40%のY2O3、約20%のAl2O3、及び約40%のSiO2の混合物から得られたガラスから形成される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ガラス中のイットリウムの少なくとも一部が、放射線への曝露によって90Yに変換されている、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子が純粋なβ線放出粒子であり、粒子が実質的に100%のβ線を照射する、請求項8~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記粒子が投与されたときに0.05~0.005GBq/mgの範囲の比活性を有する、請求項8~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記粒子が投与されたときに0.0231~0.03894GBq/mgの範囲の比活性を有する、請求項~ら21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
CNS腫瘍の治療に使用するためのβ線放出物質の懸濁液を水性液体中に含む、注射可能な組成物。
【請求項25】
前記β線放出物質は、3H、14C、32P、59Fe、47Ca、89Sr、90Y、131I、153Sm、177Lu7、166Ho、及び169Erから選択される1つ以上の放射性核種を含む、請求項24に記載の注射可能な組成物。
【請求項26】
前記β線放出物質が油、ガラスまたはポリマーの粒子を含有する、請求項24に記載の注射可能な組成物。
【請求項27】
前記粒子が、3H、14C、32P、59Fe、47Ca、89Sr、90Y、131I、153Sm、177Lu7、166Ho、及び169Erから選択される1つ以上の放射性核種を含有するβ線放出粒子である、請求項26に記載の使用のための注射可能な組成物。
【請求項28】
前記β線放出粒子が、89Sr、166Ho、153Sm、177Lu、169Er及び90Yから選択される純粋なβ線放出放射性核種を含む、請求項27に記載の使用のための注射可能な組成物。
【請求項29】
純粋なβ放射線を放出する放射性核種が90Yである、請求項28に記載の使用のための注射可能な組成物。
【請求項30】
前記粒子が、ガラスの構成要素であるイットリウム90(90Y)を有する不溶性ガラスミクロスフェアを含んでなる、請求項26に記載の使用のための注射可能な組成物。
【請求項31】
前記ガラスミクロスフェアの直径が20~30μmの範囲にある、請求項30に記載の注射可能な組成物。
【請求項32】
前記ガラスミクロスフェアは、1ミリグラムあたり、22,000~73,000の間のミクロスフェアを含む、請求項30に記載の注射可能な組成物。
【請求項33】
前記β線放出粒子が無菌のパイロジェンフリー水中に供給される、請求項26に記載の注射可能な組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に脳血管系を介して送達される場合に、ベータ線を放出する放射性核種(β線を放出する放射性核種)を使用する中枢神経系(CNS)腫瘍の治療に関する。特に、本発明は、CNS腫瘍、より詳細には、神経膠腫などの血管過多腫瘍を含む高悪性度の軸性脳腫瘍の治療における、放射性核種含有物質を含む注射可能な組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系(CNS)癌は治療が非常に困難な場合があり、高悪性度神経膠腫は外科的に切除することが困難であり、放射線療法や化学療法に耐性があることがよくある。多形性神経膠芽腫(GBM)は、中枢神経系における最も一般的、かつ、最も攻撃的な悪性癌である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在の標準治療は、化学療法と組み合わせた体外照射療法(EBRT)であり、転帰は比較的不良である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、特に脳血管系を介して送達される場合に、ベータ線を放出する放射性核種(β線を放出する放射性核種)を使用する中枢神経系(CNS)腫瘍の治療に関する。
様々な態様において、本開示は、脳血管系にβ放射線放出組成物を選択的に投与するステップを備える、CNS腫瘍の治療を必要とする患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、CNS腫瘍は神経膠腫であり得る。いくつかの実施形態において、CNS腫瘍は、軸内脳腫瘍であり得る。いくつかの実施形態では、CNS腫瘍は髄膜腫であり得る。いくつかの実施形態において、CNS腫瘍は、脳転移であり得る。
【0005】
上記の態様及び実施形態のいずれかと併せて使用することができるいくつかの実施形態では、β放射線放出組成物は、脳のT2高信号領域にさらに局在化させる。この点で、腫瘍を取り巻くT2高信号領域への局在化は、腫瘍自体を標的とすることに追加される。この追加の適用範囲は、例えば、腫瘍がT2高信号域にまで及ぶが、画像化では現れない場合に有利となり得る。
【0006】
上記の態様及び実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるいくつかの実施形態では、β線放出組成物は、3H、14C、32P、59Fe、47Ca、89Sr、90Y、131I、153Sm、177Lu7、166Ho、及び169Erから選択される1つまたは複数の放射性核種を含む。
【0007】
上記の態様及び実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるいくつかの実施形態では、β線放出組成物は、とりわけ平均直径が1~100μmであり、β線を放出する放射性核種を含む粒子を含むことができる。特定の実施形態では、粒子は、β線を放出する放射性核種を含み、平均直径が1~100μmである油、ガラス、またはポリマー粒子である。これらの実施形態のいくつかでは、平均直径は10~50μm、より詳細には15~35μmである。これらの実施形態のいくつかでは、粒子の直径は15~35μm、より詳細には20~30μmである。
【0008】
上記の態様及び実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるいくつかの実施形態では、β線放出粒子は、3H、14C、32P、59Fe、47Ca、89Sr、90Y、131I、153Sm、177Lu7、166Ho、及び169Erから選択される1つまたは複数の放射性核種を含む。
【0009】
上記の態様及び実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるいくつかの実施形態では、β線放出粒子は、ガラス粒子またはポリマー粒子である。
上記の態様及び実施形態のいずれかと併せて使用できるいくつかの実施形態では、β線放出粒子は、イットリウムを含有するアルミナケイ酸塩ガラス粒子であり、例えば、ガラス粒子は、35~45%のY2O3、15~25%のAl2O3、及び35~45%のSiO2の混合物から得られたガラス、例えば、約40%のY2O3、約20%のAl2O3、及び約40%のSiO2の混合物から得られたガラスから形成されたガラス粒子などから形成され得る。場合によっては、ガラス中のイットリウムの少なくとも一部が放射線への曝露によって90Yに変換される。
【0010】
上記の態様及び実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるいくつかの実施形態では、粒子は、実質的に100%のβ線を照射する純粋なβ線放出粒子である。
上記の態様及び実施形態のいずれかと組み合わせて使用できるいくつかの実施形態では、粒子は、投与されたときに0.05~0.005GBq/mgの範囲の比活性、より詳細には、投与時に0.0231~0.03894GBq/mgの範囲の比活性を有する。
【0011】
他の態様では、本開示は、CNS腫瘍の治療に使用するために、水性液体中のβ線放出物質の懸濁液を含有する注射可能な組成物を提供する。いくつかの実施形態では、物質は、3H、14C、32P、59Fe、47Ca、89Sr、90Y、131I、153Sm、177Lu7、166Ho、及び169Erから選択される1つまたは複数の放射性核種を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、物質は、他の可能な値の中でもとりわけ、例えば、1~100μmの平均直径を有する、油、ガラスまたはポリマー粒子などの粒子を含み得る。
いくつかの実施形態では、粒子は、3H、14C、32P、59Fe、47Ca、89Sr、90Y、131I、153Sm、177Lu7、166Ho、及び169Erから選択される1つまたは複数の放射性核種を含有するβ線放出粒子である。
【0013】
いくつかの実施形態では、粒子は、ガラスの一体構成要素としてイットリウム90(90Y)を有する不溶性ガラスミクロスフェアを含み、これは、例えば、他の可能な値の中でもとりわけ、20~30μmの範囲の直径を有し得る。特定の実施形態では、ガラスミクロスフェアの1ミリグラムにつき22,000~73,000個のミクロスフェアを含み得る。上記の態様及び実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるいくつかの実施形態では、β線放出粒子は、無菌のパイロジェンフリーの水で供給される。
【0014】
追加の態様及び実施形態は、以下の詳細な説明を検討することにより当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】健康な被験イヌの左中大脳動脈に注入された造影剤を示す血管造影図。
【
図2】A)処置前のMRI画像、及びB)治療後のY90 PET/CTを処置前のMRIと融合した画像。融合画像は、治療を受けた第1の脳腫瘍患犬におけるMRI T2増強末梢と、Y90 PET沈着との相関関係を示している。
【
図3】A)治療の1か月前のT2 FLAIR MRI画像、B)治療の1か月後のT2 FLAIR MRI画像、C)治療の1か月前のT1造影後MRI画像、D)治療の1か月後のT1造影後MRI画像。治療後1か月で、病変周囲の浮腫が解消し、造影剤の増強が見られず、病変のサイズが減少する。皮質萎縮の証拠のない正中線シフトの解決も認められた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記のように本発明は、特に脳血管系を介して送達される場合に、ベータ線を放出する放射性核種(β線を放出する放射性核種)を使用する中枢神経系(CNS)腫瘍の治療に関する。特に、本発明は、CNS腫瘍、より詳細には、神経膠腫などの血管過多腫瘍を含む高悪性度の軸性脳腫瘍の治療における、放射性核種含有物質を含む注射可能な組成物の使用に関する。
【0017】
好適な実施形態では、本開示はまた、CNS腫瘍、より詳細には、(1)星状細胞腫、原発性CNSリンパ腫、神経膠芽腫、及び神経膠腫(神経膠腫または乏突起膠腫など)を含む、軸内脳腫瘍(原発性軸性脳腫瘍を含むがこれに限定されない)、(2)髄膜腫などの軸外腫瘍、及び(3)体内の他の場所で発生する続発性脳腫瘍(すなわち、脳転移)の治療における放射性核種含有物質を含む注射可能な組成物の使用に関する。
【0018】
CNS癌は治療が非常に困難な場合があり、高悪性度神経膠腫は外科的に切除することが困難であり、放射線療法や化学療法に耐性があることがよくある。多形性神経膠芽腫(GBM)は、中枢神経系における最も一般的、かつ、最も攻撃的な悪性癌である。現在の標準治療は、化学療法と組み合わせた体外照射療法(EBRT)であり、転帰は比較的不良である。ジョンズホプキンス総合脳腫瘍センターの研究者は、悪性脳腫瘍の外科的除去によって作成された穴の中から放射線を照射するGliaSite(商標)放射線療法システム(RTS)を開発した。手動で挿入されたカプセル化されたガンマエミッターを使用した内部放射線「近接照射療法」は、前立腺などの組織の癌に対する確立された治療法であり、GBMに対して試行されている。
【0019】
GBMは血管過多の腫瘍であり、常に浸潤性腫瘍成分がある。これは事実上すべての場合に手術による治癒を妨げ、GBMの治療を非常に困難にする。不十分な外科的転帰はまた、外科的切除の役割が非常に限られているという点で、GBMを固形腹部臓器腫瘍(HCC,RCC)と区別する。GBMの外科的治療オプションを検討した後、標準治療は細分化された体外照射療法(EBRT)である。
【0020】
通常、EBRTには日ごとの1.8Gyの35個の分割からなり、腫瘍と縁の増強から1~2cmのマージンを含めて、合計で63Gyが送達される。放射線療法は1940年代からGBMの治療に使用されており、1970年代に特定された予備的な放射線生物学的閾値は、60Gyで2.3倍の適度な生存率の増加を示す。定位技術と線量漸増プロトコルを使用した最新のEBRT治療は、生存率の向上に再現性のある効果がなかった(Gzell, C., Back, M., Wheeler, H., Bailey, D. & Foote, M. Radiotherapy in Glioblastoma: the Past, the Present and the Future. Clinical Oncology 29, 15-25 (2017) )。ただし、EBRTと化学療法(例、テモゾロミド、アルキル化剤)の併用は、16か月の生存期間中央値を示すStupp らのデータに続いて2002年以来、標準治療となっている(Stupp, R. et al. Promising survival for patients with newly diagnosed glioblastoma multiforme treated with concomitant radiation plus temozolomide followed by adjuvant temozolomide. J. Clin. Oncol. 20, 1375-1382 (2002)を参照)。
【0021】
EBRTとは別に、GBMの治療では手動の低線量率近接照射療法が検討されてきた。125I及び最近では131Cs近接照射療法が、再発後の救済に、標準的な体外照射療法と組み合わせて使用されている。GBMの新たな診断について、28.5か月までの全生存期間がいくつかのシリーズで報告されている(Neurosurgical review (2016). doi:10.1007/s10143-016-0727-6 and Schwartz, C. et al. Outcome and toxicity profile of salvage low-dose-rate iodine-125 stereotactic brachytherapy in recurrent high-grade gliomas. Acta neurochirurgica 157, 1757-64 discussion 1764 (2015)を参照)。
【0022】
ただし、EBRTと低エネルギーガンマエミッターを使用した手動近接照射療法はどちらも、健康な脳実質への高放射線量を伴い、高頻度の神経毒性をもたらす。神経毒性に対抗するために、マイクロビームのフィールドを使用して腫瘍を照射するプロトンまたはX線マイクロチャネルなどの高度な技術は、がんに関与していない実質を温存する可能性を示している(Girst, S. et al. Improved normal tissue protection by proton and X-ray microchannels compared to homogeneous field irradiation. Phys Med 31, 615-620 (2015) を参照)。
【0023】
高悪性度神経膠腫は、定義上、低悪性度(WHO I,II)と高悪性度神経膠腫(WHO III,IV)を区別するMRの血管過多の増強である。高悪性度神経膠腫の様々な分類に関連して、多数の血管新生因子が発見されている(Hanif, F., Muzaffar, K., Perveen, K., Malhi, S. M. & Simjee, S. U. Glioblastoma Multiforme: A Review of its Epidemiology and Pathogenesis through Clinical Presentation and Treatment. Asian Pacific journal of cancer prevention: APJCP 18, 3-9 (2017)を参照)。
【0024】
GBMは通常、細胞過多として現れ、腫瘤を増強する。実際、CTでのコントラスト強調は、正常な脳傍気管支腫と比較して、腫瘍では20倍を超える可能性がある(
図1)。GBM療法の挑戦的な側面は、常に存在する比較的低細胞性の浸潤性疾患である。浸潤性成分は治療上の課題を提起するが、EBRT後の再発は通常、腫瘍増強の元のマージンから1~2cm以内の中心部で発生する。
【0025】
GBMは、放射線療法との用量反応関係がよく説明されている。密封された放射線源を腫瘍に配置する近接照射療法は、いくつかの報告で有効性を示すが、不均一な全生存率は、50%に近い神経毒性の割合を反映している。手動小線源治療における高い神経毒性は、低エネルギーガンマエミッターの使用に起因する広い線量マージンが原因である可能性がある。この毒性は、重要な神経学的構造を回避することにより、定位的EBRTで部分的に軽減することができる。Corwin, D. et al. Toward Patient-Specific, Biologically Optimized Radiation Therapy Plans for the Treatment of Glioblastoma. PLoS ONE 8, e79115 (2013)を参照。
【0026】
本件発明者らは、肝腫瘍を治療するための確立された治療である経動脈的放射線塞栓療法(TARE)が、脳の中枢神経系癌の潜在的に実行可能な改善された治療である可能性があると仮定した。GBMは、放射線療法との用量反応関係がよく説明されており、脳には肝臓のような二重の血液供給がないが、GBMは定義上血管過多である(GMBでは10:1のコントラスト増強が可能である)。これにより、正常な脳実質における動脈投与物質の濃度が制限され、現代のEBRTは特に高用量の血管過多領域を標的にして応答を改善し、ある程度の成功を収めているため、TAREでも同様の効果が期待できる。
【0027】
低エネルギーガンマエミッター(125I、131Cs)を使用した手動近接照射療法は、GBMとして公知だが、高線量により、近傍の神経構造に高い神経毒性を伴う。そのような影響を軽減するために、本発明者らは、限定された決定範囲を有する癌血管系に配置された放射性核種から放出される放射線が、線量及び正常組織への損傷を制限すると仮定した。特に彼らは、β線を放出する放射性核種は、特にTAREに適した形である場合、近くの正常組織への線量を制限するための正しいプロファイルを持っている可能性があると判断した。
【0028】
GBMの超選択的血管造影は、ほぼ20年前に記述され、それ以来何度も報告されている。Tomura, N. et al. Superselective angio-CT of brain tumors. AJNR Am J Neuroradiol 17, 1073-1080 (1996) を参照。超選択的動脈内脳注入(SIACI)は、医薬品を併用して送達することで、ある程度の成功を収めて使用されている(Riina HA, Knopman J, Greenfield JP, et al. Balloon-assisted superselective intra-arterial cerebral infusion of bevacizumab for malignant brainstem glioma. A technical note. Interventional Neuroradiology. 2010;16:71-76 を参照)。
【0029】
本件発明者らは、手動近接照射療法で使用される125I、131Csなどのガンマ線エミッターからのものと比較して、β線の線量沈着マージンがはるかに狭いため、癌に関与しない柔組織に危害を加えない可能性があると仮定した。90Yは、放射性核種療法で一般的に使用される純粋なβ放射体で最高のエネルギーがある。131Iや177Luなどの90Yの代替物は低エネルギーβ放射を有し、リング増強GBMの周囲の組織に危害を加えない可能性があるが、マージンが低いと、しばしば存在する細胞性及び/又は無細胞性浸潤性腫瘍成分を効果的に治療できない可能性もある。したがって、本発明者らは、任意のβ放出放射性核種の使用が本開示の範囲内にあると考えるが、特に、高エネルギー放射性核種を含む物質、特に90Y及び166Hoなどの、TAREで使用される物質の使用を想定している。
【0030】
近年、調整されたEBRTアルゴリズムが有望であることが示されている。この技術は、血管分布が最も高い領域が、細胞性が高い領域を表すと仮定して、増強する腫瘍成分により高い線量を与えることを前提としている。これが浸潤性腫瘍または低細胞性の浮腫を反映していると仮定して、T2/FLAIR高信号域の領域に低用量が投与される。調整されたEBRTプロトコルは、腫瘤全体の高線量治療に関連する正常な実質への吸収線量を大幅に増加させることなく、応答を改善するために高線量(100~130Gy)で増強領域を治療する。本発明者らは、90Y放射性核種からのような、より高エネルギーのβ放射線エミッターがこれに匹敵するか、またはこれを改善する可能性があると仮定した。90Yは、肝臓癌の治療後の生検標本で、血管の多い腫瘍周辺に大量(~1000Gy)の吸収線量を照射することが示され、この点でEBRTを改善する可能性がある。
【0031】
X線やプロトンマイクロチャネルなど、癌に関与していない脳実質に危害を加えないためのEBRTの他の技術は、ガラスの90YミクロスフェアとEBRTを比較した場合に、肝臓治療における毒性の違い(3~5倍になる可能性がある)で行われた比較と同様に神経毒性を低減することが示されている。特に、正常な脳実質におけるガラス90Yミクロスフェアのまばらな分布は、この組織を温存する可能性があり、現在EBRTで重要な研究の対象となっているX線及びプロトンマイクロチャネルと同様に機械的に機能する可能性がある。
【0032】
本開示の方法で使用するための特に好適な組成物は、油、ポリマーまたはガラスのミクロスフェアなど、形態が最小限に塞栓性である放射性核種含有物質を含み、粒子を含む最小限に塞栓性のβ線放出放射性核種は、3H、14C、32P、59Fe、47Ca、89Sr、90Y、131I、153Sm、177Lu7、166Ho、169Erから選択される放射性核種を含み得る。より好適なのは、89Sr、166Ho、153Sm、177Lu、169Er及び90Yから選択される比較的純粋なβエミッターである。最適には、ガラスまたはポリマーのミクロスフェアの形態の90Y放射性核種である。場合によっては、リピオドールなどのヨウ素化131I油も使用できる。
【0033】
一実施形態では、非放射性核種をミクロスフェアに投与して腫瘍に送達し、次に非放射性核種をその場で活性化して核種を放射性核種にすることができる。好適な実施形態では、活性化は、電子ビームを使用して実行される。より好適な実施形態では、活性化は、電子ビームを灌流された標的体積または治療部位に向けることによって実行される。
【0034】
一実施形態では、放射性核種は、輸送前に照射される代わりに、外部から照射される(すなわち、その場で照射される)ことができる。好適な実施形態では、その場照射は、電子ビームを使用して実行することができる。より好適な実施形態では、照射は、電子ビームを灌流された標的体積または治療部位に向けることによって実行される。
【0035】
最小限の塞栓を与える油やミクロスフェアなどの超選択的な方法でのβ線放出物質の送達は、特に従来の方法で治療された肝血管の解剖学に比べて、脳血管の供給と灌流に変動がほとんどないため、GBMなどの脳のCNS腫瘍で技術的に実現可能であるはずである。超選択的送達には、吸収線量を正常な脳実質にさらに制限するという利点もある。Tomura, N. et al. Superselective angio-CT of brain tumors. AJNR Am J Neuroradiol 17, 1073-1080 (1996) を参照。
【0036】
バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド社から入手可能なTheraSphere(登録商標、呼称セラスフィア又はテラスフィア)は、イットリウム90(90Y)がガラスの不可欠な構成要素である不溶性ガラスミクロスフェアで構成されている。ガラスは、イットリウムを含むアルミノケイ酸塩ガラスであり、35~45%のY2O3、15~25%のAl2O3、及び35~45%のSiO2の混合物から得られ、より詳細には、約40%のY2O3、約20%のAl2O3、及び約40%のSiO2から得られる。ガラス中のイットリウムの少なくとも一部は、放射線への曝露によって90Yに変換されている。
【0037】
球の平均直径は20~30μmの範囲である。1ミリグラムごとに、22,000~73,000個のミクロスフェアが含まれている。TheraSphere(登録商標)は、透明なアクリル製バイアルシールド内に固定された1.0mLのV字底バイアルに収容された、0.6mLのパイロジェンフリーの滅菌水として供給される。TheraSphere(登録商標)は6つの用量サイズで利用可能である:3GBq(81mCi)、5GBq(135mCi)、7GBq(189mCi)、10GBq(270mCi)、15GBq(405mCi)、及び20GBq(540mCi)。カスタムの用量サイズも利用可能である。
【0038】
一実施形態では、より小さな用量サイズが使用されるか、または上記の用量サイズの一部が使用される。好適な実施形態において、投与は、上記の用量サイズのいずれかの5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%を使用し得る。より好適な実施形態において、投与は、上記の用量サイズのいずれかの5%、10%、15%、20%、25%、30%を使用する。最適な実施形態において、投与は、上記の用量サイズのいずれかの5%または10%を使用する。
【0039】
TheraSphere(登録商標)の貯蔵寿命は12日である。一実施形態では、キャリブレーション時の組成物の比放射能が参照される。一実施形態では、キャリブレーションの日は0日目と呼ばれ、キャリブレーション日の次の1日から7日は第1週と呼ばれ、8日から12日は第2週と呼ばれる。一実施形態では、キャリブレーションは、時間ゼロでの0日目を指す。一実施形態では、0日目における時間ゼロは、米国東部標準時の正午である。
【0040】
好適な実施形態では、好適な治療ウィンドウは、第1週の水曜日(第1の水曜日とも呼ばれる)から第2の火曜日(第2週の火曜日と呼ばれることもある)までである。より好適な実施形態では、好適な治療ウィンドウは、第1の木曜日から第1の金曜日までである。
【0041】
事前に組み立てられた使い捨てのTheraSphere(登録商標)投与セットが各用量に提供される。TheraSphere(登録商標)投与アクセサリキットは、新しいユーザーサイトに提供される。キットには、アクリルボックスベース、トップシールド、取り外し可能なサイドシールド、バッグフック、RADOS RAD-60R 放射線量計(または同等品)などの再利用可能なアクセサリが含まれる。
【0042】
純粋なエミッターであるイットリウム90は、64.1時間(2.67日)の物理的半減期で安定したジルコニウム90に崩壊する。イットリウム90からのβ放射の平均エネルギーは0.9367MeVである。腫瘍組織におけるイットリウム90ガラスミクロスフェアの塞栓形成に続いて、放出されたβ線は治療効果を提供する。本開示の方法で使用するための他の放射性核種含有材料と同様に、TheraSphere(登録商標)が一旦投与されると、それは時間内にその放射能を失い、再利用することができない。
【0043】
ミクロスフェアは、腫瘍に血液を供給する動脈に配置されたカテーテルを介して、ターゲットに送られます。細動脈の毛細血管遮断のために血管系を通過することができないミクロスフェアは、腫瘍に閉じ込められ、局所的な放射線治療効果を発揮し、同時に周囲の正常組織にいくらかの損傷を与える。Campbell, A. M., Bailey, I. H. & Burton, M. A. Tumour dosimetry in human liver following hepatic yttrium-90 microsphere therapy. Phys Med Biol 46, 487-498 (2001) を参照。
【0044】
TheraSphere(登録商標)は、適切に配置された肝動脈カテーテルを配置できる切除不能な肝細胞癌(HCC)患者の放射線治療、または手術や移植の術前補助療法として適応される。
【0045】
別のβ線放出物質には、SIR-spheres(登録商標)、90Y放射性核種を含むイオン交換樹脂ビーズが含まれる。これらのビーズの直径は20~60μmで、サーテックス・メディカル社から入手できる。本開示で使用するために、SIR-spheresを想定することができる。一実施形態では、SIR-spheresは、それらの使用中に発揮される治療効果を高めるために、それらの比活性を高めるように改変されるであろう。好適な実施形態では、比放射能のこの増加は、樹脂への90Yの充填を増加させることによって達成することができる。
【0046】
さらなるβ線放出物質は131Iヨウ素化リピオドールであり、その使用は欧州核医学協会のモノグラフによって説明されており、リピオドールはゲルベグループから入手可能である。
【0047】
その最も広い態様では、本開示の方法は、CNS腫瘍に供給する血管系に選択的にβ放射線放出物質を投与することを含む。特に、この方法は、生理食塩水または滅菌水などの水性担体中の、例えば液体、ポリマーまたはガラスからなり、β放射線放出粒子を含んだ注射可能な医薬組成物を投与する。一実施形態では、担体は任意の注射可能な媒体である。一実施形態では、担体は、水中の5%デキストロースであるか、またはそれを含む。一実施形態では、担体はエタノールであるか、またはエタノールを含む。一実施形態では、担体は、ヨウ素化された造影剤であるか、またはそれを含む。
【0048】
より好適には、この方法は、脳のCNS腫瘍へと供給する血管系に上記の組成物を投与する。ベータ放射線放出粒子は、理論的には、3H、14C、32P、59Fe、47Caなどの放射性核種と同様に、他の放射線も生成する可能性があるが、本発明者らは、89Sr、166Ho、153Sm、177Lu7、169Er、及び90Y、最適には、90Yを含む粒子が最も適切な治療を提供することを想定している。
【0049】
ガラスまたはポリマー中に90Y放射性核種を含む組成物が好適であり、最適にはガラス粒子として、より好適には平均直径が1~100μmである。より好適には、粒子は、平均直径が10~50μmであり、より好適には、平均直径が15~35μm、例えば20~30μmであるべきである。
【0050】
これらの粒子は、最適には、そして便利に水性懸濁液、例えば、滅菌水または生理食塩水中の懸濁液として供給される。
粒子の投与は、好適には、ステロイドから始められ、例えば4mg/kg(IV又はPO)のプレドニゾン投与が最初に行われ、続いて例えば、1日2mg/kgのPOが脳動脈の放射線塞栓術の日に開始され、その後2~4mg/kgで臨床医が中止しても安全であると感じるまで用量を徐々に変えながら継続され得る(治療後のMRIに基づく)。
【0051】
本開示の方法は、特に、中枢神経系の癌、例えば腫瘍に供給する脳動脈にカテーテルを配備する。腫瘍が大脳半球のうちの1つにあるか、このサブゾーンに局在している場合、カテーテルは腫瘍に供給する大脳動脈の特定の枝に留置されることがより好適である。
【0052】
好適な実施形態では、本開示の方法は、橈骨動脈を通してカテーテルを配備する。
典型的には、ガイドカテーテルはワイヤー上で進められ、例えば、大腿動脈を介して大動脈に挿入され、そして蛍光透視法を使用するなどして頸動脈に進められる。
【0053】
好適には、造影剤を用いた血管造影評価、例えば、ヨウ素化造影剤が配備され、主に腫瘍に血液を供給する脳動脈枝が特定され、その方法でアクセスされる。
カテーテルは、好適にはマイクロカテーテルであり、適切なマイクロカテーテルの一例は、Stryker、Excersior SL-10 1.7F(直径0.6mm)によって提供される。好適なカテーテルは、β線放射性核種含有組成物の投与中に血管系を隔離するためにバルーンを使用しない。いくつかの状況では、バルーンカテーテルに付随するようなバルーンが、臨床医によって好まれる場合がある。しかしながら、本発明者らは、組成物を含む適切なサイズの粒子を使用すれば、これは必要ないと考えている。
【0054】
好適には、マイクロカテーテルは、血管に物理的損傷を引き起こすことなく、腫瘍の可能な限り近くまで前進させる。これにより、β線組成物の配置を可能な限り選択的にすることができ、例えば好適には、主に局在化を提供し、そして好適には、正常な脳実質の限定された灌流を伴う腫瘍にいくらかの塞栓形成を提供する。抗血管痙攣薬は、好適には、例えば、ニトロプルシド(100mcg)が選択的動脈カテーテル挿入中の血管痙攣を防ぐために動脈内に注射によって投与される。
【0055】
一実施形態では、治療の前に、治療前のMRIをレビューして、腫瘍の体積を決定することが好適である。研究物理学者は、30~200Gy、好適には50~200Gy、より好適には80~180Gy、最適には100~150Gyの予想される好適な腫瘍吸収線量で治療計画を実行する。この治療用量は、マイクロカテーテルを介して腫瘍に注入される。ミクロスフェアの注入が完了した後、ワイヤー、カテーテル、及びシースが取り外される。閉鎖のために、止血が達成されるか、閉鎖装置が利用されるまで、手動の圧力が保持される。
【0056】
一実施形態では、標的治療量は、投与によって灌流される領域であるものと理解される。一実施形態では、この標的治療量は、腫瘍組織と正常組織の両方を含む。一実施形態では、医療者は、標的治療量を決定するためにコントラスト増強を備えた、解剖学的画像化及び/又は処置内のコーンビームコンピュータ断層撮影(CBCT)を使用することができる。
【0057】
一実施形態では、研究物理学者は、10~1000Gy、好適には50~200Gy、より好適には80~180Gy、最適には100~150Gyの予想される治療体積線量で治療計画を実行する。当業者が理解するように、腫瘍吸収線量は、通常の組織吸収線量よりも高いと予想される。理論に縛られるものではないが、これは腫瘍の血管過多が原因である可能性がある。
【0058】
一実施形態では、グレイ(Gy)で示す所望の線量は、TheraSphere(商標)iDOC(商標)のソフトウェアと同様のソフトウェアを使用して、治療ウィンドウイラストレーターを使用して、またはMIRDスキーマを使用して、標的体積に基づいて計算することができる。一実施形態では、グレイ(Gy)で示す所望の線量は、TheraSphere(商標)iDOC(商標)のソフトウェアと同様のソフトウェアを使用して、治療ウィンドウイラストレーターを使用して、またはMIRDスキーマを使用して、標的治療量に基づいて計算することができる。
【0059】
一実施形態では、グレイ(Gy)で示す所望の吸収線量は、MIRDスキーマを使用して、標的治療量に基づいて計算することができる。一実施形態では、グレイ(Gy)で示す所望の吸収線量は、TheraSphere(商標)iDOC(商標)または治療ウィンドウイラストレーターのソフトウェアと同様のソフトウェアを使用して、標的治療量に基づいて計算することができる。
【0060】
一実施形態では、ベクレル(Bq)又はギガベクレル(GBq)で示す所望の絶対活性は、MIRDスキーマを使用して、標的治療量に基づいて計算することができる。一実施形態では、所望の絶対活性(Bq又はGBq)は、TheraSphereiDOC(商標)または治療ウィンドウイラストレーターのソフトウェアと同様のソフトウェアを使用して、標的治療量に基づいて計算することができる。閉鎖及び止血が達成された後、被験者は、好適には、スキャンのためにPET/CTに移送される。麻酔は、例えばプロポフォールのIVボーラスに維持される。PET-CTスキャンは、人工呼吸器を使用しながらイソフルランの全身麻酔下で実行される。PET/CTは、投与された粒子からの放射線放出を検出し、放射性物質の追加注入は必要ない。一実施形態では、スキャンは、麻酔なしで実行することができる。
【0061】
PET/CTの後、嚥下反射が戻ったときに被験者は抜管される。潜在的な術後の痛みは、例えば、鎮痛剤の皮下/筋肉注射、例えばブプレノルフィン(0.005~0.02mg/kg q 8~12時間)注射によって管理する。被験者は、放射線安全性調査の後、目覚めて、正常体温のときに帰宅することを許可される場合がある。治療と画像化の後、被験者は同日に退院することができる。臨床医は、フォローアップのために行動の変化または発作の兆候を探す必要があり、これらの問題の重症度に応じて、被験者の行動、発作の存在、脳神経欠損、及び身体的外観に基づいてヘルニアの可能性について臨床的決定が行われ、そして調査者は、脳内圧を低下させるための治療を推奨し得る。
【0062】
被験者は通常、炎症、浮腫、及びその他の神経学的変化の兆候を評価するために、麻酔下で治療後のMRI画像化を、好適には治療後1週間以内、週に1回以下で受ける。鎮静及び麻酔は、上記の脳動脈の放射線塞栓術について説明したものと同様になる。一実施形態では、画像化は、麻酔なしで実行することができる。
【0063】
(実施例)
本開示は、以下の非限定的な例示的な例を参照することによって説明される。これらに照らして、当業者にはさらなる実施例が生じるであろう。
【0064】
実験的根拠:
ヒトの脳腫瘍の特徴を表す多形性神経膠芽腫(GMB)に適した大型の研究動物モデルはない。これらの腫瘍は人間に自然発生するが、いくつかの犬種にもよく見られる。GBMを含む自然発生の高悪性度軸性脳腫瘍を伴うイヌの癌モデルは、臨床的にヒトの癌との関連性が高く、偽麻痺性壊死、血管新生、内皮増殖、炎症性細胞浸潤などの典型的な組織病理学的特徴を示す。10. Schiffman JD, Breen M: Comparative oncology: what dogs and other species can teach us about humans with cancer. Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci 2015, 370 を参照。
【0065】
有利なことに、自発的に発生する腫瘍を有した、飼育されている動物の使用は、潜在的に飼育されている動物に利益をもたらす一方で、研究動物の使用を最小限にできる。
ジョンズホプキンス医学の画像誘導動物療法センターでの標準治療に従って、動物を研究に登録する前に疾患の評価を行った。評価には、(i)獣医神経学的検査、(ii)血液検査(CBC、化学パネル)、及びコントラストを用いるMRIが含まれていた。
【0066】
この研究への参加は、MRIのレビューと90Y療法に適した腫瘍の特徴の特定に依存していた。このような特徴には、主に1つの血管領域から灌流された腫瘍が含まれ、両半球の関与はなかった。
【0067】
研究用のイヌは安全性のコントロールとして採用され、片方の半球の自然発生的なイヌの神経膠腫をクリニックに提示している、飼育中のイヌは、積極的な治療群にのみ使用された。
【0068】
結果:
研究用イヌの治療は、正常な脳に有意の吸収線量が与えられて良好に進んだ。全体として、研究用のイヌは治療によく耐えた。
【0069】
2つの神経膠腫の症例は、本件特許出願日には治療が完了し、両方の経験は、手順の画像化の印象に関して類似していた。腫瘍を含む脳の半分(右/左)を覆うことを目的として、頸動脈から腫瘍を治療した。一部の灌流は正中線を横切るため、半分強になる。血管造影図は目立たなかった。腫瘍の血管過多または赤面が見られると予想したが、腫瘍を簡単に特定することはできなかった。90Y後のPETは、腫瘍を取り巻く脳のT2高信号(フレア画像)領域と腫瘍自体で良好な取り込みを示した。血管造影図に基づいて、脳のこの腫瘍領域にこれほど多くの局在化を達成したことは驚くべきことだった。
【0070】
次の例では、TheraSphere(登録商標)は日曜日の正午(米国東部標準時)に調整され、この日はゼロ日とする。次の例では、TheraSphere(登録商標)は、キャリブレーション時に0.11GBq(±10%)の比放射能を持つようにキャリブレーションされた。
【0071】
第1の被験イヌは、第2週の木曜日に90Y TheraSphere(登録商標)(少量の放射線-出産後2週間)で治療され、治療後に一過性脳虚血発作を経験した。第2のイヌは、第1週の金曜日の投与量で、約2倍高い活性と約2倍少ないミクロスフェアで治療された。より高い活性を有し、かつより少ない数のビーズを有するイヌは、治療後に顕著な一過性脳虚血発作を経なかった。より高い比放射能ミクロスフェアは、脳内の塞栓/虚血効果を制限する可能性がある。この点で、脳血管系の塞栓形成は、一過性脳虚血発作または脳卒中を引き起こす可能性があるため、一般に否定的であると見なされる。塞栓形成の悪影響のリスクは、治療レベルの放射線を照射しながら、より小さく、より少ないミクロスフェアを使用することによって軽減する必要がある。これは、小さくて高い比放射能(グラムあたりの活性)ミクロスフェアを使用することによって達成できる。
【0072】
90Y後のPETまでに、第1のイヌの腫瘍線量は35Gyで、正常組織は18.6Gyであった。PETの空間分解能の制約により、腫瘍の線量が高くなる可能性がある。第2のイヌの腫瘍線量は115Gyで、正常組織は23.5Gyであった。イヌ2による腫瘍と正常組織のこの分離は優れており、外部ビーム放射線で通常達成できるよりもはるかに優れている可能性がある。外部ビームの目標腫瘍線量は約60Gyである。ベータ線の短い浸透と、比較的大きな、腫瘍対正常の比率は、正常組織が高吸収線量となることを免れるはずである。イヌ1は、治療後約1か月で完全な反応を示した。イヌ2は11日間症状を示していない。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CNS腫瘍の治療を必要とする患者を治療する方法において、β線放出組成物を脳血管系に選択的に投与する工程を備える、方法。
【外国語明細書】