IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッドの特許一覧

特開2023-145485組換えグリコシル化エクリズマブおよびエクリズマブ変異体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145485
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】組換えグリコシル化エクリズマブおよびエクリズマブ変異体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20231003BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231003BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231003BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231003BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20231003BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12N5/10
C12P21/08
C12Q1/02
A61K39/395 N
A61P3/08
A61P5/14
A61P7/00
A61P9/10
A61P11/00
A61P13/00
A61P17/06
A61P19/02
A61P21/04
A61P25/00
A61P25/02
A61P27/02
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P31/04
A61P37/06
C12N15/63 Z
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023111818
(22)【出願日】2023-07-07
(62)【分割の表示】P 2021121165の分割
【原出願日】2016-09-09
(31)【優先権主張番号】62/217,177
(32)【優先日】2015-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドリアン、ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ハンター、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】マランソン、ハンター
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特異的グリコシル化パターンを有する組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質を提供する。
【解決手段】組換えエクリズマブタンパク質もしくは組換えエクリズマブ変異体タンパク質であって、0.1mmol/mol未満のN-グリコリルノイラミン酸(NGNA)、0.02nmol/mgタンパク質未満のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、または、全グリカンの約99%超である中性グリカンの割合、の構造的特徴のうちの1つ以上を有する、組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1mmol/mol未満のN-グリコリルノイラミン酸(NGNA)、
0.02nmol/mgタンパク質未満のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、
または
全グリカンの約99%超である中性グリカンの割合、
の構造的特徴のうちの1つ以上を有する、組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質。
【請求項2】
前記タンパク質は、
検出可能なN-グリコリルノイラミン酸(NGNA)を含まないこと、
検出可能なN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を含まないこと、
または
全グリカンの約99%超である中性グリカンの割合、
の構造的特徴のうちの1つ以上を有する、請求項1に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質。
【請求項3】
チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞でエクリズマブタンパク質またはエクリズマブ変異体タンパク質を発現させることが可能な発現ベクターを担持する前記CHO細胞で産生される、組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質。
【請求項4】
前記発現ベクターは、前記CHO細胞で前記エクリズマブタンパク質または前記エクリズマブ変異体タンパク質を発現させるために誘導的である、請求項3に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質。
【請求項5】
前記発現ベクターは、前記CHO細胞で前記エクリズマブタンパク質または前記エクリズマブ変異体タンパク質を発現させるために構成的である、請求項3に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質。
【請求項6】
0.1mmol/mol未満のグリコリルノイラミン酸(NGNA)、
0.02nmol/mgタンパク質未満のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、
または
全グリカンの約99%超である中性グリカンの割合、
の構造的特徴のうちの1つ以上を有する、請求項3~5のいずれか一項に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質。
【請求項7】
前記タンパク質は、
検出可能なN-グリコリルノイラミン酸(NGNA)を含まないこと、
検出可能なN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を含まないこと、
または
全グリカンの約99%超である中性グリカンの割合、
の構造的特徴のうちの1つ以上を有する、請求項3~6のいずれか一項に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質。
【請求項8】
前記CHO細胞は、いずれの動物由来原料も含まない組織培養培地で培養される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質。
【請求項9】
チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞でエクリズマブタンパク質またはエクリズマブ変異体タンパク質を発現させることが可能な発現ベクターを担持する、前記CHO細胞。
【請求項10】
前記発現ベクターは、前記CHO細胞で前記エクリズマブタンパク質または前記エクリズマブ変異体タンパク質を発現させるために誘導的である、請求項9に記載のCHO細胞。
【請求項11】
前記発現ベクターは、前記CHO細胞で前記エクリズマブタンパク質または前記エクリズマブ変異体タンパク質を発現させるために構成的である、請求項9に記載のCHO細胞。
【請求項12】
前記CHO細胞は、いずれの動物由来原料も含まない組織培養培地で培養される、請求項9~11のいずれか一項に記載のCHO細胞。
【請求項13】
請求項1または請求項3に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項14】
前記組成物は、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、または腹腔内投与のために製剤化される、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記組換えエクリズマブタンパク質または前記組換えエクリズマブ変異体タンパク質の濃度は、少なくとも10mg/mLであるが、100mg/mL以下である、13~14のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
生体試料における末端補体の形成を阻害するための方法であって、前記方法は、生体試料を前記生体試料中で末端補体を阻害するのに効果的な量の治療薬と接触させることを含み、前記生体試料は、前記治療薬の非存在下で末端補体の産生が可能であり、前記治療薬は、請求項1または請求項3に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質である、方法。
【請求項17】
エクリズマブまたはエクリズマブ変異体を用いた治療を必要とする患者を治療する方法であって、前記患者に請求項1または請求項3に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質を投与することを含む、方法。
【請求項18】
前記患者は、補体関連疾患であると診断されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記患者は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(「PNH」)、非典型溶血性尿毒症症候群(「aHUS」)、または志賀毒素産生大腸菌による溶血性尿毒症症候群(「STEC-HUS」)であると診断されたことがある、請求項17または請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記補体関連疾患は、加齢黄斑変性、移植片拒絶、骨髄拒絶、腎移植片拒絶、皮膚移植片拒絶、心臓移植片拒絶、肺移植片拒絶、肝移植片拒絶、関節リウマチ、肺疾患、虚血再灌流障害、非典型溶血性尿毒症症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、発作性夜間ヘモグロビン尿症、デンスデポジット病、加齢黄斑変性、自然胎児消失、微量免疫型血管炎、表皮水疱症、再発性胎児消失、多発性硬化症、外傷性脳損傷、重症筋無力症、寒冷凝集素症、皮膚筋炎、デゴス病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、乾癬、天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、多巣性運動ニューロパチー、視神経脊髄炎、抗リン脂質抗体症候群、敗血症、出血熱、および難治性抗リン脂質抗体症候群からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の組込み
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含有する。該ASCIIコピーは、2016年9月6日に作成され、ALXN305PCT_SL.txtという名称であり、16,120バイトの大きさである。
【0002】
本出願は、免疫学およびバイオテクノロジーの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
エクリズマブは、炎症促進性応答を誘発する可能性を低減するように、ヒトIgG2/IgG4ハイブリッド定常領域を有するヒト化抗ヒトC5モノクローナル抗体(Alexion Pharmaceuticals,Inc.)である。エクリズマブは、Soliris(登録商標)という商品名を有し、現在、発作性夜間ヘモグロビン尿症(「PNH」)および非典型溶血性尿毒症症候群(「aHUS」)を治療するために承認されている。また、エクリズマブは、志賀毒素産生大腸菌による溶血性尿毒症症候群(「STEC-HUS」)に罹患する患者に有効であることが最近の治験で示されている。2012年11月3日土曜日のAlexion社の報道発表「New Clinical Trial Data Show Substantial Improvement with Eculizumab (Soliris(登録商標))in Patients with STEC-HUS」を参照されたい。
【0004】
Soliris(登録商標)は、ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する培地でマウス骨髄腫細胞株であるNS0細胞から作製される組換えタンパク質である。NS0細胞から作製される組換えエクリズマブは、タンパク質の機能に影響を及ぼし得る特異的グリコシル化パターンを有する。現在のプロセスは、動物性材料(ウシ血清アルブミン、またはBSA)を含有する培地とともに10,000および20,000Lの撹拌タンクバイオリアクターを使用する。ロットごとの変動性も見られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、0.1mmol/mol未満のグリコリルノイラミン酸(NGNA)、0.02nmol/mgタンパク質未満のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、または全グリカンの約99%超である中性グリカンの割合、の構造的特徴のうちの1つ以上を有する組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質を提供する。
【0006】
別の態様において、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞が提供される:この細胞は、そのCHO細胞でエクリズマブタンパク質またはエクリズマブ変異体タンパク質を発現させることが可能な(または発現させる)発現ベクターを担持する。
【0007】
別の態様において、組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質が提供される:組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質は、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞でエクリズマブタンパク質またはエクリズマブ変異体タンパク質を発現させることが可能な(または発現させる)発現ベクターを担持するCHO細胞で産生される。
【0008】
別の態様において、生体試料における末端補体の形成を阻害する方法が提供され、該方法は、生体試料を生体試料中で末端補体を阻害するのに効果的な量の治療薬と接触させることを含み、生体試料は、治療薬の非存在下で末端補体の産生が可能であり、治療薬は、本明細書に開示される組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質である。
【0009】
別の態様において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体を用いた治療を必要とする患者を治療する方法であって、前記患者に本明細書に開示される組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質を投与することを含む方法が提供される。
【0010】
本開示のこれらおよび他の態様に従って多数の他の態様が提供される。本開示の他の特徴および態様は、詳細な説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
本明細書で使用される場合、名詞の前の「1つの(a)」または「複数の(plurality)」という語は、1つ以上の特定の名詞を表す。例えば、「1つの哺乳動物細胞(a mammalian cell)」という表現は、「1つ以上の哺乳動物細胞」を表す。
【0012】
用語「例えば」および「等」、ならびにそれらの文法的均等物には、明示的にそうではないという記載のない限り、「限定されない」という表現が続くものと理解されたい。本明細書で使用される場合、用語「約」は、実験誤差に起因する変動を考慮することが意図される。本明細書において報告される全ての測定値は、明示的にそうではないという記載のない限り、該用語が明示的に使用されているか否かにかかわらず、用語「約」によって修飾されるものと理解されたい。
【0013】
用語「組換えタンパク質」は、当該技術分野で既知である。組換えタンパク質は、糖タンパク質であり得る。例えば、CHO細胞で作製されるエクリズマブまたは組換えエクリズマブ変異体は、グリコシル化され、糖部分が共有結合によりタンパク質上に付着しており、糖タンパク質である。端的に述べると、用語「組換えタンパク質」は、細胞培養システムを使用して製造され得るタンパク質を指すことができる。細胞培養システム内の細胞は、例えば、ヒト細胞を含む哺乳動物細胞、CHO細胞、昆虫細胞、酵母細胞、または細菌細胞に由来し得る。一般に、細胞培養中の細胞は、対象とする組換えタンパク質をコードする導入された核酸を含有する(核酸は、プラスミドベクター等のベクター上に担持され得る)。また、組換えタンパク質をコードする核酸は、タンパク質をコードする核酸に作動可能に連結された異種プロモーターも含有し得る。
【0014】
用語「哺乳動物細胞」は、当該技術分野で既知であり、例えば、ヒト、ハムスター、マウス、ミドリザル、ラット、ブタ、ウシ、ハムスター、またはウサギを含む任意の哺乳動物からのまたはそれらに由来する任意の細胞を指すことができる。哺乳動物細胞は、不死化細胞、分化細胞、または未分化細胞であり得る。
【0015】
用語「液体培養培地」は、当該技術分野で既知である。端的に述べると、これは、哺乳動物細胞をin vitroで成長または増殖させるのに十分な栄養素を含む流体を意味する。例えば、液体培養培地は、以下の1つ以上を含むことができる:アミノ酸(例えば、20個のアミノ酸)、プリン(例えば、ヒポキサンチン)、ピリミジン(例えば、チミジン)、コリン、イノシトール、チアミン、葉酸、ビオチン、カルシウム、ナイアシンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チミジン、シアノコバラミン、ピルベート、リポ酸、マグネシウム、グルコース、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、および重炭酸ナトリウム。いくつかの実施形態において、液体培養培地は、哺乳動物からの血清を含むことができる。いくつかの実施形態において、液体培養培地は、哺乳動物からの血清または別の抽出物を含まない(定義された液体培養培地)。いくつかの実施形態において、液体培養培地は、微量金属、哺乳類成長ホルモン、および/または哺乳類成長因子を含むことができる。液体培養培地の別の例として、最少培地(例えば、無機塩、炭素源、および水のみを含む培地)が挙げられる。液体培養培地の例は当該技術分野で既知であり、市販されている。液体培養培地は、任意の密度の哺乳動物細胞を含んでもよい。例えば、バイオリアクターから除去されるある体積の液体培養培地は、哺乳動物細胞を実質的に含まなくてもよい。
【0016】
用語「無血清液体培養培地」は、当該技術分野で既知である。端的に述べると、これは、哺乳動物の血清を含まない液体培養培地を意味する。
【0017】
用語「血清含有液体培養培地」は、当該技術分野で既知である。端的に述べると、これは、哺乳動物の血清(BSA等)を含む液体培養培地を意味する。
【0018】
用語「化学的に定義された液体培養培地」は、専門用語であり、化学成分の全てが既知である液体培養培地を意味する。例えば、化学的に定義された液体培養培地は、ウシ胎仔血清、ウシ血清アルブミン、または血清アルブミンを含まないが、それは、これらの調製物が典型的にアルブミンと脂質との複雑な混合物を含むためである。
【0019】
用語「無タンパク質液体培養培地」は、当該技術分野で既知であり、いずれのタンパク質も(例えば、いずれの検出可能なタンパク質も)含まない液体培養培地を意味する。
【0020】
用語「連続プロセス」は、当該技術分野で既知であり、組換えタンパク質(例えば、本明細書に記載される組換えタンパク質のいずれか)を含有する培養培地から原薬(例えば、組換えタンパク質を含有する原薬)を生成するためのシステムの少なくとも一部を通して連続的に流体を供給するプロセスを意味する。例えば、組換え治療タンパク質(例えば、組換えヒトα-ガラクトシダーゼ-Aタンパク質)を含む液体培養培地は、システムが作動している間は連続的にシステムに供給され、治療タンパク質原薬は、システムから送出される。連続プロセスを行うために使用することができるそのようなシステムの非限定的な例は、米国仮特許出願第61/856,930号および同第61/775,060号に記載されている。
【0021】
用語「灌流培養」は、当該技術分野で既知であり、第1の液体培養培地において複数の細胞(例えば、哺乳動物細胞)を培養することを意味し、培養は、第1の液体培養培地を定期的または連続的に除去し、同時にまたはその直後に、実質的に同じ体積の第2の液体培養培地を容器(例えば、バイオリアクター)に添加することを含む。いくつかの例において、培養期間中の増分期間(例えば、約24時間の期間、約1分~約24時間の期間、または24時間を超える期間)にわたって除去または添加される第1の液体培養培地の体積(例えば、1日の培養培地再供給速度)に増分変化(例えば、増加または減少)が見られる。毎日除去され、置き換えられる培地の割合は、培養される特定の細胞、初期播種密度、および特定の時点における細胞密度に応じて変化し得る。「RV」または「リアクター体積」は、培養プロセスの初期に存在する培養培地の体積(例えば、播種後に存在する培養培地の全体積)を意味する。灌流培養を行うために使用することができるバイオリアクターは、当該技術分野で既知である。当業者は、バイオリアクターを灌流培養において使用するように適合させる(例えば、灌流バイオリアクターとして適合させる)ことができることを理解するであろう。
【0022】
用語「フェドバッチ培養」は、専門用語であり、第1の液体培養培地において複数の細胞(例えば、哺乳動物細胞)を培養することを意味し、容器(例えば、バイオリアクター)内に存在する細胞の培養は、細胞培養から第1の液体培養培地または第2の液体培養培地を実質的にまたは有意に除去することなく、第1の液体培養培地に第2の液体培養培地が定期的または連続的に添加されることを含む。第2の液体培養培地は、第1の液体培養培地と同じであってもよい。フェドバッチ培養のいくつかの例において、第2の液体培養培地は、第1の液体培養培地の濃縮された形態である。フェドバッチ培養のいくつかの例において、第2の液体培養培地は、乾燥粉末として添加される。当業者は、バイオリアクターをフェドバッチ培養において使用するように適合させる(例えば、フェドバッチバイオリアクターとして適合させる)ことができることを理解するであろう。
【0023】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。方法および材料は、本発明における使用のために本明細書に記載されるが、当該技術分野で既知の他の好適な方法および材料もまた使用され得る。材料、方法、および例は、説明的であるに過ぎず、限定的であることを意図するものではない。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、および他の参考文献は、参照によりそれら全体が組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含めて本明細書が優先する。
【0024】
特定の態様において、組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質が提供される。タンパク質は、0.1mmol/mol未満のグリコリルノイラミン酸(NGNA)、0.02nmol/mgタンパク質未満のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、または全グリカンの約99%超である中性グリカンの割合、の構造的特徴のうちの1つ以上を有する。特定の実施形態において、タンパク質は、検出可能なN-グリコリルノイラミン酸(NGNA)を含まないこと、検出可能なN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を含まないこと、または全グリカンの約99%超である中性グリカンの割合、の構造的特徴のうちの1つ以上を有する。
【0025】
他の態様において、組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質が提供される:該タンパク質は、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞でエクリズマブタンパク質またはエクリズマブ変異体タンパク質を発現させることが可能な(または発現させる)発現ベクターを担持する前記CHO細胞で産生される。発現ベクターは、CHO細胞でエクリズマブタンパク質またはエクリズマブ変異体タンパク質を発現させるために構成的または誘導的のいずれかであり得る。特定の実施形態において、組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質は、0.1mmol/mol未満のグリコリルノイラミン酸(NGNA)、または全グリカンの約99%超である中性グリカンの割合、の構造的特徴のうちの一方または両方を有する。
【0026】
他の態様において、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞が提供され、該細胞は、前記CHO細胞でエクリズマブタンパク質またはエクリズマブ変異体タンパク質を発現させることが可能な(または発現させる)発現ベクターを担持する。発現ベクターは、CHO細胞でエクリズマブタンパク質またはエクリズマブ変異体タンパク質を発現させるために構成的または誘導的のいずれかであり得る。
【0027】
他の態様において、薬学的組成物が提供され、該組成物は、本明細書に開示される組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む。薬学的組成物は、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、または腹腔内投与のために製剤化され得る。特定の実施形態において、薬学的組成物は、少なくとも10mg/mLであるが、100mg/mL以下である組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質を含む。特定の実施形態において、薬学的組成物は、100mg/mLを超える組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質を含む。
【0028】
さらに他の態様において、生体試料における末端補体の形成を阻害するための方法が提供され、該方法は、生体試料を生体試料中で末端補体を阻害するのに効果的な量の治療薬と接触させることを含み、生体試料は、治療薬の非存在下で末端補体の産生が可能であり、治療薬は、本明細書に開示される組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質である。
【0029】
エクリズマブまたはエクリズマブ変異体を用いた治療を必要とする患者を治療する方法であって、前記患者に本明細書に開示される組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質を投与することを含む方法。
【0030】
CHO細胞株は、当該技術分野で周知である。CHO細胞またはCHO細胞株への言及は、任意のCHO細胞またはCHO細胞株、およびCHO突然変異細胞、例えば、CHOグリコシル化突然変異を含む、CHO細胞の任意の誘導体を指す。例えば、Jayapal K.P.,Wlaschin K.F.,Yap M.G.S.,Hu W-S.,(2007),“Recombinant protein therapeutics from CHO cells - 20 years and counting.”Chem.Eng.Prog.103(10):40-47を参照されたく、またNorth et al.,J.Biol Chem Vol.285,No.8,pp.5759-5775,February 19,2010も参照されたい。
【0031】
CHO細胞は、任意の手段によって任意の培地で培養することができる。特定の実施形態において、CHO細胞は、液体培養培地で培養される。特定の実施形態において、CHO細胞は、例えばBSA等のいずれの動物由来原料も含まない液体培養培地で培養される。特定の実施形態において、CHO細胞は、化学的に定義された液体培養培地または無タンパク質液体培養培地で培養される。特定の実施形態において、CHO細胞は、連続プロセスによって培養される。特定の実施形態において、CHO細胞は、フェドバッチ培養によってまたは灌流培養によって培養される。CHO細胞は、単層培養および懸濁培養において培養され得る。
【0032】
エクリズマブおよびその変異体はヒト化抗ヒト-C5抗体であるのに対し、CHO細胞はハムスター細胞であるため、組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質は、CHO細胞によって通常産生されるタンパク質ではない。
【0033】
エクリズマブは、炎症促進性応答を誘発する可能性を低減するように、ヒトIgG2/IgG4ハイブリッド定常領域を有するヒト化抗ヒトC5モノクローナル抗体(Alexion Pharmaceuticals,Inc.)である。エクリズマブは、Soliris(登録商標)という商品名を有し、現在、発作性夜間ヘモグロビン尿症(「PNH」)および非典型溶血性尿毒症症候群(「aHUS」)を治療するために承認されている。発作性夜間ヘモグロビン尿症は、溶血性貧血の一形態であり、補体調節タンパク質CD59およびCD55が存在しないことに起因して血管内溶血が顕著な特徴である。CD59は、例えば、末端補体複合体の形成をブロックするように機能する。AHUSは、慢性的に制御されない補体活性化に関与し、特に、血栓性微小血管症の抑制、全身の小血管における血栓形成、および急性腎不全をもたらす。エクリズマブは、ヒトC5タンパク質に特異的に結合し、強力な炎症促進性タンパク質C5aの産生の形成をブロックする。エクリズマブは、末端補体複合体の形成をさらにブロックする。エクリズマブによる治療は、PNHに罹患する患者の血管内溶血を減少させ、aHUSにおける補体レベルを低下させる。例えば、Hillmen et al.,N Engl J Med 2004;350:552-9、Rother et al.,Nature Biotechnology 2007;25(11):1256-1264、Hillmen et al.,N Engl J Med 2006,355;12,1233-1243、Zuber et al.,Nature Reviews Nephrology 8,643-657(2012)|doi:10.1038/nrneph.2012.214、U.S.Patent Publication Number 2012/0237515、およびU.S.Patent Number6,355,245を参照されたい。また、エクリズマブは、志賀毒素産生大腸菌による溶血性尿毒症症候群(「STEC-HUS」)に罹患する患者に有効であることが最近の治験で示されている。2012年11月3日土曜日のAlexion社の報道発表「New Clinical Trial Data Show Substantial Improvement with Eculizumab (Soliris(登録商標)) in Patients with STEC-HUS」を参照されたい。STEC-HUSは、全身性の補体媒介性血栓性微小血管症および急性重要臓器障害によって特徴付けられる。これらの患者に対するエクリズマブの投与は、血栓性微小血管症の迅速かつ持続的な改善、および全身臓器の合併症の改善をもたらした。明らかであるように、PNH、aHUS、およびSTEC-HUSは全て、不適切な補体活性化に関連する疾患である。例えば、Noris et al.,Nat Rev Nephrol.2012 Nov;8(11):622-33.doi:10.1038/nrneph.2012.195.Epub 2012 Sep 18、Hillmen et al.,N Engl J Med 2004;350:6,552-9、Rother et al.,Nature Biotechnology 2007;25(11):1256-1264、Hillmen et al.,N Engl J Med 2006,355;12,1233-1243、Zuber et al.,Nature Reviews Nephrology 8,643-657(2012)|doi:10.1038/nrneph.2012.214を参照されたい。
【0034】
配列番号1は、エクリズマブの重鎖全体を示し、配列番号2は、エクリズマブの軽鎖全体を示し、配列番号5~7は、それぞれ、エクリズマブの重鎖のCDR1~3を示し、配列番号8~10は、それぞれ、エクリズマブの軽鎖のCDR1~3を示し、配列番号11は、エクリズマブの重鎖の可変領域を示し、配列番号12は、エクリズマブの軽鎖の可変領域を示す。
【0035】
特定の実施形態において、抗C5抗体は、エクリズマブに由来する変異体であり、エクリズマブと比較して1つ以上の改善された特性(例えば、改善された薬物動態特性)を有する。変異エクリズマブ抗体(エクリズマブ変異体、変異エクリズマブ等とも称される)またはそのC5結合断片は、(a)補体成分C5に結合し、(b)C5aの産生を阻害し、C5の断片C5aおよびC5bへの切断をさらに阻害することができる。変異エクリズマブ抗体は、10日を超える、または少なくとも10日(例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、または34日を超える、または少なくともそれらの日数である)のヒトにおける血清半減期を有することができる。そのような変異エクリズマブ抗体は、米国特許第9,079,949号に記載されている。例えば、組換えDNA技術によってエクリズマブ変異体を作製する方法は、当該技術分野で周知である。
【0036】
特定の実施形態において、エクリズマブ変異体抗体は、配列番号3(重鎖)および配列番号4(軽鎖)、またはその抗原結合断片に示される配列によって定義される抗体である。この抗体は、ヒトC5に結合して、C5aの形成を阻害するだけではなく、C5の断片C5aおよびC5bへの切断も阻害し、したがって末端補体複合体の形成を防止する。
【0037】
用語「エクリズマブ」および「エクリズマブ変異体」は、全抗体ではないC5結合ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、C5結合ポリペプチドは、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体の一本鎖抗体型である。
【0038】
用語「エクリズマブ」および「エクリズマブ変異体」は、配列番号1および配列番号2、または配列番号3および配列番号4、または上記のいずれかの抗原結合断片に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり得るC5結合ポリペプチドを含む:ポリペプチドは、配列番号5~11に示されるアミノ酸配列のうちの1つ以上を含むことができる。
【0039】
用語「エクリズマブ」および「エクリズマブ変異体」は、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体を含む融合タンパク質を含む。融合タンパク質は、融合タンパク質をコードする核酸から融合タンパク質が発現されるように遺伝子組み換えすることによって構築され得る。融合タンパク質は、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体とは異種である1つ以上のセグメントを含むことができる。異種配列は、任意の好適な配列、例えば、抗原性タグ(例えば、FLAG、ポリヒスチジン、赤血球凝集素(「HA」)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(「GST」)、またはマルトース結合タンパク質(「MBP」))等であり得る。異種配列はまた、診断用マーカーまたは検出可能マーカーとして有用なタンパク質、例えば、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(「GFP」)、またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(「CAT」)であり得る。いくつかの実施形態において、異種配列は、C5結合セグメントに、対象とする細胞、組織、または微小環境を標的とさせる標的化部分であり得る。いくつかの実施形態において、標的化部分は、C3bまたはC3dに結合するヒト補体受容体(例えば、ヒト補体受容体2)または抗体(例えば、一本鎖抗体)の可溶型である。いくつかの実施形態において、標的化部分は、腎特異的抗原等の組織特異的抗原に結合する抗体である。組換えDNA技術等によってそのような融合タンパク質を構築する方法は、当該技術分野で周知である。
【0040】
組換えDNA技術を含む、融合タンパク質(例えば、C5結合ポリペプチドおよびヒトCR1またはヒトCR2の可溶型を含有する融合タンパク質)を作製するための方法は当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許第6,897,290号、米国特許出願公開第2005/265995号、およびSong et al.(2003)J Clin Invest 11(12):1875-1885に記載されている。
【0041】
いくつかの実施形態において、用語「エクリズマブ」および「エクリズマブ変異体」は、二重特異性抗体であるC5結合ポリペプチドを含む。二重特異性抗体を産生させるための方法も当該技術分野で既知である。様々な二重特異性抗体の形態が抗体工学の分野で既知であり、二重特異性抗体を作製するための方法は、十分に当業者の認識範囲内である。例えば、Suresh et al.(1986)Methods in Enzymology 121:210、PCT公開番号WO96/27011号、Brennan et al.(1985)Science 229:81、Shalaby et al.,J. Exp.Med.(1992)175:217-225、Kostelny et al.(1992)J Immunol 148(5):1547-1553、Hollinger et al.(1993)Proc Natl Acad Sci USA 90:6444-6448、Gruber et al.(1994)J Immunol 152:5368、およびTutt et al.(1991)J Immunol 147:60を参照されたい。任意の他の抗体が、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体を含む二重特異性抗体の一部であり得る。C3b、C3d、または肺特異的抗原、眼特異的抗原、および腎特異的抗原に対する抗体は、その例のほんの一部である。
【0042】
二重特異性抗体はまた、架橋抗体またはヘテロコンジュゲート抗体も含む。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の都合のよい架橋方法を用いて作製されてもよい。好適な架橋方法は、当該技術分野で周知であり、多数の架橋技術とともに米国特許第4,676,980号に開示されている。米国特許第5,534,254号は、例えば、ペプチドカプラー、キレート化剤、または化学的もしくはジスルフィドカップリングによって一緒に連結された一本鎖Fv断片を含む、いくつかの異なる種類の二重特異性抗体について記載している。別の例において、Segal and Bast[(1995)Curr Protocols Immunol Suppl.14:2.13.1-2.13.16]が、2つの単一特異性抗体を化学的に架橋させることにより二重特異性抗体を形成する方法を記載している。
【0043】
二重特異性抗体は、リンカー(例えば、ポリペプチドリンカー)によって共有結合的に一緒に繋ぎ止められた2つの異なるscFv断片を含有するタンデム一本鎖(sc)Fv断片であり得る。例えば、Ren-Heidenreich et al.(2004)Cancer 100:1095-1103およびKorn et al.(2004)J Gene Med 6:642-651を参照されたい。
【0044】
いくつかの実施形態において、リンカーは、例えば、Grosse-Hovest et al.(2004)Proc Natl Acad Sci USA 101:6858-6863に記載されるように、CH1ドメイン等の重鎖ポリペプチド定常領域の全体または一部を含有することができるか、またはそれらであり得る。いくつかの実施形態において、2つの抗体断片は、例えば、米国特許第7,112,324号および同第5,525,491号にそれぞれ記載されるように、ポリグリシン-セリンリンカーまたはポリセリン-グリシンリンカーによって共有結合的に一緒に繋ぎ止めることができる。米国特許第5,258,498号も参照されたい二重特異性タンデムscFv抗体を産生させるための方法は、例えば、Maletz et al.(2001)Int J Cancer 93:409-416、Hayden et al.(1994)Ther Immunol 1:3-15、およびHonemann et al.(2004)Leukemia 18:636-644に記載されている。代替として、例えば、Zapata et al.(1995)Protein Eng.8(10):1057-1062に記載されているように、抗体は、「直鎖抗体」であってもよい。端的に述べると、これらの抗体は、抗原結合領域の一部を形成する一対のタンデムFdセグメント(V-C1-V-C1)を含む。
【0045】
二重特異性抗体はまた、二特異性抗体であってもよい。例えば、Hollinger et al.(1993)Proc Natl Acad Sci USA 90:6444-6448によって記載される二特異性抗体技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替の機構を提供している。断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(V)に接続された重鎖可変ドメイン(V)を含む。したがって、1つの断片のVおよびVドメインが、別の断片の相補的VおよびVドメインと強制的に対合させられ、それによって2つの抗原結合部位を形成する。Zhu et al.(1996)Biotechnology 14:192-196およびHelfrich et al.(1998)Int J Cancer 76:232-239も参照されたい。二重特異性一本鎖抗体(「scDb」)およびscDbを産生させるための方法は、例えば、

et al.(1999)Tumor Targeting 4:115-123、Kipriyanov et al.(1999)J Mol Biol 293:41-56、およびNettlebeck et al.(2001)Mol Ther 3:882-891に記載されている。
【0046】
Wu et al. 2007)Nat Biotechnol 25(11):1290-1297に記載されている四価の二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig)分子等の、二重特異性抗体の変異形態もまた企図される。DVD-Ig分子は、2つの異なる親抗体からの2つの異なる軽鎖可変ドメイン(V)が、組換えDNA技術によってタンデムで直接的に連結されるか、または短いリンカーを介して連結され、その後に軽鎖定常ドメインが続くように設計される。2つの親抗体からDVD-Ig分子を作製するための方法は、例えば、PCT公開WO08/024188号および同WO07/024715号にさらに記載されている。また、例えば、米国特許出願公開第2007/0004909号に記載されている二重特異性形態も包含される。使用され得る別の二重特異性形態は、WO2012/135345に記載されている4つのドメイン抗体様分子を遺伝子操作するための形態である交差二重可変領域(CODV-Ig)である。CODV-Igは、C末端可変ドメイン(内側)における立体障害がDVD-Igの構築を妨げる可能性がある場合、二重特異性抗体様分子を遺伝子操作する際に有用であることが示された。
【0047】
エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、補体成分C5を阻害する。具体的には、それらは、C5aアナフィラトキシンの産生、または補体成分C5タンパク質(例えば、ヒトC5タンパク質)のc5aおよびC5b活性断片の産生を阻害する。したがって、それらは、例えば、C5aの炎症促進性効果を阻害し、細胞の表面におけるC5b-9膜侵襲複合体(「MAC」)の産生、およびそれに続く細胞溶解を阻害する。例えば、Moongkarndi et al.(1982)Immunobiol 162:397およびMoongkarndi et al.(1983)Immunobiol 165:323を参照されたい。
【0048】
C5切断の阻害を測定するための好適な方法は、当該技術分野で既知である。例えば、体液中のC5aおよび/またはC5bの濃度および/または生理活性は、当該技術分野で周知の方法によって測定することができる。C5aの濃度または活性を測定するための方法は、例えば、化学走性アッセイ、RIA、またはELISAを含む(例えば、Ward and Zvaifler(1971)J Clin Invest 50(3):606-16およびWurzner et al.(1991)Complement Inflamm 8:328-340を参照されたい)。C5bには、溶血アッセイ、または当該技術分野で既知の溶解性C5b-9のためのアッセイを用いることができる。当該技術分野で既知の他のアッセイも用いられ得る。
【0049】
補体成分C5の阻害は、対象の体液中における補体の細胞溶解能を低下させることができる。存在する補体の細胞溶解能のそのような低下は、当該技術分野で周知の方法によって、例えば、Kabat and Mayer(eds),“Experimental Immunochemistry,2nd Edition,”135-240,Springfield,IL,CC Thomas(1961),pages135-139によって記載される溶血アッセイ等の従来の溶血アッセイによって、例えば、Hillmen et al.(2004)N Engl J Med 350(6):552に記載されるようなニワトリ赤血球溶血法等のアッセイの従来の変形例によって測定することができる。
【0050】
発現構築物を含む組換えCHO細胞を作製する方法は、当該技術分野で既知である。例えば、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体をコードする核酸は、例えば、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始および停止配列、翻訳開始および停止配列、転写ターミネーターシグナル、ポリアデニル化シグナル、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列を含む、転写および翻訳調節配列を含有する発現ベクターに挿入することができる。調節配列は、プロモーター、ならびに転写開始および停止配列を含む。さらに、発現ベクターは、2つの異なる生物中で、例えば、発現のために哺乳動物または昆虫細胞中で、またクローニングおよび増幅のために原核宿主中で維持され得るように、1つより多くの複製系を含むことができる。調節配列は、CHO細胞における組換えタンパク質の誘導的発現または構成的発現のいずれかを可能にすることができる。発現構築物は、次いで、当該技術分野で周知の方法、例えば、トランスフェクションおよび電気穿孔等によって、CHO細胞に挿入される。
【0051】
いくつかの可能性のあるベクター系(プラスミドベクター系等)は、当該技術分野で周知であり、CHO細胞で核酸からエクリズマブまたはエクリズマブ変異体を発現させるために利用可能である。
【0052】
発現ベクターは、それに続く核酸の発現に好適な様式で、当該技術分野で周知の方法によってCHO細胞に導入することができる。いくつかの実施形態において、ベクターおよび/または細胞は、当該技術分野で既知の方法(例えば、Schockett et al.(1996)Proc Natl Acad Sci USA 93:5173-5176および米国特許第7,056,897号を参照されたい)によって、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体の構成的、誘導的、または抑制的な発現のために構成され得る。
【0053】
エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、タンパク質の発現を可能にするのに十分な条件下および期間の間、ポリペプチドをコードする核酸を含有する発現ベクターで形質転換した宿主CHO細胞を培養することによって、CHO細胞から産生させることができる。そのような構成的または誘導的発現を含むタンパク質発現の条件は、発現ベクターおよび宿主細胞の選択によって変化し、日常的な実験を通して当業者によって容易に確認される。例えば、組換えDNA技術の包括的開示を有するCurrent Protocols in Molecular Biology,Wiley&Sons,and Molecular Cloning--A Laboratory Manual --3rd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(2001)を参照されたい。
【0054】
発現後、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、当業者に既知の様々な様式で単離または精製することができる。
【0055】
抗体が抗原に結合する(「特異的に結合する」を含む)かどうか、および/または抗原に対する抗体の親和性を決定するための方法は、当該技術分野で既知である。例えば、抗原に対する抗体の結合は、限定されないが、ウェスタンブロット、ドットブロット、表面プラズモン共鳴(SPR)法(例えば、BIAcore system;Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden and Piscataway,N.J.)、または酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)等の様々な技術を使用して検出および/または定量化することができる。例えば、Harlow and Lane(1988)“Antibodies:A Laboratory Manual”Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.、Benny K.C.Lo(2004)“Antibody Engineering:Methods and Protocols,”Humana Press(ISBN:1588290921)、Borrebaek(1992)“Antibody Engineering,A Practical Guide,”W.H.Freeman and Co.,NY、Borrebaek(1995)“Antibody Engineering,”2nd Edition,Oxford University Press,NY,Oxford、Johne et al.(1993)J Immunol Meth 160:191-198、Jonsson et al.(1993)Ann Biol Clin 51:19-26、およびJonsson et al.(1991)Biotechniques 11:620-627を参照されたい。
【0056】
エクリズマブまたはエクリズマブ変異体を作製、同定、精製、修飾等する方法は、当該技術分野で周知である。グリカン含有量およびシアル酸含有量を決定する方法もまた、当該技術分野で既知である。
【0057】
特定の実施形態において、典型的な治療的処置は、一連の用量を含み、それは通常、所望の臨床結果を得るために必要に応じて調整される投薬レベルを含む臨床エンドポイントの監視と同時に投与される。特定の実施形態において、少なくとも数時間または数日にわたって複数回の投薬で治療が行われる。特定の実施形態において、治療は、少なくとも1週間にわたって複数回の投薬で行われる。特定の実施形態において、治療は、少なくとも1ヶ月にわたって複数回の投薬で行われる。特定の実施形態において、治療は、少なくとも1年にわたって複数回の投薬で行われる。特定の実施形態において、治療は、患者の残りの生涯にわたって複数回の投薬で行われる。
【0058】
投与頻度も、種々のパラメータに応じて調整することができる。これらは、例えば、臨床応答、体液(例えば、血液、血漿、血清、または滑液)中のエクリズマブまたはエクリズマブ変異体の血漿半減期を含む。投与頻度の調整の指針とするために、治療過程の間、体液中のエクリズマブまたはエクリズマブ変異体のレベルを監視することができる。
【0059】
特定の実施形態において、投薬(複数可)および投与頻度は、担当医の裁量で、患者の必要性に応じて決定される。
【0060】
特定の実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体の治療有効量は、患者の生存の可能性を向上させる量(または複数回投与の場合は種々の量)を含むことができる。特定の実施形態において、開示される方法は、少なくとも1日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも18ヶ月、少なくとも2年、少なくとも30ヶ月、もしくは少なくとも3年、または治療期間を含む任意の期間だけ患者の余命を延長する。
【0061】
特定の実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体の治療有効量は、治療される状態または疾患の症状を改善する量(または複数回投与の場合は種々の量)を含むことができる。エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、補体関連疾患を治療または予防するように設計される。したがって、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、対象を苦しめている補体関連疾患を治療するのに十分な量で、それを必要とする対象(例えば、ヒト)に投与され得る。
【0062】
補体関連疾患は、例えば、補体関連炎症性疾患、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、加齢黄斑変性(AMD)、関節リウマチ(RA)、重症筋無力症(MG)、視神経脊髄炎(NMO)、難治性抗リン脂質抗体症候群(CAPS)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、ウイルス性出血熱(エボラ出血熱等)、または敗血症であり得る。いくつかの実施形態において、補体関連疾患は、補体関連肺疾患である。例えば、補体関連肺疾患は、例えば、喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)であり得る。外の補体関連疾患もまた、治療または予防に適している。
【0063】
エクリズマブまたはエクリズマブ変異体がC5切断を阻害するかどうかを決定するための方法は、当該技術分野で既知である。TCCの形成を阻害するために、ヒト補体成分C5の阻害により、対象の体液中における補体の細胞溶解能を低下させることができる。体液(複数可)に存在する補体の細胞溶解能のそのような低下は、当該技術分野で周知の方法によって、例えば、Kabat and Mayer(eds.),“Experimental Immunochemistry,2nd Edition,”135-240,Springfield,IL,CC Thomas(1961),pages135-139によって記載される溶血アッセイ等の従来の溶血アッセイによって、例えば、Hillmen et al.(2004)N Engl J Med 350(6):552に記載されるようなニワトリ赤血球溶血法等のアッセイの従来の変形例によって測定することができる。化合物がヒトC5のC5aおよびC5b形態への切断を阻害するかどうかを決定するための方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、Moongkarndi et al.(1982)Immunobiol 162:397、Moongkarndi et al.(1983)Immunobiol 165:323、Isenman et al.(1980)J Immunol 124(1):326-31、Thomas et al.(1996)Mol Immunol 33(17-18):1389-401、およびEvans et al.(1995)Mol Immunol 32(16):1183-95に記載されている。例えば、体液中のC5aおよびC5bの濃度および/または生理活性は、当該技術分野で周知の方法によって測定することができる。C5aの濃度または活性を測定するための方法は、例えば、化学走性アッセイ、RIA、またはELISAを含む(例えば、Ward and Zvaifler(1971)J Clin Invest 50(3):606-16およびWurzner et al.(1991)Complement Inflamm 8:328-340を参照されたい)。C5bには、溶血アッセイ、または当該技術分野で既知の溶解性C5b-9のためのアッセイを用いることができる。当該技術分野で既知の他のアッセイも用いられ得る。
【0064】
抗C5抗体等のC5阻害剤がC5の生物学的に活性な産物への変換、例えば、C5aの産生を阻害する能力を判定するために、限定されないがELISA等の免疫学的技術を使用して、C5および/またはその切断産物のタンパク質濃度を測定することができる。
【0065】
エクリズマブまたはエクリズマブ変異体を含有する組成物は、治療のために対象に投与される薬学的組成物として製剤化することができる。任意の好適な薬学的組成物および製剤だけではなく、好適な製剤化のための方法、ならびに好適な投与経路および好適な投与部位も本発明の範囲内であり、当該技術分野で既知である。また、任意の好適な投薬(複数可)および投与頻度が企図される。
【0066】
薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含むことができる。「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性のあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を指しかつそれらを含む。組成物は、薬学的に許容される塩、例えば、酸付加塩または塩基付加塩(例えば、Berge et al.(1977)J Pharm Sci 66:1-19を参照)を含むことができる。
【0067】
特定の実施形態において、タンパク質組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、凍結乾燥(フリーズドライ)粉末、または高濃度での安定な保存に適した他の規則的な構造として安定化および製剤化することができる。無菌注射液は、必要な量の本発明に使用されるC5結合ポリペプチドを、必要に応じて、上に列挙した成分のうちの1つまたは成分の組み合わせと適切な溶媒中で併せ、続いて滅菌濾過することにより調製することができる。一般に、分散液は、塩基性分散媒と、上に列挙したものから必要とされる他の成分とを含有する無菌ビヒクル中に、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体を組み込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、調製の方法は真空乾燥およびフリーズドライ法を含み、以前に滅菌濾過したその溶液からC5阻害剤ポリペプチドおよび任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散液の場合は必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる試薬、例えば、一ステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。非タンパク質C5阻害剤は、同じかまたは同様の様式で製剤化され得る。
【0068】
エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、薬学的水溶液中の比較的高い濃度を含む任意の所望の濃度で製剤化することができる。例えば、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、約10mg/mL~約100mg/mL(例えば、約9mg/mL~約90mg/mL、約9mg/mL~約50mg/mL、約10mg/mL~約50mg/mL、約15mg/mL~約50mg/mL、約15mg/mL~約110mg/mL、約15mg/mL~約100mg/mL、約20mg/mL~約100mg/mL、約20mg/mL~約80mg/mL、約25mg/mL~約100mg/mL、約25mg/mL~約85mg/mL、約20mg/mL~約50mg/mL、約25mg/mL~約50mg/mL、約30mg/mL~約100mg/mL、約30mg/mL~約50mg/mL、約40mg/mL~約100mg/mL、約50mg/mL~約100mg/mL、もしくは約20mg/mL~約50mg/mL)の濃度で、または任意の好適な濃度で、溶液中に製剤化することができる。エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、約5mg/mLよりも高い(または少なくともそれに等しい)(例えば、以下の数字のいずれかの概数よりも高い、または少なくともそれに等しい:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、約26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、120、130、140、またはさらには150)濃度で溶液中に存在することができる。エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、約2mg/mLよりも高い(例えば、以下の数字のいずれかの概数よりも高い:2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、または45以上)が、約55mg/mLよりも低い(例えば、以下の数字のいずれかの概数よりも低い:55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、または約5未満)濃度で製剤化することができる。したがって、いくつかの実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、約5mg/mLよりも高く約55mg/mLよりも低い濃度で水溶液中に製剤化することができる。エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、約50mg/mLの濃度で水溶液中に製剤化することができる。任意の好適な濃度が企図される。タンパク質を水溶液中で製剤化するための方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許第7,390,786号、McNally and Hastedt(2007),“Protein Formulation and Delivery,”Second Edition,Drugs and the Pharmaceutical Sciences,Volume 175,CRC Press、およびBanga(1995),“Therapeutic peptides and proteins:formulation,processing,and delivery systems,”CRC Pressに記載されている。
【0069】
エクリズマブまたはエクリズマブ変異体の投薬レベルは、任意の好適なレベルであり得る。特定の実施形態において、ヒト対象に対するエクリズマブまたはエクリズマブ変異体の投薬レベルは、一般的に、治療当たり、患者の体重1kg当たり約1mg~約100mgであってもよく、治療当たり、患者の体重1kg当たり約5mg~約50mgであってもよい。
【0070】
患者におけるエクリズマブまたはエクリズマブ変異体の血漿中濃度は、達成される最高レベルであろうとまたは維持されるレベルであろうと、任意の所望のまたは好適な濃度であり得る。そのような血漿中濃度は、当該技術分野で既知の方法によって測定することができる。特定の実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体の患者(ヒト患者等)の血漿中濃度は、約25μg/mL~約500μg/mL(例えば、約35μg/mL~約100μg/mL等)の範囲である。そのような患者における抗C5抗体の血漿中濃度は、抗C5抗体を投与した後に達成される最高濃度であり得るか、または治療を通して維持される患者における抗C5抗体の濃度であり得る。しかしながら、極端な症例ではより多くの量(濃度)が必要になる場合があり、より軽度の症例ではより少ない量で十分な場合があり、量は、治療中の異なる時期で変化し得る。特定の実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体の血漿中濃度は、治療中、約35μg/mL以上に維持され得る。いくつかの実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体の血漿中濃度の血漿中濃度は、治療中、約50μg/mL以上に維持され得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体の血漿中濃度は、約200nM以上、または治療中、約280nM~285nM以上に維持され得る。
【0072】
他の治療シナリオにおいて、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体の血漿中濃度は、治療中、約75μg/mL以上に維持され得る。最も重度の治療シナリオにおいて、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体の血漿中濃度は、治療中、約100μg/mL以上に維持され得る。
【0073】
特定の実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体の血漿中濃度は、治療中、約200nM~約430nM以上、または約570nM~約580nM以上に維持され得る。
【0074】
特定の実施形態において、薬学的組成物は単一単位剤形である。特定の実施形態において、単一単位剤形は、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体の約300mg~約1200mgの単位剤形(約300mg、約900mg、および約1200mg等)である。特定の実施形態において、薬学的組成物は凍結乾燥される。特定の実施形態において、薬学的組成物は無菌溶液である。特定の実施形態において、薬学的組成物は、防腐剤不含製剤である。特定の実施形態において、薬学的組成物は、10mg/mlの無菌の防腐剤不含溶液30mlの300mg単回使用製剤を含む。
【0075】
特定の実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、以下のプロトコルに従って投与される:最初の4週間は7+/-2日ごとに25~45分の静脈内注入により600mg、その後、7±2日後に第5の用量として900mg、次いで、それ以降は14±2日ごとに900mg。抗体は、25~45分にわたって静脈内注入により投与することができる。別の実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、以下のプロトコルに従って投与される:最初の4週間は7+/-2日ごとに25~45分の静脈内注入により900mg、その後、7±2日後に第5の用量として1200mg、次いで、それ以降は14±2日ごとに1200mg。抗体は、25~45分にわたって静脈内注入により投与することができる。例えば、全長エクリズマブ抗体または全長エクリズマブ変異体抗体の、体重と関連付けた例示的な小児投与量を表1に示す。
【表1】
【0076】
特定の他の実施形態において、全長抗体ではなく、全長抗体よりも小さいエクリズマブまたはエクリズマブ変異体が、全長抗体の投薬と同じモル濃度に対応する投薬量で投与され得ることに留意されたい。
【0077】
水溶液は、中性のpH、例えば、例えば、約6.5~約8(例えば、7~8(両方の値を含む))のpHを有することができる。水溶液は、以下の数字のいずれかの概数のpHを有することができる:6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、または8.0。いくつかの実施形態において、水溶液は、約6よりも高い(またはそれに等しい)(例えば、以下の数字のいずれかの概数以上である:6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、または7.9)が、約pH8よりも低いpHを有する。
【0078】
いくつかの実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、静脈内注射または静脈内注入等によって対象(用語「対象」は、本明細書において用語「患者」と同義に使用される)に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、静脈内注入等によって対象に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、対象の肺に投与される。いくつかの実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、皮下注射によって対象に投与される。いくつかの実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、動脈内注射によって対象に投与される。いくつかの実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、硝子体腔内または眼球内注射によって対象に投与される。いくつかの実施形態において、エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、肺送達、例えば、(特に、肺敗血症の場合)肺内注射によって対象に投与される。追加の好適な投与経路も企図される。
【0079】
エクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、単剤治療として対象に投与され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、1つ以上の追加の治療、例えば、1つ以上の追加の治療薬を対象に投与することを含むことができる。
【0080】
追加の治療は、補体関連疾患の実験的治療、または補体関連疾患の症状の治療を含む任意の追加の治療であり得る。他の治療は、患者の健康を改善するまたは安定させる任意の治療、任意の治療薬であり得る。追加の治療薬(複数可)は、静脈内輸液、例えば、水および/または生理食塩水、アセトアミノフェン、ヘパリン、1つ以上の凝固因子、抗生物質等を含む。1つ以上の追加の治療薬は、エクリズマブもしくはエクリズマブ変異体と一緒にまたは別個の治療組成物として投与され得るか、あるいは、1つの治療組成物は、(i)1つ以上のエクリズマブおよびエクリズマブ変異体、ならびに(ii)1つ以上の追加の治療薬の両方を含むように製剤化され得る。追加の治療薬は、C5結合ポリペプチドの投与の前に、それと同時に、またはその後に投与され得る。追加の薬剤は、同じ送達方法もしくは経路を使用して、または異なる送達方法もしくは経路を使用して投与され得る。追加の治療薬は、別のC5阻害剤を含む別の補体阻害剤であってもよい。
【0081】
エクリズマブまたはエクリズマブ変異体が第2の活性薬剤と組み合わせて使用される場合、その薬剤は、別個にまたは一緒に製剤化され得る。例えば、それぞれの薬学的組成物が、例えば、投与の直前に混合されて一緒に投与されてもよいか、または、例えば、同じ時間にもしくは異なる時間に、同じ経路もしくは異なる経路によって、別個に投与されてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態において、組成物は、組成物が全体として補体関連疾患の治療に治療的に有効であるように、治療量以下の量のエクリズマブまたはエクリズマブ変異体と、治療量以下の量の1つ以上の追加の活性薬剤とを含むように製剤化され得る。治療抗体等の薬剤の治療有効用量を決定するための方法は、当該技術分野で既知である。
【0083】
組成物は、投与経路に一部依存する様々な方法を用いて、対象、例えば、ヒト対象に投与され得る。経路は、例えば、静脈内(「IV」)注射もしくは注入、皮下(「SC」)注射、腹腔内(「IP」)注射、例えば、(特に、肺敗血症の場合)肺内注射等による肺送達、眼球内注射、関節内注射、または筋肉内(「IM」)注射であってもよい。
【0084】
本明細書に開示されるエクリズマブまたはエクリズマブ変異体の好適な用量は、例えば、治療を受ける対象の年齢、性別、および体重、ならびに使用される特定の阻害剤化合物を含む様々な要因に依存し得る。対象に投与される用量に影響を与える他の要因は、例えば、疾患の種類または重症度を含む。他の要因は、例えば、対象に同時に影響を与えているかまたは以前に影響を与えていた他の医学的疾患、対象の総体的な健康、対象の遺伝的素因、食生活、投与期間、排泄速度、薬物の組み合わせ、および対象に投与される任意の他の追加の治療剤を含むことができる。また、いずれか特定の対象のための特定の投薬および治療計画は、担当の医療従事者(例えば、医師または看護師)の判断に依存することも理解されたい。
【0085】
本明細書に開示されるエクリズマブまたはエクリズマブ変異体は、固定用量として、または1キログラムあたりのミリグラム(mg/kg)の用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、用量は、組成物中の活性抗体のうちの1つ以上に対する抗体の産生または他の宿主免疫応答を低下させるまたは回避するように選択することもできる。
【0086】
薬学的組成物は、治療有効量の本明細書に開示されるエクリズマブまたはエクリズマブ変異体を含むことができる。そのような有効量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0087】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるエクリズマブまたはその変異体の投与量は以下の通りであり得る:(1)最初の3週間は、毎週、約900ミリグラム(mg)のエクリズマブもしくはその変異体、または(2)最初の3週間は、毎週、1200ミリグラム(mg)のエクリズマブもしくはその変異体を患者に投与し、(3)その後、4、6、および8週目に約1200mgの用量を投与する。最初の8週間のエクリズマブまたはその変異体による治療期間後、担当の医療従事者(医師等)は、任意選択的に、約1200mgのエクリズマブまたはその変異体を用いた治療を隔週でさらに8週間要求する(かつ施す)ことができる。次いで、エクリズマブまたはその変異体による治療後28週間、患者を観察することができる。
【0088】
決して限定的であることを意図するものではないが、一本鎖抗C5抗体(C5の切断を阻害する)等の一本鎖抗体の例示的な投与方法は、例えば、Granger et al.(2003)Circulation 108:1184、Haverich et al.(2006)Ann Thorac Surg 82:486-492、およびTesta et al.(2008)J Thorac Cardiovasc Surg 136(4):884-893に記載されている。
【0089】
本明細書で使用される用語「治療有効量」もしくは「治療有効用量」、または同様の用語は、所望の生物学的応答または医学的応答を誘発する本明細書に開示されるエクリズマブまたはエクリズマブ変異体の量を意味することを意図する。
【0090】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、組成物が全体として治療的に有効であるように、本明細書に開示される治療有効量のエクリズマブまたはエクリズマブ変異体と、1つ以上(例えば、1、2、3,4,5,6,7,8,9、10、もしくは11個またはそれ以上)の追加の治療薬とを含有する。例えば、組成物は、本明細書に記載されるC5結合ポリペプチドおよび免疫抑制剤を含有することができ、ポリペプチドおよび薬剤は、それぞれ、組み合わせたときに対象における補体関連疾患を治療または予防するのに治療的に有効な濃度である。
【0091】
本開示中、本明細書に開示される方法におけるエクリズマブまたはエクリズマブ変異体、ならびにエクリズマブまたはエクリズマブを使用する治療および予防に対する言及は、本明細書に開示されるエクリズマブおよび本明細書に開示されるエクリズマブ変異体に対する言及である。
【0092】
「対象」は、本明細書で使用される場合、ヒトであってもよい。「患者」は、本明細書において「対象」と同義に使用される。特定の実施形態において、患者(または対象)は、ヒト患者(またはヒト対象)である。
【実施例0093】
本発明をよりよく理解するために、以下の例を記載する。これらの例は、説明のみを目的としており、決して本発明の範囲を限定するものであると解釈されるべきではない。
【0094】
例1.エクリズマブによる治療
治療当たり、患者の体重1kg当たり1mg~100mgの本明細書に開示されるエクリズマブを含む製剤が、補体障害であると診断されたヒト患者に静脈内注入によって投与される。これらの患者全員が、病態の初期にエクリズマブを始めて投与される。種々の日数の経過後、当該技術分野で既知の方法により疾患レベルを判定する。
【0095】
本明細書に開示されるエクリズマブを含む製剤を投与される患者の余命は、少なくとも1日延長される。
【0096】
例2.臨床試験
臨床試験には、補体障害に罹患する100人の患者を組み入れる。試験中の患者は、試験の1日目に1200ミリグラム(mg)の本明細書に開示されるエクリズマブを投与され、その後、次の2週間は毎週1200mg、その後、4、6、および8週目には1200mgの用量を投与される。最初の8週間のエクリズマブによる治療期間後、治験責任医師は、任意選択的に、1200mgの本明細書に開示されるエクリズマブを用いた治療を隔週でさらに8週間要求することができる。本明細書に開示されるエクリズマブの患者への投与は、静脈内注入によって行われる。
【0097】
本明細書に開示されるエクリズマブを投与される患者の余命は、少なくとも1日延長される。
【0098】
例3.水溶液中のエクリズマブまたはエクリズマブ変異体の単糖組成を決定するための手順
機器および材料
試薬:グルコサミン塩酸塩(Sigma-Aldrich、G4875);ガラクトサミン塩酸塩(Sigma-Aldrich、G0500)グルコース(Sigma-Aldrich、G7528);ガラクトース(Sigma-Aldrich、G6404)マンノース(Sigma-Aldrich、M6020);フコース(Sigma-Aldrich、F2252);氷酢酸(Sigma-Aldrich、320099);酢酸ナトリウム(Sigma-Aldrich、S7545);ホウ酸(Sigma-Aldrich、B7660);メタノール(Sigma-Aldrich、439193);アントラニル酸(Sigma-Aldrich、A89855);シアノ水素化ホウ素ナトリウム(Sigma-Aldrich、156159);ブチルアミン(Sigma-Aldrich、471305);リン酸(Sigma-Aldrich、695017);テトラヒドロフラン(THF)(Sigma-Aldrich、494461);脱イオン水(diHO);アセトニトリル、HPLCグレード(Sigma-Aldrich、360457)
【0099】
HPLC移動相:移動相A:0.2%ブチルアミン、diHO中の0.5%リン酸および1%THF;移動相B:50%アセトニトリル中の50%移動相A;移動相C:diHO中の40%メタノール
【0100】
機器:温度制御モジュール(TCM)またはカラムオーブンおよび2475モデル多波長蛍光検出器を備えたWaters Alliance 2695HPLCシステム;Waters Empowerクロマトグラフィーソフトウェア;Waters Symmetry C-18カラム、150×4.6mm、粒径5μm(WAT045905);Vivaspin 500フィルタ、10kDa MWCO PES、Sartorius-Stedim 番号VS0102;エッペンドルフ微量遠心機、Oリングシール付きスクリューキャップを有する2.0mL微量遠心管、BioStor、National Scientific;2~1000μLピペット、Rainin;真空遠心濃縮器;乾燥加熱ブロック;キャップ付き注射用スクリューネックバイアル、Waters
【0101】
手順
溶媒および試薬の調製
1.0mM単糖標準原液:グルコサミン塩酸塩およびガラクトサミン塩酸塩をそれぞれ43mg計量する。ガラクトース、マンノース、およびグルコースをそれぞれ36mg計量する。33mgのフコースを計量する。単糖を合わせ、diHOを加えて最終体積を200mLとする。溶解するまで混合し、1mLバイアルに分取する。-20℃で保存する。有効期限は5年である。
【0102】
単糖標準較正溶液(0.04mM):1.0mM単糖標準原液のアリコートを室温まで解凍する。40μLの1.0mM標準原液を960μLのdiHOに加え、十分に混合する。新しく調製する。
【0103】
0.05%核酸:50μLの氷酢酸を100mLのdiH0に加える。室温で保存する。有効期限は1年である。
【0104】
1%酢酸ナトリウム:1gの酢酸ナトリウムを100mLのdiH0に溶解する。室温で保存する。有効期限は1年である。
【0105】
4%酢酸ナトリウム、2%ホウ酸、メタノール溶液:4gの酢酸ナトリウムおよび2gのホウ酸を100mLのメタノールに溶解する。室温で保存する。有効期限は1年である。
【0106】
30mg/mLアントラニル酸および20mg/mLシアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液(AA溶液):200mgのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを10mLの酢酸ナトリウム/ホウ酸/メタノール溶液に溶解し(上の6.2.5を参照されたい)、その後、300mgのアントラニル酸を加える。十分に混合する。新しく調製する。
【0107】
HPLC移動相A:4mLのブチルアミン、10mLのリン酸、および20mLのTHFを1.8LのdiHOに混合する。適量のHOを加えて2Lにし、十分に混合する。室温で保存する。有効期限は6ヶ月である。
【0108】
HPLC移動相B:500mLの移動相Aを500mLのアセトニトリルに加える。十分に混合する。室温で保存する。有効期限は6ヶ月である。
【0109】
HPLC移動相C:400mLのメタノールを600mLのHOに加える。十分に混合する。室温で保存する。有効期限は6ヶ月である。
【0110】
試料の加水分解:500μLの水をスピンフィルタに加える。すすぎのために12000rpmで5分間遠心分離する。濾液を廃棄する。4mgの試料(10mg/mLで400μL)をすすいだフィルタに入れる。適量の0.05%AcOH溶液を加えて500μLにする。12000rpmで8~10分間遠心分離する。濾液を廃棄し、適量の0.05%AcOH溶液を加えて500μLにし、12000rpmで8~10分間遠心分離する。合計2回の洗浄ステップを繰り返す。0.05%AcOH溶液を用いて最終体積を約250μLに調整する。ボルテックスし、微量遠心管に移す。必要に応じて複製物をプールする。50μLのタンパク質を450μLの0.05%AcOH溶液に加えることにより、紫外線による濃度決定のための1:10希釈液を作製する。0.05%AcOH溶液を用いて紫外線検出器のブランク測定を行う。各1:10希釈タンパク質試料の280nmでの吸光度を測定する。A280に、希釈係数10、およびセル光路長に関連するタンパク質に特異的な吸光度係数を乗じることにより、タンパク質濃度(mg/mL)を決定する。試料は、加水分解を続けるまで4℃で保存され得る。
【0111】
最終濃度が約0.5mg/mLになるまで0.05%AcOH中にタンパク質溶液を希釈する。BioStor試験管に、0.1mLの0.5mg/mLタンパク質溶液、0.3mLのdiHO、および0.1mLのTFAを混合する。試験管のキャップをきつく締め、十分に混合し、100℃で6時間インキュベートする。試験管が室温まで冷却した後、真空濃縮機で熱を加えずに内容物を乾燥させる。試料は、タグ付けの前に4℃で保存され得る。
【0112】
標準曲線の調製:0.04mM単糖標準較正溶液を使用して、表2の希釈系列により試験管内で標準曲線を調製する。
【表2】
【0113】
試料のタグ付け:ボルテックスおよび超音波処理により乾燥試料を100μLの1%酢酸ナトリウムに溶解する。各50μLの単糖標準希釈液を別個のスクリューキャップ付きプラスチックバイアルに入れる。ステップ6.5.1からの加水分解されたタンパク質の体積を2つの50μLアリコートに分割し、別個のスクリューキャップ付きプラスチックバイアルに入れる。100μLの上記AA溶液を各バイアルに加え、加熱ブロック内で1時間80℃でインキュベートする。反応後、内容物を室温まで冷却させ、850μLのHPLC溶媒Aを加える。十分に混合し、内容物をオートサンプラーバイアルに移す。
【0114】
注入試料:1.0mL/分で30分間、5%のBでカラムを平衡化する。運転条件は次の通りである:TCMまたはカラムオーブン:20±℃;試料トレー温度:5±2℃;脱気装置:正常;サンプラー間隔:1.0秒;波長:360nm励起、420nm放射;流速:1.0/分;運転時間:85分。処理を「運転のみ」に設定する。
【表3】
【0115】
各50μLの溶媒Aブランク、標準曲線、および試験試料を注入する。
【表4】
【0116】
システムを停止する前に、溶媒Cで15分間カラムを洗浄し、100%溶媒B中に保存する。
【0117】
データ処理および分析:必要であれば前回の較正曲線を消去して、標準曲線を較正し、次いで試料を処理する。標準レベルのための処理方法の量は次の通りである。
【表5】
【0118】
処理パラメータは次の通りである:閾値:20μv/秒;ピーク幅:150秒;積分抑制:0.0~6.0分、10~22分、および40.0~85.0分。
【0119】
標識ピークは次の通りである:表6
【表6】
【0120】
滞留時間は変化する場合があり、また必要であれば、処理パラメータが調整されてもよい。
【0121】
計算:重み付けした理論モル比の計算。参照物質のオリゴ糖アッセイの結果を用いて、各オリゴ糖の相対的なパーセント面積の平均値を計算する。各単糖種ごとに重み付けした理論モル比は、平均化した各オリゴ糖のパーセント面積にオリゴ糖種当たりの単糖の分子数を乗じた積和を、次いで100で除したものである。各単糖ごとに3つのマンノース分子に対して正規化した重み付けした理論モル比は、単糖の重み付けした理論モル比を3で乗じた積を、次いで、マンノースの重み付けした理論モル比で除したものである。例えば、表7を参照されたい。
【表7】
【0122】
単糖の計算:較正された各標準曲線を基にして、試験試料の単糖量をpmolで計算する。複製試料の平均ピーク面積を計算する。タンパク質(mg)当たりの単糖の比(nmol)を報告する。例えば、表8を参照されたい。計算は、必要に応じて調整されてもよく、実験ノートに記入されてもよいことに留意されたい。グルコースは、最終的な合計グリコシル化%には含まれない。
【表8】
【0123】
合計グリコシル化パーセント
【数1】

【表9】
【0124】
計算は、必要に応じて調整されてもよく、実験ノートに記入されてもよい。グルコースは、最終的な合計グリコシル化%には含まれない。
【0125】
均等な機器および材料が使用されてもよい。また、必要に応じて手順が調整されてもよい。
【0126】
例4:HPLCによる2-AAの標識化を用いたN結合型オリゴ糖プロファイリングの手順
この手順は、水溶液中のエクリズマブまたはエクリズマブ変異体等のタンパク質の特徴付けに適用される。
【0127】
機器および材料
機器:2475モデル多波長蛍光検出器を備えたWaters Alliance 2695/2795HPLCシステム;Waters Empowerクロマトグラフィーソフトウェア;Showa DenkoのAsahipakアミノカラム、250×4.6mm、粒径5μm、NH2P-504E(Phenomenex CHO-2628);遠心機、エッペンドルフモデル5415Cまたは均等物;乾燥加熱ブロック(37℃、80℃、および100℃);ボルテックスミキサー;ポリプロピレンラック(VWR 60985-545)
【0128】
材料:参照標準または対照;脱イオン水(diHO);アセトニトリル、HPLCグレード(Burdick&Jackson 014-4);ペプチドN-グリコシダーゼF(Prozyme、N-グリカナーゼ、GKE-5006BまたはGKE-5006D;水酸化アンモニウム(Baker 9721-02);アントラニル酸(Aldrich A8985-5);氷酢酸(Baker 9526-03);ホウ酸(Aldrich 20287-8);Man9 2-AA(100pmol)(Prozyme GKSA-107);酢酸ナトリウム(Fluka 71179);シアノ水素化ホウ素ナトリウム(Sigma 156159);β-メルカプトエタノール(Bio-Rad 161-0710);メタノール、HPLCグレード(Baker 9070-3);エタノール、HPLCグレード(Spectrum E1028);Igepal CA-630(Sigma I-3021);ドデシル硫酸ナトリウム、SDS(Baker 4095-02);テトラヒドロフラン、阻害THF(Sigma 360589);トリエチルアミン、TEA(Sigma 471283);Oリングシール付きスクリューキャップを有する2.0mL微量遠心管(Biostor、National Scientific、VWR 66006-812);1.5mL微量遠心管;0.45μm、25mm ナイロンアクロディスクフィルタ(Pall PN AP-4438T);全回収ガラスHPLCバイアル(Waters 186000384c);5mLシリンジ(Becton-Dickinson 309603)
【0129】
手順
溶媒、試薬、および移動相の調製
1:100水酸化アンモニウム溶液:50μLの水酸化アンモニウムを4.95mLの水に加え、十分に混合する。2~8℃で保存する。有効期限は1ヶ月である。
【0130】
10%SDS溶液(化学ヒュームフード内で調製):10gのSDSを80mLの水に加える。適量の水を加えて100mLにし、十分に混合する。室温で保存する。有効期限は1年である。
【0131】
変性溶液:4.75mLの1:100水酸化アンモニウム溶液を15mLポリプロピレン試験管に加える。250μLの10%SDSを加える。50μLのβ-メルカプトエタノールを加え、十分に混合する。2~8℃で保存する。有効期限は1ヶ月である。
【0132】
5%Igepal:5gのIgepalを80mLの水に加える。適量の水を加えて100mLにし、十分に混合する。室温で保存する。有効期限は1年である。
【0133】
メタノール溶液:4gの酢酸ナトリウムおよび2gのホウ酸を90mLのメタノールに加える。適量のメタノールを加えて100mLにし、十分に混合する。室温で保存する。有効期限は1年である。
【0134】
AA溶液(新しく調製する):10mLのメタノール溶液を15mLポリプロピレン試験管に入れる。200mgのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを溶液に加え、溶解するまで混合する。300mgのアントラニル酸を溶液に加え、溶解するまで混合する。2~8℃で保存する。使用前に沈殿物が形成した場合は廃棄する。
【0135】
洗浄溶媒:5mLの水を95mLのアセトニトリルに加え、十分に混合する。室温で保存する。有効期限は6ヶ月である。
【0136】
溶出溶媒:20mLのアセトニトリルを80mLの水に加える。十分に混合する。室温で保存する。有効期限は6ヶ月である。
【0137】
移動相A:40mLの核酸および20mLのTHFを1600mLのアセトニトリルに加える。適量のアセトニトリルを加えて2Lにし、十分に混合する。室温で保存する。有効期限は6ヶ月である。
【0138】
移動相B:100mLの核酸、20mLのTHF、および60mLのTEAを1600mLの水に加える。適量の水を加えて2Lにし、十分に混合する。室温で保存する。有効期限は6ヶ月である。
【0139】
カラム洗浄:400mLのエタノールを1500mLの水に加える。適量の水を加えて2Lにし、十分に混合する。室温で保存する。有効期限は6ヶ月である。
【0140】
試料、参照物質、および陰性対照の調製:25μgの各試料および参照物質を2mLスクリューキャップ付き試験管にピペットで入れる。(より低い強度プロファイルを示す試料、または低レベルのグリコシル化を示す試料の場合、初期試料の量を増加してもよい。)陰性対照として5μLの水を使用する。30μLの変性溶液を各試験管に加え、ボルテックスする。100℃で2分間インキュベートする。注意:熱い試験管を開けないこと。室温で5分間冷却する。10μLのIgepal溶液を各試験管に加え、ボルテックスする。2μLのN-グリカナーゼ酵素を加え、ボルテックスし、遠心分離して試験管の底に沈殿させる。37℃で16~22インキュベートする。新しいAA溶液を調製する。100μLのAA溶液を各試験管に加え、ボルテックスする。80℃で1時間インキュベートする。各試料ごとに、アクロディスクフィルタを5mLシリンジにとりつけ、ポリプロピレンラック上に配置する。シリンジプランジャーを廃棄する。反応混合物を室温で5分間冷却する。1mLの洗浄溶媒を各フィルタに適用する。重力駆動型抽出の間、フィルタを乾燥させないようにする。1mLの洗浄溶媒を各試料に加え、ボルテックスする。全体積をフィルタに適用し、排出させる。2mLの洗浄溶媒をフィルタに適用し、排出させる。1mLの溶出溶媒を用いて1.5mL微量遠心管内に直接溶出する。試料、参照物質、および陰性対照をHPLCバイアルに移す。残りの試料、参照物質、および陰性対照を-20℃以下で保存する。
【0141】
システム適合性の調製:100μLの水を100pmol Man-9 AAを含む試験管に加え、ボルテックスする。溶液の濃度は1pmol/μLである。-20℃以下で保存する。有効期限は1年である。40μLのMan-9溶液を360μLの溶出溶液に加え、ボルテックスする。HPLCバイアルに移す。
【0142】
HPLCシステムの設定:1.0mL/分で30分間、70%A/30%Bでカラムを平衡化する。以下の条件に設定する:TCMまたはカラムオーブン:50℃±5℃;試料トレー温度:5℃±2℃;脱気装置:正常;サンプラー間隔:1.0秒。波長:360nm励起、420nm放射;粒子:1;時定数:0.3;検出器出力装置:放出;運転時間:110分。
【表10】
【0143】
試料セットを次の通りに構成する:表11
【表11】
【0144】
注入試料:複数のシステム適合性試料が加えられてもよい。処理を「運転のみ」に設定する。運転終了時に、システムを停止する前にColumn Washで15分間カラムを洗浄する。
【0145】
処理:
処理パラメータを次の通りに設定する:Apex Trackを起動する:開始:16、終了:55。
最小面積:5000μV*秒;最小高さ:500μV;リフトオフ:0.5;タッチダウン:0.5;閾値:100μV/秒;ピーク幅:20秒;積分抑制:0.0~19.5分および>60分。
【0146】
標識ピークは次の通りである:表12
【表12】
【0147】
ある程度の手動積分が必要な場合がある。滞留時間は調整されてもよい。ピークの中には、全ての試料に検出されないものもある。
【0148】
必要に応じて各ピークの相対的なパーセント面積を計算する。
【0149】
均等な機器および材料が使用されてもよい。また、必要に応じて手順が調整されてもよい。
【0150】
例5:水溶液中のエクリズマブまたはエクリズマブ変異体のシアル酸含有量を決定するための手順
機器および材料
試薬:氷酢酸(Sigma-Aldrich、320099);脱イオン水(diHO);硫酸水素ナトリウム(Sigma-Aldrich、71657);N-アセチルノイラミン酸、NANA(Sigma-Aldrich、A2388);N-グリコリルノイラミン酸、NGNA(Sigma-Aldrich、G9793);O-フェニレンジアミン2HCl(Sigma-Aldrich、P1526);ブチルアミン(Sigma-Aldrich、471305);リン酸(Sigma-Aldrich、695017);テトラヒドロフラン、阻害THF(Sigma-Aldrich、494461);アセトニトリル、HPLCグレード(Sigma-Aldrich、360457);メタノール(Sigma-Aldrich、439193)。
【0151】
HPLC移動相:移動相A:0.2%ブチルアミン、水中の0.5%リン酸および1%THF;移動相B:50%アセトニトリル中の50%移動相A;移動相C:水中の40%メタノール
i.機器:温度制御モジュール(TCM)またはカラムオーブンおよび2475モデル多波長蛍光検出器を備えたWaters Alliance 2695HPLCシステム;Waters Empowerクロマトグラフィーソフトウェア;C18 Ultrasphere ODS逆相カラム、4.6×150mm、5μm(Beckman 235330);Vivaspin 500フィルタ濃度、10kDa MWCO PES(Sartorius-Stedim VS0102);2.0mL微量遠心管(低タンパク質結合);2~1000μLピペット(Rainin);乾燥加熱ブロック;キャップ付き注射用スクリューネックバイアル(Waters);エッペンドルフ遠心機;ボルテックスミキサー;紫外線分光光度計;2mmキュベット;および一般的な実験用品
【0152】
手順
移動相および試薬の調製
0.05%核酸(AcOH)溶液:50μLの氷酢酸を80mLの水に加える。適量の水を加えて100mLにする。十分に混合する。室温で保存する。有効期限は3ヶ月である。
【0153】
0.5M硫酸水素ナトリウム溶液:6.9gの硫酸水素ナトリウムを100mLの水に溶解する。新しく調製する。
【0154】
0.25M硫酸水素ナトリウム溶液:50mLの0.5M溶液を50mLの水に加える。十分に混合する。新しく調製する。
【0155】
1.0mMシアル酸原液:7.75mgのNANAおよび8.16mgのNGNAを25mLの0.05%AcOH溶液に溶解する。-20℃にて1mLアリコートで保存する。有効期限は2年である。
【0156】
シアル酸標準溶液:シアル酸原液のアリコートを解凍する。100μLを4.9mLの0.25M硫酸水素ナトリウムに加える。標準溶液は、1mL当たり20nmolのシアル酸を含有する。新しく調製する。
【0157】
O-フェニレンジアミン(OPD)誘導体化溶液(20mg/mL):40mgのOPDをBiostor試験管に加える。適量の0.25M硫酸水素ナトリウムを加えて2mLにし、十分に混合する。約19回の調製に十分である。新しく調製する。
【0158】
HPLC移動相A:4.0mLの1-ブチルアミン、10mLのリン酸、および20mLのTHFを、ガラス瓶内の1.8Lの水に加える。適量の水を加えて2Lにし、十分に混合する。室温で保存する。有効期限は6ヶ月である。
【0159】
HPLC移動相B:0.5LのHPLC移動相Aおよび0.5Lのアセトニトリルをガラス瓶内で混合し、最終体積を1Lとする。十分に混合する。室温で保存する。有効期限は6ヶ月である。
【0160】
HPLC移動相C:400mLのメタノールを600mLの水に加える。十分に混合する。室温で保存する。有効期限は6ヶ月である。
【0161】
試料の加水分解:500μLの水をスピンフィルタに加える。すすぎのために12000rpmで5分間遠心分離する。濾液を廃棄する。4mgの試料(10mg/mLで400μL)をすすいだフィルタに入れる。適量の0.05%AcOH溶液を加えて500μLにする。12000rpmで8~10分間遠心分離する。濾液を廃棄し、適量の0.05%AcOH溶液を加えて500μLにし、12000rpmで8~10分間遠心分離する。合計2回の洗浄ステップを繰り返す。0.05%AcOH溶液を用いて最終体積を約250μLに調整する。ボルテックスし、微量遠心管に移す。必要に応じて複製物をプールする(これは「未希釈のタンパク質」である)。50μLのタンパク質を450μLの0.05%AcOH溶液に加えることにより、紫外線による濃度決定のための1:10希釈液を作製する。0.05%AcOH溶液を用いて紫外線検出器のブランク測定を行う。各1:10希釈タンパク質試料の280nmでの吸光度を測定する。A280に、希釈係数10、およびセル光路長に関連するタンパク質に特異的な吸光度係数を乗じることにより、タンパク質濃度(mg/mL)を決定する。試料は、加水分解を続けるまで4℃で保存され得る。250μgの未希釈のタンパク質を二通り微量遠心管に入れる。適量の0.5M硫酸水素ナトリウムを加えて100μLにする。50μLの0.05%AcOH溶液および50μLの0.5M硫酸水素ナトリウムを、陰性対照として試験管に入れる。試験管のキャップをきつく締め、十分に混合し、80℃の加熱ブロック内で20分間インキュベートする。試験管を室温まで冷却させる。
【0162】
20nmol/mLシアル酸標準溶液(「シアル酸標準」)を使用して、表13の希釈系列により試験管内で標準曲線を調製する。
【表13】
【0163】
100μLの各シアル酸標準(10、15、20、25、および30pmol)を試験管に加える。
【0164】
100μLのOPD溶液を標準、試料、および陰性対照の各々に加える。試験管のキャップをきつく締め、混合し、80℃の加熱ブロック内に40分間入れる。冷却させ、0.8mLのHPLC移動相Aを各試験管に加える。十分に混合し、12000rpmで5分間遠心分離し、ペレットを破壊しないようにしてオートサンプラーバイアルに移す。
【0165】
HPLC.1.0mL/分で30分間、10%のBでカラムを平衡化する。運転条件は次の通りである:
【表14】

【表15】
【0166】
処理を「運転のみ」に設定する。移動相Aブランク、陰性対照、標準曲線レベルおよび試験試料の各々を100μL注入する。
【表16】
【0167】
運転終了時に、システムを停止する前に、移動相Cで15分間カラムを洗浄し、100%移動相B中に保存する。
【0168】
データ処理および分析
必要であれば前回の較正曲線を消去して、標準曲線を較正し、次いで試料を処理する。標準レベルのための処理方法の量は次の通りである。
【表17】
【0169】
処理パラメータは次の通りである:
【表18】
【0170】
標識ピークは次の通りである:
【表19】
【0171】
滞留時間は変化する場合がある。必要であれば、処理パラメータが調整されてもよい。
【0172】
計算:較正した各標準曲線に基づいて、試験試料シアル酸の量をpmolで計算する。較正範囲内に存在する各シアル酸について、タンパク質(mg)当たりのシアル酸(pmol)の量を報告する。結果は、タンパク質のmol当たりのシアル酸のmmolに変換され得る。最も低い較正標準値である10pmol未満の値については、結果を「LOQ未満」として報告する。
【0173】
計算は、必要に応じて調整されてもよい。均等な機器および材料が使用されてもよい。また、必要に応じて手順が調整されてもよい。
【0174】
例6.NS0細胞で培養されるエクリズマブとCHO細胞で培養されるエクリズマブ変異体との間のグリコシル化パターンの比較
配列番号3および配列番号4のアミノ酸配列からなるエクリズマブ変異体を含むベクターを担持するCHO細胞を、200Lバイオリアクターによる培養で成長させる。エクリズマブ変異体タンパク質を標準的な方法により精製し、標準的な方法により10mg/mlで試験する。タンパク質上にはNGNAは検出されない。中性オリゴ糖は、タンパク質の全オリゴ糖含有量の約99.99%を占める。
【0175】
配列番号1および配列番号2のアミノ酸配列からなるエクリズマブを含むベクターを担持するNS0細胞を、200Lバイオリアクターによる培養で成長させる。エクリズマブタンパク質を標準的な方法により精製し、標準的な方法により10mg/mlで試験する。0.1mmol/mol~9.6mmol/molのNGNA含有量がタンパク質上で検出される。中性オリゴ糖(グリカン)は、タンパク質の全オリゴ糖含有量の約89%を占める。
【0176】
例7.CHO細胞で培養されるエクリズマブおよびエクリズマブ変異体
エクリズマブを含むベクターを担持するCHO細胞と、配列番号3および配列番号4のアミノ酸配列からなるエクリズマブ変異体を担持するCHO細胞とを、200Lバイオリアクターによる培養で成長させる。タンパク質を標準的な方法により精製する。これらのタンパク質は、正しい分子量、正しいN末端配列、ヒトC5に対する結合特異性を有するが、その他の点ではエクリズマブまたはエクリズマブ変異体のように挙動する。これらのタンパク質は、いずれのNGNAも有さず、いずれのGalNcも有さず、各タンパク質の全オリゴ糖含有量の約99%以上の中性オリゴ糖含有量を有する。
【0177】
例8.NS0細胞で培養したエクリズマブ
Millipore(United States,US)のウシ血清アルブミン(BSA)を使用して3つのバッチのエクリズマブ(バッチA)を製造し、MP BiomedicalのLow IgG BSA(New Zealand,NZ)を使用して3つのバッチのエクリズマブを産生させた(バッチB)。
【0178】
エクリズマブのバッチBの分析超遠心によって決定されたモノマーレベル(%)は、バッチAと同程度であり、全ての値が98.3%~99.9%の範囲内であった。超遠心で決定されたモノマー%は、エクリズマブのバッチBが平均99.1%、エクリズマブの3つのバッチAが平均99.5%であった。超遠心データは、University of Connecticut Biotechnology Bioservices CenterのAnalytical Ultracentrifugation Facilityを利用して取得した。この方法により、モノマーIgGを二量体またはそれ以上の種からなる凝集体と区別する。この方法により、連続的な沈降係数の分布を測定し、モノマー%を決定する。
【0179】
エクリズマブの平均分子量を、NISTの分子量および同位体の割合を用いて軽鎖および重鎖の主要アミノ酸配列から計算する。ジスルフィドが形成されると、36個のシステインからの36個の遊離チオール基が18個のジスルフィド結合を形成する。両方の重鎖N末端のピログルタミン化、両方の重鎖C末端リジン残基の切断、およびAsn298における2つのG0Fグリカン残基によるグリコシル化を推定することにより、理論上のエクリズマブ抗体の主要成分の平均分子量は147,869.70Daであると計算される。
【0180】
エクリズマブのバッチAおよびBならび計算された主要成分について決定されたMALDI-TOFによる平均分子量値は、外部較正されたMALDI-TOFの1%質量精度以内である。エクリズマブのバッチAについて決定されたインタクトな分子量は148,654Daの平均値を有し、バッチBは148,531Daの平均値を有する。エクリズマブのMALDI-TOFデータは、WPD-PA-006を使用して取得した。この方法により、インタクトな分子量に基づいて分子を同定する。試験試料は、抽出された固相であり、シナピン酸マトリックス溶液と混合され、MALDI標的上に共沈させた。この乾燥試料をレーザーでイオン化してTOF質量分析計に導入し、m/zスペクトルを収集し、インタクトなmAbのm/zを分子量に変換した。試料を3回試験し、インタクトな平均分子量を決定した。
【0181】
エクリズマブのバッチBの主要ピークについて決定されたESI-TOF-MSによるインタクトな分子量値は、エクリズマブのバッチAと同程度であり、計算された主要成分は、外部較正されたESI-ToF-MSの100ppm質量精度以内である。バッチAは147,872.03Daのインタクトな平均分子量を有し、バッチBは147,871.98Daの平均を有していた。この値は、147,869.70Daというエクリズマブの計算された主要成分の分子量値と一致する。147,000~149,500Daの範囲を超える主要ピークは観察されなかった。エクリズマブのESI-TOF-MSデータを取得した。この方法により、インタクトな分子量に基づいて分子を同定する。試験試料をC4 RP-HPLCカラム上に注入し、水性:有機溶媒勾配により溶出した。次いで、溶出液をToF質量分析計内にエレクトロスプレーし、クロマトグラフピークの上半分からのスペクトルをデコンボリューションしてインタクトな分子量を得た。
【0182】
2つのエクリズマブバッチの重鎖および軽鎖の決定されたN末端配列は、既知のアミノ酸配列とエクリズマブの最初の15個の残基が一致する。予想されたように、重鎖はPyroQでブロックされていることが分かり、ピログルタミン酸アミノペプチダーゼ(PGAP)で非ブロック化した。逐次エドマン分解およびHPLC分析によってポリペプチド鎖のN末端におけるタンパク質の主要配列を決定することにより、N末端配列データを取得した。
【0183】
観察されたN結合型オリゴ糖またはグリカン分子量は、2つのエクリズマブバッチの間と同程度であり、理論上のグリカン分子量と一致する。
【0184】
2つのバッチについて決定された単糖の割合は同程度である。
【0185】
シアル酸に関して、いずれのバッチにもNANAは検出されなかった。薬物分子に関連するシアル酸の種類および相対量を決定することによってグリコシル化パターンを評価することにより、シアル酸データを取得した。硫酸水素ナトリウムとともにインキュベーションすることによりシアル酸を抗体から化学的に切断し、次いでO-フェニレンジアミンでタグ付けした。Beckman C18 Ultrasphereカラムを用いてRP-HPLCシステム上に試料を注入し、蛍光検出器(230nm励起;425nm放射)を用いてタグ付けされたシアル酸を検出した。試料を2回試験し、2つの結果の平均を報告した。バッチAでは、NGNA含有量は、9.6、9.0、8.3、8.9mmol/molであり、バッチBでは、NGNA含有量は、6.6、6.4、6.4、6.5mmol/molであった。
【0186】
例8.CHO細胞で培養したエクリズマブ変異体
配列番号3および配列番号4のアミノ酸配列からなるエクリズマブ変異体を含むベクターを担持するCHO細胞を、200Lバイオリアクターによる培養で成長させる。抗体を標準的な方法により99%超の純度まで精製し、約10mg/mlで製剤化した。いくつかのそのようなバッチを生成した。
【0187】
この変異体の平均分子量を、NISTの分子量および同位体の割合を用いて軽鎖および重鎖の主要アミノ酸配列から計算する。ジスルフィドが形成されると、36個のシステインからの36個の遊離チオール基が18個のジスルフィド結合を形成する。両方の重鎖N末端のピログルタミン化、両方の重鎖C末端リジン残基の切断、およびAsn298における2つのG0Fグリカン残基によるグリコシル化を推定することにより、理論上の抗体の主要成分の平均分子量は147,827.62Daであると計算される。
【0188】
このエクリズマブ変異体の2つのバッチならびに計算された主要成分について決定されたMALDI-TOFによる平均分子量値は、外部較正されたMALDI-TOFの1%質量精度以内である(148,484Daおよび148,522Da)。この方法により、インタクトな分子量に基づいて分子を同定する。試験試料は、抽出された固相であり、シナピン酸マトリックス溶液と混合され、MALDI標的上に共沈させた。この乾燥試料をN2レーザーでイオン化TOF質量分析計に導入し、m/zスペクトルを収集し、インタクトなmAbのm/zを分子量に変換した。試料を3回試験し、インタクトな平均分子量を決定した。
【0189】
2つのバッチについてインタクトな分子量を決定した。この値は、147,827.62Daという計算された主要成分の分子量値と一致しており、外部較正されたESI-ToF-MSの100ppm質量精度以内である。147,000~149,500Daの範囲を超える主要ピークは観察されなかった。ESI-TOF-MS法は、インタクトな分子量に基づいて分子を同定する。試験試料をC4 RP-HPLCカラム上に注入し、水性:有機溶媒勾配により溶出した。次いで、溶出液をToF質量分析計内にエレクトロスプレーし、クロマトグラフピークの上半分からのスペクトルをデコンボリューションしてインタクトな分子量を得た。
【0190】
重鎖および軽鎖の決定されたN末端配列は、2つのバッチのアミノ酸配列と一致する。予想されたように、重鎖はPyroQでブロックされていることが分かり、ピログルタミン酸アミノペプチダーゼ(PGAP)で非ブロック化した。N末端シーケンス法は、逐次エドマン分解およびHPLC分析によってポリペプチド鎖のN末端におけるタンパク質の主要配列を決定する。
【0191】
種々の種類のN結合型オリゴ糖の合計を計算する:(合計G0F、G1F)、酸性、高マンノース、中性、モノシアリル化、およびジシアリル化。酵素的に解離し、蛍光でタグ付けしたオリゴ糖の滞留時間に基づいて薬物分子に関連するN結合型オリゴ糖を同定することによってグリコシル化パターンを評価する方法を用いて、オリゴ糖データを取得した。この方法により、各オリゴ糖種の相対存在量を提供する。オリゴ糖は、PNGase Fにより抗体から酵素的に切断し、アントラニル酸でタグ付けした。過剰なアントラニル酸は、HILIC濾過ステップを用いて除去した。Showa DenkoのAsahipakアミノカラムを用いてWAX-HPLCシステム上に試料を注入し、蛍光検出器(360nm励起;420nm放射)を用いてタグ付けされたオリゴ糖を検出した。
【0192】
エクリズマブ変異体の2つのバッチについて単糖の割合を決定する。決定した単糖の割合は、5つの単糖(GlcNAc、GalNAc、ガラクトース、マンノース、フコース)についてであった。蛍光でタグ付けした単糖の滞留時間に基づいて薬物分子に関連する単糖を決定することによってグリコシル化パターンを特徴付けるアッセイを用いて、単糖データを取得した。酸加水分解によりタンパク質からオリゴ糖を除去し、その構成要素である単糖にした。次いで、還元的アミノ化によりアントラニル酸(AA)で遊離単糖にタグ付けした。次いで、Waters Symmetry(登録商標)C-18カラムを用いてRP-HPLCシステム上に試料を注入し、蛍光検出器(360nm励起、420nm放射)を用いてAAでタグ付けしたタンパク質を検出した。試料を2回試験し、報告された値は2つの結果の平均であった。
【0193】
2つのエクリズマブ抗体変異体バッチの決定されたNANAおよびNGNAシアル酸含有量は、定量化の限界未満であった(<6mmol/mol)。CHO細胞で産生されたいずれのバッチにもNGNAは観察されなかった。薬物分子に関連するシアル酸の種類および相対量を決定することによってグリコシル化パターンを評価する方法を用いてシアル酸データを取得した。硫酸水素ナトリウムとともにインキュベーションすることによりシアル酸を抗体から化学的に切断し、次いでO-フェニレンジアミンでタグ付けした。Beckman C18 Ultrasphereカラムを用いてRP-HPLCシステム上に試料を注入し、蛍光検出器(230nm励起;425nm放射)を用いてタグ付けされたシアル酸を検出した。試料を2回試験し、2つの結果の平均を報告した。
【0194】
表18は、このエクリズマブ変異体の2つのバッチの糖含有量のデータをまとめたものである。
【表20】
【0195】
他の実施形態
上記記載は、例示的な実施形態のみを開示している。
【0196】
本発明を、その詳細な説明と併せて記載してきたが、上記記載は、例示を目的とするものであって、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、および修正は、添付の特許請求の範囲内である。したがって、本発明の特定の特徴のみが例示および記載されてきたが、当業者は多くの修正および変更を想到するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の主旨に属するそのような全ての修正および変更を包含することを意図すると理解されたい。

表19:核酸およびアミノ酸配列
配列番号1
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYIFSNYWIQWVRQAPGQGLEWMGEILPGSGSTEYTENFKDRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARYFFGSSPNWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
配列番号2
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCGASENIYGALNWYQQKPGKAPKLLIYGATNLADGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQNVLNTPLTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号3
重鎖(g2/4)(448アミノ酸)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGHIFSNYWIQWVRQAPGQGLEWMGEILPGSGHTEYTENFKDRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARYFFGSSPNWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVLHEALHSHYTQKSLSLSLGK
配列番号4
軽鎖:(κ)(214アミノ酸)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCGASENIYGALNWYQQKPGKAPKLLIYGATNLADGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQNVLNTPLTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号5
GYIFSNYWIQ
配列番号6
EILPGSGSTEYTENFKD
配列番号7
YFFGSSPNWYFDV
配列番号8
GASENIYGALN
配列番号9
GATNLAD
配列番号10
QNVLNTPLT
配列番号11
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYIFSNYWIQWVRQAPGQGLEWMGEILPGSGSTEYTENFKDRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARYFFGSSPNWYFDVWGQGTLVTVSS
配列番号12
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCGASENIYGALNWYQQKPGKAPKLLIYGATNLADGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQNVLNTPLTFGQGTKVEIK
【配列表フリーテキスト】
【0197】
配列番号:1~12<223>人工配列の記載:合成ポリペプチド
【配列表】
2023145485000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の組換えエクリズマブタンパク質もしくは組換えエクリズマブ変異体タンパク質、CHO細胞、薬学的組成物、または方法:
[1] 0.1mmol/mol未満のN-グリコリルノイラミン酸(NGNA)、
0.02nmol/mgタンパク質未満のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、
または
全グリカンの約99%超である中性グリカンの割合、
の構造的特徴のうちの1つ以上を有する、組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質;
[2]
前記タンパク質は、
検出可能なN-グリコリルノイラミン酸(NGNA)を含まないこと、
検出可能なN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を含まないこと、
または
全グリカンの約99%超である中性グリカンの割合、
の構造的特徴のうちの1つ以上を有する、請求項1に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質;
[3]
チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞でエクリズマブタンパク質またはエクリズマブ変異体タンパク質を発現させることが可能な発現ベクターを担持する前記CHO細胞で産生される、組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質;
[4]
前記発現ベクターは、前記CHO細胞で前記エクリズマブタンパク質または前記エクリズマブ変異体タンパク質を発現させるために誘導的である、請求項3に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質;
[5]
前記発現ベクターは、前記CHO細胞で前記エクリズマブタンパク質または前記エクリズマブ変異体タンパク質を発現させるために構成的である、請求項3に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質;
[6]
0.1mmol/mol未満のグリコリルノイラミン酸(NGNA)、
0.02nmol/mgタンパク質未満のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、
または
全グリカンの約99%超である中性グリカンの割合、
の構造的特徴のうちの1つ以上を有する、請求項3~5のいずれか一項に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質;
[7]
前記タンパク質は、
検出可能なN-グリコリルノイラミン酸(NGNA)を含まないこと、
検出可能なN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を含まないこと、
または
全グリカンの約99%超である中性グリカンの割合、
の構造的特徴のうちの1つ以上を有する、請求項3~6のいずれか一項に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質;
[8]
前記CHO細胞は、いずれの動物由来原料も含まない組織培養培地で培養される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質;
[9]
チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞でエクリズマブタンパク質またはエクリズマブ変異体タンパク質を発現させることが可能な発現ベクターを担持する、前記CHO細胞;
[10]
前記発現ベクターは、前記CHO細胞で前記エクリズマブタンパク質または前記エクリズマブ変異体タンパク質を発現させるために誘導的である、請求項9に記載のCHO細胞;
[11]
前記発現ベクターは、前記CHO細胞で前記エクリズマブタンパク質または前記エクリズマブ変異体タンパク質を発現させるために構成的である、請求項9に記載のCHO細胞;
[12]
前記CHO細胞は、いずれの動物由来原料も含まない組織培養培地で培養される、請求項9~11のいずれか一項に記載のCHO細胞;
[13]
請求項1または請求項3に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物;
[14]
前記組成物は、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、または腹腔内投与のために製剤化される、請求項13に記載の薬学的組成物;
[15]
前記組換えエクリズマブタンパク質または前記組換えエクリズマブ変異体タンパク質の濃度は、少なくとも10mg/mLであるが、100mg/mL以下である、13~14のいずれか一項に記載の薬学的組成物;
[16]
生体試料における末端補体の形成を阻害するための方法であって、前記方法は、生体試料を前記生体試料中で末端補体を阻害するのに効果的な量の治療薬と接触させることを含み、前記生体試料は、前記治療薬の非存在下で末端補体の産生が可能であり、前記治療薬は、請求項1または請求項3に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質である、方法;
[17]
エクリズマブまたはエクリズマブ変異体を用いた治療を必要とする患者を治療する方法であって、前記患者に請求項1または請求項3に記載の組換えエクリズマブタンパク質または組換えエクリズマブ変異体タンパク質を投与することを含む、方法;
[18]
前記患者は、補体関連疾患であると診断されている、請求項17に記載の方法;
[19]
前記患者は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(「PNH」)、非典型溶血性尿毒症症候群(「aHUS」)、または志賀毒素産生大腸菌による溶血性尿毒症症候群(「STEC-HUS」)であると診断されたことがある、請求項17または請求項18に記載の方法;
[20]
前記補体関連疾患は、加齢黄斑変性、移植片拒絶、骨髄拒絶、腎移植片拒絶、皮膚移植片拒絶、心臓移植片拒絶、肺移植片拒絶、肝移植片拒絶、関節リウマチ、肺疾患、虚血再灌流障害、非典型溶血性尿毒症症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、発作性夜間ヘモグロビン尿症、デンスデポジット病、加齢黄斑変性、自然胎児消失、微量免疫型血管炎、表皮水疱症、再発性胎児消失、多発性硬化症、外傷性脳損傷、重症筋無力症、寒冷凝集素症、皮膚筋炎、デゴス病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、乾癬、天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、多巣性運動ニューロパチー、視神経脊髄炎、抗リン脂質抗体症候群、敗血症、出血熱、および難治性抗リン脂質抗体症候群からなる群から選択される、請求項19に記載の方法;
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2023145485000001.xml
【外国語明細書】