(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145528
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】生体試料中において改善した性能を有する、TIMP2に関するアッセイ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20231003BHJP
C07K 16/38 20060101ALI20231003BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20231003BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20231003BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/38 ZNA
G01N33/531 A
G01N33/53 D
C12P21/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115029
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2019554789の分割
【原出願日】2018-04-04
(31)【優先権主張番号】62/482,089
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】511053023
【氏名又は名称】アスチュート メディカル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ヴィジャイェンドラン, ラヴィ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタスッバラオ, スリヴァタサ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒトTIMP2に結合する抗体又はその抗原結合性断片を提供する。
【解決手段】TIMP2の新規エピトープに結合する抗体であって、特定のアミノ酸配列を有する。単離されたTIMP2抗体またはその抗原結合性断片による処置を必要とする、ヒト被験体を含む被験体を処置するための方法が提供される。さらに、本発明の抗TIMP2抗体および抗原結合性断片の医薬組成物または滅菌組成物であって、抗体またはその抗原結合性断片が、薬学的に許容される担体または賦形剤と混合されている組成物が提供される。さらに、本発明の抗TIMP2抗体もしくはその抗原結合性断片またはその医薬組成物を含む1つまたは複数の構成成分を含むキットが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本出願の明細書に記載される発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年4月5日に出願された米国仮特許出願第62/482,089号の利益を主張し、全ての表、図および特許請求の範囲を含む、出願の全てが参照による本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景についての以下の議論は、本発明を理解するに当たり読み手を補助するために提供されるにすぎず、本発明に対する先行技術について記載するまたは先行技術を構成することを認めるものではない。
【0003】
メタロプロテイナーゼ阻害剤2(「メタロプロテイナーゼ2の組織阻害剤」および「TIMP2」としても公知のSwiss-Prot P16035)は、メタロプロテイナーゼと複合体形成し、触媒性亜鉛補因子に結合することによってメタロプロテイナーゼを不可逆的に不活性化する分泌タンパク質である。TIMP2は、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-13、MMP-14、MMP-15、MMP-16およびMMP-19に作用することが公知である。TIMP2は、内皮細胞の増殖を抑制することが報告されている。結果として、コード化タンパク質は、血管新生因子に応じた静止組織の増殖を抑制することによって、およびリモデリングを受けている組織のプロテアーゼ活性を阻害することによって、組織恒常性の維持における役割を果たすことが示唆される。
【0004】
さらに、そのそれぞれが、表、図および特許請求の範囲のすべてを含む全体として、参照により本明細書に援用されるWO2010/048346およびWO2011/075744は、個別にとマルチマーカーパネルでの両方で、被験体の腎臓の状況を評価するためのTIMP2の使用について記載する。特に、イムノアッセイによって測定されるTIMP2レベルは、腎臓の状況のリスク層別化、診断、ステージ分類、予後、分類およびモニタリングと相関することが示される。PCT/US2014/050195は、このようなアッセイにおいて使用するためのある特定の抗体を開示する。
イムノアッセイなどの特異的結合アッセイから得られるシグナルは、1つまたは複数の結合種(例えば、抗体)と標的生体分子(すなわち、分析物)および抗体が結合する必要なエピトープ(複数可)を含有するポリペプチドとの間に形成される複合体の直接的結果である。イムノアッセイは、分析物を「検出する」ことができる場合が多いが、抗体のエピトープはおよそ8個のアミノ酸であるため、目的のマーカーを検出するよう構成されたイムノアッセイは、マーカーの配列に関連するポリペプチドがアッセイにおいて使用される抗体(複数可)に結合するのに必要なエピトープ(複数可)を含有する限り、マーカーの配列に関連するポリペプチドも検出することとなる。このようなアッセイは、バイオマーカーの全長を検出し得、アッセイの結果は、目的のバイオマーカーの濃度として表され得るが、アッセイからのシグナルは、実際には、試料中に存在するこのような「免疫反応性」ポリペプチドすべての結果である。このような結合アッセイは、追加の種、例えば、結合タンパク質、受容体、ヘパリン、脂質、糖など(但し、これらの追加の種は、結合種と標的生体分子の間の結合を妨げないことを条件とする)と複合体を形成する生体試料中に存在する免疫反応性ポリペプチドも検出する可能性がある。しかし、典型的には、特異的結合アッセイは、精製した分析物を使用して作り出され、複合体形成および断片化のパターンは考慮されない。これは、このような追加の結合種の正体が公知でない場合に、特にそうである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/048346号
【特許文献2】国際公開第2011/075744号
【特許文献3】国際出願番号PCT/US2014/050195
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、TIMP2の新規エピトープに結合する抗体を提供することである。このような抗体は、特に、腎損傷の評価において、およびTIMP2結合が望まれる治療方法において使用される場合、臨床性能が改善したイムノアッセイにおける使用を見出すことができる。
【0007】
第一の態様では、本発明は、ヒトTIMP2に結合する抗体またはその抗原結合性断片であって、
アミノ酸配列ESISGW(配列番号1)またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
アミノ酸配列RAS(配列番号2)またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、
アミノ酸配列QCSYGINGNSEHGNP(配列番号3)またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3、
アミノ酸配列GFTISSNYY(配列番号4)またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
アミノ酸配列ILGGSGTYT(配列番号5)またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、および
アミノ酸配列ARQAPADTYLYGGYGPFNL(配列番号6)またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3
のうちの1つまたは複数、必要に応じてそれらのうちのそれぞれを含む、抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0008】
ある特定の実施形態では、このような抗体または抗原結合性断片は、
配列番号1のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列;配列番号2のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列;および/あるいは配列番号3のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖配列;ならびに/あるいは
配列番号4のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列;配列番号5のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列;および/あるいは配列番号6のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖配列
を含む。
【0009】
ある特定の好ましい実施形態では、このような抗体または抗原結合性断片は、
アミノ酸配列
【化1】
またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域配列;および/あるいは
アミノ酸配列
【化2】
またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域配列
を含む。
【0010】
ある特定の最も好ましい実施形態では、このような抗体または抗原結合性断片は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域配列および配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0011】
ある特定の最も好ましい実施形態では、このような抗体または抗原結合性断片は、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖配列および配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖配列を含む。このような抗体は、本明細書において、抗体「40H2-40K3」と称される。
【0012】
さらに別の関連する態様では、上記の抗体または抗原結合性断片は、同様にTIMP2と結合する第2の抗体または抗原結合性断片と共にサンドイッチ複合体を形成する1対の抗体のメンバーである。ほんの一例として、第2の抗体は、6E2.1として以下に記載される抗体またはその抗原結合性断片であってもよい。
【0013】
関連する態様では、本発明は、TIMP2に結合する抗体または結合断片、例えば、抗体40H2-40K3であって、その抗体が、配列NHRYQMGCECKI(配列番号21)に結合する抗体または結合断片に関する。この配列に結合する好ましい抗体は、上記の抗体であり、最も好ましくは、このような抗体または抗原結合性断片は、配列番号8のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域配列および配列番号7のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域配列を含む。ある特定の最も好ましい実施形態では、このような抗体または抗原結合性断片は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域配列および配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域配列を含む。エピトープ結合は、好ましくは、TIMP-2配列(配列番号45)に由来する1つのアミノ酸残基のステッピングを伴う直鎖状の15マーのペプチドのネスティドセット(nested set)内で、非突然変異(ペプチドセット1)および二重アラニン突然変異(ペプチドセット2)を使用するアラニンスキャニングによって決定される。例えば、McBrideら、Methods Mol. Biol.1352巻:67~83頁、2016年;Kongら、J. Virol.86巻:12115
~28頁、2012年を参照のこと。
【0014】
ある特定の実施形態では、配列NHRYQMGCECKI(配列番号21)に結合する抗体は、不連続エピトープに結合する。これらの実施形態では、TIMP2に結合する抗
体または結合断片は、配列HPQQAFCNA(配列番号22)および配列RSDGSCAWYR(配列番号23)にさらに結合する。
【0015】
関連する態様では、本発明は、ヒトTIMP2に結合するこのような抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸に関する。
【0016】
別の態様では、本発明は、ヒトTIMP2に結合する抗体またはその抗原結合性断片であって、
アミノ酸配列DHINNW(配列番号24)またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
アミノ酸配列SGA(配列番号25)またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、
アミノ酸配列QQYWSTPFT(配列番号26)またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3、
アミノ酸配列GYSFTSYW(配列番号27)またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
アミノ酸配列IDPSDSET(配列番号28)またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、および
アミノ酸配列ARRDYGSRYDAMDY(配列番号29)またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3
のうちの1つまたは複数、必要に応じてそれらのうちのそれぞれを含む、抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0017】
ある特定の実施形態では、このような抗体または抗原結合性断片は、
配列番号24のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列;配列番号25のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列;および/あるいは配列番号26のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖配列;ならびに/あるいは
配列番号27のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列;配列番号28のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列;および/あるいは配列番号29のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖配列
を含む。
【0018】
ある特定の好ましい実施形態では、このような抗体または抗原結合性断片は、
アミノ酸配列
【化3】
またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域配列;および/あるいは
アミノ酸配列
【化4】
またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域配列
を含む。
【0019】
ある特定の最も好ましい実施形態では、このような抗体または抗原結合性断片は、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域配列および配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0020】
ある特定の最も好ましい実施形態では、このような抗体または抗原結合性断片は、配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖配列および配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖配列を含む。このような抗体は、本明細書において、抗体「6E2.1」と称される。
【0021】
さらに別の関連する態様では、上記の抗体または抗原結合性断片は、同様にTIMP2に結合する第2の抗体または抗原結合性断片と共にサンドイッチ複合体を形成する1対の抗体のメンバーである。ほんの一例として、第2の抗体は、40H2-40K3として上述されている抗体またはその抗原結合性断片であってもよい。
【0022】
関連する態様では、本発明は、TIMP2に結合する抗体または結合断片、例えば、抗体6E2.1であって、その抗体が、配列PWDTLSTTQKK(配列番号44)に結合する抗体または結合断片に関する。この配列に結合する好ましい抗体は、上記の抗体であり、最も好ましくは、このような抗体または抗原結合性断片は、配列番号31のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域配列および配列番号30のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域配列を含む。ある特定の最も好ましい実施形態では、このような抗体または抗原結合性断片は、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域配列および配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域配列を含む。エピトープ結合は、好ましくは、TIMP-2配列(配列番号45)に由来する1つのアミノ酸残基のステッピングを伴う直鎖状の15マーのペプチドのネスティドセット内で、単一および二重アラニン突然変異を使用するアラニンスキャニングによって決定される。例えば、McBrideら、Methods
Mol. Biol.1352巻:67~83頁、2016年;Kongら、J. Virol.86巻:1
2115~28頁、2012年を参照のこと。
【0023】
関連する態様では、本発明は、ヒトTIMP2に結合するこのような抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸に関する。
【0024】
特許請求される方法において使用するための抗体または抗原結合性断片は、様々な種から得ることができる。例えば、本発明の抗体または抗原結合性断片は、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ヒト、リャマもしくはラクダの配列、またはこのような配列の組み合わせ(いわゆるキメラ抗体)である免疫グロブリン配列を含んでもよい。このような抗体または抗原結合性断片は、モノクローナルであってもポリクローナルであってもよい。本発明において使用するための抗体は、イムノアッセイ
におけるそれらの性能によって特定され、次いで、その性能に関連するエピトープを理解するためのエピトープマッピングによって特徴付けられ得る。ウサギ抗体またはウサギ抗体に由来するヒト化バージョンが好ましい。
【0025】
このような抗体または抗原結合性断片は、シグナル発生エレメント(siganl development element)にコンジュゲートされているかまたは固体支持体に固定されていてもよい。さらに、このような抗体または抗原結合性断片は、いくつかの競合的およびサンドイッチアッセイフォーマットにおいて使用することができる。サンドイッチアッセイの例では、第1の抗体または抗原結合性断片(検出可能に標識された)および第2の抗体または抗原結合性断片(試験デバイスの所定のゾーンに固定された)は、試験デバイスの所定のゾーンで、試料中のTIMP2とサンドイッチ複合体を形成する。サンドイッチアッセイでは、第1および第2の抗体または抗原結合性断片は、同一であっても(特に、ポリクローナル抗体が使用される場合)異なっていてもよい。よって、本発明の抗体または抗原結合性断片を、サンドイッチ対において使用するかまたはポリクローナル抗体もしくはアプタマーなどのモノクローナル抗体ではない別の結合実体と共に個々に使用してもよい。
【0026】
本発明の抗体または抗原結合性断片は、生体試料中のTIMP-2を検出するための試験キットにおける試薬として使用することができる。このような試験キットは、例えば、生体試料中のヒトTIMP-2の存在または量に関連する検出可能なシグナルを発生させるよう構成された使い捨ての試験デバイスを含んでもよい。あるいは、このような試験キットは、使い捨ての試験デバイスを利用しない臨床分析器においてアッセイを実施するよう作り出されてもよい。好ましくは、試験キットは、in vitro診断用である。「in vitro診断用」という用語は、本明細書で使用される場合、それが、単にまたは主として、生理学的もしくは病理学的状態に関するかまたは先天的異常に関する情報を提供することを目的として、あるいは潜在的レシピエントとの安全性および適合性を決定するために、あるいは治療手段をモニタリングするために、ヒトの身体に由来する血液および組織供与物を含む検体の検査のために、製造業者によって、単独で使用されるかまたは組み合わせて使用されるかに関係なく、in vitroで使用されることを意図する試薬、試薬製品、標準物質、対照材料、キット、機器、装置、設備、またはシステムである医学デバイスであることを指す。
【0027】
ある特定の実施形態では、イムノアッセイは、ラテラルフローフォーマットで実施される。ラテラルフロー試験は、試験試料がクロマトグラフィー様式で吸水性または非吸水性多孔性固体基質に沿って流れるイムノアッセイの形態である。ラテラルフロー試験は、競合的またはサンドイッチフォーマットアッセイのいずれかとして作動することができる。好ましいラテラルフローデバイスは、使い捨ての、単回使用試験デバイスである。試料は、試験デバイスに適用ゾーンにおいて適用され、基質を移行し、そこで、抗体または抗原で前処理されたラインまたはゾーンに遭遇する。「試験ゾーン」という用語は、本明細書で使用される場合、目的の分析物の存在または量に関連するシグナルを発生させるために情報が得られる、ラテラルフロー試験ストリップ上の別個の位置を指す。検出可能なシグナルは、視覚的に読み取ることができるか、または使い捨ての試験デバイスを分析機器、例えば、反射率計、蛍光光度計、もしくは透過光度計へと挿入することによって得ることができる。このリストは、制限することを意味しない。試料は、前処理なしで、適用ゾーンに適用してもよく、または適用前に1つまたは複数のアッセイ試薬と予め混合されてもよい。後者の場合、抗体は、使い捨ての試験デバイスとは別の容器中に提供され得る。
【0028】
本発明の抗体または抗原結合性断片は、試料が表面と接触すると試料中に溶け込むように、拡散により、使い捨ての試験デバイス内の表面に固定されてもよい。サンドイッチアッセイフォーマットでは、この拡散によって結合した抗体は、試料中のそのコグネイト抗
原に結合することができ、次いで、抗原に、検出ゾーンで、拡散によらずに結合した第2の抗体または抗原結合性断片が結合すると、検出ゾーンに固定され得る。競合的フォーマットでは、試料中のそのコグネイト抗原は、拡散によって結合した抗体への結合をめぐって、アッセイ試薬として提供される標識抗原と競合し得る。
【0029】
発明のキットはさらに、検出可能なシグナルをTIMP-2の濃度に関連付ける較正を含むことができる。例として、較正曲線は、使い捨ての試験デバイスを収容する分析機器によって読み取られる電子記憶デバイス、例えば、ROMチップ、フラッシュドライブ、RFIDタグなどにおいて提供され得る。あるいは、較正曲線は、2Dバーコードなどの光学的に読み取られるか、またはネットワーク接続を介して伝送されるコード標識で提供することができる。次いで、分析機器によって、この較正曲線が使用され、アッセイからの検出可能なシグナルをTIMP-2濃度に関連付けることができる。
【0030】
ある特定の実施形態では、本発明の1つまたは複数の抗体を使用して実施されるアッセイ方法は、生体試料中のヒトTIMP-2の存在または量に関連するシグナルを提供し、ここで、このアッセイ方法におけるTIMP-2の最低検出可能濃度は、10ng/mLまたはそれより低く、より好ましくは1ng/mLまたはそれより低く、最も好ましくは0.1ng/mLまたはそれより低い。
【0031】
関連する態様では、本発明は、生体試料中のヒトTIMP2の存在または量を決定するための方法であって、
ヒトTIMP2とのサンドイッチ複合体を一緒に形成する第1のモノクローナル抗体または抗原結合性断片および第2のモノクローナル抗体または抗原結合性断片を用いて、生体試料に対してイムノアッセイを実施するステップであって、イムノアッセイが、サンドイッチ複合体に結合した、生体試料中のヒトTIMP2の存在または量に関連する検出可能なシグナルを提供する、ステップと;
検出可能なシグナルを生体試料中のヒトTIMP2の存在または量に関連付けるステップ
とを含む、方法を提供する。好ましくは、イムノアッセイにおけるTIMP-2の最低検出可能濃度は、10ng/mLまたはそれより低く、より好ましくは1ng/mLまたはそれより低く、最も好ましくは0.1ng/mLまたはそれより低い。
【0032】
特に好ましい実施形態では、第1のモノクローナル抗体または抗原結合性断片および第2のモノクローナル抗体または抗原結合性断片のうちの1つまたは両方は、本明細書に記載されている本発明の抗体である。ある特定の実施形態では、
第1のモノクローナル抗体または抗原結合性断片は、配列番号8のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域配列および配列番号7のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域配列を含み、
第2のモノクローナル抗体または抗原結合性断片は、配列番号31のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域配列および配列番号30のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0033】
特に好ましい実施形態では、第1のモノクローナル抗体または抗原結合性断片は、40H2-40K3またはその抗原結合性断片であり、第2のモノクローナル抗体または抗原結合性断片は、6E2.1またはその抗原結合性断片である。
【0034】
好ましいアッセイ方法は、ヒトTIMP-2を検出するイムノアッセイを実施するステップを含む。このようなイムノアッセイは、前記体液試料を、マーカーを検出する抗体または抗原結合性断片と接触させることと、その抗体への結合を検出することとを含み得る。本発明は、概して、イムノアッセイに関して記載されるが、免疫グロブリン足場に基づかない他の結合実体(例えば、アプタマー)を、抗体の代わりに、このような方法において使用してもよい。好ましくは、体液試料は、尿、唾液、血液、血清、および血漿からなる群から選択され、最も好ましくは尿である。
【0035】
本開示の1つまたは複数の実施形態の詳細が、添付の図面および以下の説明に示される。本開示の他の特色、目的、および利点は、説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「メタロプロテイナーゼ阻害剤2」および「TIMP-2」は、メタロプロテイナーゼ阻害剤2前駆体(ヒト前駆体:Swiss-Prot P16035(配列番号45))に由来する生体試料中に存在する1つまたは複数のポリペプチドを指す。
【化5】
【0038】
以下のドメインは、メタロプロテイナーゼ阻害剤2において特定された:
【化6】
【0039】
本明細書で別段具体的に注記されていなければ、使用される用語の定義は、薬学の技術分野で使用される標準的定義である。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単一形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が別段明確に指示していなければ、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「医薬担体」への言及は、2つまたはそれよりも多いこのような担体の混合物などを含む。
【0040】
用語「被験体」は、本明細書で使用される場合、ヒトまたは非ヒト生物を指す。したがって、本明細書に記載される方法および組成物は、ヒト疾患と獣医学的な疾患の両方に適用可能である。さらに、被験体は、好ましくは生きている生物であるが、本明細書に記載される発明は、死後の分析においても同様に使用され得る。好ましい被験体はヒト、最も
好ましくは「患者」であり、「患者」は、本明細書で使用される場合、疾患または状態に対する医療を受けている生きているヒトを指す。これは、病理の徴候について調査されている、定義された病気を有さない人々を含む。
【0041】
好ましくは、分析物は、試料中で測定される。このような試料は、被験体から得ることができるか、または被験体に提供されることが意図される生物学的材料から得ることができる。例えば、試料は、被験体への移植の可能性について評価されている腎臓、および既存の傷害について腎臓を評価するために使用される分析物測定から得ることができる。好ましい試料は、体液試料である。
【0042】
「体液試料」という用語は、本明細書で使用される場合、目的の被験体、例えば、患者または移植ドナーの診断、予後、分類または評価の目的のために得られる体液の試料を指す。ある特定の実施形態では、このような試料は、進行中の状態の転帰または状態に関する処置レジメンの効果を決定する目的のために得られ得る。好ましい体液試料として、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、痰、および胸水が挙げられる。さらに、当業者は、ある特定の体液試料が、分画または精製手順、例えば、全血の血清または血漿成分への分離後に、より容易に分析されることを理解するであろう。
【0043】
用語「診断」は、本明細書で使用される場合、当業者が、患者が所与の疾患または状態に罹患しているか否かの確率(「尤度」)を推定および/または決定することができる方法を指す。本発明の場合には、「診断」は、本発明の腎臓損傷マーカーについてのアッセイ、最も好ましくはイムノアッセイの結果を使用して、必要に応じて他の臨床特徴と併せて、試料が入手およびアッセイされた被験体について急性腎損傷またはARFの診断(すなわち、発生または不発生)に至ることを含む。このような診断が「決定」されることは、診断が100%正確であることを示すことを意味しない。多くのバイオマーカーは、複数の状態の指標である。熟練臨床医は、情報が欠如している状態(informational vacuum)ではバイオマーカーの結果を使用せず、むしろ、試験結果を他の臨床的徴候と併せて使用して診断に至る。したがって、所定の診断閾値の一方の側にある測定バイオマーカーレベルは、所定の診断閾値のもう一方の側にある測定レベルに比べて、被験体における疾患の発生のより大きな尤度を示す。
【0044】
同様に、予後リスクは、所与の経過または転帰が生じる確率(「尤度」)を示唆する。予後指標のレベルまたはレベルの変化は、その結果として、罹患確率の増加(例えば、腎機能の悪化、将来のARF、または死亡)に関連し、患者の有害転帰の「尤度増加の指標」であると言及される。
【0045】
「ラテラルフロー」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に平坦な多孔性材料を通る長手方向の試薬の流れを指す。このような多孔性材料は、材料の厚さが、長さおよび幅寸法の10%以下である場合、「実質的に平坦」である。
【0046】
デバイスの第1の領域に対して本明細書で使用される「下流領域」という用語は、その流体が第1の領域にすでに到達した後に、流体が流れ込むものを指す。
【0047】
「試料適用領域」という用語は、本明細書で使用される場合、目的の流体試料が、その構成成分を決定する目的で導入されるアッセイデバイスの一部を指す。
【0048】
マーカーアッセイ
【0049】
一般的に、イムノアッセイは、目的のバイオマーカーを含有するかまたは含有する疑いがある試料をバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つの抗体と接触させること
を含む。次いで、試料中のポリペプチドの抗体への結合によって形成された複合体の存在または量を示すシグナルを発生させる。次いで、シグナルは、試料中のバイオマーカーの存在または量と関連付けられる。バイオマーカーの検出および分析のための多くの方法およびデバイスが当業者に周知である。例えば、すべての表、図面および特許請求の範囲を含むその全体が参照によりいずれも本明細書に組み込まれる米国特許第6,143,576号;同第6,113,855号;同第6,019,944号;同第5,985,579号;同第5,947,124号;同第5,939,272号;同第5,922,615号;同第5,885,527号;同第5,851,776号;同第5,824,799号;同第5,679,526号;同第5,525,524号;および同第5,480,792号、ならびにThe Immunoassay Handbook、David Wild編、Stockton Press、New York、1994年を参照のこと。
【0050】
当技術分野で公知のアッセイデバイスおよび方法は、種々のサンドイッチ、競合的、または非競合的アッセイフォーマットで標識分子を利用し、目的のバイオマーカーの存在または量と関連するシグナルを発生させることができる。好適なアッセイフォーマットは、クロマトグラフィー、質量分析、およびタンパク質「ブロッティング」方法も含む。さらに、ある特定の方法およびデバイス、例えば、バイオセンサーおよび光学イムノアッセイを、標識分子を必要とすることなく、分析物の存在または量を決定するために用いることができる。例えば、すべての表、図面および特許請求の範囲を含むその全体が参照によりいずれも本明細書に組み込まれる米国特許第5,631,171号;および同第5,955,377号を参照のこと。当業者は、ロボット機器、例えば、これらに限定されないが、Beckman ACCESS(登録商標)、Abbott AXSYM(登録商標)、Roche ELECSYS(登録商標)、Dade Behring STRATUS(登録商標)システムは、イムノアッセイを実施することができるイムノアッセイ分析器の中の1つであることも認識する。しかし、任意の好適なイムノアッセイ、例えば、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、競合結合アッセイなどを利用してもよい。
【0051】
抗体または他のポリペプチドは、アッセイにおいて使用するための様々な固体支持体上に固定されていてもよい。特異的結合メンバーを固定するために使用され得る固相として、固相結合アッセイにおける固相として開発されおよび/または使用されるものが挙げられる。好適な固相の例として、膜フィルター、セルロース系の紙、ビーズ(ポリマー、ラテックスおよび常磁性粒子を含む)、ガラス、シリコンウエハー、微小粒子、ナノ粒子、TentaGel、AgroGel、PEGAゲル、SPOCCゲル、およびマルチプルウェルプレートが挙げられる。アッセイストリップは、1つまたは複数の抗体を一列に固体支持体上でコーティングすることによって調製することができる。次いで、このストリップは、試験試料中に浸漬され、次いで、洗浄および検出ステップにより直ちに処理され、測定可能なシグナル、例えば、着色スポットを生じ得る。抗体または他のポリペプチドは、アッセイデバイスの特異的ゾーンに、アッセイデバイス表面に直接コンジュゲートすることによって、または間接的により結合させることによって、結合させることができる。後者の場合の一例では、抗体または他のポリペプチドは、粒子または他の固体支持体に固定されていてもよく、その固体支持体はデバイス表面に固定されていてもよい。
【0052】
生物学的アッセイでは、検出するための方法が必要とされ、結果の定量化のための最も一般的な方法の1つは、検出可能な標識を、研究される生物系内の構成成分のうちの1つに対する親和性を有するタンパク質または核酸にコンジュゲートさせることである。検出可能な標識として、それ自体が検出可能である分子(例えば、蛍光部分、電気化学標識、金属キレートなど)および検出可能な反応生成物の生成により(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素)またはそれ自体検出可能であり得る特異的結合分子(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、マルトース、オリゴヒスチジン、
2,4-ジニトロベンゼン、ヒ酸フェニル、ssDNA、dsDNAなど)により間接的に検出され得る分子を挙げることができる。
【0053】
固相および検出可能な標識コンジュゲートの調製には、化学架橋剤の使用が含まれる場合が多い。架橋試薬は、少なくとも2つの反応基を含有し、一般的に、ホモ官能性架橋剤(同一の反応基を含有する)およびヘテロ官能性架橋剤(非同一の反応基を含有する)に分類される。アミン、スルフヒドリルを介して連結する、または非特異的に反応するホモ二官能性架橋剤は、多くの商業的供給源から入手可能である。マレイミド、ハロゲン化アルキルおよびアリール、アルファ-ハロアシルならびにピリジルジスルフィドは、チオール反応基である。マレイミド、ハロゲン化アルキルおよびアリール、ならびにアルファ-ハロアシルは、スルフヒドリルと反応し、チオールエーテル結合を形成し、一方、ピリジルジスルフィドは、スルフヒドリルと反応し、混合ジスルフィドを生成する。ピリジルジスルフィド生成物は、切断可能である。イミドエステルはまた、タンパク質-タンパク質架橋に非常に有用である。様々なヘテロ二官能性架橋剤は、それぞれコンジュゲーションを成功させるための異なる属性を組み合わせて市販されている。
【0054】
ある特定の態様では、本発明は、記載されているマーカーの分析のためのキットを提供する。キットは、マーカーに特異的に結合する少なくとも1つの抗体を含む少なくとも1つの試験試料の分析のための試薬を含む。キットはまた、本明細書に記載の診断および/または予後相関のうちの1つまたは複数を実施するためのデバイスおよび説明書も含み得る。好ましいキットは、サンドイッチアッセイを実施するための抗体対、または競合的アッセイを実施するため、分析物のための標識種を含む。好ましくは、抗体対は、固相にコンジュゲートされた第1の抗体および検出可能な標識にコンジュゲートされた第2の抗体を含み、ここで、第1および第2の抗体のそれぞれは、腎臓損傷マーカーに結合する。最も好ましくは、抗体のそれぞれは、モノクローナル抗体である。キットを使用し、相関を実施するための説明書は、ラベルの形態とすることができ、これは、その製造、輸送、販売または使用中の任意の時に、キットに添付された、またはそうでなければキットに付随する、任意の記載されたまたは記録された資料を指す。例えば、ラベルという用語は、広告チラシおよびパンフレット、包装材料、説明書、オーディオまたはビデオカセット、コンピュータディスク、ならびにキット上に直接プリントされた文字を包含する。
【0055】
ある特定の実施形態では、マーカーアッセイは、単回使用の使い捨ての試験デバイスを使用して実施される。このような試験デバイスは、ラテラルフローデバイスの形態をとることが多く、これは、現在、処方箋なしで購入できる妊娠テストの一般的な使用からよく知られている。一般的に、これらのアッセイデバイスは、伸長したベース層を有し、その上では、試料添加領域と評価領域の間で区別がなされ得る。典型的な使用では、試料は、試料添加領域に適用され、ベース層に平行に走っている液体輸送経路に沿って流れ、次いで、評価領域に流れ込む。捕捉試薬は、評価領域中に存在し、捕捉された分析物は、捕捉された分析物に付随している視認可能な部分を検出するための様々なプロトコールにより検出することができる。例えば、アッセイによって、視認可能なシグナル、例えば、色変化、蛍光、ルミネセンスなどを生じ、その際には、生体試料中の分析物の有無が示され得る。
【0056】
試料添加領域は、例えば、ハウジング内のオープンチャンバーの形態;吸収パッドの形態;などで提供することができる。試料添加領域は、様々な形状、すなわち、円形、長方形、正方形などのポートとすることができ、またはその領域は、デバイス内のトラフとすることができる。
【0057】
フィルターエレメントを、試料から粒子を濾過するため、例えば、血液から血液細胞を除去するかまたは遅延させるために、試料添加領域内、その上、またはそれに隣接して配
置することができ、その結果、血漿は、デバイスを通ってさらに移動することができる。次いで、濾液は、フィルターに流動的に接続された多孔性部材中に移動することができる。血液中に存在する細胞材料を除去するかまたは遅延させるのに好適なフィルターは、当技術分野で周知である。例えば、その全体が参照によりいずれも本明細書に組み込まれる米国特許第4,477,575号;同第5,166,051号;同第6,391,265号;および同第7,125,493号を参照のこと。多くの好適な材料が当業者に公知であり、ガラス繊維、合成樹脂繊維、孔のサイズが約65から約15μmで変化する非対称膜フィルターを含む種々のタイプの膜、およびこのような材料の組み合わせを挙げることができる。さらに、フィルターエレメントは、赤血球の血液血漿からの分離を促進する、1つまたは複数の化学物質を含むことができる。このような化学物質の例は、トロンビン、レクチン、カチオン性ポリマー、1つまたは複数の赤血球表面抗原に対する抗体などである。赤血球の血漿からの分離を促進するこのような化学物質(複数可)は、フィルターエレメントにおいて、共有結合手段、非特異的吸収などにより提供されてもよい。
【0058】
ある特定の実施形態では、標識ゾーンは、試料受容ゾーンの下流に位置し、拡散により位置付けられた標識試薬(目的の分析物に結合するかまたは結合種への結合をめぐって目的の分析物と競合する)を含有する。あるいは、標識試薬が試料受容ゾーンへの適用前に試料と予め混合される場合、標識ゾーンはなしにすることもできる。検出ゾーンは、標識ゾーンの下流に配置され、目的の分析物に結合する固定された捕捉試薬を含有する。
【0059】
本発明において使用するための膜に対する最適な孔径は、約10から約50μmである。膜は、典型的には、約1ミルから約15ミルの厚さであり、典型的には、5から10ミルの範囲であるが、最大200ミル、およびそれより厚くてもよい。膜は、一般的に、水不浸透性層、例えば、Mylar(登録商標)ポリエステルフィルム(DuPont Teijin Films)により裏打ちされ得る。用いられる場合、バッキングは、一般的に、接着剤、例えば、3M 444両面接着テープによって、膜に固定される。典型的には、水不浸透性バッキングが、厚さの薄い膜のために使用される。多種多様なポリマーが使用され得るが、但し、それらがアッセイ構成成分に非特異的に結合せず、試料の流れを妨害しないことを条件とする。例示的なポリマーとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどが挙げられる。あるいは、膜は、自立するものであってもよい。他の非吸水性膜、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルと塩化ビニルとのコポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレンなどもまた使用することができる。種々の実施形態では、標識ゾーン材料は、ブロッキング剤および安定化剤を含む溶液で前処理されてもよい。ブロッキング剤として、ウシ血清アルブミン(BSA)、メチル化BSA、カゼイン、脱脂粉乳が挙げられる。デバイスは、追加の構成成分、例えば、例として、緩衝剤、HAMA阻害剤、洗浄剤、塩(例えば、カルシウム、マグネシウム、カリウムなどの塩化物および/または硫酸塩)、およびタンパク質構成成分(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、乳タンパク質など)も含むことができる。このリストは制限することを意味するものではない。
【0060】
デバイスは、試験デバイスが適正に動作したことを決定するために読み取られる種々のコントロール位置をさらに含んでもよい。例として、手順コントロールゾーンは、アッセイ検出ゾーンとは別に、試料の流れが予想通りであることを確認するために提供され得る。コントロールゾーンは、好ましくは、空間的に別個の領域であり、そこで、試薬の適正な流れを示すシグナルが発生され得る。手順コントロールゾーンは、目的の分析物、またはその断片を含有してもよく、これらに、分析物アッセイにおいて使用される過剰の標識抗体が結合することができる。作動中、標識試薬は、目的の分析物が試験試料に存在しない場合でも、コントロールゾーンに結合する。コントロールラインにおけるシグナルの出現は、陰性の結果に対しても、試験結果を読み取ることができる時間を示すという点で、コントロールラインの使用は助けになる。よって、予想されたシグナルは、コントロール
ラインで現れた場合、捕捉ゾーン中のシグナルの有無を示すことができる。デバイスは、陰性コントロール領域をさらに含んでもよい。このコントロール領域の目的は、試験デバイスが適正に作用していないことをユーザーに警告することである。適正に作用している場合、シグナルまたはマークは、陰性コントロール領域で視認されないはずである。
【0061】
このようなアッセイデバイスの外側のケーシングまたはハウジングは、種々の形態をとり得る。典型的には、細長いケーシングを含み、複数の中間取り付け部品(interfitting part)を有し得る。特に好ましい実施形態では、ハウジングは、上カバーおよび底部支持体を含む。上カバーは、適用開口部および観察ポートを含有する。好ましい実施形態では、ハウジングは、水分不浸透性固体材料、例えば、プラスチック材料から構成される。様々な市販のプラスチック、例えば、これらに限定されないが、ビニル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスルファン、ポリエステル、ウレタン、およびエポキシがハウジングを構築するために使用され得ることが企図される。ハウジングは、従来の方法論、例えば、当技術分野で周知であり、使用されている標準成形技術によって調製され得る。ハウジングは、成形技術によって生成することができ、成形技術として、これらに限定されないが、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形、ブロー成形、押出成形、発泡成形、および熱成形が挙げられる。前述の成形技術は、当技術分野で周知であり、そのため、本明細書では詳細に議論しない。例えば、Processes And Materials Of Manufacture、第3版、R. A. Lindsberg(1983年)Allyn and Baron、393~431頁を参照のこと。
【0062】
必要な場合、用いられる検出可能な標識の比色分析、ルミネセンス、または蛍光強度は、次いで、標識に適切な機器を用いて評価され得る。例として、蛍光光度計は、蛍光標識を検出するするために使用することができ;反射率計は、光を吸収する標識を検出するために使用することができるなどである。試料中の目的の分析物の濃度は、測定された応答を試料流体中の分析物の量に相関させることによって決定することができる。
【0063】
アッセイの相関
【0064】
「相関させること」および「関連付けること」という用語は、本明細書で使用される場合、アッセイにおけるバイオマーカーの測定に関しては、アッセイから得られたシグナルに基づき、試料中のバイオマーカーの存在、またはより好ましくは量を決定することを指す。これは、アッセイに参加する1つの種に関して、検出可能な標識から発生したシグナルを、シグナルをバイオマーカーの濃度または閾値量に変換するために使用することができる所定の検量線と比較する形態をとる場合が多い。
【0065】
「相関させること」および「関連付けること」という用語は、本明細書で使用される場合、診断または予後のためのバイオマーカーの使用に関しては、患者におけるバイオマーカー(複数可)の存在または量を、所与の状態を患うことが知られているか、もしくはそのリスクがあることが知られている個人;または所与の状態を有さないことが知られている個人におけるその存在または量と比較することを指す。これは、バイオマーカー濃度の形態のアッセイ結果を、疾患の発生もしくは不発生またはいくつかの将来の転帰の可能性を示すために選択された所定の閾値と比較する形態をとる場合が多い。
【0066】
診断閾値を選択することは、とりわけ、疾患の確率、異なる試験閾値での真偽の診断の分布、および診断に基づく処置の結果(または処置の失敗)の推定の検討に関与する。例えば、非常に有効であり、リスクのレベルが低い特定の療法を投与することを検討する際、試験はほとんど必要なく、これは、臨床医が、実質的な診断の不確実性を受け入れることができるからである。他方、処置の選択がより有効でなくよりリスクが高い状況では、臨床医は、診断確実性のより高い程度を必要とする場合が多い。よって、コスト/ベネフ
ィット分析は、診断閾値を選択することに関与する。
【0067】
好適な閾値は、様々な方法で決定され得る。例えば、心筋トロポニンを使用する急性心筋梗塞の診断に対する1つの推奨される診断閾値は、正常集団において見られる濃度の97.5パーセンタイルである。別の方法は、同じ患者由来の連続試料を見ることとしてもよく、この場合、前の「ベースライン」結果が、バイオマーカーレベルの一時的な変化をモニタリングするために使用される。
【0068】
集団研究は、決定閾値を選択するために使用されてもよい。受信者作動特性(「ROC」)は、レーダー画像の分析のために第二次世界大戦中に開発されたシグナル検出理論の分野から生じ、ROC分析は、「疾患」亜集団を「非疾患」亜集団から最もよく区別することができる閾値を選択するために使用されることが多い。この場合における偽陽性は、個人の試験は陽性であるが、実際には、疾患を有していない場合に生じる。他方、偽陰性は、個人の試験は陰性であり、健康であることが示唆され、その際、実際には、疾患を有している場合に生じる。ROC曲線を描くために、決定閾値が連続して変動するので、真陽性率(TPR)および偽陽性率(FPR)が決定される。TPRは、感度と同等であり、FPRは1-特異性に等しいので、ROCグラフは、感度対(1-特異性)プロットと呼ばれる場合がある。完全な試験は、1.0のROC曲線下面積を有し;ランダム試験は、0.5の面積を有することとなる。閾値は、特異性および感度の許容されるレベルを提供するよう選択される。
【0069】
この状況では、「疾患」は1つの特徴(疾患もしくは状態の存在またはいくつかの転帰の発生)を有する集団を指すことを意味し、「非疾患」は、その特徴を欠く集団を指すことを意味する。単一の決定閾値は、このような方法の最も簡単な適用であるが、複数の決定閾値が使用され得る。例えば、第1の閾値未満では、疾患の非存在は比較的高い信頼度で割り当てられ、第2の閾値を超えると、疾患の存在はまた、比較的高い信頼度で割り当てられ得る。2つの閾値間は、未定であると考えられてもよい。これは、本質的に例示にすぎないことが意味される。
【0070】
閾値比較に加えて、アッセイ結果を患者分類(疾患の発生または不発生、転帰の可能性など)に相関させるための他の方法として、決定木、ルールセット、ベイジアン方法、およびニューラルネットワーク方法が挙げられる。これらの方法は、被験体が複数の分類から1つの分類に属する程度を表す確率値を生じ得る。
【0071】
試験精度の測定値は、Fischerら、Intensive Care Med.29巻:1043~51頁、2003年において記載されるように得ることができ、所与のバイオマーカーの有効性を決定するために使用することができる。これらの測定値は、感度および特異性、予測値、尤度比、診断オッズ比、ならびにROC曲線面積を含む。ROCプロットの曲線下面積(「AUC」)は、分類指標が、ランダムに選択された陽性例をランダムに選択された陰性例よりも高くランク付けする確率に等しい。ROC曲線下面積は、考慮する2つの群が連続データのものである場合に2つの群において得られるスコア間の中央値差に対して試験する、マンホイットニーのU検定、またはランクのウィルコクソン検定と同等であると考えることができる。
【0072】
上記で議論されるように、好適な試験は、これらの種々の測定値に関する以下の結果のうちの1つまたは複数を示すことができる:0.5より高い、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.7、さらにより好ましくは少なくとも0.8、なおより好ましくは少なくとも0.9および最も好ましくは少なくとも0.95の特異性、対応する感度は0.2より高く、好ましくは0.3より高く、より好ましくは0.4より高く、さらにより好ましくは少なくとも0.5、なおより好ましくは0.6、その上より好ま
しくは0.7より高く、さらにより好ましくは0.8より高く、より好ましくは0.9より高く、最も好ましくは0.95より高く;0.5より高い、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.7、さらにより好ましくは少なくとも0.8、なおより好ましくは少なくとも0.9、最も好ましくは少なくとも0.95の感度、対応する特異性は0.2より高く、好ましくは0.3より高く、より好ましくは0.4より高く、さらにより好ましくは少なくとも0.5、なおより好ましくは0.6、その上より好ましくは0.7より高く、さらにより好ましくは0.8より高く、より好ましくは0.9より高く、最も好ましくは0.95より高く;少なくとも75%の特異性と合わせた少なくとも75%の感度;0.5より大きい、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは0.7、さらにより好ましくは少なくとも0.8、なおより好ましくは少なくとも0.9、最も好ましくは少なくとも0.95のROC曲線面積;1とは異なるオッズ比、好ましくは少なくとも約2もしくはそれより大きいかまたは約0.5もしくはそれより小さく、より好ましくは少なくとも約3もしくはそれより大きいかまたは約0.33もしくはそれより小さく、さらにより好ましくは少なくとも約4もしくはそれより大きいかまたは約0.25もしくはそれより小さく、なおより好ましくは少なくとも約5もしくはそれより大きいかまたは約0.2もしくはそれより小さく、最も好ましくは少なくとも約10もしくはそれより大きいかまたは約0.1もしくはそれより小さく;1を超える、少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、さらにより好ましくは少なくとも5、最も好ましくは少なくとも10の陽性尤度比(感度/(1-特異性)として計算される);ならびにあるいは、1未満、0.5未満または0.5に等しい、より好ましくは0.3未満または0.3に等しい、最も好ましくは0.1未満または0.1に等しい陰性尤度比((1-感度)/特異性として計算される)。
【0073】
抗体
【0074】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、抗原またはエピトープに特異的に結合可能な1つもしくは複数の免疫グロブリン遺伝子、またはその断片由来の、それらからモデル化された、またはそれらにより実質的にコードされるペプチドまたはポリペプチドを指す。例えば、Fundamental Immunology、第3版、W.E. Paul編、Raven Press、N.Y.(1993年);Wilson(1994年;J. Immunol. Methods、175巻:267~273頁;Yarmush(1992年)J. Biochem. Biophys. Methods、25巻:85~97頁を参照のこと。用語の抗体は、抗原結合部分、すなわち、抗原に結合する能力を保持する「抗原結合部位」(例えば、断片、部分配列、相補性決定領域(CDR))を含み、これには、(i)Fab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価の断片;(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結した2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardら、(1989年)Nature、341巻:544~546頁);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。また、用語「抗体」の言及には、単鎖抗体も含まれる。
【0075】
好ましい治療用抗体は、IgG抗体である。用語「IgG」は、本明細書で使用される場合、認識される免疫グロブリンガンマ遺伝子によって実質的にコードされる抗体のクラスに属するポリペプチドを意味する。ヒトでは、このクラスは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む。マウスでは、このクラスは、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3を含む。抗体のIgGクラスにおける公知のIgドメインは、VH、Cγ1、Cγ2、Cγ3、VL、およびCLである。IgGは、いくつかの実用上の理由で、治療用抗体として好ましいクラスである。IgG抗体は、安定で、容易に精製され、医薬品サプライチェーンに対して実用的である条件下で保存することができる。in v
ivoでは、IgG抗体は、単にサイズの関数ではなく、いわゆるFc受容体(またはFcRn)との相互作用の結果でもある長期の生物学的半減期を有する。この受容体は、IgGを細胞内における異化から保護すると考えられ、IgGを血漿に戻して再循環させる。
【0076】
抗体は、特異的抗原に結合する免疫学的タンパク質である。ヒトおよびマウスを含むほとんどの哺乳動物では、抗体は、ポリペプチド重鎖とポリペプチド軽鎖との対合により構築される。軽鎖および重鎖可変領域は、抗体間で顕著な配列多様性を示し、標的抗原への結合を担う。各鎖は、個々の免疫グロブリン(Ig)ドメインで構成され、したがって、一般的用語である免疫グロブリンは、このようなタンパク質に対して使用される。
【0077】
用語「特異的に結合する」は、上記で注記されたように、抗体は抗体が結合するエピトープ(複数可)を提示する任意のポリペプチドに結合するため、抗体はその意図される標的に排他的に結合するということを示すことは意図されない。むしろ、抗体の意図される標的に対する親和性が、適当なエピトープ(複数可)を提示しない非標的分子に対する親和性と比較したときに、約5倍大きい場合に、抗体は「特異的に結合する」。好ましくは、抗体の親和性は、非標的分子に対する親和性よりも、標的分子に対して少なくとも約5倍、好ましくは10倍、より好ましくは25倍、さらにより好ましくは50倍、最も好ましくは100倍またはそれを超えて大きい。好ましい実施形態では、好ましい抗体は、少なくとも約107M-1、好ましくは約108M-1から約109M-1の間、約109M-1から約1010M-1の間、または約1010M-1から約1012M-1の間の親和性により結合する。
【0078】
親和性は、Kd=koff/kon(koffは、解離速度定数であり、Konは、会合速度定数であり、Kdは、平衡定数である)として計算される。親和性は、種々の濃度(c)において標識リガンドの結合した割合(r)を測定することによって平衡状態で決定され得る。データは、Scatchardの式:r/c=K(n-r)を使用してグラフ化される:式中、r=平衡状態における、結合リガンドのモル/受容体のモル;c=平衡状態における、遊離リガンド濃度;K=平衡会合定数;および、n=受容体分子1つ当たりのリガンド結合部位数である。グラフ分析によって、r/cは、X軸上のrに対してY軸上にプロットされており、このようにしてScatchardプロットを生成する。Scatchard分析による抗体親和性測定は、当技術分野で周知である。例えば、van Erpら、J. Immunoassay、12巻:425~43頁、1991年;NelsonおよびGriswold、Comput. Methods Programs Biomed. 27巻:65~8頁、1988年を参照のこと。
【0079】
本発明の抗体は、本明細書に記載されるイムノアッセイにおいて最も大きな臨床上の有用性を有する抗体およびエピトープが選択され得るように、エピトープマッピングによってさらに特徴付けることができる。用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することができる抗原決定基を指す。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的活性表面群からなり、通常、特異的な三次元構造特徴、および特異的な電荷特徴を有する。コンフォメーションおよび非コンフォメーションエピトープは、変性溶媒の存在下で、前者への結合は失われるが、後者への結合は失われないということで識別される。好ましくは、標的分子上に存在するが、非標的分子上には部分的または全体的に存在しないエピトープが標的とされる。
【0080】
一部の実施形態では、抗体足場は、異なる種由来の配列の混合物であり得る。したがって、抗体が1種の抗体であれば、このような抗体は、キメラ抗体および/またはヒト化抗体であり得る。一般に、「キメラ抗体」と「ヒト化抗体」は両方、1つを超える種由来の領域を組み合わせた抗体を指す。例えば、「キメラ抗体」は、伝統的に、マウス(または
一部の場合には、ラット)由来の可変領域(複数可)およびヒト由来の定常領域(複数可)を含む。「ヒト化抗体」は、一般的に、ヒト抗体中に見出される配列にスワップされた可変ドメインフレームワーク領域を有した非ヒト抗体を指す。一般的に、ヒト化抗体において、CDRを除く全抗体が、ヒト起源のポリヌクレオチドによりコードされているかまたはCDR内を除きこのような抗体と同一である。CDRは、それらの一部またはすべてが非ヒト生物内で発生する核酸によりコードされており、CDRをヒト抗体可変領域のベータシートフレームワークに移植することで、移植されたCDRにより特異性が決定される抗体を作出する。このような抗体の作出は、例えばWO92/11018、Jones、1986年、Nature、321巻:522~525頁、Verhoeyenら、1988年、Science、239巻:1534~1536頁に記載されている。選択されたアクセプターフレームワーク残基の、対応するドナー残基への「復帰変異」は、多くの場合、初期移植構築物内で喪失している親和性を回復する必要がある(米国特許第5,530,101号;米国特許第5,585,089号;米国特許第5,693,761号;米国特許第5,693,762号;米国特許第6,180,370号;米国特許第5,859,205号;米国特許第5,821,337号;米国特許第6,054,297号;米国特許第6,407,213号)。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分、典型的にヒト免疫グロブリンのものも含み、それにより、典型的には、ヒトFc領域を含むことになる。ヒト化抗体は、遺伝子操作された免疫系を有するマウスを使用して作製することもできる。Roqueら、2004年、Biotechnol. Prog. 20巻:639~654頁。非ヒト抗体をヒト化して再形成するための様々な技法および方法は、当技術分野で周知である(TsurushitaおよびVasquez、2004年、Humanization of Monoclonal Antibodies、Molecular Biology of B Cells、533~545頁、Elsevier Science(USA)、およびそれに引用された参考文献を参照のこと)。ヒト化方法としては、これらに限定されないが、Jonesら、1986年、Nature、321巻:522~525頁;Riechmannら、1988年;Nature、332巻:323~329頁;Verhoeyenら、1988年、Science、239巻:1534~1536頁;Queenら、1989年、Proc Natl Acad Sci, USA、86巻:10029~33頁;Heら、1998年、J. Immunol. 160巻:1029~1035頁;Carterら、1992年、Proc Natl Acad Sci USA、89巻:4285~9頁、Prestaら、1997年、Cancer Res. 57巻(20号):4593~9頁;Gormanら、1991年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻:4181~4185頁;O’Connorら、1998年、Protein Eng、11巻:321~8頁に記載された方法が挙げられる。ヒト化、または非ヒト抗体可変領域の免疫原性を低減する他の方法は、例えば、Roguskaら、1994年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、91巻:969~973頁に記載された通り、リサーフェシング方法を含み得る。一実施形態では、親抗体は、当技術分野で公知の通り、親和性成熟されている。構造に基づく方法は、例えば、米国特許出願第11/004,590号に記載された通り、ヒト化および親和性成熟に用いられ得る。選択に基づく方法は、これらに限定されないが、Wuら、1999年、J. Mol. Biol. 294巻:151~162頁;Bacaら、1997年、J. Biol. Chem. 272巻(16号):10678~10684頁;Rosokら、1996年、J. Biol. Chem. 271巻(37号):22611~22618頁;Raderら、1998年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、95巻:8910~8915頁;Kraussら、2003年、Protein Engineering、16巻(10号):753~759頁に記載された方法を含む、抗体可変領域をヒト化および/または親和性成熟するのに用いられ得る。他のヒト化方法は、これらに限定されないが、米国特許出願第09/810,502号;Tanら、2002年、J. Immunol. 169巻:1119~1125頁
;De Pascalisら、2002年、J. Immunol. 169巻:3076~3084頁に記載された方法を含む、CDRのほんの一部の移植に関与し得る。
【0081】
一実施形態では、抗体は、完全ヒト抗体である。「完全ヒト抗体」または「完全なヒト抗体」は、ヒト染色体に由来する抗体の遺伝子配列を有するヒト抗体を指す。完全ヒト抗体は、例えば、トランスジェニックマウス(Bruggemannら、1997年、Curr Opin Biotechnol、8巻:455~458頁)または選択方法と組み合わせたヒト抗体ライブラリー(Griffithsら、1998年、Curr Opin Biotechnol、9巻:102~108頁)を使用して、得てもよい。
【0082】
抗体生成
【0083】
モノクローナル抗体調製物を、ハイブリドーマ、組換え体、およびファージディスプレイ技術の使用、またはこれらの組み合わせを含む当技術分野で公知の多様な技法を使用して生成することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で公知であり、例えばHarlowら、ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988年);Hammerlingら、MONOCLONAL ANTIBODIES AND T-CELL HYBRIDOMAS、563~681頁(Elsevier、N.Y.、1981年)(その両方が、全体が参照により組み込まれる)に教示された技法を含むハイブリドーマ技法を使用して生成することができる。用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、ハイブリドーマ技術によって生成された抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」は、任意の真核生物、原核生物、またはファージクローンを含む単一クローンに由来するが、それを生成する方法には由来しない抗体を指す。
【0084】
ラットおよびマウス以外の動物に由来するモノクローナル抗体は、特有の利点を提供する。シグナル伝達および疾患に関連する多くのタンパク質標的は、マウスとラットとヒトとの間で高度に保存されており、それゆえに、マウスまたはラット宿主により自己抗原として認識されてしまい、免疫原性が低い可能性がある。この問題は、宿主動物としてウサギを使用する場合には回避され得る。例えばRossiら、Am. J. Clin. Pathol.、124巻、295~302頁、2005年を参照のこと。
【0085】
ハイブリドーマ技術を使用して特異的抗体を生成およびスクリーニングするための方法は、日常的であり、当技術分野で周知である。非限定的例において、マウスは、目的の抗原またはこのような抗原を発現する細胞により免疫化することができる。例えば、抗原に特異的な抗体がマウス血清中で検出されるなど、免疫応答が検出されれば、マウス脾臓を回収して、脾臓細胞を単離する。次いで、脾臓細胞は、周知技法により任意の適切な骨髄腫細胞に融合する。ハイブリドーマを選択して、限界希釈によりクローニングする。次いで、ハイブリドーマクローンを、抗原に結合することが可能な抗体を分泌する細胞に関して当技術分野で公知の方法によりアッセイする。マウスに陽性ハイブリドーマクローンを腹腔内接種することにより、一般的には、高レベルの抗体を含有する腹水液を作製することができる。
【0086】
抗体作製の方法において使用することができるアジュバントとしては、これらに限定されないが、タンパク質アジュバント;細菌アジュバント、例えば、全細菌(BCG、Corynebacterium parvum、Salmonella minnesota)ならびに細胞壁骨格、トレハロースジミコレート、モノホスホリル脂質A、結核菌のメタノール抽出性残渣(MER)、完全または不完全フロイントアジュバントを含む細菌成分;ウイルスアジュバント;化学的アジュバント、例えば、水酸化アルミニウム、ヨー
ド酢酸塩およびコレステリルヘミスクシネート、または;ネイキッドDNAアジュバントが挙げられる。本発明の方法で使用され得る他のアジュバントとしては、コレラ毒、パロポクスタンパク質(paropox protein)、MF-59(Chiron Corporation;参照により本明細書に組み込まれるBiegら(1999年)「GAD65 And Insulin B Chain Peptide (9-23)
Are Not Primary Autoantigens In The Type 1 Diabetes Syndrome Of The BB Rat」、Autoimmunity、31巻(1号):15~24頁も参照のこと)、MPL(登録商標)(Corixa Corporation;これらのすべてが参照により本明細書に組み込まれる、Lodmellら(2000年)「DNA Vaccination Of
Mice Against Rabies Virus: Effects Of The Route Of Vaccination And The Adjuvant
Monophosphoryl Lipid A (MPL)」、Vaccine、18巻:1059~1066頁;Johnsonら(1999年)「3-O-Desacyl Monophosphoryl Lipid A Derivatives: Synthesis And Immunostimulant Activities」、Journal of Medicinal Chemistry、42巻:4640~4649頁;Baldridgeら(1999年)「Monophosphoryl Lipid A (MPL) Formulations For The Next Generation Of Vaccines」、Methods、19巻:103~107頁も参照のこと)、RC-529アジュバント(Corixa Corporation;Corixaのアミノアルキルグルコサミニド4-リン酸(AGP)化学ライブラリー由来のリード化合物。www.corixa.comも参照のこと)、およびDETOX(商標)アジュバント(Corixa Corporation;DETOX(商標)アジュバントは、MPL(登録商標)アジュバント(モノホスホリル脂質A)およびマイコバクテリア細胞壁骨格を含む;その両方が参照により本明細書に組み込まれる、Etonら(1998年)「Active Immunotherapy With Ultraviolet B-Irradiated Autologous Whole Melanoma Cells Plus DETOX In Patients With Metastatic Melanoma」、Clin. Cancer Res.
4巻(3号):619~627頁;およびGuptaら(1995年)「Adjuvants For Human Vaccines--Current Status, Problems And Future Prospects」、Vaccine、13巻(14号):1263~1276頁も参照のこと)が挙げられる。
【0087】
数多くの刊行物により、選択された分析物への結合に関するポリペプチドライブラリーを生成およびスクリーニングするファージディスプレイ技術の使用が議論されている。例えば、Cwirlaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、87巻、6378~82頁、1990年;Devlinら、Science、249巻、404~6頁、1990年、ScottおよびSmith、Science、249巻、386~88頁、1990年;ならびにLadnerらの米国特許第5,571,698号を参照のこと。ファージディスプレイ方法の基本的概念は、スクリーニングされるポリペプチドをコードするDNAとそのポリペプチドの間の物理的会合の確立である。この物理的会合は、ポリペプチドをコードするファージゲノムを封入するカプシドの一部としてポリペプチドを提示するファージ粒子により提供される。ポリペプチドとそれらの遺伝物質の間の物理的会合の確立は、異なるポリペプチドを有する非常に多数のファージの同時マススクリーニングを可能にする。標的への親和性を有するポリペプチドを提示するファージが、その標的に結合し、これらのファージが、標的への親和性スクリーニングにより濃縮される。これらのファージから提示されたポリペプチドの正体を、それらの各ゲノムから決定することができる。これらの方法を使用して、所望の標的への結合親和性を有すると
して同定されたポリペプチドが、その後、従来の手段によりバルクで合成され得る。例えば、すべての表、図、および特許請求の範囲を含む全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,057,098号を参照のこと。
【0088】
これらの方法により作製された抗体は、次いで、目的の精製ポリペプチドとの親和性および特異性について第1のスクリーニングを行うこと、そして必要に応じて、その結果を、結合から除外されることが望ましいポリペプチドと抗体との親和性および特異性と比較することにより選択することができる。スクリーニング手順は、マイクロタイタープレートの個別のウェルにおいて精製ポリペプチドを固定化することに関与し得る。潜在的な抗体または抗体群を含有する溶液を、次いで、各マイクロタイターウェルに入れて、約30分から2時間インキュベートする。次いで、マイクロタイターウェルを洗浄して、標識された二次抗体(例えば、産生させた抗体がマウス抗体であれば、アルカリホスファターゼにコンジュゲートされた抗マウス抗体)をウェルに添加して約30分間インキュベートし、次いで、洗浄する。基質をウェルに添加し、固定されたポリペプチド(複数可)への抗体が存在すれば、呈色反応が現れる。
【0089】
このように同定された抗体は、次いで、選択されたアッセイデザインにおいて親和性および特異性についてさらに分析され得る。標的タンパク質についてのイムノアッセイの開発において、精製された標的タンパク質が、選択された抗体を使用するイムノアッセイの感度および特異性を決定する標準として作用する。様々な抗体の結合親和性は、異なる場合があり、ある特定の抗体対(例えば、サンドイッチアッセイにおいて)は、互いに立体的に干渉する場合があることなどにより、抗体のアッセイ性能は、抗体の絶対的な親和性および特異性よりも重要な尺度になり得る。
【0090】
抗体は、機能的な内在性免疫グロブリンを発現することができないがヒト免疫グロブリン遺伝子は発現し得るトランスジェニックマウスを使用して生成することもできる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体を、無作為に、または相同組換えにより、マウス胚性幹細胞に導入することができる。あるいは、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えて、ヒト可変領域、定常領域、およびダイバーシティ領域(diversity region)をマウス胚性幹細胞にも導入してもよい。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入と別に、または同時に非機能性にされ得る。特に、JH領域のホモ接合型欠失は、内在性抗体の生成を防止する。修飾された胚性幹細胞を増殖させ、胚盤胞に微量注入して、キメラマウスを生成する。次いで、キメラマウスを飼育して、ヒト抗体を発現するホモ接合性の子孫を産み出す。トランスジェニックマウスを、選択された抗原、例えば、本発明のポリペプチドのすべてまたは一部分で、従来の方法論を使用して免疫化する。抗原に対するモノクローナル抗体を、従来のハイブリドーマ技術を使用して免疫化されたトランスジェニックマウスから得ることができる。トランスジェニックマウスが抱えるヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再構成し、次に、クラススイッチおよび体細胞変異を受ける。したがって、このような技法を使用して、治療上有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を生成することが可能になる。ヒト抗体を生成するためのこの技術の概要については、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Lonbergら(1995年)「Human Antibodies From Transgenic Mice」、Int. Rev. Immunol. 13巻:65~93頁を参照のこと。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのこの技術、ならびにこのような抗体を生成するためのプロトコールの詳細な議論については、例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第WO98/24893号、同第WO96/34096号、および同第WO96/33735号、ならびに米国特許第5,413,923号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,569,825号、同第5,661,016号、同第5,545,806号、同第5,814,318号、および同第5,939,
598号を参照のこと。加えて、Abgenix,Inc.(Freemont、Calif.)およびMedarex(Princeton、N.J.)などの会社は、先に記載された技術と類似の技術を使用して選択された抗原に対するヒト抗体を提供するよう契約することができる。
【0091】
抗体の組換え発現
【0092】
本発明の抗体をコードする核酸配列が得られたら、抗体生成のためのベクターを、当技術分野で周知の技法を使用する組換えDNA技術により生成することができる。当業者に周知である方法を使用して、抗体コード配列ならびに適当な転写および翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えば、in vitro組換えDNA技法、合成技法、およびin vivo遺伝子組換えがある(例えば、Sambrookら、1990年、MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.およびAusubelら編、1998年、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、NYを参照のこと)。
【0093】
抗体のヌクレオチド配列を含む発現ベクターを、従来の技法(例えば、電子穿孔、リポソームトランスフェクション、およびリン酸カルシウム沈降法)により宿主細胞に移入することができ、次いで、トランスフェクトされた細胞を、従来の技法で培養して本発明の抗体を生成する。具体的な実施形態では、抗体の発現は、構成的プロモーター、誘導性プロモーターまたは組織特異性プロモーターにより調節される。
【0094】
本明細書に開示された抗TIMP2抗体は、組換えによって(例えば、E.coli/T7発現系、哺乳動物細胞発現系または下等真核生物発現系において)製造されてもよい。この実施形態では、本発明の抗体免疫グロブリン分子(例えば、VHまたはVL)をコードする核酸をpET系プラスミドへと挿入し、E.coli/T7系で発現させ得る。例えば、本発明は、抗体もしくはその抗原結合性断片またはその免疫グロブリン鎖を宿主細胞(例えば、細菌宿主細胞、例えば、E.coli、例えば、BL21またはBL21DE3)内で発現させるための方法であって、T7プロモーターに作動可能に連結される免疫グロブリン鎖をコードするポリヌクレオチドも含む細胞内でT7 RNAポリメラーゼを発現させるステップを含む、方法を含む。例えば、本発明の実施形態では、細菌宿主細胞、例えば、E.coliは、lacプロモーターに作動可能に連結したT7 RNAポリメラーゼ遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含み、IPTG(イソプロピル-ベータ-D-チオガラクトピラノシド)を含む宿主細胞のインキュベーションによってポリメラーゼおよび鎖の発現が誘導される。
【0095】
よって、本発明は、本発明の抗TIMP2抗体もしくはその抗原結合性断片、またはその免疫グロブリン鎖を作製するための組換え方法であって、抗体または断片の1つまたは複数の免疫グロブリン鎖(例えば、免疫グロブリン重鎖および/または免疫グロブリン軽鎖)をコードするポリヌクレオチドを導入するステップと;このような発現に好まれる条件下で宿主細胞(例えば、CHOまたはPichia属またはPichia pastoris)を培養するステップと、必要に応じて、宿主細胞および/または宿主細胞が成長する培地から抗体または断片または鎖を単離するステップとを含む、方法を含む。
【0096】
抗TIMP2抗体は、米国特許第6,331,415号に示される方法のいずれかによって合成することもできる。
【0097】
本明細書に開示された抗体または断片または免疫グロブリン鎖の発現のための宿主とし
て哺乳動物細胞を含む真核宿主細胞および原核宿主細胞は、当技術分野において周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手できる多くの不死化細胞系統を含む。これらは、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、3T3細胞、HEK-293細胞およびいくらかの他の細胞系統を含む。哺乳動物宿主細胞は、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマおよびハムスター細胞を含む。特に好ましい細胞系統は、どの細胞系統が高発現レベルを有するかを決定することにより選択される。使用することができる他の細胞系統は、Sf9細胞などの昆虫細胞系統、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞および真菌細胞である。真菌細胞としては、例えば、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia minuta(Ogataea minuta、Pichia lindneri)、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、Pichia sp.、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces
sp.、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces sp.、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、Fusarium sp.、Fusarium gramineum、Fusarium venenatum、Physcomitrella patensおよびNeurospora crassa、Pichia sp.、任意のSaccharomyces sp.、Hansenula polymorpha、任意のKluyveromyces sp.、Candida albicans、任意のAspergillus sp.、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、任意のFusarium sp.、Yarrowia lipolytica、ならびにNeurospora crassaを含む酵母細胞および糸状菌細胞が挙げられる。重鎖またはその抗原結合部分もしくは断片、軽鎖および/またはその抗原結合性断片をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞へ導入される場合、抗体は、宿主細胞における抗体もしくは断片もしくは鎖の発現、または、宿主細胞が成長する培養培地への分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することにより産生される。
【0098】
様々な宿主-発現ベクター系を利用して、本発明の抗体を発現させることができる。このような宿主-発現系は、それによって抗体のコード配列を生成し、次に、精製することができるビヒクルを表すが、また適当なヌクレオチドコード配列で形質転換またはそれをトランスフェクトしたときに本発明の抗体をin situで発現し得る細胞も表す。これらには、これらに限定されないが、免疫グロブリンコード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌(例えば、E.coliおよびB.subtilis)などの微生物;免疫グロブリンコード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母(例えば、Saccharomyces pichia);免疫グロブリンコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)およびタバコモザイクウイルス(TMV))を感染させたか、もしくは免疫グロブリンコード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;または哺乳動物細胞ゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネイン
プロモーター)もしくは哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を保持する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、293T、3T3細胞、リンパ細胞(米国特許第5,807,715号を参照のこと)、Per C.6細胞(Crucellによって開発されたラット網膜細胞))が含まれる。
【0099】
細菌系では、発現される抗体を意図した使用に依存して、いくつかの発現ベクターを都合よく選択することができる。例えば、抗体の医薬組成物を作製するために、大量のこのようなタンパク質を生成する場合は、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現を導くベクターが望ましい場合がある。このようなベクターには、これらに限定されないが、融合タンパク質が生成されるように、抗体コード配列を個々にlac Zコード領域とインフレームでベクターにライゲーションすることができるE.coli発現ベクターpUR278(Rutherら、(1983年)「Easy Identification Of cDNA Clones」、EMBO J. 2巻:1791~1794頁);pINベクター(Inouyeら(1985年)「Up-Promoter Mutations In The Lpp Gene Of Escherichia coli」、Nucleic Acids Res. 13巻:3101~3110頁;Van Heekeら(1989年)「Expression Of Human Asparagine Synthetase In Escherichia coli」、J. Biol. Chem. 24巻:5503~5509頁)などが含まれる。グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現するためには、pGEXベクターも使用することができる。一般的に、このような融合タンパク質は可溶性であり、マトリクスグルタチオン-アガロースビーズに吸着および結合した後、遊離グルタチオンの存在下で溶出することにより、溶解細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子産物をGST部分から遊離できるように、トロンビンまたはXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計されている。
【0100】
昆虫系では、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)が、外来遺伝子を発現するためのベクターとして使用される。このウイルスは、Spodoptera frugiperda細胞内で成長する。抗体コード配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個々にクローニングされ、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に配置することができる。
【0101】
哺乳動物宿主細胞では、ウイルスに基づくいくつかの発現系を利用することができる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、目的の抗体コード配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび三要素リーダー配列(tripartite leader sequence)にライゲーションすることができる。次いで、このキメラ遺伝子を、in vitroまたはin vivo組換えによりアデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1またはE3)における挿入は、生存可能で、感染した宿主内で免疫グロブリン分子の発現が可能な組換えウイルスをもたらすことになる。(例えば、Loganら(1984年)「Adenovirus Tripartite Leader Sequence Enhances Translation Of mRNAs Late After Infection」、Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.)81巻:3655~3659頁を参照のこと)。挿入した抗体コード配列の効率的な翻訳には、特定の開始シグナルも必要な場合がある。これらのシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。さらに、インサート全体の翻訳を保証するためには、開始コドンが、所望のコード配列のリーディングフレームと同相でなければな
らない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、由来が種々であってよく、天然および合成の両方であってよい。発現の効率は、適当な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを包含させることにより増強できる(Bitterら(1987年)「Expression And Secretion Vectors For Yeast」、Methods in Enzymol. 153巻:516~544頁を参照のこと)。
【0102】
さらに、挿入した配列の発現をモジュレートするか、または所望の特定の様式で遺伝子産物を修飾およびプロセシングする宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能にとって重要であり得る。様々な宿主細胞が、タンパク質および遺伝子産物を翻訳後にプロセシングおよび修飾するための特徴的で特異的な機序を有する。適当な細胞系統または宿主系を選択すると、発現される外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを保証することができる。そのためには、一次転写物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化、およびリン酸化の細胞機構を所有する真核生物宿主細胞を使用することができる。このような哺乳動物宿主細胞には、これらに限定されないが、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、293T、3T3、WI38、BT483、Hs578T、HTB2、BT20およびT47D、CRL7030、ならびにHs578Bstが含まれる。
【0103】
組換えタンパク質を長期にわたり高収量で生成するためには、安定的発現が好ましい。例えば、本発明の抗体を安定的に発現する細胞系統を操作することができる。宿主細胞は、ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、適当な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)により制御されたDNAおよび選択マーカーを用いて形質転換することができる。外来DNAの導入後、強化培地中で1~2日間、操作された細胞の成長を可能にすることができ、次いで、選択培地に切り替える。組換えプラスミドの選択マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞が、それ自体の染色体にプラスミドを安定的に組み込み、その後クローニングして細胞系統へと増殖することができるフォーカスを形成するように成長を可能にする。この方法は、本発明の抗体を発現する細胞系統を操作するために都合よく使用できる。このような操作された細胞系統は、本発明の抗体と直接的にまたは間接的に相互作用する化合物のスクリーニングおよび評価に特に有用であり得る。
【0104】
これらに限定されないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら(1977年)「Transfer Of Purified Herpes Virus
Thymidine Kinase Gene To Cultured Mouse
Cells」、Cell、11巻:223~232頁)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalskaら(1962年)「Genetics Of Human Cess Line. IV. DNA-Mediated Heritable Transformation Of A Biochemical
Trait」、Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.)48巻:2026~2034頁)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら(1980年)「Isolation Of Transforming DNA: Cloning The Hamster Aprt Gene」、Cell、22巻:817~823頁)遺伝子を含むいくつかの選択系を、それぞれ、tk細胞、hgprt細胞またはaprt細胞で用いることができる。また、以下の遺伝子の場合は、選択基準として代謝拮抗剤耐性を使用することができる:メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr(Wiglerら(1980年)「Transformation Of Mammalian Cells With An Amplfiable Dominant-Acting Gene」、Proc. Natl. Acad. Sci
. (U.S.A.)77巻:3567~3570頁;O’Hareら(1981年)「Transformation Of Mouse Fibroblasts To Methotrexate Resistance By A Recombinant Plasmid Expressing A Prokaryotic Dihydrofolate Reductase」、Proc. Natl. Acad. Sci.
(U.S.A.)78巻:1527~1531頁);ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulliganら(1981年)「Selection For Animal Cells That Express The Escherichia
coli Gene Coding For Xanthine-Guanine Phosphoribosyltransferase」、Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.)78巻:2072~2076頁);アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo(Tachibanaら(1991年)「Altered Reactivity Of Immunoglobutin Produced By Human-Human Hybridoma Cells Transfected By pSV2-Neo Gene」、Cytotechnology、6巻(3号):219~226頁;Tolstoshev(1993年)「Gene Therapy, Concepts, Current Trials And Future Directions」、Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32巻:573~596頁;Mulligan(1993年)「The Basic Science Of Gene Therapy」、Science、260巻:926~932頁;およびMorganら(1993年)「Human gene therapy」、Ann. Rev. Biochem. 62巻:191~217頁)。使用できる組換えDNA技術の、当技術分野で一般的に公知な方法は、Ausubelら(編)、1993年、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、NY;Kriegler、1990年、GENE TRANSFER AND EXPRESSION, A
LABORATORY MANUAL、Stockton Press、NY;ならびにDracopoliら(編)、1994年、CURRENT PROTOCOLS IN HUMAN GENETICS、John Wiley & Sons、NY.の第12章および第13章;Colbere-Garapinら(1981年)「A New
Dominant Hybrid Selective Marker For Higher Eukaryotic Cells」、J. Mol. Biol. 150巻:1~14頁に記載されており、ヒグロマイシンに対する耐性を付与するhygroである(Santerreら(1984年)「Expression Of Prokaryotic Genes For Hygromycin B And G418 Resistance As Dominant-Selection Markers In Mouse L Cells」、Gene、30巻:147~156頁)。
【0105】
本発明の抗体の発現レベルは、ベクター増幅により増加させることができる(総説は、BebbingtonおよびHentschel、「The Use Of Vectors Based On Gene Amplification For The Expression Of Cloned Genes In Mammaian Cells」、DNA CLONING、3巻(Academic Press、New York、1987年)を参照のこと)。抗体を発現するベクター系のマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養物に存在する阻害剤レベルの増加は、マーカー遺伝子のコピー数を増加させることになる。増幅された領域が、抗体のヌクレオチド配列と関連しているため、抗体産生も増加することになる(Crouseら(1983年)「Expression And Amplification Of Engineered Mouse Dihydrofolate Reductase Minigenes」、Mol. Cell. Biol. 3巻:257~266頁)。
【0106】
宿主細胞に、第1のベクターが重鎖由来のポリペプチドをコードし、第2のベクターが軽鎖由来のポリペプチドをコードする本発明の2つの発現ベクターを同時トランスフェクトし得る。2つのベクターは、重鎖および軽鎖ポリペプチドの同等な発現を可能にする同一の選択マーカーを含有することができる。あるいは、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一ベクターを使用することができる。このような状況では、軽鎖は、過剰な毒性遊離重鎖を回避するために重鎖の前に配置されるべきである(Proudfoot(1986年)「Expression And Amplification Of Engineered Mouse Dihydrofolate Reductase Minigenes」、Nature、322巻:562~565頁;Kohler(1980年)「Immunoglobulin Chain Loss In
Hybridoma Lines」、Proc. Natl. Acad. Sci.
(U.S.A.)77巻:2197~2199頁)。重鎖および軽鎖のコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含むことができる。
【0107】
一般的に、特定の細胞系統またはトランスジェニック動物において産生される糖タンパク質は、細胞系統またはトランスジェニック動物において産生される糖タンパク質に特徴的なグリコシル化パターンを有する。したがって、抗体の特定のグリコシル化パターンは、抗体を生成するために使用される特定の細胞系統またはトランスジェニック動物に依存する。しかし、本明細書で提供される核酸分子によりコードされるか、または本明細書で提供されるアミノ酸配列を含むすべての抗体は、抗体が有する可能性のあるグリコシル化パターンとは無関係に、本発明を構成する。同様に、特定の実施形態では、非フコシル化N-グリカンのみを含むグリコシル化パターンを有する抗体が有利であり得る。なぜなら、これらの抗体は、in vitroとin vivoの両方において、それらのフコシル化対応物より高い効力を典型的に呈することが示されているからである(例えば、Shinkawaら、J. Biol. Chem. 278巻:3466~3473頁(2003年);米国特許第6,946,292号および同第7,214,775号を参照のこと)。非フコシル化N-グリカンを有するこれらの抗体が免疫原性である可能性は低い。なぜなら、それらの炭水化物構造は、ヒト血清IgGにおいて存在する集団の正常成分であるからである。
【0108】
本発明の抗体が組換えにより発現されると、抗体は、抗体精製に関して当技術分野で公知の任意の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、特に、プロテインA後の特異的抗原に対するアフィニティークロマトグラフィー、およびサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、差示的溶解度、またはタンパク質の精製のための任意の他の標準的な技法によって精製することができる。
【0109】
抗体コンジュゲート
【0110】
本明細書に開示された抗TIMP2抗体およびその抗原結合性断片は、化学部分にコンジュゲートされていてもよい。化学部分は、とりわけ、ポリマー、放射線核種または細胞毒性因子であってもよい。特定の実施形態では、化学部分は、被験体の体内の抗体または断片の半減期を増加させるポリマーである。好適なポリマーとして、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、2kDa、5kDa、10kDa、12kDa、20kDa、30kDaまたは40kDaの分子量のPEG)、デキストランおよびモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)を含むがこれらに限定されない親水性ポリマーが挙げられる。Leeら、(1999年)(Bioconj. Chem.10巻:973~981頁)は、PEGコンジュゲート単鎖抗体を開示する。Wenら、(2001年)
(Bioconj. Chem.12巻:545~553頁)は、放射性金属キレート剤(radio
metal chelator)(ジエチレントリアミン四酢酸(DTPA))に付加したPEGと抗体をコンジュゲートすることを開示する。
【0111】
本明細書に開示された抗体およびその抗原結合性断片は、標識、例えば、99Tc、90Y、111In、32P、14C、125I、3H、131I、11C、15O、13N、18F、35S、51Cr、57To、226Ra、60Co、59Fe、57Se、152Eu、67CU、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pd、234Th、および40K、157Gd、55Mn、52Tr、および56Feとコンジュゲートされていてもよい。
【0112】
本明細書に開示された抗体および抗原結合性断片は、例えば、その生物学的(例えば、血清)半減期を増加させるためにPEG化されてもよい。抗体または断片をPEG化するために、抗体または断片を、典型的には、ポリエチレングリコール(PEG)の反応性形態、例えば、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体と、1つまたは複数のPEG基が抗体または抗体断片に付加されるような条件下で、反応させる。特定の実施形態では、PEG化は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して行われる。本明細書で使用される場合、「ポリエチレングリコール」という用語は、他のタンパク質、例えば、モノ(C1~C10)アルコキシ-もしくはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミドを誘導体化するために使用されるPEGの任意の形態を包含することを意図する。ある特定の実施形態では、PEG化される抗体または断片は、アグリコシル化抗体または断片である。タンパク質をPEG化するための方法は、当技術分野で公知であり、本発明の抗体に適用することができる。例えば、EP 0 154 316およびEP 0
401 384を参照のこと。
【0113】
本明細書に開示された抗体および抗原結合性断片は、希土類キレート、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、イソチオシアネート、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド、フルオレスカミン、152Eu、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェリン、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム(acridimium)塩標識、シュウ酸エステル標識、エクオリン標識、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピン標識ならびに安定な遊離ラジカルなどのフルオロフォアを含む蛍光または化学発光標識とコンジュゲートされていてもよい。
【0114】
本発明の抗体およびその抗原結合性断片は、ジフテリア毒素、Pseudomonas
aeruginosa体外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiのタンパク質および化合物(例えば、脂肪酸)、ジアンシンタンパク質、Phytoiacca americanaタンパク質PAPI、PAPII、およびPAP-S、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、saponaria officinalis阻害剤、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、ならびにエノマイシンなどの細胞毒性因子にコンジュゲートされていてもよい。
【0115】
Hunterら、(1962年)Nature、144巻:945頁;Davidら、(1974
年)Biochemistry、13巻:1014頁;Painら、(1981年)J. Immunol. Meth.
40巻:219頁;およびNygren, J.、(1982年)Histochem. and Cytochem.3
0巻:407頁によって記載されるこれらの方法を含む、本発明の抗体およびその抗原結合性断片を種々の部分にコンジュゲートするための、当技術分野で公知の任意の方法を用いてもよい。抗体および断片をコンジュゲートするための方法は、従来通りであり、当技術分野で非常に周知である。
【0116】
抗TIMP2抗体の治療的使用
【0117】
本明細書に開示された単離された抗体またはその抗原結合性断片による処置を必要とする、ヒト被験体を含む被験体を処置するための方法が、さらに提供される。
【0118】
本発明の抗TIMP2抗体および抗原結合性断片(例えば、抗体6E2.1または40H2-40K3およびそのヒト化バージョン)の医薬または無菌組成物を調製するために、抗体またはその抗原結合性断片は、薬学的に許容される担体または賦形剤と混ぜられる。例えば、Remington’s Pharmaceutical SciencesおよびU.S. Pharmacopeia: National Formulary、Mack Publishing Company、Easton、PA(1984年)を参照のこと。
【0119】
治療および診断剤の製剤は、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液または懸濁物の形態で、許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって調製されてもよい(例えば、Hardmanら(2001年)Goodman and Gilman's The Pharmacological
Basis of Therapeutics、McGraw-Hill、New York、NY;Gennaro(2000年)Remington: The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott, Williams, and Wilkins、New York、NY;Avisら(編)(1993年)Pharmaceutical Dosage Forms:
Parenteral Medications、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990年)Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990年)Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems、Marcel Dekker、NY
;WeinerおよびKotkoskie(2000年)Excipient Toxicity and Safety、Marcel Dekker, Inc.、New York、NYを参照のこと)。
【0120】
単独でまたは別の治療剤と組み合わせて投与される本発明の抗体の毒性および治療有効性は、例えばLD50(集団の50%に対して致死の用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順で決定することができる。毒性効果と治療効果の間の用量比は、治療指数(LD50/ED50)である。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータを、ヒトでの使用のための投薬量範囲の製剤化に使用することができる。このような化合物の投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどまたはまったくない、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、用いられる剤形および投与経路に依存してこの範囲内で異なってもよい。
【0121】
さらなる実施形態では、さらなる治療剤が、Physicians’ Desk Reference 2003(Thomson Healthcare;第57版(2002年11月1日))に従って、本発明の抗TIMP2抗体またはその抗原結合性断片(例えば、抗体131Aまたはそのヒト化バージョン)に付随して被験体に投与される。
【0122】
投与様式は変化し得る。投与経路としては、経口、直腸、経粘膜、腸、非経口;筋肉内、皮下、皮内、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻内、眼内、吸入、ガス注入、局所、皮膚、経皮、または動脈内が挙げられる。
【0123】
特定の実施形態では、本発明の抗TIMP2抗体またはその抗原結合性断片(例えば、抗体131Aまたはそのヒト化バージョン)は、注射によるなど侵襲的経路で投与され得る。本発明のさらなる実施形態では、抗TIMP2抗体もしくはその抗原結合性断片、またはその医薬組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、動脈内、腫瘍内に、または吸入、エアロゾル送達によって投与される。非侵襲的経路による投与(例えば、経口的に、例えば、丸
剤、カプセル剤または錠剤で)も本発明の範囲内にある。
【0124】
本発明は、本発明の抗体もしくは抗原結合性断片(例えば、抗体131Aおよびそのヒト化バージョン)またはその医薬組成物のいずれかを含むベッセル(例えば、キャップまたはクロマトグラフィーカラム、中空針またはシリンジシリンダーを有するプラスチックまたはガラスバイアル)を提供する。本発明はまた、本発明の抗体もしくは抗原結合性断片(例えば、抗体131Aおよびそのヒト化バージョン)またはその医薬組成物のいずれかを含む注射デバイスを提供する。注射デバイスは、非経口経路、例えば、筋肉内、皮下または静脈内を介して、物質を患者の体内に導入するデバイスである。例えば、注射デバイスは、例えば、注射される流体(例えば、抗体もしくは断片またはその医薬組成物)を保持するシリンダーまたはバレル、流体を注射するための皮膚および/または血管を刺すための針;ならびに流体をシリンダーから押し出して針の穴を通すためのプランジャーを含むシリンジ(例えば、医薬組成物を予め充填した、例えば、自動注射器)であってもよい。本発明の実施形態では、本発明の抗体もしくはその抗原結合性断片またはその医薬組成物を含む注射デバイスは、静脈内(IV)注射デバイスである。このようなデバイスは、カニューレまたはトロカール/針を介して患者の体内へと導入される流体(例えば、生理食塩水;またはNaCl、乳酸ナトリウム、KCl、CaCl2を含む、および必要に応じてグルコースを含む乳酸加リンゲル液)を保持するためのバッグまたはリザーバーに取り付けられていてもよいチューブに取り付けられていてもよいカニューレまたはトロカール/針中に、抗体もしくは断片またはその医薬組成物を含む。抗体もしくは断片またはその医薬組成物は、本発明の実施形態では、トロカールおよびカニューレが被験体の静脈に挿入されるとデバイスに導入されてもよく、トロカールは挿入されたカニューレから除去される。IVデバイスは、例えば、(例えば、手または腕の)末梢静脈に;上大静脈もしくは下大静脈、または心臓の右心房内(例えば、中心IV)に;あるいは鎖骨下静脈、内頚静脈、または大腿静脈に挿入されてもよく、例えば、IVデバイスが上大静脈または右心房(例えば、中心静脈線)に到達するまで心臓に向かって進めてもよい。本発明の実施形態では、注射デバイスは、自動注射器;ジェット式注射器または外部輸液ポンプである。ジェット式注射器は、表皮を貫通して、抗体もしくは断片またはその医薬組成物を患者の体に導入する液体の細い高圧ジェットを使用する。外部輸液ポンプは、抗体もしくは断片またはその医薬組成物を、量を制御して、患者の体内に送達する医学デバイスである。外部輸液ポンプは、電気的にまたは機械的に動力を供給されてよい。様々なポンプが様々な方法で作動し、例えば、シリンジポンプはシリンジのリザーバーに流体を保持し、可動ピストンが流体送達を制御し、エラストマーポンプは伸縮自在なバルーンリザーバー中に流体を保持し、バルーンの弾性壁からの圧力が流体送達を駆動する。蠕動ポンプでは、一組のローラーが、ある長さの可撓性チューブを挟み、流体を前方に押す。マルチチャネルポンプでは、複数の速度で複数のリザーバーから流体を送達することができる。
【0125】
本明細書に開示された医薬組成物はまた、米国特許第6,620,135号;同第6,096,002号;同第5,399,163号;同第5,383,851号;同第5,312,335号;同第5,064,413号;同第4,941,880号;同第4,790,824号または同第4,596,556号に開示されるデバイスなどの無針皮下注射デバイスを用いて投与することができる。医薬組成物を含むこのような無針デバイスはまた、本発明の一部である。本明細書に開示された医薬組成物はまた、注入によって投与することができる。医薬組成物を投与するための周知のインプラントおよびモジュールの例として、速度を制御して薬品を分注するための埋め込み型微注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号;正確な注入速度で薬品を送達するための薬品注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号;連続的薬物送達のための可変流量埋め込み型注入装置を開示する米国特許第4,447,224号;マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透薬物送達システムを開示する米国特許第4,439,196号に開示されるものが挙げられる。他の多くのこのようなインプラント、送達システム、およびモジュー
ルが、当業者に周知であり、本発明の医薬組成物を含むものは本発明の範囲内である。
【0126】
代わりに、本発明の抗TIMP2抗体または抗原結合性断片(例えば、抗体131Aおよびそのヒト化バージョン)は、全身方式よりも局所方式で、例えば、抗体または断片の腫瘍、例えば、TIMP2+腫瘍への直接的注射を介して、投与されてもよい。さらに、抗体または断片は、標的化薬物送達システムにおいて、例えば、免疫病理学によって特徴付けられる、例えば、腫瘍、例えば、TIMP2+腫瘍を標的とする、例えば、組織特異的抗体でコーティングされたリポソームにおいて、投与されてもよい。リポソームは、罹患した組織に送り込まれ、罹患した組織によって選択的に取り込まれることになる。このような方法およびリポソームは、本発明の一部である。
【0127】
投与レジメンは、治療用抗体または抗原結合性断片の血清または組織の代謝回転速度、症状のレベル、治療用抗体の免疫原性、および生体マトリクスにおける標的細胞の接近性を含むいくつかの因子に依存する。好ましくは、投与レジメンは、望ましくない副作用を最小限にすると同時に、標的疾患の状況の改善をもたらすのに十分な治療用抗体または断片を送達する。したがって、送達される生物製剤の量は、部分的に、特定の治療用抗体および処置される状態の重症度に依存する。治療用抗体または断片の適当な用量を選択するガイダンスが利用可能である(例えば、Wawrzynczak(1996年)Antibody Therapy、Bios Scientific Pub. Ltd、Oxfordshire、UK;Kresina(編)(1991年)Monoclonal Antibodies, Cytokines and Arthritis、Marcel Dekker、New York、NY;Bach(編)(1993年)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases、Marcel Dekker、New York、NY;Baertら(2003年)New Engl. J.
Med.348巻:601~608頁;Milgromら(1999年)New Engl. J. Med.3
41巻:1966~1973頁;Slamonら(2001年)New Engl. J. Med.344巻:783~792頁;Beniaminovitzら(2000年)New Engl. J. Med.342巻:
613~619頁;Ghoshら(2003年)New Engl. J. Med.348巻:24~32
頁;Lipskyら(2000年)New Engl. J. Med.343巻:1594~1602頁を参照のこと)。
【0128】
適当な用量の決定は、臨床医によって、例えば、処置に影響を及ぼすことが当技術分野で公知かまたは影響を及ぼすと予想されるパラメーターまたは因子を使用してなされる。一般的に、用量は、やや最適の用量未満の量から始め、その後、所望の効果または最適の効果が、あらゆる負の副作用と比べて達成されるまで、わずかな増分だけ増加される。重要な診断尺度は、例えば、炎症の症状の尺度または生成された炎症性サイトカインのレベルを含む。一般的に、使用される生物製剤が、処置のために標的とされた動物と同じ種に由来し、それによって、試薬に対する任意の免疫応答を最小限にすることが望ましい。ヒト被験体の場合では、例えば、ヒト化および完全ヒト抗体が望ましい場合がある。
【0129】
本明細書に開示された抗体またはその抗原結合性断片(例えば、抗体131Aおよびそのヒト化バージョン)は、連続的注入によって、または、例えば、毎日、1週間に1~7回、毎週、2週間毎、毎月、2カ月毎、3カ月毎、半年毎、毎年など、投与された用量によって提供することができる。用量は、例えば、静脈内に、皮下に、局所的に、経口的に、経鼻的に、直腸に、筋肉内に、脳内に、脊髄内に、または吸入によって提供され得る。毎週の総用量は、一般的に、少なくとも0.05μg/kg体重、より一般的には、少なくとも0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.25mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/ml、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kgまたはそれよりも多い(例えば、Yangら(2003年)New Engl. J. Med.349巻:427~434頁;Heroldら(2002年)New Engl. J. Med.346巻:1692~1698頁;Liuら(1999年
)J. Neurol. Neurosurg. Psych.67巻:451~456頁;Portieljiら(20003)C
ancer Immunol. Immunother.52巻:151~144頁を参照のこと)。用量はまた、被験体の血清中の抗TIMP2抗体の所定の標的濃度、例えば、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300μg/mlまたはそれよりも高い濃度を達成するために提供されてもよい。他の実施形態では、本発明の抗TIMP2抗体は、例えば、皮下または静脈内に、毎週、2週間毎、「4週間毎」、毎月、2カ月毎、または3カ月毎を基準に、被験体当たり10、20、50、80、100、200、500、1000または2500mg投与される。
【0130】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、細胞、組織、または被験体に、単独でまたは追加の治療剤と組み合わせて投与される場合に、疾患の1つまたは複数の症状、例えば、がんまたはがんの進行における測定可能な改善を引き起こすのに有効な本発明の抗TIMP2またはその抗原結合性断片(例えば、抗体131Aおよびそのヒト化バージョン)の量を指す。有効用量は、さらに、少なくとも部分的な症状の好転(amelioration)、例えば、腫瘍収縮または除去、腫瘍成長の欠如、生存時間の増加をもたらすのに十分な抗体または断片の量を指す。単独で投与される個々の有効成分に適用される場合、有効用量は、その成分を単独で指す。組み合わせに適用される場合、有効用量は、逐次的にまたは同時に組み合わせて投与されるか否かにかかわらず、治療効果をもたらす有効成分の組み合わせた量を指す。治療薬の有効量は、少なくとも10%の;通常は、少なくとも20%の;好ましくは、少なくとも約30%の;より好ましくは少なくとも40%の、最も好ましくは少なくとも50%の診断尺度またはパラメーターの改善をもたらすことになる。有効量はまた、主観的な尺度が疾患の重症度を評価するために使用される場合には、主観的な尺度に改善をもたらすことができる。
【0131】
実験的および診断的使用
【0132】
本明細書で開示された抗TIMP2抗体およびその抗原結合性断片を、親和性精製剤として使用することができる。このプロセスでは、抗TIMP2抗体およびその抗原結合性断片を当技術分野で周知の方法を使用して、Sephadex、ガラスまたはアガロース樹脂または濾紙などの固相に固定する。固定した抗体または断片を、精製されるTIMP2タンパク質(またはその断片)を含有する試料と接触させ、その後、支持体を、固定した抗体または断片が結合したTIMP2タンパク質を除く試料中の実質的にすべての材料を除去する適切な溶媒で洗浄する。最終的に、支持体を、結合したTIMP2(例えば、プロテインA)を溶出する溶媒で洗浄する。このような固定した抗体および断片は、本発明の一部を形成する。
【0133】
例えば、ウエスタンブロットおよび本明細書で議論される他のイムノアッセイを実施するために有用な二次抗体を生成するための抗原がさらに提供される。
【0134】
抗TIMP2抗体(例えば、ヒト化抗体)およびその抗原結合性断片は、例えば、特定の細胞、組織、または血清、例えば、メラノーマ細胞などの腫瘍細胞において、その発現を検出する診断アッセイにおいて、TIMP2タンパク質に対して有用であり得る。このような診断方法は、種々の疾患の診断に有用であり得る。
【0135】
本発明は、本明細書に開示された抗TIMP2抗体またはその抗原結合性断片(例えば、抗体131Aおよびそのヒト化バージョン)の使用を組み込むELISAアッセイ(酵素結合免疫吸着アッセイ)を含む。
【0136】
例えば、このような方法は、以下のステップ:
(a)抗TIMP2抗体またはその抗原結合性断片で基質(例えば、マイクロタイタープレートウェル、例えば、プラスチックプレートの表面)をコーティングするステップ;
(b)TIMP2の存在について試験される試料を基質に塗布するステップ;
(c)プレートを洗浄し、その結果、試料中の未結合の材料が除去されるステップ;
(d)TIMP2抗原に対しても特異的である検出可能に標識された抗体(例えば、酵素結合抗体)を適用するステップ;
(e)基質を洗浄し、その結果、未結合の、標識された抗体が除去されるステップ;
(f)標識された抗体が酵素に結合されている場合、酵素によって蛍光シグナルへと変換される化学物質を適用するステップ;および
(g)標識された抗体の存在を検出するステップ
を含む。基質と関連する標識の検出は、TIMP2タンパク質の存在を示す。
【0137】
さらなる実施形態では、標識された抗体またはその抗原結合性断片を、ABTS(例えば、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸))または3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジンと反応するペルオキシダーゼで標識し、検出可能な色の変化を生じさせる。あるいは、標識された抗体または断片を、検出可能なラジオアイソトープ(例えば、3H)で標識し、これを、閃光(scintillant)の存在下で、シンチレーションカウンターによって検出することができる。
【0138】
本発明の抗TIMP2抗体またはその抗原結合性断片は、ウエスタンブロットまたは免疫-タンパク質ブロット手順で使用され得る。このような手順は、本発明の一部を形成し、例えば、TIMP2の存在について試験される試料に由来する(例えば、試料中のタンパク質のPAGEまたはSDS-PAGE電気泳動による分離に由来する)タンパク質を、当技術分野で公知の方法(例えば、セミドライブロッティングまたはタンクブロッティング)を使用して、必要に応じて、膜または他の固体基質上に移すことと;結合したTIMP2またはその断片の存在について試験される膜または他の固体基質を本発明の抗TIMP2抗体またはその抗原結合性断片と接触させることと;膜を1回または複数回洗浄して、未結合の抗TIMP2抗体または断片および他の未結合の物質を除去することと;結合した抗TIMP2抗体または断片を検出することとを含む。
【0139】
このような膜は、非変性PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)ゲルまたはSDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)ゲルにおいて、TIMP2の存在について試験されるタンパク質が移される(例えば、ゲルにおける電気泳動による分離後に)ニトロセルロースまたはビニル系(例えば、ポリビニリデンフルオライド(PVDF))の膜の形態をとり得る。膜を抗TIMP2抗体または断片と接触させる前に、膜は、必要に応じて、例えば、脱脂粉乳などでブロッキングされ、膜上の非特異的タンパク質結合部位に結合する。
【0140】
結合した抗体または断片の検出により、TIMP2タンパク質が、膜または基質上および試料中に存在することが示される。結合した抗体または断片の検出は、抗体または断片を、検出可能に標識された二次抗体(抗免疫グロブリン抗体)と結合させ、次いで、二次抗体の存在を検出することによってもよい。
【0141】
本明細書に開示された抗TIMP2抗体およびその抗原結合性断片を、免疫組織化学のために使用してもよい。このような方法は、本発明の一部を形成し、例えば、TIMP2タンパク質の存在について試験される細胞(例えば、メラノーマ細胞などの腫瘍細胞)を本発明の抗TIMP2抗体またはその抗原結合性断片と接触させるステップと;細胞上または細胞内の抗体または断片を検出するステップとを含む。
【0142】
抗体または断片自体が、検出可能に標識されている場合、抗体または断片は、直接的に検出され得る。あるいは、抗体または断片を、検出される、検出可能に標識された二次抗体によって結合してもよい。
【0143】
本明細書に開示されたある特定の抗TIMP2抗体およびその抗原結合性断片を、in
vivo腫瘍イメージングのために使用してもよい。このような方法は、放射線標識された抗TIMP2抗体またはその抗原結合性断片の、TIMP2発現に関連する(例えば、腫瘍細胞表面に、例えば、TIMP2を発現する)腫瘍の存在について試験される患者の体内への注射と、その後の、標識された抗体または断片の存在を、例えば、腫瘍に結合した抗体または断片を高濃度で含む位置で検出するための患者の身体の核イメージングとを含み得る。位置の検出によって、TIMP2+腫瘍および腫瘍細胞の存在が示される。
【0144】
イメージング技法は、SPECTイメージング(単一光子放出型コンピュータ断層撮影)またはPETイメージング(ポジトロン放射断層撮影)を含む。例えば、標識は、例えば、SPECTイメージングと併せたヨウ素123(123I)およびテクネチウム99m(99mTc)または、例えば、PETイメージングと併せた11C、13N、15Oもしくは18Fまたはインジウム111を含む(例えば、Gordonら、(2005年)International Rev. Neurobiol.67巻:385~440頁を参照のこと)。
【0145】
医薬組成物および投与
【0146】
本発明の抗TIMP2抗体および抗原結合性断片の医薬組成物または滅菌組成物を調製するために、抗体またはその抗原結合性断片を、薬学的に許容される担体または賦形剤と混合する。例えば、Remington's Pharmaceutical SciencesおよびU.S. Pharmacopeia:
National Formulary、Mack Publishing Company、Easton、PA(1984年)を参照のこと。
【0147】
治療剤および診断剤の製剤は、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液または懸濁物の形態の許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって調製されてもよい(例えば、Hardmanら(2001年)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、McGraw-Hill、New York、NY;Gennaro(2000年)Remington: The Science and Practice of
Pharmacy、Lippincott, Williams, and Wilkins、New York、NY;Avisら(編)(1993年)Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990年)Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990年)Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems、Marcel Dekker、NY;WeinerおよびKotkoskie(2000年)Excipient Toxicity and Safety、Marcel Dekker, Inc.、New York、NYを参照のこと)。
【0148】
単独でまたは別の治療剤と組み合わせて投与される、本発明の抗体の毒性および治療有効性を、例えば、LD50(集団の50%に対する致死用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準の薬学的手順によって決定することができる。毒性と治療効果の間の用量比は、治療指数(LD50/ED50)である。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータを、ヒトでの使用のための投薬量範囲の製剤化に使用することができる。このような化合物の投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどまたはまったくない、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、用いられる剤形および投与経路に依存して、この範囲内で変更可能である。
【0149】
さらなる実施形態では、Physicians' Desk Reference、2003年(Thomson Healthcare;第57版(2002年11月1日))に従って、本発明の抗TIMP2抗体また
はその抗原結合性断片と関連して、さらなる治療剤が被験体に投与される。
【0150】
投与方式は変化し得る。投与経路としては、経口、直腸、経粘膜、腸、非経口;筋肉内、皮下、皮内、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻内、眼内、吸入、ガス注入、局所、皮膚、経皮、腫瘍内、または動脈内が挙げられる。
【0151】
特定の実施形態では、本発明の抗TIMP2抗体またはその抗原結合性断片は、注射によるなど侵襲的経路で投与され得る。本発明のさらなる実施形態では、抗TIMP2抗体もしくはその抗原結合性断片、またはその医薬組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、動脈内、腫瘍内に、または吸入、エアロゾル送達によって投与される。非侵襲的経路による投与(例えば、経口的に;例えば、丸剤、カプセル剤または錠剤で)も本発明の範囲内にある。
【0152】
本発明は、本発明の抗体もしくは抗原結合性断片またはその医薬組成物のいずれかを含む容器(例えば、キャップまたはクロマトグラフィーカラム、中空針またはシリンジシリンダーなどを有するプラスチックまたはガラスバイアル)を提供する。本発明はまた、本発明の抗体もしくは抗原結合性断片またはその医薬組成物のいずれかを含む注射デバイスを提供する。注射デバイスは、非経口経路、例えば、筋肉内、皮下または静脈内を介して、物質を患者の体内に導入するデバイスである。例えば、注射デバイスは、例えば、注射される流体(例えば、抗体もしくは断片またはそれらの医薬組成物)を保持するシリンダーまたはバレル、流体を注射するための、皮膚および/または血管を刺すための針、ならびに流体をシリンダーから押し出して針の穴を通すためのプランジャーを含むシリンジ(例えば、医薬組成物を予め充填した、例えば、自動注射器)であってもよい。本発明の実施形態では、本発明の抗体もしくはその抗原結合性断片またはそれらの医薬組成物を含む注射デバイスは、静脈内(IV)注射デバイスである。このようなデバイスは、カニューレまたはトロカール/針を介して患者の体内に導入される流体(例えば、生理食塩水;またはNaCl、乳酸ナトリウム、KCl、CaCl2を含む、および必要に応じてグルコースを含む乳酸加リンゲル液)を保持するためのバッグまたはリザーバーに取り付けられていてもよいチューブに取り付けられていてもよいカニューレまたはトロカール/針中に抗体もしくは断片またはそれらの医薬組成物を含む。抗体もしくは断片またはそれらの医薬組成物は、本発明の実施形態では、トロカールおよびカニューレが被験体の静脈に挿入されるとデバイスに導入されてもよく、トロカールは挿入されたカニューレから除去される。IVデバイスは、例えば、(例えば、手または腕の)末梢静脈;上大静脈もしくは下大静脈、または心臓の右心房内(例えば、中央IV)に;あるいは鎖骨下静脈、内頚静脈、または大腿静脈に挿入されてもよく、例えば、IVデバイスが上大静脈または右心房(例えば、中心静脈線)に到達するまで心臓に向かって進めてもよい。本発明の実施形態では、注射デバイスは、自動注射器、ジェット式注射器または外部輸液ポンプである。ジェット式注射器は、表皮を貫通して、抗体もしくは断片またはそれらの医薬組成物を患者の体に導入する液体の細い高圧ジェットを使用する。外部輸液ポンプは、抗体もしくは断片またはそれらの医薬組成物を、量を制御して、患者の体内に送達する医学デバイスである。外部輸液ポンプは、電気的にまたは機械的に動力を供給されてよい。様々なポンプが様々な方法で作動し、例えば、シリンジポンプはシリンジのリザーバーに流体を保持し、可動ピストンが流体送達を制御し、エラストマーポンプは伸縮自在なバルーンリザーバー中に流体を保持し、バルーンの弾性壁からの圧力が流体送達を駆動する。蠕動ポンプでは、一組のローラーが、ある長さの可撓性チューブを挟み、流体を前方に押す。マルチチャネルポンプでは、流体は、複数の速度で複数のリザーバーから流体を送達することができる。
【0153】
本明細書に開示される医薬組成物はまた、米国特許第6,620,135号;同第6,096,002号;同第5,399,163号;同第5,383,851号;同第5,312,335号;同第5,064,413号;同第4,941,880号;同第4,790,824号または同第4,596,556号に開示されるデバイスなどの無針皮下注射デバイスを用いて投与することができる。医薬組成物を含むこのような無針デバイスはまた、本発明の一部である。本明細書に開示される医薬組成物はまた、注入によって投与することができる。医薬組成物を投与するための周知のインプラントおよびモジュールの例として、速度を制御して薬品を分注するための埋め込み型微注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号;正確な注入速度で薬品を送達するための薬品注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号;連続的薬物送達のための可変流量埋め込み型注入装置を開示する米国特許第4,447,224号;マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透薬物送達システムを開示する米国特許第4,439,196号に開示されるものが挙げられる。他の多くのこのようなインプラント、送達システム、およびモジュールが、当業者に周知であり、本発明の医薬組成物を含むものは本発明の範囲内である。
【0154】
代わりに、本発明の抗TIMP2抗体または抗原結合性断片は、全身方式よりも局所方式で、例えば、抗体または断片の腫瘍、例えば、TIMP2+腫瘍への直接的注射を介して、投与されてもよい。さらに、抗体または断片は、標的化薬物送達システムにおいて、例えば、免疫病理学によって特徴付けられる、例えば、腫瘍、例えば、TIMP2+腫瘍を標的とする、例えば、組織特異的抗体でコーティングされたリポソームにおいて、投与されてもよい。リポソームは、罹患した組織に送り込まれ、罹患した組織によって選択的に取り込まれることになる。このような方法およびリポソームは、本発明の一部である。
【0155】
投与レジメンは、治療用抗体または抗原結合性断片の血清または組織の代謝回転速度、症状のレベル、治療用抗体の免疫原性、および生体マトリクスにおける標的細胞の接近性を含むいくつかの因子に依存する。好ましくは、投与レジメンは、望ましくない副作用を最小限にすると同時に、標的疾患の状況の改善をもたらすのに十分な治療用抗体または断片を送達する。したがって、送達される生物製剤の量は、部分的に、特定の治療用抗体、および処置される状態の重症度に依存する。治療用抗体または断片の適当な用量を選択するガイダンスが利用可能である(例えば、Wawrzynczak(1996年)Antibody Therapy、Bios Scientific Pub. Ltd、Oxfordshire、UK;Kresina(編)(1991年)Monoclonal Antibodies, Cytokines and Arthritis、Marcel Dekker、New York、NY;Bach(編)(1993年)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases、Marcel Dekker、New
York、NY;Baertら(2003年)New Engl. J. Med. 348巻:601~608頁;Milgromら(1999年)New Engl. J. Med. 341巻:1966~1973頁;Slamonら(2001年)New
Engl. J. Med. 344巻:783~792頁;Beniaminovitzら(2000年)New Engl. J. Med. 342巻:613~619頁;Ghoshら(2003年)New Engl. J. Med. 348巻:24~32頁;Lipskyら(2000年)New Engl. J. Med. 343巻:1594~1602頁を参照のこと)。
【0156】
適当な用量の決定は、臨床医によって、例えば、処置に影響を及ぼすことが当技術分野で公知かまたは影響を及ぼすと予想されるパラメーターまたは因子を使用してなされる。一般的には、用量は、やや最適の用量未満の量から始め、その後、所望の効果または最適の効果が、あらゆる負の副作用と比べて達成されるまで、わずかな増分だけ増大される。
重要な診断尺度は、例えば、炎症の症状の尺度または生成された炎症性サイトカインのレベルを含む。一般的に、使用される生物製剤が、処置のために標的とされた動物と同じ種に由来し、それによって、試薬に対する任意の免疫応答を最小限にすることが望ましい。ヒト被験体の場合では、例えば、ヒト化および完全ヒト抗体が望ましい場合がある。
【0157】
本明細書に開示される抗体またはその抗原結合性断片は、連続的注入によって、または、例えば、毎日、1週間に1~7回、毎週、2週間毎、毎月、2カ月毎、3カ月毎、半年毎、毎年など、投与された用量によって提供することができる。用量は、例えば、静脈内に、皮下に、局所的に、経口的に、経鼻的に、直腸に、筋肉内に、脳内に、脊髄内に、または吸入によって提供され得る。毎週の総用量は、一般的に、少なくとも0.05μg/kg体重、より一般的には、少なくとも0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.25mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/ml、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kgまたはそれよりも多い(例えば、Yangら(2003年)New Engl. J. Med. 349巻:427~434頁;Heroldら(2002年)New Engl. J. Med. 346巻:1692~1698頁;Liuら(1999年)J.
Neurol. Neurosurg. Psych. 67巻:451~456頁;Portieljiら(20003年)Cancer Immunol. Immunother. 52巻:151~144頁を参照のこと)。用量はまた、被験体の血清中の抗TIMP2抗体の所定の標的濃度、例えば、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300μg/mlまたはそれよりも高い濃度を達成するために提供されてもよい。他の実施形態では、本発明の抗TIMP2抗体は、例えば、皮下または静脈内に、毎週、2週間毎、「4週毎」、毎月、2カ月毎、または3カ月毎を基準に、被験体当たり10、20、50、80、100、200、500、1000または2500mg投与される。
【0158】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、細胞、組織、または被験体に、単独でまたは追加の治療剤と組み合わせて投与される場合に、疾患の1つまたは複数の症状、例えば、がんまたはがんの進行における測定可能な改善を引き起こすのに有効な本発明の抗TIMP2またはその抗原結合性断片の量を指す。有効用量は、さらに、少なくとも部分的な症状の好転、例えば、腫瘍収縮または除去、腫瘍成長の欠如、生存時間の増加をもたらすのに十分な抗体または断片の量を指す。単独で投与される個々の有効成分に適用される場合、有効用量は、その成分を単独で指す。組み合わせに適用される場合、有効用量は、逐次的にまたは同時に組み合わせて投与されるか否かにかかわらず、治療効果をもたらす有効成分の組み合わせた量を指す。治療薬の有効量は、少なくとも10%の;通常は、少なくとも20%の;好ましくは、少なくとも約30%の;より好ましくは少なくとも40%の、最も好ましくは少なくとも50%の診断尺度またはパラメーターの改善をもたらすことになる。有効量はまた、主観的な尺度が疾患の重症度を評価するために使用される場合には、主観的な尺度に改善をもたらすことができる。
【0159】
キット
【0160】
本明細書で議論されるように、これらに限定されないが、薬学的に許容される担体および/または治療剤を含む1つまたは複数の追加の構成成分と関連して、本明細書で議論されるように、これらに限定されないが、抗TIMP2抗体または抗原結合性断片を含む1つまたは複数の構成成分を含むキットがさらに提供される。抗体もしくは断片および/または治療剤は、純粋な組成物としてまたは医薬組成物中で、薬学的に許容される担体と組み合わせて製剤化され得る。
【0161】
一実施形態では、キットは、1つの容器内に(例えば、滅菌ガラスまたはプラスチックバイアル内に)、本発明の抗TIMP2抗体もしくはその抗原結合性断片またはその医薬
組成物を、ならびに別の容器内に(例えば、滅菌ガラスまたはプラスチックバイアル内に)その医薬組成物および/または治療剤を含む。
【0162】
別の実施形態では、キットは、単一の、共通の容器内に、薬学的に許容される担体と共に、必要に応じて一緒に製剤化される1つまたは複数の治療剤と組み合わせて、必要に応じて、医薬組成物中に、本発明の抗TIMP2抗体またはその抗原結合性断片を含む、本発明の組み合わせを含む。
【0163】
キットが、被験体への非経口投与のための医薬組成物を含む場合、キットは、このような投与を実施するためのデバイスを含むことができる。例えば、キットは、上記で議論したように、1つまたは複数の皮下針または他の注射デバイスを含むことができる。
【0164】
キットは、キットにおける医薬組成物および剤形に関する情報を含む添付文書を含み得る。一般的に、このような情報は、封入されている医薬組成物および剤形を有効かつ安全に使用することにおいて患者および医師を補助する。例えば、本発明の組み合わせに関する以下の情報が添付文書において供給されてもよい:薬物動態、薬力学、臨床研究、有効性パラメーター、適応症および用法、禁忌、警告、予防策、有害反応、過剰投薬、適当な投薬量および投与、供給方法、適当な保存条件、参考資料、製造業者/流通業者情報ならびに特許情報。
【0165】
便宜上、本発明の抗TIMP2抗体またはその抗原結合性断片をキット内に、すなわち、所定量の試薬の診断または検出アッセイを実施するための説明書とのパッケージングした組み合わせに提供することができる。抗体または断片が酵素で標識されている場合、キットは、酵素が必要とする基質と補助因子(例えば、検出可能なクロモフォアまたはフルオロフォアを提供する基質前駆体)を含むことになる。さらに、安定剤、緩衝液(例えば、ブロック緩衝液または溶解緩衝液)などの他の添加剤を含んでよい。種々の試薬の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液濃度を提供するように広く変えてもよい。特に、試薬は、通常凍結乾燥されて、溶解の際に適切な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含む乾燥粉末として提供されてもよい。
【0166】
診断または検出試薬、および、例えば、ELISA(サンドイッチ型または競合的フォーマット)などのイムノアッセイを含む、様々な検出アッセイにおいて使用するための、1つまたは複数のこのような試薬を含むキットも提供される。キットの構成成分は、固体支持体に予め取り付けられてもよく、またはキットを使用する場合、固体支持体の表面に適用されてもよい。本発明の一部の実施形態では、シグナル生成手段は、本発明の抗体もしくは断片と予め関連していてもよく、または使用前に、1つもしくは複数の構成成分、例えば、緩衝液、抗体-酵素コンジュゲート、酵素基質などとの組み合わせを必要とし得る。キットはまた、追加の試薬、例えば、固相表面への非特異的結合を低減するためのブロッキング試薬、洗浄試薬、酵素基質なども含み得る。固相表面は、チューブ、ビーズ、マイクロタイタープレート、ミクロスフェア、またはタンパク質、ペプチド、もしくはポリペプチドを固定するのに好適な他の材料の形態であり得る。特定の態様では、化学発光もしくは発色性生成物の形成または化学発光もしくは発色性基質の低減を触媒する酵素は、シグナル生成手段の構成成分である。このような酵素は、当技術分野で周知である。キットは、本明細書に記載の捕捉剤および検出試薬のうちのいずれを含み得る。必要に応じて、キットは、本発明の方法を実行するための説明書を含んでもよい。
【0167】
バイアルまたは瓶などの容器中にパッケージングされた抗TIMP2抗体(例えば、ヒト化抗体)またはその抗原結合性断片を含み、容器に添付されるかまたはパッケージングされるラベルをさらに含むキットであって、ラベルが、容器の内容物を説明し、本明細書に記載されている1つまたは複数の疾患状況を処置するための、容器の内容物の使用に関
する表示および/または説明を提供する、キットも提供される。
【0168】
一態様では、キットは、がんを処置するためのものであり、抗TIMP2抗体(例えば、ヒト化抗体)またはその抗原結合性断片およびさらなる治療剤またはワクチンを含む。キットは、必要に応じて、非経口、例えば、静脈内投与のためのシリンジをさらに含んでもよい。別の態様では、キットは、抗TIMP2抗体(例えば、ヒト化抗体)またはその抗原結合性断片と、ワクチンまたはさらなる治療剤との抗体または断片の使用を説明する、容器に添付されるかまたはパッケージングされるラベルとを含む。なお別の態様では、キットは、ワクチンまたはさらなる治療剤と、抗TIMP2抗体または断片とのワクチンまたはさらなる治療剤の使用を説明する、容器に添付されるかまたはパッケージングされるラベルとを含む。ある特定の実施形態では、抗TIMP2抗体およびワクチンまたはさらなる治療剤は、別個のバイアル中にあるかまたは同一の医薬組成物中に一緒に組み合わされる。
【0169】
併用療法の項において上記で議論したように、2つの治療剤の同時投与は、薬剤がそれらの治療効果を発揮する期間において重複がある限り、薬剤を同時に、または同一の経路で投与することは必要ではない。異なる日数または週数での投与のように、同時または逐次投与が企図される。
【0170】
本明細書に開示された抗体、ペプチド、抗原結合性断片、またはポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つ、および検出試薬もしくは治療剤として組成物を使用するための説明書を含む、本明細書に開示された治療および検出キットを調製してもよい。このようなキットで使用するための容器は、典型的には、検出および/または治療組成物(複数可)のうちの1つまたは複数が、配置され、好ましくは好適に等分され得る、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジまたは他の好適な容器を含み得る。第2の治療剤も提供される場合、キットは、この第2の検出および/または治療組成物が配置され得る、第2の別個の容器も含有し得る。あるいは、複数の化合物を、単一の医薬組成物において調製することができ、バイアル、フラスコ、シリンジ、瓶、または他の好適な単一容器などの、単一の容器手段にパッケージングされ得る。本明細書に開示されたキットはまた、典型的には、所望のバイアル(複数可)が保持される、例えば、射出またはブロー成形されたプラスチック容器などの、市販のために厳重に管理されたバイアル(複数可)を含有するための手段を含む。放射性標識、発色、蛍光発生的、または他の種類の検出可能な標識または検出手段がキット内に含まれる場合、標識剤は、検出または治療組成物自体と同一の容器内に提供されるか、または代替として、この第2の組成物が配置され、好適に等分され得る、第2の別個の容器手段に配置されてもよい。あるいは、検出試薬および標識は、単一の容器手段内に調製されてもよく、ほとんどの場合では、キットは、典型的には、市販および/または好都合なパッケージングおよび配送のために厳重に管理されたバイアル(複数を含む)を含有するための手段も含むことになる。
【0171】
本明細書に記載の検出またはモニタリング方法を実行するためのデバイスまたは装置も提供される。このような装置は、試料を入れることができるチャンバーまたはチューブと、デバイスを通る試料の流れを方向付けるための弁またはポンプを必要に応じて含む流体処理システムと、必要に応じて、血液から血漿または血清を分離するためのフィルターと、捕捉剤または検出試薬の添加のための混合チャンバーと、必要に応じて、捕捉剤免疫複合体に結合した検出可能な標識の量を検出するための検出デバイスとを含んでもよい。試料の流れは、受動的(例えば、一度試料が適用されると、デバイスのさらなる操作を必要としない、毛細血管、静水学的、または他の力によって)もしくは能動的(例えば、機械的ポンプ、電気浸透ポンプ、遠心力、または空気圧の増加を介して生じる力の印加によって)、または能動的および受動的な力の組み合わせによるものであってもよい。
【0172】
さらなる実施形態では、プロセッサ、コンピュータ可読メモリ、およびコンピュータ可読メモリに格納され、本明細書に記載の方法のいずれをも実施するようにプロセッサ上で実行されるように適合されるルーチンもまた提供される。好適なコンピューティングシステム、環境、および/または構成の例としては、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ハンドヘルドもしくはラップトップデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサに基づくシステム、セットトップボックス、プログラム可能な消費家電製品、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、上記のシステムもしくはデバイスのいずれかを含む分散コンピューティング環境、または当技術分野で公知の任意の他のシステムが挙げられる。
【0173】
一般的方法
【0174】
分子生物学の標準的方法は、Sambrook、FritschおよびManiatis(1982年および1989年第2版、2001年第3版)Molecular Cloning, A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;SambrookおよびRussell(2001年)Molecular Cloning、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;Wu(1993年)Recombinant DNA、217巻、Academic Press、San Diego、CA)に記載される。標準的方法はまた、細菌細胞におけるクローニングとDNA変異誘発(1巻)、哺乳動物細胞と酵母におけるクローニング(2巻)、糖コンジュゲートとタンパク質発現(3巻)、およびバイオインフォマティクス(4巻)について記載するAusbelら(2001年)Current Protocols in Molecular Biology、1~4巻、John Wiley and Sons, Inc. New York、NYにもみられる。
【0175】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、および結晶化を含むタンパク質精製のための方法について記載されている(Coliganら(2000年)Current Protocols in Protein Science、1巻、John Wiley and Sons, Inc.、New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生成、タンパク質のグリコシル化について記載されている(例えば、Coliganら(2000年)Current Protocols in Protein Science、2巻、John Wiley and Sons, Inc.、New York;Ausubelら(2001年)Current Protocols in Molecular Biology、3巻、John Wiley and Sons, Inc.、NY、NY、16.0.5~16.22.17頁;Sigma-Aldrich, Co.(2001年)Products for Life Science Research、St. Louis、MO;45~89頁;Amersham Pharmacia Biotech(2001年)BioDirectory、Piscataway、N.J.、384~391頁を参照のこと)。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の生成、精製、および断片化について記載されている(Coliganら(2001年)Current Protcols in Immunology、1巻、John Wiley and Sons, Inc.、New York;HarlowおよびLane(1999年)Using Antibodies、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;HarlowおよびLane、上掲)。リガンド/受容体相互作用を特徴付けるための標準的技法が利用可能である(例えば、Coliganら(2001年)Current Protocols in Immunology、4巻、John Wiley, Inc.、New Yorkを参照のこ
と)。
【0176】
モノクローナル、ポリクローナル、およびヒト化抗体は調製することができる(例えば、SheperdおよびDean(編)(2000年)Monoclonal Antibodies、Oxford Univ. Press、New York、NY;KontermannおよびDubel(編)(2001年)Antibody Engineering、Springer-Verlag、New York;HarlowおよびLane(1988年)Antibodies A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、139~243頁;Carpenterら(2000年)J. Immunol. 165巻:6205頁;Heら(1998年)J. Immunol. 160巻:1029頁;Tangら(1999年)J. Biol. Chem. 274巻:27371~27378頁;Bacaら(1997年)J. Biol. Chem. 272巻:10678~10684頁;Chothiaら(1989年)Nature、342巻:877~883頁;FooteおよびWinter(1992年)J. Mol. Biol. 224巻:487~499頁;米国特許第6,329,511号を参照のこと)。
【0177】
ヒト化への代替法は、ファージに提示されたヒト抗体ライブラリーまたはトランスジェニックマウスのヒト抗体ライブラリーを使用することである(Vaughanら(1996年)Nature Biotechnol. 14巻:309~314頁;Barbas(1995年)Nature Medicine、1巻:837~839頁;Mendezら(1997年)Nature Genetics、15巻:146~156頁;HoogenboomおよびChames(2000年)Immunol. Today、21巻:371~377頁;Barbasら(2001年)Phage Display: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor
Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New
York;Kayら(1996年)Phage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual、Academic Press、San Diego、CA;de Bruinら(1999年)Nature Biotechnol. 17巻:397~399頁)。
【0178】
単鎖抗体およびダイアボディについて記載されている(例えば、Maleckiら(2002年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、99巻:213~218頁;Conrathら(2001年)J. Biol. Chem. 276巻:7346~7350頁;Desmyterら(2001年)J. Biol. Chem. 276巻:26285~26290頁;HudsonおよびKortt(1999年)J. Immunol. Methods、231巻:177~189頁;ならびに米国特許第4,946,778号を参照のこと)。二官能性抗体が提供される(例えば、Mackら(1995年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、92巻:7021~7025頁;Carter(2001年)J. Immunol. Methods、248巻:7~15頁;Volkelら(2001年)Protein Engineering、14巻:815~823頁;Segalら(2001年)J. Immunol. Methods、248巻:1~6頁;Brennanら(1985年)Science、229巻:81~83頁;Rasoら(1997年)J. Biol. Chem. 272巻:27623頁;Morrison(1985年)Science、229巻:1202~1207頁;Trauneckerら(1991年)EMBO J. 10巻:3655~3659頁;ならびに米国特許第5,932,448号、同第5,532,210号、および同第6,129,914号を参照のこと)。
【0179】
多重特異性抗体も提供される(例えば、Azzoniら(1998年)J. Immunol. 161巻:3493頁;Kitaら(1999年)J. Immunol. 162巻:6901頁;Merchantら(2000年)J. Biol. Chem. 74巻:9115頁;Pandeyら(2000年)J. Biol. Chem.
275巻:38633頁;Zhengら(2001年)J. Biol Chem. 276巻:12999頁;Propstら(2000年)J. Immunol. 165巻:2214頁;Long(1999年)Ann. Rev. Immunol. 17巻:875頁;Labrijnら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、110巻:5145~50頁、2013年;de Jongら、PLOS Biol、14巻(1号):e1002344頁、2016年(doi:10.1371/journal.pbio.1002344を参照のこと)。
抗原の精製は、抗体の作製にとって必須ではない。動物は、目的の抗原を有する細胞で免疫化することができる。次いで、脾臓細胞を免疫化動物から単離することができ、脾臓細胞を骨髄腫細胞系統と融合してハイブリドーマを生成することができる(例えば、Meyaardら(1997年)Immunity、7巻:283~290頁;Wrightら(2000年)Immunity、13巻:233~242頁;Prestonら、上掲;Kaithamanaら(1999年)J. Immunol. 163巻:5157~5164頁を参照のこと)。
【0180】
抗体は、例えば、小型薬物分子、酵素、リポソーム、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされ得る。抗体は、治療、診断、キットまたは他の目的に有用であり、例えば、色素、放射性同位体、酵素、または金属、例えば、コロイド金に連結した抗体を含む(例えば、Le Doussalら(1991年)J. Immunol. 146巻:169~175頁;Gibelliniら(1998年)J. Immunol.
160巻:3891~3898頁;HsingおよびBishop(1999年)J.
Immunol. 162巻:2804~2811頁;Evertsら(2002年)J. Immunol. 168巻:883~889頁を参照のこと)。
【0181】
蛍光標識細胞分取(FACS)を含むフローサイトメトリーのための方法が利用可能である(例えば、Owensら(1994年)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice、John Wiley and Sons、Hoboken、NJ;Givan(2001年)Flow Cytometry、第2版;Wiley-Liss、Hoboken、NJ;Shapiro(2003年)Practical Flow Cytometry、John Wiley and Sons、Hoboken、NJを参照のこと)。例えば、診断試薬として使用するための核酸プライマーおよびプローブを含む核酸、ポリペプチド、ならびに抗体を修飾するのに適する蛍光試薬が利用可能である(Molecular Probes(2003年)カタログ、Molecular Probes, Inc.、Eugene、OR;Sigma-Aldrich(2003年)カタログ、St. Louis、MO)。
【0182】
免疫系の組織学の標準的方法が記載されている(例えば、Muller-Harmelink(編)(1986年)Human Thymus: Histopathology and Pathology、Springer Verlag、New York、NY;Hiattら(2000年)Color Atlas of Histology、Lippincott, Williams, and Wilkins、Phila、PA;Louisら(2002年)Basic Histology: Text and Atlas、McGraw-Hill、New York、NYを参照のこと)。
【0183】
例えば、抗原断片、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能的ドメイン、グリコシル化部位、および配列アラインメントを決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースが利用可能である(例えば、GenBank、Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc、Bethesda、MD);GCG
Wisconsin Package(Accelrys,Inc.、San Diego、CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.、Crystal Bay、Nevada);Menneら(2000年)Bioinformatics、16巻:741~742頁;Menneら(2000年)Bioinformatics Applications Note、16巻:741~742頁;Wrenら(2002年)Comput. Methods Programs Biomed. 68巻:177~181頁;von Heijne(1983年)Eur. J.
Biochem. 133巻:17~21頁;von Heijne(1986年)Nucleic Acids Res. 14巻:4683~4690頁を参照のこと)。
【実施例0184】
(実施例1)
ウサギにおけるモノクローナル抗体の発生
【0185】
雌のニュージーランドウサギを、抗原/アジュバントエマルションで皮下注射(SQ)によって免疫化した。一次免疫化は、完全フロイントアジュバントを用いてなされ、不完全フロイントアジュバントは、次のすべての追加免疫に対して使用した。ウサギは、ウサギ1頭当たり250μgのTIMP2抗原を3週間毎にSQ注射した(2つの部位、臀部と肩甲骨を交互に)。試験採血は、2回目の追加免疫の7日後に耳翼辺縁静脈(marginal ear vein)から採取した。この試験採血(免疫血清)を間接ELISAアッセイによって試験し、ウサギの免疫応答がモノクローナル抗体の発生にとって適当であるかどうかを決定した。最良の応答を示すウサギに最後のSQ追加免疫を与え、4日後に、失血により安楽死させた。全血は、心臓穿刺により採取した。目的の抗体を産生するB細胞は、標的抗原に関する間接ELISAによって特定し、免疫グロブリン遺伝子を単離した。重鎖および軽鎖を別々の哺乳動物発現ベクターにクローニングし、HEK細胞にトランスフェクトし(一過性トランスフェクション)、ウサギのモノクローナル抗体を含有する組織培養上清を回収した。
【0186】
40H2-40K3と示した抗体を単離し、核酸およびタンパク質の配列を以下のように決定した:
重鎖
配列番号9
【化7】
【化8】
配列番号10:
【化9】
【0187】
太字でマークし、下線を付したヌクレオチドおよび対応する定常ドメインのアミノ酸は置き換えられていてもよく、例えば、G>Aは、アミノ酸置換、例えば、R>Qを生じる。この位置において好ましい残基:R、Q、N。
【化10】
軽鎖
配列番号15:
【化11】
配列番号16
【化12】
【化13】
【化14】
【0188】
6E2.1と示した抗体を単離し、核酸およびタンパク質の配列を以下のように決定した:
重鎖
配列番号32:
【化15】
配列番号33:
【化16】
【化17】
軽鎖
配列番号38:
【化18】
配列番号39
【化19】
【化20】
【化21】
【0189】
(実施例2)
患者試料に関する抗体のスクリーニング(マイクロタイターに基づくELISA方法)
【0190】
材料:
96ウェルの高結合ELISAプレート-Costar 3590(Corning)
ELISAコーティング緩衝液:PBS
ELISA洗浄緩衝液:0.02%のTween-20を含むPBS
ELISAブロッキング緩衝液(Thermo Pierce、カタログ番号N502)
ELISA試薬希釈液:200mMのTris、1%のBSA(BioFx)、0.05%のTween-20、pH8.1
ニュートラアビジン-HRPコンジュゲート(Thermo Pierce、カタログ番号31001)
1ステップUltra TMB基質(R&D systems、カタログ番号34028)
ストップ溶液:2Nの硫酸
捕捉抗体(6E2.1)
ビオチンコンジュゲート検出抗体(40H2-40K3)
組換えヒトTIMP2(Peprotech、カタログ番号410-02)
EXLx405プレート洗浄液(Biotek)
Multiskan FCプレートリーダー(Fisher Scientific)
【0191】
試験手順
【0192】
精製した、組換えTIMP2分析物を、試薬希釈液中に加え、連続希釈して、濃度の範囲をカバーする標準試料のセットを生成した。患者試料の凍結した単回使用アリコートを室温の水浴中で10分間解凍し、次いで、試薬希釈液により所望のレベルまで希釈した。
【0193】
コーティング緩衝液中で調製した5μg/mLのCapture Antibody溶液100μLを96ウェル高結合ELISAプレートの各ウェルに添加し、室温(22℃から25℃)で終夜インキュベートした。各ウェルを吸引して、自動洗浄機を使用して300μLの洗浄緩衝液で3回洗浄した。次いで、250μLのELISAブロッキング緩衝液を各ウェルに添加した。室温で2時間インキュベートした後、上記吸引/洗浄ステップを繰り返した。
【0194】
100μLの標準試料または患者試料を調製したプレートの各ウェルに添加し、水平オービタルシェーカー上で室温でインキュベートした。2時間インキュベートした後、プレートを上記したように洗浄した。次いで、試薬希釈液中で調製した0.1μg/mLの検出抗体溶液100μLを各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを再度洗浄した。ニュートラアビジン-HRPコンジュゲートの0.1μg/mL溶液を試薬希釈液中で調製し、この溶液100μLを各ウェルに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、洗浄した。1ステップultra TMB基質100μLを各ウェルに添加し、光から保護して室温で10分間インキュベートし、その後、50μLのストップ溶液を添加した。各ウェルの光学密度を、450nmの波長に設定したマイクロプレートリーダーで測定した。
【0195】
(実施例3)
患者試料に関する抗体のスクリーニング(ラテラルフローストリップ試験方法)
【0196】
材料:
ニトロセルロース膜
バッキングカード
試料パッド
ウィッキングパッド
膜ブロッキング緩衝液:10mMのリン酸ナトリウム、0.1%のショ糖、0.1%のBSA、0.2%のPVP-40、pH8.0
試料パッドブロッキング緩衝液:5mMのホウ酸塩、0.1%のTween-20、0.25%のPVP-40、0.5%のBSA、pH8.5
ランニング緩衝液J:500mMのTris、0.2%の10G、0.35%のTween-20、0.25%のPVP-40、pH8.5
蛍光によりコンジュゲートした抗体(40H2-40K3)
試験系抗体(6E2.1)
ヤギ-抗マウス陽性対照抗体
組換えヒトTIMP-2
【0197】
ストリップアセンブリー
【0198】
ニトロセルロース膜をAD3050吸引分注システムを使用して試験系抗体に関してストリップし、膜ブロッキング緩衝液でブロッキングし、37℃で30分間乾燥させた。デシケーター内で終夜キュアリングした後、ストリップされブロッキングされたニトロセルロース膜を、試料パッドブロッキング緩衝液で前処理したウィッキングパッドと試料パッドを有するバッキングカード上にラミネートした。カードを5mm幅の試験ストリップに切断し、次いで、これをカートリッジへと配置した。
【0199】
試料の調製
【0200】
精製した組換えTIMP-2分析物をランニング緩衝液J中に加え、連続希釈して、濃度の範囲をカバーする標準試料のセットを生成した。凍結した患者試料の単回使用アリコートを室温の水浴中で10分間解凍し、次いで、ランニング緩衝液Jにより所望のレベルまで希釈した。
【0201】
試験手順
【0202】
10μLのPBS中で蛍光によりコンジュゲートした抗体(0.025μg/μL)を試料100μLに添加した。次いで、100μLのこの溶液を、カートリッジのインプットポートにローディングした。結果は、蛍光リーダーと関連するソフトウェアを使用して、t=20分で読み取った。
【0203】
(実施例4)
ペプチドのPepscan合成方法およびpepscanスクリーニングを使用するエピトープマッピング
【0204】
合成線状ペプチドを、Slootstraら(Slootstraら、1996年、Mol. Diversity、1
巻、87~96頁)およびTimmermanら(Timmermanら、2007年、J, Mol Recognit
、20巻、283~299頁)によって記載されている通りに合成およびスクリーニングした。各ペプチドへの抗体の結合を、PEPSCANに基づく酵素結合イムノアッセイ(ELISA)で試験した。共有結合により連結したペプチドを、試料(例えば、5%のウマ血清(vol/vol)および4%のオボアルブミン(重量/vol)を含有するPBS溶液中で希釈した1μg/mLの抗体)および1%のTween 80と共に、4℃で終夜インキュベートした。洗浄した後、ペプチドを、ヤギ-抗ウサギHRP(Jackson Immunoresearch)で25℃で1時間インキュベートし、次に、洗浄
した後、ペルオキシダーゼ基質2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンスルホネート(ABTS)および2μg/mL 3%のH2O2を添加した。1時間後、発色を測定した。
【0205】
ペプチドセット1は、1つのアミノ酸残基のステップを有するTIMP-2配列由来のネスティド線状15マーペプチドからなり、一方、ペプチドセット2は、ペプチドの11および12位に二重アラニン突然変異体を有するペプチドの同一のセットからなった。例として、ネイティブTIMP2(配列番号45)の第1の残基から出発する、ペプチドセット1の3つのペプチドは、以下の通りである:
【化22】
【化23】
以下は、対応する突然変異配列に関する:
【化24】
アラニンがネイティブ配列に存在する場合、アラニンは、対応する突然変異配列においてグリシンと置き換えられることに留意されたい。セット1に関して高い結合を示すが、セット2に関しては示さないペプチドによって、結合に対して重要な残基が特定される。
【0206】
この方法論を使用して、抗体6E2.1に対して有力なエピトープを
【化25】
として特定し、下線を付した残基が最も重要な残基である。
【0207】
抗体40H2-40K3は、3つの結合領域、145NHRYQMGCECKI156(配列番号21)、33HPQQAFCNA41(配列番号22)、および196RSDGSCAWYR205(配列番号23)を示し、可能性のある不連続エピトープを示した。コア結合領域を、145NHRYQMGCECKI156(配列番号21)として特定した。
【0208】
本発明は、当業者がこれを作製および使用するのに十分詳細に記載および例示されたが、種々の変更、修正、および改良は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく明らかであるべきである。本明細書に提供される例は、好ましい実施形態の代表例であり、例示であり、本発明の範囲の限定を意図するものではない。そこにおける修正および他の使用が当業者に対して生じるであろう。これらの修正は、本発明の精神内に包含され、請求項の範囲によって定義される。
【0209】
本明細書における「または(or)」の使用は、別段述べられていなければ、「および/または(and/or)」を意味する。同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(inclu
de)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」は、互換的であり、限定を意図するものではない。
【0210】
種々の実施形態の記載が用語「含む(comprising)」を使用する場合、当業者は、一部の具体例では、実施形態が、言語「から本質的になる(consisting
essentially of)」または「からなる(consisting of)」を使用して代わりに記載され得ることをさらに理解する。
【0211】
別段定義されていなければ、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、この開示が属する技術分野における当業者に通常理解されるのと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または均等な任意の方法および試薬が、開示された方法および組成物の実践において使用することができるが、例示的方法および材料がここに記載される。
【0212】
本明細書で言及されるすべての刊行物は、本明細書の記載と関連して使用され得る刊行物に記載される方法論を記載および開示する目的で、完全に参照により本明細書に組み込まれる。本明細書において言及されるすべての特許および刊行物は、この開示の出願日前の、本発明が属する技術分野の当業者のレベルの指標である。本明細書のいずれも、本発明者らが、前の開示のために、このような開示に先行する権利を有さないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0213】
本発明の範囲および精神を逸脱することなく、様々な置き換えおよび修正が本明細書に開示された発明に対してなされ得ることは、当業者にとって容易に明らかとなろう。
【0214】
本明細書に例示的に記載された発明は、本発明に具体的に開示されていないいずれの要素(複数可)、限定(複数可)もない場合に実践することができる。したがって、例えば、本明細書の各場合には、用語「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」のいずれかは、他の2つの用語のいずれかと置き換えることができる。用いられた用語および表現は、限定の用語ではなく、説明の用語として使用され、このような用語および表現の使用において、示されかつ記載された特色の任意の均等物またはその部分を除外する意図はないが、種々の修正が特許請求された発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態と必要に応じた特色によって具体的に開示されているが、開示された本明細書の概念の修正および変形が当業者によって行われる場合があり、このような修正および変形は、添付の特許請求の範囲によって定義されたこの発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【0215】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内に示される。