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特開2023-145568細胞分子のin situコンビナトリアル標識化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145568
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】細胞分子のin situコンビナトリアル標識化
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20231003BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALI20231003BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z ZNA
C12Q1/6841 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023118356
(22)【出願日】2023-07-20
(62)【分割の表示】P 2020516630の分割
【原出願日】2018-09-21
(31)【優先権主張番号】62/561,806
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514104933
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ ワシントン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シーリグ,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ,アレクサンダー・ビィ
(72)【発明者】
【氏名】ロコ,チャールズ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の細胞内のRNA分子を固有に標識化する方法を提供する。
【解決手段】核、複数の核、細胞、複数の細胞、および/または組織内の分子を固有に標識化またはバーコード化する方法が提供される。核、複数の核、細胞、複数の細胞、および/または組織内の分子を固有に標識化またはバーコード化するためのキットが提供される。標識化される分子としては、これらに限定されないが、RNAおよび/またはcDNAを挙げることができる。
【選択図】図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細胞内のRNA分子を固有に標識化する方法であって、
(a)ステップ(b)の前に第1の複数の細胞を固定および透過処理するステップであって、前記第1の複数の細胞は、約8℃未満で固定および透過処理されるステップ;
(b)前記第1の複数の細胞内で前記RNA分子を逆転写して、前記第1の複数の細胞内で相補的DNA(cDNA)分子を形成するステップであって、前記RNA分子を逆転写するステップは、プライマーを前記RNA分子にカップリングするステップを含み、前記プライマーは、ポリ(T)配列またはランダム配列の少なくとも1つを含むステップ;
(c)cDNA分子を含む前記第1の複数の細胞を少なくとも2つの一次アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの一次アリコートは、第1の一次アリコートおよび第2の一次アリコートを含むステップ;
(d)一次核酸タグを前記少なくとも2つの一次アリコートに提供するステップであって、前記第1の一次アリコートに提供された前記一次核酸タグは、前記第2の一次アリコートに提供された前記一次核酸タグとは異なるステップ;
(e)前記少なくとも2つの一次アリコートの各々の内の前記cDNA分子を、提供された前記一次核酸タグとカップリングするステップ;
(f)前記少なくとも2つの一次アリコートを組み合わせるステップ;
(g)組み合わせた前記一次アリコートを少なくとも2つの二次アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの二次アリコートは、第1の二次アリコートおよび第2の二次アリコートを含むステップ;
(h)二次核酸タグを前記少なくとも2つの二次アリコートに提供するステップであって、前記第1の二次アリコートに提供された前記二次核酸タグは、前記第2の二次アリコートに提供された前記二次核酸タグとは異なるステップ;
(i)前記少なくとも2つの二次アリコートの各々の内の前記cDNA分子を、提供された前記二次核酸タグとカップリングするステップ;
(j)その後のアリコートを用いて、ステップ(f)、(g)、(h)、および(i)を繰り返すステップであって、最終核酸タグは捕捉剤を含むステップ;
(k)最終アリコートを組み合わせるステップ;
(l)前記第1の複数の細胞を溶解して、前記第1の複数の細胞内から前記cDNA分子を放出させて、ライセートを形成するステップ;ならびに
(m)プロテアーゼ阻害剤および結合剤を前記ライセートに添加し、前記cDNA分子が前記結合剤に結合するようにするステップ
を含む方法。
【請求項2】
組み合わせた前記最終アリコートを少なくとも2つの最終アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの最終アリコートは、第1の最終アリコートおよび第2の最終アリコートを含むステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の複数の細胞は、約7℃未満、約6℃未満、約5℃未満、約4℃未満、約3℃未満、約2℃未満、または約1℃未満で固定および透過処理される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロテアーゼ阻害剤は、フッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)または4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記捕捉剤はビオチンを含み、前記結合剤はアビジンを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記結合剤はストレプトアビジンを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(n)前記結合剤に結合した前記cDNA分子のテンプレートスイッチを実行するステップ;
(o)前記cDNA分子を増幅して、増幅cDNA分子溶液を形成するステップ;および
(p)固相可逆的固定化(SPRI)ビーズ溶液を前記増幅cDNA分子溶液に導入して、200塩基対未満のポリヌクレオチドを除去するステップであって、SPRIビーズ溶液対増幅cDNA分子溶液の比は、約0.9:1~約0.7:1であるステップ
をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
SPRIビーズ溶液対ライセートの比は、約0.875:1~約0.775:1、約0.85:1~約0.75:1、または約0.825:1~約0.725:1である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記SPRIビーズ溶液は、約2M~3MのNaCl、および約15w/v%~25w/v%のポリエチレングリコール(PEG)を含み、前記PEGの分子量は、約7,000g/mol~9,000g/molである、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
共通アダプター配列を、放出された前記cDNA分子の3’末端に付加するステップであって、付加する前記ステップは、約10w/v%までのポリエチレングリコールを含む溶液中で実行され、前記ポリエチレングリコールの分子量は、約7,000g/mol~9,000g/molであるステップ
をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記共通アダプター配列は、テンプレートスイッチを行うことにより、放出された前記cDNA分子の前記3’末端に付加される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(j)は、単一細胞の核酸に対して固有の一連の核酸タグを生成するのに十分な回数だけ繰り返される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記回数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、および100から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(b)の前記プライマーは、第1の特異的バーコードをさらに含み、前記方法は、
(q)第2の複数の細胞内でRNA分子を逆転写して、前記第2の複数の細胞内でcDNA分子を形成するステップであって、前記RNA分子を逆転写するステップは、特異的プライマーを前記RNA分子にカップリングするステップを含み、前記プライマーは、第2の特異的バーコードと、ポリ(T)配列またはランダム配列の少なくとも1つとを含み、前記第1の特異的バーコードは、前記第1の複数の細胞に由来する前記cDNA分子を、前記第2の複数の細胞に由来する前記cDNA分子と比較して識別することができるように、前記第2の特異的バーコードとは異なるステップ;
(r)cDNA分子を含む前記第2の複数の細胞を少なくとも2つの一次アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの一次アリコートは、第1の一次アリコートおよび第2の一次アリコートを含むステップ;
(s)一次核酸タグを前記少なくとも2つの一次アリコートに提供するステップであって、前記第1の一次アリコートに提供された前記一次核酸タグは、前記第2の一次アリコ
ートに提供された前記一次核酸タグとは異なるステップ;
(t)前記少なくとも2つの一次アリコートの各々の内の前記cDNA分子を、提供された前記一次核酸タグとカップリングするステップ;
(u)前記少なくとも2つの一次アリコートを組み合わせるステップ;
(v)組み合わせた前記一次アリコートを少なくとも2つの二次アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの二次アリコートは、第1の二次アリコートおよび第2の二次アリコートを含むステップ;
(w)二次核酸タグを前記少なくとも2つの二次アリコートに提供するステップであって、前記第1の二次アリコートに提供された前記二次核酸タグは、前記第2の二次アリコートに提供された前記二次核酸タグとは異なるステップ;
(x)前記少なくとも2つの二次アリコートの各々の内の前記cDNA分子を、提供された前記二次核酸タグとカップリングするステップ;ならびに
(y)その後のアリコートを用いて、ステップ(u)、(v)、(w)、および(x)を繰り返すステップであって、最終核酸タグは捕捉剤を含むステップ
をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記核酸タグの各々は、
3’末端および5’末端を含むバーコード配列、ならびに
前記バーコード配列の前記3’末端および前記5’末端にそれぞれ隣接する3’ハイブリダイゼーション配列および5’ハイブリダイゼーション配列
を含む第1の鎖;ならびに
前記5’ハイブリダイゼーション配列および前記アダプター配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに
前記3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分
を含む第2の鎖
を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記cDNA分子に結合している前記核酸タグの少なくとも2つをライゲーションするステップ
をさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ライゲーションは、前記第1の複数の細胞内で実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
未結合核酸タグを除去するステップ
をさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
放出された前記cDNA分子に結合している前記核酸タグの少なくとも2つをライゲーションするステップ
をさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
単一細胞に由来する、前記核酸タグに結合したcDNA分子の大部分は、同じ一連の結合した核酸タグを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の複数の細胞は、哺乳動物細胞、酵母細胞、および細菌細胞の少なくとも1つから選択される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
第1の細胞内の核酸を標識化する方法であって、
(a)
(i)5’突出配列を含む第1の逆転写プライマーであって、前記第1の逆転写プライ
マーがポリ(A)尾部を有するRNAを逆転写するように構成されている第1の逆転写プライマー、および
(ii)5’突出配列と、ランダム六量体、ランダム七量体、ランダム八量体、ランダム九量体、およびランダム十量体の少なくとも1つとを含む第2の逆転写プライマー
の少なくとも1つを使用してRNAを逆転写することにより、前記第1の細胞を含む複数の細胞内で相補的DNA(cDNA)分子を生成するステップ:
(b)前記複数の細胞を(n)個のアリコートに分割するステップ;
(c)複数の核酸タグを前記n個のアリコートの各々に提供するステップであって、各核酸タグは、
標識化配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、および前記標識化配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含む第1の鎖、ならびに
突出配列を含む第2の鎖であって、前記突出配列は、(i)前記5’ハイブリダイゼーション配列および前記5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)前記3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含む第2の鎖を含み、
所与のアリコートに提供された前記複数の核酸タグの各標識化配列は同じであり、前記n個のアリコートの各々には異なる標識化配列が提供されるステップ;
(d)前記n個のアリコートの各々の前記cDNA分子の少なくとも1つを前記核酸タグに結合させるステップ;
(e)前記n個のアリコートを組み合わせるステップ;ならびに
(f)組み合わせた前記アリコートを用いて、ステップ(b)、(c)、(d)、および(e)を繰り返すステップ;
(g)最終アリコートを組み合わせるステップ;
(h)前記第1の細胞を含む前記複数の細胞を溶解して、前記第1の細胞を含む前記複数の細胞内から前記cDNA分子を放出させて、ライセートを形成するステップ;ならびに
(i)プロテアーゼ阻害剤および結合剤を前記ライセートに添加し、前記cDNA分子が前記結合剤に結合するようにするステップ
を含む方法。
【請求項23】
ステップ(f)は、前記第1の細胞の前記cDNA分子に対して固有の一連の標識化配列を生成するのに十分な回数だけ繰り返される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記回数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、および100から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記cDNA分子は、アリコート中で生成され、前記アリコート中の前記第1の逆転写プライマーの濃度は、約0.5μM~約10μMであり、前記アリコート中の前記第2の逆転写プライマーの濃度は、約0.5μM~約10μMである、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(a)の前に前記複数の細胞を固定するステップであって、前記複数の細胞は、約8℃未満で固定されるステップ
をさらに含む、請求項22~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記複数の細胞は、約7℃未満、約6℃未満、約5℃未満、約4℃未満、約3℃未満、約2℃未満、または約1℃未満で固定される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(a)の前に前記複数の細胞を透過処理するステップであって、前記複数の細胞は、約8℃未満で透過処理されるステップ
をさらに含む、請求項22~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記複数の細胞は、約7℃未満、約6℃未満、約5℃未満、約4℃未満、約3℃未満、約2℃未満、または約1℃未満で透過処理される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記cDNA分子に結合している前記核酸タグの少なくとも2つをライゲーションするステップ
をさらに含む、請求項22~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ライゲーションは、前記複数の細胞内で実施される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
未結合核酸タグを除去するステップ
をさらに含む、請求項22~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記第1および第2の逆転写プライマーの少なくとも1つは、所定のRNAを逆転写するように構成されている、請求項22~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記最終核酸タグは捕捉剤を含み、前記方法は、
ステップ(f)の後で、前記複数の細胞を溶解して、前記複数の細胞内から前記cDNA分子を放出させて、ライセートを形成するステップ;ならびに
プロテアーゼ阻害剤および結合剤を前記ライセートに添加して、前記cDNA分子を単離するステップ
をさらに含む、請求項22~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記プロテアーゼ阻害剤は、フッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)または4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記捕捉剤はビオチンを含み、前記結合剤はアビジンを含む、請求項34または請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記結合剤はストレプトアビジンを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
(j)前記結合剤に結合した前記cDNA分子のテンプレートスイッチを実行するステップ;
(k)前記cDNA分子を増幅して、増幅cDNA分子溶液を形成するステップ;および
(l)固相可逆的固定化(SPRI)ビーズ溶液を前記増幅cDNA分子溶液に導入して、200塩基対未満のポリヌクレオチドを除去するステップであって、SPRIビーズ溶液対増幅cDNA分子溶液の比は、約0.9:1~約0.7:1であるステップ
をさらに含む、請求項22~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
SPRIビーズ溶液対ライセートの比は、約0.875:1~約0.775:1、約0.85:1~約0.75:1、または約0.825:1~約0.725:1である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記SPRIビーズ溶液は、約2M~3MのNaCl、および約15w/v%~25w
/v%のポリエチレングリコール(PEG)を含み、前記PEGの分子量は、約7,000g/mol~9,000g/molである、請求項38または請求項39に記載の方法。
【請求項41】
共通アダプター配列を、放出された前記cDNA分子の3’末端に付加するステップであって、付加する前記ステップは、約10w/v%までのポリエチレングリコールを含む溶液中で実行され、前記ポリエチレングリコールの分子量は、約7,000g/mol~9,000g/molであるステップ
をさらに含む、請求項22~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記共通アダプター配列は、テンプレートスイッチを行うことにより、放出された前記cDNA分子の前記3’末端に付加される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
放出された前記cDNA分子に結合している前記核酸タグの少なくとも2つをライゲーションするステップ
をさらに含む、請求項22~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記複数の細胞は、哺乳動物細胞、酵母細胞、および細菌細胞の少なくとも1つから選択される、請求項22~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
第1の細胞内の核酸を標識化するためのキットであって、
5’突出配列を含む第1の逆転写プライマーであって、前記第1の逆転写プライマーがポリ(A)尾部を有するRNAを逆転写するように構成されている第1の逆転写プライマー;
5’突出配列と、ランダム六量体、ランダム七量体、ランダム八量体、ランダム九量体、およびランダム十量体の少なくとも1つとを含む第2の逆転写プライマー;
複数の第1の核酸タグであって、各第1の核酸タグは、
第1の標識化配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、および前記第1の標識化配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含む第1の鎖、ならびに
突出配列を含む第2の鎖であって、前記突出配列は、(i)前記第1および第2の逆転写プライマーの前記5’ハイブリダイゼーション配列および前記5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)前記3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含む第2の鎖を含む複数の第1の核酸タグ;
複数の第2の核酸タグであって、各第2の核酸タグは、
第2の標識化配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、および前記第2の標識化配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含む第1の鎖、ならびに
突出配列を含む第2の鎖であって、前記突出配列は、(i)前記第1および第2の逆転写プライマーの前記5’ハイブリダイゼーション配列および前記5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)前記3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含む第2の鎖を含み、前記第1の標識化配列は前記第2の標識化配列とは異なる、複数の第2の核酸タグ;ならびに
複数の最終核酸タグであって、各最終核酸タグは、
最終標識化配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、および前記最終標識化配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含む第1の鎖、
突出配列を含む第2の鎖であって、前記突出配列は、(i)前記第1および第2の逆転写プライマーの前記5’ハイブリダイゼーション配列および前記5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)前記3’ハイブリダイゼーション配列に
相補的な第2の部分を含む第2の鎖、ならびに
捕捉剤を含み、前記最終標識化配列は、前記第1および第2の標識化配列とは異なる、複数の最終核酸タグ
を含むキット。
【請求項46】
逆転写酵素、固定剤、透過処理剤、ライゲーション剤、溶解剤、およびプロテアーゼ阻害剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
1つまたは複数の追加の複数の核酸タグであって、各核酸タグは、
標識化配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、および前記標識化配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含む第1の鎖、ならびに
突出配列を含む第2の鎖であって、前記突出配列は、(i)前記第1および第2の逆転写プライマーの前記5’ハイブリダイゼーション配列および前記5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)前記3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含む第2の鎖を含み、
前記標識化配列は、各所与の追加の複数の核酸タグが異なる、1つまたは複数の追加の複数の核酸タグをさらに含む、請求項45または請求項46に記載のキット。
【請求項48】
複数の核内のRNA分子を固有に標識化する方法であって、
(a)ステップ(b)の前に第1の複数の核を固定および透過処理するステップであって、前記第1の複数の核は、約8℃未満で固定および透過処理されるステップ;
(b)前記第1の複数の核内で前記RNA分子を逆転写して、前記第1の複数の核内で相補的DNA(cDNA)分子を形成するステップであって、前記RNA分子を逆転写するステップは、プライマーを前記RNA分子にカップリングするステップを含み、前記プライマーは、ポリ(T)配列またはランダム配列の少なくとも1つを含むステップ;
(c)cDNA分子を含む前記第1の複数の核を少なくとも2つの一次アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの一次アリコートは、第1の一次アリコートおよび第2の一次アリコートを含むステップ;
(d)一次核酸タグを前記少なくとも2つの一次アリコートに提供するステップであって、前記第1の一次アリコートに提供された前記一次核酸タグは、前記第2の一次アリコートに提供された前記一次核酸タグとは異なるステップ;
(e)前記少なくとも2つの一次アリコートの各々の内の前記cDNA分子を、提供された前記一次核酸タグとカップリングするステップ;
(f)前記少なくとも2つの一次アリコートを組み合わせるステップ;
(g)組み合わせた前記一次アリコートを少なくとも2つの二次アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの二次アリコートは、第1の二次アリコートおよび第2の二次アリコートを含むステップ;
(h)二次核酸タグを前記少なくとも2つの二次アリコートに提供するステップであって、前記第1の二次アリコートに提供された前記二次核酸タグは、前記第2の二次アリコートに提供された前記二次核酸タグとは異なるステップ;
(i)前記少なくとも2つの二次アリコートの各々の内の前記cDNA分子を、提供された前記二次核酸タグとカップリングするステップ;
(j)その後のアリコートを用いて、ステップ(f)、(g)、(h)、および(i)を繰り返すステップであって、最終核酸タグは捕捉剤を含むステップ;
(k)最終アリコートを組み合わせるステップ;
(l)前記第1の複数の核を溶解して、前記第1の複数の核内から前記cDNA分子を放出させて、ライセートを形成するステップ;ならびに
(m)プロテアーゼ阻害剤および結合剤を前記ライセートに添加し、前記cDNA分子が前記結合剤に結合するようにするステップ
を含む方法。
【請求項49】
組み合わせた前記最終アリコートを少なくとも2つの最終アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの最終アリコートは、第1の最終アリコートおよび第2の最終アリコートを含むステップをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の複数の核は、約7℃未満、約6℃未満、約5℃未満、約4℃未満、約3℃未満、約2℃未満、または約1℃未満で固定および透過処理される、請求項48または請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記プロテアーゼ阻害剤は、フッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)または4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)を含む、請求項48~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記捕捉剤はビオチンを含み、前記結合剤はアビジンを含む、請求項48~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記結合剤はストレプトアビジンを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
(n)前記結合剤に結合した前記cDNA分子のテンプレートスイッチを実行するステップ;
(o)前記cDNA分子を増幅して、増幅cDNA分子溶液を形成するステップ;および
(p)固相可逆的固定化(SPRI)ビーズ溶液を前記増幅cDNA分子溶液に導入して、200塩基対未満のポリヌクレオチドを除去するステップであって、SPRIビーズ溶液対増幅cDNA分子溶液の比は、約0.9:1~約0.7:1であるステップ
をさらに含む、請求項48~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
SPRIビーズ溶液対ライセートの比は、約0.875:1~約0.775:1、約0.85:1~約0.75:1、または約0.825:1~約0.725:1である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記SPRIビーズ溶液は、約2M~3MのNaCl、および約15w/v%~25w/v%のポリエチレングリコール(PEG)を含み、前記PEGの分子量は、約7,000g/mol~9,000g/molである、請求項54または請求項55に記載の方法。
【請求項57】
共通アダプター配列を、放出された前記cDNA分子の3’末端に付加するステップであって、付加する前記ステップは、約10w/v%までのポリエチレングリコールを含む溶液中で実行され、前記ポリエチレングリコールの分子量は、約7,000g/mol~9,000g/molであるステップをさらに含む、請求項48~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記共通アダプター配列は、テンプレートスイッチを行うことにより、放出された前記cDNA分子の前記3’末端に付加される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
ステップ(j)は、単一細胞の核酸に対して固有の一連の核酸タグを生成するのに十分な回数だけ繰り返される、請求項48~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記回数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、
15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、および100から選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
ステップ(b)の前記プライマーは、第1の特異的バーコードをさらに含み、前記方法は、
(q)第2の複数の核内でRNA分子を逆転写して、前記第2の複数の核内でcDNA分子を形成するステップであって、前記RNA分子を逆転写するステップは、特異的プライマーを前記RNA分子にカップリングするステップを含み、前記プライマーは、第2の特異的バーコードと、ポリ(T)配列またはランダム配列の少なくとも1つとを含み、前記第1の特異的バーコードは、前記第1の複数の核に由来する前記cDNA分子を、前記第2の複数の核に由来する前記cDNA分子と比較して識別することができるように、前記第2の特異的バーコードとは異なるステップ;
(r)cDNA分子を含む前記第2の複数の核を少なくとも2つの一次アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの一次アリコートは、第1の一次アリコートおよび第2の一次アリコートを含むステップ;
(s)一次核酸タグを前記少なくとも2つの一次アリコートに提供するステップであって、前記第1の一次アリコートに提供された前記一次核酸タグは、前記第2の一次アリコートに提供された前記一次核酸タグとは異なるステップ;
(t)前記少なくとも2つの一次アリコートの各々の内の前記cDNA分子を、提供された前記一次核酸タグとカップリングするステップ;
(u)前記少なくとも2つの一次アリコートを組み合わせるステップ;
(v)組み合わせた前記一次アリコートを少なくとも2つの二次アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの二次アリコートは、第1の二次アリコートおよび第2の二次アリコートを含むステップ;
(w)二次核酸タグを前記少なくとも2つの二次アリコートに提供するステップであって、前記第1の二次アリコートに提供された前記二次核酸タグは、前記第2の二次アリコートに提供された前記二次核酸タグとは異なるステップ;
(x)前記少なくとも2つの二次アリコートの各々の内の前記cDNA分子を、提供された前記二次核酸タグとカップリングするステップ;および
(y)その後のアリコートを用いて、ステップ(u)、(v)、(w)、および(x)を繰り返すステップであって、最終核酸タグは捕捉剤を含むステップ
をさらに含む、請求項48~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記核酸タグの各々は、
3’末端および5’末端を含むバーコード配列、ならびに
前記バーコード配列の前記3’末端および前記5’末端にそれぞれ隣接する3’ハイブリダイゼーション配列および5’ハイブリダイゼーション配列
を含む第1の鎖;ならびに
前記5’ハイブリダイゼーション配列および前記アダプター配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに
前記3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分
を含む第2の鎖
を含む、請求項48~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記cDNA分子に結合している前記核酸タグの少なくとも2つをライゲーションするステップ
をさらに含む、請求項48~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記ライゲーションは、前記第1の複数の核内で実施される、請求項63に記載の方法
【請求項65】
未結合核酸タグを除去するステップ
をさらに含む、請求項48~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
放出された前記cDNA分子に結合している前記核酸タグの少なくとも2つをライゲーションするステップ
をさらに含む、請求項48~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
単一細胞に由来する、前記核酸タグに結合したcDNA分子の大部分は、同じ一連の結合した核酸タグを含む、請求項48~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
第1の核内の核酸を標識化する方法であって、
(a)
(i)5’突出配列を含む第1の逆転写プライマーであって、前記第1の逆転写プライマーがポリ(A)尾部を有するRNAを逆転写するように構成されている第1の逆転写プライマー、および
(ii)5’突出配列と、ランダム六量体、ランダム七量体、ランダム八量体、ランダム九量体、およびランダム十量体の少なくとも1つとを含む第2の逆転写プライマー
の少なくとも1つを使用してRNAを逆転写することにより、前記第1の核を含む複数の核内で相補的DNA(cDNA)分子を生成するステップ:
(b)前記複数の核を(n)個のアリコートに分割するステップ;
(c)複数の核酸タグを前記n個のアリコートの各々に提供するステップであって、各核酸タグは、
標識化配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、および前記標識化配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含む第1の鎖、ならびに
突出配列を含む第2の鎖であって、前記突出配列は、(i)前記5’ハイブリダイゼーション配列および前記5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)前記3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含む第2の鎖を含み、
所与のアリコートに提供された前記複数の核酸タグの各標識化配列は同じであり、前記n個のアリコートの各々には異なる標識化配列が提供されるステップ;
(d)前記n個のアリコートの各々の前記cDNA分子の少なくとも1つを前記核酸タグに結合させるステップ;
(e)前記n個のアリコートを組み合わせるステップ;ならびに
(f)組み合わせた前記アリコートを用いて、ステップ(b)、(c)、(d)、および(e)を繰り返すステップ;
(g)最終アリコートを組み合わせるステップ;
(h)前記第1の核を含む前記複数の核を溶解して、前記第1の核を含む前記複数の核内から前記cDNA分子を放出させて、ライセートを形成するステップ;ならびに
(i)プロテアーゼ阻害剤および結合剤を前記ライセートに添加し、前記cDNA分子が前記結合剤に結合するようにするステップ
を含む方法。
【請求項69】
ステップ(f)は、前記第1の核の前記cDNA分子に対して固有の一連の標識化配列を生成するのに十分な回数だけ繰り返される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記回数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、4
0、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、および100から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記cDNA分子は、アリコート中で生成され、前記アリコート中の前記第1の逆転写プライマーの濃度は、約0.5μM~約10μMであり、前記アリコート中の前記第2の逆転写プライマーの濃度は、約0.5μM~約10μMである、請求項68~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
ステップ(a)の前に前記複数の核を固定するステップであって、前記複数の核は、約8℃未満で固定されるステップ
をさらに含む、請求項68~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記複数の核は、約7℃未満、約6℃未満、約5℃未満、約4℃未満、約3℃未満、約2℃未満、または約1℃未満で固定される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
ステップ(a)の前に前記複数の核を透過処理するステップであって、前記複数の核は、約8℃未満で透過処理されるステップ
をさらに含む、請求項68~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記複数の核は、約7℃未満、約6℃未満、約5℃未満、約4℃未満、約3℃未満、約2℃未満、または約1℃未満で透過処理される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記cDNA分子に結合している前記核酸タグの少なくとも2つをライゲーションするステップ
をさらに含む、請求項68~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記ライゲーションは、前記複数の核内で実施される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
未結合核酸タグを除去するステップ
をさらに含む、請求項68~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記第1および第2の逆転写プライマーの少なくとも1つは、所定のRNAを逆転写するように構成されている、請求項68~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記最終核酸タグは捕捉剤を含み、前記方法は、
ステップ(f)の後に、前記複数の核を溶解して、前記複数の核内から前記cDNA分子を放出させて、ライセートを形成するステップ;ならびに
プロテアーゼ阻害剤および結合剤を前記ライセートに添加して、前記cDNA分子を単離するステップ
をさらに含む、請求項68~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記プロテアーゼ阻害剤は、フッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)または4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記捕捉剤はビオチンを含み、前記結合剤はアビジンを含む、請求項80または請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記結合剤はストレプトアビジンを含む、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
(j)前記結合剤に結合した前記cDNA分子のテンプレートスイッチを実行するステップ;
(k)前記cDNA分子を増幅して、増幅cDNA分子溶液を形成するステップ;および
(l)固相可逆的固定化(SPRI)ビーズ溶液を前記増幅cDNA分子溶液に導入して、200塩基対未満のポリヌクレオチドを除去するステップであって、SPRIビーズ溶液対増幅cDNA分子溶液の比は、約0.9:1~約0.7:1であるステップ
をさらに含む、請求項68~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
SPRIビーズ溶液対ライセートの比は、約0.875:1~約0.775:1、約0.85:1~約0.75:1、または約0.825:1~約0.725:1である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記SPRIビーズ溶液は、約2M~3MのNaCl、および約15w/v%~25w/v%のポリエチレングリコール(PEG)を含み、前記PEGの分子量は、約7,000g/mol~9,000g/molである、請求項84または請求項85に記載の方法。
【請求項87】
共通アダプター配列を、放出された前記cDNA分子の3’末端に付加するステップであって、付加する前記ステップは、約10w/v%までのポリエチレングリコールを含む溶液中で実行され、前記ポリエチレングリコールの分子量は、約7,000g/mol~9,000g/molであるステップをさらに含む、請求項68~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記共通アダプター配列は、テンプレートスイッチを行うことにより、放出された前記cDNA分子の前記3’末端に付加される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
放出された前記cDNA分子に結合している前記核酸タグの少なくとも2つをライゲーションするステップ
をさらに含む、請求項68~88のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月22日に出願された米国特許仮出願第62/561,806号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、概して、核、複数の核、細胞、複数の細胞、および/または組織内の分子を固有に標識化またはバーコード化する方法に関する。また、本開示は、核、複数の核、細胞、複数の細胞、および/または組織内の分子を固有に標識化するためのキットに関する。特に、本方法およびキットは、RNAおよび/またはcDNAの標識化に関し得る。
【背景技術】
【0003】
背景
次世代塩基配列決定法(NGS)は、細胞の試料に由来する個々の転写物を識別および/または定量化するために使用することができる。しかしながら、そのような技法は、大規模試料中の個々の細胞に対して実施するには複雑過ぎる場合がある。そのような方法では、一般に、溶解細胞(つまり、ばらばらに破壊された細胞)からRNA転写物を精製し、続いて逆転写を使用してRNA転写物を相補的DNA(cDNA)へと変換する。その後、NGSを使用してcDNA配列を配列決定することができる。そのような手順では、cDNA配列がすべて配列決定前に一緒に混合されるため、試料全体のRNA発現が測定され、個々の配列を元の個々の細胞に関連付けることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
個々の細胞に由来する転写物を固有に標識化またはバーコード化する方法は、個々の細胞を別々の反応槽へと手動で分離すること含んでいてもよく、専門装置を必要とする場合がある。細胞の個々の転写物を配列決定するための代替的手法は、顕微鏡検査を使用して、個々の蛍光性塩基を識別することである。しかしながら、この技法は、実施が困難であり、少数の細胞の配列決定に限定される場合がある。
【0005】
本明細書で開示された実施形態は、添付の図面と併せて考慮すると、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
詳細な説明
本開示は、概して、核、複数の核、細胞、複数の細胞、および/または組織内の分子を固有に標識化またはバーコード化する方法に関する。また、本開示は、核、複数の核、細胞、複数の細胞、および/または組織内の分子を固有に標識化またはバーコード化するためのキットに関する。標識化される分子としては、これらに限定されないが、RNA、cDNA、DNA、タンパク質、ペプチド、および/または抗原を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】標識またはバーコードを形成するための核酸タグのライゲーションを示す図である。
図2】in situ逆転写によるcDNA形成の概略図である。パネルAは、固定および透過処理されている細胞を示す。パネルBは、ポリアデニル化転写物の逆転写を鋳型化する(template)ことができるポリ(T)プライマーの付加を示す。パネルCは、実質的にあらゆる転写物の逆転写を鋳型化することができるランダム六量体の付加を示す。パネルDは、転写物のサブセットのみを増幅することができるように特定の転写物を標的とするように設計されているプライマーの付加を示す。パネルEは、逆転写後のパネルAの細胞を示し、cDNAがRNAにハイブリダイズしていることが表されている。
図3A】RNA断片に対する一本鎖アダプターの非鋳型ライゲーションを示す図である。
図3B】ランダム六量体プライマーとの部分的な二重鎖を使用した、一本鎖アダプターのライゲーションを示す図である。
図4】プライマー結合を示す図である。
図5】プライマー結合後の逆転写を示す図である。
図6】細胞タンパク質の標識化に使用されるDNAタグ化抗体を示す図である。
図7】細胞タンパク質の標識化に使用されるアプタマーを示す図である。
図8】本開示の実施形態による、細胞の分割、タグ化、およびプール化の概略図である。図示されているように、細胞を複数の反応槽に分割することができる。図示されているプロセスを通るその経路を示すために1つの細胞が強調されている。
図9A】本開示の実施形態による例示的なワークフローを示す図である。
図9B】本開示の別の実施形態による例示的なワークフローを示す図である。
図10】本開示の実施形態による逆転写プライマー(BC_0055)を示す図である。
図11】本開示の実施形態による、アニーリングされた第1ラウンドバーコードオリゴを示す図である。
図12】本開示の実施形態による、アニーリングされた第2ラウンドバーコードオリゴを示す図である。
図13】本開示の実施形態による、アニーリングされた第3ラウンドバーコードオリゴを示す図である。
図14】本開示の実施形態によるライゲーション停止オリゴを示す図である。
図15】本開示の実施形態による、cDNAの3’末端にライゲーションした一本鎖DNAアダプターオリゴ(BC_0047)を示す図である。
図16】プライマーBC_0051およびBC_0062を使用して形成されたPCR産物、ならびにバーコード化cDNAにライゲーションした後の3’アダプターオリゴ(BC_0047)を示す図である。
図17】フローセル結合配列とTRUSEQ(商標)read1プライマーの結合部位とを含むBC_0027、およびフローセル結合配列とTruSeqマルチプレックスリード2とインデックス結合配列とを含むBC_0063を示す図である。図17には、この実施形態ではGATCTGである試料インデックスの領域も示されている。
図18】各固有バーコード組合せについて、ヒトゲノムにアラインしたリードの数(X軸)およびマウスゲノムにアラインしたリードの数(Y軸)がプロットされている散布図である。
図19】タグメンテーション(tagmentation)の前および後のcDNAのサイズを示す図である。
図20】P2およびP11マウスの脳および脊髄に由来する150,000個よりも多くの核を、600万通りよりも多くのバーコード組合せが使用された単一実験でプロファイルした実験を示す図である。4つの開始試料(P2脊髄、P2脳、P11脊髄、またはP11脊髄)のどれを各ウェルに添加したかを記録することにより、第1ラウンドバーコード配列を使用して、どの細胞/核がどの試料に由来したかを識別することができる。
図21】3ラウンドのバーコード化中の、各ウェルの核の数を示す図である。手作業で細胞をピペットしたにも関わらず、ほとんどのウェルは、ほぼ等しい数の核を含んでいる。P2脊髄の分離は、他の試料よりも少数の細胞をもたらした。これにより、対応する第1ラウンドのウェル内の核の数がより少ないことが説明される。
図22】乏枝神経膠細胞系統内のP2/P11脳および脊髄単一核トランスクリプトームの分布を示す図である。各核試料(P2脊髄、P2脳、P11脊髄、またはP11脊髄)は、各細胞/核バーコード組合せに由来する第1ラウンドのバーコードを調査することにより決定することができる。
図23】本明細書で提供されるプロトコールの全体像を示す図である。
図24】本明細書で提供されるプロトコールの分子ダイヤグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
概して本明細書に記載されている実施形態は例示であることが容易に理解されるだろう。種々の実施形態の以下のより詳細な説明は、本開示の範囲を限定することは意図されておらず、種々の実施形態を代表するものであるに過ぎない。さらに、当業者であれば、本開示の範囲から逸脱せずに、本明細書で開示された方法のステップまたは動作の順序を変えることができる。言い換えれば、ステップまたは動作の特定の順序が実施形態の適切な作業に必要でない限り、特定のステップまたは動作の順序または使用は改変することができる。
【0009】
用語「結合」は、2つまたはそれよりも多くの成分、実体、または物体を付着またはカップリングするための任意の形態を指すために、本開示の全体にわたって広く使用される。例えば、2つまたはそれよりも多くの成分は、化学結合、共有結合、イオン結合、水素結合、静電力、ワトソン-クリック型ハイブリダイゼーションなどにより互いに結合されてもよい。
【0010】
本開示の1つの態様は、核酸を標識化する方法に関する。一部の実施形態では、本方法は、第1の細胞にて核酸を標識化するステップを含んでいてもよい。本方法は、(a)5’突出配列を含む逆転写プライマーを使用してRNAを逆転写することにより、第1の細胞を含む複数の細胞内で相補的DNA(cDNA)を生成するステップ;(b)複数の細胞を(n)個のアリコートに分割するステップ;(c)複数の核酸タグをn個のアリコートの各々に提供するステップであって、所与のアリコートに提供される複数の核酸タグの各標識化配列は同じであり、n個のアリコートの各々には異なる標識化配列が提供されるステップ;(d)n個のアリコートの各々のcDNAの少なくとも1つを核酸タグに結合させるステップ;(e)n個のアリコートを組み合わせるステップ;ならびに(f)組み合わせたアリコートを用いて、ステップ(b)、(c)、(d)、および(e)を繰り返すステップを含んでいてもよい。種々の実施形態では、複数の細胞は、真核細胞および原核細胞から選択することができる。種々の他の実施形態では、複数の細胞は、これらに限定されないが、哺乳動物細胞、酵母細胞、および/または細菌細胞の少なくとも1つから選択することができる。
【0011】
ある特定の実施形態では、各核酸タグは、標識化配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、および標識化配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含む第1の鎖を含んでいてもよい。また、各核酸タグは、突出配列を含む第2の鎖を含んでいてもよい。突出配列は、(i)5’ハイブリダイゼーション配列および5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含んでいてもよい。一部の実施形態では、核酸タグ(例えば、最終核酸タグ)は、これに限定されないが5’ビオチンなどの捕捉剤を含んでいてもよい。5’-ビオチンを含む核酸タグで標識化されたcDNAは、cDNAに対するストレプトアビジンコーティング磁気ビーズの付着またはカップリングを可能または許容することができる。一部の他の実施形態では、複数のビーズを、バーコードの最終配列突出にハイブリダイズするように構成されている捕捉鎖(つまり、核酸配列)でコーティングしてもよい。さらなる一部の他の実施形態では、cDNAを、市販のキット(例えば、RNEASY(商標)キット)を使用することにより精製または単離してもよい
【0012】
種々の実施形態では、ステップ(f)(つまり、ステップ(b)、(c)、(d)、および(e))は、第1の細胞のcDNAに対して固有の一連の標識化配列を生成するのに十分な回数だけ繰り返すことができる。別の様式で述べると、ステップ(f)は、第1の細胞のcDNAが第1の固有の一連の標識化配列を有し、第2の細胞のcDNAが第2の固有の一連の標識化配列を有し、第3の細胞のcDNAが第3の固有の一連の標識化配列を有するなど、ある回数だけ繰り返してもよい。本開示の方法は、単一細胞に由来するcDNA配列の固有バーコードによる標識を提供し、固有バーコードは、cDNAが由来した細胞の識別または識別を支援することができる。言い換えれば、単一細胞に由来するcDNAの部分、大部分、または実質的にすべてが、同じバーコードを有していてもよく、そのバーコードは、試料中の1つまたは複数の他の細胞に由来する(例えば、第2の細胞、第3の細胞、第4の細胞などに由来する)cDNAでは繰り返されていなくともよい。
【0013】
一部の実施形態では、バーコード化cDNAを一緒に混合し、配列決定して(例えば、NGSを使用して)、RNA発現に関するデータを単一細胞レベルで収集することができる。例えば、本開示の方法のある特定の実施形態は、1つまたは複数の個々の細胞のトランスクリプトーム(所与の細胞のゲノムから転写される様々なRNA種)の評価、分析、または研究に有用であり得る。
【0014】
上記で議論されているように、細胞のアリコートまたは群を異なる反応槽または容器へと分離してもよく、第1のセットの核酸タグを複数のcDNA転写物に付加してもよい。槽または容器は、本明細書では、入れ物、試料、およびウェルとも呼ぶことができる。したがって、槽、容器、入れ物、試料、およびウェルという用語は、本明細書では同義的に使用することができる。その後、細胞のアリコートを再グループ化し、混合し、再び分離してもよく、第2のセットの核酸タグを第1のセットの核酸タグに付加してもよい。種々の実施形態では、同じ核酸タグを、単一のまたは所与のラウンドの標識化において1つよりも多くのアリコートの細胞に添加してもよい。しかしながら、分離、タグ化、および再プールのラウンドを繰り返した後、各細胞のcDNAは、バーコードを形成する核酸タグの固有の組合せまたは配列に結合することができる。一部の実施形態では、単一試料中の細胞を、ある個数の異なる反応槽へと分離してもよい。例えば、反応槽の個数としては、4つの1.5ml微量遠心チューブ、96ウェルプレートの複数のウェル、または別の好適な個数およびタイプの反応槽が挙げられる。
【0015】
ある特定の実施形態では、ステップ(f)(つまり、ステップ(b)、(c)、(d)、および(e))は、ある回数だけ繰り返してもよく、ある回数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100などから選択される。ある特定の他の実施形態では、ステップ(f)は、各細胞のcDNAが固有バーコードに結合している可能性が高くなると考えられる十分な回数だけ繰り返してもよい。この回数は、50%よりも高い可能性、90%よりも高い可能性で、95%よりも高い可能性で、99%よりも高い可能性で、または幾つかの他の確率で、各細胞のcDNAが固有バーコードに結合することを提供するように選択することができる。さらなる他の実施形態では、ステップ(f)は、幾つかの他の適切な回数だけ繰り返してもよい。
【0016】
一部の実施形態では、第1の細胞の核酸を標識化する方法は、ステップ(a)の前に複数の細胞を固定するステップを含んでいてもよい。例えば、細胞の成分を、成分が適所に固定化または保持されるように固定または架橋してもよい。複数の細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のホルムアルデヒドを使用して固定してもよい。例えば、複数の細
胞を、PBS中約1~4%ホルムアルデヒドで固定してもよい。種々の実施形態では、複数の細胞を、約-20℃または約25℃にてメタノール(例えば、100%メタノール)を使用して固定してもよい。種々の他の実施形態では、複数の細胞を、約-20℃~約25℃にてメタノール(例えば、100%メタノール)を使用して固定してもよい。さらなる種々の他の実施形態では、複数の細胞を、約-20℃または室温にてエタノール(例えば、約70~100%エタノール)を使用して固定してもよい。さらなる種々の他の実施形態では、複数の細胞を、約-20℃~室温にてエタノール(例えば、約70~100%エタノール)を使用して固定してもよい。また種々の他の実施形態では、複数の細胞を、例えば約-20℃にて酢酸を使用して固定してもよい。また種々の他の実施形態では、複数の細胞を、例えば約-20℃にてアセトンを使用して固定してもよい。複数の細胞を固定するための他の好適な方法も、本開示の範囲内にある。
【0017】
ある特定の実施形態では、第1の細胞の核酸を標識化する方法は、ステップ(a)の前に複数の細胞を透過処理するステップを含んでいてもよい。例えば、複数の細胞の外膜に穴または開口部を形成してもよい。TRITON(商標)X-100を、複数の細胞に添加し、続いて任意選択でHClを添加して、1つまたは複数の穴を形成してもよい。約0.2%のTRITON(商標)X-100を複数の細胞に添加し、例えば続いて約0.1NのHClを添加してもよい。ある特定の他の実施形態では、エタノール(例えば、約70%エタノール)、メタノール(例えば、約100%メタノール)、Tween20(例えば、約0.2%のTween20)、および/またはNP-40(例えば、約0.1%のNP-40)を使用して、複数の細胞を透過処理してもよい。種々の実施形態では、第1の細胞の核酸を標識化する方法は、ステップ(a)の前に複数の細胞を固定および透過処理するステップを含んでいてもよい。
【0018】
一部の実施形態では、細胞は、接着細胞(例えば、接着哺乳動物細胞)であってもよい。固定、透過処理、および/または逆転写は、接着細胞に対して(例えば、プレートに接着した細胞に対して)実行または実施してもよい。例えば、接着細胞を固定し、透過処理し、および/または逆転写を行い、続いてトリプシン処理して細胞を表面から剥離してもよい。あるいは、接着細胞は、分離および/またはタグ化ステップ前に剥離してもよい。一部の他の実施形態では、接着細胞は、固定および/または透過処理ステップ前にトリプシン処理してもよい。
【0019】
一部の実施形態では、第1の細胞の核酸を標識化する方法は、cDNAに結合している核酸タグの少なくとも2つをライゲーションするステップを含んでいてもよい。ライゲーションは、溶解および/またはcDNA精製ステップ前にまたは後で実施してもよい。ライゲーションは、個々のタグが、cDNA配列の3’末端に結合している連続したまたは実質的に連続したバーコード配列へと形成されるように、核酸タグの5’リン酸配列を、隣接する鎖または核酸タグの3’末端に共有結合で連結することを含んでいてもよい。種々の実施形態では、「ニック入り」二本鎖コンフォメーションにて核酸タグを隣接する核酸と共に保持するように構成されている追加のリンカー鎖と共に、二本鎖DNAまたはRNAリガーゼを使用してもよい。その後、二本鎖DNAまたはRNAリガーゼを使用して、「ニック」を埋めてもよい。種々の他の実施形態では、追加のリンカーを用いずに、一本鎖DNAまたはRNAリガーゼを使用してもよい。ある特定の実施形態では、ライゲーションは、複数の細胞内で実施してもよい。
【0020】
図1には、複数の核酸タグをライゲーションして、実質的に連続した標識またはバーコードを形成することが示されている。例えば、複数の核酸タグを添加すると、各cDNA転写物は、一連の核酸タグに結合または連結され得る。リガーゼを使用することにより、核酸タグの部分をライゲーションするかまたは共有結合で連結して、cDNA転写物に結合または付着している実質的に連続した標識またはバーコードを形成することができる。
【0021】
ある特定の他の実施形態では、本方法は、例えばステップ(f)の後で、複数の細胞を溶解(つまり、細胞構造を分解する)して、複数の細胞内からcDNAを放出させるステップを含んでいてもよい。一部の実施形態では、複数の細胞は、溶解溶液(例えば、10mM Tris-HCl(pH7.9)、50mM EDTA(pH7.9)、0.2M
NaCl、2.2% SDS、0.5mg/ml ANTI-RNase(タンパク質リボヌクレアーゼ阻害剤;AMBION(登録商標))、および1000mg/mlプロテイナーゼK(AMBION(登録商標)))中で、例えば約55℃にて約1~3時間にわたって振盪しながら(例えば激しく振盪しながら)溶解してもよい。一部の他の実施形態では、複数の細胞は、超音波処理により、および/または18~25ゲージ注射針を少なくとも1回通過させることにより溶解してもよい。さらに一部の他の実施形態では、複数の細胞は、約70~90℃に加熱することにより溶解してもよい。例えば、複数の細胞は、約1時間またはそれよりも長時間にわたって、約70~90℃に加熱することにより溶解してもよい。その後、cDNAを溶解細胞から単離してもよい。一部の実施形態では、RNase HをcDNAに添加して、RNAを除去してもよい。本方法は、放出されたcDNAに結合している核酸タグの少なくとも2つをライゲーションするステップをさらに含んでいてもよい。一部の他の実施形態では、第1の細胞の核酸を標識化する方法は、cDNAに結合している核酸タグの少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50個などをライゲーションするステップを含んでいてもよい。
【0022】
種々の実施形態では、第1の細胞の核酸を標識化する方法は、1つまたは複数の未結合核酸タグを除去するステップ(例えば、複数の細胞を洗浄するステップ)を含んでいてもよい。例えば、本方法は、未結合核酸タグの部分、大部分、または実質的にすべてを除去するステップを含んでいてもよい。未結合核酸タグは、本開示の方法のさらなるラウンドが、所与の方法の以前のラウンドに由来する1つまたは複数の未結合核酸タグで夾雑されないように除去してもよい。一部の実施形態では、未結合核酸タグは、遠心分離により除去してもよい。例えば、細胞のペレットが遠心分離チューブの底に形成されるように、複数の細胞を遠心分離することができる。遠心分離した細胞から上清(つまり、未結合核酸タグを含む液体)を除去することができる。その後、細胞を、緩衝液(例えば、未結合核酸タグを含まないかまたは実質的に含まない新たな緩衝液)に再懸濁してもよい。別の例では、複数の細胞を、細胞膜または核膜に結合するように構成されている抗体でコーティングされている磁気ビーズにカップリングまたは連結してもよい。その後、磁石を使用して複数の細胞を反応槽の1つの側面に引き付けて、複数の細胞をペレットにすることができる。一部の他の実施形態では、複数の細胞を細胞ストレーナー(例えば、PLURISTRAINER(登録商標)細胞ストレーナー)に入れ、洗浄緩衝液で洗浄してもよい。例えば、複数の細胞を細胞ストレーナーに残してもよく、洗浄緩衝液は細胞ストレーナーを通り抜ける。洗浄緩衝液は、界面活性剤、デタージェント、および/または約5~60%ホルムアミドを含んでいてもよい。
【0023】
上記で議論されているように、複数の細胞を再プールしてもよく、本方法を任意の回数だけ繰り返し、より多くのタグをcDNAに付加して、バーコードとして作用することができる1セットの核酸タグを生成することができる。さらに多くのラウンドを付加すると共に、細胞が取り得る経路の数が増加し、結果的に、生成することができる考え得るバーコードの数も増加する。十分なラウンドおよび分割を行えば、考え得るバーコードの数は、細胞の数よりはるかに多くなり、各細胞が固有バーコードを有する可能性が高くなる。例えば、96ウェルプレートで分割を行う場合、4回の分割後には、96=84,934,656個の考え得るバーコードが存在することになる。
【0024】
一部の実施形態では、逆転写プライマーは、細胞中のRNAをすべてまたは実質的にすべて逆転写するように構成されていてもよい(例えば、5’突出を有するランダム六量体)。一部の他の実施形態では、逆転写プライマーは、ポリ(A)尾部を有するRNAを逆転写するように構成されていてもよい(例えば、5’突出を有するdT(15)プライマーなどのポリ(dT)プライマー)。さらに一部の他の実施形態では、逆転写プライマーは、所定のRNAを逆転写するように構成されていてもよい(例えば、転写物特異的プライマー)。例えば、逆転写プライマーは、プロファイルすることができる1細胞当たりの転写物はより少数であり得るが、転写物の各々をより多数の細胞にわたってプロファイルすることができるように、特定の転写物をバーコード化するように構成されていてもよい。
【0025】
図2は、in situ逆転写によるcDNAの形成を示す。パネルAは、固定および透過処理されている細胞を示す。パネルBは、上記で議論されているように、ポリアデニル化転写物の逆転写を鋳型化することができるポリ(T)プライマーの付加を示す。パネルCは、上記で議論されているように、実質的にあらゆる転写物の逆転写を鋳型化することができるランダム六量体の付加を示す。パネルDは、上記で議論されているように、転写物のサブセットのみが増幅され得るように特定の転写物を標的とするように設計されているプライマーの付加を示す。パネルEは、逆転写後のパネルAの細胞を示し、cDNAがRNAにハイブリダイズされていることが表されている。
【0026】
逆転写は、複数の細胞に対して実行または実施してもよい。ある特定の実施形態では、逆転写は、固定および/または透過処理した複数の細胞に対して実行してもよい。一部の実施形態では、M-MuLV逆転写酵素の変異体を逆転写に使用してもよい。逆転写のあらゆる好適な方法が本開示の範囲内にある。例えば、逆転写ミックスは、5’突出を含む逆転写プライマーを含んでいてもよく、逆転写プライマーは、逆転写を開始するようにおよび/または核酸タグに対する結合配列として作用するように構成されていてもよい。一部の他の実施形態では、RNAに結合するようにおよび/または逆転写を開始するように構成されている逆転写プライマーの部分は、以下のもの:ヌクレオチドのランダム六量体、七量体(septamer)、八量体(octomer)、九量体、十量体、ポリ(T)伸張、および
/または1つもしくは複数の遺伝子特異的プライマーの1つまたは複数を含んでいてもよい。
【0027】
本開示の別の態様は、細胞内または複数の細胞内の分子を固有に標識化する方法に関する。一部の実施形態では、本方法は、(a)アダプター配列またはユニバーサルアダプターを、複数の細胞内の分子に結合させるステップ;(b)複数の細胞を少なくとも2つの一次アリコートに分割するステップであって、少なくとも2つの一次アリコートは、少なくとも第1の一次アリコートおよび第2の一次アリコートを含むステップ;(c)一次核酸タグを少なくとも2つの一次アリコートに提供するステップであって、第1の一次アリコートに提供された一次核酸タグは、第2の一次アリコートに提供された一次核酸タグとは異なるステップ;(d)少なくとも2つの一次アリコートの各々の内のアダプター配列を、提供された一次核酸タグに結合させるステップ;(e)少なくとも2つの一次アリコートを組み合わせるステップ;(f)組み合わせた一次アリコートを少なくとも2つの二次アリコートに分割するステップであって、少なくとも2つの二次アリコートは、少なくとも第1の二次アリコートおよび第2の二次アリコートを含むステップ;(g)二次核酸タグを少なくとも2つの二次アリコートに提供するステップであって、第1の二次アリコートに提供された二次核酸タグは、第2の二次アリコートに提供された二次核酸タグとは異なるステップ;ならびに(h)少なくとも2つの二次アリコートの各々の内の分子を、提供された二次核酸タグに結合させるステップを含んでいてもよい。
【0028】
ある特定の実施形態では、本方法は、ステップ(i)、つまりその後のアリコートを用
いてステップ(e)、(f)、(g)、および(h)を繰り返すステップをさらに含んでいてもよい。ステップ(i)は、単一細胞の分子に対して固有の一連の核酸タグを生成するのに十分な回数だけ繰り返すことができる。種々の実施形態では、回数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100などから選択することができる。ある特定の他の実施形態では、ステップ(i)は、別の好適な回数だけ繰り返すことができる。
【0029】
一部の実施形態では、分子は、細胞内または複数の細胞内に配置されていてもよい。一部の他の実施形態では、分子は、細胞または複数の細胞にカップリングされていてもよい。例えば、分子は細胞表面分子であってもよい。さらに一部の他の実施形態では、分子は、細胞内または複数の細胞内に配置されていてもよくおよび/または細胞または複数の細胞にカップリングされていてもよい。
【0030】
上記で議論されているように、本方法は、ステップ(a)の前に、複数の細胞を固定および/または透過処理するステップを含んでいてもよい。種々の実施形態では、核酸タグの各々は、第1の鎖を含んでいてもよい。第1の鎖は、3’末端および5’末端を含むバーコード配列を含んでいてもよい。第1の鎖は、バーコード配列の3’末端および5’末端にそれぞれ隣接する3’ハイブリダイゼーション配列および5’ハイブリダイゼーション配列をさらに含んでいてもよい。一部の実施形態では、核酸タグの各々は、第2の鎖を含んでいてもよい。第2の鎖は、5’ハイブリダイゼーション配列およびアダプター配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含んでいてもよい。
【0031】
ある特定の実施形態では、分子は巨大分子である。種々の実施形態では、分子は、RNA、cDNA、DNA、タンパク質、ペプチド、および/または抗原の少なくとも1つから選択される。
【0032】
一部の実施形態では、分子はRNAであり、アダプター配列は一本鎖であってもよい。さらに、ステップ(a)は、一本鎖アダプター配列の5’末端をRNAの3’末端にライゲーションすることおよび/または一本鎖アダプター配列の3’末端をRNAの5’末端にライゲーションすることの1つを含んでいてもよい。一部の他の実施形態では、分子はRNAであり、ステップ(a)は、アダプター配列をRNAにハイブリダイズさせるステップを含んでいてもよい。
【0033】
アダプター配列をRNAに結合またはカップリングすることに関する方法は、例えば、RNAトランスクリプトーム配列決定、リボソームプロファイリング、小分子RNA配列決定、非コードRNA配列決定、および/またはRNA構造プロファイリングに使用することができる。一部の実施形態では、複数の細胞を、固定および/または透過処理してもよい。一本鎖アダプター配列の5’末端を、RNAの3’末端にライゲーションさせてもよい(図3Aおよび3Bを参照)。ある特定の実施形態では、ライゲーションは、T4 RNAリガーゼ1により実行または実施してもよい。ある特定の他の実施形態では、ライゲーションは、5’リン酸を含む一本鎖アダプター配列を用いてT4 RNAリガーゼ1により実行してもよい。種々の実施形態では、ライゲーションは、THERMOSTABLE 5’APPDNA/RNA LIGASE(商標)(NEW ENGLAND BIOLABS(登録商標))により実行してもよい。種々の他の実施形態では、ライゲーションは、5’プレアデニル化一本鎖アダプター配列を用いて、THERMOSTABLE 5’APPDNA/RNA LIGASE(商標)により実行してもよい。他の好適なリガーゼおよびアダプター配列も本開示の範囲内である。
【0034】
一部の実施形態では、例えばワトソン-クリック型塩基対合によるハイブリダイゼーションを使用して、RNAをアダプター配列で標識化することができる(図4を参照)。アダプター配列は、上記で議論されているように、標識化ステップおよび/または細胞溶解の後に、逆転写を開始してcDNAを形成または生成するように構成されていてもよい(図5を参照)。
【0035】
一本鎖アダプター配列の3’末端を、RNAの5’末端にライゲーションしてもよい。ある特定の実施形態では、ライゲーションは、T4 RNAリガーゼ1により実行または実施してもよい。ある特定の他の実施形態では、ライゲーションは、5’リン酸を含むRNAを用いてT4 RNAリガーゼ1により実行してもよい。種々の実施形態では、ライゲーションは、THERMOSTABLE 5’APPDNA/RNA LIGASE(商標)(NEW ENGLAND BIOLABS(登録商標))により実行してもよい。種々の他の実施形態では、ライゲーションは、5’プレアデニル化RNAを用いて、THERMOSTABLE 5’APPDNA/RNA LIGASE(商標)により実行してもよい。上記で述べられているように、他の好適なリガーゼおよびアダプター配列も本開示の範囲内である。
【0036】
一部の実施形態では、分子はcDNAであってもよい。アダプター配列をcDNAに結合またはカップリングすることに関する方法は、例えばRNAトランスクリプトーム配列決定に使用することができる。ある特定の実施形態では、複数の細胞を、固定および/または透過処理してもよい。逆転写は、5’末端にアダプター配列を含むプライマーを用いて、複数の固定および/または透過処理細胞に対して実施してもよい。上記で議論されているように、プライマーの3’末端は、遺伝子特異的なランダム六量体であってもよく、またはポリ(T)配列であってもよい。得られたcDNAは、その5’末端にアダプター配列を含んでいてもよい(図5を参照)。
【0037】
一部の実施形態では、分子がDNA(例えば、ゲノムDNA)である場合、本方法は、ステップ(a)の前に、制限酵素でDNAを消化するステップをさらに含んでいてもよい。さらに、ステップ(a)は、消化したDNAにアダプター配列をライゲーションするステップを含んでいてもよい。
【0038】
アダプター配列をDNAに結合またはカップリングすることに関する方法は、例えば、全ゲノム配列決定、標的ゲノム配列決定、DNase-Seq、ChIP配列決定、および/またはATAC-seqに使用することができる。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の制限酵素を使用してDNAを消化し、平滑末端断片および/または突出配列を有する断片の少なくとも1つにしてもよい。一方の末端が突き出ている、一本鎖ユニバーサルアダプターまたはアダプター配列との部分的二本鎖配列を、消化したゲノムDNAにライゲーションしてもよい。例えば、突出を有する、一本鎖アダプター配列との部分的二本鎖配列であって、突出は1つまたは複数の制限酵素により生成される突出と適合性である部分的二本鎖配列を、消化したゲノムDNAにライゲーションしてもよい。
【0039】
種々の実施形態では、Tn5トランスポサーゼを使用してアダプター配列をゲノムDNAに組み込む(例えば、直接的に組み込む)ことができ、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加することによりトランスポサーゼを放出させて、アダプター配列を露出させることができる。アダプター配列をゲノムDNAに組み込むための他のトランスポサーゼおよび方法も本開示の範囲内にある。
【0040】
ある特定の実施形態では、分子は、タンパク質、ペプチド、および/または抗原であり、アダプター配列は、抗体にカップリングされている固有識別子配列(例えば、核酸を含
む)に結合することができる。固有識別子配列は、固有識別子配列が結合している抗体を固有に識別するように構成されていてもよい。さらに、ステップ(a)は、アダプター配列および固有識別子配列の各々を含む抗体を、タンパク質、ペプチド、および/または抗原に結合させるステップを含んでいてもよい。ある特定の他の実施形態では、分子は、タンパク質、ペプチド、および/または抗原であり、アダプター配列は、アプタマーに組み込まれていてもよい。さらに、ステップ(a)は、アプタマーを、タンパク質、ペプチド、および/または抗原に結合させるステップを含んでいてもよい。
【0041】
アダプター配列をタンパク質、ペプチド、および/または抗原に結合またはカップリングすることに関する方法は、例えば、タンパク質定量化、ペプチド定量化、および/または抗原定量化に使用することができる。種々の実施形態では、アダプター配列を抗体に付着させる(例えば、化学的に付着させる)ことができる。例えば、アダプター配列は、DNA-タンパク質結合を媒介するための当業者に公知の化学を使用して抗体に付着させることができる。異なるタンパク質に対する抗体を、アダプター配列に加えて固有識別子配列を含む核酸配列または核酸鎖で標識化することができる。その後、抗体または1セットの抗体を、固定および/または透過処理細胞または組織のタンパク質または1セットのタンパク質を標識化する免疫染色実験に使用してもよい(図6を参照)。続いて、細胞を、本明細書で開示された標識化またはバーコード化手順にかけてもよい。
【0042】
一部の実施形態では、抗体に付着または結合している核酸配列(例えば、DNA分子)を、抗体および/またはアダプター配列から放出させることができる。配列決定反応により、所与のタンパク質に関連付けられる固有識別子配列ならびに1つまたは複数の固有細胞に関連付けられる標識またはバーコードを明らかにすることができる。ある特定の実施形態では、そのような方法は、1つまたは複数の細胞に存在するタンパク質の数および/またはタイプを明らかにするかまたは識別することができる。
【0043】
種々の実施形態では、上記に記載のような核酸修飾(またはDNA修飾)抗体の代わりにまたは加えて、DNAアプタマーおよび/またはRNAアプタマーを使用することができる(図7を参照)。アダプター配列(および標的タンパク質特異的抗体)を、所与のアプタマーの配列に組み込む(例えば、直接的に組み込む)ことができる。
【0044】
本開示の別の態様は、細胞内の核酸をバーコード化する方法に関する。一部の実施形態では、本方法は、細胞内の核酸をバーコード化する方法であって、(a)5’突出配列を含む逆転写プライマーを使用してRNAを逆転写することにより、複数の細胞内でcDNAを生成するステップ;(b)複数の細胞を少なくとも2つのアリコートに分割するステップ;(c)複数の核酸タグを少なくとも2つのアリコートの各々に提供するステップであって、所与のアリコートに導入された複数の核酸タグの各バーコード配列は同じであり、各アリコートには異なるバーコード配列が導入されるステップ;(d)少なくとも2つのアリコートの各々のcDNAの少なくとも1つを核酸タグに結合させるステップ;(e)少なくとも2つのアリコートを組み合わせるステップ;ならびに(f)組み合わせたアリコートを用いて、ステップ(b)、(c)、(d)、および(e)を少なくとも1回繰り返すステップを含んでいてもよい。
【0045】
ある特定の実施形態では、各核酸タグは、バーコード配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、およびバーコード配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含む第1の鎖を含んでいてもよい。また、各核酸タグは、突出配列を含む第2の鎖を含んでいてもよく、突出配列は、(i)5’ハイブリダイゼーション配列および5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含む。
【0046】
図8は、本開示の実施形態による、細胞の分割、タグ化、およびプール化を示す。逆転写した細胞を、反応槽またはウェルに分割してもよい。図8には、4つのウェルが示されている。しかしながら、上記で議論されているように、任意の好適な数の反応槽またはウェルを使用することができる。このプロセスを通るその経路を示すために1つの細胞が強調されている。図示されているように、強調されている細胞は、まずウェル「a」に入り、そこにはすべてのcDNA転写物の突出にハイブリダイズする第1のタグが付加される(四角枠内に示されている)。このタグは、細胞が入っていたウェルを識別する固有バーコード領域「a」を保持する。ハイブリダイゼーション後、細胞をすべて洗浄して過剰なタグを除去し、再グループ化し、その後同数のウェルに再分配する。その後、強調されている細胞は、ウェル「c」に入り、細胞が入っていたウェルを識別するための第2のタグが付加される。第2ラウンドの後、細胞は、4=16通りの考え得る経路のチューブを経ることが考えられる。このプロセスを繰り返して、より多くのタグをcDNA転写物に付加し、細胞が経ることができる考え得る経路の数を増加させることができる。図9Aおよび9Bは、本開示の実施形態による2つの例示的なワークフローを示す。
【0047】
本開示の別の態様は、少なくとも第1の細胞内の核酸を標識化するためのキットに関する。一部の実施形態では、キットは、5’突出配列を含む少なくとも1つの逆転写プライマーを含んでいてもよい。また、キットは、複数の第1の核酸タグを含んでいてもよい。各第1の核酸タグは、第1の鎖を含んでいてもよい。第1の鎖は、第1の標識化配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、および第1の標識化配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含んでいてもよい。各第1の核酸タグは、第2の鎖をさらに含んでいてもよい。第2の鎖は、突出配列を含んでいてもよく、突出配列は、(i)逆転写プライマーの5’ハイブリダイゼーション配列および5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含んでいてもよい。
【0048】
キットは、複数の第2の核酸タグをさらに含んでいてもよい。各第2の核酸タグは、第1の鎖を含んでいてもよい。第1の鎖は、第2の標識化配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、および第2の標識化配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含んでいてもよい。各第2の核酸タグは、第2の鎖をさらに含んでいてもよい。第2の鎖は、突出配列を含んでいてもよく、突出配列は、(i)逆転写プライマーの5’ハイブリダイゼーション配列および5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含んでいてもよい。一部の実施形態では、第1の標識化配列は、第2の標識化配列と異なっていてもよい。
【0049】
また、一部の実施形態では、キットは、1つまたは複数の追加の複数の核酸タグを含んでいてもよい。1つまたは複数の追加の複数の核酸タグの各核酸タグは、第1の鎖を含んでいてもよい。第1の鎖は、標識化配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、および標識化配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含んでいてもよい。また、1つまたは複数の追加の複数の核酸タグの各核酸タグは、第2の鎖を含んでいてもよい。第2の鎖は、突出配列を含んでいてもよく、突出配列は、(i)逆転写プライマーの5’ハイブリダイゼーション配列および5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含む。一部の実施形態では、標識化配列は、各所与の追加の複数の核酸タグが異なっていてもよい。
【0050】
種々の実施形態では、キットは、逆転写酵素、固定剤、透過処理剤、ライゲーション剤、および/または溶解剤の少なくとも1つをさらに含んでいてよい。
【0051】
本開示の別の態様は、少なくとも第1の細胞内の分子を標識化するためのキットに関する。例えば、上記で開示されたキットは、少なくとも第1の細胞内のRNA、cDNA、DNA、タンパク質、ペプチド、または抗原の1つまたは複数を標識化するように適合されていてもよい。
【0052】
本開示の別の態様は、複数の細胞内のRNA分子を固有に標識化する方法に関する。本方法は、(a)ステップ(b)の前に第1の複数の細胞を固定および透過処理するステップであって、第1の複数の細胞は、約8℃未満で固定および透過処理されるステップ;(b)第1の複数の細胞内でRNA分子を逆転写して、第1の複数の細胞内で相補的DNA(cDNA)分子を形成するステップであって、RNA分子を逆転写するステップは、プライマーをRNA分子にカップリングするステップを含み、プライマーは、ポリ(T)配列またはランダム配列の少なくとも1つを含むステップ;(c)cDNA分子を含む第1の複数の細胞を少なくとも2つの一次アリコートに分割するステップであって、少なくとも2つの一次アリコートは、第1の一次アリコートおよび第2の一次アリコートを含むステップ;(d)一次核酸タグを少なくとも2つの一次アリコートに提供するステップであって、第1の一次アリコートに提供された一次核酸タグは、第2の一次アリコートに提供された一次核酸タグとは異なるステップ;(e)少なくとも2つの一次アリコートの各々の内のcDNA分子を、提供された一次核酸タグとカップリングするステップ;(f)少なくとも2つの一次アリコートを組み合わせるステップ;(g)組み合わせた一次アリコートを少なくとも2つの二次アリコートに分割するステップであって、少なくとも2つの二次アリコートは、第1の二次アリコートおよび第2の二次アリコートを含むステップ;(h)二次核酸タグを少なくとも2つの二次アリコートに提供するステップであって、第1の二次アリコートに提供された二次核酸タグは、第2の二次アリコートに提供された二次核酸タグとは異なるステップ;(i)少なくとも2つの二次アリコートの各々の内のcDNA分子を、提供された二次核酸タグとカップリングするステップ;(j)その後のアリコートを用いて、ステップ(f)、(g)、(h)、および(i)を繰り返すステップであって、最終核酸タグは捕捉剤を含むステップ;(k)最終アリコートを組み合わせるステップ;(l)第1の複数の細胞を溶解して、第1の複数の細胞内からcDNA分子を放出させて、ライセートを形成するステップ;ならびに/または(m)プロテアーゼ阻害剤および/または結合剤をライセートに添加し、cDNA分子が結合剤に結合するようにするステップを含んでいてもよい。
【0053】
本方法は、組み合わせた最終アリコートを少なくとも2つの最終アリコートにさらに分割するステップを含み、少なくとも2つの最終アリコートは、第1の最終アリコートおよび第2の最終アリコートを含む。一部の実施形態では、第1の複数の細胞は、約8℃未満で、約7℃未満で、約6℃未満で、約5℃未満で、約4℃で、約4℃未満で、約3℃未満で、約2℃未満で、約1℃未満で、または別の好適な温度で、固定および透過処理してもよい。ある特定の実施形態では、本方法は、細胞を分配するステップを含んでいてもよい。例えば、最後のまたは最終ラウンドのバーコード化(ライゲーションによる)後、細胞をプールしてから溶解してもよく、その後細胞を異なるライセートアリコートに分配してもよい。各ライセートアリコートは、所定数の細胞を含んでいてもよい。
【0054】
例えば、ステップ(m)を参照すると、プロテアーゼ阻害剤は、フッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)、それらの組合せ、および/または別の好適なプロテアーゼ阻害剤を含んでいてもよい。例えば、ステップ(j)、(k)、(l)、および/または(m)を参照すると、捕捉剤は、ビオチンまたは別の好適な捕捉剤を含んでいてもよい。さらに、結合剤は、アビジン(例えば、ストレプトアビジン)または別の好適な結合剤を含んでいてもよい。
【0055】
ある特定の実施形態では、複数の細胞内のRNA分子を固有に標識化する方法は(例えば、ステップ(m)の後に)、(n)テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドを使用して、結合剤に結合しているcDNA分子のテンプレートスイッチを実行するステップ;(o)cDNA分子を増幅して、増幅cDNA分子溶液を形成するステップ;および/または(p)固相可逆的固定化(SPRI)ビーズ溶液を、増幅cDNA分子溶液に導入して、約200塩基対未満の、約175塩基対未満の、または約150塩基対未満のポリヌクレオチドを除去するステップ(DeAngelis,MMら、Nucleic Acids Research(1995年)23巻(22号):4742頁を参照)をさらに含んでいてもよい。言い換えれば、cDNA分子を、ライセート内でストレプトアビジンビーズに結合させてもよい。ビーズに付着したcDNA分子のテンプレートスイッチングを実施してもよい(例えば、cDNA分子の3’末端にアダプターを付加するために)。その後、cDNA分子のPCR増幅を実施し、続いてSPRIビーズを添加して、約200塩基対未満のポリヌクレオチドを除去することができる。SPRIビーズ溶液対増幅cDNA分子溶液の比は、約0.9:1~約0.7:1、約0.875:1~約0.775:1、約0.85:1~約0.75:1、約0.825:1~約0.725:1、約0.8:1、または別の好適な比であってもよい。さらに、SPRIビーズ溶液は、約1M~4MのNaCl、約2M~3MのNaCl、約2.25M~2.75MのNaCl、約2.5MのNaCl、または別の好適な量のNaClを含んでいてもよい。また、SPRIビーズ溶液は、約15w/v%~25w/v%のポリエチレングリコール(PEG)を含んでいてもよく、PEGの分子量は、約7,000g/mol~9,000g/mol(PEG8000)である。種々の実施形態では、SPRIビーズ溶液は、約17w/v%~23w/v%のPEG8000、約18w/v%~22w/v%のPEG8000、約19w/v%~21w/v%のPEG8000、約20w/v%のPEG8000、または別の好適なw/v%のPEG8000を含んでいてもよい。
【0056】
複数の細胞内のRNA分子を固有に標識化する方法は、放出されたcDNA分子の3’末端に共通アダプター配列を付加するステップをさらに含んでいてもよい。共通アダプター配列は、cDNA分子の各々について(つまり、所与の実験内で)同じであるかまたは実質的に同じであるアダプター配列であってもよい。共通アダプターの付加は、約10w/v%までのPEGを含む溶液中で実行または実施してもよく、PEGの分子量は、約7,000g/mol~9,000g/molである。ある特定の実施形態では、共通アダプター配列は、テンプレートスイッチングを行うことにより、放出されたcDNA分子の3’末端に付加することができる(Picelli,Sら、Nature Methods 10巻、1096~1098頁(2013年)を参照)。
【0057】
ステップ(j)は、単一細胞の核酸に対して固有の一連の核酸タグを生成するのに十分な回数だけ繰り返すことができる。例えば、回数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、および100から選択することができる。
【0058】
種々の実施形態では、ステップ(b)のプライマーは、第1の特異的バーコードをさらに含んでいてもよい。別様に述べると、特定の容器、混合物、反応、入れ物、試料、ウェル、または槽中のcDNA分子に添加される第1のバーコードは、事前に決められていてもよい(例えば、所与の容器、混合物、反応、入れ物、試料、ウェル、または槽に特異的であってもよい)。例えば、48セットの異なるウェル特異的RTプライマーを使用してもよい(例えば、48ウェルプレートで)。したがって、48個の試料(例えば、細胞、組織など)が存在する場合、各試料は、固有のウェル特異的バーコードを得ることができる。しかしながら、試料が4つしかない場合、各試料は、12個の異なるセットのウェル特異的RTプライマーを有していてもよい。ユーザは、どの12個が各試料に対応するか
を知ることができ、したがってユーザは、試料同一性を取り戻すことができる。他の数の第1の特異的バーコード(またはウェル特異的RTプライマー)も、本開示の範囲内にある。そのような構成は、実施例16でさらに説明されるような本方法の多重化を可能にするかまたは提供することができる。
【0059】
本方法は、(q)第2の複数の細胞内でRNA分子を逆転写して、第2の複数の細胞内でcDNA分子を形成するステップであって、RNA分子を逆転写するステップは、特異的プライマーをRNA分子にカップリングするステップを含み、プライマーは、第2の特異的バーコードと、ポリ(T)配列またはランダム配列の少なくとも1つとを含み、第1の特異的バーコードは、第1の複数の細胞に由来するcDNA分子を、第2の複数の細胞に由来するcDNA分子と比較して識別することができるように、第2の特異的バーコードとは異なるステップ;(r)cDNA分子を含む第2の複数の細胞を少なくとも2つの一次アリコートに分割するステップであって、少なくとも2つの一次アリコートは、第1の一次アリコートおよび第2の一次アリコートを含むステップ;(s)一次核酸タグを少なくとも2つの一次アリコートに提供するステップであって、第1の一次アリコートに提供された一次核酸タグは、第2の一次アリコートに提供された一次核酸タグとは異なるステップ;(t)少なくとも2つの一次アリコートの各々の内のcDNA分子を、提供された一次核酸タグとカップリングするステップ;(u)少なくとも2つの一次アリコートを組み合わせるステップ;(v)組み合わせた一次アリコートを少なくとも2つの二次アリコートに分割するステップであって、少なくとも2つの二次アリコートは、第1の二次アリコートおよび第2の二次アリコートを含むステップ;(w)二次核酸タグを少なくとも2つの二次アリコートに提供するステップであって、第1の二次アリコートに提供された二次核酸タグは、第2の二次アリコートに提供された二次核酸タグとは異なるステップ;(x)少なくとも2つの二次アリコートの各々の内のcDNA分子を、提供された二次核酸タグとカップリングするステップ;ならびに/または(y)その後のアリコートを用いて、ステップ(u)、(v)、(w)、および(x)を繰り返すステップであって、最終核酸タグは捕捉剤を含むステップをさらに含んでいてもよい。第1の複数の細胞で使用される上記のステップ(例えば、ステップ(k)、(l)、および(m))は、第2の複数の細胞でも使用されるように適合されていてもよい。
【0060】
種々の実施形態では、核酸タグの各々は、第1の鎖を含んでいてもよく、第1の鎖は、(i)3’末端および5’末端を含むバーコード配列、ならびに(ii)バーコード配列の5’末端および3’末端にそれぞれ隣接する3’ハイブリダイゼーション配列および5’ハイブリダイゼーション配列を含む。また、核酸タグの各々は、第2の鎖を含んでいてもよく、第2の鎖は、(i)5’ハイブリダイゼーション配列およびアダプター配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含む。
【0061】
複数の細胞内のRNA分子を固有に標識化する方法は、cDNA分子に結合している核酸タグの少なくとも2つ(またはそれよりの多く)をライゲーションするステップをさらに含んでいてもよい。ライゲーションは、第1の複数の細胞内で実施してもよい。
【0062】
本方法は、未結合核酸タグを除去するステップをさらに含んでいてもよい。一部の実施形態では、本方法は、放出されたcDNA分子に結合している核酸タグの少なくとも2つをライゲーションするステップを含んでいてもよい。単一細胞に由来する、核酸タグに結合したcDNA分子の大部分は、同じ一連の結合した核酸タグを含んでいてもよい。種々の実施形態では、複数の細胞(例えば、第1および第2の複数の細胞)は、哺乳動物細胞、酵母細胞、および細菌細胞の少なくとも1つから選択してもよい。
【0063】
本開示の別の態様は、第1の細胞内の核酸を標識化する方法を対象とする。ある特定の
実施形態では、本方法は、(a)(i)5’突出配列を含む第1の逆転写プライマーであって、第1の逆転写プライマーがポリ(A)尾部を有するRNAを逆転写するように構成されている第1の逆転写プライマー、および/または、(ii)5’突出配列と、ランダム六量体、ランダム七量体、ランダム八量体、ランダム九量体、およびランダム十量体の少なくとも1つとを含む第2の逆転写プライマーの少なくとも1つを使用してRNAを逆転写することにより、第1の細胞を含む複数の細胞内でcDNA分子を生成するステップ;(b)複数の細胞を(n)個のアリコートに分割するステップ;(c)複数の核酸タグをn個のアリコートの各々に提供するステップ;(d)n個のアリコートの各々のcDNA分子の少なくとも1つを核酸タグに結合させるステップ;(e)n個のアリコートを組み合わせるステップ;(f)組み合わせたアリコートを用いて、ステップ(b)、(c)、(d)、および(e)を繰り返すステップ;(g)最終アリコートを組み合わせるステップ;(h)第1の細胞を含む複数の細胞を溶解して、第1の細胞を含む複数の細胞内からcDNA分子を放出させて、ライセートを形成するステップ;および/または、(i)プロテアーゼ阻害剤および/または結合剤をライセートに添加し、cDNA分子は結合剤に結合するようにするステップを含んでいてもよい。
【0064】
例えば、ステップ(c)を参照すると、各核酸タグは、(i)標識化配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、および(ii)標識化配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含む第1の鎖を含んでいてもよい。また、各核酸タグは、突出配列を含む第2の鎖を含んでいてもよく、突出配列は、(i)5’ハイブリダイゼーション配列および5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含む。一部の実施形態では、所与のアリコートに提供される複数の核酸タグの標識化配列は同じであってもよく、n個のアリコートの各々には異なる標識化配列が提供されてもよい。
【0065】
ある特定の実施形態では、ステップ(f)は、第1の細胞のcDNA分子に対して固有の一連の標識化配列を生成するのに十分な回数だけ繰り返すことができる。例えば、回数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、および100から選択することができる。
【0066】
cDNA分子は、アリコート(例えば、反応混合物)中で形成または生成してもよい。アリコート中の第1の逆転写プライマーの濃度は、約0.5μM~約10μM、約1μM~約7μM、約1.5μM~約4μM、約2μM~約3μM、約2.5μM、または別の好適な濃度であってもよい。アリコート中の第2の逆転写プライマーの濃度は、約0.5μM~約10μM、約1μM~約7μM、約1.5μM~約4μM、約2μM~約3μM、約2.5μM、または別の好適な濃度であってもよい。
【0067】
一部の実施形態では、本方法は、ステップ(a)の前に複数の細胞を固定するステップを含んでいてもよい。複数の細胞は、約8℃未満で、約7℃未満で、約6℃未満で、約5℃未満で、約4℃で、約4℃未満で、約3℃未満で、約2℃未満で、約1℃未満で、または別の好適な温度で固定してもよい。ある特定の実施形態では、本方法は、ステップ(a)の前に複数の細胞を透過処理するステップを含んでいてもよい。複数の細胞は、約8℃未満で、約7℃未満で、約6℃未満で、約5℃未満で、約4℃で、約4℃未満で、約3℃未満で、約2℃未満で、約1℃未満で、または別の好適な温度で透過処理してもよい。
【0068】
また、第1の細胞内の核酸を標識化する方法は、cDNA分子に結合している核酸タグの少なくとも2つをライゲーションするステップを含んでいてもよい。種々の実施形態では、ライゲーションは、複数の細胞内で実施してもよい。本方法は、未結合核酸タグを除
去するステップを含んでいてもよい。さらに、第1および第2の逆転写プライマーの少なくとも1つは、所定のRNAを逆転写してもよく、または所定のRNAを逆転写するように構成されていてもよい。
【0069】
種々の実施形態では、最終核酸タグは、捕捉剤を含んでいてもよい。さらに、本方法は、ステップ(f)後に、複数の細胞を溶解して、複数の細胞内からcDNA分子を放出させて、ライセートを形成するステップを含んでいてもよい。また、本方法は、プロテアーゼ阻害剤および/または結合剤をライセートに添加して、cDNA分子を単離するステップを含んでいてもよい。上記で議論されているように、プロテアーゼ阻害剤は、PMSF、AEBSF、それらの組合せ、および/または別の好適なプロテアーゼ阻害剤を含んでいてもよい。捕捉剤は、ビオチンまたは別の好適な捕捉剤を含んでいてもよく、結合剤は、アビジン(例えば、ストレプトアビジン)または別の好適な結合剤を含んでいてもよい。
【0070】
また、第1の細胞内の核酸を標識化する方法は、(j)結合剤に結合したcDNA分子のテンプレートスイッチを実行するステップ;(k)cDNA分子を増幅して、増幅cDNA分子溶液を形成するステップ;および(l)SPRIビーズ溶液を、増幅cDNA分子溶液に導入して、約200塩基対未満の、約175塩基対未満の、または約150塩基対未満のポリヌクレオチドを除去するステップを含んでいてもよい。SPRIビーズ溶液対増幅cDNA分子溶液の比は、約0.9:1~約0.7:1、約0.875:1~約0.775:1、約0.85:1~約0.75:1、約0.825:1~約0.725:1、約0.8:1、または別の好適な比であってもよい。
【0071】
さらに、SPRIビーズ溶液は、約1M~4MのNaCl、約2M~3MのNaCl、約2.25M~2.75MのNaCl、約2.5MのNaCl、または別の好適な量のNaClを含んでいてもよい。また、SPRIビーズ溶液は、約15w/v%~25w/v%のPEGを含んでいてもよく、PEGの分子量は、約7,000g/mol~9,000g/molである。種々の実施形態では、SPRIビーズ溶液は、約17w/v%~23w/v%のPEG8000、約18w/v%~22w/v%のPEG8000、約19w/v%~21w/v%のPEG8000、約20w/v%のPEG8000、または別の好適なw/v%のPEG8000を含んでいてもよい。
【0072】
複数の細胞内のRNA分子を固有に標識化する方法は、共通アダプター配列を、放出されたcDNA分子の3’末端に付加するステップをさらに含んでいてもよい。上記で議論されているように、共通アダプターの付加は、約10w/v%までのPEGを含む溶液中で実行または実施してもよく、PEGの分子量は、約7,000g/mol~9,000g/molである。ある特定の実施形態では、共通アダプター配列は、テンプレートスイッチングを行うことにより、放出されたcDNA分子の3’末端に付加することができる。
【0073】
ある特定の実施形態では、上記に記載されている方法はいずれも、核または複数の核内の核酸分子を標識化するように適合されていてもよい。例えば、本方法は、複数の核内のRNA分子を固有に標識化するステップ、または第1の核内の核酸を標識化するステップを含んでいてもよい。
【0074】
本開示の別の態様は、第1の細胞内の核酸を標識化するためのキットを対象とする。キットは、5’突出配列を含む第1の逆転写プライマーを含んでいてもよく、ポリ(A)尾部を有するRNAを逆転写するように構成されていてもよい。また、キットは、5’突出配列と、ランダム六量体、ランダム七量体、ランダム八量体、ランダム九量体、および/またはランダム十量体の少なくとも1つとを含む第2の逆転写プライマーを含んでいても
よい。
【0075】
一部の実施形態では、キットは、複数の第1の核酸タグを含んでいてもよい。上記で議論されているように、各第1の核酸タグは、(i)第1の標識化配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、および(ii)第1の標識化配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含む第1の鎖を含んでいてもよい。また、各第1の核酸タグは、突出配列を含む第2の鎖を含んでいてもよい。突出配列は、(i)第1および第2の逆転写プライマーの5’ハイブリダイゼーション配列および5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含んでいてもよい。
【0076】
また、ある特定の実施形態では、キットは、複数の第2の核酸タグを含んでいてもよい。各第2の核酸タグは、(i)第2の標識化配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、および(ii)第2の標識化配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含む第1の鎖を含んでいてもよい。また、各第2の核酸タグは、突出配列を含む第2の鎖を含んでいてもよい。突出配列は、(i)第1および第2の逆転写プライマーの5’ハイブリダイゼーション配列および5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含んでいてもよい。さらに、第1の標識化配列は、第2の標識化配列と異なっていてもよい。
【0077】
また、種々の実施形態では、キットは、複数の最終核酸タグを含んでいてもよい。各最終核酸タグは、(i)最終標識化配列の3’末端から伸長する3’ハイブリダイゼーション配列、および(ii)最終標識化配列の5’末端から伸長する5’ハイブリダイゼーション配列を含む第1の鎖を含んでいてもよい。また、各最終核酸タグは、突出配列を含む第2の鎖を含んでいてもよい。突出配列は、(i)第1および第2の逆転写プライマーの5’ハイブリダイゼーション配列および5’突出配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに(ii)3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分を含んでいてもよい。また、各最終核酸タグは、捕捉剤を含んでいてもよい。さらに、最終標識化配列は、第1および第2の標識化配列(および/または、任意の他の標識化配列)と異なっていてもよい。また、一部の実施形態では、キットは、逆転写酵素、固定剤、透過処理剤、ライゲーション剤、溶解剤、プロテアーゼ阻害剤、および/または、他の好適な成分の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0078】
当業者であれば理解することになるが、本明細書で開示された各実施形態は、その具体的に記されている要素、ステップ、成分、または構成要素を含んでいてもよく、から本質的になっていてもよく、またはからなっていてもよい。本明細書で使用される場合、移行部の用語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」は、これらに限定されないが、明記されていない要素、ステップ、成分、または構成要素を、たとえ大量であっても含むこと、および介在を可能にすること意味する。移行部の語句「からなる」は、指定されていない任意の要素、ステップ、成分、または構成要素を除外する。移行部の語句「から本質的になる」は、実施形態の範囲を、指定されている要素、ステップ、成分、または構成要素、および実施形態に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。
【0079】
別様の指定がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される、成分の量、分子量などの特性、および反応条件などを表す数値はすべて、あらゆる場合において用語「約」により修飾されていると理解されるべきである。したがって、そうではないと示されていない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に示されている数値パラメータは、本開示により得ようと試みる所望の特性に応じて様々であってもよい近似である。少なくと
も、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてでなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告されている有効数字の数に照らして、および通常の端数丸め技法を適用することにより解釈されるべきである。さらなる明瞭性が求められる場合、用語「約」は、記載の数値または範囲と共に使用される場合、当業者により合理的に認められる意味を有し、つまり記載の値または範囲よりも若干多いまたは若干少ないことを指し、記載値の±20%の、記載値の±19%の、記載値の±18%の、記載値の±17%の、記載値の±16%の、記載値の±15%の、記載値の±14%の、記載値の±13%の、記載値の±12%の、記載値の±11%の、記載値の±10%の、記載値の±9%の、記載値の±8%の、記載値の±7%の、記載値の±6%の、記載値の±5%の、記載値の±4%の、記載値の±3%の、記載値の±2%の、または記載値の±1%の範囲内である。
【0080】
それにもかかわらず、本開示の幅広い範囲を示す数値範囲およびパラメータ設定は近似であり、特定の例に示される数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、あらゆる数値は、本来的に、それぞれの試験測定に見出される標準偏差から必然的に生じるある程度の誤差を含む。
【0081】
本開示を記載する状況で(特に、以下の特許請求の範囲の状況で)使用される用語「a」「an」、「the」、および類似の参照対象は、本明細書にて別様の指定がない限り、または状況により明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記述は、範囲内に入る各個別の値を個々に参照するための簡便な方法としての役目を果たすことが意図されているに過ぎない。本明細書に別様の指定がない限り、各個々の値は、あたかもそれが個々に本明細書に記述されているかの如く、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の方法はすべて、本明細書に別様の指定がない限り、またはそうでなければ状況により明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば、「など」)の使用は、本開示をより良好に明らかにするためのものに過ぎず、別様に特許請求されている本開示の範囲を限定するものでない。本明細書における言語は、本開示の実施にとって不可欠な任意の特許請求されていない要素を示すと解釈されるべきでない。
【0082】
本明細書で開示された開示の代替的な要素または実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各群メンバーは、個々に、またはその群の他のメンバーもしくは本明細書に見出される他の要素との任意の組合せで参照および特許請求される。群の1つまたは複数のメンバーは、利便性および/または特許性の理由で、群に含まれてよく、または群から削除されてもよいことが理解される。任意のそのような包含または削除が生じる場合、本明細書は、改変された群を含むとみなされ、したがって添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュ群の記載要件を満たす。
【0083】
本開示で使用される定義および説明は、以下の例において、またはその意味を適用すると任意の構成が意味をなさないかまたは本質的に意味をなさなくなる場合に、明示的におよび明確に改変されない限り、あらゆる将来の構成を支配することが意図および目的とされており、その用語の構成により、意味をなさないかまたは本質的に意味をなさなくなってしまう場合、定義は、Webster’s Dictionary、第3版、またはOxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Anthony Smith編、Oxford University Press、オックスフォード 2004年)などの、当業者に知られている辞書によるべきである。
【実施例0084】
以下の例は、本開示の方法および組成物の例示である。本開示に照らして、当業者であ
れば、本開示の方法および組成物のこうした例および他の例の変異は、過度な実験作業を行わずに可能になることを認識するだろう。
【0085】
実施例1-固定および逆転写
NIH/3T3(マウス)およびHela-S3(ヒト)細胞を、2つの個別の10cm細胞培養プレートでコンフルエンスになるまで増殖させることができる。細胞を、10mlの1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回すすぐことができ、1mlの0.05% トリプシンを各プレートに添加することができ、プレートを37℃で5分間インキュベートすることができる。プレート全体にトリプシンをピペットしながら各プレートを45°の角度に傾けることにより細胞を剥離することができ、すべてのまたは実質的にすべての細胞が剥離するまで、これを続けることができる。各細胞株を、各自の15ml円錐遠心分離チューブ(FALCON(商標))に移すことができる。10%ウシ胎仔血清(FBS)を有する2mlダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を、各チューブに添加することができる。各チューブの細胞数を算出することができる(例えば、血球計算器またはフローサイトメーターで)。例えば、200μlの試料を、各チューブから個別の1.7ml微量遠心チューブ(EPPENDORF(登録商標))へと移すことができ、100μlの試料を、ACCURI(商標)フローサイトメーターに流して、細胞濃度を算出することができる。
【0086】
各チューブに由来する同数の細胞を、できるだけ多くの細胞を使用して組み合わせて、新しい単一の15ml円錐遠心分離チューブ(FALCON(商標))に入れることができる。15ml円錐遠心分離チューブ(FALCON(商標))で500×gにて5分間の遠心を実行することができる。細胞がチューブの側面ではなくチューブの底部にペレット化するように、バケット遠心分離機を使用することが有用であり得る。細胞ペレットを崩さずに液体を吸引することができ、細胞を、500μlの4%ホルムアルデヒドに再懸濁することができる。その後、細胞を10分間室温(つまり、20~25℃)に置いておくことができる。1.5mlの0.5%TRITON(商標)X-100をチューブに添加し、ピペットで穏やかに混合することができる。その後、チューブを500×gで5分間遠心することができる。再び、ペレットを崩さずに液体を吸引することができ、ペレットを再懸濁せずにペレットを1mlのPBSで2回洗浄することができる。洗浄でペレットが崩れる場合、第2の洗浄を飛ばして次に進んでもよい。その後、ペレットを1mlの0.1N HClに再懸濁し、室温で5分間インキュベートすることができる。
【0087】
2mlのTris-HCl(pH8.0)を、新しい15ml円錐遠心分離チューブ(FALCON(商標))に添加することができる。上記のHCl中の固定細胞を、HClを中和するためにTris-HClを有するチューブに移すことができる。その後、チューブの細胞数を、上記で議論されているように算出することができる(例えば、血球計算器またはフローサイトメーターで)。Tris-HCl中の固定細胞を、500×gで5分間遠沈することができ、ペレットを崩さずに液体を吸引することができる。ペレットを崩さずに、ペレットを1mlの無RNase分子グレード水で2回洗浄することができる。その後、細胞を、250万細胞/mlの濃度に再懸濁することができる(これを行うために、最後の遠心ステップ前に算出された濃度を使用することができる)。
【0088】
逆転写ミックスを作製することができる(55μl M-MuLV逆転写酵素緩衝液(ENZYMATICS(登録商標))、55μl M-MuLV逆転写酵素(ENZYMATICS(登録商標))、5.5μl dNTP(1塩基当たり25mM)、3.44μl RNase阻害剤(ENZYMATICS(登録商標)、40単位/μl)、210.4μl無ヌクレアーゼ水、および2.75μl RTプライマー(BC_0055、100μM))。24ウェル細胞培養プレートのウェル中で、300μlの逆転写ミックスを、200μlの固定細胞(約500,000細胞)を組み合わせ、ピペットすること
により穏やかに混合することができる。その後、混合物を室温で10分間インキュベートして、逆転写プライマーをアニーリングさせることができ、その後混合物を、37℃にて一晩(つまり、約16時間)加湿インキュベータでインキュベートすることができる。
【0089】
逆転写に使用することができるプライマー(BC_0055)が、図10に示されている。これは、メッセンジャーRNAのポリ(A)尾部の開始部に結合するように設計されている係留プライマーである。3’末端が4塩基のいずれかであり(N)、3’から2番目の位置がT以外の任意の塩基(V)であるプライマーを合成することができる。また、プライマーは、15個の連続dTを含むことができる。一部の実施形態では、プライマーは、15個よりも多くのdTを含んでいてもよい。一部の他の実施形態では、プライマーは、15個未満のdTを含んでいてもよい。プライマーが15個未満のdTを含む実施形態では、プライマーの融解温度が低下する場合がある。ドメインs0は、メッセンジャーRNAにハイブリダイズしなくともよいが、代わりにリンカーオリゴに対するアクセス可能な結合ドメインを提供することができる。また、プライマーは、T4 DNAリガーゼによりプライマーを別のオリゴにライゲーションさせることができる5’リン酸を含む。
【0090】
実施例2-バーコードの調製
バーコードを、100μM濃度にて96ウェルプレートに順序立てて配置した。各バーコードを、その対応するリンカーオリゴにアニーリングさせた(図10~12を参照)。
【0091】
図11は、アニーリングされた第1ラウンドバーコードオリゴを示す。ドメインi8aに固有配列を有する96個の第1ラウンドバーコードオリゴを使用した。第1ラウンドでは、ドメインi8aの固有配列は、バーコードとして使用される配列の領域である。8個のヌクレオチドを変えることにより、65,536個の考え得る固有配列が存在する。一部の実施形態では、8個よりも多くのヌクレオチドが、ドメインi8aに存在してもよい。一部の他の実施形態では、8個未満のヌクレオチドが、ドメインi8aに存在してもよい。第1ラウンドバーコードを、ドメインs1の相補的配列を介してリンカー鎖(BC_0056)にプレアニーリングさせた。リンカー鎖は、第1ラウンドバーコードの3’末端を、逆転写プライマーの5’末端の最近傍に接近およびハイブリダイズさせることができる、逆転写プライマーの一部(ドメインs0)に対する相補的配列を含むことができる。その後、逆転写プライマーのリン酸を、T4 DNAリガーゼにより第1ラウンドバーコードの3’末端にライゲーションすることができる。ドメインs2は、別のラウンドのバーコード化で使用するためのリンカーオリゴに対するアクセス可能な結合ドメインを提供することができる。また、第1ラウンドバーコードオリゴは、T4 DNAリガーゼにより別のオリゴの3’末端にライゲーションさせることができる5’リン酸を含むことができる。
【0092】
図12は、アニーリングされた第2ラウンドバーコードオリゴを示す。ドメインi8bに固有配列を有する96個の第2ラウンドバーコードオリゴを使用した。第2ラウンドでは、ドメインi8bの固有配列は、バーコードとして使用される配列の領域である。8個のヌクレオチドを変えることにより、65,536個の考え得る固有配列が存在する。一部の実施形態では、8個よりも多くのヌクレオチドが、ドメインi8bに存在してもよい。一部の実施形態では、8個未満のヌクレオチドが、ドメインi8bに存在してもよい。第2ラウンドバーコードを、ドメインs3の相補的配列を介してリンカー鎖(BC_0058)にプレアニーリングさせることができる。リンカー鎖は、第1ラウンドバーコードの3’末端を、第2ラウンドバーコードオリゴの5’末端の最近傍に接近およびハイブリダイズさせることができる、第1ラウンドバーコードオリゴの一部(ドメインs2)に対する相補的配列を含むことができる。その後、第1ラウンドバーコードオリゴのリン酸を、T4 DNAリガーゼにより第2ラウンドバーコードの3’末端にライゲーションすることができる。ドメインs4は、別のラウンドのバーコード化で使用するためのリンカー
オリゴに対するアクセス可能な結合ドメインを提供することができる。また、第2ラウンドバーコードオリゴは、T4 DNAリガーゼにより別のオリゴの3’末端にライゲーションさせることができる5’リン酸を含むことができる。
【0093】
図13は、アニーリングされた第3ラウンドバーコードオリゴを示す。ドメインi8cに固有配列を有する96個の第3ラウンドバーコードオリゴを使用した。第3ラウンドでは、ドメインi8cの固有配列は、バーコードとして使用される配列の領域である。8個のヌクレオチドを変えることにより、65,536個の考え得る固有配列が存在する。一部の実施形態では、8個よりも多くのヌクレオチドが、ドメインi8cに存在してもよい。一部の他の実施形態では、8個未満のヌクレオチドが、ドメインi8cに存在してもよい。第3ラウンドのバーコードを、ドメインs5の相補的配列を介してリンカー鎖(BC_0060)にプレアニーリングさせることができる。リンカー鎖は、第2ラウンドバーコードの3’末端を、第3ラウンドバーコードオリゴの5’末端の最近傍に接近およびハイブリダイズさせることができる、第2ラウンドバーコードオリゴの一部(ドメインs4)に対する相補的配列を含むことができる。その後、第2ラウンドバーコードオリゴのリン酸を、T4 DNAリガーゼにより第3ラウンドバーコードの3’末端にライゲーションすることができる。10個のランダムヌクレオチド(ドメインUMI:NNNNNNNNNN)からなる固有分子識別子(UMI;Islamら、Nature Methods、2014年を参照)を有する第3ラウンドバーコードオリゴを合成することができる。PCR増幅バイアスのため、cDNAから複数の配列決定リードが生じる場合がある。UMIを使用すれば、各cDNAを1回のみ計数することができる。また、第3ラウンドバーコードは、ILLUMINA(登録商標)TruSeqアダプターの一部に相当するドメインを含むことができる。ストレプトアビジンをコーティングした磁気ビーズでバーコード化cDNAを十分に単離することができるように5’末端にビオチン分子を有する第3ラウンドバーコードを合成することができる。
【0094】
各バーコードオリゴの100μMストックから開始して(つまり、各ラウンド毎に1つの96ウェルプレートで)、11μlのバーコードオリゴを、96ウェルPCRプレートに移した。9μlのBC_0056(100μMストック)を、ラウンド1バーコードを有するプレートの各ウェルに添加した。9μlのBC_0058(100μMストック)を、ラウンド2バーコードを有するプレートの各ウェルに添加した。9μlのBC_0060(100μMストック)を、ラウンド3バーコードを有するプレートの各ウェルに添加した。その後、90℃に加熱し、0.1℃/秒で熱を低減させ、温度が25℃に達したら停止させるというプログラムのサーモサイクラーに各プレートを入れ、バーコードを、対応するリンカーオリゴにアニーリングさせた。2.2μlを、ラウンド1バーコードを有する各ウェルから、新しい96ウェルプレート(プレートL1と呼ぶ)へと移した。3.8μlを、ラウンド2バーコードを有する各ウェルから、新しい96ウェルプレート(プレートL2と呼ぶ)へと移した。6.1μlを、ラウンド3バーコードを有する各ウェルから、新しい96ウェルプレート(プレートL3と呼ぶ)へと移した。
【0095】
実施例3-ライゲーション停止オリゴの調製
各ラウンドのライゲーション後、リンカー鎖に相補的な過剰量のオリゴを添加することにより、ライゲーションを停止させることができる(図14を参照)。各バーコードライゲーションを停止させるために、リンカーオリゴに完全に相補的なオリゴ鎖を添加することができる。こうしたオリゴは、未ライゲーションバーコードに付着しているリンカー鎖に結合し、鎖置換反応により未ライゲーションバーコードを置換することができる。その後、未ライゲーションバーコードを、完全に一本鎖化することができる。T4 DNAリガーゼは、一本鎖DNAを他の一本鎖DNAにライゲーションすることができないため、ライゲーション反応は進行が停止することになる。すべてのリンカーオリゴが相補的オリゴに結合することを保証するために、モル過剰量の相補的オリゴ(リンカーオリゴに対し
て)を添加する。第1ラウンドライゲーションを停止させるために、BC_0064(BC_0056に相補的)を添加する。第2ラウンドライゲーションを停止させるために、BC_0065(BC_0058に相補的)を添加する。第3ラウンドライゲーションを停止させるために、BC_0066(BC_0060に相補的)を添加する。
【0096】
各停止ライゲーション鎖(BC_0064、BC_0065、BC_0066)の希釈物を、以下の通りに調製することができる:264μlの停止ライゲーション鎖(BC_0064、BC_0065、BC_0066)、300μlの10×T4 DNAリガーゼ緩衝液、および636μlの無ヌクレアーゼ水。
【0097】
実施例4-cDNAに対するバーコードのライゲーション
5μlの10%TRITON(商標)X-100を、上記に記載の24ウェルプレートの逆転写反応物(0.1%の終濃度に)に添加することができる。細胞との逆転写(RT)反応物を、15ml円錐遠心分離チューブ(FALCON(商標))に移すことができる。RT反応物を500×gで10分間遠心し、2mlの無ヌクレアーゼ水に再懸濁することができる。細胞を、リガーゼミックスと組み合わせることができる(使い捨てピペットリザーバー(10ml)中、600μlの10×T4リガーゼ緩衝液、2040μlの無ヌクレアーゼ水、再懸濁細胞のすべて(2000μl)、100μlのT4 DNAリガーゼ(NEW ENGLAND BIOLABS(登録商標)、400,000単位/ml)、および60μlの10%TRITON(商標)X-100)。リザーバーを前後に数回穏やかに傾けることにより、細胞およびリガーゼミックスを混合することができる。マルチチャネルピペットを使用して、リガーゼミックス中40μlの細胞を、アニーリングされたラウンド1バーコードの各ウェル(プレートL1)に添加することができる。上下に穏やかに2~3回ピペットすることにより、各ウェルを混合することができる。リガーゼミックス中の細胞を、37℃で60分間インキュベートすることができる。
【0098】
10μlの希釈BC_0064を各ウェルに添加して、ライゲーションを停止させることができる。その後、試料を37℃で30分間インキュベートすることができる。細胞のすべてを、新しい使い捨てピペットリザーバー(10ml)に収集することができる。1mlピペットを使用して、細胞を40μMストレーナーに通し、新しい使い捨てピペットリザーバー(10ml)へと通過させることができる。100μlのT4 DNAリガーゼ(NEW ENGLAND BIOLABS(登録商標)、400,000単位/ml)を、リザーバーの細胞に添加することができる。リザーバーを前後に数回穏やかに傾けることにより細胞およびリガーゼミックスを混合することができ、マルチチャネルピペットを使用して、リガーゼミックス中40μlの細胞を、アニーリングされたラウンド2バーコード(プレートL2)の各ウェルに添加することができる。上下に穏やかに2~3回ピペットすることにより、各ウェルを混合することができ、その後試料を37℃で60分間インキュベートすることができる。
【0099】
10μlの希釈BC_0065を各ウェルに添加して、ライゲーションを停止させることができる。試料を37℃で30分間インキュベートすることができ、その後細胞を、新しい使い捨てピペットリザーバー(10ml)に収集することができる。1mlピペットを使用して、細胞を40μMストレーナーに通し、新しい使い捨てピペットリザーバー(10ml)へと通過させることができる。100μlのT4 DNAリガーゼ(NEW ENGLAND BIOLABS(登録商標)、400,000単位/ml)を、リザーバーの細胞に添加することができる。リザーバーを前後に数回穏やかに傾けることにより、細胞およびリガーゼミックスを混合することができる。マルチチャネルピペットを使用して、リガーゼミックス中40μlの細胞を、アニーリングされたラウンド3バーコードの各ウェル(プレートL3)に添加することができる。その後、上下に穏やかに2~3回ピペットすることにより、各ウェルを混合することができ、試料を37℃で60分間イン
キュベートすることができる。
【0100】
10μlの希釈BC_0066を各ウェルに添加して、ライゲーションを停止させることができる。試料を37℃で30分間インキュベートすることができる。細胞をすべて、新しい使い捨てピペットリザーバー(10ml)に収集することができる。細胞を15ml円錐遠心分離チューブ(FALCON(商標))に移すことができ、チューブを洗浄緩衝液(無ヌクレアーゼ水、0.05%Tween20、および25%ホルムアミド)で満たして15mlにすることができる。試料を室温で15分間インキュベートすることができる。その後細胞を、500×gで10分間ペレット化することができ、ペレットを崩さずに液体を除去することができる。各チューブの細胞を100μlのPBSに再懸濁することができ、細胞を計数することができる(例えば、血球計算器またはフローサイトメーターで)。一例では、57,000個の細胞が保持された。配列決定する細胞数を選択することができる。一例では、細胞を、25個細胞のアリコート、250個細胞のアリコート、2,500個細胞のアリコート、および25,000個細胞のアリコートに分配した。300μlの溶解緩衝液(10mM NaF、1mM NaVO、0.5%DOC緩衝液、および0.5%TRITON(商標)X-100)を、細胞アリコートの各々に添加することができ、細胞アリコートの各々は、25ゲージ注射針を8回通過させることができる。
【0101】
実施例5-ストレプトアビジンでコーティングしたビーズへのバーコード化cDNAの結合
まず、DYNABEADS(登録商標)MYONE(商標)ストレプトアビジンC1ビーズを再懸濁することができる。20μlの再懸濁DYNABEADS(登録商標)MYONE(商標)ストレプトアビジンC1ビーズを(細胞の各アリコート毎に)、1.7ml微量遠心チューブ(EPPENDORF(登録商標))に添加することができる。ビーズを、1×リン酸緩衝生理食塩水Tween20(PBST)で3回洗浄し、20μlのPBSTに再懸濁することができる。900μlのPBSTを細胞アリコートに添加することができ、20μlの洗浄したC1ビーズを、溶解細胞のアリコートに添加することができる。試料を、室温で15分間穏やかなローラーに置き、その後磁気チューブラック(EPPENDORF(登録商標))を使用して、800μlのPBSTで3回洗浄することができる。その後ビーズを、100μlのPBSに再懸濁することができる。
【0102】
実施例6-ビーズのRNase処理
試料を含む微量遠心チューブ(EPPENDORF(登録商標))を、磁気チューブラック(EPPENDORF(登録商標))に2分間設置することができ、その後液体を吸引することができる。ビーズをRNase反応物(3μl RNaseミックス(ROCHE(商標))、1μl RNaseH(NEW ENGLAND BIOLABS(登録商標))、5μl RNaseH 10×緩衝液(NEW ENGLAND BIOLABS(登録商標))、および41μl無ヌクレアーゼ水)に再懸濁することができる。試料を37℃で1時間インキュベートし、37℃から除去し、磁気チューブラック(EPPENDORF(登録商標))に2分間設置することができる。ビーズを再懸濁せずに、チューブを磁気チューブラックに配置したまま、試料を750μlの無ヌクレアーゼ水+0.01%Tween20(HO-T)で洗浄することができる。その後液体を吸引することができる。ビーズを再懸濁せずに、チューブを磁気チューブラックに配置したまま、試料を750μlのHO-Tで洗浄することができる。次に、チューブを磁気チューブラックに配置したまま、液体を吸引することができる。その後、チューブを磁気チューブラックから取り外すことができ、試料を、40μlの無ヌクレアーゼ水に再懸濁することができる。
【0103】
実施例7-3’アダプターライゲーション
図15を参照すると、PCR増幅を促進するために、一本鎖DNAアダプターオリゴ(BC_0047)を、cDNAの3’末端にライゲーションすることができる。アダプターオリゴのコンカテマーを防止するために、ジデオキシシチジン(ddC)を、アダプターオリゴの3’末端に含めることができる。5’末端にリン酸および3’末端にddCを有するBC_0047を生成した。幾つかの酵素は、一本鎖オリゴを一本鎖DNAの3’末端にライゲーションすることが可能である。本明細書では、T4 RNAリガーゼ1(NEW ENGLAND BIOLABS(登録商標))を使用した。熱安定性5’AppDNA/RNAリガーゼ(NEW ENGLAND BIOLABS(登録商標))も、プレアデニル化アダプターオリゴと共に使用することができる。
【0104】
具体的には、20μlのRNase処理ビーズを、単一のPCRチューブに添加することができる。80μlのリガーゼミックス(5μlのT4 RNAリガーゼ1(NEW ENGLAND BIOLABS(登録商標))、10μlの10×T4 RNAリガーゼ緩衝液、5μlの50μM BC_0047オリゴ、50μlの50%PEG8000、および10μlの10mM ATP)を、PCRチューブ中の20μlビーズに添加することができる。ビーズと混合した50μlのリガーゼを新しいPCRチューブに移して、多過ぎるビーズが単一チューブの底部に沈殿することを防止することができ、試料を25℃で16時間インキュベートすることができる。
【0105】
実施例8-ILLUMINA(登録商標)適合性配列決定産物の生成
両PCRチューブに由来するライゲーション反応物を組み合わせて、単一の1.7ml微量遠心チューブ(EPPENDORF(登録商標))に入れることができる。750μlのHO-Tを各試料に添加することができる。チューブの各々を、磁気チューブラック(EPPENDORF(登録商標))に2分間設置することができ、液体を吸引することができ、試料を40μlの水に再懸濁することができる。試料をPCRチューブに移すことができる。60μlのPCRミックスを各チューブに添加することができる(50μlの2×PHUSION(登録商標)DNAポリメラーゼマスターミックス(THERMO FISHER(商標)Scientific)、5μlのBC_0051(10μM)、および5μlのBC_0062(10μM))。10サイクルのPCRを実施することができる(98℃で3分間、10回の反復(98℃で10秒間、65℃で15秒間、および72℃で60秒間)、および72℃で5分間)。図16はPCR産物を示す。3’アダプターオリゴ(BC_0047)をバーコード化cDNAにライゲーションさせた後、PCRを使用してcDNAを増幅することができる。図16に示されているように、プライマーBC_0051およびBC_0062を使用した。
【0106】
以前のステップからPCR試料を調達することができ、磁気ビーズを、磁石を用いて各チューブの底部へと動かすことができる。磁気ビーズを一切移さずに、90μlのPCR反応物を新しい1.7mlに移すことができる。10μlの無ヌクレアーゼ水を1.7mlチューブの各々に添加して、総容積を100μlにすることができる。60μlのAMPURE(商標)ビーズを、100μlのPCR反応物(0.6×SPRI)に添加し、5分間結合させることができる。チューブを2分間磁石に設置することができ、ビーズを再懸濁させずに、試料を200μlの70%エタノールで洗浄することができる(30秒間待機)。ビーズを再懸濁させずに、試料を200μlの70%エタノールで再度洗浄することができ(30秒間待機)、その後エタノールが蒸発するまで、試料を5~10分間空気乾燥することができる。
【0107】
試料の各々を、40μlの無ヌクレアーゼ水に再懸濁することができる。チューブを磁気ラックに2分間設置することができる。微量遠心チューブ(EPPENDORF(登録商標))を依然として磁気ラックに配置させたまま、ビーズを移さずに38μlの溶液を新しい1.7mlチューブに移すことができる。62μlの無ヌクレアーゼ水を試料に添
加して、総容積を100μlにすることができる。その後、60μlのAMPURE(商標)ビーズを、100μlのPCR反応物(0.6×SPRI)に添加し、5分間結合させることができる。チューブを2分間磁石に設置することができ、その後、ビーズを再懸濁させずに、試料を200μlの70%エタノールで洗浄することができる(30秒間待機)。ビーズを再懸濁させずに、試料を200μlの70%エタノールで再度洗浄することができ(30秒間待機)、その後エタノールが蒸発するまで、試料を5~10分間空気乾燥することができる。
【0108】
試料を40μlの無ヌクレアーゼ水に再懸濁することができ、各チューブを磁気ラックに2分間設置することができる。チューブを依然として磁気ラックに配置させたまま、ビーズを一切移さずに38μlの溶液を新しい1.7mlチューブに移すことができる。38μl溶出液のうち20μlを、光学PCRチューブに添加することができる。さらに、PCRミックスを、このチューブに添加することができる(25μlのPHUSION(登録商標)DNAポリメラーゼマスターミックス(THERMO FISHER(商標)Scientific)、2.5μlのBC_0027(10μM)、2.5μlのBC_0063(10μM)、および2.5μlの20×EVAGREEN(登録商標)(BIOTIUM(商標)))。図16に示されているPCR後、全長ILLUMINA(登録商標)アダプター配列を、別のラウンドのPCRにより導入することができる。図17に示されているように、BC_0027は、フローセル結合配列、およびTRUSEQ(商標)リード1プライマーの結合部位を含む。BC_0063は、フローセル結合配列、およびTruSeqマルチプレックスリード2、およびインデックス結合配列を含む。試料インデックスの領域も存在し、この例ではGATCTGである。
【0109】
上記の試料を、以下のサイクル条件でqPCR機にかけることができる:1)98℃で3分間、2)98℃で10秒間、3)65℃で15秒間、4)72℃で60秒間、および5)ステップ2~4を繰り返す(例えば、蛍光の指数関数的増加が止まる時点に応じて、10~40回)。チューブを、5分間72℃に設定したサーモサイクラーに移すことができる。qPCR反応物を、1.5%アガロースゲルに40分間流すことができ、450~550bpのバンドを切り出し、ゲル抽出することができる(QIAQUICK(登録商標)ゲル抽出キット)。産物を、ILLUMINA(登録商標)MISEQ(商標)でペアエンド配列決定を使用して配列決定することができる。配列決定用プライマーは、標準TRUSEQ(商標)マルチプレックスプライマーであってもよい。リード1はcDNA配列を配列決定することができ、リード2は、固有分子識別子ならびに3個のバーコード配列(各々8個ヌクレオチド)を網羅することができる。インデックスリード1を使用して試料バーコードを配列決定することができ、したがって複数の試料を一緒に配列決定してもよい。
【0110】
実施例9-データ分析
配列決定リードを、細胞バーコードによりグループ化した(各々が8個ヌクレオチドの3個のバーコード、全組合せは96×96×96=884,736通り)。各バーコード組合せは、単一細胞に由来するcDNAに対応するはずである。有効なバーコードを有するリードのみを保持した。各バーコード組合せを有する配列決定リードを、ヒトゲノムおよびマウスゲノムの両方に対してアラインした。両ゲノムにアラインしたリードを廃棄した。同じ固有分子識別子を有する複数のリードを、単一リードとして計数した。2つまたはそれよりも少ないミスマッチを有する固有分子識別子を有するリードは、配列決定エラーにより生成されたとみなし、単一リードとして計数した。各固有バーコード組合せについて、ヒトゲノムにアラインしたリードの数(x軸)およびマウスゲノムにアラインしたリードの数(y軸)をプロットした(図18を参照)。各細胞は、マウスまたはヒトのいずれかであるため、理想的には唯一のタイプのRNAを含むはずである。したがって、理想的なプロットは、すべての点がx軸またはy軸に沿っていることになる。図18のプロ
ットのほとんどの点が軸線付近にあるという事実は、本方法が実施可能であることを示す。
【0111】
プロットの各点は、同じ組合せのバーコードを有するcDNAに対応し、単一細胞に由来するcDNAを表すはずである。各点について、マウスゲノムに固有にマッピングされるリードの数はy軸にプロットされ、ヒトゲノムに固有にマッピングされるリードの数は、x軸にプロットされる。特定の組合せのバーコードを有するcDNAが単一細胞に由来した場合、特定の組合せのバーコードを有するcDNAはすべて、完全にヒトゲノムにまたは完全にマウスゲノムにマッピングされるはずである。上述のように、ほとんどのバーコード組合せがx軸(ヒト細胞)またはy軸(マウス細胞)のいずれか付近にマッピングされるという事実は、本方法が実際に単一細胞RNA配列決定データをもたらすことができることを示す。
【0112】
実施例10-複数の細胞の分子を固有に標識化する方法
以下に開示されているプロトコールの場合、予測される実験時間は、2(二)日間である。下記に示されているように、RNase阻害剤を緩衝液に添加してもよい。したがって、任意の緩衝液が用語「+RI」を含む場合、これは、ENZYMATICS(登録商標)RNase阻害剤が、0.1U/μLの終濃度で添加されているはずであることを示す。遠心分離ステップは、スインギングバケットローターで実施してもよい。一部の実施形態では、固定角遠心分離機の使用は、より多くの細胞喪失に結び付く場合がある。組織タイプに応じて、遠心分離速度を変化させて、細胞保持を最適化する必要があり得る(例えば、より小さな細胞=より高速)。
【0113】
DNAバーコード化プレート生成には、以下のものが必要とされ得る:i)3個のIDT(登録商標)96ウェルプレート、逆転写バーコードプライマー、ライゲーションラウンド1、およびライゲーションラウンド2ストックDNAオリゴプレート(100μM);ii)2つのリンカーオリゴ、BC_0215およびBC_0060(注:これらは、ストック濃度が1mMであることが仮定されており、したがって別のストック濃度が使用される場合は(例えば、100μMストック)、容積を修正すること);およびiii)6つの96ウェルPCRプレート(例えば、少なくとも10回の実験を継続することになる3(三)つのストックプレート、および最初の実験のための3(三)つのプレート)。なお、これにより、100μLのDNAバーコードを各ウェルに生成することができる。一般に、各実験は、わずか4μL/ウェルの逆転写プライマー溶液しか必要とせず、これで25回の実験を継続することができる。一般に、各実験は、わずか10μL/ウェルのバーコード/リンカー溶液しか必要とせず、こうしたプレートで合計10回の実験を継続することができる。
【0114】
ラウンド1逆転写バーコードプライマー(48ウェルの各々の終濃度は、12.5μMのランダム六量体および12.5μMの15dTプライマー):1)マルチチャネルピペットを使用して、IDT(登録商標)逆転写バーコードプライマーの列A~Dの12.5μLを、BCストック96ウェルPCRプレートの列A~Dに添加する;2)マルチチャネルピペットを使用して、IDT(登録商標)逆転写バーコードプライマーの列E~Hの12.5μLを、BCストック96ウェルPCRプレートの列A~Dに添加する(ここで、ポリdTをランダム六量体プライマーと混合する);3)75μlの水を、BCストック96ウェルPCRプレートの列A~Dに添加する。
【0115】
ラウンド2ライゲーションラウンド(終濃度は、12μMのバーコード、11μMのリンカー-BC_0215):1)マルチチャネルピペットを使用して、12μLのIDT(登録商標)ラウンド2バーコードをR1ストック96ウェルPCRプレートに添加する;2)138.6μlのBC_0215(1mM)を、凹部分の10.9494mLの水
に添加する(BC_0215_dil);および3)マルチチャネルピペットを使用して、88μLのBC_0215_dilを、R2ストック96ウェルPCRプレートの各ウェルに添加する。
【0116】
ライゲーションラウンド3(終濃度は、14μMのバーコード、13μMのリンカー-BC_0060):1)マルチチャネルピペットを使用して、14μLのラウンド3バーコードを、R3ストック96ウェルPCRプレートに添加する;2)163.8μlのBC_0060(1mM)を、凹部分の10.6722mLの水に添加する(BC_0060_dil);および3)マルチチャネルピペットを使用して、86μLのBC_0060を、R3ストック96ウェルPCRプレートの各ウェルに添加する。
【0117】
各ライゲーションプレートは(R2およびR3、逆転写バーコードを含まない)、以下のサーモサイクルプロトコールでバーコードおよびリンカーオリゴをアニーリングする:1)95℃に2(二)分間加熱、および2)0.1℃/秒の速度で20℃まで冷却;および3)4℃。
【0118】
各バーコード/リンカーストックの10μLを、3(三)つの新しい96ウェルPCRプレートにアリコートする。これらは、このプロトコールの分配-プールライゲーションステップでのDNAバーコード化に使用されるべきプレートである。
【0119】
I.核抽出(任意選択):1)以下のものを準備する:a)使用するまでダンス型ホモジナイザーを4℃に維持すること、b)15mlの1×PBS+37.5SUPERASE-IN(商標)+19μlのENZYMATICS(登録商標)RNase阻害剤(氷上で維持)、およびc)遠心分離機を4℃に予冷すること。
【0120】
2)NIM1緩衝液(表1)を作製する:
【0121】
【表1】
【0122】
3)ホモジナイゼーション緩衝液(表2)を作製する:
【0123】
【表2】
【0124】
4)ダンス型ホモジナイザー:a)組織/細胞試料をダンス型ホモジナイザーに添加する;細胞の場合は、700μlのホモジナイゼーション緩衝液に再懸濁する;b)ホモジナイゼーション緩衝液を約700μlに添加する;c)緩い乳棒の5回往復を実施する;d)密着乳棒の10~15回往復を実施する;e)ホモジナイゼーション緩衝液を添加して1mlにする;およびf)5μlのトリパンブルーおよび5μlの細胞を有する細胞ライセートを血球計算器で検査して、核が放出されたか否かを確かめる。
【0125】
5)ホモジネートを40μmストレーナーで濾過して、5mlのEPPENDORF(商標)チューブ(または15mLのFALCON(商標)チューブ)に入れる。チューブ上方で漉過しながらフィルターを45°に傾けることにより、ライセートが意図した通りに通過することを保証することができる。注:この漉過プロセスは、下記の漉過プロセスとは異なる。
【0126】
6)600×gで4分間遠心し(4℃)、上清を除去する(ペレット吸引を回避するために約20μLを残してもよい)。7)1mlの1×PBS+RIに再懸濁する。8)10μlのBSAを添加する。9)600×gで4分間遠心分離する。10)200μlの1×PBS+RIに再懸濁する。
【0127】
11)ステップ4の再懸濁細胞の50μlを取り、150μlの1×PBS+RIを添加する。血球計算器および/またはフローサイトメーターで試料を計数する。ステップ4の再懸濁細胞の容積は、ユーザの裁量に基づいて変化させることができる。12)細胞を40μmストレーナーに通して新たな15mLファルコン(商標)チューブへと通過させ、氷上に置く(II.固定および透過処理のステップ4に関する下記の注釈を参照)。13)所望の数の核(典型的には2M)を1mLの1×PBS+RIに再懸濁し、以下の固定および透過処理プロトコールのステップ5へと進む。
【0128】
II.固定および透過処理:1)以下の緩衝液を調製する(2回の実験用に算出):a)1.33%ホルマリン(360μLの37%ホルムアルデヒド水溶液(SIGMA(登録商標))+9.66mlのPBS)溶液、4℃で保管;b)6mLの1×PBS+RI(15μLのSUPERASE-IN(商標)および7.5μLのENZYMATICS(登録商標)RNase阻害剤);c)2mLの0.5×PBS+RI(5μLのSUPERASE-IN(商標)および2.5μLのENZYMATICS(登録商標)RNase阻害剤);d)500μLの5%TRITON(商標)X-100+RI(2μLの
SUPERASE-IN(商標));e)500μLの100mM Tris pH8.0+2μLのSUPERASE-IN(商標);およびf)遠心分離機を4℃に設定する。
【0129】
2)500×gで3分間4℃にて遠心分離することにより細胞をペレットにする(一部の細胞では、より速い遠心分離が必要となる場合がある)。3)細胞を1mLの冷却PBS+RIに再懸濁する。これらのステップ間は、細胞を氷上で維持する。4)細胞を40μmストレーナーに通して新たな15mLファルコン(商標)チューブへと通過させ、氷上に置く。注:細胞再懸濁物は、ストレーナーを受動的に通過しない可能性が高く、それにより細胞喪失が引き起こされる場合がある。代わりに、1mlのピペットを再懸濁物で満たし、先端の端部をストレーナーに直接押し付け、液体を能動的に押し出す。この動作には、約1(一)秒間かけるべきである。5)3mLの冷却1.33%ホルムアルデヒドを添加する(終濃度は、1%ホルムアルデヒド)。細胞を氷上で10分間固定する。6)160μLの5%TRITON(商標)X-100+RIを固定細胞に添加し、1mLピペットを用いて穏やかに5回上下にピペットすることにより混合する。細胞を氷上で3分間透過処理する。7)細胞を500×gで3分間4℃にて遠心分離する。8)細胞を注意深く吸引し、500μLの冷却PBS+RIに再懸濁する。9)500μLの冷却100mM Tris-HCl、pH8.0を添加する。10)20μLの5%TRITON(商標)X-100を添加する。11)細胞を500×gで3分間4℃にて遠心分離する。12)細胞を吸引し、300μLの冷却0.5×PBS+RIに再懸濁する。
【0130】
13)細胞を40μMストレーナーに通して、新しい1.7mLチューブに入れる(II.固定および透過処理のステップ4に関する上記に注釈を参照)。14)血球計算器またはフローサイトメーターを使用して細胞を計数し、細胞懸濁物を1,000,000細胞/mLに希釈する。細胞の計数中は、細胞懸濁物を氷上で維持する。注:このステップにより、分配-プールラウンドへと進む細胞の個数が決定されることになる。分配-プールラウンドへと進む細胞のサブセットのみを配列決定することが可能になるだろう(溶解ステップでのサブライブラリー生成中に行うことができる)。使用されることになるバーコード組合せの総数を算出して、最小限のバーコード衝突(barcode collisions)で配列決定することができる細胞の最大数を決定すべきである。いかなる1つの特定の理論にも拘泥するものではないが、処理されることになる細胞の数は、総バーコード組合せの5%を超過すべきでない。一般に、ここでは500k~1M細胞/mLの希釈物を使用することができる(4~8k細胞が、逆転写バーコード化ラウンドの各ウェルに入ることと等しい)。
【0131】
III.逆転写:1)RTバーコードストックプレートの4μLを、新しい96ウェルプレートの上部4(四)列(48ウェル)にアリコートする。このプレートを、使用準備ができるまで粘着プレートシールで覆う。
【0132】
2)以下の逆転写(RT)ミックスを氷上で生成する(表3):
【0133】
【表3】
【0134】
3)8μLのRTミックスを、上部48ウェルの各々に添加する。各ウェルは、ここで12μLの容積を含んでいるはずである。4)0.5×PBS+RI中8μLの細胞を、上部48ウェルの各々に添加する。各ウェルは、ここで20μLの容積を含んでいるはずである。5)プレートを、以下のプロトコールのサーモサイクラーに追加する:a)50℃で10分間;b)i)8℃で12秒間、ii)15℃で45秒間、iii)20℃で45秒間、およびiv)30℃で30秒間、v)42℃で2分間、vi)50℃で3分間のサイクルを3(三)回;c)50℃で5分間;およびd)その後は常に4℃。
【0135】
6)RTプレートを氷上に置く。7)20μLのENZYMATICS(登録商標)RNase阻害剤を有する2mLの1×NEB緩衝液3.1を調製する。8)各RT反応物を15mLのFALCON(商標)チューブに移す(この場合も氷上)。9)9.6μLの10%TRITON(商標)X-100を添加して、0.1%の終濃度を得る。10)プールしたRT反応物を500×gで3分間遠心分離する。11)上清を吸引し、2mLの1×NEB緩衝液3.1+20μLのENZYMATICS(登録商標)RNase阻害剤に再懸濁する。
【0136】
IV.ライゲーションバーコード化:1)以下のライゲーションマスターミックスを氷上で作製する(表4):
【0137】
【表4】
【0138】
2)NEB緩衝液3.1中2mLの細胞を、ライゲーションミックスに添加する。このミックスは、ここでは4.04mLの容積を有しているはずである。3)ミックスを凹部分に添加する。4)マルチチャネルピペットを使用して、40μLのライゲーションミックス(細胞を有する)を、ラウンド1 DNAバーコードプレートの各ウェルに添加する。5)ラウンド1 DNAバーコードプレートを粘着プレートシールで覆い、穏やかに回転させながら(50rpm)37℃で30分間インキュベートする。6)ラウンド1ブロッキング溶液を作製し、それを新しい凹部分に添加する(表5)。
【0139】
【表5】
【0140】
7)ラウンド1 DNAバーコード化プレートをインキュベータから取り出し、カバーを取り外す。8)マルチチャネルピペットを使用して、10μLのラウンド1ブロッキング溶液を、ラウンド1 DNAバーコード化プレートの96ウェルの各々に添加する。9)ラウンド1 DNAバーコードプレートを粘着プレートシールで覆い、穏やかに回転させながら(50rpm)37℃で30分間インキュベートする。10)ラウンド1 DNAバーコード化プレートをインキュベータから取り出し、カバーを取り外し、すべての細胞を新しい凹部分にプールする。11)この凹部分の細胞をすべて、40μmストレーナーを通して別の凹部分へと通過させる(固定および透過処理のステップ4に関する上記の注記を参照)。12)100μLのT4 DNAリガーゼをこの凹部分に添加し、約20回ピペットすることにより混合する。13)マルチチャネルピペットを使用して、50μLの細胞/ライゲーション溶液を、ラウンド2 DNAバーコードプレートの各ウェルに添加する。14)ラウンド2 DNAバーコードプレートを粘着プレートシールで覆い、穏やかに回転させながら(50rpm)37℃で30分間インキュベートする。
【0141】
15)ラウンド2 ブロッキング溶液を作製し、それを新しい凹部分に添加する(表6)。
【0142】
【表6】
【0143】
16)ラウンド2 DNAバーコード化プレートをインキュベータから取り出し、カバーを取り外す。17)マルチチャネルピペットを使用して、20μLのラウンド2 ブロッキングおよび終止溶液を、ラウンド2 DNAバーコード化プレートの96ウェルの各々に添加する。18)すべての細胞を新しい凹部分にプールする(最終ブロッキングステップではインキュベーションしない)。19)この凹部分の細胞をすべて、40μmストレーナーを通して15mL FALCON(商標)チューブへと通過させる(固定および透過処理のステップ4に関する上記の注記を参照)。19)フローサイトメーターで細胞を計数する。計数するために試料をアリコートする前に、細胞が十分に混合されていることを確かめる。
【0144】
V.溶解:1)2×溶解緩衝液を作製する(表7)。
【0145】
【表7】
【0146】
2)白色沈殿物が現れた場合、沈殿物が溶液に戻るまで37℃で加温する(約10~15分間)。
【0147】
3)以下の洗浄緩衝液を作製する(表8)。
【0148】
【表8】
【0149】
4)70μLの10%TRITON(商標)X-100を細胞に添加する(約0.1%の終濃度)。5)15mlチューブ中で1000×gにて5分間遠心分離する。注:下記のステップでのペレットは非常に小さい場合があり、目に見えない場合がある。6)上清を吸引し、ペレットの取出しを回避するために約30μlを残し、a)可能な場合は、20μLのピペットを用いて上清をできるだけ取り出す。7)4mLの洗浄緩衝液に再懸濁する。8)1000×gで5分間遠心分離する。9)上清を吸引し、50μlの1×PBS+RIに再懸濁する。
【0150】
10)5μlを、195μLの1×PBSで希釈し、フローサイトメトリーで計数する。または、5μlを取って5μlの1×PBSに入れ、血球計算器で計数する(残渣と細胞とを区別するのは困難であり得る)。11)幾つのサブライブラリーを生成するのか(サブライブラリーの数=必要とされるチューブの数)、およびそうしたサブライブラリーの各々が幾つの細胞を有するのかを決定する。12)各サブライブラリーの所望数の細胞を、新しい1.7mLチューブにアリコートする。1×PBSを各チューブ添加して、最終容積を50μLにする。
【0151】
13)50μLの2×溶解緩衝液を各チューブに添加する。14)10μLのプロテイナーゼK(20mg/mL)を各ライセートに添加する。15)200rpmで振盪しながら55℃で2時間インキュベートする。16)停止ポイント(任意選択):ライセートを-80℃で凍結する。
【0152】
VI.緩衝液を調製する。まず、以下のストック溶液を作製する(表9~11)。
【0153】
【表9】
【0154】
【表10】
【0155】
【表11】
【0156】
その後、以下のより小さなアリコートを作製する(RNase阻害剤が添加されている;表12~14):
【0157】
【表12】
【0158】
【表13】
【0159】
【表14】
【0160】
VII. cDNAの精製 注:撹拌ステップは、発泡体1.7mLチューブホルダーを用いて、低設定(2/10)のボルテクサーで実施する。
【0161】
MYONE(商標)C1 DYNABEADS(登録商標)を洗浄する:1)処理する各ライセート毎に、44μLのMYONE(商標)C1 DYNABEADS(登録商標)を1.5mLチューブに添加する(例えば、1ライセート=44μL、2ライセート=88μL、3ライセート=132μLなど)。2)800μLの1×B&WT緩衝液を添加する。3)試料を磁気ラックに設置し、液体が透明になるまで待機する(1~2分間)。4)上清を除去し、ビーズを800μLの1×B&W-T緩衝液に再懸濁する。5)ステップ3~4をさらに2回繰り返して、合計3回洗浄する。6)試料を磁気ラックに設置し、液体が透明になるまで待機する。7)ビーズを100μL(1試料当たり)の2×B&W緩衝液+RIに再懸濁する。
【0162】
ストレプトアビジンに対する試料の結合:1)5μLの100μM PMSFを各試料に添加し、室温で10分間置いておく。2)100μlの再懸濁(resupended)C1ビーズを各チューブに添加する。3)cDNAをC1ビーズに結合させるために、室温で60分間撹拌する。4)試料を磁気ラックに設置し、液体が透明になるまで待機する(1~2分間)。5)上清を除去し、ビーズを250μLの1×B&Wに再懸濁する。6)ビーズを室温で5分間撹拌する。7)ステップ5および6を繰り返す。8)上清を除去し、ビーズを250μLの10mM Tris+Tに再懸濁する。9)ビーズを室温で5分間撹拌する。10)ビーズを氷上の最終洗浄溶液に入れたままにしておく。
【0163】
テンプレートスイッチ。試料数に応じて、以下のミックスを調製する(表15)。
【0164】
【表15】
【0165】
1)試料を磁気ラックに設置し、液体が透明になるまで待機する。2)試料を依然として磁気ラックに付けたまま、上清を除去し、250μLの水で洗浄する(今回はビーズを再懸濁しない)。3)試料を200μlのテンプレートスイッチミックスに再懸濁する。4) 撹拌または回転させながら室温で30分間インキュベートする。5)撹拌または回転させながら(インキュベータを100rpmで振盪する)42℃で90分間インキュベートする。
【0166】
6)潜在的な停止ポイント。停止させる場合、以下を実施する(そうでなければ飛ばして次のセクションに進む):a)試料を磁気ラックに設置し、液体が透明になるまで待機し、b)250μLのTris-Tに再懸濁する。
【0167】
VIII. cDNA増幅。試料数に応じて、以下のPCRミックスを調製する(表16)。
【0168】
【表16】
【0169】
1)試料を磁気ラックに設置し、液体が透明になるまで待機する。2)試料を磁気ラックに当てたまま、250μLの無ヌクレアーゼ水で洗浄する(再懸濁しない)。3)試料を220μLのPCRミックスに再懸濁し、4(四)つの異なるPCRチューブに等しく分配する。
【0170】
4)以下のサーモサイクルプログラムを実行する:a)95℃、3分間;b)98℃、20秒間;c)65℃、45秒間;d)72℃、3分間;e)(b~d)を4回繰り返す(合計5サイクル);およびf)4℃、維持。
【0171】
5)4(四)つの反応物をすべて、単一1.7mLチューブで組み合わせる。反応物を組み合わせる前に、PCRチューブの底部または側面に付着している場合のあるすべてのビーズを確実に再懸濁する。6)試料を磁気ラックに設置し、液体が透明になるまで待機する。7)200μLの上清を、4(四)つの光学グレードqPCRチューブに移す(各チューブ中50μL)。8)2.5μLの20×EVAGREEN(登録商標)を各qPCRチューブに添加する。9)以下のqPCRプログラムを実行する(過剰増幅を防止するために、シグナルが対数期を過ぎ始めたら、試料を確実に取り出すこと):a)95℃、3分間;b)98℃、20秒間;c)67℃、20秒間;d)72℃、3分間;e)シグナルが指数関数的増幅から横ばい状態になるまで(b~d)を繰り返す;f)72℃、5分間;およびg)4℃、維持。
【0172】
10)任意選択:アガロースゲルを流すか、または得られたqPCRをバイオ分析する。cDNAおよび二量体の組合せが存在することになる可能性が高いだろう。
【0173】
SPRIサイズ選択(0.8×)。1)qPCR反応物を単一チューブで組み合わせる。2)プールしたqPCR反応物の180μLを取り出し、新しい1.7mLチューブに入れる。3)144μLのKAPA(商標)ピュアビーズをチューブに添加し、手短にボルテックスして混合する。5(五)分間待機してDNAに結合させる。4)チューブを磁気ラックに設置し、液体が透明になるまで待機する。5)上清を除去する。6)チューブを依然として磁気ラックに付けたまま、750μLの85%エタノールで洗浄する。ビーズを再懸濁しないこと。7)ステップ6を繰り返す。
【0174】
8)エタノールを除去し、ビーズを空気乾燥する(約5分間)。ビーズを過剰に乾燥させて亀裂させないこと。9)各チューブのビーズを20μLの水に再懸濁する。ビーズを水に完全に再懸濁したら、チューブを37℃で10分間インキュベートする。10)チューブを磁気ラックに取り付け、液体が透明になるまで待機する。11)18.5μLの溶出液を新しい光学グレードPCRチューブに移す。12)10μLの溶出液に対してバイオアナライザートレースを実行する。
【0175】
13)サイズ選択後に二量体が存在しない場合、下記の「タグメンテーションおよびILLUMINA(登録商標)アンプリコン生成」セクションへと直接移行する。二量体が依然として存在する場合、ステップ14に進んで、第2の増幅およびサイズ選択ステップを実施する。これは、RNA含量が低い細胞の場合に必要な場合があるが、RNA含量が高い細胞(例えば、HeLa-S3、NIH/3T3など)では不要なはずである。
【0176】
第2のqPCR(任意選択)。14)試料数に応じて、以下のPCRミックスを作製する(表17)。
【0177】
【表17】
【0178】
15)31.5μLのqPCRマスターミックスを、以前のPCR試料を有する各光学PCRチューブに添加する。チューブを軽く手ではじいて混合し、卓上型遠心分離機で手短に遠心して気泡を除去する。16)以下のqPCRプログラムを実行する(過剰増幅を防止するために、シグナルが対数期を過ぎ始めたら、試料を確実に取り出すこと):a)95℃、3分間;b)98℃、20秒間;c)67℃、20秒間;d)72℃、3分間;e)シグナルが指数関数的増幅から横ばい状態になるまで(b~d)を繰り返す;f)72℃、5分間;およびg)4℃、維持。
【0179】
17)アガロースゲルを流すか、または得られたqPCRをバイオ分析する。二量体が依然として存在し得る間は、増幅cDNAが、500bp~2500bpに明白に視認されるはずである(予想サイズ分布は、図19左側を参照)。
【0180】
第2のSPRIサイズ選択(0.8×)。18)qPCR反応物を単一チューブで組み合わせる。19)qPCR反応物の40μLを取り出し、新しい1.7mLチューブに入れる。20)32μLのKAPA(商標)ピュアビーズを各チューブに添加し、手短にボルテックスして混合する。5分間待機してDNAに結合させる。
【0181】
21)チューブを磁気ラックに設置し、液体が透明になるまで待機する。22)上清を除去する。23)チューブを依然として磁気ラックに付けたまま、750μLの85%エタノールで洗浄する。24)ステップ5を繰り返す。25)エタノールを除去し、ビーズを空気乾燥する(約5分間)。ビーズを過剰に乾燥させて亀裂させないこと。26)各チューブのビーズを20μLの水に再懸濁し、5分間待機する。27)チューブを磁気ラックに取り付け、液体が透明になるまで待機する。28)18.5μLの溶出液を1.7mLチューブに移す。29)アガロースゲルを流すか、または得られたqPCRをバイオ分析する。この時点で二量体はほとんど存在しないはずである。二量体が残留している場合、別のラウンドのqPCRを実施し、続いて0.8×SPRIサイズ選択をもう一度行う。
【0182】
IX.タグメンテーションおよびILLUMINA(登録商標)アンプリコン生成。1)増幅したcDNAをQuibitで定量化し、0.12ng/μLに希釈する。2)サーモサイクラーを55℃に予熱する。3)各試料について、600pgの精製cDNAをHOと組み合わせて、総容積を5μlにする。4)各チューブに、10μlのNextera TD緩衝液および5μlのアンプリコンタグメント酵素(Amplicon Tagment enzyme)を添加する(反応の総容積は、ここでは20μlである)。約5回ピペットするこ
とにより混合し、遠沈する。5)55℃で5分間インキュベートする。6)5μlの中和緩衝液を添加する。約5回ピペットすることにより混合し、遠沈する(気泡は異常ではない)。7)室温で5分間インキュベートする。
【0183】
8)各PCRを以下の順序でチューブに添加する:
i)15μlのNextera PCRミックス;ii).8μlのHO;iii)1μlの10μM(N7インデックス付きプライマー、BC_0076~BC_0083の1つ);およびiv)1μlの10μM Nextera(BC_0118)N501オリゴ。9)以下のサーモサイクルプログラムを実行する:i)95℃、30秒間;ii)a)95℃、10秒間;b)55℃、30秒間;およびc)72℃、30秒間を12サイクル;ならびにiii)その後72℃で5分間およびその後常に4℃。
【0184】
10)50μL反応物の40μlを1.7mLチューブに移す。11)28μLのKAPA(商標)ピュアビーズを添加して、0.7×クリーンアップを行う。20μlを溶出する。12)得られた試料をバイオ分析し、配列決定の前にQuibitで定量化する(予想サイズ分布は、図19右側を参照)。
【0185】
X. ILLUMINA(登録商標)配列決定。1)150bpキットで実行されるペアエンド配列決定を使用する。2)リード1を66ntに設定する(転写物配列)。3)リード2を94ntに設定する(細胞特異的バーコードおよびUMI)。4)6ntのリード1インデックスを含めて、サブライブラリーインデックスを準備する。
【0186】
実施例11-氷上での細胞固定および透過処理のための氷上での細胞維持
固有分子インデックス(UMI)は、増幅前に各転写物/cDNAに添加されるランダム分子バーコードである。固有分子インデックスは、コンピューターによるPCR複製物の除外を可能にする。これは、そうした複製物が同じUMI配列を有するため可能になる。したがって、複数のPCR複製物を配列決定したとしても、元の転写物は各々1回だけ計数されることになる。
【0187】
1細胞当たりのUMIの尺度は、1細胞当たり幾つの固有RNA分子を検出することができるかを示す。これは、分子をバーコード化および処理して、次世代配列決定による検出を可能にする効率の程度に直接関連する。この尺度は、一般に、当分野における究極の基準であり、単一細胞RNA配列決定空間に関するほとんどの研究者は、所与量の生配列決定リードで検出される1細胞当たりのUMI数に基づいて、実験がどの程度うまくいくかを決定する(例えば、1細胞当たり50,000個の配列リードの場合、1細胞当たり10,000個のUMI)。
【0188】
実施例11~16の各々について、同じ表(つまり、表18、表19、表20、表21、および表22)内ではすべての条件を同じ飽和レベルに配列決定し、条件にわたって正確な比較を可能にした。各条件は、別の条件と比較して同数の生配列決定リードを有していた。これは、1細胞当たりの検出されたUMIの検出された違いが、配列決定の深さではなく、条件の変化によるものであったことを示していた。
【0189】
他のプロトコールでは(例えば、Rosenberg,ABら、BioRxiv(2017年):105163頁を参照)、ホルムアルデヒド固定を室温で実施する。本明細書では、実験を実施して、固定および透過処理中に細胞を氷上で(例えば、4℃で)維持すると相当な向上があることを示した(表18を参照)。
【0190】
【表18】
【0191】
実施例12-プロテアーゼ阻害剤(PMSF)の添加、およびストレプトアビジンビーズへの直接結合
他のプロトコールでは(例えば、Rosenberg,ABら、BioRxiv(2017年):105163頁を参照)、まず、SPRIビーズクリーンアップを用いて核酸を溶解溶液から単離してから、所望の核酸(5’ビオチンを含む)をストレプトアビジンビーズに結合させる。本明細書では、PMSFをライセートに添加し、その後ストレプトアビジンビーズを直接添加することにより(それにより核酸の最初のSPRI単離を飛ばして次に進む)、1細胞当たりの検出された固有分子の数の向上が見出された(表19を参照)。
【0192】
【表19】
【0193】
実施例13-0.6×対0.8×SPRIクリーンアップ
他のプロトコールでは(例えば、Rosenberg,ABら、BioRxiv(2017年):105163頁を参照)、cDNA増幅後、0.6×SPRIクリーンアップを実施した。cDNA増幅後、SPRIクリーンアップを使用して、短鎖産物(つまり、約200塩基対未満の産物)を除去することができる。本明細書では、0.8:1比のSPRIビーズをPCR産物に添加することにより、1細胞当たりの検出された固有RNA分子が、以前の0.6:1比のSPRI対PCR産物の場合よりも多くなったことが見出された(表20を参照)。
【0194】
【表20】
【0195】
実施例14-ランダム六量体およびポリdT RTプライマーの濃度
他のプロトコールでは(例えば、Rosenberg,ABら、BioRxiv(2017年):105163頁を参照)、ポリdTプライマーのみを逆転写に使用して逆転写を実施する。本明細書では、バーコード化ランダム六量体プライマーを組み合わせること、および濃度を変更することにより、UMI/細胞の著しい増加がもたらされたことが見出された。表21を参照すると、プロトコール、バージョン2.1では、条件番号4(729UMI/細胞)を使用する。引き続き表21を参照すると、本明細書では、条件番号10を使用した(1263UMI/細胞)。このように、特定の濃度のランダム六量体およびポリdT逆転写プライマーを一緒に組み合わせることにより、in situ逆転写の効率が増加する。
【0196】
【表21】
【0197】
実施例15-試料識別子としての第1ラウンドバーコードの使用
バーコード化逆転写プライマーを使用して、cDNA分子で第1ラウンドバーコードを生成した。その後、上記に記載のようにバーコードをライゲーションにより5’末端に付加することにより、こうしたcDNA分子をさらにバーコード化する。
【0198】
概念実証は、Rosenberg,ABら、(2018年)Science、360巻(6385号);176~182頁に記載されている。この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のように、実験は4(四)つの固有の試料を含んでいた。どの細胞がどの試料に属するかは、本質的には、第1のバーコード(RTにより組み込まれた)を観察することにより追跡した。この試料識別は、各ウェルに対応するバーコード配列およびどの試料をどのウェルに入れたかが既知であることを必要とする場合がある。この情報を用いると、第1ラウンドバーコード配列からサンプルIDまでの参照表を作成することができる。
【0199】
図20および21は、試料を多重化するために実験設定を示す。この特定の場合では、4つの試料を96ウェルプレートの48ウェルにわたって多重化した。この同じ理論を拡張すると、最大96試料を単一実験で多重化できることを理解することができる。
【0200】
図22を参照すると、4つの異なる生物学的試料を用いた実験におけるT分布型確率的近傍埋め込み法(t-SNE)を使用したトランスクリプトームの分析が示されている。各点は、1つの個々の細胞に由来するトランスクリプトームを表す。RT(バーコード化RTプライマーを用いた)中に組み込まれたバーコードの同一性を使用して、各トランスクリプトームの試料同一性を決定することができる。
【0201】
実施例16-磁気ビーズに結合したDNA/RNAのテンプレートスイッチのためのPEG組込み
逆転写RNAに付着したビオチン化オリゴ(cDNA/RNA二重鎖)を、ストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズに結合させる。その後、単一の共通アダプター配列をcDNAの3’末端に組み込むことができるように、このcDNA/RNA二重鎖に対してテンプレートスイッチを実施する。10w/v%までのPEG(分子量7000~9000)を、ストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズに結合したcDNA/RNA二重鎖を含むテンプレートスイッチ反応に組み込むことにより、1細胞当たりの転写物検出により測定されるこのステップの効率を向上させることができる(表22)。
【0202】
【表22】
【0203】
実施例18-RNA分子を固有に標識化する例示的な方法
図23のパネルAは、分配-プールバーコード化によるトランスクリプトームの標識化を示す。各分配-プールラウンドでは、固定細胞または核を無作為にウェルに分配することができ、転写物をウェル特異的バーコードで標識化することができる。バーコード化RTプライマーを、第1ラウンドに使用することができる。第2および第3ラウンドバーコードを、ライゲーションによりcDNAに付加することができる。第4のバーコードを、配列決定ライブラリー調製中にPCRによりcDNA分子に付加することができる。最下段のスキームは、最終バーコード化cDNA分子を示す。
【0204】
図23のパネルBは、1,758個の全細胞から調製されたライブラリーによる種混合実験を示す。ヒトUBCは、x軸に沿って水平に伸長し、マウスUBCはy軸に沿って垂直に伸長し、混合種UBCは、ヒトUBCとマウスUBCの間に分布する。推定バーコード衝突頻度は、0.2%であるが、種純度は>99%である。
【0205】
図23のパネルCは、新鮮凍結(-80℃で2週間保管した)細胞および核で実施した混合実験に由来するUMI計数を示す。新鮮細胞のヒトUMI計数中央値:15,365;凍結細胞:15,078;核:12,113;凍結核:13,636。
【0206】
図23のパネルDは、ここで提供された方法により測定した遺伝子発現が、凍結細胞と直ちに処理した細胞との間で高度に相関することを示す(ピアソン-r:0.987)。凍結新鮮細胞を、2つの異なるSPLiT-seq実験で処理した。
【0207】
図24に図示されているように、固定および透過処理した細胞を、ウェル特異的バーコードを有する逆転写プライマーを各々が含むウェルに無作為に分配することができる。in situ逆転写は、ウェル特異的バーコードを付加すると共に、RNAをcDNAに変換する。その後、細胞をプールし、各々が固有のウェル特異的バーコードを含む第2のセットのウェルに再度無作為に分配することができる。こうしたバーコードを、バーコード化逆転写プライマーの5’末端にハイブリダイズおよびライゲーションして、第2ラウ
ンドのバーコード化に付加することができる。細胞をプールして再び一緒にし、その後の分配-ライゲーション-プールラウンドを実施することができる。最後のラウンドのライゲーション後、cDNA分子は、バーコード、固有分子識別子、およびユニバーサルPCRハンドルの細胞特異的組合せを5’末端に含む。ライブラリー調製のPCRステップ中に、第4のバーコード化ラウンドを実施することができる。
【0208】
表23に列挙されているオリゴヌクレオチドを、上記の実施例で使用した。「rG」はRNA塩基であり、「+G」はロックド核酸塩基である。
【0209】
【表23-1】
【0210】
【表23-2】
【0211】
本開示を実施するための本発明者らに知られている最良のモードを含む、本開示のある特定の実施形態が本明細書に記載されている。無論、こうした記載されている実施形態に対する変異は、当業者であれば、上述の説明を読むと明白になるだろう。本出願人らは、
当業者が必要に応じてそのような変異を使用することを予想し、本出願人らは、本開示の種々の実施形態が、本明細書の具体的な記載とは別様に実施されることを意図する。したがって、本開示は、本明細書に添付されている特許請求の範囲に記載されている主題の、準拠法により許容される改変および均等物をすべて含む。さらに、それらのありとあらゆるこれらの変異の上記に記載の要素の任意の組合せは、別様の指定がない限り、またはそうでなければ状況と明らかに矛盾しない限り、本開示により包含される。
【0212】
さらに、本明細書の全体にわたって、多数の参照が特許および印刷刊行物になされている。上記で引用された参考文献および印刷刊行物の各々は、それらの全体が参照により個々に本明細書に組み込まれる。
【0213】
本開示の実施形態は、本開示の原理の例示であることが理解されるべきである。使用することができる他の改変は、本開示の範囲内にある。したがって、例であり、限定ではないが、本開示の代替的構成を、本明細書の教示に従って使用することができる。したがって、本開示は、図示および記載されているものとまったく同じものに限定されない。
【0214】
本明細書で示されている詳細は、例であり、本開示の好ましい実施形態を例示的に考察するためのものに過ぎず、本開示の種々の実施形態の原理および概念的態様の最も有用で容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示されている。
【0215】
上記に記載の実施形態の詳細に対して本開示の根本原理から逸脱せずに多数の変更をなすことができることは、当業者であれば明白だろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ決定されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【配列表】
2023145568000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細胞内のRNA分子を固有に標識化する方法であって、
(a)ステップ(b)の前に第1の複数の細胞を固定および透過処理するステップであって、前記第1の複数の細胞は、氷上または4℃で固定および透過処理されるステップ;
(b)前記第1の複数の細胞内で前記RNA分子を逆転写して、前記第1の複数の細胞内で相補的DNA(cDNA)分子を形成するステップであって、前記RNA分子を逆転写するステップは、プライマーを前記RNA分子にカップリングするステップを含み、前記プライマーは、ポリ(T)配列またはランダム配列の少なくとも1つを含むステップ;
(c)cDNA分子を含む前記第1の複数の細胞を少なくとも2つの一次アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの一次アリコートは、第1の一次アリコートおよび第2の一次アリコートを含むステップ;
(d)一次DNAバーコードを前記少なくとも2つの一次アリコートに提供するステップ;
(e)前記少なくとも2つの一次アリコートの各々の内の前記cDNA分子を、提供された前記一次DNAバーコード37℃で30分間カップリングするステップ;
(f)前記少なくとも2つの一次アリコートを組み合わせるステップ;
(g)組み合わせた前記一次アリコートを少なくとも2つの二次アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの二次アリコートは、第1の二次アリコートおよび第2の二次アリコートを含むステップ;
(h)二次DNAバーコードを前記少なくとも2つの二次アリコートに提供するステップ;
(i)前記少なくとも2つの二次アリコートの各々の内の前記cDNA分子を、提供された前記二次DNAバーコード37℃で30分間カップリングするステップ;
)最終アリコートを組み合わせるステップ;
55℃で2時間、Tris-HCl(pH8.0)、NaCl、EDTAおよびSDSを含む溶解緩衝液を用い、かつ、プロテイナーゼKを用いて前記第1の複数の細胞を溶解して、前記第1の複数の細胞内から前記cDNA分子を放出させて、ライセートを形成するステップ;ならびに
室温で60分間、プロテアーゼ阻害剤としてAEBSFおよび結合剤としてストレプトアビジンビーズを前記ライセートに添加し、前記cDNA分子が前記結合剤に結合するようにするステップ
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(k)の前に、組み合わせた前記最終アリコートを少なくとも2つの最終アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの最終アリコートは、第1の最終アリコートおよび第2の最終アリコートを含むステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記捕捉剤はビオチンを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
)前記結合剤に結合した前記cDNA分子のテンプレートスイッチを実行するステップ;
)前記cDNA分子を増幅して、増幅cDNA分子溶液を形成するステップ;および
)固相可逆的固定化(SPRI)ビーズ溶液を前記増幅cDNA分子溶液に導入するステップであって、SPRIビーズ溶液対増幅cDNA分子溶液の比は0.8:1であるステップ
をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記共通アダプター配列は、テンプレートスイッチを行うことにより、放出された前記cDNA分子の前記3’末端に付加される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)の前記プライマーは、第1の特異的バーコードをさらに含み、前記方法は、
)第2の複数の細胞内でRNA分子を逆転写して、前記第2の複数の細胞内でcDNA分子を形成するステップであって、前記RNA分子を逆転写するステップは、特異的プライマーを第2の複数の細胞からの前記RNA分子にカップリングするステップを含み、前記特異的プライマーは、第2の特異的バーコードと、ポリ(T)配列またはランダム配列の少なくとも1つとを含み、前記第1の特異的バーコードは、前記第1の複数の細胞に由来する前記cDNA分子を、前記第2の複数の細胞に由来する前記cDNA分子と比較して識別することができるように、前記第2の特異的バーコードとは異なるステップ;
)cDNA分子を含む前記第2の複数の細胞を少なくとも2つの一次アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの一次アリコートは、第1の一次アリコートおよび第2の一次アリコートを含むステップ;
)一次核酸タグを前記少なくとも2つの一次アリコートに提供するステップであって、前記第1の一次アリコートに提供された前記一次核酸タグは、前記第2の一次アリコートに提供された前記一次核酸タグとは異なるステップ;
)前記少なくとも2つの一次アリコートの各々の内の前記cDNA分子を、提供された前記一次核酸タグとカップリングするステップ;
)前記少なくとも2つの一次アリコートを組み合わせるステップ;
)組み合わせた前記一次アリコートを少なくとも2つの二次アリコートに分割するステップであって、前記少なくとも2つの二次アリコートは、第1の二次アリコートおよび第2の二次アリコートを含むステップ;
)二次核酸タグを前記少なくとも2つの二次アリコートに提供するステップであって、前記第1の二次アリコートに提供された前記二次核酸タグは、前記第2の二次アリコートに提供された前記二次核酸タグとは異なるステップ;ならびに
)前記少なくとも2つの二次アリコートの各々の内の前記cDNA分子を、提供された前記二次核酸タグとカップリングするステッ
さらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸タグの各々は、
3’末端および5’末端を含むバーコード配列、ならびに
前記バーコード配列の前記3’末端および前記5’末端にそれぞれ隣接する3’ハイブリダイゼーション配列および5’ハイブリダイゼーション配列
を含む第1の鎖;ならびに
前記5’ハイブリダイゼーション配列および前記アダプター配列の少なくとも1つに相補的な第1の部分、ならびに
前記3’ハイブリダイゼーション配列に相補的な第2の部分
を含む第2の鎖
を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記cDNA分子に結合している前記核酸タグの少なくとも2つをライゲーションするステップ
をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ライゲーションは、前記第1の複数の細胞内で実施される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
放出された前記cDNA分子に結合している前記核酸タグの少なくとも2つをライゲーションするステップ
をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
単一細胞に由来する、前記核酸タグに結合したcDNA分子の大部分は、同じ一連の結合した核酸タグを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の複数の細胞は、哺乳動物細胞である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【外国語明細書】