(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145597
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】RNAを編集するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20231003BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231003BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20231003BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231003BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20231003BHJP
A61K 48/00 20060101ALN20231003BHJP
A61K 38/46 20060101ALN20231003BHJP
A61K 31/7105 20060101ALN20231003BHJP
A61P 25/00 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/11 Z
C12N5/10
C12N15/55
A61K48/00
A61K38/46
A61K31/7105
A61P25/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023121336
(22)【出願日】2023-07-26
(62)【分割の表示】P 2020519046の分割
【原出願日】2018-10-09
(31)【優先権主張番号】62/569,376
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512208051
【氏名又は名称】オレゴン ヘルス アンド サイエンス ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】マンデル,ゲイル
(72)【発明者】
【氏名】アデルマン,ジョン・ピー
(72)【発明者】
【氏名】シナモン,ジョン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】細胞内、特に細胞の核内の内因性RNAの配列を編集する方法を提供する。
【解決手段】細胞内の内因性RNAの標的配列を編集する方法であって、a)RNA結合ドメインに連結されたRNA編集酵素を含む融合タンパク質をコードする核酸分子、およびb)ガイドRNAをコードする核酸分子を、前記細胞に送達するステップを含み、前記融合タンパク質は、核局在化シグナルを含み、前記ガイドRNAは、前記RNA結合ドメインによって特異的に認識される配列を含み、前記ガイドRNAは、前記内因性RNAの標的配列と特異的にハイブリダイズし、編集されるヌクレオチドでミスマッチを含む、方法である。
【選択図】
図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内の内因性RNAの標的配列を編集する方法であって、
a)RNA結合ドメインに連結されたRNA編集酵素を含む融合タンパク質をコードす
る核酸分子、および
b)ガイドRNAをコードする核酸分子
を、前記細胞に送達するステップを含み、
前記融合タンパク質は、核局在化シグナルを含み、
前記ガイドRNAは、前記RNA結合ドメインによって特異的に認識される配列を含み
、
前記ガイドRNAは、前記内因性RNAの標的配列と特異的にハイブリダイズし、編集
されるヌクレオチドでミスマッチを含む、方法。
【請求項2】
前記内因性RNAが前記細胞の核内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記RNA編集酵素がデアミナーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記RNA編集酵素が、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)である
、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ADARがADAR1、ADAR2、これらの断片、およびこれらの変異体からな
る群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ADARが、配列番号55との少なくとも90%の同一性を含む、請求項5に記載
の方法。
【請求項7】
前記RNA結合ドメインがλNペプチドまたはその変異体である、請求項1から6のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記RNA結合ドメインが、配列番号46との少なくとも90%の同一性を含む、請求
項7に記載の方法。
【請求項9】
前記RNA結合ドメインによって特異的に認識される前記配列がBoxB配列である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記内因性RNAが中枢神経系細胞で発現されるRNAである、請求項1から9のいず
れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記内因性RNAがメチルCpG結合タンパク質2(MECP2)RNAである、請求
項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ガイドRNAが、編集されるヌクレオチドの上流または下流に1つまたは複数のミ
スマッチをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記核局在化シグナルが、SV40ラージT抗原核局在化シグナルまたはその変異体で
ある、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記核局在化シグナルが、配列番号47または1、2もしくは3つの置換、付加もしく
は欠失を有する配列番号47を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記核局在化シグナルがSV40ラージT抗原核局在化シグナルであり、前記RNA結
合ドメインがλNペプチドであり、前記RNA編集酵素がRNAに作用するアデノシンデ
アミナーゼ(ADAR)であり、前記RNA結合ドメインによって特異的に認識される前
記配列がBoxB配列である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
a)およびb)の前記核酸分子が単一ベクター内に含まれる、請求項1から15のいず
れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)である、請求項17に記載の方
法。
【請求項19】
細胞内の内因性RNAの標的配列を編集する方法であって、ガイドRNAをコードする
核酸分子を前記細胞に送達するステップを含み、
前記ガイドRNAは、RNAに作用する内因性ヒトアデノシンデアミナーゼ(ADAR
)によって特異的に認識される配列を含み、
前記ガイドRNAは、前記内因性RNAの標的配列と特異的にハイブリダイズし、編集
されるヌクレオチドでミスマッチを含む、方法。
【請求項20】
前記内因性RNAが前記細胞の核内にある、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ADARがADAR1またはADAR2である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ADARが、配列番号55との少なくとも90%の同一性を含む、請求項21に記
載の方法。
【請求項23】
前記内因性RNAがメチルCpG結合タンパク質2(MECP2)RNAである、請求
項19に記載の方法。
【請求項24】
前記ガイドRNAが、編集されるヌクレオチドの上流または下流に1つまたは複数のミ
スマッチをさらに含む、請求項19から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記内因性ADARが前記ガイドRNAを認識する、請求項19から24のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項26】
前記内因性ADARが、前記内因性RNAのヌクレオチドの塩基を脱アミノ化する、請
求項19から25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
前記標的配列の前記編集が、前記標的配列によってコードされるタンパク質のレベルお
よび/または機能を変化させる、請求項19から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記核酸分子がウイルスベクター内に含まれる、請求項19から27のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項29】
前記ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)である、請求項28に記載の方
法。
【請求項30】
対象の中枢神経系の遺伝性疾患を処置、抑制および/または予防する方法であって、
a)RNA結合ドメインに連結されたRNA編集酵素を含む融合タンパク質をコードす
る核酸分子、および
b)ガイドRNAをコードする核酸分子
を、前記対象に投与するステップを含み、
前記融合タンパク質は、核局在化シグナルを含み、
前記ガイドRNAは、前記RNA結合ドメインによって特異的に認識される配列を含み
、
前記RNA編集酵素は、前記中枢神経系の遺伝性疾患に関連するミスマッチ突然変異を
修正する、方法。
【請求項31】
前記中枢神経系の遺伝性疾患がレット症候群である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ガイドRNAがメチルCpG結合タンパク質2(MECP2)RNAと特異的にハ
イブリダイズし、前記内因性MECP2 RNAの突然変異ヌクレオチドでミスマッチを
含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記内因性RNAが前記細胞の核内にある、請求項30から32のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項34】
前記RNA編集酵素が、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)である
、請求項30から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ADARがADAR1、ADAR2およびこれらの断片または変異体から選択され
る、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ADARが、配列番号55との少なくとも90%の同一性を含む、請求項35に記
載の方法。
【請求項37】
前記RNA結合ドメインがλNペプチドまたはその変異体である、請求項30から36
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記RNA結合ドメインが、配列番号46との少なくとも90%の同一性を含む、請求
項37に記載の方法。
【請求項39】
前記RNA結合ドメインによって特異的に認識される前記配列がBoxB配列である、
請求項30から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記核局在化シグナルが、SV40ラージT抗原核局在化シグナルまたはその変異体で
ある、請求項30から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記核局在化シグナルが、配列番号47または1、2もしくは3つの置換、付加もしく
は欠失を有する配列番号47を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記核局在化シグナルがSV40ラージT抗原核局在化シグナルであり、前記RNA結
合ドメインがλNペプチドであり、前記RNA編集酵素がRNAに作用するアデノシンデ
アミナーゼ(ADAR)であり、前記RNA結合ドメインによって特異的に認識される前
記配列がBoxB配列である、請求項30に記載の方法。
【請求項43】
a)およびb)の前記核酸分子が単一ベクター内に含まれる、請求項30から42のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)である、請求項44に記載の方
法。
【請求項46】
対象の中枢神経系の遺伝性疾患を処置、抑制および/または予防する方法であって、ガ
イドRNAをコードする核酸分子を前記対象に投与するステップを含み、前記ガイドRN
Aは、RNAに作用する内因性ヒトアデノシンデアミナーゼ(ADAR)によって特異的
に認識される配列を含む、方法。
【請求項47】
前記中枢神経系の遺伝性疾患がレット症候群である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ガイドRNAがメチルCpG結合タンパク質2(MECP2)RNAと特異的にハ
イブリダイズし、前記内因性MECP2 RNAの突然変異ヌクレオチドでミスマッチを
含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記内因性RNAが前記細胞の核内にある、請求項46から48のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項50】
前記ADARがADAR1もしくはADAR2またはこれらの変異体である、請求項4
6から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記ADARが、配列番号55との少なくとも90%の同一性を含む、請求項50に記
載の方法。
【請求項52】
内因性ADARが前記ガイドRNAを認識する、請求項46から51のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項53】
内因性ADARが、前記内因性RNAのヌクレオチドの塩基を脱アミノ化する、請求項
46から52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
前記標的配列の前記編集が、前記標的配列によってコードされるタンパク質のレベルお
よび/または機能を変化させる、請求項46から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記核酸分子がウイルスベクター内に含まれる、請求項46から54のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項56】
前記ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)である、請求項55に記載の方
法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年10月6日に出願された米国仮特許出願第62/569376号
に対する米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張するものである。前記出願は
、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号NS087726の下で政府
支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
これと共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、全体が参照により本明細書
に組み込まれる:配列表のコンピュータ読取可能な形式のコピー(ファイル名:SEQL
IST.txt;データ記録日:2018年10月9日;ファイルサイズ:44.6KB
)。
【0004】
本発明は、核酸編集の分野に関する。具体的には、RNA、特に核内の内因性RNAを
治療的に編集するための組成物および方法が開示される。
【背景技術】
【0005】
本発明が属する分野の先行技術を説明するために、本明細書全体を通していくつかの刊
行物および特許文書が引用されている。これらの引用の各々は、完全に示されているかの
ように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
遺伝物質を編集または改変する戦略、例えば、種々の遺伝子編集技術で進歩が見られる
。しかしながら、特に神経系において、疾患の原因となる突然変異を修正する方法論の必
要性が残っている。
【0007】
レット症候群は、転写因子メチルCpG結合タンパク質2(MECP2)の散発的突然
変異によって引き起こされる神経発達障害である(Amir,et al.(1999)
Nat.Genet.,23:185-188)。MECP2はX染色体上に位置する。
哺乳動物における遺伝子量補償(dosage compensation)機序のため
、レット症候群に罹患した女性はモザイクであり、野生型細胞と突然変異型細胞との間で
およそ50:50に分かれる。MECP2突然変異を有する女性は、発話および意図的な
手の動きなどの初期の発達上のマイルストーンの後退を経験し、次いで、呼吸を含む重度
の運動異常を獲得し、平均で40歳までに死亡する(Neul,et al.,(201
0)Ann.Neurol.,68:944-950;Percy,et al.(20
10)Ann.Neurol.,68:951-955)。MECP2に突然変異を有し
、X染色体が1つしかない男性は、なおさらに深刻な疾患を発症し、通常2歳未満で死亡
する(Schule,et al.(2008)Clin.Genet.,74:116
-126)。レット症候群の治療法はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Amir,et al.(1999)Nat.Genet.,23:185-188
【非特許文献2】Neul,et al.,(2010)Ann.Neurol.,68:944-950
【非特許文献3】Percy,et al.(2010)Ann.Neurol.,68:951-955
【非特許文献4】Schule,et al.(2008)Clin.Genet.,74:116-126
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、細胞内、特に細胞の核内の内因性RNAの配列を編集する方
法が提供される。一定の実施形態では、本方法が、i)核局在化シグナルと、RNA結合
ドメインに連結されたRNA編集酵素とを含む融合タンパク質をコードする核酸分子、お
よびii)1つまたは複数のガイドRNAをコードする核酸分子を細胞に送達するステッ
プを含む。ガイドRNAは、RNA結合ドメインによって特異的に認識される配列を含む
。ガイドRNAはまた、内因性RNA中の標的配列と特異的にハイブリダイズし、編集さ
れるヌクレオチドでミスマッチを含む。一定の実施形態では、RNA編集酵素が、RNA
に作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)、例えばADRAR1またはADAR2
である。一定の実施形態では、RNA結合ドメインがλNペプチドであり、RNA結合ド
メインによって特異的に認識される配列がBoxB配列である。一定の実施形態では、内
因性RNAが、メチルCpG結合タンパク質2(MECP2)RNAである。一定の実施
形態では、核局在化シグナルが、SV40ラージT抗原核局在化シグナルである。これら
の方法の核酸分子は、ウイルスベクター(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクタ
ー)などの単一のベクター内に含まれていてもよい。
【0010】
本発明の別の態様によると、細胞内、特に細胞の核内の内因性RNAの配列を編集する
追加の方法が提供される。一定の実施形態では、本方法が、1つまたは複数のガイドRN
Aをコードする核酸分子を細胞に送達するステップを含み、ガイドRNAが、RNAに作
用するヒトアデノシンデアミナーゼ(ADAR)などの内因性デアミナーゼによって特異
的に認識される(1又は複数の)配列および/または構造を含む。ガイドRNAはまた、
内因性RNA中の標的配列と特異的にハイブリダイズし、編集されるヌクレオチドでミス
マッチを含む。一定の実施形態では、ADARがADRA1またはADAR2である。一
定の実施形態では、内因性RNAが、メチルCpG結合タンパク質2(MECP2)RN
Aである。一定の実施形態では、核酸分子が、ウイルスベクター(例えば、AAVベクタ
ー)内に含まれる。
【0011】
本発明の別の態様によると、細胞内、特に細胞の核内の内因性RNAの配列を編集する
追加の方法が提供される。一定の実施形態では、本方法が、ガイドRNAをコードする核
酸分子(例えば、AAV内)を細胞に送達するステップを含み、ガイドRNAが、RNA
に作用する内因性ヒトアデノシンデアミナーゼ(ADAR)によって特異的に認識される
(1又は複数の)配列および/または構造を含む。したがって、種々の態様では、本編集
する方法を、組換えRNA編集酵素の非存在下で(例えば、組換えADARの非存在下で
)行うことができる。よって、実施形態では、本方法が、本明細書に記載される編集に影
響を及ぼすための内因性ADAR活性を請け負う。
【0012】
本発明の別の態様によると、対象のレット症候群を処置、抑制および/または予防する
方法が提供される。一定の実施形態では、本方法が、本発明のRNA編集法を使用するス
テップを含む。例えば、本方法は、RNA結合ドメインに連結されたRNA編集酵素を含
む融合タンパク質をコードする核酸分子およびガイドRNAをコードする核酸分子を対象
に投与するステップを含み得、融合タンパク質は核局在化シグナルを含む。一定の実施形
態では、本方法が、ガイドRNAをコードする核酸分子を対象に投与するステップを含み
、ガイドRNAが、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)などの内因性
ヒトデアミナーゼによって特異的に認識される(1又は複数の)配列および/または(1
又は複数の)構造を含み、ガイドRNAがメチルCpG結合タンパク質2(MECP2)
RNAと特異的にハイブリダイズし、内因性MECP2 RNAの突然変異ヌクレオチド
でミスマッチを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】編集効率が配列依存性であることを示している。
図1Aは、MeCP2におけるメチルDNA結合ドメイン(MBD)、転写リプレッサードメイン(TRD)、およびNCoR相互作用ドメイン(NID)に対する3つのG>A突然変異の位置を示す概略図である。
図1Bは、部位特異的RNA編集のコア構成要素の概略図である。ハイブリッドエディターゼ(Editase)は、バクテリオファージλ(λN)由来のRNA結合ドメインと、RNA 2に作用するヒトアデノシンデアミナーゼ(hADAR2)の触媒ドメイン(デアミナーゼドメイン)を含む。核局在化シグナル(NLS)の3つのコピーと、ヒトインフルエンザ血球凝集素(HA)エピトープタグの2つのコピーも含まれているが、示されていない。ガイドRNAはMecp2 mRNAに相補的で、λN RNA結合ドメインによって認識されるヘアピン(ステムループ)を含む。標的Aに対して、編集効率を高めるためにガイドにCが導入されている。
図1Cは、ガイドを用いた(上)または用いない(下)、ガイドエディターゼのN2A神経芽細胞腫細胞へのトランスフェクション後のMecp2
W104X cDNAの配列決定クロマトグラムである。
図1Dは、Mecp2 cDNAの直接配列決定法を使用して定量化された、
図1Cのデータを含む、AからIへの編集%(平均±SD;n=3)を示す図である。薄灰色バー、エディターゼのみでトランスフェクトされた細胞;濃灰色バー、エディターゼおよびガイドでトランスフェクトされた細胞。***P<0.001、****P<0.0001、ボンフェローニ事後検定を使用した一元配置分散分析。ns:有意でない。
【
図2】Mecp2 mRNAに対する部位特異的A-Gミスマッチのガイドを使用して、より効率的なエディターゼによるオフターゲット編集を減少させることができることを示している。
図2Aは、ガイドRNAおよびエディターゼ
WTまたはエディターゼ
E
488QのN2A細胞へのトランスフェクション後のR106Q(平均±SD、n=3)部位でのAからIへの編集%(平均±SD;n=3、
図2Bのデータを含む)を示す図である。
図2Bは、エディターゼ
WT(上)またはエディターゼ
E488Q(下)で編集したMecp2
R106Q cDNAの代表的なクロマトグラムである。
図2Cは、2つの異なるガイドRNAに対するMecp2 mRNAを示す図である。標準ガイド(上)は、編集を増強するために、標的A(太字で強調)でA-Cミスマッチ(R106Q)を含む。改変ガイド(下)は、この部位での編集を阻害するためにアステリスクでマークされたオフターゲットAでA-Gミスマッチを含む。提供される標的配列は、配列番号52である。
図2Dは、N2A細胞をエディターゼ
E488Qおよび標的部位でのみミスマッチを含むガイド(上)またはオンターゲットA-Cミスマッチとオフターゲット部位でのA-Gミスマッチの両方を含む改変ガイド(下)でトランスフェクションした後のMecp2 cDNAのクロマトグラムである。
図2Eは、A-Gミスマッチを含むガイドにより、オフターゲット編集が大幅に減少する(平均±SD;n=3、
図2Dのデータを含む)ことを示す図である。
図2Fは、オフターゲットA-Gミスマッチの存在は、R106Q部位での編集には影響を及ぼさない(平均±SD;n=3、
図2Dのデータを含む)。薄灰色バー、エディターゼのみでトランスフェクトされた細胞;濃灰色バー、エディターゼおよびガイドでトランスフェクトされた細胞;黒色バー、エディターゼおよびA-Gミスマッチを含むガイドでトランスフェクトされた細胞。**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001、ボンフェローニ事後検定を使用した一元配置分散分析。ns:有意でない。
【
図3】初代ニューロンのAAV1/2形質導入後の内因性MeCP2 mRNAの配列分析を示している。
図3Aは、AAV1/2ウイルスによる形質導入の7日後、Mecp2
R106Q/y海馬ニューロン(DIV14)から単離されたcDNAの配列分析による編集の定量化(平均±SD、n=3)を示す図である。+ガイドは、ニューロンのシナプシンIプロモーターの制御下にあるエディターゼおよびそれぞれU6プロモーターの制御下で発現される6コピーのガイドを含むAAV1/2を指す。ガイドは、R106Qの標的AでのCミスマッチおよびオフターゲットA T105TでのGミスマッチを含む。対照ウイルスは、シナプシンIプロモーターの制御下でエディターゼをコードするが、いずれのガイド配列も欠く(-ガイド)。****対応のない両側t検定によりP<0.0001。
図3Bは、ガイドRNA領域に対するMecp2 mRNA(配列番号52)および一次アミノ酸配列(配列番号53)を示す図である。標的Aは太字で示され、アステリスクはオフターゲット編集されたA残基を示す。ガイドのヘアピンは、λNペプチドによって認識されるBoxB配列の位置を表す。グラフは、Mecp2 mRNA内のオフターゲット部位での編集の定量化を提供する(平均±SD;n=3)。残基N126Sがガイド領域の外にある。
【
図4】部位特異的RNA編集がMeCP2タンパク質レベルを上昇させ、それによって編集後の内因性疾患の原因となるタンパク質の機能的回復を示していることを示す図である。エディターゼのみまたはエディターゼとガイドを発現しているAAV1/2で7日前に形質導入されたMecp2
R106Q/yまたは野生型(WT、Mecp2
+/y)同胞海馬ニューロン(DIV14)からの全細胞可溶化物の代表的なウエスタンブロットが提供される。ガイドは、R106Q部位でのCミスマッチおよびオフターゲットA、T105TでのGミスマッチを含む。グラフは、各条件がβ-アクチンに正規化されたウエスタンブロットの定量化(平均±SD、n=3)を提供する。薄灰色バー、エディターゼのみで形質導入された細胞。濃灰色バー、エディターゼおよびガイドで形質導入された細胞。***対応のない両側t検定によりP<0.001。
【
図5】部位特異的RNA編集が、MeCP2がヘテロクロマチンに結合する能力を回復することを示しており、編集後の内因性タンパク質の機能の回復を示している。エディターゼ(HA)およびMeCP2について免疫標識された海馬ニューロン(DIV14)の代表的な共焦点画像を示している。DAPI染色は、核の輪郭を描き、ヘテロクロマチン構造(heterochromatic foci)を示す。挿入図は、隣接パネルでより高い倍率とより高いゲインで撮像された細胞の境界を定める。
図5Aは、野生型(Mecp2
+/y)ニューロン培養物を示す図である。
図5Bは、エディターゼのみ(ガイドなし)を発現するAAV1/2ウイルスが形質導入されたMecp2
R106Q/yニューロン培養物を示す図である。これらのニューロンは、ヘテロクロマチン中にMeCP2濃縮を決して示さなかった。
図5Cは、エディターゼおよび標的AでCミスマッチを含むガイドを発現するAAV1/2ウイルスが形質導入されたMecp2
R106Q/yニューロン培養物を示す図である。
図5Dは、エディターゼおよび標的AでCミスマッチを含むガイドを発現するAAV1/2ウイルスが形質導入されたMecp2
R106Q/
yニューロン培養物を示す図である。
図5D中、+および-は、それぞれ、ヘテロクロマチン中にMeCP2濃縮が存在するおよび存在しない核を示している。スケールバー、10μm。
図5E~
図5G:各ヒストグラムは、3つのスライド(平均±SD)の各々の3つのフィールドからの細胞の定量化(エディターゼのみ、n=134;エディターゼおよびガイド、n=137)を表す。
図5Eは、非感染細胞からのシグナルを閾値処理した後、HA核染色によって同定されたエディターゼ+細胞の百分率を示す図である。百分率は、DAPI+細胞の総数に対するものである。
図5Fは、ヘテロクロマチン(構造)中にMeCP2濃縮を有するエディターゼ+細胞の百分率を示す図である。
図5Gは、ヘテロクロマチン(構造)中にMeCP2濃縮を有する全ての細胞の百分率を示す図である。ns:有意でない。
【
図6】エディターゼのみまたはエディターゼとガイドRNAをコードするAAVベクターで処置された野生型マウスまたはMecp2
317G>A(Mecp2
R106Q)マウスの脳の歯状ニューロンヘテロクロマチンにおけるMeCP2強度のグラフである。
【
図7】種々のガイドRNAの概略図と、処置していない、または2つのBoxBステムループを有するガイドRNA、GluA2からのR/G結合部位を含むガイドRNAもしくは内部ループを有するガイドRNAで処置したHEK細胞におけるMecp2
31
7G>A(Mecp2
R106Q)の編集%のグラフである。HEK細胞はまた、CMVプロモーターの制御下で完全長天然ADAR2 cDNAでトランスフェクトされた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、一部は、部位特異的RNA編集を利用して、RNAレベル(例えば、mRN
A)で、疾患の原因となる点突然変異、例えば、レット症候群の根底にあるメチルCpG
結合タンパク質2(MECP2)DNA結合ドメイン遺伝子のグアノシンからアデノシン
への(G>A)突然変異を修復することができるという驚くべき発見に基づく。重要なこ
とに、この部位特異的RNA編集は、とりわけ、内因性RNAを修復し、タンパク質機能
を回復するのに有用である。したがって、実施形態では、本発明は、部位特異的RNA編
集のための組成物および方法に関する。
【0015】
生殖系列または神経細胞に限局してヒトでレット症候群を引き起こすMecp2の突然
変異を有するよう操作されたマウスは、レット症候群の患者と同様の成長異常、不安およ
び運動障害を示す(Guy,et al.(2001)Nat.Genet.,27:3
22-326;Lioy,et al.(2011)Nature 475:497-5
00;Chen,et al.(2001)Nat.Genet.,27:327-33
1)。マウスでの研究は、最も強いレット症候群表現型が神経学的であり、ニューロンと
グリアの両方に影響を及ぼすことを示している(Lioy,et al.(2011)N
ature 475:497-500;Luikenhuis,et al.(2004
)Proc.Natl.Acad.Sci.,101:6033-6038)が、多くの
他の組織も影響を受ける可能性がある(Ross,et al.(2016)Hum.M
ol.Genet.,25:4389-4404)。ヒトと同様に、雄レットマウスは雌
マウスよりも重症である。例えば、雌レットマウスは正常な寿命を生きるが、雄マウスは
生後3~4か月で死亡する(Guy,et al.(2001)Nat.Genet.,
27:322-326;Chen,et al.(2001)Nat.Genet.,2
7:327-331)。細胞レベルでは、レットの雄および雌マウスの神経細胞は、細胞
体、核が小さく、プロセスの複雑さが減少しており(Belichenko,et al
.(2009)Neurobiol.Dis.,34:71-77;Belichenk
o,et al.(2009)J.Comp.Neurol.,514:240-258
;Fukuda,et al.(2005)J.Neuropathol.Exp.Ne
urol.,64:537-544;Kishi,et al.(2004)Mol.C
ell.Neurosci.,27:306-321;Robinson,et al.
(2012)Brain 135:2699-2710;Tropea,et al.(
2009)Proc.Natl.Acad.Sci.,106:2029-2034;S
tuss,et al.(2012)PLoS One 7:e31896)、罹患した
ヒト細胞を思い出させる(Armstrong,et al.(1995)J.Neur
opathol.Exp.Neurol.,54:195-201;Li,et al.
(2013)Cell Stem Cell 13:446-458;Belichen
ko,et al.(1994)Neuroreport.,5:1509-1513;
Bauman,et al.(1995)Neurology 45:1581-158
6)。重要なことに、条件付きCreリコンビナーゼ(Guy,et al.(2007
)Science 315:1143-1147)または遺伝子療法アプローチ(Sin
nett,et al.(2017)Mol.Ther.Methods Clin.D
ev.,5:106-115;Gadalla,et al.(2017)Mol.Th
er.Methods Clin.Dev.,5:180-190;Garg,et a
l.(2013)J.Neurosci.,33:13612-13620;Gadal
la,et al.(2013)Mol.Ther.,21:18-30)を介したMe
cp2ヌルマウスでのMeCP2の回復により、疾患の後期でさえ、レット様症候群およ
び細胞欠損の多くが逆行する。表現型の逆転は、ヒトで、レット症候群を遺伝子置換戦略
で処置することができることを示している(Robinson,et al.(2012
)Brain 135:2699-2710;Sinnett,et al.(2017
)Mol.Ther.Methods Clin.Dev.,5:106-115;Ga
dalla,et al.(2017)Mol.Ther.Methods Clin.
Dev.,5:180-190;Garg,et al.(2013)J.Neuros
ci.,33:13612-13620;Gadalla,et al.(2013)M
ol.Ther.,21:18-30)。しかしながら、ヒトでのMECP2遺伝子にか
かる重複は、MeCP2過剰発現および重度の神経障害をもたらす(Van Esch,
et al.(2005)Am.J.Hum.Genet.,77:442-453)。
さらに、マウスのMeCP2は様々な神経細胞型で様々なレベルで発現され、マウスでの
MeCP2機能の喪失は遺伝子発現の細胞特異的変化をもたらす(Skene,et a
l.(2010)Mol.Cell.,37:457-468;Ballas,et a
l.(2009)Nat.Neurosci.,12:311-317;Shahbaz
ian,et al.(2002)Hum.Mol.Genet.,11:115-12
4;Sugino,et al.(2014)J.Neurosci.,34:1287
7-12883;Linhoff,et al.(2015)Cell 163:246
-255)。これらの所見は、神経系の多様な細胞型にわたって正常なMeCP2レベル
および細胞生理学を回復するために微調整しなければならないMECP2遺伝子置換の課
題を強調している。
【0016】
本明細書では、RNAが正常な転写産物の環境で修復されるので、RNAのレベルでM
ECP2突然変異を修復すると、MECP2過剰発現と細胞型特異的調節の両方の問題が
、回避されることが示されている。レット症候群の根底にあるグアノシンからアデノシン
への(G>A)突然変異(Fyfe,et al.(2003)J.Child.Neu
rol.,18:709-713)を標的とした。天然酵素のファミリーであるRNAに
作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)は、内因性mRNAにおいてAをイノシン
(I)に加水分解的に脱アミノ化する(Bass,et al.(1988)Cell
55:1089-1098;Bass,et al.(1987)Cell 48:60
7-613;Melcher,et al.(1996)Nature 379:460
-464;O’Connell,et al.(1998)Methods 15:51
-62;Kim,et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.,
91:11457-11461)。イノシン塩基はシトシン(C)と対になり、リボソー
ムによってGとして翻訳される(Basilio,et al.(1962)Proc.
Natl.Acad.Sci.,48:613-616)。ADARファミリーのメンバ
ーの1つであるADAR2は、脳で高レベルに発現され、転写後に、一次転写産物の脱ア
ミノ化を通して、イオンチャネル透過性などのタンパク質機能を変化させる(Bhall
a,et al.(2004)Nat.Struct.Mol.Biol.,11:95
0-956;Sommer,et al.(1991)Cell 67:11-19;B
urns,et al.(1997)Nature 387:303-308)。ADA
R2による自然編集は、その触媒活性に加えて、編集のために標的Aをエクソンに適切に
配置するプレmRNAのイントロンによって媒介される二本鎖RNA構造の認識が必要で
ある(Bhalla,et al.(2004)Nat.Struct.Mol.Bio
l.,11:950-956;Dawson,et al.(2004)J.Biol.
Chem.,279:4941-4951;Higuchi,et al.(1993)
Cell 75:1361-1370;Maas,et al.(1996)J.Bio
l.Chem.,271:12221-12226;Lomeli,et al.(19
94)Science 266:1709-1713;Yang,et al.(199
7)Proc.Natl.Acad.Sci.,94:4354-4359)。ヒトAD
AR2(hADAR2)のクローニング触媒ドメインは、通常終止コドンで、異種的に発
現されるmRNAのG>A修復を標的とするために、種々の構成で、利用されてきた(H
answillemenke,et al.(2015)J.Am.Chem.Soc.
,137:15875-15881;Vogel,et al.(2014)ChemM
edChem 9:2021-2025;Vogel,et al.(2014)Ang
ew Chem.Int.Ed.Engl.,53:6267-6271;Schnei
der,et al.(2014)Nucleic Acids Res.,42:e8
7;Montiel-Gonzalez,et al.(2016)Nucleic A
cids Res.,44:e157;Montiel-Gonzalez,et al
.(2013)Proc.Natl.Acad.Sci.,110:18285-182
90)。1つのアプローチでは、ADAR2の天然RNA結合ドメインが、ナノモル濃度
の親和性で特異的短RNAヘアピンに結合する(Austin,et al.(2002
)J.Am.Chem.Soc.,124:10966-10967)バクテリオファー
ジラムダ(λN;Montiel-Gonzalez,et al.(2013)Pro
c.Natl.Acad.Sci.,110:18285-18290)由来のRNA結
合ペプチドで置き換えられた。次いで、異種mRNAの標的編集が、λN認識ステムルー
プおよび標的mRNAに相補的な領域を含むRNAガイドと共にハイブリッドADAR2
タンパク質を発現させることによって達成される(Montiel-Gonzalez,
et al.(2016)Nucleic Acids Res.,44:e157;M
ontiel-Gonzalez,et al.(2013)Proc.Natl.Ac
ad.Sci.,110:18285-18290)。
【0017】
以前は、内因性RNAもmRNAも、特に機能的タンパク質を生成するように修復され
ることに関して、部位特異的RNA編集によって修復されてこなかった。しかしながら、
内因性Mecp2におけるG>A突然変異に対するこのアプローチが、本明細書で初めて
実証されている。Mecp2の突然変異は、十分確立された機能をコードするドメインに
ある。さらに、修復の忠実度を、配列分析、ウエスタンブロッティング、および単一細胞
レベルでの免疫化学によって監視することができる。ここでは、内因性Mecp2転写産
物内のG>A突然変異を有効に修復するために、組換えhADAR2-λNタンパク質(
本明細書ではエディターゼとも呼ばれる)を使用した。トランスフェクトマウス神経芽細
胞腫(N2A)細胞でのMecp2編集のパラメータを決定した後、アデノ随伴ウイルス
(AAV)を使用して、DNA結合ドメインに重度のヒトG>A突然変異を含むレット症
候群マウスモデルからの初代ニューロン培養を形質導入した(MeCP2317G>A;
MeCP2R106Q)。この突然変異により、MeCP2タンパク質レベルが低下し、
ヘテロクロマチンへの結合が大幅に減少する。突然変異RNAの編集効率を最初にニュー
ロンで定量化し、次いで、編集によってMeCP2タンパク質レベルが救済され、ニュー
ロン、グリアおよび非神経細胞型を含む細胞内のMeCP2の重要な特性であるヘテロク
ロマチン構造における結合の濃縮につながるかどうかを試験した。本明細書に提示される
結果は、部位特異的RNA編集が、レット症候群ならびに遺伝子療法を受けられる他の神
経疾患の根底にある疾患の原因となるMECP2突然変異を治療的に修復できることを示
している。
【0018】
本発明によると、細胞内の核酸分子を編集する方法が提供される。特定の実施形態では
、編集される核酸分子が、RNA分子、特に核内のRNA分子(例えば、一次転写産物、
プレmRNA、またはmRNA(例えば、核からの輸送前のmRNA))である。特定の
実施形態では、編集される核酸分子が、内因性および/または核転写産物である。CRI
SPR技術などの遺伝子編集では、ゲノムのオフターゲット突然変異が永続的である。対
照的に、細胞内のRNAターンオーバーは、RNA内のオフターゲット突然変異が一時的
であることを意味する。さらに、RNA編集は、CRISPRゲノム編集とは異なり、段
階的であり得る。結果として、オフターゲット突然変異は必ずしも100%まで編集され
るわけではない。
【0019】
実施形態では、本発明は、タンパク質発現および/または機能の微調整を提供する核酸
分子をRNA編集する方法を提供する。例えば、本発明の方法は、編集されていない状態
と比較して、タンパク質発現および/または機能の正常レベルの回復を可能にする。本明
細書に記載される処置の文脈において、本発明の方法は、未処置の状態と比較して、正常
レベルまたは少なくとも正常レベルに近いタンパク質発現および/または機能の回復を可
能にする。
【0020】
実施形態では、本発明は、例えば記載される療法の文脈で、(例えば、投薬を介して)
調整可能な一過的編集を提供する核酸分子をRNA編集する方法を提供する。例えば、本
発明は、標的RNAの可逆的編集を可能にする。
【0021】
特定の実施形態では、編集される細胞が非分裂細胞である。特定の実施形態では、編集
される細胞がニューロンおよび/またはグリア細胞である。特定の実施形態では、編集さ
れる細胞が非神経細胞である。特定の実施形態では、編集される細胞がニューロンである
。細胞(例えば、ニューロン)は、中枢神経系(例えば、脳、脊髄)および/または末梢
神経系にあり得る。細胞は、(例えば、インビボ処置方法で)処置される対象に存在し得
る、または細胞は、インビトロで処置され、次いで、対象に投与され得る(例えば、エキ
ソビボ処置方法)。
【0022】
本発明の一定の実施形態では、本方法が、1)RNA結合ドメインに連結または融合さ
れたRNA編集酵素をコードする核酸分子および2)ガイドRNAまたはガイドRNAを
コードする核酸分子を細胞に送達するステップを含む。特定の実施形態では、RNA結合
ドメインが、RNA編集酵素のN末端に連結される。実施形態では、RNA編集酵素およ
びRNA結合ドメインを含む融合物が、少なくとも1つの核局在化シグナル(NLS)を
含まない。実施形態では、RNA編集酵素およびRNA結合ドメインを含む融合物が、少
なくとも1つの核局在化シグナル(NLS)をさらに含む。例えば、RNA編集酵素およ
びRNA結合ドメインを含む融合物は、1、2、3、4、5またはそれ以上のNLSをさ
らに含む。複数のNLSが使用される場合、各NLSは互いに直接連結していてもよいし
、または1~約5個のアミノ酸のアミノ酸リンカーによって分離されていてもよい。特定
の実施形態では、NLSが、融合タンパク質のN末端にある。NLSの例は、Kosug
i et al.(J.Biol.Chem.(2009)284:478-485;参
照により本明細書に組み込まれる)に提供されている。特定の実施形態では、NLSが、
コンセンサス配列K(K/R)X(K/R)(配列番号58)(例えば、単節型(mon
opartite)NLS)を含む。特定の実施形態では、NLSが、コンセンサス配列
(K/R)(K/R)X10~12(K/R)3/5(配列番号59)(式中、(K/R
)3/5は、5つのアミノ酸のうち少なくとも3つがリジンまたはアルギニンのいずれか
であることを表す)を含む。特定の実施形態では、NLSがc-myc NLSを含む。
特定の実施形態では、c-myc NLSが、配列PAAKRVKLD(配列番号54)
を含む。特定の実施形態では、NLSがヌクレオプラスミンNLSである。特定の実施形
態では、ヌクレオプラスミンNLSが、配列KRPAATKKAGQAKKKK(配列番
号60)を含む。特定の実施形態では、NLSが、SV40ラージT抗原NLSを含む。
特定の実施形態では、SV40ラージT抗原NLSが、配列PKKKRKV(配列番号4
7)を含む。特定の実施形態では、融合物が、3つのSV40ラージT抗原NLS(例え
ば、配列DPKKKRKVDPKKKRKVDPKKKRKV(配列番号67))を含む
。種々の実施形態では、NLSが、上記の配列(例えば、配列番号58、59、60、4
7、54または67)中に、これらの配列が1つまたは複数の置換、付加または欠失(例
えば、約1、または約2、または約3、または約4、または約5、または約10、または
約15(約1~5、または約1~10、または約1~15を含む)の置換、付加または欠
失)を含むように、突然変異/変異を含み得る。特定の実施形態では、NLS内のリジン
アミノ酸がアルギニンアミノ酸で置換されていてもよい、および/またはNLS内のアル
ギニンアミノ酸がリジンアミノ酸で置換されていてもよい。融合タンパク質は、融合タン
パク質のN末端で、精製タグ(例えば、HAタグ)をさらに含んでいてもよい。
【0023】
本発明の核酸分子は、単一ベクター内に含まれていてもよいし、または別々のベクター
に含まれていてもよい。例えば、RNA結合ドメインに連結または融合されたRNA編集
酵素をコードする核酸分子およびガイドRNAをコードする核酸分子は、単一ベクター内
に含まれる。核酸分子は、連続的に(前または後に)および/または同時に(同時的に)
細胞に送達され得る。核酸分子は、同じ組成物または別個の組成物で(例えば、別個のベ
クターに含まれる場合)送達され得る。特定の実施形態では、核酸分子が、単一ベクター
、特にAAVベクターなどのウイルスベクターで送達される。
【0024】
特定の実施形態では、RNA編集酵素がヒトである。特定の実施形態では、RNA編集
酵素がデアミナーゼである。デアミナーゼの例としては、限定されないが、RNAに作用
するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)、アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、
触媒ポリペプチド様(APOBEC(例えば、APOBEC1、APOBEC3A、AP
OBEC3G))、および活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AICDAまたはAID;
C:GはT:Aに変換される)が挙げられる。特定の実施形態では、RNA編集酵素が、
ADAR1、ADAR2またはADAR3などのADARである。特定の実施形態では、
RNA編集酵素がADAR1である(例えば、Gene ID:103およびGenBa
nk寄託番号NM_001111.5およびNP_001102.3ならびにこれらのア
イソフォーム参照)。特定の実施形態では、RNA編集酵素がADAR2である。RNA
編集酵素が完全長未満であってもよい。特定の実施形態では、RNA編集酵素がその天然
のRNA結合ドメインを欠いている。例えば、RNA編集酵素が、酵素の触媒ドメインを
含んでもよい、または酵素の触媒ドメインからなってもよい。
【0025】
ヒトADAR1のアミノ酸配列の例は、
MNPRQGYSLS GYYTHPFQGY EHRQLRYQQP GPGSSP
SSFL LKQIEFLKGQ LPEAPVIGKQ TPSLPPSLPG LR
PRFPVLLA SSTRGRQVDI RGVPRGVHLR SQGLQRGFQ
H PSPRGRSLPQ RGVDCLSSHF QELSIYQDQE QRILK
FLEEL GEGKATTAHD LSGKLGTPKK EINRVLYSLA K
KGKLQKEAG TPPLWKIAVS TQAWNQHSGV VRPDGHSQ
GA PNSDPSLEPE DRNSTSVSED LLEPFIAVSA QAWN
QHSGVV RPDSHSQGSP NSDPGLEPED SNSTSALEDP
LEFLDMAEIK EKICDYLFNV SDSSALNLAK NIGLTKA
RDI NAVLIDMERQ GDVYRQGTTP PIWHLTDKKR ERM
QIKRNTN SVPETAPAAI PETKRNAEFL TCNIPTSNAS
NNMVTTEKVE NGQEPVIKLE NRQEARPEPA RLKPPV
HYNG PSKAGYVDFE NGQWATDDIP DDLNSIRAAP GE
FRAIMEMP SFYSHGLPRC SPYKKLTECQ LKNPISGLL
E YAQFASQTCE FNMIEQSGPP HEPRFKFQVV INGRE
FPPAE AGSKKVAKQD AAMKAMTILL EEAKAKDSGK S
EESSHYSTE KESEKTAESQ TPTPSATSFF SGKSPVTT
LL ECMHKLGNSC EFRLLSKEGP AHEPKFQYCV AVGA
QTFPSV SAPSKKVAKQ MAAEEAMKAL HGEATNSMAS
DNQPEGMISE SLDNLESMMP NKVRKIGELV RYLNTNP
VGG LLEYARSHGF AAEFKLVDQS GPPHEPKFVY QAK
VGGRWFP AVCAHSKKQG KQEAADAALR VLIGENEKAE
RMGFTEVTPV TGASLRRTML LLSRSPEAQP KTLPLT
GSTF HDQIAMLSHR CFNTLTNSFQ PSLLGRKILA AI
IMKKDSED MGVVVSLGTG NRCVKGDSLS LKGETVNDC
H AEIISRRGFI RFLYSELMKY NSQTAKDSIF EPAKG
GEKLQ IKKTVSFHLY ISTAPCGDGA LFDKSCSDRA M
ESTESRHYP VFENPKQGKL RTKVENGEGT IPVESSDI
VP TWDGIRLGER LRTMSCSDKI LRWNVLGLQG ALLT
HFLQPI YLKSVTLGYL FSQGHLTRAI CCRVTRDGSA
FEDGLRHPFI VNHPKVGRVS IYDSKRQSGK TKETSVN
WCL ADGYDLEILD GTRGTVDGPR NELSRVSKKN IFL
LFKKLCS FRYRRDLLRL SYGEAKKAAR DYETAKNYFK
KGLKDMGYGN WISKPQEEKN FYLCPV(配列番号72)である
。
【0026】
特定の実施形態では、ADAR1のデアミナーゼドメインが、配列番号72のアミノ酸
839~1222を含む。特定の実施形態では、RNA編集酵素が、そのデアミナーゼド
メインの配列番号72との少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%
または100%の相同性または同一性、特に少なくとも95%、97%、99%または1
00%の相同性または同一性を有する配列を含む。
【0027】
特定の実施形態では、RNA編集酵素が、ヒトADAR2のデアミナーゼドメインを含
む。特定の実施形態では、ヒトADAR2のデアミナーゼドメインが、GenBank寄
託番号U82120のアミノ酸299~701を含む。特定の実施形態では、ADAR2
またはそのデアミナーゼドメインが、E488Q突然変異を含む(Montiel-Go
nzalez,et al.(2016)Nucleic Acids Res.,44
:e157)。特定の実施形態では、ヒトADAR2のデアミナーゼドメインが、
LHLDQTPSRQPIPSEGLQLHLPQVLADAVSRLVLGKFGD
LTDNFSSPHAR
RKVLAGVVMTTGTDVKDAKVISVSTGTKCINGEYMSDRG
LALNDCHAEII
SRRSLLRFLYTQLELYLNNKDDQKRSIFQKSERGGFRLK
ENVQFHLYIST
SPCGDARIFSPHEPILEEPADRHPNRKARGQLRTKIESG
EGTIPVRSNAS
IQTWDGVLQGERLLTMSCSDKIARWNVVGIQGSLLSIFV
EPIYFSSIILG
SLYHGDHLSRAMYQRISNIEDLPPLYTLNKPLLSGISNA
EARQPGKAPNF
SVNWTVGDSAIEVINATTGKDELGRASRLCKHALYCRWM
RVHGKVPSHLL
RSKITKPNVYHESKLAAKEYQAAKARLFTAFIKAGLGAW
VEKPTEQDQFS
LTP(配列番号55;E488が示される)を含む。
【0028】
特定の実施形態では、ヒトADAR2のデアミナーゼドメインが、
LHLDQTPSRQPIPSEGLQLHLPQVLADAVSRLVLGKFGD
LTDNFSSPHAR
RKVLAGVVMTTGTDVKDAKVISVSTGTKCINGEYMSDRG
LALNDCHAEII
SRRSLLRFLYTQLELYLNNKDDQKRSIFQKSERGGFRLK
ENVQFHLYIST
SPCGDARIFSPHEPILEEPADRHPNRKARGQLRTKIESG
QGTIPVRSNAS
IQTWDGVLQGERLLTMSCSDKIARWNVVGIQGSLLSIFV
EPIYFSSIILG
SLYHGDHLSRAMYQRISNIEDLPPLYTLNKPLLSGISNA
EARQPGKAPNF
SVNWTVGDSAIEVINATTGKDELGRASRLCKHALYCRWM
RVHGKVPSHLL
RSKITKPNVYHESKLAAKEYQAAKARLFTAFIKAGLGAW
VEKPTEQDQFS
LTP(配列番号71;E488Qが示される)を含む。
【0029】
特定の実施形態では、RNA編集酵素が、配列番号55または71との少なくとも80
%、85%、90%、95%、97%、99%または100%の相同性または同一性、特
に少なくとも95%、97%、99%または100%の相同性または同一性を有する配列
を含む。
【0030】
上記のように、RNA編集酵素はRNA結合ドメインに連結されている。RNA編集酵
素が、RNA結合ドメインに直接(すなわち、リンカー配列なしで)連結されてもよいし
、またはポリペプチドリンカーを介して連結されてもよい。例えば、ポリペプチドリンカ
ーは、1~約50個のアミノ酸、1~約25個のアミノ酸、1~約20個のアミノ酸、1
~約15個のアミノ酸、1~約10個のアミノ酸、または1~約5個のアミノ酸を含み得
る。特定の実施形態では、リンカーが、配列(GGGGS)n(配列番号44)を含み(
式中、nは、1~約10、特に1~約5である)を含む。例えば、リンカー配列は、GG
GGSGGGGSGGGGS(配列番号45)であり得る。種々の実施形態では、リンカ
ーが、上記の配列(例えば、配列番号44または45)中に、これらの配列が1つまたは
複数の置換、付加または欠失(例えば、約1、または約2、または約3、または約4、ま
たは約5、または約10、または約15(約1~5、または約1~10、または約1~1
5を含む)の置換、付加または欠失)を含むように、突然変異/変異を含み得る。
【0031】
RNA結合ドメインは、特定のRNA配列および/またはRNA構造(例えば、ヘアピ
ン)を特異的に認識する任意のポリペプチドであり得る。特定の実施形態では、RNA結
合ドメインが、人工RNA結合ドメイン、特にRNAに対して高い親和性を有するもので
ある。特定の実施形態では、RNA結合ドメインが、ファージRNA結合ドメインである
(例えば、Keryer-Bibens,et al.,Biol.Cell(2008
)100:125-138参照)。例えば、RNA結合ドメインは、λNペプチド(例え
ば、Cilley,et al.,RNA(1997)3:57-67参照)またはファ
ージMS2コートタンパク質(例えば、Johansson,et al.Sem.Vi
rol.(1997)8:176-185参照)である。特定の実施形態では、λNペプ
チドが、アミノ酸配列:MNARTRRRERRAEKQAQWKAAN(配列番号46
)を含む。特定の実施形態では、λNペプチドが、配列番号46との少なくとも80%、
85%、90%、95%、97%、99%または100%の相同性または同一性、特に少
なくとも95%、97%、99%または100%の相同性または同一性を有する配列を含
む。
【0032】
実施形態では、融合タンパク質が、アミノ酸リンカーを介してヒトADAR2のデアミ
ナーゼドメイン(例えば、配列番号55または71)のアミノ末端に連結されたλNペプ
チド(配列番号46)を含む。特定の実施形態では、リンカーが、配列(GGGGS)n
(配列番号44;式中、nは1~約10または1~約5である)または配列GGGGSG
GGGSGGGGS(配列番号45)を含む。特定の実施形態では、融合タンパク質が、
配列:
MNARTRRRERRAEKQAQWKAANGGGGSGGGGSGGGGSLH
LDQTPSRQPIP
SEGLQLHLPQVLADAVSRLVLGKFGDLTDNFSSPHARRK
VLAGVVMTTGT
DVKDAKVISVSTGTKCINGEYMSDRGLALNDCHAEIISR
RSLLRFLYTQL
ELYLNNKDDQKRSIFQKSERGGFRLKENVQFHLYISTSP
CGDARIFSPHE
PILEEPADRHPNRKARGQLRTKIESGEGTIPVRSNASIQ
TWDGVLQGERL
LTMSCSDKIARWNVVGIQGSLLSIFVEPIYFSSIILGSL
YHGDHLSRAMY
QRISNIEDLPPLYTLNKPLLSGISNAEARQPGKAPNFSV
NWTVGDSAIEV
INATTGKDELGRASRLCKHALYCRWMRVHGKVPSHLLRS
KITKPNVYHES
KLAAKEYQAAKARLFTAFIKAGLGAWVEKPTEQDQFSLT
P(配列番号68)を含む。
【0033】
特定の実施形態では、融合タンパク質が、N末端で少なくとも1つのNLSをさらに含
む。特定の実施形態では、NLSが、SV40ラージT抗原NLS(例えば、配列番号4
7)を含む。特定の実施形態では、融合体が、3つのSV40ラージT抗原NLS(例え
ば、配列番号67)を含む。特定の実施形態では、融合タンパク質が、配列:
DPKKKRKVDPKKKRKVDPKKKRKVMNARTRRRERRAEKQ
AQWKAANGGGG
SGGGGSGGGGSLHLDQTPSRQPIPSEGLQLHLPQVLADA
VSRLVLGKFGD
LTDNFSSPHARRKVLAGVVMTTGTDVKDAKVISVSTGTK
CINGEYMSDRG
LALNDCHAEIISRRSLLRFLYTQLELYLNNKDDQKRSIF
QKSERGGFRLK
ENVQFHLYISTSPCGDARIFSPHEPILEEPADRHPNRKA
RGQLRTKIESG
EGTIPVRSNASIQTWDGVLQGERLLTMSCSDKIARWNVV
GIQGSLLSIFV
EPIYFSSIILGSLYHGDHLSRAMYQRISNIEDLPPLYTL
NKPLLSGISNA
EARQPGKAPNFSVNWTVGDSAIEVINATTGKDELGRASR
LCKHALYCRWM
RVHGKVPSHLLRSKITKPNVYHESKLAAKEYQAAKARLF
TAFIKAGLGAW
VEKPTEQDQFSLTP(配列番号69)を含む。
【0034】
特定の実施形態では、融合タンパク質が、配列番号68または69との少なくとも80
%、85%、90%、95%、97%、99%または100%の相同性または同一性、特
に少なくとも95%、97%、99%または100%の相同性または同一性を有する配列
を含む。
【0035】
本発明のガイドRNAは、標的配列を標的とするまたはこれに特異的にハイブリダイズ
する配列(例えば、相補的配列)、およびRNA結合ドメインによって認識される配列を
含む。ガイドRNAは、変更または編集されるヌクレオチド(例えば、アデノシン)に向
けられた標的配列とのミスマッチを含む。本明細書で使用される場合、「特異的にハイブ
リダイズする」という用語は、核酸分子が標的配列と100%相補的である必要があるこ
とを意味しない。むしろ、変更/編集される(1又は複数の)ミスマッチヌクレオチドを
含まない配列は、標的配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99
%または100%相補的、特に少なくとも95%、97%、99%または100%相補的
であり得る。しかしながら、本明細書で説明されるように、配列は、オフターゲット編集
を減少させるために、追加のミスマッチ(例えば、Gミスマッチ)を含み得る。実施形態
では、配列が、約1個、または約2個、または約3個、または約4個、または約5個、ま
たは約10個、または約15個(約1~5個、または約1~10個、または約1~15個
を含む)のミスマッチを含み得る。特定の実施形態では、相補性の領域(例えば、ガイド
RNAと標的配列との間)が、少なくとも約10個、少なくとも約12個、少なくとも約
15個、少なくとも約17個、少なくとも約20個、少なくとも約25個、少なくとも約
30個、少なくとも約35個、またはそれ以上のヌクレオチドである。特定の実施形態で
は、相補性の領域(例えば、ガイドRNAと標的配列との間)が、約15~約30個のヌ
クレオチド、約15~約25個のヌクレオチド、約20~約30個のヌクレオチド、約2
0~約25個のヌクレオチド、または約20個、21個、22個、23個、24個、また
は25個のヌクレオチドである。典型的には、ガイドRNAと標的配列との間のミスマッ
チが、ガイドRNAと標的配列との間の相補性の領域の中央(例えば、ガイドRNA配列
の中央50%以内)に向かっている。特定の実施形態では、標的配列が配列番号52を含
む。
【0036】
ガイドRNAは、細胞内のRNAに対する正しいまたは所望の編集を含む。ガイドRN
Aを使用して、ミスセンス突然変異およびナンセンス突然変異を含む、任意の突然変異、
特に点突然変異を修正することができる。例えば、レット症候群では、共通のG>A突然
変異が存在する。これらの突然変異により、アミノ酸変化R106Q(CAA)、W10
4X(UAG)およびR306H(CAC)が得られる。ナンセンス突然変異の場合、こ
れらはCからTへの突然変異で、Aが3’位置にあって終止コドンを形成する、または中
央位置にある(例えば、UAGからUGG)。ナンセンス突然変異を編集して、終止コド
ンを削除することができる。特定の実施形態では、ガイドRNAが、(例えば、ADAR
によって)Aが脱アミノ化され得るように、これらの突然変異体のAと一致するCを含む
。
【0037】
本発明のガイドRNAは、RNA結合ドメインによって認識される1つまたは複数の配
列を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAが、RNA結合ドメインによって認識され
る2つの配列を含む。特定の実施形態では、RNA結合ドメインによって認識される2つ
の配列が、ミスマッチまたは標的配列と特異的にハイブリダイズする配列の両側にあり得
る。例えば、RNA結合ドメインによって認識される1つの配列(例えば、BoxB)が
、標的突然変異の約15~20または約16~18ヌクレオチド5’に位置し、RNA結
合ドメインによって認識される第2の配列(例えば、BoxB)が、標的突然変異の約8
~12または約10ヌクレオチド3’に位置する。特定の実施形態では、RNA結合ドメ
インによって認識される配列が、ガイドRNAの末端にない(すなわち、ガイドRNAの
末端の配列が標的配列と相補的であり得る)。RNA結合ドメインによって認識される2
つ以上の配列が存在する場合、それらの配列は同じであっても異なっていてもよいが、好
ましくは同じRNA結合ドメインによって認識される。特定の実施形態では、RNA結合
ドメインによって認識される配列がBoxB配列である。特定の実施形態では、BoxB
配列が、GCCCUGAAAAAGGGC(配列番号48)またはGGCCCUGAAA
AAGGGCC(配列番号49)を含む。特定の実施形態では、BoxB配列が、配列番
号48または49との少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%また
は100%の相同性または同一性、特に少なくとも95%、97%、99%または100
%の相同性または同一性を有する。
【0038】
特定の実施形態では、ガイドRNAが、表1に示される配列(DNA分子のRNAバー
ジョンを含む)を標的とする、または配列を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAが
、表1に示される配列との少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%
または100%の相同性または同一性、特に少なくとも95%、97%、99%または1
00%の相同性または同一性を有する配列を標的とするまたは配列を含む。特定の実施形
態では、ガイドRNAが、配列番号15~22、特に配列番号15、17、19または2
1の1つを含む、あるいは配列番号15~22、特に配列番号15、17、19または2
1の1つとの少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%または100
%の相同性または同一性、特に少なくとも95%、97%、99%または100%の相同
性または同一性を有する配列を含む。
【0039】
ガイドRNAをコードする核酸配列を含む核酸分子は、ガイドRNAをコードする核酸
配列の複数のコピーを含み得る。例えば、核酸分子は、それぞれプロモーターの制御下に
ある、ガイドRNAをコードする核酸配列の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10
、またはそれ以上のコピーを含み得る。
【0040】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子が、ベクター(例えば、プラスミド)、特にウ
イルスベクターを介して、細胞に送達され(例えば、感染、トランスフェクション、電気
穿孔等を介して)、発現される。本発明の発現ベクターは、強力なプロモーター、構成的
プロモーター、組織もしくは細胞特異的プロモーター、ユビキタスプロモーター、および
/または制御プロモーターを使用することができる。特定の実施形態では、RNA結合ド
メインに連結または融合されたRNA編集酵素をコードする核酸分子のプロモーターが、
組織または細胞特異的プロモーターである。特定の実施形態では、プロモーターがニュー
ロン特異的プロモーターまたはユビキタスプロモーターである。プロモーターの例は、当
技術分野で周知であり、それだけに限らないが、シナプスプロモーター、特にシナプシン
Iプロモーター、CAGプロモーターおよびMECP2プロモーターを含む。ガイドRN
Aに関して、RNAプロモーターの例は当該分野で周知であり、それだけに限らないが、
RNAポリメラーゼIIIプロモーター(例えば、U6およびH1;例えば、Mysli
nski et al.(2001)Nucl.Acids Res.,29:2502
-09)または短RNAを発現することが知られている他のプロモーターを含む。特定の
実施形態では、プロモーターがヒトU6プロモーターである。本発明の分子を発現するた
めの発現ベクターの例としては、限定されないが、プラスミドおよびウイルスベクター(
例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レトロウイルスおよびレンチ
ウイルス)が挙げられる。特定の実施形態では、ベクターがAAV(例えば、AAV-1
~AAV-12および他の血清型およびハイブリッドAAVベクター;例えば、AAV1
、またはAAV2、またはAAV3、またはAAV4、またはAAV5、またはAAV6
、またはAAV7、またはAAV8、またはAAV9、またはAAV10、またはAAV
11、またはAAV12)である。特定の実施形態では、ベクターが、ニューロンおよび
/またはグリアに感染することができる。
【0041】
別の態様によると、RNA編集および治療方法を含む本発明の方法が、上記のように、
ガイドRNAまたはガイドRNAをコードする核酸を細胞に送達するステップを含むが、
RNA結合ドメインに連結または融合されたRNA編集酵素をコードする核酸分子を使用
しない。ADAR(例えば、ADAR 1~3)は、神経系で高レベルまで発現される。
よって、本発明のガイドRNAは、ADAR酵素、特にADAR1またはADAR2など
の内因性デアミナーゼ酵素を内因性MECP2 RNAに引き付けることができる。よっ
て、実施形態では、本発明は、内因性ADAR酵素の関与を可能にし、組換えADAR酵
素を必要としない。ガイドRNAのみを使用することによって、非哺乳動物RNA結合ド
メインに対する潜在的な免疫応答が回避される。さらに、この方法によって、高度反復性
ガイド配列をAAVベクターに含めることが可能になり、オフターゲット編集が減少する
。本発明のこの態様の特定の実施形態では、ガイドが、標的配列を標的とするまたはこれ
に特異的にハイブリダイズする配列(例えば、相補的配列)、およびデアミナーゼ、特に
ADAR(例えば、ADAR1またはADAR2)によって認識される配列を含む。ガイ
ドRNAは、限定されないが、RNAヘアピン(例えば、ADARの自然標的に基づく)
、ADARによって認識される二本鎖「バルジ」を作成するミスマッチ、および/または
内因性ADARによる標的編集で通常必要とされる任意の他の配列を含み得る。特定の実
施形態では、ガイドRNAが、1つ、2つ、またはそれ以上のBoxB配列を含む。特定
の実施形態では、ガイドRNAが、GluR2からのR/G結合部位を含む(Wette
ngel,et al.(2017)Nucleic Acids Res.,45(5
):2797-2808;Fukuda,et al.(2017)Sci.Rep.,
7:41478;例えば、GUGGAAUAGUAUAACAA-UAUGCUAAAU
GUUGUUAUAGUAUCCCAC(配列番号70)、あるいは少なくとも80%、
85%、90%、95%、97%、99%または100%の相同性または同一性、特に少
なくとも95%、97%、99%または100%の相同性または同一性を有する配列を含
む)。特定の実施形態では、ガイドRNAが、内部ループを有することを含む(Lehm
ann,et al.(1999)J.Mol.Biol.,291(1):1-13;
例えば、4個、6個、8個、10個、またはそれ以上のヌクレオチドを含むループ)。特
定の実施形態では、ガイドRNAが、MECP2 RNAと相補的な領域、編集用のミス
マッチ(例えば、A:C)を含み、オフターゲット編集用のA:Gミスマッチを含んでい
てもよい。特定の実施形態では、ガイドRNAをコードする核酸分子が、本明細書に記載
されるベクター内に含まれる。特定の実施形態では、ガイドRNAが、U6プロモーター
または低分子RNAを発現する他のプロモーターから発現される。
【0042】
本発明によると、中枢神経系の遺伝性疾患を処置、抑制および/または予防する方法が
提供される。本発明によると、進行性神経発達疾患を処置、抑制および/または予防する
方法が提供される。例えば、本発明は、実施形態で、対象のRNAの突然変異を特徴とす
る遺伝性中枢神経系疾患の処置、抑制および/または予防を提供する。実施形態では、本
発明は、異常なG突然変異の回復によるRNAの正常タンパク質への翻訳を直接的または
間接的に回復することによって、例えば読み取られるRNAをGとして編集することによ
って、進行性神経発達疾患を処置、抑制および/または予防する方法を提供する。
【0043】
本発明によると、レット症候群を含む進行性神経発達疾患を含む、中枢神経系の遺伝性
疾患を処置、抑制および/または予防する方法は、インビボまたはエキソビボで有効であ
る。例えば、インビボ法の場合、(1又は複数の)本核酸分子(例えば、記載される融合
タンパク質をコードする、例えば、記載されるガイドRNAをコードする)を対象に投与
する。エキソビボ法では、細胞(同系または同種)を本核酸分子(例えば、記載される融
合タンパク質をコードする、例えば、記載されるガイドRNAをコードする)と接触させ
、対象に導入する。処置に関する実施形態は、インビボ法およびエキソビボ法に等しく適
用される。
【0044】
本発明によると、MECP2遺伝子に関連する遺伝性疾患を処置、抑制および/または
予防する方法が提供される。実施形態では、本発明は、機能的MECP2タンパク質のレ
ベルを非疾患または健康な対象のレベルまで回復するための、例えばRNAレベルでの、
遺伝子編集を提供する。Mecp2は、ヒトまたはマウス、特にヒトであり得る。実施形
態では、本発明は、疾患状態に対して機能的MECP2タンパク質のレベルを上昇させる
ための、例えばRNAレベルでの、遺伝子編集を提供する。実施形態では、MECP2遺
伝子に関連する遺伝性疾患が、新生児脳症、小頭症、X連鎖知的障害、PPM-X症候群
(躁うつ病、錐体路徴候、パーキンソン症候群および巨精巣症)、双極性障害、パーキン
ソン症候群、筋緊張増加、誇大反射、および巨精巣症、またはこれらの組み合わせである
。実施形態では、MECP2遺伝子に関連する遺伝性疾患が、男性または女性対象に影響
を及ぼす。
【0045】
本発明によると、レット症候群を処置、抑制および/または予防する方法が提供される
。特定の実施形態では、レット症候群が、MeCP2のG>A突然変異を特徴とする。例
えば、レット症候群は、MECP2のR106Q、W104XまたはR306H変異を特
徴とし得る。ヒトMECP2の例示的なアミノ酸およびヌクレオチド配列は、GenBa
nk Gene ID 4204およびGenBank寄託番号NM_004992.3
およびNP_004983.1で提供される(GenBank寄託番号NM_00111
0792.1、NP_001104262.1、NM_001316337.1およびN
P_001303266.1のアイソフォームも参照)。特定の実施形態では、レット症
候群が、MeCP2のR106Q突然変異を含む。特定の実施形態では、本方法が、RN
A結合ドメインに連結または融合されたRNA編集酵素をコードする核酸分子、およびガ
イドRNAまたはガイドRNAをコードする核酸分子を投与するステップを含む。特定の
実施形態では、本方法が、ガイドRNAまたはガイドRNAをコードする核酸分子を投与
するステップを含む。核酸分子は、対象に直接投与され得る、または細胞に送達され、次
いで、これが対象に投与され得る。
【0046】
特定の実施形態では、MECP2のアミノ酸配列が、
MVAGMLGLRE EKSEDQDLQG LKDKPLKFKK VKKDKK
EEKE GKHEPVQPSA
HHSAEPAEAG KAETSEGSGS APAVPEASAS PKQRRS
IIRD RGPMYDDPTL
PEGWTRKLKQ RKSGRSAGKY DVYLINPQGK AFRSKV
ELIA YFEKVGDTSL DPNDFDFTVT GRGSPSRREQ KP
PKKPKSPK APGTGRGRGR PKGSGTTRPK
AATSEGVQVK RVLEKSPGKL LVKMPFQTSP GGKAEG
GGAT TSTQVMVIKR
PGRKRKAEAD PQAIPKKRGR KPGSVVAAAA AEAKKK
AVKE SSIRSVQETV
LPIKKRKTRE TVSIEVKEVV KPLLVSTLGE KSGKGL
KTCK SPGRKSKESS PKGRSSSASS PPKKEHHHHH HH
SESPKAPV PLLPPLPPPP PEPESSEDPT SPPEPQDLS
S SVCKEEKMPR GGSLESDGCP KEPAKTQPAV ATAAT
AAEKY KHRGEGERKD IVSSSMPRPN REEPVDSRTP V
TERVS(配列番号56)である。
【0047】
R106、W104およびR306は下線付きで上に示される。
【0048】
特定の実施形態では、MECP2をコードする核酸が、
atgg tagctgggat gttagggctc agggaagaaa a
gtcagaaga ccaggacctc cagggcctca aggacaaa
cc cctcaagttt aaaaaggtga agaaagataa gaaa
gaagag aaagagggca agcatgagcc cgtgcagcca
tcagcccacc actctgctga gcccgcagag gcaggca
aag cagagacatc
agaagggtca ggctccgccc cggctgtgcc ggaagc
ttct gcctccccca aacagcggcg ctccatcatc cg
tgaccggg gacccatgta tgatgacccc accctgcct
g aaggctggac acggaagctt aagcaaagga aatct
ggccg ctctgctggg aagtatgatg tgtatttgat c
aatccccag ggaaaagcct ttcgctctaa agtggagt
tg attgcgtact tcgaaaaggt aggcgacaca tccc
tggacc ctaatgattt tgacttcacg gtaactggga
gagggagccc ctcccggcga gagcagaaac cacctaa
gaa gcccaaatct cccaaagctc caggaactgg cag
aggccgg ggacgcccca aagggagcgg caccacgaga
cccaaggcgg ccacgtcaga gggtgtgcag gtgaaa
aggg tcctggagaa aagtcctggg aagctccttg tc
aagatgcc ttttcaaact tcgccagggg gcaaggctg
a ggggggtggg gccaccacat ccacccaggt catgg
tgatc aaacgccccg gcaggaagcg aaaagctgag g
ccgaccctc aggccattcc caagaaacgg ggccgaaa
gc cggggagtgt ggtggcagcc gctgccgccg aggc
caaaaa gaaagccgtg aaggagtctt ctatccgatc
tgtgcaggag accgtactcc ccatcaagaa gcgcaag
acc cgggagacgg tcagcatcga ggtcaaggaa gtg
gtgaagc ccctgctggt gtccaccctc ggtgagaaga
gcgggaaagg actgaagacc tgtaagagcc ctgggc
ggaa aagcaaggag agcagcccca aggggcgcag ca
gcagcgcc tcctcacccc ccaagaagga gcaccacca
c catcaccacc actcagagtc cccaaaggcc cccgt
gccac tgctcccacc cctgccccca cctccacctg a
gcccgagag ctccgaggac cccaccagcc cccctgag
cc ccaggacttg agcagcagcg tctgcaaaga ggag
aagatg cccagaggag gctcactgga gagcgacggc
tgccccaagg agccagctaa gactcagccc gcggttg
cca ccgccgccac ggccgcagaa aagtacaaac acc
gagggga gggagagcgc aaagacattg tttcatcctc
catgccaagg ccaaacagag aggagcctgt ggacag
ccgg acgcccgtga ccgagagagt tagctga(配列番号5
7)である。
【0049】
実施形態では、本発明は、古典的レット症候群および変異型レット症候群(別名、非定
型レット症候群)を含むレット症候群を処置、抑制および/または予防する方法を提供す
る。実施形態では、レット症候群が、Zappella変異型、Hanefeld変異型
、Rolando変異型および/または「不完全型」変異型である。
【0050】
実施形態では、本発明は、限定されないが、運動失調、制御されない手の動き(例えば
、手もみもしくは絞り、拍手、擦り、洗浄、または手から口への運動)、後天性小頭症、
自閉症様行動、呼吸不規則性、摂食および嚥下困難、成長遅延、低血圧、パニック発作、
歯ぎしり(ブラキシズムBruxism)、振戦、失行症、心臓不規則性(例、QT間隔
および/またはT波異常)、ならびに発作を含むレット症候群の1つまたは複数の症状の
減少、改善および/または抑止を提供する。
【0051】
実施形態では、本組成物が、例えばレット症候群を処置、抑制および/または予防する
本方法に、以下のいずれかと組み合わせて使用され得る:トリデカン酸、フィンゴリモド
(例えば、GILENYA)、ケタミン、EPI-743(バチキノン)、サリゾタン(
EMD-128、130)、スタチン(例えば、ロバスタチン)、三環系抗うつ薬(TC
A、例えばデシプラミン)、酢酸グラチラマー(例えば、COPAXONE)、デキスト
ロメトルファン、および/または経口コレステロール24-ヒドロキシラーゼ(CH24
H)阻害剤(例えば、TAK-935/OV935)。
【0052】
上記のように、本発明は、レット症候群を抑制、処置および/または予防するための核
酸分子、ベクター、および組成物および方法を提供する。本明細書に記載される少なくと
も1つの核酸を含む組成物も、本発明に含まれる。特定の実施形態では、組成物が、少な
くとも1つのガイドRNAまたはガイドRNAをコードする核酸分子(例えば、発現ベク
ター)と、少なくとも1つの医薬的に許容される担体とを含む。組成物は、RNA結合ド
メインに連結または融合されたRNA編集酵素をコードする核酸分子をさらに含み得る。
特定の実施形態では、核酸分子の全てが、単一の発現ベクター(例えば、ウイルスベクタ
ー(例えば、AAV))内にコードされる。あるいは、核酸分子が、少なくとも1つの薬
学的に許容される担体を含む別個の組成物内に含まれてもよい。本発明はまた、少なくと
も1つのガイドRNAまたはガイドRNAをコードする核酸分子(例えば、発現ベクター
)を含む第1の組成物と、RNA結合ドメインに連結または融合されたRNA編集酵素を
コードする少なくとも1つの核酸分子を含む第2の組成物とを含むキットを包含する。第
1および第2の組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体をさらに含み得る。
特定の実施形態では、本発明のキットが、少なくとも1つのガイドRNAもしくはガイド
RNAをコードする核酸分子(例えば、発現ベクター)および/またはRNA結合ドメイ
ンに連結もしくは融合されたRNA編集酵素をコードする核酸分子を含む第1の組成物を
含む。第1および第2の組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体をさらに含
み得る。
【0053】
上記で説明されるように、本発明の組成物は、レット症候群を処置するのに有用である
。治療上有効量の組成物が、それを必要とする対象に投与され得る。投与量、方法および
投与時間は、本明細書で提供される教示が与えられれば、当業者により容易に決定可能で
ある。
【0054】
本明細書に記載される成分は、一般に、製剤として患者に投与される。本明細書で使用
される「患者」または「対象」という用語は、ヒトまたは動物の対象を指す。本発明の成
分は、指示される疾患または障害を処置するために医師の指導の下で治療的に使用され得
る。
【0055】
本発明の成分を含む製剤は、水、緩衝生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、
グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、ジメチルス
ルホキシド(DMSO)、油、界面活性剤、懸濁化剤またはこれらの適切な混合物などの
許容される媒体(例えば、薬学的に許容される担体)を用いて投与用に好都合に製剤化さ
れ得る。選択された媒体中の薬剤の濃度は変動してよく、媒体は、製剤の所望の投与経路
に基づいて選択され得る。従来の媒体または薬剤が投与される薬剤と適合しない場合を除
いて、製剤へのその使用が企図される。
【0056】
適切な製剤の選択は、選択された投与方法に依存する。例えば、本発明の成分は、任意
の所望の組織(例えば、脳)または周囲領域への直接注射によって投与され得る。この場
合、製剤は、血液または標的組織と適合する媒体中に分散された成分を含む。
【0057】
治療は、例えば、非経口的に、血流中への注射(例えば、静脈内)によって、または皮
下、筋肉内もしくは腹腔内注射によって投与され得る。特定の実施形態では、治療が、(
例えば、処置される組織への)直接注射によって投与される。注射用の製剤が当技術分野
で知られている。治療を投与する方法として注射が選択された場合、生物学的効果を発揮
するのに十分な量の分子が標的細胞に到達することを確実にするための措置をとらなけれ
ばならない。
【0058】
有効成分としての本発明の化合物を医薬担体と緊密に混和して含有する医薬組成物は、
従来の医薬配合技術によって調製することができる。担体は、例えば、静脈内、経口また
は非経口など、投与に望ましい調製の形態に応じて多種多様な形態をとることができる。
経口剤形の調製では、例えば、経口液体調製物(例えば、懸濁剤、エリキシルおよび液剤
など)の場合、例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤など
の通常の医薬媒体;または経口固形調製物(例えば、散剤、カプセル剤および錠剤など)
の場合、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体のいずれか
を使用することができる。注射可能な懸濁液を調製することができ、その場合、適切な液
体担体、懸濁化剤などを使用することができる。
【0059】
本発明の製剤は、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために投薬単位形態で製剤化さ
れ得る。本明細書で使用される投薬単位形態は、処置を受けている患者に適した製剤の物
理的に別個の単位を指す。各投薬量は、選択された医薬担体と共に所望の効果を生み出す
ように計算された量の有効成分を含むべきである。適切な投薬単位を決定するための手順
は、当業者に周知である。投薬単位は、患者の体重に基づいて比例的に増加または減少し
得る。特定の病的状態を緩和するための適切な濃度は、当技術分野で知られているように
、投薬濃度曲線計算によって決定され得る。
【0060】
本発明の方法は、本発明の(1又は複数の)組成物の投与後の対象の疾患または障害を
監視して、方法の有効性を監視するステップをさらに含み得る。例えば、対象がレット症
候群の特徴について監視され得る。
【0061】
定義
以下の定義は、本発明の理解を容易にするために提供される:
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「この(the)」は、文脈上別
段の意味を有することが明らかな場合を除き、複数の指示対象を含む。
【0062】
「薬学的に許容される」は、動物、特にヒトでの使用について、連邦政府もしくは州政
府の規制当局による承認、または米国薬局方もしくはその他の一般的に認められている薬
局方に列挙されていることを示す。
【0063】
「担体」は、例えば、希釈剤、アジュバント、保存剤(例えば、チメルソール(Thi
mersol)、ベンジルアルコール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜
硫酸ナトリウム)、可溶化剤(例えば、Tween(登録商標)80、ポリソルベート8
0)、乳化剤、緩衝液(例えば、トリスHCl、酢酸塩、リン酸塩)、抗微生物剤、増量
物質(例えば、ラクトース、マンニトール)、賦形剤、補助剤または本発明の活性剤と共
に投与されるビヒクルを指す。薬学的に許容される担体は、水および油(石油、動物、植
物または合成起源のものを含む)などの無菌液体であり得る。水または生理食塩水ならび
にデキストロースおよびグリセロール水溶液が、特に注射液のための担体として好ましく
使用される。適切な医薬担体は、Remington:The Science and
Practice of Pharmacy,(Lippincott,Willia
ms and Wilkins);Liberman,et al.,Eds.,Pha
rmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,N
ew York,N.Y.;およびRowe,et al.,Eds.,Handboo
k of Pharmaceutical Excipients,Pharmaceu
tical Prに記載されている。
【0064】
本明細書で使用される「処置する」という用語は、(例えば、1つまたは複数の症状に
おける)患者の状態の改善、状態の進行の遅延等を含む、疾患に罹患した患者に利益を与
えるあらゆる種類の処置を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「予防する」という用語は、対象が状態を発症する確率の
低下をもたらす、状態を発症するリスクがある対象の予防的処置を指す。
【0066】
化合物または医薬組成物の「治療上有効量」は、特定の障害もしくは疾患および/また
はその症状を予防、抑制または処置するのに有効な量を指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、動物、特に哺乳動物、特にヒトを
指す。
【0068】
「単離」という用語は、その製造中の存在する他の成分からの化合物の分離を指す。「
単離」は、他の化合物もしくは材料との人工的もしくは合成混合物、または基本的な活性
を実質的に妨害しないが、例えば、不完全な精製または安定剤の添加により存在し得る不
純物の存在を除外することを意図していない。
【0069】
「リンカー」、「リンカードメイン」および「連結」という用語は、共有結合または少
なくとも2つの化合物、例えばRNA編集酵素とRNA結合ドメインを共有結合的に結合
する原子の鎖を含む化学的部分を指す。リンカーは、アミノ酸配列(例えば、1~50個
のアミノ酸、1~25個のアミノ酸、1~20個のアミノ酸、1~15個のアミノ酸、1
~10個のアミノ酸、または1~5個のアミノ酸)であり得る。
【0070】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、2つ以上、好ましくは3
つ以上のリボ-および/またはデオキシリボヌクレオチドで構成される核酸分子を含む。
オリゴヌクレオチドの正確なサイズは、種々の因子、ならびにオリゴヌクレオチドの特定
の適用および使用に依存する。
【0071】
本明細書で使用される「核酸」または「核酸分子」は、一本鎖または二本鎖のいずれか
のDNAまたはRNA分子を指し、一本鎖の場合、線状または環状形態のその相補的配列
の分子を指す。核酸分子の議論において、特定の核酸分子の配列または構造は、5’から
3’方向に配列を提供する通常の慣例に従って、本明細書に記載され得る。本発明の核酸
に関して、「単離核酸」という用語が時々使用される。この用語は、DNAに適用される
場合、それが起源をもつ生物の自然に存在するゲノム中で直接隣接する配列から分離され
たDNA分子を指す。例えば、「単離核酸」は、プラスミドもしくはウイルスベクターな
どのベクターに挿入された、または原核もしくは真核細胞または宿主生物のゲノムDNA
に組み込まれたDNA分子を含み得る。
【0072】
「ベクター」は、プラスミド、コスミド、バクミド、ファージまたはウイルスなどの遺
伝子要素であり、これに別の遺伝子配列または要素(DNAまたはRNAのいずれか)が
結合され得る。結合した配列または要素の複製をもたらすために、ベクターがレプリコン
であってもよい。ベクターはRNAまたはDNAのいずれかであり得、一本鎖または二本
鎖であり得る。ベクターは、限定されないが、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シ
グナル、ポリアデニル化シグナル、ターミネーターなどの、宿主細胞または生物のポリヌ
クレオチドまたはポリペプチドコード配列の発現を促進する転写および翻訳制御配列など
の発現オペロンまたは要素を含み得る。
【0073】
「発現オペロン」は、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(例えば、AT
GまたはAUGコドン)、ポリアデニル化シグナル、ターミネーターなどの、宿主細胞ま
たは生物の核酸またはポリペプチドコード配列の発現を促進する転写および翻訳制御配列
を有し得る核酸セグメントを指す。「発現ベクター」は、宿主細胞または生物における核
酸またはポリペプチドコード配列の発現を促進するベクターである。
【0074】
本明細書で使用される場合、「核局在化シグナル」(NLS)は、結合したポリペプチ
ドの細胞の核への移動を促進する分子またはポリペプチドを指す。特定の実施形態では、
核局在化シグナルが、タンパク質を核に向けるペプチドである。典型的には、NLSは主
に塩基性の正に帯電したアミノ酸(特に、リジンおよびアルギニン)を含む。NLSは、
単節型、双節型(bipartite)または多節型(multipartite)であ
り得る。NLSは、典型的には短ペプチドである(例えば、約20個未満のアミノ酸、約
15個未満のアミノ酸、または約10個未満のアミノ酸)。NLSの例は、Kosugi
et al.(J.Biol.Chem.(2009)284:478-485;参照
により本明細書に組み込まれる)に提供されている。特定の実施形態では、NLSが、コ
ンセンサス配列K(K/R)X(K/R)(配列番号58)(例えば、単節型(mono
partite)NLS)を含む。特定の実施形態では、NLSが、コンセンサス配列(
K/R)(K/R)X10~12(K/R)3/5(配列番号59)(式中、(K/R)
3/5は、5つのアミノ酸のうち少なくとも3つがリジンまたはアルギニンのいずれかで
あることを表す)を含む。特定の実施形態では、NLSが、SV40ラージT抗原NLS
(例えば、PKKKRKV(配列番号47))である。特定の実施形態では、c-myc
NLSが、配列PAAKRVKLD(配列番号54)を含む。特定の実施形態では、N
LSが、ヌクレオプラスミンNLS KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号60
)である。提供される配列に関して、リジンおよびアルギニンアミノ酸は交換可能である
。
【0075】
種々の実施形態では、NLSを含めることにより、例えばNLSの非存在下での編集に
対して、オフターゲット編集を減少させるまたは抑止する。例えば、種々の実施形態では
、NLSを含む本遺伝子編集方法が、オフターゲット編集を約10%、または約20%、
または約30%、または約40%、または約50%、または約60%、または約70%、
または約80%、または約90%、または約100%減少させる。種々の実施形態では、
NLSを含む本遺伝子編集方法が、オフターゲット編集を約2倍、または約3倍、または
約5倍、または約10倍、または約30倍減少させる。
【0076】
以下の実施例は、本発明の種々の実施形態を例示するために提供される。実施例は例示
であり、本発明を限定することを決して意図していない。
【0077】
[実施例1]
材料および方法
プラスミド構築
野生型ADAR2触媒ドメインに融合されたλNペプチドをコードするpcDNA 3
.1+プラスミド(Thermo Fisher Scientific)を入手した(
Montiel-Gonzalez,et al.(2016)Nucleic Aci
ds Res.,44:e157;Montiel-Gonzalez,et al.(
2013)Proc.Natl.Acad.Sci.,110:18285-18290
)。エディターゼ
E488Q cDNAを、野生型エディターゼのオーバーラップPCR
によって作製し、pcDNA3.1+にクローニングした。HAエピトープの2つのコピ
ーおよびSV40 NLSの3つのコピーをハイブリッドエディターゼのフレームにイン
フレームでおよびN末端に挿入することによって、両バージョンのエディターゼをpcD
NA3.1+中で改変した(pGM1090、野生型;pGM1091、E488Q)。
Mecp2-BoxBガイドについては、3つの異なるMecp2 G>A突然変異を表
す合成オリゴヌクレオチド、およびそれらのアンチセンス配列を、Bsa1オーバーハン
グとアニーリングし、pENTR/U6ポリリンカー[pGM1099(W104X)、
pGM1181(306H)、pGM1085(R106Q)](Thermo Fis
her Scientific)にクローニングした。オフターゲットA-Gミスマッチ
を含むMecp2-BoxBガイド(pGM11089)もpENTR/U6にある。M
ecp2編集基質については、マウスMecp2 E1アイソフォームcDNA(Gen
Bank寄託番号NP_001075448.1)のEcoRI-KpnI断片を、pE
GFP-N3(Clontech)のマルチクローニングサイトにクローニングした。M
ecp2の個々のG>A突然変異を、同じ制限酵素部位のオーバーハングを用いてオーバ
ーラップPCRによって作製し、pEGFP-N3(Thermo Fisher Sc
ientific)のeGFPとの融合タンパク質としてインフレームでクローニングし
た。全てのサブクローニングを配列分析によって検証した。プラスミド構築およびPCR
増幅で使用したプライマー配列を表1に示す。
【表1】
【0078】
プラスミド構築物
λNペプチドと野生型ADAR2触媒ドメインの融合cDNA(エディターゼ)を含む
最初の構築物が記載されている(Montiel-Gonzalez,et al.(2
016)Nucleic Acids Res.,44:e157;Montiel-G
onzalez,et al.(2013)Proc.Natl.Acad.Sci.,
110:18285-18290)。これを、HAエピトープタグの2つのコピー、引き
続いてハイブリッドエディターゼ(pGM1090)にインフレームおよびN末端のSV
40 NLSの3つのコピーを含むよう改変した。これを行うために、HAエピトープタ
グの2つのコピーおよびコザック配列をコードする2つの一本鎖オリゴヌクレオチドを、
EcoRIおよびBspeIオーバーハングとアニーリングし、λNドメイン配列に5’
で連結した。SV40 NLSの3つのコピーを、pECFP-Nuc(Clontec
h)からのPCRによって増幅し、BspEIオーバーハングを使用してHAエピトープ
タグとλNドメインの間に付加した。ADAR2触媒ドメインにE488Q突然変異を含
むプラスミドpGM1091を、同じステップを使用して作製した。
【0079】
AAV形質導入実験に使用したプラスミドpGM1258は、シナプシンIプロモータ
ーの制御下にあるエディターゼcDNA、およびそれぞれヒトU6プロモーターの制御下
にあるオフターゲットA-Gミスマッチを有するMecp2R106QガイドDNAの6
つのコピーを含む。U6-Mecp2R106Qガイド領域を導入するために、ヒトU6
プロモーターおよびプラスミドpX552(60958;Addgene;Swiech
,et al.(2015)Nat.Biotechnol.,33:102-106)
からのCRISPR sgRNA配列を制限消化(NdeI/ApaI)によって除去し
、6つのU6-Mecp2R106Qガイド配列をこれらの部位の間に2つのステップで
挿入した。最初のステップで、U6-Mecp2R106Qガイド領域の3つのコピーを
、以下の制限部位:NdeI/MfeI、MfeI/SpeIおよびSpeI/NheI
+ApaI(pGM1257)を有するPCRアンプリコン(pGM1108鋳型)の4
方向ライゲーションによってpX552にクローニングした。第2のステップで、U6-
Mecp2R106Qガイド領域の3つの追加のコピーを、以下の制限部位:NheI/
SacI、SacI/AfIIIおよびAfIII/ApaIを付加するプライマーを使
用して、pGM1108からのPCR増幅によって作製した。最終プラスミドpGM12
58を、NheI/ApaIで消化したpGM1257の制限、および3つのU6-Me
cp2R106Q PCRアンプリコンによる4方向ライゲーションによって作製した。
エディターゼcDNAをpGM1258に導入するために、エディターゼのORFに対応
する配列をプラスミドpGM1091から増幅し、NcoIおよびEcoRIオーバーハ
ングを使用して、pGM1257のシナプシンIプロモーターの下流に付加した。
【0080】
AAVベクターおよびウイルス調製
ヒトシナプシンIプロモーターを含むAAV1/2バックボーンベクター、pX552
を、Addgeneから入手した(プラスミド60958;Swiech,et al.
(2015)Nat.Biotechnol.,33:102-106)。ガイドcDN
A(pGM1186、エディターゼのみ;pGM1258、エディターゼとR106Qガ
イド)の6つのコピーを用いないでおよび用いて、eGFP-KASHコード配列をHA
タグ付きNLSエディターゼcDNAで置き換えることによってpX552を改変した。
ウイルスを作製する前に、エディターゼおよびガイド配列を配列分析によって検証した。
【0081】
各AAV1/2キメラベクターを、アデノウイルスフリートランスフェクション法(M
atsushita,et al.(1998)Gene Ther.,5:938-9
45;Earley,et al.(2017)J.Virol.,91:e01980
-16)によって、1ベクター当たり3つの225cm2フラスコのスケールで、ヒト胎
児由来腎臓293(HEK293)細胞で作製した。各フラスコで、約2×107個のH
EK293細胞を、DNA:PEI重量比1:2でポリエチレンイミン(PEI)と混合
した以下の4つのプラスミドDNA合計45μgでトランスフェクトした。プラスミドD
NA混合物は、15μgのpHelper(Agilent)、それぞれ7.5μgのp
HLP19-1およびpHLP19-2、ならびに2つの末端逆位配列(ITR)を有す
るAAVベクターゲノム配列を含むAAVベクターエディターゼ組換えプラスミドの1つ
(15μg)を含んでいた。pHLP19-1はAAV2 Repタンパク質およびAA
V1 VPタンパク質を供給するAAV1ヘルパープラスミドであり、pHLP19-2
はAAV2 Repタンパク質およびAAV2 VPタンパク質を供給するAAV2ヘル
パープラスミドである(Grimm,et al.(2003)Blood 102:2
412-2419)。トランスフェクションの3日後、細胞を収集した。次いで、AAV
ベクター粒子を細胞溶解によって細胞から回収し、HiTrap(商標)ヘパリンカラム
(GE Healthcare;Desterro,et al.(2003)J.Ce
ll Sci.,116:1805-1818)を使用して精製した。各ウイルス力価を
、エディターゼコード配列に対して作製されたプローブを使用した定量的ドットブロット
アッセイによって決定した。
【0082】
細胞培養
Neuro2A細胞(ATCC CCL-131)を、5%CO2加湿インキュベータ
ー内37℃で、10%FBS(ロット番号AAC20-0955;HyClone)中D
MEM(Thermo Fisher Technologies)に維持した。初代ニ
ューロンを、標的相同組換え(Janelia Farms)によって作製され、遺伝子
型判定によって特徴付けられたMecp2R106Qマウス系統から誘導した。全ての動
物実験が、オレゴン健康科学大学の動物実験委員会によって承認された。子(P0)を断
頭によって殺し、脳を25 mM Hepesを含む氷冷ハンクス基礎塩溶液(HBSS
、pH7.4)中で解剖した。個々の海馬を髄膜なしで切除し、遺伝子型によってプール
した。組織を、37℃で10分間、HBSS中1%トリプシンおよび0.01%DNas
e Iで処置した。組織片をHBSS中室温で3回すすぎ、25mMグルコース、1%ペ
ニシリン/ストレプトマイシン、1%ウマ血清(ロット番号B02307-7021;H
yClone)、および1%FBSを含む最小必須培地(Gibco)で分離した。ニュ
ーロンを、0.4μmフィルターを通して濾過することによって分離し、Neuroba
sal-A(Thermo Fisher Scientific)、1×Glutam
ax(Thermo Fisher Scientific)、2%B27(Therm
o Fisher Scientific)、およびペニシリン/ストレプトマイシンか
らなるニューロン増殖培地中、ポリ-L-リジンコーティング皿に12ウェル皿中1ウェ
ル当たり5×105個細胞、または96ウェルガラスチャンバー中5×104個の密度で
蒔いた。24時間後、ニューロンに完全な培地交換を受けさせて細胞破片を除去した。2
~3日毎に半分の培地を交換した。細胞を5%CO2中37℃で維持した。
【0083】
Mecp2R106Qマウスの作製および遺伝子型判定
Mecp2R106Qマウスを作製するための標的化ベクターは、Mecp2エクソン
3、引き続いてイントロン3のフリッパーゼ認識標的(frt)隣接ネオマイシンカセッ
ト、Mecp2エクソン4の最初の1.2kb、およびホスホグリセリン酸キナーゼプロ
モーター(PGK)から発現されるネオマイシン耐性遺伝子からなっていた。線形構築物
をマウス胚性幹細胞(mESC)に電気穿孔し、正しく標的化されたクローンをG418
感受性および配列決定によって同定した。ノックインMecp2R106Q対立遺伝子を
発現するマウスを、標準的な手順によってmESCから作製した。ネオマイシン耐性カセ
ットを、Mecp2R106Qマウスと、Rosa 26遺伝子座からのフリッパーゼリ
コンビナーゼを発現するマウス(在庫番号009086;Jackson Labs)を
交配することによって除去した。カセットの除去を配列決定によって確認した。
【0084】
Mecp2遺伝子の第3のイントロンの領域を増幅する以下のプライマー:Mecp2
-R106Q Fwd(5′ ggacctatgtatgatgaccc 3′(配列
番号50))およびMecp2-R106Q Rev(5′ ggtcattgggct
agactgaa 3′(配列番号51))を使用して、Mecp2R106Qマウスの
遺伝子型判定を実施した。Mecp2R106Qノックイン動物のアンプリコンは、ネオ
マイシンカセットを除去するために使用された残りのfrt部位を含んでいるので、PC
R産物が野生型よりも93塩基対大きくなっている(392bp対299bp)。
【0085】
RNA編集
N2A細胞を分析するために、12ウェルプレート中1ウェル当たり1.3×103個
細胞の密度で細胞を播種した。24時間後、Opti-MEM(商標)低血清培地(Th
ermo Fisher Scientific)中2:1比のLipofectami
n(商標)2000(Thermo Fisher Scientific)とDNAを
使用して、細胞を野生型またはE488Qエディターゼ(pGM1090および1091
)、1コピーのガイド(pGM1099、pGM1181またはpGM1108)、およ
びMecp2-egfp cDNA(pGM1174、pGM1172またはpGM11
73)を含むプラスミドでトランスフェクトした。1ウェル当たり添加したプラスミドD
NAの量は、125ngの標的、250ngのエディターゼおよび2.5μgのガイドで
あった。72時間後、細胞を収集し、製造元の指示に従ってPurelink(登録商標
)RNA Miniキット(Ambion)を使用して、全RNAを単離した。TURB
O DNAフリー(商標)キット(Ambion)を使用して、残留プラスミドDNAを
除去した。全RNAを、SuperScript(登録商標)III First-St
rand Synthesis System(Life Technologies)
を使用して逆転写し、オリゴdTを使用してプライミングした。トランスフェクトMec
p2-egfp cDNAを、pEGFP-N3のCMVプロモーターの5’プライマー
およびegfp遺伝子の逆方向プライマーを使用したPCRによって配列分析のために増
幅した。初代ニューロンの編集分析のために、DIV7で、5×105個の海馬初代ニュ
ーロンを、細胞1個当たり3~6×104個ウイルスゲノムの感染多重度でAAV1/2
で形質導入した。ウイルス量は、全培地量の5%を超えなかった。トランスフェクション
1週間後に細胞を収集し、トランスフェクトN2A細胞について記載されるように編集効
率について分析した。
【0086】
逆転写PCR(RT-PCR)およびPCR産物の直接配列決定によって、AからIへ
の編集の効率を決定した。アンチセンス鎖からの配列ピーク高さの定量化を、Bioed
itソフトウェアパッケージ(mbio.ncsu.edu/BioEdit/ bio
edit.html;File > Batch Export of Raw Seq
uence Trace Data)を使用して、四色素トレース配列を処理することに
よって決定した。次いで、各部位での編集量を、所与の部位でのT(非編集)およびC(
編集)ピークの最大高さを使用し、編集されたcDNAの百分率を計算して決定した{1
00%×[C高さ/(T高さ+C高さ)]}。5%編集検出限界を、比率が低下するR1
06Q突然変異体と野生型Mecp2プラスミドを含む混合物のG-Aピーク高さを測定
することによって決定した。センス鎖のA/Gピーク高さを使用するよりも正確であるた
め、アンチセンス鎖のC/Tピーク高さを定量化した(Eggington,et al
.(2011)Nat.Commun.,2:319)。しかしながら、明確にするため
に、全てのクロマトグラムを逆相補鎖で示している。
【0087】
ウエスタンブロッティング
AAV1/2で形質導入された初代海馬ニューロンを、100μLの全細胞溶解緩衝液
(25mM トリス、pH7.6、150mM NaCl、1%Igepal CA-6
30;Sigma)、1%デオキシコール酸、0.1%SDS、プロテアーゼ阻害剤(完
全EDTAフリー;Roche)、1mM βメルカプトエタノール、および250ユニ
ット/mLベンゾナーゼ(Sigma-Aldrich)に溶解した。可溶化物を4℃で
10分間、9300×gで遠心分離し、可溶性画分を単離した。BCAタンパク質アッセ
イキット(Pierce Biotechnology)を使用して、タンパク質濃度を
測定した。等量のタンパク質可溶化物を、Mops-SDS泳動緩衝液(Thermo
Fisher Scientific)中NuPage(登録商標)4~12%ビス-ト
リスゲル(Thermo Fisher Scientific)で分離し、タンパク質
をニトロセルロース膜(GE Healthcare Life Sciences)に
ブロッティングした。膜を、1x TBST(0.05%Tween(登録商標)20を
含むTBS)中3%BSAで1時間ブロッキングし、次いで、ウサギ抗mMeCP2(C
ovance)またはウサギ抗β-アクチン(8227;Abcam)のいずれかと4℃
で一晩インキュベートした。1xTBSTで3回洗浄した後、ブロットを抗ウサギIgG
DyLight(登録商標)680(1:10000希釈;Thermo Scien
tific)と1時間インキュベートした。Odyssey(登録商標)Imaging
System(LI-COR Biosciences)を使用してブロットを定量化
した。
【0088】
免疫染色
海馬初代ニューロンを、室温で20分間、PBS中4%パラホルムアルデヒドで固定し
た。固定した細胞を、室温で10分間、1×PBSG(1×PBS中0.1Mグリシン)
で2回洗浄した。次いで、細胞をブロッキングし、4°Cで1時間、透過処理し[0.5
%Igepal CA-630、Sigma;1xPBS中3%BSA(ソース)]、加
湿チャンバー中4℃で一晩、MeCP2(ウサギmAb D4F3;Cell Sign
aling)およびHA(ラットmAb 3F10;Roche)に対して産生された一
次抗体とインキュベートした。細胞を0.5%Igepalを含む1×PBSで3回洗浄
し、二次抗体Alexa 488およびAlexa 568(Thermo Fishe
r Scientific)と1時間インキュベートした。0.5%Igepalを含む
1×PBSでさらに洗浄した後、細胞を300nM DAPIと5分間インキュベートし
、次いで、1×PBSで再度洗浄した。細胞を、ProLong(登録商標)Gold褪
色防止試薬(Thermo Fisher Scientific)を使用して一晩マウ
ントした。全ての画像を、40倍水浸対物レンズを使用して、Zeiss 710共焦点
顕微鏡で0.5μmの光学切片のzスタックとして取得した。HAおよびMeCP2蛍光
像を、全ての試料にわたって同じ設定を使用して取得した。総細胞数または抗体陽性細胞
の数を、ImageJ細胞カウンタープラグイン(国立衛生研究所、imagej.ni
h.gov/ij、バージョン1.60_65(32ビット))によって決定した。
【0089】
統計分析
全ての統計は、GraphPadバージョン6.0ソフトウェア(Prism)を使用
して実施した。N2A細胞でのAからIへの編集の百分率を、一元配置分散分析を使用し
て分析し、引き続いて、ボンフェローニ事後検定を使用して分析した。Mecp2R10
6Q/y形質導入ニューロンでのAからIへの編集のレベル、MeCP2タンパク質レベ
ルを比較するウエスタンブロット、およびヘテロクロマチン構造でのMeCP2濃縮を示
すニューロンの数を、それぞれ対応のないt検定を使用して分析した。全ての実験結果を
平均±SDとして表す。
【0090】
結果
異種的に発現されるMecp2 mRNAへの標的化エディターゼによってMecp2
G>A突然変異を修復することができる
ヒトMECP2には古典的レット症候群を引き起こす少なくとも3つのG>A突然変異
がある。MeCP2
R106QとMeCP2
W104Xの2つの突然変異はメチルDNA
結合ドメイン(MBD)内に存在し、1つの、MeCP2
R306HはNCoR相互作用
ドメイン(NID)に存在する(Fyfe,et al.(2003)J.Child.
Neurol.,18:709-713;Lyst,et al.(2013)Nat.
Neurosci.,16:898-902)(
図1A)。エディターゼがこれらの突然
変異を修復できるかどうかを決定するために、エディターゼ、ガイドRNAおよびMec
p2 cDNAのN2A細胞への一過的トランスフェクション後に、編集を試験した。異
種的に発現されるMeCP2タンパク質を内因性のものと区別するために、異種的に発現
されるMeCP2にC末端eGFPをタグ付けした。エディターゼおよびMecp2-g
fp cDNAが、サイトメガロウイルス(CMV)最初期遺伝子プロモーター-エンハ
ンサーから発現され、ガイドが、ヒトU6核内低分子RNA遺伝子プロモーターから発現
された。ADAR2が一次転写産物として核内の内因性mRNAを編集するので、λNペ
プチドに加えて、シミアンウイルス40ラージT抗原核局在化シグナル(NLS)の3つ
のコピーを、エディターゼに付加した(Desterro,et al.(2003)J
.Cell.Sci.,116:1805-1818)。各ガイドRNAは、λNペプチ
ドによって認識される配列を表す2つのステムループ(BoxB)を含んでいる。1つの
BoxBステムループは標的Aの5’の16~18塩基に位置し、2つ目は標的Aの3’
の10塩基に位置する(
図1B)。標的Aに対するステムループの数および位置は、研究
に基づき(Montiel-Gonzalez,et al.(2016)Nuclei
c Acids Res.,44:e157;Montiel-Gonzalez,et
al.(2013)Proc.Natl.Acad.Sci.,110:18285-
18290)、トランスフェクション分析でMecp2について経験的に決定した。編集
は、相補的ガイドのその部位でのCミスマッチで最適であり(Schneider,et
al.(2014)Nucleic Acids Res.,42:e87;Wong
,et al.(2001)RNA 7:846-858;Kallman,et al
.(2003)Nucleic Acids Res.,31:4874-4881)、
全てのMecp2ガイドmRNAがこのミスマッチを含んでいる。
【0091】
N2A細胞を、エディターゼ、MeCP2-GFPをコードする別個のプラスミド、お
よびガイド配列を含むまたは欠く第3のプラスミドでコトランスフェクトした。3日後、
サンガー法を使用して、Mecp2-gfp mRNAの標的領域から合成されたcDN
Aを分析した(
図1Cおよび
図1D)。標的A位置での相対ピーク高さを決定することに
よって、編集効率を測定した。3つ全てのMecp2突然変異がガイド依存的に編集され
、二本鎖RNAを必要とするADAR2媒介編集と一致していた(
図1Cおよび
図1D)
。標的Aの編集%は、ADAR2触媒ドメインの配列優先性と同様に、5’ヌクレオチド
の環境によって変化した(Eggington,et al.(2011)Nat.Co
mmun.,2:319;Lehmann,et al.(2000)Biochemi
stry 39:12875-12884)。具体的には、インビトロスクリーニングに
基づいて、ADAR2触媒ドメインによるA脱アミノ化に最適な5’ヌクレオチド階層は
U>A>C>Gであり、最も最適な3’ヌクレオチドはC~G~A>Uである。W104
X(UAG)が最も効率的に編集され(76±10%)、R306H(CAC、34±3
%)およびR106Q(CAA、25±2%)が続くが、Mecp2の場合、統計学的に
差はなかった(
図1D)。Mecp2 G>A突然変異を修復するためのエディターゼシ
ステムをさらに最適化するために、ヒト患者ではW104X突然変異よりも一般的であり
、R306Hよりも重度の形態のレット症候群を引き起こすために、R106Qに焦点を
当てた(Fyfe,et al.(2003)J.Child.Neurol.,18:
709-713;Cuddapah,et al.(2014)J.Med.Genet
.,51:152-158)。
【0092】
デアミナーゼドメインの突然変異、E488Qはハイブリッドエディターゼの編集効率
を増加させる
E488Q突然変異を含むhADAR2触媒ドメインは、触媒速度(Montiel-
Gonzalez,et al.(2016)Nucleic Acids Res.,
44:e157;Kuttan,et al.(2012)Proc.Natl.Aca
d.Sci.,109:E3295-E3304)と基質RNAに対する触媒ドメインの
親和性(Lehmann,et al.(2000)Biochemistry 39:
12875-12884)の両方を増加させることによって、A>I編集効率を増加させ
る。この特徴により、E488Q突然変異が、好ましくない5’および3’環境のより高
い編集レベルを達成することが可能になる(Montiel-Gonzalez,et
al.(2016)Nucleic Acids Res.,44:e157;Kutt
an,et al.(2012)Proc.Natl.Acad.Sci.,109:E
3295-E3304)。Editase
E488Qが、最適以下5’Cを有するMec
p2
R106Qの標的Aの編集効率を増加させるかどうかを試験するために、N2A細胞
をMecp2
R106Q-egfpおよびエディターゼ
E488Q cDNAでコトラン
スフェクトした。配列分析により、編集にはガイド発現が必要であり、Mecp2 mR
NAの編集%が、野生型エディターゼと比較してエディターゼ
E488Qで約2倍増加す
ることが示された(51±11%対22±5%、n=3、P<0.01)(
図2A)。
【0093】
ハイブリッドエディターゼに野生型hADAR2またはhADAR2
E488Q触媒ド
メインを使用して、トランスフェクトMecp2
R106Q-egfp cDNAのガイ
ド領域内に1つのオフターゲット編集部位を検出した(
図2B)。この部位で編集すると
、サイレントコドン変化T105T(ACA>ACG)が生じる。オフターゲット部位で
のGミスマッチは、トランスフェクト基質におけるオフターゲット編集を減少させること
ができる(Vogel,et al.(2014)Angew Chem.Int.Ed
.Engl.,53:6267-6271)。GミスマッチがMecp2 mRNAのオ
フターゲット編集も減少させるかどうかを決定するために、Mecp2
R106Q-eg
fp cDNA、エディターゼ
E488Q、および近くのオフターゲットAでGミスマッ
チを有するガイドをコードするプラスミドでトランスフェクトしたN2A細胞で編集効率
を分析した(
図2C)。A-Gミスマッチを含むガイドでエディターゼを標的とした場合
、オフターゲット編集の量が有意に減少した(4.9±0%ミスマッチあり、33±5%
ミスマッチなし、n=3、P<0.0001;
図2Dおよび
図2E)が、標的Aでの編集
には有意な効果はなかった(
図2Dおよび
図2F)。編集イベントの全てで、ガイドRN
Aの存在が必要であった(
図2Eおよび
図2F)。
【0094】
部位特異的RNA編集は内因性のレットの原因となる突然変異を修復し、タンパク質レ
ベルおよびMeCP2機能を回復する
次に、エディターゼ
E488Qが(i)内因性Mecp2 mRNAのR106Qミス
センス突然変異を修復し、(ii)タンパク質レベルを回復し、(iii)マウスでのレ
ット様症状を逆転するのに必要な特徴的な機能的特徴であるヘテロクロマチンに結合する
MeCP2の能力を回復することができるかどうかを試験した(Garg,et al.
(2013)J.Neurosci.,33:13612-13620)。これらの試験
では、ニューロンをマウスから単離し、内因性Mecp2遺伝子にR106Q突然変異を
含むように操作した。培養ニューロンを、2つのAAV(AAV1/2)のいずれかで形
質導入した。両ウイルスがヒトシナプシンIプロモーターの制御下でエディターゼ
E48
8Qを発現し(Swiech,et al.(2015)Nat.Biotechnol
.,33:102-106)、1つのウイルスはそれぞれがヒトU6プロモーターの制御
下にある6コピーのガイド(オフターゲットミスマッチガイド;
図2C)をさらに含んで
いた。他のウイルスは対照として機能し、全てのガイド配列を欠いていた。海馬ニューロ
ンをP0 Mecp2
R106Q/yマウスから作製し、インビトロで7日(DIV7)
のAAV1/2ハイブリッドカプシドを有するガイド含有または対照AAVベクターで形
質導入した。さらに7日間ウイルスを発現させた後、Mecp2 cDNAを実験培養物
および対照培養物から調製し、サンガー法によって分析した。エディターゼとガイドの両
方を発現する培養物では、Mecp2 mRNAの72±5%が修復されるが(
図3A)
、ガイドを欠く対照ウイルスで形質導入したニューロンでは編集が検出されなかった。R
106Qでの編集に加えて、配列分析は、Mecp2 cDNA内のいくつかのオフター
ゲット編集部位も同定した(
図3B)。オフターゲット部位は、ガイドRNAに相補的な
領域内で主に発生したが、1つのイベントはガイドの外(N126S)で発生した。
【0095】
ウエスタンブロッティングによりAAV1/2形質導入培養物中のMeCP2タンパク
質の量を測定することによって、RNA編集の機能的結果を試験した。MBDの他の突然
変異と同様に(Goffin,et al.(2011)Nat.Neurosci.,
15:274-283;Brown,et al.(2016)Hum.Mol.Gen
et.,25:558-570)、MeCP2
R106Qタンパク質レベルは野生型レベ
ルと比較して低下している(
図4)。突然変異MeCP2タンパク質のレベルの低下は、
不安定化が原因である可能性がある(Goffin,et al.(2011)Nat.
Neurosci.,15:274-283)。突然変異初代ニューロンにおけるエディ
ターゼおよびガイドの発現は、エディターゼのみの発現と比較して、MeCP2タンパク
質レベルを約3倍増加させた(
図4;12.9±1%ガイドなしと比較して、35.3±
2%ガイドあり、n=3、P<0.001)。これは、編集後の内因性疾患の原因となる
タンパク質の機能的回復を初めて実証している。
【0096】
MeCP2は、インビトロとインビボの両方でメチル-CpGに高い親和性で結合し(
Skene,et al.(2010)Mol.Cell.,37:457-468;L
agger,et al.(2017)PLoS Genet.,13:e100679
3)、これは正常な機能にとって重要な特性である。マウス細胞では、MeCP2のMB
Dの突然変異により、mCGが豊富な増幅サテライト配列を含むヘテロクロマチンへの結
合が減少する(Brown,et al.(2016)Hum.Mol.Genet.,
25:558-570;Heckman,et al.(2014)eLife 3:e
02676)。MBD突然変異であるMeCP2
R106Qも、インビトロでメチル-C
pGへの結合減少を示す(Yang,et al.(2016)ACS Chem.Bi
ol.,11:2706-2715)。MeCP2
R106Qが細胞内の結合を同様に減
少させたかどうか、およびG>A突然変異Mecp2 RNAの編集がヘテロクロマチン
の濃縮を回復するかどうかを決定するために、核を、ガイドを含むまたは対照としてガイ
ドを含まない、HAタグ付きエディターゼをコードするAAV1/2で形質導入したMe
cp2
R106Q/yニューロン培養物で免疫標識した(
図5)。DNAのA-Tに富む
領域に強く結合する蛍光指示薬であるDAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルイ
ンドール)を使用して、核およびヘテロクロマチンを同定した。野生型ニューロン(Me
cp2
+/y)からの培養物では、核が、機能的なMBDを反映して、DAPI染色ヘテ
ロクロマチン(構造)で古典的MeCP2濃縮を示した(
図5A)。対照的に、ガイド配
列を欠いたエディターゼウイルスで形質導入したMecp2
R106Q/y同胞から調製
した培養物では、MeCP2免疫蛍光が、DNAへの結合を妨げるMBDの突然変異が予
想されるように、核全体に散在して分布していた(Goffin,et al.(201
1)Nat.Neurosci.,15:274-283;Heckman,et al
.(2014)eLife 3:e02676)(
図5B)。染色の強度も野生型核より
低く、おそらく不安定化MeCP2タンパク質を反映している。対照的に、エディターゼ
とガイドRNAの両方を発現するMecp2
R106Qニューロンは、野生型核と同様の
レベルまでのMeCP2免疫蛍光の明確な増加、およびヘテロクロマチン構造でMeCP
2タンパク質の濃縮を示し、MBDの機能的回復を示した(
図5Cおよび
図5D)。免疫
蛍光の結果を定量化するために、ガイドの存在に関係なく、細胞の同じ割合でエディター
ゼが発現されることを3つの実験で最初に決定した(エディターゼのみ67±7%、エデ
ィターゼおよびガイド67±10%;それぞれn=134および137細胞;
図5E)。
次いで、エディターゼおよびガイドで形質導入された培養物において、エディターゼを発
現している細胞の74±11%(
図5F)および全細胞の49±8%が、ヘテロクロマチ
ン構造でMeCP2の濃縮を示している(
図5G)ことが決定された。MeCP2の濃縮
は、ガイドを欠くウイルスで形質導入されたMecp2
R106Q核のヘテロクロマチン
構造内で検出されず、編集がガイドの存在に依存していることを示す配列決定結果と一致
している。
【0097】
ADARは、アフリカツメガエル卵母細胞で外因性mRNAのG>A突然変異を修復す
るために使用されてきた(Woolf,et al.(1995)Proc.Natl.
Acad.Sci.,92:8298-8302)。本明細書に提示されるデータは、操
作されたhADAR2触媒ドメインを使用した部位特異的RNA編集が内因性突然変異m
RNAを修復し、突然変異によって引き起こされる細胞欠陥を逆転することができること
を実証している。
【0098】
マウスおよびヒトでは、3つの遺伝子がADARタンパク質をコードしているが、AD
AR1とADAR2のみがAからIへの触媒活性を示す(Nishikura,K.(2
010)Annu.Rev.Biochem.,79:321-349)。天然ADAR
媒介編集は、脳のタンパク質機能を転写後に調節するために非常に重要であり、イオンチ
ャネルおよび受容体で最初に示されている(Bhalla,et al.(2004)N
at.Struct.Mol.Biol.,11:950-956;Sommer,et
al.(1991)Cell 67:11-19;Burns,et al.(199
7)Nature 387:303-308)が、多くの他のタンパク質および非コード
RNAにも及ぶことが現在知られている(Chen,et al.(2012)Curr
.Top.Microbiol.Immunol.,353:111-121;Nish
ikura,K.(2016)Nat.Rev.Mol.Cell Biol.,17:
83-96)。ADAR2触媒ドメインは、異種mRNAを編集するその能力のため(V
ogel,et al.(2014)Angew Chem.Int.Ed.Engl.
,53:6267-6271;Schneider,et al.(2014)Nucl
eic Acids Res.,42:e87;Montiel-Gonzalez,e
t al.(2016)Nucleic Acids Res.,44:e157;Mo
ntiel-Gonzalez,et al.(2013)Proc.Natl.Aca
d.Sci.,110:18285-18290;Wong,et al.(2001)
RNA 7:846-858)およびその十分特徴付けられた編集機序のため(Kutt
an,et al.(2012)Proc.Natl.Acad.Sci.,109:E
3295-E3304;Matthews,et al.(2016)
Nat.Struct.Mol.Biol,23:426-433)に、焦点を当てら
れた。実際、エディターゼが触媒ドメイン内にE488Q突然変異を含む場合に、Mec
p2 mRNAの編集効率の向上が見られた(Montiel-Gonzalez,et
al.(2016)Nucleic Acids Res.,44:e157;Kut
tan,et al.(2012)Proc.Natl.Acad.Sci.,109:
E3295-E3304;Phelps,et al.(2015)Nucleic A
cids Res.,43:1123-1132)。二本鎖RNAに複合化されたhAD
AR2触媒ドメインの構造の解明(Matthews,et al.(2016)Nat
.Struct.Mol.Biol.,23:426-433)が、MeCP2および他
の突然変異についての編集効率および特異性をさらに最適化するための他の突然変異を作
製するための価値ある資源を提供する(Wang,et al.(2016)Nucle
ic Acids Res.,44:9872-9880)。以前の取り組みとは対照的
に、ADARは通常、核内の一次転写産物を編集するため、ここでの構築物の全てが、特
に内因性mRNAの編集効率を増加させるNLSを含んでいた(Wong,et al.
(2001)RNA 7:846-858)。
【0099】
トランスフェクト細胞では、標的Aでのエディターゼ
E488Qを使用したより高い編
集効率により、ガイド領域内の1つの部位でのオフターゲット編集も高くなった。単一オ
フターゲット編集部位は、G-Aミスマッチを使用することによって減少した(Schn
eider,et al.(2014)Nucleic Acids Res.,42:
e87)。特に、標的mRNA以外の高度に発現されているmRNAを表す5つのcDN
Aの配列決定は、オフターゲット編集を示さなかった(Montiel-Gonzale
z,et al.(2016)Nucleic Acids Res.,44:e157
)。しかし、また驚くべきことに、ニューロンを用いた本試験では、オフターゲット編集
部位が、トランスフェクトMecp2 mRNAと内因性Mecp2 mRNAとの間で
異なっていた。具体的には、内因性の修復されたMecp2 mRNAでは、cDNAか
ら発現されたMecp2 mRNAには存在しないガイド領域内および外側のいくつかの
追加のオフターゲット編集部位が見られた(
図3B)。トランスフェクトMecp2 m
RNAと内因性Mecp2 mRNAとの間のオフターゲット編集部位の違いは、RNA
の折りたたみおよび他の下流プロセシングイベントに影響を及ぼし得る配列の違いを反映
している可能性がある。重要なことに、内因性Mecp2 mRNAのオフターゲット部
位のいずれもレット症候群を引き起こすことが報告されていない(Fyfe,et al
.(2003)J.Child Neurol.,18:709-713)。レット症候
群マウスモデルをさらに使用して、症候性マウスの野生型MeCP2の回復によって細胞
および行動症状が逆転することを示すことができる(Guy,et al.(2007)
Science 315:1143-1147;Sinnett,et al.(201
7)Mol.Ther.Methods Clin.Dev.,5:106-115;G
adalla,et al.(2017)Mol.Ther.Methods Clin
.Dev.,5:180-190;Garg,et al.(2013)J.Neuro
sci.,33:13612-13620;Gadalla,et al.(2013)
Mol.Ther.,21:18-30)。
【0100】
[実施例2]
Mecp2突然変異Mecp2
317G>Aを有するマウスを使用して、インビボで本
方法を試験した。Mecp2
317G>A突然変異は、R106Qアミノ酸変化を有する
MeCP2をもたらす。手短に言えば、Mecp2突然変異Mecp2
317G>Aを有
するマウスを、6コピーのガイドRNAを使用してまたは使用しないで、本発明のE48
8Q突然変異を有するエディターゼをコードするAAVベクターで処置した。その向神経
性の特性のために、PHP.Bカプシドを有するAAVベクター(AAV9変異体)を使
用した(Hordeaux et al.(2018)Mol.Ther.,26(3)
:664-668)。1.1×10
10ウイルスゲノム相当物(vge)のAAVをマウ
スの海馬に定位的に注射した。直接ウイルス注射の3~4週間後、マウスをと殺し、Me
CP2機能を脳で検出した。表2に見られるように、インビボでの効率的な標的化RNA
編集および脳のMeCP2機能の回復が観察された。さらに、RNA配列分析に基づいて
、歯状顆粒ニューロンでのAからIへの編集効率が39%であると決定され、CA1ニュ
ーロンでのAからIへの編集効率が64%であると決定された。
図6に見られるように、
歯状ヘテロクロマチンのMeCP2強度は、ガイドRNAを有さないAAVを注射したマ
ウスと比較して、ガイドRNAを有するAAVを注射したマウスの方で高かった。これら
の結果は、MeCP2 DNA結合能力の救済を示している。
【表2】
【0101】
表2:インビボでエディターゼ酵素を発現し、機能的MeCP2を示す細胞数の定量化
.エディターゼおよびガイドRNAをコードするAAV PHP.BをMecp2317
G>Aマウスの海馬に注射した。注射の3週間後、マウスを免疫組織化学のために処理し
た。非感染細胞からのシグナルを閾値処理した後、注射したマウスの脳切片のHA免疫染
色によってエディターゼ+細胞を同定した。百分率は、DAPIによって同定された細胞
の総数に対するものである。ヘテロクロマチン(構造)内のMeCP2濃縮を示すエディ
ターゼ+細胞の百分率は、MeCP2タンパク質機能の回復を示す。n=864細胞。
【0102】
[実施例3]
プラスミド構築
アミノ末端Flagタグを含む完全長ヒトADAR2をコードする配列を、酵母発現ベ
クターからpcDNA 3.1+(Thermo Fisher Scientific
)にサブクローニングした。完全長ADAR2を動員するよう設計されたMecp2ガイ
ドを発現させるために、合成オリゴヌクレオチドをBsa1オーバーハングとアニーリン
グし、pENTR/U6ポリリンカー[pGM1099(2xBoxBガイドW104X
)、pGM1192(内部ループガイドW104X)、pGM1310(GluA2ステ
ムループW104X](Thermo Fisher Scientific)にクロー
ニングした。Mecp2311G>A(W104X)突然変異を含むMecp2編集基質
は実施例1に記載されている。全てのサブクローニングを配列分析によって検証した。プ
ラスミド構築およびPCR増幅で使用したプライマー配列を表3に示す。
【0103】
細胞培養
HEK293T細胞(ATCC CRL-3216)を、5%CO2加湿インキュベー
ター内37℃で、10%FBS中DMEM(Thermo Fisher Techno
logies)に維持した。
【0104】
RNA編集
完全長ADAR2を使用した編集を分析するために、12ウェルプレート中1ウェル当
たり1.3×10
3個細胞の密度でHEK293T細胞を播種した。24時間後、Opt
i-MEM(商標)低血清培地(Thermo Fisher Scientific)
中2:1比のLipofectamin(商標)2000(Thermo Fisher
Scientific)とDNAを使用して、細胞を完全長ヒトADAR2(pGM1
155)、1コピーのガイド(pGM1099、pGM1192またはpGM1310)
、およびMecp2
311G>A-egfp cDNAをコードするプラスミドでトラン
スフェクトした。1ウェル当たり添加したプラスミドDNAの量は、125ngの標的、
250ngのヒトADAR2および2.5μgのガイドであった。72時間後、細胞を収
集し、製造元の指示に従ってPurelink(登録商標)RNA Miniキット(A
mbion)を使用して、全RNAを単離した。TURBO DNAフリー(商標)キッ
ト(Ambion)を使用して、残留プラスミドDNAを除去した。全RNAを、Sup
erScript(登録商標)III First-Strand Synthesis
System(Life Technologies)を使用して逆転写し、オリゴd
Tを使用してプライミングした。トランスフェクトMecp2
311G>A-egfp
cDNAを、pEGFP-N3のCMVプロモーターの5’プライマーおよびegfp遺
伝子の逆方向プライマーを使用したPCRによって配列分析のために増幅した。
【表3】
【0105】
結果
ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞を、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの
制御下、完全長ヒトADAR2およびMecp2
317G>Aでトランスフェクトした。
ヒトADAR2は、内因性ADAR2を模倣した完全長天然ADAR2分子であった。M
ecp2
317G>A突然変異は、R106Qアミノ酸変化(Mecp2
R106Q)を
もたらす。次いで、細胞を、1)上記の2つのBoxBステムループを有するガイドRN
A(例えば、実施例1参照)、2)GluA2からのR/G結合部位を含むガイドRNA
(Wettengel,et al.(2017)Nucleic Acids Res
.,45(5):2797-2808;Fukuda,et al.(2017)Sci
.Rep.,7:41478)、または3)内部ループを有するガイドRNA(Lehm
ann,et al.(1999)J.Mol.Biol.,291(1):1-13)
で処置した。
図7に見られるように、2つのBoxBステムループを含むガイドRNAを
含むガイドRNAは、完全長ADAR2を動員して、トランスフェクトHEK細胞でMe
cp2 RNAを編集することができた。これらの結果は、標的RNA配列に加えて、通
常は標的RNAに含まれていない配列の存在を含み得る、標的RNAへの完全長ADAR
の動員を実証している。
【0106】
本発明の好ましい実施形態のいくらかを上で記載し、具体的に例示してきたが、本発明
がこのような実施形態に限定されることを意図していない。以下の特許請求の範囲に示さ
れる、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、種々の修正を行うことができる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内の内因性RNAの標的配列を編集する方法であって、
a)RNA結合ドメインに連結されたRNA編集酵素を含む融合タンパク質をコードする核酸分子、および
b)ガイドRNAをコードする核酸分子
を、前記細胞に送達するステップを含み、
前記融合タンパク質は、核局在化シグナルを含み、
前記ガイドRNAは、前記RNA結合ドメインによって特異的に認識される配列を含み、
前記ガイドRNAは、前記内因性RNAの標的配列と特異的にハイブリダイズし、編集されるヌクレオチドでミスマッチを含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0106
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0106】
本発明の好ましい実施形態のいくらかを上で記載し、具体的に例示してきたが、本発明
がこのような実施形態に限定されることを意図していない。以下の特許請求の範囲に示さ
れる、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、種々の修正を行うことができる。
一態様において、本発明は以下を包含する。
[項目1]
細胞内の内因性RNAの標的配列を編集する方法であって、
a)RNA結合ドメインに連結されたRNA編集酵素を含む融合タンパク質をコードす
る核酸分子、および
b)ガイドRNAをコードする核酸分子
を、前記細胞に送達するステップを含み、
前記融合タンパク質は、核局在化シグナルを含み、
前記ガイドRNAは、前記RNA結合ドメインによって特異的に認識される配列を含み
、
前記ガイドRNAは、前記内因性RNAの標的配列と特異的にハイブリダイズし、編集
されるヌクレオチドでミスマッチを含む、方法。
[項目2]
前記内因性RNAが前記細胞の核内にある、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記RNA編集酵素がデアミナーゼである、項目1に記載の方法。
[項目4]
前記RNA編集酵素が、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)である
、項目1に記載の方法。
[項目5]
前記ADARがADAR1、ADAR2、これらの断片、およびこれらの変異体からな
る群から選択される、項目4に記載の方法。
[項目6]
前記ADARが、配列番号55との少なくとも90%の同一性を含む、項目5に記載の
方法。
[項目7]
前記RNA結合ドメインがλNペプチドまたはその変異体である、項目1から6のいず
れか一項に記載の方法。
[項目8]
前記RNA結合ドメインが、配列番号46との少なくとも90%の同一性を含む、項目
7に記載の方法。
[項目9]
前記RNA結合ドメインによって特異的に認識される前記配列がBoxB配列である、
項目1から8のいずれか一項に記載の方法。
[項目10]
前記内因性RNAが中枢神経系細胞で発現されるRNAである、項目1から9のいずれ
か一項に記載の方法。
[項目11]
前記内因性RNAがメチルCpG結合タンパク質2(MECP2)RNAである、項目
10に記載の方法。
[項目12]
前記ガイドRNAが、編集されるヌクレオチドの上流または下流に1つまたは複数のミ
スマッチをさらに含む、項目1から11のいずれか一項に記載の方法。
[項目13]
前記核局在化シグナルが、SV40ラージT抗原核局在化シグナルまたはその変異体で
ある、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
[項目14]
前記核局在化シグナルが、配列番号47または1、2もしくは3つの置換、付加もしく
は欠失を有する配列番号47を含む、項目13に記載の方法。
[項目15]
前記核局在化シグナルがSV40ラージT抗原核局在化シグナルであり、前記RNA結
合ドメインがλNペプチドであり、前記RNA編集酵素がRNAに作用するアデノシンデ
アミナーゼ(ADAR)であり、前記RNA結合ドメインによって特異的に認識される前
記配列がBoxB配列である、項目1に記載の方法。
[項目16]
a)およびb)の前記核酸分子が単一ベクター内に含まれる、項目1から15のいずれ
か一項に記載の方法。
[項目17]
前記ベクターがウイルスベクターである、項目16に記載の方法。
[項目18]
前記ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)である、項目17に記載の方法
。
[項目19]
細胞内の内因性RNAの標的配列を編集する方法であって、ガイドRNAをコードする
核酸分子を前記細胞に送達するステップを含み、
前記ガイドRNAは、RNAに作用する内因性ヒトアデノシンデアミナーゼ(ADAR
)によって特異的に認識される配列を含み、
前記ガイドRNAは、前記内因性RNAの標的配列と特異的にハイブリダイズし、編集
されるヌクレオチドでミスマッチを含む、方法。
[項目20]
前記内因性RNAが前記細胞の核内にある、項目19に記載の方法。
[項目21]
前記ADARがADAR1またはADAR2である、項目19に記載の方法。
[項目22]
前記ADARが、配列番号55との少なくとも90%の同一性を含む、項目21に記載
の方法。
[項目23]
前記内因性RNAがメチルCpG結合タンパク質2(MECP2)RNAである、項目
19に記載の方法。
[項目24]
前記ガイドRNAが、編集されるヌクレオチドの上流または下流に1つまたは複数のミ
スマッチをさらに含む、項目19から23のいずれか一項に記載の方法。
[項目25]
前記内因性ADARが前記ガイドRNAを認識する、項目19から24のいずれか一項
に記載の方法。
[項目26]
前記内因性ADARが、前記内因性RNAのヌクレオチドの塩基を脱アミノ化する、項
目19から25のいずれか一項記載の方法。
[項目27]
前記標的配列の前記編集が、前記標的配列によってコードされるタンパク質のレベルお
よび/または機能を変化させる、項目19から26のいずれか一項に記載の方法。
[項目28]
前記核酸分子がウイルスベクター内に含まれる、項目19から27のいずれか一項に記
載の方法。
[項目29]
前記ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)である、項目28に記載の方法
。
[項目30]
対象の中枢神経系の遺伝性疾患を処置、抑制および/または予防する方法であって、
a)RNA結合ドメインに連結されたRNA編集酵素を含む融合タンパク質をコードす
る核酸分子、および
b)ガイドRNAをコードする核酸分子
を、前記対象に投与するステップを含み、
前記融合タンパク質は、核局在化シグナルを含み、
前記ガイドRNAは、前記RNA結合ドメインによって特異的に認識される配列を含み
、
前記RNA編集酵素は、前記中枢神経系の遺伝性疾患に関連するミスマッチ突然変異を
修正する、方法。
[項目31]
前記中枢神経系の遺伝性疾患がレット症候群である、項目30に記載の方法。
[項目32]
前記ガイドRNAがメチルCpG結合タンパク質2(MECP2)RNAと特異的にハ
イブリダイズし、前記内因性MECP2 RNAの突然変異ヌクレオチドでミスマッチを
含む、項目31に記載の方法。
[項目33]
前記内因性RNAが前記細胞の核内にある、項目30から32のいずれか一項に記載の
方法。
[項目34]
前記RNA編集酵素が、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)である
、項目30から33のいずれか一項に記載の方法。
[項目35]
前記ADARがADAR1、ADAR2およびこれらの断片または変異体から選択され
る、項目34に記載の方法。
[項目36]
前記ADARが、配列番号55との少なくとも90%の同一性を含む、項目35に記載
の方法。
[項目37]
前記RNA結合ドメインがλNペプチドまたはその変異体である、項目30から36の
いずれか一項に記載の方法。
[項目38]
前記RNA結合ドメインが、配列番号46との少なくとも90%の同一性を含む、項目
37に記載の方法。
[項目39]
前記RNA結合ドメインによって特異的に認識される前記配列がBoxB配列である、
項目30から38のいずれか一項に記載の方法。
[項目40]
前記核局在化シグナルが、SV40ラージT抗原核局在化シグナルまたはその変異体で
ある、項目30から39のいずれか一項に記載の方法。
[項目41]
前記核局在化シグナルが、配列番号47または1、2もしくは3つの置換、付加もしく
は欠失を有する配列番号47を含む、項目40に記載の方法。
[項目42]
前記核局在化シグナルがSV40ラージT抗原核局在化シグナルであり、前記RNA結
合ドメインがλNペプチドであり、前記RNA編集酵素がRNAに作用するアデノシンデ
アミナーゼ(ADAR)であり、前記RNA結合ドメインによって特異的に認識される前
記配列がBoxB配列である、項目30に記載の方法。
[項目43]
a)およびb)の前記核酸分子が単一ベクター内に含まれる、項目30から42のいず
れか一項に記載の方法。
[項目44]
前記ベクターがウイルスベクターである、項目43に記載の方法。
[項目45]
前記ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)である、項目44に記載の方法
。
[項目46]
対象の中枢神経系の遺伝性疾患を処置、抑制および/または予防する方法であって、ガ
イドRNAをコードする核酸分子を前記対象に投与するステップを含み、前記ガイドRN
Aは、RNAに作用する内因性ヒトアデノシンデアミナーゼ(ADAR)によって特異的
に認識される配列を含む、方法。
[項目47]
前記中枢神経系の遺伝性疾患がレット症候群である、項目46に記載の方法。
[項目48]
前記ガイドRNAがメチルCpG結合タンパク質2(MECP2)RNAと特異的にハ
イブリダイズし、前記内因性MECP2 RNAの突然変異ヌクレオチドでミスマッチを
含む、項目47に記載の方法。
[項目49]
前記内因性RNAが前記細胞の核内にある、項目46から48のいずれか一項に記載の
方法。
[項目50]
前記ADARがADAR1もしくはADAR2またはこれらの変異体である、項目46
から49のいずれか一項に記載の方法。
[項目51]
前記ADARが、配列番号55との少なくとも90%の同一性を含む、項目50に記載
の方法。
[項目52]
内因性ADARが前記ガイドRNAを認識する、項目46から51のいずれか一項に記
載の方法。
[項目53]
内因性ADARが、前記内因性RNAのヌクレオチドの塩基を脱アミノ化する、項目4
6から52のいずれか一項記載の方法。
[項目54]
前記標的配列の前記編集が、前記標的配列によってコードされるタンパク質のレベルお
よび/または機能を変化させる、項目46から53のいずれか一項に記載の方法。
[項目55]
前記核酸分子がウイルスベクター内に含まれる、項目46から54のいずれか一項に記
載の方法。
[項目56]
前記ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)である、項目55に記載の方法
。
【外国語明細書】