(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145634
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 31/02 20060101AFI20231003BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231003BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20231003BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20231003BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20231003BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A01N31/02
A01P3/00
C11D1/68
C11D3/20
C11D3/48
C11D3/04
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123648
(22)【出願日】2023-07-28
(62)【分割の表示】P 2020514980の分割
【原出願日】2018-09-17
(31)【優先権主張番号】62/559,221
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506190555
【氏名又は名称】ゴジョ・インダストリーズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レスリー, レイチェル アン
(72)【発明者】
【氏名】ガーナー, ドウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ビンガム,ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ニール,トラヴィス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低アルコール濃度を持ちつつ、一方、迅速な抗菌活性を有する消毒剤および殺菌剤組成物を提供する。
【解決手段】抗菌組成物であって、合計が15重量%より大きく25重量%未満のC
1-8アルコールと、アルキルポリグルコシドを含む界面活性剤と、安息香酸ナトリウムを含むエンハンサーと、およびクエン酸又はその塩を含む緩衝剤と、を含み、前記緩衝剤と前記エンハンサーの合計濃度が、前記抗菌組成物の総重量に基づいて合計で1~3重量%であり、前記抗菌組成物のpHが5未満であり、前記抗菌組成物が、ASTM E2783に従って、1分の接触時間で4.0log CFU/mlよりも大きい微生物log減少を達成し、各重量%は前記抗菌組成物の総重量に基づく、抗菌組成物とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌組成物であって、
合計が15重量%より大きく25重量%未満のC1-8アルコールと、
アルキルポリグルコシドを含む界面活性剤と、
安息香酸ナトリウムを含むエンハンサーと、および
クエン酸又はその塩を含む緩衝剤と、を含み、
前記緩衝剤と前記エンハンサーの合計濃度が、前記抗菌組成物の総重量に基づいて合計で1~3重量%であり、
前記抗菌組成物のpHが5未満であり、
前記抗菌組成物が、ASTM E2783に従って、1分の接触時間で4.0log CFU/mlよりも大きい微生物log減少を達成し、
各重量%は前記抗菌組成物の総重量に基づく、抗菌組成物。
【請求項2】
ASTM E2783に従って、30秒の接触時間で4.0log CFU/mlよりも大きい微生物log減少を達成する、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項3】
前記抗菌組成物の総重量に基づいて合計で18~22重量%のC1-8アルコールを含む、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項4】
1.5~4.5のpHを有する、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項5】
過酸化物を含まない、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項6】
前記抗菌組成物の総重量に基づいて、0.5~2重量%の緩衝剤を含む、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項7】
前記抗菌組成物の総重量に基づいて、0.1~0.4重量%のエンハンサーを含む、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の抗菌組成物を含むワイプ。
【請求項9】
抗菌組成物であって、
合計で15重量%より大きく25重量%未満のC1-8アルコールと、
アルキルポリグルコシドを含む界面活性剤と、
芳香族酸の塩を含むエンハンサーと、および
有機酸、無機酸、それらの塩またはそれらの組み合わせを含む0.5~2重量%の緩衝剤と、を含み、
前記緩衝剤と前記エンハンサーの合計濃度が、合計で1~3重量%であり、
前記抗菌組成物のpHが5未満であり、
前記抗菌組成物が、ASTM E2783に従って、1分の接触時間で4.0log CFU/mlよりも大きい微生物log減少を達成し、
各重量%は前記抗菌組成物の総重量に基づく、抗菌組成物。
【請求項10】
ASTM E2783に従って、30秒の接触時間で4.0log CFU/mlよりも大きい微生物log減少を達成する、請求項9に記載の抗菌組成物。
【請求項11】
前記抗菌組成物の総重量に基づいて合計で18~22重量%のC1-8アルコールを含む、請求項9に記載の抗菌組成物。
【請求項12】
1.5~4.5のpHを有する、請求項9に記載の抗菌組成物。
【請求項13】
過酸化物を含まない、請求項9に記載の抗菌組成物。
【請求項14】
前記抗菌組成物の総重量に基づいて、0.1~0.4重量%のエンハンサーを含む、請求項9に記載の抗菌組成物。
【請求項15】
請求項9に記載の抗菌組成物を含むワイプ。
【請求項16】
抗菌組成物であって、本質的に
前記抗菌組成物の総重量に基づいて合計で15重量%より大きく25重量%未満のC1-8アルコールと、
アルキルポリグルコシドから成る界面活性剤と、
芳香族酸の塩から成るエンハンサーと、
有機酸、無機酸、それらの塩又またはそれらの組み合わせから成る群から選択される緩衝剤と、および、水と、
から成り、
前記抗菌組成物のpHが5未満であり、
前記抗菌組成物が、ASTM E2783に従って、1分の接触時間で4.0log CFU/mlよりも大きい微生物log減少を達成する、抗菌組成物。
【請求項17】
前記緩衝剤と前記エンハンサーの合計濃度が、前記抗菌組成物の総重量に基づいて1~3重量%である、請求項16に記載の抗菌組成物。
【請求項18】
前記緩衝剤が、前記抗菌組成物の総重量に基づいて0.5~2重量%の量で存在する、請求項16に記載の抗菌組成物。
【請求項19】
前記エンハンサーが、前記抗菌組成物の総重量に基づいて0.1~0.4重量%の量で存在する、請求項16に記載の抗菌組成物。
【請求項20】
請求項16に記載の抗菌組成物を含むワイプ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
抗菌組成物、滅菌剤、殺菌剤、および消毒剤は商業的に重要な製品であり、個人、医療および産業環境、ならびに小売、食品、および消費者の環境において広く使用されている。
【0002】
殺菌または消毒組成物は、皮膚に抗菌効果を提供するため、ますます一般的となっている。同様に、カウンタートップ、壁、床などの硬い表面のための消毒または殺菌組成物も、需要が増加している。これらの消毒組成物または殺菌組成物はアルコールベースとしてよく製剤化され、一般的に50重量%よりも多いアルコールおよび/または四級アンモニウム化合物などの追加的な活性剤を含む。
【0003】
殺菌組成物および消毒組成物は、迅速な抗菌活性を持つため高アルコール濃度が必要とされることが一般的に認められてきた。典型的には、40.0重量%未満のアルコールを用いた殺菌組成物および消毒組成物は、曝露期間10分以下など、迅速に細菌を死滅させることにおいて効果がないと考えられる。エタノールを含むものなどのアルコールベースの消毒剤は、典型的には、皮膚およびその他の表面から迅速に蒸発するという追加的な利点を持つ。しかし、高レベルのアルコールで処置される皮膚は、皮膚の乾燥および/または刺激を呈しうる。
【0004】
したがって、低アルコール濃度を持ちつつ、一方、迅速な抗菌活性をさらに提供する消毒剤および殺菌剤組成物が開発されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の様々な例示的実施形態は、抗菌組成物の総重量に基づいて約10.0~約40.0重量%の一つ以上のC1-8アルコール、ならびに界面活性剤、エンハンサー、および/または緩衝剤のうちの二つ以上を含む抗菌組成物を対象とし、ここにおいて、抗菌組成物のpHが約6.0以下である。様々な例示的な実施形態では、抗菌組成物は、ASTM E2783に従い、1分の接触時間で4.0log CFU/mLよりも大きい微生物log減少を達成する。一部の例示的実施形態では、C1-8アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、およびそれらの混合物のうちの一つ以上である。
【0006】
一部の例示的な実施形態では、組成物は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約12.0~約30.0重量%のC1-8アルコールを含む。
【0007】
様々な例示的な実施形態では、緩衝剤は有機酸およびその塩を含み、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.2~約10.0重量%の量で存在する。
【0008】
一部の例示的な実施形態では、エンハンサーは、芳香族含有塩化合物、不飽和有機酸、または不飽和有機酸化合物の塩、芳香族有機酸、芳香族硫酸、飽和有機ジオール、有機アルデヒド、および/または芳香族アルコールのうちの一つ以上である。様々な例示的実施形態では、エンハンサーは、ソルビン酸、ソルベート化合物、安息香酸、ベンゾエート系化合物、二酸化硫黄、亜硫酸塩化合物、ナタマイシン、硝酸塩、硝酸塩化合物、サリチル酸、フェノキシエタノール、チモール、桂皮アルデヒド、メチルパラベン、プロピルパラベン、キシレンスルホン酸ナトリウム、1,2オクタンジオール、1,2デカンジオール、およびそれらの塩からなる群から選択される。一部の実例では、エンハンサーは、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.01~約5.0重量%の量で存在する。
【0009】
一部の例示的な実施形態では、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される。一部の実例では、界面活性剤は、エトキシル化アルコール、アルキルポリグルコシド、ポリアルコキシル化ジメチコン、またはそれらの組み合わせなどの非イオン性界面活性剤である。
【0010】
さらなる例示的実施形態によれば、抗菌組成物の総重量に基づいて、約10.0~約40.0重量%の一つ以上のC1-8アルコール、ならびに界面活性剤、緩衝剤、およびエンハンサーのうちの二つ以上を含む抗菌組成物が提供される。抗菌組成物のpHは、約6.0以下である。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、AOAC 961.02に従い5分以下の接触時間内で陽性キャリア15%以下をもたらす。
【0011】
一部の例示的な実施形態では、組成物は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約12.0~約30.0重量%のC1-8アルコールを含む。
【0012】
様々な例示的な実施形態では、緩衝剤は有機酸およびその塩を含み、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.2~約10.0重量%の量で存在する。
【0013】
一部の例示的な実施形態では、エンハンサーは、芳香族含有塩化合物、不飽和有機酸、または不飽和有機酸化合物の塩、芳香族有機酸、芳香族硫酸、飽和有機ジオール、有機アルデヒド、および/または芳香族アルコールのうちの一つ以上である。様々な例示的実施形態では、エンハンサーは、ソルビン酸、ソルベート化合物、安息香酸、ベンゾエート系化合物、二酸化硫黄、亜硫酸塩化合物、ナタマイシン、硝酸塩、硝酸塩化合物、サリチル酸、フェノキシエタノール、チモール、桂皮アルデヒド、メチルパラベン、プロピルパラベン、キシレンスルホン酸ナトリウム、1,2オクタンジオール、1,2デカンジオール、およびそれらの塩からなる群から選択される。一部の実例では、エンハンサーは、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.01~約5.0重量%の量で存在する。
【0014】
一部の例示的な実施形態では、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される。一部の実例では、界面活性剤は、エトキシル化アルコール、アルキルポリグルコシド、ポリアルコキシル化ジメチコン、またはそれらの組み合わせなどの非イオン性界面活性剤である。
【0015】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物はワイプに用いられる。
【0016】
本発明のさらなる例示的な実施形態では、抗菌組成物の総重量に基づいて約35.0重量%未満の一つ以上のC1-8アルコール、ならびに約0.50~約3.0重量%の、アルキルポリグルコシド、緩衝剤、およびエンハンサーのうちの二つ以上を含む抗菌組成物を対象とし、ここにおいて、抗菌組成物のpHが約5.0以下である。
【0017】
一部の例示的な実施形態では、組成物は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約10.0~約30.0重量%のC1-8アルコールを含む。
【0018】
様々な例示的な実施形態では、緩衝剤は有機酸およびその塩を含み、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.2~約3.0重量%の量で存在する。
【0019】
一部の例示的な実施形態では、エンハンサーは、芳香族含有塩化合物、不飽和有機酸、または不飽和有機酸化合物の塩、芳香族有機酸、芳香族硫酸、飽和有機ジオール、有機アルデヒド、および/または芳香族アルコールのうちの一つ以上である。様々な例示的実施形態では、エンハンサーは、ソルビン酸、ソルベート化合物、安息香酸、ベンゾエート系化合物、二酸化硫黄、亜硫酸塩化合物、ナタマイシン、硝酸塩、硝酸塩化合物、サリチル酸、フェノキシエタノール、チモール、桂皮アルデヒド、メチルパラベン、プロピルパラベン、キシレンスルホン酸ナトリウム、1,2オクタンジオール、1,2デカンジオール、およびそれらの塩からなる群から選択される。一部の実例では、エンハンサーは、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.01~約5.0重量%の量で存在する。
【0020】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は約1.5~約4.0のpHを有する。
【0021】
本発明のなおさらなる例示的な実施形態は、約0.05~約5.0重量%の少なくとも一つの界面活性剤、約0.05~約5.0重量%の少なくとも一つの緩衝剤、および約0.01~約3.0重量%の少なくとも一つのエンハンサーを含む抗菌組成物を対象とし、ここで抗菌組成物のpHは約5.0以下である。
【0022】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約40.0重量%未満の一つ以上のC1-8アルコールをさらに含む。
【0023】
本発明のなおさらなる例示的な実施形態は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約10.0~約40.0重量%の一つ以上のC1-8アルコール、ならびに界面活性剤、緩衝剤、およびエンハンサーのうちの二つ以上を含む抗菌組成物を含むワイプを対象とする。抗菌組成物のpHは、約6.0以下であり、抗菌組成物は、タオレットのために修正されたAOAC 961.02に従って、5分以下の接触時間内で、陽性キャリア15%以下をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の概念に従って製剤化された完全抗菌組成物と比較した、黄色ブドウ球菌に対する個々の成分の有効性を図示したものである。
【0025】
【
図2】
図2は、30秒の接触時間での、個々の成分の黄色ブドウ球菌に対する有効性を図示したものである。
【0026】
【
図3】
図3は、90秒の接触時間での、様々な組成物の黄色ブドウ球菌に対する有効性を図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
別途定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本出願が関連する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の他の方法および材料が例示的な実施形態の実施または試験で使用されてもよいが、例示的な適切な方法および材料は以下に記載されている。矛盾がある場合、定義を含めた本明細書が支配する。さらに、材料、方法、および例は例示的であり、包括的発明概念を制限することを意図していない。
【0028】
本明細書に記載される用語は、例示的な実施形態の説明のみを目的とするものであり、その全体として本出願を限定するものとして解釈されるべきではない。別途指定されない限り、「a」、「an」、「the」、および「少なくとも一つ」は互換的に使用される。さらに、本出願の明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、そのような文脈によって矛盾しない限り、その複数形を含む。
【0029】
別途の指示のない限り、成分、化学的および分子的特性、反応条件の量を表現し、以降本明細書および特許請求の範囲で使用されるすべての数は、「約」という用語によってすべての場合で修飾されるものと理解されるものとなる。「約」という用語は、値の±10%以内、または一部の場合、値の±5%以内、および一部の場合には、値の±1%以内を意味する。
【0030】
包括的発明概念は、アルコールと、界面活性剤、エンハンサー、および緩衝剤のうちの少なくとも二つ以上との相乗的組み合わせを含む抗菌組成物に関連する。抗菌組成物は、低レベル(例えば、抗菌組成物の40重量%以下など)のアルコールででさえも微生物に対して迅速で広範なスペクトル活性を示す。
【0031】
抗菌組成物の物理的形態は特に限定されないが、一つ以上の実施形態では、組成物は、例えばワイプに吸着されたり、注ぎ込み、ポンプで、噴霧またはその他の方法で分配された液体、ゲル、エアロゾル、またはエアロゾル発泡体および非エアロゾル発泡体の両方を含む発泡体として提示されてもよい。一つ以上の実施形態では、抗菌組成物はワイプ、即ち表面を拭かれるティッシュまたは布、に提示されうる。
【0032】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、硬い表面、軟表面、生きている表面(皮膚など)、非生存(無生物の)表面、土壌、多孔性、および非多孔性表面を含む、幅広い種類の表面または基材に用いられうる。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、測定器、医療機器、家具、手すり、布地などの無生物を、殺菌またはさもなければ消毒するために使用される。
【0033】
対象抗菌組成物の一部の例示的な実施形態は、肌への適用を対象とし、ASTM E2755、ASTM E1174、ASTM E2783、欧州標準EN1500およびEN1499に従って試験した場合、手指衛生基準食品医薬品局要求性能の要件を満たすものである。
【0034】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、EPAによって明記される消毒および殺菌の要件を満たす。一つ以上の実施形態において、抗菌組成物は、広範なスペクトル殺菌に対するEPA要求を満たす。一つ以上の実施形態において、抗菌組成物は、病院グレードの殺菌に対する要求を満たす。一つ以上の実施形態において、抗菌組成物は、ASTM E1153に従って消毒剤(非食品接触)としてEPA要件を満たす。一つ以上の実施形態において、抗菌組成物は、AOAC 960.09に従って消毒剤(食品接触)としてEPA要件を満たす。一つ以上の実施形態において、抗菌組成物は、AOAC 961.02に従って殺菌剤としてEPA要件を満たす。
【0035】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、アルコールまたはアルコールの組み合わせを含む。アルコールによって、飽和炭素原子に結合されたヒドロキシル官能基を有する任意の有機化合物が意味される。アルコールは抗菌特性を持ち、多くの形態の細菌、真菌およびウイルスを殺す能力を持つ。いくつかの実施形態では、アルコールはC1-8アルコール、即ち1~8個の炭素原子を含有するアルコールである。こうしたアルコールは、低級アルカノールと呼ばれうる。低級アルカノールの例には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、およびそれらの異性体ならびにそれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。アルコールは、純アルコールまたは変性アルコールのいずれかであってもよい。一つ以上の例示的実施形態では、アルコールは、エタノール、プロパノール、またはブタノール、あるいはそれらの異性体または混合物を含む。一つ以上の例示的実施形態では、アルコールはイソプロパノールを含む。その他の例示的な実施形態では、アルコールはエタノールを含む。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物はアルコールの混合物を含む。一つ以上の実施形態では、抗菌組成物は、エタノールとイソプロパノールとの混合物を含む。一つ以上の実施形態では、抗菌組成物は、イソプロパノールとn-プロパノールとの混合物を含む。
【0036】
C1-8アルコール類が本明細書に記載されているが、より長いアルコール類(8個を超える炭素原子を有するアルコール)、または様々な他の官能基を有するアルコール類が同様に適切であるものと予想される。例えば、ヒドロキシル官能基に加えて、アルコールは、エステル、カルボン酸、エーテル、アミド、アミン、ハロゲン化アルキル、フェニル、およびその他のカルボニル含有官能基をさらに含みうる。
【0037】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、抗菌組成物の総重量に基づいて、少なくとも約1.0重量%のC1-8アルコールを含む。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、抗菌組成物の総重量に基づいて、少なくとも約2.0重量%のC1-8アルコール、または少なくとも約3.0重量%のC1-8アルコール、または少なくとも約5.0重量%のC1-8アルコール、または少なくとも約7.0重量%のC1-8アルコール、または少なくとも約10.0重量%のC1-8アルコール、または少なくとも約12.0重量%のC1-8アルコール、または少なくとも約15.0重量%のC1-8アルコール、または少なくとも約20.0重量%のC1-8アルコール、または少なくとも約25.0重量%のC1-8アルコール、または少なくとも約30.0重量%のC1-8アルコール、または少なくとも約35.0重量%のC1-8アルコールを含む。
【0038】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約50.0重量%未満のC1-8アルコールを含む。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約45.0重量%未満のC1-8アルコール、または約40.0重量%未満のC1-8アルコール、または約35.0重量%未満のC1-8アルコール、または約30.0重量%未満のC1-8アルコール、または約25.0重量%未満のC1-8アルコール、または約20.0重量%未満のC1-8アルコール、または約15.0重量%未満のC1-8アルコールを含む。
【0039】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、より広範囲内に収まるあらゆるより狭い数値範囲を含みつつ、抗菌組成物の総重量に基づいて、約3.0~約40.0重量%のC1-8アルコール、または約5.0~40.0重量%のC1-8アルコール、または約7.0~約37.0重量%のC1-8アルコール、または約9.0~約35.0重量%のC1-8アルコール、または約10.0~約32.0重量%のC1-8アルコール、または約12.0~約30.0重量%のC1-8アルコール、または約15.0~約25.0重量%のC1-8アルコールを含む。一つの例示的な実施形態では、抗菌組成物は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約15.0~約25.0重量%のC1-8アルコールを含む。特に、消毒または殺菌組成物に使用されるその他の成分および/またはその量に応じて、ある特定の場合には、多少のアルコールが必要とされうる。しかしながら、驚くべきことに、40重量%近くに本組成物中のアルコールの量を増加させることは抗菌有効性を改善しないこと、および実際、いくつかの場合では、有効性を低下させることをさらに発見した。
【0040】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、少なくとも一つの界面活性剤をさらに含む。一部の例示的な実施形態では、界面活性剤は、非イオン性、カチオン性、アニオン性、両性、および双イオン性の界面活性剤のうちの一つ以上である。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は異なる界面活性剤の混合物を含む。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、異なるタイプの界面活性剤の混合物を含む(例えば、一つ以上のアニオン性界面活性剤および一つ以上の非イオン性界面活性剤)。その他の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、同じタイプの界面活性剤の混合物を含む(例えば、異なる非イオン性界面活性剤の混合物)。別の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、および両性界面活性剤の混合物を含む。
【0041】
界面活性剤の量は、少なくとも有効性を高める量である限り、特に限定されない。有効性を高める量に対応する界面活性剤の最小量は、選択量のアルコールを含む組成物により達成される標的微生物のlog死滅と、同量のアルコールと所与量の界面活性剤を含む組成物とを比較することによって決定されうる。log死滅の差異が見られない界面活性剤の量が、有効性を高める量である。
【0042】
一部の例示的な実施形態では、界面活性剤は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.05~約15.0重量%の量で抗菌組成物中に存在する。一部の例示的な実施形態では、界面活性剤は、より広範囲内に収まるあらゆるより狭い数値範囲を含みつつ、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.1~約10.0重量%、または約0.2~約5.0重量%、または約0.3~約2.5重量%、または約0.4~約2.0重量%、または約0.5~約1.5重量%、または約0.6~約0.8重量%の量で抗菌組成物中に存在する。
【0043】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、非イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤の混合物の洗浄効果のある量を含む。
【0044】
一つ以上の実施形態では、非イオン性界面活性剤は、長鎖アルキル基またはアルキル化アリール基などの疎水性領域と、エトキシ、および/または他の親水性部分を含む親水性基とを含む。一つ以上の実施形態では、組成物は、6~18個の炭素原子を含有するアルキル基を有する疎水性領域と、平均1~約20個のエトキシおよび/またはプロポキシ部分をとを有する、一つ以上の非イオン性発泡増進共界面活性剤をさらに含む。非イオン性洗浄界面活性剤の例には、アルキルアミンオキシド、アルキルエーテルアミンオキシド、アルキルアルコールアルコキシレート、アリールアルコールアルコキシレート、置換アルコールアルコキシレート、ブロック非イオン性コポリマー、ヘテロ非イオン性コポリマー、アルカノーラミド、またはポリエトキシル化グリセロールエステル、およびこれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0045】
一部の例示的な実施形態では、非イオン性界面活性剤はアルキルポリグルコシドである。一部の例示的な実施形態では、アルキルポリグルコシドは、ブドウ糖、およびアルキル基が8~18個の炭素原子を含有する脂肪アルコール、グリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、および末端ヒドロキシル基を有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ならびにこれらの組み合わせから誘導される。一部の例示的な実施形態では、非イオン性界面活性剤はカプリリル/カプリルグルコシドである。
【0046】
さらなる例示的な非イオン性界面活性剤としては、脂肪アルコール類、例えばセチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、およびオレイルアルコールなど;ポリオキサマー類;エトキシル化脂肪アルコール類、例えばラウリン酸PEG-80ソルビタンなど;ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル類、例えばオクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、およびペンタエチレングリコールモノドデシルエーテルなど;ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル類;グルコシドアルキルエーテル類;ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル類、例えばナノキシノール‐9など;グリセロールアルキルエステル類、例えばラウリン酸グリセリルなど;ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル類、例えばポリソルベートなど;ソルビタンアルキルエステル類;コカミドMEA;コカミドDEA;アミンオキシド、例えばドデシルジメチルアミンオキシドなど;ポリエチレングリコールとプロピレングリコールとのブロックコポリマー類、例えばポロキサマー類など;ポリエトキシル化牛脂アミン;ポリエチレングリコールエーテル類、例えばトリデセス‐9;およびそれらの混合物が挙げられる。
【0047】
適切な非イオン性界面活性剤の非限定的な例については、McCutcheon Division,MC Publishing Co.、Glen Rock、N.J.発行の、McCutcheon’s Detergents and Emulsifiers,1993 Annuals、1~246ページおよび 266~273ページ;the CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary, Fourth Ed.,Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association,Washington,D.C.(1991)(以下、CTFA辞書)1~651ページ;およびthe CTFA Cosmetic Ingredient Handbook, First Ed.,Cosmetic,Toiletry and Fragrance Association,Washington,D.C.(1988)(以下、CTFAハンドブック)86~94ページにもまた記載され、各々参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
一つ以上の実施形態では、非イオン性界面活性剤は、アルキルポリグルコシド、例えばPEG-12ジメチコンなどのポリアルコキシル化ジメチコン、トリデセス-9、またはそれらの組み合わせである。
【0049】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、カチオン性界面活性剤、またはカチオン性界面活性剤の混合物を含む。界面活性剤は、分子のヒドロトロープ部分の電荷が正電荷である場合にカチオン性として分類される。pHが中性に近づくまで低下するかまたはより低下している場合でない限り、ヒドロトロープが電荷を持たないが、次いでカチオン性(例えば、アルキルアミン)である界面活性剤もまたこの群に含まれる。
【0050】
一部の例示的な実施形態では、カチオン性界面活性剤は、少なくとも一つの長炭素鎖疎水性基および少なくとも一つの正電荷の窒素を含有する。長炭素鎖群は、単純置換によって窒素原子に直接結合されてもよく、またはより好ましくは架橋官能基、いわゆる中断アルキルアミンおよびアミドアミンによって間接的に結合されてもよい。こうした官能基は、分子をより親水性および/またはより水分散性にすることができ、共同界面活性剤混合物によってより容易に水溶化され、および/または水溶性にされ得る。水溶解性を増加させるために、追加的な一級、二級、または三級アミノ基を導入することができ、またはアミノ窒素を低分子量アルキル基で四級化することができる。さらに、窒素は、様々な程度の不飽和の、あるいは様々な程度の飽和または不飽和の複素環の分枝鎖部分または直鎖部分の一部とすることができる。さらに、カチオン性界面活性剤は、複数のカチオン性窒素原子を有する複雑な結合を含みうる。一つ以上の実施形態では、カチオン性界面活性剤は、アルキルアミンおよびそれらの塩、アルキルイミダゾリン、エトキシル化アミン四級、例えばアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンゼン塩、複素環式アンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、およびこれに類するもの、四級化多糖類、アルキル多糖類、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、リン脂質、リン脂質誘導体、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0051】
アミンオキシド、両性および双性イオンとして分類される界面活性剤化合物は、それ自体が一般的に中性付近~酸性pH溶液中でカチオン性であり、界面活性剤分類を重複することができる。ポリオキシエチル化カチオン性界面活性剤は、酸性溶液中のカチオン性界面活性剤のように挙動しうる。
【0052】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、アニオン性界面活性剤、またはアニオン性界面活性剤の混合物を含む。例示的なアニオン性界面活性剤としては、硫酸塩、例えばアルキル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)(ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)としても知られる)、およびラウレス硫酸ナトリウム(SLES)、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸アンモニウム、キシレンスルホン酸アンモニウム、ラウレス硫酸マグネシウム、およびミレス硫酸ナトリウム;スルホン酸塩、例えばノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム;カルボキシレート;硫酸エステル;硫酸アルカノールアミド;アルキルフェノール;およびそれらの混合物が挙げられる。その他の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、両性界面活性剤を含む。両性電解界面活性剤と呼ばれることもある両性界面活性剤は、塩基性および酸性の親水性基ならびに有機疎水性基の両方を含みうる。これらのイオン要素は、他のタイプの界面活性剤について本明細書に記載されるアニオン性基またはカチオン性基のいずれかであってもよい。基本的な窒素および酸性カルボキシレート基は、塩基性および酸性の親水性基として用いられる典型的な官能基である。いくつかの界面活性剤では、スルホン酸、硫酸塩、ホスホナートまたはリン酸塩は、負電荷を提供する。
【0053】
両性界面活性剤は、脂肪族二級および三級アミンの誘導体と概して表され、そこにおいては、脂肪族ラジカルが直鎖または分岐であってもよく、またここにおいて脂肪族置換基のうちの一つが、8~18個の炭素原子を含有し、一つが、例えば、カルボキシ、スルホン、スルファト、ホスファト、またはホスホノなどのアニオン性水溶性基を含有する。両性界面活性剤には、アシル/ジアルキルエチレンジアミン誘導体(例えば、2-アルキルヒドロキシエチルイミダゾリン誘導体)およびそれらの塩、ならびにN-アルキルアミノ酸およびそれらの塩が含まれる。具体的な例としては、2-アルキルヒドロキシエチルイミダゾリン、ココアムホプロピオン酸、ココアムホカルボキシプロピオン酸塩、ココアムフォグリシン酸塩、ココアムホカルボキシグリシン酸塩、ココアムホプロピル-スルホン酸塩、およびココアムホカルボキシプロピオン酸が挙げられる。
【0054】
両性界面活性剤としては、ココナッツの油またはココナッツ脂肪酸などのココナッツ製品由来のものが含まれ、アルキルアンホジカルボン酸を含む。両性界面活性剤の具体的な例として、Rhodia Inc.クランブリー、ニュージャージー州から商標名Miranol(商標)FBSで、ココアムホ二プロピオン酸二ナトリウムが市販されたおり、化学的名称ココアムホジアセテート二ナトリウムで別のココナッツ由来の両性界面活性剤が、同じくRhodia Inc.クランブリー、ニュージャージー州から商標名Miranol C2M-SF Conc.で市販されている。
【0055】
両性のクラス、およびこれらの界面活性剤の種の一般的なリストは、米国特許第第3,929,678号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。一部の例示的な実施形態では、両性界面活性剤はアミンオキシドである。適切なアミンオキシド化合物の非限定的な例には、1-ドデカンアミン、N,N-ジメチル-、N-オキシド;1-テトラデカンアミン、N,N-ジメチル-、N-オキシド-;アミン、C10-16-アルキルジメチル、N-オキシド;アミン、C12-18-アルキルジメチル、N-オキシド;デカンアミン、N,N-ジメチル-、N-オキシド;ヘキサデカンアミン、N,N-ジメチル-、N-オキシド;オクタデカンアミン、N,N-ジメチル-、N-オキシド;アミンオキシド、ココアルキルジメチル;アミン、C10-18-アルキルジメチル、N-オキシド;アミン、C12-16-アルキルジメチル、N-オキシド;エタノール、2,2’-イミノビス-、N-ココアルキル誘導体、N-オキシド;エタノール、2,2’-(ドデシルオキシドイミノ)ビス-;エタノール、2,2’-(オクタデシルオキシドイミノ)ビス-;エタノール、2,2’-イミノビス-、N-牛脂アルキル誘導体、N-オキシド;エタノール、2,2’-[(9Z)-9-オクタデセニルオキシドイミノ]ビス-エタノールN-オキシドが挙げられる。一部の例示的な実施形態では、アミンオキシドはラウラミンオキシドである。
【0056】
一部の例示的な実施形態では、両性界面活性剤は双イオン性界面活性剤である。典型的には、双イオン性界面活性剤は、正電荷四級アンモニウム、あるいは場合によっては、スルホニウムまたはホスホニウムイオン、負電荷カルボキシル基、およびアルキル基を含む。双イオン性界面活性剤は一般に、分子の等電性領域でほぼ等しい程度までイオン化し、正-負の電荷中心間の強力な「内部塩」引力を発生させることができるカチオン性基およびアニオン性基を含有する。このような双イオン性合成界面活性剤の非限定的な例には、脂肪族ラジカルが直鎖または分岐であり得る脂肪族四級アンモニウムの誘導体、ホスホニウム、およびスルホニウム化合物が含まれ、ここにおいて、脂肪族置換基の一つが8~18個の炭素原子を含有し、および一つが、例えばカルボキシ、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸、またはホスホナートなどのアニオン性水溶性基を含有する。一部の例示的な実施形態では、双イオン性界面活性剤は、ベタイン界面活性剤、スルタイン界面活性剤、またはその組み合わせである。一部の例示的な実施形態では、双イオン性界面活性剤はベタイン界面活性剤である。一部の例示的な実施形態では、双イオン性界面活性剤はコカミドプロピルベタインである。
【0057】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、本明細書に開示されるpH範囲を達成するのに役立つ、酸などの緩衝剤(pH-調節剤)を含む。一部の例示的な実施形態では、酸は有機酸である。その他の例示的な実施形態では、緩衝剤は有機酸と無機酸(鉱物酸)との混合物である。一部の例示的な実施形態では、緩衝剤は、pHをより塩基性レベルまで上げる塩基性(またはアルカリ性)緩衝剤を含んでもよい。塩基性緩衝剤は、弱塩基およびその塩のうちの一つ、例えばアンモニアおよび塩化アンモニウムの混合物などを含みうる。
【0058】
一部の例示的な実施形態では、有機酸は、一つ以上のカルボン酸基を有する。その他の例示的な実施形態では、有機酸は、一つ以上のチオール基、エノール基、フェノール基、スルホン基、またはこれらの組み合わせを含有する。一部の例示的な実施形態では、有機酸は、クエン酸、乳酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、シュウ酸、マレイン酸、安息香酸、リンゴ酸、吉草酸、カルボン酸、尿酸など、およびそれらの塩のうちの一つ以上である。有機酸は置換または非置換でありうる。
【0059】
その他の適切な有機酸の非限定的な例には、アジピン酸、ベンゼン1,3,5トリカルボン酸、クロロコハク酸、塩化コリン、cis-アコニット酸、シトラマル酸、シクロブタン1,1,3,3テトラカルボン酸、シクロヘキサン1,2,4,5テトラカルボン酸、シクロペンタン1,2,3,4テトラカルボン酸、ジグリコール酸、フマル酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリオキシル酸、イソクエン酸、ケトマロン酸、マロン酸、ニトリロ三酢酸、オキサル酢酸、シュウ酸、フィチン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、タルトロン酸、テトラヒドロフラン2,3,4,5テトラカルボン酸、トリカルバリル酸、ベルセン酸、3-ヒドロキシグルタル酸、2-ヒドロキシプロパン1,3ジカルボン酸、グリセリン酸、フラン2,5ジカルボン酸、3,4-ジヒドロキシフラン-2,5ジカルボン酸、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸、2-オキソ-グルタル酸、dl-グリセリン酸、2,5フランジカルボン酸、およびそれらの塩が挙げられる。
【0060】
一部の例示的な実施形態では、緩衝剤は無機酸を含む。一部の例示的な実施形態では、無機酸は、リン系化合物、硫黄系化合物、または窒素系化合物のうちの一つ以上である。適切な無機酸の非限定的な例には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、およびヨウ化水素酸が含まれる。一部の実施形態では、酸は硫酸を含む。一部の例示的な実施形態では、緩衝剤は、約4.0未満の、または約3.5未満の、または約3.0未満の、または約2.9未満の、または約2.8未満のpH(標準条件下、1mmol/L)を持つ。
【0061】
一部の例示的な実施形態では、緩衝剤の総量は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.1~約15.0重量%の量で存在する。一部の例示的な実施形態では、緩衝剤の総量は、より広範囲内に収まるあらゆるより狭い数値範囲を含みつつ、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.2~約10.0重量%、または約0.3~約5.0重量%、または約0.31~約3.0重量%、または約0.4~約2.5重量%、または約0.5~約2.0重量%の量で存在する。
【0062】
特定の酸は、組成物のpHを単に調節するための従来的な効果を超えて、組成物の抗菌有効性を高めることが分かっている。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物を酸性化することは、より高い量のアルコールを含有する組成物と比べ有効性が同等であるか、またはそれよりも大きくなるように、組成物の有効性を強化する。
【0063】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、エンハンサーをさらに含む。本明細書で使用される場合、エンハンサーという用語は、組成物の全体的な有効性に寄与するが、それ自体が急速な抗菌活性(例えば、曝露時間は10分未満)を持ってはいない構成要素を意味する。一部の例示的な実施形態では、エンハンサーは、芳香族含有塩化合物、不飽和有機酸、または不飽和有機酸化合物の塩、芳香族有機酸、芳香族硫酸、飽和有機ジオール、有機アルデヒド、および/または芳香族アルコールのうちの一つ以上である。適切なエンハンサーの非限定的な例としては、ソルビン酸、ソルベート化合物、安息香酸、ベンゾエート系化合物、二酸化硫黄、亜硫酸塩化合物、ナタマイシン、硝酸塩、硝酸塩化合物、チモール、桂皮アルデヒド、メチルパラベン、プロピルパラベン、キシレンスルホン酸ナトリウム、1,2オクタンジオール、1,2デカンジオール、およびそれらの塩が挙げられる。そのような塩には、例えば、ベンゾエート、ソルビン酸塩(sorbates)、硫酸塩、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム、などがある。一部の例示的な実施形態では、エンハンサーは、EPAの、食品接触表面消毒溶液(Food-Contact Surface Sanitizing Solutions)での使用のための最小リスクの不活性成分または成分にリストされている。一部の例示的な実施形態では、エンハンサーは安息香酸ナトリウムなどのベンゾエートである。
【0064】
一部の例示的な実施形態では、エンハンサーは、抗菌組成物の総重量に基づいて、約10.0重量%未満、または約5.0重量%未満、または約2.5重量%未満、または約1.5重量%未満、約1.0重量%未満、または約0.75重量%未満、または約0.5重量%未満の量で抗菌組成物中に添加される。一部の例示的な実施形態では、エンハンサーは、より広範囲内に収まるあらゆるより狭い数値範囲を含みつつ、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.01~約5.0重量%、または約0.05~約3.0重量%、または約0.1~約2.0重量%、または約0.2~約1.0重量%の量で添加される。
【0065】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物のpHは、約6.0未満、または約5.5未満、または約5.0未満、または約4.5未満である。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物のpHは約1.5~約6.0である。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物のpHは、約2.0~約5.5、または約2.5~約5.0、または約3.0~約4.5である。
【0066】
有利なことに、組成物が酸性pHで40重量%以下のアルコールを含むときでも、相乗抗菌効果が観察される。典型的には、40.0重量%未満のアルコールを用いた殺菌組成物および消毒組成物は、曝露期間10分以下など、迅速に細菌を死滅させることにおいて効果がないと考えられる。しかしながら驚くべきことに、40.0重量%以下のアルコールを含有する組成物が、典型的には不十分な抗菌有効性を示しているが、酸性pHで最大40重量%のアルコールを有する本明細書に記載の抗菌組成物は、10分以下の曝露期間内などの迅速な時間枠内で強化された抗菌有効性を発揮することが見出された。一部の例示的な実施形態では、それ自体で有効性をほとんどまたは全く示さないアルコール濃度が本明細書に記載の成分と相乗的に組み合わされた場合、たとえアルコール濃度が、約40.0重量%以下、または約35.0重量%以下、または約30.0重量%以下、または約25.0重量%以下であっても、有効性の強化を提供する、そして、抗菌組成物のpHが約6.0未満または約5.0未満の場合、さらなる有効性の強化を提供する。
【0067】
さらに、抗菌組成物が、6以下の酸性pHで、抗菌組成物の総重量に基づいて、一括して少なくとも0.50重量%の濃度で、緩衝剤およびエンハンサーのうちの少なくとも一つを含む時、さらなる相乗抗菌効果が観察される。一部の例示的な実施形態では、緩衝剤および/またはエンハンサーの濃度は一括して、抗菌組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.75重量%である。様々な例示的な実施形態では、緩衝剤および/またはエンハンサーの濃度は一括して、抗菌組成物の総重量に基づいて、0.50~4.0重量%、または1.0~3.0重量%である。緩衝剤がクエン酸などの有機酸であり、エンハンサーが安息香酸ナトリウムなどの芳香族酸の塩であり、および組成物のpHが6未満である場合、特に有利な抗菌効果が観察される。
【0068】
抗菌組成物は、上述の相乗的組成物には有害に影響を与えない追加の成分を含みうる。例えば、一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は一つ以上のキレート剤を含みうる。キレート剤は特に限定されず、多座配位子間に二つ以上の配位結合を有する任意の中心原子を含みうる。有機キレート剤および無機キレート剤の両方を抗菌組成物中で使用することができる。一部の例示的な実施形態では、キレート剤は、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸(EDDS)、ジエチレントリアミペンタアセテート酸、N,N-ビス(カルボキシメチル)グリシン、サリチル酸、ポリリン酸、アスコルビン酸のうちの一つ以上を含む。一部の例示的な実施形態では、キレート剤はEDTAである。一部の例示的な実施形態では、キレート剤は、一つ以上のアミノ酸系のキレート剤、例えば、メチルジシン二酢酸(methylgycine diacetic acid)など、を含む。
【0069】
一部の例示的な実施形態では、キレート剤は、抗菌組成物の総重量に基づいて、最大約10.0重量%、または最大約5.0重量%、または最大約2.5重量%、または最大約1.5重量%、または最大約1.0重量%、または最大約0.75重量%、または最大約0.5重量%の量で、抗菌組成物中に添加される。一部の例示的な実施形態では、キレート剤は、抗菌組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.001重量%で、または少なくとも約0.01重量%で、または少なくとも約0.05重量%で、または少なくとも約0.1重量%で、または少なくとも約0.5重量%、または少なくとも約0.7重量%の量で含まれる。一部の例示的な実施形態では、キレート剤は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~約2.0重量%、または約0.005重量%~約1.5重量%、または約0.05重量%~約1.0重量%、または約0.1重量%~約0.8重量%で添加される。
【0070】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、脂肪酸およびその任意の塩または誘導体を実質的に含まない、あるいは完全に含まない。「本質的に含まない」とは、抗菌組成物が5.0重量%以下、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下の特定の化合物を含有することを意味する。
【0071】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、香料をさらに含む。任意の香気が抗菌組成物に使用されうるが、そのようなものとしては、以下に限定されないが、フローラル、オリエンタル、ウッディ、およびフレッシュなどの標準的な香料チャート上の任意の香気分類が挙げられる。例示的な香気には、シナモン、クローブ、ラベンダー、ペパーミント、ローズマリー、タイム、レモン、シトラス、ココナッツ、アプリコット、プラム、スイカ、ショウガ、ツルコケモモおよびそれらの組み合せが含まれる。一部の例示的な実施形態では、香料は、EPAの、食品接触表面消毒溶液(Food-Contact Surface Sanitizing Solutions)での使用のための最小リスクの不活性成分または成分で構成される。
【0072】
一部の実施形態では、香料は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.005重量%~約5.0重量%、他の実施形態では約0.01重量%~約3.0重量%、他の実施形態では約0.05重量%~約1.0重量%、または約0.1重量%~約0.5重量%の量で抗菌組成物中に含まれる。香料は、任意の香水、精油、芳香化合物、揮発保留剤、テルペン、溶媒などから作製されうる。例示的な実施形態では、精油には、例えば、リモネン、シトラス・オーランティアム・ダルシス(オレンジ)果皮油、ユーカリ・グロブラスリーフ油、シトラス・グランディス(グレープフルーツ)果皮油、リナロール、リツェア・クベバ果実油、ラバンデュラ・ハイブリダ油、シベリアモミ油、ベルガモットミント葉抽出液、コリアンドルム・サチブム(コリアンダー)果実油、ピーパー・ニグラム(ペッパー)、およびマニラエレミガム不揮発物のうちの一つ以上が挙げられる。
【0073】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、一つ以上の担体を含む。担体は、抗菌組成物を効果的に送達および/または運ぶことができる任意の適切な化合物とすることができる。一部の例示的な実施形態では、担体は水または基部洗浄剤である。生理食塩水、無機塩類溶液、脂肪酸エステル、エーテル、アミド、アセテート、シリコーン、トリグリセリド、および種々の炭化水素などのその他の担体。他の例示的な実施形態では、抗菌組成物は担体を含まず、濃縮物として送達される。
【0074】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、担体として水を含む。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、抗菌組成物の総重量に基づいて、少なくとも約1.0重量%の担体、または少なくとも約10.0重量%の担体、または少なくとも約20.0重量%の担体、または少なくとも約30.0重量%の担体、または少なくとも約35.0重量%の担体、または少なくとも約40.0重量%の担体、または少なくとも約50.0重量%の担体、または少なくとも約60.0重量%の担体、または少なくとも約70.0重量%の担体、または少なくとも約80.0重量%の担体、または少なくとも約85.0重量%の担体を含む。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、より広範囲内に収まるあらゆるより狭い数値範囲を含みつつ、抗菌組成物の総重量に基づいて、約50.0~約85.0重量%の担体、または約55.0~約80.0重量%の担体、または約60.0~約75.0重量%の担体を含む。特に、抗菌組成物に使用されるその他の成分および/またはその量に応じて、ある特定の場合には、多少の担体が必要とされうる。
【0075】
スキンケア産業で一般的に使用される幅広い非限定的な美容および医薬成分は、本発明の組成物での使用にさらに適切でありうる。これらの成分の例としては、研磨剤、抗にきび剤、固化防止剤、抗酸化剤、結合剤、生物学的添加剤、充填剤、キレート剤、化学添加剤;着色剤、美容収れん剤、美容殺生物剤、変性剤、薬物収れん剤、乳化剤、外部鎮痛剤、フィルム形成体、泡界面活性剤、湿潤剤、乳白剤、可塑剤、保存剤(時々抗菌剤と呼ばれる)、噴霧薬、還元剤、皮膚脱色剤、皮膚コンディショニング剤(軟化剤、ミセル形成剤、および閉塞剤)、皮膚保護剤、溶剤、界面活性剤、発泡力増進剤、ハイドロトロープ、可溶化剤、懸濁剤(非界面活性剤)、日焼け止め剤、紫外線吸収剤、粘着防止剤、および増粘剤(水性および非水性)が挙げられる。当業者によく知られている、本明細書で有用な他の機能的クラスの材料の例としては、可溶化剤、補足剤、角質溶解薬、局所有効成分などが挙げられる。
【0076】
有利なことに、補助的な抗菌剤の一部は表面上で強い刺激になりうるが、補助的な抗菌剤は必要ではない。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物はいかなる補助抗菌成分も含まない。アルコール、界面活性剤、エンハンサー、および緩衝剤の組み合わせ以外のあらゆる抗菌成分が、補助抗菌剤と呼ばれうる。一実施形態では、補助抗菌剤の量は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約1.0重量%未満、または約0.5重量%未満、または約0.25重量%未満、または約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、または約0.01重量%未満である。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は補助抗菌剤を欠いている。
【0077】
有利なことに、現在の食品接触表面洗浄剤にとって重要であると指定ている特定の成分は、本発明の抗菌組成物に限定されうる。これらの化合物の多くは、殺菌剤での使用に望ましくない有害な副作用を有する。
【0078】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物中において、次亜塩素酸およびその前駆体の量が制限される。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物中のにおいて、亜塩素酸およびその前駆体の量は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%未満、または約0.1重量%未満である。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は次亜塩素酸を欠いている。
【0079】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物中において、過酢酸などのペルオキシ酸の量が制限されうる。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物中のペルオキシ酸の量は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%未満、または約0.1重量%未満である。別の実施形態では、抗菌組成物はペルオキシ酸を欠いている。
【0080】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物中において、過酸化水素などの過酸化物の量が制限される。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物中の過酸化物の量は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%未満、または約0.1重量%未満である。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は過酸化物を欠いている。
【0081】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物中の四級化合物の量は、制限されるかまたは完全に除外される。四級化合物は、NR4+構造の正電荷の多原子イオンを含む化合物であり、Rは、アルキル基またはアリール基である。アンモニウムイオン(NH4+)、および一級、二級、または三級アンモニウムカチオンとは異なり、四級アンモニウムカチオンは、その溶液のpHとは無関係に、永久的に荷電される。例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セタルコニウム、塩化セチルピリジニウム、セトリモニウム、セトリミド、塩化ドファニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、および臭化ドミフェンが挙げられる。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物中の四級化合物の量は、抗菌組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%未満、または約0.1重量%未満である。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は四級化合物を欠いている。
【0082】
組成物の微細構造は、組成物と微生物の表面との間の相互作用に影響を与え、組成物の殺菌能力を強化すると考えられる。アルコール、エンハンサー、および緩衝剤は混合して、界面活性剤によって作られたミセル構造に影響を与える。改善された殺菌有効性は、40重量%未満のアルコールを有する処方において最大に達し、これはこの領域で微生物と相互作用するための最大有効性を有するミセルの形成を示唆する。この理由から、アルコールのレベルが増加すると、実際には処方の殺菌能力が阻害される。
【0083】
実際に、アルコール、界面活性剤、エンハンサー、および緩衝剤以外の任意の構成要素は、pHが6未満で混合され、および随意に、抗菌組成物の総重量に基づいて、約5.0重量%未満、または約2.0重量%未満、または約1.0重量%未満、または約0.5重量%未満、または約0.1重量%未満、または約0.01重量%未満、または約0.001重量%未満に制限され得る場合、本抗菌組成物の抗菌有効性を達成する必要はない。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、アルコール、界面活性剤、緩衝剤、エンハンサー、キレート剤、および随意に水またはその他の適切な担体以外の任意の構成要素を欠いている。
【0084】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、一つ以上のC1-8アルコールを約40.0重量%未満、界面活性剤を一つ以上、エンハンサー、および緩衝剤を含み、pHは6以下である。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、一つ以上のC1-8アルコールを約40.0重量%未満、非イオン性界面活性剤を一つ以上、および少なくとも0.50重量%の緩衝剤とエンハンサーとを合わせた濃度を含む。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、約40.0重量%未満のエタノール、非イオン性界面活性剤、安息香酸ナトリウム、およびクエン酸を含む。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、約40.0重量%未満のエタノール、カプリリル/カプリルグルコシド、およびクエン酸を含む。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、約40.0重量%未満のエタノール、カプリリル/カプリルグルコシド、エンハンサー、クエン酸、および無機酸を含む。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、約30重量%未満のエタノール、0.1~1.0重量%のカプリリル/カプリルグルコシド、0.75~4.0重量%のクエン酸と安息香酸ナトリウムとを合わせた濃度、および0.01~0.1重量%の硫酸を含む。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、一つ以上の非イオン性界面活性剤、少なくとも0.50重量%の緩衝剤とエンハンサーとを合わせた濃度、および随意にアルコールを含む。
【0085】
一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物はウェットタイプのワイプに用いられる。一般的に、ウェットタイプのワイプは組成物および基材を含む。一部の例示的な実施形態では、ワイプ基材は、準備および保管中に抗菌組成物を密に保持し、使用中に液体を容易に発現するように選択される。
【0086】
一部の例示的な実施形態では、ウェットタイプのワイプは、天然繊維、合成繊維、または天然繊維と合成繊維との混合物の織ったあるいは不織のウェブを含む基材を含む。適切な天然繊維には、木材パルプ繊維、綿、およびレーヨンなどのセルロース系繊維が含まれるがこれらに限定されない。適切な合成繊維は、限定されないがポリエステルおよびポリプロピレン繊維のような、一般的に布地に使用される繊維を含む。
【0087】
適切な繊維ウェブを形成するために、様々な形成方法を使用することができる。一部の例示的な実施形態では、ウェブは、例えばエアレイなどの不織布乾式形成技術によって、または代替的には例えば製紙機械でなどのウェットレイによって、作製されうる。メルトブローン、スパンボンド、ニードルパンチ、および水流交絡(即ち、スパンレース)処理などの技術を含むがこれに限定されないその他の不織布製造技術もまた使用しうる。
【0088】
予想外に、界面活性剤が、例えば本明細書で開示されるような、低pHで約40.0重量%未満のC1-8アルコールと、緩衝剤およびエンハンサーと組み合わされた場合、抗菌活性は相乗的に強化され、単なる相加効果を超える。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、グラム陰性およびグラム陽性細菌、真菌、寄生虫、非エンベロープ型ウイルス、およびエンベロープ型ウイルスを死滅させるのに有効である。一部の例示的な実施形態では、抗菌組成物は、細菌、例えば黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、セラチア・マルセッセンス、ウシ型結核菌、サルモネラ・エンテリカ、ウイルス、例えばアデノウイルス、ネコカリシウイルス、C型肝炎、およびロタウイルス、真菌、例えばカンジダ・アルビカンス、トリコフィートンインタージギターレ、およびアスペルギルスニガー、およびクロカビ胞子、スタキボトリス属チャータニ(chartani)に対して迅速な抗菌有効性を有する。
【実施例0089】
実施例1~3は、硬質、非多孔性、無生物環境表面への効果を判定するために、タオレットのために修正されたAOAC 961.02方法に従って試験された、ワイプに適用された様々な抗菌組成物を示す。黄色ブドウ球菌の試験培養物が各殺菌剤の有効性を試験するために使用された。結果は、伸びを示したキャリアの割合、例えば陽性キャリアのパーセント、として表される。
実施例1
【0090】
11の組成物を調製し、90秒の接触時間で上述の方法で試験し、殺生物剤としてのそれらの効果を判定した。黄色ブドウ球菌を接種されたキャリアを表1の各組成物について試験した。表1は、様々な組成物で実施された試験の結果を示す。
【表1】
【0091】
上記表1では、変化したエタノールレベル以外、実質的に同一の製剤の対を試験した。エタノールは典型的には、50~90重量%の濃度ではそれ自体で活性である。典型的には、エタノールの増加は、抗菌有効性の増加をもたらす。しかしながら、組成物1a/b、3a/b、4a/b、および5a/bでは、組成物の有効性は、30%エタノールと比較した場合、20%エタノールの方が高かった(より低い陽性キャリアのパーセント)。組成物2a/bの場合、エタノール濃度が増加したときでさえも有効性レベルは一貫して保持された。組成物3a、5a、および6は、最も有効な処方であり、それぞれ20%、20%および25%のエタノールを含有した。このデータは、アルコールが有効性を増加させるという認められた仮定に基づいて、驚くべきことである。このような仮定は、この組成空間では必ずしも事実であるとは限らないようである。
実施例2
【0092】
エタノール、pH調節剤、および水のみを含む四つの組成物を、様々なpHレベルで調整し、タオレットのために修正されたAOAC 961.02方法で試験し、エタノールのみの抗菌効果を判定した。黄色ブドウ球菌を接種されたキャリアを表2の各組成物を用いて試験した。120秒の接触時間後に陽性キャリアの量を計算し、以下の表2に反映した。
【表2】
【0093】
表2は、25%のエタノールのみを有する組成物が、黄色ブドウ球菌に対して何ら有効性を示さなかったことを示している。組成物7を参照のこと。さらに、pH5では、40.00重量%のエタノール濃度は、約96.67%陽性キャリアの有効性を示した。50.00重量%のエタノール濃度で、同時にpH3.29でのみ、有効性が50%陽性キャリアより下がり始めるが、これは本出願に記載されている最大値15%陽性キャリアをまだ超えている。
実施例3
【0094】
25.0重量%エタノール、0.62重量%のデシルグルコシド、0.5重量%の安息香酸ナトリウム、0.75重量%のクエン酸および残部が水である試料(「試料A」)を上述の方法に従って試験して、その迅速な抗菌有効性を判定した。組成物のpHは4.0であった。表3は、試料Aの2分間にわたる有効性試験の結果を詳述する。20.0重量%エタノール、0.50重量%のデシルグルコシド、0.10重量%の安息香酸ナトリウム、1.50重量%のクエン酸および残部が水である試料(「試料B」)を上述の方法に従って試験して、その抗菌有効性を判定した。組成物のpHは3.0であった。表3は、試料Bの2分間にわたる有効性試験の結果を詳述する。20.0重量%のエタノール、0.62重量%の非イオン性界面活性剤、1.50重量%のエンハンサー、1.50重量%の有機酸、0.20重量%のキレート剤、および残部が水である試料(「試料C」)を上述の方法に従って試験して、その抗菌有効性を判定した。試料CのpHは4.00であった。表3は、試料Dの90秒間にわたる有効性試験の結果を詳述する。17.5重量%のエタノール、0.62重量%の非イオン性界面活性剤、0.75重量%のエンハンサー、0.6重量%の有機酸、0.25重量%のキレート剤、および残部が水である試料(「試料D」)を上述の方法に従って試験して、その抗菌有効性を判定した。試料DのpHは4.00であった。表3は、試料Dの90秒間にわたる有効性試験の結果を詳述する。これらの結果は、15秒という短時間での迅速な抗菌有効性を示している。
【表3】
実施例4
【0095】
完全抗菌製剤と比較した個々の成分の有効性が、組成物の相乗的抗菌改善が相加効果だけ以上であることを実証するために試験された。具体的には、以下の表4に概説した通り、五つの試料を調製し、ASTM E2783に従って様々な接触時間で黄色ブドウ球菌に対して試験した。
【表4】
【0096】
表4および添付の
図1で上述した通り、約18.0~22.0重量%エタノール、0.65~0.8重量%の非イオン性界面活性剤、1.0~1.5重量%の緩衝剤、および0.1~0.4重量%のエンハンサーの個別の濃度では、いずれの成分も約4.0のpHで、黄色ブドウ球菌に対する抗菌有効性を示さなかった。(試料A、B、C、およびDを参照のこと)。対照的に、試料Eは、試料A、B、C、およびDに概説された同一濃度レベルで組み合わされた各構成要素を含み、抗菌有効性の著しい増加を示した。具体的には、試料Eは、30秒で4.45CFU/mlを超えるlog減少を示したが、これは、本明細書で使用される成分の組み合わせの相乗効果が相加的ではないことを示す。
実施例5
【0097】
次に、さまざまな濃度レベルで個々の成分の有効性を試験し、濃度が増加しても、個々の成分がまだ抗菌有効性を持たないことを示した。具体的には、以下の表5に概説した通り、九つの試料を調製し、ASTM E2783に従って30秒の接触時間で黄色ブドウ球菌に対して試験した。
【表5】
【0098】
表5および添付
図2で上述したように、非イオン性界面活性剤(アルキルポリグルコシド)および緩衝剤(クエン酸モノナトリウム)の個別濃度が個別の濃度の9.0~11.0重量%まで増加した場合でも、組成物は抗菌有効性を示さなかった。従って、これは、抗菌有効性の予想外の増加を提供するのは、成分の相乗的組み合わせであることをさらに支持する。
実施例6
【0099】
抗菌組成物の有効性を、タオレットのために修正されたAOAC 961.02方法に基づいて、黄色ブドウ球菌6538に対して90秒の接触時間で試験した。組成物の三つの異なるグループを試験した:グループAは、エタノールおよび非イオン性界面活性剤のみを含む比較試料を含み、グループBはエタノール、非イオン性界面活性剤、緩衝剤、およびエンハンサーを含む本発明組成物を含み、グループCはエタノール、非イオン性界面活性剤、緩衝剤、エンハンサー、およびキレート剤を含む第二の発明組成物を含む。各組成物グループについて、黄色ブドウ球菌の減少の原因がエタノールだけではないことを示すために、エタノールレベルを変化させた。
【表6】
【0100】
上の表6に示され、
図3に図示したように、比較例グループA(エタノール+界面活性剤)は、エタノールレベルが40%より上であったとしても、陽性キャリア15%未満の有効性を達成しなかった。エタノールレベルが10~20%である場合、全てのキャリアで、黄色ブドウ球菌の成長があった。対照的に、グループB製剤(エタノール+界面活性剤+緩衝剤+エンハンサーを含む)は、10%エタノールで始まる有効性を示し、エタノールレベル20%以上では、10%以下のキャリアを達成した。グループC製剤(エタノール+界面活性剤+緩衝剤+エンハンサーを含む)も、陽性キャリアのパーセント15%未満がエタノール濃度15%で始まり、低エタノールレベルで高い有効性を示した。従って、製剤の有効性は、界面活性剤、エンハンサー、および緩衝剤のうちの少なくとも二つの添加によって改善される。
実施例 7
【0101】
アルコールと、非イオン性界面活性剤、エンハンサー、および緩衝剤のうちの二つ以上とを含む抗菌組成物の有効性が、修正されたAOAC 961.02方法に従って、硬質、非多孔性、無生物環境表面に対するそれらの効果を判定するために試験された。黄色ブドウ球菌を接種されたガラススライド上に製剤を噴霧して、製剤への曝露の20秒後に中和された。黄色ブドウ球菌の減少が定量化され、記録された。
【0102】
以下の表7に示すように、試料(a)は、エタノール、非イオン性界面活性剤、緩衝剤、およびエンハンサーの各々を含み、3.40の低pHであり、5.31log CFUの非常に有効なログ減少を達成する。試料(b)~(d)は、有効性をなお維持しながら、界面活性剤、緩衝剤、またはエンハンサーのうちの一つを除去できることを示す。
【表7】
実施例8
【0103】
アルコールと、非イオン性界面活性剤、エンハンサー、および緩衝剤のうちの二つ以上とを含む抗菌組成物の有効性が、修正されたAOAC 961.02方法に従って、硬質、非多孔性、無生物環境表面に対するそれらの効果を判定するために試験された。黄色ブドウ球菌を接種されたガラススライド上に製剤を噴霧して、製剤への曝露の20秒後に中和された。黄色ブドウ球菌の減少が定量化され、記録された。
【0104】
以下の表8は、同じカテゴリーの成分が製剤内で代用された場合に、有効性が失われないことを示す。例えば、組成物bにおいて、サリチル酸は、エンハンサーとして安息香酸ナトリウム(組成物a)の代用とされた。各組成物は、少なくとも4log CFUのログ減少で、十分な有効性を維持した。有効性の同様の維持が組成物cおよびbに見出され、ここにおいてラウリル硫酸ナトリウムがカプリリル/カプリルグルコシドに対して代用された。組成物e-fは、本発明組成物に含まれる場合に、十分な有効性をすべてが示す種々の界面活性剤を含む。
【表8】
【0105】
例示的な実施形態は本明細書に記載されているが、包括的発明概念の精神および範囲から逸脱することなく、多くの修正を行うことができることが理解されるべきである。こうしたすべての修正は、本明細書に記載される例示的な実施形態の範囲内に含まれることが意図されており、これは以下の特許請求の範囲によってのみ制限される。