(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145674
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】急性骨髄性白血病および関連状態を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7034 20060101AFI20231003BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231003BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20231003BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231003BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231003BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231003BHJP
A61K 51/00 20060101ALI20231003BHJP
A61K 31/136 20060101ALI20231003BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20231003BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20231003BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20231003BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20231003BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20231003BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A61K31/7034
A61P35/02
A61P7/00
A61P29/00
A61P43/00 105
A61K45/00
A61K51/00 100
A61K31/136
A61K31/7048
A61K31/7068
A61K31/7076
A61K31/704
A61K38/18
A61K31/4545
A61P43/00 123
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023126238
(22)【出願日】2023-08-02
(62)【分割の表示】P 2020546119の分割
【原出願日】2019-03-04
(31)【優先権主張番号】62/638,569
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506167421
【氏名又は名称】グリコミメティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン エム. サッカレー
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー エイチ. フラナー
(72)【発明者】
【氏名】カート ディー. ウォルフガング
(57)【要約】 (修正有)
【課題】がんおよび/または1もしくはそれを超える関連状態を処置または抑制する方法を提供する。
【解決手段】急性リンパ性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、好中球減少症または粘膜炎を処置するための方法であって、AML、MDS、好中球減少症または粘膜炎の処置を必要とする被験体に、1日当たり200mg~4000mgの固定された用量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法である。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2018年3月5日に出願された米国仮出願第62/638,569号の優先権を主張し、その内容は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、がんおよび/または1もしくはそれを超える関連状態を処置または抑制する方法であって、がんおよび/または1もしくはそれを超える関連状態を処置または抑制することを必要とする被験体に、有効量の、少なくとも1つの、式(I)の化合物、そのプロドラッグおよび/または前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩を投与することを含む、方法に関する。
【0003】
本開示は、薬剤抵抗性がん、再発の可能性が高いがん、疾患の進行が加速したがんおよび/または生存が低減したがんを含むがんを有する患者を処置する方法を提供する。
【0004】
がんが原発部位を超えて移動する前に処置されれば、多くのがんは極めて処置可能である。しかしながら、多くの場合、一旦、がんが原発部位を超えて広がったら、処置の選択肢は限られ、生存統計データは劇的に低下する。例えば、結腸直腸がんが局所的段階で(すなわち、結腸または直腸に限定されて)検出された場合には、診断された者の90%超が、5年を超えて生存する。逆に、結腸直腸がんが遠隔部位に広がると(すなわち、原発部位から遠隔部位へ転移すると)、診断された者の5年生存率は、わずか11%へと急減する。
【0005】
4つの最も一般的な血液のがんは、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)および急性骨髄性白血病(AML)である。白血病ならびに血液、骨髄およびリンパ系の他のがんには、成体が小児より10倍多く罹患する。AMLは、成体において最も一般的な白血病である。
【0006】
AMLは、骨髄が成熟した白血球の代わりに芽球を作り始めたときに生じる。未熟な芽球は、感染症と戦うことができない。AMLは最も一般的な急性白血病であり、急速に進行する。処置されずに放置すれば、AMLは、数週または数ヶ月以内に死をもたらし得る。
【0007】
AMLに対する現在の処置としては、標的化化学療法を含む化学療法、放射線療法および自家幹細胞移植または同種異系幹細胞移植が挙げられる。これらの処置のそれぞれの副作用は、文献に多数報告されている。典型的には、新たに診断されたAML患者は、がんを寛解状態にすることを試みるために、導入化学療法レジメンによって処置される。寛解は、患者を治癒することではなく、単に疾患をもはや検出できないことを意味する。しかしながら、寛解状態にある多くのAML患者は最終的に再発するので、寛解は、ほとんどの場合、暫定的な尺度である。寛解後の治療としては、地固め化学療法(典型的には、予後が良好な白血病に対する3~5クールの強化化学療法)、同種異系の幹細胞移植(より高リスクで、かつ適合ドナーがいる白血病に対して)および自家幹細胞移植(患者の基礎状態に基づいて可能である場合、および適合ドナーが得られない場合)が挙げられる。再発性AMLを処置するためには、AMLの急性前骨髄球性(promylocytic)白血病サブタイプを有するAML患者においてのみ機能する極めて毒性が強い三酸化ヒ素など、極めて少数の医薬しか利用できない。再発性AMLを有する者では、唯一の可能性がある治療法は幹細胞移植である。幹細胞移植が可能でない場合には、寛解を可能な限り長くするために、免疫療法が試みられ得る。このような処置の選択肢は限られており、再発性AML患者に対しては、多くの場合、緩和ケアが唯一の利用可能な処置である。したがって、AMLを処置する(予防することを含む)ためのさらなる治療薬が必要とされている。
【0008】
骨髄異形成症候群(「MDS」)は、造血幹細胞(「HSC」)障害の多様な群を表す。MDSは、形態および成熟が損なわれた細胞髄(骨髄造血異常)、末梢血血球減少および有効でない血液細胞産生の結果生じる急性白血病への進行のリスクを特徴とする。(The Merck Manual.1999.17:953;Listら、The Myelodysplastic Syndromes:Biology and Implications for Management.J.Clin.Oncol.1990.8:1424参照。)
【0009】
MDS HSC障害によって共有される共通の形質は、造血系列の1またはそれより多くでの異形成変化、例えば、骨髄、赤血球または巨核球系列での異形成変化の存在である。これらの変化は、前記系列の1つまたはそれより多くにおいて血球減少をもたらす。MDSに罹患した患者は、貧血、好中球減少症(感染症)および/または血小板減少症(出血)に関連する合併症を発症し得る。MDSを有する患者の約10%~約70%が、急性白血病を発症する。MDSの初期段階では、血球減少の主原因は、増加したプログラム細胞死(アポトーシス)である。疾患が進行し、白血病に転化するにつれて、白血病細胞の増殖が健康な髄を圧倒する。疾患の経過は異なり、いくつかの症例は低悪性度の疾患として挙動し、その他の症例は、高悪性度として挙動して、白血病の急性形態へ転化する極めて短い臨床経過を有する。より高いリスクのMDSを有する者の大半は、最終的には、骨髄不全を経験する。MDS患者の最大50%は、AMLに進行する前に、感染または出血などの合併症に陥る。
【0010】
最初のHSC傷害は、細胞傷害性化学療法、放射線、ウイルス感染、化学物質への曝露および遺伝的素因などの、ただしこれらに限定されない原因から生じ得る。アルキル化化学療法または放射線療法はMDSを引き起こすことがあり、MDSは、これらの被験体において、ほぼ常にAMLに進行する。
【0011】
MDSは、主に、高齢者の疾患であり、発症の中央値は60代である。これらの患者の中央値年齢は、65歳であり、年齢は、20代初期から80歳またはそれより高齢にわたる。しかしながら、この症候群は、小児集団を含む任意の年齢群に発生し得る。放射線療法ありまたはなしで、アルキル化剤での悪性疾患処置を生き抜いた患者は、MDSまたは続発性急性白血病を発症する頻度が高い。患者の約60~70%は、MDSに対する明白な曝露または原因を有せず、原発性MDS患者として分類される。
【0012】
現在、米国食品医薬品局によって承認されたMDSの処置用薬物は根治的ではなく、生存に対するその効果は限定的である。それらには、低メチル化剤(hypomethylating agent)(「HMA」)(アザシチジンおよびデシタビンなど)および単独del(5q)を伴うMDSを処置するためのレナリドミドが含まれる。現在まで、同種異系幹細胞移植(「ASCT」)が、治癒する可能性のある唯一の処置の選択肢に留まる。しかしながら、ASCTは、侵襲的手法を伴うため、ドナーよびレシピエントの両者にとって痛みを伴う。ASCTは、特に、移植片対宿主病(「GVHD」)が発生したときに、レシピエントに対して重度かつさらには致命的な合併症を引き起こし得る。したがって、GVHDのリスクは、骨髄移植を使用しなければ致命的な疾患を有する患者への、骨髄移植の使用を制約する。さらに、多くの患者が高齢であり、多くの場合、ほんのわずかな若いMDS患者が適合ドナーを有するに過ぎないので、骨髄移植の使用は限られている。したがって、MDSを処置するためのさらなる治療薬が必要とされている。
【0013】
好中球減少症は、化学療法の頻繁に起こる合併症であり、骨髄抑制性化学療法的処置が好中球絶対数を低下させるときに起きる。化学療法の副作用の一つは、骨髄破壊的骨髄毒性である。骨髄は、胸骨、寛骨(hip)、大腿骨および上腕骨などのいくつかの骨の内側を満たす。骨髄中の細胞は、分裂速度が速いために、化学療法の影響を受けやすい。化学療法剤は、骨髄幹細胞が新たな血液細胞を形成することを妨げる。血液細胞の平均寿命が異なるので、細胞の具体的な種類に応じて、やがて、化学療法剤への曝露後に、血液細胞の数が様々な速度で低下する。低い白血球数(例えば、好中球減少症)は、例えば、個体を感染により罹りやすくする。
【0014】
好中球減少症は、がん患者を、特に、グラム陰性桿菌、グラム陽性球菌および真菌からの、生命を脅かす可能性がある感染に罹りやすくする。感染のリスクおよび死亡率が、好中球減少症の発症および発熱の存在の程度および持続期間とともに増加する。
【0015】
入院を要する好中球減少症は、血液の腫瘍を有する患者において特に一般的である。このような悪性疾患を有すると診断された患者23人に1人、化学療法で処置された患者10人に1人が罹患すると推定されている。(Cagglano Vら、Incidence,Cost,and Mortality of Neutropenia Hospitalization Associated with Chemotherapy.Cancer.2005.103(9):1916参照。)
【0016】
好中球減少症は、化学療法の用量の低下、遅延またはさらには中断を引き起こすことによって、最適ながんの管理を妨げることがある。好中球減少事象は、しばしば、化学療法の過程中の初期に起こるので、これらの用量の修正は、しばしば、化学療法の第一サイクルの間に実施される。処置応答は、標準的な化学療法用量の送達にしばしば依存し、投薬の修正は、完全な奏効率を脅かし、生存を低下させ得る。このため、治療者は、好中球減少症合併症を管理しながら、十分な化学療法用量を維持するという困難に直面し得る。したがって、好中球減少症を処置する(予防することを含む)ためのさらなる治療薬が必要とされている。
【0017】
粘膜炎は、化学療法および/または放射線療法などの、抗新生物治療の合併症としてしばしば発生する一般的な消耗性の有害事象である。このようながん治療の最終目標は、急速に分裂するがん細胞を死滅させることであるが、残念なことに、粘膜の上皮細胞を含む他の細胞も処置によって死滅することがあり、これが粘膜炎をもたらし得る。
【0018】
粘膜炎は、胃腸管、食道を含む口腔および中咽頭腔ならびに膀胱、耳、鼻、視覚、膣および直腸の粘膜などの粘膜の炎症および潰瘍を伴う深刻で、多くの場合、極めて痛みを伴う障害である。
【0019】
特に血球減少期間と同時に起こる重度の粘膜炎は、感染および死亡のリスクを増加させ、入院を長期化し、生活の質に影響を与え得る。(Niscola P.ら、 Mucositis in Patients with Hematologic Malignancies: An Overview.Haematologica.2007.92:222参照。)
【0020】
粘膜炎の総合的な頻度およびその重篤度は、例えば、処置レジメンおよび処置モダリティなどの要因に依存するが、治療を受けている全てのがん患者のうちおよそ半分が何らかの程度の粘膜炎に苦しんでいると考えられている。例えば、頭部および頸部腫瘍に対する放射線療法で処置された実質的に全ての患者、胃腸管に沿って放射線を受けている全ての患者、他の部位の腫瘍(例えば、白血病またはリンパ腫)に対して放射線療法および/または化学療法を受けた患者のおよそ40%に、粘膜炎が発生すると考えられている。高用量の化学療法および/または、例えば、幹細胞もしくは骨髄移植のための調製における骨髄破壊目的の放射線照射で処置された患者において極めて広く見られるとも考えられている。
【0021】
粘膜炎は、がん患者の生活の質に悪影響を与え得る。患者は、発話、摂食および嚥下困難を引き起こし得る疼痛、紅斑および/または深在性、びまん性潰瘍を経験し得る。患者は、悪心および/または胃腸炎も経験し得る。重度の粘膜炎は、非経口栄養もしくは入院の必要性、またはがん処置の中断、処置投薬量の変化および/もしくは異なる様式の処置へのシフトをもたらし得る。
【0022】
粘膜炎は、口腔粘膜および胃腸管の他の保護的内層に切れ目をもたらし得るので、粘膜炎には、発熱および感染の重度のリスクも伴い得る。消化管および胃腸管には、幅広い微生物が生着しており、粘膜の病変は細菌が侵入する入口を与え得る。
粘膜炎に対する現在の治療は、創傷治癒を調節し、感染を防ぐ化合物を含有する局所的処置と併用される抗生物質、抗真菌薬または抗炎症剤の投与など、主に対症療法である。粘膜炎の処置に対して承認された唯一の医薬として、パリフェルミンが存在する。しかしながら、パリフェルミンは、限られた一部の患者においてのみ使用が承認されている。したがって、粘膜炎を処置する(予防することを含む)ためのさらなる治療薬が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Cagglano Vら、Cancer(2005)103(9):1916
【非特許文献2】Niscola P.ら、Haematologica(2007)92:222
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願は、AML、MDS、好中球減少症および/または粘膜炎を処置するための方法であって、AML、MDS、好中球減少症および/または粘膜炎の処置を必要とする被験体に、有効量の、式(I)の化合物および式(I)の化合物を含む組成物を投与することを含む方法を開示する。
【化1】
【0025】
いくつかの実施形態において、AML、MDS、好中球減少症および/または粘膜炎を処置するための方法であって、AML、MDS、好中球減少症および/または粘膜炎の処置を必要とする被験体に、有効量の式(I)の化合物を投与することを含む方法が提供される。
【0026】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、固定された1日用量として投与される。いくつかの実施形態において、AML、MDS、好中球減少症または粘膜炎を処置するための方法であって、AML、MDS、好中球減少症または粘膜炎の処置を必要とする被験体に、200mg~4000mg/日、800mg~3200mg/日または1000mg~2000mg/日の固定された用量の式(I)の化合物を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態において、AML、MDS、好中球減少症または粘膜炎を処置するための方法であって、AML、MDS、好中球減少症または粘膜炎の処置を必要とする被験体に、1600mg/日の固定された用量の式(I)の化合物を投与することを含む方法が提供される。
【0027】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、体重に基づく1日用量として投与される。いくつかの実施形態において、AML、MDS、好中球減少症または粘膜炎を処置するための方法であって、AML、MDS、好中球減少症または粘膜炎の処置を必要とする被験体に、1日当たり1mg/kg~100mg/kg、1日当たり5mg/kg~80mg/kgまたは1日当たり10mg/kg~40mg/kgの式(I)の化合物を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態において、AML、MDS、好中球減少症または粘膜炎を処置するための方法であって、AML、MDS、好中球減少症または粘膜炎の処置を必要とする被験体に、1日当たり20mg/kgの式(I)の化合物を投与することを含む方法が提供される。
【0028】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の1日用量(固定または体重に基づく)は、単回用量として投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の1日用量は、1日にわたって分割用量で投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の1日用量は、1日に2回(すなわち、BID)投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の1日用量は、各用量間に約12時間を置いて、2用量で投与される。いくつかの実施形態において、被験体は、1日当たり、それぞれ800mgの式(I)の化合物の2用量を受ける。いくつかの実施形態において、それぞれ800mgの式(I)の化合物の1日当たり2用量は、約12時間を隔てて投与される。例えば、1600mgの固定された1日用量は、それぞれ800mgの2回の分割用量として1日にわたって投与され得、2回の800mg用量は約12時間を隔てて投与される。別の例として、1日当たり20mg/kgの体重に基づく1日用量は、それぞれ10mg/kgの2回の分割用量として1日にわたって投与され得、2回の10mg/kg用量は、約12時間隔てて投与される。
【0029】
式(I)の化合物は、本明細書に記載されているとおり、様々な方法で投与され得る。例えば、式(I)の化合物は、静脈内にまたは皮下に投与され得る。
【0030】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、本明細書に記載されているとおり、化学療法および/または放射線療法を受けている、それらを受けたまたはそれらを受けるであろう被験体に投与される。例えば、式(I)の化合物は、ミトキサントロン、エトポシドおよびシタラビンまたはフルダラビン、シタラビンおよびイダルビシンなどの2またはそれを超える化学療法剤を受けている、それらを受けたまたはそれらを受けるであろう被験体に投与され得る。別の例として、式(I)の化合物は、ベラフェルミン、パリフェルミン、サリドマイドおよび/またはサリドマイド誘導体を受けている、それらを受けたまたはそれらを受けるであろう被験体に投与され得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、MMP阻害剤、炎症性サイトカイン阻害剤、肥満細胞阻害剤、NSAID、NO阻害剤、MDM2阻害剤または抗菌化合物を受けている、それらを受けたまたはそれらを受けるであろう被験体に投与される。
【0032】
いくつかの実施形態において、被験体がAMLを有する場合、式(I)の化合物の投与は被験体が寛解状態にある日数を伸ばし、寛解までの日数を減らし、AML細胞の転移を抑制し、および/または生存を改善する。
【0033】
いくつかの実施形態において、被験体がMDSを有する場合、式(I)の化合物の投与はMDSの進行を減速させ、MDSの白血病への進行を防ぎ、および/または生存を改善する。
【0034】
いくつかの実施形態において、被験体が好中球減少症を有する場合、式(I)の化合物の投与は、被験体が好中球減少症に罹病している日数を減らし、または好中球減少症の重篤度を低下させる。
【0035】
いくつかの実施形態において、被験体が粘膜炎を有する場合、式(I)の化合物の投与は、被験体が粘膜炎に罹病している日数を減らし、または粘膜炎の重篤度を低下させる。
【0036】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(I)のプロドラッグまたは前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩として投与される。
【0037】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、式(I)のプロドラッグまたは前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩は、薬学的に許容され得る担体または希釈剤と組み合わせて投与される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1Aは、5-FU化学療法後の、マウスにおける小腸重量(炎症の尺度)に対する式(I)の化合物の効果を図示する。
図1Bは、5-FUによって誘導される腸のびらん、絨毛の喪失およびマクロファージの浸潤が、式(I)の化合物での処置によって、減弱されたことを図示する。
【0039】
【
図2】
図2は、放射線療法後の、マウスにおける腸のマクロファージ浸潤に対する式(I)の化合物の効果を図示する。
【0040】
【
図3】
図3A~3Bは、野生型マウスと比較されたE-セレクチンノックアウトマウス中でのシタラビンの有効性(
図3A)、およびシタラビン(「AraC」)処置単独と比較された式(I)の化合物と併用された場合の野生型マウス中でのシタラビンの有効性(
図3B)を図示する。
【0041】
【
図4】
図4は、シタラビンおよびDNRでの処置と比較された、5mg/kgの式(I)の化合物、シタラビンおよびダウノルビシン(「DNR」)で処置された場合の、ヒトAML芽球が生着されたマウス中での循環白血病細胞負荷を図示する。
【0042】
【
図5】
図5は、シタラビンおよびDNRでの処置と比較された、式(I)の化合物(10mg/kgおよび40mg/kgBID(すなわち、1日当たり20mg/kgおよび80mg/kg)、シタラビンおよびDNRで処置された場合の、ヒトAML芽球が生着されたマウスの生存を図示する。
【0043】
【
図6】
図6は、シタラビンおよびDNRで処置されたマウス、ならびに式(I)の化合物(9日間、40mg/kgBID(すなわち、1日当たり80mg/kg))、シタラビンおよびDNRで処置されたマウスと比較された、処置を与えなかった場合の、ヒトAML細胞株、U937を担持するマウスの生存を図示する。
【0044】
【
図7】
図7は、シタラビンおよびドキソルビシン(「DOX」)で処置されたマウス、ならびに式(I)の化合物(10日間、40mg/kgBID(すなわち、1日当たり80mg/kg))、シタラビンおよびDOXで処置されたマウスと比較された、処置を与えなかった場合の、MLL-AF9によって誘導されたAML白血病を担持するマウスの生存を図示する。
【0045】
【
図8】
図8は、式(I)の化合物および5-アザシチジンで処置されたKG1細胞と比較された、5-アザシチジンで処置されたKG1細胞のE-セレクチン被覆されたウェルへの接着を例示し、対照細胞、5-アザシチジン処置された細胞ならびに5-アザシチジンおよび式(I)の化合物で処置された細胞中で実証された蛍光を定量するグラフを示している。
【0046】
【
図9】
図9は、式(I)の化合物(14日間、1日当たり40mg/kg)、5-アザシチジンまたは式(I)の化合物と5-アザシチジンで処置されたマウスと比較された、処置を与えなかった場合の、KG1 AMLモデルマウスの生存を図示する。
【0047】
【
図10】
図10A~10Bは、新たに診断された高齢患者(60歳以上)および再発/難治性(R/R)白血病患者中のAML芽球への、E-セレクチンリガンド結合(
図10A)またはsLe
a/x結合(
図10B)を図示する。
【0048】
【
図11】
図11は、様々なレベルの式(I)の化合物およびMEC化学療法で処置されたヒト被験体中での、8日の処置期間にわたる血漿可溶性E-セレクチンレベルを図示する。8日の研究のために、被験体を3つのコホートに分けた。1日目に、被験体は、式(I)の化合物の単回用量を受け、2~6日目は、それぞれ、式(I)の化合物の2用量と組み合わされたMEC処置を含み、7~8日目は、それぞれ、式(I)の化合物の2用量を含んだ。コホート1は、5mg/kgの式(I)の化合物の用量(すなわち、1日目に5mg/kg、2~8日目に5mg/kgBID(1日当たり10mg/kg)を受け、コホート2は、10mg/kgの式(I)の化合物の用量(すなわち、1日目に10mg/kg、2~8日目に10mg/kgBID(1日当たり20mg/kg)を受け、コホート3は、20mg/kg用量の式(I)の化合物(すなわち、1日目に20mg/kg、2~8日目に20mg/kgBID(1日当たり400mg/kg)を受けた。ベースラインから8日までの減少は、高度に有意であり(P<0.0001)、用量応答はなかった。
【0049】
【
図12-1】
図12A~12Dは、臨床応答カテゴリーにわたって、処置の間の式(I)の化合物への曝露-応答を定量する測定基準(metric)を図示する。
図12Aは、有効性応答(CR=完全寛解);CRi=計数回復(count recovery)が不完全である完全寛解;MLFS=形態的無白血病状態;PD=持続的疾患)の4つのカテゴリーに対して、式(I)の化合物のIC
50より大きな投薬間隔の割合をプロットする。
図12Bは、有効性応答の4つのカテゴリーに対して、式(I)の化合物のIC
90より大きな投薬間隔の割合をプロットする。
図12Cは、有効性応答の4つのカテゴリーに対して、式(I)の化合物のCmax(μg/mL)をプロットする。
図12Dは、有効性応答の4つのカテゴリーに対する、式(I)の化合物の曲線下面積(「AUC」)をプロットする。各カテゴリーにおける、最小、25パーセンタイル、中央値、75パーセンタイルおよび最大曝露測定基準を例示するための箱ひげ図。
【0050】
【
図13-1】
図13A~13Dは、処置の間の式(I)の化合物への曝露に対してプロットされた有害事象(「AE」)を図示する。各被験体の計算されたAUC、累積AUCおよびCmaxのパーセンタイル順位(左グラフ)および正規化された値(右グラフ)が報告されている。E-R分析のために特定されたAEは、好中球減少症(
図13Aおよび13B)、血小板減少症(
図13Cおよび13D)、熱性好中球減少症(
図13Eおよび13F)、感染(
図13Gよび13H)、粘膜炎(
図13Iおよび13J)および貧血(
図13Kおよび13L)であった。被験体が事象を2回経験した場合には「反復ID(Replicate ID)」によって示されているように、図中に2回示されている。評価可能なPKデータを有さなかった被験体の数は、「PKなし」と注釈がつけられ、これらの被験体のデータはグラフ中に示されていない。
【0051】
【
図14-1】
図14A~
図14Bは、選択した導入および地固め処置プロトコールを図示する。導入の間、被験体は、5日間連続して、MECまたはFAIのいずれかの化学療法および8日間連続して、式(I)の化合物を受ける。式(I)の化合物での処置は、化学療法を開始する1日前に開始される(
図14A)。地固めの間、患者は地固め化学療法、HiDAC、IDACオプション1、IDACオプション2またはMECを受ける。式(I)の化合物での処置は、式(I)の化合物の単回用量での地固め化学療法を開始する1日前に開始される。次いで、化学療法の日に、1日2回、式(1)を投与し、化学療法の最後の用量後に、2日間、1日2回投与する(
図14B)。
【0052】
【
図15】
図15は、実施例21に記載されているプロトコールに従って、RP2D用量の10mg/kg/用量の化合物式(1)を投与された54人の再発/難治性(R/R)AML被験体の生存転帰を図示する。
【0053】
【
図16】
図16A~16Bは、実施例22に記載されているプロトコールに従って、RP2D用量の10mg/kg/用量の化合物式(1)を投与された25人の新たに診断された高齢AML被験体(年齢60歳以上)の生存転帰を図示する。
図16Aは、イベントフリー生存率を例示し、
図16Bは、全生存率を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0054】
用語「a」、「an」および「the」は、特許請求の範囲を含む本願において使用された場合、「1またはそれを超える(one or more)」を表す。したがって、例えば、「1つの細胞(a cell)」という表記は、1の細胞または複数の細胞などを含む。
【0055】
「E-セレクチンアンタゴニスト」という用語には、E-セレクチンのみの阻害剤の他、E-セレクチンおよびP-セレクチンまたはL-セレクチンのいずれの阻害剤ならびにE-セレクチン、P-セレクチンおよびL-セレクチンの阻害剤が含まれる。
【0056】
「患者」、「被験体」、「個体」などの用語は、本明細書において互換的に使用され、インビトロであれまたはインサイチューであれ、本明細書に記載されている方法に適した任意の動物またはその細胞を表す。いくつかの実施形態において、患者、被験体または個体は、ヒトである。いくつかの実施形態において、処置を必要とする患者、被験体または個体には、すでに疾患、状態または障害を有する患者、被験体または個体の他、疾患、状態もしくは障害を有しやすいまたは疾患、状態もしくは障害を発症するリスクがある患者、被験体または個体、および疾患、状態または障害が予防されるべき患者、被験体または個体が含まれる。
【0057】
「プロドラッグ」という用語には、例えば、生理的条件下で、または加溶媒分解によって、本明細書に記載されている生物学的に活性な化合物へ転換され得る化合物が含まれる。したがって、「プロドラッグ」という用語には、薬学的に許容され得る本明細書に記載された化合物の代謝的前駆体が含まれる。プロドラッグの論述は、例えば、Higuchi,T.ら、”Pro-drugs as Novel Delivery Systems,”A.C.S.Symposium Series,Vol.14およびBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987に見出すことができる。「プロドラッグ」という用語には、このようなプロドラッグが被験体に投与されたときに、本明細書に記載されているとおりの活性化合物をインビボで放出する共有結合された担体も含まれる。
【0058】
「薬学的に許容され得る塩」という用語には、酸付加塩(acid addition
salt)および塩基付加塩(base addition salt)の両方が含まれる。薬学的に許容され得る酸付加塩の非限定的な例としては、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩およびアスコルビン酸塩が挙げられる。薬学的に許容され得る塩基付加塩の非限定的な例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム(置換されたまたは置換されていない)、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガンおよびアルミニウム塩が挙げられる。薬学的に許容され得る塩は、例えば、薬学の分野において周知の標準的な手順を用いて取得され得る。
【0059】
用語「治療(therapy)」は、疾患もしくは状態を「処置すること(treating)」または疾患もしくは状態の「処置(treatment)」を表し、疾患を予防しまたは抑制すること(その発症を減速させるまたは停止させること)、疾患の症状または副作用からの解放を与えること(対症的処置を含む)および疾患を緩和すること(疾患の後退を引き起こすこと)を含む。「治療」、「処置すること」または「処置」は、予防的処置も表し得、疾患に対して素因を有し得るが、疾患の症状をいまだ経験しまたは呈していない被験体に疾患または状態の発症が生じることを予防しまたは減速させることを含む。「治療」、「処置すること」または「処置」は、被験体が処置を受けていなかった場合に予想される生存と比較したときに、生存を延長させることも表すことができる。「処置」は処置される患者の100%に有効性を示すことは必要ではなく、むしろ、「処置」という用語は、症状および臨床徴候が少なくとも改善を示す様式で、統計学的に有意な割合の患者が有効に処置され得ることを意味するものとする。当業者は、様々な統計学的方法(例えば、信頼区間、そのP値の決定、スチューデントのt検定、マン・ホイットニー検定など)を用いて、割合が統計学的に有意であるかどうかを容易に確定することができる。信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の信頼度を有する。P値は、0.1、0.05、0.01、0.005または0.0001である。
【0060】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法は、少なくとも1つの所望の治療的および/または予防的利点をもたらすのに十分な量で、少なくとも1つの式(I)の化合物および、必要に応じて、本明細書に記載されている少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分を提供する。治療的または予防的利点としては、例えば、治療的処置または予防的/防止的措置のいずれかにおける改善された臨床的転帰が挙げられ、ここで、その目的は、望ましくない生理的変化もしくは障害を予防し、もしくは減速させ、もしくは遅延させる(軽減する)こと、またはこのような障害の拡大もしくは重篤度を予防しもしくは減速させもしくは遅延させることである。本明細書中で論述されているとおり、被験体を処置することから得られる有利なまたは所望の臨床的結果としては、処置されるべき疾病、状態もしくは障害に起因するまたは処置されるべき疾病、状態もしくは障害と関連する症状の排除、軽減または緩和;症状の発生の減少;生活の質の改善;より長い無疾患状態(すなわち、被験体が疾患の診断を為す基礎となる症状を示す確率または傾向を減少させること);疾患の程度の減少;疾患の安定化された(すなわち、悪化しない)状態;疾患の進行の遅延または減速;疾患状態の好転(amelioration)または緩和;および検出可能かもしくは検出不能かを問わない寛解(部分的かまたは完全かを問わない);または全生存が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
「有効量」または「治療的有効」量は、本開示の化合物または少なくとも1つのこのような化合物を含む組成物の量であって、単回用量として、または一連の用量の一部として、被験体に投与されたときに、少なくとも1つの治療的効果を生じるのに有効である量を表す。
【0062】
式(I)の化合物は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,109,002号に開示されている方法に従って合成され得る。
【0063】
本開示は、その範囲の中に、化合物の全ての可能な幾何異性体、例えば、ZおよびE異性体(シスおよびトランス異性体)ならびに化合物の全ての可能な光学異性体、例えば、ジアステレオマーおよび鏡像異性体を含む。さらに、本開示は、その範囲の中に、個々の異性体および任意のその混合物、例えば、ラセミ混合物を含む。個々の異性体は、出発材料の対応する異性体形態を用いて取得され得、または従来の分離方法に従って、最終化合物の調製後に分離され得る。光学異性体の混合物からの光学異性体、例えば、鏡像異性体の分離のために、従来の分割方法、例えば、分別結晶化が使用され得る。
【0064】
本明細書に記載されている化合物は多形として存在し得、これも本開示によって含まれる。さらに、化合物のいくつかは、水と水和物を形成し得、または他の溶媒と溶媒和物を形成し得る。このような水和物および溶媒和物は、同様に、本明細書に記載されている化合物および組成物の範囲内に含まれる。
【0065】
最近、E-セレクチンによって媒介される相互作用が、ある種のがんを処置するための標的として同定された。全てのがん細胞が同様であるというわけではない。関連するがん細胞(例えば、多発性骨髄腫細胞株または前立腺がん腫瘍)の群内でさえ、遺伝子発現および細胞表面エピトープは変動する。がん幹細胞と称されるある種のがん細胞は、新しい腫瘍を確立することができ、患者中でのこれらの幹細胞のより多い数の存在は、より不良な予後と関連する。これらのがん幹細胞は、薬物抵抗性、加速された疾患の進行、より短い生存およびより高い再発の発生など、より悪性度の高いがん形質も呈し得る。したがって、がん幹細胞を標的とする処置が必要とされている。
【0066】
がん幹細胞は、E-セレクチンに結合することができる細胞表面炭水化物を発現することが見出されている。E-セレクチンに結合することができるがん細胞は、化学療法などのがんに対するある種の標準的処置に抵抗することができ、薬物抵抗性、加速された疾患の進行、より短い生存およびより高い再発の発生と相関する。E-セレクチンを結合する炭水化物エピトープを発現するがん細胞は、骨髄中の保護ニッチ中の血管内皮上に発現されたE-セレクチンに結合することもできるので、化学療法処置を生き残ることができると考えられる。このため、例えば、骨髄の保護ニッチ中のE-セレクチンに結合されると、これらのがん細胞は、化学療法などのがん処置を生き残ることができる。これは、E-セレクチンに結合するがん細胞を標的とする処置が必要とされるさらなる証拠である。
【0067】
E-セレクチンは、血流中の細胞の表面上の炭水化物構造を認識し、これに結合して、循環からの血管外漏出を促進する血管内皮上に発現される接着分子である。E-セレクチンを結合する炭水化物リガンドは、最初、腫瘍マーカーとして同定され、E-セレクチンの結合は、腫瘍転移および化学療法に対する抵抗性に役割を果たしていると考えられる。E-セレクチンは、E-セレクチンによって認識される腫瘍細胞上のエピトープである炭水化物構造シアリルLea(sLea)およびシアリルLeX(sLex)の両方に共通する三糖ドメインを結合する。
【0068】
E-セレクチンによって媒介される相互作用がAMLにおいて役割を果たし得ること、およびE-セレクチンまたはその結合エピトープ(シアリルLea/x)の発現はAMLにおける臨床経過および患者の転帰を予測し得ることを報告する文献が増大している(Aref,S.ら、L and E Selectins in Acute Myeloid Leukemia:Expression,Clinical Relevance and Relation to Patient outcome.Hematology.2002.7(2):83-87参照)。可溶性E-セレクチン(sE-セレクチン)は、細胞膜から脱落し、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって末梢血中に検出され得る。AMLは、増加した血管密度を伴い、骨髄中の活性化された/増殖する内皮細胞によるsE-セレクチン放出は、処置されていないAMLを有する患者における増加したE-セレクチンレベルに寄与し得る(Glenjen,N.ら、Serum Levels of Angiogenin,Basic Fibroblast Growth Factor and Endostatin in Patients Receiving Intensive Chemotherapy for Acute Myelogenous Leukemia.Intl.J.Cancer.2002.101(1):86参照)。可溶性E-セレクチンレベルは、健康な被験体の血清中の可溶性E-セレクチンレベルと比較して、新たに診断されたAMLを有する被験体の血清中において増加している(Horacek,J.ら、Biochip Array Technology and Evaluation of Serum Levels
of Multiple Cytokines and Adhesion Molecules in Patients with Newly Diagnosed Acute Myeloid Leukemia.Experimental Oncology.2014.36(1):50参照)。sE-セレクチンレベルは、AML細胞の骨髄外浸潤とも相関しており(P<0.001)、AMLの再発の発生を予測する(P=0.01)。AMLの診断での上昇したsE-セレクチンレベルは、低い生存(P<0.001)を予測し、sE-セレクチンレベルの減少は、AMLの長期寛解と相関した(Glenjen(2002)およびHoracek(2014)参照)。したがって、E-セレクチンによって媒介される経路に向けられたAML用の治療薬が必要とされている。
【0069】
E-セレクチン発現は、炎症応答の間、正常な脈管構造においては一過性であるが、骨髄(「BM」)中では構成的であり、一般に、骨髄中のE-セレクチンまたはその結合エピトープ(シアリルLea/x)を発現するAML細胞(すなわち、AML芽球)の隔離をもたらす。E-セレクチンへのAML芽球の接着は、白血病進行にとって極めて重要な経路の上方制御を開始する。
【0070】
NF-κB経路を直接活性化することができる点で、E-セレクチンは、血管接着分子の中でユニークである。E-セレクチンの上流の遮断は、NF-κB活性化を阻害することが示されており、E-セレクチンへの接着は、AML細胞中での生存促進性NF-κBシグナル伝達を活性化し、強化された化学療法抵抗性をもたらすことを示唆する(Winkler,I.G.ら、Vascular E-selectin Protects Leukemia Cells from Chemotherapy by Directly Activating Pro-survival NF-κB Signaling - Therapeutic Blockade of E-selectin dampens NK-kB Activation.Blood.2016.128:2823参照)。総合すると、これらの結果は、E-セレクチンが化学療法に対する抵抗性を媒介する骨髄中の重要な血管ニッチ成分であることを示唆する。したがって、E-セレクチンによって媒介されるNF-κB経路の活性化を防ぐための治療薬が必要とされている。
【0071】
化学療法剤は、骨髄中のがん性細胞に接近し、殺すことには有効でないことがあり得るので、これにより、腫瘍を除去する上での処置の総合的な有効性を低下させる。腫瘍を完全には除去できないことに対する1つの説明は、E-セレクチンのAML芽球との相互作用の役割に帰せられ得る。E-セレクチンに結合されたAML芽球は、化学療法の効果に対してインビトロで抵抗性であり(細胞接着媒介性薬物抵抗性すなわちCAMDR)、これがインビボでの再発の供給源であると仮定されている(Pezeshkian Bら、Leukemia Mediated Endothelial Cell Activation Modulates Leukemia Cell Susceptibility to Chemotherapy Through a Positive Feedback Loop Mechanism.PLoS One.2013.8:e60823参照)。E-セレクチン阻害は、骨髄中のAML細胞の接着を崩壊させ、AML芽球を骨髄から血流中へ動員することができると仮定されている。E-セレクチン阻害のこれらの効果は、細胞傷害性化学療法に対するAML細胞のより大きな感受性をもたらすことが提案されている。特に、E-セレクチンを遮断しするか、または他の方法で阻害することによって、E-セレクチンは細胞表面炭水化物に結合できなくなると考えられている。E-セレクチンに結合できなくなると、がん幹細胞は、骨髄中の保護ニッチの中に隠れることができず、化学療法処置を逃れることができない。したがって、AMLを処置するための、特にE-セレクチンに結合するAML芽球を標的とする処置のためのさらなる治療薬が必要とされている。
【0072】
上に開示されているとおり、本願は、式(I)の化合物または式(I)の化合物を含む薬学的組成物を、AML、MDS、好中球減少症および/または粘膜炎を有する個体に投与することによって、前記個体(例えば、被験体、患者)中のがん細胞(本明細書においては、腫瘍細胞とも称される)の転移を処置する(予防することを含む)ための、前記化合物または組成物の使用に向けられる。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、AMLの転移を処置すること(予防することを含む)を必要とする被験体において、AMLの転移を処置すること(予防することを含む)ために使用される。いくつかの実施形態において、AMLは、骨に浸潤することを抑制される。理論に束縛されることを望むものではないが、腫瘍細胞が骨髄にまたは体内の他の保護ニッチに転移することを抑制することによって、腫瘍細胞は、化学療法または放射線療法への曝露から隔離および保護されることを抑制され得る。このような処置を必要とする被験体には、AMLを有すると診断された被験体および/またはAMLを発症する増大したリスクを有する被験体が含まれる。
【0073】
本明細書に記載されている方法のいくつかの実施形態において、本明細書に記載されている処置を必要とする被験体は、ヒトまたは非ヒト動物である。処置を必要とする被験体は、AML、MDS、好中球減少症および/もしくは粘膜炎の症状を呈し得、またはAML、MDS、好中球減少症および/もしくは粘膜炎を発症するリスクを有し得る。処置され得る非ヒト動物としては、哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー、ゴリラなど)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、スナネズミ、ハムスター、フェレット、ウサギ)、ウサギ類(lagomorph)、イノシシ・ブタ(swine)(例えば、ブタ、ミニブタ)、ウマ、イヌ、ネコ、ウシならびにその他の家畜(domestic animal)、畜産動物(farm animal)および動物園の動物が挙げられる。
【0074】
身体検査を含む診断方法、臨床症状の評価およびモニタリングならびに本明細書に記載されている分析的試験および方法の実行の1つまたは組み合わせは、被験体の健康状態をモニタリングするために、および処置に応答する可能性を評価するために使用され得る。
【0075】
AML、MDS、好中球減少症および/または粘膜炎の処置を必要とする適切な被験体は、S128RのE-セレクチンに対する遺伝的多型によって決定された場合に高度に活性を有するE-セレクチンを発現し得る(Alessandro R.ら、Role of S128R Polymorphism of E-selectin in Colon Metastasis Formation.Intl.J.Cancer.2007.121:528)。さらに、がん関連抗原CA-19-9(Zheng C.X.ら、The Prognostic Value of Preoperative Serum Levels of CEA,CA19-9 and CA72-4 in
Patients with Colorectal Cancer.World J.Gastroenterol.2001.7:431)、CD65およびFH-6に対して誘導された抗体によって決定されるE-セレクチン結合リガンド(シアリルLeaおよびシアリルLex)の上昇した発現に基づいて、被験体が同定され得る。E-セレクチンの類似の炭水化物リガンドを認識する抗体HECA-452も、この処置に対して応答する可能性が最も高いがん患者集団を選択するための診断アッセイにおいて使用され得る。開示された処置を必要とする被験体は、IgGのFcドメインに連結された蛍光標識された組換えヒトE-セレクチンを使用するフローサイトメトリーによって決定されるAML芽球上の上昇したE-セレクチンリガンド発現によっても同定され得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、化学療法または放射線または両方と組み合わせて投与される(すなわち、補助(adjunct)療法、これは補助的(adjunctive)療法とも称される。)。
したがって、AML、MDS、好中球減少症および/もしくは粘膜炎を有する、またはAML、MDS、好中球減少症および/もしくは粘膜炎を発症するリスクがある被験体は、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分を、少なくとも1つのさらなる抗がん剤と併用して投与され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのさらなる抗がん剤は、化学療法剤、放射線療法剤、ホスホイノシチド-3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤およびVEGFの阻害剤から選択される。いくつかの実施形態において、PI3Kの阻害剤には、Exelixisによって「XL499」と名づけられた化合物が含まれる。いくつかの実施形態において、VEGF阻害剤には、「カボ(cabo)」と称される(以前には、XL184として知られた)化合物が含まれる。
【0077】
いくつかの実施形態において、化学療法または放射線療法は、AMLまたはMDSを処置するための一次療法である。投与され得る化学療法および放射線療法は、がんまたは異形成の種類、1または複数の腫瘍の位置、がんまたは異形成の段階、被験体の年齢および性別および一般的な健康状態を含むいくつかの要因に依存する。式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、一次化学療法または放射線処置の前、それと同時またはその後に投与され得る。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、がんの処置のために、化学療法または放射線療法の複数サイクルが被験体に投与される場合には、化学療法または放射線療法の1またはそれを超えるサイクルとともに投与される。本明細書に開示されている方法において、式(I)の化合物は、抗がん剤とは独立に機能し得、または、例えば、抗がん剤の有効性もしくは逆に式(I)の化合物の有効性を強化することによって、抗がん剤と協調して機能し得る。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、化学療法剤または放射線療法の有効性を増大させる。
【0078】
さらに、深刻な、生命を脅かす可能性がある化学療法によって誘導される好中球減少症および粘膜炎は、E-セレクチン上方制御を伴い、E-セレクチンの阻害または遺伝子破壊は、これらの有害な副作用に対して保護する(Winkler IG,Barbier
V,Nutt HLら、Administration Of E-Selectin
Antagonist GMI-1271 Improves Survival After High-Dose Chemotherapy By Alleviating Mucositis and Accelerating Neutrophil
Recovery(Poster)。55th ASH Annual Meeting and Exposition; 2013; New Orleans,LA)。例えば、E-セレクチンは、腸の内層中の傷害の部位へのマクロファージ輸送の制御を通じて、化学療法によって誘導された粘膜炎において重要な役割を果たす。化学療法は、最初の細胞損傷を引き起こし、一連の炎症性および接着分子媒介性段階を通じて、この損傷が伝搬され、粘膜の完全性の喪失が生じる。E-セレクチンノックアウトマウスは、5-フルオロウラシル(5-FU)を用いて、化学療法によって誘導される粘膜炎に対して保護される。糖模倣薬(glycomimetic)E-セレクチン阻害剤を5-FUとともに投与されたマウスは、5-FU単独で処置されたマウスと比べて、増強された好中球回復(Winkler,I.G.ら、Vascular Niche E-selectin Regulates Hematopoietic Stem Cell Dormancy,Self Renewal and Chemoresistance.Nature medicine.2012.18(11):1651参照)、より少ない粘膜炎、および改善された体重減少を有する、類似の結果が実証された(Winkler,I.G.ら、Administration of E-Selectin Antagonist GMI-1271 Improves Survival After High-Dose Chemotherapy by Alleviating Mucositis and Accelerating Neutrophil Recovery.Blood.2013.122(21):2266参照)。さらに、E-セレクチンは、化学療法または放射線損傷後に腸内で上方制御された。E-セレクチンの遺伝的欠失および糖模倣薬E-セレクチンアンタゴニストを用いる薬理的阻害の両方が、化学療法または放射線照射後におけるマウスの腸への炎症性F4/80+Ly-6C+マクロファージの二次的遊走を有効に遮断した。
【0079】
式(I)の化合物は、例えば、AMLまたはMDS患者の化学療法処置と関連する好中球減少症を処置するために、化学療法の骨髄破壊的骨髄毒性を低下させることに関するので、本発明の方法において有用である。いくつかの実施形態において、化学療法の骨髄破壊的骨髄毒性を低下させることを必要とする個体は、骨髄破壊的骨髄毒性を低下させるために有効な量で、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分が投与される。本明細書において使用される、「低下させる(reducing)」という用語(「低下」などの変形を含む)は、化学療法の少なくとも1つの(すなわち、1またはそれを超える)骨髄破壊的骨髄毒性の部分的および完全な低下を含み、(例えば、化学療法の開始の前、それと同時またはそのすぐ後に、式(I)の化合物、必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分を投与することによる)少なくとも1つのこのような毒性の部分的なおよび完全な予防も含む。例えば、式(I)の化合物は、好中球減少症を予防しないことがあり得るが、化学療法後における好中球のより迅速な持続的回復を促進し得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、化学療法薬または放射性療法で処置されているまたは処置されるであろう、AMLまたはMDSを有する被験体中の好中球減少症を処置または予防する方法であって、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つの薬学的に許容され得る成分を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態において、被験体は、化学療法および放射線療法を両方受けた、受けている、受けるであろう。また、それぞれ、被験体中の化学療法薬または放射性療法に対するHSCの化学療法感受性または放射線感受性を低下させる方法も本明細書に提供される。化学療法および放射線療法の反復されるサイクルは、しばしば、骨髄を回復し、補充するHSCの能力を減じるので、式(I)の化合物、そのプロドラッグまたは前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩は、化学療法もしくは放射線療法または化学療法と放射線療法の両方の組み合わせの1を超えるサイクルを受けるであろう被験体において使用され得る。式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つの薬学的に許容され得る成分は、したがって、被験体に投与される化学療法または放射線療法(または組み合わせ)のサイクルの各々のいずれかの1またはそれより多くとともに投与され得る。その細胞表面上にE-セレクチンを発現する内皮細胞への、E-セレクチンのリガンドを発現するAML腫瘍細胞またはMDS細胞の接着を阻害する方法であって、内皮細胞を、本明細書に記載されているとおりの式(I)の化合物と接触させ、これにより、前記化合物が内皮細胞表面上のE-セレクチンと相互作用することを可能にすること、および内皮細胞へのAML腫瘍細胞またはMDS細胞の結合を阻害することを含む方法も本明細書に提供される。理論に束縛されることを望むものではないが、内皮細胞への腫瘍またはMDS細胞の接着を阻害することは、他の臓器、血管、リンパまたは骨髄中に腫瘍またはMDS細胞が血管外遊出する能力を著しく低下させ得、それにより、がんの進行を低下させ、減少させ、または抑制し、または減速させ、転移を低下させること、減少させること、抑制すること、または減速させることが含まれる。
【0081】
いくつかの実施形態において、1日当たりに投与される式(I)の化合物の量(すなわち、1日投薬量)は、固定された量である。いくつかの実施形態において、固定された1日投薬量は、1日当たり200mg~4000mgである。いくつかの実施形態において、固定された1日投薬量は、1日当たり800mg~3200mgである。いくつかの実施形態において、固定された1日投薬量は、1日当たり1000mg~2000mgである。いくつかの実施形態において、固定された1日投薬量は、1日当たり1600mgである。
【0082】
いくつかの実施形態において、1日投薬量は、その投薬量が投与される被験体の体重を基礎とする(すなわち、体重に基づく)。いくつかの実施形態において、体重に基づく1日投薬量は、1日当たり1mg/kg~100mg/kg、1日当たり5mg/kgから80mg/kgまたは1日当たり10mg/kg~40mg/kgである。いくつかの実施形態において、体重に基づく1日投薬量は、1日当たり20mg/kgである。
【0083】
1日投薬量(固定されているか、または体重に基づくかを問わない)は、1日当たり単回用量として、または1日に複数回用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、1日投薬量は、複数の用量間に均等に分割される。いくつかの実施形態において、1日投薬量は、複数の用量間に不均等に分割される。いくつかの実施形態において、固定された1日投薬量は1600mgであり、2用量として投与され、それぞれの用量は、800mgの式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、体重に基づく1日投薬量は20mg/kgであり、2用量として投与され、それぞれの用量は、10mg/kgの式(I)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、用量は、約12時間隔てて投与される。
【0084】
いくつかの実施形態では、有効な治療を提供するのに十分である最小用量が使用され得る。被験体は、一般に、処置または予防されている疾患または状態に適したアッセイを用いて治療的有効性に関してモニタリングされ得、このアッセイは、当業者によく知られており、本明細書に記載されている。被験体に投与される化合物のレベルは、生物学的流体、例えば、血液、血液画分(例えば、血清)中、および/または尿中、および/または被験体から得られるその他の生物学的試料中の化合物(または化合物の代謝物)のレベルを決定することによってモニタリングされ得る。治療レジメンの過程中に化合物のレベルを測定するために、化合物またはその代謝物を検出するために本分野において実施される任意の方法が使用され得る。
【0085】
本明細書に記載されている化合物の1日投薬量および用量は、被験体の状態、すなわち、疾患の段階、疾患によって引き起こされる症状の重篤度、一般的な健康状態、ならびに年齢、性別および体重、および医学分野の当業者に自明なその他の要因に依存し得る。同様に、疾患または障害を処置するための治療薬の用量は、医学分野における当業者によって理解されるパラメータに従って決定され得る。
【0086】
薬学的剤形において、本開示の化合物の任意の1つまたはそれより多くは、塩もしくはプロドラッグなどの薬学的に許容され得る誘導体の形態で投与され得、ならびに/または単独でおよび/もしくは他の薬学的に活性な化合物と適切に共同しておよび組み合わせても使用され得る。
【0087】
当業者は、本明細書に記載されている式(I)の化合物の1日投薬量および個別の用量と等価である、薬学的に許容され得る誘導体、例えば、プロドラッグまたは薬学的に許容され得る塩の量を理解するであろう。すなわち、例えば、式(I)の化合物の1600mgの固定された1日用量の上記開示を考慮して、当業者は、式(I)のプロドラッグまたは前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩の等価な固定1日用量を決定する方法を理解するであろう。
【0088】
薬学的組成物は、医学の分野における当業者によって決定された、処置されるべき疾患または障害に適した任意の様式で投与され得る。適切な用量ならびに適切な投与の期間および頻度は、患者の状態、患者の疾患の種類および重篤度、活性成分の具体的な形態および投与の方法を含む、本明細書中に論述されている要因によって決定されるであろう。一般に、適切な用量(または有効用量)および処置レジメンは、治療的および/または予防的な利益(例えば、改善された臨床的転帰、例えば、より頻繁な完全なまたは部分的な寛解、またはより長い無疾患生存および/もしくは全生存、または症状重篤度の軽減または本明細書に詳しく記載されているとおりの他の利益)を与えるのに十分な量で薬学的組成物を提供する。
【0089】
本明細書に記載されている薬学的組成物は、有効量の化合物を効果的に送達することができるいくつかの経路のいずれによっても、本明細書に記載されている薬学的組成物を必要とする被験体に投与され得る。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は非経口的に投与される。非経口投与の非限定的な適切な経路としては、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、空洞内、耳道内(intrameatal)および尿道内注射および/または注入が挙げられる。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は静脈内に(IV)投与される。IV投与の非限定的な適切な経路としては、末梢静脈(peripheral line)、中心静脈カテーテルおよび末梢穿刺中心静脈カテーテル(PICC)を介することが含まれる。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は皮下に投与される。
【0090】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分を含む組成物は、液体として製剤化され、非経口的に投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、液体として製剤化され、静脈内に(IV)投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、液体として製剤化され、皮下に(subQ)投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、液体として製剤化され、筋肉内に(IM)投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、液体として製剤化され、骨内注入によって投与される。
【0091】
本明細書に記載されている薬学的組成物は、無菌水性または無菌非水性溶液、懸濁物またはエマルジョンであり得、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤または希釈剤(すなわち、活性成分の活性を妨害しない無毒の材料)をさらに含み得る。このような組成物は、固体、液体または気体(エアロゾル)の形態であり得る。または、本明細書に記載されている組成物は、凍結乾燥物(lyophilizate)として製剤化され得、または本明細書に記載されている化合物は、本分野において公知の技術を用いてリポソーム内に被包され得る。薬学的組成物は、生物学的に活性であり得または不活性であり得る、少なくとも1つのさらなる成分をさらに含み得る。このような成分の非限定的な例としては、緩衝液(例えば、中性緩衝化食塩水またはリン酸緩衝食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸(例えば、グリシン)、抗酸化剤、キレート剤(例えば、EDTAおよびグルタチオン)、安定化剤、色素、矯味矯臭剤、懸濁化剤および防腐剤が挙げられる。
【0092】
薬学的組成物中で使用するための、当業者に公知の任意の適切な賦形剤、希釈剤または担体が、本明細書に記載されている組成物中で使用され得る。治療的用途のための賦形剤は周知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro,21st Ed.2005)に記載されている。一般的には、賦形剤または希釈剤の種類は、投与の様式および活性成分の化学的組成に基づいて選択される。薬学的組成物は、特定の投与の様式のために製剤化され得る。非経口投与のために、薬学的組成物は、水、食塩水、アルコール、脂肪、蝋および緩衝液をさらに含み得る。
【0093】
既に開示したとおり、薬学的組成物(例えば、注射による送達用)は、液体の形態であり得る。液体薬学的組成物は、例えば、少なくとも1つの以下のもの:注射用蒸留水などの無菌の希釈剤、食塩溶液、好ましくは生理食塩水、リンゲル溶液、等張の塩化ナトリウム、溶媒または懸濁媒としての役割を果たし得る不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の溶媒;抗菌剤;抗酸化剤;キレート剤;緩衝液および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度を調整するための作用物質を含み得る。非経口調製物は、アンプル、使い捨て注射器またはガラスもしくはプラスチック製複数用量バイアル中に封入することができる。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は生理食塩水を含む。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、注射可能な薬学的組成物であり、いくつかの実施形態において、注射可能な薬学的組成物は無菌である。
【0094】
いくつかの実施形態において、有効量の式(I)の化合物は、別の処置とともに投与される。
【0095】
いくつかの実施形態において、被験体は、デシタビン、5-アザシチジンまたはグアデシタビンなどの1またはそれを超える低メチル化剤を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、低メチル化剤の前、その間および/またはその後に投与される。
【0096】
いくつかの実施形態において、被験体は、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、アルトレタミン、プロカルバジン、ダカルバジン、テモゾロミド、ブスルファン、チオテパ、ヘキサメチルメラミン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファランまたはイホスファミドなどの1またはそれを超えるアルキル化剤を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、そのプロドラッグ、または前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、アルキル化剤の前、その間および/またはその後に投与される。
【0097】
いくつかの実施形態において、被験体は、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド、テニソピド(tenisopide)、イリノテカンまたはトポテカンなどの1またはそれを超える植物アルカロイドを投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、植物アルカロイドの前、その間および/またはその後に投与される。
【0098】
いくつかの実施形態において、被験体は、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、マイトマイシンまたはブレオマイシンなどの1またはそれを超える抗腫瘍抗生物質を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、抗腫瘍抗生物質の前、その間および/またはその後に投与される。
【0099】
いくつかの実施形態において、被験体は、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ホクスフリジン(foxuridine)、シタラビン、カペシチビン(capecitibine)、ゲムシタビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、クラドリビン、フルダラビン、ネララビンまたはペントスタチンなどの1またはそれを超える代謝拮抗薬を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、代謝拮抗薬の前、その間および/またはその後に投与される。
【0100】
いくつかの実施形態において、被験体は、イロノテカン(ironotecan)、トポテカン、アムサクリン、エトポシド、エトポシドホスフェートまたはテニポシドなどの1またはそれを超えるトポイソメラーゼ阻害剤を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、トポイソメラーゼ阻害剤の前、その間および/またはその後に投与される。
【0101】
いくつかの実施形態において、被験体は、ヒドロキシウレアなどの1またはそれを超えるリボヌクレオチド還元酵素阻害剤を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、リボヌクレオチド還元酵素阻害剤の前、その間および/またはその後に投与される。
【0102】
いくつかの実施形態において、被験体はミトタンなどの1またはそれを超える副腎皮質ステロイド阻害剤を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、副腎皮質ステロイド阻害剤の前、その間および/またはその後に投与される。
【0103】
いくつかの実施形態において、被験体はアスパラギナーゼまたはペグアスパルガーゼなどの1またはそれを超える酵素を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、酵素の前、その間および/またはその後に投与される。
【0104】
いくつかの実施形態において、被験体はエストラムスチンなどの1またはそれを超える微小管阻害剤を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、微小管阻害剤の前、その間および/またはその後に投与される。
【0105】
いくつかの実施形態において、被験体は、ミドスタウリン、ギルテリチニブ、エナシデニブ、イマチニニブ(imatininib)メシレート、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、ダサチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ボルテゾミブ、トファシチニブ、クリゾチニブ、オバトクラクス、ナビクラクス、ゴシポール、アパチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、MEK162、テムシロリムス、エベロリムス、リツキシマブ、トラスツズマブ、アレムツザマブ(alemtuzamab)、パニツムマブ、ベバシズマブ、イダサヌトリンまたはイピリムマブなどの、1またはそれを超える標的化された治療剤を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、標的化された治療剤の前、その間および/またはその後に投与される。
【0106】
いくつかの実施形態において、被験体は、ベキサロテン、イソトレチノインまたはトレチノインなどの1またはそれを超えるレチノイドを投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、レチノイドの前、その間および/またはその後に投与される。
【0107】
いくつかの実施形態において、被験体は、Vyxeos(ダウノルビシンおよびシタラビン)、Mylotarg(ゲムツザマブ(gemtuzamab)およびオゾガマイシン)、イダサヌトリンおよびシタラビン、IA(イダルビシンおよびシタラビン)、MEC(ミトキサントロン、エトポシド、シタラビン)、FAI(フルダラビン、シタラビン、イダルビシン)、7+3ida(シタラビン、イダルビシン)、5+2ida(シタラビン、イダルビシン)、7+3dauno(シタラビン、ダウノルビシン)、5+2dauno(シタラビン、ダウノルビシン)、FLAG(フルダラビン、シタラビン、G-CSF)、FLAG-Ida(フルダラビン、シタラビン、イダルビシン、G-CSF)、FLAG-Mito(ミトキサントロン、フルダラビン、シタラビン、G-CSF)、FLAMSA(フルダラビン、シタラビン、アムサクリン)、FLAMSA-Bu(フルダラビン、シタラビン、アムサクリン、ブスルファン)、FLAMSA-Mel(フルダラビン、シタラビン、アムサクリン、メルファラン)またはTAD(チオグアニン、シタラビン、ダウノルビシン)などの1またはそれを超える化学療法剤を投与される。いくつかの実施形態において、被験体は、2またはそれを超える化学療法剤を投与される。いくつかの実施形態において、1を超える化学療法剤が使用される場合、化学療法剤は、互いと同時に投与され、または互いに順次に投与され得る。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、交互の様式で与えられる(例えば、第一の化学療法剤が投与され、次いで、第二の化学療法剤が投与され、次いで、第一の化学療法剤が投与される)。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、1またはそれを超える化学療法剤の投与前、その間および/またはその後に投与される。すなわち、式(I)の化合物は、1またはそれを超える化学療法剤とともに投与される場合には、化学療法剤の1またはそれより多くの投与に関して任意の時点で投与され得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、被験体はサリドマイドまたはレナリドミドなどの1もしくはそれを超えるサリドマイド誘導体を投与される。いくつかの実施形態において、被験体はサリドマイドまたはサリドマイド誘導体および1またはそれを超える化学療法剤を受ける。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、サリドマイドまたはサリドマイド誘導体を受ける前、その間および/またはその後に投与される。
【0109】
いくつかの実施形態において、被験体は、MEC導入化学療法を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、MEC導入化学療法の前、その間および/またはその後に投与される。いくつかの実施形態において、MEC導入化学療法のサイクルは、5日間連続して続く。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、化学療法を開始する1日前に、化学療法の間に毎日、および化学療法の最終用量後に2日間与えられる(例えば、
図14A参照)。いくつかの実施形態において、MEC導入化学療法は、IVミトキサントロン、IVエトポシドおよびIVシタラビンでの処置を含む。いくつかの実施形態において、MEC導入化学療法は、10mg/m
2/日IVミトキサントロン、100mg/m
2/日IVエトポシドおよび1000mg/m
2/日IVシタラビンでの処置を含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、被験体は、FAI導入化学療法を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、FAI導入化学療法の前、その間および/またはその後に投与される。いくつかの実施形態において、FAI導入療法のサイクルは、5日間連続して続く。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、そのプロドラッグまたは前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、化学療法を開始する1日前に、化学療法の間に毎日、および化学療法の最終用量後に2日間与えられる(例えば、
図14A参照)。いくつかの実施形態において、FAI導入化学療法は、IVフルダラビン、IVシタラビンおよびIVイダルビシンでの処置を含む。いくつかの実施形態において、FAI導入化学療法は、5日間連続で30mg/m
2IVフルダラビンおよび2g/m
2IVシタラビン、最初の3日間連続で10mg/m
2IVイダルビシンを含む。
【0111】
いくつかの実施形態において、導入サイクルの後に化学療法処置が継続する。
【0112】
いくつかの実施形態において、導入化学療法の後に、被験体は、1またはそれを超えるサイクルの低減した用量のMEC地固め化学療法を受け得る。いくつかの実施形態において、低減した用量のMEC化学療法サイクルは、4日間連続して続く。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、低減した用量の化学療法のサイクルの前、その間および/またはその後に投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、化学療法の低減した用量のサイクルを開始する1日前に、化学療法の間に毎日、および化学療法の最終用量後に2日間投与される(例えば、
図14B参照)。いくつかの実施形態において、低減した用量のMEC療法は、5日間連続でのIVミトキサントロンおよびIVエトポシド、ならびにサイクルの第2~5日目でのIVシタラビンでの処置を含む。いくつかの実施形態において、低減した用量のMEC療法は、4日間連続での、10mg/m
2/日IVミトキサントロン、100mg/m
2/日IVエトポシドおよび1000mg/m
2/日IVシタラビンの投与を含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、導入化学療法の後に、被験体は、1またはそれを超えるサイクルのHiDAC地固め化学療法を受け得る。いくつかの実施形態において、3または4サイクルのHiDAC化学療法が投与され得る。いくつかの実施形態において、HiDAC療法のサイクルは、5日間連続して続く。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、HiDAC化学療法のサイクルの前、その間および/またはその後に投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、化学療法を開始する1日前に、化学療法の間に毎日、および化学療法の最終用量後に2日間投与される(例えば、
図14B参照)。いくつかの実施形態において、HiDAC化学療法サイクルは、第2、4および6日目に、約3時間ごとに、IVシタラビンでの処置を含む。いくつかの実施形態において、HiDAC化学療法サイクルは、第2、4および6日目に、約12時間ごとに、IVシタラビンでの処置を含む。いくつかの実施形態において、HiDAC化学療法サイクルは、第2、4および6日目に、約3時間ごとに、3g/m
2IVシタラビンの投与を含む。いくつかの実施形態において、HiDAC化学療法サイクルは、第2、4および6日目に、約12時間ごとに、2~3g/m
2IVシタラビンの投与を含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、導入化学療法の後に、被験体は、1またはそれを超えるサイクルの低減した用量のIDAC地固め化学療法を受け得る。いくつかの実施形態において、3サイクルの低減した用量のIDAC地固め化学療法が投与され得る。いくつかの実施形態において、低減した用量のIDAC地固め療法サイクルは、5日間連続して続く。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、低減した用量のIDAC地固め化学療法のサイクルの前、その間および/またはその後に投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、低減した用量のIDAC地固め化学療法サイクルを開始する1日前に、化学療法の間に毎日、および化学療法の最終用量後に2日間投与される(例えば、
図14B参照)。いくつかの実施形態において、低減した用量のIDAC地固め化学療法サイクルは、5日間連続して、IVシタラビンでの処置を含む。いくつかの実施形態において、IDAC化学療法サイクルは、5日間連続で、1.5g/m
2/日のIVシタラビンの投与を含む。いくつかの実施形態において、シタラビンの用量は、1g/m
2/日に低減され得る。いくつかの実施形態において、低減した用量のIDAC地固め化学療法サイクルは、第2、4および6日目に、約12時間ごとに(合計6用量)、IVシタラビンでの処置を含む。いくつかの実施形態において、IDAC化学療法サイクルは、第2、4および6日目に、約12時間ごとに(合計6用量)、1.5g/m
2IVシタラビンの投与を含む。いくつかの実施形態において、シタラビンの用量は、サイクルの一部または全部について、1g/m
2/日に低減され得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、被験体は、デシタビン化学療法を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、デシタビン化学療法サイクルの前、その間および/またはその後に投与される。いくつかの実施形態において、デシタビン化学療法のサイクルは、5日間連続して続く。いくつかの実施形態において、デシタビン化学療法のサイクルは、10日間連続して続く。いくつかの実施形態において、デシタビン化学療法処置は、5日間連続して、1日1回のIVデシタビンでの処置を含む。いくつかの実施形態において、デシタビン化学療法処置は、5日間連続して、1日1回、20mg/m2のIVデシタビンを投与することを含む。いくつかの実施形態において、デシタビン化学療法処置は、10日間連続して、1日1回のIVデシタビンでの処置を含む。いくつかの実施形態において、デシタビン化学療法処置は、10日間連続して、1日1回、20mg/m2のIVデシタビンを投与することを含む。いくつかの実施形態において、5日サイクルのデシタビンを受ける被験体は、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分を、デシタビンの最初の注入の前の日に1回、および化学療法の各日に1回、投与される。いくつかの実施形態において、10日サイクルのデシタビンを受ける被験体は、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分を、デシタビンの最初の注入の前の日に2回、および化学療法の各日に2回、投与される。
【0116】
いくつかの実施形態において、被験体は、7+3dauno化学療法を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、7+3dauno化学療法サイクルの前、その間および/またはその後に投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、化学療法を開始する1日前に、化学療法の間に毎日、および化学療法の最終用量後に2日間与えられる。いくつかの実施形態において、7+3dauno化学療法のサイクルは、7日間連続して続く。いくつかの実施形態において、7+3dauno化学療法は、最初の3日間連続してIVダウノルビシンを投与しながら、7日(168時間)にわたってシタラビンの連続的IV注入を投与することを含む。いくつかの実施形態において、7+3dauno化学療法は、最初の3日間連続して60mg/m2/日のIVダウノルビシンを投与しながら、7日(168時間)にわたって100mg/m2/日のシタラビンの連続的IV注入を投与することを含む。いくつかの実施形態において、シタラビンおよびダウノルビシン化学療法の経過観察サイクルが投与され得る。いくつかの実施形態において、経過観察サイクルは、最初の2日間連続してIVダウノルビシンを投与しながら、5日(120時間)にわたってシタラビンの連続的IV注入を投与することを含む。いくつかの実施形態において、経過観察サイクルは、最初の2日間連続して60mg/m2/日のIVダウノルビシンを投与しながら、5日(120時間)にわたって100mg/m2/日のシタラビンの連続的IV注入を投与することを含む。
【0117】
いくつかの実施形態において、被験体は、7+3ida化学療法を投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、そのプロドラッグ、または前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、7+3ida化学療法サイクルの前、その間および/またはその後に投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、および必要に応じて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容され得る成分は、化学療法を開始する1日前に、化学療法の間に毎日、および化学療法の最終用量後に2日間与えられる。いくつかの実施形態において、7+3ida化学療法のサイクルは、7日間連続して続く。いくつかの実施形態において、7+3ida化学療法は、最初の3日間連続して12mg/m2/日のIVイダルビシンを投与しながら、7日(168時間)にわたって200mg/m2/日のシタラビンの連続的IV注入を投与することを含む。いくつかの実施形態において、7+3ida化学療法は、最初の3日間連続してIVイダルビシンを投与しながら、7日(168時間)にわたってのシタラビンの連続的IV注入を投与することを含む。いくつかの実施形態において、シタラビンおよびイダルビシン化学療法の経過観察サイクルが投与され得る。いくつかの実施形態において、経過観察サイクルは、最初の2日間連続して12mg/m2/日のIVイダルビシンを投与しながら、5日(120時間)にわたって200mg/m2/日のシタラビンの連続的IV注入を投与することを含む。いくつかの実施形態において、経過観察サイクルは、最初の2日間連続してIVイダルビシンを投与しながら、5日間(120時間)にわたってシタラビンの連続的IV注入を投与することを含む。
【0118】
例えば注射可能な用量で、本開示の少なくとも1つの化合物の単位用量を含むキットが提供される。このようなキットは、単位用量を含む容器と、関心対象の病的状態を処置する上での治療薬の使用および付随する利点を記載する情報添付文書と、ならびに/または必要に応じて、少なくとも1つの化合物または該化合物を含む組成物を送達するための器具またはデバイスとを含み得る。
【実施例0119】
[実施例1]
E-セレクチン活性-結合アッセイ
E-セレクチンの糖模倣薬アンタゴニストをスクリーニングし、特徴付けるための阻害アッセイは、IC50およびIC90値の決定を可能にする競合的結合アッセイである。37℃での2時間のインキュベーションによって、96ウェルマイクロタイタープレート中にE-セレクチン/Igキメラを固定した。非特異的な結合を低減するために、各ウェルにウシ血清アルブミンを加え、室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ビオチン化されたsLeaポリアクリルアミドのストレプトアビジン/西洋ワサビペルオキシダーゼとの結合体の存在下で、試験化合物の系列希釈をウェルに加え、室温で2時間インキュベートした。
【0120】
洗浄後に、固定化されたE-セレクチンに結合したsLe
aの量を決定するために、ペルオキシダーゼの基質3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)を加えた。3分後、H
3PO
4の添加によって酵素反応を停止し、450nmの波長での光の吸光度を測定した。結合を50%阻害するために必要とされる式(I)の化合物の濃度を求め、IC
50として報告した。結合を90%阻害するために必要とされる濃度を求め、IC
90として報告した。本明細書に開示されているIC
50およびIC
90値が、以下の表に与えられている。
【表1】
【0121】
[実施例2]
5-FU誘導性粘膜炎アッセイ
0日および10日目に、腹腔内(IP)に、150mg/kgの5-フルオロウラシル(5-FU)でマウス(C57bl/6)を処置した。5-FUの第二の注射後に、4日間、式(I)の化合物(食塩水中20mg/kg、IP、BID(すなわち、1日当たり40mg/kg))または食塩水単独(0.15M NaCl)で、マウスを処置した。次いで、マウスを屠殺し、小腸を取り出し、炎症の程度を決定するために秤量した。
図1Aは、式(I)の化合物での処置が、腸の重量によって測定された、化学療法誘導性胃腸粘膜炎に対して保護することを図示する。
図1Bは、化学療法の投与後における腸のびらん、絨毛の喪失およびマクロファージの浸潤が、式(I)の化合物の同時投与によって好転したことを図示する。
【0122】
結果は、式(I)の化合物で処置されたマウス中での、化学療法誘導性腸粘膜炎の軽減を示す。
【0123】
[実施例3]
放射線誘導性粘膜炎アッセイ
マウス(C57bl/6)を全身放射線照射(8.0Gy)に供し、その直後に、式(I)の化合物(食塩水中20mg/kg、IP、BID(すなわち、1日当たり40mg/kg))または食塩水単独(0.15M NaCl)で、6日間処置した。6日目に小腸を取り出し、細胞を放出するために消化した。小腸からのCD11b
+F4/80
+マクロファージの数をフローサイトメトリーによって決定した(
図2)。
【0124】
結果は、式(I)の化合物での処置が、全身放射線照射に供されたマウスの腸への炎症性マクロファージの遊走を減少させたことを示す。
【0125】
[実施例4]
E-セレクチンの遺伝子破壊と比較した、式(I)の化合物の有効性
腫瘍細胞の内皮への接着を促進することに加えて、E-セレクチンによって媒介される相互作用は、化学療法後の白血病幹細胞(「LSC」)の生存を促進し得る。野生型またはE-セレクチンノックアウトマウスに、MLL-AF9白血病細胞を移植し、生着後、高用量シタラビン(12時間間隔で、900mg/kgの2用量(合計1800mg/kg))で処置した。処置の24時間後に、骨髄細胞を採取し、照射された野生型同系レシピエント中での限界希釈移植アッセイによって、生存している機能的LSCを定量した。生存しているLSCの数をポアソン分布によって計算するために、白血病を発症したレシピエントの割合を使用した。データは、E-セレクチンの不存在は大腿骨当たりの総LSC数に対して効果を有しないが、E-セレクチンの不存在は、シタラビン処置に対するLSCの感受性を20倍増加させることを実証した(
図3A)。
【0126】
これらの結果は、E-セレクチンがLSC化学療法抵抗性を媒介する骨髄中の主要な血管ニッチ成分であることを示唆する。
【0127】
野生型マウスに、MLL-AF9白血病細胞を移植し、生着後、高用量シタラビン(12時間間隔で、900mg/kgの2用量(合計1800mg/kg))単独で、または式(I)の化合物と併用して処置した。処置の24時間後に、骨髄細胞を採取し、照射された野生型同系レシピエント中での限界希釈移植アッセイによって、生存している機能的LSCを定量した。生存しているLSCの数をポアソン分布によって計算するために、白血病を発症したレシピエントの割合を使用した。データは、式(I)の化合物によるE-セレクチンの阻害は、シタラビン処置に対するLSCの感受性をおよそ20倍増加させることを実証した(
図3B)。
【0128】
これらの結果は、LSC化学療法抵抗性を減少させることによって、式(I)の化合物によるE-セレクチンの阻害がシタラビンの有効性を増加させることを示唆する。
【0129】
[実施例5]
ヒトAML芽球を生着され、シタラビンおよびDNRで処置されたマウスに対する、式(I)の化合物の影響
シタラビンとDNRを併用して、ヒトAMLの同所性モデルにおいて、NOD-SCIDマウスで生存に対する式(I)の化合物の影響を評価した。10日間、5mg/kg~80mg/kgBID(すなわち、1日当たり10mg/kg~160mg/kg)の範囲にわたる式(I)の化合物の一連の用量応答評価は、5mg/kgBID(すなわち、1日当たり10mg/kg)の式(I)の化合物は生物学的に活性であり、循環白血球細胞によって決定したところによると、腫瘍細胞化学療法感受性の顕著な増大を伴うことを実証した(
図4)。しかしながら、シタラビンおよびDNRと組み合わせて、治療的(生存)利益を発揮するためには、より多い用量が必要とされ、効果に対する閾値を示唆する。
【0130】
1日当たり10mg/kgが、シタラビンとDNRの生存の利益を増大させた最小活性マウス用量として同定された。
図5中に要約されたデータは、シタラビンとDNRのみで、またはBID投与された10mg/kgおよび40mg/kgの式(I)の化合物と併用した処置後における、この腫瘍モデルでのカプラン・マイヤー生存プロットを示す。40mg/kgの式(I)の化合物で処置されたマウスは、シタラビンとDNRのみで処置されたマウスより少数のAML芽球も有していた。式(I)の化合物および化学療法で処置された動物では、脾臓および骨髄と合わせた区画中で、芽球の数は著しくより低かった。
【0131】
これらの結果は、シタラビンおよびDNR化学療法と併用して与えられたときに、式(I)の化合物が、ヒトAMLの同所性モデルにおいて腫瘍細胞の化学療法感受性および生存を増大させることを示唆する。
【0132】
[実施例6]
シタラビンおよびDNRと併用した式(I)の化合物は、ヒトAML細胞株、U937を担持するマウスの生存を延長する
全身性U-937 AML NOD/SCIDマウス生存モデルにおいて、シタラビン/DNR化学療法と併用した式(I)の化合物を評価した。
【0133】
U937細胞株を選択したが、その理由は、この細胞がE-セレクチンリガンドを発現し、抗体HECA-452と反応するためである。生着後、4つの群(n=10/群)にマウスを無作為に割り当て、処置を開始した。これらの群は、食塩水対照群;9日間、40mg/kg BID(すなわち、1日当たり80mg/kg)で式(I)の化合物を投与された群、300mg/kg QD(すなわち、1日当たり300mg/kg)で3日間、シタラビン、および3mg/kgでDNRの単回用量が投与された群、ならびに式(I)の化合物と化学療法(シタラビンおよびDNR)の併用レジメンが投与された群を含んだ。
【0134】
併用されたシタラビン/DNR/式(I)の化合物のレジメンは、120日を超える生存期間中央値(「MST」)をもたらし、5匹の動物は研究の終わりまで生存した。これは、対照群および式(I)の化合物での単独療法と比べて有意な転帰であった(P<0.001、
図6)。式(I)の化合物のみの投与は、食塩水対照を超えて生存を延長しない。より重要なことに、併用されたシタラビン/DNR/式(I)の化合物のレジメンに対する生存の、シタラビン/DNRレジメンとの比較は、統計的有意性に達した(P=0.0341、
図6)。
【0135】
これらの結果は、式(I)の化合物がシタラビンおよびDNR化学療法と併用して投与されると、ヒトAMLのマウスモデルにおいて生存が高められることを示唆する。
【0136】
[実施例7]
シタラビンおよびDOXと併用した式(I)の化合物は、MLL-AF9誘導性AML白血病を有するマウスの生存を延長する
同系MLL-AF9誘導性AML白血病モデルにおいて、シタラビン/DOX化学療法に付属的に投与されたときの式(I)の化合物の影響を評価した。
【0137】
MLL-AF9誘導性白血病を有するマウスからの骨髄を採取し、kit+細胞を濃縮し、その後の移植のためにアリコートで凍結した。次いで、コンディショニングから2日後に、レシピエントマウスに3×104の白血病細胞を注射した(研究0日目)。白血病注射から6日後に、マウスを3つの群(n=8/群)へ無作為に割り当てた:10日間、40mg/kg BID(すなわち、1日当たり80mg/kg)で式(I)の化合物を投与された群、シタラビン/DOXを投与された群(100mg/kg QDでシタラビンを5日間、1mg/kg QDでDOXを2日間)、およびシタラビン/DOX/式(I)の化合物の併用レジメンを投与された群。
【0138】
すべての処置されたマウスで、腫瘍が進行した。シタラビン/DOX化学療法に付属した式(I)の化合物の投与は、41日のMSTをもたらし、64%の増加した寿命に相当した。これは、式(I)の化合物での単独療法(P=0.0009)および化学療法単独(30%の増加した寿命、P=0.0054、
図7)と比べて有意な転帰であった。
【0139】
これらの結果は、式(I)の化合物がシタラビンおよびDOX化学療法と併用して与えられると、ヒトAMLのマウスモデルにおいて生存が高められることを示唆する。
【0140】
[実施例8]
全身性KG1 AMLモデルにおける5-アザシチジンへの応答に対する式(I)の化合物の効果
フローサイトメトリーを使用するデータは、非細胞傷害性濃度の5-アザシチジン(100nM)でのヒトAML細胞株KG1の処置は、細胞へのE-セレクチン-PE結合体の細胞結合における38%の増加をもたらすことを実証した。さらなるインビトロ研究は、KG1細胞の5-アザシチジンでの処置がE-セレクチン被覆されたプレートへの静的接着を57%増加させる(対照処置されたKG1細胞と比較、P<0.05、
図8)ことを示した。これらの知見は、5-アザシチジンを含む低メチル化剤は、骨髄中の白血病芽球の接着を増加させ、したがって、意図した抗白血病効果を妨害し得ることを示す。これは、低メチル化剤で処置された患者における化学療法抵抗性の供給源および再発の可能性を説明することができるであろう。重要なことには、したがって、KG1細胞の結合後に、式(I)の化合物を添加すると、接着をおよそ90%解離させ、この効果はE-セレクチンアンタゴニストで逆転され得ることを実証する。
【0141】
既存の播種性KG1細胞を有し、式(I)の化合物(40mg/kg、IP、QD,14日間)、5-アザシチジン(5mg/kg、IP、7日、10日、13日、16日および19日目に投与(計5回用量))または両化合物の組み合わせで処置されたNSG雌マウスにおいて、これらのインビトロでの観察の潜在的関連性を評価した。アッセイの条件下で、食塩水単独または式(I)の化合物で処置されたマウスの生存期間中央値は、それぞれ、69.5日および69日であった(
図9)。5-アザシチジンとともに式(I)の化合物を投与することによって、5-アザシチジン処置単独で得られた生存期間中央値を超えて、生存期間中央値を増加させた(>104日対88日;P=0.014、
図9)。
【0142】
総合すると、これらのデータは、式(I)の化合物は、E-セレクチンを阻害することによってAML細胞の結合を実際に弱め、5-アザシチジンの抗腫瘍活性を補完し、化学療法単独を上回って生存を有意に改善させることを示唆する。
【0143】
[実施例9]
新たに診断された高齢患者(60歳以上)および再発/難治性白血病患者中のAML芽球によるE-セレクチンリガンドおよびsLe
A/X結合
新たに診断されたAMLまたは再発/難治性(R/R)AMLを有する高齢患者(60歳以上)から得たAML芽球およびCD34+CD38-CD123+LSCへの、E-セレクチン-Igキメラタンパク質(n=51人の患者)またはHECA-452抗体(n=43人の患者)の結合をフローサイトメトリーによって評価した(
図10A~10B)。HECA-452抗体は、それぞれ、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1および皮膚リンパ球関連抗原として知られるグリコフォームとしてのCD44、ならびに造血細胞E-セレクチン/L-セレクチンリガンド中に存在するsLe
aおよびsLe
xによって共有されるE-セレクチン炭水化物リガンドを認識する。この分析における結合は、各患者試料中での>10%の陽性細胞として定義した。76%の患者から得たAML芽球が、E-セレクチン-Igキメラタンパク質を結合した(平均33.6±27.4%陽性細胞)。同じ患者から得たLSC画分によるE-セレクチン-Igキメラタンパク質の平均結合は、41.6±32.5%であった。HECA-452に対して陽性(sLe
a/xの発現)のAML芽球およびLSCの百分率は、それぞれ、56.3±33.9%および63.4±34.1%であった。
【0144】
新たに診断された高齢患者とR/R患者の芽球の間での比較は、E-セレクチン-Igキメラタンパク質およびHECA-452結合の平均蛍光強度はいずれも、新たに診断された高齢者より、R/R患者においてより高い(それぞれ、P=0.0024および0.00087、
図10A~10B)ことを実証した。
【0145】
これらの結果は、AML芽球の表面上に発現されるE-セレクチンリガンドの増加した密度は再発と関連することを示唆する。
【0146】
[実施例10]
体重に基づく用量の薬物動態
急性骨髄性白血病(AML)を有する6~7人のヒト被験体の3つのコホートが、それぞれ、8日にわたって、20分の名目注入期間で、5、10または20mg/kg/用量の合計15の注入を受けた。MEC(ミトキサントロン、エトポシドおよびシタラビン)導入化学療法の初回用量の24時間±1時間前に、式(I)の化合物単独での効果を評価するための前哨用量(sentinel dose)として、式(I)の化合物の初回用量を投与し、次いで、化学療法の2時間前に開始し、化学療法の日に12時間±1時間ごとに投与した。したがって、式(I)の化合物の初回および二回目の用量の間の間隔は、およそ24時間であった。MEC化学療法は、2~6日目に投与した。第1日、第3日、第8日、第9日および第10日に、用量前に試料を得た(ここで、第1日は、式(I)の化合物での投薬の最初の日を表す)。
【表2】
【0147】
これらの結果は、最大40mg/kg(すなわち、用量当たり20mg/kg)までの増加した体重に基づく1日用量は、Cmax、AUCならびにCpがIC50およびIC90の各々より大きい投薬期間の割合の増加を伴うことを示している。
【0148】
[実施例11]
固定された用量の薬物動態
400mg/用量、800mg/用量および1600mg/用量の固定用量に対して、式(I)の化合物の全身曝露(曲線下面積(「AUC」)および最大血漿濃度(「Cmax」))ならびに式(I)の化合物のCpが、ヒトE-セレクチンIC50(3184ng/mL)またはIC90(7535ng/mL)より高い投薬間隔の割合を評価するために、シミュレーションを行った。シミュレーションは、実施例10中の各被験体に対する事後パラメータ、彼らのクレアチニンクリアランスおよび名目用量と合致された固定用量に基づいた。1用量当たり5、10および20mg/kg(すなわち、1日当たり10、20および40mg/kg)の群に割り当てられた被験体を、それぞれ、1用量当たり400、800および1600mg群(すなわち、1日当たり800、1600および3200mg/kg)の群に割り当てた。
【0149】
全てのシミュレーションに対して、投薬レジメンは、12時間の間隔で20分にわたって注入される15回の用量であった。試料は、7.5日にわたって、20分の間隔でシミュレートした。シミュレートされた各被験体に対して、データの検査によってCmaxを求めた;2用量が投与された(用量13および14)最終日のAUCは、線形台形を用いて求めた。その同じ期間に対して、CpがIC
50およびIC
90のそれぞれを超えた各間隔の割合を求めた。全ての計算は、Rを用いて行った。
【表3】
【0150】
これらの結果は、1日当たり最大3200mg/kg(すなわち、用量当たり1600mgBID)までの増加した固定用量は、Cmax、AUCならびにCpがIC50およびIC90の各々より大きい投薬期間の割合の増加を伴うことを示している。
【0151】
[実施例12]
血漿可溶性E-セレクチン濃度-時間曲線
マイクロプレート(Human sE-Selectin Platinum ELISAキット、eBioscience、カタログ番号BMS205)上にsE-セレクチンに対して特異的なモノクローナル抗体が予め被覆された、市販のサンドイッチ型式のELISAアッセイを用いて、血漿sE-セレクチンを定量した。標準、試料および対照をマイクロプレートのウェル中にピペット操作で加え、これらは、マイクロプレート上に被覆された抗体に結合する。洗浄工程後、第一の抗体によって捕捉されたsE-セレクチンを結合するために、HRP結合体化抗ヒトsE-セレクチン抗体をウェルに加えた。結合していないHRP結合体化抗ヒトsE-セレクチン抗体を除去するために、プレートのウェルを洗浄した後、HRPと反応性を有する基質溶液をウェルに加える。呈色した生成物が、試料または標準中に存在するヒトsE-セレクチンの量に比例して形成された。酸の添加によって、発色反応を停止させ、各ウェルの吸光度を450nmで測定した。健康なドナーから得た6つのヒト血清試料が、品質対照試料としての役割を果たした。さらに、アッセイキットとともに含まれていた2つの対照凍結乾燥血漿試料(高および低)も各実行に加えた。
【0152】
血漿可溶性E-セレクチンレベルは、全ての用量群において、処置期間にわたって減少した。この応答は、平均レベルおよび効果曲線下面積(「AUEC」)の両方で見られた。ベースラインから8日目までの(MEC化学療法と同時に与えられた、式(I)の化合物での6日の処置の終わりでの)減少は、高度に有意であり(P<0.0001)、用量応答は存在しなかった。
図11は、用量がBIDであった(すなわち、「用量当たり」5、10および20mg/kgの量の式(I)の化合物は、それぞれ、1日当たり10、20および40mg/kgの投薬量に相当する)全ての用量群において、処置期間にわたって、血漿可溶性E-セレクチンの平均レベルを減少させることを図示する。
【表4】
【0153】
これらの結果は、式(I)の化合物の全ての試験された用量にわたって、sE-セレクチンのレベルが減少したことを示す。
【0154】
[実施例13]
臨床的転帰-再発/回復被験体「第1相」
再発/難治性型の急性骨髄性白血病(AML)を有する6~7人のヒト被験体の3つのコホートが、それぞれ、8日にわたって、20分の名目注入期間で、5、10または20mg/kg/用量の、ナトリウム塩として投与された式(I)の化合物の合計15の注入を受けた。20分の名目注入期間は、コホート全体にわたって一定であった(例えば、5mg/kg/用量アームの投与に対しては、10mg/kg/用量アームに対するより、より遅い注入速度が使用された)。注入溶液に対する処方は以下のとおりであった。
【表5】
【0155】
MEC(ミトキサントロン、エトポシドおよびシタラビン)導入化学療法の初回用量の24時間±1時間前に、式(I)の化合物単独での効果を評価するための前哨用量として、式(I)の化合物の初回用量を投与した(すなわち、最初の化学療法の日の前日に、5、10または20mg/kgの単回用量)。次いで、化学療法の2時間前から開始し、化学療法の日に、12時間±1時間ごとに、式(I)の化合物を投与した(すなわち、化学療法の日に、1日当たり10、20または40mg/kg)。したがって、式(I)の化合物の初回用量と第二回用量の間の間隔は、およそ24時間であった。MEC化学療法は、2~6日目に投与した。
【0156】
導入化学療法の完了後の計数回復の時点で、各被験体に対する臨床的転帰を評価した。被験体は、4つの応答群の1つに割り当てられた:完全寛解(「CR」);計数回復が不完全な完全寛解(「CRi」);形態的無白血病状態(「MLFS」);持続的疾患(「PD」)。完全寛解は、骨髄芽球<5%;循環芽球およびアウエル小体を有する芽球の不存在;骨髄外疾患の不存在;ANC≧1.0×10
9/Lおよび血小板≧100,000×10
9/Lとして定義された。回復が不完全な完全寛解は、残存する好中球減少症(<1.0×10
9/L)または血小板減少症(<100,000×10
9/L)以外の全てのCR基準として定義された。形態的無白血病状態は、骨髄芽球<5%;アウエル小体を有する芽球の不存在;骨髄外疾患の不存在;血液学的回復は不要、として定義された。持続的疾患は、骨髄芽球>5%として定義された。
【表6】
【表7】
【0157】
これらの結果は、MECおよび式(I)の化合物での単一クールの導入処置後における、ほぼ50%の奏効率(CR/CRi)を示す。研究集団の高リスクな細胞遺伝学的およびその他の疾患の特徴に鑑みれば、この率は、MECで処置された類似の集団の歴史的対照と比べた時に、予想された奏効率より高い(Feldmanら、Phase III randomized multicenter study of a humanized anti-CD33 monoclonal antibody,lintuzumab,in combination with chemotherapy,versus chemotherapy alone in patients with
refractory or first-relapsed acute myeloid leukemia.J.Clin.Oncol.2005 Jun 20;23(18):4110-6;Greenbergら、Mitoxantrone,etoposide,and cytarabine with or without valspodar in patients with relapsed or refractory acute myeloid leukemia and high-risk myelodysplastic syndrome:a phase III
trial (E2995).J.Clin.Oncol.2004 Mar 15;22(6):1078-86参照)。
【0158】
[実施例14]
有効性に対する曝露応答分析
実施例14および実施例15における分析のための曝露測定基準を作成するために、導入処置の間の式(I)の化合物の血漿濃度(Cp)のサンプリングに基づいて、Pop-PK分析を実施して、適切なPKモデル、モデルの鍵となる共変数を特定し、PKのためにサンプリングされた全ての患者に対する事後的集団PK測定基準を作成した。Pop-PK分析には、59人の被験体、MEC化学療法とともに式(I)の化合物を投与された、再発/難治性(R/R)AMLと診断された46人の被験体および7+3化学療法とともに式(I)の化合物を投与された、新たに診断されたAMLを有する13人の高齢被験体(年齢60歳以上)が含まれた。Pop-PKモデリングは、唯一の有意な共変数として腎機能を用いる3コンパートメントモデルを特定した。
【0159】
実施例14については、PK測定基準に対して有効性尺度を評価する曝露-応答(「E-R」)分析は、46人のR/R AML被験体から得られる臨床応答有効性データを用いて行った。R/R AML被験体は、MEC化学療法ならびに5、10および20mg/kgの式(I)の化合物BID(すなわち、1日当たり10、20および40mg/kg)を投与された。
【0160】
上記Pop-PKモデルを用いて、曝露測定基準を作成した。各被験体について、その間にCpがIC
50(3.184μg/mL)(
図12A)およびIC
90(7.535μg/mL)(
図12B)より上であった投薬間隔の割合、その間隔の間の、Cmax(
図12C)およびAUC(線形台形を用いて決定された)(
図12D)を求めるために、定常状態にある単一の投薬間隔の間に対するCpプロファイルを調べた。
【0161】
実施例13に記載されている有効性の臨床的尺度を用いて、5つの臨床応答カテゴリー:CR、CRi、MLFS、PDおよび死亡のうちの1つに各被験体を割り当てた。これらを曝露の尺度に対してプロットし、曝露応答を示唆する傾向に関して評価した。
図12A~12Dは、有効性応答の各カテゴリーに対して、曝露の個々の測定基準をプロットする。さらに、各カテゴリーにおける、最小、25パーセンタイル、中央値、75パーセンタイルおよび最大曝露測定基準を図解するための箱ひげ図を図に追加した。
図12A~12Dを観察すると、CRを達成した被験体およびPDを有する被験体に対して、寛解に関連するすべての曝露-応答測定基準における著しい重複が明らかとなる。
【0162】
[実施例15]
有害事象に対する曝露-応答分析
実施例15については、PK測定基準に対して有害事象を評価する曝露-応答(「E-R」)分析を行った。実施例15に対する試料集団は、再発/難治性(R/R)AMLを有する53人の被験体および新たに診断されたAMLを有する25人の高齢被験体(60歳以上)を含んだ。R/R AML被験体は、MEC化学療法ならびに5、10および20mg/kgの式(I)の化合物BID(すなわち、1日当たり10、20および40mg/kg)を投与された。新たに診断されたAMLを有する高齢被験体(60歳以上)は、7+3化学療法および10mg/kgの式(I)の化合物BID(すなわち、1日当たり20mg/kg)を投与された。
【0163】
有害事象(「AE」)分析のための曝露測定基準は、実施例14に記載されている同じPop-PKモデルを用いて作成した。各被験体に対して、その間隔の間のCmaxおよびAUC(線形台形を用いて決定された)を決定するために、各24時間間隔(真夜中から真夜中)の間のCpプロファイルを調べた。各研究日を通じて、累積的AUCを求めた。各測定基準/日の組み合わせに対して、パーセンタイル順位および正規化された値を求めた。例えば、6日目のAUC値の中央値を求め、各値を中央値によって除することによって、正規化された値を得た。さらに、これらの6日目のAUC値を順位付けし、次いで、値の数によって除された100%を乗じて、パーセンタイル値を得た。
【0164】
有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events)(「CTCAE」)に従って、有害事象(「AE」)を分類した。E-R分析のために特定されたCTCAE AEは、好中球減少症(
図13Aおよび13B)、血小板減少症(
図13Cおよび13D)、熱性好中球減少症(
図13Eおよび13F)、感染(
図13Gよび13H)、粘膜炎(
図13Iおよび13J)および貧血(
図13Kおよび13L)であった。これらの事象は、CTCAEグレード(3、4または5)によって、および投薬の開始、投薬の初日またはそれより後のいずれかによって分類された。
【0165】
各事象に対して、研究日(投薬の初日を基準とする)を特定した。投薬の間に起きる事象に関しては(典型的には、サイクル1の最初の8日)、対応するパーセンタイルおよび正規化された値(上記)を特定した。事象が投薬後に起こった場合(例えば、15日目)、同時曝露は無視することができ、したがって、以下の曝露測定基準が適用された。
a.Cmax:処置の間のいずれかの時点で達成された最高のCmax
b.AUC、累積的AUC:累積値
【0166】
図13A~Fを観察すると、AUC、処置サイクルにわたる累積的AUCまたはCmaxによって測定された曝露との、増加したAEに対する強い傾向もAEの増加した重篤度に対する強い傾向もないことが明らかである。したがって、曝露のこの範囲は、細胞傷害性化学療法ともに式(I)の化合物が投与されたAML被験体に対する低い安全性リスクを示す。
【0167】
[実施例16]
MECおよびFAI導入化学療法プロトコール
被験体は、5日間連続して、MECまたはFAIのいずれかの導入化学療法を受ける。式(I)の化合物は、化学療法を開始する1日前に、化学療法の間に毎日、および化学療法の最終用量後に2日間与えられる(
図14A)。MEC導入化学療法を受けている被験体を、15~20分にわたるミトキサントロン10mg/m
2/日IV、60分にわたるエトポシド100mg/m
2/日IV、および60分にわたるシタラビン1000mg/m
2/日IVで、5日間連続して処置する。FAI導入化学療法を受けている被験体を、5日間連続での30分にわたるフルダラビン30mg/m
2IV、5日間連続での4時間にわたるシタラビン2g/m
2IV、および最初の3日間連続でのイダルビシン10mg/m
2IVで処置する。
【0168】
[実施例17]
MEC、HiDACおよびIDAC地固め化学療法プロトコール 導入化学療法後に寛解を達成している被験体は、追加の地固め化学療法を受ける。被験体は、低下した用量のMEC、高用量のシタラビン(HiDAC)または中間用量のシタラビン(IDAC)地固め化学療法を受ける。式(I)の化合物は、化学療法を開始する1日前に、化学療法の間に毎日、および化学療法の最終用量後に2日間与えられる(
図14B)。低下した用量のMEC療法は、1サイクルに対して、第2~5日目に、15~20分にわたるミトキサントロン10mg/m
2/日IV、60分にわたるエトポシド100mg/m
2/日IV、および60分にわたるシタラビン1000mg/m
2/日IVからなる。HiDACは、2つのレジメンのいずれかとして、例えば、担当医の裁量で、および最大3~4サイクルに対して、第2、4および6日目に、シタラビン3g/m
2IV3時間ごと、または最大3~4サイクルに対して、第2、4および6日目に、シタラビン2~3g/m
2IV12時間ごとからなるNCCN指針に従って、与えられ得る。IDACは、2つのレジメンのいずれかとして、担当医の裁量で、および最大3サイクルに対して、5日間、シタラビン1.5g/m
2/日IV(シタラビンの用量は、担当医の裁量で1g/m
2/日に低下され得る)、または最大3サイクルに対して、第2、4および6日目に、3時間にわたって12時間ごとにシタラビン1.5g/m
2IV(合計6用量)(シタラビンの用量は、担当医の裁量で1g/m
2/日に低下され得る)からなるNCCN指針に従って、与えられ得る。
【0169】
[実施例18]
デシタビン化学療法プロトコール
被験体は、5日間連続してまたは10日間連続して、デシタビン20mg/m2IVを、1日1回受ける。デシタビンを5日間受けている被験体は、化学療法の日ごとに、デシタビンの注入の前に、1日当たり1回、式(I)の化合物を投与される。デシタビンを10日間受けている被験体は、化学療法の日ごとに、1日当たり2回、式(I)の化合物を投与され、1用量がデシタビンの注入の前に与えられる。
【0170】
[実施例19]
7+3dauno化学療法プロトコール
式(I)の化合物は、化学療法を開始する1日前に、化学療法の間に毎日、および化学療法の最終用量後に2日間与えられる。被験体は、7日(168時間)にわたるシタラビン100mg/m2/日の連続的IV注入および最初の3日間連続でのダウノルビシン60mg/m2/日IVを受ける。経過観察サイクルでは、被験体は、5日(120時間)にわたるシタラビン100mg/m2/日の連続的IV注入および最初の2日間連続でのダウノルビシン60mg/m2/日IVを受け得る。
【0171】
[実施例20]
7+3IDA化学療法プロトコール
式(I)の化合物は、化学療法を開始する1日前に、化学療法の間に毎日、および化学療法の最終用量後に2日間与えられる。被験体は、7日(168時間)にわたるシタラビン100mg/m2/日の連続的IV注入および最初の3日間連続でのイダルビシン12mg/m2/日IVを受ける。経過観察サイクルでは、被験体は、5日(120時間)にわたるシタラビン100mg/m2/日の連続的IV注入および最初の2日間連続でのイダルビシン12mg/m2/日IVを受け得る。
【0172】
[実施例21]
臨床的転帰-再発/難治性被験体「第2相」
上記第1相研究(実施例13参照)に関連するこの第2相研究では、47人の追加の被験体が、10mg/kg/用量のRP2D用量を投与された。第1相研究の10mg/kg/用量アーム中の19人の被験体のデータをこれらの47人の追加の被験体のデータに追加し、第2相研究において検討されている66人のヒト被験体に対するデータがもたらされた。
【0173】
詳しくは、第1相研究プロトコールと合致して、再発/難治性(R/R)急性骨髄性白血病(AML)を有する合計66人のヒト被験体をこの研究のために選択した(すなわち、第1相研究の10mg/kg/用量アームからの19人の被験体+47人の追加の被験体)。
【0174】
(19人の被験体に対する)第1相研究の一部としてであれ、または第2相研究のための追加の被験体としてであれ、各被験体は、20分の名目注入期間で8日にわたって、ナトリウム塩として投与された10mg/kg/用量の式(I)の化合物のRP2D用量の合計15の注入を受けた(19人の被験体に対する第1相研究の一部として、または新しい第2相としてのいずれか)。注入溶液に対する処方は以下のとおりであった。
【表8】
【0175】
MEC(ミトキサントロン、エトポシドおよびシタラビン)導入化学療法の初回用量の24時間±1時間前に、式(I)の化合物単独での効果を評価するための前哨用量として、式(I)の化合物の初回用量を投与した(すなわち、最初の化学療法の日の前日に、10mg/kgの単回用量)。次いで、化学療法の2時間前から開始し、化学療法の日に、12時間±1時間ごとに、式(I)の化合物を投与した(すなわち、化学療法の日に、1日当たり20mg/kg)。したがって、式(I)の化合物の初回用量と第二回用量の間の間隔は、およそ24時間であった。MEC化学療法は、2~6日目に投与した。
【0176】
導入化学療法の完了後の計数回復の時点で、各被験体に対する臨床的転帰を評価した。被験体は、4つの応答群の1つに割り当てられた:完全寛解(「CR」);計数回復が不完全な完全寛解(「CRi」);形態的無白血病状態(「MLFS」);持続的疾患(「PD」)。完全寛解は、骨髄芽球<5%;循環芽球およびアウエル小体を有する芽球の不存在;骨髄外疾患の不存在;ANC≧1.0×109/Lおよび血小板≧100,000×109/Lとして定義された。回復が不完全な完全寛解は、残存する好中球減少症(<1.0×109/L)または血小板減少症(<100,000×109/L)以外の全てのCR基準として定義された。形態的無白血病状態は、骨髄芽球<5%;アウエル小体を有する芽球の不存在;骨髄外疾患の不存在;血液学的回復は不要、として定義された。持続的疾患は、骨髄芽球>5%として定義された。
【0177】
以下に示されている転帰は、第1相(実施例13、全てのコホートを合わせた)、第2相および合計(第1相および第2相)の被験体集団に対するデータを与える。
【表9】
【表10】
【0178】
これらの結果は、MECおよび式(I)の化合物での単一クールの導入処置後に、40%超の奏効率(CR/CRi)を示す。研究集団の高リスクな細胞遺伝学的およびその他の疾患の特徴に鑑みれば、この率は、MECで処置された類似の集団の歴史的対照と比べた時に、予想された奏効率より高い(Feldman 2005;Greenberg 2004参照)。
【0179】
有害事象のデータが以下に提供されており、数種類の有害事象に対するグレード3/4有害事象に対する数および百分率を示し、ならびにグレード1/2および3/4の両方の口腔粘膜炎事象の数および百分率を示している。
【表11】
【0180】
重度の口腔粘膜炎の割合は、この試験群では2~3%であった。予想された割合は、>20%であった(Feldman 2005参照)。
【0181】
これらの被験体に対する生存データは、
図15に図示されている。被験体の全生存中央値は8.8ヶ月であり、95%信頼区間は5.7~11.4ヶ月であった。全ての被験体に対する1年生存率は35%であり、MRD陰性被験体に対する1年生存率は73%であった。
【0182】
[実施例22]
臨床的転帰-新たに診断された高齢被験体
この研究では、60歳以上で、急性骨髄性白血病(AML)を有すると新たに診断された25人のヒト被験体をこの研究のために選択した。被験体は、MDSまたはCMMLに対する従前の処置または診断では不適格とされなかった。
【0183】
各被験体は、10日にわたって、20分の名目注入期間で、10mg/kg/用量の、ナトリウム塩として投与された式(I)の化合物の合計19の注入を受けた。注入溶液に対する処方は以下のとおりであった。
【表12】
【0184】
7+3(シタラビンおよびイダルビシン)化学療法の初回用量の24時間±1時間前に、式(I)の化合物単独での効果を評価するための前哨用量として、式(I)の化合物の初回用量を投与した(すなわち、最初の化学療法の日の前日に、10mg/kgの単回用量)。次いで、化学療法の日に、12時間±1時間ごとに、式(I)の化合物を投与し(すなわち、化学療法の日に、1日当たり20mg/kg)、化学療法の最後の用量後に2日間投与した。したがって、式(I)の化合物の初回用量と第二回用量の間の間隔は、およそ24時間であった。7+3(シタラビンおよびイダルビシン)化学療法は2~8日目に投与され、7日(168時間、2~8日目)にわたる、連続的IV注入のシタラビン100mg/m2/日および最初の3日間連続でのイダルビシン12mg/m2/日IV(36時間、2~4日目)を含む。
【0185】
導入化学療法の完了後の計数回復の時点で、各被験体に対する臨床的転帰を評価した。被験体は、4つの応答群の1つに割り当てられた:完全寛解(「CR」);計数回復が不完全な完全寛解(「CRi」);形態的無白血病状態(「MLFS」);持続的疾患(「PD」)。完全寛解は、骨髄芽球<5%;循環芽球およびアウエル小体を有する芽球の不存在;骨髄外疾患の不存在;ANC≧1.0×10
9/Lおよび血小板≧100,000×10
9/Lとして定義された。回復が不完全な完全寛解は、残存する好中球減少症(<1.0×10
9/L)または血小板減少症(<100,000×10
9/L)以外の全てのCR基準として定義された。形態的無白血病状態は、骨髄芽球<5%;アウエル小体を有する芽球の不存在;骨髄外疾患の不存在;血液学的回復は不要、として定義された。持続的疾患は、骨髄芽球>5%として定義された。
【表13】
【表14-1】
【表14-2】
【0186】
これらの結果は、7+3(シタラビンおよびイダルビシン)化学療法および式(I)の化合物での単一クールの導入処置後に、72%の奏効率(CR/CRi)を示す。研究集団の高リスクな細胞遺伝学的およびその他の疾患の特徴に鑑みれば、この率は7+3(シタラビンおよびイダルビシン)化学療法で処置された類似の集団の歴史的対照と比べた時に、予想された奏効率より高い(Burnettら、The impact of dose escalation and resistance modulation in older patients with acute myeloid leukaemia and high-risk myelodysplastic syndrome:the results of the LRF AML14 trial.British J.Haematology,2009.145:218-332;Lancetら、Phase 2 trial of CPX-351,a fixed
5:1 molar ratio of cytarabine/daunorubicin,vs cytarabine/ daunorubicin in older
adults with untreated AML.Blood.2014.123(21):3239-3246)。
【0187】
有害事象のデータが以下に提供されており、数種類の有害事象に対するグレード3/4有害事象に対する数および百分率を示し、ならびにグレード1/2および3/4の両方の口腔粘膜炎事象の数および百分率を示している。
【表15】
【0188】
重度の口腔粘膜炎の割合は、この試験群では0%であった。予想された割合は、およそ5~10%であった。
【0189】
図16Aは、イベントフリー生存データを図示し、
図16Bは、これらの被験体に対する全生存データを図示する。イベントフリー生存中央値は9.2ヶ月であり、95%信頼区間は3~12.6ヶ月であった。全生存中央値は12.6ヶ月であり、95%信頼区間は9.9ヶ月のより低い範囲であった(95%信頼区間の上端は達成されなかった)。全ての被験体に対する1年全生存率は52%であり、MRD陰性被験体に対する1年生存率は60%であった。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
AML、MDS、好中球減少症または粘膜炎を処置するための方法であって、AML、MDS、好中球減少症または粘膜炎の処置を必要とする被験体に、1日当たり200mg~4000mgの固定された用量の式(I)の化合物:
【化2】
を投与することを含む、方法。
(項目2)
1日当たり1600mgの前記式(I)の化合物が投与される、項目1に記載の方法。(項目3)
AML、MDS、好中球減少症または粘膜炎を処置するための方法であって、AML、MDS、好中球減少症または粘膜炎の処置を必要とする被験体に、1日当たり1mg/kg~100mg/kgの式(I)の化合物:
【化3】
を投与することを含む、方法。
(項目4)
1日当たり20mg/kgの前記式(I)の化合物が投与される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記式(I)の化合物が1日に2回投与される、上述の項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記式(I)の化合物が静脈内に投与される、上述の項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記式(I)の化合物が皮下に投与される、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。(項目8)
前記被験体が、化学療法および/または放射線療法を受けている、それらを受けたまたはそれらを受けるであろう、上述の項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記被験体が、2またはそれを超える化学療法剤を受けている、それらを受けたまたはそれらを受けるであろう、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記化学療法が、ミトキサントロン、エトポシドおよびシタラビンの投与を含む、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記化学療法が、フルダラビン、シタラビンおよびイダルビシンの投与を含む、項目8に記載の方法。
(項目12)
前記化学療法が、ベラフェルミンおよび/またはパリフェルミンの投与を含む、項目8に記載の方法。
(項目13)
MMP阻害剤、炎症性サイトカイン阻害剤、肥満細胞阻害剤、NSAID、NO阻害剤、MDM2阻害剤および抗菌化合物から選択される少なくとも1つのさらなる化合物を投与することをさらに含む、項目8に記載の方法。
(項目14)
サリドマイドまたはサリドマイド誘導体を投与することをさらに含む、項目8に記載の方法。
(項目15)
前記被験体がAMLを有する、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記式(I)の化合物の投与が、前記被験体が寛解状態である日数を伸ばし、寛解までの日数を減らし、AML細胞の転移を抑制し、または生存を改善する、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記被験体がMDSを有する、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記式(I)の化合物の投与が、MDSの進行を減速させ、MDSの白血病への進行を防ぎ、または生存を改善する、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記被験体が好中球減少症を有する、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記式(I)の化合物の投与が、前記被験体が好中球減少症に罹病している日数を減らし、または好中球減少症の重篤度を低下させる、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記被験体が粘膜炎を有する、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記式(I)の化合物の投与が、前記被験体が粘膜炎に罹病している日数を減らし、または前記粘膜炎の重篤度を低下させる、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記式(I)の化合物が、式(I)のプロドラッグまたは前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩として投与される、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記式(I)の化合物、式(I)のプロドラッグまたは前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩が、薬学的に許容され得る担体または希釈剤と組み合わせて投与される、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。