(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145679
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】CD3及びCD20に対する二重特異性抗体を含む医薬組成物及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20231003BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231003BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231003BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231003BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231003BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20231003BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20231003BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20231003BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/02
C07K16/28
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023126414
(22)【出願日】2023-08-02
(62)【分割の表示】P 2020565539の分割
【原出願日】2019-02-08
(31)【優先権主張番号】18156050.9
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520297023
【氏名又は名称】ジェンマブ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】イェスパ バルビヨエアン
(72)【発明者】
【氏名】リーネ エス ハーロウ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコプ デー クラウスン
(72)【発明者】
【氏名】メデ ホー イェンスン
(72)【発明者】
【氏名】クレスチャン シマンダ
(72)【発明者】
【氏名】ピーダ ヨズ マスン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】CD3及びCD20に対する二重特異性抗体の医薬組成物及び単位用量剤型、ならびにそれらの使用方法を提供する。
【解決手段】以下を含む又は以下から本質的になる医薬組成物:
a. 50~120mg/mLのヒトCD3及びヒトCD20へ結合する二重特異性抗体、
b. 20~40mMの酢酸、
c. 140~160mMのソルビトール。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む又は以下から本質的になる医薬組成物:
a. 50~120mg/mLのヒトCD3及びヒトCD20へ結合する二重特異性抗体、
b. 20~40mMの酢酸
c. 140~160mMのソルビトール
ここで、前記組成物のpHは5~6であり、前記二重特異性抗体は、
以下のCDR配列を含むヒトCD3に結合する第1結合領域:
VH-CDR1:配列番号1
VH-CDR2:配列番号2
VH-CDR3:配列番号3
VL-CDR1:配列番号4
VL-CDR2:GTN、及び
VL-CDR3:配列番号5
並びに、以下のCDR配列を含むヒトCD20に結合する第2結合領域:
VH-CDR1:配列番号8
VH-CDR2:配列番号9
VH-CDR3:配列番号10
VL-CDR1:配列番号11
VL-CDR2:DAS、及び
VL-CDR3:配列番号12
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
CD3に結合する二重特異性抗体の第1結合領域は、配列番号6及び7のVH及びVL配列に対し
少なくとも90%の配列同一性、例えば配列番号6及び7のVH及びVL配列に対し少なくとも95
%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するVH及びVL配列を含む、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
CD20に結合する二重特異性抗体の第2結合領域は、配列番号13及び14のVH及びVL配列に
対し少なくとも90%、例えば配列同一性配列番号13及び14のVH及びVL配列に対し少なくと
も95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するVH及びVL配列を含む、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
二重特異性抗体はIgG1抗体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
二重特異性抗体は、ラムダ軽鎖定常領域及びカッパ軽鎖定常領域、例えば配列番号22及
び23の軽鎖定常領域から選択される第1及び第2軽鎖定常領域を含む第1及び第2軽鎖を含む
、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
二重特異性抗体は、第1及び第2重鎖を含むFc領域を含み、前記Fc領域は野生型IgG1 Fc
領域を含む二重特異性抗体と比較して低いエフェクター機能を有するように改変されてい
る
、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
二重特異性抗体は、C1qの前記抗体への結合が野生型IgG1 Fc領域を有する二重特異性抗
体と比較して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少な
くとも97%、又は100%低くなるようように改変されたFc領域を含み、ここで、C1qの結合
はELISAによって決定される、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
二重特異性抗体は、それぞれ少なくともヒンジ領域、CH2及びCH3領域を含む第1及び第2
重鎖を含み、ここで前記第1重鎖においてヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399
、F405、Y407、及びK409からなる群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸
の少なくとも1つが置換されており、かつ前記第2重鎖においてヒトIgG1重鎖におけるT366
、L368、K370、D399、F405、Y407、及びK409からなる群より選択される位置に対応する位
置におけるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、かつ前記第1及び第2重鎖は同じ
位置において置換されていない、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
(i)前記第1重鎖においてヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置におけるアミノ酸
はLであり、かつ前記第2重鎖においてヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置における
アミノ酸はRである、又は、(ii)前記第1重鎖においてヒトIgG1重鎖におけるK409に対応
する位置におけるアミノ酸はRであり、かつ前記第2重鎖においてヒトIgG1重鎖におけるF4
05に対応する位置におけるアミノ酸はLである、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組
成物。
【請求項10】
二重特異性抗体の第1重鎖と第2重鎖の両方のヒトIgG1重鎖における位置L234及びL235に
対応する位置はそれぞれF及びEである、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
二重特異性抗体の第1重鎖と第2重鎖の両方のヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、及
びD265に対応する位置はそれぞれF、E、及びAである、請求項1~10のいずれか1項に記載
の医薬組成物。
【請求項12】
二重特異性抗体の第1定常重鎖及び第2定常重鎖の両方のヒトIgG1重鎖における位置L234
、L235、及びD265に対応する位置はそれぞれF、E、及びAであり、第1定常重鎖のヒトIgG1
重鎖におけるF405に対応する位置はLであり、かつ第2定常重鎖のヒトIgG1重鎖におけるK4
09に対応する位置はRである、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
第1及び第2定常重鎖は、配列番号16のアミノ酸配列に対し少なくとも90%の同一性を有
するアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
第1及び第2定常重鎖は、それぞれ配列番号19及び20のアミノ酸配列を含む、請求項1~1
3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
aは50~120mg/mL、例えば50~110mg/mL、又は、例えば50~100mg/mL、例えば50~90mg/
mL、例えば50~80mg/mL、例えば50~70mg/mL、例えば55~65mg/ml、例えば58~62mg/ml、
例えば60mg/mLである、あるいはaは約120mg/mLである、請求項1~14のいずれか1項に記載
の医薬組成物。
【請求項16】
bは28~32mM、例えば30mMである、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
cは145~155mM、例えば148~152mM、例えば150mMである、請求項1~16のいずれか1項に
記載の医薬組成物。
【請求項18】
pHは、5.3~5.6、例えば5.4~5.6、例えば約5.5である、請求項1~17のいずれか1項に
記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記組成物は、5.4~5.6、例えば5.5のpHを有し、
a. 50~120mg/mLの二重特異性抗体
b. 20~40mMの酢酸
c. 140~160mMのソルビトール、
から本質的になる、請求項1~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記組成物は、5.4~5.6のpHを有し、
a. 58~62mg/mLの二重特異性抗体
b. 28~32mMの酢酸
c. 145~155mMのソルビトール、
から本質的になる、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記組成物は、5.5のpHを有し、
a. 60mg/mLの二重特異性抗体
b. 30mMの酢酸
c. 150mMのソルビトール、
から本質的になる、請求項1~20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記組成物は、5.4~5.6のpHを有し、
a. 110~130mg/mLの二重特異性抗体
b. 28~32mMの酢酸
c. 145~155mMのソルビトール、
から本質的になる、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記組成物は、5.5のpHを有し、
a. 120mg/mLの二重特異性抗体
b. 30mMの酢酸
c. 150mMのソルビトール、
から本質的になる、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記組成物は界面活性剤を含まない、請求項1~23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記組成物はヒアルロニダーゼを含まない、請求項1~24のいずれか1項に記載の医薬組
成物。
【請求項26】
前記組成物は皮下用組成物である、請求項1~25のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記組成物は静脈用組成物である、請求項1~26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記組成物は癌の治療における使用のためのものである、請求項1~27のいずれか1項に
記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記組成物は皮下投与における使用のためのものである、請求項1~28のいずれか1項に
記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記組成物は静脈内投与における使用のためのものである、請求項1~24のいずれか1項
に記載の医薬組成物。
【請求項31】
用量単位剤型にある、請求項1~30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
2~8℃、例えば5℃の保存温度において少なくとも6月、例えば少なくとも9月又は少な
くとも12月間、医薬用途に安定である、
、請求項1~31のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
皮下投与のための請求項1~25のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項34】
静脈内投与のための請求項1~25のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項35】
前記使用は癌の治療のためのものである、請求項33又は34に記載の医薬組成物の使用。
【請求項36】
対象における癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~32のい
ずれか1項に記載の医薬組成物を、癌を治療するのに十分な時間投与することを含む方法
。
【請求項37】
前記組成物が皮下又は静脈内投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記癌はB細胞悪性腫瘍である、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
以下を含む又は以下から本質的になる単位用量剤型:
a
以下のCDR配列を含むヒトCD3に結合する第1結合領域:
VH-CDR1:配列番号1
VH-CDR2:配列番号2
VH-CDR3:配列番号3
VL-CDR1:配列番号4
VL-CDR2:GTN、及び
VL-CDR3:配列番号5
並びに、以下のCDR配列を含むヒトCD20に結合する第2結合領域:
VH-CDR1:配列番号8
VH-CDR2:配列番号9
VH-CDR3:配列番号10
VL-CDR1:配列番号11
VL-CDR2:DAS、及び
VL-CDR3:配列番号12
を含み、5μg~50mgの量の二重特異性抗体、
b. 1:5~1:10の間の比率にある酢酸緩衝剤及びソルビトール、ここで、前記単位用量
剤型の浸透圧は約210~約250でありpHは約5.4~5.6である。
【請求項40】
以下を含む又は以下から本質的になる単位用量剤型:
a. 以下のCDR配列を含むヒトCD3に結合する第1結合領域:
VH-CDR1:配列番号1
VH-CDR2:配列番号2
VH-CDR3:配列番号3
VL-CDR1:配列番号4
VL-CDR2:GTN、及び
VL-CDR3:配列番号5
並びに、以下のCDR配列を含むヒトCD20に結合する第2結合領域:
VH-CDR1:配列番号8
VH-CDR2:配列番号9
VH-CDR3:配列番号10
VL-CDR1:配列番号11
VL-CDR2:DAS、及び
VL-CDR3:配列番号12
を含み、5μg~50mgの量の二重特異性抗体、
b. 30mMの濃度の酢酸
c. 150mMの濃度のソルビトール、
ここでpHは5.5である。
【請求項41】
ヒトCD3に結合する二重特異性抗体の第1結合領域は配列番号6及び7のVH及びVL配列を含
み、かつヒトCD20に結合する二重特異性抗体の第2結合領域は配列番号13及び14のVH及びV
L配列を含む、請求項39又は40に記載の単位用量剤型。
【請求項42】
二重特異性抗体は、それぞれ配列番号19及び20の第1及び第2重鎖定常領域を含む、請求
項41に記載の単位用量剤型。
【請求項43】
二重特異性抗体の量は50μg~40mgである、請求項39~42のいずれか1項に記載の単位用
量剤型。
【請求項44】
二重特異性抗体の量は100μg~30mg、例えば150μg、200μg、250μg、300μg、350μg
、400μg、450μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1mg、2mg、3mg、4mg、5m
g、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19m
g、20mg、21mg、22mg、23mg、24mg、25mg、26mg、27mg、28mg、29mg、例えば30mgである
、請求項39~43のいずれか1項に記載の単位用量剤型。
【請求項45】
総体積は0.5mL~2mL、例えば1mLである、請求項39~44のいずれか1項に記載の単位用量
剤型。
【請求項46】
単位用量剤型は皮下投与のためのものである、請求項45に記載の単位用量剤型。
【請求項47】
総体積は20mL~200mLであり、前記用量剤型は静脈内投与のためのものである、請求項3
9~44のいずれか1項に記載の単位用量剤型。
【請求項48】
対象における癌を治療する方法であって、
それを必要とする対象に請求項39~47のいずれか1項に記載の単位用量剤型を、癌を治療
するのに十分な時間投与することを含む、方法。
【請求項49】
癌の治療における使用のための請求項39~47のいずれか1項に記載の単位用量剤型。
【請求項50】
請求項39~45のいずれか1項に記載の単位用量剤型を含む容器。
【請求項51】
a. 請求項1~25のいずれか1項に記載の医薬組成物
b. 酢酸及びソルビトールを含む希釈剤
c. 単位用量剤型用の入れ物
d. 希釈及び/又は使用のための説明書
を含むパーツキット。
【請求項52】
希釈剤及び医薬組成物における酢酸対ソルビトールの濃度比が等しい、請求項51に記載の
パーツキット。
【請求項53】
a. 以下を含む医薬組成物:
i.60mg/mLの二重特異性抗体
ii.30mMの酢酸緩衝剤
iii.150mMのソルビトール
iv.pHは5.5である
b. 以下を含む希釈剤:
i.30mMの酢酸緩衝剤
ii.150mMのソルビトール
c. 単位用量剤型用の入れ物、並びに、
d. 希釈及び/又は使用のための説明書、
を含む、請求項51又は52に記載のパーツキット。
【請求項54】
請求項1~32のいずれか1項に記載の医薬組成物を調製する方法であって、
a. 以下のCDR配列を含むヒトCD3に結合する第1結合領域:
VH-CDR1:配列番号1
VH-CDR2:配列番号2
VH-CDR3:配列番号3
VL-CDR1:配列番号4
VL-CDR2:GTN、及び
VL-CDR3:配列番号5
並びに、以下のCDR配列を含むヒトCD20に結合する第2結合領域:
VH-CDR1:配列番号8
VH-CDR2:配列番号9
VH-CDR3:配列番号10
VL-CDR1:配列番号11
VL-CDR2:DAS、及び
VL-CDR3:配列番号12
を含む60~120mg/mLの二重特異性抗体、
b. 3.53mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物
c. 0.32mg/mLの酢酸
d. 27.3mg/mLのソルビトール
を注射用の水中で混合する工程;並びに
水酸化ナトリウムを添加することによりpHを5.5に調整する工程;
を含む方法。
【請求項55】
aは60mg/mLである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
aは120mg/mLである、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
請求項39~45のいずれか1項において定義される単位用量剤型を調製する方法であって
、
a. 請求項54~56のいずれか1項に記載の方法により医薬組成物を調製する工程;
b. 以下を含む希釈剤
i.3.53mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物
ii.0.32mg/mLの酢酸
iii.27.3mg/mLのソルビトール
iv. pHを5.5に調整する水酸化ナトリウム
を含む希釈剤を注射用の水中で調製する工程;並びに
c. 医薬組成物及び希釈剤を混合して所望の二重特異性抗体濃度とする工程;
を含む、方法。
【請求項58】
請求項54~57のいずれか1項に記載の方法により取得可能な医薬組成物又は単位用量剤
型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD3及びCD20に対する二重特異性抗体の医薬組成物及び単位用量剤型、なら
びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD3は長年にわたり知られており、したがって、多くの態様において関心の対象となっ
ている。具体的には、CD3またはT細胞受容体複合体(CD3はその一部である)に対して産
生された抗体が知られている。
【0003】
標的抗体療法を改善するための有望なアプローチは、抗原発現癌細胞に特異的に細胞傷
害性細胞を送達することによるものである。腫瘍細胞を効率的に殺すためにT細胞を使用
するこの概念はStaerzら、1985、Nature 314:628-631に記載されている。しかしながら、
初期の臨床試験では、主に有効性の低さ、重度の有害作用(サイトカインストーム)及び
二重特異性抗体の免疫原性(Muller and Kontermann,2010,BioDrugs 24:89-98)のため、
むしろ期待外れであった。二重特異性抗体の設計及び応用の進歩により、サイトカインス
トームの初期障壁を部分的に克服し、用量制限的な毒性なく臨床的有効性を改善した(Ga
rber,2014,Nat.Rev.Drug Discov.13:799-801;Lum and Thakur,2011,BioDrugs 25:365-379
)。カツマキソマブについて記載されるように、サイトカインストームの初期障壁を克服
するために重要なのは(Berekら,2014,Int.JGynecol.Cancer 24(9):1583-1589;Mau-Soren
senら,2015,Cancer Chemother. Pharmacol. 75:1065-1073)、Fcドメインの不在またはサ
イレンシングであった。
【0004】
CD20分子(ヒトB-白血球制限分化抗原またはBp35とも呼ばれる)は疎水性のトランス
メンブレン蛋白質であり、分子量は約35kDで、前B及び成熟B白血球上に位置する(Valent
ine et al. (1989) J. Biol. Chem. 264(19):11282-11287;and Einfield et al., (1988)
EMBO J. 7(3):711-717)。CD20は末梢血またはリンパ器官由来のB細胞の90%を超える表
面に認められ、前B細胞発生の初期に発現し、形質細胞の分化まで残る。CD20は、悪性B細
胞と正常B細胞の両方に存在する。特に、CD20はB細胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)の90
%超に発現しているが(Andersonら(1984),Blood 63(6):1424-1433)、造血幹細胞、前B
細胞、正常形質細胞、その他の正常組織には認められない(Tedderら(1985) J. Immunol.
135(2):973-979)。
【0005】
CD20を標的とすることによって癌ならびに自己免疫疾患及び各種免疫疾患を治療するた
めの方法は、当該分野で公知である。例えば、キメラCD20抗体リツキシマブは、非ホジキ
ンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病(CLL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)のよ
うな癌の治療に使用されるか、または使用の示唆がされている。ヒトモノクローナルCD20
抗体オファツムマブは、とりわけ、各種CLL適応、濾胞性リンパ腫(FL)、視神経脊髄炎
(NMO)、びまん性及び再発寛解型多発性硬化症(RRMS)の治療に使用されるか、または
使用の示唆がされている。
【0006】
CD3及びCD20の両方に結合する二重特異性抗体は、先行技術から公知である。
【0007】
WO2011028952は、とりわけ、XencorのXmAb二重特異性Fcドメイン技術を用いたCD3×CD2
0二重特異性分子の生成を記載する。
【0008】
WO2014047231は、Regeneron PharmaceuticalsのFcΔAdp技術を使用して生成されたREGN
1979及び他のCD3×CD20二重特異性抗体を記載する。
【0009】
Sunら(2015,Science Translational Medicine 7,287ra70)は、「ノブ・インテュ・ホ
ール(knobs-into-holes)」技術を用いて構築されたB細胞標的化抗CD20/CD3T細胞依存
性二重特異性抗体を記載する。
【0010】
参照により本明細書に組み込まれるWO2016/110576は二重特異性CD3×CD20抗体を提供し
、本発明は、WO2016/110576のCD3×CD20抗体の安定な医薬製剤に関する。CD3とCD20の両
方に結合する二重特異性抗体はCD20を発現する細胞の特異的標的化及びT細胞による死滅
が望まれる治療設定において有用であり得、このような二重特異性抗体はNHL、CLL、及び
他のB細胞悪性腫瘍の可能性のある治療のために検討されている。臨床試験において開発
中の従来技術のCD3×CD20二重特異性抗体は、静脈内(IV)経路を介して投与されている
。このような投与経路はCD3×CD20二重特異性抗体に関するCmaxが高くなる可能性があり
、高すぎるレベルのサイトカイン放出、つまり、二重特異性抗体によるCD20及びT細胞を
発現する標的細胞のクロスリンクがサイトカインの放出、例えば、炎症誘発性サイトカイ
ン(例えば、IL-6、TNF-αまたはIL-8)の放出を導き、発熱、悪心、嘔吐及び悪寒のよう
な有害な効果を生じるおそれがある。したがって、二重特異性抗体の独特の抗腫瘍活性に
もかかわらず、それらの免疫学的作用様式が望ましくない「副」作用、すなわち、例えば
「初回用量サイトカイン応答または症候群」として知られる望ましくない炎症反応の誘導
を誘発する。このような状況下では、患者が例えば、鎮痛薬、解熱薬、及び/または非ス
テロイド性抗炎症薬による併用治療または前投薬を受ける必要がある。したがって、ヒト
または動物への投与時に、二重特異性抗体を再標的化するT細胞の全身性サイトカイン放
出プロファイルを改変または低減する必要性が満たされていない。したがって、CD3及びC
D20に結合する二重特異性抗体のさらなる抗体調剤及び医薬組成物、つまり、全身性サイ
トカイン放出の副作用を回避又は低減させるために異なる方式で投与できるが、同時に、
CD20を発現する腫瘍細胞に対する非常に効率的なT細胞による死滅をもたらす組成物が必
要である。本発明はの目的は、WO2016/110576に開示されているCD3×CD20二重特異性抗体
のシンプルで安定した医薬製剤であって、約60mg/mLまたは120mg/mLといった高い抗体濃
度、あるいは150mg/mLという高い抗体濃度でも、広範囲の抗体濃度にわたり安定している
、CD3×CD20抗体及び製剤を提供することである。本発明のさらなる目的は、少なくとも3
月の期間、あるいはさらに長く、例えば少なくとも6月又は少なくとも12月にわたって安
定であるCD3×CD20二重特異性抗体の医薬製剤を提供することである。さらに、本発明の
目的は、例えば2℃~25℃の温度範囲にわたって安定な製剤を提供することである。さら
なる目的は、静脈内投与及び皮下投与の両方に適した二重特異性CD3×CD20抗体の医薬製
剤を提供することである。多くの場合、皮下投与のほうが静脈内投与に比べて注入/注射
時間がはるかに短いため、医薬製剤を皮下投与する方が患者にとってより便利な場合があ
る。本発明のさらなる目的は、皮下注射部位で十分に許容される二重特異性CD3×CD20抗
体の医薬製剤を提供することである。さらなる目的は、皮下投与により患者のサイトカイ
ン放出プロファイルを低下させることができるが同時に、CD20を発現する腫瘍細胞に対す
る非常に効率的なT細胞による死滅をもたらることが可能な医薬組成物を提供することで
ある。
【発明の概要】
【0011】
本発明はの目的は、CD3抗体に由来する第1抗原結合領域とCD20抗体に由来する第2抗原
結合領域を含む二重特異性抗体の新規な医薬組成物を提供することである。
【0012】
CD3×CD20二重特異性抗体を含む新規な組成物は、CD20を発現する細胞に対する特異的
な標的化やT細胞による死滅が望まれる治療の場面で有用である。かかる製剤は、静脈内
投与及び皮下投与のいずれにも有用である。
【0013】
従って、主な態様において、本発明は、以下を含む医薬組成物に関する:
a. 50~120mg/mLのヒトCD3及びヒトCD20へ結合する二重特異性抗体、
b. 20~40mMの酢酸、
c. 140~160mMのソルビトール、
ここで、前記組成物のpHは5~6であり、前記二重特異性抗体は、
以下のCDR配列を含むヒトCD3に結合する第1結合領域:
VH-CDR1:配列番号1
VH-CDR2:配列番号2
VH-CDR3:配列番号3
VL-CDR1:配列番号4
VL-CDR2:GTN、及び
VL-CDR3:配列番号5
並びに、以下のCDR配列を含むヒトCD20に結合する第2結合領域:
VH-CDR1:配列番号8
VH-CDR2:配列番号9
VH-CDR3:配列番号10
VL-CDR1:配列番号11
VL-CDR2:DAS、及び
VL-CDR3:配列番号12
を含む。
【0014】
更なる態様では、本発明は、本発明の医薬組成物の皮下投与のための使用に関する。
【0015】
更なる態様では、本発明は、本発明の医薬組成物の静脈内投与のための使用に関する。
【0016】
更なる態様では、本発明は、本発明の医薬組成物の癌の治療のための使用に関する。
【0017】
更なる態様では、本発明は対象における癌を治療する方法であって、それを必要とする
対象に、本発明の医薬組成物を、癌を治療するのに十分な時間投与することを含む方法に
関する。
【0018】
本発明の更なる態様は、以下を含む単位用量剤型に関する:
a. 以下のCDR配列を含むヒトCD3に結合する第1結合領域:
VH-CDR1:配列番号1
VH-CDR2:配列番号2
VH-CDR3:配列番号3
VL-CDR1:配列番号4
VL-CDR2:GTN、及び
VL-CDR3:配列番号5
並びに、以下のCDR配列を含むヒトCD20に結合する第2結合領域:
VH-CDR1:配列番号8
VH-CDR2:配列番号9
VH-CDR3:配列番号10
VL-CDR1:配列番号11
VL-CDR2:DAS、及び
VL-CDR3:配列番号12
を含み、約5μg~約50mgの量の二重特異性抗体、
b. 1:5~1:10の間の比率にある酢酸緩衝剤及びソルビトール、ここで、前記単位用量
剤型の浸透圧は約210~約250でありpHは約5.5である。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、以下を含む単位用量剤型に関する:
a. 以下のCDR配列を含むヒトCD3に結合する第1結合領域:
VH-CDR1:配列番号1
VH-CDR2:配列番号2
VH-CDR3:配列番号3
VL-CDR1:配列番号4
VL-CDR2:GTN、及び
VL-CDR3:配列番号5
並びに、以下のCDR配列を含むヒトCD20に結合する第2結合領域:
VH-CDR1:配列番号8
VH-CDR2:配列番号9
VH-CDR3:配列番号10
VL-CDR1:配列番号11
VL-CDR2:DAS、及び
VL-CDR3:配列番号12
を含み、約5μg~約50mgの量の二重特異性抗体、
b. 約30mMの濃度の酢酸緩衝剤、
c. 約150mMの濃度のソルビトール、
ここで、pHは約5.5である。
【0020】
上記及びその他の態様と実施形態については、以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は異なる製剤におけるDuobody-CD3×CD20の溶解度スクリーニングを示す。Duobody-CD3×CD20を、図示の緩衝剤中で製剤化し、そしてタイムスピン間隔で遠心濃縮器を使用して連続的に濃縮した。各製剤の濃度を、20、50、60及び90分のスピン間隔後に測定した。
【0022】
【
図2】
図2は図示の製剤におけるDuobody-CD3×CD20(120~150mg/mL)の粘度を示す。濃縮Duobody-CD3×CD20試料(120~150mg/mL)の粘度(cP)を、Wells-Brookfield Cone/Plate Rheometerを使用して、図示の製剤において様々な剪断速度で測定した。
【0023】
【
図3A】
図3Aは、DuoBody-CD3×CD20を単回静脈内投与(0.1または1mg/kg)または単回皮下投与(0.1または1mg/kg)したカニクイザルの血液中の各群の平均サイトカイン濃度を示す。
【
図3B】
図3Bは、DuoBody-CD3×CD20を単回静脈内投与(0.1または1mg/kg)または単回皮下投与(0.1または1mg/kg)したカニクイザルの血液中の各群の平均サイトカイン濃度を示す。
【0024】
【
図4】
図4は、カニクイザルの末梢血中のB細胞に対するDuoBody-CD3×CD20の4回の反復静脈内投与による影響を示す。(A)DuoBody-CD3×CD20の週4回静脈内投与(0.01、0.1又は1mg/kg)後の、各投与群毎の経時的な、カニクイザル末梢血中の平均B細胞数(CD4
-CD8
-CD16
-CD19
+細胞)。(B)投与前のB細胞数に対する投与群毎の平均B細胞数の割合(%)。B細胞数は絶対細胞数(cells/μL)で示す。
【0025】
【
図5】
図5は、カニクイザル末梢血中のB細胞に対するDuoBody-CD3×CD20の単回皮下投与による影響を示す。(A)DuoBody-CD3×CD20の単回皮下投与(0.01、0.1、1、10または20mg/kg)後の、各投与群毎の経時的な、カニクイザルの末梢血中の平均B細胞数。(B)投与前のB細胞数に対する投与群毎の平均B細胞数の割合。B細胞数は絶対細胞数(cells/μL)で示す。
【0026】
【
図6】
図6は、カニクイザルの末梢血中のB細胞に対する初回用量投与後のDuoBody-CD3×CD20の標的用量の静脈内注入による影響を示す。初回用量(0.01mg/kg)として投与した後、1日後に1つの標的用量(1mg/kg;IV)を静脈内注入したカニクイザルの末梢血中の経時的な平均B細胞数(CD4
-CD8
-CD16
-CD19
+細胞)。B細胞数は絶対細胞数(cells/μL)で示す。
【0027】
【
図7】
図7は、カニクイザルのリンパ節中のB細胞に対するDuoBody-CD3×CD20の4回の反復静脈内投与による影響を示す。(A)DuoBody-CD3×CD20の週4回静脈内投与(0.01、0.1または1mg/kg)後の、各投与群毎の経時的な、カニクイザルのリンパ節中の平均B細胞頻度(総リンパ球集団に対するCD4
-CD8
-CD16
-CD19
+細胞の割合)。(B)投与前のB細胞頻度に対する投与群毎の平均B細胞頻度の割合。
【0028】
【
図8】
図8は、カニクイザルのリンパ節中のB細胞に対するDuoBody-CD3×CD20の単回皮下投与による影響を示す。(A)DuoBody-CD3×CD20の単回皮下投与(0.01、0.1、1、10又は20mg/kg)後の、各投与群毎の経時的な、カニクイザルのリンパ節中の平均B細胞頻度(総リンパ球集団に対するCD4
-CD8
-CD16
-CD19
+細胞の割合)。(B)投与前のB細胞頻度に対する投与群毎の平均B細胞頻度の割合。
【0029】
【
図9】
図9は、カニクイザルの末梢血中のB細胞に対する初回用量投与後のDuoBody-CD3×CD20の標的用量の静脈内注入による影響を示す。初回用量(0.01mg/kg)として投与した後、1日後に1つの標的用量(1mg/kg;IV)を静脈内注入したカニクイザルの末梢血中の経時的な平均B細胞頻度(総リンパ球集団に対するCD4
-CD8
-CD16
-CD19
+細胞の割合)。
【0030】
【
図10】
図10は、DuoBody-CD3×CD20を用いたIV治療後のカニクイザルの脾臓及びリンパ節におけるB細胞の枯渇及び回復を示す。上図:カニクイザル1を、DuoBody-CD3×CD20を1日目に初回用量として0.01mg/kg、2日目に標的用量として1mg/kgを用いて処置した。動物をスケジュールに従って29日目に安楽死させた。剖検時に末梢血B細胞数は回復していなかった。下図:カニクイザル2を、DuoBody-Cd3xCD20を毎週1mg/kgを用いて4回処置した。動物は、末梢血でB細胞の回復が観察された後、148日目に安楽死させた。リンパ節及び脾臓の凍結切片を、CD19特異的抗体を用いて染色しB細胞を検出した(褐色染色)。ヘマトキシリンを用いて細胞核を検出した(青色染色)。
【0031】
【
図11】
図11は、雄カニクイザルの末梢血中のB細胞に対するDuoBody-CD3×CD20の5回の反復静脈内投与による影響を示す。(A)生理食塩水または0.01、0.1または1mg/kgのDuoBody-CD3×CD20を用いて毎週5回静脈内投与した雄カニクイザルの末梢血中の各投与群毎の経時的な平均B細胞数(CD45
+CD4
-CD8
-CD16
-CD19
+細胞)。(B)投与前のB細胞数に対する投与群毎の平均B細胞数の割合。B細胞数はゲート化リンパ球に対する割合(%)で示す。
【0032】
【
図12】
図12は、雌カニクイザルの末梢血中のB細胞に対するDuoBody-CD3×CD20の5回の反復静脈内投与による影響を示す。(A)生理食塩水または0.01、0.1または1mg/kgのDuoBody-CD3×CD20を用いて毎週5回静脈内投与した雌カニクイザルの末梢血中の各投与群毎の経時的な平均B細胞数(CD45
+CD4
-CD8
-CD16
-CD19
+細胞)。(B)投与前のB細胞数に対する投与群毎の平均B細胞数の割合。B細胞数はゲート化リンパ球に対する割合(%)で示す。
【0033】
【
図13】
図13は、雄カニクイザルの末梢血中のB細胞に対するDuoBody-CD3×CD20の単回の静脈内注入による影響を示す。(A)生理食塩水または0.1または1mg/kgのDuoBody-CD3×CD20を用いて単回静脈内注入した雄カニクイザルの末梢血中の各投与群毎の経時的な平均B細胞数(CD45
+CD4
-CD8
-CD16
-CD19
+細胞)。(B)投与前のB細胞数に対する投与群毎の平均B細胞数の割合。B細胞数はゲート化リンパ球に対する割合(%)で示す。
【0034】
【
図14】
図14は、雌カニクイザルの末梢血中のB細胞に対するDuoBody-CD3×CD20の単回の静脈内注入による影響を示す。(A)生理食塩水または0.1または1mg/kgのDuoBody-CD3×CD20を用いて単回静脈内注入した雌カニクイザルの末梢血中の各投与群毎の経時的な平均B細胞数(CD45
+CD4
-CD8
-CD16
-CD19
+細胞)。(B)投与前のB細胞数に対する投与群毎の平均B細胞数の割合。B細胞数はゲート化リンパ球に対する割合(%)で示す。
【0035】
【
図15】
図15は、雄カニクイザルの末梢血中のB細胞に対するDuoBody-CD3×CD20のSC投与による影響を示す。(A)生理食塩水または0.1、1又は10mg/kgのDuoBody-CD3×CD20を用いてSC投与した雄カニクイザルの末梢血中の各投与群毎の経時的な平均B細胞数(CD45
+CD4
-CD8
-CD16
-CD19
+細胞)。(B)投与前のB細胞数に対する投与群毎の平均B細胞数の割合。B細胞数はゲート化リンパ球に対する割合(%)で示す。
【0036】
【
図16】
図16は、雌カニクイザルの末梢血中のB細胞に対するDuoBody-CD3×CD20のSC投与による影響を示す。(A)生理食塩水または0.1、1又は10mg/kgのDuoBody-CD3×CD20を用いてSC投与した雌カニクイザルの末梢血中の各投与群毎の経時的な平均B細胞数(CD45
+CD4
-CD8
-CD16
-CD19
+細胞)。(B)投与前のB細胞数に対する投与群毎の平均B細胞数の割合。B細胞数はゲート化リンパ球に対する割合(%)で示す。
【0037】
【
図17AB】
図17(A)DuoBody-CD3×CD20の静脈内投与後のカニクイザルの個々の血漿中濃度プロファイル。(B)DuoBody-CD3×CD20のSC投与後のカニクイザルにおける個々の血漿中濃度プロファイル。DuoBody-CD3×CD20の血漿中濃度プロファイルは、DuoBody-CD3×CD20を0.01、0.1、1、10または20mg/kgの用量でSC単回注射後に測定した。
【
図17C】
図17(C)カニクイザルの静脈内注入または皮下注射後の群平均血漿中濃度プロファイル。
【発明を実施するための形態】
【0038】
定義
「免疫グロブリン」という用語は、2組のポリペプチド鎖、1組の軽(L)低分子量鎖と1組
の重(H)鎖からなる、これら4つすべての鎖がジスルフィド結合によって相互接続されて
いる構造的に関連する糖タンパク質のクラスを指す。免疫グロブリンの構造は十分に特徴
付けられている。例えば、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W., ed. , 2nd ed. Ra
ven Press, N.Y. (1989))参照。簡単に言えば、各重鎖は通常、重鎖可変領域(本明細書
ではVHまたはVHと略される)及び重鎖定常領域(本明細書ではCHまたはCHと略される)で
構成される。重鎖定常領域は通常、CH1、CH2、CH3の3つのドメインで構成される。ヒンジ
領域は、重鎖のCH1ドメインとCH2ドメインの間の領域であり、高度にフレキシブルである
。ヒンジ領域のジスルフィド結合は、IgG分子にある2つの重鎖間の相互作用の一部である
。各軽鎖は、通常、軽鎖可変領域(本明細書ではVLまたはVLと省略)と軽鎖定常領域(こ
こではCLまたはCLと省略)で構成される。軽鎖定常領域は通常、1つのドメインCLで構成
される。VH及びVL領域は、超可変性の領域(構造的に定義されたループの配列及び/また
は形式で超可変であってもよい超可変領域)にさらに細分化され、相補性決定領域(CDR
)とも呼され、フレームワーク領域(FR)と呼されるより保存された領域が点在する。各
VHとVLは通常、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に
次の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(Chothia and Lesk J.
Mol. Biol. 196, 901-917 (1987)も参照)。特に明記されていない又は文脈と矛盾しない
限り、本明細書においてCDR配列はIMGT規則に従って識別される(Brochet X., Nucl Acid
s Res. 2008;36: W503-508 and Lefranc MP., Nucleic Acids Research 1999;27:209-212
; internet http address http://www.imgt.org/も参照)。特に明記されていない又は文
脈と矛盾しない限り、本発明において定常領域におけるアミノ酸位置を指す場合EUナンバ
リングに準ずる(Edelman et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1969 May;63(1):78-85;
Kabat et al., sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. 19
91 NIH Publication No. 91-3242)。例えば、本明細書の配列番号15は、IgG1重鎖定常領
域のEUナンバリングによるアミノ酸118~447位を示す。
【0039】
本明細書で使用される「…位置に対応するアミノ酸」という用語は、ヒトIgG1重鎖にお
けるアミノ酸位置番号を指す。他の免疫グロブリンにおける対応するアミノ酸位置は、ヒ
トIgG1とのアラインメントによって見出すことができる。したがって、別の配列のアミノ
酸またはセグメントに「対応する」一配列のアミノ酸またはセグメントは、標準的な配列
アラインメントプログラム、例えばALIGN、ClustalW又は類似の、通常はデフォルト設定
のものなどを使用して、他のアミノ酸またはセグメントとアラインされるものであり、ヒ
トIgG1重鎖に対して少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも
95%の同一性を有する。配列または配列中のセグメントをアラインさせ、それにより本発
明に係るアミノ酸位置に対する配列内の対応する位置を決定する方法は、当技術分野で周
知であると考えられている。
【0040】
本発明の文脈における用語「抗体」(Ab)は、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分
子のフラグメント、またはそれらのいずれかの誘導体を指し、典型的な生理学的条件下で
かなりの期間、えば少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なく
とも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間
以上、約48時間以上、約3、4、5、6、7日間又はそれ以上等、あるいはその他の関連する
機能的に定義された期間(例えば、抗体が抗原に結合することに関連する生理学的応答を
誘導、促進、増強、及び/または調節するのに十分な時間、及び/または抗体がエフェクタ
ー活性を回復するのに十分な時間など)の半減期をもって、抗原に特異的に結合する能力
を有する。免疫グロブリン分子の重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ド
メインを含む。本明細書で使用する「抗体結合領域」という用語は、抗原と相互作用し、
VH領域とVL領域の両方を含む領域を指す。本明細書で使用される場合、抗体という用語は
、単一特異性抗体だけでなく、複数、例えば2つ以上、例えば、3つ以上、の異なる抗原結
合領域を含む多重特異性抗体も含む。抗体(Abs)の定常領域は、免疫系のさまざまな細
胞(エフェクター細胞など)及び補体系の構成要素、例えばC1q、つまり、補体活性化の
古典的な経路の最初の構成要素を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合に
介在することがある。上記のように、本明細書における抗体という用語は、別段の記載ま
たは文脈に対し明らかに矛盾しない限り、抗原結合断片である、すなわち、抗原に特異的
に結合する能力を保持する抗体の断片を含む。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片
によって実行される場合があることが示されている。「抗体」という用語に含まれる抗原
結合断片の例として、以下のものが挙げられる:(i)Fab’またはFab断片、VL、VH、CL
及びCH1ドメインからなる一価の断片、またはWO2007059782に記載されている一価の抗体
(Genmab);(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド橋によって連結された2
つのFab断片を含む二価の断片;(iii)VHとCH1ドメインで本質的に構成されるFd断片;
(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインから本質的になるFv断片;(v)VHドメイン
から本質的になる(Holt et al; Trends Biotechnol. 2003 Nov;21(11):484-90)dAb断片
(Ward et al., Nature 341, 544-546 (1989))、ドメイン抗体とも称される;(vi)ラ
クダ抗体またはナノボディ(Revets et al; Expert Opin Biol Ther. 2005 Jan;5(1):111
-24);並びに、(vii)単離相補性決定領域(CDR)。さらに、Fv断片の2つのドメインVL
とVHは別々の遺伝子によってコードされるが、組み換え法を使用して、それらを合成リン
カーによって結合し、VLとVHの領域が対になって一価の分子を形成する単一のタンパク質
鎖として作成できるようにできようにしてもよい(一本鎖抗体または一本鎖Fv(scFv)と
して知られている、例えば、Bird et al., Science 242, 423-426 (1988)及びHuston et
al., PNAS USA 85, 5879-5883 (1988)参照)。そのような一本鎖抗体は、別段の記載がな
い限り、または文脈によって明確に示されていない限り、抗体という用語に含まれる。そ
のような断片は一般的に抗体の意味の中に含まれるが、集合的であるがそれぞれ独立して
おり、本発明のユニークな特徴であり、異なる生物学的特性と有用性を示す。本発明の文
脈におけるこれら及び他の有用な抗体断片、ならびにそのような断片の二重特異性フォー
マットは、本明細書でさらに議論される。抗体という用語は、特に明記しない限り、既知
の技術、例えば酵素的切断、ペプチド合成、及び組換え技術によって提供されるポリクロ
ーナル抗体、モノクローナル抗体(mAbs)、抗体様ポリペプチド、キメラ抗体、ヒト化抗
体、及び抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体断片(抗原結合断片)も含むことも
理解されたい。生成された抗体は、任意のアイソタイプを有ることができる。本明細書で
使用される場合、「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードさ
れる免疫グロブリンのクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、又はI
gM)を指す。本明細書で特定のアイソタイプ、たとえばIgG1について述べる場合、この用
語は特定のアイソタイプ配列、例えば特定のIgG1配列に限定されず、その抗体が配列内で
他のアイソタイプよりも該アイソタイプ、例えばIgG1に近いことを示すために使用される
。したがって、例えば本発明のIgG1抗体は、定常領域のバリエーションを含む、天然に存
在するIgG1抗体の配列変異体であってもよい。
【0041】
モノクローナル抗体組成物は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナ
ル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。そのた
め、用語「ヒトモノクローナル抗体」とはヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可
変領域及び定常領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を指す。ヒトモノクローナル抗
体は、ヒト重鎖トランスジーン及び軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有し、トランスジ
ェニックマウスなどのトランスジェニックまたはトランスクロモソーム非ヒト動物から得
られたB細胞を不死化細胞に融合させたハイブリドーマによって生成することができる。
【0042】
本発明の文脈における用語「二重特異性抗体」または「bs」または「bsAb」は、異なる
抗体配列によって規定される2つの異なる抗原結合領域を有する抗体を指す。二重特異性
抗体は、任意の形式のものであり得る。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「半分子」、「Fab-アーム」及び「アーム」とは、1つ
の重鎖-軽鎖のペアを指す。
【0044】
二重特異性抗体が第1の抗体に「由来する」半分子抗体及び第2の抗体に「由来する」半
分子抗体を含むと記載される場合、用語「由来する」は、その二重特異性抗体が、前記第
1及び第2の抗体のそれぞれから得られる半分子を用いて、任意の公知の方法により二重特
異性抗体に組換られて生成された二重特異性抗体であることを示す。この文脈において、
「組換え」とはいかなる特定の組換えの方法によって限定されるという意図ではなく、し
たがって、例えば、半分子交換(「制御されたFabアーム交換」としても知られる)によ
る組換え、ならびに核酸レベルでの組換え、及び/または同じ細胞における2つの半分子の
同時発現による組換えを含む、本明細書中以下に記載される二重特異性抗体を生成するた
めの方法のすべてを含む。
【0045】
用語「一価抗体」は本発明の文脈において、抗体分子が抗原の単一分子に結合すること
ができ、したがって抗原または細胞をかけ渡すことができないことを意味する。
【0046】
用語「全長」は抗体の文脈において使用される場合、その抗体が断片ではなく、天然の
そのアイソタイプについて通常見出られる特定のアイソタイプのドメインの全て(例えば
、IgG1抗体の場合、VH、CH1、CH2、CH3、ヒンジ、VL及びCLドメイン)を含むことを示す
。
【0047】
本明細書中で使用される場合、文脈によって矛盾しない限り、用語「Fc領域」は免疫グ
ロブリンの2つの重鎖のFc配列からなる抗体領域をいい、ここで、該Fc配列は、少なくと
もヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む。
【0048】
本明細書中で使用される場合、用語「第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロダイ
マー相互作用」は、第1のCH3と第2のCH3のヘテロダイマータンパク質における第1のCH3領
域と第2のCH3領域との間の相互作用をいう。
【0049】
本明細書中で使用される場合、用語「第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のホモダイマ
ー相互作用」は、第1のCH3と第2のCH3のホモダイマータンパク質における第1のCH3領域と
第2のCH3領域との間の相互作用、並びに第2のCH3/第2のCH3ホモダイマータンパク質にお
ける第2のCH3領域と別の第2のCH3領域との間の相互作用をいう。
【0050】
本明細書中で使用されるように、所定の抗原に対する抗体の結合の文脈において用語「
結合」は典型的には、例えば、リガンドとして抗体及び分析物として抗原を使用するOcte
t HTX機器においてBIL(BioLayer Interferometry)技術によって決定される場合、例え
ば約10-6M以下、例えば10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以
下、又は約10-11M又は更にそれ以下のKDに対応する親和性を有する結合であり、ここで、
抗体は所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイ
ン)に対する結合のKDよりも、少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例え
ば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍
低い親和性で所定の抗原に結合する。抗体のKDが非常に低くなるようにその抗体のKDに依
存して結合のKDの量が低くなる場合、抗原への結合のKDが非特異的抗原への結合のKDより
も低くなる量は少なくとも10,000倍であり得る(すなわち、抗体は高度に特異的である)
。本明細書で使用される用語「KD」(M)は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を
指す。本明細書で使用される用語、親和性、及びKDは逆相関している。つまり、親和性が
高いということはKDが低いという意図であり、親和性が低いとKDが高いという意図である
。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明の抗体は単離されたものである。本明細書中で使用され
る「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を
指す意図である。好ましい実施形態において、CD20及びCD3に特異的に結合する単離され
た二重特異性抗体は、さらに、CD20またはCD3に特異的に結合する単一特異性抗体を実質
的に含まない。
【0052】
本明細書中で使用される用語「CD3」はT細胞共受容体タンパク質複合体の一部であり、
4つの異なる鎖から構成されるヒト分化3クラスタータンパク質を指す。CD3はまた、他の
種においてもみされ、したがって、用語「CD3」は文脈によって矛盾しない限り、ヒトCD3
に限定されない。哺乳類では、この複合体はCD3γ(ガンマ)鎖(ヒトCD3γ鎖UniProtKB/
Swiss-Prot No P09693、またはカニクイザルCD3γ UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI7)
、CD3δ(デルタ)鎖(ヒトCD3δ UniProtKB/Swiss-Prot No P04234またはカニクイザルC
D3δKB/Swiss-Prot No Q95LI8)、2つのCD3ε(イプシロン)鎖(ヒトCD3ε UniProtKB/
Swiss-Prot No P07766;カニクイザルCD3ε-UniProt No Q95LI5;またはアカゲザルCD3
ε UniProtKB/Swiss-Prot No G7NCB9)、及びCD3ζ(ゼータ)-鎖(ヒトCD3ζ UniProt
KB/Swiss-Prot No P20963、カニクイザルCD3ζ UniProt KB/Swiss-Prot No Q09TK0)を
含む。これらの鎖はT細胞受容体(TCR)として知られる分子と結合し、Tリンパ球で活性
化シグナルを発生させる。TCR及びCD3分子は一緒になってTCR複合体を構成する。
【0053】
「CD3抗体」または「抗CD3抗体」は、抗原CD3、特にヒトCD3ε(イプシロン)に特異的
に結合する抗体である。
【0054】
用語「ヒトCD20」または「CD20」はヒトCD20(UniProtKB/Swiss-Prot No P11836)を
指し、腫瘍細胞を含む細胞によって自然に発現されるか、またはCD20遺伝子またはcDNAを
トランスフェクトされた細胞上に発現されるCD20の任意のバリアント、アイソフォーム及
び種ホモログを含む。種ホモログには、アカゲザルCD20(macaca mulatta;UniProtKB/Sw
iss-Prot No H9YXP1)及びカニクイザルCD20(macaca fascicularis;UniProtKB No G7P
Q03)が含まれる。
【0055】
「CD20抗体」または「抗CD20抗体」は、抗原CD20、特にヒトCD20に特異的に結合する抗
体である。
【0056】
「CD3×CD20抗体」、「抗CD3×CD20抗体」、「CD20×CD3抗体」または「抗CD20×CD3抗
体」は2つの異なる抗原結合領域を含む二重特異性抗体であり、そのうちの1つは抗原CD20
に特異的に結合し、そのうちの1つはCD3に特異的に結合する。
【0057】
本明細書中で使用される場合、用語「DuoBody-CD3×CD20」はIgG1二重特異性CD3×CD20
抗体を指し、ここで、CD3結合Fabアームはそれぞれ配列番号6及び7に定義されるようなVH
及びVL配列、配列番号22に定義されるような定常軽鎖配列、及び配列番号19に定義される
ような定常重鎖配列(FEAL)を含み、CD20結合Fabアームは、それぞれ配列番号13及び14
のVH及びVL配列、配列番号23に定義されるような定常軽鎖配列、ならびに配列番号20に定
義されるような定常重鎖配列(FEAR)を含む。この二重特異性抗体は、WO2016/110576に
記載されるように調製できる。
【0058】
好ましい実施形態において、本発明の二重特異性抗体は単離されたものである。本明細
書で使用される「単離された二重特異性抗体」は異なる抗原特異性を有する他の抗体を実
質的に含まない二重特異性抗体を指す意図である(例えば、CD20及びCD3に特異的に結合
する単離された二重特異性抗体は、CD20またはCD3に特異的に結合する単一特異性抗体を
実質的に含まない)。
【0059】
本発明はまた、実施例の抗体のVL領域、VH領域、または1つ以上のCDRの機能的変異体を
含む抗体を提供する。抗体の文脈において使用されるVL、VH、またはCDRの機能的変異体
は依然として、抗体が「基準」または「親」抗体の親和性及び/または特異性/選択性の少
なくとも実質的な割合(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ
以上)を保持可能にし、いくつかの場合において、このような抗体は親抗体よりも高い親
和性、選択性、及び/または特異性と関連することがある。
【0060】
このような機能的変異体は、典型的には親抗体に対し顕著な配列同一性を保持する。2
つの配列間の同一性の割合パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導
入する必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮して、アラインする配列同士
における同一の位置の数の関数(すなわち、%相同性=同一位置の数/位置の合計数×100
)である。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントは例えば、PAM12
0重量残基表、12のギャップ長ペナルティー及び4のギャップペナルティーを使用して、AL
IGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. Meyers and W. Miller, Comput.
Appl. Biosci 4, 11-17 (1988)のアルゴリズムを使用して決定され得る。さらに、2つの
アミノ酸配列間の同一性パーセントは、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48, 444-
453 (1970)のアルゴリズムを使用して決定され得る。
【0061】
例示的な変異体には、主に保存的置換によって親抗体配列のVH及び/またはVL及び/また
はCDR領域とは異なるものが含まれ、例えば、変異体における置換の9、8、7、6、5、4、3
、2または1などの10個が保存的アミノ酸残基置換である。
【0062】
本発明の文脈において、保存的置換は、以下の表に反映されるアミノ酸のクラスにおけ
る置換によって定義してもよい:
【0063】
【化1】
本発明の文脈において、以下の表記は、特に明記しない限り、以下の突然変異を指すた
めに使用される;i)ある位置におけるアミノ酸の置換は、例えば、K409Rと表記され、40
9位におけるリジンからアルギニンへの置換を意味する;ii)特定のバリアントには、ア
ミノ酸残基を示すコードXaa及びXを含む、特定の3文字または1文字コードが使用される。
したがって、409位におけるリジンからアルギニンへの置換はK409Rと示され、409位にお
けるリジンから任意のアミノ酸残基への置換はK409Xと示される。409位のリジンの欠失の
場合、K409
*で示される。
【0064】
本発明の文脈において、「競合」(または「ブロッキング」または「クロスブロッキン
グ」)は、結合パートナーに結合する別の分子の存在下で、特定の分子が特定の結合パー
トナーに結合する傾向の大幅な低減を指す。2つ以上の抗CD20抗体によるCD20への結合の
競合は、任意の適切な技術によって決定され得る。
【0065】
用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味
する。エピトープは通常、例えばアミノ酸または糖側鎖などの分子の表面グループからな
り、通常、特定の三次元構造特性、ならびに特定の電荷特性を有する。コンホメーション
及び非コンホメーションエピトープは、変性溶媒の存在下で前者への結合は失われるが後
者への結合は失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミ
ノ酸残基及び結合に直接関与しない他のアミノ酸残基(例えば、特異的抗原結合ペプチド
によって効果的にブロックまたはカバーされるアミノ酸残基)を含んでもよい(換言すれ
ば、これらのアミノ酸残基は、特異的抗原結合ペプチドのフットプリント内にある)。
【0066】
本明細書で使用する用語「キメラ抗体」は、可変領域が非ヒト種に由来(例えば、げっ
歯類に由来)し、定常領域がヒトなどの異なる種に由来する抗体を指す。治療用途のため
のキメラモノクローナル抗体は、抗体免疫原性を低下させるために開発されている。キメ
ラ抗体の文脈で使用する用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、免疫グロブリンの
重鎖及び軽鎖の両方のCDR及びフレームワーク領域を含む領域を指す。キメラ抗体は、Sam
brook et al., 1989, Molecular Cloning: A laboratory Manual, New York: Cold Sprin
g Harbor Laboratory Press, Ch. 15に記載されるような標準的なDNA技術を使用すること
によって生成してもよい。キメラ抗体は、遺伝的または酵素的に操作された組換え抗体で
あってもよい。キメラ抗体を生成することは当業者の知識の範囲内であり、したがって、
本発明に係るキメラ抗体の生成は本明細書に記載される以外の方法によって実施されても
よい。
【0067】
本明細書で使用される用語「ヒト化抗体」は、ヒト抗体定常ドメイン、並びにヒト可変
ドメインに対して高レベルの配列相同性を含むように改変された非ヒト可変ドメインを含
む、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、一緒になって抗原結合部位を形成する
6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を、相同ヒトアクセプターフレームワーク領域(
FR)上にグラフトすることによって達成できる(WO92/22653及びEP0629240を参照)。親
抗体の結合親和性及び特異性を完全に再構成するために、親抗体(すなわち、非ヒト抗体
)からヒトフレームワーク領域へのフレームワーク残基の置換(復帰突然変異)が必要と
なることがある。構造相同性モデリングが、抗体の結合特性に重要なフレームワーク領域
中のアミノ酸残基を同定するのに役立つことがある。従って、ヒト化抗体は非ヒトCDR配
列、主に、非ヒトアミノ酸配列への1つ以上のアミノ酸復帰突然変異を場合により含むヒ
トフレームワーク領域、及び完全ヒト定常領域を含んでもよい。場合により、必ずしも復
帰突然変異ではない追加のアミノ酸修飾を適用して、親和性及び生化学的特性などの好ま
しい特性を有するヒト化抗体を得てもよい。
【0068】
「ヒト抗体」とはヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を
有する抗体を指す。ヒト抗体にはヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされてい
ないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダム又は部位特異的突然変異誘発により又
はin vivoでの体細胞突然変異により導入される突然変異)が含まれる場合もある。しか
し、本明細書で用いる用語「ヒト抗体」はマウスのような別の哺乳動物種の生殖系列に由
来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を含むことを意図するも
のではない。本発明のヒトモノクローナル抗体は従来のモノクローナル抗体法(例えば、
the standard somatic cell hybridization technique of Kohler and Milstein, Nature
256: 495 (1975))を含む種々の技術によって産生され得る。体細胞ハイブリダイゼーシ
ョン手順が好ましいが、原則として、モノクローナル抗体を産生するための他の技術(例
えば、Bリンパ球のウイルス性または発癌性の形質転換、またはヒト抗体遺伝子のライブ
ラリーを使用するファージディスプレイ技術)も使用できる。ヒトモノクローナル抗体を
分泌するハイブリドーマを調製するための適切な動物系はマウス系である。マウスにおけ
るハイブリドーマ産生は、非常によく確立された手順である。融合のための免疫化脾細胞
の単離のための免疫化プロトコル及び技術は、該分野で公知である。融合パートナー(例
えば、マウス骨髄腫細胞)及び融合手順もまた公知である。したがって、ヒトモノクロー
ナル抗体は例えば、マウスまたはラット系ではなくヒト免疫系の一部を保有するトランス
ジェニックまたはトランスクロモソームマウスまたはラットを用いて生成することができ
る。従って、1つの実施形態において、ヒト抗体は動物免疫グロブリン配列の代わりにヒ
ト生殖系列免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物(例えば、マウスまたは
ラット)から得られる。このような実施形態において、抗体は動物に導入されたヒト生殖
系列免疫グロブリン配列に由来するが、最終的な抗体配列は上記ヒト生殖系列免疫グロブ
リン配列が体細胞超変異及び内因性動物抗体機構による親和性成熟によってさらに改変さ
れた結果である(例えば、Mendez et al. 1997 Nat Genet. 15(2):146-56を参照のこと)
。「還元条件」または「還元環境」という用語は、基板、本明細書では抗体のヒンジ領域
のシステイン残基が酸化されるよりも還元される可能性が高い条件または環境を指す。
【0069】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は本明細書中で使用される場合、
発現ベクター(例えば、本発明の抗体をコードする発現ベクター)が導入された細胞を指
す意図である。組換え宿主細胞としては、例えば、トランスフェクトーマ(例えば、CHO
、CHO-S、HEK、HEK293、HEK-293F、Expi293F、PER.C6またはNSO細胞)、及びリンパ球細
胞が挙げられる。
【0070】
「治療」という用語は、症状または疾患状態を緩和、改善、停止または根絶(治癒)す
る目的で、本発明の治療的に活性な抗体を有効量投与することを指す。
【0071】
用語「有効量」または「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために必要な投与
量及び期間で有効な量をいう。抗体の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び
体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力などの因子によって変わり
得る。治療上有効な量はまた、抗体または抗体部分の任意の毒性または有害な効果が、治
療上有益な効果を下回る量である。
【0072】
本明細書中で使用される用語「緩衝剤」は医薬的に許容される緩衝剤を示す。用語「緩
衝剤」は溶液のpH値を、例えば、許容される範囲に維持する薬剤を包含し、限定されない
が、酢酸、ヒスチジン、TRIS(登録商標)(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)
、シトレート、スクシネート、グリコレートなどを含む。一般に、本明細書中で使用され
る「緩衝剤」は約5~約6、好ましくは約5.5のpH範囲に適したpKa及び緩衝能を有する。
【0073】
本明細書で使用される「界面活性剤」は、表面への薬物の吸着及び/または凝集を防止
するために医薬製剤において典型的に使用される化合物である。さらに、界面活性剤は、
2つの液体間または液体と固体との間の表面張力(または界面張力)を低下させる。例え
ば、例示的な界面活性剤は非常に低い濃度(例えば、5%w/w以下、例えば、3%w/w以下、
例えば、1%w/w以下)で存在する場合、表面張力を著しく低下させることができる。界面
活性剤は両親媒性(つまり、通常、親水性基及び疎水性基または親油性基の両方から構成
される)であり、したがって、水溶液中でミセルまたは同様の自己集合構造を形成するこ
とができることを意味する。医薬用途に公知の界面活性剤として、モノオレイン酸グリセ
ロール、塩化ベンゼトニウム、ドクセートナトリウム、リン脂質、ポリエチレンアルキル
エーテル、ラウリル硫酸ナトリウム及びトリカプリリン(アニオン性界面活性剤);塩化
ベンザルコニウム、シトリミド、塩化セチルピリジニウム及びリン脂質(カチオン性界面
活性剤);ならびにαトコフェロール、モノオレイン酸グリセロール、ミリスチルアルコ
ール、リン脂質、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチ
レンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン
ステアレート、ポリオキシルヒドロキシステアレート、ポリオキシルグリセリド、ポリソ
ルベート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、
ソルビタンエステル、パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、トリカプリリ
ン及びTPGS(非イオン性及び双性イオン性界面活性剤)が挙げられる。
【0074】
本明細書における対象である「希釈剤」は医薬的に許容される(ヒトへの投与のために
安全かつ非毒性である)ものであり、医薬組成物の希釈物の調製のために有用であるもの
である。好ましくは本発明の組成物のこのような希釈物は抗体濃度のみを希釈するが、緩
衝剤及び安定剤は希釈しない。従って、好ましい態様において、希釈剤は、本発明の医薬
組成物中に存在するのと同じ濃度の緩衝剤及び安定剤を含有する。更なる例示的な希釈剤
として、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、好ましくは酢酸緩衝剤であるpH緩衝剤、滅菌生
理食塩水、リンゲル液またはデキストロース溶液が挙げられる。好ましい実施形態におい
て、希釈剤は、酢酸緩衝剤及びソルビトールを含むか、またはそれらから本質的になる。
【0075】
用語「医薬組成物」及び「医薬製剤」は、本明細書において互換的に使用される。
【0076】
発明の特定の実施形態
主な態様において、本発明は以下を含む医薬組成物を提供する:
a. 約50~約120mg/mLのヒトCD3及びヒトCD20へ結合する二重特異性抗体、
b. 約20~約40mMの酢酸、
c. 約140~約160mMのソルビトール
ここで、組成物のpHは約5~約6であり、二重特異性抗体は以下のCDR配列を含むヒトCD3に
結合する第1結合領域:VH-CDR1:配列番号1、VH-CDR2:配列番号2、VH-CDR3:配列番
号3、VL-CDR1:配列番号4、VL-CDR2:GTN、及びVL-CDR3:配列番号5、並びに、以下の
CDR配列を含むヒトCD20に結合する第2結合領域:VH-CDR1:配列番号8、VH-CDR2:配列
番号9、VH-CDR3:配列番号10、VL-CDR1:配列番号11、VL-CDR2:DAS、及びVL-CDR3:
配列番号12を含む。
【0077】
別の態様では、本発明は以下から本質的になる医薬組成物を提供する:
a. 約50~約120mg/mLのヒトCD3及びヒトCD20へ結合する二重特異性抗体、
b. 約20~約40mMの酢酸、
c. 約140~約160mMのソルビトール
ここで、組成物のpHは約5~約6であり、二重特異性抗体は、以下のCDR配列を含むヒトCD3
に結合する第1結合領域:VH-CDR1:配列番号1、VH-CDR2:配列番号2、VH-CDR3:配列
番号3、VL-CDR1:配列番号4、VL-CDR2:GTN、及びVL-CDR3:配列番号5、並びに、以下
のCDR配列を含むヒトCD20に結合する第2結合領域:VH-CDR1:配列番号8、VH-CDR2:配
列番号9、VH-CDR3:配列番号10、VL-CDR1:配列番号11、VL-CDR2:DAS、及びVL-CDR3
:配列番号12を含む。これにより、シンプルでありながら安定した医薬組成物が提供され
る。本発明の利点は、該組成物が静脈内投与及び皮下投与の両方に適していることである
。更なる利点としては、組成物中の抗体濃度が、約4μg/mL程の低い濃度から120mg/mL程
の高い濃度まで、またはそれ以上の高い濃度まで変化するような臨床試験の第I相用量漸
増試験に同じ製剤が使用できるように、そして、同じ組成物を臨床試験の後の段階に、さ
らには最終的には市販の製剤に使用することができるように、組成物が安定していること
、特に二重特異性抗体が広範囲の抗体濃度にわたって安定していることである。そのよう
な製剤が、2℃から25℃まで変化する温度またはさらに高い温度で、そのような広範囲の
抗体濃度にわたって安定であることは驚くべきことである。本発明の組成物は、2℃~8℃
の間で保存される場合、少なくとも3月、例えば少なくとも6月、さらには、少なくとも9
月又は少なくとも12月安定である。
【0078】
本発明の組成物の1実施形態では、CD3に結合する二重特異性抗体の第1結合領域は配列
番号6及び7のVH及びVL配列を含む。
【0079】
本発明の組成物の更なる実施形態では、CD20に結合する二重特異性抗体の第2結合領域
は配列番号13及び14のVH及びVL配列を含む。
【0080】
本発明の医薬組成物の更なる実施形態では、二重特異性抗体はDuoBody-CD3×CD20であ
る。
【0081】
本発明の組成物の好ましい実施形態では、二重特異性抗体はIgG1抗体である。しかしな
がら、二重特異性抗体は、代わりにIgG2、IgG3又はIgG4抗体アイソタイプ又はIgG1、IgG2
、IgG3又はIgG4の組み合わせであってもよい。例えば、第1重鎖はIgG1アイソタイプであ
り、第2重鎖はIgG4アイソタイプであり得る。
【0082】
本発明の組成物のさらなる実施形態では、二重特異性抗体は第1及び第2の重鎖を含むFc
領域を含み、前記Fc領域は野生型IgG1 Fc領域を含む二重特異性抗体と比較してエフェク
ター機能が低くなるように改変されている。ここで、二重特異性抗体は、ヒトFcガンマ受
容体及びヒト補体成分C1qに結合する能力が低いため、結果、抗体依存性細胞介在性細胞
傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞介在性食作用(ADCP)及び補体依存性細胞傷害性(CDC
)のようなFc介在性エフェクター機能を誘導する能力が低い。従って、エフェクター機能
が低下した本発明の二重特異性抗体は、CD20発現細胞の存在下でT細胞のみを活性化する
。言い換えれば、このような二重特異性抗体は、抗体介在性のFcR依存性CD3架橋及びその
後の標的非依存性T細胞活性化を誘導しない。
【0083】
本発明の医薬組成物の別の実施形態では、二重特異性抗体は、該抗体に対するC1qの結
合が野生型IgG1 Fc領域を含む二重特異性抗体と比較して少なくとも70%、少なくとも80
%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は100%低くなるように改変
されたFc領域を含み、ここでC1qの結合はELISAにより決定される。
【0084】
本明細書に記載の二重特異性抗体は、例えばWO2011/131746及びLabrijn AF et al., (2
013) PNAS 110(13): 5145-5150に記載のDuoBody(登録商標)技術プラットフォーム(Gen
mab A/S)に従って生成することができる。DuoBody技術は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含
む第1の単一特異性抗体の半分を、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む第2の単一特異性抗体の
半分と組み合わせるために使用できる。得られたヘテロダイマーでは第1の抗体由来の1つ
の重鎖及び1つの軽鎖が第2の抗体由来の1つの重鎖及び1つの軽鎖と対になっている。第1
及び第2の単一特異性抗体がCD3及びCD20といった異なる抗原上の異なるエピトープを認識
する場合、得られるヘテロダイマーは、CD3及びCD20に対する二重特異性抗体である。
【0085】
DuoBodyテクノロジーでは、単一特異性抗体のそれぞれが、CH3ドメインに単一の点変異
がある重鎖定常領域を含む必要がある。点突然変異により、単一特異性抗体のいずれかに
おけるCH3ドメイン間よりも、得られる二重特異性抗体におけるCH3ドメイン間のほうが強
い相互作用になることが可能になる。各単一特異性抗体における単一の点変異は、たとえ
ばWO2011/131746に記載されているように、ナンバリングにEUインデックスを使用すると
、重鎖定常領域のCH3ドメインにおける残基366、368、370、399、405、407、または409に
ある。さらに、単一の点変異は、1つの単一特異性抗体において他の単一特異性抗体とは
異なる残基に位置する。例えば、1つの単一特異性抗体は、変異F405L(すなわち、残基40
5におけるフェニルアラニンからロイシンへの変異)を含んでもよく、他の単一特異性抗
体は変異K409R(すなわち、残基409におけるリジンからアルギニンへの変異)を含んでも
よい。単一特異性抗体の重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプ(
例えば、ヒトIgG1アイソタイプ)であり、DuoBodyテクノロジーによって生成される二重
特異性抗体は、Fc介在性エフェクター機能を保持してもよく、あるいはFc領域が、本明細
書に記載するFc介在性エフェクター機能を低減するようにさらに変異されていてもよい。
【0086】
したがって、本発明の医薬組成物の別の実施形態では、二重特異性抗体は、それぞれ少
なくともヒンジ領域、CH2及びCH3領域を含む第1及び第2重鎖を含み、ここで前記第1重鎖
においてヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、及びK409からなる
群より選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸の少なくとも1つが置換されてお
り、かつ前記第2重鎖においてヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y40
7、及びK409(EUナンバリングシステムに準ずる)からなる群より選択される位置に対応
する位置におけるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、かつ前記第1及び第2重鎖
は同じ位置において置換されていない。
【0087】
本発明の医薬組成物のさらに別の実施形態では、(i)前記第1重鎖においてヒトIgG1重
鎖におけるF405に対応する位置におけるアミノ酸はLにより置換され、かつ前記第2重鎖に
おいてヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置におけるアミノ酸はRにより置換される
か、又は、(ii)前記第1重鎖においてヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置におけ
るアミノ酸はRであり、かつ前記第2重鎖においてヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位
置におけるアミノ酸はLである。
【0088】
1実施形態では、本発明の医薬組成物の二重特異性抗体は、該二重特異性抗体の第1定常
重鎖と第2定常重鎖の両方が、ヒトIgG1重鎖における位置L234とL235(EUインデックスナ
ンバリング)に対応する位置においてさらに置換され、L234がFにより置換され(L234F)
、L235がEで置換される(L235E)ようにしてもよい。これにより、抗体のFc介在性エフェ
クター機能が低下する。
【0089】
更なる実施形態では、医薬組成物の二重特異性抗体は、該二重特異性抗体の第1定常重
鎖と第2定常重鎖の両方が、ヒトIgG1重鎖におけるD265に対応する位置においてさらに置
換され、D265がAにより置換される(D265A)ようにしてもよい。
【0090】
別の実施形態では、医薬組成物の二重特異性抗体は、二重特異性抗体の第1及び第2定常
重鎖の両方において3つの置換L234F+L235E+D265Aを含む。
【0091】
別の実施形態では、医薬組成物の二重特異性抗体は、二重特異性抗体の第1及び第2定常
重鎖の両方において3つの置換L234F+L235E+D265Aを含み、並びに、第1定常重鎖がF405L
の置換を更に含みかつ第2定常重鎖がK409R置換を更に含むかあるいはその逆である。した
がって、第1定常重鎖がL234F+L235E+D265A+F405Lの置換(本明細書では“FEAL”変異
とも称される)を含みかつ第2定常重鎖がL234F+L235E+D265A+K409Rの置換(本明細書
では“FEAR”変異とも称される)を含むか、あるいは、第1定常重鎖がL234F+L235E+D26
5A+K409Rの置換を含みかつ第2定常重鎖がL234F+L235E+D265A+F405Lの置換を含む。好
ましい実施形態では、二重特異性抗体の第1及び第2定常重鎖はアイソタイプのものである
がそれぞれL234F+L235E+D265A+F405L置換及びL234F+L235E+D265A+K409Rの置換を含
む。
【0092】
したがって、本発明の1実施形態では、医薬組成物の二重特異性抗体は、配列番号19の
第1重鎖定常領域及び配列番号20の第2重鎖定常領域を含むか、あるいは配列番号20の第1
重鎖定常領域及び配列番号19の第2重鎖定常領域を含む。別の実施形態では、二重特異性
抗体は、それぞれ配列番号19及び20のアミノ酸配列に対し少なくとも90%の配列同一性、
例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくと
も94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば
少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する重鎖定常領域を含むが、上
述のFEAR及びFEALアミノ酸を含む。
【0093】
組成物の二重特異性抗体の第1及び第2軽鎖は好ましくは第1及び第2軽鎖定常領域を更に
含む。軽鎖定常領域はラムダ又はカッパサブタイプのものであってもよい。本発明の好ま
しい実施形態では、CD3結合アームの軽鎖の定常領域はラムダサブタイプのものであり、C
D20結合アームの軽鎖の定常領域はカッパサブタイプのものである。1実施形態では、CD3
結合アームの軽鎖は配列番号24の配列を有し、かつCD20結合アームの軽鎖は配列番号25の
配列を有する。
【0094】
医薬組成物の二重特異性抗体の濃度は、約1mg/mL~約200mg/mLであってもよい。本発明
の1実施形態では、二重特異性抗体の濃度は、約50~約120mg/mLである。本発明の他の実
施形態では、二重特異性抗体の濃度は、約50~約110mg/mLである。本発明の他の実施形態
では、二重特異性抗体の濃度は、約50~約100mg/mLである。本発明の他の実施形態では、
二重特異性抗体の濃度は、約50~約90mg/mLである。本発明の他の実施形態では、二重特
異性抗体の濃度は、約50~約80mg/mLである。本発明の他の実施形態では、二重特異性抗
体の濃度は、約50~約70mg/mLである。本発明の他の実施形態では、二重特異性抗体の濃
度は、約60mg/mLである。本発明の他の実施形態では、二重特異性抗体の濃度は、約70mg/
mLである。本発明の他の実施形態では、二重特異性抗体の濃度は、約80mg/mLである。本
発明の他の実施形態では、二重特異性抗体の濃度は、約90mg/mLである。本発明の他の実
施形態では、二重特異性抗体の濃度は、約100mg/mLである。本発明の他の実施形態では、
二重特異性抗体の濃度は、約110mg/mLである。本発明の他の実施形態では、二重特異性抗
体の濃度は、約120mg/mLである。本発明の他の実施形態では、二重特異性抗体の濃度は、
約130mg/mLである。本発明の他の実施形態では、二重特異性抗体の濃度は、約140mg/mLで
ある。本発明の他の実施形態では、二重特異性抗体の濃度は、約150mg/mLである。
【0095】
医薬組成物の二重特異性抗体の濃度は、1mg/mL~200mg/mLであってもよい。本発明の1
実施形態では、医薬組成物の二重特異性抗体の濃度は、50~120mg/mLである。本発明の他
の実施形態では、二重特異性抗体の濃度は、50~110mg/mLである。本発明の他の実施形態
では、二重特異性抗体の濃度は、50~100mg/mLである。本発明の他の実施形態では、二重
特異性抗体の濃度は、50~90mg/mLである。本発明の他の実施形態では、二重特異性抗体
の濃度は、50~80mg/mLである。本発明の他の実施形態では、二重特異性抗体の濃度は、5
0~70mg/mLである。本発明の他の実施形態では、医薬組成物における二重特異性抗体の濃
度は、60mg/mLである。本発明の他の実施形態では、医薬組成物における二重特異性抗体
の濃度は、70mg/mLである。本発明の他の実施形態では、医薬組成物における二重特異性
抗体の濃度は、80mg/mLである。本発明の他の実施形態では、医薬組成物における二重特
異性抗体の濃度は、90mg/mLである。本発明の他の実施形態では、医薬組成物における二
重特異性抗体の濃度は、100mg/mLである。本発明の他の実施形態では、医薬組成物におけ
る二重特異性抗体の濃度は、110mg/mLである。本発明の他の実施形態では、医薬組成物に
おける二重特異性抗体の濃度は、120mg/mLである。本発明の他の実施形態では、医薬組成
物における二重特異性抗体の濃度は、130mg/mLである。本発明の他の実施形態では、医薬
組成物における二重特異性抗体の濃度は、140mg/mLである。本発明の他の実施形態では、
医薬組成物における二重特異性抗体の濃度は、150mg/mLである。
【0096】
本発明の医薬組成物は、二重特異性抗体の治療効果と安定性を最適化する範囲でpHを制
御するために使用される酢酸緩衝剤を含む。酢酸緩衝剤は、酢酸ナトリウム三水和物と酢
酸を注射用水中で混合して製造できる。水酸化ナトリウムを加えることにより、pHを調整
することができる。本発明の1実施形態では、酢酸緩衝剤は、20mM~40mMの間の濃度で存
在する。本発明の1実施形態では、組成物における酢酸緩衝剤の濃度は、20mMである。本
発明の他の実施形態では、組成物における酢酸緩衝剤の濃度は、25mMである。本発明の他
の実施形態では、組成物における酢酸緩衝剤の濃度は、30mMである。本発明の他の実施形
態では、組成物における酢酸緩衝剤の濃度は、35mMである。本発明の他の実施形態では、
組成物における酢酸緩衝剤の濃度は、40mMである。本発明の1実施形態では、医薬組成物
は、さらなる緩衝剤を含んでもよい。別の実施形態では、医薬組成物は更なる緩衝剤を含
まない。
【0097】
本発明の1実施形態では、医薬組成物のpHは、5~6の範囲内にある。本発明の他の実施
形態では、医薬組成物のpHは、5.2~5.8の範囲内にある。本発明の他の実施形態では、医
薬組成物のpHは、5.4~5.6の範囲内にある。本発明の他の実施形態では、医薬組成物のpH
は、約5.5、例えば5.5である。
【0098】
本発明の医薬組成物は、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用することができる「安定剤」
としてソルビトールをさらに含み、それによって分子間及び分子内相互作用の可能性を低
下させる。1実施形態では、ソルビトールは、医薬組成物中に100mM~250mMの濃度で存在
する。別の実施形態では、ソルビトールは、医薬組成物中に130mM~200mMの濃度で存在す
る。1実施形態では、ソルビトールは、医薬組成物において140mMの濃度で存在する。1実
施形態では、ソルビトールは、医薬組成物において150mMの濃度で存在する。1実施形態で
は、ソルビトールは、医薬組成物において180mMの濃度で存在する。1実施形態では、ソル
ビトールは、医薬組成物において200mMの濃度で存在する。1実施形態では、ソルビトール
は、医薬組成物において220mMの濃度で存在する。1実施形態では、ソルビトールは、医薬
組成物において230mMの濃度で存在する。1実施形態では、ソルビトールは、医薬組成物に
おいて240mMの濃度で存在する。1実施形態では、ソルビトールは、医薬組成物において25
0mMの濃度で存在する。
【0099】
1実施形態では、医薬組成物の浸透圧(mOsm/kg)は、200mOsm/kgである。別の実施形態
では、医薬組成物の浸透圧は、210mOsm/kgである。別の実施形態では、医薬組成物の浸透
圧は、220mOsm/kgである。別の実施形態では、医薬組成物の浸透圧は、230mOsm/kgである
。別の実施形態では、医薬組成物の浸透圧は、240mOsm/kgである。別の実施形態では、医
薬組成物の浸透圧は、250mOsm/kgである。
【0100】
本発明の1実施形態では、医薬組成物における酢酸緩衝剤対ソルビトールの濃度比は、1
:5~1:10の間である。本発明の1実施形態では、酢酸緩衝剤対ソルビトールの濃度比は1
:5である。本発明の他の実施形態では、酢酸緩衝剤対ソルビトールの濃度比は、1:6で
ある。本発明の他の実施形態では、酢酸緩衝剤対ソルビトールの濃度比は、1:7である。
本発明の他の実施形態では、酢酸緩衝剤対ソルビトールの濃度比は、1:8である。本発明
の他の実施形態では、酢酸緩衝剤対ソルビトールの濃度比は、1:9である。本発明の他の
実施形態では、酢酸緩衝剤対ソルビトールの濃度比は、1:10である。
【0101】
本発明の1実施形態では、医薬組成物は、約5.5のpHを有し、以下から本質的になる:
a. 50~120mg/mLの二重特異性抗体
b. 20~40mMの酢酸緩衝剤
c. 140~160mMのソルビトール。
【0102】
本発明の特定の実施形態では、医薬組成物は、約5.5のpHを有し、以下から本質的にな
る:
a. 60mg/mLの二重特異性抗体
b. 30mMの酢酸緩衝剤
c. 150mMのソルビトール
ここで、前記二重特異性抗体のCD3結合Fabアームはそれぞれ配列番号6及び7で規定される
VH及びVL配列並びに配列番号19で規定される定常重鎖配列(FEAL)を含み、かつCD20結合
Fabアームはそれぞれ配列番号13及び14のVH及びVL配列、並びに配列番号20で規定される
定常重鎖配列(FEAR)を含む。
【0103】
本発明の他の実施形態では、医薬組成物は、約5.5のpHを有し、以下から本質的になる
:
a. 60mg/mLの二重特異性抗体
b. 30mMの酢酸緩衝剤
c. 250mMのソルビトール、
ここで、前記二重特異性抗体のCD3結合Fabアームはそれぞれ配列番号6及び7で規定される
VH及びVL配列並びに配列番号19で規定される定常重鎖配列(FEAL)を含み、かつCD20結合
Fabアームはそれぞれ配列番号13及び14のVH及びVL配列、並びに配列番号20で規定される
定常重鎖配列(FEAR)を含む。
【0104】
1実施形態では、医薬組成物は、30mMの酢酸、150mMのソルビトール、pH5.5に製剤化さ
れた濃縮製剤(DuoBody CD3×CD20)である。この濃縮製剤は投与直前に希釈剤で希釈し
て、二重特異性抗体の濃度を2μg/mL~5mg/mLにしてもよい。1実施形態では、希釈剤は30
mMの酢酸、150mMのソルビトール、pH5.5である。
【0105】
本発明の1実施形態では、医薬組成物は界面活性剤を含まない。別の実施形態では、医
薬組成物はヒアルロニダーゼを含まない。更なる実施形態では、医薬組成物は界面活性剤
もヒアルロニダーゼも含まない。
【0106】
好ましい実施形態では、医薬組成物は皮下用組成物であるか、又は医薬組成物は皮下投
与における使用のためのものである。しかしながら、本発明の医薬組成物は静脈内に投与
されてもよい。従って、医薬組成物の1実施形態は静脈用組成物又は静脈内投与における
使用のための医薬組成物である。医薬組成物が皮下及び静脈内投与のいずれにも適するこ
とが本発明の利点である。
【0107】
本発明の1実施形態では、医薬組成物は、癌の治療における使用のためのものである。
本発明の1実施形態では、医薬組成物はB細胞悪性腫瘍の治療における使用のためのもので
ある。
【0108】
別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、T細胞介在性免疫応答、炎症及び微小環境
再モデリングを誘導するために使用できる。
【0109】
特定の実施形態では、医薬組成物は、様々なCD20関連疾患を治療、予防または診断する
ためにインビボで使用するためのものである。CD20関連疾患の例としては、とりわけ、B
細胞リンパ腫、例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞白血病及び免疫疾患、例えば
、以下に挙げるもののような自己免疫疾患が挙げられる。
【0110】
1実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、NHL又はB細胞性白血病の治療における使
用のためのものである。
【0111】
1実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、リツキシマブまたはオファツムマブ耐性N
HLまたはB細胞白血病、例えばリツキシマブ耐性非侵襲性B細胞リンパ腫などのCD20抗体耐
性NHLまたはB細胞白血病の治療における使用のためのものである。
【0112】
1実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、再発または難治性ALLなどの急性リンパ芽
球性白血病(ALL)の治療における使用のためのものである。
【0113】
1実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、再発または難治性CLLなどのCLLの治療に
おける使用のためのものである。
【0114】
1実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、再発または難治性FLなどのFLの治療にお
ける使用のためのものである。
【0115】
本発明は、更にそれを必要とする対象に上述の医薬組成物を癌を治療するのに十分な時
間投与することを含む対象における癌を治療する方法を提供する。
【0116】
本発明は、更にそれを必要とする対象に上述の医薬組成物を癌を治療するのに十分な時
間該対象に皮下投与することを含む対象における癌を治療する方法を提供する。
【0117】
本発明は、更にそれを必要とする対象に上述の医薬組成物を癌を治療するのに十分な時
間該対象に静脈内投与することを含む対象における癌を治療する方法を提供する。本発明
の1実施形態では、この方法で治療される癌はB細胞悪性腫瘍、例えばNHL、CLL、ALL、FL
又はCD20抗体耐性NHL又はB細胞性白血病、例えばリツキシマブ-又はオファツムマブ耐性
NHL又はB細胞性白血病、例えばリツキシマブ耐性非攻撃的B-細胞リンパ腫である。
【0118】
1実施形態では、本発明に係る医薬組成物は単位用量剤型にある。1実施形態では、本発
明の単位用量は液体単位用量である。
本発明の1実施形態では、単位用量剤型は以下を含む:
a. 以下のCDR配列を含むヒトCD3に結合する第1結合領域:
VH-CDR1:配列番号1
VH-CDR2:配列番号2
VH-CDR3:配列番号3
VL-CDR1:配列番号4
VL-CDR2:GTN、及び
VL-CDR3:配列番号5、
並びに、以下のCDR配列を含むヒトCD20に結合する第2結合領域:
VH-CDR1:配列番号8
VH-CDR2:配列番号9
VH-CDR3:配列番号10
VL-CDR1:配列番号11
VL-CDR2:DAS、及び
VL-CDR3:配列番号12
を含む、約5μg~約50mgの量の二重特異性抗体、
b. 酢酸緩衝剤及びソルビトール、
ここで、pHは約5.5である。
【0119】
単位用量剤型の1実施形態では、酢酸緩衝剤及びソルビトールは、1:5~1:10のの間、
例えば1:6、1:7、1:8又は1:9の濃度比で含まれる。
【0120】
更なる実施形態では、単位用量剤型の浸透圧は約210~約250、例えば220、230、240又
は250mOsm/kgである。
【0121】
更なる実施形態では、本発明は以下を含む単位用量剤型に関する:
a. 以下のCDR配列を含むヒトCD3に結合する第1結合領域:
VH-CDR1:配列番号1
VH-CDR2:配列番号2
VH-CDR3:配列番号3
VL-CDR1:配列番号4
VL-CDR2:GTN、及び
VL-CDR3:配列番号5、
並びに、以下のCDR配列を含むヒトCD20に結合する第2結合領域:
VH-CDR1:配列番号8
VH-CDR2:配列番号9
VH-CDR3:配列番号10
VL-CDR1:配列番号11
VL-CDR2:DAS、及び
VL-CDR3:配列番号12
を含む、約5μg~約50mgの量の二重特異性抗体、
b. 約30mMの濃度の酢酸緩衝剤、
c. 約150mMの濃度のソルビトール、
ここで、pHは約5.5である。
【0122】
上述の単位用量剤型の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約50μg~約40mg、例えば
50μg~40mgである。
【0123】
単位用量剤型の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約100μg~約30mgである。単位
用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約150μgである。単位用量剤型の
別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約200μgである。単位用量剤型の別の1実施形
態では、二重特異性抗体の量は約250μgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二
重特異性抗体の量は約300μgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗
体の量は約350μgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約4
00μgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約450μgである
。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約500μgである。単位用量
剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約600μgである。単位用量剤型の別の1
実施形態では、二重特異性抗体の量は約700μgである。単位用量剤型の別の1実施形態で
は、二重特異性抗体の量は約800μgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特
異性抗体の量は約900μgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の
量は約1mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約2mgであ
る。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約3mgである。単位用量剤
型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約4mgである。単位用量剤型の別の1実施
形態では、二重特異性抗体の量は約5mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重
特異性抗体の量は約6mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量
は約7mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約8mgである
。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約9mgである。単位用量剤型
の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約10mgである。単位用量剤型の別の1実施形
態では、二重特異性抗体の量は約11mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重
特異性抗体の量は約12mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の
量は約13mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約14mgで
ある。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約15mgである。単位用
量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約16mgである。単位用量剤型の別の1
実施形態では、二重特異性抗体の量は約17mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では
、二重特異性抗体の量は約18mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性
抗体の量は約19mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約2
0mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約21mgである。単
位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約22mgである。単位用量剤型の
別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約23mgである。単位用量剤型の別の1実施形態
では、二重特異性抗体の量は約24mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特
異性抗体の量は約25mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量
は約26mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約27mgであ
る。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約28mgである。単位用量
剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は約29mg、例えば約30mgである。
【0124】
単位用量剤型の1実施形態では、二重特異性抗体の量は100μg~30mgである。単位用量
剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は150μgである。単位用量剤型の別の1実
施形態では、二重特異性抗体の量は200μgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、
二重特異性抗体の量は250μgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗
体の量は300μgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は350μ
gである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は400μgである。単位
用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は450μgである。単位用量剤型の別
の1実施形態では、二重特異性抗体の量は500μgである。単位用量剤型の別の1実施形態で
は、二重特異性抗体の量は600μgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異
性抗体の量は700μgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は8
00μgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は900μgである。
単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は1mgである。単位用量剤型の別
の1実施形態では、二重特異性抗体の量は2mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では
、二重特異性抗体の量は3mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体
の量は4mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は5mgである
。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は6mgである。単位用量剤型の
別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は7mgである。単位用量剤型の別の1実施形態で
は、二重特異性抗体の量は8mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗
体の量は9mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は10mgであ
る。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は11mgである。単位用量剤
型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は12mgである。単位用量剤型の別の1実施形
態では、二重特異性抗体の量は13mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特
異性抗体の量は14mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は1
5mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は16mgである。単位
用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は17mgである。単位用量剤型の別の1
実施形態では、二重特異性抗体の量は18mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、
二重特異性抗体の量は19mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体
の量は20mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は21mgであ
る。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は22mgである。単位用量剤
型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は23mgである。単位用量剤型の別の1実施形
態では、二重特異性抗体の量は24mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特
異性抗体の量は25mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は2
6mgである。単位用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は27mgである。単位
用量剤型の別の1実施形態では、二重特異性抗体の量は28mgである。単位用量剤型の別の1
実施形態では、二重特異性抗体の量は29mg、例えば30mgである。
【0125】
本発明の単位用量剤型の別の1実施形態では、ヒトCD3に結合する二重特異性抗体の第1
結合領域は配列番号6及び7のVH及びVL配列を含み、ヒトCD20に結合する二重特異性抗体の
第2結合領域は配列番号13及び14のVH及びVL配列を含む。本発明の単位用量剤型の好まし
い実施形態では、二重特異性抗体は上述のようなDuoBody-CD3×CD20である。
【0126】
別の実施形態では、本発明の単位用量剤型の総体積は約0.3mL~約3mL、例えば0.3mL~3
mLである。別の実施形態では、本発明の単位用量剤型の総体積は0.5mLである。別の実施
形態では、本発明の単位用量剤型の総体積は0.8mLである。別の実施形態では、本発明の
単位用量剤型の総体積は1mLである。別の実施形態では、本発明の単位用量剤型の総体積
は1.2mLである。別の実施形態では、本発明の単位用量剤型の総体積は1.5mLである。別の
実施形態では、本発明の単位用量剤型の総体積は1.7mLである。別の実施形態では、本発
明の単位用量剤型の総体積は2mLである。別の実施形態では、本発明の単位用量剤型の総
体積は2.5mLである。このような単位用量剤型は皮下投与に好適である。
【0127】
単位用量剤型が静脈内投与のためのものである実施形態では、体積は典型的に大きい、
例えば10mL~500mLの間である。1実施形態では、単位用量剤型の体積は20mLである。1実
施形態では、単位用量剤型の体積は50mLである。1実施形態では、単位用量剤型の体積は8
0mLである。1実施形態では、単位用量剤型の体積は100mLである。1実施形態では、単位用
量剤型の体積は150mLである。1実施形態では、単位用量剤型の体積は200mLである。1実施
形態では、単位用量剤型の体積は250mLである。1実施形態では、単位用量剤型の体積は30
0mLである。1実施形態では、単位用量剤型の体積は350mLである。1実施形態では、単位用
量剤型の体積は400mLである。1実施形態では、単位用量剤型の体積は450mLである。1実施
形態では、単位用量剤型の体積は500mLである。
【0128】
単位用量剤型は、本発明の医薬組成物を適切な希釈剤、例えば酢酸緩衝剤及びソルビト
ールからなり、かつpHが5.5である希釈剤により希釈することにより調製することができ
る。希釈剤は、二重特異性抗体の濃度が希釈のみにより影響されるよう緩衝剤及びソルビ
トールの濃度が医薬組成物のものと同じであることが好ましい。
【0129】
別の実施形態では、本発明はさらに、本明細書に記載の単位用量剤型を含む容器または
入れ物を提供する。
【0130】
更に、本発明は、それを必要とする対象に上述の単位用量剤型を癌を治療するのに十分
な時間投与することを含む対象における癌を治療する方法を提供する。1実施形態では、
本発明は、それを必要とする対象に該単位用量剤型を癌を治療するのに十分な時間該対象
に皮下投与することを含む対象における癌を治療する方法を提供する。1実施形態では、
本発明は、それを必要とする対象に該単位用量剤型を癌を治療するのに十分な時間該対象
に静脈内投与することを含む対象における癌を治療する方法を提供する。
【0131】
別の実施形態では、本発明は癌の治療における使用のための本明細書に記載の単位用量
剤型に関する。別の実施形態では、単位用量剤型は皮下投与のためのものである。別の実
施形態では、単位用量剤型は静脈内投与のためのものである。
【0132】
本発明は、
a. 本明細書に記載の医薬組成物
b. 酢酸及びソルビトールを含む希釈剤
c. 単位用量剤型用の入れ物
d. 希釈及び/又は使用のための説明書
を含むパーツキットにも関する。
【0133】
希釈剤及び医薬組成物における酢酸対ソルビトールの濃度比が等しいことが好ましい。
【0134】
本発明の1実施形態では、パーツキットは、
a.以下を含む医薬組成物:
i. 60mg/mLの二重特異性抗体、例えばDuoBody-CD3×CD20
ii. 30mMの酢酸緩衝剤
iii.150mMのソルビトール
iv. pHは5.5である、
b. 以下を含む希釈剤:
v. 30mMの酢酸緩衝剤
vi. 150mMのソルビトール
c. 単位用量剤型用の入れ物、及び
d. 希釈及び/又は使用のための説明書
を含む。
【0135】
1実施形態では、本発明は更に本明細書に記載の医薬組成物を調製する方法であって、
a. 以下のCDR配列を含むヒトCD3に結合する第1結合領域:
VH-CDR1:配列番号1
VH-CDR2:配列番号2
VH-CDR3:配列番号3
VL-CDR1:配列番号4
VL-CDR2:GTN、及び
VL-CDR3:配列番号5、
並びに、以下のCDR配列を含むヒトCD20に結合する第2結合領域:
を含む60~120mg/mLの二重特異性抗体
VH-CDR1:配列番号8
VH-CDR2:配列番号9
VH-CDR3:配列番号10
VL-CDR1:配列番号11
VL-CDR2:DAS、及び
VL-CDR3:配列番号12
b. 3.53mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物
c. 0.32mg/mLの酢酸
d. 27.3mg/mLのソルビトール
を注射用の水中で混合する工程;並びに
水酸化ナトリウムを添加することによりpHを5.5に調整する工程;
を含む方法に関する。
【0136】
本発明の医薬組成物を調製する方法の1実施形態では、aは60mg/mLである。本発明の医
薬組成物を調製する方法の別の実施形態では、aは70mg/mLである。本発明の医薬組成物を
調製する方法の別の実施形態では、aは80mg/mLである。本発明の医薬組成物を調製する方
法の別の実施形態では、aは90mg/mLである。本発明の医薬組成物を調製する方法の別の実
施形態では、aは100mg/mLである。本発明の医薬組成物を調製する方法の別の実施形態で
は、aは110mg/mLである。本発明の医薬組成物を調製する方法の別の実施形態では、aは12
0mg/mLである。本発明の医薬組成物を調製する方法の別の実施形態では、aは150mg/mLで
ある。本発明の医薬組成物を調製する方法の別の実施形態では、aは200mg/mLである。
【0137】
本発明は更に本明細書に記載の単位用量剤型を調製する方法であって、
a.
a.
以下のCDR配列を含むヒトCD3に結合する第1結合領域:VH-CDR1:配列番号1、VH-
CDR2:配列番号2、VH-CDR3:配列番号3、VL-CDR1:配列番号4、VL-CDR2:GTN、及びVL
-CDR3:配列番号5、並びに、
以下のCDR配列を含むヒトCD20に結合する第2結合領域:VH-CDR1:配列番号8、VH
-CDR2:配列番号9、VH-CDR3:配列番号10、VL-CDR1:配列番号11、VL-CDR2:DAS、及
びVL-CDR3:配列番号12
を含む60~120mg/mL、例えば60mg又は120mg、の二重特異性抗体
b. 3.53mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物
c. 0.32mg/mLの酢酸
d. 27.3mg/mLのソルビトールを注射用の水中で混合し、水酸化ナトリウムを添加する
ことによりpHを5.5に調整する方法により医薬組成物を調製する工程;
b.
i. 3.53mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物
ii. 0.32mg/mLの酢酸
iii. 27.3mg/mLのソルビトール以下を注射用の水中で混合し、水酸化ナトリウムを添
加することによりpHを5.5に調整する方法により希釈剤を調製する工程;
c.医薬組成物と希釈剤を混合して単位用量剤型における所望の濃度の二重特異性抗体を
達成する工程;
を含む方法に関する。
【0138】
本発明の更なる実施形態では、上述の方法により取得可能な医薬組成物又は単位用量剤
型に関する。
【0139】
【0140】
【0141】
【実施例0142】
実施例
本発明の医薬組成物は、表2に列挙した成分を混合することによって調製することができ
る。
【0143】
【0144】
実施例1:様々な製剤におけるDuobody-CD3×CD20の安定性
【0145】
【0146】
材料
特に記載のない限り、Duobody-CD3×CD20を2mg/mLで製剤化した。
方法
蛍光/静的光散乱による熱安定性
コンホメーションの安定性及びコロイド安定性は、ユニット装置(Unchained Labs)での
蛍光/静的光散乱(SLS)測定を組み合わせることによって決定した。この測定は熱ストレ
スの増加を利用してタンパク質のアンフォールディング及び凝集を誘導してコンホメーシ
ョン及びコロイド安定性を評価する。熱ストレスの増加によって引き起こされるアンフォ
ールディング状態遷移は、タンパク質アンフォールディング時の局所環境の変化によるタ
ンパク質のTrp(及びTyr)残基の固有蛍光の変化によって検出される。埋め込まれたトリ
プトファン残基が暴露すると、最大発光波長はより長い波長に移動する。重心平均(BCM
)、すなわち、蛍光発光スペクトルが等しく分割される波長がプロットされ、温度に対す
るタンパク質のコンホメーション変化を示す。蛍光解析によりアンフォールディングの開
始温度(Tonset)と融解温度(Tm)値がいずれもBCM曲線から生成される。Tonsetは、タ
ンパク質が展開し始める温度の計算値である。Tm値は、タンパク質が折りたたまれた状態
から展開された状態への移行中間点である。
【0147】
ユニット測定はまた、タンパク質コロイド安定性を決定するSLS測定値を与える。試料
は、溶液中の分子によって散乱されるレーザー光によって照射された。静的光散乱の強度
は、溶液中の種の平均分子量に比例する。従って、この分析は、温度勾配にわたるタンパ
ク質凝集に感受性である。静的光散乱を266nmで測定しより小さな凝集体を検出し、同様
に473nmでより大きな凝集体種を検出した。凝集温度(Tagg)の開始を、タンパク質が凝
集し始める温度であるこれらのデータから決定した。これらのデータは、カウント強度の
変化が大きいほどに最も良好に分析される、つまり、カウントが高いほどタンパク質凝集
体の形成による光がより多く散乱されたことを示す。温度勾配の上昇にわたって、103ス
ケールにおけるSLSカウントデータの変化は典型的にはタンパク質凝集が著しいことによ
るものであり、SLSカウントが少ししか変化しないことは凝集が部分的であることによる
ものであり、温度勾配にわたるSLSカウントが変化しないことは、タンパク質凝集が無視
できるレベルであることを示す。
【0148】
外観
外観は、目視評価によって決定した。
【0149】
pH
pHは、Mettler Toledo SevenMulti pHメーターを用いて測定した。
【0150】
粘度
粘度は、Wells-Brookfield Cone/Plate Rheometerを用いて測定した。
【0151】
浸透圧
浸透圧は、浸透圧計を用いて測定した。
【0152】
吸光度A280による蛋白質濃度
タンパク質濃度は、UV/Vis分光法(Agilent UV/Vis分光光度計(モデル8453)を使用する
280nmでの吸光度(A280)測定)によって決定した。
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
サイズ排除クロマトグラフィーは、TOSOH、TSK-gel G3000SWxL(7.8×300mm)カラム(Si
gma、カタログ番号08541)を使用するAgilent 1100及び1200 HPLCシステムで行った。
【0153】
画像キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)
画像キャピラリー等電点電気泳動は、PrinCE Autosamplerを備えたiCE 3 Analyzerを用い
て行った。
【0154】
還元及び非還元マイクロチップキャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム
マイクロチップキャピラリー電気泳動(還元及び非還元の両方)を、Labchip GXII機器を
使用して、製造業者の指示に従って行った。
【0155】
動的光散乱(DLS)
Wyatt DynaPro Plate Readerを用いて動的光散乱解析を行った。DLS分析は、室温でのタ
ンパク質サイズ及び凝集を評価した。DLS分析のために、散乱光の時間自己相関関数が決
定され、溶液中の分子の平均サイズが、データの単一指数累積フィッティングに基づいて
計算される。報告可能値は、多分散性及び流体力学的半径である。モノマーの単一分布で
構成されるタンパク質試料では試料は単分散と見なされるが、複数の粒子径の集団を含む
試料では試料は多分散と見なされる。パーセンテージ多分散度指数(%Pd)は粒度分布の
幅の尺度であり、%Pdが高いほど、粒子の分布は広くなる。従って、高い%Pdを有する試
料は、典型的には(大きい)凝集体を含むことが見られる。非球形タンパク質粒子の流体
力学的半径は、粒子と同じ並進拡散速度を有する球の半径である。拡散速度は、粒子の分
子量、表面構造、ならびに製剤中の対イオンの濃度及びタイプに依存する。単分散サイズ
分布におけるより流体力学的半径が大きいことは、溶液中のよりオリゴマーが高次(例え
ば、四量体)であることに起因し得るが、凝集体が大きいことには起因しない。
【0156】
溶解度スクリーニング
Duobody-CD3×CD20の溶解度を決定するために、最初に、遠心濃縮器を使用して、材料を
低開始濃度で選択された緩衝剤中で製剤化した。続いて、溶液を、20、50、60及び90分の
時間設定スピンによって、>120mg/mLの標的濃度まで濃縮した。各スピン後にタンパク質
濃度を測定した。
【0157】
結果
1.ベースラインの生物物理学的スクリーニング及び賦形剤スクリーニング
最初の生物物理学的スクリーニングを行って、緩衝剤/pH/賦形剤の組み合わせを選択し、
その後より詳細なスクリーニングに進めた。ベースラインの生物物理学的スクリーニング
及び賦形剤スクリーニングは、広範囲の緩衝剤/pH/賦形剤の組み合わせにおいて、DuoBod
y-CD3×CD20(2mg/mL)を蛍光/SLS及びDLSによって熱安定性スクリーニングすることを含
んだ。最初のスクリーニングに使用した緩衝剤及びそれらのpH値のリストを表3に列挙す
る。
【0158】
表1は最初の緩衝剤スクリーニングから得られたデータを示し、30mMの酢酸及び30mMヒ
スチジン緩衝剤を、賦形剤(150mMNaCl、150mMアルギニン、150mMのソルビトールまたは1
50mMスクロース)の有無で試験した。蛍光/SLS測定を使用して、熱安定性を評価し、DLS
を使用して、室温でのDuobody-CD3×CD20(2mg/mL)の凝集を決定した。蛍光/SLS解析に
より、融解温度(Tm)、展開の開始(Tonset)及びTaggを求めた。DLS分析により、タン
パク質の多分散性及び流体力学的半径に関する情報を得た。
【0159】
熱安定性分析において、Tonset及びTmは、対応するヒスチジン製剤(それぞれ53~55℃
及び59~61℃の範囲)と比較した場合、酢酸製剤(それぞれ53~58℃及び60~62.5℃の範
囲)においてわずかに高い。Tonset及びTm値が高いほど、タンパク質の熱安定性が良好で
あることを示す。複数の賦形剤間のTonset及びTmの差は小さいものの、アルギニンの存在
下では安定性がわずかに低く、ソルビトールまたはスクロースでは安定性がわずかに高い
ことを示している可能性がある。SLSによるTaggの決定により、酢酸及びヒスチジン製剤
のいずれも、NaClまたはアルギニンの添加によりソルビトールまたはスクロースを含むあ
るいは賦形剤を含まない製剤と比較して、Taggが低くなる(59~60℃)ことが示された。
ソルビトールまたはスクロースを含む酢酸製剤では66℃で部分凝集が観察されたが、これ
らの賦形剤を含むヒスチジン緩衝剤では凝集は観察されなかった。
【0160】
室温でのDLSでは、平均半径及び多モードコンシステンシーが大きいほど、スクロース
の存在下での分子の凝集挙動に負の影響を示した。また、ソルビトールは、平均半径及び
%Pdにわずかな増加を誘導するようである。
【0161】
初期スクリーニングから得られたデータに基づいて、賦形剤を含まない酢酸pH5.5、ヒ
スチジンpH6.0及びヒスチジンpH6.5緩衝剤中でDuoBody-CD3×CD20は安定であり単分散で
あると結論付けた。ソルビトール及びスクロースは、熱安定性をわずかに増加させた。Na
Clとアルギニンは熱安定性を低下させた。初期スクリーニングにおけるDLSの結果に基づ
いて、次の溶解度スクリーニングに用いる賦形剤としてスクロースを除外した。賦形剤(
150mMNaCl、150mMアルギニンまたは150mMのソルビトール)を用いる又は用いない、酢酸p
H5.5、ヒスチジンpH6.0及びヒスチジンpH6.5製剤を、さらなる溶解度試験に選択した。
【0162】
【0163】
【0164】
2.溶解度スクリーニング
ベースライン生物物理学的スクリーニング試験の第2段階は、最初のベースライン生物物
理学的スクリーニングから選択されたpH/緩衝剤の組み合わせに賦形剤を組み合わせた溶
解度スクリーニングを含んでいた。第2のスクリーニング試験において使用される緩衝剤
のリストは、表4に示す。
【0165】
賦形剤の存在下での溶解度を測定するために、材料を選択された緩衝剤中で製剤化し、
時間を定めたスピン間隔で遠心濃縮器を用いて連続的に濃縮した。
図1は、20分、50分、6
0分及び90分のスピン間隔後の各製剤の濃度を示す。ソルビトールを含む又は含まない酢
酸製剤は150mg/mLまで最速で(50分)濃縮された。ソルビトールを含む及び含まないヒス
チジン製剤は最速で(50分)濃縮されたが、より低い濃度(120mg/mL)に濃縮された。全
ての他の製剤は120mg/mLに濃縮することが可能であったが、この濃度に到達するまでには
酢酸製剤と比較してより時間を要した(60~90分)。
【0166】
濃縮サンプル(最終濃度120~150mg/mL)を、蛍光/SLS及びDLS(表4)ならびに粘度に
ついてさらに分析した(
図2)。
【0167】
表4は、賦形剤を含まずソルビトールを含む製剤が最も高いTmを有することを示す。賦
形剤を含まずソルビトールを含む製剤におけるTagg値は、NaCl及びArgを含む製剤におけ
る測定と比較して転移が不鮮明であったため、解釈が困難であった。
【0168】
室温でのDLSデータは、表3の低濃度の場合と比較して高いDuoBody-CD3×CD20濃度につ
いての%Pdの一般的な増加を示す(>15%は多分散と解釈される)。平均流体力学的半径
の変化量は濃縮された材料の粘度によって影響される可能性があり、これは製剤の適切な
ランキングを妨げる。
【0169】
図2は、ソルビトールを含む又は含まない様々な製剤の粘度(cP)を示す。酢酸製剤は
、7.9~12.1cPの範囲の粘度を示した。対照的に、ソルビトールを含まないヒスチジン製
剤は、酢酸製剤よりも年度が高かった(28.4~79.9cPの範囲)。ソルビトールの添加はヒ
スチジン製剤の粘度を減少させたが(18~30cPの範囲)、ソルビトールは酢酸製剤の粘度
には影響しなかった。
【0170】
【0171】
【0172】
さらに、ソルビトールを含むまたは含まない酢酸(pH5.5)、ソルビトールを含むヒス
チジン緩衝剤(pH6.0)及びソルビトールを含むヒスチジン(pH6.5)中の濃縮試料の浸透
圧を、浸透圧計を用いて測定した。結果を表5に示す。
【0173】
ソルビトールを含まない酢酸pH5.5の浸透圧は70~80mOsm/kgの範囲であった。ソルビト
ールを含む酢酸及びヒスチジン製剤の浸透圧は220~230mOsm/kgの範囲であり、これは正
常血漿のオスモル濃度に近い(275-295mOsm/kg;Rasouli 2016 Clin Biochem 49 (12):9
36-41)。
【0174】
【0175】
上記の結果に基づいて、150mMのソルビトールを含む30mMの酢酸pH5.5は、Duobody-CD3
×CD20の好ましい製剤であることが見出された、というのは、ソルビトールを含む酢酸が
ヒスチジン製剤と同等の熱安定性を示し、高濃度(150mg/mL)で最も効率的であり、最も
粘性の低い製剤であったからである。
【0176】
3.リアルタイムと加速安定性
30mMの酢酸、150mMのソルビトール、pH5.5におけるDuobody-CD3×CD20のリアルタイム安
定性を、上述のアッセイ(外観、pH、UV[A280]、SEC、icIEF、CE-SDS[還元型及び非還
元型])を用いて、0~12ヵ月の範囲の様々な時点で評価した。
【0177】
表6は、5±3℃で0、2、3又は6月保存したDuobody-CD3×CD20(5mg/mL)試料の安定性
試験の結果を示す。
【0178】
表7は、25±℃で0、1、2、3又は6月保存したDuobody-CD3×CD20(5mg/mL)試料の安定
性試験の結果を示す。
【0179】
表8は、5±3℃で0、2、3、6、9又は12月保存したDuobody-CD3×CD20(60mg/mL)試料
の安定性試験の結果を示す。
【0180】
表9は、25±3℃で0、1、2、3又は6月保存したDuobody-CD3×CD20(60mg/mL)試料の安
定性試験の結果を示す。
【0181】
それぞれ5±3℃及び25±3℃で12月及び6月の貯蔵後、すべての試料は、5mg/mL及び60mg
/mLの濃度で、すべての試験方法によって安定なままであった。5±3℃で保存した試料は
、試験開始と比較して、6月または12月の時点で、いずれの試験方法によっても有意な変
化を示さなかった。25±3℃での加速安定性試験における純度プロファイルで予期される
微小な変化が、UV分光法、icIEF、CE-SDSの減少及びSEC試験によって観察された。
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
4. 結論
種々の製剤中のDuobody-CD3×CD20の分析試験から得られた結果に基づくと、30mMの酢酸
、150mMのソルビトール、pH5.5がこの分子に最適な製剤であった。この製剤は、2~150mg
/mLの範囲の濃度を支持する。本発明者らは、DuoBody-CD3×CD20が5及び60mg/mL(30mの
酢酸、150mMのソルビトール、pH5.5中)で、5±3℃にて12月まで安定であることを示した
。さらに、25±3℃での加速安定性試験では、5及び60mg/mL(30mMの酢酸、150mMのソルビ
トール、pH5.5中)のDuoBody-CD3×CD20について、6月まで予測範囲内のわずかな変化の
みが観察された。
【0187】
実施例2:DuoBody-CD3×CD20を静脈内(IV)及び皮下(SC)投与経路で投与したカニク
イザルの血中サイトカイン解析
【0188】
雌カニクイザルを用いたDuoBody-CD3×CD20の用量範囲設定(DRF)試験、及び、雌雄カ
ニクイザルを用いたDuoBody-CD3×CD20のGLP毒性試験において、t=0(投与前)、2、4、
6、12及び24時間で動物から血液サンプルを採取した。試料(0.25ml)をK2 EDTAを含む試
験管に移し、血漿を得るために4℃で10分間3000rpm(約1500g)で遠心分離することによ
り処理した。血漿を透明な0.5mLポリプロピレンチューブに移し、分析まで-80℃で保存し
た。
【0189】
BioPlex200リーダー(BioRad)と共にMilliplex MAP NHP Cytokine Magnetic Bead Pan
el(Millipore Cat.No.PRCYTOMAG-40K)を使用して、製造業者のプロトコルに従って試
料を分析して、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-4、IL-8、IL-10、IL-12p40、IL-15、IF
Nγ、TNFα及びMCP-1の濃度を測定した。
【0190】
図3は、GLP毒性試験において、本発明の医薬組成物にてDuoBody-CD3×CD20の単回静脈
内投与(0.1または1mg/kg)または単回皮下投与(0.1または1mg/kg)のいずれかを受けた
動物から得た血液中の群毎の平均サイトカインレベルを示す。
【0191】
DuoBody-CD3×CD20を投与したところ、サイトカインIL-1β、IL-4、IL-12p40及びIL
-15のレベルをわずかに低減した(150pg/mL未満)(
図3A)。
【0192】
サイトカインIL-2、IL-6、IL-8、IL-10、IFNγ、TNFα及びMCP-1は、DuoBody-CD3
×CD20の静脈内投与で明らかに誘導され、投与後2~12時間以内にピークに達した(
図3B
)。その後、サイトカインレベルはベースラインに戻った。これらのサイトカインの各々
について、ピークレベルは、皮下投与(0.1または1mg/kg)を受けた動物の血液のほうが
対応する静脈内投与のレベルと比較して低かった。IL-8及びIFNγのピークレベルについ
てはいずれも、皮下投与のほうが静脈内投与と比較して、低く遅延した。
【0193】
DRF試験では同等の所見が認められたが、例外として、この(より小規模の)試験では
静脈内または皮下投与動物間でIFNγ濃度に差は認められなかった。
【0194】
実施例3:カニクイザルにおけるDuoBody-CD3×CD20の4回反復静脈内投与、初回用量で
の単回静脈内投与、または単回皮下内投与(用量範囲設定試験)後のB細胞枯渇の評価
本概説に従って、雌カニクイザルに、本発明の製剤(30mMの酢酸、150mMのソルビトール
、pH5.5)におけるDuoBody-CD3×CD20を、毎週4回の静脈内注入(0.01、0.1または1mg/kg
)、静脈内初回用量(0.01mg/kg)に続いて1mg/kgの静脈内標的用量、または単回皮下注
射(0.01、0.1、1、10または20mg/kg)のいずれかで、DuoBody-CD3×CD20を投与した:
【0195】
【0196】
この研究は、英国のホームオフィスの管理下で、実験及び他の科学的目的に使用される
脊椎動物の保護のための欧州条約(欧州評議会)に従ってチャールズ・リバー・ラボラト
リーズ(Charles River Laboratories)(Tranent、UK)で実施された。
【0197】
Mauritian起源の目的交配カニクイザル、Macaca fascicularisは、Bioculture(Maurit
ius)Limited(Riviere de Anguilles、Mauritius)またはNoveprim(Mahebourg、Maurit
ius)から入手した。動物は、豊かな環境を提供しながら、集団畜舎で社会的に飼育した
。
【0198】
試料採取
全血サンプル(約0.5mL)を、滅菌皮下注射針及び滅菌注射器を使用して大腿静脈から収
集した。フローサイトメトリーによる免疫表現型決定のために、ヘパリンナトリウムを含
有するチューブに血液を移し、48時間以内に分析するまで室温で保存した。
【0199】
生検(約20mg)は標準的な外科的無菌技術を用いてリンパ節上に切断して表在リンパ節
から採取し、その間、動物は全身麻酔下に置かれた。生検をRoswell Park Memorial Inst
itute(RPMI)で収集し、24時間以内に処理するまで湿った氷上で保存した。単細胞懸濁
液を、組織の自動機械的脱凝集のためのMedimachine Systemを使用して調製した(Becton
Dickinson;詳細については、全CRL研究報告を参照のこと)。得られた細胞を、2mLのダ
ルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS;Gibco、カタログ番号14190)に再懸濁した。
【0200】
剖検時に、リンパ節及び脾臓からの試料をコルクディスク上に配向させ、アルミニウム
箔で個々に包み、独自に標識し、液体窒素中で急速凍結し、免疫組織化学による評価まで
-80℃を維持するように設定したフリーザー中で保存した。
【0201】
フローサイトメトリー
直接標識抗体の混合物(下記参照)を丸底試験管(Falcon、カタログ番号352052)中で調
製した。抗体混合物は、CD19+B細胞も分析できるように選択した。
【0202】
末梢血の免疫表現型決定のために、50μLの抗凝固全血を抗体混合物に添加し、室温で2
0分間、光から保護してインキュベートした。赤血球(RBC)を、1×RBC溶解緩衝剤(eBio
science、カタログ番号00-4300-54)を用いてRTで10分間(またはRBC溶解が完了するまで
)溶解した。チューブを300~500g、RTで5分間遠心分離した。上清を捨て、細胞ペレット
を0.5mLのPBS(Gibco、カタログ番号10010)に再懸濁した。50μLのFlow Count beads(B
eckman Coulter、カタログ番号7546053)を、分析の前に各チューブに添加した。
【0203】
リンパ節細胞の免疫表現型決定のために、50μLの細胞懸濁液を抗体混合物に添加し、
氷上で15分間インキュベートし、光から保護した。培養後、0.5mLのダルベッコPBSを各チ
ューブに添加した。
【0204】
試料を、2レーザー5色Beckman Coulter FC500またはBD LSR Fortessa X-20フローサイ
トメーターを使用して分析した。CD4-CD8-CD15-CD19+事象をB細胞に分類した。
【0205】
以下の抗体混合物を使用した:
【0206】
【0207】
免疫組織化学
剖検時に採取した凍結リンパ節及び脾臓を切片化し、免疫組織化学標準手順を用いてCD19
に対する抗体(Abcam、カタログ番号ab134114)で染色した。
【0208】
結果
反復静脈内及び単一皮下投与、ならびに初回用量による静脈内投与のいずれも、末梢血及
びリンパ節からのB細胞の用量依存的な枯渇をもたらした(
図4~9)。0.01mg/kgでは、最
初の2回の静脈内投与によりB細胞枯渇が(ほぼ)検出不可能なレベルまで誘導された。3
回目と4回目では、B細胞が部分的又は全く枯渇しなかった。反復投与後のこの効果の欠如
は、抗薬物抗体の形成に起因する可能性がある。0.1または1mg/kgでの反復静脈内投与は
完全なB細胞枯渇を誘導し、21日後(0.1mg/kg)または42~119日後(1mg/kg)に(部分的
な)回復が開始した。本発明の医薬組成物(30mMの酢酸、150mMのソルビトール、pH5.5)
中のDuoBody-CD3×CD20の単回皮下注射は、すべての用量レベルで、循環器及びリンパ節
から検出不可能なレベルまでB細胞枯渇をもたらした。B細胞の回復は全ての群で認められ
、低用量では数週間、高用量では投与後70日前後でベースラインに戻った。初回用量によ
る静脈内投与(0.01mg/kg)に続いて1日後に標的用量1mg/kgを投与すると、末梢血及びリ
ンパ節からB細胞が完全に枯渇し、予定された剖検日(29日目)まで続いた。本研究では
、免疫組織化学によりリンパ節及び脾臓からのB細胞の枯渇が確認された(
図10)。
【0209】
実施例4:DuoBody-CD3×CD20の5回反復静脈内注入または単回皮下注射後のカニクイザ
ルにおけるB細胞の枯渇(GLP毒性試験)
雌雄カニクイザルに、本発明の医薬組成物中のDuoBody-CD3×CD20を、毎週5回静脈内注入
(0.01、0.1または1mg/kg)、単回静脈内注入(0.1または1mg/kg)、または皮下注射(0.
1、1または10mg/kg)により投与した;生理食塩水を毎週5回静脈内注入を受ける対照群も
含めた:
【0210】
【0211】
この研究は、英国内務省の管轄下にある実験目的その他の科学的な目的で使用される脊
椎動物の保護に関する欧州条約(欧州評議会)に従って、Charles River Laboratories(
Tranent、UK)で実施された。
【0212】
モーリシャス起源の目的で育てられたカニクイザル、Macaca fascicularisは、LCL-C
ynologics(ポートルイス、モーリシャス)から入手した。動物は社会的に環境豊かなギ
ャングペンで飼育された。
【0213】
全血サンプル及びリンパ節生検を、上記のように収集した。
【0214】
B細胞の定量を以下を除いて上記と同様にフローサイトメトリーによって行った。
末梢血の免疫表現型決定のために、50μLの抗凝固全血を抗体混合物に添加し、+4℃で30
分間、光から保護してインキュベートした
TruCount導入管(BD Biosiences)をデータ取得中に使用
CD45+CD4-CD8-CD15-CD19+事象をB細胞として分類した
以下の抗体混合物を使用した:
【0215】
【0216】
結果
結果を
図11~16に示す。生理食塩水の静脈内注入は末梢血中のB細胞数を部分的に減少さ
せたが、B細胞数は最終注入後3週間以内にベースラインに戻った。DuoBody-CD3×CD20を
毎週5回静脈内注入すると、用量依存的なB細胞の枯渇が誘発され、低用量群では部分的な
枯渇、高用量群では長期にわたる完全な枯渇が認められた。0.1または1mg/kgの単回静脈
内注入は末梢血からのB細胞を完全に枯渇させ、試験した中で最高の用量では枯渇は剖検
日(36日目)まで持続した。DuoBody-CD3×CD20の皮下投与は、試験したすべての用量レ
ベルで末梢血から完全なB細胞枯渇をもたらした。最低用量ではB細胞レベルは部分的に回
復したが、1及び10mg/kgの群では剖検日(33日目)まで完全なB細胞枯渇が持続した。
【0217】
実施例5:カニクイザルにおけるDuoBody-CD3×CD20の薬物動態:静脈内(IV)及び皮下
(SC)投与経路
材料及び方法
30mMの酢酸緩衝剤、150mMのソルビトール及びpH5.5中に製剤化されたDuoBody-CD3×CD20
の薬物動態(PK)特性を、静脈内(IV)及び皮下(SC)投与経路の両方を評価する毒性試
験にてカニクイザルで決定した。血液試料は、雌カニクイザルにおけるDuoBody-CD3×CD2
0の用量範囲設定(DRF)試験、ならびにカニクイザルにおけるDuoBody-CD3×CD20のGLP毒
性試験から動物から得た。これらの研究の設計及び詳細は、実施例2に記載される。薬物
動態評価は、単回静脈内注入または皮下注射を受けた動物について実施した。DuoBody-CD
3×CD20の血漿中濃度を測定するために、すべての動物から血液試料(それぞれ約0.5mL)
を採取した。DRF試験から得たカニクイザル血漿中のDuoBody-CD3×CD20濃度を、Imperace
r(登録商標)Immuno-PCRアッセイを用いて測定した。GLP毒性試験から得たカニクイザ
ル血漿中DuoBody-CD3×CD20濃度を単分子計数(SMC)方法を用いて測定した。これらの評
価の詳細は、以下のセクションに示す。
【0218】
DuoBody-CD3×CD20特異的PK Imperacer(登録商標)Immuno-PCR
DRF試験から得たカニクイザル血漿中のDuoBody-CD3×CD20の濃度を、抗体-DNA複合体と
その後のタンパク質検出のためのDNAマーカーの指数的増幅を利用する高度な超高感度免
疫ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)方法であるImperacer(登録商標)方法を用いて決定した
。簡単に述べると、100%カニクイザル血漿中で調製したDuoBody-CD3×CD20の8点検量線
、品質管理(QC)及び(希釈した)カニクイザル試験試料を、Imperacer(登録商標)複
合体CHI-SAB1 A1(Chimera Biotec GmbH、Dortmund、Germany、Cat no.11-272)を含有
する試料希釈緩衝剤SDB6000で希釈した。試料を、DuoBody-CD3×CD20が結合できるCD3のH
isタグ化細胞外ドメイン(CD3ECDHis;Genmab、ユトレヒト、オランダ)でコーティング
された96ウェルELISAプレートに添加した。プレートを洗浄し、PCRマスターミックス(Mo
lzym、カタログ番号C-022)を添加し、試料をImperacer(登録商標)RT-PCRリーダー(Ag
ilent Technologies/Chimeraから得たEnabled RT Cycler MX 3000P/MX 3005P)に移した
。固定化DuoBody-CD3×CD20は、Imperacer(登録商標)検出コンジュゲートに含まれるDN
AマーカーのPCR増幅において検出できる。PCR-Mastermixにおける配列特異的蛍光プロー
ブの処理により、DNAマーカーが最初に存在する量に直接関連し、ΔCt信号として示され
る蛍光信号の増大を生ずる。リアルタイムPCRシグナル生成の完了後、測定された蛍光デ
ータを機器ソフトウェア(MXPro;Chimera Biotec GmbH)で処理し、数学ソフトウェア(
Microsoft Excel、XLfit分析プラグイン)で分析した。結合したDuoBody-CD3×CD20の濃
度は、非線形S字状4パラメーター回帰を用いて、ΔCt信号を対数スパイク濃度DuoBody-CD
3×CD20に対してプロットすることによって作成した標準曲線から決定した。このアッセ
イは、Chimera Biotec GmbH、Dortmundで確立され、実施された。LLOQは1.0pg/mL清澄な
血漿であった。
【0219】
DuoBody-CD3×CD20 PK単分子計数(SMC)方法
GLP毒性試験で得たカニクイザル血漿中DuoBody-CD3×CD20濃度を単分子計数(SMC)方法
を用いて決定した。SMC免疫測定法は、カニクイザル血漿中のDuoBody-CD3×CD20分子を測
定できる蛍光サンドイッチ免疫測定法である。
【0220】
簡潔には、キャリブレーター、QC及び研究サンプルを使用前に濾過し、磁気ビーズを、
製造者のプロトコル(Merck Millipore、カタログ番号03-0077-02)に従って、DuoBody-C
D3×CD20のCD3アーム(UM-IgG1mm-3005-101-3-1-MP;Genmab、ユトレヒト、オランダ)に
対する抗イディオタイプ抗体で標識した。濾過した試料を、コーティングした磁性粒子w
及びフルオロクロムに結合したDuoBody-CD3×CD20のCD20アームに対する抗イディオタイ
プ抗体(UM-IgG1mm-3001-2F2-Sab1.1(-FL);Genmab、ユトレヒト、オランダ)と共にイ
ンキュベートした。インキュベーション後、粒子を洗浄して、結合していないコンジュゲ
ートを除去した。次いで、結合した分析物及びコンジュゲートが結合した磁性粒子をクリ
ーンなプレートに移し、残りの緩衝剤を吸引した。分析物及びコンジュゲートを、製造業
者のプロトコル(メルクミリポア(Merck Millipore))に従って、溶出緩衝剤を用いて
磁性粒子から解離させ、溶出液を、中和緩衝剤を含む384ウエルプレートに移した。試料
をErenna(登録商標)単一分子計数システム(Merck/Millipore)によってキャピラリー
に吸引し、レーザーで照射した。蛍光標識された分子は発光し、閾値を超えるシグナルが
検出事象としてカウントされる。さらに、各事象(事象光子)の光量及び光の合計量(合
計光子)を測定した。
【0221】
この方法は、PRA Health Sciences Bioanalytical Laboratory(PRA)、アッセン、オ
ランダで検証され、実施された。検証では、LLOQを0.100ng/mL清澄な血漿で測定し、定量
上限(ULOQ)を50ng/mL清澄な血漿で測定した。
【0222】
結果
用量範囲設定試験:初回用量を併用した単回静脈内投与
DuoBody-CD3×CD20の血漿中濃度プロファイルを、1日目にDuoBody-CD3×CD20を0.01mg/kg
で初回用量を、2日目にDuoBody-CD3×CD20を1mg/kgの標的用量を投与したカニクイザル(
雌n=2)に対し測定した。初回用量と標的用量のいずれも10mL/kgの用量を30分間かけて
点滴静注した。DuoBody-CD3×CD20を0.01mg/kgの静脈内初回用量(1日目)に続けて1mg/k
gの標的用量(2日目)の静脈内投与後、Cmaxが1mg/kg用量の注入の終了にすぐに到達した
。CL値(10.7~13.7mL/day/kg)及びVD値(56.1~64.9mL/kg)は、反復投与静脈内注入群
では初回投与後に同程度で見られた。
【0223】
Imperacer Immuno-PCR方法から生成された個々の血漿濃度プロファイルを
図17Aに示し
、群平均PKパラメータを表10に示す。PKパラメータは1mg/kg用量についてのみ算出した。
【0224】
【0225】
用量設定試験:皮下単回投与
DuoBody-CD3×CD20の血漿中濃度プロファイルは、DuoBody-CD3×CD20を0.01、0.1、1、10
または20mg/kgの用量レベルで皮下単回注射後に測定した(n=2雌/群)。皮下注射は1mL/
kgの投与量で投与した。皮下投与後、C
maxは投与後0.5~7日間で達した。nC
max又はAUC
0-
∞のいずれかに基づいて、1mg/kgの用量まで、曝露の超比例的増加が観察された。1mg/kg
~20mg/kgの間で、用量の増大に伴う曝露量の比例的な増大が観察された。インペレータ
(登録商標)Immuno-PCR方法から発生する個々の血球濃度プロファイルを
図17Bに、群平
均PKパラメータを表11に示す。
【0226】
絶対皮下バイオアベイラビリティ(F)を、1mg/kgの皮下投与後のAUCinf及び1mg/kgの
初回静脈内投与後のAUC0-∞を用いて静脈内バイオアベイラビリティのパーセンテージと
して計算したところ111%であり、この用量で完全な(100%)皮下バイオアベイラビリテ
ィが示される。
【0227】
【0228】
GLP毒性試験:単回静脈内投与
DuoBody-CD3×CD20の血漿中濃度プロファイルは、DuoBody-CD3×CD20を0.1または1mg/kg
の用量レベル(雌雄各3匹/群)で単回静脈内注入した後に測定した。SMC法で生成された
群平均血漿濃度プロファイルを
図17Cに示し、群平均薬物動態パラメータを表12に示す。D
uoBody-CD3×CD20(平均C
max及びAUC
(0-t)に基づく)への全身曝露は、雌雄で用量の増加
とともに増加した。DuoBody-CD3×CD20への全身曝露量は、用量で正規化した推定値に基
づくと、雌雄ともに0.1~1mg/kgの用量範囲の間で概ね用量比例性を上回って増加した。T
maxの中央値は一貫して0.5時間(注入時間の終了)であった。CL、VD、VSSは投与量の増
加に伴い低下する傾向が認められた。T
1/2は、脱離相が0.1mg/kgでは168または336時間で
ある一方、いずれの性別でも1mg/kgの高値では最大840時間となり(男性98時間及び女性1
25時間の平均値)で適切に導出される可能性が高かった。全身曝露は0.1及び1mg/kgでは
雄と雌の間でほぼ同等であったが、0.1mg/kgでは雄の平均AUC
(0-t)が投与した雌よりも大
きかった。これは、他のすべての動物よりも約7倍大きい総曝露量を示した1匹の動物によ
るものである可能性が高い。この動物による変動を考慮すると、C
max及びAUC
(0-t))の雌/
雄比は0.8~1.3の範囲(0.1mg/kgのAUC
(0-t)では0.3)であった。
【0229】
【0230】
単回皮下投与
DuoBody-CD3×CD20の血漿中濃度プロファイルは、DuoBody-CD3×CD20を0.1、1、10mg/kg
の用量レベル(雌雄各3例/群)で単回皮下注射後に測定した。皮下注射は0.2mL/kgの投与
量で投与した。SMC法から生成された群平均血漿濃度プロファイルを
図17Cに示し、群平均
薬物動態パラメータを表13に示す。DuoBody-CD3×CD20(平均C
max及びAUC
(0-t)に基づく
)への全身曝露は、雌雄ともに皮下投与量の増加に伴って増加した。用量正規化推定値に
基づくと、C
maxは雄及び雌において、全体として、0.1~1mg/kgの間で用量比例的に増加
し、1~10mg/kgの間の用量比例より大きかったが、用量正規化AUC
(0-t)は0.1~10mg/kgの
用量比例より大きく増加した。全体として、この増加はSC投与後の雌雄で0.1~10mg/kgの
間の用量比例を上回った。T
maxの中央値は雄では一貫して72時間であったが、雌では個々
のT
max値間でのばらつきが大きいため、T
maxの傾向に一貫性は見られなかった。T
1/2は高
用量で最も長く、この時雄及び雌において最も適切に排出相の特徴があるように思われる
。全身曝露量は一般的に0.1mg/kgでは雌より雄で多く、1及び10mg/kg群では雌と雌の間で
同等であった;C
maxとAUC
(0-t)の雌/雄比は0.1mg/kgではそれぞれ0.5及び0.4であり、1mg
/kgではいずれも0.8であり、10mg/kgではいずれも1.0であった。
【0231】
【0232】
まとめると、DuoBody-CD3×CD20の静脈内注入後、血漿中濃度は30分間の投与期間終了
時まで上昇し、その後は概ね二相性に低下した。皮下投与後、投与後約72時間に最高値を
示すまで増加の延長が認められ、投与後168時間まで比較的定常レベルで推移した。その
後、4週間のサンプリング期間の終わりまで、濃度は単相的に減少した。等価の用量では
、静脈内投与後の最大血漿中濃度は皮下投与後の最大血漿中濃度よりも有意に高かった。