(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145681
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】イヌライム病ワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/02 20060101AFI20231003BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231003BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231003BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231003BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231003BHJP
A61K 39/175 20060101ALI20231003BHJP
A61K 39/235 20060101ALI20231003BHJP
A61K 39/23 20060101ALI20231003BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20231003BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20231003BHJP
A61K 39/155 20060101ALI20231003BHJP
A61K 39/008 20060101ALI20231003BHJP
A61K 39/205 20060101ALI20231003BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20231003BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A61K39/02 ZNA
A61K48/00
A61P37/04
A61P31/04 171
A61P31/12
A61K39/175
A61K39/235
A61K39/23
A61K39/145
A61K39/215
A61K39/155
A61K39/008
A61K39/205
C12N15/31
C12N15/86 Z
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023126448
(22)【出願日】2023-08-02
(62)【分割の表示】P 2020530359の分割
【原出願日】2018-12-03
(31)【優先権主張番号】62/594,342
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ラフルール,ロンダ・エル
(72)【発明者】
【氏名】ダント,ジェニファー・シー
(72)【発明者】
【氏名】モグラー,マーク・エー
(72)【発明者】
【氏名】キャリスター,スティーブン・エム
(72)【発明者】
【氏名】シュ,ジーチャン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】イヌライム病に対する免疫原性組成物、ワクチン、および病原性ボレリア遺伝子種に対して哺乳動物を免疫する方法を提供する。
【解決手段】1つ以上のBorrelia burgdorferi抗原またはその抗原断片をそれぞれ個別にコードする2つ以上のアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含む免疫原性組成物であって、1つのアルファウイルスRNAレプリコン粒子が、1つ以上のBorrelia burgdorferi外表面蛋白質A(OspA)またはその抗原断片をコードし、別のアルファウイルスRNAレプリコン粒子が、1つ以上のBorrelia burgdorferi外表面蛋白質C(OspC)またはその抗原断片をコードする、免疫原性組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のBorrelia burgdorferi抗原またはその抗原断片をそれぞれ個別にコードする2つ
以上のアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含む免疫原性組成物であって、
1つのアルファウイルスRNAレプリコン粒子が、1つ以上のBorrelia burgdorferi外表面蛋
白質A (OspA)またはその抗原断片をコードし、別のアルファウイルスRNAレプリコン粒子
が、1つ以上のBorrelia burgdorferi外表面蛋白質C (OspC)またはその抗原断片をコード
する、免疫原性組成物。
【請求項2】
2つ以上のBorrelia burgdorferi抗原をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子を
含む免疫原性組成物であって、少なくとも1つのBorrelia burgdorferi抗原が外表面蛋白
質A (OspA)またはその抗原断片であり、少なくとも1つの他のBorrelia burgdorferi抗原
が外表面蛋白質C (OspC)またはその抗原断片である、免疫原性組成物。
【請求項3】
OspAまたはその抗原断片およびOspCまたはその抗原断片をそれぞれ個別にコードする第1
および第2のアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含む請求項2に記載の免疫原性組成物
であって、第1のRNAレプリコン粒子が、OspCまたはその抗原断片をコードする核酸配列の
上流に位置するOspAまたはその抗原断片をコードする核酸配列を含み、第2のRNAレプリコ
ン粒子が、OspAまたはその抗原断片をコードする核酸配列の上流に位置するOspCまたはそ
の抗原断片をコードする核酸配列を含む、免疫原性組成物。
【請求項4】
アルファウイルスRNAレプリコン粒子の少なくとも1つがベネズエラ馬脳炎ウイルス(VEEV)
RNAレプリコン粒子である、請求項1、2または3記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記OspAとは異なるBorrelia burgdorferi株に由来する第2のOspAまたはその抗原断片、
前記OspCとは異なるBorrelia burgdorferi株に由来する第2のOspCまたはその抗原断片、
およびそれらの任意の組合せからなる群から選択されるBorrelia burgdorferi抗原をコー
ドする1以上の追加のアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含む、請求項1、2、3または4
に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記1つ以上の追加のアルファウイルスRNAレプリコン粒子が、VEEV RNAレプリコン粒子で
ある、請求項5に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
少なくとも1つのOspAがB. burgdorferi株297に由来し、少なくとも1つのOspCがB. burgdo
rferi株50772に由来する、請求項1、2、3、4、5または6に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
OspAが配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を含むアミノ酸配列を含み、Os
pCが配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を含むアミノ酸配列を含む、請求
項7に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7または8に記載の免疫原性組成物および薬学的に許容される担
体を含む、Borrelia burgdorferi感染による疾患の予防を助けるワクチン。
【請求項10】
1つ以上の抗体が、イヌをワクチンで免疫したときにイヌにおいて誘導され、該1つ以上の
抗体が、OspA-ボレリア殺菌抗体、OspC-ボレリア殺菌抗体、またはOspA-ボレリア殺菌抗
体とOspC-ボレリア殺菌抗体の両方からなる群から選択される、請求項9記載のワクチン。
【請求項11】
非ボレリア病原体に対する防御免疫を誘発するための少なくとも1つの非ボレリア免疫原
をさらに含む、請求項9または10に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
非ボレリア免疫原由来の少なくとも1つのタンパク質抗原またはその抗原断片をコードす
るヌクレオチド配列を含むアルファウイルスRNAレプリコン粒子をさらに含む、請求項9、
10または11に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
非ボレリア免疫原が、イヌジステンパーウイルス、イヌアデノウイルス、イヌパルボウイ
ルス、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌコロナウイルス、イヌインフルエンザウイ
ルス、レプトスピラ血清型、リーシュマニア生物、Bordetella bronchiseptica、マイコ
プラズマ種、狂犬病ウイルス、Ehrlichia canis、Anaplasma種、およびそれらの任意の組
合せからなる群から選択される非ボレリア病原体に由来する、請求項11または12に記載の
ワクチン。
【請求項14】
非ボレリア免疫原が、イヌジステンパーウイルス、イヌアデノウイルス、イヌパルボウイ
ルス、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌコロナウイルス、イヌインフルエンザウイ
ルス、イヌインフルエンザウイルス、レプトスピラ血清型、リーシュマニア菌、Bordetel
la bronchiseptica、マイコプラズマ種、狂犬病ウイルス、Ehrlichia canis、Anaplasma
種、およびそれらの任意の組合せからなる死滅または弱毒化非ボレリア病原体の群から選
択される死滅または弱毒化非ボレリア病原体である、請求項11に記載のワクチン。
【請求項15】
マイコプラズマ種がMycoplasma cynosを含む、請求項13または14に記載のワクチン。
【請求項16】
前記レプトスピラ血清型が、Leptospira kirschneri serovar grippotyphosa、Leptospir
a interrogans serovar canicola、Leptospira interrogans serovar icterohaemorrhagi
ae、Leptospira interrogans serovar pomona、およびそれらの任意の組み合わせからな
る群より選択される、請求項13、14または15に記載のワクチン。
【請求項17】
非アジュバントワクチンである請求項9、10、11、12、13、14、15または16のワクチン組
成物。
【請求項18】
病原性ボレリア遺伝子種に対して哺乳動物を免疫する方法であって、請求項9、10、11、1
2、13、14、15、16または17に記載のワクチンの免疫学的に有効な量を哺乳動物に投与す
ることを含む方法。
【請求項19】
哺乳動物がイヌである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物がウマ科動物である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
哺乳動物がネコである、請求項18記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、イヌライム病のための新しいワクチンに関する。ワクチンを単独で、または他
の防御剤と組み合わせて製造し、使用する方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
背景
イヌライム病は、主として米国におけるB. burgdorferi sensu stricto (ss)および欧州
におけるB. burgdorferi ss、B. garinii、およびB. afzeliiを含むボレリア種(spp.)ス
ピロヘータによる感染によって引き起こされる[Barantonら、Int. J. Sys. Bacteriol.42
:378-383(1992); Hoviusら、J. Clin. Microbiol.38:2611-2621(2000)]。スピロヘータは
血液を接種し、感染したIxodes spp.ダニとして伝播し、感染はイヌにおいて無症候性滑
膜炎から急性関節炎および関節痛までの範囲の臨床徴候を引き起こす[Jacobsonら、Semin
. Vet. Med. Surg.11:172-182(1996); Summersら、J. Comp. Path.133:1-13(2005)]。重
要なことに、イヌライム病症例の発生率は、ヒト症例数の増加と一致して年々増加し続け
ている[Haninkovaら、Emerg. Infect. Dis.12:604-610(2006)]。さらに、イヌの品種の中
には、特にリトリーバーやベルネス山犬など、重度の糸球体腎炎を発症したものもあり[D
ambachら、Vet Pathol 34:85-96(1997)]、合併症による死亡例が報告されている[Littman
ら、J Vet Intern Med.20:422-434(2006)]。
【0003】
ボレルア種の感染に応答して産生される抗体は、2つの異なる機能を有する[Schwan, Bioc
hem. Soc. Trans.31:108-112(2003); Tokarzら、Infect. Immun.72:5419-5432(2004)]。
最も一般的な体液性免疫応答は、食細胞による摂取のためにスピロヘータを「標識」する
非特異的結合/オプソニン化(コーティング)抗体の産生である。したがって、この体液性
免疫応答は、外来抗原を殺す補体媒介膜攻撃複合体に結合し誘導する免疫グロブリン(Ig)
M抗体の産生につながる。しかし、IgM抗体応答は、典型的には、抗原に結合するが補体媒
介殺傷を刺激しないIgG抗体にクラススイッチする。むしろ、IgG抗体は標的抗原に結合し
、食細胞による摂取のためにスピロヘータを効果的に「標識」する。
【0004】
このより典型的なオプソニン化IgG抗体反応は、ワクチン接種後に効果的な防御をもたら
さなかった。これは、主に、免疫応答を誘導するタンパク質が他の複数の微生物に一般的
であり、また、食細胞との相互作用がより効果的である可能性が高い血流中では、ライム
病スピロヘータの存在量がより少ないためである[Caineら、Infect Immun 83:3184-3194(
2015)]。実際、オプソニン化抗体は、他の微生物に共通するいくつかのタンパク質(すな
わち、細菌の鞭毛を構成する41kDaのタンパク質)によって誘導され、ワクチン接種誘発性
の抗体媒介性免疫に対する価値を、せいぜい疑問に思わせる。
【0005】
一方、少数のボレリア種蛋白質は、IgG抗体に切り替えた後でも補体結合能(殺ボレリア性
)を維持する抗体反応を誘導する。より具体的には、殺ボレリア抗体は特定のタンパク質
標的に結合し、補体を誘導して、食細胞による捕捉の必要なしに、生体を殺す膜侵襲複合
体を形成する。オプソニン化抗体とは対照的に、このボレリア殺菌反応は、最も効果的な
イヌライム病バクテリンの基礎を形成している。
【0006】
最も初期のイヌライム病バクテリンは、B. burgdorferi ss外表面タンパク質(Osp)Aに特
異的な殺ボレリア抗体を誘導することによって防御を提供した[Chuら、JAVMA 201:403-41
1(1992); Maら、Vaccine 14:1366-1374(1996); Wikleら、Intern. J. Appl. Res. Vet. M
ed.4:23-28(2006);およびStraubingerら、Vaccine 20:181-193(2002)]。このアプローチ
は効果的であるが、現在ではこの戦略にはワクチン接種を失敗させうる重大な欠点がある
ことが理解されている。例えば、抗体は、OspAを発現しているB. burgdorferi ssスピロ
ヘータのみを認識し[Jobeら、J. Clin. Microbiol.32:618-622(1994); Lovrichら、Infec
t. Immun.63:2113-2119(1995)]、そしてダニはまた、OspAを発現していないB. burgdorfe
ri ssスピロヘータに一般的に感染される[Fikrigら、Infect. Immun.63:1658-1662(1995)
; Ohnishiら、Proc. Natl. Acad. Sci.98:670-675(2001)]。また、ダニはライム病の原因
ともなるB. afzeliiやB. garinii等の他のボレリア種にも一般的に感染しており[Ornstei
n et al.、 J. Clin. Microbiol. 39:1294-1298(2001)]、OspA抗体は遺伝子種特異的であ
る[Lovrich et al.、 Infect. Immun. 63:2113-2119(1995)]。さらに、ダニの中腸への付
着を媒介するOspAの発現[Palら、J Clin Invest 106:561-569(2000)]は、感染したダニが
摂食を開始した直後にオフになるため、防御を提供するための「機会の窓」は短い[Schwa
nら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:2909-2913(1995)]。
【0007】
研究者らは、OspAベースのイヌライム病ワクチンの開発と一致して、B. burgdorferi ss
OspC蛋白質も防御的ボレリア殺菌抗体を誘導することを示した[Rousselleら、J. Infect.
Dis. 178:733-741(1998); Ikushimaら、FEMS Immunol. Med. Microbiol. 29:15-21(2000
)]が、同じ地理的地域から採取したB. burgdorferi ss分離株の中でもOspCは極めて不均
一であったことから、この反応は有効なライム病ワクチンには有用ではないと考えられた
[Ing-Nangら、Genetics 151:15-30(1999); Bucklesら、Clin.Vacc.Immuno. 13:1162-1165
(2006)]。したがって、研究者らは、OspCボレリア殺菌抗体は少数のライム病スピロヘー
タに対してのみ抗体媒介性免疫をもたらすと推測した。
【0008】
一貫して、Callisterら、[U.S.6,210,676およびU.S.6,464,985]は、Ospのカルボキシ(C)
末端に特異的なOspCの免疫原性ポリペプチド断片を単独またはOspAポリペプチドと組み合
わせて使用して、ヒトおよび他の哺乳動物をライム病から保護するためのワクチンに使用
することを提案している。具体的には、OspCのカルボキシ(C)末端内の7アミノ酸エピトー
プに特異的に結合するボレリア殺菌抗体を誘導するという戦略であった[Jobe et al.、 C
lin. Diagn. Lab. Immuno. 10:573-578(2003); Lovrich et al.、 Clin. Diagn. Lab. Im
munol. 12:746-751(2005)]。なぜなら、エピトープは現在までに特徴付けられたB. burgd
orferi ss株の各々の間で保存されており、(BLAST検索で見出せるような)他の病原性ボ
レリア種の間でも保存されているからである。したがって、保存されたエピトープに対す
るOspCボレリア殺菌抗体を誘導するワクチンは、OspC遺伝子の系統的特徴付けにかかわら
ず、各B. burgdorferi ss「株」に対する防御をもたらし、またB. gariniiまたはB. afze
liiのような他のイヌライム病病原体に対しても防御をもたらすことが期待される。Livey
ら[U.S. 6,872,550]はまた、組換えOspA、OspB、およびOspC蛋白質の組合せから調製した
ライム病に対する免疫化のためのワクチンを提案した。
【0009】
この戦略に基づき、2009年に、Merck Animal Health, Inc.は、それぞれ外膜表面にOspA
またはOspCのいずれかを発現する2つの別々のB. burgdorferi分離株の混合物からなる全
細胞細菌ノビバック(Nobivac)ライムのUSDA承認を受けた[U.S. 8,137,678 B2; U. 8,41
4,901 S. B2]。最も重要なことは、ノビバックライム・ワクチンにより、メルク・アニマ
ル・ヘルスのアプローチが、イヌライム病に対してより包括的な防御を提供し得ることが
十分に検証されていることである。例えば、研究者らは、ワクチンがOspAおよびOspCの両
方のボレリア殺菌抗体を誘導することを確認し、また、OspC抗体反応が、C末端で保存さ
れたエピトープに特異的なボレリア殺菌抗体のかなりの割合を含むことを実証した[LaFle
urら、Clin Vaccine Immunol 16:253-259(2009)]。さらに、ワクチンはワクチン接種後1
年間、レシピエントのイヌを確実に保護することが確認され[LaFleurら、Clin Vacc Immu
nol 17:870-874(2010)]、また、OspC発現スピロヘータが高いレベルの防御に有意な寄与
をもたらすことが示された[LaFleurら、Clin Vacc Immunol 22:836-839(2015)]。しかし
ながら、このような改善にもかかわらず、特にライム病を引き起こすスピロヘータの遺伝
的多様性が拡大し続けるにつれて、より包括的で長期的な防御の必要性が依然として存在
している。
【0010】
さらに最近では、研究者らはOspCの不均一性を克服するためのさらなる戦略を採用し、し
たがってより包括的な保護を提供した。この戦略は、多数のB. burgdorferi ss分離株か
らのOspCの系統解析を行い、複数の細菌間で均一である遺伝子配列内の領域を同定するこ
とであった[Earnhardtら.、Clin Vaccine Immunol 14:628-634(2007)]。次に、同博士ら
は、多数の均一領域を含む「人工」遺伝子を設計し、その人工遺伝子を用いてキメラ蛋白
質を作製した。キメラ蛋白質は、おそらく、OspCボレリア殺菌抗体を誘導するためのワク
チンに使用され、それぞれの取り込まれた領域に結合し、より包括的な防御を提供するで
あろう[Rhodesら、Vet J 198:doi:10.1016/j.tvjl.2013.07.019(2013)]。その結果、2016
年に、OspCの7種類の「タイプ」のエピトープを含む組換え体(r)OspAと人工的に作製され
たキメラ蛋白質から成る市販のイヌライム病ワクチン(Vanguard (登録商標) crLyme)が
USDAに承認された[Zoetis技術情報-SAB-00233]。しかしながら、ボレリア殺抗体を誘導
し得るOspCサブユニット抗原に基づくワクチンをどのように調製するかは、先行技術から
は知られていない。
【0011】
長年にわたって、アルファウイルス由来レプリコンRNA粒子(RP)を含む多くのベクター戦
略が利用され[Frolov ら., PNAS 93: 11371-11377 (1996); Vander Veen, ら. Anim Heal
th Res Rev. 13(1): 1-9. (2012) doi: 10.1017/S1466252312000011; Kamrudら., J Gen
Virol.91(Pt 7):1723-1727(2010)]、これらは、ベネズエラ馬脳炎ウイルス(VEE) [Pushko
ら.、 Virology 239:389-401(1997)]、Sindbis (SIN) [Bredenbeek ら.、 Journal of V
irology 67:6439-6446(1993)]、Semliki Forest virus (SFV) [Liljestrom and Garoff,
Biotechnology (NY)9:13561361(1991)]を含む異なったアルファウイルスから開発された
ものである。RPワクチンは増殖欠損アルファウイルスRNAレプリコンを宿主細胞に送達し
、in vivoで所望の抗原導入遺伝子の発現をもたらす[Pushkoら、Virology 239(2):389-40
1(1997)]。RPは、一部の従来のワクチン製剤と比較した場合、魅力的な安全性及び有効性
プロファイルを有する[Vander Veen,ら. Anim Health Res Rev.13(1):1-9.(2012)]。RPプ
ラットフォームは病原性抗原をコードするために使用されており、いくつかのUSDA認可の
豚および家禽用ワクチンの基礎となっている。また、Gipsonら[Vaccine.21(25-26):3875-
84.(2003)]は、イヌでは同等の試験が実施されていないと報告されているものの、マウス
モデルワクチン接種試験においてRPプラットフォームを用いてOpsA抗原をコード化してい
る。
【0012】
したがって、ノビバックライムワクチンによってもたらされる有効性の増加および過去の
多くの推定される死亡終了および/または失敗にもかかわらず、哺乳動物、特にイヌをこ
の衰弱性疾患からより良好に保護するであろうさらなる改良されたライム病ワクチンの長
期にわたる必要性が残されている。
【0013】
本明細書中の文献の引用はこれらの文献が本件出願の「従来技術」として利用し得ること
を認めたものと見なされるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】U.S.6,210,676
【特許文献2】U.S.6,464,985
【特許文献3】U.S. 6,872,550
【特許文献4】U.S. 8,137,678 B2
【特許文献5】U. 8,414,901 S. B2
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Barantonら、Int. J. Sys. Bacteriol.42:378-383(1992)
【非特許文献2】Hoviusら、J. Clin. Microbiol.38:2611-2621(2000)
【非特許文献3】Jacobsonら、Semin. Vet. Med. Surg.11:172-182(1996)
【非特許文献4】Summersら、J. Comp. Path.133:1-13(2005)
【非特許文献5】Haninkovaら、Emerg. Infect. Dis.12:604-610(2006)
【非特許文献6】Dambachら、Vet Pathol 34:85-96(1997)]
【非特許文献7】Littmanら、J Vet Intern Med.20:422-434(2006)
【非特許文献8】Schwan, Biochem. Soc. Trans.31:108-112(2003)
【非特許文献9】Tokarzら、Infect. Immun.72:5419-5432(2004)
【非特許文献10】Caineら、Infect Immun 83:3184-3194(2015)
【非特許文献11】Chuら、JAVMA 201:403-411(1992)
【非特許文献12】Maら、Vaccine 14:1366-1374(1996)
【非特許文献13】Wikleら、Intern. J. Appl. Res. Vet. Med.4:23-28(2006)
【非特許文献14】Straubingerら、Vaccine 20:181-193(2002)
【非特許文献15】Jobeら、J. Clin. Microbiol.32:618-622(1994)
【非特許文献16】Lovrichら、Infect. Immun.63:2113-2119(1995)
【非特許文献17】Fikrigら、Infect. Immun.63:1658-1662(1995)
【非特許文献18】Ohnishiら、Proc. Natl. Acad. Sci.98:670-675(2001)]
【非特許文献19】Ornstein et al.、 J. Clin. Microbiol. 39:1294-1298(2001)
【非特許文献20】Lovrich et al.、 Infect. Immun. 63:2113-2119(1995)
【非特許文献21】Palら、J Clin Invest 106:561-569(2000)
【非特許文献22】Schwanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:2909-2913(1995)
【非特許文献23】Rousselleら、J. Infect. Dis. 178:733-741(1998)
【非特許文献24】Ikushimaら、FEMS Immunol. Med. Microbiol. 29:15-21(2000)
【非特許文献25】Ing-Nangら、Genetics 151:15-30(1999)
【非特許文献26】Bucklesら、Clin.Vacc.Immuno. 13:1162-1165(2006)
【非特許文献27】Jobe ら、 Clin. Diagn. Lab. Immuno. 10:573-578(2003)
【非特許文献28】Lovrichら、 Clin. Diagn. Lab. Immunol. 12:746-751(2005)
【非特許文献29】LaFleurら、Clin Vaccine Immunol 16:253-259(2009)
【非特許文献30】LaFleurら、Clin Vacc Immunol 17:870-874(2010)
【非特許文献31】LaFleurら、Clin Vacc Immunol 22:836-839(2015)
【非特許文献32】Earnhardtら.、Clin Vaccine Immunol 14:628-634(2007)
【非特許文献33】Rhodesら、Vet J 198:doi:10.1016/j.tvjl.2013.07.019(2013)
【非特許文献34】Frolovら, PNAS 93: 11371-11377 (1996)
【非特許文献35】Vander Veen, ら. Anim Health Res Rev. 13(1): 1-9. (2012)
【非特許文献36】Kamrudら., J Gen Virol.91(Pt 7):1723-1727(2010)
【非特許文献37】Pushko ら.、 Virology 239:389-401(1997)
【非特許文献38】Bredenbeek ら.、 Journal of Virology 67:6439-6446(1993)
【非特許文献39】Liljestrom and Garoff, Biotechnology (NY)9:13561361(1991)
【非特許文献40】Pushkoら、Virology 239(2):389-401(1997)
【非特許文献41】Vander Veen,ら. Anim Health Res Rev.13(1):1-9.(2012)
【非特許文献42】GipsonらVaccine.21(25-26):3875-84.(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の要約
したがって、本発明は、1つ以上のBorrelia burgdorferi抗原をコードするベクターを提
供する。このようなベクターは、これらのベクターを含む免疫原性組成物において使用す
ることができる。本発明の免疫原性組成物は、ワクチンに使用することができる。本発明
の一態様では、ワクチンは、ライム病に対するワクチン接種された被験体(例えば、哺乳
動物)の保護を助ける。この型の特定の実施形態では、ワクチン接種対象はイヌである。
別の実施形態では、ワクチン接種された被験体は家ネコである。他の家畜哺乳類、ウマ科
動物(例えば、ウマ)および/またはウシ等が本発明のワクチンおよび/または方法によって
保護され得る。本発明はさらに、ライム病および他の疾患、例えば他のイヌまたはウマの
感染症に対する防御免疫を誘発するための組合せワクチンを提供する。本発明の免疫原性
組成物およびワクチンを製造し、使用する方法もまた提供される。
【0017】
具体的な実施形態では、ベクターは、Borrelia burgdorferi抗原をコードする核酸構築物
を含むアルファウイルスRNAレプリコン粒子である。より特定の実施形態では、アルファ
ウイルスRNAレプリコン粒子は、ベネズエラ馬脳炎(VEE)アルファウイルスRNAレプリコン
粒子である。さらに具体的な実施形態では、VEEアルファウイルスRNAレプリコン粒子は、
TC-83 VEEアルファウイルスRNAレプリコン粒子である。他の実施形態では、アルファウイ
ルスRNAレプリコン粒子は、シンドビス(SIN)RNAレプリコン粒子である。さらに他の実施
形態では、アルファウイルスRNAレプリコン粒子は、Semliki Forestウイルス(SFV)アルフ
ァウイルスRNAレプリコン粒子である。別の実施形態では、裸のDNA発現ベクターが、Borr
elia burgdorferi抗原をコードする核酸構築物を含む。さらに別の実施形態では、裸のDN
A発現ベクターは、それ自身がBorrelia burgdorferi抗原をコードするアルファウイルス
レプリコン配列を含む。本発明は、合成メッセンジャーRNA、RNAレプリコン、ならびに本
発明のアルファウイルスRNAレプリコン粒子の全て、裸のDNAベクター、ならびに核酸構築
物(例えば、合成メッセンジャーRNA、RNAレプリコン)、アルファウイルスRNAレプリコン
粒子、および/または本発明の裸のDNAベクターを含む免疫原性組成物および/またはワク
チンを含む、本発明の核酸構築物の全てを含む。
【0018】
特定の実施形態において、本発明の核酸構築物は、1つ以上のBorrelia burgdorferi抗原
をコードする。そのような1つの実施形態において、Borrelia burgdorferi抗原は、外表
面蛋白質A (OspA)またはその抗原断片である。別の実施形態では、Borrelia burgdorferi
抗原は、外表面蛋白質C (OspC)またはその抗原断片である。さらに他の態様において、核
酸構築物は、2~4個のBorrelia burgdorferi抗原またはその抗原断片をコードする。この
型の特定の実施形態では、核酸構築物は、1以上のOspAまたはその1以上の抗原断片、およ
び1以上のOspCまたはその抗原断片をコードする。特に、核酸構築物は、OspAまたはその
抗原断片およびOspCまたはその抗原断片をコードし、ここでOspAまたはその抗原断片は、
OspCまたはその抗原断片をコードする核酸配列の上流に位置する核酸配列によってコード
される。別の特定の実施形態では、核酸構築物は、OspCまたはその抗原断片およびOspAま
たはその抗原断片をコードし、ここでOspCまたはその抗原断片は、OspAまたはその抗原断
片をコードする核酸配列の上流に位置する核酸配列によってコードされる。他の実施形態
では、核酸構築物は、2つ以上のBorrelia burgdorferi株に由来する、OspAまたはその抗
原断片をコードする。さらに他の実施形態では、核酸構築物は、2つ以上のBorrelia burg
dorferi株に由来するOspCまたはその抗原断片をコードする。本発明はさらに、これらの
核酸構築物のいずれかを含むアルファウイルスRNAレプリコン粒子を提供する。別の実施
形態では、ベクターは、これらの核酸構築物の1つ以上を含む裸のDNAである。
【0019】
特定の実施形態では、免疫原性組成物は、1つ以上のBorrelia burgdorferi抗原またはそ
の抗原断片をコードする核酸構築物を含むアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含む。
関連する実施形態において、免疫原性組成物は、2~4個のBorrelia burgdorferi抗原また
はその抗原断片をコードする核酸構築物を含むアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含
む。
【0020】
具体的な実施形態では、免疫原性組成物は、本発明の核酸構築物を含むアルファウイルス
RNAレプリコン粒子を含む。この型の特定の実施形態では、アルファウイルスRNAレプリコ
ン粒子は、OspAをコードする核酸構築物を含む。関連する実施形態では、アルファウイル
スRNAレプリコン粒子は、OspAの抗原断片をコードする核酸構築物を含む。さらに他の実
施形態では、アルファウイルスRNAレプリコン粒子は、2つ以上の異なるBorrelia burgdor
feri株由来のOspAsまたはその抗原断片をコードする核酸構築物を含む。他の実施形態で
は、アルファウイルスRNAレプリコン粒子は、OspCをコードする核酸構築物を含む。関連
する実施形態では、アルファウイルスRNAレプリコン粒子は、OspCの抗原断片をコードす
る核酸構築物を含む。さらに他の実施形態では、アルファウイルスRNAレプリコン粒子は
、2つ以上の異なるBorrelia burgdorferi株由来のOspCまたはその抗原断片をコードする
核酸構築物を含む。
【0021】
さらに他の実施形態では、免疫原性組成物は、以下のBorrelia burgdorferi抗原:1つ以上
の株からのOspA、1つ以上の株からのOspC、および/またはこれらのタンパク質のいずれか
の抗原性断片、の2つ以上の組合せをコードする核酸構築物を含むアルファウイルスRNAレ
プリコン粒子を含む。特定の実施形態では、免疫原性組成物は、全てのベネズエラ馬脳炎
(VEE)アルファウイルスRNAレプリコン粒子であるアルファウイルスRNAレプリコン粒子を
含む。
【0022】
関連する実施形態では、免疫原性組成物は、2つ以上の組のアルファウイルスRNAレプリコ
ン粒子を含む。このタイプの特定の実施形態では、1セットのアルファウイルスRNAレプリ
コン粒子は、第1の核酸構築物(コンストラクト)を含むが、他のセットのアルファウイ
ルスRNAレプリコン粒子は、第2の核酸構築物を含む。さらに他の実施形態では、免疫原性
組成物は、第1の核酸構築物を含む1セットのアルファウイルスRNAレプリコン粒子、第2
の核酸構築物を含む別のセットのアルファウイルスRNAレプリコン粒子、および第3の核
酸構築物を含む第3のセットのアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含む。さらに他の
実施形態では、免疫原性組成物は、第1の核酸構築物を含む1セットのアルファウイルスRN
Aレプリコン粒子、第2の核酸構築物を含む別のセットのアルファウイルスRNAレプリコン
粒子、第3の核酸構築物を含む第3のセットのアルファウイルスRNAレプリコン粒子、お
よび第4の核酸構築物を含む第4のセットのアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含む
。さらに他の実施形態では、免疫原性組成物は、第1の核酸構築物を含むアルファウイル
スRNAレプリコン粒子のセット、第2の核酸構築物を含む別のセットのアルファウイルスR
NAレプリコン粒子、第3の核酸構築物を含む第3のセットのアルファウイルスRNAレプリ
コン粒子、第4の核酸構築物を含む第4のセットのアルファウイルスRNAレプリコン粒子
、および第5の核酸構築物を含む第5のセットのアルファウイルスRNAレプリコン粒子を
含む。このような実施形態では、第1の核酸構築物、第2の核酸構築物、第3の核酸構築
物、第4の核酸構築物、および第5の核酸構築物のヌクレオチド配列はすべて異なる。
【0023】
従って、本発明は、各々が1つ以上のBorrelia burgdorferi抗原を個別にコードする2つ以
上のアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含む免疫原性組成物を提供する。この型の特
定の実施形態では、1つのアルファウイルスRNAレプリコン粒子は、Borrelia burgdorferi
外表面蛋白質A (OspA)またはその抗原断片をコードする。特定の実施形態において、1つ
のアルファウイルスRNAレプリコン粒子は、Borrelia burgdorferi外表面蛋白質C (OspC)
またはその抗原断片をコードする。さらに別の実施形態では、1つのアルファウイルスRNA
レプリコン粒子は、Borrelia burgdorferi OspAまたはその抗原断片をコードし、第2のア
ルファウイルスRNAレプリコン粒子は、Borrelia burgdorferi OspCまたはその抗原断片を
コードする。関連する実施形態では、免疫原性組成物は、さらに、2つ以上のBorrelia bu
rgdorferi抗原またはその抗原断片をコードする核酸構築物を含むアルファウイルスRNAレ
プリコン粒子を含む。
【0024】
特に、本発明は、OspAまたはその抗原断片をそれぞれ個別にコードする第1および第2のア
ルファウイルスRNAレプリコン粒子、ならびにOspCまたはその抗原断片(二重構築物)を含
む免疫原性組成物を提供し、第1のRNAレプリコン粒子は、OspAをコードする核酸配列また
はその抗原断片の上流に位置するOspAまたはその抗原断片をコードする核酸配列を含み、
第2のRNAレプリコン粒子は、OspCをコードする核酸配列またはOspAをコードする核酸配列
またはその抗原断片の上流に位置するその抗原断片を含む。
【0025】
特定の実施形態では、核酸構築物は、B. burgdorferi株297に由来するOspA、またはその
抗原断片をコードする。この型の具体的な実施形態では、OspAは、配列番号:2のアミノ酸
配列と95%の同一性以上を含むアミノ酸配列を含み、より具体的な実施形態では、OspAは
、配列番号:2のアミノ酸配列を含み、さらに具体的な実施形態では、OspAは、配列番号:1
のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0026】
関連する実施形態では、核酸構築物は、B. burgdorferi株50772(ATCC No. PTA-439)に由
来するOspC、またはその抗原断片をコードする。この型の具体的な実施形態では、OspCは
、配列番号:4のアミノ酸配列と95%の同一性以上を含むアミノ酸配列を含み、より具体的
な実施形態では、OspCは、配列番号:4のアミノ酸配列を含む。さらに具体的な実施形態で
は、OspCは、配列番号:3のヌクレオチド配列によってコードされる。さらに他の実施形態
では、核酸構築物は、B. burgdorferi株297に由来するOspAおよびB. burgdorferi株50772
に由来するOspCをコードする。
【0027】
本発明は、本発明の免疫原性組成物を含むワクチンを含み、より具体的にはワクチンは非
アジュバントワクチンである。特定の実施形態において、ワクチンは、B. burgdorferiに
よる疾患の予防を助ける。具体的な実施形態では、B. burgdorferiによる疾患はライム病
である。より具体的な実施形態では、ライム病はイヌライム病である。特定の態様におい
て、本発明のワクチンは、イヌライム病に対する6~8週齢の健康なイヌのワクチン接種に
有効である。この型の具体的な実施形態では、本発明のワクチンは、イヌライム病に対す
る7週齢の健康なイヌのワクチン接種に有効である。特定の実施形態では、抗体は、イヌ
がワクチンで免疫されるときに、イヌにおいて誘導される。特定の実施形態では、抗体は
オプソニン化IgGである。他の実施形態では、誘導される抗体はボレリア殺傷性である。
さらに他の実施形態では、オプソニン化IgGおよびボレリア殺菌抗体の両方が誘導される
。より具体的な実施形態では、誘導されるOspA抗体はボレリア殺傷性およびオプソニン化
IgGであり、誘導されるOspC抗体はボレリア殺傷性およびオプソニン化IgGである。
【0028】
特定の実施形態において、本発明のワクチンは、非ボレリア病原体に対する防御免疫を誘
発するための少なくとも1つの非ボレリア免疫原をさらに含む。特定の態様において、本
発明のワクチンは、非ボレリア病原体に対する防御免疫を誘発するための非ボレリア免疫
原由来の少なくとも1つのタンパク質抗原をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒
子をさらに含む。特定の実施形態において、非ボレリア免疫原は、イヌジステンパーウイ
ルス、イヌアデノウイルス、イヌパルボウイルス、イヌパラインフルエンザウイルス、イ
ヌコロナウイルス、イヌインフルエンザウイルス、レプトスピラ血清型、リーシュマニア
生物、Bordetella bronchiseptica、マイコプラズマ種、狂犬病ウイルス、Ehrlichia can
is、Anaplasma生物、および/またはこれらの組合せなどの非ボレリア病原体由来である。
【0029】
特定の実施形態において、Leptospira血清型由来の非ボレリア免疫原は、Leptospira kir
schneri血清型grippotyphosaである。他の実施形態では、Leptospira serovar由来の免疫
原は、Leptospira interrogans serovar canicolaである。さらに他の実施形態では、Lep
tospira血液型由来の免疫原は、Leptospira interrogans血液型icterohaemorrhagiaeであ
る。さらに他の実施形態では、Leptospira serovar由来の免疫原は、Leptospira interro
gans serovar pomonaである。さらに他の実施形態では、ワクチンは、複数のLeptospira
血清型由来の免疫原を含む。特定の実施形態において、Mycoplasma種由来の非ボレリア免
疫原は、Mycoplasma cynosである。
【0030】
本発明はさらに、本発明のワクチンの免疫学的に有効な量を哺乳動物に投与することを含
む病原性ボレリア遺伝子種に対して哺乳動物を免疫する方法を提供する。特定の実施形態
では、ワクチンは皮下注射によって投与される。代替の実施形態では、ワクチンは筋肉内
注射によって投与される。他の実施形態では、ワクチンは静脈内注射によって投与される
。さらに他の実施形態では、ワクチンは皮内注射によって投与される。さらに他の実施形
態では、ワクチンは経口投与によって投与される。さらに他の実施形態では、ワクチンは
鼻腔内投与によって投与される。具体的な実施形態では、哺乳動物はイヌである。他の実
施形態では、哺乳動物はウマ科動物(例えば、ウマ)である。
【0031】
本発明のワクチンは、プライマーワクチンとして、および/またはブースター(追加)ワ
クチンとして投与することができる。特定の実施形態では、プライマーワクチンおよびブ
ースターワクチンの両方の投与の場合、プライマーワクチンおよびブースターワクチンを
同一の経路で投与することができる。この型の特定の実施形態では、プライマーワクチン
およびブースターワクチンは、いずれも皮下注射によって投与される。代替の実施形態で
は、プライマーワクチンおよびブースターワクチンの両方の投与の場合、プライマーワク
チンの投与は1つの経路により、ブースターワクチンは別の経路により行うことができる
。この型の特定の実施形態では、プライマーワクチンは皮下注射により投与することがで
き、ブースターワクチンは経口投与することができる。
【0032】
本発明のワクチン組成物は、病原性ボレリア遺伝子種由来の1つ以上の追加株(第2の株と
して本明細書中で集合的に標識され得る)からの免疫学的に有効な量の不活化された細菌
をさらに含むことができる。特定の実施形態において、第2の株は、OspAおよびOspB抗原
を示す。適当な第2の株の例としては、以下のものが挙げられる: B. burgdorferi ss S-
1-10(ATCC No. PTA-1680)、B. burgdorferi ss B-31(ATCC No. 35210)、B. afzelii(例え
ば、ATCC No. 51383および51991として入手可能)、B. burgdorferi ss DK7、B. burgdorf
eri ss ZS7、B. burgdorferi ss IP1、IP2、B. burgdorferi ss HII、B. burgdorferi ss
P1F、B. burgdorferi ss Mil、B. burgdorferi ss 20006、B. burgdorferi ss ESP1、B.
burgdorferi ss Ne-56、B. burgdorferi ss ia、および/またはこれらの任意の組合せ。
【0033】
本発明はさらに、病原性ボレリア種.、具体的にはB. burgdorferi ssに対して哺乳動物を
免疫する方法であって、上記の本発明のワクチンの免疫学的に有効な量を哺乳動物に注射
することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、ワクチンは、例えば、約1×104か
ら約1×1010のRP以上を含むことができる。より特定の実施形態では、ワクチンは、約1×
105から約1×109CRPまでを含むことができる。さらに特定の実施形態では、ワクチンは、
約1×106から約1×108のRPを含むことができる。特定の実施形態において、ワクチン接種
後、免疫化哺乳動物はボレリア殺菌抗体を産生する。特定の実施形態では、哺乳動物はイ
ヌである。他の実施形態では、哺乳動物はウマ科動物(例えば、ウマ)である。
【0034】
特定の実施形態では、本発明のワクチンは、0.05mL~3mLの用量で投与される。より特定
の実施形態では、投与される用量は0.1mL~2mLである。さらに特定の実施形態では、投与
される用量は0.2mL~1.5mLである。さらに特定の実施形態では、投与される用量は0.3~1
.0mLである。さらに特定の実施形態では、投与される用量は0.4mL~0.8mLである。
【0035】
本発明はさらに、イヌジステンパーウイルス、イヌアデノウイルス、イヌパルボウイルス
、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌコロナウイルス、イヌインフルエンザウイルス
、および/またはレプトスピラ血清型、例えば、Leptospira kirschneri serovar grippot
yphosa、Leptospira interrogans serovar canicola、Leptospira interrogans serovar
haemorhagiae、および/またはLeptospira interrogans serovar pomonaに対する免疫を誘
発するための免疫原を含む、他のイヌ病原体からの1以上の免疫原をコードするベクター(
例えば、アルファウイルスRNAレプリコン粒子)を提供する。本発明の組合せワクチンに加
えることができる追加のイヌ病原体には、リーシュマニア・メジャーおよびリーシュマニ
ア・インファンタムなどのリーシュマニア生物、Bordetella bronchiseptica、マイコプ
ラズマ種(例えば、マイコプラズマ・サイノス)、狂犬病ウイルス、アナプラズマ種、例え
ば、Anaplasma phagocytophilumおよびAnaplasma platys;ならびにEhrlichia canisが含
まれる。特定の実施形態では、本発明のワクチンは、1以上のそのような免疫原からの少
なくとも1以上の抗原をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子をさらに含む。
【0036】
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明を参照することにより、より良く理
解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明は、免疫学的有効量のBorrelia burgdorferi外表面タンパク質A (OspA)またはその
抗原性断片およびBorrelia burgdorferi外表面タンパク質C (OspC)またはその抗原性断片
をコードする免疫学的有効量のアルファRNAレプリコン粒子、免疫学的有効量の2以上の
ベクターと免疫学的有効量のBorrelia burgdorferi外表面タンパク質A (OspA)またはその
抗原性断片をコードする少なくとも1つのアルファRNAレプリコン粒子およびBorrelia bu
rgdorferi外表面タンパク質C (OspC)またはその抗原性断片をコードする少なくとも1つ
の他のアルファRNAレプリコン粒子またはBorrelia burgdorferi外表面タンパク質A (OspA
)またはその抗原性断片およびBorrelia burgdorferi外表面タンパク質B (OspB)またはそ
の抗原性断片をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子とBorrelia burgdorferi
外表面タンパク質A (OspA)またはその抗原性断片をコードする少なくとも1つのアルファ
RNAレプリコン粒子およびBorrelia burgdorferi外表面タンパク質C (OspC)またはその抗
原性断片をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子の組み合わせを含む免疫学的
有効量のアルファウイルスRNAレプリコン粒子および/またはワクチンを含む免疫原性組成
物および/またはワクチンを提供する。このような免疫原性組成物の全てを、哺乳動物ワ
クチンに使用することができる。本発明の一態様では、ワクチンは、ライム病に対するワ
クチン接種された被験体(例えば、哺乳動物)の保護を助ける。この型の特定の実施形態で
は、ワクチン接種対象はイヌである。したがって、本発明は、(i)バクテリンから無関係
の抗原によるワクチン接種を排除することによって有害な副作用の可能性を有意に減少さ
せること、および(ii)依然として包括的な保護を提供することによって、イヌライム病を
予防するためのワクチン接種の信頼性を改善する新しい免疫学的組成物を提供する。本発
明のライム病ワクチン製剤はまた、効果的な既往記憶反応を誘導することによって、「有
効性の窓」を有意に延長すべきである。
【0038】
本発明をより十分に理解するために、以下の定義を提供する。
【0039】
記述の便宜上、単数語を使用することは、決してそのように制限されることを意図したも
のではない。したがって、例えば、「ポリペプチド」を含む組成物への言及は、そのよう
なポリペプチドの1つ以上への言及を含み、さらに、「微生物」への言及は、特に指定さ
れない限り、複数のそのような微生物への言及を含む。
【0040】
本明細書中で使用される「およそ」という用語は、「約」という用語と同義に使用され、
数値が表示値の50%以内であることを意味する。すなわち、1ミリリットルあたり「およそ
」1×108のアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含む構成物は、1ミリリットルあたり5
×107から1.5×108のアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含む。
【0041】
本明細書中で使用される用語「イヌ」は、特に指定のない限り、全ての家畜イヌ、Canis
lupus familiarisまたはCanis familiarisを含む。
【0042】
用語「遺伝子種」は、まずG. Barantonら、1992, International J. of Systematic Bact
eriology 42: 378-383によって使用され定義され、ここでは「種」という用語が非ボレリ
ア生物の分類学を記述する際に用いられるのと同じ方法で用いられる。
【0043】
用語「非ボレリア」は、生物、病原体、および/または抗原(または免疫原)などの用語を
修飾するために使用され、それぞれの生物、病原体、および/または抗原(または免疫原)
がボレリア病原体ではなく、ボレリア抗原(または免疫原)ではないこと、および/または
ボレリア以外のタンパク質抗原(または免疫原)がボレリア生物に由来しないことを意味す
る。
【0044】
用語「由来」、「由来する」および「由来している」は、所定のタンパク質抗原およびそ
れを自然にコードする病原体またはその病原体の株に関して互換的に使用され、本明細書
中で使用されるように、所与のタンパク質抗原の未修飾および/または切断されたアミノ
酸配列は、その病原体またはその病原体の株によってコードされることを意味する。病原
体に由来するタンパク質抗原に対する本発明の核酸構築物内のコード配列は、それが由来
する病原体または病原体株(天然に弱毒化された株を含む)におけるそのタンパク質抗原の
対応する配列に対して、発現されたタンパク質抗原のアミノ酸配列の修飾および/または
切断をもたらすように、遺伝的に操作されていてもよい。
【0045】
ボレリアの遺伝種を培養するための「スタンダードな増殖条件」は、BSK (バーボール・
ストーンナー・ケリー)培地において、約33oCから約35oCの範囲の温度での増殖を必要と
する。本明細書に記載のBSK培地は、Callisterら[Detection of Borreliacidal Antibodi
es by Flow Cytometry, Sections 11.5.1 - 11.5.12, Current Protocols in Cytometry,
John Wiley and Sons, Inc. Supplement 26, (2003)(その全体が参照により本明細書に
組み込まれる)]に従って調製した。(BSK培地は、例えば、Sigma, St. Louis, MOから市販
もされている)。
【0046】
本明細書中で使用される「OspC7」は、Callisterら[U.S.6,210,676 B1およびU.S.6,464,9
85 B1.]によって開示されているように、既知の病原性ボレリア種の中で保存されているO
spCのC末端50アミノ酸内の7アミノ酸領域[Lovrichら、Clin. Diagn. Lab. Immunol.、12:
746-751,(2005)]に位置する免疫優性OspCボレリア殺菌抗体エピトープである。この保存
性は、Lovrichら[Clin. Diagn. Lab. Immunol.、12:746-751,(2005)]によって記載されて
いる7アミノ酸セグメントをコードするコドンセグメントのBLAST検索によって、容易に確
認された。このような検索を2006年10月9日に実施したところ、上記のOspC 7-merエピト
ープコードセグメントを含む100のボレリア種の結果リストが生成された。特定の実施形
態では、アルファウイルスRNAレプリコン粒子は、OspC7を含むOsp Cの抗原断片をコード
する。
【0047】
本明細書中で使用される用語「防御」または「防御免疫を提供する」または「防御免疫を
誘発する」および「防御の補助」は、感染のいずれかの徴候からの完全な防御を必要とし
ない。例えば、「防御の補助」は、攻撃後、基礎となる感染の症状が少なくとも軽減され
る、および/または症状を引き起こす基礎となる細胞性、生理学的、または生化学的な原
因または機序の1つ以上が軽減および/または除去されるような、防御が十分であることを
意味することができ、この文脈で使用される「軽減」は、単に感染の生理学的状態ではな
く、感染の分子状態を含む感染状態との関連を意味すると理解される。
【0048】
本明細書で使用する「ワクチン」は、動物、例えばイヌ、ネコ、またはウマ(特定の実施
形態では、ヒトを含むが、他の実施形態では、ヒトに特異的ではない)への適用に適した
組成物であり、典型的には、水を含む液体のような薬学的に許容可能な担体と組み合わせ
た1以上の抗原を含み、その動物への投与は、野生型微生物による感染から生じる疾患か
らの防御を最小限に補助するのに十分に強い免疫応答を誘導し、すなわち、疾患の予防を
補助し、および/または疾患を予防し、改善し、または治癒させるのに十分に強い免疫応
答を誘導する。
【0049】
本明細書中で使用されるように、多価ワクチンは、2つ以上の異なる抗原を含むワクチン
である。この型の特定の実施形態では、多価ワクチンは、2つ以上の異なる病原体に対し
てレシピエントの免疫系を刺激する。
【0050】
本明細書中で使用される用語「レプリコン」は、それらが存在する場合、細胞培養物また
は動物宿主における親ウイルスの増殖を成功させるであろう1つ以上の要素(例えば、構造
タンパク質のコード配列)を欠く修飾されたRNAウイルスゲノムを指す。適当な細胞状況に
おいて、レプリコンはそれ自身を増幅し、1以上のサブゲノムRNA種を産生し得る。
【0051】
本明細書中で使用される用語「アルファウイルスRNAレプリコン粒子」、略して「RP」は
、構造タンパク質、例えばカプシドおよび糖タンパク質にパッケージされたアルファウイ
ルス由来RNAレプリコンであり、これらもまた、例えばPushkoら[Virology 239(2):389-40
1(1997)]によって記載されているように、アルファウイルスに由来する。レプリコンはア
ルファウイルスの構造成分(カプシドや糖タンパク質など)をコードしていないため、RPは
細胞培養や動物宿主(ヘルパープラスミドや類似成分を含まない)では増殖できない。OspA
および/またはOspC、またはその抗原断片をコードするRNA RPにおける異種核酸配列は、
アルファウイルスサブゲノム(sg)プロモーター、特に26S sgプロモーター、好ましくはVE
EV 26S sgプロモーターの転写制御下にある。
【0052】
OspAおよびOspCコード配列の二重RP構築物の場合、構築物中のコード配列の各々は、別々
のサブゲノムプロモーターの転写制御下にあり得る。このような二重構造(デュアルコン
ストラクト)では、上流のコード配列は5'プロモーター位置に対応し、下流のコード配列
は3'プロモーター位置に対応する(ポジティブセンスRNA;
図1および
図2)。好ましくは、上
流および下流のコード配列は隣接している。
【0053】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、修飾された名義語が医薬
品中での使用に適切であることを意味するために、形容的に使用される。例えば、医薬品
ワクチン中の賦形剤を記載するために使用する場合、それは、組成物の他の成分と適合し
、意図されたレシピエント動物、例えばイヌに対して不利に有害ではないとして、賦形剤
を特徴付ける。
【0054】
「非経口投与」には、皮下注射、粘膜下注射、静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射、およ
び注入が含まれる。
【0055】
本明細書で使用される、特定のタンパク質(例えば、タンパク質抗原)に関する用語「抗原
断片」は、抗原性である、すなわち、免疫グロブリン(抗体)またはT細胞抗原レセプター
のような免疫系の抗原認識分子と特異的に相互作用することができる、そのタンパク質の
断片(完全長タンパク質からの1アミノ酸が欠けている程度の大きな断片を含む)である。
たとえば、外表面タンパク質A (OspA)の抗原断片は、抗原性をもつOspAタンパク質の断片
である。好適には、本発明の抗原断片は、抗体および/またはT細胞レセプター認識に対し
て免疫優性である。特定の態様において、所与のタンパク質抗原に関する抗原断片は、完
全長タンパク質の抗原性の少なくとも25%を保持するそのタンパク質の断片である。好ま
しい態様において、抗原性断片は、全長タンパク質の抗原性の少なくとも50%を保持する
。より好ましい態様において、それは、全長タンパク質の抗原性の少なくとも75%を保持
する。抗原断片は、7~20アミノ酸程度の小さなもの(前述参照)もあれば、もう一方の極
端なものでは、完全長タンパク質から1アミノ酸程度欠けているような大きな断片であっ
てもよい。特定の態様において、抗原フラグメントは、25~150アミノ酸残基を含む。他
の態様において、抗原フラグメントは、50~250アミノ酸残基を含む。
【0056】
「OspC特異的ボレリア殺菌抗体」は、例えばB. burgdorferi ss 50772(ATCC No. PTA-439
)をワクチン接種した動物の血清中に見出されるものであり、OspC抗原のいずれかのエピ
トープに選択的に結合し、スピロヘータを補体依存性又は非依存性に殺傷するものである
。「OspC7特異的ボレリア殺菌抗体」は、例えばB. burgdorferi ss 50772(ATCC No. PTA-
439)をワクチン接種した動物の血清中に見出されるものであり、Lovrichら[Clin. Diagn.
Lab. Immunol., 12:746-751, (2005)]に記載されているようにOspCの7つのC末端アミノ
酸に選択的に結合し、スピロヘータを殺傷するものである。OspCボレリア殺菌抗体の特異
性は十分に確立されている。例えば、OspCボレリア殺菌抗体は、ボレリア殺菌抗体検査で
B. burgdorferi ss 50772の感受性を測定することにより、ライム病血清中に一般的に検
出される。密接に関連した疾患を有するヒト患者由来の血清には、50772株も殺傷する交
差反応性抗体が含まれることはごくまれである(2%)[Callister, et al., Clinical and D
iagnostic Laboratory Immunology 3(4): 399-4021(1996)によって詳細に記載されている
]。さらに、OspC7ボレリア殺菌エピトープを用いるペプチドELISAは、ライム病血清中の
ボレリア殺菌抗体を正確に捕捉し、他の密接に関連する疾患を有する患者由来の血清は、
OspC7ペプチドにも結合する交差反応性抗体を含むことはごくまれである(<2%)。
【0057】
ワクチンによって誘導された血清中のOspC特異的ボレリア殺菌抗体の「かなりの割合」が
、保存されたエピトープOspC7に特異的である場合、それは、OspC7によるその血清の吸収
に続いて、血清中のOspC特異的ボレリア殺菌抗体の測定可能な減少が存在することを意味
する。B. burgdorferi ss 50772を用いることにより検出される血清のボレリア殺菌抗体
価の少なくとも2倍の低下、およびより好ましくはOspC7によるその血清の吸収に続く血清
のボレリア殺菌抗体価の2~4倍またはそれ以上の低下と定義されることが望ましい。
【0058】
「補体特異的反応」とは、ボレリア属細菌がボレリア殺菌抗体によって殺菌されるために
、血清補体が存在することを必要とする抗体反応である。
【0059】
本明細書中で使用される「不活化」微生物という用語は、「死滅」微生物という用語と同
義に使用され、本発明の目的のために、「不活化」Borrelia burgdorferi ss微生物は、
動物において免疫応答を誘発することができるが、動物に感染することができない生物で
ある。Borrelia burgdorferi ss分離株は、二元エチレンイミン、ホルマリン、β-プロピ
オラクトン、チメロサール、または熱からなる群から選択される薬剤によって不活化され
得る。特定の実施形態では、Borrelia burgdorferi ss分離株は、二成分エチレンイミン
によって不活化される。
【0060】
本明細書中で使用される「非アジュバントワクチン」は、アジュバントを含まないワクチ
ンまたは多価ワクチンである。
【0061】
米国6,210,676に記載されているB. burgdorferi ss 50772(ATCC No. PTA-439)及び米国6,
316,005に記載されているB. burgdorferi ss S-1-10(ATCC No. PTA-1680)は、それぞれ19
99年7月30日及び2000年4月11日にAmerican Type Culture Collection,10801 University
Boulevard Manassas (VA)20110に寄託された。
【0062】
本明細書中で使用される際、両配列のアミノ酸残基が同一である場合、1つのアミノ酸配
列は、第2のアミノ酸配列に対して100%「同一」であるか、または100%の「同一」を有し
する。したがって、2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基の50%が同一である場合、一方のア
ミノ酸配列は、第2のアミノ酸配列に対して50%の「同一」である。配列比較は、所与のタ
ンパク質、例えばタンパク質、または比較されるポリペプチドの一部によって構成される
アミノ酸残基の連続したブロックにわたって実施される。特定の実施形態では、2つのア
ミノ酸配列間の対応を他の方法で変化させることができる選択された欠失または挿入が考
慮される。
【0063】
本明細書中で使用されるように、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列パーセントの同一性は
、C、MacVector (MacVector, Inc. Cary, NC 27519)、ベクターNTI (Informax, Inc. MD)
、Oxford Molecular Group PLC (1996)およびアラインメントの初期パラメータを有するC
lustal Wアルゴリズム、ならびに同一性のための初期パラメータを用いて決定することが
できる。これらの市販のプログラムはまた、同一または類似の初期パラメータを用いて配
列類似性を決定するために使用することができる。または、例えば、GCG (Genetics Comp
uter Group, Program Manual for the GCG Package, Version 7, Madison, Wisconsin)パ
イループプログラムを用いて、初期設定のフィルタ条件下でのAdvanced Blast検索を使用
することもできる。
【0064】
また、本発明は、本明細書に開示される特定の構成、プロセス工程、および材料、例えば
構成、プロセス工程、および材料に限定されるものではないことも理解されるべきである
。また、本発明の範囲は、添付の請求項およびその等価物によってのみ限定されることに
なるので、本明細書で採用される用語は、特定の実施形態を記述する目的のためにのみ使
用され、限定することを意図したものではないことも理解されるべきである。
【0065】
選択的OspA株
【0066】
OspA抗原を提供する株は、B. burgdorferi ss B-31(ATCC No. 35210)のような従来の病原
性実験室B. burgdorferi ss分離株[Barbourら、J. Clin. Microbiol. 52:478-484(1985)]
であり得る。特定の第2の生物は、例示されたB. burgdorferi ss S-1-10株(ATCC No. PT
A-1680)である。北米以外の地域に最適化されたワクチン組成物の第2の生物として使用す
るのに適した追加の菌株には、例えば、菌株: B. burgdorferi ss B-31(ATCC No. 35210)
、B. afzelii(例えば、ATCC No. 51567として入手可能)およびB. garinii(例えば、ATCC
No. 51383および51991として入手可能)、ならびに以下の表1に列挙されたものが含まれる
。
【0067】
【0068】
ワクチン組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、経口、鼻腔内、皮内、および/または腹腔内
ワクチン接種を含む任意の標準経路によって容易に投与される。当業者は、ワクチン組成
物が、レシピエント動物の種類および投与経路ごとに適切に製剤化されることが望ましい
ことを認識するであろう。
【0069】
したがって、本発明はまた、イヌをB. burgdorferi ssおよび他のボレリア種に対して免
疫する方法を提供し、そのような方法の1つは、イヌが適切なOspAおよび/またはOspCを産
生するように、免疫学的に有効な量の本発明のワクチンをイヌに注射することを含む。特
定の実施形態では、抗体はボレリア殺菌抗体である。
【実施例0070】
実施例
【0071】
以下の実施例は、本発明のさらなる評価を提供するのに役立つが、本発明の有効な範囲を
制限することを意図するものではない。
【0072】
実施例1
アルファウイルスRNAレプリコン粒子によって送達されるOspAおよびOspCワクチンの構築
【0073】
RNAウイルスは、そのゲノムに遺伝子操作されたワクチン抗原を導入するためのベクター-
ビヒクルとして用いられてきた。しかしながら、現在までのそれらの使用は、主にRNAウ
イルスにウイルス抗原を取り込み、次いでレシピエント宿主にウイルスを導入することに
限定されてきた。その結果、取り込まれたウイルス抗原に対する防御抗体が誘導される。
例えば、アルファウイルスレプリコンベクターは、ボツリヌス菌神経毒HC又は炭疽菌防御
抗原のそれぞれの発現を介して、マウスをボツリヌス神経毒及び炭疽から防御するために
使用されている[Leeら、Vaccine 24(47-48) 6886-6892(2006)]。アルファウイルスRNAレ
プリコン粒子は、病原性抗原をコードするために使用されている。このようなアルファウ
イルスレプリコンプラットフォームは、ベネズエラ馬脳炎ウイルス(VEE) [Pushkoら、Vir
ology 239:389-401(1997)]、Sindbis (SIN) [Bredenbeekら、Journal of Virology 67:64
39-6446(1993)、その内容が本明細書に全体に組み込まれている]、およびSemliki Forest
ウイルス(SFV) [Liljestrom and Garoff, Biotechnology (NY) 9:13561361(1991)]を含
むいくつかの異なるアルファウイルスから開発されている。これらの内容は本明細書に全
体に組み込まれている。さらに、アルファウイルスRNAレプリコン粒子は、いくつかのUSD
Aが認可した豚および家禽用ワクチンの基礎となっている。これらには、豚流行性下痢ワ
クチン、RNA粒子(製品コード19U5.P1)、豚インフルエンザワクチン、RNA (製品コード19A
5.D0)、鳥インフルエンザワクチン、RNA (製品コード19O5.D0)、および処方箋製品、RNA
粒子(製品コード9PP0.00)が含まれる。以下に開示するように、アルファウイルスRNAレプ
リコンベクター系がイヌに対してOspA、OspC、およびDbpAに特異的な殺ボレリア抗体を産
生する能力を誘導することが検討されている。
【0074】
OspAまたはOspCのコード配列のアルファウイルスレプリコンへの組み込み
【0075】
OspA (297株)およびOspC (50772株)のアミノ酸配列を用いて、コドン最適化(Canis lupus
コドン使用)ヌクレオチド配列をin silicoで作製した。最適化された配列は市販のベンダ
ー(ATUM、Newark、CA)により合成DNAとして調製された。
【0076】
OspAまたはOspCを発現するようにデザインされたVEEレプリコンベクターを、前述のよう
に構築し[U.S.9,441,247 B2を参照のこと;その内容は参照により本明細書に組み込まれる
]、以下の修飾を加えた。TC-83由来レプリコンベクター「pVEK」[米国9,441,247 B2に開
示および記載]を制限酵素AscIおよびPacIで消化した。
【0077】
5'フランキング配列(5'‐GGCGCGCCGCACC‐3') [配列番号:5]および3'フランキング配列(5
'‐TTAATTAA‐3')を有するOspAまたはOspCのコドン最適化オープンリーディングフレーム
配列を含むDNAプラスミドを、制限酵素AscIおよびPacIで同様に消化した。次に、合成遺
伝子カセットを消化pVEKベクターに連結し、得られたクローンを「pVHV-OspA」および「p
VHV-OspC」と再命名した。
【0078】
TC-83 RNAレプリコン粒子(RP)の製造は、前述の方法[U.S. 9,441,247 B2およびU.S. 8,46
0,913 B2;その内容を本明細書に参考として取り入れる]に従って行った。簡潔に言えば、
pVHVレプリコンDNA及びヘルパーDNA遺伝子をメガスクリットT7 RNAポリマーとキャップア
ナログ(プロメガ、マディソン、WI)を用いたインビトロ転写前のノートI制限因子に直線
化した。重要なことに、製造に使用されるヘルパーRNAは、前述したように、VEEサブゲノ
ムプロモーター配列を欠いている[Kamrudら、J Gen Virol. 91(Pt 7):1723-1727(2010)]
。レプリコン成分とヘルパー成分の精製RNAを組み合わせ、ベロ細胞の懸濁液と混合し、4
mmキュベットで電気穿孔し、OptiPro SFMOBの名称で販売されているワルタムMAのサーモ
フィッシャーから得た無血清細胞培養培地に戻した。一晩培養後、ZetaPlus BioCap深度
フィルター(3M、Maplewood、MN)を通して懸濁液を通過させ、5%スクロースを含むリン酸
緩衝生理食塩水(w/v)で洗浄し、最後に保持したRPを400mM NaCl緩衝液で溶出することに
より、アルファウイルスRNAレプリコン粒子を細胞および培地から精製した。溶出RPを最
終的な5%スクロース(w/v)に処方し、0.22ミクロンのメンブランフィルターを通過させ、
保存のためにアリコートに分注した。機能的RPの力価は、感染Vero細胞単層上の免疫蛍光
アッセイにより測定した。RPのバッチは、パッケージングされたレプリコン: RP‐OspAま
たはRP‐OspCによってコードされる遺伝子に従って同定された。
【0079】
実施例2
【0080】
RP-OspA構築物を有するワクチン
【0081】
材料および方法
【0082】
構築物:外表面蛋白質Aの免疫原性エピトープを含む抗原をコードするヌクレオチド配列
を用いて、上記のようにRP-OspA構築物を作製した。
【0083】
動物:5か月齢のビーグル(Marshall Bioresources)を飼育ドッグランで共同飼育し、餌と
水を自由摂取させた。
【0084】
RP-OspAワクチンの調製:OspA RNAをヘルパーRNAとともにVero細胞にエレクトロポレーシ
ョンした。OspAはRP‐OspAを生成する共エレクトロポレーション過程に続いてRPにパッケ
ージングされた。次に、RP-OspAを安定剤(スクロース、N-Zアミン、ゼラチン)、0.9%生理
食塩水、アムホテリシンB、およびゲンタマイシンと混合し、1.0mLの投与量が1.0 x 108
レプリコン粒子/mLの標的を含むようにした。その後、ワクチンを凍結乾燥した。
【0085】
ワクチン接種および血清の採取:イヌにRP-OspAワクチン1mL用量を頸部皮下接種し、21日
後にさらに1mL用量で追加接種した。試験7日目、14日目、20日目、29日目、35日目、42日
目に頸静脈穿刺により全血を採取した。遠心分離により血清を分離し、試験まで-10-Cま
たはより寒冷で保存した。
【0086】
OspAボレリア殺菌抗体の検出:フローサイトメトリー法およびB. burgdorferi ss S-1-10
を用いてOspAボレリア殺菌抗体を検出した[Callisterら、Arch. Intern. Med. 154:1625-
1632(1994)]。
【0087】
OspA IgG抗体の検出::OspA IgGオプソニン化抗体をELISAで検出した。
【0088】
結果
【0089】
RP-OspAワクチンによるワクチン接種は、高いレベルのIgG抗体を確実に誘導し、抗体反応
は、追加ワクチン接種後2週間でかなりの量のボレリア殺菌性OspA抗体を含んだ。
【0090】
【0091】
上記の表2の結果は、RP-OspAを含むワクチンが有意なレベルのOspAボレリア殺菌抗体を誘
導する能力を有することを示す。
【0092】
実施例3
【0093】
RP-OspC構築物を有するワクチン
【0094】
材料および方法
【0095】
構築物:外表面蛋白質Cの免疫原性エピトープを含む抗原をコードするヌクレオチド配列を
用いて、上記のようにRP-OspC構築物を作製した。
【0096】
動物:5か月齢のビーグル(Marshall Bioresources)を飼育ドッグランで共同飼育し、餌と
水を自由摂取させた。
【0097】
RP-OspCワクチンの調製:OspC RNAをヘルパーRNAとともにVero細胞にエレクトロポレーシ
ョンした。OspCはRP‐OspCを生成する共エレクトロポレーションプロセスに続いてRPにパ
ッケージングされた。次に、RP-OspCを安定剤(スクロース、N-Zアミン、ゼラチン)、0.9%
生理食塩水、アムホテリシンB、およびゲンタマイシンと混合し、1.0mLの投与量が1.0 x
108レプリコン粒子/mLの標的を含むようにした。その後、ワクチンを凍結乾燥した。
【0098】
ワクチン接種および血清の採取:イヌにRP-OspCワクチン1mL用量を頸部皮下接種し、21日
後にさらに1mL用量で追加接種した。試験7日目、14日目、20日目、29日目、35日目、42日
目に頸静脈穿刺により全血を採取した。遠心分離により血清を分離し、試験まで-10-Cま
たはより寒冷で保存した。
【0099】
OspCボレリア殺菌抗体の検出:フローサイトメトリー法およびB. burgdorferi ss 50772[
Callisterら、Arch. Intern. Med. 154:1625-1632(1994)]を用いてOspCボレリア殺菌抗体
を検出した。
【0100】
OspC IgG抗体の検出::OspC IgG抗体をELISAで検出した。
【0101】
結果
【0102】
RP-OspCワクチンによるワクチン接種は、高いレベルのIgG抗体を確実に誘導し、抗体反応
は、追加ワクチン接種後2週間でかなりの量のボレリア殺菌性OspC抗体を含んだ。
【0103】
【0104】
結果は、RP-OspCを含むワクチンが、有意なレベルのOspCボレリア殺菌抗体を誘導する能
力を有することを示す。
【0105】
実施例4
【0106】
RP-OspAおよびRP-OspCとの併用ワクチン
【0107】
材料および方法
【0108】
構築物:上記のようにRP-OspAおよびRP-OspC構築物を作製した。
【0109】
動物:5か月齢のビーグル(Marshall Bioresources)を飼育イヌランで共同飼育し、餌と水
を自由摂取させた。
【0110】
RP-OspAおよびRP-OspC併用ワクチンの調製:RP-OspAおよびRP-OspC抗原を、安定剤(ショ
糖、N-Zアミン、ゼラチン)、0.9%生理食塩水、アンホテリシンB、およびゲンタマイシン
とブレンドし、1.0mL投与量がそれぞれの構築物の1.0×108レプリコン粒子/mLの標的を含
むようにした。その後、ワクチンを凍結乾燥した。
【0111】
ワクチン接種及び血清の採取:イヌに本配合ワクチン1mLを頸部皮下接種し、21日後に1mL
を追加接種した。試験7日目、14日目、20日目、29日目、35日目、42日目に頸静脈穿刺に
より全血を採取した。遠心分離により血清を分離し、試験まで-10-Cまたはより寒冷で保
存した。
【0112】
ボレリア殺菌抗体の検出:フローサイトメトリー法およびB. burgdorferi ss S-1-10また
はB. burgdorferi ss 50772をそれぞれ用いて、OspAおよびOspCボレリア殺菌抗体を検出
した[Callisterら、Arch. Intern. Med. 154:1625-1632(1994)]。
【0113】
IgG抗体の検出::OspAおよびOspC抗体をELISAにより検出した。
【0114】
結果
【0115】
混合ワクチンによるワクチン接種は、ブースターワクチン接種後2週間で高レベルのIgGお
よび殺ボレリア性OspAおよびOspC抗体を確実に誘導した。
【0116】
結果は、RP-OspAおよびRP-OspCを含む組合せワクチンが、高レベルのOspAおよびOspCボレ
リア殺菌抗体を誘導し、高レベルのRP-OspCオプソニン化IgG抗体を誘導する能力を有する
ことを示す。
【0117】
実施例5
【0118】
RP-OspAおよびRP-OspCとの併用ワクチン
【0119】
構築物:上記のようにRP-OspAおよびRP-OspC構築物を作製した。
【0120】
動物:3か月齢のビーグル犬(Ridglan Farms)をドッグランで共同飼育し、餌と水を自由摂
取させた。
【0121】
RP-OspAおよびRP-OspC配合ワクチンの調製:治療グループAは、株S-1-10および株50772の
BEI不活性菌の組合せを受けた(5%のEmulsigenアジュバン液-MVPラボラトリーズInc.、米
国オマハ社と混合)。RP-OspAおよびRP-OspC抗原を、安定剤(スクロース、N-Zアミン、ゼ
ラチン)、0.9%生理食塩水、アムホテリシンB、およびゲンタマイシンと混合し、その結果
、1.0mL用量が、各構築物の5.0 x 107(治療群B)、5.0 x 106(治療群C)、または5.0 x 105
(治療群D)レプリコン粒子/mLのいずれかの標的を含むようにした。ワクチンは凍結乾燥し
た。
【0122】
ワクチン接種・注射部位反応:イヌに本配合ワクチン1mLを頸部皮下接種し、その21日後
に1mLを追加接種した。
【0123】
イヌについては、初回接種後3日目及び4日目、並びに2回目接種後24日目及び25日目に、
反応が感じられなくなるまで注射部位反応をモニタリングした(表4)。注射部位反応は、
種類と大きさに基づいて評価した。反応は可視、肥厚、軟、硬、圧痛としてスコア化し、
反応サイズはS1 = < 1.0cm、S2 = 1.0 - 2.0cm、またはS3 = > 2.0cmとスコア化した。
【0124】
結果
【0125】
【0126】
実施例6
【0127】
デュアルインサートRP-OspA/C構築物との併用ワクチン
【0128】
材料および方法
【0129】
OspAとOspCのコード配列のアルファウイルスレプリコンへの組み込み:
【0130】
AscI及びPacI消化TC-83由来レプリコンベクター「pVEK」を実施例1に記載したように調製
した。5'フランキング配列(5'‐GGCGCGCCGCACC‐3') [SEQ ID NO: 5]および3'フランキン
グ配列(5'‐TTAATTAA‐3')を有するOspAおよびOspCの両方のコドン最適化オープンリーデ
ィングフレーム配列を含む2つのDNAプラスミドを、制限酵素AscIおよびPacIで同様に消化
した。合成遺伝子カセットのデザインは、オープンリーディングフレーム配列(OspAまた
はOspC)の1つ、アルファウイルスサブゲノムプロモーターおよびフランキング配列を含む
非コード配列、次いで他の所望のオープンリーディングフレーム(OspAまたはOspC)を組み
込む。アルファウイルスサブゲノムプロモーターおよび隣接配列は、5'GAACTGAACTGAACTG
ATGCTGAACTGAACTGCTGATGAACTAGCTGGAACTAGCTGTCGAACTAGCTGAACTGAGCTGCACCGTGCACC-3'[配
列番号:6]であり、アルファウイルスサブゲノムプロモーターおよび隣接配列は、5'GAACT
AACTAGTCGCTGACTAGACTAGACTAGTCGCCAAGCTATCACCGGTGGCACC-3'である。このデザインは、3
' nsP4オープンリーディングフレームの短い部分、天然のアルファウイルスサブゲノムプ
ロモーター、および天然のサブゲノム配列の5'非翻訳部分を複製する。また、組み込まれ
ているのは、制限酵素認識部位、非コードランダム配列、プライマー結合部位、および第
2のオープンリーディングフレームのすぐ5'近位のKozakコンセンサス配列である。次いで
、合成遺伝子カセットを消化pVEKベクターに連結し、得られたクローンを、カセット内の
相対的5'および3'位置を表す名称の順序で、"pVDG-OspA-OspC"または"pVDG-OspC-OspA"と
再命名した。
RPの製造は、実施例1に記載したように実施した。
【0131】
動物:7~8週齢のビーグル犬(Ridglan Farms)をドッグランで共同飼育し、餌と水を自由
摂取させた。
【0132】
RP-OspA/OspCまたはRP-OspC/OspAワクチンの調製:
【0133】
各コンストラクトのレプリコンRNAを、ヘルパーRNA(VEEカプシドヘルパーおよび糖蛋白質
配列に由来)と併せてVero細胞にエレクトロポレーションした。各レプリコンは、RP抗原
を生成する共エレクトロポレーションプロセスに続いて、RPにパッケージングされた。次
いで、得られたRPを0.4M NaClリン酸緩衝液中で収集し、5% (w/v)スクロースで処方し、
免疫蛍光アッセイにより定量した。
【0134】
安定剤(ショ糖、N-Z Amine、ゼラチン)と0.9%生理食塩水を1mL用量で3種類の別々のワク
チンを混合した。治療群Aのワクチンには、それぞれ別々のRP-OspAおよびRP-OspC抗原に
対して5.0 x 107の標的用量が含まれていた。治療群Bのワクチンには、RP-OspA/OspCデュ
アルコンストラクト抗原の標的用量5.0 x 107が含まれていた。治療群Cのワクチンには、
RP-OspC/OspAデュアルコンストラクト抗原の標的用量5.0 x 107が含まれていた。ワクチ
ンを凍結乾燥した。
【0135】
ワクチン接種と血清の採取:イヌにワクチン1mLを頸部皮下接種し、21日後にさらに1mLを
追加接種した。試験第-1、28、35、70、92、119日に頸静脈穿刺により全血を採取した。
遠心分離により血清を分離し、試験まで-10-Cまたはより寒冷で保存した。
【0136】
OspAおよびOspCボレリア症抗体の検出:
フローサイトメトリー法およびB. burgdorferi ssを用いて、OspAボレリア殺菌抗体を検
出した
S-1-10 [Callister et al.、 Arch. Intern. Med. 154:1625-1632(1994)]、フローサイト
メトリー法及びB. burgdorferi ss 50772 [Callister et al.、 Arch. Intern. Med. 154
:1625-1632(1994)]を用いて、OspCボレリア殺菌抗体が検出された。
【0137】
結果
【0138】
別々のRP-OspAおよびRP-OspC抗原を含むワクチンは、追加ワクチン接種後1週間で中程度
のレベルのボレリア殺菌抗体を誘導した。追加ワクチン接種後1週間で、RP-OspA/OspCデ
ュアルコンストラクト抗原を含むワクチンは、OspCに対する殺ボレリア性抗体を高レベル
で誘導したが、OspAに対する殺ボレリア性抗体は比較的低レベルであった。対照的に、RP
-OspC/OspAデュアルコンストラクト抗原を含むワクチンは、OspAに対して高レベルのボレ
リア殺菌抗体を誘導したが、OspCに対しては比較的低レベルのボレリア殺菌抗体を誘導し
た。データから、OspAまたはOspCに対するより頑健なボレリア殺菌抗体反応は、その遺伝
子が構築物の下流位置にある場合に誘導されることが示唆される(表5)。
【0139】
【0140】
B. burgdorferi感染Ixodes scapularisダニによる攻撃感染:
【0141】
B. burgdorferi感染ダニによる実験的攻撃は、2回目のワクチン接種から約2週間後に実施
した。簡単に説明すると、雌9匹と雄8匹の成ダニを、テープと包帯ラップで所定の位置に
保持されたゴムカップの中で、各イヌの剃毛側に置いた。ダニをイヌに7日間吸血させ、
除去した。
【0142】
攻撃後1、2、3ヵ月で、ダニ付着部位に隣接する部位の各イヌから4mmの穿刺器具を用いて
皮膚生検を行い、B. burgdorferiの分離を行った。皮膚バイオプシをBSAに富む培地でイ
ンキュベートし、B. burgdorferiの増殖について4週間観察した。肢および/または跛行を
示したイヌの左側または肢から、肘、手根、スチフル、およびタースから、組織サンプル
を採取し、PCR法によりB. burgdorferiの分離のために処理した(表6)。
【0143】
【0144】
【0145】
配列
【0146】
外表面プロテインA(配列番号1)
atgaaaaagtaccttttgggaatcggactcattctcgccctgatcgcctgcaagcaaaacgtgtcctccctcgacgaaaa
gaactcagtgtcggtggatctgcccggcgaaatgaaggtgctcgtgtccaaagagaagaacaaggatggaaaatacgacc
tgattgccaccgtggacaagctggagttgaagggcacctcagacaagaacaacgggtctggagtgctggaaggagtcaaa
gcggacaagtccaaggtcaagctgactatttcggacgacctgggccagactaccctggaagtgttcaaggaggacggaaa
gaccctggtgtccaagaaggtcacctccaaggataagtcgagcaccgaagagaagttcaatgagaagggagaagtgtcgg
agaagatcatcacccgcgccgatggaacccggctggagtacaccgagatcaagtccgatggttcggggaaggctaaggaa
gtcctgaagggctacgtgcttgagggtactctgactgcggaaaagaccactctggtggtcaaggaaggcaccgtgactct
gtcaaagaacatctccaagagcggagaagtcagcgtggaactgaacgacacagattcctccgctgccacgaaaaagaccg
ccgcctggaacagcgggaccagcactctcaccattaccgtgaacagcaaaaagactaaggacctggtgttcaccaaggag
aacacgatcaccgtgcagcagtatgactccaacggtaccaagctcgaagggtccgccgtggagatcactaagctggacga
gattaagaatgcactgaagtga
【0147】
外表面プロテインA(配列番号2)
MKKYLLGIGLILALIACKQNVSSLDEKNSVSVDLPGEMKVLVSKEKNKDGKYDLIATVDKLELKGTSDKNNGSGVLEGVK
ADKSKVKLTISDDLGQTTLEVFKEDGKTLVSKKVTSKDKSSTEEKFNEKGEVSEKIITRADGTRLEYTEIKSDGSGKAKE
VLKGYVLEGTLTAEKTTLVVKEGTVTLSKNISKSGEVSVELNDTDSSAATKKTAAWNSGTSTLTITVNSKKTKDLVFTKE
NTITVQQYDSNGTKLEGSAVEITKLDEIKNALK*
【0148】
外側表面蛋白質C配列ID番号:3
atgaagaagaatactctctccgccattctgatgaccctgttcctgtttatctcctgcaacaactccgggaaggatggcaa
cacctcggccaactccgccgatgaaagcgtcaagggtcccaacctgactgagatctcgaagaaaatcaccgagtccaacg
cggtggtgttggcagtgaaggaggtcgaaactctgctgactagcatcgacgagcttgccaaggccattggaaagaagatt
aagaacgacgtgtcactggacaacgaagctgaccataacggatctcttatctcgggcgcttacctgatttcgaccctcat
caccaagaagatctccgcgatcaaggacagcggggagctcaaggccgaaattgagaaagcaaagaagtgctccgaagagt
tcaccgcgaagctcaagggagaacacaccgacctgggaaaggaaggcgtcaccgatgataacgcgaagaaggccatcctc
aaaaccaacaacgacaagacaaagggcgccgacgaactggagaagctgttcgagagcgtgaagaatctgtccaaggccgc
caaggaaatgttgacgaacagcgtgaaggaactgacctcccctgtggtggccgagtcaccgaaaaagccatga
【0149】
外表面プロテインC(配列番号4)
MKKNTLSAILMTLFLFISCNNSGKDGNTSANSADESVKGPNLTEISKKITESNAVVLAVKEVETLLTSIDELAKAIGKKI
KNDVSLDNEADHNGSLISGAYLISTLITKKISAIKDSGELKAEIEKAKKCSEEFTAKLKGEHTDLGKEGVTDDNAKKAIL
KTNNDKTKGADELEKLFESVKNLSKAAKEMLTNSVKELTSPVVAESPKKP*
【0150】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施態様に限定されるものではない。実際、本明細書
に記載の実施態様に加えて、種々の修飾が、前記の説明から明らかになるであろう。この
ような変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。
【0151】
核酸またはポリペプチドについて与えられる場合、すべての塩基サイズまたはアミノ酸サ
イズ、およびすべての分子量または分子質量の値は近似であり、説明のために提供される
ことが、さらに理解されるべきである。