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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001457
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】半導体スイッチ回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/10 20060101AFI20221226BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20221226BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
H03K17/10
H03K17/687 G
H03K17/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102195
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】栗原 大介
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055BX01
5J055CX03
5J055DX13
5J055DX43
5J055DX61
5J055DX72
5J055EX37
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY21
5J055GX01
5J055GX06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大信号入力時における入出力端子の直流電圧上昇とアイソレーション劣化を抑制可能とする高周波信号の切り替えを行う半導体スイッチ回路を提供する。
【解決手段】半導体スイッチ回路において、第1の単位スイッチ101の入力となる第1のFET1のドレインと第2の単位スイッチ102の入力となる第3のFET3のドレインは、共に共通入出力端子61に接続され、かつ、第1のFET1のドレイン・ソース間には第1の補正容量51が、第3のFET3のドレイン・ソース間には第2の補正容量52が、それぞれ接続され、大信号入力時の交流電圧が第1の補正容量51、第2の補正容量52を介してカップリングされ、大信号入力時の第1の個別入出力端子62及び第2の個別入出力端子63における直流電圧上昇とアイソレーション劣化の抑制が可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号の通過、遮断を可能とする単位スイッチが1つ以上設けられ、
前記単位スイッチは、複数の電界効果トランジスタが直列されてなり、前記単位スイッチの入力に接続される前記電界効果トランジスタのゲートと前記単位スイッチの入力との間に第1の付加容量が、前記単位スイッチの出力に接続される電界効果トランジスタのゲートと前記単位スイッチの出力との間に第2の付加容量が、それぞれ設けられ、
前記単位スイッチの出力とグランドとの間には、前記単位スイッチの出力側から、前記単位スイッチが非導通状態の時に導通状態とされるシャントスイッチ及びDCカット容量が直列接続されてなる半導体スイッチ回路であって、
前記単位スイッチの入力に接続される電界効果トランジスタのドレインとソース間に補正容量が接続されてなることを特徴とする半導体スイッチ回路。
【請求項2】
前記補正容量の容量値は、前記単位スイッチが非導通状態の時に、前記単位スイッチの入力に接続される前記電界効果トランジスタのドレイン・ソース間交流電圧と、前記単位スイッチの出力に接続される前記電界効果トランジスタのドレイン・ソース間交流電圧が等しくなるように設定されることを特徴とする請求項1記載の半導体スイッチ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号の切り替えを行う半導体スイッチ回路に係り、特に、アイソレーション特性の向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の半導体スイッチ回路の構成例として、例えば、図7に示されたような構成を有するものが知られている。
以下、図7を参照しつつ、かかる従来回路について説明することとする。
この半導体スイッチ回路は、共通入出力端子61Aと第1の個別入出力端子62Aとの間に、2つの電界効果トランジスタ(以下、説明の便宜上、電界効果トランジスタを「FET」と称する)が直列接続されてなる第1の単位スイッチSW1が接続され、共通入出力端子61Aと第2の個別入出力端子63Aとの間に、2つのFETが直列接続されてなる第2の単位スイッチSW2が接続されたものとなっている。
【0003】
さらに、第1の個別入出力端子62Aとグランドとの間には、第1のシャントスイッチSW3が、第2の個別入出力端子63Aとグランドとの間には、第2のシャントスイッチSW4が、それぞれ設けられたものとなっている。
例えば、共通入出力端子61Aと第1の個別入出力端子62A間を導通状態とする場合には、第1の単位スイッチSW1をON、第2の単位スイッチSW2をOFFとすると共に、第1のシャントスイッチSW3をOFF、第2のシャントスイッチSW4をONとすべく第1及び第2の制御端子64A,65Aへそれぞれ所定の制御電圧を印加する。
【0004】
その結果、第1の単位スイッチSW1を介して共通入出力端子61Aと第1の個別入出力端子62A間が導通状態とされる一方、第2の単位スイッチSW2がOFFとなり、さらに、第2のシャントスイッチSW4がONとなり、第2の個別入出力端子63Aが接地され、高周波信号が反射されるため、第2の個別入出力端子63Aにおける信号が小さくなり、高アイソレーションが確保される。
【0005】
一方、共通入出力端子61Aと第2の個別入出力端子63A間を導通状態とする場合には、第1の単位スイッチSW1をOFF、第2の単位スイッチSW2をONとすると共に、第1のシャントスイッチSW3をON、第2のシャントスイッチSW4をOFFとすべく第1及び第2の制御端子64A,65Aへそれぞれ所定の制御電圧を印加する。
その結果、第2の単位スイッチSW2を介して共通入出力端子61Aと第2の個別入出力端子63A間が導通状態とされる一方、第1の単位スイッチSW1がOFFとなり、さらに、第1のシャントスイッチSW3がONとなり、第1の個別入出力端子62Aが接地され、高周波信号が反射されるため、第1の個別入出力端子62Aにおける信号が小さくなり、高アイソレーションが確保される。
【0006】
このような従来回路においては、回路動作の線形性向上のために、各入出力端子に接続されるFETのゲートと各入出力端子との間に容量が付加されたものとなっている。
以下、大信号動作について説明する。
例えば、第1の制御端子64AにHighに相当する電圧を印加すると共に、第2の制御端子65AにLowに相当する電圧を印加する。
このとき、第1の単位スイッチSW1及び第2のシャントスイッチSW4が共にON状態となり、第2の単位スイッチSW2及び第1のシャントスイッチSW3がOFF状態となる。
【0007】
この場合の、第2の単位スイッチSW2の動作について、図8に示された等価回路図を参照しつつ、以下に説明する。
まず、OFF状態のFETは容量と見做すことができるため、一つのFETは、図8に示されたように、ゲート・ドレイン間容量Cgd、ゲート・ソース間容量Cgs、及び、ドレイン・ソース間容量Cdsで表すことができる。
【0008】
また、FETのゲートに接続される抵抗は、高周波阻止用の高抵抗であるため、無視することができる。
例えば、共通入出力端子61Aに高周波電力が入力された場合、FET3AとFET4Aの接続点(図8において符号Dの箇所)の交流電圧は、図8に示された等価回路の容量により分圧されるため、共通入出力端子61A(図8においては符号Bの箇所)と第2の個別入出力端子63A(図8においては符号Fの箇所)間の交流電圧の2分の1となる。
【0009】
また、FET3Aのゲート(図8においては符号Cの箇所)の交流電圧は、付加容量43Aの容量値をC3Aとすると、(C3A+Cgd3)とCgs3の容量分圧された電圧となる。
図9には、共通入出端子61Aに20dBmの高周波信号が入力された場合の、図8におけるB~D各点の電圧波形のシミュレーション結果が示されており、以下、同図について説明する。
【0010】
スイッチで使用されるFETは、通常、N型FETであり、図8においては、ソースであるB点又はD点よりゲートであるC点の電圧が閾値より低ければOFF状態を保つことができる。
例えば、FETの閾値電圧が-0.5Vの場合、図9において、実線両矢印が示されたC点とD点間の電圧差が0.5V以上あれば、OFF状態を保つことができ、0.5Vより小さくなると電流が流れ始める。
【0011】
図10には、図9に示された波形について、C点とB点間電圧(C・B間電圧)の変化、及び、C点とD点間の電圧(C・D間電圧)の変化を、それぞれ表した特性線図が示されており、以下、同図について説明する。
FET3Aのゲート(C点)の交流電圧は付加容量43Aが無い場合より大きくなるため、C点とD点間の交流電圧振幅は大きくなる一方、C点とB点間の交流電圧は小さくなる(図10参照)。
そのため、入力電力が大きくなると、C点とB点間よりもC点とD点間の電圧の方が先に閾値電圧に到達し、C点とD点間の電圧が閾値を超えると、B点からD点に電流が流れ始める。
【0012】
一方、C点とB点間はFETの閾値を超えないため、D点からB点には電流は流れない。そのため、D点に電荷がたまることになり、結果として、D点の直流電圧が上昇することになる。
さらに、D点の直流電圧が上昇し、C点とD点間の電圧が閾値に達するとOFF状態を保つことができる。
【0013】
このように、付加容量43Aの作用により、D点の直流電圧はOFF状態を保つ電圧まで上昇するため、FET3AはOFF状態を保つことができる。
一方、FET4Aについては、FET4Aのゲート(図8においては符号Eの箇所)の交流電圧は付加容量44Aが無い場合より小さくなるため、FET4Aのゲートと第2の個別入出力端子63A(図8においては符号Fの箇所)、すなわち、図8のE点とF点間の交流電圧振幅は小さくなる一方、E点とD点間の交流電圧は大きくなる。
そのため、入力電力が大きくなると、E点とF点間よりもE点とD点間の電圧の方が先に閾値電圧に到達し、E点とD点間の電圧が閾値を超えると、F点からD点に電流が流れ始める。
一方、E点とF点間はFETの閾値を超えないため、D点からF点には電流は流れない。そのため、D点に電荷がたまることになり、結果として、D点の直流電圧が上昇することになる。
さらに、D点の直流電圧が上昇し、E点とD点間の電圧が閾値に達するとOFF状態を保つことができる。
このように、付加容量44Aの作用により、D点の直流電圧はOFF状態を保つ電圧まで上昇するため、FET4AはOFF状態を保つことができる。
なお、上述のような半導体スイッチ回路としては、例えば、特許文献1等に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9-8621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述の従来回路において、例えば、第1の単位スイッチSW1がON、第2の単位スイッチSW2がOFF状態にあって、共通入出力端子61Aに入力される高周波信号の電力が大きくなるにしたがって、第2の個別入出力端子63A側におけるアイソレーション特性が劣化することがある。
図11には、図7に示された従来回路のFET3AとFET4Aの接続点Dに対地容量71Aを付加した回路図が示されており、以下、同図について説明する。
このような対地容量(寄生容量)が存在する回路においては、FET3AとFET4Aの接続点Dの交流電圧振幅が小さくなる。一般的に、スイッチ回路に使用されるFET3AやFET4Aのゲート幅は数mmと大きいため、レイアウトサイズが大きくなる。そのような場合も、対地容量(寄生容量)が存在する要因となる。
接続点Dの交流電圧振幅が小さくなると、FET4Aのドレイン・ソース間の交流電圧振幅が小さくなる。
【0016】
一方、接続点Dの交流電圧振幅が小さくなるとFET3Aのドレイン・ソース間の交流電圧振幅が大きくなる。
FET4Aのドレイン・ソース間の交流電圧振幅よりも、FET3Aのドレイン・ソース間の交流電圧振幅が大きいと、FET3Aの直流電圧を上昇させる作用の方が大きくなり、第2の個別入出力端子63Aの直流電圧が上昇してしまう。
図11に示された回路において、対地容量71Aを10fFとした場合、第1の単位スイッチSW1がON、第2の単位スイッチSW2がOFF状態にあって、共通入出力端子61Aに高周波信号を入力した場合の、入力電力の変化に対する第2の単位スイッチSW2の各ドレイン、ソースにおける直流電圧の変化のシミュレーション結果が図12に示されており、以下、同図について説明する。
【0017】
図12においては、第2の個別入出力端子63Aの直流電圧(実線の特性線参照)が、共通入出力端子61Aの直流電圧(点線の特性線参照)より高い領域があることが確認できる。
このように、第2の個別入出力端子63Aの直流電圧が定常状態より上昇してしまうと、第2のシャントスイッチSW4を構成しているFETのゲート・ソース間の逆方向電圧が大きくなる。
【0018】
そして、その逆方向電圧がFETの閾値電圧を超えてしまうと、第2のシャントスイッチSW4がOFF状態となってしまう。
第2のシャントスイッチSW4は、高アイソレーションを得るためにON状態であるべきところ、上述の現象によりOFF状態となってしまうため、第2の個別入出力端子63Aにおけるアイソレーション特性が劣化してしまう。
【0019】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、大信号入力時における入出力端子の直流電圧上昇とアイソレーション劣化を抑制可能とする半導体スイッチ回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る半導体スイッチ回路は、
高周波信号の通過、遮断を可能とする単位スイッチが1つ以上設けられ、
前記単位スイッチは、複数の電界効果トランジスタが直列されてなり、前記単位スイッチの入力に接続される前記電界効果トランジスタのゲートと前記単位スイッチの入力との間に第1の付加容量が、前記単位スイッチの出力に接続される電界効果トランジスタのゲートと前記単位スイッチの出力との間に第2の付加容量が、それぞれ設けられ、
前記単位スイッチの出力とグランドとの間には、前記単位スイッチの出力側から、前記単位スイッチが非導通状態の時に導通状態とされるシャントスイッチ及びDCカット容量が直列接続されてなる半導体スイッチ回路であって、
前記単位スイッチの入力に接続される電界効果トランジスタのドレインとソース間に補正容量が接続されてなるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、共通入出力端子に接続されるFETのドレイン・ソース間に補正容量を接続することにより、大信号入力時にOFF状態の個別入出力端子における直流電圧上昇が抑制され、その結果、大信号入力時におけるアイソレーションの劣化を防止することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路の回路構成例を示す回路図である。
図2】本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路の入力電力に対する端子電圧の変化例を示す特性線図である。
図3】本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路の入力電力に対するアイソレーションの変化例を、従来回路の同様の変化例と共に示す特性線図である。
図4】本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路のSPST構成例を示す回路図である。
図5】本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路のSP3T構成例を示す回路図である。
図6】本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路の他の回路構成例を示す回路図である。
図7】従来の半導体スイッチ回路の回路構成例を示す回路図である。
図8】従来回路を構成する第2の単位スイッチSW2の等価回路図である。
図9】従来回路におけるFET3Aのドレイン、ソースの電圧波形のシミュレーション結果を示す特性線図である。
図10】従来回路におけるFET3Aのゲート・ドレイン間、ゲート・ソース間の電圧波形のシミュレーション結果を示す特性線図である。
図11図7に示された従来回路において対地容量を付加した構成例を示す回路図である。
図12図11に示された他の従来回路におけるスイッチSW2の入力電力に対する各ドレイン、ソースの直流電圧の変化例を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図6を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路の構成について、図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路は、2つの単位スイッチ101,102の組合せによるSPDT(Single Pole Dual Throw)スイッチが構成されてなるもので、共通入出力端子61と第1の個別入出力端子62との間、又は、共通入出力端子61と第2の個別入出力端子63との間のいずれか一方を、選択的に導通状態として、高周波信号を通過せしめることができるよう構成されたものである。
【0024】
以下、具体的に、その構成を説明すれば、まず、共通入出力端子61と第1の個別入出力端子62との間に第1の単位スイッチ101(図1においては「SW1」と表記)が接続され、共通入出力端子61と第2の個別入出力端子63との間に第2の単位スイッチ102(図1においては「SW2」と表記)が接続されて設けられたものとなっている。
そして、第1の個別入出力端子62とグランドとの間には、第1のシャントスイッチ(図1においては「SW3」と表記)103が、また、第2の個別入出力端子63とグランドとの間には、第2のシャントスイッチ(図1においては「SW4」と表記)104が、それぞれ設けられたものとなっている。
【0025】
第1の単位スイッチ101は、第1及び第2のFET(図1においては、それぞれ「Q1」、「Q2」と表記)1,2の直列接続により構成され、また、第2の単位スイッチ102は、第3及び第4のFET(図1においては、それぞれ「Q3」、「Q4」と表記)3,4の直列接続により構成されている。
第1の単位スイッチ101においては、第1のFET1のソース(又はドレイン)と第2のFET2のドレイン(又はソース)が相互に接続されている。また、同様に、第2の単位スイッチ102においては、第3のFET3のソース(又はドレイン)と第4のFET4のドレイン(又はソース)が相互に接続されたものとなっている。
【0026】
そして、第1のFET1の他端、すなわち、ドレイン(又はソース)は、第3のFET3のドレイン(又はソース)と共に、共通入出力端子61と接続されている。
また、第2のFET2の他端であるソース(又はドレイン)は、第1の個別入出力端子62に、第4のFET4の他端であるソース(又はドレイン)は、第2の個別入出力端子63に、それぞれ接続されている。
【0027】
また、第1のFET1のゲートは、第1のゲート抵抗器(図1においては「R21」と表記)21を介して、第2のFET2のゲートは、第2のゲート抵抗器(図1においては「R22」と表記)22を介して、共に第1の制御端子64に接続されている。
同様に、第3のFET3のゲートは、第3のゲート抵抗器(図1においては「R23」と表記)23を介して、また、第4のFET4のゲートは、第4のゲート抵抗器(図1においては「R24」と表記)24を介して、共に第2の制御端子65に接続されている。
【0028】
さらに、第1のFET1のドレイン・ソース間に第1の補正容量(図1においては「C11」と表記)51が、第3のFET3のドレイン・ソース間に第2の補正容量(図1においては「C12」と表記)52が、それぞれ並列接続されている。
また、第1のFET1のゲート・ドレイン(又はソース)間には、第1の付加容量(図1においては「C1」と表記)41が、第2のFET2のゲート・ソース(又はドレイン)間には、第2の付加容量(図1においては「C2」と表記)42が、第3のFET3のゲート・ドレイン(又はソース)間には、第3の付加容量(図1においては「C3」と表記)43が、第4のFET4のゲート・ソース(又はドレイン)間には、第4の付加容量(図1においては「C4」と表記)44が、それぞれ接続されている。
【0029】
一方、第1のシャントスイッチ103は、第5及び第6のFET(図1においては、それぞれ「Q5」、「Q6」と表記)5,6の直列接続により構成され、また、第2のシャントスイッチ104は、第7及び第8のFET(図1においては、それぞれ「Q7」、「Q8」と表記)7,8の直列接続により構成されている。
【0030】
第1のシャントスイッチ103においては、第5のFET5のソース(又はドレイン)と第6のFET6のドレイン(又はソース)が相互に接続され、また、同様に、第2のシャントスイッチ104においては、第7のFET7のソース(又はドレイン)と第8のFET8のドレイン(又はソース)が相互に接続されたものとなっている。
【0031】
そして、第5のFET5の他端であるドレイン(又はソース)は、第1の個別入出力端子62に、第7のFET7の他端であるドレイン(又はソース)は、第2の個別入出力端子63に、それぞれ接続されている。
また、第6のFET6の他端であるソース(又はドレイン)は、第1のDCカット容量(図1においては「C9」と表記)49を介して、また、第8のFET8の他端であるソース(又はドレイン)は、第2のDCカット容量(図1においては「C10」と表記)50を介して、共にグランドに接続されている。
【0032】
また、第5のFET5のゲートは、第5のゲート抵抗器(図1においては「R25」と表記)25を介して、第6のFET6のゲートは、第6のゲート抵抗器(図1においては「R26」と表記)26を介して、共に第2の制御端子65に接続されている。
同様に、第7のFET7のゲートは、第7のゲート抵抗器(図1においては「R27」と表記)27を介して、第8のFET8のゲートは、第8のゲート抵抗器(図1においては「R28」と表記)28を介して、共に第1の制御端子64に接続されている。
【0033】
そして、第5のFET5のゲート・ドレイン(又はソース)間には、第5の付加容量(図1においては「C5」と表記)45が、第6のFET6のゲート・ソース(又はドレイン)間には、第6の付加容量(図1においては「C6」と表記)46が、第7のFET7のゲート・ドレイン(又はソース)間には、第7の付加容量(図1においては「C7」と表記)47が、第8のFET8のゲート・ソース(又はドレイン)間には、第8の付加容量(図1においては「C8」と表記)48が、それぞれ接続されている。
【0034】
次に、上記構成における回路動作について説明する。
まず、スイッチ回路としての基本的な動作は、この種の従来回路と同一であるので、概括的に説明することとする。
例えば、共通入出力端子61と第1の個別入出力端子62間を導通状態とする場合には、第1の単位スイッチ101をON、第2の単位スイッチ102をOFFとすると共に、第1のシャントスイッチ103をOFF、第2のシャントスイッチ104をONとすべく、第1及び第2の制御端子64,65へ、それぞれ所定の制御電圧を印加する。
【0035】
その結果、第1の単位スイッチ101を介して共通入出力端子61と第1の個別入出力端子62間が導通状態とされる。一方、第2の単位スイッチ102をOFFとし、さらに第2のシャントスイッチ104をONとすることにより、第2の個別入出力端子63が接地されるため、第2の個別入出力端子63におけるアイソレーションが確保される。
一方、共通入出力端子61と第2の個別入出力端子63間を導通状態とする場合には、第1の単位スイッチ101をOFF、第2の単位スイッチ102をONとすると共に、第1のシャントスイッチ103をON、第2のシャントスイッチ104をOFFとすべく、第1及び第2の制御端子64,65へ、それぞれ所定の制御電圧を印加する。
【0036】
その結果、第2の単位スイッチ102を介して共通入出力端子61と第2の個別入出力端子63間が導通状態とされる。一方、第1の単位スイッチ101をOFFとし、さらに第1のシャントスイッチ103をONとすることにより、第1の個別入出力端子62が接地されるため、第1の個別入出力端子62におけるアイソレーションが確保される。
【0037】
次に、大信号入力時の回路動作について説明する。
例えば、共通入出力端子61と第2の個別入出力端子63間が非導通状態の場合、第3及び第4のFET3,4がOFF状態となる。
このとき、共通入出力端子61の交流電圧は、第2の単位スイッチ102の入出力間、すなわち、第3及び第4のFET3,4間に印加される。
第3及び第4のFET3,4にかかる交流電圧は、共通入出力端子61と第2の個別入出力端子63間の交流電圧が分圧された電圧となる。
第3及び第4のFET3,4に接続される素子は、回路図に現れる接続配置の形状を見ると左右対称であるから、第3及び第4のFET3,4の接続点(図1におけるA点)の交流電圧は、理想的には共通入出力端子61と第2の個別入出力端子63間の交流電圧の2分の1となる。
【0038】
しかしながら、A点に寄生容量などがあると、A点の交流電圧波形に影響を及ぼし、上述の理想的な電圧状態とはならない。すなわち、寄生容量の一方側が、対地や第1の制御端子64、第2の制御端子65のように、交流的に接地された点の場合、A点の交流電圧は小さくなる。
一般に、スイッチ回路に使用されるFETのゲート幅は、数mmと大きいため、レイアウトサイズが大きくなる。
その結果、レイアウト起因の寄生容量が大きくなり、その影響が無視できなくなる。
【0039】
本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路においては、従来と異なり、第1の補正容量51、第2の補正容量52が接続されているため、共通入出力端子61の交流電圧が、第1及び第2のFET1,2の相互の接続点には、第1の補正容量51を介して、また、第3及び第4のFET3,4の相互の接続点には、第2の補正容量52を介して、それぞれカップリングされるため、各々の接続点における交流電圧は、従来回路に比して大きくなる。
【0040】
第1及び第2の補正容量51,52の容量値は、寄生容量による交流電圧減少を補正するため、寄生容量値に近い値に設定されることとなる。
すなわち、具体的には、例えば、第3のFET3のドレイン・ソース間の交流電圧と第4のFET4のドレイン・ソース間の交流電圧が等しくなるように補正容量値を設定する。
なお、寄生容量は、レイアウト情報を基に、電磁界シミュレーション等で算出することができる。
【0041】
図2には、本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路の入力電力に対するOFF状態の端子の直流電圧の変化のシミュレーション結果の一例を示す特性線が従来回路の同様な特性線と共に示されており、以下、同図について説明する。
図2において、横軸は入力電力を、縦軸は第2の個別入出力端子63の直流電圧を、それぞれ示している。
また、同図において、本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路の特性線は実線により、従来回路の特性線は点線により、それぞれ示されている。
【0042】
図2に示された本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路の特性線(実線)は、図1における第3及び第4のFET3,4の相互の接続点Aに寄生容量として対地に10fFを付加し、第2の補正容量52の容量値を10fFとした場合に、通過する高周波信号の入力電力の変化に対する第2の個別入出力端子63における直流電圧の変化のシミュレーション結果を示している。
【0043】
また、図2に示された従来回路の点線の特性線は、先に図11に示された従来回路において、対地容量71A(寄生容量)を10fFとした場合に、通過する高周波信号の入力電力に対する第2の個別入出力端子63Aにおける直流電圧の変化のシミュレーション結果を示している。
図2によれば、本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路の入出力端子における電圧上昇が、従来回路に比して格段に抑制されたものとなっていることが確認できる。
【0044】
次に、図3には、本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路の入力電力に対するアイソレーションの変化のシミュレーション結果の一例を示す特性線が従来回路の同様な特性線と共に示されており、以下、同図について説明する。
図3において、横軸は入力電力を、縦軸はアイソレーションを、それぞれ示している。
また、同図において、本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路の特性線は実線により、従来回路の特性線は点線により、それぞれ示されている。
【0045】
図3に示された本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路の特性線(実線)は、図1に示された構成において、第2の補正容量52の容量値を10fFとし、第3及び第4のFET3,4の相互の接続点Aに寄生容量として対地に10fFを付加し、共通入出力端子61及び第1の個別入出力端子62間を導通状態とした場合に、通過する高周波信号の入力電力の変化に対する第2の個別入出力端子63におけるアイソレーションの変化のシミュレーション結果を示している。
【0046】
また、図3に示された従来回路の点線の特性線は、図7に示された構成において、共通入出力端子61A、第1の個別入出力端子62A間を導通状態とした場合に、通過する高周波信号の入力電力の変化に対する第2の個別入出力端子63Aにおけるアイソレーションの変化のシミュレーション結果を示している。
図3によれば、従来回路では入力電力増加に伴って、アイソレーションが急激に劣化しているが、本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路では、格段に抑制されたものとなっていることが確認できる。
【0047】
なお、本発明の実施の形態における第1の補正容量51、第2の補正容量52のような補正容量は、OFF状態のスイッチに大電力がかかる場合に必要となる。
例えば、図1において、第1の単位スイッチ101がON状態の場合は大電力が通過するが、第2の単位スイッチ102がON状態の場合に大電力が通過しない場合は、OFF状態の第1の単位スイッチ101の第1の補正容量51は不要である。
【0048】
図1を参照しつつ、上述した本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路は、SPDTスイッチの構成を前提として説明したが、勿論、SPDTスイッチに限定される必要はなく、他の構成のスイッチであっても良い。
例えば、本発明は、図4に示されたSPST(Single Pole Single Throw)スイッチや、図5に示されたSP3T(Single Pole Triple Throw)スイッチにも適用することができる。
【0049】
なお、ここで、図4に示されたSPST(Single Pole Single Throw)スイッチの構成について概括的に説明する。
このSPSTスイッチは、第1の入出力端子61Bと第2の入出力端子62Bとの間に、単位スイッチ201が設けられる一方、第2の入出力端子62Bと接地間に、シャントスイッチ203が設けられた構成を有するものである。
単位スイッチ201は、先に図1に示された単位スイッチ101,102と基本的に同様の構成を有してなるものである。また、シャントスイッチ203は、同じく図1に示されたシャントスイッチ103,104と基本的に同様の構成を有してなるものであり、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
なお、単位スイッチ201は、制御端子64Bに印加される制御電圧により、また、シャントスイッチ203は、制御端子65Bに印加される制御電圧により、それぞれON・OFFが制御可能となっている。
【0050】
次に、図5に示されたSP3Tスイッチの構成について概括的に説明する。
このSP3Tスイッチは、共通入出力端子61Cと第1の個別入出力端子62C-1との間に第1の単位スイッチ201-1が、共通入出力端子61Cと第2の個別入出力端子62C-2との間に第2の単位スイッチ201-2が、共通入出力端子61Cと第3の個別入出力端子62C-3との間に第3の単位スイッチ201-3が、それぞれ設けられている。
【0051】
第1乃至第3の単位スイッチ201-1~201-3は、先に図1に示された単位スイッチ101,102と基本的に同様の構成を有してなるもので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
なお、第1乃至第3の単位スイッチ201-1~201-3は、制御端子64C-1~64C-3に印加される制御電圧によって、それぞれのON・OFFが制御されるものとなっている。
【0052】
また、第1の個別入出力端子62C-1と接地との間に、第1のシャントスイッチ203-1が、第2の個別入出力端子62C-2と接地との間に、第2のシャントスイッチ203-2が、第3の個別入出力端子62C-3と接地との間に、第3のシャントスイッチ203-3が、それぞれ設けられている。
第1乃至第3のシャントスイッチ203-1~203-3は、先に図1に示されたシャントスイッチ103,104と基本的に同様の構成を有してなるものであり、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
なお、第1乃至第3のシャントスイッチ203-1~203-3は、制御端子65C-1~65C-3に印加される制御電圧によって、それぞれのON・OFFが制御されるものとなっている。
【0053】
上述したそれぞれの半導体スイッチ回路においては、基本的にシャントスイッチが個別入出力端子に接続される構成を説明したが、シャントスイッチを設ける位置は、これに限定されるものではない。
例えば、図6に示されたように、第3の入出力端子61D、第4の入出力端子62D間に直列接続されて設けられた第1及び第2の単位スイッチ301,302の相互の接続点と接地との間に、シャントスイッチ303を設ける構成としても良い。
なお、この場合、第2の単位スイッチ302側にも大電力が入力される場合には、第2の単位スイッチ302の入力側のFETのドレイン・ソース間に補正容量を付加する構成とすると好適である。
【0054】
なお、上述した本発明の実施の形態における半導体スイッチ回路は、単位スイッチを2つのFETの直列接続による構成として説明したが、2つに限定される必要はない。3つ以上のFETの直列接続による構成においても、使用するFETのゲート幅が大きい場合は、本発明の実施の形態と同様に寄生容量の影響により大信号入力時にOFF状態の入出力端子における直流電圧が上昇し、アイソレーション特性が劣化することがある。
ここで、単位スイッチが3つ以上のFETの直列接続による構成の場合には、各FETのそれぞれに接続点に寄生容量が存在することになる。つまり、寄生容量が複数存在するため、補正容量の容量値は、上述した実施の形態のように各寄生容量の容量値に近い値に設定することは適切ではない場合がある。
その場合には、大信号が入力される入出力端子(図1図5に示す共通入出力端子61、61C、図4に示す第1の入出力端子61B、図6に示す第3の入出力端子61D)に接続されるFETのドレイン・ソース間に補正容量を接続すると共に、補正容量の容量値を、大信号が入力される入出力端子に接続される単位スイッチのFETのドレイン・ソース間の交流電圧と、単位スイッチの出力に接続されるFETのドレイン・ソース間の交流電圧が等しくなるように設定することで、すなわち、ゲート・ドレイン(又はソース)間に付加容量が接続されるFETの交流電圧が等しくなるように設定することで、大信号入力時におけるアイソレーションの劣化を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
大信号入力時における入出力端子の直流電圧上昇とアイソレーション劣化の抑制が所望される半導体スイッチ回路に適用できる。
【符号の説明】
【0056】
51…第1の補正容量
52…第2の補正容量
61…共通入出力端子
62…第1の個別入出力端子
63…第2の個別入出力端子
101…第1の単位スイッチ
102…第2の単位スイッチ
103…第1のシャントスイッチ
104…第2のシャントスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12