(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145709
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】フェノール系成型材料
(51)【国際特許分類】
C08L 61/06 20060101AFI20231003BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231003BHJP
【FI】
C08L61/06
C08K3/013
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127028
(22)【出願日】2023-08-03
(62)【分割の表示】P 2019566209の分割
【原出願日】2018-05-31
(31)【優先権主張番号】1708688.5
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】519345232
【氏名又は名称】エイセル インダストリーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ACELL INDUSTRIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】アルベリテッリ アルディノ
(72)【発明者】
【氏名】ゼッダ ロベルト
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複合材の形成における使用のための成型材料に関し、既知の組成物と同じようには容易に変色しないフェノール系樹脂材料を提供する。
【解決手段】フェノール系樹脂シートを形成するための未硬化材料であって、未硬化フェノール系樹脂と、フィラーと、前記フェノール系樹脂の含有量に対して2wt.%未満の量の触媒とを含み、前記フィラーが、2.5:1以上の量のフィラー対未硬化フェノール系樹脂の比で存在し、さらに前記フィラーが、遷移金属水酸化物及び/又はアルミニウム水酸化物を1:1.5~3:1の量の金属水酸化物対未硬化フェノール系樹脂の比で含む、前記未硬化材料を提供する。本発明のフェノール系樹脂材料は触媒材料を加える必要なく使用することができるため、容易に変色しない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール系樹脂シートを形成するための未硬化材料であって、
-未硬化フェノール系樹脂と、
-フィラーと、
-前記フェノール系樹脂の含有量に対して2wt.%未満の量の触媒と
を含み、前記フィラーが、2.5:1以上の量のフィラー対未硬化フェノール系樹脂の比で存在し、さらに前記フィラーが、遷移金属水酸化物及び/又はアルミニウム水酸化物を1:1.5~3:1の量の金属水酸化物対未硬化フェノール系樹脂の比で含む、前記未硬化材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材の形成における使用のための成型材料に関し、特にフェノール系複合材に関する。より具体的には、本発明は、触媒材料を加える必要なく使用することができ、したがって、既知の組成物と同じようには容易に変色しないフェノール系樹脂材料に関する。
【背景技術】
【0002】
「フェノール系樹脂」という用語は、フェノール類とアルデヒド類との反応から得られる多種多様な樹脂ベースの生成物を表す。従来、フェノール系樹脂は、必要な生成物に応じて、酸性又は塩基性条件下でフェノール類をホルムアルデヒドと反応させることにより生成される。塩基性触媒を使用してフェノール系樹脂が生成されるとき、熱硬化性樹脂、すなわち「レゾール」が生成される。典型的な塩基性触媒には、アルカリ金属、例えばナトリウム、カリウム又はリチウムの水酸化物が含まれる。代わりに、酸触媒を使用してフェノール系樹脂を生成することができ、プレポリマー(ノボラック)を製造し、これを成型した後、硬化させることができる。
【0003】
フェノール系樹脂及びフェノール系樹脂を含む複合材製品は、消費財、機械部品、医療機器、包装、貯蔵材料、断熱材、タイル、ラミネート、合板、鋳型及び家具を含む様々な用途において一般に使用される。
【0004】
しかし、上述の方法を使用して製造される樹脂は、硬化時に濃色化して、暗赤色から黒色の範囲の色を有する樹脂になることが既知である。このために、濃色の顔料しかそのような樹脂と組み合わせて使用することができず、上述の分野におけるこれらの材料の使用/商業化は著しく限定される。
【0005】
したがって、フェノール系樹脂の生成時の変色の程度を制御する方法を開発するために多大な研究が行われてきた。
【0006】
特に、特殊な装置の使用、純粋な原料及び注意深いプロセス制御により、フェノール系樹脂中の触媒の変色効果を緩和することが可能である。
【0007】
しかし、そのような方法は、従来の方法と比べてコストを著しく増大させることが既知であり、問題が完全に緩和されるわけではない。
【0008】
フェノール系樹脂の変色を制御する代替方法は、具体的に選択される色安定剤を特別に取り込むことである。
【0009】
例えば、米国特許第3,005,798号明細書には、グリオキサールを従来の酸硬化法又はアルカリ性硬化法に取り込み、それによって黄色い麦わら色の澄んだ透明な材料を製造することにより、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂の色を改善する方法が開示されている。米国特許第3,005,798号明細書には、この効果を生じさせるために、全フェノール-ホルムアルデヒド固形分の0.2~1重量%の量のグリオキサールを取り込まなければならないことが教示されている。好ましくは、樹脂全体にわたって化合物の分散を助けるために、フェノール樹脂がまだ水溶性型である間、グリオキサールがフェノール樹脂に取り込まれる。
【0010】
米国特許第3,663,503号明細書には、強い有機触媒の存在下でフェノール系樹脂を低温硬化する前に色安定剤を樹脂に取り込む方法が開示されている。米国特許第3,663,503号明細書には、色安定剤が、樹脂の約0.2~約5重量%の量で存在するチオン化合物であることが教示されている。適切なチオン化合物は、脂肪族及び芳香族チオン、例えばチオケトン及びチオエステルから選択され得、より具体的には、チオン化合物は、チオ尿素及びチオ尿素のC=S含有誘導体、ジフェニルチオ尿素、チアゾリジン-2-チオン、2-チオバルビツール酸並びにチオセミカルバジドから選択され得る。さらに、フェノール系樹脂を硬化する適切な強い有機触媒には、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸及びシュウ酸が含まれる。
【0011】
米国特許第4,369,259号明細書には、フェノール系樹脂混合物へのホスフィン酸塩及びホスホン酸塩の取り込みが、光、空気及び/又は熱による変色に対する耐性を高めることが教示されている。特に、米国特許第4,369,259号明細書には、ホスフィン酸及びホスホン酸の無機塩が安定剤として使用され、完成発泡体の少なくとも0.1重量%、好ましくは0.3~1.0重量%の量で存在することが教示されている。使用され得るホスフィン酸の無機塩の例には、式MeH2PO2.xH2Oのアルカリ金属塩が含まれる。さらに、ホスホン酸の無機塩は、アルカリ金属MeH2PO3及びMe2HPO3(式中、Meはナトリウム又はカリウムである)並びに対応するカルシウム塩から選択され得る。米国特許第4,369,259号明細書には、好ましい硬化剤が芳香族スルホン酸又は塩酸から選択されることが教示されている。
【0012】
それぞれの場合において、先行技術には、変色が限られる、又は変色が少ないフェノール系樹脂を製造するために、色安定剤及び酸触媒の両方が存在しなければならないことが教示されている。明らかに、両方の反応物の必要性によって、より明るい色の樹脂を製造するコストが増大することになる。さらに、上述の文書のいくつかに示されている通り、生成される樹脂全体にわたって色安定効果を得るために、反応プロセスの特定の箇所で(すなわち、フェノール樹脂がまだ水溶性である間)、色安定剤を添加する必要があり得る。これは、より複雑な反応プロセスを生み出し、不可避的に時間効率に影響することになり、したがって、この場合も、そのような樹脂の製造の費用効率に影響することになる。
【0013】
加えて、より明るい色のフェノール系樹脂の製造に利用できる方法の多くが、反応プロセスを触媒する強酸又は強塩基の存在を必要とする。そのような化学薬品の使用は装置を腐食させ、したがって、より頻繁な交換が必要になることが既知である。
【0014】
上記を鑑み、より明るい色のフェノール系樹脂を製造する、費用効率がより高い方法を生み出すことが明らかに望ましい。そのような樹脂を製造するより単純で、より時間効率のよい方法を生み出すことも望ましい。最後に、より少数の腐食性の化学薬品、例えば酸性若しくは塩基性触媒の使用を必要とする、又は腐食性の化学薬品の使用を必要としない、より明るい色のフェノール系樹脂を生成する方法を生み出すことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第3,005,798号明細書
【特許文献2】米国特許第3,663,503号明細書
【特許文献3】米国特許第4,369,259号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の態様によれば、フェノール系樹脂シートを形成するための未硬化材料であって、
-未硬化フェノール系樹脂と、
-フィラーと、
-フェノール系樹脂の含有量に対して2wt.%未満の量の触媒と
を含み、フィラーが、2.5:1以上の量のフィラー対未硬化フェノール系樹脂の比で存在し、さらにフィラーが、遷移金属水酸化物及び/又はアルミニウム水酸化物を1:1.5~3:1の量の金属水酸化物対未硬化フェノール系樹脂の比で含む、未硬化材料が提供される。
【0017】
驚くべきことに、フィラー内に金属水酸化物化合物を加えると、存在する触媒の量を著しく減らすことが可能になり、さらにはおそらく完全に避けることも可能になることが明らかになった。
【0018】
いかなる特定の理論によっても制限されることは望まないが、金属水酸化物化合物を加えると、有意量で存在する触媒を必要とせずに、又はさらには全く必要とせずに、未硬化フェノール系材料がBステージ硬化(又は樹脂の高密度化とみなすこともできるもの)の等価物に至ることが可能になると考えられる。
【0019】
当業者には十分理解される通り、Bステージ(又は高密度化)は、そのようなフェノール系樹脂の加工性の向上を可能にする状態(例えば、部分的に硬化された状態)、例えば、それらの樹脂をシートに形成することを可能にし、次いで、それらのシートが基材及び/又は表面に付与され得る状態を指す。安定性は、形成されたシートを保管し、後で使用するためにロールに形成できるようなものである。そのような材料は、次いで、加熱及び加圧により完全に硬化させることができる。
【0020】
上である程度詳しく論じた通り、従来の触媒の使用に伴う問題は、製造された硬化樹脂の変色であり、したがって、様々な彩色仕上げ及びパターンの複合材を製造できる能力である。本明細書に開示の材料を使用することにより、使用する触媒の量のような問題を軽減又はさらには緩和することが可能であり、いくつかの実施形態では完全に避けることができる。
【0021】
好ましくは、存在する触媒の量は、フェノール系樹脂の含有量に対して1wt.%未満、より好ましくはフェノール系樹脂の含有量に対して0.5wt.%未満、例えば0.2wt.%未満であり得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、未硬化材料は触媒を実質的に含まない場合がある。実質的に含まないとは、未硬化材料に及ぼす全体的な効果及び硬化のBステージ等価物に至ることができるその能力の点から、存在する任意の触媒の量を無視できることを意味する。
【0023】
したがって、本発明の別の態様は、フェノール系樹脂シートを形成するための未硬化材料であって、
-未硬化フェノール系樹脂と、
-フィラーと
から本質的になり、フィラーが、2.5:1以上の量のフィラー対未硬化フェノール系樹脂の比で存在し、さらにフィラーが、遷移金属水酸化物及び/又はアルミニウム水酸化物を1:1.5~3:1の量の金属水酸化物対未硬化フェノール系樹脂の比で含む、未硬化材料を提供する。
【0024】
また、本明細書に開示の未硬化材料が触媒を含まない場合があることも理解されたい。
【0025】
いかなる誤解も避けるために、触媒という用語は、そのようなフェノール系樹脂の硬化を触媒することが既知であり、Bステージ硬化を助けることが既知である添加剤を指すことを意図する。従来、そのような触媒は主に2つのカテゴリー、すなわち酸性及び塩基性に分けられる。
【0026】
酸性触媒の例には、塩酸、硫酸及びシュウ酸のうちの1又は2以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
塩基性触媒の例には、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム及びエチルアミンのうちの1又は2以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
また、触媒材料の存在を減らし、又はさらにはその存在を完全に避けることにより、上述のような色安定剤、例えば、グリオキサール、チオン、ホスフィン酸塩、ホスホン酸塩を加える必要なく変色の問題を避けることが可能であることも理解されたい。
【0029】
したがって、本発明のさらに別の態様は、フェノール系樹脂シートを形成するための未硬化材料であって、
-未硬化フェノール系樹脂と、
-フィラーと、
-任意で、本明細書に具体的に記載の別の添加剤と
からなり、フィラーが、2.5:1以上の量のフィラー対未硬化フェノール系樹脂の比で存在し、フィラーが、遷移金属水酸化物及び/又はアルミニウム水酸化物を1:1.5~3:1の量の金属水酸化物対未硬化フェノール系樹脂の比で含む、未硬化材料を提供する。
【0030】
本明細書に記載の未硬化材料によれば、フィラーは、3:1以上の量で、好ましくは3.5:1以上の量で存在し得る。加えられるフィラーの量は、場合によっては、調製されつつある複合材の対象となる使用に依存することを理解されたい。また、フィラーの量を増やすことができる一方、そのような複合材に関する厳しい要件、例えば強度、弾性率、耐火性、耐候性などを依然として満たすことができることには著しい経済的利点があることも理解されたい。したがって、存在するフィラーの量は、該当する場合、5:1以上の量でもあり得る。
【0031】
本明細書に記載の未硬化材料によれば、フィラーの量は、20:1以下の量で、例えば10:1以下の量で存在し得る。
【0032】
本明細書に記載の未硬化フェノール系組成物は特にフェノール-ホルムアルデヒド樹脂に関する。
【0033】
一般に、本明細書に記載の未硬化フェノール系材料中で使用されるフィラーは、樹脂混合物に不溶の任意の粒子状固体であってよい。
【0034】
理解されるように、フィラーが、残りの未硬化材料に対して不活性であることが好ましい。
【0035】
使用されるフィラーは有機又は無機材料であり得る。いくつかの実施形態について、フィラーが無機材料であることが好ましい。
【0036】
本明細書に記載の未硬化フェノール系材料中での使用に適切なフィラーは、粘土、粘土鉱物、タルク、バーミキュライト、金属酸化物、耐火物、中実若しくは中空ガラスマイクロスフェア(glass microspheres)、フライアッシュ、炭塵、木粉、穀粉、堅果殻粉、シリカ、粉末形態の粉砕されたプラスチック及び樹脂、粉末状再生廃プラスチック(powdered reclaimed waste plastics)、粉末状樹脂、顔料並びにデンプンのうちの1又は2以
上から選択され得る。
【0037】
上で論じた通り、驚くべきことに、遷移金属水酸化物化合物及び/又はアルミニウム水酸化物化合物を加えると、触媒の量を大きく減らすことが可能になり、おそらく完全に避けることが可能になるという驚くべき効果があることが明らかになった。
【0038】
好ましくは、遷移金属水酸化物又はアルミニウム水酸化物は、式M(OH)3(式中、Mは金属である)の化合物から選択される。
【0039】
適切な金属(M)は、スカンジウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト及びアルミニウムのうちの1又は2以上から選択され得る。
【0040】
好ましい実施形態において、金属水酸化物はアルミニウム水酸化物である。
【0041】
本明細書に記載の未硬化材料中、遷移金属水酸化物及び/又はアルミニウム水酸化物は、1:1.6~2.5:1の量の金属水酸化物対未硬化フェノール系樹脂の比で、例えば1:2~2:1の量の金属水酸化物対未硬化フェノール系樹脂の比で存在し得る。
【0042】
本明細書に記載の組成物中の遷移金属水酸化物及び/又はアルミニウム水酸化物に加えて、未硬化フェノール系材料は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA, ethylenediaminetetraacetic acid)をさらに含み得る。しかし、これは、本発明に全く必須ではない。
【0043】
本明細書に記載の未硬化材料の好ましい実施形態において、フィラーは、アルカリ金属のケイ酸塩及び/又は炭酸塩を実質的に含まない。これは、わずかなアルカリ性反応を超える反応をする固形物、例えばアルカリ金属のケイ酸塩及び炭酸塩が、酸硬化剤と反応する傾向があるため好ましくは回避されることに起因する。しかし、非常に穏やかなアルカリ性の反応をする固形物、例えばタルクは、場合によっては、より強いアルカリ性材料、例えばマグネサイトによる汚染のために、フィラーとしての使用に許容される。
【0044】
熱硬化性材料は、型からの熱硬化性材料の離型を助けるための1又は2以上の離型剤を含み得る。いかなる適切な離型剤も、本発明による熱硬化性材料と共に使用され得る。好ましい実施形態において、離型剤は、金属-脂肪酸塩、例えばステアリン酸塩を含む。好ましい実施形態において、離型剤は、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸マグネシウム、好ましくはステアリン酸亜鉛を含む。
【0045】
上で論じた通り、遷移金属水酸化物化合物及び/又はアルミニウム水酸化物化合物を使用すると、使用される触媒の量を減らすことが可能になり、又はさらには完全に避けることも可能になる。これの著しい利益は、変色に関連する当技術分野において既知の問題を避けることができるため、以前は適切でなかったであろう顔料の使用が可能になること、特に仕上げが非常に重要な商業的使用が可能になることである。
【0046】
適切な顔料は、金属酸化物、粉末状塗料、岩石粉末、ガラス及び砂のうちの1又は2以上から選択され得る。
【0047】
生み出される仕上げは、タイプ及び色に従って様々であり得、使用される顔料によって制御され得る。例えば、すりガラスを使用して、望ましいテクスチャを生成することができる。代わりに、又は加えて、魅力的な仕上げを与えるために材料が着色され得る。様々な色又はテクスチャの仕上げが必要に応じて使用され得る。様々な色の砂が、魅力的で実際的な「レンガ」効果(“brick” effect)を生み出すために使用され得、様々な色の砂が、魅力的なパターンを生み出すために使用され得る。
【0048】
表面仕上げ効果は、例えば、レンガ、石、大理石、スタッコ及びスレートを含み得ることが理解されるであろう。
【0049】
適切な色は、白色、黄色、ピンク色、赤色、オレンジ色、緑色、青色、灰色又は紫色を含み得ることも理解されるであろう。触媒が減ること、したがって関連する変色が減ることは、より明るい色、例えば、白色、黄色、ピンク色、赤色、オレンジ色、並びに明るい緑色、青色、灰色及び紫色が今は生み出され得ることを意味する。そのような明るい色を有する仕上げを生み出せる能力は、そのような材料の商業的応用を大きく改善する。
【0050】
本明細書に記載の未硬化材料は、粘度調整剤をさらに含み得る。
【0051】
適切な粘度調整剤は、ブタノール、クロロホルム、エタノール、水、アセトニトリル、ヘキサン及びイソプロピルアルコールのうちの1又は2以上から選択され得る。好ましい実施形態において、粘度調整剤は水である。
【0052】
使用される粘度調整剤の量は、未硬化材料の対象となる使用に依存することを理解されたい。未硬化材料がシートに形成される場合、その未硬化材料は、例えば、押出又は圧延プロセスによる、そのような形状の形成に適切な粘度である必要がある。同じく、材料、例えば織繊維マット又はテキスタイルに含浸させることが意図される場合、粘度は、未硬化材料がマット又はテキスタイルの繊維の周りを流れ、含浸材料を製造できるようなものでなければならない。粘度の調整は当業者の知識の範囲内であると考えられる。
【0053】
本明細書に記載の未硬化材料は、繊維をさらに含み得る。
【0054】
繊維は短い繊維であり得、又はより長い繊維であり得る。繊維が固定されていない場合もあり、例えば、繊維は一方向又は多方向に配列され得る。繊維は、ネットワーク、例えば何らかの適切な方法で互いに織られたり、又は編まれたりしたネットワークの一部であり得る。繊維の配列は、不規則的又は規則的であり得る。
【0055】
繊維は連続フィラメントワインディング(filament winding)を実現し得る。1層を超える繊維が提供され得る。繊維は層の形態であり得る。繊維が層の形態である場合、繊維は、ファブリック(fabric)、マット、フェルト若しくは織られた又は他の配列の形態であり得る。
【0056】
ある実施形態において、繊維は、鉱物繊維(細断されたガラス繊維及び細分された石綿など)、チョップド繊維(chopped fibres)、細断された天然又は合成繊維並びに繊維の形態の粉砕されたプラスチック及び樹脂のうちの1又は2以上から選択され得る。
【0057】
加えて、繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維及び/又はポリエチレン繊維、例えば超高分子量ポリエチレン(UHMWPE, ultra-high molecular weight polyethylene)のうちの1又は2以上から選択され得る。
【0058】
材料は、短い繊維を含み得る。繊維は5cm以下の長さのものであり得る。
【0059】
存在する場合、繊維は、6:1~1:3の樹脂対繊維の比で、例えば4:1~1:1の比で未硬化材料に加えられ得る。
【0060】
未硬化フェノール系材料は、材料全体にわたって成分の概して均一な分布を生成するように上述の成分を混合することにより製造され得る。高剪断混合など、概して均一な分布を生み出すいかなる既知の方法も使用され得る。
【0061】
成分の概して均一な分布を生み出すのに必要な時間の長さは、とりわけ、加えられる各成分の量、成分の粘度及び使用される混合方法に依存する。一般に、成分の実質的に均一な分布は、5分~2日以内、好ましくは10分~1日以内、より好ましくは15分~10時間以内で生成することができる。
【0062】
本発明の別の態様によれば、未硬化フェノール系樹脂シートを形成する方法であって、
i.本明細書に上述の未硬化材料を用意するステップと、
ii.未硬化材料をシートに成形するステップと
を含む方法が提供される。
【0063】
そのような方法は、圧力、例えばプレス機又はローラーによりもたらされる圧力の使用を含み得る。
【0064】
未硬化フェノール系樹脂シートを形成する代替方法において、この方法は、
i.本明細書に上述の未硬化材料を用意するステップと、
ii.本明細書に上述の繊維を層の形態で用意するステップと、
iii.未硬化材料の層を繊維に付与するステップと
を含む。
【0065】
材料をシートに成形する適切な方法には、一連の圧縮ローラーの使用が含まれ、繊維を未硬化フェノール系樹脂材料で濡らす。さらに、圧縮ローラーにより加えられる圧力によって確実に、閉じ込められた余分な空気が除去されるようにする。上部及び下部キャリアフィルム(例えば、ポリエチレンフィルム)が形成中にシートに付与され得、得られるシートを必要に応じて保管及び使用することが可能になる。上部及び下部キャリアフィルムは成型前に除去することができる。そのようなシートを形成する一般的なプロセスを
図1に示す。
【0066】
成型の他の適切な方法には、真空バッグ成型、加圧バッグ成型、オートクレーブ成型及び樹脂注入成型が含まれ得る。
【0067】
上述の方法は、未硬化フェノール系樹脂シートの製造を可能にする。上で論じた通り、本明細書に記載の材料の利点は、著しい量の触媒を(又はさらには触媒を全く)必要とせずに、Bステージ硬化等価物を生成できることである。そのような等価物を生成することにより、材料は所望の加工性を有し、特に変色の問題を避けることができるため、商業的使用のためのその望ましさが高くなる。
【0068】
特に、本発明のシートは、貯蔵寿命を改善するために冷蔵庫内に保管することができ、したがって、必要に応じて未硬化フェノール系樹脂シートを後のステージで硬化させることが可能になる。シートは容易に供給することができるため、普通なら必要であるはずの様々な樹脂、硬化剤及び補強材料の知識並びに/又は在庫を使用者が持つ必要がない。
【0069】
本発明のシートの別の利益は、得られる製品の機械的特性を改善するために、硬化前に2枚又は3枚以上のシートを並べること(積み重ねること、及び/又は層にすることを含む)が可能になることである。
【0070】
その上さらに、そのようなシートは、不規則な形状に切断することができるため、製造プロセスが単純になる。
【0071】
その上さらにいっそう、2片若しくは3片以上のシート、又は2枚若しくは3枚以上のシート自体を硬化プロセス中に互いに結合することができ、そのような製造方法の結果生じる廃棄物が最小限に抑えられる。
【0072】
形成されるシートは、1mm~50mm、例えば2mm~30mm、又はさらには3mm~20mmの厚さを有し得る。厚さ4mm~15mm及び5~10mmのシートも、6mm~8mmのシートと同様に想定される。
【0073】
加えて、本発明のフェノール系材料(シート状のものを含む)は、これまで従来使用されてきたSMCの代替となる。本発明のシートはSMCと比べて以下の利点を有することが明らかになった:
・より良い温度性能及び熱衝撃回復力(thermal shock resilience)
○本発明のフェノール系材料を使用して、ブレーキパッド、鋳型、航空宇宙用熱シールドなどを生成することができる。
・化学薬品、腐食性物質/溶媒、油及び水/塩水(酸性雨を含む)に対する優れた耐性
○本発明のフェノール系材料を使用して、実験台を製造することができる
・改善された防火性能、防煙性能及び毒性性能
○本発明のフェノール系材料は、大量輸送及び防護用途において使用することができる
・改善された抗菌特性
・より硬く、より強く、優れた寸法安定性
・電気抵抗
・良好な断熱
・優れた作業性
・低温加工
【0074】
本発明の別の態様によれば、複合材製品を生成する方法であって、
i.本明細書に上述の未硬化フェノール系樹脂材料又は本明細書に上述の未硬化フェノール系樹脂シートを用意するステップと、
ii.基材を用意するステップと、
iii.未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートの層を基材の表
面上に付与するステップと、
iv.未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートの少なくとも一部が基材に結合するように、未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートの層を基材にプレスするステップと
を含む方法が提供される。
【0075】
この方法は、未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートの少なくとも部分的なセットを引き起こす又は可能にするステップをさらに含み得る。
【0076】
この方法は、フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートを適切な温度まで加熱することにより、フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートの少なくとも部分的なセットを引き起こす又は可能にするステップもさらに含み得る。
【0077】
例として、フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートは、少なくとも50℃の温度まで加熱され得る。いくつかの実施形態において、フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートは、100~200℃の間の温度まで加熱され得る。
【0078】
別の例として、フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートは、少なくとも1分の時間加熱され得る。一般に、所望の技術的効果を得るために必要な時間は、樹脂の量、温度、並びに硬化される材料の厚さに依存することを理解されたい。
【0079】
基材は、いかなる適切な材料であってもよい。
【0080】
基材は、フェノール系樹脂材料による定着(keying)のための表面組織を含み得る。これにより、基材とフェノール系樹脂材料との間の結合を改善することができる。
【0081】
基材は、天然材料、例えば木材及びセルロース誘導生成物から生成され得る。
【0082】
基材は、周知のポリマー材料、例えばポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、フェノール系物質、シンタクチックポリマー及びハニカムからも生成され得る。
【0083】
使用される基材材料は発泡していても、発泡していなくてもよい。
【0084】
加圧中、基材の表面が成型されるように、発泡体基材材料はクラッシャブル(crushable)材料であり得る。
【0085】
好ましい発泡材料には、発泡フェノール系樹脂又は発泡ポリウレタン樹脂が含まれる。
【0086】
材料が発泡している場合、材料は連続気泡(open-celled)又はクローズセル(close-celled)であり得る。
【0087】
特に好ましい実施形態において、材料は連続気泡発泡体(open-cell foam)である。
【0088】
適切な連続気泡発泡体には、例えば、Acell Industries Limited社によりAcellのブラ
ンドで製造される発泡フェノール系樹脂が含まれる。
【0089】
そのような連続気泡の材料を使用する特定の利点は、プレスステップの間、未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートの少なくとも一部が基材の連続気泡に流れ込むことである。
【0090】
加熱すると、未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートの流れが基材の連続気泡に流れ込むことが改善され得ることを理解されたい。
【0091】
好ましくは、未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シート及び基材は、プレスステップの間、材料が基材に部分的にのみ流れ込むようなものであり、したがって、未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートと基材との間の良好な結合が得られる一方、形成される複合材の必要な機械的特性及び他の特性に適切な未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートの厚さが保持される。
【0092】
連続気泡の基材材料を使用する別の利点は、気体及び/又は蒸気をプレス領域から追い出せることである。好ましくは、プレス領域は、基材の表面及び未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートが一緒にプレスされるエリアであり、好ましくは基材と材料との界面の領域内のエリアである。
【0093】
さもなければその領域内に残留及び/又は蓄積する恐れのある気体又は蒸気を除去することにより、いくつかの例では、複合材製品の生成に必要な圧力を著しく下げることができることが明らかになった。
【0094】
その領域からの気体又は蒸気の除去はまた、より強い結合の形成を助け、特定の領域内の圧力の増加の結果生じ得る欠陥を防ぐ。これにより、最終製品において未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シート材料が基材から剥離するリスクを低減することができ、加熱/冷却サイクルに曝されたとき安定な製品を提供することができる。
【0095】
好ましくは、基材の表面の性質は、未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートが基材にプレスされるプレス方向をほぼ横切る方向に少なくとも1成分を有する方向に気体又は蒸気がプレス領域から逃げることができるようなものである。
【0096】
気体の追出しを支援するために(代替として、又は加えて)他の構造が提供され得る。例えば、溝又はチャネルが基材内に形成され得る。
【0097】
気体の追出しを可能にする基材の構成は、基材自体の組成物の性質から生じるという点で、及び/又はその後の作用により、例えば基材の機械加工により、若しくは基材に対する化学作用により与えられ得るという点で固有のものであり得る。好ましくは、基材の構成は、プレス領域内の圧力を解放できるようなものである。
【0098】
複合材製品を生成する方法は、プレスステップの間、未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートを基材に結合させる。そのような結合ステップは、接着剤の非存在下で、特に、基材内の連続気泡内への定着及び/又は流れが可能である場合に行われ得る。
【0099】
代わりに、又は加えて、接着剤又は他の結合剤が、基材と未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートとの間で使用され得る。
【0100】
好ましくは、未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートが、実質的にすべての基材に付与される。
【0101】
未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートを基材にプレスするステップの前に、基材自体が成形され得る。
【0102】
加えて、又は代わりに、プレスステップは、成形された型の使用を伴い得るため、成形がプレスステップの間に行われ得る。
【0103】
プレスステップの間、少なくとも400Paの圧力が加えられ得る。適切な圧力には、500~7,000Paの間の圧力が含まれる。
【0104】
また、未硬化フェノール系材料の性質及びその粘度を調整できる能力を考えると、複合材をin situで形成することも可能であることも理解されたい。そのような方法は、
i.基材を用意するステップと、
ii.繊維、例えば本明細書に上述の繊維の層を用意するステップと、
iii.本明細書に上述の未硬化フェノール系樹脂材料を提供するステップと、
iv.繊維を基材の表面に付与するステップと、
v.未硬化フェノール系樹脂材料の層を繊維上に付与するステップと、
vi.複合材を形成するように未硬化フェノール系樹脂材料及び繊維を基材にプレスするステップと
を含み得る。
【0105】
本発明のさらに別の態様は、フェノール系表皮(skin)を形成する方法であって、
i.本明細書に上述の未硬化フェノール系樹脂材料又は本明細書に上述の未硬化フェノール系樹脂シートの層を用意するステップと、
ii.未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートの層を硬化するステップと
を含む方法を対象とする。
【0106】
フェノール系表皮を形成する方法は、所望の外形を形成するような成形ステップをさらに含み得る。
【0107】
成形ステップは、型を使用することにより行われ得、例えばプレス機により実現される加圧を伴い得る。追加の成型方法には上述のものが含まれ得る。
【0108】
代わりに、そのようなフェノール系表皮は、硬化後に切断、切削、面取りすることができ、又はその他の場合は外形を作ることができることを理解されたい。
【0109】
本発明のさらに別の態様において、本明細書に記載されているような未硬化フェノール系樹脂材料又は未硬化フェノール系樹脂シートから生成された製品が提供される。
【0110】
そのような製品は、本明細書に記載のプロセスのいずれかを使用して、又は当業者に公知の他の方法により生成され得る。
【0111】
製品には、ドア、窓、壁パネル、カウンター、床、天井パネル、フェンス、屋根パネル、タイル、羽目板及び他の構造製品が含まれ得る。製品には、家庭用品、例えば家具も含まれ得る。生成され得る他の製品には車のダッシュボードが含まれる。
【0112】
生成される製品は、いかなる所望の色、例えば白色、黄色、ピンク色、赤色、オレンジ色、緑色、青色又は紫色のものでもよく、そのような色のより明るい色調が含まれる。
【0113】
加えて、表面効果が製品に加えられ得る。例として、そのような表面効果を加えるのに適切なプロセスは、いずれもAcell Holdings Limited社の名義の国際公開第2010/046699号パンフレット及び国際公開第2010/046698号パンフレットに記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0114】
ここで本発明を添付図と共に以下の実施例により説明する。
【
図1】本発明による未硬化フェノール系樹脂シートを形成するための一般的なプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0115】
[実施例]
本実施例では、本発明に従って製造することができるフェノール系樹脂のカラーバリエーション及び強度の両方について、先行技術のSMC化合物と比較して説明する。
【実施例0116】
表1に示す組成に従い、成分が均一に合わせられたように見えるような時間までメカニカルミキサーを使用することによりフェノール系樹脂ペーストを生成した。
【0117】
【0118】
加えて、SMC中のガラス繊維の量を模倣するように、2:1の樹脂対繊維の比でガラス
繊維チョップを加えた。
【0119】
生成したら、未硬化の樹脂材料を3mm厚のシートに巻き、一晩静置した。
【0120】
複合材を製造するために、未硬化の樹脂シートを切断して30cm×30cmの正方形にし、これを寸法30cm×30cm×3cmの連続気泡のフェノール系基材(Acell Holdings Limited社により販売されたAcell発泡体)の上に置いた。
【0121】
組み立てた材料をプレス機内に置き、加熱し、プレスして、フェノール系シートを硬化した。
【0122】
得られた複合材パネルは色が灰色であった。