(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145735
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】煙感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/107 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
G08B17/107 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127719
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2022162185の分割
【原出願日】2018-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】小金丸 和幸
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型化が実現できる煙感知器を提供する。
【解決手段】煙感知器100は、被取付面に取り付けられ、煙を検出する検煙空間33が内部に形成された筐体と、検煙空間33に光を照射する発光部6Aと、発光部6Aから照射されて検煙空間33にて散乱した光を受光する受光部6Bと、筐体の内部に設けられ、発光部6A及び受光部6Bが実装される基板6と、を備える。筐体は、検煙空間33を形成する壁部が形成される本体3を備え、基板6には、凹状の切欠部が形成され、壁部は、周囲の一部に基板6が設けられ、切欠部内に壁部が設けられる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付面に取り付けられ、煙を検出する検煙空間が内部に形成された筐体と、
前記検煙空間に光を照射する発光部と、
前記発光部から照射されて前記検煙空間にて散乱した光を受光する受光部と、
前記筐体の内部に設けられ、前記発光部及び前記受光部が実装される基板と、を備えた煙感知器において、
前記筐体は、前記検煙空間を形成する壁部が形成される本体を備え、
前記基板には、凹状の切欠部が形成され、
前記壁部は、周囲の一部に基板が設けられ、前記切欠部内に前記壁部が設けられる
ことを特徴とする煙感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災等で発生する煙を感知する煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災等で発生する煙を感知する煙感知器として、検煙空間内に煙が侵入すると、発光部から照射された光が煙によって散乱して、受光部に光が届き、これにより煙を感知する光電式の煙感知器が知られている。特許文献1には、天井等の被取付面に取り付けられ、発光部及び受光部が基板に表面実装されたチップ部品である煙感知器が開示されている。特許文献1は、基板が被取付面に垂直の方向に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5562097号公報(例えば
図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された煙感知器は、基板が被取付面に垂直の方向に取り付けられているため、煙感知器全体の高さが高くなる。このため、煙感知器の小型化が望まれている。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するもので、小型化が実現できる煙感知器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る煙感知器は、被取付面に取り付けられ、煙を検出する検煙空間が内部に形成された筐体と、検煙空間に光を照射する発光部と、発光部から照射されて検煙空間にて散乱した光を受光する受光部と、筐体の内部に設けられ、発光部及び受光部が実装される基板と、を備えた煙感知器において、筐体は、検煙空間を形成する壁部が形成される本体を備え、基板には、凹状の切欠部が形成され、壁部は、周囲の一部に基板が設けられ、切欠部内に壁部が設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板が、被取付面に水平に設けられている。このため、煙感知器の高さを低く抑えることができる。従って、煙感知器を小型化することができる。
またチップ部品の光軸が、基板と垂直の方向にあると検煙空間が高さ方向に大きくなるが、本発明では、チップ部品の光軸が、基板と平行の方向であるため、検煙空間の高さを大きくする必要がなく、煙感知器を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る煙感知器100を示す組立斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る煙感知器100を示す上面図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る煙感知器100を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る煙感知器100を示す分解斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る煙感知器100を示す斜視断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態1に係る煙感知器100を示す上面断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態1に係る煙感知器100を示す側面断面図であり、発光部6Aを示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態1に係る煙感知器100を示す側面断面図であり、受光部6Bを示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態1に係る煙感知器100を示す上面断面図であり、
図6の拡大図である。
【
図10】本発明の実施の形態1に係る煙感知器100の基板6を示す上面図である。
【
図11】本発明の実施の形態1に係る煙感知器100における基板6、検煙空間33、光学台4Aの位置関係を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本発明に係る煙感知器の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る煙感知器を示す組立斜視図であり、
図2は、本発明の実施の形態1に係る煙感知器を示す上面図であり、
図3は、本発明の実施の形態1に係る煙感知器を示す側面図である。
図4は、本発明の実施の形態1に係る煙感知器を示す分解斜視図であり、
図5は、本発明の実施の形態1に係る煙感知器を示す斜視断面図であり、
図6は、本発明の実施の形態1に係る煙感知器を示す上面断面図である。
図6は、
図3のA-A断面図である。
【0010】
図1~
図6に示すように、煙感知器100は、例えば家屋の室内等の監視空間、例えば天井等の被取付面に設置される。また、煙感知器100は、有底筒状の第1のカバー11及び第1のカバー11の裏側に設けられるベース部12とを含む筐体10を備えている。煙感知器100は、筐体10に収容され、筐体10内の空間を上下に区画する本体3と、本体3に設けられている蓋部4と、蓋部4に設けられている光学台カバー5と、光学台カバー5内に収容され、遮光機能を有するラビリンス壁とを備えている。また、筐体10の内部には、煙を検出する検煙空間33が形成され、これについては後で詳細に説明する。
【0011】
更に、煙感知器100は、本体3と蓋部4との間に設けられている基板6と、基板6に設けられている各種回路の動作電力を供給する電池と、音声等を出力するスピーカ8とを備えている。基板6には、煙を検出する検煙空間33に光を照射する発光部6Aと、発光部6Aから照射されて検煙空間33にて散乱した光を受光する受光部6Bとが表面実装されている。
【0012】
筐体10の第1のカバー11には、周方向に延びる開口部1が形成されている。開口部1は上下方向に2列形成されている。開口部1は筐体10内の煙通路に連通している。また、第1のカバー11は、押しボタン用の開口11A1が形成されている平板状の下面部11Aと、円筒状の側面部11Bと、下面部11Aと側面部11Bとを接続する環状の角部11Cとを備えている。また、下面部11Aは本体3に対向している。
【0013】
筐体10のベース部12は、第1のカバー11の上部に設けられている。このベース部12を被取付面である天井面や壁面にねじ等を用いて固定しておくことで、煙感知器100を被取付面に固定することができる。本体3は、内側に煙通路の煙が流入する検煙空間33が形成されている壁部3Aと、壁部3Aの上端が接続されている上面部3Bとを備えている。また、本体3は、電池を挿入できるようにベース部12側が開口し、電池を収納する凹状の電池収容部3Cと、スピーカ8が収容されている、環状の壁で形成された凹状のスピーカ収容部3Dとを備えている。
また
図4において、スピーカ収容部3Dの左方向には、プリント基板設置部3Pが設けられる。このプリント基板設置部3Pは、後述する区画壁3E2と同様に所定の高さを有する壁であり、基板6の形状に合わせてほぼコ字状に形成されており、その空間内に基板6の実装面側が収納されている。基板6は、プリント基板設置部3Pと区画壁3E2上に設置される。プリント基板設置部3Pの壁の高さは、後述するシールドケース6Fを収容できる高さとなっている。
【0014】
壁部3Aは、周囲の一部に基板6が設けられている。壁部3Aは、壁部a、壁部b、壁部c及び壁部dを備えている。壁部aは、壁部cの一端部及び壁部dの一端部に接続されている。壁部bは、壁部cの他端部及び壁部dの他端部に接続されている。壁部cには発光部6Aから照射されて光が通過する第1の孔部31が形成され、壁部dには受光部6Bが受光する光が通過する第2の孔部32が形成されている。また、壁部3Aには、発光部6Aの直進光が受光部6Bに入射することを防止する遮光柱としての1対の突出部34が設けられている。
【0015】
本体3は、電池が配置されている側と基板6が設けられている側とを区画する区画壁3E1を備えている。言い換えると、本体3の上面部3B側に基板6が設けられ、その裏側に電池が設けられる。また、本体3は、壁部3Aに接続されている区画壁3E2を備えている。区画壁3E2の下端の直下には基板6(発光部がある基板の一部)が設けられている。区画壁3E2は発光部6Aの光を遮る機能を有している。ここで、区画壁3E2と基板6とは別体である。従って、区画壁3E2の下端と基板6の上面である実装面6aとの間には隙間が形成される。発光部6Aの光が当該隙間から漏れないように、煙感知器100は遮光機能を有する遮光部30を備えている。
【0016】
遮光部30は、上下方向に延びる板状部材である。つまり、遮光部30はスリット6Eの下側にまで伸びている。即ち、基板6を本体3の区画壁3E2などの上に取り付けた際には、遮光部30の下端が基板6の下面(裏面6b)からわずかに突出できる程度の高さを遮光部30は有する。このため、区画壁3E2の下端と基板6の上面である実装面6aとの間の隙間から発光部6Aを見ようとしても、遮光部30によって発光部6Aが隠れる。このように、遮光部30を設けることで、壁部3A外において、発光部6Aから受光部6Bへの光を遮ることができる。また、発光部6Aの光が区画壁3E2の下端と基板6の上面である実装面6aとの間の隙間から漏れ、受光部6B側へ光が漏れることを抑制している。
【0017】
遮光部30には例えば平板状部材を採用することができる。遮光部30は検煙空間33側から基板6側へ突出するように形成されている。遮光部30は発光部6Aに併設されている。つまり、遮光部30から発光部6Aまでの距離の方が遮光部30から受光部6Bまでの距離よりも短い。また、遮光部30は壁部3Aに接続されており、発光部6Aの光が遮光部30と壁部3Aとの境目から漏れないようになっている。なお、遮光部30は壁部bと壁部cとの接続部分に接続されている。遮光部30は発光部6Aの例えば光軸に平行に延びている。
【0018】
蓋部4は、光学台カバー5が設けられている光学台4Aと、光学台4Aに形成されている貫通孔4Bとを備えている。光学台4Aの下側には、光学台カバー5及びラビリンス壁が設けられている。また、光学台4Aの上側には、検煙空間33、基板6及び壁部3Aが設けられている(
図11参照)。貫通孔4Bは、光学台カバー5内の空間と検煙空間33とを連通している。また、蓋部4は、壁部3A等を収容する壁部収容部4Cを備えている。壁部収容部4Cは、その内側が壁部3A等よりも一回り大きく形成され、壁部3A等の周囲に設けられている。光学台カバー5は、平板状部材である。光学台カバー5の上部は、円筒状の防虫網が設けられる。防虫網には、煙が通過する孔が複数形成されている。光学台カバー5と防虫網の内部には、ラビリンス壁が収容されている。
【0019】
基板6は、天井面などの被取付面に水平方向に平行に設けられている。ベース部12は、被取付面に水平に取り付けられ、本体3は、ベース部12と水平になるように取り付けられる。そして、基板6は、本体3と水平になるように取り付けられている。従って、基板6は、被取付面に水平方向に平行に設けられている。また、基板6は、発光部6A及び受光部6Bが配置される光学系配置部6Cを備えている。光学系配置部6Cは、壁部3Aの周面形状に合わせて形成された凹状の切欠部である。光学系配置部6Cは壁部3Aの周囲に設けられている。具体的には、光学系配置部6Cは、壁部bの外周面、壁部cの外周面及び壁部dの外周面に設けられている。光学系配置部6Cは、発光部6Aが配置される発光部配置部6D1と、受光部6Bが配置される受光部配置部6D2とを含む(
図9参照)。また、基板6には、遮光部30が挿入されるスリット6Eが形成されている(
図10参照)。スリット6Eは、遮光部30の水平断面形状に合わせた形状を有している。なお、基板6には、受光部6Bで検出した信号を増幅する増幅回路と、発光部6A及び受光部6Bの動作を制御する例えばマイコンである制御装置(図示せず)とが受光部6B側に設けられている。
【0020】
発光部6Aは例えばLED等から構成することができる。また、受光部6Bは例えばフォトダイオード等から構成することができる。発光部6A及び受光部6Bは、基板6の実装面6a上に載置されている。つまり、発光部6A及び受光部6Bは、リード線を有さないチップ部品となっている。より詳細には、発光部6AはチップタイプのLEDを含み、受光部6Bはチップタイプのフォトダイオードを含む。これにより、基板6を薄型化することができるようになっている。なお、発光部6A及び受光部6Bのうち少なくとも一方がチップ部品であればよい。より細かく説明すると、チップ部品である発光部6A、受光部6Bは、リード線を有せず、直接基板6に設置されるので、基板6からの突出高さが低い。チップ部品自体の高さは基板6の厚みとほぼ同じであるので、煙感知器の一対の発光素子と受光素子からなる光学系の大きさを小型化できる。
発光部6A及び受光部6Bは、基板上に表面実装されたチップ部品であり、これらチップ部品の光軸は、基板6の実装面6aと平行の方向である。またこの発光部6Aの第1の孔部31を介した前方に検煙空間33が存在している。言い換えれば検煙空間33と光学系は、
図11に示すとおり、ほぼ同一平面上に設けられ、高さ方向の位置が同じ関係にある。なお、壁部3Aの高さが検煙空間33の高さとなるが、プリント基板設置部3Pに基板6を設置すると、本体3の上面部3Bから基板6の裏面6bまでの高さは、検煙空間33の高さよりやや低く形成されている。
【0021】
煙感知器100は、受光部6Bでノイズを検出してしまうことを防止する機能を有するシールドケース6Fを備えている。シールドケース6Fは、基板6上に固定されている。シールドケース6Fは受光部6B、増幅回路及び制御装置を覆って保護している。シールドケース6Fは、直方体状の箱形状をなしており、板金を曲げ加工することによって作製することができるため、組立性が容易である。
【0022】
図8を参照すると、シールドケース6Fは、基板6の一部を覆うように設けられている。シールドケース6Fは、例えば一面が開放されている箱形状である。シールドケース6Fは、受光部6Bの上部に設けられている天面部6F1と、円形の貫通孔6F3が形成されている正面部6F2とを備えている。天面部6F1は、基板6の実装面6aに対向している。正面部6F2は、受光部6Bと壁部dとの間に設けられている。第2の孔部32の中心と貫通孔6F3の中心とは一致している。正面部6F2の上端は天面部6F1に接続されている。また、正面部6F2の下端6F4は、基板6のうち受光部6Bが設けられている面よりも下側に延びている。即ち、正面部6F2の下端6F4は、実装面6aよりも下側に延びている。正面部6F2の下端6F4は、基板6の実装面6aの例えば裏面6bまで延びている。
【0023】
図7は、本発明の実施の形態1に係る煙感知器100を示す側面断面図であり、発光部6Aを示す図である。
図7は、
図6のB-B断面図である。
図7に示すように、発光部6Aは、基板6の外縁部に設けられたチップ部品である。そして、
図6及び
図7に示すように、基板6における発光部6Aの下方には、発光切欠き40が形成されている。基板6の外縁部に設けられた発光部6Aの直下に、切欠きのない基板6が存在する場合、発光部6Aから下方に照射された光が基板6において乱反射して光の進行方向が定まらない。これに対し、本実施の形態1は、発光部6Aの下方に発光切欠き40が形成されているため、発光部6Aから下方に照射された光が基板6で乱反射されず、発光切欠き40を通ってそのまま下方に進行する。従って、光の不要な乱反射を抑制することができる。なお、チップ部品からなる発光部6Aは、基板上に設置される本体部と、本体部の前方に設けられ、光を発する発光体とから構成されるが、発光切欠き40の幅は、この発光体の幅と同じか、またはそれよりもわずかに大きく形成される。発光部6Aは、基板6の外縁部に設置されるとしたが、より詳しく説明すると、
図9、
図10に示すとおり、発光体だけが、発光切欠き40上に位置するように設置される。
【0024】
図8は、本発明の実施の形態1に係る煙感知器100を示す側面断面図であり、受光部6Bを示す図である。
図8は、
図6のC-C断面図である。
図8に示すように、受光部6Bは、基板6の外縁部に設けられたチップ部品である。そして、
図6及び
図8に示すように、基板6における受光部6Bの前方且つ下方には、受光切欠き41が形成されている。ここで、シールドケース6Fは、受光部6B、制御装置及び増幅回路を覆っており、受光部6B側の先端が受光切欠き41に挿入されている。このように、シールドケース6Fの受光部6B側の先端が延びることによって、貫通孔6F3を形成するための面積を確保することができる。
【0025】
図9は、本発明の実施の形態1に係る煙感知器100を示す上面断面図であり、
図6の拡大図である。
図10は、本発明の実施の形態1に係る煙感知器100の基板6を示す上面図である。以上説明したように、基板6には、
図9及び
図10に示すとおり、発光切欠き40及び受光切欠き41が形成されている。なお
図10において、便宜上、発光部6Aおよび受光部6Bが配置される位置を点線で示してある。ここで、
図10を用いて基板6について説明する。基板6はほぼ矩形状に形成され、その長片の一端側には光学系配置部6Cとなる大きな切欠が形成されている。この切欠は、外側が長いほぼ台形状に形成され、壁部3Aの形状に対応した形となっている。より詳しく言えば、基板6の切欠の部分に、壁部3A内の遮光柱となる突出部34側が係合する形状となっている。基板6の切欠には、更に基板6の内側方向に向かって発光切欠き40、受光切欠き41、スリット6Eが設けられている。
【0026】
次に、煙感知器100の動作について説明する。火災等が発生すると、煙が筐体10の開口部1を介して煙通路に流入する。煙通路に流入した煙は、光学台カバー5にある防虫網の孔を介して光学台4A内の空間に流入する。光学台4A内の空間に流入した煙は、ラビリンス壁を通り抜けた後に、蓋部4の貫通孔4Bに流入する。貫通孔4Bに流入した煙は、検煙空間33に流入する。なお、煙には微細な粒子が混ざっている。この粒子は煙よりも重たいため、上昇しにくい。このため、この粒子は光学台4Aに留まり、煙だけが検煙空間33に流入する。これにより、煙感知器100は火災の検出精度が向上する。
【0027】
発光部6Aは第1の孔部31を介して検煙空間33内へ光を照射している。ここで、発光部6Aから照射された光の大部分は検煙空間33内へ入射する。しかし、発光部6Aから照射された光の一部は、発光部6Aの光軸から離れる方向に進み、検煙空間33内へ入射しない。検煙空間33内へ入射しなかった光は遮光部30によって遮られ、検煙空間33内へ入射しない光が区画壁3E2と基板6との間の隙間から漏れることが抑制されている。検煙空間33に煙が流入すると、発光部6Aから照射された光が煙によって散乱する。受光部6Bがこの散乱した光を検出することで、煙感知器100は火災を感知する。
【0028】
本実施の形態1によれば、基板6が、被取付面に対して水平に設けられている。このため、煙感知器100の高さを低く抑えることができる。加えて基板6に設けられる光学系(発光部6A、受光部6B)として、煙感知器100の高さ方向に延びるリード線を備えないチップ部品を使用しているので、基板6に設けられる光学系は、基板6の表面から、ほとんど突出していない。従って、煙感知器100を薄型化することができる。また、発光部6Aは、基板6の外縁部に設けられたチップ部品であり、基板6における発光部6Aの下方には、発光切欠き40が形成されている。発光部6Aの直下に切欠きがない基板6が存在する場合、発光部6Aから下方に照射された光が基板6において乱反射して光の進行方向が定まらない。これに対し、本実施の形態1は、発光部6Aの下方に発光切欠き40が形成されているため、発光部6Aから下方に照射された光が基板6で乱反射されず、そのまま下方に進行する。従って、光が遮られることが無くなると共に、光の不要な乱反射を抑制することができる。これにより、表面実装された発光部6Aを有する光学系において、煙検出するにあたり、受光部6Bのノイズ成分を抑えつつ、信号成分を充分に確保することができる。よって、煙検出に必要なS/N比を得ることができる。従来の発光素子は、リード線を有するDIP部品なので、発光素子と基板との距離が離れているので乱反射を考慮する必要がなかったが、基板上に直接発光部6Aを載せるにあたって、発光切欠き40を設けることで、この乱反射の課題を解決できる。
【0029】
煙を精度良く検出するためには、発光部6Aの高さ位置と受光部6Bの高さ位置とを合わせるとよい。必ずしも水平方向にそれぞれ延びている発光部6Aの光軸と、受光部6Bの光軸の高さを完全に同じ高さとする必要はないが、両者の光軸の高さをほぼ同じ高さにすることが望ましい。従って、発光部6Aがチップ部品である場合には、発光部6Aの位置が低くなる分、受光部6Bの位置も低くする必要がある。受光部6Bの位置を低くする場合には、受光部6Bの高さ位置に合わせて、第2の孔部32の高さ位置、及び、貫通孔6F3の高さ位置も低くする必要がある。ここで、シールドケース6Fの正面部6F2の下端6F4が基板6の実装面6aよりも上側であると、正面部6F2に貫通孔6F3を形成するときに正面部6F2が変形してしまう可能性がある。また、シールドケース6Fの正面部6F2の下端6F4が実装面6aよりも上側であると、正面部6F2に貫通孔6F3を形成できなくなる可能性がある。正面部6F2が変形したり貫通孔6F3の形状が変形したりすると、受光部6Bの受光特性が変化し、煙感知器100が煙を精度良く検出することができなくなる。
【0030】
本実施の形態1に係る煙感知器100のシールドケース6Fの正面部6F2の下端6F4は、基板6のうち受光部6Bが設けられている面よりも、下側に延びている。このため、正面部6F2に貫通孔6F3を形成するときに正面部6F2が変形してしまうことを抑制することができる。また、貫通孔6F3の形状をより確実に予め定められた形状、例えば円形にすることができる。なお受光部6Bの水平方向に延びる光軸と、シールドケース6Fに設けられる貫通孔6F3の高さは、同じ高さ位置にある。このように受光部6Bの前方に貫通孔6F3を備えたシールドケース6Fを設けることができるので、受光部6Bをノイズから防護でき、したがって、煙感知器100は、煙の検出精度が低下することを抑制することができる。なお、発光部6A又は受光部6Bのいずれかががチップ部品ではなくても、煙感知器100は煙の検出精度が低下することを抑制する効果を得ることができるが、発光部6A及び受光部6Bがチップ部品であれば効果は更に高まる。
【0031】
シールドケース6Fの正面部6F2の下端6F4は、基板6のうち受光部6Bが設けられている面よりも、下側に延びている、すなわち実装面6aよりも、下側に延びており、その下端6F4が、基板6の裏面6bのあたりまで延びる長さを有する。このため、遮光部30によって遮ることができなかったノイズ光が区画壁3E2と基板6との間の隙間を介して受光部6B側へ進入してきたとしても、受光部6Bでノイズ光が検出されてしまうことを更に抑制することができる。
従来の受光素子は、リード線を有するDIP部品なので、受光素子と基板との距離が離れているので、前方に設置されるシールドケースに自由に受光素子用の貫通孔を形成できたが、基板上に直接受光部6Bを載せるにあたって、受光切欠き41を設けることで、前面側にあるシールドケースの長さ(高さ)を確保でき、受光素子用の貫通孔を問題なく形成することができる。
ところで、受光部6Bの受光量は、距離の2乗に反比例するため、シールドケース6Fと基板6との間に囲まれた空間の中では基板6の端面に近い位置が最も受光量が多く、煙による散乱光の受光量を高めるという点では、受光部6Bを基板6の外縁に設置することが望ましい。一方、受光部6Bの前方には、シールドケース6Fを設ける必要がある。そこで、本実施形態では、基板6において、受光部6Bが設置される部分の前方に受光切欠き41を設け、その受光切欠き41に天面部6F1から折り曲げられたシールドケースの正面部6F2を通すようにした。なお、正面部6F2の幅は、受光切欠き41の幅よりわずかに小さいものとなっており、受光切欠き41に正面部6F2を挿入できる。このようにすることで、受光部6Bを基板6の外縁に設置でき、余分なスペースをとることなく、シールドケース6Fを受光部6Bの前方に設けることが可能となる。受光切欠き41の幅は、適当に変更可能であるが、発光切欠き40の幅よりも広い形状を有する。
【0032】
上述したように、受光部6Bの受光量は、距離の2乗に反比例するため、シールドケース6Fと基板6との間に囲まれた空間の中では基板6の端面に近い位置が最も受光量が多い。本実施の形態1では、受光部6Bが基板6の端面より内側に配置されているため、組立時にシールドケース6Fが受光部6Bに衝突することを抑制し、受光部6Bのレンズ部を傷つけることを抑制することができる。更に、基板6におけるシールドケース6Fの直下は切り欠かれていないため、基板6のシールド効果を最大限に発揮し、発光部6Aからの迷光が入射することもなく、ノイズ成分を抑えることができる。
【0033】
受光部6Bの周辺には増幅回路等が設けられている。このため、受光部6Bの周辺の配線数は、発光部6Aの周辺の配線数よりも多い。遮光部30を受光部6Bに併設すると、受光部6Bの周辺にスリット6Eを形成する必要がある。したがって、遮光部30を受光部6Bに併設すると、スリット6Eを迂回する分、受光部6Bの周辺の配線長が長くなったり、配線パターンが複雑化したりする。実施の形態に係る煙感知器100の基板6の遮光部30は発光部6Aに併設されている。このため、煙感知器100は、受光部6Bの周辺の配線長が長くなったり、配線パターンが複雑化したりすることを抑制することができる。
なお、本実施形態においては、電池やスピーカを備えた一般に火災警報器と呼ばれるタイプの煙感知器を例に説明したが、信号線を介して電源が供給されるタイプの煙感知器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 開口部、3 本体、3A 壁部、3B 上面部、3C 電池収容部、3D スピーカ収容部、3E1 区画壁、3E2 区画壁、4 蓋部、4A 光学台、4B 貫通孔、4C 壁部収容部、5 光学台カバー、6 基板、6A 発光部、6B 受光部、6C 光学系配置部、6D1 発光部配置部、6D2 受光部配置部、6E スリット、6F シールドケース、6F1 天面部、6F2 正面部、6F3 貫通孔、6F4 下端、6a 実装面、6b 裏面、8 スピーカ、10 筐体、11 第1のカバー、11A 下面部、11A1 押しボタン用の開口、11B 側面部、11C 角部、12 ベース部、30 遮光部、31 第1の孔部、32 第2の孔部、33 検煙空間、34 突出部、40 発光切欠き、41 受光切欠き、100 煙感知器、a 壁部、b 壁部、c 壁部、d 壁部。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付面に取り付けられ、煙を検出する検煙空間が内部に形成された筐体と、
前記検煙空間に光を照射する発光部と、
前記発光部から照射されて前記検煙空間にて散乱した光を受光する受光部と、
前記筐体の内部に設けられ、前記発光部及び前記受光部が実装される基板と、を備えた煙感知器において、
前記筐体は、前記検煙空間を形成する壁部が形成される本体を備え、
前記基板には、凹状の切欠部が形成され、
前記壁部は、周囲の一部に基板が設けられ、前記切欠部内に前記壁部が設けられる
ことを特徴とする煙感知器。
【請求項2】
前記検煙空間を形成する壁部は、前記基板上には設けられず、前記基板と同じ高さ位置に設けられ、前記壁部は、基板上に実装された発光部と受光部とに挟まれるように設けられる
ことを特徴とする請求項1記載の煙感知器。
【請求項3】
前記壁部は、
前記発光部から照射されて光が通過する第1の孔部が形成された壁部と、
前記受光部が受光する光が通過する第2の孔部が形成された壁部とを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の煙感知器。
【請求項4】
前記基板に形成された凹状の切欠部は、外側が長いほぼ台形状に形成され前記壁部の形状に対応した形である
ことを特徴とする請求項2記載の煙感知器。
【請求項5】
前記発光部は、前記基板の外縁部に設けられたチップ部品であり、
前記基板における前記発光部の発光体の下方には、発光切欠きが形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の煙感知器。