(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145743
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】発煙装置
(51)【国際特許分類】
G08B 17/10 20060101AFI20231003BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G08B17/10 L
G08B17/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128405
(22)【出願日】2023-08-07
(62)【分割の表示】P 2019026114の分割
【原出願日】2019-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】江幡 弘道
(72)【発明者】
【氏名】湯地 定隆
(72)【発明者】
【氏名】野田 裕介
(57)【要約】
【課題】芯材に含浸する発煙材の吸い込み量を一定にして発煙量を安定化させる。
【解決手段】煙感知器の試験に用いられる煙を発生させる発煙装置10は、円筒穴36aを囲む円環状の収納部に発煙剤16が収納された円筒容器36と、円筒容器36の収納部と円筒穴36aとを連通する連通孔44と、円筒容器36の円筒穴36aに収納され、連通孔44を介して収納部から供給された発煙剤16を含浸させる多孔質円筒体38と、多孔質円筒体38の内周面に配置され、多孔質円筒体38を介して発煙剤16が含浸する円筒状の不燃性の芯材40と、不燃性の芯材40の内周面に配置され、当該不燃性の芯材40に含浸した発煙剤16を加熱して煙を発生させるヒータ42と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙感知器の試験に用いられる煙を発生させる発煙装置であって、
円筒穴を囲む円環状の収納部に発煙剤が収納された円筒容器と、
前記円筒容器の前記収納部と前記円筒穴とを連通する連通孔と、
前記円筒容器の前記円筒穴に収納され、前記連通孔を介して前記収納部から供給された前記発煙剤を含浸させる多孔質円筒体と、
前記多孔質円筒体の内周面に配置され、前記多孔質円筒体を介して前記発煙剤が含浸する円筒状の不燃性の芯材と、
前記不燃性の芯材の内周面に配置され、当該不燃性の芯材に含浸した前記発煙剤を加熱して煙を発生させるヒータと、
を備えたことを特徴とする発煙装置。
【請求項2】
煙感知器の試験に用いられる煙を発生させる発煙装置であって、
円筒穴を囲む円環状の収納部に発煙剤が収納された円筒容器と、
前記円筒容器の前記収納部と前記円筒穴とを連通する連通孔と、
前記円筒容器の前記円筒穴に収納され、前記連通孔を介して前記収納部から供給された前記発煙剤を含浸させる多孔質円筒体と、
前記多孔質円筒体の内周面に配置され、前記多孔質円筒体を介して前記発煙剤が含浸する発煙円筒体と、
前記発煙円筒体に埋め込み配置され、当該発煙円筒体に含浸した前記発煙剤を加熱して煙を発生させるヒータと、
を備えたことを特徴とする発煙装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の発煙装置に於いて、前記発煙装置は、天井面に設置された煙感知器に煙を供給することで試験を行う煙感知器試験装置、又は、筐体内の試験対象となる煙感知器が設けられた試験空間に煙を供給して前記煙感知器の感度を試験する感度試験装置に設けられたことを特徴とする発煙装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙感知器の試験に用いる煙を発生させる発煙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィス等の建物内には火災報知設備が設置されており、火災が発生した場合に、火災により発生した煙を煙感知器で検知して発報信号を受信機に送って火災警報を出力させ、消火、避難、消防活動を行うことができるようにしている。
【0003】
火災報知設備は、建物への設置後、定期的に点検が行われており、煙感知器については、天井面に設置された煙感知器を取外し、点検の際に持ち込んだ感度試験装置を使用して所定の煙濃度で火災発報することを確認する感度試験を行い、感度試験の済んだ煙感知器を天井面に取り付けた後に、可搬式の加煙試験器を使用して火災発報することを確認する動作試験を行っている。また、火災報知設備の施工時にも、可搬式の加煙試験器を使用して火災発報することを確認する動作試験を行っている。
【0004】
このような従来の感度試験装置や加煙試験器は、スプレーにより煙状微粒子を含む試験用ガス(擬似煙)を発生させるもの(特許文献1)や、試験油を浸透させた浸透材を電気ヒータにより加熱して油煙を発生させて、この油煙を送風装置により強制的に上昇させるもの(特許文献2)が提案されている。
【0005】
しかしながら、スプレーによる加煙試験器にあっては、フロンガスを使用しているため環境負荷が大きく、また、今後は代替フロンの入手困難や価格高騰などの問題がある。代替ガスとしてLPGを使用することもできるが、LPGは可燃性であり、低温で使用できないなどの問題がある。
【0006】
この問題を解決するため、本願発明者等は、容器に人体に無害な水溶性の発煙剤を収納し、不燃性の芯材に含浸された発煙剤をヒータにより加熱して擬似煙(以下、「煙」という)を発生させる発煙装置を提案しており、容器に試験に必要な十分な量の発煙剤を入れておくことができ、使用により発煙剤が減少した場合には簡単に補充することができ、作業効率を向上可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-228019号公報
【特許文献2】特開2016-197442号公報
【特許文献3】特開2018-005901号公報
【特許文献4】特開平04-000599号公報
【特許文献5】特開2012-198753号公報
【特許文献6】特開2013-167994号公報
【特許文献7】特開2012-091098号公報
【特許文献8】特開2018-005901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、容器に収納された発煙剤を不燃性の芯材に含浸させ、ヒータにより発煙剤を加熱して煙を発生させる発煙装置にあっては、煙の発生により容器に収納している発煙剤が消費されていくと液面が下がり、つまり発煙剤との収容部とヒータとの距離が離間し、毛細管現象により芯材により吸い上げられる発煙剤の吸い込み量が低下し、芯材に巻いたヒータの加熱による発煙量が徐々に低下する問題がある。
【0009】
本発明は、容器に収納された発煙剤を不燃性の芯材に含浸してヒータによる加熱で煙を発生させる場合に、芯材に含浸する発煙剤の吸い込み量を一定にして発煙量を安定化させる発煙装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第2発明の発煙装置)
本発明の他の形態にあっては、煙感知器の試験に用いられる煙を発生させる発煙装置であって、
円筒穴を囲む円環状の収納部に発煙剤が収納された円筒容器と、
円筒容器の収納部と円筒穴とを連通する連通孔と、
円筒容器の円筒穴に収納され、連通孔を介して収納部から供給された発煙剤を含浸させる多孔質円筒体と、
多孔質円筒体の内周面に配置され、多孔質円筒体を介して発煙剤が含浸する円筒状の不燃性の芯材と、
不燃性の芯材の内周面に配置され、当該不燃性の芯材に含浸した発煙剤を加熱して煙を発生させるヒータと、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
(第3発明の発煙装置)
本発明の別の形態にあっては、煙感知器の試験に用いられる煙を発生させる発煙装置であって、
円筒穴を囲む円環状の収納部に発煙剤が収納された円筒容器と、
円筒容器の収納部と円筒穴とを連通する連通孔と、
円筒容器の円筒穴に収納され、連通孔を介して収納部から供給された含浸させる多孔質円筒体と、
多孔質円筒体の内周面に配置され、多孔質円筒体を介して発煙剤が含浸する発煙円筒体と、
発煙円筒体に埋め込み配置され、当該発煙円筒体に含浸した発煙剤を加熱して煙を発生させるヒータと、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
(煙感知器試験装置又は感度試験装置への組込み)
発煙装置は、天井面に設置された煙感知器に煙を供給することで試験を行う加煙試験器、又は、筐体内の試験対象となる煙感知器が設けられた試験空間に煙を供給して煙感知器の感度を試験する感度試験装置に組み込まれる。
【発明の効果】
【0013】
(第1発明の基本的な効果)
本発明は、本発明は、煙感知器の試験に用いる煙を発生させる発煙装置であって、不燃性の芯材に含浸された容器の発煙剤をヒータにより加熱して煙を発生させる発煙部と、容器に収納された発煙剤の液面とヒータとの距離を所定レベルに保つ液面保持機構と、が設けられたため、ヒータによる芯材に含浸された発煙剤の加熱のよる煙の発生で容器の発煙剤が消費されても、発煙剤の液面が所定レベルに保たれることで、芯材の液面からヒータ加熱位置までの毛細管現象による発煙剤が含浸して行く距離が変化せず、このため芯材による発煙剤の吸い込み量が一定となり、発煙量を安定化させることができる。
【0014】
(液面保持機構1の効果)
また、液面保持機構は、容器に供給する発煙剤が密閉状態で貯留された貯留タンクと、容器の側面に開口して貯留タンクから発煙剤を容器に供給する連通路と、を備え、容器の液面レベルが連通路の開口位置より下がった場合に貯留タンクから発煙剤を容器に供給して発煙剤の液面を第1の所定レベルに保つようにしたため、液面レベルが連通路の開口位置より下がった場合に容器内の空気が貯留タンクに供給されることで貯留タンク内の発煙剤が容器に供給されることとなり、簡単な構造により、容器に収納している発煙剤の液面を一定レベルに保つことができる。
【0015】
(開閉弁の効果)
また、貯留タンクと容器を結ぶ連通路に開閉弁が設けられたため、発煙装置を使用しない場合には開閉弁を閉じておくことで、貯留タンクに収納している発煙剤の蒸発による消耗を防止できる。
【0016】
(液面保持機構2の効果)
また、液面保持機構は、容器に供給する発煙剤が密閉状態で貯留された貯留タンクと、貯留タンクの発煙剤に一端が浸漬され、他端が容器の液面上部の空間に開放されたサイホン管と、貯留タンクの液面上部の空間に一端が開放され、他端が容器に収納された発煙剤を貯留タンクから容器に供給する連通管と、を備え、サイホン作用により貯留タンクから容器に発煙剤を供給して発煙剤の液面を第1の所定レベルに保つようにしたため、容器の液面が下がると、サイホン管を介して貯留タンクから容器に発煙剤が供給され、連通管が液面の上昇で閉鎖されるとサイホン管による発煙剤の供給が停止し、これにより容器に収納した発煙剤の液面を所定レベルに保つことができる。
【0017】
(ドレインタンクの効果)
また、容液面保持機構は、容器の側面に開口したドレイン穴と、ドレイン穴から排出された発煙剤を貯留するドレインタンクと、を備え、容器の液面レベルがドレイン穴の開口位置より上がった場合に容器から発煙剤を排出して発煙剤の液面を第1の所定レベル以上の第2の所定レベル以下に保つため、発煙容器の揺れや傾斜等により液面が変動しても、ドレイン穴からドレインタンクに発煙剤が流れることで容器からの漏れ出しが防止され、また、ドレイン穴により液面を所定レベルを超えない位置に保つことができる。
【0018】
(第2発明による発煙装置の効果)
また、本発明の他の形態にあっては、煙感知器の試験に用いる煙を発生させる発煙装置であって、円筒穴を囲む円環状の収納部に発煙剤が収納された円筒容器と、円筒容器の円筒穴に収納され、一端の周面に円筒容器からの連通穴が開口されて発煙剤の供給を受けて他端側に発煙剤を含浸させる多孔質円筒体と、多孔質円筒体の他端に配置され、多孔質円筒体を介して発煙剤が含浸される不燃性の芯材と、不燃性の芯材に含浸された発煙剤を加熱して煙を発生させるヒータとが設けられたため、発煙装置の姿勢が変化しても、円筒容器に収納された発煙剤が効率良く多孔質円筒体に含侵されてヒータにより加熱されることで煙が発生され、円筒容器の発煙剤がなくなるまで効率良く煙を発生し続けることができる。
【0019】
(第3発明による発煙装置の効果)
本発明の別の形態にあっては、煙感知器の試験に用いる煙を発生させる発煙装置であって、円筒穴を囲む円環状の収納部に発煙剤が収納された円筒容器と、円筒容器の円筒穴に収納され、周面に円筒容器からの連通穴が開口されて発煙剤の供給を受けて含浸させる多孔質円筒体と、多孔質円筒体の内側に接触配置されることで発煙剤が含浸され、埋め込み配置されたヒータによる発煙剤の加熱により煙を発生させる多孔質の発煙円筒体と、が設けられたため、円筒容器の発煙剤がなくなるまで効率良く煙を発生し続けることができると共に、ヒータが多孔質の発煙円筒体に埋め込み設置されたセラミックヒータ等を使用することで、不燃性の芯材にヒータを巻いた場合のような芯材の焦げ付きにより発煙剤の含浸が損なわれて発煙量が低下するといった問題がなく、安定した煙の発生ができる。
【0020】
(煙感知器試験装置又は感度試験装置の組込みによる効果)
また、発煙装置は、天井面に設置された煙感知器に煙を供給することで試験を行う加煙試験器、又は、筐体内の試験対象となる煙感知器が設けられた試験空間に煙を供給して煙感知器の感度を試験する感度試験装置に組み込まれたため、貯留タンクに動作試験に必要な十分な量の発煙剤を入れておくことができ、使用により発煙剤が減少した場合には簡単に補充することができ、加煙試験器を用いた発報試験又は感度試験装置を用いた感度試験の作業効率を向上可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図1の発煙装置を組み込んだ加煙試験器を示した説明図
【
図3】
図1の発煙装置を組み込んだ感度試験装置を示した説明図
【
図4】感度試験装置における発煙装置の組み込み部分を側面から見た断面で示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
[発煙装置の第1実施形態]
(発煙装置の概要)
図1は発煙装置の第1実施形態を示した説明図である。
図1に示すように、本実施形態の発煙装置10は、発煙剤16が収納されるカップ状の透明な容器12を有し、容器12の上部開口は蓋部材14により閉鎖されている。容器12は液面高さを外部から確認可能とするため透明であることが好適だが、半透明等の適宜の形態を用いても良い。
【0023】
蓋部材14には、一対の液漏れ防止キャップ15が配置され、液漏れ防止キャップ15に紐状の芯材18の両端を通し、芯材18の先端を容器12に収納された発煙剤16に浸漬させ、毛細管現象により発煙剤16を吸い上げ、芯材18に発煙剤16を含浸させている。
【0024】
芯材18としては、不燃性のガラス繊維、シリカ繊維、ステンレス撚り線等を使用する。また、発煙剤16としては、親水性を有し保水性が高い成分、例えば、グリセリン、プロピレングリコール等の成分のうち少なくとも一成分を含む人体に無害な水溶性液体が用いられる。
【0025】
蓋部材14の上面に位置する芯材18の水平露出部分にはヒータ20が巻き回されている。ヒータ20はニクロム線、白金線等の金属線である。ヒータ20はリード線を介して制御部に接続され、加熱制御される。
【0026】
制御部によりヒータ20に通電されると、発煙剤16が含浸された芯材18が過熱され、ヒータ20の芯材18に対する接触部分が変霧器(アトマイザー)として機能し、芯材18に含浸されているグリセリン、プロピレングリコール等の成分を含む水溶性液体としての発煙剤16が気化され、霧化した煙を模した水蒸気を放出される。
【0027】
(液面保持機構)
発煙剤16が収納された容器12に対しては、発煙剤16の液面16aを第1の所定レベルに保つ液面保持機構が設けられる。本実施形態の液面保持機構は、容器12に供給する発煙剤16が密閉状態で貯留された貯留タンク22を備え、貯留タンク22は連通路24により容器12に連結して発煙剤16を供給するようにしており、貯留タンク22からの連通路24は、容器16の液面16aを所定レベルに保つ側面の液面位置に開口している。
【0028】
本実施形態では、容器12に収納した一定に保つ液面16aのレベルは、液面16aから蓋部材14までの高さHを概ね9ミリメートルに保つレベルとし、この位置に連通路24を開口している。
【0029】
貯留タンク22にはキャップ22aが設けられ、貯留している発煙剤16がなくなりかけた場合には、キャップ22aを外して発煙剤16を補充する。また、貯留タンク22からの連通路24には開閉弁26が設けられ、発煙装置10を使用する場合は開閉弁26を開いているが、発煙装置10を使用しない場合に開閉弁26を閉じておくことで、貯留タンク22に収納している発煙剤16の蒸発による消耗を防止する。開閉弁26としては、棒状弁体に通し穴を開け、棒状弁体を回転することで開閉可能なコック弁等の簡単で小型化された構造の弁を使用する。なお、開閉弁26は必要に応じて設けられ、必ずしも設ける必要はない。
【0030】
ヒータ20の通電による煙の発生により容器12に収納された発煙剤16が消費されると、これに応じて液面16aが徐々に低下し、液面16aが連通路24の開口位置を下回ると、連通路24を通って空気が貯留タンク22に流れ込み、これに伴い連通路24を通って貯留タンク22から発煙剤16が容器12に流れ込み、容器12の液面16aが上昇する。
【0031】
容器12の液面16aが連通路24の開口を塞ぐ位置まで上昇すると、貯留タンク22からの発煙剤16の流れ込みが停止し、液面16aを所定レベルに回復させ、例えば液面16aから蓋部材14までの高さHを9ミリメートルに保つことができる。
【0032】
このように容器12に収納した発煙剤16の液面16aが一定レベルに保たれると、芯材18の液面16aからヒータ20による加熱位置までの毛細管現象により発煙剤16が含浸して行く距離が変化せず、このため芯材18による発煙剤16の吸い込み量が一定となり、発煙量を安定させることができる。
【0033】
また、液面16aから蓋部材14までの高さHは、液面16aが低下して高さHが大きくなると発煙量が低下するが、逆に、液面16aを増加させて高さHを小さくしても発煙量が低下する関係にあることが確認されており、このため発煙量が最大となる高さHが本実施形態ではH=9ミリメートルであり、この高さを維持するように液面16aを一定に保つことで、発煙量を最大に保つことが可能となる。
【0034】
なお、発煙量を最大とする液面16aの高さHは、容器12のサイズ、芯材18の太さや材質等により変化することから、実験的に確認して決定することになる。
【0035】
(ドレインタンク)
本実施形態の発煙装置10は、容器12の下側にドレインタンク28を配置しており、ドレインタンク28に対しては容器12からドレイン管30が接続されている。ドレイン管30は、容器12の側面の液面16aを高さH以上に高いH’以下とする所定レベルに保つ液面位置にドレイン穴を開口している。
【0036】
このため発煙装置10の容器12の揺れや傾斜等により液面16aが変動しても、ドレイン管30からドレインタンク28に発煙剤16が流れることで容器12からの漏れ出しが防止され、また、容器12におけるドレイン管30の開口位置により液面16aが所定レベルを超えない位置に保つことができる。
【0037】
また、ドレインタンク28の底部にはキャップ28aが設けられ、必要に応じてドレインタンク28から発煙剤を抜き、例えば、貯留タンク22に戻して再利用することもできる。
【0038】
[加煙試験器]
図2は
図1の発煙装置を組み込んだ加煙試験器を示した説明図である。
図2に示すように、加煙試験器100は、グリップ102を備えた支持棒104の先端に支持部材106を介して本体ケース110を軸支部108により回動自在に支持している。
【0039】
本体ケース110は上部に開口した円筒体であり、上部開口にゴムパッキン112が装着され、また、開口片側に排気口120が形成され、一部が切欠された隔壁118で内部を上下に仕切っている。
【0040】
隔壁118の下側となる本体ケース110の内部には、発煙装置10と電動ファン114と制御部116が組み込まれ、クリップ102側に設けられた操作部105に収納した電池から電源供給を受けると共にスイッチ操作を受ける。電動ファン114の上側には架台122により
図1に示した発煙装置10が組み込まれている。
【0041】
天井面に設置された煙感知器130の発報試験を行う場合には、本体ケース110で煙感知器130の下側を包むように押し付けてゴムパッキン112により閉鎖し、この状態で操作部105の操作により電動ファン114を作動させ、また、
図1に示した発煙装置10のヒータ20に通電して煙を発生させ、隔壁118の切欠を介して煙感知器130を通り、更に排気口120に至る経路で煙を流し、煙感知器130を試験発報させて動作を確認する。
【0042】
加煙試験器100による煙感知器130の試験作業は、警戒区域の天井面に設置されている多数の煙感知器を順次試験する作業となるが、加煙試験器100に組み込まれた発煙装置10は、
図1に示したように、貯留タンク22からの発煙剤16の供給により容器12の液面16aが所定レベルに保たれることで発煙量が最大となる状態が維持されており、このため煙感知器に対し十分な量の煙を供給して短時間で試験させることができ、また、発煙剤16は貯留タンク22から供給されることで、十分な量の発煙剤16が準備されており、作業の途中で発煙剤16を充填することなく例えば1日の作業を終えることができる。
【0043】
また、加煙試験器100は軸支部108により本体ケース110を回動自在に支持しているから本体ケース110は略水平となり、本体ケース110に組み込まれた発煙装置10内の発煙剤液面も略水平に保たれ、発煙剤の補給が正しく行われる。
【0044】
[感度試験装置]
図3は
図1の発煙装置を組み込んだ感度試験装置を示した説明図であり、
図3(A)は正面を示し、
図3(B)は操作パネルを引き出した状態の平面を示す。また、
図4は感度試験装置における発煙装置の組み込み部分を側面から見た断面で示した説明図である。
【0045】
図3及び
図4に示すように、感度試験装置200は、筐体202の内部に試験空間201を持ち、開閉蓋204の内側の筐体202内に配置された取付台238に試験対象となる煙感知器240の取付べ一ス242が配置されている。
【0046】
感度試験装置正面の右下隅には取手により引き出し自在に発煙部210が配置され、検煙部210には
図1に示した発煙装置10が組み込まれており、発煙剤として機能する水溶性液体の気化により霧化した煙を発生させる。
【0047】
発煙部210の近傍には循環ファン206が配置され、発煙部210から試験空間201に送り込まれた煙を循環ファン206で左側に送っている。循環ファン206で送られた煙は整流板208により試験空間201の上方に送られ、この上方空間には取付ベース242に装着した煙感知器240が位置し、また、試験空間201の煙濃度を検出する濃度検出器212が設置されている。
【0048】
感度試験装置200の前面下側には、引出し構造をもつ操作パネル216が収納されている。操作パネル216は
図3(B)に示すように、電源スイッチ222が設けられており、電源スイッチ222をオンすると電源灯230が点灯し、取付ベース242に取付けられている煙感知器240に規定の電源電圧が供給され、この電源電圧は感知器電圧計234に表示される。
【0049】
感知器供給電圧は電圧調整ツマミ224により調整することができる。試験空間201に供給されている煙が煙感知器240に流入して所定の煙濃度に達すると、煙感知器240が試験発報し、発報表示灯232が点灯される。
【0050】
また、濃度検出器212からの煙濃度検出信号はマイクロアンペアメータを使用した濃度計236に表示される。感度試験装置200の試験対象となる煙感知器240には光電式とイオン化式があることから、この煙感知器の種別に応じ濃度計切替スイッチ228を切り替える。濃度計236の零点は、光電式煙感知器の場合は光電零点調整ツマミ226により調整され、イオン化式煙感知器の場合はイオン零点調整ツマミ227により調整される。
【0051】
発煙部210は
図4に示すように、箱型のケース内に
図1に示した発煙装置10を収納しており、発煙装置10は
図1に示したように容器12に収納された発煙剤16をヒータ20により加熱して気化させることにより霧化した煙を発生させる。またケース内には制御基板252が配置され、制御基板252には制御部250が実装されており、
図3(B)の操作パネル216に設けた電源スイッチ222をオン操作した場合に、制御部250はヒータ20の通電制御により煙を発生させる。
【0052】
感度試験装置200による煙感知器130の試験作業は、警戒区域の天井面に設置されている多数の煙感知器を順次取外して試験する作業となるが、感度試験装置200に組み込まれた発煙装置10は、
図1に示したように、容器12の発煙剤16が貯留タンク22からの供給により液面が所定レベルに保たれることで発煙量が最大となる状態に維持されており、このため試験空間201に対し十分な量の煙を供給して短時間で試験させることができ、また、発煙剤16は貯留タンク22から供給されることで、十分な量の発煙剤が準備されており、作業の途中で発煙剤16を充填することなく例えば1日の作業を終えることができる。
【0053】
[発煙装置の第2実施形態]
図5は発煙装置の第2実施形態を示した説明図であり、
図5(A)に液面が所定レベルにある場合を示し、
図5(B)に液面が低下した場合を示す。
【0054】
図5(A)に示すように、本実施形態の発煙装置10は、発煙剤16が収納されるカップ状の透明な容器12を有し、容器12の上部開口は蓋部材14で閉鎖され、蓋部材14には液漏れ防止キャップ15を介して芯材18の両端を通して先端を容器12に収納された発煙剤16に浸漬させ、毛細管現象により発煙剤16を吸い上げ、芯材18に発煙剤16を含浸させて、ヒータ20の通電により発煙剤16が含浸された芯材18が過熱され、発煙剤16が気化されて煙となって放出され、この点は
図1の実施形態と同じである。
【0055】
また、容器12の下側にドレインタンク28が配置され、ドレイン管30で接続され、ドレイン管30は、容器12の側面の液面16aを高さH以上に高いH’以下となる所定
レベルに保つ液面位置にドレイン穴を開口している点も、
図1の実施形態と同じである。
【0056】
これに対し本実施形態の液面保持機構は、発煙剤16が密閉状態で貯留された貯留タンク22と容器12の間を連通管32とサイホン管34で連結している。連通管32は、貯留タンク22の液面16bの上部の空間に一端が開口され、他端が容器12に収納された発煙剤16を所定レベルに保つ位置、即ち、液面16aから蓋部材14までの高さHが例えばH=9ミリメートルとなる位置に開口されている。
【0057】
サイホン管34は、一端が貯留タンク22の底部に近い位置して発煙剤16に浸漬され、他端が容器12の液面16aの上部の空間に開口され、開口間に高さの差hを持たせている。
【0058】
本実施形態の液面保持機構は、
図5(A)のように、容器12の液面16aが所定レベルにあると、連通管32の容器12内に配置された一端は液面16aに浸かって閉鎖されており、容器12及び貯留タンク22の液面上部の空間は共に同じ大気圧にあり、サイホン管34による貯留タンク22から容器12に対する発煙剤16の供給は停止している。
【0059】
この状態で、
図5(B)に示すように、容器12の発煙剤16が発煙により消費されて液面16aが下がると、連通管32の左側が液面16aの低下で開放され、サイホン管34を通って貯留タンク22から容器12に発煙剤16が供給される。
【0060】
これにより容器12の液面16aが上昇し、連通管32の左側の開口を塞ぐ位置に達すると、容器12の上部空間から貯留タンク22の上部空間への空気の供給が停止し、サイホン管34による発煙剤16の供給も停止し、これにより容器12の発煙剤16の液面16aを、連通管32の開口の位置で決まる蓋部材14からの高さH=9ミリメートルとなる所定レベルに保つことができる。
【0061】
本実施形態に示した発煙装置10も、
図1の実施形態と同様、
図2に示した加煙試験器100や
図3及び
図4に示した感度試験装置200に組み込まれて使用される。
【0062】
[発煙装置の第3実施形態]
図6は発煙装置の第3実施形態を示した説明図であり、発煙剤の液面保持機構は持たないが、容器の発煙剤がなくなるまで効率良く煙を発生可能とする構造を備えたことを特徴とする。
【0063】
図6に示すように、本実施形態の発煙装置10は、円筒穴36aを囲む円環状の収納部に発煙剤16が収納された円筒容器36を有し、円筒容器36の円筒穴36aに発煙剤16を含浸させる多孔質円筒体38が同軸に収納され、多孔質円筒体38は、スポンジ、金属メッシュ又は綿状ガラス繊維等で構成されている。
【0064】
多孔質円筒体38の下側となる円筒穴36aの周面には円筒容器36から複数の連通孔44が開口され、発煙剤16を多孔質円筒体38により周囲から供給して含浸させている。円筒容器36にはキャップ46が設けられ、キャップ46を外して発煙剤16を補充可能としている。
【0065】
多孔質円筒体38に開口した連通孔44から離れた上側には径方向に不燃性の芯材40が配置され、毛細管現象により多孔質円筒体38を介して発煙剤16を芯材40に含浸させている。不燃性の芯材42にはヒータ42が巻着されており、制御部によりヒータ42に通電されると、発煙剤16が含浸された芯材40が過熱され、ヒータ42の芯材40に対する接触部分が変霧器(アトマイザー)として機能し、芯材40に含浸されているグリセリン、プロピレングリコール等の成分を含む水溶性液体である発煙剤16が気化されて煙となって放出される。
【0066】
本実施形態の発煙装置10にあっては、発煙装置10の姿勢が変化しても、円筒容器36に収納された発煙剤16は効率良く多孔質円筒体38を介して芯材40に含浸され、ヒータ42により加熱されることで煙が発生され、円筒容器36の発煙剤16がなくなるまで効率良く煙を発生し続けることができる。
【0067】
本実施形態に示した発煙装置10も、
図1の実施形態と同様、
図2に示した加煙試験器100や
図3及び
図4に示した感度試験装置200に組み込まれて使用され、貯留タンクを持たないことで小型化されており、加煙試験器100及び感度試験装置200の組込みスペースを低減できる。
【0068】
[発煙装置の第4実施形態]
図7は発煙装置の第4実施形態を示した説明図である。
図7に示すように、本実施形態の発煙装置10は、円筒穴36aを囲む円環状の収納部に発煙剤16が収納された円筒容器36を有し、円筒容器36の円筒穴36aに発煙剤16を含浸させる多孔質円筒体38が同軸に収納され、多孔質円筒体38が収納された円筒穴36aの周面に円筒容器36から複数の連通孔44が開口され、発煙剤16を多孔質円筒体38に対し周囲から供給して含浸させており、また、円筒容器36にはキャップ46が設けられ、キャップ46を外して発煙剤16を補充可能としており、これらの点は
図6の実施形態と同様である。
【0069】
多孔質円筒体38の円筒穴には、発煙円筒体48が収納されている。発煙円筒体48は、セラミックス等の多孔質材料の中にヒータ42が埋め込み配置されることでセラミックヒータを構成している。
【0070】
円筒容器36に収納された発煙剤16は、毛細管現象により連通孔44から多孔質円筒体38を介して発煙円筒体48に含浸され、ヒータ42による発煙円筒体48の加熱により、含浸された発煙剤16を気化させて煙を発生させる。
【0071】
本実施形態の発煙装置10によれば、円筒容器36の発煙剤16がなくなるまで効率良く煙を発生し続けることができると共に、ヒータ42が埋め込み設置された多孔質の発煙円筒体48を使用することで、不燃性の芯材にヒータを巻いた場合のような芯材の焦げ付きにより発煙剤の含浸が損なわれて発煙量が低下するといった問題がなく、より安定した煙の発生ができる。
【0072】
本実施形態に示した発煙装置10も、
図1の実施形態と同様、
図2に示した加煙試験器100や
図3及び
図4に示した感度試験装置200に組み込まれて使用され、貯留タンクを持たないことで小型化されており、加煙試験器100及び感度試験装置200の組込みスペースを低減できる。
【0073】
[本発明の変形例]
(液面保持機構)
本発明の発煙装置で使用する液面保持機構は上記の実施形態に限定されず、容器に収納した発煙剤の液面を所定レベルに保持できるものであれば、適宜の機構又は構造を用いることができる。例えば、液面の変化をフロート(浮き部材)で機械的に検知して貯留タンクからの流路を開閉させるといった機構としても良い。また、上記の実施形態は、ドレインタンクを設けているが、ドレインタンクは必ずしも設ける必要はない。
【0074】
(発煙剤)
また、発煙剤は増粘添加剤を混ぜても良い。これにより、容器から発煙剤が漏れることをさらに防止可能となる。
【0075】
(その他)
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0076】
10:発煙装置
12:容器
14:蓋部材
15:液漏れ防止キャップ
16:発煙剤
16a,16b:液面
18,40:芯材
20,42:ヒータ
22:貯留タンク
22a,28a,46:キャップ
24:連通路
26:開閉弁
28:ドレインタンク
30:ドレイン管
32:連通管
34:サイホン管
36:円筒容器
38:多孔質円筒体
44:連通孔
48:発煙円筒体
100:加煙試験器
104:支持棒
110:本体ケース
112:ゴムパッキン
114:電動ファン
116,250:制御部
130,240:煙感知器
200:感度試験装置
201:試験空間
202:筐体
204:開閉蓋
206:循環ファン
210:発煙部
212:濃度検出器
216:操作パネル