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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145810
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】面発光レーザ装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/026 20060101AFI20231004BHJP
   H01S 5/0683 20060101ALI20231004BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20231004BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20231004BHJP
   H01S 5/183 20060101ALI20231004BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20231004BHJP
   G01S 7/4865 20200101ALI20231004BHJP
【FI】
H01S5/026 612
H01S5/0683
G01S17/89
G01C3/06 120Q
H01S5/183
G01S7/481 A
G01S7/4865
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135887
(22)【出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】加藤 菊文
【テーマコード(参考)】
2F112
5F173
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA10
2F112CA05
2F112CA12
2F112CA20
2F112DA25
2F112DA28
2F112DA32
2F112EA09
5F173AC53
5F173AD05
5F173AD11
5F173MA10
5F173MC01
5F173MD84
5F173MF12
5F173MF39
5F173SA04
5F173SA33
5F173SC10
5F173SE02
5F173SG04
5F173SH04
5F173SH13
5F173SH14
5F173SH15
5J084AA05
5J084AC02
5J084AC03
5J084AC04
5J084AC07
5J084AC08
5J084AD01
5J084AD02
5J084BA04
5J084BA07
5J084BA36
5J084BA40
5J084BB01
5J084CA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小型化が可能で、距離計測にも悪影響を与えない面発光レーザ装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】半導体基板上にVCSEL構造を有した複数の発光素子がマトリクス状に配置され、前記複数の発光素子の一部が面発光部33となり、前記複数の発光素子の内、発光していない面発光部の一部は受光素子37として用いられ出力検出に使用される、前記面発光レーザ装置1、および前記面発光レーザ装置1を備えた距離計測用電子機器。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置される複数の発光素子を有する面発光部を備え、
前記複数の発光素子の一部は、受光素子として用いられる、面発光レーザ装置。
【請求項2】
前記面発光部から発光された光を出射させる光学系を備え、
前記複数の発光素子は、
光を発光する第1素子と、
前記第1素子から発光された光が前記光学系で反射された光を受光する第2素子と、を含む、請求項1に記載の面発光レーザ装置。
【請求項3】
前記第1素子には順バイアス電圧が供給され、前記第2素子には逆バイアス電圧が供給される、請求項2に記載の面発光レーザ装置。
【請求項4】
前記第1素子のカソードと前記第2素子のカソードとは共通に接続され、前記第1素子のアノードには電源電圧が供給され、前記第2素子のアノードから受光量に応じた信号が出力される、請求項3に記載の面発光レーザ装置。
【請求項5】
前記第1素子のカソード及び前記第2素子のカソードに接続され、前記第1素子に発光強度に応じた電流を流すか否かを切り替える光源駆動部を備える、請求項4に記載の面発光レーザ装置。
【請求項6】
前記光源駆動部は、前記第2素子で受光された光の光強度を示す光量信号に基づいて、前記第1素子を発光させる際に前記第1素子に流れる電流を可変制御する、請求項5に記載の面発光レーザ装置。
【請求項7】
前記第2素子のアノードと基準電圧ノードとの間に接続され、前記第2素子で受光された光の強度に応じた電圧信号を生成する電圧変換回路を備える、請求項2に記載の面発光レーザ装置。
【請求項8】
前記複数の発光素子は、前記基板上の互いに交差する第1方向及び第2方向に配置されており、
前記複数の発光素子のうち四隅の4つの発光素子は前記受光素子として用いられる、請求項1に記載の面発光レーザ装置。
【請求項9】
前記複数の発光素子は、それぞれが2以上の前記発光素子を含む複数の発光素子群に分類されており、
前記複数の発光素子群のそれぞれは、時間をずらして順繰りに発光され、
発光していない前記発光素子群に含まれる前記発光素子は、前記受光素子して用いられる、請求項1に記載の面発光レーザ装置。
【請求項10】
前記複数の発光素子群は、第1方向に配置された2以上の前記発光素子を含む前記発光素子群を、前記第1方向に交差する第2方向に複数列配置したものであり、
複数列の前記発光素子群のそれぞれは、時間をずらして列ごとに順繰りに発光され、
発光していない列の前記発光素子群に含まれる前記発光素子は、前記受光素子として用いられる、請求項9に記載の面発光レーザ装置。
【請求項11】
前記複数の発光素子のうち一部の発光素子は、テスト用の発光素子であり、
前記テスト用の発光素子は、前記一部の発光素子以外の発光素子とは前記基板上の異なる場所に配置されており、
前記テスト用の発光素子は、前記受光素子として用いられる、請求項1に記載の面発光レーザ装置。
【請求項12】
基板上に配置される複数の発光素子を有する面発光部と、
前記面発光部から発光された光を出射させるための光学系と、
前記複数の発光素子の光強度を制御する制御部と、を備え、
前記複数の発光素子は、光を発光する第1素子と、前記第1素子から発光された光が前記光学系で反射された光を受光する第2素子と、を有し、
前記制御部は、前記第2素子で受光された光の強度に基づいて、前記第1素子の光強度を制御する、電子機器。
【請求項13】
前記第2素子で受光された光の強度を示す光量信号を生成する光量信号生成回路を備え、
前記制御部は、前記光量信号に基づいて、前記第1素子の光強度を制御する、請求項12に記載の電子機器。
【請求項14】
前記第1素子を発光させる際に前記第1素子に流す電流を可変制御する電流源を備え、
前記制御部は、前記光量信号に基づいて前記電流源の電流を調整する、請求項13に記載の電子機器。
【請求項15】
前記第1素子を発光させるか否かを制御する光源駆動部を備え、
前記制御部は、前記光量信号が所定の基準量を超えた場合には、前記第1素子の発光を停止させる、請求項13に記載の電子機器。
【請求項16】
前記第2素子で光が受光されたタイミングを示す基準信号を生成する基準信号生成回路を備える、請求項12に記載の電子機器。
【請求項17】
前記第1素子から発光された光が物体にて反射された反射光を受光する受光素子と、
前記受光素子から出力される受光信号と前記基準信号とに基づいて、前記受光素子が前記反射光を受光した時刻と、前記第1素子が光を発光した時刻との時間差を検出する時間計測部と、を備える、請求項16に記載の電子機器。
【請求項18】
前記第1素子が光を受光してから所定時間が経過するまでに前記第2素子が光を受光したか否かを判定する判定部と、
前記判定部にて前記所定時間が経過するまでに前記第2素子が光を受光しなかったと判定されたときに、所定の警告処理を行う警告部と、を備える、請求項12に記載の電子機器。
【請求項19】
前記面発光部を有する第1半導体装置と、
前記制御部を有する第2半導体装置と、を備え、
前記光学系は、前記第1半導体装置の光出射面側に配置される、請求項12に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、面発光レーザ装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の携帯型情報端末には、種々のセンサが搭載されており、これらのセンサを利用して、高感度かつ高品質の撮影を行えるようにしている。携帯型情報端末に内蔵されたカメラでは、画像のコントラストを利用してオートフォーカス(AF)を行うのが一般的であるが、暗所等の被写体のコントラストが低い場合には、AFに時間がかかる上に、AF精度も著しく低下する。
【0003】
このため、ToF(Time of Flight)方式の測距センサを用いてAFを行う携帯型情報端末が増えている(特許文献1、2参照)。ToF方式では、被写体にレーザ光を照射したタイミングと、被写体からの反射光が受光されるタイミングまでの時間差により、被写体までの距離を計測するものであり、暗所等のコントラストが低い場合であっても、精度よく被写体までの距離を計測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-16615号公報
【特許文献2】特開2019-132640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ToF方式で距離を計測する場合、発光素子が光を発光したタイミングを検出するための受光素子と、発光素子が発光した光を被写体が反射した反射光を受光する受光素子とを設けなければならず、小型化するのが困難で、スマートフォン等の小型の携帯型情報端末に実装できないという問題がある。
【0006】
特許文献2には、発光素子が光を発光したタイミングを検出するための受光素子と、発光素子が発光した光を被写体が反射した反射光を受光する受光素子とを、一つに統合する技術が開示されている。しかしながら、アバランシェフォトダイオードを用いた受光素子は、いったん光を受光すると、その後に光を受光可能となるまでクエンチング動作を行わなければならないため、上述した二つの受光素子を一つに統合すると、近距離からの反射光を受光し損なうおそれがあり、距離計測範囲が狭まってしまう。
【0007】
そこで、本開示では、小型化が可能で、距離計測にも悪影響を与えることがない面発光レーザ装置及び電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示では、基板上に配置される複数の発光素子を有する面発光部を備え、
前記複数の発光素子の一部は、受光素子として用いられる、面発光レーザ装置が提供される。
【0009】
前記面発光部から発光された光を出射させる光学系を備え、
前記複数の発光素子は、
光を発光する第1素子と、
前記第1素子から発光された光が前記光学系で反射された光を受光する第2素子と、を含んでもよい。
【0010】
前記第1素子には順バイアス電圧が供給され、前記第2素子には逆バイアス電圧が供給されてもよい。
【0011】
前記第1素子のカソードと前記第2素子のカソードとは共通に接続され、前記第1素子のアノードには電源電圧が供給され、前記第2素子のアノードから受光量に応じた信号が出力されてもよい。
【0012】
前記第1素子のカソード及び前記第2素子のカソードに接続され、前記第1素子に発光強度に応じた電流を流すか否かを切り替える光源駆動部を備えてもよい。
【0013】
前記光源駆動部は、前記第2素子で受光された光の光強度を示す光量信号に基づいて、前記第1素子を発光させる際に前記第1素子に流れる電流を可変制御してもよい。
【0014】
前記第2素子のアノードと基準電圧ノードとの間に接続され、前記第2素子で受光された光の強度に応じた電圧信号を生成する電圧変換回路を備えてもよい。
【0015】
前記複数の発光素子は、前記基板上の互いに交差する第1方向及び第2方向に配置されており、
前記複数の発光素子のうち四隅の4つの発光素子は前記受光素子として用いられてもよい。
【0016】
前記複数の発光素子は、それぞれが2以上の前記発光素子を含む複数の発光素子群に分類されており、
前記複数の発光素子群のそれぞれは、時間をずらして順繰りに発光され、
発光していない前記発光素子群に含まれる前記発光素子は、前記受光素子して用いられてもよい。
【0017】
前記複数の発光素子群は、第1方向に配置された2以上の前記発光素子を含む前記発光素子群を、前記第1方向に交差する第2方向に複数列配置したものであり、
複数列の前記発光素子群のそれぞれは、時間をずらして列ごとに順繰りに発光され、
発光していない列の前記発光素子群に含まれる前記発光素子は、前記受光素子として用いられてもよい。
【0018】
前記複数の発光素子のうち一部の発光素子は、テスト用の発光素子であり、
前記テスト用の発光素子は、前記一部の発光素子以外の発光素子とは前記基板上の異なる場所に配置されており、
前記テスト用の発光素子は、前記受光素子として用いられてもよい。
【0019】
本開示の一態様では、基板上に配置される複数の発光素子を有する面発光部と、
前記面発光部から発光された光を出射させるための光学系と、
前記複数の発光素子の光強度を制御する制御部と、を備え、
前記複数の発光素子は、光を発光する第1素子と、前記第1素子から発光された光が前記光学系で反射された光を受光する第2素子と、を有し、
前記制御部は、前記第2素子で受光された光の強度に基づいて、前記第1素子の光強度を制御してもよい。
【0020】
前記第2素子で受光された光の強度を示す光量信号を生成する光量信号生成回路を備え、
前記制御部は、前記光量信号に基づいて、前記第1素子の光強度を制御してもよい。
【0021】
前記第1素子を発光させる際に前記第1素子に流す電流を可変制御する電流源を備え、
前記制御部は、前記光量信号に基づいて前記電流源の電流を調整してもよい。
【0022】
前記第1素子を発光させるか否かを制御する光源駆動部を備え、
前記制御部は、前記光量信号が所定の基準量を超えた場合には、前記第1素子の発光を停止させてもよい。
【0023】
前記第2素子で光が受光されたタイミングを示す基準信号を生成する基準信号生成回路を備えてもよい。
【0024】
前記第1素子から発光された光が物体にて反射された反射光を受光する受光素子と、
前記受光素子から出力される受光信号と前記基準信号とに基づいて、前記受光素子が前記反射光を受光した時刻と、前記第1素子が光を発光した時刻との時間差を検出する時間計測部と、を備えてもよい。
【0025】
前記第1素子が光を受光してから所定時間が経過するまでに前記第2素子が光を受光したか否かを判定する判定部と、
前記判定部にて前記所定時間が経過するまでに前記第2素子が光を受光しなかったと判定されたときに、所定の警告処理を行う警告部と、を備えてもよい。
【0026】
前記面発光部を有する第1半導体装置と、
前記制御部を有する第2半導体装置と、を備え、
前記光学系は、前記第1半導体装置の光出射面側に配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の実施形態による面発光レーザ装置を備えた測距モジュールの断面図。
図2】発光部の概略構成を示す模式的な断面図。
図3図1の発光部のLDD基板とLDチップの構造をより詳細に示す断面図。
図4】発光部内の複数の発光素子の配置を示す平面図。
図5】テスト用の発光素子を有する面発光レーザ装置の平面図。
図6】測距モジュール内の発光部の接続形態の一例を示す図。
図7】本実施形態による電子機器の内部構成の一例を示すブロック図。
図8】時間測定部が計測する飛行時間を説明する図。
図9】第2の実施形態による面発光レーザ装置の各発光素子の接続形態を示す回路図。
図10】第1発光素子群と第2発光素子群の配置例を示す図。
図11図9の一変形例で、積分回路と波形整形回路を追加した回路図。
図12図11の等価回路図。
図13】第3の実施形態による測距モジュールを模式的に説明する図。
図14】警告部を備えた電子機器のブロック図。
図15】第4の実施形態による電子機器の概略構成を示すブロック図。
図16】本開示による電子機器の例を示す図。
図17】本開示による電子機器の例を示す図。
図18】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図。
図19】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、面発光レーザ装置及び電子機器の実施形態について説明する。以下では、面発光レーザ装置及び電子機器の主要な構成部分を中心に説明するが、面発光レーザ装置及び電子機器には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0029】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態による面発光レーザ装置1を備えた測距モジュール2の断面図である。図1の測距モジュール2は、物体(測距対象)50までの距離をToF方式にて計測する測距モジュール2を備えている。測距モジュール2は、発光装置3と、受光装置4とを備えている。測距モジュール2は、後述するように、スマートフォン等の電子機器に組み込むことができる。
【0030】
発光装置3は、発光部5と、出射光学系6とを有する。発光部5は、面発光レーザ装置1を有する。
【0031】
面発光レーザ装置1は、後述するように、半導体基板上に複数の発光素子を二次元状に配置したVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)であり、複数の発光素子は同時に所定の波長帯域のレーザ光を出射する。これにより、複数の発光素子から発光されたレーザ光は面状に広がる光となる。
【0032】
出射光学系6は、面発光レーザ装置1の光出射面に対向して配置されている。出射光学系6は、面発光レーザ装置1から発光された光を所定のビーム口径に成形して、出射光軸に沿って放射させる。出射光学系6の光入射面とその反対側の光出射面は、各面への入射光の約4~7%を透過させずに反射させる。このため、出射光学系6の全体では、入射光の約8~14%を反射させる。各面に反射防止膜(anti-reflection coating film)を蒸着させることで、入射光の反射割合を約1%まで下げることができる。すなわち、出射光学系6に設ける反射防止膜を調整することで、出射光学系6の反射割合を約1~14%の範囲内で制御することができる。後述するように、本実施形態では、面発光レーザ装置1内の複数の発光素子の一部を受光素子として用い、出射光学系6で反射された光を受光する。
【0033】
受光装置4は、受光部7と、入射光学系8と、バンドパスフィルタ9とを有する。受光部7は、複数のSPAD(Single Photon Avaranche Diode)を二次元状に配置したSPADアレイを有する。SPADは、入射された1個の光子に対してアバランシェ増倍を行って大電流を流すガイガーモードで動作する。このため、わずかな光量の入射光でも検出可能である。その一方で、アバランシェ増倍で発生して蓄積された電子を放電させて初期電圧に戻すクエンチング動作が完了するまでは、新たな入射光の検出を行えないという制限がある。クエンチング動作を迅速化するための種々の対策を施してもよいが、本明細書では説明を割愛する。
【0034】
入射光学系8は、受光部7の受光面に対向して配置されている。バンドパスフィルタ9は、環境光などのノイズ光を除去するために設けられている。
【0035】
発光部5を構成する面発光レーザ装置1と受光部7を構成するSPADアレイは、それぞれ別個の半導体チップで構成することができる。図1では、面発光レーザ装置1を内蔵する半導体チップ11と、SPADアレイを内蔵する半導体チップ12とを共通の支持基板13上に実装する例を示している。面発光レーザ装置1から発光された光が、物体で反射される前に、出射光学系6や電子機器の筐体に反射してSPADアレイに入射されないように、SPADアレイを内蔵する半導体チップ12と面発光レーザ装置1を内蔵する半導体チップ11との間には、光遮蔽部材14が配置されている。
【0036】
SPADアレイを内蔵する半導体チップ12には、測距モジュール2の制御系の回路が形成されたチップが積層されている。この回路は、発光素子が光を発光したタイミングと受光素子が光を受光するタイミングとの時間差に基づいて、物体までの距離を計測する。
【0037】
本実施形態では、発光部5を構成する面発光レーザ装置1内の複数の発光素子の一部を受光素子として用いる。面発光レーザ装置1は可逆性を持つことが知られている。発光素子のアノードとカソード間に順バイアス電圧を印加すると、発光素子から光を発光させることができる。一方、発光素子のアノードとカソード間にバイアス電圧、ゼロ電圧、又は逆バイアス電圧を印加すると、発光素子で光を受光させることができる。このような面発光レーザ装置1の可逆性を利用して、本実施形態では、複数の発光素子の一部を受光素子として用いる。これにより、測距モジュール2内にSPAD以外に受光素子を設ける必要がなくなり、測距モジュール2を小型化できる。本明細書では、面発光レーザ装置1内の複数の発光素子のうち、受光素子として用いる発光素子を第1受光部と呼ぶことがある。また、物体からの反射光を受光するSPADアレイで構成される受光部7を第2受光部と呼ぶことがある。
【0038】
図2は発光部5の概略構成を示す模式的な断面図である。図2に示すように、発光部5は、支持基板21上に、放熱基板22を介してLDD(Laser Diode Driver)基板(第1基板)23を配置し、LDD基板23上にLD(Laser Diode)チップ(第2基板)24を配置している。LDD基板23とLDチップ24とは、半田バンプ等の接合部材25で接合されている。LDD基板23は、接合部材25を介してLDチップ24に発光素子を駆動する駆動信号を出力する。LDチップ24は発光素子を有する。発光素子は、LDD基板23からの駆動信号に応じて、所定波長帯域のレーザ光を発光する。LDチップ24から発光されたレーザ光は、出射光学系6を介して外部に放射される。出射光学系6は、レンズ保持部26で保持されている。出射光学系6は、1枚以上のレンズで構成されている。
【0039】
LDチップ24から発光されるレーザ光の波長は、可視光帯域から赤外光帯域までの任意の波長帯域である。測距モジュール2の用途に応じて、適切な波長帯域を選択するのが望ましい。
【0040】
図3図1の発光部5のLDD基板23とLDチップ24の構造をより詳細に示す断面図である。LDチップ24は、基板31と、積層膜32と、積層膜32を用いて形成された複数の発光素子33と、複数のアノード電極34と、カソード電極35とを備えている。
【0041】
LDチップ24の基板31は、GaAs(ガリウムヒ素)等の化合物半導体を材料とする基板である。基板31のLDD基板23の一主面S1に対向する面が表(おもて)面S2であり、レーザ光は基板の裏面S3側から出射される。基板31の電気的極性はP型では結晶欠陥が多くて実用に至っていないことから、N型の基板31が用いられる。このため、複数の発光素子のカソードを共通にするカソード共通極性として用いられる。
【0042】
積層膜32は、第1多層膜反射鏡、第1スペーサ層、活性層、第2スペーサ層、及び第2多層膜反射鏡などを含んでおり、活性層で発生されたレーザ光を第1多層膜反射鏡と第2多層膜反射鏡の間で共振させて光強度を向上させ、基板の裏面S3側から出射する。このように、図3のLDチップ24は裏面照射型である。図3のような層構成の発光素子33はVCSEL構造とも呼ばれる。
【0043】
複数の発光素子33は、積層膜32をメサ形状に加工して形成されている。基板31側から見て、各発光素子33の上面にはアノード電極(第2パッド)34が配置されている。同様に、基板31側から見て、LDチップ24の端部側に配置される積層膜32の上面及び側面にはカソード電極35が配置されている。カソード電極35は、基板31側から見て、複数の発光素子33の積層膜32の最下層側にも配置されている。
【0044】
LDD基板23は、LDチップ24の複数の発光素子33に駆動信号を供給するための複数のパッド36を有する。これらパッド36の上には、接合部材25が配置されており、接合部材25を介して、LDD基板23のパッド36と、LDチップ24の対応するアノード電極34のパッド34とが接合される。
【0045】
LDD基板23は、駆動信号を生成する駆動回路を有していてもよい。この場合、LDD基板23はアクティブ駆動を行う。あるいは、LDD基板23は、外部の駆動回路で生成された駆動信号を切り替える切替回路を有していてもよい。この場合、LDD基板23は、パッシブ駆動を行う。
【0046】
測距モジュール2では、発光部5から光を発光したタイミングを検出するために、発光部5から発光された光が出射光学系6で反射した光を受光する。この光を受光するために、本実施形態では、発光部5内の複数の発光素子33のうちの一部の発光素子33を受光素子37として用いる。
【0047】
図4は発光部5内の複数の発光素子33の配置を示す平面図である。図示のように、発光部5には、互いに交差する第1方向及び第2方向に複数の発光素子33が配置されている。すなわち、複数の発光素子33は二次元方向に配置されている。本実施形態による発光部5は、面発光するため、面状の光の平均的な受光強度を検出するには、面内の特定位置の受光強度を検出するよりも、面内に均等に散らばった位置での受光強度を検出するのが望ましい。このような観点から、例えば四隅の4つの発光素子33が受光素子37として用いられる。
【0048】
なお、発光部5内の複数の発光素子33のうち、どの発光素子33を受光素子37として用いるかは任意である。図4のように四隅の発光素子33に加えて、例えば中央の発光素子33も受光素子37として用いてもよい。あるいは、矩形状に配置された複数の発光素子33のうち、各端辺の中央の発光素子33を受光素子37として用いてもよい。あるいは、対角線上に配置された複数の発光素子33を受光素子37として用いてもよい。
【0049】
面発光レーザ装置1には、テスト用の発光素子が設けられる場合がある。テスト用の発光素子38は、例えば図5に示すように、本来の発光素子33とは離れた場所に設けられることが多い。テスト用の発光素子38は、面発光レーザ装置1の発光強度等をテストするために設けられる。このようなテスト用の発光素子38を受光素子37として用いてもよい。この場合、本来の発光素子33はそのまま光を発光するために利用できるため、配線の変更量が少なくて済み、設計変更を容易に行える。
【0050】
図6は測距モジュール2内の発光部5の接続形態の一例を示す図である。図6には、測距モジュール2内の発光部5の他に、電子機器40内の光源駆動部41、積分回路(光量信号生成回路)42、及び波形整形回路(基準信号生成回路)43も図示されている。
【0051】
図6に示すように、発光部5は、複数の発光素子33のうち、光を発光するために用いられる第1素子33aと、光を受光するために用いられる第2素子33bとを有する。図6は、第1素子33aが2以上の発光素子33を有し、第2素子33bも2以上の発光素子33を有する例を示しているが、第1素子33aに含まれる発光素子33の数と、第2素子33bに含まれる発光素子33の数は任意である。
【0052】
第1素子33aを構成する各発光素子33は並列に接続されており、各発光素子33のアノードは電源電圧ノードに接続され、カソードは光源駆動部41の出力ノードに接続されている。
【0053】
光源駆動部41は、第1素子33aを構成する各発光素子33に流れる電流を制御するドライバである。光源駆動部41は、例えば図1の発光部5の近傍に配置される。光源駆動部41は、電流源44と、切替器45と、バッファ46とを有する。電流源44は、後述する制御部により、第1素子33aに流れる電流を制御する。切替器45は、バッファ46を介して入力される制御信号aの論理により、電流源44が電流を流すか否かを切り替える。例えば、制御信号aがハイ電位のときに、切替器45はオンして、電流源44は電流を流す。電流源44に流れる電流に応じた光強度で、第1素子33aを構成する各発光素子は発光する。このように、第1素子33aを構成する各発光素子33の発光強度は、電流源44に流れる電流に依存する。電流源44に流れる電流は、後述する制御部によって制御される。
【0054】
第2素子33bを構成する各発光素子33も並列接続されている。第2素子33bを構成する各発光素子33のカソードは、第1素子33aを構成する各発光素子33のカソードとともに、光源駆動部41の出力ノードに接続されている。例えば、電源電圧を5V、第1素子33aを構成する各発光素子33が光を発光する際のアノード-カソード間の電圧を2Vとすると、第1素子33aのカソード(第2素子33bのカソード)電圧は約3Vになる。よって、第2素子33bを構成する各発光素子33は逆バイアス状態となる。この状態では、第2素子33bを構成する各発光素子33のPNジャンクション容量は小さくなり、より高速な動作が可能となる。
【0055】
第1素子33aを構成する各発光素子33から発光された光の一部は、図1の破線で示すように、出射光学系6で反射されて、第2素子33bを構成する各発光素子33で受光される。出射光学系6は、発光部5の近傍に配置されているため、第2素子33bを構成する各発光素子33が光を受光するタイミングは、第1素子33aを構成する各発光素子33が光を発光するタイミングとほぼ同じである。また、第2素子33bを構成する各発光素子33が受光する光の光強度(受光量)は、第1素子33aを構成する各発光素子33が発光する光強度に応じて変化する。
【0056】
第2素子33bを構成する各発光素子33のアノードと接地ノードとの間には、抵抗Rが接続されている。この抵抗Rは、第2素子33bを構成する各発光素子33のアノードに流れる電流を電圧に変換する電圧変換回路として機能する。抵抗Rの両端電圧は、第2素子33bを構成する各発光素子33での受光量に応じた電圧レベルになり、受光量が大きいほど電圧レベルが大きくなる。
【0057】
このように、面発光レーザ装置1は、第2素子33bを構成する各発光素子33の受光量に応じた電圧を出力する。この電圧は、積分回路42と波形整形回路43に入力される。積分回路42は、第2素子33bを構成する各発光素子33の受光量に応じた電圧を時間積分して光量信号を生成する。波形整形回路43は、第2素子33bを構成する各発光素子33での受光信号を波形整形してパルス信号を生成する。このパルス信号は、第1素子33aを構成する各発光素子33が光を発光したタイミングを示す基準信号である。
【0058】
このように、発光部5内の複数の発光素子33のうち、一部の発光素子33を受光素子37として用いることで、別個に受光素子37を設けることなく、発光部5が発光する光の光強度と発光タイミングとを精度よく検出できる。また、本実施形態によれば、物体からの光を受光するために設けられる受光部7を、発光部5から発光された光の強度や発光タイミングを検出するために用いなくてよいため、受光部7が出射光学系6からの反射信号を受光することにより、SPADのクエンチング動作による受光不可の期間(デッドタイム)内に物体からの反射光を受光できないという不具合が生じなくなり、近距離での距離計測も行うことができ、距離計測範囲を広げることができる。
【0059】
なお、発光部5内の複数の発光素子33のうち、受光素子37として用いる発光素子33の数が少ない場合、受光素子37の1個で受光できる光エネルギは必ずしも十分でないため、1回の測定だけでは、上述した光量信号や基準信号を精度よく検出できないおそれがある。そこで、発光部5の複数回の発光に合わせて複数回の受光を行って、平均化処理により、光量信号や基準信号の測定精度を向上させるのが望ましい。
【0060】
発光部5から発光されて出射光学系6を透過する光信号レベルと、出射光学系6で反射されて発光部5内の一部の発光素子33で受光されて抵抗Rの両端に現れる電圧レベルとの比例定数は、個々の個体差、温度係数等を考慮に入れて事前に校正することで、定量的な数値を得ることができる。また、出射光学系6に入射されて反射する光の割合は、出射光学系6の表面に形成される反射防止膜のコーティング量を調整することで変更可能である。
【0061】
後述するように、積分回路42から出力された光量信号をモニタすることで、発光部5から発光する光の光強度を自動調整する自動光出力制御(APC:Auto Power Control)を行ったり、光量信号が予め用意した基準信号に一致するように発光部5から発光される光の光強度を調整してもよい。これにより、発光部5から発光される光の光強度を安定化することができ、より精度の高い距離計測が可能となる。
【0062】
図7は本実施形態による電子機器40の内部構成の一例を示すブロック図である。図7に示すように、電子機器40は、測距モジュール2と、光源駆動部41と、積分回路42と、第1波形整形回路51と、第2波形整形回路52と、時間測定部53と、制御部54と、操作部55と、記憶部56と、表示部57とを備えている。
【0063】
測距モジュール2は、発光部5と、第1受光部15と、第2受光部16を有する。なお、図7の発光部5とは、発光部5を構成する複数の発光素子33の中で、光を発光させる発光素子33を指す。測距モジュール2では、発光部5から発光されて出射光学系6を透過した光を物体(測距対象)50に照射し、物体(測定対象)50からの反射光を第2受光部16で受光する。
【0064】
第1受光部15とは、図6に示したように、発光部5内の複数の発光素子33のうち、受光素子37として用いられる発光素子33を指す。第2受光部16とは、図1に示すSPADアレイで構成される受光部7である。発光部5及び第1受光部15の近傍には出射光学系6が設けられている。第2受光部16の近傍には、入射光学系8とバンドパスフィルタ9が設けられている。
【0065】
第1受光部15の受光信号は、図6に示したように、抵抗Rにて電圧に変換される。この電圧は、積分回路42と第1波形整形回路51に入力される。第2受光部16の受光信号は、第2波形整形回路52に入力される。実際には、第2受光部16の受光信号も、不図示の抵抗R等により電圧に変換されて、第2波形整形回路52に入力される。
【0066】
光源駆動部41は、制御信号aのパルスに同期して、発光部5内の各発光素子33を駆動するか否かを切り替える。また、光源駆動部41は、制御部54からの指示により、発光部5内の各発光素子33に流れる電流を調整する。光源駆動部41の出力ノードは、図6に示したように、発光部5及び第1受光部15の各発光素子33のカソードに接続されている。
【0067】
積分回路42は、図6に示したように、第1受光部15の受光信号に応じた電圧に対して積分処理を施して光量信号を生成する。積分回路42は、生成した光量信号を制御部54に送る。
第1波形整形回路51は、第2受光部16の受光信号に応じた電圧に対して積分処理を施して基準信号を生成する。第2波形整形回路52は、第2受光部16の受光信号に応じた電圧に基づいて測定信号を生成する。
【0068】
時間測定部53は、測定信号のタイミングと基準信号のタイミングとの時間差である飛行時間(ToF)を計測する。
【0069】
図8は時間測定部53が計測する飛行時間を説明する図である。例えば、時間測定部53は、パルス形状の基準信号の立ち上がりエッジのタイミングと、同じくパルス形状の測定信号の立ち上がりエッジのタイミングとの時間差を飛行時間(ToF)として計測する。時間測定部53は、計測した飛行時間を制御部54に送る。
【0070】
制御部54は、光量信号に基づいて、光源駆動部41内の電流源44を流れる電流量を調整する。また、制御部54は、発光部5が光を発光するタイミングを示す制御信号aを光源駆動部41に送る。
【0071】
制御部54は、例えば、CPU等のプロセッサを有する。制御部54には、操作部55と記憶部56が接続されている。操作部55は、例えば、スイッチ、ボタン、キーボード、タッチパネル等の電子機器40の操作を行うための各種の操作デバイスを有する。制御部54は、例えば、操作部55からの操作信号等に基づいて、電子機器40の各部の制御を行ったり、記憶部56に記憶されているプログラムを実行することにより、所定の処理を行ったりする。例えば、制御部54は、測距モジュール2の測定結果に基づく処理を行う。
【0072】
次に、第1の実施形態による電子機器40の処理動作を説明する。制御部54が光源駆動部41に対して制御信号aを送信すると、制御信号aに含まれるパルスに同期して、光源駆動部41は、発光部5内の各発光素子33のカソードに電流を流す。これにより、各発光素子33は発光を開始する。発光された光の大部分は出射光学系6を透過するが、発光された光の一部は出射光学系6の入射面や出射面で反射されて、第1受光部15で受光される。第1受光部15は、面発光レーザ装置1内の複数の発光素子33のうち一部の発光素子33である。第1受光部15から出力された受光信号は、電圧に変換されて、積分回路42と第1波形整形回路51に入力されて、光量信号と基準信号が生成される。
【0073】
発光部5から発光された光の大部分は、出射光学系6を透過して物体で反射され、その反射光は第2受光部16で受光される。第2受光部16は、SPADで構成される。第2受光部16の受光信号は第2波形整形回路52に入力されて、測定信号が生成される。
【0074】
時間測定部53は、第1波形整形回路51で生成された基準信号と第2波形整形回路52で生成された測定信号とに基づいて、物体に光を照射して、その反射光が受光されるまでの光の飛行時間を計測する。
【0075】
制御部54は、時間測定部53で計測された飛行時間に基づいて、物体までの距離を計測する。また、制御部54は、積分回路42で生成された光量信号に基づいて、発光部5内の発光素子33に流れる電流を制御する。これにより、発光部5から発光される光の光強度を調整することができる。
【0076】
このように、第1の実施形態では、面発光レーザ装置1内の複数の発光素子33のうち一部の発光素子33を受光素子37として利用する。より具体的には、発光部5内の複数の発光素子33のうち一部の発光素子33を、発光部5から発光された光が出射光学系6の入射面や出射面で反射された光を受光する第1受光部15として利用する。これにより、第1受光部15として別個の受光素子37を設ける必要がなく、部材コストを削減できるとともに、電子機器40の小型化を図ることができる。
【0077】
本実施形態では、面発光レーザ装置1内の複数の発光素子33のうち一部の発光素子33を受光素子37として使用する場合、各発光素子33のカソードの接続先を変えずに、受光素子37として使用する発光素子33のアノードを、電源電圧ノードに接続する代わりに、積分回路42と波形整形回路43に接続すればよいため、配線の一部変更だけで、発光素子33を受光素子37に変更でき、設計変更を容易に行うことができる。
【0078】
また、第1受光部15での受光信号に基づいて光量信号を生成し、制御部54は光量信号に基づいて発光部5から発光される光の光強度を制御するため、発光部5から発光される光の光強度を最適化できる。
【0079】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、面発光レーザ装置1内の複数の発光素子33を複数の発光素子群に分類し、複数の発光素子群のそれぞれを、時間をずらして順繰りに発光するものである。
【0080】
図9は第2の実施形態による面発光レーザ装置1の各発光素子33の接続形態を示す回路図である。図9では、面発光レーザ装置1内の複数の発光素子33を第1発光素子群33cと第2発光素子群33dに分類して、第1発光素子群33cと第2発光素子群33dの一方を発光素子33として利用し、他方を受光素子37として利用する切替動作を交互に行う。
【0081】
図9の面発光レーザ装置1は、複数の発光素子33と、切替器58と、切替制御部59とを有する。切替器58は、第1発光素子群33c内の各発光素子33のアノードと、第2発光素子群33d内の各発光素子33のアノードとのいずれか一方を電源電圧ノードに接続し、他方を接地ノードに接続する切替を行う。切替制御部59は、制御部54からの制御信号bに基づいて、切替器58の切替を制御する。
【0082】
切替制御部59は、第1発光素子群33c内の各発光素子33のアノードを電源電圧ノードに接続する際には、第2発光素子群33d内の各発光素子33のアノードを接地ノードに接続し、第2発光素子群33d内の各発光素子33のアノードを電源電圧ノードに接続する際には、第1発光素子群33c内の各発光素子33のアノードを接地ノードに接続する。切替制御部59は、このような接続の切替を交互に行う。
【0083】
図9の面発光レーザ装置1を測距モジュール2に組み込んだ場合、面発光レーザ装置1内の全発光素子33から光を発光して測距を行う場合と比較して、同時に発光を行う発光素子33の数を削減できるため、測距範囲に影響を与えることなく、発光部5の消費電力を削減できる。また、第2の実施形態による面発光レーザ装置1は、発光させない発光素子33を受光素子37として利用するため、面発光レーザ装置1内の一部の発光素子33を受光素子37として用いて、第1の実施形態と同様に基準信号及び光量信号を生成できる。よって、基準信号と光量信号を生成するための別個の受光素子が不要となり、小型化が可能となる。
【0084】
図10は第1発光素子群33cと第2発光素子群33dの配置例を示す図である。図10では、面発光レーザ装置1内の複数の発光素子33が矩形状に配置されており、破線で示す各列のうち、奇数列を第1発光素子群33cとし、偶数列を第2発光素子群33dとする例を示している。なお、図10は一例であり、第1発光素子群33cと第2発光素子群33dの分類の仕方は任意である。例えば、奇数行を第1発光素子群33cとし、偶数行を第2発光素子群33dとしてもよい。また、3つ以上の発光素子群に分類して、各発光素子群を順繰りに発光させ、発光させない発光素子群を受光素子37として用いてもよい。
【0085】
図11は、図9の一変形例であり、複数の発光素子33のうち、受光素子37として用いる発光素子33のアノードに積分回路42と波形整形回路43(第1波形整形回路51)を接続したものである。図12図11の等価回路であり、第1発光素子群33cを発光素子33として用い、第2発光素子群33dを受光素子37として用いる例を示している。
【0086】
図11及び図12の構成の場合、受光素子37として用いる発光素子33での受光信号に基づいて、光量信号と基準信号を生成できる。図11の構成によれば、光量信号と基準信号を生成する、受光素子37として機能する発光素子33を順繰りに切り替えることができる。
【0087】
このように、第2の実施形態では、面発光レーザ装置1内の複数の発光素子33を複数の発光素子群に分類し、各発光素子群を発光素子33として用いるか、受光素子37として用いるかを順繰りに切り替える。これにより、面発光レーザ装置1内で同時に発光する発光素子33の数を減らすことができ、消費電極の削減が図れる。また、面発光レーザ装置1内の各発光素子33を偏りなく、発光素子33及び受光素子37として使用することができるため、距離計測の精度を低下させるおそれがない。特に、面発光レーザ装置1内の各発光素子33を偏りなく受光素子37として使用することで、光量信号と基準信号を精度よく検出できる。
【0088】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、レーザ安全対策を施すものである。
図13は第3の実施形態による測距モジュール2を模式的に説明する図である。測距モジュール2内の発光部5に取り付けられる出射光学系6が何らかの事情で脱落すると、発光部5からのレーザ光が出射光学系6を経由せずに外部に出射されてしまい、レーザ光の光強度がレーザ安全の基準を超えてしまうおそれがある。また、図13では図示を省略しているが、出射光学系6の他に、レーザ光を拡散させるためのディフューザが設けられる場合もあり、ディフューザが脱落してしまうと、やはりレーザ安全の基準を超える光強度のレーザ光が出射されてしまう。
【0089】
そこで、図14に示す電子機器40は、出射光学系6やディフューザの脱落を検出して、脱落が検出されると、所定の警告処理を行うものである。図14の電子機器40は、図7の構成に加えて、警告部61を備えている。
【0090】
図14の制御部54は、積分回路42からの光量信号をモニタする。発光部5からレーザ光を発光してから所定時間が経過しても、積分回路42から光量信号が出力されない場合、あるいは光量信号の信号レベルが所定の信号レベルよりも低い場合に、制御部54は、出射光学系6やディフューザが脱落したと判断し、警告部61に所定の信号を送信する。警告部61は、制御部54から所定の信号を受信すると、予め定めた警告処理を行う。例えば、電子機器40の表示部57に、出射光学系6等の脱落のおそれがある旨を表示したり、発光部5からの発光を強制的に停止して、修理依頼を促す表示を行ってもよい。
【0091】
このように、第3の実施形態では、面発光レーザ装置1内の複数の発光素子33のうち、一部の発光素子33を受光素子37として用いて、光量信号や距離計測のための基準信号を生成するだけでなく、発光部5の近傍に配置される出射光学系6やディフューザの脱落を検出する。これにより、別個に受光素子37を設けることなく、発光部5の近傍に配置される出射光学系6やディフューザの脱落を検出して、所定の警告処理を行うことができる。
【0092】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、発光部5から発光されるレーザ光の強度が大幅に増大した場合の安全対策を施したものである。
【0093】
図15は第4の実施形態による電子機器40の概略構成を示すブロック図である。図15の電子機器40は、図7の電子機器40の構成に加えて、電流リミッタ62を備えている。
【0094】
電流リミッタ62は、制御部54からの制御信号に基づいて、光源駆動部41内の電流源44を流れる電流が所定の電流量以上にならないように制限をかける。制御部54は、積分回路42からの光量信号に基づいて、発光部5から発光されるレーザ光の光強度が所定の閾値を超えたと判断すると、電流リミッタ62に発光素子33に流れる電流を制限するよう制御信号を送信する。電流リミッタ62は、光源駆動部41内の電流源44を流れる電流を制限する。あるいは、電流源44を流れる電流をゼロにして、発光部5がレーザ光を発光できないようにしてもよい。
【0095】
このように、第4の実施形態では、面発光レーザ装置1内の複数の発光素子33のうち、一部の発光素子33を受光素子37として用いて光量信号を検出し、光量信号により、レーザ光の発光強度が所定の閾値を超えたと判断した場合には、発光素子33に電流を流す電流源44から流れる電流を制限するため、何らかの事情でレーザ光の発光強度が異常に高くなったときに、迅速に発光強度を下げるたり、発光自体を停止させることができ、別個の受光素子37を設けることなく、面発光レーザ装置1を用いてレーザ光の安全対策を行うことができる。
【0096】
(電子機器の構成例)
図16および図17は、本開示による測距モジュール2を搭載する電子機器100の例を示している。図16は、電子機器100をz軸正方向側から視たときの構成を示している。一方、図17は、電子機器100をz軸負方向側から視たときの構成を示している。電子機器100は、例えば、略平板状であり、少なくともひとつの面(ここでは、z軸正方向側の面)に表示部1aを有する。表示部1aは、例えば、液晶、マイクロLED、有機エレクトロルミネッセンス方式によって画像を表示することができる。ただし、表示部1aにおける表示方式を限定するものではない。また、表示部1aは、タッチパネル、指紋センサを含んでいてもよい。
【0097】
電子機器100のz軸負方向側の面には、第1撮像部110、第2撮像部111、第1発光部112および第2発光部113が実装されている。第1撮像部110は、例えば、カラー画像の撮影が可能なカメラモジュールである。カメラモジュールは、例えば、レンズ系と、レンズ系によって集光された光の光電変換を行う撮像素子とを含む。第1発光部112は、例えば、第1撮像部110のフラッシュとして使用される光源である。第1発光部112として、例えば、白色LEDを使うことができる。ただし、第1発光部112として使われる光源の種類を限定するものではない。
【0098】
第2撮像部111は、例えば、ToF方式による測距が可能な撮像素子である。第2撮像部111は、例えば図7の第2受光部16に相当する。第2発光部113は、ToF方式による測距に使用することが可能で光源である。第2発光部113は、例えば、図7の発光部5に相当する。このように、図16及び図17に示す電子機器100は、図7の測距モジュール2を有する。電子機器100は、測距モジュール2から出力される距離画像に基づいて各種の処理を実行することができる。
【0099】
ここでは、本開示による電子機器がスマートフォンまたはタブレットである場合を説明した。ただし、本開示による電子機器は、例えば、ゲーム機、車載機器、PC、監視カメラなどその他の種類の装置であってもよい。
【0100】
本開示による測距モジュール2は、信号生成器と、縦続接続された複数のフリップフロップと、回路ブロックと、画素アレイと、信号処理部とを備えていてもよい。信号生成器は、クロック信号を生成するように構成されている。回路ブロックは、クロック信号に応じて第1信号を複数のフリップフロップのそれぞれのクロック端子に供給し、第2信号を複数のフリップフロップの初段フリップフロップの入力端子に供給するように構成されている。画素アレイは、複数のフリップフロップの異なる段から供給されたパルス信号によって駆動されるように構成された画素を含む。信号処理部は、画素アレイの画素において光電変換によって発生した電荷に基づいて距離画像を生成するように構成されている。
【0101】
本開示による電子機器は、信号生成器と、縦続接続された複数のフリップフロップと、回路ブロックと、画素アレイとを備えていてもよい。信号生成器は、クロック信号を生成するように構成されている。回路ブロックは、クロック信号に応じて第1信号を複数のフリップフロップのそれぞれのクロック端子に供給し、第2信号を複数のフリップフロップの初段フリップフロップの入力端子に供給するように構成されている。画素アレイは、複数のフリップフロップの異なる段から供給されたパルス信号によって駆動されるように構成された画素を含む。
【0102】
(移動体への応用例)
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0103】
図18は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0104】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図18に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0105】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0106】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0107】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0108】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0109】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0110】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0111】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0112】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0113】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図18の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0114】
図19は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0115】
図19では、車両12100は、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0116】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。撮像部12101及び12105で取得される前方の画像は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0117】
なお、図19には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0118】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0119】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0120】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0121】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0122】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、撮像部12031に適用され得る。具体的には、撮像部12031に、本開示による撮像素子を実装することができる。撮像部12031に、本開示に係る技術を適用することにより、電磁ノイズの発生を抑制しつつ、距離画像の解像度を向上させることができ、車両12100の機能性および安全性を高めることができる。
【0123】
なお、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)基板上に配置される複数の発光素子を有する面発光部を備え、
前記複数の発光素子の一部は、受光素子として用いられる、面発光レーザ装置。
(2)前記面発光部から発光された光を出射させる光学系を備え、
前記複数の発光素子は、
光を発光する第1素子と、
前記第1素子から発光された光が前記光学系で反射された光を受光する第2素子と、を含む、(1)に記載の面発光レーザ装置。
(3)前記第1素子には順バイアス電圧が供給され、前記第2素子には逆バイアス電圧が供給される、(2)に記載の面発光レーザ装置。
(4)前記第1素子のカソードと前記第2素子のカソードとは共通に接続され、前記第1素子のアノードには電源電圧が供給され、前記第2素子のアノードから受光量に応じた信号が出力される、(3)に記載の面発光レーザ装置。
(5)前記第1素子のカソード及び前記第2素子のカソードに接続され、前記第1素子に発光強度に応じた電流を流すか否かを切り替える光源駆動部を備える、(4)に記載の面発光レーザ装置。
(6)前記光源駆動部は、前記第2素子で受光された光の光強度を示す光量信号に基づいて、前記第1素子を発光させる際に前記第1素子に流れる電流を可変制御する、(5)に記載の面発光レーザ装置。
(7)前記第2素子のアノードと基準電圧ノードとの間に接続され、前記第2素子で受光された光の強度に応じた電圧信号を生成する電圧変換回路を備える、(2)乃至(6)のいずれか一項に記載の面発光レーザ装置。
(8)前記複数の発光素子は、前記基板上の互いに交差する第1方向及び第2方向に配置されており、
前記複数の発光素子のうち四隅の4つの発光素子は前記受光素子として用いられる、(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の面発光レーザ装置。
(9)前記複数の発光素子は、それぞれが2以上の前記発光素子を含む複数の発光素子群に分類されており、
前記複数の発光素子群のそれぞれは、時間をずらして順繰りに発光され、
発光していない前記発光素子群に含まれる前記発光素子は、前記受光素子して用いられる、(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の面発光レーザ装置。
(10)前記複数の発光素子群は、第1方向に配置された2以上の前記発光素子を含む前記発光素子群を、前記第1方向に交差する第2方向に複数列配置したものであり、
複数列の前記発光素子群のそれぞれは、時間をずらして列ごとに順繰りに発光され、
発光していない列の前記発光素子群に含まれる前記発光素子は、前記受光素子として用いられる、(9)に記載の面発光レーザ装置。
(11)前記複数の発光素子のうち一部の発光素子は、テスト用の発光素子であり、
前記テスト用の発光素子は、前記一部の発光素子以外の発光素子とは前記基板上の異なる場所に配置されており、
前記テスト用の発光素子は、前記受光素子として用いられる、(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の面発光レーザ装置。
(12)基板上に配置される複数の発光素子を有する面発光部と、
前記面発光部から発光された光を出射させるための光学系と、
前記複数の発光素子の光強度を制御する制御部と、を備え、
前記複数の発光素子は、光を発光する第1素子と、前記第1素子から発光された光が前記光学系で反射された光を受光する第2素子と、を有し、
前記制御部は、前記第2素子で受光された光の強度に基づいて、前記第1素子の光強度を制御する、電子機器。
(13)前記第2素子で受光された光の強度を示す光量信号を生成する光量信号生成回路を備え、
前記制御部は、前記光量信号に基づいて、前記第1素子の光強度を制御する、(12)に記載の電子機器。
(14)前記第1素子を発光させる際に前記第1素子に流す電流を可変制御する電流源を備え、
前記制御部は、前記光量信号に基づいて前記電流源の電流を調整する、(13)に記載の電子機器。
(15)前記第1素子を発光させるか否かを制御する光源駆動部を備え、
前記制御部は、前記光量信号が所定の基準量を超えた場合には、前記第1素子の発光を停止させる、(13)に記載の電子機器。
(16)前記第2素子で光が受光されたタイミングを示す基準信号を生成する基準信号生成回路を備える、(12)乃至(15)のいずれか一項に記載の電子機器。
(17)前記第1素子から発光された光が物体にて反射された反射光を受光する受光素子と、
前記受光素子から出力される受光信号と前記基準信号とに基づいて、前記受光素子が前記反射光を受光した時刻と、前記第1素子が光を発光した時刻との時間差を検出する時間計測部と、を備える、(16)に記載の電子機器。
(18)前記第1素子が光を受光してから所定時間が経過するまでに前記第2素子が光を受光したか否かを判定する判定部と、
前記判定部にて前記所定時間が経過するまでに前記第2素子が光を受光しなかったと判定されたときに、所定の警告処理を行う警告部と、を備える、(12)乃至(17)のいずれか一項に記載の電子機器。
(19)前記面発光部を有する第1半導体装置と、
前記制御部を有する第2半導体装置と、を備え、
前記光学系は、前記第1半導体装置の光出射面側に配置される、(12)乃至(18)のいずれか一項に記載の電子機器。
【0124】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 面発光レーザ装置、2 測距モジュール、3 発光装置、4 受光装置、5 発光部、6 出射光学系、7 受光部、8 入射光学系、9 バンドパスフィルタ、11 半導体チップ、12 半導体チップ、13 支持基板、14 光遮蔽部材、21 支持基板、22 放熱基板、23 LDD基板、24 LDチップ、25 接合部材、26 レンズ保持部、31 基板、32 積層膜、33 発光素子、34 アノード電極、35 カソード電極、36 パッド、37 受光素子、40 電子機器、41 光源駆動部、42 積分回路、43 波形整形回路、44 電流源、45 切替器、46 バッファ、51 第1波形整形回路、52 第2波形整形回路、53 時間測定部、54 制御部、55 操作部、56 記憶部、57 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19