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2023-145812人工タンパク質、Ras阻害剤及び抗がん剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145812
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】人工タンパク質、Ras阻害剤及び抗がん剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20231004BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20231004BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231004BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231004BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20231004BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20231004BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C07K14/00 ZNA
C12N15/63 Z
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K47/62
A61K47/65
A61K38/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137653
(22)【出願日】2020-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100118706
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 陽
(72)【発明者】
【氏名】本田 諒
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 幸博
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA20
4C084BA21
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084BA42
4C084BA44
4C084CA53
4C084DA27
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZC411
4C084ZC412
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA25
4H045GA26
(57)【要約】
【課題】がん細胞内に存在するRasの機能を阻害し、がん細胞の増殖を抑制することが可能な人工タンパク質、並びに、それを用いたRas阻害剤及び抗がん剤を提供する。
【解決手段】本発明の人工タンパク質は、がん細胞の増殖を抑制する人工タンパク質であって、分子構造中に細胞膜透過性を付与するための細胞膜透過性ペプチド部分と、Rasを阻害するためのRas結合配列部分とを含み、総アミノ酸残基数が300以下であることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん細胞の増殖を抑制する人工タンパク質であって、分子構造中に細胞膜透過性を付与するための細胞膜透過性ペプチド部分と、Rasを阻害するためのRas結合配列部分とを含み、総アミノ酸残基数が300以下であることを特徴とする人工タンパク質。
【請求項2】
前記Ras結合配列部分のアミノ酸残基数が30以上200以下であることを特徴とする請求項1に記載の人工タンパク質。
【請求項3】
前記細胞膜透過性ペプチド部分は配列番号1~12の少なくとも一つのアミノ酸配列を有し、前記Ras結合配列部分は配列番号13~23の少なくとも一つのアミノ酸配列又は該アミノ酸配列について1個、2個又は3個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加された改変アミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の人工タンパク質。
【請求項4】
前記Ras結合配列部分は配列番号19のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の人工タンパク質。
【請求項5】
前記細胞膜透過性ペプチド部分は配列番号2,4及び5のいずれかのアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の人工タンパク質。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の人工タンパク質を有効成分として含有するRas阻害剤。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の人工タンパク質を有効成分として含有する抗がん剤。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の人工タンパク質をコードする核酸配列。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の人工タンパク質をコードする核酸配列を含んでなる発現ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん遺伝子産物であるRasの機能を阻害し、がん細胞の増殖を抑制する人工タンパク質、並びにそれを用いたRas阻害剤及び抗がん剤に関する。
【背景技術】
【0002】
がん遺伝子産物のタンパク質であるRasは、すい臓がんや大腸がん等、多くのがんにおいて活性化して変異型Rasとなっていることが知られている。この変異型Rasは、下流シグナルであるMEK/ERKのシグナル経路及びAKT/mTORのシグナル経路を活性化し、がんの発生・維持・増殖を促進することが分かっている。このため、がん治療薬の開発手法として、変異型Rasを分子標的とし、その機能を阻害する物質の探求が世界中で行われている(例えば非特許文献1)。
【0003】
近年、変異型Rasの一種であるK-Ras G12Cを分子標的とした低分子化合物からなる阻害剤が開発され、臨床試験においても抗がん作用が確認されている(特許文献1)。この低分子化合物からなる阻害剤は、K-Ras G12Cに存在する変異したシステイン残基と共有結合を形成することにより、Rasの機能を阻害する。
【0004】
しかし、K-Ras G12Cは変異型Ras全体の約15%程度しかなく、その他の変異型Rasでは阻害剤の開発は困難を極めている。いくつかのRas阻害剤が提案されたが(特許文献2、非特許文献2など)、いずれも阻害活性は低く、いまだに臨床応用に至っていない。
【0005】
その理由として、次のことが考えられている。
1)Rasの分子表面は凹凸が少なく、低分子化合物が結合できるようなポケット(鍵穴)が存在しないため、低分子化合物ではRas阻害剤になり難い。
2)Rasは細胞内に局在するため、Ras阻害剤は細胞膜を透過できることが必須となる。しかしながら、抗体などのタンパク質は分子量が大きいため、細胞膜を透過し難い。
【0006】
すなわち、低分子化合物では細胞膜を通過し易いものの、細胞内に存在するRasの表面に吸着されず、Ras阻害剤として機能できないという問題がある。一方、タンパク質などの大きな分子はRasの表面に吸着され易いものの、細胞膜を透過し難いため、細胞内に存在するRasと出会うことができず、Ras阻害剤として機能できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2016‐532656号公報
【特許文献2】特許2016‐6014816号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ledford, H. (2015). "The ras renaissance." Nature 520(7547): 278.
【非特許文献2】Kessler, D., et al. (2019). "Drugging an undruggable pocket on KRAS." Proc Natl Acad Sci U S A 116(32): 15823-15829.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、がん細胞内に存在するRasの機能を阻害し、がん細胞の増殖を抑制することが可能な人工タンパク質、並びに、それを用いたRas阻害剤及び抗がん剤を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来の課題を解決するため、Rasの機能を阻害するペプチド鎖であるRas結合配列(RBS: Ras-binding sequence)に、細胞膜透過ペプチド(CPP: Cell permeable peptide)を結合させることにより、Ras阻害性と細胞膜透過性の両立を図った。そして、鋭意研究を行った結果、Rasの機能を阻害し、がん細胞の増殖を抑制することができる人工タンパク質を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の人工タンパク質は、がん細胞の増殖を抑制する人工タンパク質であって、分子構造中に細胞膜透過性を付与するための細胞膜透過性ペプチド部分と、Rasを阻害するためのRas結合配列部分とを含み、総アミノ酸残基数が300以下であることを特徴とする。
【0012】
本明細書においてRas結合配列とは、Rasに結合することによりRasの機能を阻害することが可能なペプチド鎖のことをいう。このような機能を有するRas結合配列として、好ましい条件としては、以下の1)~3)の要件が挙げられる。
1) Ras結合配列のアミノ酸残基数が200以下であること。アミノ酸残基数が200を超えると細胞膜を通り難くなり、細胞膜内に存在するRasへの結合が困難となるからである。さらに好ましいのは、Ras結合配列のアミノ酸残基数が180以下であることであり、最も好ましいのは160以下である。
2) Ras結合配列のアミノ酸残基数が30以上であること。アミノ酸残基数が30未満では、細胞膜を通り易くなるものの、大きさが小さくて、やはりRasへの結合が困難となるからである。さらに好ましいのは、Ras結合配列のアミノ酸残基数が50以上であることであり、最も好ましいのは80以上である。
3) Rasへの結合に関する解離定数が2μM以下であること。解離定数が2μM以下であれば、Rasへの結合による阻害作用が発揮しやすくなると考えられる。
【0013】
Ras結合配列としては、生体内でRasと相互作用するタンパク質に由来したRas結合ドメイン(RBD: Ras-binding domain)であることが好ましい。ここでRas結合ドメインとは、上記3つの条件に加えて、以下の2つの条件を満たすペプチド鎖をいう。
1) ユビキチンに類似した3次元立体構造を有すること。すなわち、5本のβシート構造と2本のαヘリックス構造または310 helix構造を有すること。ユビキチンに細胞膜透過性ペプチドを付加することにより、がんの細胞膜を透過することが知られている(Inomata, K., et al. (2009). "High-resolution multi-dimensional NMR spectroscopy of proteins in human cells." Nature 458(7234): 106.)。この事実から推定して、ユビキチンと類似する構造をもつペプチド鎖であれば、細胞膜透過性ペプチドの付加によって細胞膜を透過する可能性が高いと考えられる。なお、ユビキチン自体はRasとの結合性を有していない。
2) Rasのβ2周辺領域に結合する機能を有していること。この領域はRasがMEK/ERKやAKT/mTORなどの下流シグナルを活性化するのに必須の領域である。従って、このような領域に結合するペプチド鎖は、Rasへの結合による競合阻害作用が発揮しやすくなると考えられる。
【0014】
本発明の人工タンパク質を構成する細胞膜透過性ペプチド部分は、Ras結合配列部分をがんの細胞膜内に移動させるためのドラッグデリバリー機能を発揮する。さらに、本発明の人工タンパク質の総アミノ酸残基数は300以下に制限されているため、細胞膜透過性ペプチド部分のドラッグデリバリー機能によって、がんの細胞膜を容易に透過することができる。がん細胞膜内に移動した本発明の人工タンパク質は、Ras結合配列部分によってRasの活性を阻害する。従って、本発明の人工タンパク質によれば、がん細胞の増殖を抑制することができる。
【0015】
本発明の人工タンパク質において、細胞膜透過性ペプチド部分は配列番号1~12の少なくとも一つのアミノ酸配列を有し、Ras結合配列部分は配列番号13~23の少なくとも一つのアミノ酸配列を有することが好ましい。本発明者らは、細胞膜透過性ペプチド部分とRas結合配列部分とが、このようなアミノ酸配列を有する場合において、Rasの機能を阻害し、がん細胞の増殖を抑制することを見出している。なお、Ras結合配列部分のアミノ酸配列は、1個、2個又は3個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加された改変アミノ酸配列とされていてもよい。このような改変アミノ酸配列であっても、Rasの機能を阻害することは可能だからである。
【0016】
Ras結合配列部分が配列番号19のアミノ酸配列を有する場合は、特に優れたRasの機能を阻害し、がん細胞の増殖を抑制することができる。
【0017】
また、細胞膜透過性ペプチド部分は配列番号2,4及び5のいずれかのアミノ酸配列を有する場合は、特に優れたRasの機能を阻害し、がん細胞の増殖を抑制することができる。
【0018】
特に好ましい組み合わせは、細胞膜透過性ペプチド部分が配列番号2で示されるアミノ酸配列を有し、Ras結合配列部分が配列番号19のアミノ酸配列を有する場合である。本発明者らの試験結果によれば、このような組み合わせの人工タンパク質であれば、がん細胞に特異的にRas阻害性を発揮するのに対し、正常細胞におけるRas阻害性はほとんど発揮されない。このため、抗がん剤として用いた場合、副作用が少なくなるという利点がある。
【0019】
本発明の人工タンパク質における細胞膜透過性ペプチド部分とRas結合配列部分とは、リンカーを用いることなくペプチド結合によって直接連結されていてもよいし、リンカーとなる分子を介して結合されていてもよい。リンカーとしては特に限定はされないが、例えば、他のペプチドをリンカーとして利用し、ペプチド結合やジスルフィド結合によって連結させることができる。ペプチドをリンカーとする場合のアミノ酸残基の数は特に限定されないが、4~16個程度のものが好適である。また、リンカーとなる他のペプチドとしては、アミノ酸残基数が11程度のHAタグ配列を用いることもできる。HAタグ配列をリンカーとして用いれば、HAタグ配列に対する抗原抗体反応を利用して、本発明の人工タンパク質を細胞内や生体内で迅速に検出することができる。このため、例えば研究用のツールとして用いたりする場合に、極めて便利となる。また、HAタグ配列の代わりにGSSSGやEAAAKなど他のリンカーを使用してもよい。これらのリンカーであっても細胞膜透過性ペプチド部分による細胞透過性や、Ras結合配列部分によるRas阻害性に大きな影響を与えることはないからである。
【0020】
本発明の人工タンパク質のN末端アミノ酸側にHisタグ配列を結合させることも好ましい。Hisタグ配列を結合させればアフィニティークロマトグラフィーを用いて人工タンパク質を容易に精製できるという利点が得られる。ただし、Hisタグ配列を結合させなくても、イオン交換樹脂や逆相クロマトグラフィーを用いて本発明の人工タンパク質を精製することは可能である。
【0021】
本発明の人工タンパク質はRas関連シグナル経路を阻害するため、Ras阻害剤として用いることができる。また、本発明の人工タンパク質はRas関連シグナル経路を阻害するため、抗がん剤として用いることができる。
【0022】
さらに、本発明の発現ベクターは、本発明の人工タンパク質をコードする核酸配列を含んでなることを特徴とする。このような発現ベクターであれば、宿主細胞へ導入し、培養し、精製することにより、本発明の人工タンパク質を容易に合成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の実施に必要な事柄(例えばペプチドの化学合成法、細胞培養技法、ペプチドを成分とする薬学的組成物の調製に関するような一般的事項など)は、細胞工学、生理学、医学、薬学、有機化学、生化学、遺伝子工学等の分野において、従来技術に基づく当業者の設計事項の範囲として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の説明では、アミノ酸を1文字表記(但し配列表では3文字表記)で表す。
【0024】
本明細書において「がん細胞」とは「腫瘍細胞」と同義であり、がんを形成する細胞であって、典型的には周辺の正常組織とは無関係に異常に増殖を行うに至った細胞(所謂がん化した細胞)をいう。従って、特に限定しない限り、正常細胞ではなくがん細胞(腫瘍細胞)に区分される細胞であれば、細胞の起源や性状に関わりなくがん細胞と呼称される。上皮性腫瘍(扁平上皮がん、腺がん等)、非上皮性腫瘍(各種の肉腫、骨肉腫等)、各種の細胞腫( 神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫等)、リンパ腫、メラノーマ等を構成する細胞は、ここでいうがん細胞に包含される典型例である。
【0025】
また、本明細書において「アミノ酸残基」とは、特に言及する場合を除いて、ペプチド鎖のN末端アミノ酸及びC末端アミノ酸を包含する用語である。なお、本明細書中に記載されるアミノ酸配列は、常に左側がN末端側であり右側がC末端側である。
【0026】
本明細書において所定のアミノ酸配列に対して「改変アミノ酸配列」とは、当該所定のアミノ酸配列が有する機能(例えば抗がん活性や細胞膜透過性能)を損なうことなく、1個から数個(典型的には9個以下、好ましくは5個以下)のアミノ酸残基、例えば、1個、2個又は3個のアミノ酸残基が置換、欠失又は付加(挿入)されて形成されたアミノ酸配列をいう。例えば、1個、2個又は3個のアミノ酸残基が保守的に置換したいわゆる同類置換(conservative amino acid replacement)によって生じた配列(例えば塩基性アミノ酸残基が別の塩基性アミノ酸残基に置換した配列:例えばリジン残基とアルギニン残基との相互置換)、或いは、所定のアミノ酸配列について1個、2個又は3個のアミノ酸残基が付加(挿入)した若しくは欠失した配列等は、本明細書において改変アミノ酸配列に包含される典型例である。従って、本発明の人工タンパク質には、各配列番号のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列で構成される人工タンパク質に加え、各配列番号のアミノ酸配列において1個、2個又は3個のアミノ酸残基が置換(例えば、上記の同類置換)、欠失又は付加された改変アミノ酸配列であって、同様に抗がん活性を示すアミノ酸配列からなる人工タンパク質を包含する。
【0027】
本発明の人工タンパク質を構成する細胞膜透過性ペプチド部分のアミノ酸配列としては、従来発見されている細胞膜透過性ペプチド(CPP: Cell permeable peptide)のアミノ酸配列を採用することができる。例えば、配列番号1~12のアミノ酸配列が挙げられる(表1参照)。
【0028】
また、本発明の人工タンパク質を構成するRas結合配列部分のアミノ酸配列としては、従来発見されているRas結合配列のアミノ酸配列を採用することができる。例えば、配列番号13~23のアミノ酸配列が挙げられる(表2参照)。
【0029】
本発明の人工タンパク質は、これをコードする核酸配列を含んでなる発現ベクターを用いて合成することができる。発現ベクターの構築方法及び構築した発現ベクターの宿主細胞への導入方法等は、当該分野で従来から行われている方法をそのまま採用すればよく、かかる方法自体は特に本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
【0030】
また、本発明の人工タンパク質は、発現ベクターを用いることなく、無細胞タンパク質合成システム用の鋳型DNA(即ち抗腫瘍ペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む合成遺伝子断片)を構築し、ペプチド合成に必要な種々の化合物(ATP、RNA ポリメラーゼ、アミノ酸類等)を使用し、いわゆる無細胞タンパク質合成システムを採用して目的の人工タンパク質をin vitroで合成することができる。
【0031】
本発明の人工タンパク質をコードするヌクレオチド配列及び/又は該配列と相補的なヌクレオチド配列を含む一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドは、従来公知の方法によって容易に合成することができる。すなわち、設計したアミノ酸配列を構成する各アミノ酸残基に対応するコドンを選択することによって、人工タンパク質のアミノ酸配列に対応するヌクレオチド配列が容易に決定され、提供される。そして、ひとたびヌクレオチド配列が決定されれば、DNAシンセサイザー等を利用して、所望するヌクレオチド配列に対応するポリヌクレオチド(一本鎖)を容易に得ることができる。さらに得られた一本鎖DNAを鋳型として用い、PCR法などの酵素的合成手段を採用して目的の二本鎖DNAを得ることができる。また、ポリヌクレオチドは、DNAの形態であってもよく、RNA(mRNA等)の形態であってもよい。DNAは、二本鎖又は一本鎖で提供され得る。一本鎖で提供される場合は、コード鎖(センス鎖)であってもよく、それと相補的な配列の非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。
こうして得られるポリヌクレオチドは、種々の宿主細胞中で、あるいは無細胞タンパク質合成システムにて、抗がん剤としての人工タンパク質の生産のための組換え遺伝子(発現カセット)を構築するための材料として使用することができる。
【0032】
本発明の人工タンパク質は、がん細胞の増殖を抑制(或いは阻害)する用途の組成物(即ち、抗がん剤等の薬学的な抗がん組成物)の有効成分として好適に利用できる。なお、本発明の人工タンパク質は、抗がん剤としての活性を失わない限りにおいて塩の形態であってもよい。例えば、常法に従って通常使用されている無機酸又は有機酸を付加反応させることにより得られ得る人工タンパク質の酸付加塩を使用することができる。従って、本明細書及び特許請求の範囲に記載の「人工タンパク質」は、かかる塩形態のものも含む概念である。
【0033】
<実施例>
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
(人工タンパク質の合成)
Ras阻害剤として機能する人工タンパク質の候補として、細胞膜透過ペプチド(CPP)からなる部分と、Ras結合配列(RBS)からなる部分の両方を分子内に有する49種類の人工タンパク質を、図1に示すフローチャートに従って合成した。
まず、目的のCPPとRBSを有する人工タンパク質をコードする発現ベクターを合成する。次に、この発現ベクターを形質転換技術によりBL21大腸菌に組み込む。そして、LB培地で37℃で4時間の培養を行い、タンパク質の発現誘導を行った後、遠心分離を行い、大腸菌ペーストを得た。こうして得られた大腸菌ペーストをTBSで再懸濁し、超音波処理を行った後、再び遠心分離を行った。こうして得られた沈殿物を6M GdHCl/50mM Tris緩衝液(pH 8)中で再懸濁した後、遠心分離を行った。そして得られた上清液について7.5Mの濃度の尿素溶液中でIMAC(固定化金属アフィニティークロマトグラフイー)を行った後、RPC(逆相クロマトグラフィー)又は透析法で目的の人工タンパク質を精製した。
【0034】
図2に、細胞膜透過ペプチド部分とRas結合配列部分とを有する人工タンパク質の模式構造図を示す。図中のCPPは細胞膜透過ペプチド部分を示し、細胞膜透過性の機能付与を目的とする部分である。また、RBSはRas結合配列部分を示し、Rasへ結合する機能を付与することを目的とした部分である。さらにHAはHAタグ配列を示し、ヒトインフルエンザウイルスのヘマグルチニン(hemagglutinin)に由来するものを用いた。また、His6は6個の連続するヒスチジン残基からなるタグペプチドである。
【0035】
目的とする人工タンパク質をコードする核酸配列を大腸菌のベクターに組み込み、培地で培養し、精製して49種類の人工タンパク質を合成した。選択したCPPは表1に示す配列番号1~12のペプチドである。表1中のconstructの欄のA及びBは、HAタグ配列及びHisタグ配列部分も含めた人工タンパク質の模式構造図を示す。また、選択したRBSは表2に示す配列番号13~23のペプチドである。合成した49種類の人工タンパク質のアミノ酸配列を表3に、総アミノ酸残基数及びRas結合配列部分のアミノ酸残基数を表4に示す。また、それら49種類の人工タンパク質におけるCPPとRBSの組み合わせを表5に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
実施例において調製した人工タンパク質におけるRas結合配列は、配列番号13~23(表2参照)が用いられており、それらのアミノ酸残基数は33~156の範囲に入っている(表4参照)。また、これらのRas結合配列の解離定数は表6に示すように2μM以下である。
これらのRas結合配列のうち配列番号13~20のRas結合配列はRas結合ドメイン(RBD)であり、次の特性を有している。
・ユビキチンに類似した5本のβシート構造と2本のαヘリックス構造または310 helix構造を有している。
・Rasのβ2周辺領域に結合する機能を有している。
【0042】
【表6】
【0043】
(スクリーニング)
上記の方法によって合成した49種類の細胞膜透過性ペプチドをRas変異がん細胞株(MIA PaCa-2)に10μMの濃度で投与し、3時間処理後にRasシグナル下流分子であるAKTとERKのリン酸化の抑制をウェスタンブロッティング法によって調べた。結果を図3に示す。ここで、縦軸はコントロールと比較したERKとAKTのリン酸化程度を示しており、リン酸化が完全に抑制される場合0、抑制されない場合が2となるように相対化している。図3から、合成した49種類の細胞膜透過性ペプチドは、阻害効果が不明瞭であった72の人工タンパク質を除き、ERKとAKTのリン酸化を抑制することが分かった。ERKとAKTのリン酸化を特に強く抑制したのは、cRaf-v1(配列番号19)をRBDとして含む3種の人工タンパク質(Pen(配列番号2)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号54の人工タンパク質、GET(配列番号4)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号56の人工タンパク質及びMAP(配列番号5)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号57の人工タンパク質)であった。
【0044】
つぎに、ERKとAKTのリン酸化を特に強く抑制した上記3種の人工タンパク質のcRaf-v1(配列番号19)のRas結合表面に2カ所のアラニン変異(R88A/H89A、以下“AA”と略記)を導入した人工タンパク質を合成した。こうして得られたアラニン変異体(AA)の人工タンパク質と、アラニン変異がない野生型(WT)の人工タンパク質のRas阻害活性を比較した。その結果、図4に示すよう、アラニン変異させた3種の人工タンパク質では、リン酸化の抑制がキャンセルされることが分かった。以上の結果から、cRaf-v1(配列番号19)をRBDとして含む3種の人工タンパク質(Pen(配列番号2)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号54の人工タンパク質、GET(配列番号4)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号56の人工タンパク質、及びMAP(配列番号5)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号57の人工タンパク質)がRasに結合することで、ERKとAKTのリン酸化を抑制することが分かった。
また、アラニン変異させた上記3種の人工タンパク質のRas変異がん細胞株(MIA PaCa-2)に対する抗がん作用について調べた。0から20μMの濃度で投与し、6時間処理後にCell Counting Kit-8を用いて生存細胞数をカウントした。その結果、GET(配列番号4)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号56の人工タンパク質、及びMAP(配列番号5)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号57の人工タンパク質のAA体では非特異的な抗がん作用を示した(図5グラフ中及び右)。これに対して、Pen(配列番号2)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号54の人工タンパク質のAA体では、ほとんど抗がん作用を示さなかった(図5グラフ左)。
以上の結果から、CPPとしてPen(配列番号2)を含み、RBDとしてcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号57の人工タンパク質は、非特異的な細胞毒性をもたないRas阻害剤であり、Ras阻害に起因する特異的な抗がん作用を有することが分かった。
【0045】
(試験管内でのRas阻害性試験)
Pen(配列番号2)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号54の人工タンパク質と、活性型Ras及び不活性型Rasとの結合親和性を等温滴定カロリメトリで測定した。その結果、図6に示すように、活性型Rasでは解離定数は22 nMであったのに対して、不活性型Rasの解離定数は1.8μMとなった。以上の結果から、Pen(配列番号2)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号54の人工タンパク質は活性型Rasに特異的に結合することが分かった。
さらに、活性型Rasについてのプルダウンアッセイを行った。すなわち、まず大腸がん細胞株(HCT116)から抽出した活性型RasをcRaf-RBD-GSTでプルダウンしてから、抗Ras抗体を用いたウェスタンブロッティング法により検出した。その結果、図7に示すように、Pen(配列番号2)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号54の人工タンパク質は活性型Rasのプルダウンを10 nM程度の低濃度域でも競合阻害することが分かった。以上の結果から、配列番号54の人工タンパク質は試験管内において活性型Rasに数nMレベルの高親和性で結合することが分かった。
【0046】
(細胞内でのRas阻害性試験)
Pen(配列番号2)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号54の人工タンパク質について、細胞内でのRas阻害性を調べるために、以下に示す試験1~3を行った。
試験1(ウェスタンブロッティング法によるリン酸化の抑制試験)
ERKとAKTのリン酸化をウェスタンブロッティング法で調べた。その結果、10%血清存在下ではIC50=11.2μMでRasシグナル経路を抑制した(図8上)。さらに血清非存在下でEGFによって活性化されるRasシグナルをIC50=5.5μMで抑制した(図8下)。一方、Rasの上流にあるEGFRのリン酸化は抑制しなかった(図8下)。
試験2(スプリット・ルシフェラーゼアッセイ)
NanoBiTシステムを使ったスプリット・ルシフェラーゼアッセイを行った。このアッセイにおいては、まずLgBiTタグ付KRasとSmBiTタグ付cRaf-RBDを細胞内で発現させた(図9参照)。Ras 阻害剤がない場合には、KRasとcRaf-RBDは結合し、LgBiTとSmBiTから成る発光酵素も再構成され細胞が発光する。KRasとcRaf-RBD の結合が阻害された場合には、LgBiTとSmBiTも再構成されず、細胞は発光しない。このアッセイを用いて配列番号56の人工タンパク質のRas 競合阻害能を測定したところ、IC50=6.4μM であった。以上一連の実験によって、配列番号54の人工タンパク質は、細胞内において5~11μMの濃度域でRasを阻害することが示された。
試験3(マイクロアレイ解析)
マイクロアレイを用いた遺伝子発現の網羅的解析を行った。配列番号54の人工タンパク質を10 μM の濃度で3時間投与することによって871個の遺伝子発現が優位に変動し、うち768個がWT特異的に変動した遺伝子であった(図10参照)。これらの遺伝子をKyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)データーベースを用いて帰属した結果、そのほとんどがMAPK経路 (注:MEK/ERK 経路と同義)、がん関連シグナル経路、アポトーシス経路、ErbB 経路(注:EGFR 経路と同義)に帰属された。同様に、Gene Set Enrichment Analysis(GSEA)を用いて遺伝子発現を解析したところ、KRas関連シグナル経路が発現変動遺伝子セットとして上位に抽出された。以上のことから、配列番号54の人工タンパク質はRas関連シグナル経路を特異的に阻害することが示された。
【0047】
(抗がん作用の評価試験)
Pen(配列番号2)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号54の人工タンパク質について、Ras遺伝子変異をもつ膵臓がん細胞株(MIA PaCa-2)に対する抗がん作用の評価試験を行った。その結果、培養条件(培地組成や培養次元)によって異なるものの、IC50=4~12μM程度の抗がん作用が認められた(図11上のグラフ)。すなわち、RPMI1640培地と2次元培養条件において強い抗がん作用が認められた。EMEM培地と3次元培養条件では抗がん作用はやや減弱したものの認められた。
また、Annexin VとPI(propidium iodide)の2重染色によって3時間の低濃度処理(5μM)で初期アポトーシス像、高濃度処理(15μM)で後期アポトーシス像をとらえることができた(図11下のグラフ)。すなわち、低濃度処理(5μM)ではAnnexin V 陽性細胞が増加しており、初期アポトーシスが示された。また、高濃度処理(15μM)ではPI陽性細胞が増加しており、後期アポトーシスが示された。以上のことから、配列番号56の人工タンパク質は、がん細胞にアポトーシスを誘導することで抗がん作用を発揮することがわかった。
【0048】
・膵臓がん細胞株及び大腸がん細胞株に対する抗がん作用
次に、Pen(配列番号2)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号54の人工タンパク質について、他11種類の膵臓がん細胞株(PANC-1、BxPC-3)と大腸がん細胞株(SW48、SW480、LoVo、DLD1、OUMS-23、SW620、WiDr、Colon-26、HCT116)に対する抗がん作用を調べた。0から20μMのタンパク質濃度で6時間処理した後、Cell Counting Kit-8を用いて生存細胞数をカウントした。その結果、図12に示すように、Ras遺伝子変異があるがんに対して強い抗がん作用が認められたが、Ras遺伝子正常型がんには比較的弱い抗がん作用しか認められなかった。以上のことから、配列番号54の人工タンパク質はRas遺伝子変異型がんに特異的な抗がん作用を奏することが分かった。
【0049】
・市販の低分子Ras阻害剤と本発明の人工タンパク質(Pen-cRaf-v1)との比較
市場で入手可能な3種類の低分子Ras阻害剤(BI-2852、Kobe-0065、Rigosertib)と配列番号56の人工タンパク質の性能を比較した。はじめにNanoBiT アッセイで性能比較したところ、BI2852ではIC50=2.1μMとなり、Pen(配列番号2)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号54の人工タンパク質よりも強い競合阻害能を示した(図13左のグラフ)
しかし、Rasシグナル経路の抑制(ERKとAKTのリン酸化の抑制)と抗がん作用に関しては、Pen-cRaf-v1はBI2852よりも10倍ほど強い活性を示した(図13中及び右)。以上の結果から、Pen(配列番号2)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号54の人工タンパク質は、従来品よりも強くRasの機能を阻害することが示された。さらに、BI2852などの低分子Ras阻害剤に関してはマイクロアレイ等の網羅的解析はなされておらず、標的特異性は証明されていない。これに対して、Pen(配列番号2)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号54の人工タンパク質は、図10に示すように、マイクロアレイ解析によってRasシグナル経路のみを特異的に阻害することが証明された。以上のごとく、Pen(配列番号2)とcRaf-v1(配列番号19)を含む配列番号54の人工タンパク質は、上記従来品と比較して、1)強い標的阻害性と抗がん活性を有し、2)分子標的に対して特異的に阻害作用を奏することが分かった。
【0050】
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。また、人工タンパク質の総アミノ酸残機数の上限や下限は、前述した実施例で列挙された人工タンパク質の総アミノ酸残機数の範囲内で以下に制限され任意に設定しうる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】発現ベクターを組み込んだ大腸菌の培養による人工タンパク質合成のフローチャートである。
図2】細胞膜透過ペプチド部分とRas結合配列(RBS)部分とを有する人工タンパク質の模式構造図である。
図3】AKTとERKのリン酸化の抑制をウェスタンブロッティング法で調べた結果を示すグラフである。
図4】配列番号54、56及び57の人工タンパク質のウェスタンブロッティング法における電気泳動写真である。
図5】配列番号54、56及び57の人工タンパク質及びそれらのアラニン変異体(AA)のすい臓がん細胞株に対する抗がん作用を示すグラフである。
図6】配列番号54の人工タンパク質の活性型Ras及び不活性型Rasとの結合親和性を等温滴定カロリメトリで測定した結果を示すグラフである。
図7】配列番号54の人工タンパク質の活性型Rasについてのプルダウンアッセイ法を示す模式図、及び結果を示す電気泳動写真である。
図8】配列番号54の人工タンパク質のウェスタンブロッティング法によるリン酸化の抑制試験の結果を示すグラフである。
図9】配列番号54の人工タンパク質についてのスプリット・ルシフェラーゼアッセイの結果を示すグラフである。
図10】配列番号54の人工タンパク質のマイクロアレイを用いた遺伝子発現の解析結果を示すグラフである。
図11】配列番号54の人工タンパク質について、Ras遺伝子変異をもつ膵臓がん細胞株(Mia PACA-2)に対する抗がん作用の評価結果を示すグラフである。
図12】膵臓がん及び大腸がん細胞株の計11種類のがん細胞に対する配列番号54の人工タンパク質投与後の生存曲線を示すグラフである。
図13】NanoBiTアッセイとウェスタンブロッティング法による配列番号54の人工タンパク質と市販の低分子Ras阻害剤との性能比較を示すグラフである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の人工タンパク質は、がん遺伝子産物であるRasの機能を阻害し、がん細胞の増殖を抑制するため、この特性を利用したがん細胞の研究用ツールとして利用できる。また、Ras阻害剤や抗がん剤として利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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