(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145819
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】農業用ハウスカーテン資材
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20231004BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A01G9/14 S
A01G9/24 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052674
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 達朗
(72)【発明者】
【氏名】奥村 暢康
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029EB08
2B029EB16
2B029EC03
2B029EC09
2B029EC20
2B029RA07
(57)【要約】
【課題】積層構造ではない不織布単体で、耐摩耗性に優れる、農業用ハウスカーテン資材を提供する。
【解決手段】農業用ハウスカーテン資材であって、ポリエステル連続繊維不織布の内部および表面に、ウレタン樹脂が配置されている。配置の態様として、ウレタン樹脂は、ポリエステル連続繊維不織布の内部に含浸されるとともに、同不織布の表面にコーティングされる。ウレタン樹脂は、バインダ樹脂を含むことが好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル連続繊維不織布の内部および表面にウレタン樹脂が付着していることを特徴とする農業用ハウスカーテン資材。
【請求項2】
ポリエステル連続繊維不織布の内部および表面にウレタン樹脂と前記ウレタン樹脂以外の熱可塑性バインダ樹脂とが付着していることを特徴とする農業用ハウスカーテン資材。
【請求項3】
熱可塑性バインダ樹脂が、アクリル系バインダ樹脂であることを特徴とする請求項2記載の農業用ハウスカーテン資材。
【請求項4】
ウレタン樹脂が、ポリエステル系ポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の農業用ハウスカーテン資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農業用ハウスカーテン資材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、農業用ハウスカーテン資材として、通気性や透水性があり、かつ保温効果のある不織布が用いられている。この不織布製の資材を用いた農業用ハウスカーテンは、冬場の夜間の温度低下を抑えたり、夏場の日中の温度上昇を抑えたりするなど、ハウス内を作物の育成に適した気温に保つために用いられる。一方で、カーテンが不要な状況下では、これを折りたたんで収納する必要がある。このとき不織布同士が擦れるなどして摩耗しそれにより毛羽が発生する。このため、繰り返して収納を行うと強度を損なう。
【0003】
この対策として、たとえば特許文献1に記載された発明のように、不織布とフィルムとを貼り合わせることによって、両者の特性を生かしつつ耐摩耗性を向上させることができる。しかしながら、不織布にフィルムを積層させた構造であるために、不織布単体に比べて通気性や透水性が劣り、またコスト面からも不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、積層構造ではない不織布単体で、耐摩耗性に優れる、農業用ハウスカーテン資材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を達成するものであって、以下を要旨とする。
【0007】
すなわち、本発明の農業用ハウスカーテン資材は、ポリエステル連続繊維不織布の内部および表面にウレタン樹脂が付着していることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の農業用ハウスカーテン資材は、ポリエステル連続繊維不織布の内部および表面にウレタン樹脂と前記ウレタン樹脂以外の熱可塑性バインダ樹脂とが付着していることを特徴とする。
【0009】
本発明の農業用ハウスカーテン資材によれば、熱可塑性バインダ樹脂が、アクリル系バインダ樹脂であることが好適である。
【0010】
また、本発明の農業用ハウスカーテン資材によれば、ウレタン樹脂が、ポリエステル系ポリウレタン樹脂であることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の農業用ハウスカーテン資材によれば、ポリエステル連続繊維不織布の内部および表面にウレタン樹脂が付着しているため、不織布と他の材料との積層構造としなくても、所要の耐摩耗性を発揮することができる。また不織布とフィルムとの積層構造ではなく、不織布単体で構成されているため、通気性や透水性に優れ、またコスト面からも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の農業用ハウスカーテン資材を形成するためのポリエステル連続繊維不織布は、その構成繊維がポリエステル系重合体によって形成される。ポリエステル系重合体は、酸成分とアルコール成分とが合成されたものである。このうち、酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリン-2,6ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸や、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸や、これらのエステル類が挙げられる。アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール等のジオール化合物が挙げられる。そしてポリエステル系重合体としては、上述の酸成分とアルコール成分とから合成されるホモポリエステルないしは共重合ポリエステルが挙げられる。ポリエステル系重合体には、パラオキシ安息香酸、5-ソジュームスルフオイソフタール酸、ポリアルキレングリコール、ペンタエリスリトール、ビスフエノールAなどが添加あるいは共重合されていてもよい。また、ポリエステル系重合体としては、芳香族ポリエステルだけではなく、脂肪族ポリエステルを用いてもよい。
【0013】
さらに、ポリエステル系重合体には、本発明の目的を阻害しない範囲で、艶消し剤、顔料、防炎剤、消臭剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤などの任意の添加物が添加されていてもよい。
【0014】
ポリエステル連続繊維不織布を構成する繊維同士は、熱圧着部により熱接着固定されて一体化している。熱圧着部は、熱エンボス加工あるいは超音波融着加工によって散点状に形成される。個々の熱圧着部の形状は、円形、楕円形、菱形、三角形、織目形、井形、格子形など、任意の形状であってよい。なお、不織布の柔軟性を考慮して、熱圧着部は、連続線状であったり個々の熱圧着部が非熱圧着部で分断されずに繋がっている形状であったりするものではなく、個々の熱圧着部が非熱圧着部で分断され、上記のように散点状に存在している。個々の熱圧着部の面積は、0.1~3mm2であることが好ましい。また、不織布の面積に対する熱圧着部の面積比率は、10%以上40%以下であることが好ましい。10%未満では、優れた機械物性と通気性と剛性との三者のバランスをとりにくい。また、40%を超えると、しなやかさを失う傾向となり、農業用ハウスカーテンとして取扱いにくく展張し難い。
【0015】
ポリエステル連続繊維不織布を構成する繊維の断面は、上述した性能が満たされていれば特に限定するものではないが、断面形状が扁平であり、その長径と短径の比(長径/短径)が3以上であることが好ましい。ここにいう「扁平」とは、楕円形を含む概念である。この比が3未満であると、扁平度が低く光があたった時に乱反射が増え、結果として透光率が低下しやすくなる。一方で、この比が20を超えると、繊維断面の異形の度合いが高すぎて繊維の紡糸安定性が損なわれやすくなる。このことから、繊維断面の長径と短径の比は4~16がより好ましい。反対に繊維断面形状が例えば丸(中空含む)である場合は、扁平形状に比べ使用時に毛羽が立ちやすくなる。一方、扁平以外の異形断面である場合は、光があたった時に乱反射が増え、結果として透光率が低下しやすくなる。
【0016】
なお、上述のようにポリエステル系重合体に添加物を添加することに代えて、あるいはそれとともに、不織布に、本発明の目的を阻害しない範囲で、防炎剤、防汚剤、消臭剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、親水剤、帯電防止剤などの任意の剤が塗布等により付着していてもよい。
【0017】
本発明の農業用ハウスカーテン資材を構成するポリエステル連続繊維不織布は、その目付が30~80g/m2であることが好ましく、不織布の構成繊維の繊度が2~14デシテックスであることが好ましい。
【0018】
ポリエステル連続繊維不織布は、以下の方法により製造できる。まず、不織布を構成する連続繊維は、一般に使用されている紡糸口金を用いて溶融紡糸すればよい。また、不織布は、いわゆるスパンボンド法により製造することができる。たとえば、空気圧を利用して連続繊維束を引き取りながら延伸し,コロナ放電等の方法で静電気的に開繊し、移動する捕集面上に堆積することでウェブ化した後、熱エンボス加工を施すとよい。
【0019】
連続繊維束を引き取る際の牽引速度は、2000~5000m/分に設定することが好ましく、3000~5000m/分であることがさらに好ましい。牽引速度が2000m/分未満であると、糸条において、十分に分子配向が促進されず、得られる不織布の寸法安定性が劣りやすくなる。一方、牽引速度が5000m/分を超えると、紡糸安定性に劣りやすくなる。
【0020】
牽引細化した多数本の連続繊維は、公知の開繊器具にて開繊された後、スクリーンコンベアなどの移動式捕集面上に開繊、堆積され、それにより不織ウェブが形成される。その後、この不織ウェブが熱エンボス装置に通され、熱エンボス加工を施されて不織布となる。
【0021】
熱エンボス装置におけるエンボスロールの凸部の先端部の形状は、上述の熱圧接部の形状に対応したものが用いられる。
【0022】
本発明の農業用ハウスカーテン資材を形成するためのウレタン樹脂について説明する。
【0023】
ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とが重合されたものである。このうち、ポリイソシアネート成分としては、トリレンジイソアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのホモポリイソシアネートや、ポリオールと過剰量のポリイソシアネートが重合されたイソシアネート基末端プレポリマーが挙げられる。ポリオール成分としては、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールなどのホモポリオールや、ベースポリオール中にポリマー微粒子を分散させたポリマーポリオールなどがあげられる。ポリマーポリオールは、充填剤入りポリオールとしても知られており、ベースポリオール中に分散した微粒子を含む粘稠な流体である。使用される微粒子としては、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ尿素などが挙げられる。
【0024】
本発明では、ウレタン樹脂として、ポリエステル系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル系ポリウレタン樹脂は、前述のポリオール成分がポリエステル系ポリオールから構成され、耐摩耗性や機械的強度に優れることからより好適に用いることができる。また、農業用ハウスカーテン資材を構成する不織布がポリエステル系であることから、ポリエステル系ポリウレタン樹脂は、不織布における連続繊維との相溶性が良好であり、連続繊維に良好に付着するとともに、連続繊維同士の交点に付着することによって、不織布の機械的強度の向上にも寄与する。
【0025】
さらに、ウレタン樹脂には、本発明の目的を阻害しない範囲で、整泡剤、発泡剤、架橋剤、難燃剤、充填剤、着色剤、安定剤、離型剤などの任意の添加物が添加されていてもよい。
【0026】
不織布により形成された農業用ハウスカーテン資材の機械的物性や耐摩耗性をよりいっそう向上させるために、前述したウレタン樹脂とともに、ウレタン樹脂以外の熱可塑性バインダ樹脂を不織布に付着させることが好ましい。熱可塑性バインダ樹脂の種類としては、特に限定されないが、アクリル系、エステル系、EVA、ポバール等が挙げられる。中でも、機械的強度を効率よく向上させられ、かつ汎用性が高いことから、アクリル系バインダ樹脂が好ましい。
【0027】
ウレタン樹脂は、耐摩耗性が特に優れるが、耐候性に懸念があることから、ウレタン以外の熱可塑性バインダ樹脂と併用して不織布に付着させることにより、農業用ハウスカーテン資材の機械的物性や耐摩耗性が長期に亘っても良好に維持できる。これに対しウレタン以外の熱可塑性バインダ樹脂を含有しない場合は、不織ウェブの繊維同士を熱圧接のみにより一体化させて不織布を構成しただけでは、所要の機械的特性を得るために高温の圧接が必要となる場合があり、その結果、熱及び圧力による繊維へのダメージが大きくなって、不織布の耐久性を損なうことがあり得る。
【0028】
ウレタン樹脂は、ポリエステル連続繊維不織布の内部および表面に付着している。すなわち、ウレタン樹脂は、ポリエステル連続繊維不織布の内部に含浸されるとともに、同不織布の表面にも付着される。
【0029】
ポリエステル連続繊維不織布に対するウレタン樹脂の量すなわち農業用ハウスカーテン資材におけるウレタン樹脂の付着量は、1~10g/m2であることが好ましく、1~5g/m2であることがより好ましい。付着量を1g/m2以上とすることにより、所望の性能である耐摩耗性と機械的強度の向上を発揮することができる。反対に含有量を10g/m2以下とすることにより、不織布が有する繊維間の空隙が減少しすぎることなく、不織布本来の通気性や透水性、保水性を保持できる。
【0030】
さらに、上述のようにウレタン樹脂と熱可塑性バインダ樹脂とを併用して付着させることで、機械的強度および耐摩耗性がより一層向上し、かつ長期にわたって使用しても、農業用ハウスカーテン資材の強力の低下を抑制することができる。
【0031】
このために、ウレタン樹脂と熱可塑性バインダ樹脂とを付着させる場合において、ウレタン樹脂の付着量を上述の1~10g/m2としたうえで、熱可塑性バインダ樹脂の付着量は2~10g/m2であることが好ましく、2~8g/m2であることがより好ましい。付着量を2g/m2以上とすることにより、所望の性能である機械的強度の向上をより発揮することができる。反対に付着量を10g/m2以下とすることにより、不織布の柔軟性を維持し、取り扱い性が良好で、かつ不織布本来の通気性や透水性、保水性を保持できる農業用ハウスカーテン資材を得ることができる。また、ウレタン樹脂の付着量よりも熱可塑性バインダ樹脂の付着量を多くすることがよい。
【0032】
本発明の農業用ハウスカーテン資材を製造する際には、上述した熱エンボス加工により得られた不織布にウレタンエマルジョンを付与したうえで、同エマルジョンを乾燥させる。熱可塑性バインダ樹脂を用いる場合には、ウレタンエマルジョンに熱可塑性バインダ樹脂エマルジョンを混合したものを付与するとよい。それにより、ウレタン樹脂が、ポリエステル連続繊維不織布の内部の繊維間に含浸されるとともに、同不織布の表面にコーティングされる。不織布へのウレタンエマルジョンの付与の手法としては、含浸法、キスコートロール法、グラビアロールコーティング、ナイフコーティング、カーテンフローリングコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、プリント法などを挙げることができる。
【0033】
本発明の農業用ハウスカーテン資材は、ポリエステル連続繊維不織布の内部および表面にウレタン樹脂が付着しているため、ウレタン樹脂が付着しないものに比べて、ウレタン樹脂の弾性作用に基づく耐摩耗性を向上させることができる。そして、それによって、農業用ハウスカーテン資材における毛羽の発生を抑制することができる。このため、カーテンが不要な状況下において、これを折りたたんで収納するときに、不織布同士が擦れるなどしも、摩耗により毛羽が発生することを防止できる。したがって、繰り返して収納を行っても強度を損なうことがないという利点がある。
【実施例0034】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、各特性値の測定は次の方法により実施した。
【0035】
(1)目付(g/m2):10cm×10cmの試料片10点を作製し、標準状態における各試料片の質量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算して、不織布の目付(g/m2)とした。
【0036】
(2)単繊維繊度(デシテックス):繊度測定器(SEARCH社製、商品名「DENICON DC-21」)を使用し、試料長25mmで試料10本について測定し、その繊度の平均値を単糸繊度(デシテックス)とした。
【0037】
(3)引張強力(N/5cm幅)および伸度(%):幅5cm×長さ20cmの試験片を10個準備し、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、商品名「UTM-4-1-100」)を用い、JIS-L-1913に準じて、試験片の機械方向(MD)と幅方向(TD)とについて測定した。このときの条件は、つかみ間隔を10cm、引張速度を20cm/分とした。伸張-荷重曲線を描き、得られた伸長-荷重曲線から、求められる最大荷重時の強さ(N/5cm幅)を測定し、10点の平均値を引張強力とした。また、最大荷重時の伸びを測定し、この伸びから伸度を求めて、10点の平均値を伸度(%)とした。
【0038】
(4)耐摩耗性・学振法(級):幅2cm×長さ25cmの試験片を5個準備し、学振型染色物摩擦堅牢度試験機(大栄科学精機製作所社製、商品名「RT-300」)を用いて測定した。摩擦子には幅2cm×長さ5cmの試験片を用い試験片同士がエンボスロール凸加工面(E面)となるように装着した。このときの条件は、荷重200gf、摩擦回数200往復であった。不織布表面の毛羽立ち、摩耗状態を下記の基準で目視判定により評価し、試験片5点についての平均値を耐摩耗性(級)とした。
5級:毛羽、毛玉ともに発生なし
4級:毛羽少々、毛玉なし
3級:毛玉小(10mm未満)のみ発生
2級:毛玉大(10mm以上)2個以下
1級:毛玉大3個以上
【0039】
(5)耐摩耗性・テーバ法(級):中央に直径6mmの穴をあけた直径12cmの試験片を3個準備し、テーバ形摩耗試験機(大栄科学精機製作所社製)を用いて測定した。測定は、試験片の表裏面ともに行った(本発明においては、熱エンボス加工を施した不織布であるため、エンボスロール凸加工面(E面)と、フラットロール加工面(非E面)について行った。)このときの条件は、摩耗輪No.CS-10、荷重500gf、摩擦回数100回転とした。不織布表面の毛羽立ち、摩耗状態を下記の基準で目視判定により評価し、3点の平均値を耐摩耗性(級)とした。
5.0級:毛羽が見られない
4.5級:単糸毛羽が見られる
4.0級:撚りが部分的にみられる
3.5級:撚りが1/4周程度(太くはない)
3.0級:撚りが1/2周程度(太くはない)
2.5級:撚りが3/4周程度(太くはない)かまたは撚りが太いものが1/2周程度
2.0級:撚りが約1周程度
1.5級:撚りが約1周程度あり、周囲が激しく毛羽立っている
1.0級:撚りが太く、約1周程度あり、周囲が激しく毛羽立っている
【0040】
実施例1
繊維を構成するポリエステル系重合体として、融点が258℃、固有粘度が0.70のポリエチレンテレフタレートを使用した。このポリエチレンテレフタレートを、エクストルーダ型押出機を用いて溶融し、丸断面となるように溶融紡糸した。その紡糸糸条を冷却した後、エアーサッカーにより5000m/分の速度で引き取り、公知の開繊器にて開繊させ、移動する捕集面上に捕集・堆積させて、連続繊維からなる不織ウェブとした。連続繊維の単繊維繊度は4.8デシテックスであった。
【0041】
次いで、このウェブを、エンボスロールと表面平滑な金属ロールとを有する熱エンボス装置に通して熱処理を施すことで、目付が48g/m2であるポリエステル系長繊維不織布を得た。熱エンボス条件としては、両ロールの表面温度を200℃とした。エンボスロールとして、個々の面積が0.4mm2の織目の彫刻模様で、圧接点密度が64点/cm2、圧接面積率が37%のものを用いた。
【0042】
得られた連続繊維不織布に、ポリエステル系ポリウレタンエマルジョン(タナテックスケミカルズ社、「EDLAN HF」)10質量%と、アクリルバインダ(DIC社製、「ボンコートU-970E」)33質量%と、耐候剤(第一工業製薬社製、「ユニガードE-400」)5質量%と、100倍希釈した消泡剤2質量%と含んだ水溶液を含浸加工により、固形分の付着量が約7g/m2となるように付与した。その後、130℃、150℃、170℃で段階的に乾燥して、目付が55g/m2である耐摩耗性不織布にて構成された、農業用ハウスカーテン資材を得た。得られた農業ハウスカーテン資材におけるウレタン樹脂の付着量は1.4g/m2、アクリルバインダ樹脂の付着量は5.1/m2、耐候剤の付着量は0.5g/m2であった。
【0043】
実施例2
実施例1と比べて、水溶液におけるポリエステル系ポリウレタンエマルジョンの量を20質量%に変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして、不織布にて構成された、農業用ハウスカーテン資材を得た。得られた農業ハウスカーテン資材におけるウレタン樹脂の付着量は2.3g/m2、アクリルバインダ樹脂の付着量は4.3/m2、耐候剤の付着量は0.4g/m2であった。
【0044】
比較例1
実施例1と比べて、ポリエステル系ポリウレタンエマルジョンを用いなかったことを相違させた。そして、それ以外は実施例1と同様にして、不織布にて構成された、農業用ハウスカーテン資材を得た。得られた農業ハウスカーテン資材におけるウレタン樹脂の付着量は0g/m2、アクリルバインダ樹脂の付着量は6.4/m2、耐候剤の付着量は0.6g/m2であった。
【0045】
得られた実施例1、実施例2、比較例1の農業用ハウスカーテン資材の物性を表1に示す。
【0046】
【0047】
実施例1の農業用ハウスカーテン資材は、強力、伸度に優れ、耐摩耗性も学振法、テーバ法ともに優れていた。
【0048】
実施例2の農業用ハウスカーテン資材も、強力、伸度に優れ、耐摩耗性も学振法、テーバ法ともに優れていた。そして、実施例1と比較すると、耐摩耗性は、学振法、テーバ法ともに、ウレタンの含有量に比例して向上していた。
【0049】
比較例1の不織布は、耐摩耗性において、実施例1、2と比較すると学振法、テーバ法ともに劣っており、特にテーバ法のE面について劣っていた。