(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145831
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】植栽用コンクリートブロック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01G 24/10 20180101AFI20231004BHJP
A01G 24/46 20180101ALI20231004BHJP
【FI】
A01G24/10
A01G24/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052691
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000112749
【氏名又は名称】フジミ工研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】勝又 正治
(72)【発明者】
【氏名】中溝 英明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 顕彰
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AA05
2B022BA01
2B022BB02
(57)【要約】
【課題】 ポーラスコンクリートの空隙内に、保水材及び客土を確実に保持することにより、種子の状態から植物を生育させることができるとともに、保水材の保水効果を十分に発揮することにより、植物の発芽及び生育を良好なものとする。
【解決手段】 上面が開放するとともに下面が閉塞した筺状のブロック本体20と、ブロック本体20の内部に設けたポーラスコンクリート部30とを備える。ポーラスコンクリート部30には、下方から順に保水材層31、客土・保水材層32、播種層33を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開放するとともに下面が閉塞した筺状のブロック本体と、
前記ブロック本体の内部に設けたポーラスコンクリート部と、
を備え、
前記ポーラスコンクリート部には、下方から順に保水材層、客土・保水材層、播種層を設けた、
ことを特徴とする植栽用コンクリートブロック。
【請求項2】
前記保水材層及び客土・保水材層に用いる保水材は、ポーラスコンクリート部に充填する際には流動性を有し、所定時間経過後にゲル化する材料である、
ことを特徴とする請求項1に記載の植栽用コンクリートブロック。
【請求項3】
前記客土・保水材層には、肥料を混入する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の植栽用コンクリートブロック。
【請求項4】
上面が開放するとともに下面が閉塞した筺状のブロック本体内に、ポーラスコンクリート部を設け、
前記ポーラスコンクリート部の下部に位置する空隙内に保水材を充填することにより、保水材層を形成し、
前記保水材層の上部に位置するポーラスコンクリート部の空隙内に、混練した客土と保水材を流動化させて充填することにより、客土・保水材層を形成し、
前記客土・保水材層の上部であって、ブロック本体の開放面側に位置するポーラスコンクリート部の空隙内に、客土を充填して種子を蒔くとともに覆土を行うことにより、播種層を形成し、
前記保水材は、ポーラスコンクリート部に充填する際には流動性を有し、所定時間経過後にゲル化する素材である、
ことを特徴とする植栽用コンクリートブロックの製造方法。
【請求項5】
前記ブロック本体の内部にポーラスコンクリート部を設ける工程と、
前記ポーラスコンクリート部の空隙内に保水材層、客土・保水材層、播種層を設ける工程は、
製造工場又は施工現場のいずれかで実施することを特徴とする請求項4に記載の植栽用コンクリートブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽用コンクリートブロック及びその製造方法に関するものであり、詳しくは、ポーラスコンクリートに保水材等を充填した植栽用コンクリートブロック及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、擁壁等の法面を緑化するための技術として、スラリー状の土に種子を混入させて、擁壁等の表面に吹き付ける緑化工法が採用されていた。しかし、このような緑化工法は使用する装置が大がかりなものとなるばかりでなく、水分不足により種子が発芽しなかったり、発芽したとしても順調に生育しなかったり等、種々の不具合があった。そこで、法面緑化等に用いるための植栽用コンクリートブロックが種々開発されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された技術は、ポーラスコンクリートの硬化体であって、硬化体の連続空隙内に液状保水材を充填した植生コンクリート基盤に関するものである。この植生コンクリート基盤は、ポーラスコンクリート硬化体の全域にわたって保水材を充填している。また、ポーラスコンクリート硬化体には、種子、肥料及び土壌等を充填し、あるいは、ポーラスコンクリート硬化体の表面に種子、肥料等を混入した繊維補強客土を薄く吹き付けている。
【0004】
特許文献2に記載された技術は、保水材を有するポーラスコンクリート基盤と、当該ポーラスコンクリート基盤の上部に種子及び養生剤を有する客土層を設けたものである。すなわち、保水材を有するのはポーラスコンクリート基盤のみであり、客土層には保水材を含んでおらず、客土層はポーラスコンクリートの空隙内に充填したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-204556号公報
【特許文献2】特開平10-18293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、一般的に実施されているポーラスコンクリートを用いた緑化工法は、特許文献2に記載された技術のように、ポーラスコンクリートの上に土を敷設する方法が取られている。そして、このような緑化方法では、成長した芝生を敷設する方法が採用されている。また、ポーラスコンクリートを用いた緑化部材も存在するが、ポーラスコンクリート内に土が充填されていなかったり、保水材が混合されていなかったりするものが殆どである。このような態様の緑化部材では、ポーラスコンクリートの表面に直接種子を散布することができず、成長した芝生等を貼り付けることしかできない。
【0007】
そして、保水材を充填したポーラスコンクリートの表面に客土を敷設する方法では、客土の下に保水材を充填したポーラスコンクリートが存在する。このため、種子を散布する場合は、発芽から根が成長するまでの間に、植物の発芽及び生育に必要となる水分は、雨水を利用するか、あるいは雨が降らない場合には散水しなければならない。
【0008】
また、特許文献1に記載された技術は、ポーラスコンクリート硬化体の全体に保水材と客土との混合物を充填しているため、保水材と客土とが均一に充填されていない場合には、保水材の混合量が不足する箇所では保水効果が低下するおそれがある。
【0009】
さらに、客土種子吹付工により壁面を緑化する方法がある。この緑化方法は一般的に「泥吹き」と呼ばれており、コンクリートで擁壁を施工した後に、スラリー状の土に種子を混入させて、擁壁の表面に吹き付けて植生を行う方法である。擁壁の勾配がきつい場合には、擁壁面にラス網を敷きつめ、その上に客土種子の吹付工を行って壁面を緑化する。この方法は擁壁施工後に泥吹きを行うため、手間(工期)と施工機械などのコストがかかるとともに、施工機械を設置するための用地が必要となる。
【0010】
また、ブロックを階段状に施工して、ブロック背面に土を入れて植生する方法がある。ブロックは重量があるとともに、法面の奥行幅が必要となる。このため、施工場所に高さがある場合には、その奥行幅も大きくしなければならない。また、植生用の土砂入れの作業も発生するので、手間(工期)がかかるばかりでなく、コスト高となってしまう。
【0011】
また、ブロックの背面に土を入れて植生する方法がある。この方法では、植生はブロックの隙間からのみで、ブロック表面全体に植生を実施することはできないため、植生が不十分となる。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、ポーラスコンクリートの空隙内に、保水材及び客土を確実に保持することにより、種子の状態から植物を生育させることができるとともに、保水材の保水効果を十分に発揮することにより、植物の発芽及び生育を良好なものとする植栽用コンクリートブロック及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る植栽用コンクリートブロック及びその製造方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明に係る植栽用コンクリートブロックは、上面が開放するとともに下面が閉塞した筺状のブロック本体と、ブロック本体の内部に設けたポーラスコンクリート部とを備えている。そして、ポーラスコンクリート部には、下方から順に保水材層、客土・保水材層、播種層を設けたことを特徴とするものである。
【0014】
上述した植栽用コンクリートブロックにおいて、保水材層及び客土・保水材層に用いる保水材は、ポーラスコンクリート部に充填する際には流動性を有し、所定時間経過後にゲル化することが好ましい。
【0015】
上述した植栽用コンクリートブロックにおいて、客土・保水材層には、肥料を混入してもよい。
【0016】
本発明に係る植栽用コンクリートブロックの製造方法は、上面が開放するとともに下面が閉塞した筺状のブロック本体内に、ポーラスコンクリート部を設ける工程と、ポーラスコンクリート部の下部に位置する空隙内に保水材を充填することにより、保水材層を形成する工程と、保水材層の上部に位置するポーラスコンクリート部の空隙内に、混練した客土と保水材を流動化させて充填することにより、客土・保水材層を形成する工程と、客土・保水材層の上部であって、ブロック本体の開放面側に位置するポーラスコンクリート部の空隙内に、客土を充填して種子を蒔くとともに覆土を行うことにより、播種層を形成する工程とを含んでいる。
【0017】
そして、保水材は、ポーラスコンクリート部に充填する際には流動性を有し、所定時間経過後にゲル化する材料である。
【0018】
上述した植栽用コンクリートブロックの製造方法において、ブロック本体の内部にポーラスコンクリート部を設ける工程と、ポーラスコンクリート部の空隙内に保水材層、客土・保水材層、播種層を設ける工程は、製造工場又は施工現場のいずれかで実施することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る植栽用コンクリートブロック及びその製造方法では、ポーラスコンクリート部の最下部に保水材層を設け、保水材層の上部に客土・保水材層を設け、最上部に播種層を設けている。
【0020】
本発明に係る植栽用コンクリートブロック及びその製造方法は、このような構成を有することにより、種子の発芽や発育に必要な水分を十分に保水して供給することができる。また、混練した客土と保水材とを流動化させることで、ポーラスコンクリート部の空隙内に客土を満遍なく充填することができる。
【0021】
また、植物が発芽した後に、根がポーラスコンクリート部内に成長してからは、ポーラスコンクリート内の客土や保水材から養分や水分を吸収して成長することができる。
【0022】
また、ポーラスコンクリート部の空隙内や表面に客土があるため、緑化に使用する植物が一年草であったとしても、種子を新たに散布することなく、落ちた種子や飛来してきた種子により、季節ごとに緑化を繰り返すことができる。
【0023】
また、一般的には、コンクリートブロックを施工した後に表面に緑化を行うが、本発明に係る植栽用コンクリートブロック及びその製造方法によれば、コンクリートブロックと緑化部分が一体化している。このため、一般的な方法と同様にコンクリートブロック施工現場での緑化対策が可能であるばかりではなく、コンクリートブロック製造工場において緑化可能な状態とした植栽用コンクリートブロックを製造して出荷することができる。したがって、施工現場ではコンクリートブロックの施工のみとなり、現場における緑化施工の必要がなくなり、工期の短縮化や施工費用の低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る植栽用コンクリートブロックの斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係るポーラスコンクリート部の模式図。
【
図3】本発明の実施形態に係る植栽用コンクリートブロックの植栽状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明に係る植栽用コンクリートブロック及びその製造方法について説明する。
図1~
図3は植栽用コンクリートブロックを説明するもので、
図1は植栽用コンクリートブロックの斜視図、
図2はポーラスコンクリート部の模式図、
図3は植栽状態を示す模式図である。
【0026】
<植栽用コンクリートブロックの概要>
本発明に係る植栽用コンクリートブロック10は、
図1に示すように、筺状(箱状)のブロック本体20と、ブロック本体20の内部に設けたポーラスコンクリート部30とを備えている。そして、
図2に示すように、ポーラスコンクリート部30は、下側から順に、保水材層31、客土・保水材層32、播種層33を設けてある。
【0027】
<ブロック本体>
ブロック本体20は、例えば、一辺が1m程度、高さが30cm程度の断面四角形状の部材であり、上面が開放するとともに下面が閉塞した筺状(箱状)となっている。すなわち、ブロック本体20は、底面が閉塞された筺状(箱状)であり、
図1において、底部21と、底部21から上方へ向かって突出した枠状部22と、枠状部22で囲まれた凹部23とを有している。凹部23の深さは、例えば3~10cm(標準は5cm程度)となっており、この凹部23内にポーラスコンクリート部30を設けるようになっている。すなわち、ポーラスコンクリート部30の厚みは、3~10cm(標準は5cm程度)となっている。
【0028】
なお、
図1に示す例では、断面四角形状のブロック本体20となっているが、ブロック本体20の形状は、断面四角形状に限られず、擁壁等を構築することができる形状であれば、他の形状であってもよい。
【0029】
<ポーラスコンクリート部>
ポーラスコンクリート部30を形成するポーラスコンクリートは、骨材をセメントペーストで固めたものである。骨材としては、例えば、5号砕石(13~20mm)、6号砕石(5~13mm)、7号砕石(2.5~5mm)を用いる。骨材とセメントと水の配合割合は、例えば、骨材2235g、セメント410g、水125gとする。なお、各材料の分量は、作成するポーラスコンクリートの量に合わせて調整する。
【0030】
ポーラスコンクリートを作成するには、セメントと水とを均一に混ぜ合わせた後に砕石を投入し、さらに均一に混ぜ合わせる。本発明では、作成したポーラスコンクリートをブロック本体20の凹部23内に充填し、締固めた後に表面を均して、所定時間養生する。締固め方法、養生時間は、本発明で使用するポーラスコンクリートの量等に合わせて適宜調整する。
【0031】
上述したように、ポーラスコンクリート部30の厚みは3~10cm程度であり、標準的には5cm程度である。ポーラスコンクリート部30の厚みが3cmを下回ると、客土・保水材層32(流動化土)の深さが不足するため十分な水分量を保つことができない。一方、ポーラスコンクリート部30の厚みが10cmを上回ると、草本だけではなく、木本が根付くおそれがあり、木本が根付いてしまった場合には、ブロック本体20が破壊されるおそれがある。本実施形態では、ポーラスコンクリート部30の厚みを、上述した好ましい範囲内で標準的な5cm程度としている。
【0032】
ポーラスコンクリート部30を形成するポーラスコンクリートの空隙率は、10~50%程度とし、好ましくは25~30%程度とする。ポーラスコンクリートの空隙率が10%を下回ると、空隙内に流動化土が入り込まないとともに、植物が根を張ることができない。一方、ポーラスコンクリートの空隙率が50%を上回ると、骨材同士の密着が剥がれて、ポーラスコンクリートが崩れてしまう。このため、本実施形態では、ポーラスコンクリートの空隙率を、上述した好ましい範囲内で標準的な25~30%程度としている。
【0033】
<保水材>
保水材は、高分子吸水ポリマーを使用する。本実施形態で使用する高分子吸水ポリマーは、粉状であっても、液状であってもよい。保水材の添加量は、使用する保水材の種類によって異なるが、客土・保水材層32において、例えば、客土の2%程度である。一般的な高分子ポリマーからなる保水材は、水を吸収するとゲル化する。
【0034】
本発明では、ポーラスコンクリート部30に充填する際には流動性を有し、所定時間経過後にゲル化する保水材を使用することにより、ポーラスコンクリート部30の空隙内へ容易に充填することができ、ゲル化した後は、ポーラスコンクリート部30から流れ落ちることがない。
【0035】
<客土>
客土は、砂、シルト、粘土等を混合したものであり、客土として適切な土質の土壌を使用することができる。植栽用コンクリートブロック10のポーラスコンクリート部30に対して、施工現場で保水材及び客土を充填する場合には、施工現場で客土を採取してもよい。客土として現地地盤の表層部分の土を用いることにより、既に種子が混入している場合があり、現地由来の種子により植生を行うことが可能となる。
【0036】
客土・保水材層32を形成するには、予め客土を流動化させておくことが好ましい。すなわち、客土の含水量に応じて適宜量の水分を加えて流動化土を作成する。この際、肥料を混入してもよい。そして、作成した流動化土に保水材を均一に混ぜ合わせて、ポーラスコンクリート部30の空隙内に流し込むことにより、客土・保水材層32を形成することができる。
【0037】
<保水材層>
保水材層31は、ポーラスコンクリート部30の最下部に設ける層である。保水材層31を作成するには、ポーラスコンクリート部30の上面から粉末状又は液状の保水材を流し込めばよい。ポーラスコンクリート部30には空隙が存在するため、保水材は空隙を伝わってポーラスコンクリート部30の下部にまで達する。粉末状の保水材を用いた場合には、保水材がポーラスコンクリート部30の下部に達した後に水を注入することにより、保水材層31を形成することができる。保水材層31の厚みは、植栽用コンクリートブロック10を設置する場所の環境(天候等)や、使用する種子の種類等に応じて適宜設定する。
【0038】
<客土・保水材層>
客土・保水材層32は、保水材層31の上部に設ける層であり、本発明に係る植栽用コンクリートブロック10において、一番厚い層である。客土・保水材層32を形成するには、上述したように、客土の含水量に応じて適宜量の水分を加えて流動化土を作成し、作成した流動化土に保水材を均一に混ぜ合わせて、ポーラスコンクリート部30の空隙内に流し込めばよい。上述したように、流動化土に肥料を混入してもよい。
【0039】
<播種層>
播種層33は、ポーラスコンクリート部30の上面に近い部分に設ける層である。この播種層33は、予め、種子と客土を混ぜ合わせた流動化土を作成し、この種子を含んだ流動化土をポーラスコンクリート部30の空隙内に充填してもよいし、客土・保水材層32の上部に種子を蒔いて薄く覆土を行い、播種層33を形成してもよい。また、播種層33には、種子と客土の他に保水材を含ませることが好ましい。
【0040】
<製造方法の手順>
本発明の植栽用コンクリートブロック10を製造するには、まず初めに、上面が開放するとともに下面が閉塞した筺状のブロック本体20内に、ポーラスコンクリート部30を設ける。そして、ポーラスコンクリート部30に対して、保水材層31と、客土・保水材層32と、播種層33を形成する。
【0041】
各層の形成について順を追って説明すると、ポーラスコンクリート部30の下部に位置する空隙内に保水材を充填することにより、保水材層31を形成し、保水材層31の上部に位置するポーラスコンクリート部30の空隙内に、混練した客土と保水材を流動化させて充填することにより、客土・保水材層32を形成し、客土・保水材層32の上部であって、ブロック本体20の開放面側に位置するポーラスコンクリート部30の空隙内に、種子を混入した客土を充填することにより、播種層33を形成する。
【0042】
なお、播種層33に種子を混入した客土を充填するのではなく、ブロック本体20の開放面側に位置するポーラスコンクリート部30の空隙内に、客土(保水材を含んでいる場合もある)を充填しておき、施工現場等においてポーラスコンクリート部30の上面に種子を蒔いて薄く覆土を行い、播種層33を形成してもよい。
【0043】
また、ブロック本体20の内部にポーラスコンクリート部30を設ける工程と、ポーラスコンクリート部30の空隙内に保水材層31、客土・保水材層32、播種層33を設ける工程は、製造工場において実施してもよいし、施工現場において実施してもよい。
【0044】
<施工場所>
本発明の植栽用コンクリートブロック10は、例えば、道路の法面、擁護壁、屋上等、どのような場所に施工してもよい。また、施工する壁面は、施工場所に合致した法面勾配となっているが、本発明の植栽用コンクリートブロック10は垂直面であっても施工することができる。本発明の植栽用コンクリートブロック10は、ポーラスコンクリート部30の空隙内において保水材がゲル化するため、植栽用コンクリートブロック10を傾けたとしても、保水材層31、客土・保水材層32、播種層33に充填した保水材、客土、水分等が流れ出ることはない。
【0045】
<植栽状態>
図3に示すように、本発明の植栽用コンクリートブロック10において、種子が発芽すると、ポーラスコンクリート部30の下部へ向かって根が伸びるとともに、ポーラスコンクリート部30から上方へ向かって植物40の茎及び葉が成長する。植物40が多年草の場合には、客土及び保水材の存在により、十分な水分が供給されるため、継続的に植栽を維持することができる。また、植物40が一年草の場合には、種子がポーラスコンクリート部30の表面に落下し、保水材の存在により、十分な水分が供給されるため、継続的に植栽を維持することができる。さらに、他所から植物の種子が飛来して、ポーラスコンクリート部30の表面に落下した場合には、保水材の存在により、十分な水分が供給されるため、当該種子が発芽して植物40が生育するので、継続的に植栽を維持することができる。
【0046】
<従来技術と比較した有利な効果>
先行技術文献として例示した特許文献1には、ポーラスコンクリート硬化体の連続空隙内に液状保水材を充填した植生コンクリート基盤であって、連続空隙内に種子、肥料及び土壌等を充填することが記載されている。また、実験体として、四角状に形成した枠の中に充填材と植栽する植物の種子が充填されたポーラスコンクリートの硬化体を埋設することが記載されている。しかし、四角状に形成した枠を使用しているのは実験体を形成するためであり、実際に使用する植生コンクリート基盤ではこのような態様を採用していない。
【0047】
本発明に係る植栽用コンクリートブロック10は、上面が開放するとともに下面(底面)が閉塞した筺状(箱状)のブロック本体20の内部にポーラスコンクリート部30を設けたものである。このため、本発明に係る植栽用コンクリートブロック10を工場で生産して施工現場に輸送する際や、施工現場において移動させる際に、ブロック本体20の内部からポーラスコンクリート部30が抜け落ちることがない。また、ポーラスコンクリート部30の空隙内に充填した保水材に保水した水が、ブロック本体20の底面から漏れ出すこともない。
【0048】
また、本発明に係る植栽用コンクリートブロック10のブロック本体20は、下面(底面)が閉塞した筺状(箱状)となっており、ブロック本体20の内部に設けるポーラスコンクリート部30の厚みは、3~10cm程度(標準的には5cm程度)である。このような構造であるため、植物はポーラスコンクリート部30の内部に根を張ることができるが、下面(底面)が存在するため、地盤中に根が伸びてゆくことはない。したがって、草本は生育することができるが、木本は生育することが難しい。
【0049】
一方、特許文献1に記載された植生コンクリート基盤では、ポーラスコンクリート硬化体から地盤中に根が伸びてゆくようになっているため、木本も生育することができる。そして、ポーラスコンクリート硬化体を堤防等の法面に設置した場合には、木本が生育することにより、法面内に伸びた根が堤防等を破壊するおそれがある。なお、堤防等の法面内に植物の根が入り込むと、法面浸食を防ぐことができる。この点、本発明に係る植栽用コンクリートブロック10では、ブロック本体20が法面浸食を防いでいるため、法面浸食のおそれはない。
【0050】
さらに、本発明に係る植栽用コンクリートブロック10は、ポーラスコンクリート部30の最下部に保水材のみを充填した保水材層31を設けている。この点、特許文献1には、「種子、肥料及び土壌等をポーラスコンクリートの硬化体の連続空隙内に併せて充填する」と記載されている。このような態様では、特に、夏場に気温が上昇した場合に土壌が乾燥して保水材の水分を吸収してしまう。そして、さらに乾燥が進むと、硬化体の連続空隙内に充填した土壌内の水分がすべて蒸発してしまう可能性がある。したがって、「発明の効果」の欄でも述べたように、本発明に係る植栽用コンクリートブロック10は、保水材層31を設けることにより、種子の発芽及び生育に必要である十分な水分を蓄積して補給することができるという、本発明に特有の優れた作用効果を奏する。
【0051】
ところで、法面等に植栽された植物に供給される水分は、雨水が主要な供給源であるが、これに加えて、結露水も水分の供給源となる。露は、空気中の湿度の変化に伴って空気中に溶存できる水分量の限界値が変化する性質により発生するものである。例えば、種子が発芽する前には空気中の水分が露となって地面に吸収され、さらに、発芽して成長する過程では地表部に葉や茎が存在するため結露が生じやすく、
図3に示すように、本発明に係る植栽用コンクリートブロック10において植物が生育した状態では、露が植物の葉や茎を伝わって客土・保水材層32に浸透し、さらに保水材層31に蓄積される。
【0052】
このように、本発明では、ポーラスコンクリート部30の最下部に保水材層31が存在するため、雨水や露を効率的に取り込んで保水(貯水)することができる。本発明の発明者らの実験によれば、保水材により、2週間~1ヶ月程度、種子の発芽及び植物の生育に十分な水分量が保たれることが解っている。
【符号の説明】
【0053】
10 植栽用コンクリートブロック
20 ブロック本体
21 底部
22 枠状部
23 凹部
30 ポーラスコンクリート部
31 保水材層
32 客土・保水材層
33 播種層
40 植物