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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145842
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 7/02 20060101AFI20231004BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20231004BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231004BHJP
   B05B 7/14 20060101ALI20231004BHJP
   B05B 7/04 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B05C7/02
C09D5/03
C09D201/00
B05B7/14
B05B7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052706
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】冨田 直岐
(72)【発明者】
【氏名】明渡 健吾
(72)【発明者】
【氏名】安東 尚紀
【テーマコード(参考)】
4F033
4F042
4J038
【Fターム(参考)】
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB05
4F033QB12Y
4F033QB18
4F033QD02
4F033QD11
4F033QH02
4F042AA03
4F042AB03
4F042AB05
4F042BA08
4F042BA10
4F042BA25
4F042CB03
4F042CB27
4F042EA03
4F042EA09
4F042EC04
4J038DB001
4J038KA08
4J038NA01
4J038PA02
4J038PA06
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】塗膜中に粉体充填材を良好に分布させることができる塗装装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の塗装装置1は、管体Pの内側から内面PSに向かって粉体塗料PPを気体圧送によって噴射する粉体塗料ノズル21を備えた粉体塗料噴射装置2と、管体Pの内側から内面PSに向かって粉体充填材PFを気体圧送によって噴射する粉体充填材ノズル31を備えた粉体充填材噴射装置3とを備え、粉体塗料ノズル21および粉体充填材ノズル31はそれぞれ、粉体塗料ノズル21および粉体充填材ノズル31のそれぞれから噴射される粉体塗料PPおよび粉体充填材PFの、内面PSに到達するまでの軌跡が互いに重ならないように、管体Pの管軸X方向で互いに離間して配置され、管体Pの管軸X周り方向で互いに異なる方向に粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを噴射するように配置されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体の内面を塗装するための塗装装置であって、
前記塗装装置が、
前記管体の内側から前記内面に向かって粉体塗料を気体圧送によって噴射する粉体塗料ノズルを備えた粉体塗料噴射装置と、
前記管体の内側から前記内面に向かって粉体充填材を気体圧送によって噴射する粉体充填材ノズルを備えた粉体充填材噴射装置とを備え、
前記粉体塗料ノズルおよび前記粉体充填材ノズルはそれぞれ、前記粉体塗料ノズルおよび前記粉体充填材ノズルのそれぞれから噴射される前記粉体塗料および前記粉体充填材の、前記内面に到達するまでの軌跡が互いに重ならないように、前記管体の管軸方向で互いに離間して配置され、前記管体の管軸周り方向で互いに異なる方向に粉体塗料および粉体充填材を噴射するように配置される、
塗装装置。
【請求項2】
前記粉体充填材ノズルの噴射方向が、前記管体の前記内面に対して垂直方向から前記粉体塗料ノズル側に傾斜している、
請求項1記載の塗装装置。
【請求項3】
前記粉体塗料噴射装置が、複数の粉体塗料ノズルを備え、
前記複数の粉体塗料ノズルがともに、前記管軸方向で略同一の位置に配置され、
前記複数の粉体塗料ノズルはそれぞれ、前記複数の粉体塗料ノズルのそれぞれから噴射される前記粉体塗料の、前記内面に到達するまでの軌跡が互いに重ならないように、前記管体の管軸周り方向で互いに異なる方向に前記粉体塗料を噴射するように配置される、
請求項1または2記載の塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水などの流体を流すために、たとえばダクタイル鋳鉄管などの管体が用いられる。管体の内面は、その内面を保護するために、粉体塗料を用いて塗装が施される。管体の内面の塗装においては、コストダウンを目的に、たとえば特許文献1や特許文献2に開示されるように、比較的高価な粉体塗料の使用量を減らして、比較的安価な珪砂などの粉体充填材を塗料に混合して塗装が行なわれることがある。
【0003】
たとえば、特許文献1の塗装装置では、空気圧送によって粉体塗料を管体の内面に噴射した後、珪砂を管体の内面に重力で落下させて、塗料に珪砂が混在した塗膜を形成している。特許文献2の塗装装置では、特許文献1の塗装装置と同じように、空気圧送によって粉体塗料を管体の内面に噴射した後、特許文献1の塗装装置とは違って、空気圧送によって珪砂を管体の内面に噴射することで、塗料に珪砂が混在した塗膜を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-8260号公報
【特許文献2】特開2017-176938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗料に珪砂を混合する場合、管体の内面の面内での保護性能の均一化のために、塗膜の面内で珪砂を均一に分散させるとともに、塗膜の厚さ方向の内側に珪砂を配置する必要がある。ところが、特許文献1の塗装装置では、珪砂を重力により落下させているので、管体の内面の面内方向への分散が不均一となってしまい、塗膜の面内に均一に珪砂を分布させることが難しい。一方、特許文献2の塗装装置では、空気圧送によって珪砂を噴射しているので、管体の内面の面内の広範囲に亘って珪砂を比較的均一に分散させることができる。ところが、空気圧送によって粉体塗料および珪砂の両方を噴射すると、塗膜の厚さ方向の内側だけでなく塗膜表面側や管体の内面側にも珪砂が分布してしまい、塗膜平滑性が悪化したり、ピンホールが発生したりする場合がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、塗膜中に粉体充填材を良好に分布させることができる塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の塗装装置は、管体の内面を塗装するための塗装装置であって、前記塗装装置が、前記管体の内側から前記内面に向かって粉体塗料を気体圧送によって噴射する粉体塗料ノズルを備えた粉体塗料噴射装置と、前記管体の内側から前記内面に向かって粉体充填材を気体圧送によって噴射する粉体充填材ノズルを備えた粉体充填材噴射装置とを備え、前記粉体塗料ノズルおよび前記粉体充填材ノズルはそれぞれ、前記粉体塗料ノズルおよび前記粉体充填材ノズルのそれぞれから噴射される前記粉体塗料および前記粉体充填材の、前記内面に到達するまでの軌跡が互いに重ならないように、前記管体の管軸方向で互いに離間して配置され、前記管体の管軸周り方向で互いに異なる方向に粉体塗料および粉体充填材を噴射するように配置されることを特徴とする。
【0008】
前記粉体充填材ノズルの噴射方向が、前記管体の前記内面に対して垂直方向から前記粉体塗料ノズル側に傾斜していることが好ましい。
【0009】
前記粉体塗料噴射装置が、複数の粉体塗料ノズルを備え、前記複数の粉体塗料ノズルがともに、前記管軸方向で略同一の位置に配置され、前記複数の粉体塗料ノズルはそれぞれ、前記複数の粉体塗料ノズルのそれぞれから噴射される前記粉体塗料の、前記内面に到達するまでの軌跡が互いに重ならないように、前記管体の管軸周り方向で互いに異なる方向に前記粉体塗料を噴射するように配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗膜中に粉体充填材を良好に分布させることができる塗装装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る塗装装置を示す概略図である。
図2図1の塗装装置の粉体塗料ノズルおよび粉体充填材ノズルの部分を拡大して示す拡大図である。
図3図1の塗装装置のIII-III線断面図である。
図4】粉体充填材が混在した塗膜の断面を模式的に示す断面図であり、(a)は、粉体充填材が塗膜の厚さ方向の内側に分布した状態を示しており、(b)は、粉体充填材が、塗膜の厚さ方向の内側だけでなく、塗膜の表面側や管体の内面側にも分布した状態を示している。
図5】管体の内面上で粉体塗料および粉体充填材が噴射された領域を模式的に示す、管体の内面の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る塗装装置を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまで一例にすぎず、本発明の塗装装置は、以下の実施形態に限定されることはない。
【0013】
本実施形態の塗装装置1は、図1に示されるように、管体Pの内面PSを塗装するための装置である。塗装装置1が適用される管体Pは、管体Pの中心軸である管軸Xの延びる方向(以下では、管軸X方向という)に沿って一端Paから他端Pbまで延び、内部に空間を有する筒状(図示された例では、略円筒状)に形成される部材である。管体Pは、図示された例では、管軸X方向の一端Pa側に設けられた受口P1と、管軸X方向の他端Pb側に設けられた挿口P2と、受口P1と挿口P2との間で管軸X方向に沿って延びる直管部P3とを備えている。管体Pは、受口P1に他の管体Pの挿口P2が差し込まれることで、他の管体Pと連結されるように構成されている。塗装装置1が適用可能な管体Pとしては、特に限定されることはなく、公知のダクタイル鋳鉄管などが例示される。ただし、塗装装置1は、管軸X方向に沿って延びて筒状に形成された管体であれば、ダクタイル鋳鉄管に限定されることはなく、鋼管などの他の種類の管体にも適用可能である。
【0014】
塗装装置1は、粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを管体Pの内面PSに噴射し、塗料と充填材とが混在した塗膜CF(図4(a)参照)を管体Pの内面PS上に形成するために使用される。塗装装置1は、図1に示されるように、粉体塗料PPを噴射する粉体塗料噴射装置2と、粉体充填材PFを噴射する粉体充填材噴射装置3とを備えている(以下では、まとめて噴射装置2、3ともいう)。塗装装置1は、本実施形態では、粉体塗料噴射装置2の後述する粉体塗料ノズル21、および粉体充填材噴射装置3の後述する粉体充填材ノズル31(以下では、まとめてノズル21、31ともいう)に対して管体Pを管軸X周りに相対回転させる回転装置4と、管体Pに対してノズル21、31を管軸X方向に沿って相対移動させる搬送装置5と、管体Pを加熱する加熱装置(図示せず)とをさらに備えている。塗装装置1は、加熱装置により管体Pを加熱するとともに、回転装置4により管体Pを管軸X周りに相対回転させ、搬送装置5によりノズル21、31を管軸X方向に相対移動させながら、噴射装置2、3により管体Pの内面PSに向けて粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを噴射することにより、管体Pの内面PSを粉体塗料PPおよび粉体充填材PFにより塗装することができる。
【0015】
回転装置4は、管体Pを支持するとともに、ノズル21、31に対して管体Pを管軸X周りに相対回転させる。回転装置4は、本実施形態では、図1に示されるように、管体Pを管軸X周りに回転させる回転ローラ41と、回転ローラ41を回転可能に支持する支持台42と、回転ローラ41を回転させるモーターなどの駆動装置(図示せず)とを備えている。回転装置4は、噴射装置2、3により管体Pの内面PSに向けて粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを噴射する間、管体Pを管軸X周りで所定範囲(たとえば全周)に亘って回転させる。それによって、塗装装置1は、管体Pの内面PSの内周面に沿った所定範囲(たとえば全周)に亘って粉体塗料PPおよび粉体充填材PFにより塗装することができる。
【0016】
回転装置4による管体Pの回転方向は、特に限定されることはなく、管軸X周りの一方向のみであってもよいし、管軸X周りの一方向の逆の他方向のみであってもよいし、一方向および他方向の両方であってもよい。また、回転装置4により管体Pを回転させる速度は、特に限定されることはなく、必要とする塗装膜厚などに応じて適宜設定することができる。回転装置4は、本実施形態では管体Pを管軸X周りに回転させるように構成されているが、少なくともノズル21、31に対して管体Pを管軸X周りに相対回転させることができればよく、ノズル21、31を管軸X周りに回転するように構成されていてもよいし、管体Pおよびノズル21、31を互いに異なる速度で管軸X周りに回転するように構成されていてもよい。また、回転装置4は、本実施形態では塗装装置1に設けられているが、塗装装置1とは別に設けられていてもよい。
【0017】
搬送装置5は、管体Pに対してノズル21、31を管軸X方向に沿って相対移動させる。搬送装置5は、本実施形態では、図1に示されるように、噴射装置2、3の両方の全体を管体Pに対して管軸X方向に沿って移動させることで、ノズル21、31を管軸X方向に沿って移動させるように構成されている。搬送装置5は、噴射装置2、3により管体Pの内面PSに向けて粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを噴射する間、ノズル21、31を管軸X方向に沿って所定範囲(たとえば全長)に亘って移動させる。それによって、塗装装置1は、管体Pの内面PSの管軸X方向に沿った所定範囲(たとえば全長)に亘って粉体塗料PPおよび粉体充填材PFにより塗装することができる。
【0018】
搬送装置5によるノズル21、31の移動方向は、特に限定されることはなく、管軸X方向の一方向(管体Pの一端Paから他端Pbに向かう方向)のみであってもよいし、一方向とは逆の他方向(管体Pの他端Pbから一端Paに向かう方向)のみであってもよいし、一方向および他方向の両方であってもよい。また、搬送装置5によりノズル21、31を移動させる速度は、特に限定されることはなく、必要とする塗装膜厚などに応じて適宜設定することができる。搬送装置5は、本実施形態では噴射装置2、3の両方の全体をまとめて管軸X方向に沿って移動させるように構成されているが、少なくともノズル21、31を管軸X方向に沿って管体Pに対して相対移動させることができればよく、たとえば噴射装置2、3を別々に移動させるように構成されていてもよいし、噴射装置2、3の全体ではなく、ノズル21、31の全体をまとめて、またはノズル21、31のそれぞれを別個に管軸X方向に沿って移動させるように構成されていてもよいし、管体Pを管軸X方向に沿って移動させるように構成されていてもよい。また、搬送装置5は、本実施形態では塗装装置1に設けられているが、塗装装置1とは別に設けられていてもよい。
【0019】
加熱装置(図示せず)は、管体Pを所定の温度で加熱する。管体Pの加熱温度は、粉体塗料PPが管体Pの内面PSに直接または間接的に接触または付着した際に、管体Pから伝達される熱を通じて、粉体塗料PPが硬化する温度(たとえば、150℃以上)に設定される。加熱装置は、管体Pが回転装置4に搭載される前に管体Pを予め加熱するように構成されていてもよいし、管体Pが回転装置4に搭載された後に管体Pを加熱するように構成されていてもよい。加熱装置は、特に限定されることはなく、ガス炉や電気炉などにより具現化することができる。なお、加熱装置は、本実施形態では塗装装置1に設けられているが、塗装装置1とは別に設けられていてもよい。
【0020】
粉体塗料噴射装置2は、管体Pの内面PSに向かって粉体塗料PPを噴射する。粉体塗料噴射装置2は、図1に示されるように、管体Pの内側から管体Pの内面PSに向かって粉体塗料PPを気体圧送(空気、希ガスなどによる圧送)によって噴射する粉体塗料ノズル21を備えている。粉体塗料噴射装置2は、管体Pの内面PSに向かって粉体塗料PPを噴射するために、少なくとも粉体塗料ノズル21を備えていればよく、その他の構成は特に限定されない。本実施形態では、粉体塗料噴射装置2は、粉体塗料ノズル21に粉体塗料PPを供給するランスなどの粉体塗料供給管22と、粉体塗料PPを収容し、粉体塗料供給管22を介して粉体塗料ノズル21に粉体塗料PPを供給する粉体塗料供給装置23とをさらに備えている。本実施形態では、粉体塗料ノズル21は、粉体塗料供給装置23から圧縮気体(空気、希ガスなど)とともに供給される粉体塗料PPを噴射するように構成されている。
【0021】
粉体塗料ノズル21は、管体Pの内面PSに向かって粉体塗料PPを噴射するように構成されていればよく、その噴射形態は特に限定されない。本実施形態では、粉体塗料ノズル21は、図2に示されるように、管軸X方向に対して第1の噴射角度θ1の方向に向かって粉体塗料PPを噴射するように構成されている。なお、第1の噴射角度θ1は、粉体塗料ノズル21により噴射される粉体塗料PPの広がりの略中心の角度である。粉体塗料ノズル21の第1の噴射角度θ1は、管体Pの内面PSに向かって粉体塗料PPを噴射するという目的のために、少なくとも管軸X方向に対して傾斜した角度であればよく、特に限定されることはない。本実施形態では、第1の噴射角度θ1は、管軸X方向に対して略垂直の角度に設定されている。第1の噴射角度θ1が管軸X方向に対して略垂直の角度に設定されることで、粉体塗料PPは、粉体塗料ノズル21から管体Pの内面PSまで最短距離で到達するので、粉体塗料ノズル21の構成から想定される粉体塗料PPの軌跡(後述する第1の広がり角度α1内の領域)から外れて浮遊することが抑制される。なお、ここでいう管軸X方向に対して略垂直な角度とは、管軸X方向に対して80°~100°の範囲の角度を意味する。第1の噴射角度θ1は、粉体塗料PPを最短距離で管体Pの内面PSに到達させるという観点から、85°~95°の範囲内であることがさらに好ましく、88°~92°の範囲内であることがよりさらに好ましい。
【0022】
また、粉体塗料ノズル21は、図2に示されるように、管軸X方向において、第1の噴射角度θ1を中心として第1の広がり角度α1で粉体塗料PPを噴射するように構成されている。粉体塗料PPは、管軸X方向において第1の広がり角度α1で広がって噴射されることで、管体Pの内面PSの管軸X方向の所定範囲に亘って分散される。これにより、管体Pの内面PSの面内における塗装膜厚の均一性を確保しやすくなる。第1の広がり角度α1は、特に限定されることはないが、粉体塗料PPの分散性を高めるとともに、粉体塗料ノズル21の構成から想定される粉体塗料PPの軌跡(第1の広がり角度α1内の領域)から外れて粉体塗料PPが浮遊することを抑制するという観点から、たとえば100°(±10°の範囲内)とすることができる。
【0023】
粉体塗料ノズル21は、図3に示されるように、管軸X周り方向において、粉体塗料PPの噴射方向(粉体塗料PPの広がりの略中心の方向)を中心として第2の広がり角度α2で粉体塗料PPを噴射するように構成されている。粉体塗料PPは、管軸X周り方向において第2の広がり角度α2で広がって噴射されることで、管体Pの内面PSの管軸X周り方向の所定範囲に亘って分散される。これにより、管体Pの内面PSの面内における塗装膜厚の均一性を確保しやすくなる。第2の広がり角度α2は、特に限定されることはないが、粉体塗料PPの分散性を高めるとともに、粉体塗料ノズル21の構成から想定される粉体塗料PPの軌跡(第2の広がり角度α2内の領域)から外れて粉体塗料PPが浮遊することを抑制するという観点から、または後述するように粉体塗料ノズル21を複数備える場合に互いの粉体塗料PPの軌跡が重なるのを抑制するという観点から、たとえば15°(±10°の範囲内)とすることができる。なお、粉体塗料ノズル21の管軸X周り方向における噴射方向は、水平方向よりも鉛直方向の下側に向いていることが好ましい。
【0024】
粉体塗料噴射装置2は、図2および図3に示されるように、複数の粉体塗料ノズル21、21を備えていてもよい(図2では、紙面奥行き方向に配置された粉体塗料ノズルの図示を省略している)。粉体塗料噴射装置2は、複数の粉体塗料ノズル21、21を備えることで、より広範囲に亘って粉体塗料PPを噴射することができる。本実施形態では、複数の粉体塗料ノズル21、21はともに、管軸X方向で略同一の位置に配置されている。そして、複数の粉体塗料ノズル21、21はそれぞれ、複数の粉体塗料ノズル21、21のそれぞれから噴射される粉体塗料PPの、管体Pの内面PSに到達するまでの軌跡(第2の広がり角度α2内の領域)が互いに重ならないように、管体Pの管軸X周り方向で互いに異なる方向に粉体塗料PPを噴射するように配置されている。これにより、異なる粉体塗料ノズル21、21から噴射された粉体塗料PP同士が互いに干渉することが抑制され、粉体塗料ノズル21の構成から想定される粉体塗料PPの軌跡(第2の広がり角度α2内の領域)から外れて粉体塗料PPが浮遊することが抑制される。さらに、粉体塗料ノズル21を複数備えることで、それぞれの第2の広がり角度α2を小さくして粉体塗料PPの浮遊を抑制しつつも、広範囲に亘って粉体塗料PPを分散させることができる。なお、粉体塗料ノズル21の数は、特に限定されることはなく、図示されたように2つであってもよいし、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0025】
管軸X周り方向における(管軸X方向に沿って見たときの)複数の粉体塗料ノズル21、21の噴射方向の間の第1の噴射方向間角度θ3(図3参照)は、それぞれの粉体塗料ノズル21、21の管軸X周り方向の第2の広がり角度α2を考慮して、それぞれの粉体塗料PPの軌跡が互いに重ならないように設定される。なお、第1の噴射方向間角度θ3は、2つの粉体塗料ノズル21、21のそれぞれから噴射される粉体塗料PPの広がりの略中心間の角度である。粉体塗料ノズル21、21の間の第1の噴射方向間角度θ3は、両方の粉体塗料PPの軌跡の重なりを抑制することができればよく、特に限定されることはないが、両方の粉体塗料PPの軌跡の重なりをより確実に抑制するとともに、異なる粉体塗料ノズル21、21から同時に噴射された粉体塗料PPが堆積される、管体Pの内面PS上の領域(図5の粉体塗料噴射領域A、Aを参照)同士の間隔を狭めて、塗膜の連続性を高めるという観点から、たとえば40°(±10°の範囲内)とすることができる。
【0026】
ここで、粉体塗料とは、粉末状の塗料のことを意味し、より具体的には、塗料中に有機溶剤や水を含まないか、ほとんど含まない粉末状の塗装材料を意味する。ここで使用される粉体塗料PPとしては、特に限定されることはなく、たとえば、管体Pの内面PSに直接または間接的に接触または付着したあとに、熱により硬化する性質を有する公知のエポキシ樹脂粉体塗料を用いることができる。たとえば、エポキシ樹脂粉体塗料は、常温で固形のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂用の硬化剤、さらに必要に応じて各種顔料、添加剤などを含有する。粉体塗料PPの大きさは、特に限定されることはなく、噴射時に必要な分散性や必要な塗装膜厚などに応じて適宜設定することができる。
【0027】
エポキシ樹脂としては、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルアミン型樹脂、複素環式エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂などが挙げられる。その中でも、安全性の観点から、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンから合成されるビスフェノールF型エポキシ樹脂が好適に採用される。
【0028】
硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させる性質を有していれば、特に限定されることはないが、アミン系化合物、アミド系化合物、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、ヒドラジド系化合物、酸無水物、フェノール樹脂およびその誘導体などが挙げられる。その中でも、塗膜の防食性、可撓性、密着性および強度の観点から、アニリンを主体とした変性芳香族アミンアダクト、エチレンジアミンとベンゾニトリルを主体としたイミダゾール・イミダゾリン化合物、ヒドラジンと二塩基を主体としたヒドラジド、トリメリット酸とエチレングリコールを主体とした酸無水物が好適に採用される。
【0029】
顔料のうち着色顔料としては、たとえばカーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、黄色酸化鉄などが挙げられる。顔料のうち体質顔料としては、たとえば硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0030】
粉体充填材噴射装置3は、管体Pの内面PSに向かって粉体充填材PFを噴射する。粉体充填材噴射装置3は、図1に示されるように、管体Pの内側から管体Pの内面PSに向かって粉体充填材PFを気体圧送(空気、希ガスなどによる圧送)によって噴射する粉体充填材ノズル31を備えている。粉体充填材噴射装置3は、管体Pの内面PSに向かって粉体充填材PFを噴射するために、少なくとも粉体充填材ノズル31を備えていればよく、その他の構成は特に限定されない。本実施形態では、粉体充填材噴射装置3は、粉体充填材ノズル31に粉体充填材PFを供給するランスなどの粉体充填材供給管32と、粉体充填材PFを収容し、粉体充填材供給管32を介して粉体充填材ノズル31に粉体充填材PFを供給する粉体充填材供給装置33とをさらに備えている。本実施形態では、粉体充填材ノズル31は、粉体充填材供給装置33から圧縮気体(空気、希ガスなど)とともに送られてくる粉体充填材PFを噴射するように構成されている。
【0031】
粉体充填材ノズル31は、管体Pの内面PSに向かって粉体充填材PFを噴射するように構成されていればよく、その噴射形態は特に限定されない。本実施形態では、粉体充填材ノズル31は、図2に示されるように、管軸X方向に対して第2の噴射角度θ2の方向に向かって粉体充填材PFを噴射するように構成されている。なお、第2の噴射角度θ2は、粉体充填材ノズル31により噴射される粉体充填材PFの広がりの略中心の角度である。粉体充填材ノズル31の第2の噴射角度θ2は、管体Pの内面PSに向かって粉体充填材PFを噴射するという目的のために、少なくとも管軸X方向に対して傾斜した角度であればよく、特に限定されることはない。本実施形態では、第2の噴射角度θ2は、図2に示されるように、粉体充填材ノズル31の噴射方向が、管体Pの内面PSに対して垂直方向から粉体塗料ノズル21側に傾斜するように設定されている。粉体充填材PFは、管体Pの内面PSに対して垂直な方向から傾斜して噴射されることで、管体Pの内面PSに対して垂直に噴射される場合と比べて、管軸X方向でより広範囲に分散される。これにより、管体Pの内面PSの面内で局所的に粉体充填材PFが堆積されることが抑制されるので、形成される塗装膜厚の均一性を向上させることができ、塗膜表面に凹凸が形成されることを抑制することができる。第2の噴射角度θ2は、特に限定されることはないが、粉体充填材PFの分散性を高めるとともに、粉体充填材ノズル31の構成から想定される粉体充填材PFの軌跡(後述する第3の広がり角度α3内の領域)から外れて粉体充填材PFが浮遊することを抑制するという観点から、45°(±10°の範囲内)とすることができる。
【0032】
また、粉体充填材ノズル31は、図2に示されるように、管軸X方向において、第2の噴射角度θ2を中心として第3の広がり角度α3で粉体充填材PFを噴射するように構成されている。粉体充填材PFは、管軸X方向において第3の広がり角度α3で広がって噴射されることで、管体Pの内面PSの管軸X方向の所定範囲に亘って分散される。これにより、管体Pの内面PSの面内における塗装膜厚の均一性を確保しやすくなるとともに、塗膜表面に凹凸が形成されることを抑制することができる。第3の広がり角度α3は、特に限定されることはないが、粉体充填材PFの分散性を高めるとともに、粉体充填材ノズル31の構成から想定される粉体充填材PFの軌跡(第3の広がり角度α3内の領域)から外れて粉体充填材PFが浮遊することを抑制するという観点から、たとえば30°(±10°の範囲内)とすることができる。
【0033】
粉体充填材ノズル31は、図3に示されるように、管軸X周り方向において、粉体充填材PFの噴射方向(粉体充填材PFの広がりの略中心の方向)を中心として第4の広がり角度α4で粉体充填材PFを噴射するように構成されている。粉体充填材PFは、管軸X周り方向において第4の広がり角度α4で広がって噴射されることで、管体Pの内面PSの管軸X周り方向の所定範囲に亘って分散される。これにより、管体Pの内面PSの面内における塗装膜厚の均一性を確保しやすくなるとともに、塗膜表面に凹凸が形成されることを抑制することができる。第4の広がり角度α4は、特に限定されることはないが、粉体充填材PFの分散性を高めるとともに、粉体充填材ノズル31の構成から想定される粉体充填材PFの軌跡(第4の広がり角度α4内の領域)から外れて粉体充填材PFが浮遊することを抑制するという観点から、たとえば60°(±10°の範囲内)とすることができる。なお、粉体充填材ノズル31の管軸X周り方向における噴射方向は、水平方向よりも鉛直方向の下側に向いていることが好ましい。
【0034】
ここで、粉体充填材とは、粉末状の充填材のことを意味し、充填材とは、塗膜中に塗料とともに混在させることが可能な材料を意味する。充填材としては、塗膜中に塗料とともに混在しても、塗料のみの塗膜と比べて保護機能の低下を抑制できる材料であることが好ましい。粉体充填材PFとしては、たとえば珪砂、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ガラスパウダー、タルク、溶融シリカなどの公知の無機骨材を用いることができる。特に、粉体充填材PFとしては、比較的安価で、取り扱いが容易な珪砂が好適に用いられる。珪砂としては、特に限定されることはなく、市販の珪砂を用いることができるが、たとえば、モード径約0.1~0.2mm程度、かつ粒度分布が0.05mm~0.3mmの範囲にあるもので一般に7号珪砂、8号珪砂として市販されているものを用いることが好ましい。
【0035】
粉体塗料噴射装置2および粉体充填材噴射装置3はそれぞれ、上述したように、気体圧送によって粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを噴射するように構成されている。このように気体圧送によって粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを噴射して塗膜を形成する場合、塗膜の面内で粉体充填材PFを容易に分散させることができる一方で、塗膜の厚さ方向の所望の位置に粉体充填材PFを分布させることが難しい。気体圧送によって粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを噴射して塗膜を形成すると、たとえば、図4(b)に示されるように、塗膜CFの厚さ方向で、管体Pの内面PS側や塗膜CFの表面側に粉体充填材PFが分布してしまう場合がある。その場合、塗膜CFに必要な密着性が得られず、また、塗膜CF表面に凹凸が生じ、塗膜CFにピンホールが生じる可能性もある。そのような観点から、図4(a)に例示されるように、塗膜CFの厚さ方向の内側に粉体充填材PFが分布するように、管体Pの内面PSが塗装されることが望ましい。
【0036】
本発明者らは、鋭意検討した結果、図2および図3に示されるように、粉体塗料ノズル21および粉体充填材ノズル31のそれぞれから噴射される粉体塗料PPおよび粉体充填材PFの、管体Pの内面PSに到達するまでの軌跡(図2、3中、広がり角度α1、α2内の領域)が互いに重ならないように、粉体塗料ノズル21および粉体充填材ノズル31を配置することで、図4(a)に例示されるように、塗膜CFの厚さ方向の内側に粉体充填材PFを分布させることができることを見出した。より具体的には、粉体塗料ノズル21および粉体充填材ノズル31はそれぞれ、粉体塗料PPおよび粉体充填材PFの軌跡が互いに重ならないように、管体Pの管軸X方向で互いに離間して配置され、管体Pの管軸X周り方向で互いに異なる方向に粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを噴射するように配置される。これにより、粉体塗料PPおよび粉体充填材PFが噴射されて管体Pの内面PSに到達するまでの間に、粉体塗料PPおよび粉体充填材PFの互いに対する干渉を抑制することができ、粉体塗料PPおよび粉体充填材PFをそれぞれ別個に管体Pの内面PS上に堆積させることができる。したがって、たとえば、管体Pの内面PS上に、粉体塗料PP、粉体充填材PF、粉体塗料PPを順に堆積させることで、図4(a)に例示されるように、塗膜CFの厚さ方向の内側に粉体充填材PFを分布させることができる。
【0037】
粉体塗料ノズル21は、本実施形態では、図1および図2に示されるように、粉体充填材ノズル31に対して管軸X方向の一方向(管体Pの一端Paから他端Pbに向かう方向)側に位置し、粉体充填材ノズル31から管軸方向間隔Lを空けて離間して配置されている。粉体塗料ノズル21および粉体充填材ノズル31は、管軸X方向に沿って一方向に移動しながら粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを噴射することで、管体Pの内面PSの同じ場所に、粉体塗料PPを堆積させた後に粉体充填材PFを堆積させることができる。また、粉体塗料ノズル21および粉体充填材ノズル31は、粉体塗料PP上に粉体充填材PFを堆積させた後に、管軸X方向に沿って一方向とは反対の他方向(管体Pの他端Pbから一端Paに向かう方向)に移動しながら粉体塗料PPのみ、または粉体塗料PPおよび粉体充填材PFの両方を噴射することで、粉体塗料PP上に粉体充填材PFが堆積した、管体Pの内面PSの同じ場所に、粉体塗料PPのみを堆積させ、または粉体充填材PFを堆積させた後に粉体塗料PPを堆積させることができる。これにより、図4(a)に例示されるように、塗膜CFの厚さ方向の内側に粉体充填材PFを分布させることができる。
【0038】
粉体塗料ノズル21と粉体充填材ノズル31との間の管軸方向間隔Lは、粉体塗料PPの軌跡と粉体充填材PFの軌跡とが重ならないように設定されていればよく、特に限定されることはない。管軸方向間隔Lは、たとえば、粉体塗料PPの軌跡と粉体充填材PFの軌跡との重なりをより確実に抑制するという観点から、400mm以上であることが好ましく、500mm以上であることがさらに好ましく、550mm以上であることがよりさらに好ましい。また、管軸方向間隔Lは、管体Pの内面PS上で塗料が硬化する前に粉体充填材PFを堆積させるという観点から、800mm以下が好ましく、700mm以下がさらに好ましく、650mm以下がよりさらに好ましい。
【0039】
粉体塗料ノズル21は、上述したように、管軸X方向で粉体充填材ノズル31から離間して配置されているだけでなく、管軸X周りにおいても、粉体充填材ノズル31による粉体充填材PFの噴射方向とは異なる方向に粉体塗料PPを噴射するように配置されている(図3参照)。ここで、図5は、管体Pの内面PS上の、粉体塗料PPおよび粉体充填材PFが同時に噴射されたときの粉体塗料噴射領域Aおよび粉体充填材噴射領域Bを、管体Pを展開した展開図上に概略的に示している。図5に示されるように、管軸X方向(図5中、左右方向)および管軸X周り方向(図5中、上下方向)の両方で粉体塗料噴射領域Aおよび粉体充填材噴射領域Bを互いからずらすことにより、粉体塗料PPの軌跡と粉体充填材PFの軌跡との重なりをより確実に抑制することができる。さらに、粉体塗料噴射領域Aおよび粉体充填材噴射領域Bを管軸X周り方向(図5中、上下方向)で互いからずらすことで、管軸方向間隔Lを小さくしても、たとえば図5の点線で示されるように、粉体塗料PPの軌跡と粉体充填材PFの軌跡との重なりを抑制することができる。管体Pの内面PS上で塗料が硬化する前の溶融状態のときに、溶融した塗料上に粉体充填材PFを堆積させることが好ましいが、そのためには、粉体塗料PPが堆積されてから粉体充填材PFが堆積されるまでの時間間隔を調整できる範囲が広いことが好ましい。上述したように、粉体塗料噴射領域Aおよび粉体充填材噴射領域Bを管軸X周り方向(図5中、上下方向)で互いからずらすことで、管軸方向間隔Lを大きくすることはもちろんのこと、より小さくすることもできるので、粉体塗料PPが堆積されてから粉体充填材PFが堆積されるまでの時間間隔を調整できる範囲を広げることができる。
【0040】
管軸X周り方向における(管軸X方向に沿って見たときの)粉体塗料ノズル21の噴射方向(粉体塗料ノズル21により噴射される粉体塗料PPの広がりの略中心の方向)と粉体充填材ノズル31の噴射方向(粉体充填材ノズル31により噴射される粉体充填材PFの広がりの略中心の方向)との間の第2の噴射方向間角度θ4(図3参照)は、粉体塗料PPの軌跡と粉体充填材PFの軌跡とが重ならないように設定されていればよく、特に限定されることはない。第2の噴射方向間角度θ4は、たとえば、粉体塗料PPの軌跡と粉体充填材PFの軌跡との重なりをより確実に抑制するとともに、粉体充填材ノズル31の管軸X周り方向における噴射方向を水平方向よりも鉛直方向の下側に向けるという観点から、たとえば40°(±10°の範囲内)とすることができる。
【0041】
つぎに、本実施形態の塗装装置1を用いて、管体Pの内面PSを塗装する方法について説明する。ただし、本実施形態の塗装装置1を用いた塗装方法は、以下の説明に限定されることはない。
【0042】
管体Pの内面PSを塗装する際に、まず、加熱装置によって管体Pを所定の温度に加熱する。管体Pの加熱温度は、粉体塗料PPが管体Pの内面PSに直接または間接的に接触または付着した際に、管体Pから伝達される熱を通じて、粉体塗料PPが硬化する温度(たとえば、150℃以上)に設定される。管体Pは、回転装置4に搭載される前に予め加熱されてもよいし、回転装置4に搭載された後に加熱されてもよい。
【0043】
つぎに、図1に示されるように、回転装置4により、管体Pを管軸X周りに相対回転させ、搬送装置5により、粉体塗料噴射装置2の粉体塗料ノズル21および粉体充填材噴射装置3の粉体充填材ノズル31を管軸X方向に沿って一方向(管体Pの一端Paから他端Pbに向かう方向)に相対移動させながら、粉体塗料ノズル21および粉体充填材ノズル31により、加熱された管体Pの内側から内面PSに向けて粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを噴射する。管体Pの内面PSに直接または間接的に接触または付着した粉体塗料PPは、管体Pから伝達される熱を通じて管体Pの内面PS上で硬化し、管体Pの内面PS上に堆積される。粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを噴射する際に、回転装置4により管体Pを管軸X周りに相対回転させることで、粉体塗料PPおよび粉体充填材PFは、管体Pの内面PSの周方向の所定範囲(たとえば全周)に亘って堆積される。また、粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを噴射する際に、ノズル21、31を管軸X方向に沿って相対移動させることで、粉体塗料PPおよび粉体充填材PFは、管体Pの内面PSの管軸X方向の所定範囲(たとえば全長)に亘って堆積される。このとき、粉体塗料ノズル21が、粉体充填材ノズル31よりも、ノズル21、31の相対移動方向の前側(管体Pの一端Paに対して他端Pb側)に位置しているので、粉体塗料PPが堆積された後に粉体充填材PFが堆積される。
【0044】
管体Pの内面PS上では、粉体塗料PPが堆積された後に粉体充填材PFが堆積されることで、塗料上に粉体充填材PFが積層された塗膜が形成される。このとき、粉体塗料ノズル21および粉体充填材ノズル31が、粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを噴射する際に粉体塗料PPの軌跡と粉体充填材PFの軌跡とが互いに重ならないように配置されているので、粉体塗料PPおよび粉体充填材PFが互いに干渉することが抑制されて、管体Pの内面PSに到達する前に粉体塗料PPと粉体充填材PFとが混合された状態で管体Pの内面PS上に堆積されることが抑制される。したがって、形成された塗膜の厚さ方向で粉体充填材PFが分散して分布することが抑制され、塗料上に粉体充填材PFが積層された塗膜が形成される。
【0045】
つぎに、回転装置4により、管体Pを管軸X周りに相対回転させ、搬送装置5により、粉体塗料噴射装置2の粉体塗料ノズル21を管軸X方向に沿って他方向(管体Pの他端Pbから一端Paに向かう方向)に相対移動させながら、加熱された管体Pの内面PSですでに塗料上に粉体充填材PFが堆積されて形成された塗膜上に、粉体塗料ノズル21により粉体塗料PPを噴射する。管体Pの内面PS上の塗膜に接触または付着した粉体塗料PPは、管体Pから伝達される熱を通じて管体Pの内面PS上で硬化し、塗料上に堆積された粉体充填材PF上に堆積される。これにより、図4(a)に例示されるように、厚さ方向の内側に粉体充填材PFが分布した塗膜CFが形成される。
【0046】
粉体塗料ノズル21により粉体塗料PPを噴射する際に、粉体塗料ノズル21とともに粉体充填材ノズル31を管軸X方向に沿って他方向に相対移動させながら、粉体充填材ノズル31により粉体充填材PFを噴射してもよい。このとき、粉体充填材ノズル31が、粉体塗料ノズル21よりも、ノズル21、31の相対移動方向の前側(管体Pの他端Pbに対して一端Pa側)に位置しているので、粉体充填材PFが堆積された後に粉体塗料PPが堆積される。この場合も同様に、図4(a)に例示されるように、厚さ方向の内側に粉体充填材PFが分布した塗膜CFが形成される。このとき、粉体塗料ノズル21および粉体充填材ノズル31が、粉体塗料PPおよび粉体充填材PFを噴射する際に粉体塗料PPの軌跡と粉体充填材PFの軌跡とが重ならないように配置されているので、粉体塗料PPおよび粉体充填材PFが互いに干渉することが抑制されて、管体Pの内面PSに到達する前に粉体塗料PPと粉体充填材PFとが混合された状態で管体Pの内面PS上に堆積されることが抑制される。したがって、図4(b)に例示されるように塗膜CFの厚さ方向で粉体充填材PFが分散することが抑制され、図4(a)に例示されるように、粉体充填材PF上に塗料が積層された塗膜CFが形成される。
【0047】
なお、管体Pの内面PSに向けて噴射する粉体塗料PPおよび粉体充填材PFの噴射速度や噴射量は、特に限定されることはなく、必要な塗装膜厚に応じて適宜設定することができる。また、管体Pの相対回転速度およびノズル21、31の相対移動速度も、特に限定されることはなく、必要な塗装膜厚に応じて適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 塗装装置
2 粉体塗料噴射装置
21 粉体塗料ノズル
22 粉体塗料供給管
23 粉体塗料供給装置
3 粉体充填材噴射装置
31 粉体充填材ノズル
32 粉体充填材供給管
33 粉体充填材供給装置
4 回転装置
41 回転ローラ
42 支持台
5 搬送装置
A 粉体塗料噴射領域
B 粉体充填材噴射領域
CF 塗膜
L 管軸方向間隔
P 管体
P1 受口
P2 挿口
P3 直管部
Pa 一端
Pb 他端
PF 粉体充填材
PP 粉体塗料
PS 管体の内面
X 管軸
α1 第1の広がり角度
α2 第2の広がり角度
α3 第3の広がり角度
α4 第4の広がり角度
θ1 第1の噴射角度
θ2 第2の噴射角度
θ3 第1の噴射方向間角度
θ4 第2の噴射方向間角度
図1
図2
図3
図4
図5