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  • 特開-内燃機関の冷却構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145868
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】内燃機関の冷却構造
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/20 20060101AFI20231004BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20231004BHJP
   F01P 11/08 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
F01P3/20 A
F01P7/16
F01P3/20 B
F01P7/16 504A
F01P11/08 B
F01P7/16 504B
F01P7/16 504Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052743
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阪本 直輝
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 將隆
(72)【発明者】
【氏名】石田 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】大田 晴信
(72)【発明者】
【氏名】中井 隆司
(72)【発明者】
【氏名】信ヶ原 恵
(72)【発明者】
【氏名】芦田 浩彦
(57)【要約】
【課題】オイル冷却装置と、排気循環ガス冷却装置と、が最適な通路に設ける内燃機関の冷却構造を提供する。
【解決手段】内燃機関本体を冷却する内燃機関の冷却構造であって、前記内燃機関の排気を循環する排気循環装置に流れる排気循環ガスを冷却する排気循環ガス冷却装置と、前記内燃機関に充填されるオイルを冷却するオイル冷却装置と、前記内燃機関本体に設けられ、冷却水が通過する第1通路と、前記排気循環ガス冷却装置に冷却水を供給する第2通路と、前記オイル冷却装置に冷却水を供給する第3通路と、前記第1通路、前記第2通路、および前記第3通路への冷却水の流量を制御する流量制御弁と、を備える。前記第2通路は、前記第1通路を経由せずに冷却水が前記排気循環ガス冷却装置に供給される通路であり、前記第3通路は、前記第1通路を経由した冷却水が前記オイル冷却装置に供給される通路である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関本体を冷却する内燃機関の冷却構造であって、
前記内燃機関の排気を循環する排気循環装置に流れる排気循環ガスを冷却する排気循環ガス冷却装置と、
前記内燃機関に充填されるオイルを冷却するオイル冷却装置と、
前記内燃機関本体に設けられ、冷却水が通過する第1通路と、
前記排気循環ガス冷却装置に冷却水を供給する第2通路と、
前記オイル冷却装置に冷却水を供給する第3通路と、前記第1通路、前記第2通路、および前記第3通路への冷却水の流量を制御する流量制御弁と、
を備え、
前記第2通路は、前記第1通路を経由せずに冷却水が前記排気循環ガス冷却装置に供給される通路であり、
前記第3通路は、前記第1通路を経由した冷却水が前記オイル冷却装置に供給される通路である、
内燃機関の冷却構造。
【請求項2】
前記オイル冷却装置は、前記内燃機関本体に固定される、
請求項1に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項3】
前記冷却水を冷却するラジエタと、
前記ラジエタに前記冷却水を供給する第4通路と、
をさらに備え、
前記第3通路は、第1接続部で前記第1通路に接続され、
前記第4通路は、前記第1接続部よりも下流の第2接続部で前記第1通路に接続される、
請求項1または2に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項4】
前記ラジエタは、前記第4通路に接続される上流通路と、前記上流通路の下流に設けられる下流通路と、前記上流通路と前記下流通路の間に位置し両通路に接続される熱交換部と、を有し、
前記下流通路から前記流量制御弁に接続される第5通路と、
前記上流通路から前記2通路に接続される第6通路と、
前記第4通路に設けられ、前記冷却水の温度を検知する温度検知部と、
前記温度検知部により検知した温度に基づいて前記流量制御弁を制御する制御装置と、
をさらに備える、
請求項3に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項5】
前記第6通路に、前記冷却水と空気との層を形成するホットボトルが設けられる、
請求項4に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項6】
前記内燃機関の前記排気によって駆動し、前記内燃機関の吸気を過給する過給機を有し、
前記第1通路と接続され、前記過給機を通過して前記ホットボトルに接続される、
第7通路をさらに備える、
請求項5に記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項7】
前記第4通路から分岐し前記第2通路に接続される第8通路をさらに備え、
前記第8通路は、前記排気循環ガスの量を調整する排気循環バルブに前記冷却水を供給する、
請求項3から5のいずれか1項に記載の内燃機関の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関のシリンダヘッドおよび排気循環装置などの冷却が必要な部品に冷却水を供給する通路を備えた内燃機関の冷却構造が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。このような内燃機関の冷却構造は、ラジエタに冷却水を供給する通路を有し、ラジエタによって冷却水が冷却される。特許文献1および特許文献2は、各通路の流量を制御する流量制御弁を有し、各通路に最適な流量の冷却水が流れるように制御する内燃機関の冷却構造を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-168755号公報
【特許文献2】特許5699839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2の冷却構造は、シリンダヘッドを含む内燃機関本体を通過しない通路を有する。特許文献1および特許文献2には、内燃機関本体を通過しない通路上に排気循環ガスを冷却する排気循環ガス冷却装置が設けられる内燃機関の冷却構造が開示されている。しかし、特許文献1および特許文献2には、内燃機関のオイルを冷却するオイル冷却装置については、どのような通路なのかは開示されていない。
【0005】
本開示の課題は、オイル冷却装置と、排気循環ガス冷却装置と、が最適な通路に設けられる内燃機関の冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関の冷却構造は、内燃機関本体を冷却する内燃機関の冷却構造であって、前記内燃機関の排気を循環する排気循環装置に流れる排気循環ガスを冷却する排気循環ガス冷却装置と、前記内燃機関に充填されるオイルを冷却するオイル冷却装置と、前記内燃機関本体に設けられ、冷却水が通過する第1通路と、前記排気循環ガス冷却装置に冷却水を供給する第2通路と、前記オイル冷却装置に冷却水を供給する第3通路と、前記第1通路、前記第2通路、および前記第3通路への冷却水の流量を制御する流量制御弁と、を備える。前記第2通路は、前記第1通路を経由せずに冷却水が前記排気循環ガス冷却装置に供給される通路であり、前記第3通路は、前記第1通路を経由した冷却水が前記オイル冷却装置に供給される通路である。
【0007】
この内燃機関の冷却構造によれば、流量制御弁によって、例えば内燃機関の暖機初期は、内燃機関本体を介さずに、排気循環ガス冷却装置に冷却水を流すことができる。これによって、この内燃機関の冷却構造によれば、暖機促進を図ることができる。さらに、この内燃機関の冷却構造によれば、内燃機関の暖機中期以降に、オイル冷却装置に接続される通路を、流量制御弁によって開くことによって、適切なタイミングで内燃機関の熱を利用してオイルを温めることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、オイル冷却装置と、排気循環ガス冷却装置と、が最適な通路に設けられる内燃機関の冷却構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態による内燃機関の制御構造のシステム図。
図2】本開示の実施形態による内燃機関2の暖機中におけるロータリバルブの回転角度に対する角通路の開口面積(開度)と時刻の関係の一例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下明細書において、冷却水が流れる方向を基準として、上流を上流と、下流を下流と、明細書に記す。なお、ポンプの吐出口を最上流、ポンプの流入口を最下流と定義する。
【0011】
図1に示すように、内燃機関2の冷却構造1は、内燃機関2の種々の装置を冷却する装置である。内燃機関2の冷却構造1は、流量制御弁(V)4と、ウォータポンプ(W/P)6と、シリンダブロック(C/B)8と、シリンダヘッド(C/H)10と、アウトレットフィッチング(O/F)12と、高圧排気循環ガスクーラ(HP-EGR/C:排気循環ガス冷却装置の一例)14と、ヒータコア(H/C)16と、高圧排気循環バルブ(HP-EGR/V)18と、低圧排気循環バルブ20と、エンジンオイルクーラ(O/C:オイル冷却装置の一例)22と、過給機(T/C)24と、ラジエタ(RA)30と、ホットボトル(HB)32と、を備える。内燃機関2の冷却構造1は、制御装置40を含み、制御装置40が流量制御弁4と電気的に接続され、内燃機関2の冷却システムを構成する。本実施形態では、内燃機関2は、車両に搭載され、ピストン(図示せず)がクランクシャフトを回転させるレシプロ型の内燃機関2である。また、本実施形態では、内燃機関2は高圧排気循環装置と、低圧排気循環装置を有するディーゼルエンジンである。しかし、内燃機関2はガソリンエンジンであってもよい。
【0012】
また、内燃機関2の冷却構造1は、冷却水を種々の装置に供給する複数の通路を備える。本実施形態では、主機冷却通路(第1通路の一例)Kと、第1ラジエタ通路Aと、第2ラジエタ通路(第4通路の一例)Bと、ラジエタコア通路(第5通路の一例)Cと、高圧排気循環ガスクーラ通路(第2通路の一例)Dと、排気循環バルブ冷却通路(第8通路の一例)Eと、ホットボトル通路Fと、過給機冷却通路(第7通路の一例)Gと、ラジエタコアバイパス通路(第6通路の一例)Hと、エンジンオイルクーラ通路(第3通路の一例)Iと、を備える。
【0013】
流量制御弁4は、通路に流れる冷却水の量を調整する装置である。本実施形態では、ラジエタコア通路C、高圧排気循環ガスクーラ通路D、およびエンジンオイルクーラ通路I(以下明細書において各通路という場合もある)に流れる冷却水の量を調整する装置である。本実施形態では、流量制御弁4は、各通路から流量制御弁4に冷却水が入るポートの開度を可変することによって、各通路に流れる冷却水の流量を制御する。本実施形態では、流量制御弁4は、ロータリバルブ4aを有するロータリ式バルブである。流量制御弁4は、ロータリバルブ4aを回転させることによって、各通路のポートの開口面積の大きさを変化させる。これによって、流量制御弁4は、各通路に流れる冷却水の流量を制御できる。流量制御弁4は、制御装置40と電気的に接続され、制御装置40によってバルブの回転角度が制御される。また、流量制御弁4は、ロータリバルブ4aの回転角度ωを検知する回転角センサ(図示せず)を有し、ロータリバルブ4aの回転角度ωを制御装置40に送信する。
【0014】
流量制御弁4の下流には、冷却水を各通路に供給するウォータポンプ6が接続される。本実施形態では、ウォータポンプ6は、内燃機関2のクランクシャフトから駆動力を得てインペラが回転する機械式のポンプである。
【0015】
ウォータポンプ6の下流には、主機冷却通路Kが接続される。主機冷却通路Kは、シリンダブロック8のシリンダ(図示せず)の周囲に形成される第1ウォータジャケット(図示なし)、およびシリンダヘッドの排気ポート近傍に形成される第2ウォータジャケット(図示なし)を含む。主機冷却通路Kは、第1ウォータジャケットおよび第2ウォータジャケットを通り、アウトレットフィッチング12まで延びる通路である。主機冷却通路Kは、第1ウォータジャケットおよび第2ウォータジャケットを冷却水が通過することによって、シリンダブロック8およびシリンダヘッド10(内燃機関本体の一例)を冷却する。
【0016】
主機冷却通路Kは、アウトレットフィッチング12の上流でエンジンオイルクーラ通路Iが接続される第1接続部K1と、アウトレットフィッチング12を介して第2ラジエタ通路Bが接続される第2接続部K2と、を有する。第2接続部K2は、第1接続部K1の下流に配置される。第2ラジエタ通路Bは、ラジエタ30に冷却水を供給し、ラジエタ30によって冷却水の温度が下がる。このため、主機冷却通路Kを通過し内燃機関本体の熱を極力多く吸収した冷却水をラジエタ30に供給することによって、内燃機関本体を冷却することが好ましい。一方、エンジンオイルクーラ通路Iを通過する冷却水は、エンジンオイルクーラ22に供給され、エンジンオイルを冷却する必要がある。このため、エンジンオイルクーラ通路Iは極力温度が低い方が好ましい。本実施形態の内燃機関2の冷却構造1では、上記のように第2接続部K2は、第1接続部K1の下流に配置する。言い換えると、エンジンオイルクーラ通路Iに供給される冷却水は、第2ラジエタ通路Bに供給される冷却水よりも、内燃機関本体を通過する距離が短い。これによって、エンジンオイルクーラ通路Iに第2ラジエタ通路Bよりも温度の低い冷却水を供給する。このため、より効率的にエンジンオイルを冷却できる。
【0017】
アウトレットフィッチング12は、シリンダブロック8およびシリンダヘッド10を通過した冷却水を、第2ラジエタ通路Bに分配する筒状部材である。本実施形態では、アウトレットフィッチング12は、シリンダブロック8の第1ウォータジャケットの最下流に取り付けられる。アウトレットフィッチング12には水温センサ(温度検知部の一例)15が配置される。水温センサ15は制御装置40と電気的に接続される。
【0018】
本実施形態の内燃機関2は、過給機24で過給された吸気に内燃機関2の排気を循環する高圧排気循環装置を有する。さらに、内燃機関2は、過給機24で過給される前の吸気に内燃機関2の排気を循環する低圧排気循環装置を有する。
【0019】
高圧排気循環装置は、高圧排気循環バルブ18によって吸気への導入量が制御される。また、高圧排気循環装置によって循環される排気循環ガスは、高圧排気循環ガスクーラ14によって冷却される。高圧排気循環ガスクーラ14は、高圧排気循環ガスを、冷却水によって冷却する熱交換器である。低圧排気循環装置は、低圧排気循環バルブ20によって吸気への導入量が制御される。
【0020】
ヒータコア16は、車両の室内に空調風を供給する空調装置(図示なし)の熱交換器である。ヒータコア16は、冷却水から熱を吸収し、空調風を温める。
【0021】
高圧排気循環ガスクーラ14、およびヒータコア16は、高圧排気循環ガスクーラ通路D上に配置される。本実施形態では、高圧排気循環ガスクーラ14の下流にヒータコア16が配置される。高圧排気循環ガスクーラ通路Dの上流は、ウォータポンプ6に接続される。高圧排気循環ガスクーラ通路Dの下流は、主機冷却通路Kを通ることなく、高圧排気循環ガスクーラ14、およびヒータコア16に接続される。高圧排気循環ガスクーラ通路Dは、このように内燃機関本体を通過せず、ゴムまたは樹脂のホース、または金属製のパイプなどによって内燃機関2の周囲に形成される通路である。高圧排気循環ガスクーラ通路Dは、ヒータコア16の下流が流量制御弁4の第1ポート4bに接続される。
【0022】
高圧排気循環バルブ18、および低圧排気循環バルブ20は、排気循環バルブ冷却通路E上に配置される。本実施形態では、高圧排気循環バルブ18の下流に低圧排気循環バルブ20が配置される。排気循環バルブ冷却通路Eは、高圧排気循環バルブ18の上流が第2ラジエタ通路Bのラジエタ30上流に接続される。排気循環バルブ冷却通路Eは、低圧排気循環バルブ20の下流が高圧排気循環ガスクーラ通路Dのヒータコア16の下流に接続される。これによって、第1ポート4bが開弁すると高圧排気循環ガスクーラ通路D、および排気循環バルブ冷却通路Eに冷却水が流れる。高圧排気循環バルブ18は排気と触れるため、暖機中であってもなるべく早く高圧排気循環バルブ18を冷却することが好ましい。
【0023】
エンジンオイルクーラ22は、内燃機関2に充填されるエンジンオイルと冷却水を熱交換し、エンジンオイルを昇温もしくは冷却する熱交換器である。本実施形態では、エンジンオイルクーラ22は、内燃機関本体に取り付けられる。より具体的には、エンジンオイルクーラ22は、シリンダブロック8に固定される。これによって、エンジンオイルクーラ22に冷却水を流す前から、内燃機関2の熱によってエンジンオイルクーラ22を温めることができる。この結果、早期にエンジンオイルが温まり、冷態時のエンジンオイルによるフリクションが低下する。
【0024】
エンジンオイルクーラ22は、エンジンオイルクーラ通路I上に配置される。エンジンオイルクーラ通路Iは、エンジンオイルクーラ22の上流が主機冷却通路Kの第1接続部K1に接続される。エンジンオイルクーラ通路Iは、このように内燃機関本体を通過した冷却水がエンジンオイルクーラ22に流れ込むように内燃機関本体に接続される。エンジンオイルクーラ通路Iは、エンジンオイルクーラ22の下流が流量制御弁4の第2ポート4cに接続される。
【0025】
このように、本実施形態の内燃機関2の冷却構造1では、高圧排気循環ガスクーラ通路Dが内燃機関本体を通過せず、エンジンオイルクーラ通路Iは、内燃機関本体を通過する。これによって、内燃機関2の暖機初期は、内燃機関本体を介さずに高圧排気循環ガスクーラ通路Dだけに冷却水を流すことで、高圧排気循環ガスクーラ14の冷却効率を向上させることができるとともに、内燃機関本体の暖機促進を図ることができる。さらに、内燃機関2の暖機中期以降に、エンジンオイルクーラ通路Iを開くことで適切なタイミングで内燃機関2の熱を利用してエンジンオイルを温めることができる。
【0026】
過給機24は、内燃機関2の吸気を過給する装置である。過給機24は、主機冷却通路Kから分岐した過給機冷却通路Gが接続され、過給機24のタービン軸を冷却する。過給機冷却通路Gは、過給機24の下流がホットボトル32と接続される。
【0027】
ラジエタ30は、上流通路30aと、上流通路30aの下流に接続されるラジエタコア(熱交換部の一例)30bと、ラジエタコア30bの下流に接続される下流通路30cと、を有する。言い換えると、ラジエタコア30bは、上流通路30aおよび下流通路30c(両通路)に接続される。ラジエタコア30bは、ラジエタコア30bは、複数のフィンを有し、冷却水と車両の外気とを熱交換し、冷却水を冷却するための熱交換器である。ラジエタ30の上流通路30aは、第1ラジエタ通路Aと、第2ラジエタ通路Bと、ラジエタコアバイパス通路Hに接続される。第1ラジエタ通路Aは、シリンダヘッド10の主機冷却通路Kと接続される。第2ラジエタ通路Bは、主機冷却通路Kの第2接続部K2に接続される。したがって、第1ラジエタ通路A、および第2ラジエタ通路Bは、主機冷却通路Kから冷却水を上流通路30aに供給する通路である。ラジエタコアバイパス通路Hは、ホットボトル32に接続される。ラジエタコアバイパス通路Hは、ラジエタコア30bを通過しない冷却水をホットボトル32に供給する通路である。ラジエタ30の下流通路30cは、流量制御弁4の第3ポート4dに接続されるラジエタコア通路Cに接続される。
【0028】
ホットボトル32は、冷却水を一時貯蔵するリザーバタンクとして機能するとともに、冷却水中のエア抜きを行うためのタンクである。ホットボトル32は、冷却水と空気との層を形成する。ホットボトル32は、ホットボトル通路F上に配置される。ホットボトル32の上流は、ラジエタコアバイパス通路Hと、過給機冷却通路Gに接続される。また、ホットボトル通路Fの下流は、高圧排気循環ガスクーラ通路Dに接続される。これによって、暖機中から冷却水のエア抜きができる。さらに、過給機24は排気と触れるため冷却水が高温となり、冷却水内のエアの圧力も上昇しやすい。過給機冷却通路Gをホットボトル32と接続することによって、エアの圧力上昇を抑制するバッファとして機能する。
【0029】
制御装置40は、水温センサ15によって取得した水温WT、車両の走行状態、内燃機関2の運転状態、などに応じて流量制御弁4を制御し、冷却水の流量を制御する装置である。より具体的には、制御装置40は、水温WT、車両の走行状態、内燃機関2の運転状態、に応じて各通路に流す冷却水の流量を決定する。制御装置40は、決定した冷却水の流量に基づいて、各通路(第1ポート4b、第2ポート4c、第3ポート4d)の開度を調整するバルブの目標開度Otを決定し、目標開度Otに向けて流量制御弁4を制御する。
【0030】
図2のグラフは、横軸にロータリバルブ4aの回転角度ωを示し、縦軸が開口面積(開度O)を示す。本実施形態では、制御装置40は、ロータリバルブ4aの回転角度を制御することによって、各通路に流れる冷却水の流量を制御する。このため、制御装置40は、図2のグラフに示すような開度Oとロータリバルブ4aの回転角度ωとの関係を示したテーブルを記憶している。
【0031】
制御装置40は、内燃機関2が冷態始動し暖機する際に、第1ポート4b、第2ポート4c、第3ポート4dの順で開く。図2の破線で示すグラフが第1ポート4bの開度O1を示す。図2の一点鎖線で示すグラフが第2ポート4cの開度O2を示す。図2の実線で示すグラフが第3ポート4dの開度O3を示す。
【0032】
図2の時刻t0から時刻t1に示すように、第1ポート4bを開弁する前は、各通路に冷却水は流れない。図2の時刻t1から時刻t2に示すように、暖機初期において制御装置40が第1ポート4bを第1開度O1a(本実施形態では70度程度)まで緩やかに開くと、第1ラジエタ通路A及び、第2ラジエタ通路Bにわずかに冷却水が流れる。第1ラジエタ通路Aおよび第2ラジエタ通路Bを通過した冷却水は、ラジエタコア30bを通過せずに、上流通路30a、ラジエタコアバイパス通路Hを通過してホットボトル32に流れる。これによって、冷却水のエア抜きができる。さらに、第2ラジエタ通路Bにも冷却水が流れるため、主機冷却通路Kにもわずかに冷却水が流れ、水温センサ15によって主機冷却通路Kの水温WTを検知できる。これによって、制御装置40が内燃機関2の温度状態を取得できる。
【0033】
また、第1ポート4bを開弁すると、高圧排気循環ガスクーラ通路D、排気循環バルブ冷却通路E、および過給機冷却通路Gに冷却水が流れる。これによって、主として排気に触れ高温になりやすい、高圧排気循環ガスクーラ14、高圧排気循環バルブ18、低圧排気循環バルブ20、および過給機24を冷却できるとともに、排気熱を冷却水によって回収できるため、内燃機関2の暖機が促進できる。
【0034】
図2の時刻t1から時刻t2に示すように、暖機中期において、制御装置40は、第1ポート4bを第2開度O1bまで大きくし、主として高圧排気循環ガスクーラ通路D、排気循環バルブ冷却通路E、および過給機冷却通路Gの冷却を強化する。
【0035】
図2の時刻t3から時刻t4に示すように、暖機後期において、制御装置40は、第2ポート4cを第3開度O2aまで緩やかに開弁し、主機冷却通路Kに流れる冷却水量を増量するとともに、エンジンオイルクーラ通路Iを介してエンジンオイルクーラ22に冷却水を供給する。これによって、主機冷却通路Kで内燃機関2の熱を吸収した冷却水がエンジンオイルクーラ22に流れ、エンジンオイルを温める。このため、エンジンオイルの粘度が低下し、暖機中の内燃機関2のフリクションが減少する。
【0036】
また制御装置40は、第2ポート4cを開弁したのち第3ポート4dを緩やかに開弁し、ラジエタコア通路Cに冷却水を徐々に流し、ラジエタコア30bに冷却水を徐々に供給する。その後、制御装置40は、第2ポート4cを第4開度O2bまで開弁し、エンジンオイルクーラ通路Iに流れる冷却水の流量を増量し、エンジンオイルの冷却を開始する。
【0037】
図2の時刻t4から時刻t5に示すように、内燃機関2の暖機が完了すると制御装置40が第3ポート4dを最大開度O3aまで開き、ラジエタコア通路Cに流れる冷却水の流量を増量するとともに、ラジエタコア30bによって冷却水を冷却する。制御装置40は、例えば水温WTが80℃を超えた場合に、内燃機関2の暖機が完了したと判断してもよい。
【0038】
図2の時刻t5から時刻t6は、暖機完了後に高圧排気循環ガス、および低圧排気循環ガスの導入量が減少した場合を示す。制御装置40は、高圧排気循環バルブ18、および低圧排気循環バルブ20の開度に合わせて、第1ポート4bを閉弁方向に制御してもよい。
【0039】
また、制御装置40は、暖機完了後は上記の時刻t5から時刻t6の制御のみならず、水温WT、車両の走行状態、内燃機関2の運転状態、に応じて各通路に流す冷却水の流量に基づいて各通路の目標開度Оtを決定してもよい。制御装置40は、目標開度Otに対応した目標回転角度ωtを、図2のように記憶したテーブルに基づいて決定してもよい。制御装置40は、目標回転角度ωtに向けてロータリバルブ4aを回転させてもよい。制御装置40は、この間、回転角センサから実際の実回転角度ωrを取得し、実回転角度が追従しているか否か監視してもよい。
【0040】
また、制御装置40は、高圧排気循環ガスおよび低圧排気循環ガスの導入割合を決定し、高圧排気循環ガスおよび低圧排気循環ガスの導入量が、吸気量に対して決定した導入割合となるように、高圧排気循環バルブ18および低圧排気循環バルブ20の開度を制御する。制御装置40は、内燃機関2の運転領域ごとに高圧排気循環ガスおよび低圧排気循環ガスの導入割合を定めたマップに基づいて高圧排気循環ガスおよび低圧排気循環ガスの導入割合を決定してもよい。
【0041】
このほか、制御装置40は、エアフロセンサ(図示なし)、およびアクセルポジションセンサ(図示なし)などのセンサから取得した値に基づいて、内燃機関2が所望の運転状態となるように、燃料噴射弁(図示なし)、および過給機24の過給圧、などの各装置の制御を実行してもよい。
【0042】
制御装置40は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。制御装置40は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、内燃機関2が、所望の運転状態となるように各装置を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
【0043】
以上説明した通り、本開示の内燃機関2の冷却構造1によれば、流量制御弁4によって、例えば内燃機関2の暖機初期は、内燃機関本体を介さずに高圧排気循環ガスクーラ14に冷却水を流すことができる。これによって、冷えた冷却水が内燃機関本体を通過することなく、高圧排気循環ガスクーラ14に流れ、高圧排気循環ガスを冷却するとともに、高圧排気循環ガスクーラ14によって排気熱を回収する。排気熱を回収し温まった冷却水は、内燃機関2に戻り主機冷却通路Kに流れる。この結果、高圧排気循環ガスを効率よく冷却できるとともに、内燃機関2の暖機の促進を図ることができる。さらに、この内燃機関2の冷却構造1によれば、内燃機関2の暖機中期以降に、エンジンオイルクーラ22に接続される通路を、流量制御弁4によって開くことによって、内燃機関2の熱を利用してエンジンオイルを温めることができる。これによって、エンジンオイルの粘度が下がり、暖機中の内燃機関2のフリクションが減少する。
【0044】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0045】
(a)上記実施形態では、流量制御弁4はロータリバルブ4aを例に用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。流量制御弁4は、例えば、各通路の流量をスライド式のバルブによって制御する流量制御弁4であってもよい。また、流量制御弁4は、第1ポート4bから第3ポート4dをそれぞれ開閉する複数の電気式のバルブであってもよい。
【0046】
(b)上記実施形態では、図2の各通路の開口面積とロータリバルブ4aの回転角度ωの関係を示したテーブルを制御装置40が記憶し、テーブルに基づいて各通路に流れる冷却水の流量を制御装置40が制御する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。制御装置40は、例えば、流量を検知するセンサ等を用いて、流量制御弁4を制御してもよい。また、図2の各通路の開口面積と、ロータリバルブ4aの回転角度ωは、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 :冷却構造
2 :内燃機関
4 :流量制御弁
14 :高圧排気循環ガスクーラ(排気循環装置の一例)
22 :エンジンオイルクーラ(オイル冷却装置の一例)
24 :過給機
30 :ラジエタ
30b :ラジエタコア(熱交換部の一例)
K :主機冷却通路(第1通路の一例)
A :第1ラジエタ通路A
B :第2ラジエタ通路(第4通路の一例)
C :ラジエタコア通路(第5通路の一例)
D :高圧排気循環ガスクーラ通路(第2通路の一例)
E :排気循環バルブ温水通路(第8通路の一例)
F :ホットボトル通路
G :過給機冷却通路(第7通路の一例)
H :ラジエタコアバイパス通路(第6通路の一例)
I :エンジンオイルクーラ通路(第3通路の一例)
図1
図2