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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145874
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】コイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/04 20060101AFI20231004BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20231004BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01F41/04 B
H01F41/12 D
H01F41/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052755
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】園田 敦之
【テーマコード(参考)】
5E044
5E062
【Fターム(参考)】
5E044CA03
5E062AB06
5E062FF02
(57)【要約】
【課題】コイル周回部の周囲に樹脂材料を均等かつ適量に塗布すること。
【解決手段】コイル部品の製造方法は、巻芯部12と、巻芯部12の延伸方向における端に設けられた鍔部14、16と、を有するコア10を準備する工程と、巻芯部12に導線40を巻回して導線40からなるコイル周回部42を形成する工程と、巻芯部12を中心にコイル周回部42を回転させながら、コイル周回部42の周りに樹脂材料70を接触させて樹脂部48を形成する工程とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯部と、前記巻芯部の延伸方向における端に設けられた鍔部と、を有するコアを準備する工程と、
前記巻芯部に導線を巻回して前記導線からなるコイル周回部を形成する工程と、
前記巻芯部を中心に前記コイル周回部を回転させながら、前記コイル周回部の周りに樹脂材料を接触させて樹脂部を形成する工程と、を備えるコイル部品の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂部は、前記樹脂材料が前記コイル周回部に複数回接触することにより形成される、請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂部は、前記コイル周回部の前記回転の第1回転軸と略平行な第2回転軸を中心に自転する円板の外周上に設けられた前記樹脂材料が前記コイル周回部に接触することにより形成される、請求項1または2に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項4】
前記円板の外周上に設けられた前記樹脂材料の前記延伸方向における幅寸法は、前記巻芯部の前記延伸方向における長さ寸法より小さい、請求項3に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項5】
前記コイル周回部と前記樹脂材料とが接触する位置において、前記コイル周回部は前記円板の回転に対して相対的に同じ方向に回転し、
前記コイル周回部の外周の前記円板の外周に対する相対的な周速度は前記円板の外周の周速度と略同じである、請求項3または4に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項6】
前記コイル周回部と前記樹脂材料とが接触する位置において、前記コイル周回部は前記円板の回転に対して相対的に同じ方向に回転し、
前記コイル周回部の外周の前記円板の外周に対する相対的な周速度は前記円板の外周の周速度より速い、請求項3または4に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項7】
前記コイル周回部と前記樹脂材料とが接触する位置において、前記コイル周回部は前記円板の回転に対して相対的に同じ方向に回転し、
前記コイル周回部の外周の前記円板の外周に対する相対的な周速度は前記円板の外周の周速度より遅い、請求項3または4に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項8】
前記コイル周回部と前記樹脂材料とが接触する位置において、前記コイル周回部は前記円板の回転に対して相対的に反対方向に回転し、
前記コイル周回部の外周の前記円板の外周に対する相対的な周速度は前記円板の外周の周速度より遅い、請求項3または4に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項9】
前記コイル周回部は、前記コイル周回部の前記回転の第1回転軸と略平行な第3回転軸を中心に公転し、
前記樹脂部は、前記コイル周回部が前記公転をしつつ前記回転をしながら、前記コイル周回部の周りに前記樹脂材料が接触することにより形成される、請求項1から8のいずれか一項に記載のコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コアの巻芯部にコイル周回部を形成し、このコイル周回部の周囲に樹脂部を形成したコイル部品が知られている。樹脂部の形成方法として、コイル部品を配置したパレットの一方の面に樹脂ペーストをスクリーン印刷し、その後、パレットを反転させて他方の面に樹脂ペーストをスクリーン印刷することで、コイル周回部の周囲に樹脂部を形成することが知られている(例えば特許文献1)。また、コアの一方の鍔部の外底面を保持具に固定した後にその鍔部の内底面に保護用シートを当接させ、その後、コアを液状の樹脂に浸けることで、コイル周回部の周囲に樹脂部を形成することが知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-100540号公報
【特許文献2】特開2014-093460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、コイル部品が配置されたパレットの両面に樹脂ペーストをスクリーン印刷しているため、コイル周回部の周囲に樹脂材料を均等に塗布することが難しい。特許文献2に記載の方法では、コアを液状の樹脂に浸けているため、コイル周回部の周囲に必要以上の樹脂材料が塗布されてしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、コイル周回部の周囲に樹脂材料を均等かつ適量に塗布することが可能なコイル部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、巻芯部と、前記巻芯部の延伸方向における端に設けられた鍔部と、を有するコアを準備する工程と、前記巻芯部に導線を巻回して前記導線からなるコイル周回部を形成する工程と、前記巻芯部を中心に前記コイル周回部を回転させながら、前記コイル周回部の周りに樹脂材料を接触させて樹脂部を形成する工程と、を備えるコイル部品の製造方法である。
【0007】
上記構成において、前記樹脂部は、前記樹脂材料が前記コイル周回部に複数回接触することにより形成される構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記樹脂部は、前記コイル周回部の前記回転の第1回転軸と略平行な第2回転軸を中心に自転する円板の外周上に設けられた前記樹脂材料が前記コイル周回部に接触することにより形成される構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記円板の外周上に設けられた前記樹脂材料の前記延伸方向における幅寸法は、前記巻芯部の前記延伸方向における長さ寸法より小さい構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記コイル周回部と前記樹脂材料とが接触する位置において、前記コイル周回部は前記円板の回転に対して相対的に同じ方向に回転し、前記コイル周回部の外周の前記円板の外周に対する相対的な周速度は前記円板の外周の周速度と略同じである構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記コイル周回部と前記樹脂材料とが接触する位置において、前記コイル周回部は前記円板の回転に対して相対的に同じ方向に回転し、前記コイル周回部の外周の前記円板の外周に対する相対的な周速度は前記円板の外周の周速度より速い構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記コイル周回部と前記樹脂材料とが接触する位置において、前記コイル周回部は前記円板の回転に対して相対的に同じ方向に回転し、前記コイル周回部の外周の前記円板の外周に対する相対的な周速度は前記円板の外周の周速度より遅い構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記コイル周回部と前記樹脂材料とが接触する位置において、前記コイル周回部は前記円板の回転に対して相対的に反対方向に回転し、前記コイル周回部の外周の前記円板の外周に対する相対的な周速度は前記円板の外周の周速度より遅い構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記コイル周回部は、前記コイル周回部の前記回転の第1回転軸と略平行な第3回転軸を中心に公転し、前記樹脂部は、前記コイル周回部が前記公転をしつつ前記回転をしながら、前記コイル周回部の周りに前記樹脂材料が接触することにより形成される構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コイル周回部の周囲に樹脂材料を均等かつ適量に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)から図1(c)は、第1の実施形態に係るコイル部品の製造方法を示す図(その1)である。
図2図2(a)から図2(c)は、第1の実施形態に係るコイル部品の製造方法を示す図(その2)である。
図3図3(a)および図3(b)は、第1の実施形態に係るコイル部品の製造方法を示す図(その3)である。
図4図4は、コアの巻芯部の長さと円板の外周上に設けられた樹脂材料の幅との関係を示す断面図である。
図5図5(a)から図5(c)は、第1の実施形態の変形例1から変形例3におけるコイル周回部の周囲への樹脂材料の塗布方法を示す側面図である。
図6図6(a)および図6(b)は、巻芯部の断面形状が矩形である場合における樹脂材料の塗布方法を示す側面図である。
図7図7は、第2の実施形態におけるコイル周回部の周囲への樹脂材料の塗布方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を適宜参照しながら、本願発明の実施形態について説明する。但し、本願発明は図示された態様に限定される訳ではない。また、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0018】
[第1の実施形態]
図1(a)から図1(c)、図2(a)から図2(c)、図3(a)、および図3(b)は、第1の実施形態に係るコイル部品の製造方法を示す図である。図1(a)は、コア10を準備する工程を示す断面図、図1(b)は、図1(a)のA方向から見た平面図である。図1(b)では、巻芯部12を点線で図示している。図1(c)は、コイル周回部42の形成後の断面図である。図2(a)は、第1の実施形態におけるコイル周回部42の周囲への樹脂材料70の塗布方法を示す側面図、図2(b)は、図2(a)の領域Aにおけるコア10の拡大図、図2(c)は、図2(a)の領域Bにおけるコア10の拡大図である。図2(b)および図2(c)では、鍔部16を透視して巻芯部12、コイル周回部42、および樹脂材料70を図示している。図3(a)は、第1の実施形態におけるコイル周回部42の周囲への樹脂材料70の塗布方法を示す側面図である。図3(a)では、鍔部16を透視して巻芯部12、コイル周回部42、および樹脂材料70を図示している。また、図2(a)から図2(c)、および図3(a)では、図の明瞭化のために、樹脂材料70にハッチングを付している。図3(b)は、樹脂部48が形成されたコイル部品の断面図である。なお、本第1の実施形態では、コア10として巻芯部12の両端に鍔部14、16を有するドラムコアの場合を例に示すが、鍔部を巻芯部12の一端にしか有さないTコアの場合でもよい。コイル部品は、電源ラインに組み込まれるパワーインダクタであってもよいし、信号ラインにおいて用いられるインダクタであってもよいし、その他であってもよい。
【0019】
図1(a)および図1(b)に示すように、Z軸方向に伸びた巻芯部12と、巻芯部12の-Z側の端に設けられた一方の鍔部14と、+Z側の端に設けられた他方の鍔部16と、を有するドラムコアであるコア10を準備する。鍔部14の巻芯部12が接続された内面とは反対側の外面18に、2つの溝部20が設けられていてもよい。2つの溝部20は、互いに略平行に延びて、鍔部14の対向する外周面に開口していてもよい。
【0020】
コア10は、例えば磁性粉末と樹脂を混合した顆粒を金型のキャビティ内に充填してプレス成形することにより成形体を形成し、この成形体に対して例えば200℃程度の熱処理を行って樹脂を固めることで形成される。磁性粉末は、例えばフェライト磁性粉末または金属磁性粉末が用いられる。フェライト磁性粉末としては、例えばNi-Zn系またはMn-Zn系等のフェライト材料が挙げられる。金属磁性粉末としては、例えばFe-Si-Cr系、Fe-Si-Al系、またはFe-Si-Cr-Al系等の軟磁性合金材料、FeまたはNi等の磁性金属材料、アモルファス磁性金属材料、若しくはナノ結晶磁性金属材料等が挙げられる。樹脂は、例えばポリビニルブチラール(PVB)樹脂またはエポキシ樹脂等の絶縁性に優れた樹脂が用いられる。
【0021】
なお、コア10は、大きな塊の成形体を加工することにより巻芯部12と鍔部14、16とを有する成形体とし、この成形体に対して熱処理を行うことで形成してもよい。熱処理は、巻芯部12と鍔部14、16とを有する成形体に加工する前に行ってもよいし、後に行ってもよい。また、コア10は、磁性粉末を樹脂で固めることにより形成する場合に限られず、磁性粉末同士を無機物で結合させることにより形成してもよい。この場合、磁性粉末をプレス成形した成形体に対して例えば600℃~1100℃程度の熱処理を行うことで、コア10を形成する。また、コア10は、磁性体である場合に限られず、酸化アルミニウム(アルミナ)または酸化シリコン(ガラス)等により形成された非磁性体である場合でもよい。
【0022】
巻芯部12のXY平面に平行な断面形状は例えば円形である。鍔部14、16のXY平面に平行な断面形状は例えば略矩形である。鍔部14、16は、例えばZ軸方向に厚みを有する板状である。巻芯部12は、Z軸方向に見て、鍔部14、16の外形より小さく、また鍔部14、16の中央付近に設けられる。コア10のX軸方向の長さ寸法、Y軸方向の長さ寸法、およびZ軸方向の長さ寸法は適宜適切に設定される。
【0023】
図1(c)に示すように、コア10を準備した後、鍔部14の外面18に金属膜30を形成する。鍔部14の外面18に溝部20が形成されている場合には、金属膜30は溝部20の内面に形成される。金属膜30は、例えばスパッタリング法または導電性ペーストの塗布によって銅(Cu)または銀(Ag)等の金属膜を形成することにより形成される。金属膜30は、金属層の単層の場合に限られず、金属層上にめっき法を用いてめっき層が形成された複数層の場合でもよい。金属膜30は、鍔部14との密着性のために、チタン(Ti)またはクロム(Cr)等の密着層を有していてもよい。
【0024】
金属膜30を形成した後、コア10の巻芯部12に導線40を巻回して導線40からなるコイル周回部42を形成する。コイル周回部42の一対の端部から導線40をそれぞれ鍔部14より外側に引き出した後に導線40を折り曲げて、導線40の端部44を金属膜30上に位置するように鍔部14の外面18上に引き出す。金属膜30が溝部20の内面に形成されている場合には、導線40の端部44を溝部20内に引き出して金属膜30上に位置するようにする。
【0025】
コイル周回部42は、巻芯部12の周りに1層だけ巻回されている場合でもよいし、一部分または全ての部分が複数層に重ねられて巻回されている場合でもよい。導線40は、例えば銅からなる金属線の周面がウレタンからなる絶縁被膜で覆われている。なお、金属線は、銅以外の金属により形成されてもよい。絶縁被膜は、ウレタン以外の絶縁材料で形成されてもよく、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、またはポリエステル等の樹脂材料で形成されてもよい。金属線の断面形状は、例えば円形であるが、矩形の場合でもよい。
【0026】
図2(a)から図2(c)に示すように、コイル周回部42が形成されたコア10の自転は可能な状態として、円盤状の回転治具50にコア10を設置する。コア10は、回転治具50の円周に沿って所定の間隔(例えば一定の間隔)で設置される。回転治具50へのコア10の設置は、コア10が自転可能であればどのような態様によって設置されてもよい。例えば、回転治具50に設けられ、回転治具50において回転することができる部材を介してコア10が設置される等、コア10は自転可能であれば回転治具50にどのように設置されてもよい。
【0027】
コア10は巻芯部12を中心に自転する。これにより、巻芯部12の周りに形成されたコイル周回部42も巻芯部12を中心に回転する。コア10およびコイル周回部42の回転の第1回転軸52は、巻芯部12の中心軸に略一致する。コア10およびコイル周回部42の回転方向を矢印56で示している。
【0028】
回転治具50は、第3回転軸54を中心として自転する。したがって、回転治具50の円周に固定されたコア10およびコイル周回部42は第3回転軸54を中心として公転することとなる。第3回転軸54と第1回転軸52とは、ほぼ平行となっている。コア10およびコイル周回部42の公転方向(すなわち回転治具50の自転方向)を矢印58で示している。
【0029】
回転治具50の傍には、樹脂材料70を塗布する塗布装置60が設けられている。塗布装置60は、液状の樹脂材料70が充填された樹脂材料槽62と、第2回転軸66を中心に自転をすることで外周68上に樹脂材料槽62から樹脂材料70が供給される円板64と、を備える。円板64の自転の第2回転軸66は、コア10およびコイル周回部42の回転の第1回転軸52並びに回転治具50の自転の第3回転軸54にほぼ平行である。円板64の自転方向を矢印72で示している。
【0030】
樹脂材料70には、絶縁性に優れた樹脂が用いられ、熱硬化性樹脂である場合が好ましく、例えばエポキシ樹脂またはポリイミド樹脂を含んでいる。なお、樹脂材料70は、平均粒径が30μm以下の磁性粒子等の磁性材料のフィラーを含んでいてもよい。例えば、樹脂材料70は、固定の成分として、フェライトの磁性粒子を40vol%以下、エポキシ樹脂を60vol%以上として混合したものでもよい。また、樹脂材料70は、シリカ粒子等の非磁性材料のフィラーを含んでいる場合でもよいし、磁性材料と非磁性材料を組み合わせてもよいし、また溶剤等を含んでいる場合でもよい。
【0031】
円板64は、回転治具50に近づく方向および離れる方向に平行移動可能となっている。円板64が平行移動可能な方向を矢印74で示している。コイル周回部42の周囲に樹脂材料70を塗布するときには、円板64は回転治具50に近づくように移動する。これにより、円板64の外周68上にある樹脂材料70がコイル周回部42に接触し、樹脂材料70がコイル周回部42の周囲に塗布されるようになる。
【0032】
例えば、コイル周回部42の第1回転軸52を中心とした回転の周期と第3回転軸54を中心とした公転の周期とが適切に設定されていて、コイル周回部42が公転によって塗布装置60による塗布位置に来たときにコイル周回部42の周りの一部に樹脂材料70が塗布され(図2(b)参照)、1周して再び塗布位置に来たときに残りの一部または全部に樹脂材料70が塗布される場合でもよい(図2(c)参照)。または、例えば回転治具50はステッピングモーター等によって所定角度だけ回転した後、所定時間停止し、その後に所定角度だけ回転することを繰り返す場合でもよい。この場合に、コイル周回部42が公転によって塗布装置60による塗布位置に来たときにコイル周回部42の周りの一部に樹脂材料70が塗布され(図2(a)参照)、コイル周回部42が公転をせずにその場で1回転する間に、円板64が矢印74の方向に動くことでコイル周回部42に近づく動作と遠ざかる動作を組み合わせて、樹脂材料70が塗布される場合でもよい。ずなわち、図2(a)において、コア10が領域Bの位置に来たときに公転が所定時間停止し、公転が停止している間にコイル周回部42が1回転して、図2(b)および図2(c)と同様に、円板64が矢印74の方向に動くことでコイル周回部42の周りに樹脂材料70が塗布される場合でもよい。このように、樹脂材料70がコイル周回部42に複数回接触することにより、コイル周回部42の周囲に樹脂材料70が塗布される。
【0033】
また、円板64に樹脂材料70を設けるとき、円板64の外周上における樹脂材料70は、塗布装置60の一部に設けられた樹脂材料70の厚みを調整する機構により、厚みを薄くする調整が行われてもよい。このようにすれば、円板64の外周上に設けられる樹脂材料70の厚みを薄く、均一とすることができる。
【0034】
図3(a)に示すように、コイル周回部42は第1回転軸52を中心として矢印56の方向に回転する。塗布装置60の円板64は第2回転軸66を中心として矢印72の方向に自転する。これにより、円板64の外周68上にある樹脂材料70が、コイル周回部42の周囲に均等かつ適量に塗布されるようになる。
【0035】
本第1の実施形態では、コイル周回部42の回転方向は時計回りで、円板64の自転方向は反時計回りとなっている。このため、コイル周回部42と円板64の外周68上の樹脂材料70とが接触する位置において、コイル周回部42は円板64に対して相対的に同じ方向に回転する。また、本第1の実施形態では、コイル周回部42の外周の円板64の外周に対する相対的な周速度は円板64の外周の周速度と略同じになっている。この場合、コイル周回部42が円板64の外周68上の樹脂材料70に接触したときに、円板64の外周68上にある樹脂材料70の量に応じた量の樹脂材料70がコイル周回部42に塗布されるようになる。
【0036】
図3(b)に示すように、コイル周回部42の周りに樹脂材料70を塗布した後、樹脂材料70を硬化させることにより、コイル周回部42の周囲を覆う樹脂部48を形成する。樹脂部48は、コイル周回部42の全てを覆う場合が好ましいが、90%以上覆っていればよく、95%以上覆っている場合がより好ましい。樹脂部48を形成した後、金属膜30の表面にはんだ膜32を塗布し、導線40の端部44における金属線と金属膜30とはんだ膜32とを接合して、コイル周回部42に電気的に接続された外部電極34を形成する。以上により、第1の実施形態に係るコイル部品が形成される。なお、外部電極34の形成は、樹脂部48を形成する前に行ってもよい。
【0037】
以上のように、本第1の実施形態によれば、図2(a)から図3(b)のように、巻芯部12を中心にコイル周回部42を回転させながら、コイル周回部42の周りに樹脂材料70を接触させて樹脂部48を形成する。このように、巻芯部12を中心にコイル周回部42を回転させながら樹脂材料70を接触させることで、コイル周回部42の周りに樹脂材料70を均等かつ適量に塗布することができる。このため、コイル周回部42の周囲に均等な厚さの樹脂部48が形成されるようになる。
【0038】
また、本第1の実施形態によれば、図2(a)から図2(c)のように、樹脂部48は、樹脂材料70がコイル周回部42に複数回接触することにより形成される。これにより、コイル周回部42の周りに樹脂材料70が均等かつ適量に塗布されやすくなり、コイル周回部42の周囲に均等な厚さの樹脂部48が形成されやすくなる。コイル周回部42の周りに樹脂材料70が均等かつ適量に塗布される点から、樹脂材料70がコイル周回部42に接触する回数は多いことが好ましく、例えば3回以上が好ましく、4回以上がより好ましく、6回以上が更に好ましい。
【0039】
また、本第1の実施形態によれば、図2(a)から図3(b)のように、樹脂部48は、コイル周回部42の回転の第1回転軸52と略平行な第2回転軸66を中心に自転する円板64の外周68上に設けられた樹脂材料70がコイル周回部42に接触することにより形成される。これにより、円板64の外周68上に設けられた樹脂材料70の量や、コイル周回部42および/または円板64の回転速度を調整することで、コイル周回部42に塗布される樹脂材料70の量を制御できる。このため、コイル周回部42の周りに適量の樹脂材料70が塗布されやすくなる。略平行とは、製造誤差程度のずれを許容するものであり、第1回転軸52に対する第2回転軸66の傾き角度が2°以下の場合である。
【0040】
また、本第1の実施形態によれば、図3(a)のように、コイル周回部42と円板64の外周68上の樹脂材料70とが接触する位置において、コイル周回部42は円板64の回転に対して相対的に同じ方向に回転する。コイル周回部42の外周の円板64の外周に対する相対的な周速度は円板64の外周の周速度と略同じである。これにより、コイル周回部42が円板64の外周68上の樹脂材料70に接触したときに、円板64の外周68上にある樹脂材料70の量に応じた量の樹脂材料70がコイル周回部42に塗布されるようになる。よって、円板64の外周68上にある樹脂材料70の量を調整することで、コイル周回部42の周囲に塗布される樹脂材料70の量を制御できる。周速度が略同じとは、制御誤差程度のずれを許容するものであり、円板64の周速度に対するコイル周回部42の周速度が98%以上102%以下の場合である。
【0041】
また、本第1の実施形態によれば、図2(a)から図2(c)のように、コイル周回部42は、コイル周回部42の回転の第1回転軸52と略平行な第3回転軸54を中心に公転する。樹脂部48は、コイル周回部42が第3回転軸54を中心に公転しつつ第1回転軸52を中心に回転をしながら、コイル周回部42の周りに樹脂材料70が接触することにより形成される。これにより、複数のコア10に対して順々にコイル周回部42の周りに樹脂材料70を塗布して樹脂部48を形成することができる。略平行とは、製造誤差程度のずれを許容するものであり、第1回転軸52に対する第3回転軸54の傾き角度が2°以下の場合である。
【0042】
図4は、コア10の巻芯部12の長さと円板64の外周68上に設けられた樹脂材料70の幅との関係を示す断面図である。図4に示すように、円板64の外周68上に設けられた樹脂材料70の巻芯部12の延伸方向(Z軸方向)における幅寸法Wは、巻芯部12の延伸方向(Z軸方向)における巻芯部12の長さ寸法Lより小さい。これにより、コイル周回部42の周りに選択的に樹脂材料70を塗布することができ、鍔部14、16に樹脂材料70が付着することを抑制できる。樹脂材料70の幅寸法Wは、巻芯部12の長さ寸法Lの80%以上95%以下が好ましく、85%以上95%以下がより好ましく、90%以上95%以下が更に好ましい。
【0043】
[変形例]
上記第1の実施形態では、コイル周回部42と円板64の外周68上の樹脂材料70とが接触する位置においてコイル周回部42は円板64に対して相対的に同じ方向に回転し、コイル周回部42の外周の円板64の外周に対する相対的な周速度が円板64の外周の周速度と略同じである場合を例に示したが、変形例ではその他の場合について説明する。
【0044】
図5(a)は、第1の実施形態の変形例1におけるコイル周回部42の周りへの樹脂材料70の塗布方法を示す側面図である。図5(a)に示すように、本変形例1では、コイル周回部42と円板64の外周68上の樹脂材料70とが接触する位置においてコイル周回部42は円板64に対して相対的に同じ方向に回転する点は上記第1の実施形態と同じだが、コイル周回部42の外周の円板64の外周に対する相対的な周速度が円板64の外周の周速度より速い点で上記第1の実施形態と異なる。
【0045】
本変形例1のように、コイル周回部42と円板64の外周68上の樹脂材料70とが接触する位置においてコイル周回部42が円板64の回転に対して相対的に同じ方向に回転する場合に、コイル周回部42の外周の円板64の外周に対する相対的な周速度が円板64の外周の周速度より速いことで、コイル周回部42の周りに塗布される樹脂材料70の量が少なくなる。例えば、円板64の外周68上にある樹脂材料70の量は上記第1の実施形態から変化させなくても、コイル周回部42の周速度だけを速くすることで、コイル周回部42の周りに塗布される樹脂材料70の量を少なく抑えることができる。本変形例1は、コイル周回部42の周りへの樹脂材料70の塗布量を少なく抑えたい場合に好適である。コイル周回部42の外周の相対的な周速度が円板64の外周の周速度より速いとは、コイル周回部42の外周の相対的な周速度が円板64の外周の周速度の1.5倍以上であり、1.8倍以上の場合でもよく、2倍以上の場合でもよい。
【0046】
図5(b)は、第1の実施形態の変形例2におけるコイル周回部42の周りへの樹脂材料70の塗布方法を示す側面図である。図5(b)に示すように、本変形例2では、コイル周回部42と円板64の外周68上の樹脂材料70とが接触する位置においてコイル周回部42は円板64に対して相対的に同じ方向に回転する点は上記第1の実施形態と同じだが、コイル周回部42の外周の円板64の外周に対する相対的な周速度が円板64の外周の周速度より遅い点で上記第1の実施形態と異なる。
【0047】
本変形例2のように、コイル周回部42と円板64の外周68上の樹脂材料70とが接触する位置においてコイル周回部42が円板64の回転に対して相対的に同じ方向に回転する場合に、コイル周回部42の外周の円板64の外周に対する相対的な周速度が円板64の外周の周速度より遅いことで、コイル周回部42の周りに塗布される樹脂材料70の量が多くなる。例えば、円板64の外周68上にある樹脂材料70の量は上記第1の実施形態から変化させなくても、コイル周回部42の周速度だけを遅くすることで、コイル周回部42の周りに塗布される樹脂材料70の量を多くすることができる。本変形例2は、コイル周回部42の周りへの樹脂材料70の塗布量を多くしたい場合に好適である。例えば、巻芯部12の断面形状が矩形のような場合でも、樹脂材料70の塗布量が多くなるために、コイル周回部42の周りに樹脂材料70が均等に塗布されやすくなる。コイル周回部42の外周の相対的な周速度が円板64の外周の周速度より遅いとは、コイル周回部42の外周の相対的な周速度が円板64の外周の周速度の0.7倍以下であり、0.5倍以下の場合でもよく、0.3倍以下の場合でもよい。
【0048】
図5(c)は、第1の実施形態の変形例3におけるコイル周回部42の周りへの樹脂材料70の塗布方法を示す側面図である。図5(c)に示すように、本変形例3では、コイル周回部42と円板64の外周68上の樹脂材料70とが接触する位置においてコイル周回部42は円板64に対して相対的に反対方向に回転し、コイル周回部42の外周の円板64の外周に対する相対的な周速度が円板64の外周の周速度より遅い点で上記第1の実施形態と異なる。
【0049】
本変形例3のように、コイル周回部42と円板64の外周68上の樹脂材料70とが接触する位置においてコイル周回部42が円板64の回転に対して相対的に反対方向に回転し、コイル周回部42の外周の円板64の外周に対する相対的な周速度が円板64の外周の周速度より遅いことで、コイル周回部42の周りに塗布される樹脂材料70の量が多くなる。例えば、円板64の外周68上にある樹脂材料70の量は上記第1の実施形態から変化させなくても、コイル周回部42の回転方向を変え、周速度を遅くすることで、コイル周回部42の周りに塗布される樹脂材料70の量を多くすることができる。本変形例3は、コイル周回部42の周りへの樹脂材料70の塗布量を多くしたい場合に好適である。コイル周回部42の外周の相対的な周速度が円板64の外周の周速度より遅いとは、コイル周回部42の外周の相対的な周速度が円板64の外周の周速度の0.7倍以下であり、0.5倍以下の場合でもよく、0.3倍以下の場合でもよい。
【0050】
上記第1の実施形態およびその変形例では、巻芯部12の断面形状が円形である場合を例に示したが、矩形等、その他の場合でもよい。矩形の場合、角部が面取りされていて丸みを帯びている場合でもよい。図6(a)および図6(b)は、巻芯部12の断面形状が矩形である場合における樹脂材料70の塗布方法を示す側面図である。図6(a)に示すように、巻芯部12の断面形状が正方形に近い場合、コイル周回部42の第1回転軸52を中心とする回転の周期と第3回転軸54(図2(a)参照)を中心とする公転の周期とを適切に設定して、矩形の各辺に対応する箇所に4回に分けて樹脂材料70を塗布してもよい。または、コイル周回部42が公転をせずにその場で1回転する間に、円板64が矢印74の方向に動くことでコイル周回部42に近づく動作と遠ざかる動作を組み合わせて、矩形の各辺に対応する箇所に4回に分けて樹脂材料70を塗布してもよい。
【0051】
図6(b)に示すように、巻芯部12の断面形状が細長の長方形である場合、コイル周回部42の第1回転軸52を中心とする回転の周期と第3回転軸54(図2(a)参照)を中心とする公転の周期とを適切に設定して、長方形の長辺に対応する箇所に2回に分けて樹脂材料70を塗布してもよい。または、コイル周回部42が公転をせずにその場で1回転する間に、円板64が矢印74の方向に動くことでコイル周回部42に近づく動作と遠ざかる動作を組み合わせて、長方形の長辺に対応する箇所に2回に分けて樹脂材料70を塗布してもよい。長方形の短辺は短いことから、塗布した樹脂材料70が短辺側に回り込んで、コイル周回部42の周りに樹脂材料70が塗布されるようになる。
【0052】
巻芯部12の断面形状が矩形の場合、コア10が第1回転軸52を中心に自転しているため、塗布装置60の円板64を矢印74(図2(a)参照)の方向に移動させ、円板64とコイル周回部42との間の距離を変化させつつ樹脂材料70をコイル周回部42の周りに塗布することになる。この場合に、図5(b)および図5(c)のような樹脂材料70の塗布量が多くなる方法を用いることで、円板64の移動距離を小さく抑えることができる。よって、円板64の移動に伴う生産性の低下を抑制することができる。
【0053】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態およびその変形例では、樹脂材料槽62と円板64を備える塗布装置60を用いてコイル周回部42の周りに樹脂材料70を塗布する場合を例に示したが、本第2の実施形態では、ディスペンサ装置80を用いてコイル周回部42の周りに樹脂材料70を塗布する場合について説明する。コイル周回部42への樹脂材料70の塗布方法が異なる点以外は、上記第1の実施形態に係るコイル部品の製造方法と同じであるため、樹脂材料70の塗布以外の製造工程については説明を省略する。
【0054】
図7は、第2の実施形態におけるコイル周回部42の周りへの樹脂材料70の塗布方法を示す断面図である。図7に示すように、巻芯部12を中心にコイル周回部42を回転させながら、ディスペンサ装置80に備わるディスペンスノズル82から樹脂材料70を吐出し、コイル周回部42に樹脂材料70を接触させる。その後、上記第1の実施形態の図3(b)のように、コイル周回部42の周りに形成された樹脂材料70を硬化させることで、コイル周回部42の周囲を覆う樹脂部48を形成する。
【0055】
本第2の実施形態のように、ディスペンサ装置80を用いてコイル周回部42に樹脂材料70を塗布してもよい。このように一般的に普及しているディスペンサ装置80を用いて樹脂材料70を塗布する場合でも、巻芯部12を中心にコイル周回部42を回転させながらコイル周回部42の周りに樹脂材料70を接触することで、コイル周回部42の周囲に樹脂材料70を均等かつ適量に塗布することができる。
【0056】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 コア
12 巻芯部
14、16 鍔部
18 外面
20 溝部
30 金属膜
32 はんだ膜
34 外部電極
40 導線
42 コイル周回部
44 導線の端部
48 樹脂部
50 回転治具
52 第1回転軸
54 第3回転軸
60 塗布装置
62 樹脂材料槽
64 円板
66 第2回転軸
68 外周
70 樹脂材料
80 ディスペンサ装置
82 ディスペンスノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7