(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145877
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】自動車の電池パック冷却装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20231004BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052762
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石原 歩実
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AA06
3D038AA09
3D038AC06
3D038AC11
3D038AC22
3D235AA02
3D235BB36
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE64
3D235FF06
3D235HH07
3D235HH34
(57)【要約】
【課題】本開示の少なくとも一つの実施形態は、車両の床下を流れる走行風や外気風を電池パックに効率よく導くようにして電池パックの冷却を促進する自動車の電池パック冷却装置を提供することを目的とする。
【解決手段】車両3の床下に設置される電池パック5を冷却する自動車の電池パック冷却装置1であって、前記電池パックの内部温度を検出する温度検出手段33と、前記電池パックを車体に対して上下に昇降可能に支持する昇降手段15と、前記温度検出手段からの検出温度に基づいて前記昇降手段を制御して前記電池パックを前記床下において上下に昇降制御する制御装置23と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床下に設置される電池パックを冷却する自動車の電池パック冷却装置であって、
前記電池パックの内部温度を検出する温度検出手段と、
前記電池パックを車体に対して上下に昇降可能に支持する昇降手段と、
前記温度検出手段からの検出温度に基づいて前記昇降手段を制御して前記電池パックを前記床下において上下に昇降制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする自動車の電池パック冷却装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記電池パックの内部温度が異常判定温度範囲以上に上昇した場合には、前記昇降手段によって前記電池パックを車両の最低地上高を確保した上で且つ所定の位置まで下降する下降制御部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の自動車の電池パック冷却装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記電池パックの内部温度が前記異常判定温度範囲以下に低下した場合には、前記昇降手段によって前記電池パックをフロアパネルの下面と前記電池パックの上面との間に形成される隙間が閉ざされる位置まで上昇する上昇制御部を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車の電池パック冷却装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記電池パックを昇降する際に前記昇降手段のアクチュエータによって消費される電力を補うように車両に搭載されているジェネレータを制御するジェネレータ制御部を有する、ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の自動車の電池パック冷却装置。
【請求項5】
前記電池パックは、車両の床下に設置可能なように室内側に凹状に形成された収容部に収容され、前記電池パックが前記隙間を閉じる位置まで上昇したとき、前記電池パックの下面は、前記収容部の周囲のフロアパネルの下面より上方に位置される、ことを特徴とする請求項3に記載の自動車の電池パック冷却装置。
【請求項6】
前記電池パックは、前記昇降手段を介して車体骨格部材に取り付けられ、前記昇降手段に昇降駆動用のアクチュエータを備える、ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の自動車の電池パック冷却装置。
【請求項7】
前記電池パックの前方であって前記床下に、車両前方からの走行風を前記電池パックに導くように偏向する走行風導入部材をさらに備える、ことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の自動車の電池パック冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車の電池パック冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は使用(充放電)することで発熱する。電池への充電及び電池からの放電が長時間に及ぶ場合には、電池冷却が追い付かずに電池温度が上昇し、電池の温度抑制制御がかかり動力性能が低下する可能性がある。
【0003】
電動車両の床下に設置される二次電池の電池温度を下げる電池冷却技術として種々提案されている。例えば、特許文献1には、電動自動車の床下に電池パックを収容可能なように車内側に凹状の収容部を設け、この収容部内であって電池パックより前方に、収容部前方の床下を流れる走行風を電池パックに向けて上向きに偏向する導風板を設け、走行風を電池パックに導いて電池パックを冷却することが示されている。
【0004】
また、特許文献2には、特許文献と同様に、床下に電池パックを設け、走行風によって電池を冷却する構造が示されている。さらに、特許文献2には、床下面と電池パックとの間の隙間が、車体後方側へ向かうに従って漸減し、この漸減する隙間内に導入された車体前方からの走行風の流速が、隙間の車体後方側へ向かうに従い増加することで、電池パックの冷却性能を良好にすることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4784058号公報
【特許文献2】特開2013-28192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1、2には、走行風を電池パックに導いて冷却することが示されているが何れの電池パックも、車体に対して上下位置は固定であり上下に昇降可能には支持されていない。
【0007】
また、特許文献1においては、車体前方の床下を流れる走行風を導風板で凹状内の電池パック側に流れを変えることが示されるが、流れを変えるため、走行風を効率よく利用しているとは言い難い。また、特許文献2においては、電池パックの前方にはコンパートメントが存在し、そのコンパートメントには、エンジン、モータ等が配置されるため、車体前後方向に流れる走行風を効率よく利用しているとは言い難い。このように、走行風を利用しての電池パックの冷却構造については、さらなる改良が望まれる。
【0008】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、車両の床下を流れる走行風や外気風を電池パックに効率よく導くようにして電池パックの冷却を促進する自動車の電池パック冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一つの実施形態では、車両の床下に設置される電池パックを冷却する自動車の電池パック冷却装置であって、前記電池パックの内部温度を検出する温度検出手段と、前記電池パックを車体に対して上下に昇降可能に支持する昇降手段と、前記温度検出手段からの検出温度に基づいて前記昇降手段を制御して前記電池パックを前記床下において上下に昇降制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
このような構成(1)によれば、電池パックの内部温度に基づいて床下に設置される電池パックが上下に昇降するので、電池パックが走行風や外気風に晒される割合(程度)が変化するため、電池パックの冷却を電池パックの位置が固定されている場合に比べて効率よく行うことが可能になる。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では、前記制御装置は、前記電池パックの内部温度が異常判定温度範囲以上に上昇した場合には、前記昇降手段によって前記電池パックを車両の最低地上高を確保した上で且つ所定の位置まで下降する下降制御部を有する。
【0012】
このような構成(2)によれば、下降制御部によって、電池パックの内部温度が異常判定温度範囲以上に上昇した場合には、電池パックを車両の最低地上高を確保した上で且つ所定の位置まで下降するので、車両前方からの走行風が電池パックに当たる度合いが向上する。
【0013】
また、電池パックの下降によって、フロアパネルの下面と電池パックの上面との間に隙間が形成されるので、この隙間にも走行風が流れるため、電池パックからの放熱効果がさらに向上する。また、電池はパックの最低地上高は確保されるので、走行に支障を及ぼすことはない。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、前記制御装置は、前記電池パックの内部温度が前記異常判定温度範囲以下に低下した場合には、前記昇降手段によって前記電池パックをフロアパネルの下面と前記電池パックの上面との間に形成される隙間が閉ざされる位置まで上昇する上昇制御部を有する。
【0015】
このような構成(3)によれば、上昇制御部によって、電池パックの内部温度が異常判定温度範囲以下に低下した場合には、電池パックをフロアパネルの下面と電池パックの上面との間に形成される隙間が閉ざされる位置まで上昇するので、この隙間に路面からの飛び石や跳ね返り水等が侵入して、隙間内部の損傷や錆が発生することを防止できる。さらに、電池パックを下降状態のまま走行する場合に比べて走行抵抗の低減も期待できる。
【0016】
(4)幾つかの実施形態では、前記制御装置は、前記電池パックを昇降する際に前記昇降手段のアクチュエータによって消費される電力を補うように車両に搭載されているジェネレータを制御するジェネレータ制御部を有する。
【0017】
このような構成(4)によれば、ジェネレータ制御部によって、電池パックを昇降する際に昇降手段のアクチュエータによって消費される電力を補うようにジェネレータの発電量を制御するので、電池パック内の二次電池の充電量の低下等によって車両の走行性能への悪影響が防止される。
【0018】
(5)幾つかの実施形態では、前記電池パックは、車両の床下に設置可能なように室内側に凹状に形成された収容部に収容され、前記電池パックが前記隙間を閉じる位置まで上昇したとき、前記電池パックの下面は、前記収容部の周囲のフロアパネルの下面より上方に位置される。
【0019】
このような構成(5)によれば、電池パックの上面が凹状の収容部の上端部に形成される隙間を閉じる位置まで上昇したとき、電池パックの下面は、収容部の周囲のフロアパネルの下面より上方に位置されるので、電池パックは、収容部の内側に入り込み電池パックの周囲の車体部材によって保護される。これによって、走行時に路面からの飛び石や障害物等によって電池パックの下面が損傷することが低減される。
【0020】
(6)幾つかの実施形態では、前記電池パックは、前記昇降手段を介して車体骨格部材に取り付けられ、前記昇降手段に昇降駆動用のアクチュエータを備える。
【0021】
このような構成(6)によれば、昇降手段のアクチュエータの駆動電力が近くの電池パックから供給可能であるため、アクチュエータへの電力供給の配線や配管等の設置コストが低減され、低コストで冷却装置を設置することが可能になる。
【0022】
(7)幾つかの実施形態では、前記電池パックの前方であって前記床下に、車両前方からの走行風を前記電池パックに導くように偏向する走行風導入部材をさらに備える。
【0023】
このような構成(7)によれば、電池パックが上昇位置及び下降位置の何れの位置にあっても、走行風導入部材によって電池パックへ走行風が導かれるので、走行風が電池パックに当たる度合いがさらに向上する。
【発明の効果】
【0024】
本開示の少なくとも一つの実施形態によれば、車両の床下を流れる走行風や外気風を電池パックに効率よく導くようにして電池パックの冷却を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の一実施形態に係る自動車の電池パック冷却装置の構成を概略的に示す全体構成図である。
【
図2】
図1の電池パックが上下に昇降したときの状態を概略的に示す車両前方から見た正面図である。
【
図3】
図1の電池パックが下降したときの状態を概略的に示す車両側方から見た側面図である。
【
図4】
図1の電池パックが上昇したときの状態を概略的に示す車両側方から見た側面図である。
【
図5】制御装置の下降制御部及び上昇制御部の制御フローチャートである。
【
図6】制御装置のジェネレータ制御部の制御フローチャートである。
【
図7】他の実施形態を示し、電池パックが下降したときの状態を概略的に示す車両側方から見た側面図であり、
図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施形態に係る自動車の電池パック冷却装置について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示に限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、車両前後左右、及び上下の方向を示す場合は、運転席に着座した状態に基づいて記載する。
【0027】
(一実施形態)
図1~6を参照して一実施形態を説明する。本開示の少なくとも一実施形態に係る自動車の電池パック冷却装置1は、バッテリの電力だけでモータ駆動するEV(電気自動車)や、エンジンとモータとの2つの動力を搭載しこれらを効率的に使い分けるHV(ハイブリッド自動車)や、外部充電及び外部給電が可能でエンジンとモータとの2つの動力を搭載しこれらを効率的に使い分けるPHEV(プラグインハイブリッド自動車)等の電動車両(以下車両という)3に適用される。
【0028】
図1は、一実施形態に係る自動車の電池パック冷却装置1の全体構成を概略的に示す斜視図である。電池パック5は、複数の電池セルが積層されて構成される電池モジュールを、複数収容したものであり、箱形状を有している。また、この電池パック5が設置される車両3は、フロアパネル7の車幅方向中央を車両前後方向に沿って車室内側に隆起させることによって。フロアパネル7の下面7bに車両前後方向に延びる凹状の収容部9が形成されている(
図3、4)。
【0029】
図1、2に示すように、電池パック5の車幅方向の両側には、車両前後方向に沿って電池パック5を車体に取り付ける取付ブラケット11が設けられており、この取付ブラケット11によって電池パック5は、電池パック5の車幅方向の外側に車両前後方向に延在する車体骨格部材である左右一対のサイドフレーム13に支持される。
【0030】
また、取付ブラケット11は、電池パック5を車体に対して上下動に昇降可能に支持する昇降手段15を介してサイドフレーム13に取付けられ、取付ブラケット11は、例えば、電池パック5の両側に4箇所ずつ設けられ、各取付ブラケット11に昇降手段15が設置されている。
【0031】
この昇降手段15は、サイドフレーム13に固定され、昇降機構17と昇降機構17を駆動するアクチュエータ(電動モータの回転力を利用)21とを備え、アクチュエータ21の駆動電力は近設される電池パック5から供給可能に構成されている。
【0032】
さらに、昇降手段15には、昇降機構17によって上下昇降可能なアーム部19が電池パック5側に突出して設けられている。そして、このアーム部19に電池パック5の取付ブラケット11が結合される。
【0033】
昇降機構17としては。例えば、(a)パンタグラフ構造のリンク機構によって構成され、リンク機構の一部のリンクを駆動するアクチュエータ21によって回動してアーム部19を上下に昇降可能に支持する。
【0034】
(b)また、エアシリンダとエアシリンダ内を摺動するピストン部材によって構成し、ピストン部材を介してアーム部19を上下に昇降可能に支持する。エアシリンダを上下方向に設置して、ピストン部材が上下方向に摺動するようにして、エアシリンダ内への圧縮エア又は負圧エアの供給及び排出によってピストン部材を上下に昇降可能に構成する。圧縮エア又は負圧エアは、アクチュエータ21によって回動する圧縮機又は負圧機から供給される。また、負圧エアは、ブレーキ負圧を利用してもよい。
【0035】
(c)また、滑車によって構成し、滑車部分に巻き付けられたワイヤの長さを調整することでアーム部19を上下に昇降可能に支持する。滑車は、アクチュエータ21によって回転させる。
【0036】
(d)また、雌ねじ部と雄ねじ部との組み合わせからなる円筒部材及び円柱部材によって構成し、円筒部材を介してアーム部19を上下に昇降可能に支持する。雄ねじ部の円柱部材をアクチュエータ21によって回動して、雌ねじ部の円筒部材に結合されたアーム部19を上下に昇降する。
【0037】
なお、昇降手段15については、複数の取付ブラケット11のそれぞれに設置される例を説明したが、電池パック5の両側にそれぞれ1箇所ずつ設置してもよい。すなわち、電池パック5の両側の複数の取付ブラケット11を、片側毎にまとめて車両前後方向に延びる一つの取付フレーム部材に取り付け、左右の取付フレームをそれぞれサイドフレーム13に固定される1箇所の昇降手段15によって昇降するようにしてもよい。
【0038】
さらに、車両3の電池パック冷却装置1には、昇降手段15の作動を制御する制御装置23が備えられている。制御装置23は、
図1に示すように、電池パック5の下降を制御する下降制御部25と、電池パック5の上昇を制御する上昇制御部27とを有し、アクチュエータ21の駆動を制御して電池パック5を下降、上昇、停止の制御を行う。
【0039】
さらに、制御装置23は、
図1に示すように、電池パック5の昇降を行うアクチュエータ21の作動時に、電池パック5内に収容されている二次電池からの電力消費を補うようにジェネレータ29の作動を制御するジェネレータ制御部31を有している。二次電池は主に車両3の走行用の駆動モータの駆動源として搭載されている。
【0040】
電池パック5には、電池パック5内の温度、例えば、電池セルの温度を検出する電池温度センサ(温度検出手段)33が設置されている。さらに、電池パック5の下面5bから路面35までの距離を検出する電池パック位置センサ37が電池パック5の下面部分に設置されている。そして、これら電池温度センサ33及び電池パック位置センサ37からの信号が制御装置23に入力されて、下降制御部25及び上昇制御部27は、電池パック5の下降、上昇、停止の制御を行う。
【0041】
以上の一実施形態の構成によれば、電池パック5の内部温度に基づいて床下に設置される電池パック5が上下に昇降されるので、電池パック5が走行風や外気風に晒される割合(程度)が変化するため、電池パック5の冷却を電池パック5の位置が固定されている場合に比べて効率よく行うことが可能になる。
【0042】
また、電池パック5は昇降手段15を介して車体骨格部材であるサイドフレーム13に取り付けられ、昇降手段15には、昇降駆動用のアクチュエータ(電動モータ)21が備えられているため、アクチュエータ21への電力が近くの電池パック5から供給可能となり、電気配線の張り回し等の設置面でコスト低減が可能である。
【0043】
幾つかの実施形態では、制御装置23の下降制御部25は、電池パック5がフロアパネル7の下面7bと電池パック5の上面5aとの間に形成される隙間Sが閉ざされる最上昇位置にあるときに(
図4)、電池温度センサ33によって検出された電池パック5の内部温度が異常判定温度範囲、例えば、35℃から50℃の範囲以上に上昇した場合には、電池パック位置センサ37からの信号に基づいて昇降手段15を制御して、電池パック5の下面5bが路面35から最低地上高を確保した上で、所定の最下降位置まで下降するように制御する(
図3)。
【0044】
なお、異常判定温度範囲の35℃から50℃は一例であり、電池パック5内の電池セルに異常が生じて発熱している可能性が高いと判定できる温度範囲である。電池パック5内の電池セル数、電池セルの配置、温度センサの設置場所等を基に設定される値である。
【0045】
また、制御装置23の上昇制御部27は、電池パック5が最下降位置にあるときに(
図3)、電池温度センサ33によって検出された電池パック5の内部温度が異常判定温度範囲以下に低下した場合には、電池パック位置センサ37からの信号に基づいて昇降手段15を制御して、フロアパネル7の下面7bと電池パック5の上面5aとの間に形成される隙間Sが閉ざされる最上昇位置まで上昇するように制御する(
図4)。
【0046】
以上のように、制御装置23の下降制御部25及び上昇制御部27によって電池パック5は、電池パック5の内部温度が、電池セルに異常が生じて発熱している可能性が高いと判定する異常判定温度範囲を境として最下降位置と最上昇位置との間を昇降するように制御される。
【0047】
図5のフローチャートを参照して制御装置23の下降制御部25及び上昇制御部27による電池パック5の昇降制御のフローを説明する。
【0048】
まず、ステップS1では、電池温度センサ33からの検出温度及び電池パック位置センサ37からのデータを取得する。ステップS2では、電池パック5が最上昇位置かを判定する。ステップS2で最上昇位置であると判定した場合にはステップS3に進み、ステップS3では、電池温度は50℃以上かを判定する。ステップS3で50℃以上と判定した場合には、ステップS4に進み、ステップS4では、電池パック5を下降させてステップS5に進む。
【0049】
また、ステップS2で最上昇位置でないと判定した場合、及びステップS3で電池温度が50℃以上でないと判定した場合にも、それぞれステップS5に進む。
【0050】
ステップS5では、電池パック5が最下降位置かを判定する。ステップS5で最下降位置であると判定した場合にはステップS6に進み、ステップS6では、電池温度は35℃以下かを判定する。ステップS6で35℃以下と判定した場合には、ステップS7に進み、ステップS7では、電池パック5を上昇させてステップS1にリターンする。
【0051】
また、ステップS5で最下降位置でないと判定した場合、及びステップS6で電池温度が35℃以下でないと判定した場合にも、それぞれステップS1にリターンする。
【0052】
従って、以上の実施形態の構成によれば、電池パック5がフロアパネル7の下面7bと電池パック5の上面5aとの間に形成される隙間Sが閉ざされる位置(最上昇位置)にあるとき、電池パック5の内部温度が異常判定温度範囲以上に上昇した場合には、電池パック5を車両3の最低地上高を確保した所定の位置(最下降位置)まで下降するので、車両前方からの走行風が電池パック5に当たる度合いが向上する。
【0053】
さらに、電池パック5の下降によって、フロアパネル7の下面7bと電池パック5の上面5aとの間に隙間Sが形成されるので、この隙間Sにも走行風が流れるため、電池パック5からの放熱効果がさらに向上する。また、電池パック5の最低地上高は確保されるので、走行に支障を及ぼすことはない。
【0054】
また、電池パック5が最下降位置にあるとき、電池パック5の内部温度が異常判定温度範囲以下に低下した場合には、最上昇位置まで上昇するので、隙間Sに路面35からの飛び石や跳ね返り水等が侵入して、隙間S内部の損傷や錆が発生することを防止できる。さらに、電池パック5を下降状態のまま走行する場合に比べて電池パック5が凹状の収容部9内に収容されるため走行抵抗の低減も期待できる。
【0055】
なお、電池パック5は、内部温度が正常状態の場合(35℃以下の場合)には最上昇位置に保持されているので、隙間S内部の損傷や錆の発生は防止され、さらに、走行抵抗の低減効果も期待できる。
【0056】
また、最下降位置は固定値ではなく可変値として、車速に応じて最低地上高ぎりぎりの高さとするか、最低地上高より余裕を付加した高さとするかのように車速に応じた可変値として設定しもよい。例えば、車速が高くなる程、最下降位置を最低地上高ぎりぎりまで下げて、電池パック5の上面5aと下面5bとの両側からの冷却効果を向上するようにしてもよい。
【0057】
さらに、電池パック5の内部温度に応じて最低地上高ぎりぎりの高さとするか、最低地上高より余裕を付加した高さとするかのように電池パック5の内部温度に応じた可変値として設定しもよい。例えば、電池パック5の内部温度が50℃以上の場合に、50℃を超える温度が高い程、最下降位置を最低地上高ぎりぎりまで下げて、電池パック5の上面5aと下面5bとの両側からの冷却効果を向上するようにしてもよい。
【0058】
幾つかの実施形態では、制御装置23のジェネレータ制御部31は、電池パック5を昇降する際にアクチュエータ(電動モータ)21によって消費される電力を補うように車両に搭載されているジェネレータ29を制御する。
【0059】
ジェネレータ制御部31による制御フローを
図6に示すフローチャートを参照して説明する。まず、ステップS11では、電池温度センサ33からの検出温度及び電池パック位置センサ37からのデータを取得する。ステップS12では、電池温度、電池パック位置の検出値から電池パック5が昇降されるかを予測する。ステップS13では、昇降の可能性があると判定した場合には、アクチュエータ21によって消費される電力(すなわち、アクチュエータ21の駆動力又は駆動力+αに相当する電力)を補うようにジェネレータ29に発電指示を行う。ステップS14では、ジェネレータ29を駆動して電池パック5の昇降を行う。
【0060】
以上の実施形態の構成によれば、ジェネレータ制御部31によって、電池パック5を昇降する際にアクチュエータ21によって消費される電力を補うようにジェネレータ29が発電制御されるので、電池パック5内の二次電池の充電量の低下等によって車両の走行性能への悪影響が防止される。
【0061】
幾つかの実施形態では、
図4に示すように、電池パック5は、車両3の床下に設置可能なように室内側に凹状に形成された収容部9の内部に収容され、電池パック5が隙間Sを閉じる位置、すなわち最上昇位置まで上昇したとき、電池パック5の下面5bは、収容部9の周囲のフロアパネル7の下面7bより上方に位置される(
図4のH)。
【0062】
以上の実施形態の構成によれば、電池パック5の上面5aが凹状の収容部9の上端部に形成される隙間Sを閉じる位置、すなわち最上昇位置まで上昇したとき、電池パック5の下面5bは、収容部9の周囲のフロアパネル7の下面7bより上方に位置されるので、電池パック5は、収容部9の内側に入り込み電池パック5の周囲の車体部材によって保護される。これによって、走行時に路面からの飛び石や障害物等によって電池パック5の下面5bが損傷することが低減される。
【0063】
(他の実施形態)
図7を参照して他の実施形態を説明する。他の実施形態は、前述の一実施形態に対して、電池パック5の前方であって凹状の収容部9の入口部分に、車両前方からの走行風を電池パック5に導いて当てるように上方向に偏向する走行風導入部材39を更に設ける点が異なる。他の実施形態において、一実施形態の構成要件と同じものは同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0064】
図7に示すように、電池パック5の前方であって、電池パック5が収容される凹形状の収容部9の入口部分であって、車両前方の傾斜部分に収容部9の内側に向かって突設されて、車両前方から床下に沿って流れる走行風を凹形状に沿って上方に偏向して電池パック5の前端部分に導き、電池パック5に当てるようにする走行風導入部材39が設けられている。
【0065】
以上の他の実施形態の構成によれば、電池パック5が上昇位置及び下降位置の何れの位置であっても、走行風導入部材39によって車両3の床下に沿って流れる走行風が電池パックへ導かれるので、走行風を電池パックに効率よく当てることができ、電池パック5の冷却効果が向上する。特に、電池パック5が最下降位置にあるときに、電池パック5とフロアパネル7との間に形成される隙間Sに流れる走行風の風量を増加できるため、電池パック5の冷却効果がさらに向上する。
【符号の説明】
【0066】
1 電池パック冷却装置
3 車両
5 電池パック
7 フロアパネル
9 収容部
11 取付ブラケット
13 サイドフレーム
15 昇降手段
17 昇降機構
19 アーム部
21 アクチュエータ
23 制御装置
25 下降制御部
27 上昇制御部
29 ジェネレータ
31 ジェネレータ制御部
33 電池温度センサ(温度検出手段)
35 路面
37 電池パック位置センサ
39 走行風導入部材
S 隙間