(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145881
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】遮音パネル
(51)【国際特許分類】
G10K 11/168 20060101AFI20231004BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20231004BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
G10K11/168
F16F15/02 Q
G10K11/16 120
G10K11/16 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052770
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】野上 洋平
(72)【発明者】
【氏名】前田 大地
【テーマコード(参考)】
3J048
5D061
【Fターム(参考)】
3J048AC03
3J048BD01
3J048BD04
3J048EA36
3J048EA38
5D061AA04
5D061BB17
5D061GG01
(57)【要約】
【課題】1次固有振動数における共振を抑制し、全周波数域、特に低周波域での遮音性能の落ち込みを改善する遮音パネルを提供する。
【解決手段】本発明の遮音パネル1は、凹凸形状部20を有する基材2と、拘束層及び樹脂層を積層してなる拘束型制振材、並びに、ゴムシートの少なくともいずれかである制振材3とを備え、凹凸形状部20の少なくとも一部に制振材3が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸形状部を有する基材と、
拘束層及び樹脂層を積層してなる拘束型制振材、並びに、ゴムシートの少なくともいずれかである制振材とを備え、
前記凹凸形状部の少なくとも一部に前記制振材が設けられている、遮音パネル。
【請求項2】
前記凹凸形状部において、前記基材上に、前記拘束型制振材、前記ゴムシートの順に積層されている、請求項1に記載の遮音パネル。
【請求項3】
前記制振材の貼合率は、前記基材の一方の面の表面積に対して、10%~100%である、請求項1又は2に記載の遮音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物における室内環境及び車両における車内環境を向上させるために外部との仕切り部において騒音を遮る性能の要求が増している。外部との仕切り部において、騒音を遮るために、吸音材を挿入した二重壁構造を採用するものがある(例えば、特許文献1参照)。
従来、外部の仕切り部において音を遮断する遮音パネルには、コンクリートや鉄板など質量の大きい材料を採用することが有効とされている。質量の大きい材料を用いる音の遮断効果は、質量則に従い、周波数が低くなるにつれて劣化する性質がある。
【0003】
そこで、音を遮断する遮音パネルには、低周波数(100~400Hz)の遮音性能を向上させるために、剛性則に従い、剛性の高い材料を採用することがある。遮音パネルに剛性の高い材料を採用することで、低周波数から初めに現れる共振であり、遮音性能が著しく落ち込む1次固有振動数を高周波数側へシフトさせることが可能である。しかし、遮音パネルの高周波数側へシフトした1次固有振動数で著しく遮音性能が落ち込んでしまうことに変わりはなく、騒音を根本的に遮ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような事情に鑑み、本発明は、1次固有振動数における共振を抑制し、全周波数域、特に低周波域での遮音性能の落ち込みを改善する遮音パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、凹凸形状部を有する基材に、制振材を貼付することで1次固有振動数における共振を抑制し、遮音性能の落ち込みを改善することが可能であることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]凹凸形状部を有する基材と、拘束層及び樹脂層を積層してなる拘束型制振材、並びに、ゴムシートの少なくともいずれかである制振材とを備え、前記凹凸形状部の少なくとも一部に前記制振材が設けられている、遮音パネル。
[2]前記凹凸形状部において、前記基材上に、前記拘束型制振材、前記ゴムシートの順に積層されている、[1]に記載の遮音パネル。
[3]前記制振材の貼合率は、前記基材の一方の面の表面積に対して、10%~100%である、[1]又は[2]に記載の遮音パネル。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1次固有振動数における共振を抑制し、全周波数域、特に低周波域での遮音性能の落ち込みを改善する遮音パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る遮音パネルの平面図であり、
図1(b)は、本発明の実施形態に係る遮音パネルの側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る遮音パネルにおける制振材の積層を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の実施形態に係る遮音パネルの平面図であり、
図3(b)は、本発明の実施形態に係る遮音パネルの側面図である。
【
図4】実施例及び比較例に係る遮音パネルの周波数ごとに面密度から計算した質量則を音響透過損失から引いたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る遮音パネル1は、
図1に示すように、基材2と、制振材3とを備える。遮音パネル1は、基材2の凹凸形状部20の少なくとも一部に制振材3が設けられている。
【0011】
基材2は、
図1(a)及び(b)に示すように、凹凸形状部20を有する。凹凸形状部20の凹凸形状とは、一方の面2A側、またはその逆側に突出し、内部が空洞の形状をいい、例えば、
図1(b)に示すように、湾曲面からなる半球形状をいう。凹凸形状部20は、全体として凹凸形状であればよく、完全に曲面である必要はなく多面体で構成されていてもよいし、局所的に凹部、平面部があってもよい。凹凸形状部20の凹凸形状としては、例えば、ピラミッド形状、及びかまぼこ形状等が挙げられる。基材2が凹凸形状部20を有することで、基材2の剛性が向上し、1次固有振動数以下の低周波数の振動を抑制することができ、低周波域での遮音性能の落ち込みを改善することができる。
基材2は、凹凸形状部20以外の箇所を有してもよく、例えば、
図1(a)に示すように、平面である基礎部21を四隅に備えてもよい。
【0012】
基材2としては、機械的剛性を有しつつ、遮音性能を向上させるために空気を通さない材料であれば特に限定はなく、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂及びエポキシ樹脂等の少なくともいずれか1種を含む樹脂板などの有機材料、並びに、鋼板、ステンレス板、鉄板及びアルミ板等の金属板などの無機材料が挙げられる。また、基材2としては、セラミック板、石膏ボード及びFRP板等の複合材料を採用することができる。
【0013】
基材2の厚さは、機械的剛性を有しつつ、軽量化に寄与する観点から、1.0mm~5.0mmであることが好ましく、1.2mm~4.5mmであることがより好ましく、1.4mm~4.0mmであることがさらに好ましい。
【0014】
凹凸形状部20の高さ(
図1におけるZ軸方向)は、機械的剛性を有しつつ、1次固有振動数以下の低周波数の振動を抑制する観点から、基礎部21の表面から10mm~100mmであることが好ましく、15mm~80mmであることがより好ましく、20mm~60mmであることがさらに好ましい。
なお、凹凸形状部20の高さとは、凹凸形状部20の頂部の高さをいい、具体的には、基礎部21の表面から一番高い箇所の高さをいう。
【0015】
基材2における凹凸形状部20の占める面積は、1次固有振動数以下の低周波数の振動を抑制する観点から、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0016】
基材2の引張弾性率は、1GPa以上であることが好ましく、10GPa以上であることがより好ましく、100GPa以上であることがさらに好ましい。基材2の引張弾性率が上記下限値以上であることで、振動により発生する基材2と拘束層30aに挟まれた樹脂層30bのせん断歪を大きくして、エネルギーの吸収量を大きくすることで、1次固有振動数における遮音性能の落ち込みを改善することができる。また、基材2の剛性を高めて、1次固有振動数をより高周波数側へシフトさせることが可能である。基材2の引張弾性率の上限は特に限定されないが、300GPaが実質的な上限である。
なお、基材2の引張弾性率は、JIS K 7161-1:2014に準ずる方法により測定することができる。
【0017】
基材2の曲げ弾性率は、1GPa以上であることが好ましく、10GPa以上であることがより好ましく、100GPa以上であることがさらに好ましい。基材2の曲げ弾性率が上記下限値以上であることで、振動により発生する基材2と拘束層30aに挟まれた樹脂層30bのせん断歪を大きくして、エネルギーの吸収量を大きくすることで、1次固有振動数における遮音性能の落ち込みを改善することができる。また、基材2の剛性を高めて、1次固有振動数をより高周波数側へシフトさせることができる。基材2の曲げ弾性率の上限は特に限定されないが、300GPaが実質的な上限である。
なお、基材2の曲げ弾性率は、JIS K 7171:2016に準ずる方法により測定することができる。
【0018】
基材2が樹脂板である場合、基材2の破断時の伸びは、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。基材2の破断時の伸びが上記範囲内であることで、振動により発生する基材2と拘束層30aに挟まれた樹脂層30bのせん断歪を大きくして、エネルギーの吸収量を大きくすることで、1次固有振動数における遮音性能の落ち込みを改善することができる。また、基材2の剛性を高めて、1次固有振動数をより高周波数側へシフトさせることができる。
なお、基材2の破断時の伸びは、JIS K 7127:1999に準ずる方法により測定することができる。
【0019】
基材2が樹脂板である場合、基材2の密度は、0.80g/cm3~1.50g/cm3であることが好ましく、0.85g/cm3~1.45g/cm3であることがより好ましく、0.90g/cm3~1.30g/cm3であることがさらに好ましい。基材2の密度が上記範囲内であることで、機械的剛性を有しつつ、軽量化に寄与することができる。
なお、基材2の密度は、ASTM D792に準ずる方法により測定することができる。
【0020】
制振材3は、
図2に示すように、基材2の凹凸形状部20の少なくとも一部に設けられ、基材2の振動を抑えることで遮音性能を発揮する部材であり、拘束型制振材30及びゴムシート31の少なくともいずれかである。
制振材3は、基材2の凹凸形状部20において、
図2(a)に示すように、基材2上に拘束型制振材30を積層する構成とすることができる。拘束型制振材30は、拘束層30a及び樹脂層30bを積層してなる。拘束型制振材30は、樹脂層30bと基材2の凹凸形状部20の少なくとも一部とが接するように設置される。拘束型制振材30は、樹脂層30bが粘性を有する場合は、それ自体の粘性によって設置することができ、樹脂層30bが粘性を有していない場合は、別途粘着剤、接着剤及び固定部材等を使用することにより配置することができる。
また、制振材3は、基材2の凹凸形状部20において、
図2(b)に示すように、基材2上にゴムシート31を積層する構成とすることができる。
また、制振材3は、基材2の凹凸形状部20において、
図2(c)に示すように、基材2上に、拘束型制振材30、ゴムシート31の順に積層する構成とすることができる。
制振材3は、
図2(a)~(c)に示した構成とすることができるが、中でも
図2(c)に示した構成が好ましい。
図2(c)に示した構成とすることで、基材2の振動を拘束型制振材30及びゴムシート31で好適に抑えることができることから、1次固有振動数における共振を抑制し、1次固有振動数における遮音性能の落ち込みを特に改善することができるため好ましい。
【0021】
拘束型制振材30は、弾性を有する樹脂層30bの両側が基板2と拘束層30aの二界面で固定されるため、加振応力による変形から生じるせん断歪を緩和することで加振エネルギーを吸収して制振する。拘束型制振材30としては、例えば、積水化学工業株式会社製の「カムルーンシート」が挙げられる。
【0022】
拘束型制振材30の拘束層30aは、拘束型制振材3自体を拘束するためのものであり、引張弾性率の高いものであればよい。拘束層30aとしては、一定の剛性を備えた剛体であれば特に限定はなく、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂及びエポキシ樹脂等の少なくともいずれか1種を含む樹脂板などの有機材料、並びに、鋼板、ステンレス板、鉄板及びアルミ板等の金属板などの無機材料が挙げられる。また、拘束層30aとしては、セラミック板、石膏ボード及びFRP板等の複合材料を採用することができる。
【0023】
拘束型制振材30の拘束層30aの引張弾性率は、1GPa以上であることが好ましく、10GPa以上であることがより好ましく、100GPa以上であることがさらに好ましい。拘束層30aの引張弾性率が上記下限値以上であることで、振動により発生する基材2と拘束層30aに挟まれた樹脂層30bのせん断歪を大きくして、エネルギーの吸収量を大きくすることで、1次固有振動数における遮音性能の落ち込みを改善することができる。拘束層30aの引張弾性率の上限は特に限定されないが、300GPaが実質的な上限である。
なお、拘束層30aの引張弾性率は、JIS K 7161-1:2014に準ずる方法により測定することができる。
【0024】
拘束型制振材30の樹脂層30bは、振動のエネルギーを運動エネルギーとして消費するものである。樹脂層30bとしては、弾性を有するものであれば特に限定はなく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、エチレン-塩化ビニル共重合体、塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、変成シリコーン樹脂、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられる。これらは単独で用いても2以上の組み合わせで用いてもよい。
【0025】
樹脂層30bは、物性を損なわない範囲内で、充填材、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマー等の添加剤が添加されていてもよい。充填材としては、公知のものを広く使用することが可能であり、特に限定はない。具体的には、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、及び脱水汚泥等からなる群より選択される一種以上を挙げることができる。
【0026】
ゴムシート31は、加振応力による変形から生じるせん断歪を緩和することで加振エネルギーを吸収して制振する。
ゴムシート31としては、加振応力による変形から生じるせん断歪を緩和することができるものであれば特に限定はなく、例えば、天然ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、ウレタン系ゴム、シリコン系ゴム及びエステル系ゴム等が挙げられる。
【0027】
制振材3の貼合率は、基材2の一方の面2Aの表面積に対して、10%~100%であることが好ましく、15%~90%であることがより好ましく、20%~80%であることがさらに好ましい。制振材3の貼合率が上記範囲内であることで、基材2の振動を抑えることができることから、1次固有振動数における共振を抑制し、1次固有振動数における遮音性能の落ち込みを改善することができる。
例えば、
図1に示したように、制振材3の形状が基材2の形状と相似の関係にあり、制振材3の縦(Y軸方向)および横(X軸方向)の長さが、基材2の縦および横の長さDの半分(D/2)である場合、制振材3の貼合率は25%となる。また、
図3に示したように、制振材3の形状が基材2の縦(Y軸方向)および横(X軸方向)に渡って延びる十字形であり、制振材3の幅が、基材2の縦および横の長さDの半分(D/2)である場合、制振材3の貼合率は75%となる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0029】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0030】
(音響透過損失の測定)
JIS A 1441-1:2007に準拠して、実施例及び比較例に係る遮音パネルの音響透過損失を算出した。具体的には、残響室と無響室を実施例及び比較例に係る遮音パネルを残響室側に凹凸形状部が突出するように配置して間仕切り、残響室においてスピーカーから100dBのノイズを発生させ、残響室における平均音圧レベルおよび無響室の実施例及び比較例に係る遮音パネルから10cm離れた地点での音響インテンシティをそれぞれ測定し、1/3オクターブバンドごとの音響透過損失を算出した。
【0031】
[実施例1]
半球形状の凹凸形状部20を有する基材2として凹凸型アルミ合金を用意した。次に、制振材3としての拘束型制振材30を4枚用意し、
図1(a)及び(b)に示すように、粘着性を持った樹脂層側を、基材2の突出した凹凸形状の外面(残響室側)の一部へ圧着させることで4枚貼合し、実施例1に係る遮音パネルを得た。実施例1に係る遮音パネルにおける制振材3としての拘束型制振材30の貼合率は、基材2の一方の面の表面積に対して、25%であった。なお、実施例1に係る遮音パネルの面密度は、6.2kg/m
2であった。
<基材>
・凹凸型アルミ合金:A5052、志摩鋼業社製、縦400mm×横400mm×凹凸高さ50mm×厚さ2mm
<制振材>
・拘束型制振材:305K58、積水化学工業株式会社製「カムルーンシート」、縦100mm×横100mm
・拘束層:塗装溶融亜鉛めっき鋼板、厚さ0.3mm
・樹脂層:塩素化ポリエチレン系樹脂(塩素含有熱可塑性樹脂と、数平均炭素数が12~16である塩素化パラフィンとからなる。塩素含有熱可塑性樹脂の塩素化度が30~70質量%、塩素化パラフィンの塩素化度が30~70質量%)、厚さ1mm
【0032】
(実施例2)
半球形状の凹凸形状部20を有する基材2として凹凸型アルミ合金を用意した。次に、制振材3としての拘束型制振材30を12枚用意し、
図3(a)及び(b)に示すように、粘着性を持った樹脂層側を、基材2の突出した凹凸形状の外面(残響室側)全体を覆うように圧着させることで12枚貼合し、実施例2に係る遮音パネルを得た。実施例2に係る遮音パネルにおける制振材3としての拘束型制振材30の貼合率は、基材2の一方の面の表面積に対して、75%であった。なお、実施例2に係る遮音パネルの面密度は、7.9kg/m
2であった。
<基材>
・凹凸型アルミ合金:A5052、志摩鋼業社製、縦400mm×横400mm×凹凸高さ50mm×厚さ2mm
<制振材>
・拘束型制振材:305K58、積水化学工業株式会社製「カムルーンシート」、縦100mm×横100mm
・拘束層:塗装溶融亜鉛めっき鋼板、厚さ0.3mm
・樹脂層:塩素化ポリエチレン系樹脂(塩素含有熱可塑性樹脂と、数平均炭素数が12~16である塩素化パラフィンとからなる。塩素含有熱可塑性樹脂の塩素化度が30~70質量%、塩素化パラフィンの塩素化度が30~70質量%)、厚さ1mm
【0033】
(実施例3)
実施例2に係る遮音パネルの拘束型制振材30(制振材A)上に、ゴムシート31(制振材B)を両面テープで貼合し、実施例3に係る遮音パネルを得た。実施例3に係る遮音パネルにおける制振材3としての拘束型制振材30の貼合率は、基材2の一方の面の表面積に対して、75%であり、制振材3としてのゴムシート31の貼合率は、基材2の一方の面の表面積に対して、100%であった。なお、実施例3に係る遮音パネルの面密度は、13.7kg/m2であった。
<基材>
・凹凸型アルミ合金:A5052、志摩鋼業社製、縦400mm×横400mm×凹凸高さ50mm×厚さ2mm
<制振材A>
・拘束型制振材:305K58、積水化学工業株式会社製「カムルーンシート」、縦100mm×横100mm
・拘束層:塗装溶融亜鉛めっき鋼板、厚さ0.3mm
・樹脂層:塩素化ポリエチレン系樹脂(塩素含有熱可塑性樹脂と、数平均炭素数が12~16である塩素化パラフィンとからなる。塩素含有熱可塑性樹脂の塩素化度が30~70質量%、塩素化パラフィンの塩素化度が30~70質量%)、厚さ1mm
<制振材B>
・ゴムシート:タイガースポリマー社製「クロロプレンゴム」、縦400mm×横400mm×厚さ4mm
【0034】
(実施例4)
半球形状の凹凸形状部20を有する基材2として凹凸型エポキシ樹脂を用意した。次に、制振材3としての拘束型制振材30を4枚用意し、
図1(a)及び(b)に示すように、粘着性を持った樹脂層側を、基材2の突出した凹凸形状の外面(残響室側)の一部へ圧着させることで4枚貼合し、実施例4に係る遮音パネルを得た。実施例4に係る遮音パネルにおける制振材3としての拘束型制振材30の貼合率は、基材2の一方の面の表面積に対して、25%であった。なお、実施例4に係る遮音パネルの面密度は、6.8kg/m
2であった。
<基材>
・凹凸型エポキシ樹脂:光造形用エポキシ樹脂、株式会社ディーメック社製「SCR-739」、縦400mm×横400mm×凹凸高さ50mm×厚さ5mm、高靭性タイプ、引張弾性率1.9GPa、曲げ弾性率1.9GPa、破断時の伸び16%、密度1.12g/cm
3
<制振材>
・拘束型制振材:305K58、積水化学工業株式会社製「カムルーンシート」、縦100mm×横100mm
・拘束層:塗装溶融亜鉛めっき鋼板、厚さ0.3mm
・樹脂層:塩素化ポリエチレン系樹脂(塩素含有熱可塑性樹脂と、数平均炭素数が12~16である塩素化パラフィンとからなる。塩素含有熱可塑性樹脂の塩素化度が30~70質量%、塩素化パラフィンの塩素化度が30~70質量%)、厚さ1mm
【0035】
(実施例5)
半球形状の凹凸形状部20を有する基材2として凹凸型アルミ合金を用意した。次に、制振材3としてのゴムシート31を1枚用意し、基材2の突出した凹凸形状の外面(残響室側)全体を覆うようにゴムシート31を両面テープで貼合し、実施例5に係る遮音パネルを得た。実施例5に係る遮音パネルにおける制振材3としてのゴムシート31の貼合率は、基材2の一方の面の表面積に対して、100%であった。なお、実施例5に係る遮音パネルの面密度は、10.7kg/m2であった。
<基材>
・凹凸型アルミ合金:A5052、志摩鋼業社製、縦400mm×横400mm×凹凸高さ50mm×厚さ2mm
<制振材>
・ゴムシート:タイガースポリマー社製「クロロプレンゴム」、縦400mm×横400mm×厚さ4mm
【0036】
(実施例6)
半球形状の凹凸形状部20を有する基材2として凹凸型アルミ合金を用意した。次に、制振材3としてのゴムシート31を1枚用意し、基材2の突出した凹凸形状の内面(無響室側)全体を覆うようにゴムシート31を両面テープで貼合し、実施例6に係る遮音パネルを得た。実施例6に係る遮音パネルにおける制振材3の貼合率は、基材2の一方の面の表面積に対して、0%であった。なお、実施例6に係る遮音パネルの面密度は、10.7kg/m2であった。
<基材>
・凹凸型アルミ合金:A5052、志摩鋼業社製、縦400mm×横400mm×凹凸高さ50mm×厚さ2mm
<制振材>
・ゴムシート:タイガースポリマー社製「クロロプレンゴム」、縦400mm×横400mm×厚さ4mm
【0037】
(実施例7)
半球形状の凹凸形状部20を有する基材2として凹凸型アルミ合金を用意した。次に、制振材3としてのゴムシート31を2枚用意し、基材2の突出した凹凸形状の外面(残響室側)全体を1枚のゴムシート31が覆い、内面(無響室側)全体を1枚のゴムシート31が覆うように両面テープで貼合し、実施例7に係る遮音パネルを得た。実施例7に係る遮音パネルにおける制振材3としてのゴムシート31の貼合率は、基材2の一方の面の表面積に対して、100%であった。なお、実施例7に係る遮音パネルの面密度は、10.7kg/m2であった。
<基材>
・凹凸型アルミ合金:A5052、志摩鋼業社製、縦400mm×横400mm×凹凸高さ50mm×厚さ2mm
<制振材>
・ゴムシート:タイガースポリマー社製「クロロプレンゴム」、縦400mm×横400mm×厚さ2mm
【0038】
[比較例1]
平板形状の基材としてアルミ合金平板を用意し、比較例1に係る遮音パネルを得た。比較例1に係る遮音パネルにおける制振材の貼合率は、基材の一方の面の表面積に対して、0%であった。なお、比較例1に係る遮音パネルの面密度は、5.4kg/m2であった。
<基材>
・アルミ合金平板:A5052、志摩鋼業社製、縦400mm×横400mm×厚さ2mm
【0039】
[比較例2]
半球形状の凹凸形状部20を有する基材2として凹凸型アルミ合金を用意し、比較例2に係る遮音パネルを得た。比較例2に係る遮音パネルにおける制振材の貼合率は、基材2の一方の面の表面積に対して、0%であった。なお、比較例2に係る遮音パネルの面密度は、5.3kg/m2であった。
<基材>
・凹凸型アルミ合金:A5052、志摩鋼業社製、縦400mm×横400mm×凹凸高さ50mm×厚さ2mm
【0040】
[比較例3]
半球形状の凹凸形状部20を有する基材2として凹凸型エポキシ樹脂を用意し、比較例3に係る遮音パネルを得た。比較例3に係る遮音パネルにおける制振材の貼合率は、基材2の一方の面の表面積に対して、0%であった。なお、比較例3に係る遮音パネルの面密度は、6.0kg/m2であった。
<基材>
・凹凸型エポキシ樹脂:光造形用エポキシ樹脂、株式会社ディーメック社製「SCR-739」、縦400mm×横400mm×凹凸高さ50mm×厚さ5mm、高靭性タイプ、引張弾性率1.9GPa、曲げ弾性率1.9GPa、破断時の伸び16%、密度1.12g/cm3
【0041】
図4に示したグラフより、基材2の凹凸形状部20に制振材3を設けた実施例1~7では、1次固有振動数における共振を抑制し、全周波数域、特に低周波域での遮音性能の落ち込みを改善することができた。