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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145917
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】プローブ
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
G01R1/067 B
G01R1/067 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052834
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢一
【テーマコード(参考)】
2G011
【Fターム(参考)】
2G011AA04
2G011AB01
2G011AB03
2G011AB04
2G011AB07
2G011AC14
2G011AC31
2G011AE22
2G011AF07
(57)【要約】
【課題】プローブに含まれる成分のはんだへの拡散を抑制する。
【解決手段】プローブ100は、20質量%超60質量%以下のPdと、3質量%以上20質量%未満のAgと、3質量%以上50質量%以下のNiと、3質量%以上74質量%以下のCuと、を含んでいる。或いは、プローブ100は、20質量%超60質量%以下のPdと、20質量%以上35質量%以下のAgと、7質量%以上50質量%以下のNiと、3質量%以上53質量%以下のCuと、を含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20質量%超60質量%以下のPdと、
3質量%以上20質量%未満のAgと、
3質量%以上50質量%以下のNiと、
3質量%以上74質量%以下のCuと、
を含むプローブ。
【請求項2】
前記Cuの一部に代え、In、Sn、Zn及びGaの少なくとも1種を0.2質量%以上2.0質量%以下含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
20質量%超60質量%以下のPdと、
20質量%以上35質量%以下のAgと、
7質量%以上50質量%以下のNiと、
3質量%以上53質量%以下のCuと、
を含むプローブ。
【請求項4】
前記Cuの一部に代え、In、Sn、Zn及びGaの少なくとも1種を0.2質量%以上2.0質量%以下含む、請求項3に記載のプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路等の検査対象物を検査するため、ソケットに設けられたプローブを介して、検査対象物を検査基板に電気的に接続させることがある。プローブは、Pd、Ag及びCuの合金を含んでいることがある。
【0003】
特許文献1には、Pd、Ag及びCuの合金の一例について記載されている。特許文献1に記載の合金は、約35%~約59%のPdと、4%以上のAgと、16%以上50%以下のCuと、を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第1935897号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Pd、Ag及びCuの合金は、プローブを構成する材料に利用されることがある。しかしながら、Pd、Ag及びCuの合金を含むプローブの先端を検査対象物のはんだに繰り返し接触させて電気的に接続させた場合、ジュール熱等の要因によって、はんだに含まれるSn等の成分と、プローブに含まれる成分と、が相互に拡散する傾向があった。プローブに含まれる成分が拡散すると、プローブの先端が消耗し得る。プローブの先端が消耗した場合、プローブとはんだとの接触抵抗の変動が生じ得る。したがって、Pd、Ag及びCuの合金を含むプローブが用いられる場合、プローブの先端の洗浄や交換の回数が比較的多くなり、検査工程の稼働率が低下し得る。
【0006】
本発明の目的の一例は、プローブに含まれる成分のはんだへの拡散を抑制することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
20質量%超60質量%以下のPdと、
3質量%以上20質量%未満のAgと、
3質量%以上50質量%以下のNiと、
3質量%以上74質量%以下のCuと、
を含むプローブである。
【0008】
本発明の他の一態様は、
20質量%超60質量%以下のPdと、
20質量%以上35質量%以下のAgと、
7質量%以上50質量%以下のNiと、
3質量%以上53質量%以下のCuと、
を含むプローブである。
【0009】
本発明の上記態様によれば、プローブに含まれる成分のはんだへの拡散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るソケットの断面図である。
図2】第1の変形例に係るソケットの断面図である。
図3】第2の変形例に係るプローブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態及び変形例について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
本明細書において、「第1」、「第2」、「第3」等の序数詞は、特に断りのない限り、同様の名称が付された構成を単に区別するために付されたものであり、構成の特定の特徴(例えば、順番又は重要度)を意味するものではない。
【0013】
図1は、実施形態に係るソケット10の断面図である。
【0014】
図1において、「+Z」によって示される矢印は、鉛直方向の上方向を示しており、「-Z」によって示される矢印は、鉛直方向の下方向を示している。以下、必要に応じて、鉛直方向に直交する方向を水平方向という。
【0015】
ソケット10は、プローブ100及び絶縁支持体200を備えている。プローブ100は、絶縁支持体200に形成された貫通孔に設けられている。プローブ100は、第1プランジャ110、第2プランジャ120、チューブ130及びスプリング140を有している。図1では、プローブ100を用いて、検査対象物20が検査基板30によって検査されている状態が示されている。具体的には、図1に示す状態では、プローブ100を介して、検査対象物20のはんだボール22と、検査基板30のパッド32と、が電気的に接続されている。
【0016】
チューブ130は、鉛直方向に延伸している。スプリング140は、チューブ130の内部に位置している。プローブ100は、チューブ130を有していなくてもよい。スプリング140は、チューブ130の中心を鉛直方向に通過する仮想軸の周りにスパイラル状に巻かれている。
【0017】
第1プランジャ110は、スプリング140の上端側に位置している。第1プランジャ110は、スプリング140によって、上方に向けて、すなわち、第2プランジャ120から離れる方向に向けて付勢されている。検査対象物20が検査基板30によって検査されている状態において、第1プランジャ110は、プローブ100の上方に位置する検査対象物20に接続されている。この状態において、第1プランジャ110の先端、すなわち上端は、検査対象物20のはんだボール22に接触している。図1に示す例において、第1プランジャ110の先端は、第1プランジャ110の中心を鉛直方向に通過する仮想軸の周りに等間隔で並ぶ複数の尖りを有している。第1プランジャ110の先端の形状は図1に示す例に限定されない。
【0018】
第2プランジャ120は、スプリング140の下端側に位置している。第2プランジャ120は、スプリング140によって、下方に向けて、すなわち、第1プランジャ110から離れる方向に向けて付勢されている。検査対象物20が検査基板30によって検査されている状態において、第2プランジャ120は、プローブ100の下方に位置する検査基板30に接続されている。この状態において、第2プランジャ120の先端、すなわち下端は、検査基板30のパッド32に接触している。第2プランジャ120の先端は、半球形上となっている。第2プランジャ120の先端の形状は図1に示す例に限定されない。
【0019】
第1の態様において、第1プランジャ110は、材料(A)を含んでいる。材料(A)は、20質量%超60質量%以下のPdと、3質量%以上20質量%未満のAgと、3質量%以上50質量%以下のNiと、3質量%以上74質量%以下のCuと、を含んでいる。例えば、第1プランジャ110のうちの少なくとも表面が材料(A)からなっている。この例では、例えば、第1プランジャ110の全体が材料(A)から形成されていてもよい。或いは、材料(A)は、めっき等の処理によって第1プランジャ110の表面を覆っていてもよい。材料(A)が第1プランジャ110の表面を覆う場合、第1プランジャ110のうち材料(A)によって覆われている部分は、材料(A)と異なる材料から形成されていてもよい。また、例えば、第1プランジャ110のうち、少なくとも、はんだボール22と接触する部分が材料(A)からなっていてもよい。この例では、例えば、材料(A)は、めっき等の処理によって、第1プランジャ110のうちはんだボール22と接触する部分の表面のみを覆っていてもよい。
【0020】
材料(A)に含まれるPdの質量比の下限は、例えば、材料(A)の耐食性の観点から決定されている。材料(A)に含まれるPdの質量比が20質量%以下であると、材料(A)の耐食性が不十分となる場合がある。このため、材料(A)に含まれるPdの質量比は、20質量%超にすることができる。材料(A)に含まれるPdの質量比は、例えば、22質量%以上又は25質量%以上としてもよい。
【0021】
材料(A)に含まれるPdの質量比の上限は、例えば、材料(A)に含まれる成分とはんだボール22等のはんだに含まれる成分との拡散の抑制の観点から決定されている。材料(A)に含まれるPdの質量比が60質量%を超えると、材料(A)に含まれる成分とはんだに含まれる成分との拡散を十分に抑制することが難しくなる場合がある。このため、材料(A)に含まれるPdの質量比は、60質量%以下にすることができる。材料(A)に含まれるPdの質量比は、例えば、55質量%以下又は50質量%以下としてもよい。
【0022】
材料(A)に含まれるPdの質量比は、例えば、22質量%以上55質量%以下とすることができる。或いは、材料(A)に含まれるPdの質量比は、例えば、25質量%以上50質量%以下とすることができる。
【0023】
材料(A)に含まれるAgの質量比の下限は、例えば、時効硬化の観点から決定されている。Agは、Pd及びCuとの組み合わせによって材料(A)の時効硬化を向上させることができる。材料(A)に含まれるAgの質量比が3質量%未満の場合、材料(A)の時効硬化が不十分となる場合がある。このため、材料(A)に含まれるAgの質量比は、3質量%以上にすることができる。材料(A)に含まれるAgの質量比は、例えば、4質量%以上としてもよい。
【0024】
材料(A)に含まれるAgの質量比の上限は、例えば、材料(A)に含まれるAgの質量比を比較的少なくする観点から決定されている。このため、材料(A)に含まれるAgの質量比は、20質量%未満にすることができる。材料(A)に含まれるAgの質量比は、例えば、18質量%以下としてもよい。
【0025】
材料(A)に含まれるAgの質量比は、例えば、4質量%以上18質量%以下としてもよい。
【0026】
材料(A)に含まれるNiの質量比の下限は、例えば、材料(A)に含まれるAgの質量比の観点と、材料(A)に含まれる成分とはんだボール22等のはんだに含まれる成分との拡散の抑制の観点と、から決定されている。第1の態様において、材料(A)に含まれるAgの質量比は、20質量%未満と比較的少なくなっている。この場合、材料(A)に含まれるNiの質量比が3質量%未満であるとき、材料(A)に含まれる成分とはんだに含まれる成分との拡散を十分に抑制することが難しくなる場合がある。このため、材料(A)に含まれるNiの質量比は、3質量%以上にすることができる。材料(A)に含まれるNiの質量比は、例えば、5質量%以上又は7質量%以上としてもよい。
【0027】
材料(A)に含まれるNiの質量比の上限は、例えば、材料(A)の冷間での圧延や伸線といった塑性加工の観点から決定されている。材料(A)に含まれるNiの質量比が50質量%を超えると、材料(A)の冷間での圧延や伸線といった塑性加工が難しくなる場合がある。このため、材料(A)に含まれるNiの質量比は、50質量%以下にすることができる。材料(A)に含まれるNiの質量比は、例えば、40質量%以下又は35質量%以下としてもよい。
【0028】
材料(A)に含まれるNiの質量比は、例えば、5質量%以上40質量%以下としてもよい。或いは、材料(A)に含まれるNiの質量比は、例えば、7質量%以上35質量%以下としてもよい。
【0029】
材料(A)に含まれるCuの質量比の下限は、例えば、材料(A)の硬さの観点から決定されている。Pd及びCuの合金によって材料(A)の硬さを向上させることができる。また、Cuの比抵抗は比較的低くなっている。材料(A)に含まれるCuの質量比が3質量%未満である場合、材料(A)の十分な硬さを確保することが難しくなる場合がある。このため、材料(A)に含まれるCuの質量比は、3質量%以上にすることができる。材料(A)に含まれるCuの質量比は、例えば、5質量%以上、10質量%以上又は15質量%以上としてもよい。
【0030】
材料(A)に含まれるCuの質量比の上限は、例えば、材料(A)の耐食性の観点から決定されている。材料(A)に含まれるCuの質量比が74質量%を超えると、材料(A)の十分な耐食性を確保することが難しくなる場合がある。このため、材料(A)に含まれるCuの質量比は、74質量%以下にすることができる。材料(A)に含まれるCuの質量比は、例えば、70質量%以下、60質量%以下又は50質量%以下としてもよい。
【0031】
材料(A)に含まれるCuの質量比は、例えば、5質量%以上70質量%以下としてもよい。或いは、材料(A)に含まれるCuの質量比は、例えば、10質量%以上60質量%以下としてもよい。或いは、材料(A)に含まれるCuの質量比は、例えば、15質量%以上50質量%以下としてもよい。
【0032】
材料(A)は、Cuの一部に代え、In、Sn、Zn及びGaの少なくとも1種を合計で0.2質量%以上2.0質量%以下含んでいてもよい。
【0033】
材料(A)に含まれるIn、Sn、Zn及びGaの少なくとも1種の合計の質量比の下限は、例えば、材料(A)の時効硬化の観点から決定されている。材料(A)に含まれる当該少なくとも1種の合計の質量比が0.2質量%未満である場合における材料(A)の時効硬化は、当該少なくとも1種を含まない材料(A)の時効硬化とほとんど変わりない。このため、材料(A)に含まれる当該1種の合計の質量比は、0.2質量%以上にすることができる。材料(A)に含まれる当該1種の合計の質量比は、例えば、0.3質量%以上としてもよい。
【0034】
材料(A)に含まれるIn、Sn、Zn及びGaの少なくとも1種の合計の質量比の上限は、例えば、材料(A)の冷間での圧延や伸線といった塑性加工の観点から決定されている。材料(A)に含まれる当該少なくとも1種の合計の質量比が2.0質量%を超えると、材料(A)の冷間での圧延や伸線といった塑性加工が難しくなる場合がある。このため、材料(A)に含まれる当該少なくとも1種の合計の質量比の上限は、2.0質量%以下にすることができる。材料(A)に含まれる当該少なくとも1種の合計の質量比は、例えば、1.5質量%以下としてもよい。
【0035】
材料(A)に含まれるIn、Sn、Zn及びGaの少なくとも1種の合計の質量比は、例えば、0.3質量%以上1.5質量%以下であってもよい。
【0036】
第2の態様において、第1プランジャ110は、材料(A)に代えて、材料(B)を含んでいる。材料(B)は、20質量%超60質量%以下のPdと、20質量%以上35質量%以下のAgと、7質量%以上50質量%以下のNiと、3質量%以上53質量%以下のCuと、を含んでいる。例えば、第1プランジャ110のうちの少なくとも表面が材料(B)からなっている。この例では、例えば、第1プランジャ110の全体が材料(B)から形成されていてもよい。或いは、材料(B)は、めっき等の処理によって第1プランジャ110の表面を覆っていてもよい。材料(B)が第1プランジャ110の表面を覆う場合、第1プランジャ110のうち材料(B)によって覆われている部分は、材料(B)と異なる材料から形成されていてもよい。また、例えば、第1プランジャ110のうち、少なくとも、はんだボール22と接触する部分が材料(B)からなっていてもよい。この例では、例えば、材料(B)は、めっき等の処理によって、第1プランジャ110のうちはんだボール22と接触する部分の表面のみを覆っていてもよい。
【0037】
材料(B)に含まれるPdの質量比の下限は、例えば、材料(A)に含まれるPdの質量比の下限と同様にして、材料(B)の耐食性の観点から決定されている。このため、材料(B)に含まれるPdの質量比は、20質量%超にすることができる。材料(B)に含まれるPdの質量比は、例えば、22質量%以上又は25質量%以上としてもよい。
【0038】
材料(B)に含まれるPdの質量比の上限は、例えば、材料(A)に含まれるPdの質量比の上限と同様にして、材料(B)に含まれる成分とはんだボール22等のはんだに含まれる成分との拡散の抑制の観点から決定されている。このため、材料(B)に含まれるPdの質量比は、60質量%以下にすることができる。材料(B)に含まれるPdの質量比は、例えば、55質量%以下又は50質量%以下としてもよい。
【0039】
材料(B)に含まれるPdの質量比は、例えば、22質量%以上55質量%以下としてもよい。或いは、材料(B)に含まれるPdの質量比は、例えば、25質量%以上50質量%以下としてもよい。
【0040】
材料(B)に含まれるAgの質量比の下限は、例えば、材料(B)に含まれるAgの質量比を比較的多くする観点から決定されている。このため、材料(B)に含まれるAgの質量比は、20質量%超にすることができる。材料(B)に含まれるAgの質量比は、例えば、21質量%以上としてもよい。
【0041】
材料(B)に含まれるAgの質量比の上限は、例えば、材料(B)に含まれる成分とはんだボール22等のはんだに含まれる成分との拡散の抑制の観点から決定されている。材料(B)に含まれるAgの質量比が35質量%を超えると、材料(B)に含まれる成分とはんだに含まれる成分との拡散を十分に抑制することが難しくなる場合がある。このため、材料(B)に含まれるAgの質量比は、35質量%以下にすることができる。材料(B)に含まれるAgの質量比は、例えば、33質量%以下としてもよい。
【0042】
材料(B)に含まれるAgの質量比は、例えば、21質量%以上33質量%以下としてもよい。
【0043】
材料(B)に含まれるNiの質量比の下限は、例えば、材料(B)に含まれるAgの質量比の観点と、材料(B)に含まれる成分とはんだボール22等のはんだに含まれる成分との拡散の抑制の観点と、から決定されている。第2の態様において、材料(B)に含まれるAgの質量比は、20質量%以上と比較的多くなっている。この場合、材料(B)に含まれるNiの質量比が7質量%未満であるとき、材料(B)に含まれる成分とはんだに含まれる成分との拡散を十分に抑制することが難しくなる場合がある。このため、材料(B)に含まれるNiの質量比は、7質量%以上にすることができる。材料(B)に含まれるNiの質量比は、例えば、8質量%以上、10質量%以上又は11質量%以上としてもよい。
【0044】
材料(B)に含まれるNiの質量比の上限は、例えば、材料(A)に含まれるNiの質量比の上限と同様にして、材料(B)の冷間での圧延や伸線といった塑性加工の観点から決定されている。このため、材料(B)に含まれるNiの質量比は、50質量%以下にすることができる。材料(B)に含まれるNiの質量比は、例えば、40質量%以下又は35質量%以下としてもよい。
【0045】
材料(B)に含まれるNiの質量比は、例えば、8質量%以上40質量%以下としてもよい。或いは、材料(B)に含まれるNiの質量比は、例えば、10質量%以上35質量%以下としてもよい。或いは、材料(B)に含まれるNiの質量比は、例えば、11質量%以上35質量%以下としてもよい。
【0046】
材料(B)に含まれるCuの質量比の下限は、例えば、材料(A)に含まれるCuの質量比の下限と同様にして、材料(B)の硬さの観点から決定されている。このため、材料(B)に含まれるCuの質量比は、3質量%以上にすることができる。材料(B)に含まれるCuの質量比は、例えば、5質量%以上又は10質量%以上としてもよい。
【0047】
材料(B)に含まれるCuの質量比の上限は、例えば、材料(A)に含まれるCuの質量比の上限と同様にして、材料(B)の耐食性の観点から決定されている。このため、材料(B)に含まれるCuの質量比は、53質量%以下にすることができる。材料(B)に含まれるCuの質量比は、例えば、47質量%以下又は40質量%以下としてもよい。
【0048】
材料(B)に含まれるCuの質量比は、例えば、5質量%以上47質量%以下としてもよい。或いは、材料(B)に含まれるCuの質量比は、例えば、10質量%以上40質量%以下としてもよい。
【0049】
材料(B)は、Cuの一部に代え、In、Sn、Zn及びGaの少なくとも1種の合計を0.2質量%以上2.0質量%以下含んでいてもよい。
【0050】
材料(B)に含まれるIn、Sn、Zn及びGaの少なくとも1種の合計の質量比の下限は、例えば、材料(A)に含まれるIn、Sn、Zn及びGaの少なくとも1種の合計の質量比の下限と同様にして、材料(B)の時効硬化の観点から決定されている。このため、材料(B)に含まれる当該1種の合計の質量比は、0.2質量%以上にすることができる。材料(B)に含まれる当該1種の合計の質量比は、例えば、0.3質量%以上としてもよい。
【0051】
材料(B)に含まれるIn、Sn、Zn及びGaの少なくとも1種の合計の質量比の上限は、例えば、材料(A)に含まれるIn、Sn、Zn及びGaの少なくとも1種の合計の質量比の上限と同様にして、材料(B)の冷間での圧延や伸線といった塑性加工の観点から決定されている。このため、材料(B)に含まれる当該少なくとも1種の合計の質量比の上限は、2.0質量%以下にすることができる。材料(B)に含まれる当該少なくとも1種の合計の質量比は、例えば、1.5質量%以下としてもよい。
【0052】
材料(B)に含まれるIn、Sn、Zn及びGaの少なくとも1種の合計の質量比は、例えば、0.3質量%以上1.5質量%以下であってもよい。
【0053】
以下、必要に応じて、Niを含まないでPd、Ag及びCuからなる合金をPdAgCu合金という。
【0054】
実施形態においては、第1プランジャ110がPdAgCu合金を含む場合と比較して、第1プランジャ110の先端とはんだボール22の表面との間の界面において、第1プランジャ110に含まれる成分のはんだボール22への拡散を抑制することができる。また、実施形態においては、第1プランジャ110がPdAgCu合金を含む場合と比較して、第1プランジャ110に含まれる成分のはんだボール22への拡散が抑制されることで、第1プランジャ110の先端の消耗を抑制することができる。
【0055】
材料(A)が用いられる場合、PdAgCu合金が用いられる場合と比較して、材料(A)に含まれる成分のはんだへの拡散が抑制される理由は、次のとおりであると推定される。すなわち、材料(A)とはんだとが接触する際に材料(A)とはんだとの間の界面において、材料(A)に含まれるNiに起因して、Sn-Ni等の金属化合物を含む緻密な薄膜が形成される。この金属化合物が材料(A)とはんだとの間の界面に存在する場合、この金属化合物が材料(A)とはんだとの間の界面に存在しない場合と比較して、材料(A)及びはんだに含まれる成分の拡散がこの金属化合物によって抑制される。これに対して、PdAgCu合金が用いられる場合、上記金属化合物は形成され難い。したがって、実施形態においては、第1プランジャ110がPdAgCu合金を含む場合と比較して、第1プランジャ110の先端とはんだボール22との間において、第1プランジャ110に含まれる成分のはんだボール22への拡散を抑制することができる。材料(B)が用いられる場合も、上述した理由と同様にして、PdAgCu合金が用いられる場合と比較して、材料(B)に含まれる成分のはんだへの拡散を抑制することができる。
【0056】
材料(A)又は材料(B)には、既存のPdAgCu合金の硬さほどの硬さは要求されない。しかしながら、検査回数の増加にともない、第1プランジャ110の接触面が機械的に潰れることがある。このため、材料(A)又は材料(B)は、比較的硬いことが望ましい。例えば、200HV以上の硬さにおいて第1プランジャ110は使用可能である。実施形態では、材料(A)又は材料(B)は、250HV以上の硬さを得ることができる。なお、材料(A)又は材料(B)の硬さは、加工による加工材硬さであってもよいし、又は時効処理による時効材硬さであってもよい。
【0057】
図2は、第1の変形例に係るソケット10Aの断面図である。本変形例に係るソケット10Aは、以下の点を除いて、実施形態に係るプローブ100と同様である。
【0058】
第1プランジャ110Aの下端には、第1プランジャ110Aの下方に向けて延伸する延伸部112Aが設けられている。第1プランジャ110A及び延伸部112Aは、一体となっている。したがって、第1プランジャ110A及び延伸部112Aの双方が材料(A)又は材料(B)を含んでいる。延伸部112Aの下端には、先端ヘッド114Aが設けられている。先端ヘッド114Aは、材料(A)又は材料(B)を含んでいてもよいし、又は含んでいなくてもよい。
【0059】
第2プランジャ120Aの上端には、基端部122Aが設けられている。基端部122Aの上面には、基端部122Aの上方に向けて開口した穴124Aが形成されている。基端部122Aのうち穴124Aを画定する内壁の一部分には、係止部126Aが設けられている。穴124Aのうち係止部126Aにおける水平方向の直径は、穴124Aのうち係止部126Aより下方に位置する部分における水平方向の直径より狭くなっている。先端ヘッド114Aは、穴124Aのうち係止部126Aよりも下方に入り込んでいる。また、先端ヘッド114Aは、穴124Aのうち係止部126Aよりも下方において鉛直方向に可動になっている。先端ヘッド114Aの水平方向の直径は、穴124Aのうち係止部126Aにおける水平方向の直径より大きくなっている。したがって、先端ヘッド114Aが穴124Aの上方に向けて抜けることが係止部126Aによって防止されている。
【0060】
本変形例に係るプローブ100Aは、実施形態に係るプローブ100のチューブ130に対応するチューブを有していない。スプリング140Aは、第1プランジャ110Aの下端と、基端部122Aの上端と、の間に位置している。また、スプリング140Aは、延伸部112Aの周りにスパイラル状に巻かれている。第1プランジャ110A、延伸部112A及び先端ヘッド114Aは、スプリング140Aによって上方に向けて付勢されている。第2プランジャ120A及び基端部122Aは、スプリング140Aによって下方に向けて付勢されている。
【0061】
図3は、第2の変形例に係るプローブ100Bの断面図である。本変形例に係るプローブ100Bは、以下の点を除いて、実施形態に係るプローブ100と同様である。
【0062】
図3に示す例では、第1プランジャ110B及びチューブ130Bが一体となっている。したがって、第1プランジャ110B及びチューブ130Bの双方が材料(A)又は材料(B)を含んでいる。また、第1プランジャ110B及びチューブ130Bは、スプリング140Bによって、上方に向けて、すなわち、第2プランジャ120Bから離れる方向に向けて付勢されている。第2プランジャ120Bは、スプリング140Bによって、下方に向けて、すなわち、第1プランジャ110Bから離れる方向に向けて付勢されている。
【0063】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0064】
本発明の一態様を実施例及び比較例に基づいて説明する。本発明は、以下の各実施例に限定されるものではない。
【0065】
表1は、実施例1~20及び比較例1~10の各々の試験材料に含まれるPd、Ag、Ni、Cu、In、Sn、Zn及びGaの組成(単位:質量%)を示す表である。
【表1】
【0066】
実施例1~20及び比較例1~10の各々の試験材料は以下のようにして作製した。
【0067】
実施例1について、表1に示すように、45質量%のPdと、3質量%のAgと、10質量%のNiと、42質量%のCuと、を配合して、配合物を得た。実施例2~20及び比較例1~10の各々についても、Pd、Ag、Ni、Cu、In、Sn、Zn及びGaを表1に示す実施例2~20及び比較例1~10の組成となるように配合して、配合物を得た。表1における組成の列の空欄は、当該空欄に対応する金属が配合されていないことを意味している。
【0068】
次いで、実施例1~20及び比較例1~10の各々について、上記配合物をアルゴン雰囲気中においてアーク溶解にて溶解し、合金インゴットを作製した。
【0069】
次いで、実施例1~20及び比較例1~10の各々について、上記合金インゴットの圧延及び熱処理を繰り返すことで、圧延率75%の板材を作製した。圧延率RRは、合金インゴットの圧延前の厚さをt1とし、合金インゴットの圧延後の厚さをt2として、以下の式(1)に従って決定されている。
RR={(t1-t2)/t1}×100 (1)
【0070】
実施例1~20並びに比較例1~3、5~8及び10について、圧延率75%の板材を作製することができた。これに対して、比較例4及び9について、圧延率75%の板材を作製することができなかった。比較例4及び9については、後述する表2を用いて説明する測定を行わなかった。
【0071】
表2は、実施例1~20並びに比較例1~3、5~8及び10の各々について、試験材料の比抵抗と、試験材料の加工材硬さと、試験材料の時効材硬さと、試験材料とはんだとの間の拡散層の厚さと、の測定結果を示す表である。
【表2】
【0072】
実施例1~20並びに比較例1~3、5~8及び10の各々について、試験材料の比抵抗は、試験材料の電気抵抗Rを室温で測定し、以下の式(2)に従って比抵抗ρを算出することで測定した。
ρ=RS/l (2)
ただし、lは、試験材料のうち電流が流れる方向の測定長であり、Sは、試験材料のうち電流が流れる方向に垂直な断面積である。
【0073】
表2に示すように、実施例1~20並びに比較例1~3、5~8及び10において、比抵抗は、50μΩ・cm以下となった。したがって、実施例1~20において、プローブに要求される比抵抗を得ることができたといえる。
【0074】
実施例1~20並びに比較例1~3、5~8及び10の各々について、試験材料の加工材硬さは、マイクロビッカース硬さ試験機で、試験材料の断面の中心を200gfの荷重で10秒間保持することで測定した。
【0075】
表2に示すように、実施例1~20並びに比較例1~3、5~8及び10において、加工材硬さは、250HV以上となった。したがって、実施例1~20において、プローブに要求される硬さを得ることができたといえる。
【0076】
実施例1~20並びに比較例1~3、5~8及び10の各々について、試験材料の時効材硬さは、次のようにして測定した。まず、各試験材料を300℃~400℃で1時間時効処理した。次いで、マイクロビッカース硬さ試験機で、試験材料の断面の中心を200gfの荷重で10秒間保持することで、各試験材料の時効材硬さを測定した。
【0077】
表2に示すように、実施例1~20並びに比較例1~3、5~8及び10において、時効材硬さは、300HV以上となった。したがって、実施例1~20において、プローブに要求される硬さを得ることができたといえる。
【0078】
実施例1~20並びに比較例1~3、5~8及び10の各々について、試験材料とはんだとの間の拡散層の厚さは、次のようにして測定した。まず、Sn-Bi系はんだを10mm×10mm×厚さ0.5mmの試験材料上に載せた。次いで、Sn-Bi系はんだを試験材料に載せた状態で試験材料及びSi-Bi系はんだをN雰囲気中250℃で1時間熱処理して、試験材料上ではんだを溶融させた。次いで、試験材料を樹脂に埋め込んで、試験材料とはんだとの双方を含む断面を露出させた。次いで、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いて、試験材料とはんだとの間の界面を、試験材料のうちはんだが載せられた表面に垂直な方向に線分析を行った。拡散層は、はんだから拡散するSnと、試験材料から拡散するPdと、の双方が存在する層とした。EPMAの測定結果から、拡散層の厚さを測定した。
【0079】
表2に示すように、比較例1~3、5~8及び10では、拡散層の厚さは、200μm以上となった。これに対して、実施例1~20では、拡散層の厚さは、100μm未満となった。したがって、実施例1~20では、比較例1~3、5~8及び10と比較して、試験材料に含まれる成分のはんだへの拡散を抑制することができたといえる。
【0080】
表2に示す結果より、実施例1~20に係る試験材料では、比較例1~3、5~8及び10に係る試験材料と比較して、プローブに要求される比抵抗、加工材硬さ及び時効材硬さを実現しつつ、試験材料に含まれる成分のはんだへの拡散を抑制することができたといえる。
【0081】
本明細書によれば、以下の態様が提供される。
(態様1)
態様1は、
20質量%超60質量%以下のPdと、
3質量%以上20質量%未満のAgと、
3質量%以上50質量%以下のNiと、
3質量%以上74質量%以下のCuと、
を含むプローブである。
態様1によれば、プローブが、Niを含まないでPd、Ag及びCuからなる合金を含む場合と比較して、プローブとはんだとの間の界面において、プローブに含まれる成分のはんだへの拡散を抑制することができる。
(態様2)
態様2は、
前記Cuの一部に代え、In、Sn、Zn及びGaの少なくとも1種を0.2質量%以上2.0質量%以下含む、態様1に記載のプローブである。
態様2によれば、プローブが、Niを含まないでPd、Ag及びCuからなる合金を含む場合と比較して、プローブとはんだとの間の界面において、プローブに含まれる成分のはんだへの拡散を抑制することができる。
(態様3)
態様3は、
20質量%超60質量%以下のPdと、
20質量%以上35質量%以下のAgと、
7質量%以上50質量%以下のNiと、
3質量%以上53質量%以下のCuと、
を含むプローブである。
態様3によれば、プローブが、Niを含まないでPd、Ag及びCuからなる合金を含む場合と比較して、プローブとはんだとの間の界面において、プローブに含まれる成分のはんだへの拡散を抑制することができる。
(態様4)
前記Cuの一部に代え、In、Sn、Zn及びGaの少なくとも1種を0.2質量%以上2.0質量%以下含む、態様3に記載のプローブである。
態様4によれば、プローブが、Niを含まないでPd、Ag及びCuからなる合金を含む場合と比較して、プローブとはんだとの間の界面において、プローブに含まれる成分のはんだへの拡散を抑制することができる。
【符号の説明】
【0082】
10,10A ソケット
20 検査対象物
22 ボール
30 検査基板
32 パッド
100,100A,100B プローブ
110,110A,110B 第1プランジャ
112A 延伸部
114A 先端ヘッド
120,120A,120B 第2プランジャ
122A 基端部
124A 穴
126A 係止部
130,130B チューブ
140,140A,140B スプリング
200 絶縁支持体
図1
図2
図3