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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145921
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】高耐久性塗り床とその施工方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/63 20060101AFI20231004BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20231004BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20231004BHJP
   C04B 41/71 20060101ALI20231004BHJP
   E04F 15/12 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C04B41/63
C09D5/00 D
C09D175/04
C04B41/71
E04F15/12 A
E04F15/12 C
E04F15/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052838
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 優太
【テーマコード(参考)】
2E220
4G028
4J038
【Fターム(参考)】
2E220AA11
2E220AA16
2E220AA25
2E220AB10
2E220AC05
2E220DB09
2E220DB10
2E220EA02
2E220EA03
2E220FA11
2E220GA22X
2E220GA35X
2E220GB05Z
2E220GB12X
2E220GB14X
2E220GB22X
2E220GB22Y
2E220GB32X
2E220GB37X
4G028CA01
4G028CB05
4G028CC01
4G028CD00
4G028FA01
4G028FA04
4J038DG101
4J038DG282
4J038KA03
4J038MA09
4J038NA03
4J038NA12
4J038PA18
4J038PB05
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】ひび割れ追従性に優れ、耐黄変性と耐AGV性を有し美観に優れる高耐久性塗り床、及びその施工方法を提供する。
【解決手段】下地コンクリート表面の上、あるいは、該下地コンクリート表面の上に更に少なくとも形成されたプライマー層及び/または下地調整材層の上に、ポリオールと、ポリイソシアネートと、希釈剤と、脱水剤と、充填剤と、を含むウレタン樹脂系塗り床材組成物を塗付してウレタン樹脂系塗り床材組成物層を形成し、その上に、水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、水硬性セメントと、骨材と、を含む水硬性ポリマーセメント組成物を塗付して水硬性ポリマーセメント組成物層を形成したことを特徴とする高耐久性塗り床である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地コンクリート表面の上、あるいは、該下地コンクリート表面の上に更に少なくとも形成されたプライマー層及び/または下地調整材層の上に、
ポリオールと、ポリイソシアネートと、希釈剤と、脱水剤と、充填剤と、を含むウレタン樹脂系塗り床材組成物であって、ポリイソシアネートはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートであるウレタン樹脂系塗り床材組成物を塗付してウレタン樹脂系塗り床材組成物層を形成し、
その上に、水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、水硬性セメントと、骨材と、を含む水硬性ポリマーセメント組成物であって、水分散ポリオールは水と少なくともヒマシ油系3官能ポリオールを含み、水酸基当量は200~800であって組成物全体100重量部中10~25重量部であり、ヒマシ油系3官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中25重量部超含み、70重量部未満の際には組成物中にさらにグリセリンを含み、ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートであって組成物全体100重量部中20~35重量部であり、水硬性セメントは組成物全体100重量部中10~30重量部であり、骨材は組成物全体100重量部中25~50重量部である水硬性ポリマーセメント組成物を塗付して水硬性ポリマーセメント組成物層を形成したことを特徴とする高耐久性塗り床。
【請求項2】
下地コンクリート表面の上、あるいは、該下地コンクリート表面の上に更に少なくとも形成されたプライマー層及び/または下地調整材層の上に、
ポリオールと、ポリイソシアネートと、希釈剤と、脱水剤と、充填剤と、を含むウレタン樹脂系塗り床材組成物であって、ポリイソシアネートはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートであるウレタン樹脂系塗り床材組成物を塗付してウレタン樹脂系塗り床材組成物層を形成し、
その上に、水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、水硬性セメントと、骨材と、を含み、且つグリセリンを含まない組成物であって、水分散ポリオールは水とヒマシ油系3官能ポリオールを含み、水酸基当量は200~800であって組成物全体100重量部中10~25重量部であり、ヒマシ油系3官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中70重量部超含み、ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートであって組成物全体100重量部中20~35重量部であり、水硬性セメントは組成物全体100重量部中10~30重量部であり、骨材は組成物全体100重量部中25~50重量部である水硬性ポリマーセメント組成物を塗付して水硬性ポリマーセメント組成物層を形成したことを特徴とする高耐久性塗り床。
【請求項3】
下地コンクリート表面の上、あるいは、該下地コンクリート表面の上に更に少なくとも形成されたプライマー層及び/または下地調整材層の上に、
ポリオールと、ポリイソシアネートと、希釈剤と、脱水剤と、充填剤と、を含むウレタン樹脂系塗り床材組成物であって、ポリイソシアネートはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートであるウレタン樹脂系塗り床材組成物を塗付してウレタン樹脂系塗り床材組成物層を形成し、
その上に、水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、グリセリンと、水硬性セメントと、骨材と、を含む組成物であって、水分散ポリオールは水とヒマシ油系3官能ポリオールとヒマシ油系2官能ポリオールを含み、水酸基当量は200~600であって組成物全体100重量部中10~25重量部であり、ヒマシ油系2官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中0重量部超40重量部以下であり、グリセリンは組成物全体100重量部中0重量部超5重量部以下であり、ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートであって組成物全体100重量部中20~35重量部であり、水硬性セメントは組成物全体100重量部中10~30重量部であり、骨材は組成物全体100重量部中25~50重量部である水硬性ポリマーセメント組成物を塗付して水硬性ポリマーセメント組成物層を形成したことを特徴とする高耐久性塗り床。
【請求項4】
下地コンクリート表面の上、あるいは、該下地コンクリート表面の上に更に少なくとも形成されたプライマー層及び/または下地調整材層の上に、
ポリオールと、ポリイソシアネートと、希釈剤と、脱水剤と、充填剤と、を含むウレタン樹脂系塗り床材組成物であって、ポリイソシアネートはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートであるウレタン樹脂系塗り床材組成物を塗付してウレタン樹脂系塗り床材組成物層を形成し、
その上に、水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、グリセリンと、水硬性セメントと、骨材と、を含む組成物であって、水分散ポリオールは水とヒマシ油系3官能ポリオールとビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールを含み、水酸基当量は500~800であって組成物全体100重量部中10~25重量部であり、ヒマシ油系3官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中30重量部超50重量部以下であり、グリセリンは組成物全体100重量部中0重量部超5重量部以下であり、ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートであって組成物全体100重量部中20~35重量部であり、水硬性セメントは組成物全体100重量部中10~30重量部であり、骨材は組成物全体100重量部中25~50重量部である水硬性ポリマーセメント組成物を塗付して水硬性ポリマーセメント組成物層を形成したことを特徴とする高耐久性塗り床。
【請求項5】
水硬性ポリマーセメント組成物が含む脂肪族イソシアヌレートは、ヘキサメチレンジイソシアヌレートであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の高耐久性塗り床。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の高耐久性塗り床の施工方法であって、
下地コンクリート表面の上、あるいは、該下地コンクリート表面の上に更に少なくともプライマー及び/または下地調整材を塗付した上に、
ウレタン樹脂系塗り床材組成物を厚さ0.5~3.0mmに塗付し、
その上に水硬性ポリマーセメント組成物を厚さ1.5~4.0mmに塗付して仕上げることを特徴とする高耐久性塗り床の施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂系塗り床材組成物層の上に水硬性ポリマーセメント組成物層を形成したことを特徴とする高耐久性塗り床、及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、倉庫、工場、厨房室、薬品・化学工場、電子回路の工場等のコンクリート床には塗り床材が施工されている。該塗り床材としてはひび割れ追従性に優れるウレタン樹脂系塗り床材組成物や、機械的な衝撃強度に優れる水硬性ポリマーセメント組成物が使用されてきた。
【0003】
前記のような塗り床材として例えば特許文献1には、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(a)、ひまし油系ポリオールを含むコンパウンド(b)及びBET比表面積が100m/g以上の酸化アルミニウム粉末(c)を含有してなる塗り床用硬質ウレタン樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また、本出願人は特許文献2において、水分散ポリオール、ポリイソシアネート、有機金属系触媒、水硬性セメント及び骨材を含有してなる水硬性ポリマーセメント組成物であって、水分散ポリオールはヒマシ油系3官能ポリオールから成り、水酸基当量は250~600であって組成物全体100重量部中の10~25重量部であり、ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートから成り、ポリイソシアネートは組成物全体100重量部中の20~35重量部であり、水硬性セメントは組成物全体100重量部中の10~30重量部であり、骨材は組成物全体100重量部中の25~50重量部である、ことを特徴とする水硬性ポリマーセメント組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-069291号公報
【特許文献2】特開2020-037508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の塗り床用硬質ウレタン樹脂組成物は、耐黄変性が不足するため紫外線等により黄変する場合があり、またAGV(Automatic Guided Vehicle、無人搬送車)への耐性(以下、耐AGV性)が不十分な場合があり、塗膜が摩耗し劣化する場合があるという課題があった。また、これらにより塗り床材の美観が損なわれる場合があるという課題があった。
【0007】
また、特許文献2記載の水硬性ポリマーセメント組成物は、ウレタン樹脂系塗り床材組成物と比べてひび割れ追従性が低い場合があり、ウレタン樹脂系塗り床材組成物と同等もしくはそれ以上の優れたひび割れ追従性が要求される現場には使用できない場合があるという課題があった。
【0008】
そこで本発明が解決しようとする課題は、ひび割れ追従性が特に優れ、耐黄変性と耐AGV性を有し、美観が損なわれない高耐久性塗り床、及びその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、下地コンクリート表面の上、あるいは、該下地コンクリート表面の上に更に少なくとも形成されたプライマー層及び/または下地調整材層の上に、
ポリオールと、ポリイソシアネートと、希釈剤と、脱水剤と、充填剤と、を含むウレタン樹脂系塗り床材組成物であって、ポリイソシアネートはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートであるウレタン樹脂系塗り床材組成物を塗付してウレタン樹脂系塗り床材組成物層を形成し、
その上に、水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、水硬性セメントと、骨材と、を含む水硬性ポリマーセメント組成物であって、水分散ポリオールは水と少なくともヒマシ油系3官能ポリオールを含み、水酸基当量は200~800であって組成物全体100重量部中10~25重量部であり、ヒマシ油系3官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中25重量部超含み、70重量部未満の際には組成物中にさらにグリセリンを含み、ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートであって組成物全体100重量部中20~35重量部であり、水硬性セメントは組成物全体100重量部中10~30重量部であり、骨材は組成物全体100重量部中25~50重量部である水硬性ポリマーセメント組成物を塗付して水硬性ポリマーセメント組成物層を形成したことを特徴とする高耐久性塗り床を提供する。
【0010】
また請求項2記載の発明は、下地コンクリート表面の上、あるいは、該下地コンクリート表面の上に更に少なくとも形成されたプライマー層及び/または下地調整材層の上に、
ポリオールと、ポリイソシアネートと、希釈剤と、脱水剤と、充填剤と、を含むウレタン樹脂系塗り床材組成物であって、ポリイソシアネートはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートであるウレタン樹脂系塗り床材組成物を塗付してウレタン樹脂系塗り床材組成物層を形成し、
その上に、水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、水硬性セメントと、骨材と、を含み、且つグリセリンを含まない組成物であって、水分散ポリオールは水とヒマシ油系3官能ポリオールを含み、水酸基当量は200~800であって組成物全体100重量部中10~25重量部であり、ヒマシ油系3官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中70重量部超含み、ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートであって組成物全体100重量部中20~35重量部であり、水硬性セメントは組成物全体100重量部中10~30重量部であり、骨材は組成物全体100重量部中25~50重量部である水硬性ポリマーセメント組成物を塗付して水硬性ポリマーセメント組成物層を形成したことを特徴とする高耐久性塗り床を提供する。
【0011】
また請求項3記載の発明は、下地コンクリート表面の上、あるいは、該下地コンクリート表面の上に更に少なくとも形成されたプライマー層及び/または下地調整材層の上に、
ポリオールと、ポリイソシアネートと、希釈剤と、脱水剤と、充填剤と、を含むウレタン樹脂系塗り床材組成物であって、ポリイソシアネートはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートであるウレタン樹脂系塗り床材組成物を塗付してウレタン樹脂系塗り床材組成物層を形成し、
その上に、水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、グリセリンと、水硬性セメントと、骨材と、を含む組成物であって、水分散ポリオールは水とヒマシ油系3官能ポリオールとヒマシ油系2官能ポリオールを含み、水酸基当量は200~600であって組成物全体100重量部中10~25重量部であり、ヒマシ油系2官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中0重量部超40重量部以下であり、グリセリンは組成物全体100重量部中0重量部超5重量部以下であり、ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートであって組成物全体100重量部中20~35重量部であり、水硬性セメントは組成物全体100重量部中10~30重量部であり、骨材は組成物全体100重量部中25~50重量部である水硬性ポリマーセメント組成物を塗付して水硬性ポリマーセメント組成物層を形成したことを特徴とする高耐久性塗り床を提供する。
【0012】
また請求項4記載の発明は、下地コンクリート表面の上、あるいは、該下地コンクリート表面の上に更に少なくとも形成されたプライマー層及び/または下地調整材層の上に、
ポリオールと、ポリイソシアネートと、希釈剤と、脱水剤と、充填剤と、を含むウレタン樹脂系塗り床材組成物であって、ポリイソシアネートはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートであるウレタン樹脂系塗り床材組成物を塗付してウレタン樹脂系塗り床材組成物層を形成し、
その上に、水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、グリセリンと、水硬性セメントと、骨材と、を含む組成物であって、水分散ポリオールは水とヒマシ油系3官能ポリオールとビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールを含み、水酸基当量は500~800であって組成物全体100重量部中10~25重量部であり、ヒマシ油系3官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中30重量部超50重量部以下であり、グリセリンは組成物全体100重量部中0重量部超5重量部以下であり、ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートであって組成物全体100重量部中20~35重量部であり、水硬性セメントは組成物全体100重量部中10~30重量部であり、骨材は組成物全体100重量部中25~50重量部である水硬性ポリマーセメント組成物を塗付して水硬性ポリマーセメント組成物層を形成したことを特徴とする高耐久性塗り床を提供する。
【0013】
また請求項5記載の発明は、水硬性ポリマーセメント組成物が含む脂肪族イソシアヌレートは、ヘキサメチレンジイソシアヌレートであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の高耐久性塗り床を提供する。
【0014】
また請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の高耐久性塗り床の施工方法であって、
下地コンクリート表面の上、あるいは、該下地コンクリート表面の上に更に少なくともプライマー及び/または下地調整材を塗付した上に、
ウレタン樹脂系塗り床材組成物を厚さ0.5~3.0mmに塗付し、
その上に水硬性ポリマーセメント組成物を厚さ1.5~4.0mmに塗付して仕上げることを特徴とする高耐久性塗り床の施工方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の高耐久性塗り床は、ひび割れ追従性が特に優れるという効果があり、下記評価試験で示すように、ひび割れ追従性の評価において変位が2.0mm超でも塗り床塗膜が破断しないという効果がある。これは、下塗りとして柔軟性に優れるウレタン樹脂系塗り床材組成物を使用し、上塗りとして強靭性に優れる水硬性ポリマーセメント組成物を使用することで、下地にひび割れができた際に生じる引張応力をウレタン樹脂系塗り床材組成物が緩衝し、水硬性ポリマーセメント組成物が強靭なため塗り床全体として破断しにくくなっているものと推測している。
【0016】
また、本発明の高耐久性塗り床は、上塗りとしてポリイソシアネートが脂肪族イソシアヌレートから成る水硬性ポリマーセメント組成物を塗付するものであるため、日光や紫外線等によって黄変することが無い、耐黄変性を有するという効果がある。
【0017】
また、本発明の高耐久性塗り床は、AGVにより塗膜が摩耗して劣化しにくいという効果がある。また、これと前記の耐黄変性と相まって、本発明の高耐久性塗り床は施工当時の美観が損なわれないという効果がある。
【0018】
また、請求項6記載の高耐久性塗り床の施工方法は、下地コンクリート表面に、あるいは該下地コンクリート表面の上に更に少なくとも形成されたプライマー層及び/または下地調整材層の上に、請求項1から請求項5までに記載の高耐久塗り床を構成するウレア樹脂系塗り床材組成物を、更にその上に請求項1から請求項5までに記載の高耐久性塗り床を構成する水硬性ポリマーセメントを所定の厚みで均一に塗付することができる効果がある。また、床下地コンクリート表面の微細な孔(コンクリートの微細組織構造から生じる細孔)は下塗りとしてのウレタン樹脂系塗り床材組成物によって充填された状態となり、この上に上塗りとして水硬性ポリマーセメント組成物を塗付するため、塗膜表面にピンホールが発生しないという効果があり、本発明の高耐久性塗り床は美観に優れるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明の高耐久性塗り床は、下地コンクリート表面の上、あるいは、該下地コンクリート表面の上に更に少なくとも形成されたプライマー層及び/または下地調整材層の上に、ポリオールと、ポリイソシアネートと、希釈剤と、脱水剤と、充填剤と、を含むウレタン樹脂系塗り床材組成物であって、ポリイソシアネートはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートであるウレタン樹脂系塗り床材組成物を塗付してウレタン樹脂系塗り床材組成物層を形成し、その上に、水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、水硬性セメントと、骨材と、を含む水硬性ポリマーセメント組成物であって、水分散ポリオールは水と少なくともヒマシ油系3官能ポリオールを含み、水酸基当量は200~800であって組成物全体100重量部中10~25重量部であり、ヒマシ油系3官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中25重量部超含み、70重量部未満の際には組成物中にさらにグリセリンを含み、ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートであって組成物全体100重量部中20~35重量部であり、水硬性セメントは組成物全体100重量部中10~30重量部であり、骨材は組成物全体100重量部中25~50重量部である水硬性ポリマーセメント組成物を塗付して水硬性ポリマーセメント組成物層を形成したことを特徴とする高耐久性塗り床であり、該高耐久性塗り床を構成するウレタン樹脂系塗り床材組成物、及び水硬性ポリマーセメント組成物には、必要に応じてこれらの他に、着色顔料、体質顔料、分散剤、消泡剤、希釈剤等の添加剤を配合することができる。
【0021】
まず、本発明の高耐久性塗り床を構成するウレタン樹脂系塗り床材組成物について説明する。
【0022】
<ポリオール>
ウレタン樹脂系塗り床材組成物に使用するポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ヒマシ油系ポリオール、脂肪酸変性ポリエステル、水酸基含有ポリウレタン、ポリアクリレート等を1種または2種以上を混合して使用できる。中でも柔軟性や可撓性、延伸性に優れることからヒマシ油系ポリオールを含むことが好ましい。
【0023】
ウレタン樹脂系塗り床材組成物に使用するポリオールの水酸基当量は、160~350が好ましく、160未満では塗膜に発泡が生じる場合があり、350超ではひび割れ追従性が低下する場合がある。該水酸基当量は、ポリオールを2種以上混合して使用する場合には、混合物の水酸基当量が該範囲内であればよい。また、ポリオールの配合量は組成物全体100重量部中30~45重量部が好ましく、30重量部未満ではひび割れ追従性が低下する場合があり、45重量部超では塗膜に発泡が生じ強度が低下する場合がある。また、粘度は2000~6000mPa・s/25℃であることが好ましい。
【0024】
<ポリイソシアネート>
ウレタン樹脂系塗り床材組成物に使用するポリイソシアネートは、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)である。配合量は組成物全体100重量部中15~25重量部が好ましく、15重量部未満ではひび割れ追従性が低下する場合があり、25重量部超では塗膜に発泡が生じ強度が低下する場合がある。
【0025】
ウレタン樹脂系塗り床材組成物に使用するポリイソシアネートのNCO%は25~35%であることが好ましく、25%未満では硬化物の強度が不十分となる場合があり、35%超では硬化時間がより早くなる傾向にあり夏季等の高温環境での可使時間が短くなる場合がある。また、粘度は15~150mPa・s/25℃であることが好ましい。市販品としては例えば、スミジュール44V10(ポリメリックMDI、NCO%:31%、粘度:130mPa・s/25℃、住化コベストロウレタン株式会社製、商品名)や、イソシアネートJ243(ポリメリックMDI、NCO%:32%、粘度:25mPa・s/25℃、住化コベストロウレタン株式会社製、商品名)等が使用できる。
【0026】
ウレタン樹脂系塗り床材組成物において、ポリオールの水酸基(OH)当量とポリイソシアネートのNCO基の当量比(OH当量/NCO当量)は0.8~1.2が好ましい。0.8未満では混合後の粘度上昇が速くなり可使時間が短くなる場合があり、1.2超ではタックフリーとなるまでの時間および強度の立ち上がりが遅延する場合がある。
【0027】
<希釈剤>
ウレタン樹脂系塗り床材組成物に使用する希釈剤は、塗付作業性を向上させる目的で配合し、アルコール、芳香族グリコールエーテル、カルボン酸のエステル誘導体、キシレン樹脂等が使用できる。中でも芳香族グリコールエーテルが好ましく、特にフェノキシプロパノールは相溶性が良好であるためより好ましい。配合量は組成物100重量部中0重量部超5重量部以下であり、5重量部超では塗膜物性が低下する場合がある。
【0028】
<脱水剤>
ウレタン樹脂系塗り床材組成物に使用する脱水剤は、酸化カルシウム、モレキュラーシーブ(合成ゼオライト)、シリカゲル、シリカ・マグネシアゲル、シリカ・アルミナゲル、活性炭、活性アルミナ等を使用でき、中でもモレキュラーシーブは脱水性が優れるため好ましく、特にモレキュラーシーブ5Aがより好ましい。配合量は組成物全体100重量部中5~15重量部であることが好ましく、5重量部未満では脱水作用が不足して塗膜に発泡が生じる場合があり、15重量部超では塗膜物性が低下する場合がある。
【0029】
<充填材>
ウレタン樹脂系塗り床材組成物に使用する充填材は、重質炭酸カルシウムに代表される炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、シリカ粉、硅石粉等が使用することができる。中でも難燃剤として働く水酸化アルミニウムを使用することが好ましい。粒径は50%重量積算による平均粒径D50が100μm以下であることが好ましく、100μm超では塗付した際に塗膜表面に凹凸が生じたり充填材による微小な突起が生じたりする場合がある。配合量は組成物全体100重量部中20~35重量部であることが好ましく、該範囲外となると塗付作業性が不良となる場合がある。
【0030】
上記の他にウレタン系塗り床材組成物には、着色顔料、体質顔料、分散剤、消泡剤等の添加剤を添加することができる。
【0031】
次に、本発明の高耐久性塗り床を構成する水硬性ポリマーセメント組成物について説明する。
【0032】
<水分散ポリオール>
水硬性ポリマーセメント組成物に使用する水分散ポリオールは、請求項1に記載の水硬性ポリマーセメント組成物においては、少なくともヒマシ油系3官能ポリオールを含み、該ヒマシ油系3官能ポリオールは、ヒマシ油又はその誘導体を使用することができ、水酸基数が3のポリオールである。本発明に使用する水分散ポリオールの水酸基当量は、200~800が好ましく、200未満では水硬性ポリマーセメント組成物としての硬化が速くなって作業性が不良となり、800超では水硬性ポリマーセメント組成物として硬化後の強度が不十分となる。水分散ポリオールの配合量は組成物全体100重量部中10~25重量部が好ましく、10重量部未満では組成物の硬化物の強度が低下し、25重量部超では組成物を金鏝で塗付する際の作業性が低下する。
【0033】
またヒマシ油系3官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中25重量部超含み、該ヒマシ油系3官能ポリオールが70重量部未満の際は硬化後の強度が不十分となる場合があるため、さらに組成物中にグリセリンを加える必要がある。この際のグリセリンの配合量は、組成物全体100重量部中0重量部超5重量部以下が好ましく、より好ましくは0.01重量部以上4重量部以下であり、不十分となる耐AGV性を回復する量を配合することが好ましい。
【0034】
水硬性ポリマーセメント組成物に使用する水分散ポリオールは、請求項2に記載の水硬性ポリマーセメント組成物においては、ヒマシ油系3官能ポリオールからなり、該ヒマシ油系3官能ポリオールは、上記同様にヒマシ油又はその誘導体を使用することができ、水酸基数が3のポリオールである。本発明に使用する水分散ポリオールの水酸基当量は、200~800が好ましく、200未満では水硬性ポリマーセメント組成物としての硬化が速くなって作業性が不良となり、800超では水硬性ポリマーセメント組成物として硬化後の強度が不十分となる。水分散ポリオールの配合量は組成物全体100重量部中10~25重量部が好ましく、10重量部未満では組成物の硬化物の強度が低下し25重量部超では組成物を金鏝で塗付する際の作業性が低下する。またヒマシ油系3官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中70重量部超含み、70重量部未満では硬化後の強度が不十分となる場合がある。
【0035】
水硬性ポリマーセメント組成物に使用する水分散ポリオールは、請求項3に記載の水硬性ポリマーセメント組成物においては、水とヒマシ油系2官能ポリオールとヒマシ油系3官能ポリオールからなり、ヒマシ油系2官能ポリオールは、ヒマシ油又はその誘導体を使用することができ、水酸基数が2のポリオールであり、ヒマシ油系3官能ポリオールは、同様にヒマシ油又はその誘導体を使用することができ、水酸基数が3のポリオールである。本発明に使用する水分散ポリオールの水酸基当量は、200~600が好ましく、200未満では水硬性ポリマーセメント組成物としての硬化が速くなって作業性が不良となり、600超では水硬性ポリマーセメント組成物として硬化後の強度が不十分となる。水分散ポリオールの配合量は組成物全体100重量部中10~25重量部が好ましく、10重量部未満では組成物の硬化物の強度が低下し25重量部超では組成物を金鏝で塗付する際の作業性が低下する。
【0036】
請求項3に記載の水硬性ポリマーセメント組成物における水分散ポリオール中のヒマシ油系2官能ポリオールは、水分散ポリオール100重量部中0重量部超40重量部以下であり、40重量部超となると、耐AGV性が不十分となる。請求項3記載の発明ではヒマシ油系2官能ポリオールを含むことによる耐AGV性の低下を、架橋剤としてグリセリンを配合することで耐AGV性を有する塗り床材として使用可能とする。このため耐AGV性が損なわれる程度にヒマシ油系2官能ポリオールが配合された場合にはさらにグリセリンを配合することになり、その場合が請求項3に記載の水硬性ポリマーセメント組成物となる。
【0037】
水硬性ポリマーセメント組成物に使用する水分散ポリオールは、請求項4に記載の水硬性ポリマーセメント組成物においては、水とヒマシ油系3官能ポリオールとビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールを含み、ヒマシ油系3官能ポリオールは上記同様にヒマシ油及びその誘導体で、水酸基数が3のポリオールである。本発明に使用するヒマシ油変性3官能ポリオールの水酸基当量は、250~450が好ましく、250未満では硬化物の収縮応力が大きくなって塗膜が剥離したり、硬化が速くなって作業性が不良となったりする場合があり、450超では水硬性ポリマーセメント組成物として硬化後の強度が不十分となる場合がある。また、水分散ポリオール中のヒマシ油系3官能ポリオールの含有量は水分散ポリオール100重量部中30重量部超50重量部以下が好ましく、30重量部以下では耐AGV性が不良となる場合があり、50重量部超では耐衝撃性が不十分となる場合がある。
【0038】
前記ビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールは、ビスフェノールA骨格を有するポリエポキシ化合物に活性水素化合物を反応させて得られるエポキシ開環ポリオールであり、水酸基当量は250~450が好ましい。水酸基当量が250未満では硬化物の収縮応力が大きくなって塗膜剥離したり、硬化が速くなったりして作業性が不良となったりする場合があり、450超では水硬性ポリマーセメント組成物として硬化後の強度が不十分となる場合がある。また水分散ポリオール中のビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールの含有量は水分散ポリオール100重量部中2重量部超15重量部以下が好ましく、2重量部以下では耐衝撃性が不足する場合があり、15重量部超では耐AGV性が不十分となる場合がある。
【0039】
また請求項4に記載の水分散ポリオールの水酸基当量は、全体として500~800が好ましく、500未満では水硬性ポリマーセメント組成物としての硬化が速くなって作業性が不良となり、800超では水硬性ポリマーセメント組成物として硬化後の強度が不十分となる。水分散ポリオールの配合量は組成物全体100重量部中10~25重量部が好ましく、10重量部未満では組成物の硬化物の強度が低下し25重量部超では組成物を金鏝で塗付する際の作業性が低下する。
【0040】
請求項4記載の発明ではビスフェノールA骨格を有するポリエポキシ化合物を含むことによる耐AGV性の低下を、架橋剤としてグリセリンを配合することで、耐AGV性を有する塗り床材として使用可能とする。このため耐AGV性が損なわれる程度にビスフェノールA骨格を有するポリエポキシ化合物が配合された場合にはさらにグリセリンを配合することになり、その場合が請求項4に記載の水硬性ポリマーセメント組成物となる。
【0041】
<ポリイソシアネート>
水硬性ポリマーセメント組成物に使用するポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートである。より好ましくはイソシアヌレート構造を有する脂肪族イソシアヌレートであり、詳しくは、1,6ヘキサメチレンジイソシアネートを環化三量化することによって得られるヘキサメチレンジイソシアヌレートが優れた耐黄変性を有し、塗膜の硬度を向上させることから好ましい。1,6ヘキサメチレンジイソシアネートを環化三量化するには、特開平01-33115号公報に記載の方法を使用することができ、水硬性ポリマーセメント組成物に使用するポリイソシアネートには、他の脂肪族ジイソシアネートや脂環式ジイソシアネート等、またこれらのプレポリマーを併用することができ、ポリイソシアネートの含有量99重量%以上のものを使用する。
【0042】
また、水硬性ポリマーセメント組成物に使用するポリイソシアネートとしては、NCO%が15~25重量%のものを使用することができ、NCO%が20~25重量%のポリイソシアネートがより好ましい。15%重量未満では塗膜の強度が不足する場合があり、25重量%超ではイソシアヌレート構造をとっているポリイソシアネートが少なくなり、また逆に三量化されていない、例えばジイソシアネートであるポリイソシアネートが増えることになるため、同様に塗膜の強度が不足する。
【0043】
また、水硬性ポリマーセメント組成物に使用するポリイソシアネートの粘度は500~3500mPa・s/25℃であることが好ましく、500mPa・s未満では塗膜の強度が不足する場合があり、3500mPa・s超では下地コンクリート表面に塗付する際の作業性が低下する場合がある。
【0044】
また、水硬性ポリマーセメント組成物に使用するポリイソシアネートは組成物全体100重量部中20~35重量部であり、20重量部未満では塗膜の強度が不足する場合があり、35重量部超では硬化時間が短くなって、施工性が不足する場合がある。
【0045】
水硬性ポリマーセメント組成物において、水分散ポリオールの水酸基(OH)当量とポリイソシアネートのNCO基の当量比(OH当量/NCO当量)は2.0~6.0が好ましく、3.5~5.5であるとより好ましい。2.0未満では混合後の粘度上昇が速くなり可使時間が短くなる場合があり、6.0超ではタックフリーとなるまでの時間および強度の立ち上がりが遅延する場合がある。
【0046】
<有機金属系触媒>
水硬性ポリマーセメント組成物に使用する有機金属系触媒は、本組成物の硬化を促進させるために配合される。例えば、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリン酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、オクチル酸ビスマス等の有機金属系触媒等を使用することが出来る。これらの硬化触媒の中でも、有機錫化合物が好ましい。また、これらの硬化触媒のうち、触媒効果の点から、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライドがより好ましい。有機金属系触媒の配合量は、組成物全体100重量部中0.001~0.01重量部であることが好ましく、0.001重量部未満では塗膜の強度が不十分と成る場合があり、0.01重量部超では硬化が速くなり金鏝等での塗付作業性が不良と成る場合がある。
【0047】
<水硬性セメント>
水硬性ポリマーセメント組成物に使用する水硬性セメントは、特定の色調が付与できるように、主として白色ポルトランドセメントを使用することが好ましく、他に普通ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉セメント、早強ポルトランドセメント等を併用することが出来る。水硬性セメントの配合量は組成物全体100重量部中10~30重量部が好ましく、10重量部未満で塗膜の強度が低下し、30重量部超では本組成物を金鏝等で下地コンクリート表面に塗付する際の塗付作業性が低下する。
【0048】
<骨材>
水硬性ポリマーセメント組成物に使用する骨材は、粒径が0.05~0.7mmmmの珪砂、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等を使用することが出来る。0.05mm未満では組成物としての粘度が高くなり、塗付作業性が低下する場合があり、0.7mm超ではウレタン樹脂系塗り床材組成物層の上に塗付した際に塗膜の表面平滑性に劣る場合がある。
【0049】
骨材の配合部数は、骨材は組成物全体100重量部中25~50重量部であり、25重量部未満では耐衝撃性が不良と成る場合があり、50重量部超では表面平滑性が低下する場合がある。
【0050】
上記の他に、水硬性ポリマーセメント組成物には、着色顔料、体質顔料、分散剤、消泡剤、希釈剤等の添加剤を添加することができる。
【0051】
本発明の高耐久性塗り床を構成するウレタン樹脂系塗り床材組成物、及び水硬性ポリマーセメント組成物は、金鏝やローラ刷毛等を使用して施工することができる。まず下塗りとしてウレタン樹脂系塗り床材組成物を塗付厚みが0.5~3.0mmとなるように塗付し、続いてこの上に上塗りとして水硬性ポリマーセメント組成物を塗付厚みが1.5~4.0mmとなるように塗付して仕上げることが望ましい。このように塗付することにより、上塗りの硬化塗膜にピンホールが発生することが無く、美観に優れた塗り床とすることが出来る。
【0052】
本発明の高耐久性塗り床と併せて使用できるプライマーとしては例えば、JJ-100(水性ウレタンプライマー、アイカ工業株式会社製、商品名)があり、下地調整材としては例えば、JEX-210(水系ポリマーセメントモルタル樹脂、アイカ工業株式会社、商品名)がある。
【0053】
以下、実施例及び比較例にて具体的に説明する。
【実施例0054】
<ウレタン樹脂系塗り床材組成物>
ポリオールAとしてヒマシ油系3官能ポリエステルポリオール(水酸基等量:340)を、ポリオールBとしてヒマシ油系3官能ポリエステルポリオール(水酸基当量:230)を、ポリオールCとして脂肪族系3官能ポリエステルポリエーテルポリオール(水酸基当量:182)を使用し、ポリイソシアネートAとしてスミジュール44V10を、ポリイソシアネートBとしてイソシアネートJ243を使用し、希釈剤としてフェノキシプロパノール(四日市合成株式会社製)を使用し、脱水剤としてモレキュラーシーブ5Åパウダー(平均粒子径D50:10μm以下、ユニオン昭和社製、商品名)を使用し、充填材として水酸化アルミニウムB-308(平均粒子径D50:10.5μm、アルモリックス株式会社製、商品名)を使用し、その他にウレタン樹脂に一般的に使用される消泡剤、分散剤を使用して、表1に示す配合にてウレタン樹脂系塗り床材組成物IとIIを作製した。
【0055】
【表1】
【0056】
<水硬性ポリマーセメント組成物>
水分散ポリオールとして、ヒマシ油系3官能ポリオールから成り水酸基当量が280~560の水分散ポリオールA(水含有量:25~30重量%)と、ヒマシ油系3官能ポリオール100重量部に対してヒマシ油系2官能ポリオールが14~20重量部含まれ、全体として水酸基当量が200~500の水分散ポリオールB(水含有量:25~30重量%)と、水酸基当量が350のヒマシ油変性3官能ポリオールを35~40重量部と、水酸基当量が360のビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールを5~10重量部と、希釈剤としてメザモール(スルホン酸エステル化合物、バイエル社製、商品名)を20~25重量部と、水(イオン交換水)30重量部を含み全体として100重量部となり、水酸基当量が500~800の水分散ポリオールCを使用し、ポリイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアヌレート(粘度2500mPa・s/25℃、NCO%:20重量%、ポリイソシアネート含有量99重量%以上)のポリイソシアネートCと、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネートであるポリイソシアネートD(NCO重量%:31.0重量%)を使用し、有機金属系触媒として、ネオスタンU220H(ジブチル錫ジアセチルアセトナート)を使用し、骨材として、粒子径0.05~0.6mmの東北硅砂6号(東北硅砂株式会社製、商品名)を使用し、水硬性セメントとして白色ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)を使用し、その他にグリセリンと、一般的な水硬性ポリマーセメント組成物に使用される消泡剤、分散剤を使用して、表2に示す配合にて水硬性ポリマーセメント組成物AからEを作製した。
【0057】
【表2】
【0058】
<実施例及び比較例>
上記のウレア樹脂系塗り床材組成物IとII、及び水硬性ポリマーセメント組成物AからEを用い、表3、及び表4に示す塗付厚みから成る高耐久性塗り床とし、実施例1から5、及び比較例1から5とした。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
<評価方法>
上記の実施例及び比較例について、以下の評価を行った。尚、特に記載のない限り、試験体の作製、養生、評価試験は23℃、50%RHの環境下にて行った。
【0062】
<ひび割れ追従性>
下地としてJIS A 5430規定のフレキシブルボード(100×70mm、厚さ8mm)を使用し、該下地2枚の70×8mmの木口同士を突き付け、その裏面を養生テープで仮止めした。下地表面にプライマーとしてJJ-100(アイカ工業株式会社、商品名)を塗付量0.5kg/mで塗付し、乾燥後、実施例及び比較例の下塗りを表3、及び表4記載の塗付厚みとなるように塗付し、18時間養生し、続いて、実施例及び比較例の上塗りを表3、及び表4記載の塗付厚みとなるように塗付し、14日間養生して試験体とした。試験体裏面の仮止めの養生テープをはがし、万能試験機(インストロン社製)にて、試験体の両端を2mm/分で引張り、突きつけ部の塗膜にピンホールが発生した時の距離が2.0mm以上のものを◎と、2.0mm未満1.5mm以上のものを〇と、1.5mm未満1.0mm以上のものを△と、1.0mm未満のものを×と評価した。
【0063】
<耐AGV性>
JIS A 5371規定の300mm×300mm、厚さ60mmの乾燥したコンクリート平板(ケット水分計HI-520コンクリートレンジにて5%以下)の表面に、プライマーとしてJJ-100(アイカ工業株式会社、商品名)を塗付量0.5kg/mで塗付し、乾燥後、実施例及び比較例の下塗りを表3、及び表4記載の塗付厚みとなるように塗付し、18時間養生し、続いて、実施例及び比較例の上塗りを表3、及び表4記載の塗付厚みとなるように塗付し、14日間養生して試験体とした。該試験体を据え切り試験機(ウレタンタイヤ、荷重:600kg、速度:12.5回/min、据え切り角度:90℃)に供し、10,000回据え切りした。試験後塗膜を観察し、塗膜に著しい摩耗による損傷や削れといった異常がないものを〇と、異常が生じたものを×と評価した。
【0064】
<耐黄変性>
JIS R 5201規定のモルタル(70×70×20mm)にプライマーとしてJJ-100(アイカ工業株式会社、商品名)を塗付量0.5kg/mで塗付し、乾燥後、実施例及び比較例の下塗りを表3、及び表4記載の塗付厚みとなるように塗付し、18時間養生し、続いて、実施例及び比較例の上塗りを表3、及び表4記載の塗付厚みとなるように塗付し、14日間養生して試験体とした。各試験体にブラックライト(殺菌灯、ピーク波長256nm、31μW/cm)を高さ50cmから200時間照射し、照射前と照射後の色差(ΔE)を色彩色差計(CM-2600d、コニカミノルタセンシング株式会社製)にて測定した。ΔEが1.0以下のものを○、ΔEが1.0超のものを×と評価した。
【0065】
<付着性>
前記耐AGV性と同様の試験体を作製した。建研式接着力試験器により、該試験体の40×40mm部分のコンクリート平板との付着強さ(N/mm)を測定した。付着強さが2.0N/mm以上のものを十分な付着強度を有すると評価した。また、破壊状態は下地コンクリート100%凝集破壊のものを○と、それ以外のものを×と評価した。
【0066】
<耐衝撃性>
前記耐AGV性と同様の試験体を作製した。該試験体の中央部に高さ1mから1kgの鋼球を60回落下させ、塗膜に割れ、剥がれ等の異常のないものを○と、異常が生じたものを×と評価した。
【0067】
<耐温冷繰り返し性>
前記耐AGV性と同様の試験体を作製した。該試験体を[-5℃で3時間]→[40℃で1時間]の温冷繰り返しサイクルに100サイクル供した。温度変化による塗り床塗膜とコンクリートの収縮率の差によって塗膜に剥がれや膨れ等の異常が生じなかったものを〇と、異常が生じたものを×と評価した。
【0068】
<硬度>
前記耐AGV性と同様の試験体を作製した。JIS K 7215に準拠し、タイプDデュロメーター硬さ(HDA)を測定した。
【0069】
<仕上がり性>
前記耐AGV性と同様の試験体を作製した。塗膜表面を観察し、気泡またはピンホールが5個以下のものを〇と、5個超のものを×と評価した。
【0070】
<評価結果>
評価結果を表5、及び表6に示す。
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】