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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145926
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】油性クレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20231004BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20231004BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20231004BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A61K8/39
A61K8/37
A61K8/55
A61K8/9789
A61Q19/10
A61Q1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052844
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 亜美
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC122
4C083AC352
4C083AC371
4C083AC372
4C083AC391
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC441
4C083AC442
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD571
4C083AD572
4C083BB13
4C083CC23
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE10
(57)【要約】
【課題】本発明は、目や肌等への刺激を抑制するために使用する界面活性剤の配合量を低減させ、それにもかわらず洗い流し時に微細な乳化粒子径となって油性のぬるつきが残りにくい油性クレンジング化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】以下の(A)~(C)を含む、油性クレンジング化粧料を提供する。
(A)脂肪酸とポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステル
(B)リゾリン脂質を含むダイズ種子エキス、リゾレシチンまたは水添リゾレシチンから選ばれる一種又は二種以上
(C)液状油
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)~(C)を含む、油性クレンジング化粧料。
(A)脂肪酸とポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステル
(B)リゾリン脂質を含むダイズ種子エキス、リゾレシチン及び水添リゾレシチンからなる群から選ばれる一種又は二種以上
(C)液状油
【請求項2】
(A)のポリグリセリンジ脂肪酸エステルが、以下の(A1)及び/又は(A2)である、請求項1に記載の油性クレンジング化粧料。
(A1)炭素数が8~10の脂肪酸と平均重合度が4~10のポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステル
(A2)炭素数が18~22の脂肪酸と平均重合度が8~15のポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステル
【請求項3】
さらに、以下の(D)を含む、請求項1又は2に記載の油性クレンジング化粧料。
(D)マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、トリイソステアリン、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ダイマージリノール酸(イソステアリル/フィトステリル)、リンゴ酸ジイソステアリル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)及びデカイソステアリン酸ポリグリセリル-10からなる群から選ばれる1種または2種以上
【請求項4】
(A)及び(B)の合計量が、化粧料全体の10質量%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の油性クレンジング化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油性クレンジング化粧料に関する。特に、目や肌等の刺激の原因となりうる界面活性剤量を低減しつつも、洗い流し時の微細な乳化粒子径を実現可能な油性クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油性成分の溶解作用でメイク汚れを落とす油性クレンジング化粧料は、持続性の高いメークアップ化粧料とも容易になじむことから多くの顧客に受け入れられている。油性クレンジング化粧料の主な構成成分は油剤と界面活性剤である。油性クレンジング化粧料の作用機序は、油性成分がメイク汚れを溶解し、さらに界面活性剤の働きにより水で洗い流すことができるようになるというものである。しかし、両成分の選択や配合量のバランスが悪いとメイク汚れは溶解できても、水で洗い流したあとに残油感が強く感じられる場合がある。また、残油感が残る場合は、さらにそれを取り除くために再度洗顔料で洗浄しなければならず、肌の過度の脱脂のため、肌荒れが起きたり、肌に刺激感が生じる場合がある。
【0003】
油性クレンジング化粧料として以下に示す従来技術がある。
特許文献1には、硬水の地域でもメイク汚れに対するクレンジング力が強く、残油感のない、洗い流しやすい油性クレンジング化粧料として、(A)炭素数が8~10の脂肪酸と平均重合度が4~10のポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステルと、(B)炭素数が18~22の脂肪酸と平均重合度が8~15のポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステルと、(C)油剤、とを含有する油性クレンジング化粧料において、(A):(B)が12:5~1:1である油性クレンジング化粧料が開示されている。しかし、油性クレンジング化粧料中に界面活性剤が16.5%以上配合されており、さらなる低減が求められていた。
【0004】
特許文献2には、クレンジング効果の高さ、垂れ落ちの無さ、まろやかな感触、洗い流しのさっぱり感に優れながら、かつ経時安定性が良好という特徴を有する液状油性の肌洗浄用組成物として、(a)ダイマー酸のジエステル、(b)HLBが8~12の範囲にある脂肪酸ポリオキシエチレンソルビットおよび/または脂肪酸ポリオキシエチレングリセリル10~35質量%、(c)25℃で液状の炭化水素油10~30質量%、(d)揮発性シリコーン油及び(e)リンゴ酸ジイソステアリルを含有し、成分(a)と成分(e)の含有質量割合(a)/(e)が0.1~1であることを特徴とする液状油性の皮膚洗浄用組成物が開示されている。しかし、当該組成物は、界面活性剤の成分である(e)が10~35質量%以上配合されており、実施例でも11質量%以上のものについて評価されている。さらに、洗い流しの評価は官能評価のみで、洗い流し時の乳化粒子径については検討されていない。
【0005】
このほかにも、洗い上がり後の肌に保湿感を与え、なおかつ、きしみ、べたつき、油膜感が抑制されたポリグリセリン脂肪酸エステルを含む油性化粧料(特許文献3)や高いクレンジング力を発揮することができ、洗い流しが容易な非イオン界面活性剤を含む油性クレンジング化粧料(特許文献4)が開示されているが、いずれも界面活性剤をそれぞれ14%以上、26.5%以上と高含量が配合されており、また、洗い流しの評価は官能評価のみで、洗い流し時の乳化粒子径については検討されていない。
【0006】
界面活性剤量を低減した油性クレンジング化粧料としては以下のものが挙げられる。
特許文献5には、持続性の高い化粧料を洗浄する効果に優れ、洗浄後は水で洗い流すことができ、しかも目や肌等の刺激を抑制するために使用する界面活性剤量を低減させた油性肌クレンジング料として、(a)液状高級アルコール、(b)ポリオキシエチレン鎖を持つHLB5~16の非イオン性界面活性剤1~3質量%、(c)ジイソステアリン酸ジグリセリル及び/又はトリイソステアリン酸ジグリセリル、及び(d)液状炭化水素油を配合した油性皮膚クレンジング料が開示されている。本クレンジング料は、界面活性剤の配合量は1~3質量%と低減されているものの、洗い流しやすさや使用後のさっぱり感は、官能評価しかされておらず、洗い流し時の乳化粒子径については検討されていない。本願発明者らが、実際に本クレンジング化粧料を調製し、後述する実施例の評価方法により乳化粒子径を測定したところ、当該粒子径は大きいものであった。したがって、本特許文献の油性肌クレンジング料は、洗い流し後のさっぱり感は充分なものとは言えない可能性が高い。
【0007】
他にも界面活性剤量を7.5%に低減した、クレンジング後の洗い残り感、ぬるつき等のいわゆる後肌の悪さを改善したクレンジング料が開示されているが(特許文献6)、界面活性剤の種類がエタノールアミド系の組み合わせであるため、目や肌等への安全性が充分とは言えない。また、洗い流し時の乳化粒子径についても検討されていない。
【0008】
ところで、乳化粒子径が小さく、乳化安定性に優れたエマルション組成物を含む化粧品として、リゾレシチンを配合した化粧品が知られてているが(特許文献7)、当該化粧品はクレンジング化粧料ではないことから、水に希釈して使用する油性クレンジング化粧料への適用可能性については全く不明であると言わざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6684648号公報
【特許文献2】特開2019-127476号公報
【特許文献3】特開2019-172652号公報
【特許文献4】特開2019-196337号公報
【特許文献5】特許第4763474号公報
【特許文献6】特許第4554404号公報
【特許文献7】特許第4302159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、クレンジング力、洗い流し性、使用性、肌への摩擦低減、目や肌等の刺激抑制のすべてに優れた油性クレンジング化粧料は未だ存在しなかった。
本発明は、目や肌等への刺激の原因となりうる界面活性剤の配合量を低減させ、それにもかわらず洗い流し時に微細な乳化粒子径となって油性のぬるつきが残りにくい油性クレンジング化粧料を提供することを課題とする。
また、ウォータープルーフ機能を有するアイメイク等、様々なメークアップ化粧料に対しても高いクレンジング力があり、塗布時の使用性に優れ、さらに、肌への摩擦を低減するために適度なとろみ・厚みと滑り性を有する油性クレンジング化粧料においても、洗い流し時の乳化粒子径の増大を抑制し、微細な乳化粒子径となって油性のぬるつきが残りにくい油性クレンジング化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる実情に鑑み、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリグリセリンジ脂肪酸エステルを含む油性クレンジング化粧料において、リゾレシチンを配合することにより、洗浄する効果に優れ、しかも目や肌等の刺激を抑制するために使用する界面活性剤量を低減させながらも、洗い流し時の乳化粒子径が細かい、すなわち油性のぬるつきが改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、適度なとろみ・厚みと滑り性を付与することにより肌への摩擦を低減しつつも洗い流し時の乳化粒子径が細かい油性クレンジング化粧料が得られることをも見出した。
すなわち、具体的には本発明は、以下の構成を有する。
<1>以下の(A)~(C)を含む、油性クレンジング化粧料。
(A)脂肪酸とポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステル
(B)リゾリン脂質を含むダイズ種子エキス、リゾレシチン及び水添リゾレシチンからなる群から選ばれる一種又は二種以上
(C)液状油
<2>(A)のポリグリセリンジ脂肪酸エステルが、以下の(A1)及び/又は(A2)である、前記<1>に記載の油性クレンジング化粧料。
(A1)炭素数が8~10の脂肪酸と平均重合度が4~10のポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステル
(A2)炭素数が18~22の脂肪酸と平均重合度が8~15のポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステル
<3>さらに、以下の(D)を含む、前記<1>又は<2>に記載の油性クレンジング化粧料。
(D)マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、トリイソステアリン、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ダイマージリノール酸(イソステアリル/フィトステリル)、リンゴ酸ジイソステアリル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)及びデカイソステアリン酸ポリグリセリル-10からなる群から選ばれる1種または2種以上
<4>(A)及び(B)の合計量が、化粧料全体の10質量%未満である、前記<1>~<3>のいずれか1に記載の油性クレンジング化粧料。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、界面活性剤としてポリグリセリンジ脂肪酸エステルを含む油性クレンジング化粧料において、リゾリン脂質を含むダイズ種子エキス、リゾレシチンまたは水添リゾレシチンを配合することで、界面活性剤量を低減しつつも洗い流し時の乳化粒子径が細かいクレンジング化粧料を提供することができた。
また、洗い流し時の乳化粒子径の増大につながるとろみ付与原料を配合しながらも、当該粒子径が細かい油性クレンジング化粧料を提供することができた。
また、リゾレシチン配合自体によってもとろみ・厚みを増すことができた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、以下の(A)~(C)を含む、油性クレンジング化粧料に関する。
(A)脂肪酸とポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステル
(B)リゾリン脂質を含むダイズ種子エキス、リゾレシチン及び水添リゾレシチンからなる群から選ばれる一種又は二種以上
(C)液状油
本発明の油性クレンジング化粧料は、さらに、(E)とろみ成分を配合することもできる。
以下に、本発明の油性クレンジング化粧料に含まれる成分(A)~(E)及びその他の任意成分について説明する。
【0014】
<(A)脂肪酸とポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステル>
本発明の油性クレンジング化粧料に用いられる成分(A)は、脂肪酸とポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステルである。例えば、炭素数が8~22の脂肪酸、平均重合度が4~15のポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステルが挙げられる。このうちでも、(A1)炭素数が8~10の脂肪酸と平均重合度が4~10のポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステル、又は、(A2)炭素数が18~22の脂肪酸と平均重合度が8~15のポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステルが好ましく、さらに好ましくは(A1)と(A2)との組み合わせである。
本発明の油性クレンジング化粧料において、上記成分(A)は、油性成分によりメイク汚れを溶解し、これを水で洗い流すために必要な量であればよく、目や肌等への安全性からできるだけ少ない方が好ましく、具体的には、15質量%未満であることが好ましく、さらに好ましくは10質量%未満である。
【0015】
<(A1)炭素数が8~10の脂肪酸と平均重合度が4~10のポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステル>
本発明の油性クレンジング化粧料に用いられる成分(A1)は、炭素数が8~10の脂肪酸と平均重合度が4~10のポリグリセリンとがエステル化したポリグリセリンジ脂肪酸エステルである。具体的には、ジカプリン酸ヘキサグリセリル、ジカプリル酸ヘキサグリセリルが好ましく、単独でも、組み合わせて用いてもよい。
【0016】
<(A2)炭素数が18~22の脂肪酸と平均重合度が8~15のポリグリセリンからなるポリグリセリンジ脂肪酸エステル>
本発明の油性クレンジング化粧料に用いられる成分(A2)は、炭素数が18~22の脂肪酸と平均重合度が8~15のポリグリセリンとがエステル化したポリグリセリンジ脂肪酸エステルである。具体的には、ジイソステアリン酸デカグリセリル、ジオレイン酸デカグリセリルが好ましく、単独でも、組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明の油性クレンジング化粧料中、成分(A1)と成分(A2)を組み合わせて配合する場合、(A2)よりも(A1)を多く配合することが好ましい。本発明の油性クレンジング化粧料中、(A1):(A2)が2:1~1:2であることが好ましい。この範囲の組成にすると、水で濡れた手で使用してもクレンジング力が低下せず、水ですっきりと洗い流すことができ、さらに、洗い流した後に肌に残油感が残りにくいからである。
【0018】
<(B)リゾリン脂質を含むダイズ種子エキス、リゾレシチン、水添リゾレシチン>
本発明の油性クレンジング化粧料に用いられる成分(B)としては、リゾリン脂質を含むダイズ種子エキス、リゾレシチン及び水添リゾレシチンからなる群から選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。二種以上の組み合わせとは、リゾリン脂質を含むダイズ種子エキスとリゾレシチンの組み合わせでもよく、また、リゾリン脂質を含む大豆エキスにおいて異なる二種類以上のエキスであってもよい。
リゾリン脂質を含むダイズ種子エキスとしては、ダイズ種子に含まれるリゾリン脂質を含む画分を抽出したエキスが挙げられ、リゾリン脂質含量を高めるための処理することもできる。
リゾリン脂質を含むダイズ種子エキスとして市販されているものとしては、大豆由来リゾレシチン複合物のグリセリン製剤であるダイズ種子エキス(Lucas Meyer Cosmetics製)などが挙げられる。
油性クレンジング化粧料におけるリゾリン脂質を含むダイズ種子エキスの配合量はエキスの固形分濃度として、0.05~1.5質量%が好ましい。
【0019】
リゾレシチンは、レシチンのリゾ体であり、レシチンをホスホリパーゼA2などの酵素による加水分解(溶解)でホスファチジルコリンの2位の脂肪酸が除去された構造を有する。
レシチンとしては、天然レシチン、天然レシチンの化学処理物、天然レシチンの精製物が挙げられ、動植物由来の天然レシチン(例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン等)そのものであってもよいし、天然レシチンの化学処理物であってもよいし、天然レシチンの精製物であってもよい。天然レシチンの化学処理物としては、水素添加処理により得られた水素添加レシチン(例えば、完全水素添加レシチンや部分水素添加レシチン)、水酸化処理により得られた水酸化レシチン等が挙げられる。天然レシチンの精製物としては、アセトン等の溶剤によりホスファチジルコリンの含有量を高めたレシチンが挙げられる。
リゾレシチンとして市販されているものとして、大豆由来のリゾホスファチジン酸高含有のリン脂質の複合製剤であるリゾレシチン(ナガセケムテックス製)が挙げられる。
なお、リゾレシチンは、精製物であっても、リゾレシチンを含む未精製物であってもよく、上記のようにダイズ種子エキスを本発明のリゾレシチンとして用いることもできる。
油性クレンジング化粧料におけるリゾレシチンの配合量は、0.1~1.5質量%が好ましい。また、未精製物の場合、配合量は、リゾレシチン換算量で上記の範囲になるように配合することが好ましい。
【0020】
水添リゾレシチンは、水素添加処理されたリゾレシチンである。
水添リゾレシチンとして市販されているものとして、高親水性のリゾレシチン(日光ケミカルズ製)、水素添加された高純度の大豆リゾリン脂質(日本精化製)が挙げられる。
油性クレンジング化粧料における水添リゾレシチンの配合量は、0.1~1.5質量%が好ましい。
【0021】
<(C)液状油>
本発明の油性クレンジング化粧料に用いられる(C)液状油としては、常温で液状を呈する油剤であればよく、以下のようなものが例示できる。
天然動植物油脂類及び半合成油脂、炭化水素油、エステル油、グリセライド油、シリコーン油、脂溶性ビタミン、高級脂肪酸、動植物や合成の精油成分等が挙げられる。天然動植物油脂類及び半合成油脂としては、アボカド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油、小麦胚芽油、ゴマ油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、月見草油、トウモロコシ油、菜種油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、落花生油、等が挙げられる。炭化水素油としては、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、等が挙げられる。エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、2-エチルヘキサン酸セチル、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、乳酸テトラデシル、ミリスチン酸イソプリピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、パラメトキシケイ皮酸エステル、テトラロジン酸ペンタエリスリット等が挙げられる。グリセライド油としては、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリテトラデカン酸グリセリル、ジパラメトキシケイ皮酸モノイソオクチル酸グリセリル等が挙げられる。シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロヘキサシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変成シリコーン、アルキル変成シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン等が挙げられる。
これらの例示した中でも、2-エチルヘキサン酸セチル、メチルフェニルポリシロキサン、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、(カプリル/カプリン酸)カプリリルなどをあわせて配合するとクレンジング効果が高まるので好ましい。
また、メドウフォーム油を少量配合するとエモリエント効果を発揮するので好ましい。
油剤の配合量は、クレンジング力及びすすぎ性の観点から、油性クレンジング化粧料全量に対し、10~90質量%であることが好ましい。さらに好ましくは、20~90質量%、よりいっそう好ましくは40~90質量%、もっとも好ましくは60~90質量%である。
【0022】
(D):とろみ成分
本発明の油性クレンジング化粧料は、(A)成分、(B)成分、(C)成分に加えて、さらに(D)とろみ成分を配合することもできる。(D)成分は、油性クレンジング化粧料に適度なとろみ・厚みと滑り性を付与するための成分である。とろみ成分としては、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、トリイソステアリン、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ダイマージリノール酸(イソステアリル/フィトステリル)、リンゴ酸ジイソステアリル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)及びデカイソステアリン酸ポリグリセリル-10が挙げられる。このうちでもダイマージリノール酸(イソステアリル/フィトステリル)又はラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)が好ましい。とろみ成分は、上記の1種または2種以上を組みあわせて用いることが好ましい。
これらのとろみ成分は、油性クレンジング化粧料に配合すると、洗い流し時の乳化粒子径の増大につながるおそれがあるところ、本願発明の油性クレンジング化粧料は、リゾリン脂質を配合することで、とろみ成分を配合しながらも、洗い流し時の乳化粒子径が細かい油性クレンジング化粧料を提供することができる。
本発明の油性クレンジング化粧料において、とろみ成分は5~15質量%配合することが好ましい。5質量%より少ないと、適度なとろみ・厚みと滑り性の改善効果が得られにくくなる場合があり、15質量%より多く配合すると、とろみが強すぎ、又厚くなりすぎ、滑り性も悪くなる恐れがあるからである。
【0023】
(任意成分)
本発明の油性クレンジング化粧料には、任意成分として化粧料に常用される各種原料を本発明のクレンジング効果、洗い流し時の適切な乳化粒子径の範囲を損なわない範囲で配合することができる。例えば、上記以外の界面活性剤、多価アルコール、増粘剤、酸化防止剤、香料等を配合することができる。
上記以外の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(30EO)、モノイソステアリン酸ジグリセリル等が挙げられる。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトールと炭素数が12~18の脂肪酸とのエステルに、酸化エチレンを付加重合したものである。具体的には、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO)が挙げられる。これらは、油性クレンジング化粧料に対し0.1~3質量%、より好ましくは1.2~3質量%配合することが好ましい。
モノイソステアリン酸ジグリセリルは、イソステアリン酸とジグリセリンのエステルであり、一般に親油性溶媒として使用される。本発明において、モノイソステアリン酸ジグリセリルを配合することにより、油性クレンジング化粧料中に可溶化できる水の量を増加させることができる。モノイソステアリン酸ジグリセリルは、油性クレンジング化粧料に対し0.1~3質量%、より好ましくは0.2~1質量%配合することが好ましい。
【0024】
本発明の油性クレンジング化粧料に用いられる多価アルコールは、溶剤として作用することがあるので配合するとクレンジング力が高まることがある。特に1,2-ペンタンジオール、ジプロピレングリコールを配合するとクレンジング力が向上するので好ましい。
【0025】
本発明の油性クレンジング化粧料に用いられる増粘剤としては、ステアリン酸イヌリン、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルが好ましく例示できる。増粘剤を含ませる第一の目的は、好みの粘度に増粘させることである。第二の目的は、のびを向上させて肌の上でのすべりを良くし、クレンジングし易くすることである。特有の粘性は界面活性剤や油剤のべたつきを改善する場合もある。第三の目的は、皮膚に塗布した時に薄い皮膜を形成し、皮膚への過度のこすれを防ぎ、刺激抑制効果を発現して安全性を向上させることである。増粘剤は、組成物に0.01~3質量%配合することが好ましい。0.01質量%より少ないと、のびの改善効果、刺激緩和の効果も得にくくなる場合がある。3質量%より多く配合すると、析出する恐れがある。
【0026】
本発明の油性クレンジング化粧料に用いられる酸化防止剤としては、トコフェロールを挙げることができる。
【0027】
<洗い流し時の乳化粒子径>
本発明において、油性クレンジング化粧料の作用機序は、油性成分がメイク汚れを溶解し、さらに界面活性剤の働きにより水で洗い流すことができるものである。しかし、そのバランスが悪いと、落とし切れていない化粧汚れではなく、油性クレンジング化粧料そのものが肌に残存することに由来する残油感が生じる場合がある。そこで、本発明において、洗い流し時の乳化粒子径を測定することにより油性クレンジング化粧料の肌残りによる残油感を評価した。
したがって、この評価結果が良好であると、通常の化粧落としとして油性クレンジング化粧料を使用した場合も、残油感なく使用できることが予測できる。
洗い流いし時の乳化粒子径の測定は、具体的には、後述する実施例に詳述するが、油性クレンジング化粧料の一定量の水を添加し、O/W型乳化組成物を調製し、この組成物中の乳化粒子径を測定するという方法である。当該方法により測定される平均粒子径が0.86μm以下の場合に、洗浄後に残油感のないすっきりとした洗浄感となると推定できる。
【0028】
本発明の油性クレンジング化粧料は、使用性や使用感を考慮して様々な剤形に設計される。好ましい態様として、液状あるいはジェル状の形態を採用することができる。
【実施例0029】
[試験例1]
1.油性クレンジング化粧料の製造方法
表1に示す処方となるように各成分を加熱攪拌することで完全に溶解し、その後冷却して、実施例1、比較例1~2の油性クレンジング化粧料を製造した。
【0030】
2.評価試験方法
各実施例及び比較例の油性クレンジング化粧料に水を添加した時の乳化粒子径の測定を行い、洗浄後の残油感を評価した。
油性クレンジング化粧料に対して60倍量になるように水を添加し、O/W型乳化組成物を調製し、この組成物中の乳化粒子径をSALDA7500nano(島津製作所製)を用いてレーザー散乱法により粒度分布を測定した。体積基準平均径の測定と粒度分布のピーク形状の観察を行った。
水を添加した時に形成される乳化粒子径が1μm以下に極大ピークを有しており、平均乳化粒子径が0.86μm以下であれば、洗浄後に残油感のないすっきりとした洗浄感となると判断した。
【0031】
3.結果及び考察
リゾレシチンの配合有無による乳化粒子径への影響を確認した。結果を表1に示す。
実施例1はリゾレシチンを含むダイズ種子エキス配合した。一方、比較例1,2はこれらを配合しなかった。
本結果によれば、ダイズ種子エキスを配合した場合は、水で60倍に希釈したときの乳化組成物中の平均乳化粒子径が0.86μm以下となった。一方、これらを配合していない場合は、前記平均粒子径が0.86μmより大きかった。なお、比較例2は、グリセリンを配合しているためグリセリンを配合していない比較例1に比べて乳化粒子径が細かくなったが、その程度は充分ではなかった。
以上より、油性クレンジング化粧料にダイズ種子エキスを配合することにより、水を添加したときに生じる乳化粒子径を微細化できることがわかった。したがって、本発明のクレンジング化粧料によれば、洗浄後に残油感のないすっきりした洗浄感が得られる。
【0032】
【表1】
【0033】
[試験例2]レシチンの種類の確認
1.油性クレンジング化粧料の製造方法
処方を表2となるように配合した以外は、試験例1と同様に行い実施例2~4、比較例3、4の油性クレンジング化粧料を製造した。
2.評価試験方法
試験例1と同様に行った。
3.結果及び考察
レシチンの種類による乳化粒子径への影響を確認した。結果を表2に示す。
実施例2~4は、大豆種子エキス、リゾレシチン、水添リゾレシチンを配合した。
比較例3は、水酸化レシチン、比較例4は、水添レシチンを配合した。
本結果によれば、ダイズ種子エキス、リゾレシチン、水添リゾレシチンを配合した場合は、水で60倍に希釈したときの乳化組成物中の平均乳化粒子径が0.86μm以下となった。一方、水酸化レシチン、水添レシチンを配合した場合は、前記平均乳化粒子径が2.159μm、0.917μmなった。
以上より、レシチン全般に乳化粒子径を細かくする効果があるのではなく、リゾレシチンに当該効果があることが分かった。
【0034】
【表2】
【0035】
[試験例3]ダイズ種子エキスの配合量の検討
1.油性クレンジング化粧料の製造方法
処方を表3となるように配合した以外は、試験例1と同様に行い実施例5~10の油性クレンジング化粧料を製造した。
2.評価試験方法
試験例1と同様に行った。
3.結果及び考察
本発明の油性クレンジング化粧料に配合するダイズ種子エキスの配合量について検討を行った。結果を表3に示す。
本結果によれば、油性クレンジング化粧料中にダイズ種子エキスを0.125(質量%)~1.25(質量%)配合した場合、水で60倍に希釈したときの乳化組成物中の平均乳化粒子径は0.86μm以下となった。
したがって、ダイズ種子エキスを0.125質量%以上配合することで、乳化粒子径の細かい油性クレンジング化粧料が得られることがわかった。
【0036】
【表3】
【0037】
[試験例4]リゾレシチンの配合量の検討
1.油性クレンジング化粧料の製造方法
処方を表4となるように配合した以外は、試験例1と同様に行い実施例11~13の油性クレンジング化粧料を製造した。
2.評価試験方法
試験例1と同様に行った。
3.結果及び考察
本発明の油性クレンジング化粧料に配合するリゾレシチンの配合量について検討を行った。結果を表4に示す。
本結果によれば、油性クレンジング化粧料中にリゾレシチンを0.2(質量%)~0.5(質量%)配合した場合、水で60倍に希釈したときの乳化組成物中の平均乳化粒子径は0.86μm以下となった。
したがって、リゾレシチンを0.2質量%以上配合することで、乳化粒子径の細かい油性クレンジング化粧料が得られることがわかった。
【0038】
【表4】
【0039】
[試験例5]水添リゾレシチンの配合量の検討
1.油性クレンジング化粧料の製造
処方を表5となるように配合した以外は、試験例1と同様に行い実施例14~17の油性クレンジング化粧料を製造した。
2.評価試験方法
試験例1と同様に行った。
3.結果及び考察
本発明の油性クレンジング化粧料に配合する水添リゾレシチンの配合量について検討を行った。結果を表5に示す。
本結果によれば、油性クレンジング化粧料中に水添リゾレシチンを0.125(質量%)~0.75(質量%)配合した場合、水で60倍に希釈したときの乳化組成物中の平均乳化粒子径は0.86μm以下となった。
したがって、水添リゾレシチンを0.125質量%以上配合することで、乳化粒子径の細かい油性クレンジング化粧料が得られることがわかった。
【0040】
【表5】
【0041】
[試験例6]とろみ付与原料とダイズ種子エキス等の併用による効果の検討
1.油性クレンジング化粧料の製造方法
処方を表6となるように配合した以外は、試験例1と同様に行い実施例18~19及び比較例5~7の油性クレンジング化粧料を製造した。ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)及びラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)は、化粧料にとろみや厚みを付与できる原料(以下、とろみ付与原料)である。
2.評価試験方法
試験例1と同様に行った。
3.結果及び考察
本発明の油性クレンジング化粧料にとろみ付与原料を配合した場合について、ダイズ種子エキス等の併用による効果の検討を行った。結果を表6に示す。実施例8は、試験例3で製造し、評価した結果である。
一般に、とろみ付与原料を配合すると、乳化粒子径が大きくなることがあるが、リゾリン脂質を併用することで、乳化粒子径が細かくなった。すなわち、とろみ付与原料が配合され、ダイズ種子エキスが配合されない場合は、水で60倍に希釈したときの平均粒子径が1.471μmであり(比較例6)、とろみ付与原料が付与されない場合(比較例5)に比べて粒子径が大きくなるのに対して、ダイズ種子エキスを配合することにより0.624μmとなった(実施例18)。種類のことなるとろみ付与原料でも同様の効果が見られた(比較例7と実施例19の対比より)。
以上より、とろみ付与成分を含む油性クレンジング化粧料においても、ダイズ種子エキスやリゾレシチンを配合することにより、乳化粒子径の増大を抑え、細かな乳化粒子径の油性クレンジング化粧料が得られることがわかった。
【0042】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明により、界面活性剤量を低減しつつも洗い流し時の乳化粒子径が細かい油性クレンジング化粧料を提供することができた。また、とろみ成分を付与した場合でも洗い流し時の乳化粒子径を細かく抑えることができた。
したがって、本発明の油性クレンジング化粧料を使うことにより、ウォータープルーフや持続性の高いメークアップ化粧料を容易に落とし、肌への摩擦が少なく、目や肌への刺激も少なく、洗い流し時の油性成分のぬるつきの少ない洗顔をすることができる。