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特開2023-14594エアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置、およびエアロゾル形成基材の乾燥巻取り方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014594
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】エアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置、およびエアロゾル形成基材の乾燥巻取り方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/04 20060101AFI20230124BHJP
   F26B 5/02 20060101ALI20230124BHJP
   A24B 3/14 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
F26B13/04
F26B5/02
A24B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118624
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】721008039
【氏名又は名称】Future Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍志
【テーマコード(参考)】
3L113
4B043
【Fターム(参考)】
3L113AA02
3L113AB07
3L113AC19
3L113AC31
3L113AC36
3L113AC51
3L113CB11
3L113DA24
4B043BA19
4B043BA80
4B043BB11
4B043BB18
(57)【要約】
【課題】エアロゾル形成基材の乾燥ムラを抑制する。
【解決手段】本発明に係るエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置(1)は、エアロゾル形成基材(10)を供給する供給部(2)と、供給部から供給されたエアロゾル形成基材を圧延してシート状に形成する圧延部(3)と、圧延部でシート状に形成されたエアロゾル形成基材(20)を巻き取る巻取部(7)と、圧延部から送り出されたエアロゾル形成基材を巻取部まで搬送する搬送部(4)と、搬送部により搬送されているエアロゾル形成基材を乾燥させる乾燥部(5)と、乾燥部よりもエアロゾル形成基材の搬送方向の下流側に配置され、搬送されているエアロゾル形成基材を冷却する冷却部(6)と、を備え、乾燥部は、エアロゾル形成基材に電磁波を照射可能に構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基材を供給する供給部と、
前記供給部から供給された前記エアロゾル形成基材を圧延してシート状に形成する圧延部と、
前記圧延部でシート状に形成された前記エアロゾル形成基材を巻き取る巻取部と、
前記圧延部から送り出された前記エアロゾル形成基材を前記巻取部まで搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送されている前記エアロゾル形成基材を乾燥させる乾燥部と、
前記乾燥部よりも前記エアロゾル形成基材の搬送方向の下流側に配置され、搬送されている前記エアロゾル形成基材を冷却する冷却部と、を備え、
前記乾燥部は、前記エアロゾル形成基材に電磁波を照射可能に構成されていることを特徴とするエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置において、
前記乾燥部に設けられ、電磁波を発生可能とする複数の電磁波発生手段を備え、
前記複数の電磁波発生手段は、前記搬送部と対向した状態で前記搬送方向に沿って配置されていることを特徴とするエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置において、
前記乾燥器よりも前記エアロゾル形成基材の搬送方向の上流側および下流側にはそれぞれ、前記複数の電磁波発生手段から発生した電磁波の漏れを防止する電磁波漏れ防止部が設けられていることを特徴とするエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置において、
前記乾燥部には、前記複数の電磁波発生手段を冷却可能な冷却手段が設けられていることを特徴とするエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置。
【請求項5】
請求項2~4の何れか1項に記載のエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置において、
前記複数の電磁発生手段を個別に制御する制御部を備えていることを特徴とするエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置。
【請求項6】
エアロゾル形成基材を供給する供給工程と、
前記供給工程により供給された前記エアロゾル形成基材を圧延してシート状に形成する圧延工程と、
前記圧延工程によりシート状に形成された前記エアロゾル形成基材を搬送する搬送工程と、
前記搬送工程により搬送されている前記エアロゾル形成基材を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程後に行われ、搬送されている前記エアロゾル形成基材を冷却する冷却工程と、
前記冷却工程後に行われ、前記エアロゾル形成基材を巻き取る巻取工程と、を備え、
前記乾燥工程は、前記エアロゾル形成基材に電磁波を照射する工程であることを特徴とするエアロゾル形成基材の乾燥巻取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置、およびエアロゾル形成基材の乾燥巻取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火炎を用いることなく、タバコの成分を含むタバコカートリッジを加熱して、気化したタバコ成分を吸引する方式のタバコ製品が広く知られている。また、嗜好の多様化から、タバコ成分を含まない植物の芳香や味わいを、タバコ同様に火炎を用いずに楽しむためのカートリッジも知られ始めている。このようなカートリッジ等には、エアロゾル形成基材が充填されている。エアロゾル形成基材は、加熱されることでエアロゾルを発生させる。
【0003】
このようなエアロゾル形成基材の製造段階では、エアロゾル形成基材に含まれる水分量を最適に調整するために、エアロゾル形成基材を乾燥させて巻き取る乾燥巻取り装置が用いられる。この乾燥巻取り装置としては、例えば特許文献1が公知である。特許文献1に記載の乾燥巻取り装置は、乾燥装置でシート状のエアロゾル形成基材の一面に過熱空気を噴出させ、他面に乾燥空気を噴出させることでエアロゾル形成基材を乾燥させた後に、巻き取りステーションでエアロゾル形成基材を巻き取るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2018-504099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置では、エアロゾル形成基材の表面を乾燥させることはできるが、エアロゾル形成基材の内部を表面と同程度に乾燥させることはできない。よって、エアロゾル形成基材に乾燥ムラが生じてしまう。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、その目的は、乾燥ムラを抑制できるエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置を提供することにある。また、本発明は、そのような乾燥巻取り装置を用いたエアロゾル形成基材の乾燥巻取り方法を提供することも別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置の一態様は、エアロゾル形成基材を供給する供給部と、前記供給部から供給された前記エアロゾル形成基材を圧延してシート状に形成する圧延部と、前記圧延部でシート状に形成された前記エアロゾル形成基材を巻き取る巻取部と、前記圧延部から送り出された前記エアロゾル形成基材を前記巻取部まで搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送されている前記エアロゾル形成基材を乾燥させる乾燥部と、前記乾燥部よりも前記エアロゾル形成基材の搬送方向の下流側に配置され、搬送されている前記エアロゾル形成基材を冷却する冷却部と、を備え、前記乾燥部は、前記エアロゾル形成基材に電磁波を照射可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るエアロゾル形成基材の乾燥巻取り方法の一態様は、エアロゾル形成基材を供給する供給工程と、前記供給工程により供給された前記エアロゾル形成基材を圧延してシート状に形成する圧延工程と、前記圧延工程によりシート状に形成された前記エアロゾル形成基材を搬送する搬送工程と、前記搬送工程により搬送されている前記エアロゾル形成基材を乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程後に行われ、搬送されている前記エアロゾル形成基材を冷却する冷却工程と、前記冷却工程後に行われ、前記エアロゾル形成基材を巻き取る巻取工程と、を備え、前記乾燥工程は、前記エアロゾル形成基材に電磁波を照射する工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エアロゾル形成基材の乾燥ムラを抑制できる。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る乾燥巻取り装置を示す平面図である。
図2】同乾燥巻取り装置の乾燥器の構成を示す平面図である。
図3図1の点線で囲んだ領域の拡大断面図である。
図4】制御部によるマグネトロンの制御を説明するためのブロック図である。
図5】本実施形態に係る乾燥巻取り方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係るエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置を示す平面図、図2は同乾燥巻取り装置の乾燥器の構成を示す平面図、図3図1の点線で囲んだ領域の拡大断面図である。
【0013】
図1に示すように、乾燥巻取り装置1は、ホッパー2、複数(本例では4つ)の圧延ローラ3、ベルトコンベア4、乾燥器5、冷却器6、および巻取ローラ7を備える。ホッパー2の下方に4つの圧延ローラ3が配置され、これら圧延ローラ3から離れた位置に巻取ローラ7が配置されている。4つの圧延ローラ3と巻取ローラ7との間には、ベルトコンベア4が配置され、このベルトコンベア4と所定間隔を存して対向するように乾燥器5および冷却器6が配置されている。
【0014】
ホッパー2は、漏斗状に形成されており、その内部に粒状のエアロゾル形成基材10を収容可能とする。ホッパー2の上端部には、エアロゾル形成基材10を投入するための投入口2aが形成されている。また、ホッパー2の下端部には、エアロゾル形成基材10を圧延ローラ3に供給可能とする供給口2bが形成されている。供給口2bは、図示せぬ開閉弁によって開閉可能となっており、開閉弁が開放されると、エアロゾル形成基材10がホッパー2から圧延ローラ3に供給される。
【0015】
4つの圧延ローラ3は、一対の第1圧延ローラ3aと、一対の第2圧延ローラ3bと、から成る。一対の第1圧延ローラ3aは、ホッパー2の直下に設けられ、互いに水平方向に間隔を空けて配置されている。一方、一対の第2圧延ローラ3bは、一対の第1圧延ローラ3aの下方に設けられ、互いに鉛直方向に間隔を空けて配置されている。これら第1圧延ローラ3aおよび第2圧延ローラ3bのそれぞれは、図示せぬモータに軸支されており、乾燥巻取り装置1の電源スイッチ(図4参照)がオンされると、そのモータによって回転駆動する。これにより、ホッパー2から供給されたエアロゾル形成基材10が、一対の第1圧延ローラ3aにより圧延されてシート状に形成され、一対の第2圧延ローラ3bに送り出される。そして、この送り出されたエアロゾル形成基材20は、一対の第2圧延ローラ3bにより再び圧延された後に、ベルトコンベア4に送り出される。なお、4つの圧延ローラ3の送り出し速度は、約5[m/s]である。
【0016】
ベルトコンベア4は、複数(本例では5つ)の駆動ローラ4aと、無端状の搬送ベルト4bと、を有する。5つの駆動ローラ4aは、圧延ローラ3近傍から巻取ローラ7近傍に至るまで配置され、搬送ベルト4bはこれら駆動ローラ4aに巻き付けられている。搬送ベルト4bは、圧延ローラ3から送り出されたエアロゾル形成基材20を一端部(図1において左端部)から載置可能となっている。また、搬送ベルト4bは、その上に載置されたエアロゾル形成基材20を他端部(図1において右端部)から巻取ローラ7に送り出し可能となっている。5つの駆動ローラ4aはそれぞれ、図示せぬモータに軸支されており、乾燥巻取り装置1の電源スイッチがオンされると、そのモータによって回転駆動する。各駆動ローラ4aが時計周りに回転駆動することで、搬送ベルト4bは時計回りに周回する。そして、搬送ベルト4b上に載置されたエアロゾル形成基材20は、図1において右向きの矢印で示す搬送方向に沿って移動する。これにより、圧延ローラ3から送り出されたエアロゾル形成基材20は、ベルトコンベア4により巻取ローラ7まで搬送される。なお、ベルトコンベア4の搬送速度は、約5[m/s]である。
【0017】
乾燥器5は、圧延ローラ3近傍に配置されており、圧延ローラ3から送り出され、ベルトコンベア4により搬送されているエアロゾル形成基材20を乾燥させる。乾燥器5は、搬送されているエアロゾル形成基材20に電磁波を照射可能に構成された複数(本例では16個)の第1~第16マグネトロン5a1~5a16と、これら第1~第16マグネトロン5a1~5a16を収容した箱体5bと、を有する。第1~第16マグネトロン5a1~5a16のそれぞれは、電磁波の一種であるマイクロ波を発生させる発生源であり、箱体5b内の上面に配設されている。マイクロ波は、一般に、周波数が300[MHz]~30[GHz]、波長が1[cm]~1[m]の電磁波である。図2に示すように、第1~第16マグネトロン5a1~5a16は、ベルトコンベア4と対向した状態でエアロゾル形成基材20の搬送方向に沿って2列に分けて平行に配置されている。一方の列には第1~第8マグネトロン5a1~5a8が、搬送方向の下流側から上流側に向かって互いに等間隔で配置されている。他方の列には第9~第16マグネトロン5a9~5a16が、搬送方向の下流側から上流側に向かって互いに等間隔で配置されている。詳細は後述するが、これら第1~第16マグネトロン5a1~5a16は、その作動を制御部(図4参照)によって制御される。箱体5bは、例えばステンレス等の金属材料から成り、搬送されているエアロゾル形成基材20と対向する下面全体を開口させている。エアロゾル形成基材20の搬送方向に沿った箱体5bの幅W1は、約8m程度である。
【0018】
また、箱体5bの内部には、第1~第16マグネトロン5a1~5a16を冷却可能な冷却水循環装置(冷却手段)が設けられている。冷却水循環装置は、例えば冷水を貯留する貯留タンクに接続された吸水管5c、吸水管5cに接続されるとともに第1~第16マグネトロン5a1~5a16の周囲に配置された複数の配管(不図示)、これら配管内の冷水を貯留タンクと第1~第16マグネトロン5a1~5a16の周囲との間で循環させるコンプレッサ(不図示)、および第1~第16マグネトロン5a1~5a16の冷却時に発生する水蒸気を箱体5bの外部に排出する排出管5d等を備えている。これにより、第1~第16マグネトロン5a1~5a16の温度が上昇した場合でも、複数の配管内の冷水によって第1~第16マグネトロン5a1~5a16を放熱させることができる。
【0019】
乾燥器5の第1~第16マグネトロン5a1~5a16からマイクロ波が発生すると、そのマイクロ波が乾燥器5の箱体5bの開口を通ってエアロゾル形成基材20に直接照射されるか、または乾燥器5の側面で反射された後に開口を通ってエアロゾル形成基材20に照射される。図3に示すように、マイクロ波Mがエアロゾル形成基材20に照射されると、エアロゾル形成基材20に含まれる水分子20aがマイクロ波Mのエネルギーを吸収して振動する。この振動によりエアロゾル形成基材20内の水分子同士が互いに摩擦し合うことで熱が発生する。水分子20aは、エアロゾル形成基材20内で概ね均一に存在しているため、この振動に起因してエアロゾル形成基材20全体に満遍なく熱が発生する。よって、エアロゾル形成基材20を均一に加熱して乾燥できる。
【0020】
なお、乾燥器5は、マイクロ波の代わりに、短波または超短波を照射可能に構成されても良い。一般に、短波は、周波数が3[MHz]~30[MHz]、波長が10[m]~100[m]の電磁波であり、超短波は、周波数が30[MHz]~300[MHz]、波長が1[m]~10[m]の電磁波である。短波または超短波を照射可能に構成する場合には、例えば図1の箱体5bの下面の開口面積と概ね等しいサイズの一対の平行電極板、およびこれら平行電極板間に高周波電界を発生可能とする高周波電源等を設け、エアロゾル形成基材20を上下方向に挟み込むように一対の平行電極板を配置すれば良い。この場合、一対の平行電極板間に高周波電界が発生すると、エアロゾル形成基材20に短波または超短波が照射され、エアロゾル形成基材20内で誘電分極が繰り返し生じる。そのため、エアロゾル形成基材20に含まれる各種原子(または分子)同士が摩擦し合い、エアロゾル形成基材20全体に満遍なく熱が発生して均一な乾燥を実現できる。ただし、この種の乾燥器を採用する場合には、一対の平行電極板のうちの下側の平行電極板を配置するためのスペースを確保するために、ベルトンベアの乾燥器と対向する部分を凹ませた専用のものが必要となる。そのため、乾燥巻取り装置の簡素化の観点から、マイクロ波を照射可能な乾燥器5を採用する方が好ましい。
【0021】
乾燥器5の上流側および下流側にはそれぞれ、電磁波(マイクロ波)の漏れを防止するシールド50が配置されている。シールド50は、例えばステンレス等の金属材料から成る板状の壁体である。乾燥器5の上流側の一面および下流側の他面は、シールド5aによって覆われている。これにより、乾燥器5の一面および他面からの電磁波の漏れを防止できるとともに、電磁波を乾燥器5内に反射させることができる。
【0022】
冷却器6は、乾燥器5よりもエアロゾル形成基材20の搬送方向の下流側に配置され、乾燥器5により乾燥されたエアロゾル形成基材20を冷却する。冷却器6は、エアロゾル形成基材20に送風して冷却する複数(本例では5つ)の冷却ファン6aと、これら冷却ファン6aが配設された箱体6bと、を有する。5つの冷却ファン6aは、箱体6bの上面に取り付けられている。箱体6bは、搬送されているエアロゾル形成基材20と対向する下面全体を開口させている。6つの冷却ファン6aが作動することで、冷却器6の外側の外気がこれら冷却ファン6aから箱体6b内に取り込まれ、箱体6bの開口を通った後に、搬送されているエアロゾル形成基材20に吹き付けられる。なお、エアロゾル形成基材20の搬送方向に沿った冷却器6の幅W2は、約6mである。
【0023】
巻取ローラ7は、ベルトコンベア4により搬送されてきたエアロゾル形成基材20を巻き取る。巻取ローラ7は、図示せぬモータに軸支されており、乾燥巻取り装置1の電源スイッチがオンされると、そのモータによって時計周りに回転駆動する。なお、巻取ローラ7により巻き取られてロール状になったエアロゾル形成基材20は、巻取ローラ7から取り外された後、その軸心方向に対して垂直な方向から所定間隔で切断され、以後の工程で用いられることになる。
【0024】
次に、図4を参照して、制御部による乾燥器5の第1~第16マグネトロン5a1~5a16の制御について説明する。図4は、制御部による第1~第16マグネトロン5a1~5a16の制御を説明するためのブロック図である。
【0025】
図4に示すように、乾燥巻取り装置1は、乾燥器5に配設された第1~第16マグネトロン5a1~5a16の作動を制御する制御部100を備える。制御部100は、図示せぬCPU、ROM、RAM、および入出力インターフェース等を含むハードウェアと、ROMに記憶され、CPUにより実行されるソフトウェアとから構成される。制御部100には、電源スイッチ1aがオンされた場合に、電磁波を発生させるよう制御するマグネトロンを識別するための識別情報を複数記憶可能な記憶部100aが設けられている。識別情報は、第1~第16マグネトロン5a1~5a16に対応するように「1」~「16」までの番号から成る。なお、一旦、記憶部100aに記憶された識別情報は、搬送されるエアロゾル形成基材20の成分に応じて適宜書き換え可能となっている。制御部100は、電源スイッチ1aがオンされたことに基づいて記憶部100aに記憶された識別情報を参照し、参照した識別情報に基づいて第1~第16マグネトロン5a16を個別に制御する。
【0026】
例えば、記憶部100aに識別情報「1」、「3」、「5」、「7」、「10」、「12」、「14」、および「16」が記憶されている場合、制御部100は、電源スイッチ1aがオンされたことに基づいて、第1マグネトロン5a1、第3マグネトロン5a3、第5マグネトロン5a5、第7マグネトロン5a7、第10マグネトロン5a10、第12マグネトロン5a12、第14マグネトロン5a14、および第16マグネトロン5a16(図2において黒塗りされたマグネトロン参照)に対してマイクロ波を発生させるよう制御する。一方で、制御部100は、電源スイッチ1aがオンされても、第2マグネトロン5a2、第4マグネトロン5a4、第6マグネトロン5a6、第8マグネトロン5a8、第9マグネトロン5a9、第11マグネトロン5a11、第13マグネトロン5a13、および第15マグネトロン5a15(図2において白塗りされたマグネトロン参照)に対してマイクロ波を発生させないよう制御する。このような制御により、エアロゾル形成基材20の成分に応じて、第1~第16マグネトロン5a1~5a16からエアロゾル形成基材20に照射される電磁波の量を調整し、80~1000[℃]の範囲内の最適な加熱温度でエアロゾル形成基材20を加熱できるようになっている。
【0027】
次に、図5を参照して、上述した乾燥巻取り装置1を用いたエアロゾル形成基材の乾燥巻取り方法について説明する。図5は、エアロゾル形成基材の乾燥巻取り方法を説明するフローチャートである。
【0028】
図5に示すように、まず、ステップS1の供給工程では、ホッパー2の投入口2aから粒状のエアロゾル形成基材10を投入する。そして、乾燥巻取り装置1の電源スイッチをオンし、ホッパー2の開閉弁を開放することで、エアロゾル形成基材10を供給口2bから圧延ローラ3に供給する。このときのエアロゾル形成基材10の水分量は、例えば約30%である。次に、ステップS2の圧延工程では、ホッパー2から供給されたエアロゾル形成基材10を複数の圧延ローラ3によりシート状に形成する。この際に一対の第1圧延ローラ3aによってエアロゾル形成基材10を圧延してシート状に形成した後に、一対の第2圧延ローラ3bによってエアロゾル形成基材20を再び圧延して均一なシート状にする。次に、ステップS3の搬送工程では、圧延ローラ3から送り出されたエアロゾル形成基材20をベルトコンベア4により巻取ローラ7まで搬送する。そして、この搬送工程により搬送されているエアロゾル形成基材20に対して、以下に示す乾燥工程(ステップS4)および冷却工程(ステップS5)を順次行うことになる。
【0029】
ステップS4の乾燥工程では、ベルトコンベア4により搬送されているエアロゾル形成基材20を乾燥器5で乾燥させる。この際に、制御部100の記憶部100aに記憶されている識別情報に対応する乾燥器5のマグネトロンから、搬送されているエアロゾル形成基材20にマイクロ波を照射する。これにより、エアロゾル形成基材20に含まれる水分子20aがマイクロ波のエネルギーを吸収して振動するため、エアロゾル形成基材20が約90~100[℃]で均一に加熱されて乾燥する。このときのエアロゾル形成基材20の水分量は、例えば約18~20%の最適な値となる。続くステップS5の冷却工程では、冷却器6の複数の冷却ファン6aから搬送されているエアロゾル形成基材20に外気を送風する。これにより、エアロゾル形成基材20は冷却されて約85[℃]になる。最後に、ステップS6の巻取工程では、冷却されたエアロゾル形成基材20を巻取ローラ7で巻き取る。以上により、エアロゾル形成基材の乾燥巻取り方法が完了する。
【0030】
このように構成された本実施形態に係るエアロゾル形成基材の乾燥巻取り装置1およびこれを用いたエアロゾル形成基材の乾燥巻取り方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0031】
乾燥巻取り装置1の乾燥器5は、マグネトロンからベルトコンベア4により搬送されているシート状のエアロゾル形成基材20に電磁波(マイクロ波)を照射することで、エアロゾル形成基材20に含まれる水分子20aにマイクロ波のエネルギーを吸収させて振動させることができる。そのため、その振動に起因してエアロゾル形成基材20全体に満遍なく熱を発生させることができるので、エアロゾル形成基材20の表面と同程度に内部も均一に加熱して乾燥できる。よって、エアロゾル形成基材20の乾燥ムラを抑制できる。
【0032】
また、従来の過熱空気と乾燥空気を噴出させる乾燥器およびヒータによって加熱する乾燥器では、エアロゾル形成基材の表面と内部の温度差に起因する乾燥具合によっては、エアロゾル形成基材の柔軟性が失われ、巻取ローラで巻き取る際にエアロゾル形成基材の表面がひび割れてしまう場合があった。そのため、シート状のエアロゾル形成基材の表面と内部に温度差が生じないように、エアロゾル形成基材を薄くする必要があった。これに対して、本実施形態では、上記のようにしてエアロゾル形成基材20の内部を均一に加熱して乾燥できるので、シート状のエアロゾル形成基材20の厚みを従来に比べて厚くすることができる。よって、エアロゾル形成基材20に含ませる成分の種類や量を増やすことができる。
【0033】
また、第1~第16マグネトロン5a1~5a16は、ベルトコンベア4と対向した状態でエアロゾル形成基材20の搬送方向に沿って配置されているので、エアロゾル形成基材20に電磁波(マイクロ波)を効率的に照射してエアロゾル形成基材20を十分に均一に乾燥できる。
【0034】
また、乾燥器5の上流側の一面および下流側の他面はそれぞれ、シールド50で覆われているので、乾燥器5の一面および他面からの電磁波の漏れを防止できるとともに、電磁波を乾燥器5内に反射させることができる。よって、乾燥巻取り装置1を使用する際の安全性を確保しながら、乾燥器5によってエアロゾル形成基材20を十分に乾燥できる。
【0035】
また、エアロゾル形成基材20の搬送方向に沿った乾燥器5の長さは、約8m程度となっている。これに対して、従来の過熱空気と乾燥空気を噴出させる乾燥器およびヒータによって加熱する乾燥器では、エアロゾル形成基材の搬送方向に沿った乾燥器の長さは、約40[m]~48[m]程度であるのものが多い。特に、従来の乾燥器においては、エアロゾル形成基材に含まれる香り成分等を余分に放出させないように、また、シート状のエアロゾル形成基材の表面と内部との温度差に起因してその表面と内部との柔軟性にも差が生じ、エアロゾル形成基材のひび割れ、歪み、しわの発生を防ぐように、急激な加熱を避ける必要があった。そのため、エアロゾル形成基材20の温度上昇を緩やかにするために、乾燥機の長さは必然的にそのような長さになっていた。本実施形態の乾燥器5は、従来の乾燥器に比べて、搬送方向に沿った長さを約1/6~1/5程度にも短くして小型化できる。また、このような小型化により、仮に乾燥巻取り装置1と従来の乾燥巻取り装置とで、エアロゾル形成基材の搬送速度、およびエアロゾル形成基材の厚みが等しい場合、乾燥巻取り装置1は、従来の乾燥巻取り装置に比べてエアロゾル形成基材を早期に乾燥できるようになり、エアロゾル形成基材の製造を効率化できる。
【0036】
さらに、乾燥器5はそれ自身でエアロゾル形成基材20を均一に乾燥できるので、従来の過熱空気と乾燥空気を噴出させる乾燥器のように過熱空気を噴出させる機器および乾燥空気を噴出させる機器のように複数の機器を必要とせず、乾燥巻取り装置1の構成を簡単にすることができる。
【0037】
また、従来のヒータによって加熱する乾燥器は、ヒータの予熱のための時間が必要であったが、この乾燥巻取り装置1の乾燥器5は電磁波(マイクロ波)をエアロゾル形成基材20に瞬時に照射すれば良い。よって、予熱のための時間が不要であり、エアロゾル形成基材20の乾燥を早期に開始できる。
【0038】
また、乾燥巻取り装置1は、第1~第16マグネトロン5a1~5a16の作動を制御する制御部100を備え、制御部100は、電源スイッチ1aがオンされたことに基づいて記憶部100aに記憶された識別情報を参照した後に、参照した識別情報に基づいて第1~第16マグネトロン5a16を個別に制御する。したがって、エアロゾル形成基材の成分に応じて、乾燥器5の第1~第16マグネトロン5a1~5a16からエアロゾル形成基材20に照射される電磁波の量を調整し、80~1000[℃]の範囲内の最適な加熱温度でエアロゾル形成基材20を加熱できる。
【0039】
また、第1~第16マグネトロン5a1~5a16のようにマグネトロンを複数設けることにより、同時に乾燥できるシート状のエアロゾル形成基材20の面積を増加させることができる。また、これら複数の第1~第16マグネトロン5a1~5a16を個別に制御することで、エアロゾル形成基材20の同一シート面の部分的な加熱ムラを抑制できる。
【0040】
また、乾燥器5の箱体5bの内部には、冷却水循環装置が設けられているので、第1~第16マグネトロン5a1~5a16の温度が上昇した場合に、冷却水循環装置内の冷水によって第1~第16マグネトロン5a1~5a16を放熱して冷却できる。そのため、第1~第16マグネトロンン5a1~5a16の温度上昇に起因する故障を抑制できる。特に、本実施形態のように、箱体5b内に第1~第16マグネトロンン5a1~5a16が集中して配置されるような場合には、第1~第16マグネトロンン5a1~5a16が高温になり易いため、このような冷却水循環装置による冷却は極めて有効である。
【0041】
また、乾燥器5の冷却水循環装置では、冷水を第1~第16マグネトロン5a1~5a16の周囲に循環させるので、十分な冷却能力を保持したまま、第1~第16マグネトロン5a1~5a16を連続して冷却できる。さらに、乾燥器5には排出管5dが設けられているので、第1~第16マグネトロン5a1~5a16を冷却する際に発生する水蒸気を外部に排出して、乾燥器5の箱体5bの内部の温度が高温になることを抑制できる。
【0042】
また、乾燥器5には上記のような冷却水循環装置が設けられているため、冷却水循環装置が設けられていない乾燥器に比べて多くのマグネトロンを配設できる。そして、これらマグネトロンを個別に制御することで、エアロゾル形成基材に含まれる香り成分等に応じて、エアロゾル形成基材の乾燥具合を細かく調整することも可能である。
【0043】
さらに、乾燥巻取り方法の乾燥工程は、搬送工程においてベルトコンベア4により搬送されているシート状のエアロゾル形成基材20に乾燥器5から電磁波(マイクロ波)を照射する工程である。この乾燥工程を行うことにより、上記と同様に、エアロゾル形成基材20に含まれる水分子20aにマイクロ波のエネルギーを吸収させて振動させることで、エアロゾル形成基材20全体に満遍なく熱を発生させることができる。よって、エアロゾル形成基材20の乾燥ムラを抑制できる。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0045】
上記実施形態では、ベルトコンベア4の他端部から直接巻取ローラ7にエアロゾル形成基材が送り出されるように構成されていたが、この構成に限定されない。例えばベルトコンベア4の他端部と巻取ローラ7との間にブレ検出センサを設けても良い。この場合、ブレ検出センサは、巻取ローラ7の軸心方向に対して、シート状のエアロゾル形成基材20が垂直に送り出されているか否かを検出する。そして、エアロゾル形成基材20が垂直に送り出されていない場合(つまり、ブレている場合)、ブレ検出センサはそのブレを検出し、制御部100にそのブレに関する情報を送信し、制御部100は送信された情報に基づいて巻取ローラ7の軸心方向を補正する。こうすれば、エアロゾル形成基材20を正確に巻取ローラ7によりロール状に巻き取ることができるので、以後の工程で発生し得る不良を抑制できる。
【0046】
また、上記実施形態では、乾燥器5に配設されたマグネトロンの個数は16個であったが、この個数に限定されることなく、搬送されているエアロゾル形成基材20を乾燥できる範囲内で適宜変更可能である。この場合でも、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、本発明の圧延部として4つの圧延ローラ3を挙げて説明したが、圧延ローラの個数は、4つに限定されることなく、偶数個であれば良い。また、圧延ローラの代わりに、粒状のエアロゾル形成基材20をシート状に圧縮して押し出す押し出し機を採用しても良い。この場合でも、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0048】
さらに、上記実施形態では、本発明の冷却器6の冷却ファン6aの個数は6個であったが、この個数に限定されることなく、搬送されているエアロゾル形成基材20を冷却できる範囲内で適宜変更可能である。この場合でも、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、記憶部100aは制御部100に設けられていたが、この構成に限定されることなく、制御部100と別個に設けられても良い。この場合でも、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0050】
また、上記実施形態では、本発明の冷却手段の一例として冷却水循環装置を挙げて説明したが、この構成に限定されることなく、例えば冷却ファンを用いても良い。この場合でも、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 乾燥巻取り装置
2 ホッパー(供給部)
3 圧延ローラ(圧延部)
4 ベルトコンベア(搬送部)
5 乾燥器(乾燥部)
5a1~5a16 第1~第16マグネトロン(電磁波発生手段)
6 冷却器(冷却部)
7 巻取ローラ(巻取部)
10,20 エアロゾル形成基材
50 シールド(電磁波漏れ防止部)
100 制御部
S1 供給工程
S2 圧延工程
S3 搬送工程
S4 乾燥工程
S5 冷却工程
S6 巻取工程
W マイクロ波(電磁波)
図1
図2
図3
図4
図5