(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145955
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】受圧板、及び受圧構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20231004BHJP
E02D 5/80 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
E02D17/20 103H
E02D17/20 106
E02D5/80 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052884
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】松本 真輔
【テーマコード(参考)】
2D041
2D044
【Fターム(参考)】
2D041GC01
2D044DB51
2D044EA01
(57)【要約】
【課題】受圧構造体をより容易に施工できる受圧板を目的とする。
【解決手段】ヘッド部材10と前記ヘッド部材10の下面に位置する下板30とを有し、前記下板30は、前記ヘッド部材10と別体であり、施工時に、前記ヘッド部材10と前記下板30とを一体化する、構成を有することよりなる。施工面に前記下板30を設置する下板設置工程と、施工面に当接された前記下板30上に、前記ヘッド部材10を位置させ、前記受圧板2を形成するヘッド部材設置工程と、前記受圧板2を貫通するアンカー5で、前記受圧板2を前記施工面に固定する、アンカー設置工程と、を有することよりなる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部材と前記ヘッド部材の下面に位置する下板とを有し、
前記下板は、前記ヘッド部材と別体であり、
施工時に、前記ヘッド部材と前記下板とを一体化する、受圧板。
【請求項2】
前記ヘッド部材は、下面に凸状又は凹状の第一の嵌合部を有し、
前記下板は、上面に前記第一の嵌合部と嵌合する凸状又は凹状の第二の嵌合部を有する、請求項1に記載の受圧板。
【請求項3】
前記下板は、連結用貫通孔を有し、
前記ヘッド部材は、前記下板と一体化した状態で、前記連結用貫通孔の位置に受入穴を有し、
前記ヘッド部材と前記下板とを一体化した状態で、前記連結用貫通孔を貫通し、前記受入穴に挿入される連結具を有する、請求項1に記載の受圧板。
【請求項4】
前記ヘッド部材は、上面から下面に向かうに従い広がる形状ある、請求項1~3のいずれか一項に記載の受圧板。
【請求項5】
前記ヘッド部材は、ガラス繊維束を含むレジンコンクリート組成物の硬化物、又は樹脂中に繊維が混在した複合体である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の受圧板。
【請求項6】
前記ヘッド部材は、前記レジンコンクリート組成物の硬化物であり、
前記ヘッド部材に含まれる前記ガラス繊維束は、繊維長方向の長さが7mm以上であり、
前記ヘッド部材における前記ガラス繊維束の含有量は、前記レジンコンクリート組成物の総質量に対して2質量%以上である、請求項5に記載の受圧板。
【請求項7】
前記下板は、樹脂中に繊維が混在した複合体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の受圧板。
【請求項8】
前記下板に含まれる繊維は、繊維長方向の長さが5mm超50mm以下である第一のガラス繊維と、繊維長方向の長さが5mm以下である第二のガラス繊維とを含む、請求項7に記載の受圧板。
【請求項9】
前記ヘッド部材の上面に位置する上板を有し、
前記上板は、樹脂中に繊維が混在した複合体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の受圧板。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の受圧板を用いた受圧構造体の施工方法であって、
施工面に前記下板を設置する下板設置工程と、
施工面に当接された前記下板上に、前記ヘッド部材を位置させ、前記受圧板を形成するヘッド部材設置工程と、
前記受圧板を貫通するアンカーで、前記受圧板を前記施工面に固定する、アンカー設置工程と、を有する、受圧構造体の施工方法。
【請求項11】
前記アンカー設置工程は、前記アンカーの緊張力を100kN以上とする、請求項10に記載の受圧構造体の施工方法。
【請求項12】
前記ヘッド部材は下面に凸状又は凹状の第一の嵌合部を有し、
前記下板は上面に前記第一の嵌合部と嵌合する凸状又は凹状の第二の嵌合部を有し、
前記ヘッド部材設置工程は、前記第一の嵌合部と前記第二の嵌合部とを嵌め合わせて、前記受圧板を形成する、請求項10又は11に記載の受圧構造体の施工方法。
【請求項13】
前記ヘッド部材は受入穴を有し、
前記下板は連結用貫通孔を有し、
前記ヘッド部材設置工程は、前記連結用貫通孔と前記受入穴とを重ね、前記連結用貫通孔と前記受入穴に連結具を挿入して前記受圧板を形成する、請求項10又は11に記載の受圧構造体の施工方法。
【請求項14】
前記ヘッド部材設置工程は、前記ヘッド部材と前記下板との間に接着剤を塗布する操作を含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の受圧構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受圧板、及び受圧構造体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
砂防林務、道路法面の補強工事(地滑り防止工事)には、受圧構造体を用いる。受圧構造体は、例えば、受圧板と、受圧板を貫通し地盤に挿入されたアンカーとを有する。受圧板は、平板状の複数の構成材を積層した積層板、積層板の上面に位置するヘッド部材との組み合わせ等である。受圧構造体は、アンカーのアンカー材の先端をグラウト材等で地盤に固定し、アンカー材の後端を受圧板の上端から突出させ、アンカー材の後端からナット等を締めこんで、受圧板を法面等に押し付ける。
例えば、特許文献1には、充填材と熱硬化性樹脂とからなる板状をした芯材部と、一方向に配向状態の長繊維によって補強された繊維強化熱硬化性樹脂発泡体からなり、前記芯材部の厚み方向の両面を層状に覆うように設けられた芯材被覆部と、この芯材被覆部の繊維方向に直交する方向に配向状態の長繊維によって補強された繊維強化熱硬化性樹脂発泡体からなり、前記芯材被覆部のうち少なくとも受圧面側に積層された表面部とを備える少なくとも1枚の板状複合材からなる受圧板が提案されている。特許文献1の発明によれば、軽量化及び強度の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の受圧構造体は、受圧板と、アンカーとのキットとして流通することが多く、施工にはこのキットを用いるのが一般的である。キットを構成する受圧板は、積層された構成材が一体化し、一体化した構成材とヘッド部材とが一体化している。
しかしながら、受圧板を一体化するには、接着剤を用いるため、接着剤が十分に硬化する時間を要し、製造時間が長くなる。また、大型(例えば、2000mm×2000mm)の受圧板を採用した場合、受圧板の総重量が500kgを超える場合がある。このような重量の受圧板を法面に設置するには、高容量のクレーンが必要となる。高容量のクレーンを用いるには、工事用仮設道路を敷設する必要がある。即ち、従来の受圧板は、施工を煩雑にする場合があった。
そこで、本発明は、より容易に施工できる受圧板を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
<1>
ヘッド部材と前記ヘッド部材の下面に位置する下板とを有し、
前記下板は、前記ヘッド部材と別体であり、
施工時に、前記ヘッド部材と前記下板とを一体化する、受圧板。
<2>
前記ヘッド部材は、下面に凸状又は凹状の第一の嵌合部を有し、
前記下板は、上面に前記第一の嵌合部と嵌合する凸状又は凹状の第二の嵌合部を有する、<1>に記載の受圧板。
<3>
前記下板は、連結用貫通孔を有し、
前記ヘッド部材は、前記下板と一体化した状態で、前記連結用貫通孔の位置に受入穴を有し、
前記ヘッド部材と前記下板とを一体化した状態で、前記連結用貫通孔を貫通し、前記受入穴に挿入される連結具を有する、<1>に記載の受圧板。
<4>
前記ヘッド部材は、上面から下面に向かうに従い広がる形状ある、<1>~<3>のいずれかに記載の受圧板。
<5>
前記ヘッド部材は、ガラス繊維束を含むレジンコンクリート組成物の硬化物、又は樹脂中に繊維が混在した複合体である、
<1>~<4>のいずれかに記載の受圧板。
<6>
前記ヘッド部材は、前記レジンコンクリート組成物の硬化物であり、
前記ヘッド部材に含まれる前記ガラス繊維束は、繊維長方向の長さが7mm以上であり、
前記ヘッド部材における前記ガラス繊維束の含有量は、前記レジンコンクリート組成物の総質量に対して2質量%以上である、<5>に記載の受圧板。
<7>
前記下板は、樹脂中に繊維が混在した複合体である、<1>~<6>のいずれかに記載の受圧板。
<8>
前記下板に含まれる繊維は、繊維長方向の長さが5mm超50mm以下である第一のガラス繊維と、繊維長方向の長さが5mm以下である第二のガラス繊維とを含む、<7>に記載の受圧板。
<9>
前記ヘッド部材の上面に位置する上板を有し、
前記上板は、樹脂中に繊維が混在した複合体である、<1>~<8>のいずれかに記載の受圧板。
【0006】
<10>
<1>~<9>のいずれかに記載の受圧板を用いた受圧構造体の施工方法であって、
施工面に前記下板を設置する下板設置工程と、
施工面に当接された前記下板上に、前記ヘッド部材を位置させ、前記受圧板を形成するヘッド部材設置工程と、
前記受圧板を貫通する前記アンカーで、前記受圧板を前記施工面に固定する、アンカー設置工程と、を有する、受圧構造体の施工方法。
<11>
前記アンカー設置工程は、前記アンカーの緊張力を100kN以上とする、<10>に記載の受圧構造体の施工方法。
<12>
前記ヘッド部材は下面に凸状又は凹状の第一の嵌合部を有し、
前記下板は上面に前記第一の嵌合部と嵌合する凸状又は凹状の第二の嵌合部を有し、
前記ヘッド部材設置工程は、前記第一の嵌合部と前記第二の嵌合部とを嵌め合わせて、前記受圧板を形成する、<10>又は<11>に記載の受圧構造体の施工方法。
<13>
前記ヘッド部材は受入穴を有し、
前記下板は連結用貫通孔を有し、
前記ヘッド部材設置工程は、前記連結用貫通孔と前記受入穴とを重ね、前記連結用貫通孔と前記受入穴に連結具を挿入して前記受圧板を形成する、<10>又は<11>に記載の受圧構造体の施工方法。
<14>
前記ヘッド部材設置工程は、前記ヘッド部材と前記下板との間に接着剤を塗布する操作を含む、<10>~<13>のいずれかに記載の受圧構造体の施工方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の受圧板によれば、より容易に施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る受圧構造体の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る受圧構造体の一部の斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III断面で見た場合の受圧構造体の断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る受圧構造体の断面図である。
【
図5】受圧構造体の施工方法を説明する工程図である。
【
図6】受圧構造体の施工方法を説明する工程図である。
【
図7】受圧構造体の施工方法を説明する工程図である。
【
図8】受圧構造体の施工方法を説明する工程図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る受圧構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(受圧構造体キット)
本発明の受圧構造体キットは、受圧板と、アンカーとを有し、受圧板がヘッド部材と下板とを独立に有する。受圧構造体キットは、受圧構造体を構成する部材の組み合わせである。受圧構造体キットにおいて、受圧板とヘッド部材とは、共に流通されてもよいし、各々が別々に流通されてもよい。
【0010】
(受圧構造体)
本発明の受圧構造体は、受圧板と、受圧板を上下方向に貫通するアンカーとを有する。以下、図面を参照して、受圧構造体及び受圧板を説明する。
【0011】
図3の受圧構造体1は、受圧板2と、受圧板2を貫通するアンカー5とを有する。
図1に示すように、受圧板2は、ヘッド部材10と、上板20と、下板30とを有する。上板20は、ヘッド部材10の上面に位置し、下板30は、ヘッド部材10の下面に位置する。
本実施形態の受圧板2は、施工前においてヘッド部材10と下板30とがそれぞれ独立しており、施工後の受圧構造体1において受圧板2は一体化している。
【0012】
ヘッド部材10は上面から下面に向かうに従い広がっている。即ち、ヘッド部材10は、上板20から下板30にかけて、外縁が大きくなっている。
【0013】
図2は、
図1から上板20を取り除いた斜視図である。ヘッド部材10は、上面及び下面に開口した角筒状の芯部14と、平面視における芯部14の各辺及び各角部から外方に伸びる8つの脚部16とを有する。8つの脚部16は、平面視において放射状に伸びている。
芯部14は、内部に四角筒状の空間(内空部)15を有する。芯部14は、内空部15に位置する4つの傾斜壁13を有する。4つの傾斜壁13は、芯部14の内面から内空部15に突出している。それぞれの傾斜壁13は、平面視における内空部15の輪郭である四角形の各辺から内方に伸びている。傾斜壁13は、芯部14の上面から下面に向かうに従い、芯部14の内面に近づいている。即ち、傾斜壁13は、側面視において(
図3)、下方を頂点とする略三角形となっている。
【0014】
脚部16の上面16aは、芯部14から外方に向かうに従い、下板30に近づいている。即ち、脚部16は、芯部14から外方に向かうに従い、低くなっている。これにより、側面視において、ヘッド部材10は、台形となっている(
図3参照)。こうして、ヘッド部材10は、全体として、上面から下面に向かうに従い広がっている。
なお、本実施形態の脚部16は、その外方の先端部が下板30から上方に立ち上がる端面16bを有するが、脚部16の先端は、端面16bを有さなくてもよい。
【0015】
ヘッド部材10は、その下面に第一の嵌合部19を有する。本実施形態において、第一の嵌合部19は、凸部である。第一の嵌合部19は、後述する第二の嵌合部39と嵌合する形状(即ち、相補する形状)であればよく、凸部、凸条等の凸状でもよいし、凹部、凹条等の凹状でもよい。
第一の嵌合部19の数は特に限定されず、例えば、2~8個とされる。
第一の嵌合部19の高さ(即ち、ヘッド部材10と下板30との境界から第一の嵌合部19の突端までの距離)は、例えば、10~50mmとされる。
【0016】
上板20は、芯部14の上面に位置している。即ち、上板20は、芯部14の上面の開口部を塞いでいる。
上板20は、平面視四角形の平板である。上板20は、その中心部を含む領域に平面視真円形の貫通孔(上板貫通孔)22を有する。上板貫通孔22は、内空部15の内外を連通している。真円形は、目視で真円と認識できる程度の真円度であればよい。なお、上板貫通孔22の形状は、楕円形でもよいし、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形でもよく、挿通するアンカー材52(後述)が通る形状であればよい。
【0017】
下板30は、平面視四角形の平板である。下板30は、その中心部を含む領域に貫通孔(下板貫通孔)32を有する。受圧構造体1において、下板貫通孔32は、芯部14内の内空部15と重なっている。即ち、下板貫通孔32は、内空部15の内外を連通する。なお、下板貫通孔32は、真円形、楕円形等の円形でもよいし、一方を長手とする長方形でもよいし、四角形以外の多角形でもよい。
【0018】
下板30は、その上面に第二の嵌合部39を有する。本実施形態において、第二の嵌合部39は、凹部である。第二の嵌合部39は、第一の嵌合部19と嵌合する形状(即ち、相補する形状)であればよく、凹部、凹条等の凹状でもよいし、凸部、凸条等の凸状でもよい。
第二の嵌合部39の数は、第一の嵌合部19の数と同じである。
【0019】
図3に示すように、アンカー5は、アンカー材52と、ナット50と、カバー54と、アンカープレート56とを有する。
アンカープレート56は、上板20の上面に位置している。
アンカー材52は、棒状の部材である。アンカー材52は、上板貫通孔22、内空部15及び下板貫通孔32を貫通している。アンカー材52の先端(下端)は、地盤G内に位置している。アンカー材52の後端(上端)は、受圧板2及びアンカープレート56の上方に突出している。アンカー材52は、後端に、ナット50と螺合するネジ山を有する。ナット50は、アンカー材52の後端に螺合している。ナット50はアンカープレート56に当接し、アンカープレート56を受圧板2の上板20に押し付けている。カバー54は、アンカー材52及びナット50を覆っている。
【0020】
下板30の大きさは、受圧構造体1の用途等を勘案して適宜決定される。下板30の一辺の長さW30は、例えば、500~2500mmが好ましく、1000~2500mmがより好ましく、1500~2500mmがさらに好ましい。長さW30が上記下限値以上であると、より広い面を支えられる。長さW30が上記上限値以下であると、より容易に施工できる。
下板30の厚さT30は、例えば、30~100mmが好ましい。厚さT30が上記下限値以上であると、下板30の強度をより高められる。厚さT30が上記上限値以下であると、下板30をより軽量化できる。
下板30の質量は、30~500kgが好ましく、30~300kgがより好ましい。下板30の質量が上記下限値以上であると、下板30の強度をより高められる。下板30の質量が上記上限値以下であると、より容易に施工できる。
【0021】
ヘッド部材10の大きさは、下板30の大きさ等を勘案して適宜決定される。
下板30の長さW30に対応する、ヘッド部材10における下端の長さW10は、W30の70~100%が好ましい。W10が上記下限値以上であると、アンカープレート56を介して、上板20をナット50が押し付ける力を、下板30へより均一に伝達できる。
ヘッド部材10の高さH10は、受圧構造体1の用途等を勘案して適宜決定できる。高さH10は、例えば、50~500mmが好ましい。
ヘッド部材10の質量は、例えば、30~500kgが好ましく、30~300kgがより好ましい。ヘッド部材10の質量が上記下限値以上であると、ヘッド部材10の強度をより高められる。ヘッド部材10の質量が上限値以下であると、より容易に施工できる。
【0022】
芯部14内の内空部15の大きさは、特に限定されない。平面視における内空部15の一辺の長さW15は、例えば、100~600mmが好ましい。なお、長さW15は、内空部15の下端における一辺の長さである。
【0023】
上板20の大きさは、内空部15を覆い、芯部14の上端に当接する大きさであればよい。平面視における上板20の一辺の長さW20は、長さW15の100~150%が好ましい。長さW20が上記下限値以上であると、上板20が芯部14の上面の全体に当接できる。長さW20が上記上限値以下であると、上板20をより軽量化できる。
上板20の厚さT20は、例えば、10~50mmが好ましい。厚さT20が上記下限値以上であると、上板20の強度をより高められる。厚さT20が上記上限値以下であると、上板20をより軽量化できる。
【0024】
<下板>
下板30は、樹脂中に繊維が混在した複合体である。下板30としては、繊維強化プラスチック(FRP)を例示できる。
下板30を構成する繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維等を例示できる。
下板30を構成する樹脂としては、硬質ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を例示できる。
下板30を構成する複合体としては、硬質ウレタン樹脂中にガラス繊維が混在した複合材(「ウレタン複合材」ということがある)が好ましい。下板30において、硬質ウレタン樹脂は、非発泡体でもよいし、発泡体でもよい。下板30のさらなる軽量化を図る観点からは、硬質ウレタン樹脂は発泡体が好ましい。
硬質ウレタン樹脂は、硬質ウレタン樹脂組成物の硬化物である。硬質ウレタン樹脂組成物は、ポリオール、触媒及びポリイソシアネートを含む。硬質ウレタン樹脂を発泡樹脂とする場合、硬質ウレタン樹脂組成物は、発泡剤を含む。硬質ウレタン樹脂組成物はその他の添加剤を含んでもよい。
硬質ウレタン樹脂組成物の比重は1.0~1.3が好ましく、1.15~1.2がより好ましい。硬質ウレタン樹脂組成物の比重は、JIS K7112:1999に準じて測定できる。
【0025】
発泡剤は、特に限定されず、繊維強化複合材料の分野で公知のものを使用できる。
発泡剤としては、例えば、水を例示できる。
発泡剤の含有量は、少なすぎるとガラス繊維への樹脂の含浸性が不充分となりやすく、多すぎると空隙率が高くなり下板30の強度が不充分となる。発泡剤の含有量は、かかる不都合が生じない範囲に設定するのが好ましい。発泡剤の含有量は、硬質ウレタン樹脂組成物の総質量に対して、例えば、0.1~0.5質量%が好ましく、0.1~0.3質量%がより好ましい。
【0026】
下板30に含まれるガラス繊維は、曲げ性能を発現するために繊維長を有するものを含むことが好ましい。
下板30に含まれるガラス繊維は、特に限定されず、繊維強化複合材料の分野で公知のガラス繊維を使用できる。ガラス繊維としては、例えば、Eガラス、Cガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、石英ガラス繊維、ホウケイ酸ガラス繊維等を例示できる。ガラス繊維としては、例えば、ガラスロービングが好ましい。
ガラス繊維の比重は2~3が好ましく、2.5~2.7がより好ましい。ガラス繊維の比重は、JIS R3420:2013に準じて測定できる。
【0027】
下板30に含まれるガラス繊維の繊維長方向の長さは、ガラス繊維が短い繊維長で構成される場合、例えば、1~100mmとされる。なお、ガラス繊維が下板30の長さW30方向に引き揃えられ、かつガラス繊維の長さが長さW30と同じでもよい。この場合、2枚の下板30を組み合わせ、これらを繊維方向が直交するように重ねてもよい。
【0028】
下板30は、第一のガラス繊維と、第一のガラス繊維よりも短い第二のガラス繊維とを含むことが好ましい。下板30は、第一のガラス繊維と第二のガラス繊維とを含むことで、強度をより高められる。
【0029】
第一のガラス繊維は、繊維長方向の長さが5mm超50mm以下であり、10mm以上45mm以下が好ましく、20mm以上40mm以下がより好ましい。第一のガラス繊維の繊維長方向の長さが上記下限値超であると、下板30の強度をより高められる。第一のガラス繊維の繊維長方向の長さが上記上限値以下であると、製造時のプレス工程における混合物の反力(プレス容量)をより抑制できる。
第一のガラス繊維の繊維長方向の長さは、例えば、ノギス等を用いて測定できる。
【0030】
第二のガラス繊維は、繊維長方向の長さが5mm以下であり、4mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。第二のガラス繊維の繊維長方向の長さが上記上限値以下であると、第一のガラス繊維の間に第二のガラス繊維が入り込みやすくなり、下板30をより密実(高比重)にして、下板30の強度をより高められる。第二のガラス繊維の繊維長方向の長さの下限値は特に限定されないが、実質的には0.1mmである。
第二のガラス繊維の繊維長方向の長さは、例えば、ノギスやデジタルマイクロスコープ等を用いて測定できる。
【0031】
下板30は、第一のガラス繊維と、第二のガラス繊維以外のガラス繊維(以下、「他のガラス繊維」ともいう。)を含んでいてもよい。
他のガラス繊維としては、例えば、繊維長方向の長さが50mm超のガラス繊維を例示できる。
他のガラス繊維の含有量は、下板30に求める強度に応じて適宜設定できる。
【0032】
第一のガラス繊維と第二のガラス繊維の合計の含有量は、ガラス繊維の総質量に対して、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましく、100質量%が特に好ましい。第一のガラス繊維と第二のガラス繊維の合計の含有量が上記下限値以上であると、下板30の曲げ強度をより高められる。第一のガラス繊維と第二のガラス繊維の合計の含有量が上記上限値以下であると、下板30のさらなる軽量化を図ることができる。
【0033】
第二のガラス繊維の含有量に対する第一のガラス繊維の含有量の質量比である「第一のガラス繊維/第二のガラス繊維」(以下「第一/第二質量比」ということがある)は、30/70~70/30が好ましく、35/65~65/35がより好ましく、40/60~60/40がさらに好ましい。第一/第二質量比が上記下限値以上であると、ボイド(2mm2以上の空隙)の発生を抑制し、下板30の外観をより良好にできる。加えて、第一/第二質量比が上記下限値以上であると、下板30の曲げ強度をより高められる。第一/第二質量比が上記上限値以下であると、後述の加熱プレス工程での混合物の反力をより抑制できる。
【0034】
硬質ウレタン樹脂が発泡体である場合、下板30の比重は、0.95~1.35が好ましく、1.00~1.30がより好ましく、1.05~1.20がさらに好ましい。下板30の比重が上記下限値以上であると、下板30の強度をより高められる。下板30の比重が上記上限値以下であると、下板30をより軽量化できる。
下板30の比重は、直方体状の下板30の試験片を用いて、下記式(1)により算出できる。
比重(g/cm3)=W/(h×b×L)・・・(1)
(1)式において、Wは試験片の質量(g)、hは試験片の厚さ(cm)、bは試験片の幅(cm)、Lは試験片の長さ(cm)を表す。
Wは、例えば、秤により測定できる。hは、例えば、キャリパーゲージを用いて、試験片の任意の3カ所の厚さを測定し、その算術平均値を採用できる。b及びLは、例えば、鋼製の巻尺を用いて測定できる。
【0035】
硬質ウレタン樹脂が発泡体である場合、下板30の発泡倍率は、2以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.59以下がさらに好ましい。発泡倍率の下限値は1である。発泡倍率が上記上限値以下であると、下板30の比重として1以上のものを得ることができる。
発泡倍率は発泡剤の配合量や種類等の組み合わせにより調節できる。
発泡倍率は、下板30の比重をx、非発泡の下板30の比重をyとし、発泡倍率=y/xにより求められる。
ここで、非発泡の下板30は、発泡剤を含まない以外は、下板30と同じ条件で製造できるものである。非発泡の下板30の比重は、下板30を溶融したものからも測定できる。
【0036】
下板30中のガラス繊維の含有量は、下板30の総体積に対して、15~35体積%が好ましく、20~30体積%がより好ましい。ガラス繊維の含有量が上記下限値以上であると、下板30の強度をより高められる。
下板30の繊維体積含有率は、下記式(2)により算出できる。
繊維体積含有率(体積%)=(単位体積あたりの繊維体積(cm3/cm3)/単位体積あたりの下板30の体積(cm3/cm3))×100・・・(2)
なお、下板30からのガラス繊維の抽出は、例えば、下板30に対し、500℃、1時間程度の加熱処理を施し、炉内にて硬質ウレタン樹脂を除去することによって行える。
【0037】
下板30の空隙率は0~40%が好ましく、0~30%がより好ましい。下板30の空隙率が上記上限値以下であると、下板30の強度をより高められる。
下板30の空隙率は、下記式(3)により算出できる。
空隙率(%)={(発泡後の下板の体積(cm3)-発泡前の下板の体積(cm3))/下板の体積(cm3)}×100・・・(3)
【0038】
下板30の圧縮強度は、15N/mm2以上が好ましく、20N/mm2以上がより好ましく、25N/mm2以上がさらに好ましい。圧縮強度が上記下限値以上であると、下板30の厚さ方向の載荷に対する破損をより抑制できる。圧縮強度の上限値は特に限定されないが、例えば、100N/mm2以下が好ましい。
下板30の圧縮強度は、JIS K7018:1999を参考にした手法にて測定できる。
【0039】
下板30の曲げ強度は、15N/mm2以上が好ましく、20N/mm2以上がより好ましく、25N/mm2以上がさらに好ましい。曲げ強度が上記下限値以上であると、下板30の破損をより抑制できる。曲げ強度の上限値は特に限定されないが、例えば、100N/mm2以下が好ましい。
下板30の曲げ強度は、JIS K7017:1999に準じて測定できる。
下板30の製造方法は、硬質ウレタン樹脂組成物とガラス繊維とを含む混合物を調製する工程と、混合物を加熱プレスして混合物中の硬質ウレタン樹脂組成物を硬化させる工程とを有する。
ガラス繊維は、第一のガラス繊維と硬質ウレタン樹脂とを含む第一の複合材料、及び、第二のガラス繊維と硬質ウレタン樹脂とを含む第二の複合材料の双方もしくは一方として配合されてもよい。第一の複合材料は、ガラス繊維長の長い繊維強化複合材料の廃棄物であり、いわゆる切削屑に相当する。第二の複合材料は、ガラス繊維長の短い繊維強化複合材料の廃棄物であり、いわゆる切粉に相当する。
【0040】
下板30は、例えば、以下の方法により製造できる。
(i)ガラス繊維強化ウレタン樹脂発泡体を使った加工品(例えば、長尺枕木)の加工工程で発生する廃棄物をガラス繊維長により分類する(分級工程)。
(ii)分級工程によって得られた第一の複合材料と第二の複合材料とを計量する(計量工程)。
(iii)第一の複合材料と第二の複合材料と硬質ウレタン樹脂組成物とを混合して混合物を得る(混合工程)。
(iv)金型等の型枠に混合工程で得られた混合物を展開する(展開工程)。
(v)展開した混合物を敷き均す(均し工程)。
(vi)敷き均した混合物を加熱プレスして混合物中の硬質ウレタン樹脂組成物を硬化させる(加熱プレス工程)。
(vii)加熱プレス工程で得られた成形体を金型から脱型する(脱型工程)。
(viii)脱型した成形体からバリ等を取り仕上げ、下板30を得る(仕上げ工程)。
【0041】
<ヘッド部材>
ヘッド部材10は、ガラス繊維束を含むレジンコンクリート組成物の硬化物、又は、樹脂中に繊維が混在した複合体である。ヘッド部材10としては、ガラス繊維束を含むレジンコンクリート組成物の硬化物が好ましい。中でも、ヘッド部材10は、ガラス繊維束を含むレジンコンクリート組成物の硬化物が好ましい。なお、樹脂中に繊維が混在した複合体は、下板30を構成する複合体と同様である。
レジンコンクリート組成物としては、例えば、レジンモルタルとガラス繊維束と骨材との混合物を例示できる。
【0042】
レジンモルタルは、レジンコンクリート組成物を構成する樹脂である。
レジンモルタルとしては、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を例示できる。
【0043】
ガラス繊維束は、任意の長さの短繊維を束ねた繊維束でもよいし、短繊維を束ね、これを任意の長さに切断したチョップドストランドでもよい。成形性の観点から、ガラス繊維束としては、チョップドストランドが好ましい。
ガラス繊維束の長さは、例えば、7mm以上が好ましく、7~50mmがより好ましく、7~20mmがさらに好ましい。ガラス繊維束の長さが上記下限値以上であると、ヘッド部材10の引張強度をより高められる。ガラス繊維束の長さが上記上限値以下であると、レジンコンクリート組成物中にガラス繊維束をより均一に分散して、ヘッド部材10が脆くなるのをより抑制できる。
ガラス繊維束のフィラメント径は、例えば、10~30μmが好ましく、10~20μmがより好ましい。フィラメント径が上記下限値以上であると、ヘッド部材10の引張強度をより高められる。フィラメント径が上記上限値以下であると、含浸成形性に優れた軽量なヘッド部材が得られる。
【0044】
レジンコンクリート組成物中のガラス繊維束の含有量は、レジンコンクリート組成物の総質量(即ち、ヘッド部材10の総質量)に対して、2質量%以上が好ましく、2~20質量%がより好ましく、2~10質量%がさらに好ましい。ガラス繊維束の含有量が上記下限値以上であると、ヘッド部材10の引張強度をより高められる。ガラス繊維束の含有量が上記上限値以下であると、含浸成形性に優れた軽量なヘッド部材が得られる。
【0045】
骨材としては、珪砂、砂利、砕石、玉石、高炉スラグ骨材又は人工軽量骨材等の従来レジンコンクリート組成物に配合されてきた骨材を例示できる。骨材の平均粒子径は、例えば、0.1~10mmである。
レジンコンクリート組成物中の骨材の含有量は、レジンモルタル100質量部に対して、例えば、60~90質量部が好ましい。
【0046】
レジンコンクリート組成物は、炭酸カルシウム等の充填剤、硬化剤、硬化促進剤等の添加剤を含有してもよい。
【0047】
ヘッド部材10は、例えば、以下の方法により製造できる。
レジンモルタルと、ガラス繊維束と、骨材と、必要に応じて添加剤と、を混合して、レジンコンクリート組成物を調製する。
ヘッド部材10の形状に応じた型枠内に、レジンコンクリート組成物を充填する(充填工程)。充填工程においては、型枠に適宜振動を加えることで、レジンコンクリート組成物を型枠内に行き渡らせられる。充填工程において、平板上に型枠を設置し、この型枠内にレジンコンクリート組成物を充填してもよい。
型枠内にレジンコンクリート組成物を充填した後、型枠の上面に平板等の蓋を被せる。
型枠内のレジンコンクリート組成物が硬化した後、型枠を外す(脱型工程)。脱型工程においては、型枠を平板から離れる方向に引き離すことで、ヘッド部材10を得る。
適宜、ヘッド部材10に着色を施してもよい。
【0048】
ヘッド部材10を成形する型枠としては、例えば、木製の型枠、ウレタン複合体の型枠等を例示できる。
【0049】
レジンコンクリート組成物を硬化する温度は、特に限定されず、例えば、5~40℃である。
レジンコンクリート組成物を硬化する時間は、特に限定されず、硬化する温度等を勘案して適宜決定できる。
【0050】
<上板>
上板20は、例えば、樹脂中にガラス繊維が混在した複合体である。
樹脂としては、硬質ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を例示できる。中でも、上板20を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂であれば、上板20の曲げ強度をより高められる。ウレタン樹脂の場合は、非発泡樹脂でもよいし、発泡樹脂でもよい。
ガラス繊維としては、単繊維、繊維束のいずれでもよい。繊維束は、単繊維を束ねたものでもよい。ガラス繊維は、長繊維でもよいし、短繊維でもよいが、上板20は、ヘッド部材10の内空部15のW15をスパンとした曲げに対抗する必要があるため、曲げ強度を確保するため長繊維が好ましい。加えて、ガラス繊維は、各々の繊維長方向が揃っていてもよいし、揃っていなくてもよい。
【0051】
上板20は、例えば、以下の方法により製造できる。
上板20がウレタン複合体である場合、上板20は、下板30と同様の方法で製造できる。
上板20がレジンコンクリート組成物の硬化物である場合、上板20は、ヘッド部材10と同様に、レジンコンクリート組成物を型枠に充填し、硬化することで製造できる。
適宜、上板20に着色を施してもよい。
【0052】
ナット50は、従来公知のものである。ナット50としては、鋼、ステンレス等の金属製のナットを例示できる。
アンカー材52は、従来公知のものである。アンカー材52は、例えば、鋼、ステンレス等の金属製の棒状物を例示できる。
カバー54としては、例えば、樹脂製の成形物を例示できる。
アンカープレート56としては、例えば、ステンレス等の金属製の平板を例示できる。
【0053】
上述の実施形態の受圧板は、ヘッド部材と下板とが嵌合部を有している。しかしながら、本発明の受圧板は、これに限定されず、連結具を有する態様でもよい。
連結具を有する受圧板について、
図4を用いて説明する。
図4の受圧構造体1aは、連結具70を有する。
下板30は、連結用貫通孔39aを有する。ヘッド部材10は、下板30と一体化した状態で、連結用貫通孔39aの位置に受入穴19aを有する。連結具70は、連結用貫通孔39aを貫通し、受入穴19aに挿入されている。この連結具70により、ヘッド部材10と下板30とは一体化している。
連結具70としては、ボルト、釘、ダボピン等を例示できる。
連結具70の素材としては、鋼、ステンレス等の金属、ウレタン複合材、FRP等を例示できる。
連結具70、連結用貫通孔39a、受入穴19aを有することで、後述するヘッド部材設置工程において、下板30に対するヘッド部材10の位置決めをより容易にできる。即ち、施工面に設置された下板30の連結用貫通孔39aに連結具70を挿入し、この連結具70を受入穴19aに受け入れつつ、ヘッド部材10を下板30上に設置することで、ヘッド部材10の位置決めをしつつ、ヘッド部材10と下板30とを一体化できる。
【0054】
(施工方法)
受圧構造体1の施工方法の一例について、以下に説明する。
本実施形態の施工方法は、アンカー設置工程と、下板設置工程と、ヘッド部材設置工程と、固定工程とを有する。
図5に示すように、地盤Gに挿入孔60を形成する。挿入孔60は、地盤Gの表面G1(施工面)に対して、垂直である。挿入孔60は、地盤Gの安定地盤に達している。
挿入孔60に、セメントミルク等のグラウト材62を注入する。次いで、アンカー材52を挿入孔60に挿入する。この際、アンカー材52の後端を地盤Gから突出させる。グラウト材62を硬化し、アンカー材52の先端を地盤Gに固定する(以上、アンカー設置工程)。
【0055】
表面G1上に、下板30を設置する(
図6)。この際、下板貫通孔32にアンカー材52を貫通させ、第二の嵌合部39を表面に位置させる(以上、下板設置工程)。
下板設置工程において、下板30は、ヘッド部材10と一体化していないため、軽量である。従って、低容量のクレーン(例えば、ミニクローラークレーン(通称カニクレーン)等)で、下板30を設置できる。低容量のクレーンを使用することで、新たに工事用仮設道路を敷設する必要がない。
【0056】
次いで、下板30上にヘッド部材10を位置させる(
図7)。この際、第一の嵌合部19と第二の嵌合部とを嵌め合わせ、ヘッド部材10と下板30とを一体化する。これにより、下板30に対して、ヘッド部材10を容易かつ簡便に所定の位置に設置して、位置ずれを防止できる(ヘッド部材設置工程)。
ヘッド部材設置工程において、ヘッド部材10は、下板30と一体化していないため、軽量である。このため、低容量のクレーンで、ヘッド部材10を設置できる。低容量のクレーンを使用することで、新たに工事用仮設道路を敷設する必要がない。
なお、下板30上にヘッド部材10を位置する際に、下板30とヘッド部材10との間に接着剤を介在させてもよい(接着操作)。接着剤が介在することで、ヘッド部材10と下板30とをより強固に接合して、一体化できる。
接着剤としては、接着樹脂が好ましい。接着樹脂としては、例えば、2液性のエポキシ樹脂接着剤、2液性のウレタン樹脂接着剤等の2液性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を例示できる。
【0057】
接着剤を用いる場合、下板30の上面及びヘッド部材10の下面の少なくとも一方に接着剤を塗布してもよい。2液性樹脂を用いる場合には、2種の接着成分をそれぞれ別の袋に収納し、この2つの袋をヘッド部材10と下板30との間に位置させる方法を例示できる。これにより、後述する固定工程において、ナット50を締め付けると、2つの袋が破袋し、内用物が混ざり合って、接着剤として機能する。
【0058】
次いで、ヘッド部材10の上面に上板20を位置させ、上板20の上面にアンカープレート56を位置させる。なお、上板20とアンカープレート56とは、通常はアンカーの緊張により一体化するが、予め上板20とアンカープレート56とを一体化してもよい。また、上板20は、ヘッド部材10と一体化していてもよい。
ナット50をアンカー材52の後端から締め付ける。ナット50を締め付け、ナット50をアンカープレート56に押し付けると、アンカー材52には、地盤Gから離れる方向の力が加わる。アンカー材52に地盤Gから離れる方向の力が加わると、受圧板2は、地盤Gの表面G1を押圧するように作用する。これにより、表面G1を下板30で抑え、表面G1を補強できる(固定工程)。
ナット50の締め付けは、従来公知の方法を適用できる。ナット50の締め付け方法としては、例えば、専用のジャッキを用い、ジャッキに内装されたロードセルでアンカー材52の緊張力を確認しながら、ナット50を締め付ける方法を例示できる。アンカー材52の緊張力は、例えば、100kN以上が好ましく、150kN以上がより好ましく、200kN以上がさらに好ましい。アンカー材52の緊張力が上記下限値以上であると、下板30で表面G1を支える力がより高まり、かつヘッド部材10と下板30とが、下板30の面方向にずれるのをより確実に抑制できる。
【0059】
なお、上述においては、表面G1に対して、アンカー材52を垂直に挿入する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。
図9に示すように、表面G1に対して角度θの挿入孔60aにアンカー材52を挿入してもよい。この場合、上板20とアンカープレート56との間に、調整部材58を介在させる。調整部材58は、上板20に対して、アンカープレート56を傾斜させる部材である。調整部材58は、例えば、ウレタン複合体、レジンコンクリート組成物の硬化物の楔等である。
角度θは、例えば、5~20°とされる。角度θは、内空部15の長さW15を変えることで調節できる。
【0060】
(作用効果)
本実施形態の受圧板によれば、ヘッド部材と下板とが独立した別体となっているため、流通前にヘッド部材と下板とを一体化させる工程を必要とせず、発注から納品までのリードタイムを短縮できる。
加えて、ヘッド部材と下板とが独立した別体となっているため、受圧構造体の施工時において、ヘッド部材と下板とをそれぞれ設置できる。ヘッド部材と下板とのそれぞれは、受圧板の総重量に比べて軽量であるため、カニクレーン等の低容量のクレーンで施工でき、新たな工事用仮設道路等の敷設が不要となり、施工がより容易である。
加えて、ヘッド部材と下板とに嵌合部を設けることで、位置決めを容易にして、より容易に一体化できる。
また、受圧板が連結具を有することで、位置決めを容易にして、より容易に一体化できる。
ヘッド部材をレジンコンクリート組成物の硬化物、樹脂中に繊維が混在した複合体とすることで、ヘッド部材をより軽量にできる。
下板を、樹脂中に繊維が混在した複合体とすることで、ヘッド部材をより軽量にできる。
【0061】
(その他の実施形態)
上述の実施形態のヘッド部材は、平面視において芯部から放射状に脚部が外方に伸びているが、本発明はこれに限定されない。ヘッド部材は、上面から下面に向かうに従い広がる円錐台、角錘台でもよい。また、ヘッド部材は、中実でもよいし、内部に内空部を有してもよい。但し、受圧板のさらなる軽量化を図る観点からは、ヘッド部材は芯部と芯部から放射状に伸びる脚部とを有するか、内空部を有する円錐台又は角錘台が好ましい。さらに、下板に対して、押圧力をより均一に与える観点からは、ヘッド部材は芯部と芯部から放射状に伸びる脚部とを有することが好ましい。
【0062】
上述の実施形態では、ヘッド部材は8つの脚部を有するが、脚部の数は、これに限定されず、7つ以下でもよいし、9つ以上でもよい。ただし、下板に対して均等に押圧力を伝える観点から、脚部は4~12が好ましく、6~10がより好ましい。
【0063】
上述の実施形態では、芯部は角筒状である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、芯部は円筒状でもよい。
【0064】
なお、本発明は、グラウンドアンカー工、ロックボルト工等のあらゆるアンカー工に適用可能である。
【実施例0065】
以下に、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0066】
(平板Aの製造)
第一のガラス繊維32.3質量部、第二のガラス繊維32.3質量部、ポリオール、ジフェニルメタンジイソシアネート、顔料及び触媒を混合し、硬質ウレタン樹脂組成物を得た。この混合物を金型に充填し、熱温度80℃、プレス圧力3MPaで加熱プレスして、幅610mm×長さ2100mm×厚さ31.6mmの平板Aを得た。
平板Aは、体積38502cm3、質量42.6kg、比重1.11、圧縮強度25.0N/mm2、曲げ強度30.0N/mm2であった。
【0067】
(平板Bの製造)
チョップドストランド(長さ7mm)3.1質量%、樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)15質量%及び骨材とを混合して、レジンコンクリート組成物を調製した。なお、骨材の配合量は、チョップドストランドと、樹脂と、骨材との合計が100質量%となる量である。
レジンコンクリート組成物を型枠に充填し、幅30mm×長さ170mm×厚さ30mmの平板Bを得た。平板Bの曲げ強度を2回測定した値は、29.1MPa、33.6MPaであった。
【0068】
(実験例1)
平板Aと平板Bとをエポキシ樹脂(接着樹脂)で接合して、一体化物とした。得られた一体化物について、両平板の境界(接合部)のせん断強度を測定した(2回)。その結果を表1に示す。
なお、せん断強度は、JIS K 6852 を参考にした手法で測定した。
【0069】
(実験例2)
エポキシ樹脂(接着樹脂)を不飽和ポリエステル樹脂とした以外は、実験例1と同様にして、一体化物を得た。得られた一体化物について、両平板の境界(接合部)のせん断強度を測定した(2回)。その結果を表1に示す。
【0070】
【0071】
表1に示すように、平板同士を接着樹脂で一体化することで、受圧構造体として十分な強度せん断強度(10MPa以上)にできた。