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  • 特開-ウィンドウフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145978
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ウィンドウフィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231004BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231004BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231004BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231004BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20231004BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20231004BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B27/00 M
B32B27/18 Z
B32B27/30 A
B32B27/36
C09J7/22
C09J133/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052922
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】加茂 実希
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA17B
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK42A
4F100AK51B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA05B
4F100CA07C
4F100CB05C
4F100EJ54
4F100GB07
4F100GB32
4F100JB14
4F100JD10B
4F100JK12B
4F100JL13C
4F100YY00B
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC03
4J004CE01
4J004DB02
4J004FA08
4J040DF041
4J040MA10
4J040NA12
4J040NA16
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】ハードコート層に、近赤外線吸収剤としてセシウム酸化タングステンを含むウィンドウフィルムにおいて、近赤外線吸収機能を好適に維持することができるウィンドウフィルムを提供すること。
【解決手段】本発明のウィンドウフィルムは、基材と、当該基材の一方の面側に設けられたハードコート層と、前記基材の他方の面側に設けられた粘着剤層とを備え、前記ハードコート層は、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物およびウレタン(メタ)アクリレート系化合物のうちの少なくとも一方を構成成分として有する(メタ)アクリレート系樹脂と、近赤外線吸収剤としてのセシウム酸化タングステンと、ヒンダードアミン系光安定剤と、を含有する材料で構成されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、当該基材の一方の面側に設けられたハードコート層と、前記基材の他方の面側に設けられた粘着剤層とを備え、
前記ハードコート層は、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物およびウレタン(メタ)アクリレート系化合物のうちの少なくとも一方を構成成分として有する(メタ)アクリレート系樹脂と、近赤外線吸収剤としてのセシウム酸化タングステンと、ヒンダードアミン系光安定剤と、を含有する材料で構成されることを特徴とするウィンドウフィルム。
【請求項2】
前記多官能(メタ)アクリレート系化合物が、5官能以上である請求項1に記載のウィンドウフィルム。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート系樹脂:100.0質量部に対する、前記セシウム酸化タングステンの割合が、10.0質量部以上100.0質量部以下である請求項1または2に記載のウィンドウフィルム。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート系樹脂:100.0質量部に対する、前記ヒンダードアミン系光安定剤の割合が、0.1質量部以上10質量部以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項5】
前記ハードコート層の厚さが、0.2μm以上20.0μm以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項6】
前記基材は、ポリエステルを含む材料で構成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンドウフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウィンドウフィルムとは、自動車、船舶、鉄道等の車両、家屋、マンション、オフィスビル等の建築物等の窓ガラスに適用される粘着フィルムであり、太陽光中の紫外線および/または赤外線の遮蔽、プライバシー保護、防犯、ガラスの飛散防止、装飾等を目的として広く使用されている。また、ウィンドウフィルム表面の耐傷性(耐擦性)を向上させる目的でハードコート層を設けることがある。
【0003】
ハードコート層に、近赤外線吸収剤としてセシウム酸化タングステンを含むウィンドウフィルムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
このようなウィンドウフィルムでは、太陽光に含まれる近赤外線を吸収して、日射による室内や車内の温度上昇等を効果的に抑制することができる。
【0005】
しかしながら、ハードコート層に含有される(メタ)アクリレート系樹脂等の有機化合物が、熱、水分、酸素等の要因によりラジカル化および酸化し、発生するラジカルが、セシウム酸化タングステンの結晶構造を破壊する場合がある。
【0006】
これは、例えば、以下のようなメカニズムにより発生すると考えられる。
(1)熱、水分、酸素等の要因により、有機化合物が開裂する。
R-H → R・ + H・
(式中、Rは、有機化合物を表し、・は、ラジカルを表す。)
(2)R・は、酸素により酸化されてRO・になる。
(3)RO・は、水分によりさらに酸化されてROOH・となる。
(4)このRO・やROOH・が、セシウム酸化タングステンを酸化し、結晶からセシウムが脱離する。
【0007】
上記のようなセシウム酸化タングステンの結晶構造の破壊が起きると、セシウム酸化タングステンによる近赤外線吸収機能が低下してしまうといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-001242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ハードコート層に、近赤外線吸収剤としてセシウム酸化タングステンを含むウィンドウフィルムにおいて、近赤外線吸収機能を好適に維持することができるウィンドウフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、以下の本発明により達成される。
本発明のウィンドウフィルムは、基材と、当該基材の一方の面側に設けられたハードコート層と、前記基材の他方の面側に設けられた粘着剤層とを備え、
前記ハードコート層は、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物およびウレタン(メタ)アクリレート系化合物のうちの少なくとも一方を構成成分として有する(メタ)アクリレート系樹脂と、近赤外線吸収剤としてのセシウム酸化タングステンと、ヒンダードアミン系光安定剤と、を含有する材料で構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明では、前記多官能(メタ)アクリレート系化合物が、5官能以上であることが好ましい。
【0012】
本発明では、前記(メタ)アクリレート系樹脂:100.0質量部に対する、前記セシウム酸化タングステンの割合が、10.0質量部以上100.0質量部以下であることが好ましい。
【0013】
本発明では、前記(メタ)アクリレート系樹脂:100.0質量部に対する、前記ヒンダードアミン系光安定剤の割合が、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。請求項1または2に記載のウィンドウフィルム。
【0014】
本発明では、前記ハードコート層の厚さが、0.2μm以上20.0μm以下であることが好ましい。
【0015】
本発明では、前記基材は、ポリエステルを含む材料で構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ハードコート層に、近赤外線吸収剤としてセシウム酸化タングステンを含むウィンドウフィルムにおいて、近赤外線吸収機能を好適に維持することができるウィンドウフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のウィンドウフィルムの一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]ウィンドウフィルム
図1は、本発明のウィンドウフィルムの一構成例を示す断面図である。
【0019】
ウィンドウフィルム1は、基材2と、基材2の一方の面側に設けられたハードコート層3と、基材2の他方の面側に設けられた粘着剤層4とを備えている。そして、ハードコート層3は、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物およびウレタン(メタ)アクリレート系化合物のうちの少なくとも一方を構成成分として有する(メタ)アクリレート系樹脂と、近赤外線吸収剤としてのセシウム酸化タングステンと、ヒンダードアミン系光安定剤と、を含有する材料で構成されている。
【0020】
このような構成により、ウィンドウフィルム1の近赤外線吸収機能を好適に維持することができる。より具体的には、ウィンドウフィルム1の近赤外線吸収機能を、長期間にわたってより安定的に高いものとすることができる。特に、強い光や風雨にさらされる環境においても、近赤外線吸収機能を、長期間にわたってより安定的に維持することができる。
【0021】
このような効果が得られるのは、ハードコート層3中に、近赤外線吸収剤としてのセシウム酸化タングステンとともに、ヒンダードアミン系光安定剤を含有することで、(メタ)アクリレート系樹脂等の有機化合物がラジカル化や酸化した場合であっても、それによる、セシウム酸化タングステンの結晶構造からのセシウムの脱離を防止することができるためであると考えられる。
【0022】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方を含む概念である。
【0023】
本発明による優れた効果は、ウィンドウフィルム1が上記のような構成を有することにより得られるのであって、上記のような構成を有していない場合には得られない。例えば、ハードコート層を構成する(メタ)アクリレート系樹脂が、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物およびウレタン(メタ)アクリレート系化合物のいずれも構成成分として含んでおらず、単官能または2官能の(メタ)アクリレート系化合物のみで構成されている場合には、ハードコートの硬化性が十分ではなく、耐傷性(耐擦性)を向上させるという、ハードコート層3としての機能が十分に得られない。また、ハードコート層3中にヒンダードアミン系の光安定剤を含有していない場合には、セシウム酸化タングステンの結晶構造の破壊を十分に防止することができず、本発明の目的とする効果が得られない。
【0024】
[1-1]基材
基材2は、ハードコート層3および粘着剤層4を支持する機能を有する。
【0025】
基材2は、いかなる材料で構成されていてもよく、例えば、基材2の構成材料としては、各種樹脂材料等が挙げられるが、基材2は、ポリエステルを含む材料で構成されているのが好ましく、主としてポリエステルで構成されているのがより好ましい。
【0026】
これにより、ウィンドウフィルム1のハンドリング性が良好なものとなり、ウィンドウフィルム1の被着体への貼着等の作業性が向上する。また、ウィンドウフィルム1の耐久性が良好なものとなる。
【0027】
なお、本明細書において、「主として」とは、対象となる部位のうち最も含有率が高いもののことを言う。
【0028】
特に、基材2中におけるポリエステルの含有率は、90質量%以上であるのが好ましく、95質量%以上であるのがより好ましい。
【0029】
基材2を構成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられるが、中でも、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0030】
これにより、ウィンドウフィルム1のハンドリング性がより良好なものとなり、ウィンドウフィルム1の被着体への貼着等の作業性がより向上する。また、ウィンドウフィルム1の耐久性がより良好なものとなる。また、後述する材料で構成されるハードコート層3および粘着剤層4との密着性が良好なものとなる。
【0031】
基材2は、上記以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0032】
基材2は、全体にわたって実質的に均一な組成を有していてもよいし、組成の異なる部位を有していてもよい。例えば、基材2は、互いに組成が異なる(例えば、樹脂材料の分子量が異なる場合等を含む)部位を有する複数の層を備えた積層体であってもよいし、組成が厚さ方向に沿って傾斜的に変化する傾斜材料で構成されていてもよい。
【0033】
基材2は、ハードコート層3や粘着剤層4との密着性を高めるための表面処理が施されていてもよい。
【0034】
このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、接着向上剤の塗布等が挙げられる。
【0035】
基材2の厚さは、特に限定されないが、10μm以上300μm以下であるのが好ましく、15μm以上200μm以下であるのがより好ましく、20μm以上100μm以下であるのがさらに好ましい。
【0036】
これにより、ウィンドウフィルム1の飛散防止性が得られるとともに、ウィンドウフィルム1のハンドリング性が向上し、被着体への貼着等の作業を容易に行うことができる。また、湾曲した被着体への形状追従性等が向上し、皺等の発生が効果的に防止される。
【0037】
[1-2]ハードコート層
ハードコート層3は、基材2よりも耐擦性に優れており、ウィンドウフィルム1全体としての耐擦性を向上させる機能を有する。
【0038】
これにより、ウィンドウフィルム1を被着体に貼着した後において、優れた耐擦性を発揮することができる。また、ウィンドウフィルム1を被着体に貼着する作業時における傷つきも効果的に防止することができる。
【0039】
本発明において、ハードコート層3は、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物およびウレタン(メタ)アクリレート系化合物のうちの少なくとも一方を構成成分として有する(メタ)アクリレート系樹脂と、近赤外線吸収剤としてのセシウム酸化タングステンと、ヒンダードアミン系光安定剤と、を含有する材料で構成される。
【0040】
[1-2-1](メタ)アクリレート系樹脂
(メタ)アクリレート系樹脂は、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物およびウレタン(メタ)アクリレート系化合物のうちの少なくとも一方を構成成分として含む。
【0041】
これにより、ハードコート層3に十分な硬度を付与し、耐擦性を向上させることができる。
【0042】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の3官能基以上を有するアクリル系化合物が挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0044】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物を含む場合、当該多官能(メタ)アクリレート系化合物は、3官能以上であればよいが、5官能以上であることが好ましい。
これにより、前述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0045】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、少なくとも(メタ)アクリロイル基およびウレタン結合を有する化合物であり、エネルギー線照射により重合硬化する性質を有するものである。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、オリゴマー等である。
【0046】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。なお、ウレタン(メタ)アクリレートは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、アルキレンジオール、ポリエーテル型ポリオール、ポリエステル型ポリオール、ポリカーボネート型ポリオール等が挙げられる。中でも、ポリエステル型ポリオールが好ましい。
【0048】
なお、ポリオール化合物としては、2官能のジオール、3官能のトリオール、4官能以上のポリオールのいずれであってもよいが、2官能のジオールが好ましく、ポリエステル型ジオールがより好ましい。
【0049】
多価イソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族系ジイソシアネート類;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0050】
上述のポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させてウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、少なくとも1分子中にヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、特に限定されない。
【0051】
具体的なヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリルアミド;ビニルアルコール、ビニルフェノール、ビスフェノールAのジグリシジルエステルに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる反応物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0052】
ハードコート層3を構成する前記(メタ)アクリレート系樹脂は、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物およびウレタン(メタ)アクリレート系化合物のうちの少なくとも一方を構成成分として含むものであればよく、他の構成成分を含んでいてもよい。以下、このような成分をこの項目内において、「その他の成分」とも言う。
【0053】
その他の成分としては、例えば、2官能以下の(メタ)アクリレート系化合物等が挙げられる。
【0054】
ただし、ハードコート層3を構成する前記(メタ)アクリレート系樹脂中におけるその他の成分の占める割合は、20.0質量%以下であるのが好ましく、15.0質量%以下であるのがより好ましく、10.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0055】
ハードコート層3中における(メタ)アクリレート系樹脂の含有率は、30.0質量%以上90.0質量%以下であるのが好ましく、40.0質量%以上80.0質量%以下であるのがより好ましく、45.0質量%以上70.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0056】
[1-2-2]セシウム酸化タングステン
ハードコート層3は、近赤外線吸収剤としてセシウム酸化タングステンを含んでいる。
近赤外線吸収剤は、主に750nm以上1000nm以下の近赤外線領域の光を選択的に吸収する機能を有する。
【0057】
このような特性を有するセシウム酸化タングステンを含むことにより、ハードコート層3に、近赤外線や熱に対し強力な吸収、遮蔽効果を付与することができる。
【0058】
セシウム酸化タングステンは、一般的に、化学式Cs0.33WOで表記される無機ナノ微粒子であり、特に、波長750nm以上1200nm以下の近赤外線領域の光を強く吸収する。
【0059】
セシウム酸化タングステンの平均粒径は、特に限定されないが、例えば、1nm以上50nm以下であるのが好ましく、5nm以上35nm以下であるのがより好ましい。
【0060】
これにより、高い可視光線透過率と近赤外線吸収性能とを高いレベル両立することができる。
【0061】
なお、セシウム酸化タングステンの平均粒径は、レーザ光による動的光散乱法に基づいて粒子径分布測定装置により測定できる。
【0062】
ハードコート層3におけるセシウム酸化タングステンの含有量は、特に限定されないが、前記(メタ)アクリレート系樹脂:100.0質量部に対して、10.0質量部以上100.0質量部以下であるのが好ましく、20.0質量部以上90.0質量部以下であるのがより好ましく、30.0質量部以上80.0質量部以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0063】
[1-2-3]ヒンダードアミン系光安定剤
ハードコート層3は、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでいる。
【0064】
ヒンダードアミン系光安定剤は、1分子中に下記式(1)で表わされる基(ヒンダードアミン基)を少なくとも1つ有する。
【0065】
【化1】
【0066】
式(1)中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0067】
1分子中に式(1)で表わされる基が複数あるときは、複数の基においてRは同一であっても異なっていてもよい。
【0068】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、下記式(2)で示されるセバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)や、下記式(3)で示されるデカン二酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)等が挙げられる。
【0069】
【化2】
【0070】
【化3】
【0071】
市販のヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、CHIMASSORB119、CHIMASSORB2020、CHIMASSORB944、TINUVIN622、TINUVIN B75、TINUVIN783、TINUVIN111、TINUVIN791、TINUVIN C353、TINUVIN494、TINUVIN492、TINUVIN123、TINUVIN144、TINUVIN152、TINUVIN5100、TINUVIN765、TINUVIN770、TINUVIN XT850、TINUVIN XT855、TINUVIN440、TINUVIN NOR371(以上、BASF社製)、アデカスタブLA-52、アデカスタブLA-57、アデカスタブLA-62、アデカスタブLA-67、アデカスタブLA-63、アデカスタブLA-68LD、アデカスタブLA-81、アデカスタブLA-82、アデカスタブLA-87、アデカスタブLA-501、アデカスタブLA-502XP、アデカスタブLA-503、アデカスタブLA-77、アデカスタブLX-335、アデカノールUC-605(以上、ADEKA社製)、サノール(SANOL)LS770、サノールLS765、サノールLS292、サノールLS440、サノールLS744、サノールLS2626、サノールLS944(以上、三共ライフテック社製)、ホスタビン(HOSTAVIN)N20、ホスタビンN24、ホスタビンN30、ホスタビンN321、ホスタビンPR31、ホスタビン3050、ホスタビン3051、ホスタビン3052、ホスタビン3053、ホスタビン3055、ホスタビン3058、ホスタビン3063、ホスタビン3212、ホスタビンTB01、ホスタビンTB02、ナイロスタッブ(Nylostab)S-EED(以上、クラリアントジャパン社製)、トミソーブ77(吉富ファインケミカル社製)、サイアソーブ(CYASORB)UV3346、サイアソーブUV3529、サイアソーブUV3853(Solvay社製)、スミソーブ(SUMISORB)TM61(住友化学社製)、グッドライト(GOODRITE)UV3159、グッドライトUV3034、グッドライトUV3150、グッドライト3110×128(以上BF Goodrich社製)、ユビヌル(UVINUL)4049、ユビヌル4050、ユビヌル5050(以上BASF社製)等が挙げられる。
【0072】
ハードコート層3におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、特に限定されないが、前記(メタ)アクリレート系樹脂:100.0質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であるのが好ましく、0.2質量部以上8質量部以下であるのがより好ましく、0.5質量部以上6質量部以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0073】
[1-2-4]光重合開始剤
ハードコート層3の形成には、光重合開始剤を用いてもよい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
[1-2-5]その他の成分
ハードコート層3は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。以下、この項目内において、このような成分を「その他の成分」ともいう。
【0075】
その他の成分としては、例えば、前記(メタ)アクリレート系樹脂以外の樹脂成分、セシウム酸化タングステン以外の近赤外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤以外の光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シラン系カップリング剤、レベリング剤、帯電防止剤、消泡剤等が挙げられる。
【0076】
ただし、ハードコート層3中におけるその他の成分の占める割合は、20.0質量%以下であるのが好ましく、15.0質量%以下であるのがより好ましく、10.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0077】
[1-2-6]その他の条件
ハードコート層3は、ハードコート層3形成用の液状の組成物(塗工液)を、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を用いて、基材2上に塗工し、紫外線や電子線を照射して、または加熱して硬化させることにより形成することができる。
【0078】
ハードコート層3形成用の塗工液には、必要に応じて、上述した成分以外の成分を含有させてもよい。このような成分としては、例えば、熱硬化触媒、光重合開始剤、溶剤等が挙げられる。
【0079】
ハードコート層3の厚さは、特に限定されないが、0.2μm以上20.0μm以下であるのが好ましく、1.0μm以上16.0μm以下であるのがより好ましく、1.5μm以上12.0μm以下であるのがさらに好ましい。
【0080】
これにより、さらに優れた耐擦性および耐候性が得られるとともに、ウィンドウフィルム1の取り扱いのし易さが向上し、ウィンドウフィルム1の被着体への貼着等の作業性が向上する。また、皺の発生等を好適に防止することができる。
【0081】
[1-3]粘着剤層
粘着剤層4は、一般に優れた柔軟性を有し、被着体に密着する部位である。
【0082】
粘着剤層4を構成する粘着剤としては、例えば、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
【0083】
これらの中でも、耐候性等の点から、特に、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤が好適である。
【0084】
合成ゴム系粘着剤の具体例としては、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソブチレンゴ
ム、イソブチレン-イソプレン、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0085】
アクリル系粘着剤の具体例としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の共重合体等が挙げられる。
【0086】
ポリビニルエーテル系粘着剤の具体例としては、ポリビニルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0087】
シリコーン系粘着剤の具体例としては、ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
これらの粘着剤は、1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0088】
粘着剤層4は、主として粘着剤で構成されていればよく、粘着剤以外の成分を含んでいてもよい。
【0089】
このような成分としては、例えば、紫外線吸収剤、粘着付与剤、充填剤、軟化剤、酸化防止剤、光安定剤、架橋剤、着色剤、改質剤、防錆剤、難燃剤、加水分解防止剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤等が挙げられる。
【0090】
粘着剤層4は、例えば、粘着剤層4形成用の液状の組成物(塗工液)を、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ナイフコート、ダイコート、バーコート等の各種塗布法により、基材2上に塗布することにより行うことができる。
【0091】
塗工液の塗膜を固化させることにより、粘着剤層4を形成することができる。
塗工液は、粘着剤層4とは異なる組成を有していてもよい。例えば、塗工液を塗工した後、含まれる溶媒を除去してもよいし、硬化反応、架橋反応を進行させることにより、重合度、架橋度を異なるものとしてもよい。
【0092】
また、粘着剤層4は、いったん剥離ライナー10上に形成し、その後、基材2に貼り合せてもよい。
【0093】
粘着剤層4の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上100μm以下であるのが好ましく、5μm以上80μm以下であるのがより好ましく、10μm以上60μm以下であるのがさらに好ましい。
【0094】
これにより、ウィンドウフィルム1の耐久性が得られるとともに、ウィンドウフィルム1の取り扱いのし易さが向上し、被着体への施工(貼着)を容易に行うことができる。また、湾曲した被着体への形状追従性等が向上し、皺等の発生が効果的に防止される。
【0095】
[1-4]その他の条件
ウィンドウフィルム1の厚さは、特に限定されないが、11μm以上400μm以下であるのが好ましく、18μm以上230μm以下であるのがより好ましく、20μm以上100μm以下であるのがさらに好ましい。
【0096】
これにより、ウィンドウフィルム1の耐久性や、より優れた近赤外線吸収機能が得られるとともに、ウィンドウフィルム1のハンドリング性が向上し、被着体への貼着等の作業をより容易に行うことができる。また、湾曲した被着体への形状追従性等が向上し、皺等の発生が効果的に防止される。
【0097】
ここで、「ウィンドウフィルム1の厚さ」とは、被着体に貼着された状態でのウィンドウフィルム1全体の厚さを意味する。したがって、例えば、ウィンドウフィルム1の保管時において、粘着剤層4上に後述するような剥離ライナー10が配されている場合であっても、剥離ライナー10の厚さは当該厚さには含まれない。
【0098】
ウィンドウフィルム1は、被着体の外観を損なわないよう、透明であることが好ましい。
【0099】
なお、本明細書において「透明」とは、可視光領域における透過率が60%以上(上限値100%)であることをいい、80%以上(上限値100%)であることが好ましい。ウィンドウフィルム1の透過率は、JIS A5759:2016(建築窓ガラス用フィルム-可視光線透過率試験)に準じた方法により測定することができる。
【0100】
ウィンドウフィルム1は、黄色度(YI)が4以下であるのが好ましく、3.5以下であるのがより好ましく、2.5以下であるのがさらに好ましい。
【0101】
これにより、着色が抑制されたウィンドウフィルム1が得られ、優れた透明性や無色性を得ることができ、ウィンドウフィルム1として好適に適用できる。
【0102】
なお、ウィンドウフィルム1の黄色度(YI)は、JIS K7373:2006に準じた方法により測定することができる。
【0103】
[2]剥離ライナー
ウィンドウフィルム1の粘着剤層4上に剥離ライナー10が配されていてもよい。
【0104】
剥離ライナー10は、ウィンドウフィルム1を被着体に貼着する際には、粘着剤層4から剥離される。
【0105】
剥離ライナー10としては、特に限定されず、ウィンドウフィルムの分野で通常使用されるものであってよい。剥離ライナー10としては、例えば、樹脂フィルム基材または紙基材の表面に剥離層が設けられたものが挙げられる。
【0106】
樹脂フィルム基材を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート等が挙げられる。また、紙基材を構成する材料としては、ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙、クレーコート紙、樹脂コート紙、グラシン紙、上質紙等が挙げられる。
【0107】
剥離層としては、シリコーン、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂等の剥離剤を含有するものが挙げられる。
【0108】
剥離ライナー10の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上400μm以下であることが好ましい。また、上記の剥離層が設けられる場合の当該剥離層の厚さは、例えば、0.01μm以上5μm以下であるのが好ましい。
【0109】
[3]被着体
次に、ウィンドウフィルム1が貼着される被着体について説明する。
【0110】
ウィンドウフィルム1は、住宅、ビル等の建物や、自動車、電車等の乗物の窓ガラス、鏡、ガラスケースやショーウィンドウのガラス等に好適に適用される。
【0111】
これにより、太陽光に含まれる近赤外線を吸収して、日射による室内や車内の温度上昇等を効果的に抑制することができる。
【0112】
[4]ウィンドウフィルムの貼着方法
次に、ウィンドウフィルム1の貼着方法について説明する。
【0113】
ウィンドウフィルム1を窓ガラス等の被着体に貼着する場合、剥離ライナー10がある場合には、まず剥離ライナー10を剥離して粘着剤層4を露出させ、粘着剤層4を被着体に接着させることにより貼着することができる。ここで、粘着剤層4と被着体との界面に界面活性剤を水に添加した施工液を介して貼着し、その後施工液をスキージと呼ばれる治具を用いて掻きだす、いわゆる水貼りと呼ばれる方法により貼着してもよい。
【0114】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0115】
例えば、ウィンドウフィルムは、前述した以外の構成を有するものであってもよい。より具体的には、例えば、基材と粘着剤層との間や、基材とハードコート層との間に、少なくとも1層の中間層を有していてもよいし、ハードコート層の外表面側に少なくとも1層のコート層をさらに有していてもよい。
【実施例0116】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例中の処理、測定で、温度条件を示していないものについては、室温(23℃)で行った。
【0117】
[5]ウィンドウフィルムの製造
(実施例1)
まず、紫外線硬化型の5官能アクリレート系化合物と6官能アクリレート系化合物との混合物(質量比で55:45)としてのM-403(東亞合成社製)と、セシウム酸化タングステンと、ヒンダードアミン系光安定剤としてのチヌビン292(BASF社製)とを用いて、ハードコート層形成用の液状の組成物(塗工液)を調製した。
【0118】
なお、チヌビン292は、上記式(2)で示されるセバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)と、上記式(3)で示されるデカン二酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)との混合物である。
【0119】
基材として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。この基材の片面に、ハードコート層形成用の塗工液を、硬化後膜厚が3μmになるようにバーコート法で塗工し、積算光量200mJ/cmの紫外線を照射した。これにより、5官能アクリレート系化合物と6官能アクリレート系化合物とが重合してなる(メタ)アクリレート系樹脂と、セシウム酸化タングステンと、ヒンダードアミン系光安定剤とを含むハードコート層を形成した。
【0120】
形成されたハードコート層中における(メタ)アクリレート系樹脂:100.0質量部に対する、セシウム酸化タングステンの割合は70.0質量部とし、ヒンダードアミン系光安定剤の割合は3.0質量部とした。
【0121】
次に、基材のハードコート層が設けられた面とは反対側の面に、アクリル系粘着剤と紫外線吸収剤としてのTINUVIN 477(BASF社製)とを含む組成物をナイフコート法にて塗工した後、90℃で1分間乾燥させ、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。形成された粘着剤層中における紫外線吸収剤の含有量は、アクリル系粘着剤:100質量部に対して、4.0質量部であった。
【0122】
また、剥離ライナーとして、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面にシリコーン系離型剤を含む離型剤層が形成されたものを用意した。
【0123】
そして、粘着剤層に、剥離ライナーの離型剤層を貼り合わせ、粘着剤層が剥離ライナーで保護されたウィンドウフィルムを得た。
【0124】
(実施例2~8)
ハードコート層形成用の塗工液の調製において、(メタ)アクリレート系化合物の種類およびヒンダードアミン系光安定剤の添加量を、表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にしてウィンドウフィルムを製造した。
【0125】
(比較例1)
ハードコート層形成用の塗工液の調製において、ヒンダードアミン系光安定剤を用いなかった以外は、前記実施例1と同様にしてウィンドウフィルムを製造した。
【0126】
(比較例2~4)
ハードコート層形成用の塗工液の調製において、ヒンダードアミン系光安定剤の代わりに、紫外線吸収剤としてのチヌビン405(BASF社製)を使用し、その添加量を表1に示すように種々変更した以外は、前記実施例1と同様にしてウィンドウフィルムを製造した。
【0127】
なお、チヌビン405は、以下にその構造を示すように、ヒドロキシフェニルトリアジン構造を有する紫外線吸収剤である。
【0128】
【化4】
【0129】
(比較例5、6)
ハードコート層形成用の塗工液の調製において、(メタ)アクリレート系化合物の種類を、表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてウィンドウフィルムを製造した。
【0130】
[6]ウィンドウフィルムの評価
得られたウィンドウフィルムにつき、以下の評価を行った。
【0131】
[6-1]耐候性試験
得られたウィンドウフィルムを3mmフロートガラスに貼着して、JIS A5759:2016に準拠して、サンシャインカーボン促進耐候性試験機(スガ試験機社製、サンシャインウェザーメーター S80)を用い、ブラックパネル温度計の示す温度63℃±3℃、相対湿度50%±5%の試験条件にて、ガラス面から紫外線を連続1000時間照射した。耐候性試験中には、ウィンドウフィルムに対し、120分照射中に、18分間水噴射を行った。
【0132】
初期と耐候性試験後とでの近赤外線透過率の変化率を算出した。
近赤外線透過率の変化率(%)=(耐候性試験後の近赤外線透過率/初期の近赤外線透過率)×100
【0133】
なお、近赤外線透過率は、分光光度計として島津製作所社製、製品名「紫外可視近赤外分光光度計UV-3600」を使用し、780nm以上2500nm以下の波長領域の透過率の平均値を算出し、以下の基準に従い評価した。
【0134】
○:変化量が500%未満
×:変化量が500%以上
【0135】
[6-2]ハードコート層擦過試験
得られたウィンドウフィルムのハードコート層の表面を、スチールウール#0000を用いて、250g/cmの圧力で10往復することにより擦過試験を行った。
【0136】
擦過試験前後でのヘーズ値からΔヘーズを算出した。
Δヘーズ(%)=擦過試験後のヘーズ値(%) - 擦過試験前のヘーズ値(%)
【0137】
なお、ヘーズ値は、ヘーズメーター(日本電色工業社製、商品名:NDH-2000)を用いて、JIS K 7361-1(1997)に準じた方法により測定した。
【0138】
以下の判定基準によりハードコート層の硬化性を判定した。
○:Δヘーズが1.5%未満
×:Δヘーズが1.5%以上
【0139】
表1に、前記各実施例および各比較例について、ハードコート層の条件とともに、上記の評価の結果をまとめて示す。なお、表1中、セシウム酸化タングステンを「CWO」、紫外線硬化型の単官能アクリレート系化合物としてのAM-90G(新中村化学工業社製)を「単官能アクリレート」、紫外線硬化型の2官能アクリレート系化合物としてのA-HD-N(新中村化学工業社製)を「2官能アクリレート」、紫外線硬化型の3官能アクリレート系化合物としてのA-TMPT(新中村化学工業社製)を「3官能アクリレート」、紫外線硬化型の4官能アクリレート系化合物としてのA-TMMT(新中村化学工業社製)を「4官能アクリレート」、紫外線硬化型の5官能アクリレート系化合物と6官能アクリレート系化合物の混合物としてのM-403(東亞合成社製)を「5官能アクリレート/6官能アクリレート」、紫外線硬化型の6官能アクリレート系化合物としてのEBECRYL 896(ダイセル・オルネクス社製)を「6官能アクリレート」、6官能の脂肪族ウレタンアクリレートとしてのEBECRYL 8301R(ダイセル・オルネクス社製)を「ウレタンアクリレート」、ヒンダードアミン系光安定剤としてのチヌビン292(BASF社製)を「HALS」、紫外線吸収剤としてのチヌビン405(BASF社製)を「UVA」と示した。
【0140】
【表1】
【0141】
表1から明らかなように、実施例1~8では、いずれも、優れた結果が得られた。これに対し、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0142】
1:ウィンドウフィルム
2:基材
3:ハードコート層
4:粘着剤層
10:剥離ライナー
図1