(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145983
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】移動装置
(51)【国際特許分類】
B66B 11/02 20060101AFI20231004BHJP
B66B 5/28 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B66B11/02 Z
B66B5/28 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052931
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮川 行宏
【テーマコード(参考)】
3F304
3F306
【Fターム(参考)】
3F304CA13
3F304DA67
3F306AA11
3F306CB06
3F306CB60
(57)【要約】
【課題】乗りかごに伝わる衝撃を減らすことができる移動装置を提供する。
【解決手段】乗りかごと、所定方向に延びるガイドレールと、前記乗りかごと結合可能に構成され、前記ガイドレールに沿って前記所定方向に移動する駆動装置と、前記駆動装置に設けられ、衝突時の衝撃を緩和する第一緩衝部とを備え、前記第一緩衝部は、前記駆動装置の移動方向において、前記駆動装置及び前記乗りかごよりも長く、且つ少なくとも一部が前記駆動装置及び前記乗りかごよりも前記移動方向の一方側及び他方側に配置される、移動装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごと、
所定方向に延びるガイドレールと、
前記乗りかごと結合可能に構成され、前記ガイドレールに沿って前記所定方向に移動する駆動装置と、
前記駆動装置に設けられ、衝突時の衝撃を緩和する第一緩衝部とを備え、
前記第一緩衝部は、前記駆動装置の移動方向において、前記駆動装置及び前記乗りかごよりも長く、且つ少なくとも一部が前記駆動装置及び前記乗りかごよりも前記移動方向の一方側及び他方側に配置される、移動装置。
【請求項2】
前記乗りかごと前記駆動装置との結合部分には、衝撃を緩和する第二緩衝部が備わる、請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
前記ガイドレールは、前記移動装置が衝突する際に、前記第一緩衝部のみが当接するように構成される、請求項1又は2に記載の移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかごが駆動装置によって移動する移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一つの昇降路内に複数の複数の乗りかごが昇降する、いわゆるマルチエレベータにおいて、従来は、吊ロープに連結した前記乗りかごそのものを昇降させるトラクション式エレベータを採用していた。しかし、不具合等によって、前記乗りかご同士が衝突すると、衝突時の衝撃が前記乗りかご内の乗客に直接伝わり、前記乗客を負傷させるおそれがあった。そこで、特許文献1の
図1に示すように、前記乗りかごよりも昇降方向に長く構成され、前記乗りかごを昇降路内で昇降させる昇降駆動装置を設け、前記乗りかご同士の衝突をなくすようにした。具体的に、このエレベータでは、一つの昇降路内に、ガイドレールに沿って昇降できる1号機の昇降駆動装置と2号機の昇降駆動装置とが配置され、前記昇降駆動装置それぞれに前記乗りかごが結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載のエレベータでは、一つの昇降路内に複数の前記昇降駆動装置が配置されているため、制御部の故障等によって前記昇降路内を昇降中の一の前記昇降駆動装置が他の前記昇降駆動装置と衝突する可能性がある。前記昇降駆動装置同士が衝突した場合、衝突による衝撃が、前記昇降駆動装置と結合する前記乗りかごにそのまま伝わって、前記乗りかご内の乗客が負傷するおそれがあった。
【0005】
なお、このような問題は、一つの昇降路において前記乗りかご及び前記昇降駆動装置が複数配置されている場合に限らず、例えば、一つの昇降路内で一つずつの前記昇降駆動装置と前記乗りかごとが結合して配置された場合に、結合する前記昇降駆動装置や前記乗りかごが前記昇降路内の天井や底面に衝突したときにおいても生じるおそれがあった。
【0006】
そこで、乗りかごと駆動装置とにより構成される移動体が衝突した際に、乗りかごに伝わる衝撃を減らすことができる移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、乗りかごと、所定方向に延びるガイドレールと、前記乗りかごと結合可能に構成され、前記ガイドレールに沿って前記所定方向に移動する駆動装置と、前記駆動装置に設けられ、衝突時の衝撃を緩和する第一緩衝部とを備え、前記第一緩衝部は、前記駆動装置の移動方向において、前記駆動装置及び前記乗りかごよりも長く、且つ少なくとも一部が前記駆動装置及び前記乗りかごよりも前記移動方向の一方側及び他方側に配置される、移動装置である。
【0008】
前記構成によれば、前記駆動装置に設けられ、衝突時の衝撃を緩和する前記第一緩衝部が、前記駆動装置の移動方向において、前記駆動装置及び前記乗りかごよりも長く、且つ少なくとも一部が前記駆動装置及び前記乗りかごよりも前記移動方向の一方側及び他方側に配置されるため、例えば、前記移動装置が前記移動路内で衝突する際には、まず初めに、前記第一緩衝部が衝突するため、前記衝突時の衝撃を前記第一緩衝部で緩和することで、前記乗りかご及び前記駆動装置に伝わる衝撃を減らすことができ、また、前記第一緩衝部が前記駆動装置に設けられているため、前記衝突時の衝撃は前記駆動装置を介して前記乗りかごに伝わるので、前記衝突時の衝撃が前記乗りかごに伝わるまでの距離を大きくでき、前記乗りかごに伝わる衝撃を減らすことができる。
【0009】
また、本発明において、前記乗りかごと前記駆動装置との結合部分には、衝撃を緩和する第二緩衝部が備わっていてもよい。
【0010】
前記構成によれば、前記乗りかごと前記駆動装置との結合部分には、前記第二緩衝部が備わっているため、前記移動装置が衝突した際に、前記駆動装置から前記乗りかごに伝わる衝撃を緩和できる。
【0011】
また、本発明において、前記ガイドレールは、前記移動装置が衝突する際に、前記第一緩衝部のみが当接するように構成されていてもよい。
【0012】
前記構成によれば、前記ガイドレールは、前記移動装置が衝突する際に、前記第一緩衝部のみが当接するように構成されるため、前記駆動装置や前記乗りかごが当接し、前記駆動装置や前記乗りかごに直接衝撃が伝わることを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
以上、本発明によれば、前記第一緩衝部の少なくとも一部が、前記駆動装置の移動方向において、前記駆動装置及び前記乗りかごよりも一方側及び他方側に配置されているため、前記乗りかごに伝わる衝撃を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る移動装置にて、乗りかごと昇降駆動装置とが結合された状態を示す、側面図である。
【
図3】
図3は、第二実施形態に係る移動装置にて、乗りかごと昇降駆動装置とが結合された状態を示す、背面図である。
【
図4】
図4は、第三実施形態に係る移動装置にて、乗りかごと昇降駆動装置とが結合された状態を示す、背面図である。
【
図5】
図5は、第四実施形態に係る移動装置にて、乗りかごと昇降駆動装置とが結合された状態を示す、背面図である。
【
図6】
図6は、当接部の第一乃至第四実施形態以外の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の移動装置に係る第一実施形態について説明する。この移動装置1は、衝突時に乗りかご3に伝わる衝撃を減らすためのものである。また、本実施形態の移動装置1は、乗りかご3と、所定方向に延びるガイドレール(図示しない)と、乗りかご3を移動させる駆動装置4と、が分離・結合するエレベータ(結合分離型エレベータ)である。なお、移動装置1では、乗りかご3自体は移動路内を移動する機能を有していない。
【0016】
以下の説明において、移動路内で移動装置1が移動する方向を「移動方向Y」と、乗りかご3と昇降駆動装置4が対向する方向を「対向方向Z」と、移動路同士が隣り合う方向を「隣接方向X」と称する。また、本実施形態で、移動方向Yとは
図1,2で上下に延びる昇降方向Yのことであり、対向方向Zとは前後方向Zのことであり、隣接方向Xとは
図2で左右に延びる水平方向のことである。さらに、「所定方向」とは、本実施形態における移動方向Yのことである。なお、移動方向Y、対向方向Z及び隣接方向Xとは互いに直交している。
【0017】
本実施形態では、建物内を複数の階床(フロア)に亘って移動方向Yに延びる移動路としての昇降路(図示及び採番しない)の内部に複数の移動装置1が配置されている、いわゆる「マルチエレベータ」であることを前提に説明を行う。また、本実施形態では、隣り合う昇降路間を、乗りかご3が移動自在である場合を前提に説明を行う。
【0018】
上述した通り、本実施形態では、昇降路内に複数の移動装置1が配置されている。これらの移動装置1は、全て同様に構成されている。そのため、以下では、一の移動装置1について説明を行い、昇降路内に配置される他の移動装置1に兼用する。移動装置1は、昇降路内を昇降するエレベータ本体2(0006にて説明した移動体に対応している)と、衝突時の衝撃を緩和する第一緩衝部5とを備える。
【0019】
エレベータ本体2は、昇降路内を上下に昇降移動する駆動装置4としての昇降駆動装置4と、昇降路内で各階に設けられる乗場に停止可能な乗りかご3と、を備える。
【0020】
図1は、昇降駆動装置4に対して乗りかご3を結合させた状態を示している。昇降駆動装置4は、昇降路の内部に設けられたガイドレールに沿って、吊ロープ47により昇降可能に構成されている。ここで、従来のトラクション式エレベータにおいては、吊ロープ47に連結した乗りかご3そのものを昇降させていた。第一実施形態では、従来の乗りかご3部分を昇降駆動装置4に置き換えた。また、この昇降駆動装置4は、移動方向Yにおいて、乗りかご3よりも長く構成され、少なくとも一部が移動方向Yで乗りかご3よりも一方側及び他方側に配置されている。そのため、移動方向Yで乗りかご3が衝突するよりも先に昇降駆動装置4が衝突することで、乗りかご3が衝突すること及び乗りかご3に衝突時の衝撃が直接伝わることを防止している。さらに、昇降駆動装置4(具体的には、乗りかご結合部45)の前後方向Zの前面側垂直面に隣接方向Xに延びる溝状の軌道部46を設けた構成とすることで、乗りかご3が軌道部46に沿って隣接方向Xに移動できるように構成されている。
【0021】
昇降駆動装置4は、乗りかご3と結合し、昇降路内を昇降することで乗りかご3を昇降路内で昇降させる。昇降駆動装置4は、昇降路内を昇降する昇降本体40と、乗りかご3と結合するための乗りかご結合部45とを備える。
【0022】
図2に示すように、昇降本体40は、移動方向Yに延びる一対の梁部41,41と、該一対の梁部41,41の間を亘るように隣接方向Xに延びる連結部(具体的には、一方連結部42及び他方連結部43)を備え、枠状に構成されている。なお、
図1に示すように、本実施形態において、梁部41の隣接方向Xにおける連結部とは反対側の端面には、昇降路内で上下方向に延びるガイドレールを通すため、移動方向Yに延びる溝状のレール溝410が形成されている。一方連結部42は移動方向Yの一方側(上側)に配置され、他方連結部43は移動方向Yの他方側(下側)に配置されている。一方連結部42には、吊ロープ47が連結されている。そのため、吊ロープ47を巻上げ、巻き戻しすることにより、昇降本体40が昇降移動する。なお、
図1に示すように、本実施形態の一方連結部42及び他方連結部43は、移動方向Yで互いに凹みが向かい合うコ字状の鋼材で構成されている。
【0023】
図1,2に示すように、一方連結部42と他方連結部43との移動方向Yの間には、一対の梁部41,41の間を亘るように隣接方向Xに延びる連結部としての中央連結部44が配置されている。この中央連結部44は、移動方向Yで一方連結部42及び他方連結部43に離間して配置されている。本実施形態では、中央連結部44が移動方向Yに離間する状態で、2つ配置されている。なお、本実施形態の中央連結部44は、移動方向Yに凹みを有するコ字状の鋼材で構成されている。
【0024】
乗りかご結合部45は、昇降駆動装置4に乗りかご3を結合するためのものである。この乗りかご結合部45は、前後方向Zで中央連結部44の前面に取り付けられることで、昇降本体40と連結している。本実施形態の乗りかご結合部45の隣接方向Xの長さは、中央連結部44の隣接方向Xの長さと略同一である。また、乗りかご結合部45の移動方向Yの長さは、昇降本体40よりも短い。そのため、乗りかご結合部45は、昇降本体40のうち、中央連結部44にのみ接触するように構成されている。乗りかご結合部45には、前面側垂直面に隣接方向Xに延びる溝状の軌道部46が設けられている。この軌道部46は、昇降駆動装置4と乗りかご3とを結合するために用いられる。
【0025】
乗りかご3は、利用者が搭乗する乗りかご本体30、及び、乗りかご3本体の背面に、隣接方向Xに延びるように突出しており、昇降駆動装置4の軌道部46を走行するための軌道走行部31を備える。この軌道走行部31が、乗りかご結合部45の前面側垂直面に設けられる軌道部46と係合することにより、乗りかご3は昇降駆動装置4と結合している。そのため、本実施形態において軌道走行部31と軌道部46とが係合する箇所が、乗りかご3と昇降駆動装置4との結合部分となる。なお、軌道走行部31は、乗りかご本体30の側面に設けられていてもよいし、側面及び背面の両方に設けられていてもよい。
【0026】
軌道走行部31には、軌道部46を円滑にがたつきなく走行するためのガイドローラ32が設けられている。そのため、乗りかご3は、昇降駆動装置4に対して隣接方向Xで動くことにより、昇降路間を移動自在である。ガイドローラ32は、乗りかご3の軌道部46(昇降駆動装置4)に対する支持を行うローラである。
図1に示すように、ガイドローラ32の一部は、軌道走行部31から露出し、昇降駆動装置4の軌道部46に接触する。なお、ガイドローラ32は、隣接方向Xに隙間を空けて、複数(例えば、3つ以上)設けられ、複数のガイドローラ32の一部は、軌道走行部31の下方に突出して露出し、軌道部46の上方に向いた面に接触する。さらに、ガイドローラ32の残りは、軌道走行部31から上方に突出して露出し、軌道部46の下方に向いた面に接触する。
【0027】
ガイドローラ32は、軌道走行部31に対して出退可能に構成されている。このガイドローラ32は、エレベータ本体2が昇降方向Yで振動した際に、露出した状態から移動方向Yで軌道走行部31の内部に退避することで、衝撃(具体的には、移動方向Yでの振動)を緩和する。そのため、本実施形態のガイドローラ32は、第二緩衝部として構成される。
【0028】
乗りかご3を昇降駆動装置4に対して移動させるための駆動手段(モータ、調速手段、駆動力出力手段)は、乗りかご3が有していてもよいし、昇降駆動装置4が有していてもよい。例えば、軌道走行部31と軌道部46とに亘って、前記駆動手段としてのリニアモータが形成されたことにより、軌道走行部31と軌道部46とが隣接方向Xで相対的に水平移動する。このリニアモータ以外に、例えば、軌道走行部31に回転モータと、これにより駆動されるガイドローラ32を備えた構造により、軌道走行部31と軌道部46とが相対的に水平移動するものであってもよい。また、駆動手段に対する電源供給は、乗りかご3、昇降駆動装置4のいずれかの側に備えた蓄電装置から供給してもよいし、外部電源から供給してもよい。
【0029】
第一緩衝部5は、昇降路内で移動装置1が衝突した際の衝撃を緩和するためのものである。本実施形態の第一緩衝部5は、移動方向Yで、エレベータ本体2よりも一方側及び他方側に亘るように配置されている。また、第一緩衝部5は、エレベータ本体2(昇降駆動装置4)に設けられている。第一緩衝部5は、緩衝取付部と、衝突時の衝撃を緩和する緩衝本体50とを備える。
【0030】
緩衝取付部は、後述する緩衝本体50を昇降本体40に取り付けるためのものである。緩衝取付部は、移動方向Yに延びる軸部材(採番しない)を挿通するための軸受部材として構成され、軸部材を挿通するべく移動方向Yに延びる筒状の軸受本体と、前後方向Zに延びて該軸受本体を昇降本体40に取り付ける軸受取付部とを備える。緩衝取付部は、昇降本体40(具体的には、昇降本体40の背面)に設けられている。
図1に示すように、本実施形態では、一方連結部42及び他方連結部43に設けられることで、移動方向Yに2つの緩衝取付部53A,53Bが備わっている。そして、緩衝取付部53A,53Bそれぞれは、軸受本体530A,530Bと、軸受取付部531A,531Bとを備えている。なお、これらの緩衝取付部53A,53Bは、隣接方向Xでズレることがないように移動方向Yで対向して配置されている。また、
図2に示すように、本実施形態では、一方連結部42及び他方連結部43の隣接方向Xに2つずつ、合計4つの緩衝取付部53A,53A,53B,53Bが設けられている。
【0031】
緩衝本体50は、衝突時に緩衝するためのものである。本実施形態の緩衝本体50は、昇降本体40の背面側に配置されている。
図1,2に示すように、緩衝本体50は、移動方向Yに配置される2つの当接部51A,51Bと、移動方向Yに延びる接続部52とを備える。
【0032】
当接部51A,51Bは、移動装置1が移動方向Yで衝突する際に最初に衝突する。そのため、昇降路内で、エレベータ本体2,2同士の直接衝突やエレベータ本体2が昇降路の天井(頂部)や底面(底部)との直接衝突を防止している。よって、
図1,2に示すように、移動方向Yでエレベータ本体2よりも一方側(上側)及び他方側(下側)それぞれに、当接部51A,51Bが配置されている。ここで、当接部51A,51Bは同一の構成であるため、以下では、エレベータ本体2よりも上側に配置される当接部51Aについて説明し、下側に配置される当接部51Bに兼用する。
図2に示すように、当接部51Aは、隣接方向Xに延びる。当接部51Aは、当接本体510Aと、接続部52に接続する当接取付部511Aとを備える。
【0033】
当接本体510Aは、当接部51Aのうち、移動方向Yでエレベータ本体2から遠い側に配置される部分である。この当接本体510Aは、移動方向Yに厚みを有し、移動方向Yで変形(圧縮)可能に構成されている。なお、本実施形態の当接本体510Aは、隣接方向Xに延びるバンパーを衝撃吸収材(例えば、ラバーやウレタン)で覆うことにより構成されている。そのため、本実施形態では、衝撃吸収材が変形(圧縮)することで、当接本体510Aは変形(圧縮)可能である。
【0034】
当接取付部511Aは、当接部51Aのうち、移動方向Yで当接本体510Aよりもエレベータ本体2に近い側に配置される部分である。この当接取付部511Aは、隣接方向Xに延びる。本実施形態の当接取付部511Aは、中実である。当接取付部511Aは、衝突時の衝撃による荷重のうち、当接本体510Aを変形(圧縮)させった荷重を超える過荷重により、後述する一方接続部524を移動方向Yで動かす。よって、当接部51Aは、衝突時の衝撃により移動方向Yで移動可能に構成されている。なお、衝突時の衝撃によりエレベータ本体2に近付くように移動する当接部51Aの少なくとも一部は、該当接部51Aと対向するエレベータ本体2の移動方向Yの端面よりも、移動方向Yにおいて、エレベータ本体2から遠い位置で停止する。
【0035】
本実施形態の接続部52は、移動方向Yに延びて2つの当接部51A,51Bを接続している。また、本実施形態では、同一構成の複数(2つ)の接続部52が当接部51A,51Bを接続している。接続部52を構成する軸部材が軸受本体530A,530Bに挿通されることにより、緩衝本体50は昇降本体40に取り付けられている。また、本実施形態の接続部52は、移動方向Yで、エレベータ本体2よりも長く構成されている。
【0036】
接続部52は、衝突時の衝撃を吸収する衝撃吸収部として、移動方向Yの一方側(上側)からの衝撃を吸収する一方衝撃吸収部520Aと、移動方向Yの他方側(下側)からの衝撃を吸収する他方衝撃吸収部520Bとを備える。本実施形態では、一方衝撃吸収部520Aと他方衝撃吸収部520Bは、移動方向Yで離間して配置されている。また、接続部52は、移動方向Yの一方側に配置される当接部51Aと一方衝撃吸収部520Aとを接続する一方接続部524と、移動方向Yの他方側に配置される当接部51Bと他方衝撃吸収部520Bとを接続する他方接続部525と、を備える。即ち、一方接続部524には他方衝撃吸収部520Bが配置されて、他方接続部525には一方衝撃吸収部520Aが配置されている。ここで、一方衝撃吸収部520Aと他方衝撃吸収部520Bとは同一に構成され、一方接続部524と他方接続部525とは同一に構成されている。そのため、以下では、一方接続部524と一方衝撃吸収部520Aとについて説明を行い、他方衝撃吸収部520Bと他方接続部525とに兼用する。
【0037】
一方接続部524は、軸部材のうち、後述する一方衝撃吸収部520Aを構成する可動部521Aよりも移動方向Yの一方側に配置される部分である。この一方接続部524は、一方連結部42に設けられる緩衝取付部53Bの軸受本体530Bに挿通されている。また、この一方接続部524には、移動方向Yと交差する方向に広がる鍔部が設けられている。この鍔部は、他方衝撃吸収部520Bが備える可動部521Bを構成する。
【0038】
一方衝撃吸収部520Aは、移動方向Yの一方側(上側)に配置される当接部51Aよりも、エレベータ本体2側(具体的には、下側)に配置されている。本実施形態の一方衝撃吸収部520Aは、昇降本体40の背面側に配置されている。本実施形態の一方衝撃吸収部520Aは、二つの緩衝取付部53A,53Bの間に配置されている。この一方衝撃吸収部520Aは、衝突時の衝撃で移動方向Yに動く可動部521Aと、固定部523Aと、弾性部522Aとを備える。
【0039】
可動部521Aは、移動方向Yに延びる軸部材(採番しない)に設けられる鍔部として構成されている。この可動部521Aは、後述する一方接続部524を介して当接部51Aに接続されている。そのため、この可動部521Aは、当接部51Aが衝突することで軸部材が移動方向Yの他方側に移動し、後述する固定部523Aに近付く。よって、可動部521Aが移動方向Yの他方側(下側)に動くことにより、後述する弾性部522Aが圧縮される。したがって、当接部51Aは、移動方向Yで押されることにより、弾性部522Aを押しながら移動方向Yで固定部523A側に近付く。
【0040】
固定部523Aは、移動方向Yで可動部521Aと対向し、該可動部521Aよりも当接部51Aから離れて配置されている。この固定部523Aは、移動方向Yで動くことないように構成されている。本実施形態の固定部523Aは、軸受取付部531Aにより昇降本体40に取り付けられた軸受本体530Aに設けられる鍔部として構成されている。
【0041】
弾性部522Aは、可動部521Aと固定部523Aとの間に配置されている。この弾性部522Aは、可動部521Aが移動方向Yで固定部523Aに近付くことにより変形(圧縮)するように構成されている。本実施形態の弾性部522Aは、圧縮ばねとして構成されている。そのため、一方衝撃吸収部520Aでは、衝突時の衝撃で可動部521Aを移動方向Yに動かして、弾性部522Aの変形(圧縮)することで、衝撃を吸収している。さらに、弾性部522Aは、衝突時の衝撃で圧縮した後、元の状態に戻るように弾性可能に構成されている。加えて、本実施形態の弾性部522Aは、移動方向Yの他端側が固定部523Aに固定されている一方で、移動方向Yの一端側が可動部521Aには固定されていない。そのため、例えば、移動装置1が移動方向Yの他方側(下側)で衝突した際に、弾性部522Aは、他方接続部525が移動方向Yの一方側(上側)に動くことで、他方接続部525に配置される一方衝撃吸収部520Aを構成する可動部521Aが固定部523Aから離れることを妨げることがないように構成されている。
【0042】
本実施形態の弾性部522Aは、当接部51A,51B、弾性部522B、軸部材の荷重によって可動部521Aが固定部523Aに近付いて変形(圧縮)されない程度の弾性力を有する。即ち、衝突時の衝撃が緩衝本体50に伝わる前の状態で、弾性部522Aは、より多くの衝撃を吸収することが可能な程度に伸びきって配置されている。
【0043】
続いて、移動装置1の動作について説明する。ここで、上述した通り、本実施形態は、前提として、昇降路の内部に複数の移動装置1が配置される「マルチエレベータ」である。そのため、乗りかご3が乗場に停止することにより、昇降路内で停止した状態にある一の移動装置1に対して、ガイドレールに沿って昇降路内を移動する他の移動装置1が一方側(上側)から衝突した場合の一の移動装置1の動作について説明する。
【0044】
他の移動装置1が一の移動装置1に衝突する際には、まずはじめに、他の移動装置1の移動方向Yの他方側(下側)に配置される当接部51Bが、一の移動装置1の移動方向Yの一方側(上側)に配置される当接部51Aに衝突する。このとき、一の移動装置1では、当接本体510Aのうちの衝撃吸収材が衝突時の衝撃を吸収し、移動方向Yに変形(圧縮)する。よって、衝撃吸収材の変形によって、接続部52に伝わる衝突時の衝撃が減少する。そして、衝撃吸収材が変形しきるのに必要な荷重を超える過荷重により、当接部51Aが移動方向Yでエレベータ本体2側(下側)に押されることで、一方接続部524を介して、可動部521Aが弾性部522Aを圧縮しながら固定部523A側に近付くように移動する。ここで、一方接続部524に設けられている鍔部としての可動部521Bは、弾性部522Bの移動方向Yの一端側に接続されていないため、一方接続部524は弾性部522Bの弾性に阻害されることなく、移動方向Yで動いて、可動部521Aが固定部523A側に近付くように移動する。よって、弾性部522Aが変形(圧縮)されることにより、一方衝撃吸収部520Aが衝撃を吸収することで、衝撃が減少する。そして、弾性部522Aが変形しきるのに必要な荷重を超える過荷重が、衝突時の衝撃として、軸受本体530Aに設けられる鍔部としての固定部523Aから、緩衝取付部53Aとしての軸受本体530A及び軸受取付部531Aを介して、昇降本体40(具体的には、他方連結部43)に伝達される。すなわち、衝突時の衝撃は、緩衝取付部53A,53Bを介することにより、昇降駆動装置4側から乗りかご3側に伝わる。よって、本実施形態では、第一緩衝部5のみが、他の移動装置1に接触するのである。なお、移動装置1が昇降路の天井(頂部)や底面(底部)に設けられた緩衝装置(図示しない)に衝突する場合も同様であり、第一緩衝部5のみが、昇降路の天井(頂部)や底部に設けられた緩衝装置に接触する。なお、ガイドレールは、移動装置1が衝突した場合や、移動装置1が昇降路の頂部や底部に衝突する場合に、第一緩衝部5のみが当接するように構成されることにより、昇降駆動装置4や乗りかご3が他の移動装置1等に当接し、昇降駆動装置4や乗りかご3に直接衝撃が伝わることを防止している。
【0045】
他方連結部43は、一対の梁部41,41の間を亘るように隣接方向Xに延びる。そのため、緩衝取付部53Aを介して他方連結部43に伝わった衝撃は、隣接方向Xに分散されてから一対の梁部41,41に伝わる。それから、一対の梁部41,41に伝わった衝撃は、他方連結部43と移動方向Yで離間して配置される一方連結部42及び中央連結部44に伝わる。その後、中央連結部44に伝わった衝撃は、中央連結部44の前面に取り付けられる乗りかご結合部45を介して、乗りかご3に伝わる。よって、乗りかご3に伝わるまでに、衝撃が他方連結部43、一対の梁部41,41、中央連結部44、乗りかご3取付部を介するため、乗りかご3に伝わるまでに衝撃が減少する。
【0046】
ここで、乗りかご結合部45では、前面側垂直面に設けられる軌道部46に軌道走行部31が係合している。また、この軌道走行部31には、第二緩衝部として構成されるガイドローラ32が設けられている。そのため、軌道部46を介して軌道走行部31に衝撃が伝わる際には、ガイドローラ32が軌道走行部31に出退することで、乗りかご3に伝わる衝撃を緩和している。よって、移動装置1が衝突した際の衝撃は減少されてから、乗りかご3に伝わる。
【0047】
以上、本実施形態によれば、移動路内を移動する移動装置1が衝突する際には、まず、第一緩衝部5に衝突することによって衝突時の衝撃を和らげることができる。よって、乗りかご3に伝わる衝撃を減らすことができる。具体的には、移動方向Yでエレベータ本体2から遠い側に配置される当接本体510A,510Bにおいて、衝撃吸収材が衝突時の衝撃で移動方向Yに変形(圧縮)されることにより、衝突時の衝撃を減少できる。また、一方衝撃吸収部520Aでは、衝突時の衝撃により、可動部521Aが弾性部522Aを変形(圧縮)させながら固定部523Aに近付くことで、衝突時の衝撃を減少できる。よって、緩衝本体50は衝突時の衝撃を緩衝できる。なお、他方衝撃吸収部520Bでも同様である。さらに、本実施形態では、第一緩衝部5が昇降駆動装置4に設けられているため、衝突時の衝撃が昇降駆動装置4を介して乗りかご3に伝わるので、衝突時の衝撃が乗りかご3に伝わるまでの距離を大きくでき、乗りかご3に伝わる衝撃を減らすことができる。
【0048】
また、本実施形態では、同一構成の2つの接続部52が当接部51A,51Bを接続している。そのため、接続部52それぞれが一方衝撃吸収部520A、他方衝撃吸収部520Bを備えるため、衝突した際には2つの衝撃吸収部520A,他方衝撃吸収部520Bで衝撃を吸収することによって、衝突時の衝撃を減少できる。
【0049】
また、本実施形態では、第一緩衝部5が、移動方向Yでエレベータ本体2よりも一方側及び他方側に配置されているので、移動方向Yの両側で衝突時の衝撃を緩衝できる。具体的には、当接部51がエレベータ本体2よりも一方側(上側)及び他方側(下側)に配置され、また、衝撃吸収部として、移動方向Yの一方側(上側)からの衝撃を吸収する一方衝撃吸収部520Aと、移動方向Yの他方側(下側)からの衝撃を吸収する他方衝撃吸収部520Bとを備える。よって、第一緩衝部5は、移動方向Yの両側で衝突時の衝撃を緩衝できる。
【0050】
また、本実施形態の弾性部522Aは、当接部51A,51B、弾性部522B、軸部材の荷重によって可動部521Aが固定部523Aに近付いて変形(圧縮)されない程度の弾性力を有する。そのため、当接部51A,51B、弾性部522B、軸部材の荷重によって変形(圧縮)していない状態の弾性部522Aが衝突時の衝撃により変形(圧縮)するため、一方衝撃吸収部520Aは衝突時の衝撃を多く吸収できる。なお、弾性部522Aにおいても同様であり、他方衝撃吸収部520Bも衝突時の衝撃を多く吸収できる。
【0051】
また、本実施形態の弾性部522A,522Bは、衝突時の衝撃で圧縮した後、元の状態に戻るように弾性可能に構成されている。そのため、移動装置1の衝突した後に、弾性部522A,522Bが元の状態に弾性することで、衝突吸収部は何度でも衝撃を吸収できる。
【0052】
また、本実施形態の弾性部522A,522Bそれぞれは、可動部521A,521Bに固定されていない。そのため、例えば、移動装置1が移動方向Yの他方側(下側)で衝突した際に、弾性部522Aは、他方接続部525に配置される可動部521Aが固定部523Aから離れるように動くことを妨げないため、衝突時の衝撃をそのまま衝撃吸収部に伝えることができる。
【0053】
また、本実施形態では、衝突時の衝撃で移動した当接部51A,51Bそれぞれが緩衝取付部53A,53Bそれぞれに当接しないように、一方衝撃吸収部520A、他方衝撃吸収部520Bにおける弾性部522A,522Bのばね定数等(弾性力)は設定されている。そのため、例えば、当接部51Aが緩衝取付部53Bに当接することで、衝突時の衝撃が、移動方向Yに移動した当接部51Aから緩衝取付部53Bに伝わるといったことを防止できる。
【0054】
また、本実施形態では、弾性部522Aが変形しきるのに必要な荷重を超える過荷重が、衝撃として、軸受本体530Aに設けられる鍔部としての固定部523Aから、緩衝取付部53Aとしての軸受本体530A及び軸受取付部531Aを介して、昇降本体40(具体的には、他方連結部43)に伝達される。そして、昇降本体40では、伝わった衝撃を、一対の梁部41,41の間を亘るように隣接方向Xに延びる他方連結部43で隣接方向Xに分散できる。なお、弾性部522Bを変形させるのに必要な荷重を超える過荷重が伝達された場合も同様である。
【0055】
ここで、本実施形態では、乗りかご結合部45は中央連結部44の前面に取り付けられている。そのため、本実施形態では、一方連結部42又は他方連結部43で隣接方向Xに分散された衝撃は、一対の梁部41,41を介して中央連結部44に伝わらなければ、乗りかご3には伝わらない。よって、乗りかご3に伝わるまでの間に衝撃が一対の梁部41,41を介するように構成されているため、衝撃が乗りかごに伝わるまでの距離を大きくでき、乗りかご3に伝わる衝撃を減らすことができる。
【0056】
また、本実施形態の乗りかご3と昇降駆動装置4の連結部分において、軌道部46に係合する軌道走行部31には、第二緩衝部としてのガイドローラ32が設けられている。そのため、軌道部46を介して軌道走行部31に伝わる衝撃(振動)は、ガイドローラ32が出退することで緩和される。よって、昇降駆動装置4から乗りかご3に伝わる衝撃(振動)を減らすことができる。
【0057】
続いて、本発明の第二実施形態に係る移動装置1について説明する。なお、第二実施形態に係る移動装置1を説明するにあたっては、第一実施形態の移動装置1と同一の構成、作用については説明を省略する。
【0058】
第二実施形態の移動装置1は、接続部52の構成が第一実施形態と異なる。第二実施形態では、接続部52は、移動方向Yの一方側(上側)からの衝撃を吸収する2つの一方衝撃吸収部520A,526Aと、移動方向Yの他方側(下側)からの衝撃を吸収する2つの他方衝撃吸収部520B,526Bとを備える。即ち、
図3に示すように、第二実施形態では、一方衝撃吸収部526Aは、一方接続部524において、当接部51Aと緩衝取付部53B(具体的には、軸受本体530B)との間にも配置されている。なお、他方衝撃吸収部526Bにおいても同様である。この一方衝撃吸収部526Aは、2つの緩衝取付部53A,53Bの間に配置される一方衝撃吸収部520Aと同様に構成され、可動部527Aと弾性部528Bと固定部529Bとを備える。そのため、この一方衝撃吸収部526Aは、衝突時の衝撃により可動部527Aが固定部529Aに近付いて弾性部528Aを変形(圧縮)させることにより、衝撃を吸収している。なお、他方衝撃吸収部526Bについても同様である。また、
図3に示すように、当接部51Aと軸受本体530Bとの間に配置される一方衝撃吸収部526Aを構成する固定部529Aは、移動方向Yで、一方連結部42に設けられる軸受本体530Aのうち、当接部51Aと対向する側に設けられている。そのため、一方衝撃吸収部526Aで吸収した分を超える衝撃は、軸受本体530Bを介して昇降本体40に伝わる。なお、他方衝撃吸収部526Bにおいても同様であり、他方衝撃吸収部526Bで吸収できる分を超える衝撃は、軸受本体530Aを介して昇降本体40に伝わる。
【0059】
以上、第二実施形態の移動装置1によれば、第一緩衝部5によって衝突時の衝撃を緩和する際には、当接部51A,51Bと軸受本体530A,530Bとの間に配置される一方衝撃吸収部526A、他方衝撃吸収部526Bによっても衝撃を吸収できる。よって、衝突時の衝撃のうち、乗りかご3に伝わる衝撃をより少なくできる。
【0060】
また、第二実施形態では、例えば、移動方向Yの一方側(上側)から衝撃が2つの一方衝撃吸収部520A,526Aにより軸受本体530A,530Bを介して、一方連結部42及び他方連結部43に伝わる。そして、一方連結部42と他方連結部43それぞれから一対の梁部41,41を介して衝撃を中央連結部44に伝える。よって、第一緩衝部5を介してエレベータ本体2に伝わる衝撃を分散できる。
【0061】
次に、
図4を用いて、第三実施形態に係る移動装置1について説明する。第三実施形態に係る移動装置1を説明するにあたっては、第一及び第二実施形態の移動装置1と同一の構成、作用については説明を省略する。
【0062】
第三実施形態では、緩衝取付部及び接続部52の構成が第一及び第二実施形態と異なる。緩衝取付部53A,53Bは第一及び第二実施形態と同様に、一方連結部42及び他方連結部43に設けられる。これに加えて、第三実施形態では、緩衝取付部53C,53Dが中央連結部44に設けられている。そのため、第三実施形態の緩衝取付部は、移動方向Yで4つ備わっている。
【0063】
接続部52は、第一実施形態と同様に、一方衝撃吸収部520A及び他方衝撃吸収部520Bを備える。その一方、第三実施形態では、一方衝撃吸収部520A及び他方衝撃吸収部520Bは移動方向Yで連続配置されている。ここで、第三実施形態の一方衝撃吸収部520Aと他方衝撃吸収部520Bは、中央連結部44に設けられる2つの緩衝取付部53C,53Dの間に配置されるとともに、一方衝撃吸収部520Aと他方衝撃吸収部520Bそれぞれが備える可動部521A,521Bを共有している。そのため、第三実施形態では、弾性部522A,522Bの移動方向Yの長さが第一及び第二実施形態よりも短く構成されている。
【0064】
以上、第三実施形態では、緩衝取付部が移動方向Yで4つ備わっているため、移動方向Yで接続部52(具体的には、軸部材)を動かす際に、4つの軸受本体で軸部材を安定して移動方向Yに誘導できる。
【0065】
また、第三実施形態では、一方衝撃吸収部520Aと他方衝撃吸収部520Bは、中央連結部44に設けられる二つの緩衝取付部53C,53Dの間に配置されるため、一方衝撃吸収部520Aと他方衝撃吸収部520Bで吸収した分以上の衝撃を、中央連結部44に設けられる緩衝取付部53A,53Bを介して、昇降本体40(具体的には、中央連結部44)に伝えることができる。そして、中央連結部44に伝わった衝撃は、隣接方向Xで分散されるため、乗りかご3に伝わる衝撃を減らすことができる。
【0066】
続いて、
図5を用いて、第四実施形態に係る移動装置1について説明する。第四実施形態に係る移動装置1を説明するにあたっては、第一乃至第三実施形態の移動装置1と同一の構成、作用については説明を省略する。
【0067】
第四実施形態の移動装置1では、第一乃至第三実施形態とは異なり、移動方向Yで、第一緩衝部5が2つ配置されている。そのため、第四実施形態では、例えば、移動装置1が移動方向Yの一方側及び他方側から同時に衝突した際でも、乗りかご3に伝わる衝撃を減らすことができる。ここで、2つの第一緩衝部5は同様に構成されているため、以下では、一方側(上側)に配置されている第一緩衝部5について説明し、他方側(下側)に配置されている第一緩衝部5に兼用する。
【0068】
第四実施形態の緩衝取付部は、一方連結部42、他方連結部43及び中央連結部44に設けられている。具体的に、第四実施形態では、一方連結部42には緩衝取付部53Bが、他方連結部43には緩衝取付部53Aが、中央連結部44には緩衝取付部53C(
図5では、移動方向Yの一方側の緩衝取付部53Cのみ採番する)がそれぞれ設けられている。
【0069】
上述した通り、第四実施形態の移動装置1では、第一乃至第三実施形態とは異なり、移動方向Yで、第一緩衝部5が2つ配置されている。そのため、第四実施形態では、接続部52は備えておらず、2つの当接部51A,51Bは接続されていない。よって、第四実施形態では、接続部52に代えて、移動方向Yに延びる延部54を備える。延部54は、2つの緩衝取付部53B,53Cの間に配置される一方衝撃吸収部540Aと、当接部51Aと一方衝撃吸収部540Aとを接続する接続部544と、衝撃を変換する衝撃変換部55とを備える。なお、第四実施形態の一方衝撃吸収部540Aでは、当接部51Aが衝突することにより、軸部材(具体的には、接続部544)が移動方向Yの他方側(下側)に動き、中央連結部44に設けられる緩衝取付部53C(具体的には、固定部543A)側に可動部541Aが動いて、弾性部542Aを変形(圧縮)し、衝突時の衝撃を吸収している。
【0070】
本実施形態の衝撃変換部55は、隣接方向Xに配置される2つの延部54において、衝突体571同士を衝突させることにより、衝突時の衝撃の一部を熱に変換している。具体的に、衝撃変換部55は、衝突時の衝撃による移動方向Yの荷重を隣接方向Xの荷重に変換する荷重変換部56と、隣接方向Xで衝突する衝突部57とを備える。
【0071】
荷重変換部56は、移動方向Yから隣接方向Xに湾曲するように延びる荷重方向転換部560と、荷重変換部56を中央連結部44に取り付けるための荷重取付部561とを備える。また、本実施形態の荷重変換部56は、中央連結部44に設けられる緩衝取付部53Cとして構成されている。なお、本実施形態の荷重変換部56(具体的には、荷重方向転換部560)は、移動方向Yから隣接方向Xに湾曲可能に構成された軸部材が挿通されることにより、又は油圧により移動方向Yの荷重を隣接方向Xの荷重に変換している。衝突部57は、荷重変換部56によって変換された隣接方向Xの荷重により隣接方向Xで動く衝突駆動部570と、隣接方向Xで衝突する衝突体571とを備える。
【0072】
以上、第四実施形態によれば、衝突時の衝撃を衝撃吸収部540A,540Bで吸収することに加えて、衝撃変換部55において、荷重変換部56で移動方向Yの荷重を隣接方向Xの荷重に変換し、該変換された隣接方向Xの荷重で衝突駆動部570が隣接方向Xに動き、衝突体571同士が衝突することによって、衝突時の衝撃の一部を熱に変換することで、エレベータ本体2(具体的には、乗りかご3)に伝わる衝撃を減らすことができる。
【0073】
本発明の移動装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0074】
上記第一乃至第四実施形態では、エレベータ本体2が昇降路内を昇降する場合について説明したが、これに限らず、例えば、エレベータ本体2が水平方向に延びる横走行路内を走行してもよい。この場合、駆動装置4は横走行路内を走行するための横走行装置4として構成されることが考えられる。また、「移動方向Y」とは、エレベータ本体2が横走行路を走行するための水平方向のこととなる。
【0075】
上記第一乃至第四実施形態では、緩衝取付部は連結部(具体的には、一方連結部42、他方連結部43又は中央連結部44)に設けられる場合について説明したが、これに限らず、例えば、緩衝取付部が一対の梁部41,41に設けられていてもよい。
【0076】
上記第一乃至第四実施形態では、緩衝本体50及び緩衝取付部は昇降本体40の背面側に配置されている場合について説明したが、これに限らず、例えば、緩衝本体50及び緩衝取付部が、昇降本体40の隣接方向Xの端部(具体的には、連結部とは反対側の端面)に配置されていてもよい。また、緩衝本体50及び緩衝取付部が、昇降本体40の移動方向Yの端部に配置されていてもよい。
【0077】
上記第一乃至第四実施形態では、
図2~5に示すように、移動方向Yでエレベータ本体2よりも一方側、他方側それぞれには1つの当接部51が配置されている場合について説明したが、これに限らず、例えば、移動方向Yでエレベータ本体2よりも一方側、他方側に複数の当接部51が配置されていてもよい。
【0078】
上記第一乃至第四実施形態の当接本体510A,510Bは、バンパーを衝撃吸収材で覆うことにより構成されていたが、これに限らず、例えば、
図6に示すように、当接本体510は衝撃緩衝材(例えば、ラバーやウレタン)により構成されていてもよい。
【0079】
図1に示すように、上記第一乃至第四実施形態では、当接部51A,51Bは、移動方向Yでエレベータ本体2よりも一方側(上側)及び他方側(下側)の両側に配置される場合について説明したが、この場合、例えば、当接部51A,51Bは、前後方向Zで昇降駆動装置4の背面側以外に、エレベータ本体2の直上や直下に配置されていてもよい。
【0080】
また、上記第一乃至第三実施形態では、第一緩衝部5は、移動方向Yで、エレベータ本体2よりも一方側及び他方側に亘るように配置されている場合について説明したが、これに限らず、例えば、第一緩衝部5は、移動方向Yでエレベータ本体2の一方側及び他方側のみにそれぞれ配置されていてもよい。
【0081】
また、上記第一乃至第四実施形態では、乗りかご結合部45が昇降本体40の中央連結部44に設けられている場合について説明したが、これに限らず、例えば、乗りかご結合部45が中央連結部44に加えて、一対の梁部41,41に設けられていてもよい。
【0082】
また、上記第一乃至第四実施形態では、当接取付部511A,511Bが中実である場合について説明した。そのため、上記第一乃至第四実施形態の当接取付部511A,511Bは、衝突時の衝撃を軽減するようには構成されていなかったが、これに限らず、例えば、当接取付部511A,511Bは衝突時の衝撃を軽減するように構成されていてもよい。具体的に、
図6に示すように、当接取付部511は中空に構成され、当接取付部511内における取付端面516と当接本体510との間には、隣接方向Xで対向する一対の対向部513と、隣接方向Xに延びて、一対の対向部513が備えるガイドレールに沿って移動方向Yで移動可能な衝撃駆動部512とを備え、当接本体510と衝撃駆動部512との間及び取付端面516と衝撃駆動部512との間に弾性部材514,515とが配置されていてもよい。このように構成することにより、当接本体510から伝わった衝突時の衝撃により、衝撃駆動部512が弾性部材514,515同士の間を動くことで、衝突時の衝撃が弾性部材514,515の弾性及び衝撃駆動部512の移動方向Yでの移動に用いられる。よって、当接取付部511は、衝突時の衝撃を軽減し、結果的に乗りかご3に伝わる衝撃を減らすことができる。
【0083】
上記第一乃至第三実施形態では、同一構成の2つの接続部52が当接部51A,51Bを接続している場合について説明したが、これに限らず、例えば、1つの接続部52のみによって当接部51A,51Bを接続していてもよい。
【0084】
上記第一乃至第三実施形態では、2つの接続部52が同一に構成されていたが、例えば、一方の接続部52が第一実施形態の態様で構成され、他方の接続部52が第三実施形態の態様で構成されていてもよい。
【0085】
上記第一乃至第四実施形態では、乗りかご結合部45に溝状の軌道部46が設けられ、乗りかご本体30の背面に軌道走行部31が備わっている場合について説明したが、これに限らず、例えば、乗りかご本体30の背面に溝状の軌道部が設けられ、乗りかご結合部45の前面側垂直面に軌道走行部が設けられており、軌道部と軌道走行部とが係合することで、乗りかご3と昇降駆動装置4とが結合していてもよい。この場合、例えば、軌道部にガイドローラが設けられていてもよい。また、このガイドローラは、軌道部の上方に向いた面及び下方に向いた面それぞれから露出し、軌道走行部の下方及び上方に接触する。さらに、このガイドローラは、エレベータ本体2が昇降方向で振動した際に、軌道部の内部に退避することで衝撃を緩和するように構成されていることが考えられる。
【0086】
上記第一乃至第四実施形態ではガイドローラ32としての第二緩衝部が、軌道走行部31から露出した状態から移動方向Yで軌道走行部31に退避することで、昇降駆動装置4から乗りかご3に伝わる移動方向Yの振動を緩和する場合について説明したが、これに限らず、例えば、第二緩衝部は、昇降駆動装置4から乗りかご3に伝わる前後方向Zの振動を緩和するように構成されていてもよい。即ち、第二緩衝部は、昇降駆動装置4から乗りかご3に伝わる衝撃を緩衝するように構成されていればよい。
【0087】
上記第一乃至第四実施形態では、昇降駆動装置4は、移動方向Yにおいて、乗りかご3よりも長く構成され、少なくとも一部が移動方向Yで乗りかご3よりも一方側及び他方側に配置されている場合について説明したが、これに限らず、例えば、昇降駆動装置4は、移動方向Yにおいて、乗りかご3と略同一又は乗りかご3よりも短く構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1:移動装置、2:エレベータ本体、3:乗りかご、30:乗りかご本体、31:軌道走行部、32:ガイドローラ(第二緩衝部)、4:昇降駆動装置、40:昇降本体、41:一対の梁部、410:レール溝、42:一方連結部、43:他方連結部、44:中央連結部、45:乗りかご結合部、46:軌道部、47:吊ロープ、5:第一緩衝部、50:緩衝本体、51A:当接部、510A:当接本体、511B:当接取付部、52:接続部、520A:一方衝撃吸収部