(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145987
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】糸巻取機及び糸巻取方法
(51)【国際特許分類】
B65H 67/08 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
B65H67/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052936
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】澤田 晴稔
【テーマコード(参考)】
3F112
【Fターム(参考)】
3F112AA08
3F112CA03
3F112JA08
3F112JB01
(57)【要約】
【課題】オペレータの補助により、糸の巻取りを開始する際において、オペレータの手間を軽減可能な糸巻取機を提供する。
【解決手段】紡績機は、糸貯留ローラ51と、巻取装置25と、捕捉装置24と、ユニット制御部と、を備える。糸貯留ローラ51は、紡績装置22より糸走行方向の下流に配置され、糸5を外周面に巻き付けて一時的に貯留する。巻取装置25は、紡績装置22が供給した糸5をボビンに巻き取ってパッケージ7を形成する。捕捉装置24は、糸走行方向において糸貯留ローラ51と巻取装置25の間の位置であって、かつ、糸貯留ローラ51から巻取装置25までの糸道にある糸5を吸引することにより捕捉可能な位置に配置されている。ユニット制御部は、ボビンにバンチ巻きを形成し始める前において、糸貯留ローラ51が糸5を貯留した状態で、糸貯留ローラ51に貯留されている糸5の下流側糸端を捕捉装置24に捕捉させる糸端準備処理を行う。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を供給するための給糸部と、
前記給糸部より糸走行方向の下流に配置され、糸を外周面に巻き付けて一時的に貯留する糸貯留ローラと、
前記給糸部が供給した糸をボビンに巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、
糸走行方向において前記糸貯留ローラと前記巻取装置の間の位置であって、かつ、前記糸貯留ローラから前記巻取装置までの糸道にある糸を吸引することにより捕捉可能な位置に配置されている捕捉装置と、
前記ボビンにバンチ巻きを形成し始める前において、前記糸貯留ローラが糸を貯留した状態で、当該糸貯留ローラに貯留されている糸の下流側糸端を前記捕捉装置に捕捉させる糸端準備処理を行う制御部と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、前記パッケージが満巻になった後であって、かつ、前記ボビンにバンチ巻きを形成し始める前に前記糸端準備処理を行うことを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸巻取機であって、
前記給糸部は、空気紡績を行って糸を供給する紡績装置であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項3に記載の糸巻取機であって、
前記給糸部側の糸と前記パッケージ側の糸とを糸継ぎする糸継装置と、
前記給糸部側の糸を捕捉して前記糸継装置に案内する第2捕捉装置と、
を備え、
前記捕捉装置は、前記パッケージ側の糸を捕捉する第1捕捉装置であり、
前記第1捕捉装置が前記パッケージ側の糸を捕捉している状態において、前記糸継装置は当該糸の一部に対向することを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、
前記パッケージが満巻になった場合に、当該パッケージに繋がる糸を最後まで当該パッケージに巻き取らせ、
前記給糸部に糸出し紡績を行わせ、
前記糸出し紡績により供給された糸を前記糸貯留ローラに貯留させ、
前記糸貯留ローラから解舒された糸を前記捕捉装置に捕捉させることを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、
前記パッケージが満巻になった場合に、前記糸貯留ローラと前記パッケージの間で糸が繋がっている状態で前記巻取装置を停止させ、
前記糸貯留ローラと前記パッケージの間で繋がっている糸が切断された後に、当該切断された糸のうち、前記糸貯留ローラに貯留されている糸の下流側糸端を前記捕捉装置に捕捉させることを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項6に記載の糸巻取機であって、
前記糸貯留ローラと前記パッケージの間で繋がっている糸を切断する切断装置を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記糸端準備処理が完了し、前記巻取装置から満巻の前記パッケージが排出され、前記巻取装置に新たな前記ボビンが供給された後において、
前記制御部は、
前記糸貯留ローラに貯留された糸を用いて、新たな前記ボビンにバンチ巻きを形成させ、
前記糸貯留ローラから解舒された糸を前記捕捉装置に捕捉させ、
前記捕捉装置が糸を捕捉したタイミングにおいて、新たな前記ボビンへの糸の巻取りを停止させることを特徴とする糸巻取機。
【請求項9】
請求項8に記載の糸巻取機であって、
新たな前記ボビンにバンチ巻きを形成させた後において、前記制御部は、前記糸貯留ローラからの糸を前記巻取装置によりトラバースさせながら当該ボビンに巻き取らせることを特徴とする糸巻取機。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の糸巻取機であって、
前記糸貯留ローラに貯留された糸を検出する糸検出センサを備え、
前記糸検出センサの検出結果に基づいて、前記捕捉装置に吸引流を発生させることを特徴とする糸巻取機。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記給糸部、前記糸貯留ローラ、前記捕捉装置、及び前記巻取装置をそれぞれが備える複数の巻取ユニットと、
複数の前記巻取ユニットに対して走行可能であり、満巻になった前記パッケージを排出するとともに新たな前記ボビンを前記巻取装置に供給する玉揚台車と、
複数の前記巻取ユニットに対して走行可能であり、前記給糸部側の糸と前記パッケージ側の糸とを糸継ぎする糸継台車と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項12】
請求項11に記載の糸巻取機であって、
前記玉揚台車の設置数が1であり、
前記糸継台車の設置数が2以上であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の糸巻取機であって、
前記糸端準備処理を行うか否かを前記巻取ユニット毎に設定可能である設定部を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項14】
糸を供給するための給糸部と、
前記給糸部より糸走行方向の下流に配置され、糸を外周面に巻き付けて一時的に貯留する糸貯留ローラと、
前記給糸部が供給した糸をボビンに巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、
糸走行方向において前記糸貯留ローラと前記巻取装置の間の位置であって、かつ、前記糸貯留ローラから前記巻取装置までの糸道にある糸を吸引することにより捕捉可能な位置に配置されている捕捉装置と、
を備える糸巻取機に対して、
前記ボビンにバンチ巻きを形成し始める前において、前記糸貯留ローラが糸を貯留した状態で、当該糸貯留ローラに貯留されている糸の下流側糸端を前記捕捉装置に捕捉させる糸端準備処理を行うことを特徴とする糸巻取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、糸を吸引して捕捉する捕捉装置を備える糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、巻取ユニットと、玉揚台車と、を備える糸巻取機を開示する。巻取ユニットは、糸を巻き取ってパッケージを形成する。玉揚台車は、巻取ユニットに対して走行可能である。玉揚台車は、満巻になったパッケージを巻取ユニットから取り外し、新たなボビンを巻取ユニットに供給する。その後、巻取ユニットは、新たなボビンに対して糸を巻き取ってパッケージを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
糸巻取機では、満巻のパッケージが発生する頻度が高い場合、玉揚台車の処理速度を超えることがある。その結果、満巻になったパッケージを排出できずに待機する巻取ユニットが存在するようになるため、作業効率が低下することがある。しかし、特許文献1には、玉揚台車の作業を補助することについて記載されていない。また、オペレータが手作業でパッケージの取外し又は新たなボビンの供給を行うことは可能であるが、オペレータの手間が増大する。従って、これらの行為に関するオペレータの手間を軽減可能な構成の糸巻取機が望まれていた。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、オペレータの補助により糸の巻取りを開始する際において、オペレータの手間を軽減可能な糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、糸巻取機は、給糸部と、糸貯留ローラと、巻取装置と、捕捉装置と、制御部と、を備える。前記給糸部は、糸を供給する。前記糸貯留ローラは、前記給糸部より糸走行方向の下流に配置され、糸を外周面に巻き付けて一時的に貯留する。前記巻取装置は、前記給糸部が供給した糸をボビンに巻き取ってパッケージを形成する。前記捕捉装置は、糸走行方向において前記糸貯留ローラと前記巻取装置の間の位置であって、かつ、前記糸貯留ローラから前記巻取装置までの糸道にある糸を吸引することにより捕捉可能な位置に配置されている。前記制御部は、前記ボビンにバンチ巻きを形成し始める前において、前記糸貯留ローラが糸を貯留した状態で、当該糸貯留ローラに貯留されている糸の下流側糸端を前記捕捉装置に捕捉させる糸端準備処理を行う。
【0008】
これにより、バンチ巻きを形成し始める前において、糸貯留ローラに貯留されている糸の下流側糸端が捕捉装置に捕捉された状態となる。そのため、オペレータの補助により糸の巻取りを開始する際において、オペレータが糸端を探す手間を軽減できる。
【0009】
前記の糸巻取機においては、前記制御部は、前記パッケージが満巻になった後であって、かつ、前記ボビンにバンチ巻きを形成し始める前に前記糸端準備処理を行うことが好ましい。
【0010】
これにより、適切なタイミングで糸端準備処理を行うことができる。
【0011】
前記の糸巻取機においては、前記給糸部は、空気紡績を行って糸を供給する紡績装置であることが好ましい。
【0012】
これにより、オペレータの補助により紡績機における糸の巻取りを開始する際において、オペレータが糸端を探す手間を軽減できる。
【0013】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、糸継装置と、第2捕捉装置と、を備える。前記糸継装置は、前記給糸部側の糸と前記パッケージ側の糸とを糸継ぎする。前記第2捕捉装置は、前記給糸部側の糸を捕捉して前記糸継装置に案内する。前記捕捉装置は、前記パッケージ側の糸を捕捉する第1捕捉装置である。前記第1捕捉装置が前記パッケージ側の糸を捕捉している状態において、前記糸継装置は当該糸の一部に対向する。
【0014】
これにより、バンチ巻きのために糸端を保持しておく装置と、糸継装置による糸継ぎのためにパッケージ側の糸を捕捉しておく装置と、を同じ装置により実現することができるので、糸巻取機の構成を単純化できる。
【0015】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記制御部は、前記パッケージが満巻になった場合に、当該パッケージに繋がる糸を最後まで当該パッケージに巻き取らせる。前記制御部は、前記給糸部に糸出し紡績を行わせる。前記制御部は、前記糸出し紡績により供給された糸を前記糸貯留ローラに貯留させる。前記制御部は、前記糸貯留ローラから解舒された糸を前記捕捉装置に捕捉させる。
【0016】
これにより、パッケージに繋がる糸を最後までパッケージに巻き取らせるため、巻取装置に関する制御を単純にすることができる。
【0017】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記制御部は、前記パッケージが満巻になった場合に、前記糸貯留ローラと前記パッケージの間で糸が繋がっている状態で前記巻取装置を停止させる。前記制御部は、前記糸貯留ローラと前記パッケージの間で繋がっている糸が切断された後に当該切断された糸のうち、前記糸貯留ローラに貯留されている糸の下流側糸端を前記捕捉装置に捕捉させる。
【0018】
これにより、糸端準備処理のために新たな紡績を行うことなく、糸端を捕捉装置に捕捉させることができる。
【0019】
前記の糸巻取機においては、前記糸貯留ローラと前記パッケージの間で繋がっている糸を切断する切断装置を備えることが好ましい。
【0020】
これにより、オペレータが手動で糸を切断する場合と比較して、オペレータの手間を軽減できる。
【0021】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸端準備処理が完了し、前記巻取装置から満巻の前記パッケージが排出され、前記巻取装置に新たな前記ボビンが供給された後において、前記制御部は、前記糸貯留ローラに貯留された糸を用いて、新たな前記ボビンにバンチ巻きを形成させる。前記制御部は、前記糸貯留ローラから解舒された糸を前記捕捉装置に捕捉させる。前記捕捉装置が糸を捕捉したタイミングにおいて、新たな前記ボビンへの糸の巻取りを停止させる。
【0022】
これにより、新たなボビンに対して糸を巻き取る作業の一部を糸巻取機で行うことができる。その結果、オペレータの手間を軽減できる。
【0023】
前記の糸巻取機においては、新たな前記ボビンにバンチ巻きを形成させた後において、前記制御部は、前記糸貯留ローラからの糸を巻取装置によりトラバースさせながら当該ボビンに巻き取らせることが好ましい。
【0024】
これにより、ボビンに巻き取られた糸を解舒する場合において、バンチ巻きされた糸ではなく、トラバースさせられながらボビンに巻き取られた糸を解舒することができる。従って、バンチ巻きが解舒されてしまうことを回避できる。
【0025】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、前記糸貯留ローラに貯留された糸を検出する糸検出センサを備える。前記糸検出センサの検出結果に基づいて、前記捕捉装置に吸引流を発生させる。
【0026】
これにより、糸貯留ローラから解舒された糸を適切なタイミングで捕捉装置が捕捉できる。
【0027】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、複数の巻取ユニットと、玉揚台車と、糸継台車と、を備える。前記巻取ユニットは、前記給糸部、前記糸貯留ローラ、前記捕捉装置、及び前記巻取装置をそれぞれ備える。前記玉揚台車は、複数の前記巻取ユニットに対して走行可能であり、満巻になった前記パッケージを排出するとともに新たな前記ボビンを前記巻取装置に供給する。前記糸継台車は、複数の前記巻取ユニットに対して走行可能であり、前記給糸部側の糸と前記パッケージ側の糸とを糸継ぎする。
【0028】
これにより、例えば、巻取ユニットにおいて満巻のパッケージが発生する頻度が、玉揚台車の処理速度を超えた場合であっても、糸端準備処理を行うことにより、玉揚台車の処理を補助できる。その結果、糸巻取機の全体の作業効率を向上できる。
【0029】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記玉揚台車の設置数が1である。前記糸継台車の設置数が2以上である。
【0030】
玉揚台車の設置数が少ないため、巻取ユニットにおいて満巻のパッケージが発生する頻度が、玉揚台車の処理速度を超える事態が発生し易い。この点、本発明では糸端準備処理を行うことにより玉揚台車の処理の一部を省略できる。
【0031】
前記の糸巻取機においては、前記糸端準備処理を行うか否かを前記巻取ユニット毎に設定可能である設定部を備えることが好ましい。
【0032】
これにより、各巻取ユニットの条件に合わせて糸端準備処理を行う巻取ユニットを設定することにより、糸巻取機の全体の作業効率を向上できる。
【0033】
本発明の第2の観点によれば、糸巻取機に対して、以下の処理を行う糸巻取方法が提供される。即ち、糸巻取機は、給糸部と、糸貯留ローラと、巻取装置と、捕捉装置と、を備える。前記給糸部は、糸を供給する。前記糸貯留ローラは、前記給糸部より糸走行方向の下流に配置され、糸を外周面に巻き付けて一時的に貯留する。前記巻取装置は、前記給糸部が供給した糸をボビンに巻き取ってパッケージを形成する。前記捕捉装置は、糸走行方向において前記糸貯留ローラと前記巻取装置の間の位置であって、かつ、前記糸貯留ローラから前記巻取装置までの糸道にある糸を吸引することにより捕捉可能な位置に配置されている。前記ボビンにバンチ巻きを形成し始める前において、前記糸貯留ローラが糸を貯留した状態で、当該糸貯留ローラに貯留されている糸の下流側糸端を前記捕捉装置に捕捉させる糸端準備処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態に係る紡績機の全体的な構成を示す正面図。
【
図2】紡績ユニット、糸継台車、及び玉揚台車の側面図。
【
図3】第1の糸端準備処理に関する処理を示すフローチャート。
【
図4】パッケージが満巻になって糸を最後まで巻き取った状態の紡績ユニットの側面図。
【
図5】紡績装置が生成した糸が糸貯留ローラに巻かれた状態の紡績ユニットの側面図。
【
図6】糸貯留ローラに貯留されている糸の下流側糸端を捕捉装置が捕捉して糸端準備処理が完了した状態の紡績ユニットの側面図。
【
図7】第2の糸端準備処理に関する処理を示すフローチャート。
【
図8】パッケージが満巻になった後、糸貯留装置とパッケージの間で糸が繋がっている状態で糸の巻取りを停止した状態の紡績ユニットの側面図。
【
図9】糸貯留装置とパッケージの間で繋がっている糸を切断した後の状態の紡績ユニットの側面図。
【
図10】切断した糸を捕捉装置が捕捉して糸端準備処理が完了した状態の紡績ユニットの側面図。
【
図11】糸端準備処理の後においてオペレータ及び紡績機により巻取りが再開されるまでの処理を示す図。
【
図12】糸貯留ローラに貯留された糸を用いてバンチ巻きが行われる状態の紡績ユニットの側面図。
【
図13】パッケージ側の糸が捕捉装置に捕捉された状態の紡績ユニットの側面図。
【
図14】給糸部側の糸とパッケージ側の糸を糸継ぎする状態の紡績ユニットの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の一実施形態に係る紡績機(糸巻取機)1について、図面を参照して説明する。以下の説明において、「上流側」及び「下流側」とは、それぞれ、糸5、スライバ4a又は繊維束4bの走行方向における上流側及び下流側を意味する。
【0036】
図1に示すように、紡績機1は、ブロアボックス111と、制御ボックス112と、複数の紡績ユニット(巻取ユニット)2と、糸継台車80と、玉揚台車90と、を備える。複数の紡績ユニット2は、所定の方向(並列方向)に並べて配置されている。それぞれの紡績ユニット2は、紡績を行って糸5を生成してパッケージ7を形成する。
【0037】
ブロアボックス111内には、負圧源として機能するブロア113等が配置されている。制御ボックス112には、中央制御装置(設定部)115と、表示部116と、操作部117と、が配置されている。
【0038】
中央制御装置115は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。中央制御装置115は、各紡績ユニット2が備えるユニット制御部15(
図2、制御部)に、図略の信号線を介して接続されている。本実施形態では、それぞれの紡績ユニット2がユニット制御部15を備えているが、所定数(例えば、2つ又は4つ)の紡績ユニット2が1つのユニット制御部15を共用してもよい。中央制御装置115及びユニット制御部15は、それぞれ、図示しないCPU、ROM、RAM等を有する公知のコンピュータとして構成されている。
【0039】
表示部116は、紡績ユニット2に対する設定内容、及び/又は、各紡績ユニット2の状態に関する情報等を表示することができる。操作部117は、オペレータが紡績機1の設定を行うために、及び/又は、表示部116に表示する情報の選択を行うために操作される。表示部116と操作部117は、タッチパネルディスプレイにより構成されていてもよい。
【0040】
図2に示すように、各紡績ユニット2は、ドラフト装置21と、紡績装置22と、糸貯留装置23と、捕捉装置(第1捕捉装置)24と、巻取装置25と、を備える。これらの装置は、糸走行方向において上流側から下流側へ向かって順に配置されている。
【0041】
糸継台車80及び玉揚台車90は、各紡績ユニット2に対して移動可能に設けられている。糸継台車80は、複数の紡績ユニット2に対して1つ備えられている。本実施形態の糸継台車80の設置数は2である。ただし、糸継台車80の設置数は1であってもよく、3以上であってもよい。糸継台車80の設置数は、紡績ユニット2の設置数以下であり、好ましくは、紡績ユニット2の設置数の半分以下である。本実施形態の玉揚台車90の設置数は1であり、糸継台車80の設置数よりも少ない。玉揚台車90の設置数は2以上であってもよい。玉揚台車90の設置数は、紡績ユニット2の設置数よりも少なく、好ましくは紡績ユニット2の設置数の半分以下であり、且つ、糸継台車80の設置数よりも少ない。また、糸継台車80は、後述するように、糸継装置82と、サクションパイプ(第2捕捉装置)83と、サクションマウス84と、を備える。
【0042】
ドラフト装置21は、紡績ユニット2の上部に設けられている。ドラフト装置21は、複数のドラフトローラ対を備える。それぞれのドラフトローラ対は、2つのドラフトローラによって構成される。
【0043】
具体的には、ドラフト装置21は、4つのドラフトローラ対を備える。4つのドラフトローラ対は、上流側から下流側へ向かって順に配置された、バックローラ対41、サードローラ対42、ミドルローラ対43、及びフロントローラ対44である。ミドルローラ対43の各ドラフトローラには、エプロンベルト45が設けられている。
【0044】
4つのドラフトローラ対のそれぞれは、互いに対向する駆動ローラ及び従動ローラを有している。4つのドラフトローラ対に関して、それぞれの駆動ローラに、図略のモータ等の駆動部が設けられている。それぞれの駆動ローラは、駆動部によって当該駆動ローラの軸線を中心に回転駆動される。本実施形態では、紡績ユニット2毎に駆動ローラの駆動部が設けられる。そのため、ある紡績ユニット2のドラフトローラ対は、他の紡績ユニット2のドラフトローラ対に対して独立して動作可能である。なお、複数の紡績ユニット2のドラフトローラ対を共通の駆動部により駆動してもよい。例えば、複数の紡績ユニット2のフロントローラ対44の駆動ローラが共通の駆動部により駆動されてもよい。
【0045】
ドラフト装置21は、図略のスライバ供給部から供給されるスライバ4aを、各ドラフトローラ対の駆動ローラと従動ローラとの間で挟み込んで搬送することによって、所定の繊維量又は太さとなるまで引き伸ばして(ドラフトして)、繊維束4bを生成する。ドラフト装置21により生成された繊維束4bは、紡績装置22に供給される。
【0046】
紡績装置22は、本実施形態では空気紡績装置である。紡績装置22は、ドラフト装置21により生成された繊維束4bに旋回空気流を作用させることにより、撚りを加えて糸5を生成する。紡績装置22は、ドラフト装置21よりも下流側に配置されている。
【0047】
紡績装置22は、生成した糸5を下流側に供給する。紡績装置22は、糸5を供給しているため給糸部に相当する。紡績装置22により生成された糸5は、紡績装置22から巻取装置25に向かって走行し、巻取装置25によって巻き取られる。紡績装置22と巻取装置25との間には、糸5が走行する糸道が形成される。
【0048】
糸貯留装置23は、紡績装置22により生成された糸5を紡績装置22から引き出して一時的に貯留する。糸貯留装置23は、紡績装置22よりも下流側であって、巻取装置25よりも上流側に配置されている。
【0049】
図4に示すように、糸貯留装置23は、糸貯留ローラ51と、電動モータ52と、糸掛け部材53と、糸外し部材55と、貯留量センサ(糸検出センサ)56と、を備える。
【0050】
糸貯留ローラ51は、電動モータ52により回転駆動される。糸貯留ローラ51は、その外周面に糸5を巻き付けて一時的に貯留する。糸貯留ローラ51は、外周面に糸5を巻き付けた状態で所定の回転速度で回転することによって、紡績装置22から糸5を所定の速度で引き出すことができる。
【0051】
糸掛け部材53は、糸5を引っ掛けることが可能である。糸掛け部材53は糸貯留ローラ51に対して相対回転可能に支持されている。糸掛け部材53には、例えば磁気的手段等からなるトルク発生手段により、糸貯留ローラ51に対し相対回転するのに抗するトルク(抵抗トルク)が掛かる。これにより、糸5に掛かる張力がこの抵抗トルクに打ち勝つほどに強ければ、糸掛け部材53は糸貯留ローラ51と独立に回転して、糸5を前記糸貯留ローラ51から解舒する。糸5に掛かる張力が抵抗トルクよりも弱ければ、糸掛け部材53は糸貯留ローラ51と一体的に回転し、糸5を前記糸貯留ローラ51に巻き付ける。なお、糸掛け部材53を回転駆動する駆動部を設けてもよい。
【0052】
糸外し部材55は、糸貯留ローラ51の近傍に配置されている。糸外し部材55は、糸掛け部材53から糸5を外す糸外し動作を行うことができる。糸外し部材55は
図1に示すようにL字状の部材として構成され、その端部が回転可能に支持されている。
【0053】
糸外し部材55は、退避位置と糸外し位置との間で移動可能に設けられている。糸外し部材55は、退避位置から糸外し位置に移動する過程において、糸貯留ローラ51よりも下流側の空間を通過する。このとき、糸掛け部材53に引っ掛かっている糸5があれば、当該糸5に糸外し部材55が作用して、この糸5が糸掛け部材53から外れる。糸掛け部材53から糸5が外れることにより、糸貯留ローラ51に巻かれた糸5は、糸貯留ローラ51から解舒される。糸外し部材55は当該糸外し動作を行った後、適切なタイミングで退避位置(
図2等に示される状態)へ戻る。これにより、糸掛け部材53に糸5が再び掛けられる。あるいは、糸外し部材55が次の糸外し動作を行うことができるようになる。例えば、糸出し紡績により生成した糸5を糸貯留ローラ51から解舒してサクションパイプ83により吸引除去する場合、糸外し部材55を退避位置から糸外し位置へと移動させ、糸5を糸掛け部材53から外す。
【0054】
糸外し部材55は各紡績ユニット2に設けられており、それぞれの糸外し部材55に対して単独の駆動部(モータ又はエアシリンダ等)が設けられている。糸外し部材55の駆動部は、ユニット制御部(制御部)15によって制御される。従って、糸外し部材55は、他の紡績ユニット2の糸外し部材55に対して独立して動作することができる。
【0055】
貯留量センサ56は、糸貯留ローラ51の糸貯留量を検知する。貯留量センサ56は、糸貯留ローラ51の外周面の適宜の位置に向かうように配置されている。貯留量センサ56は、この位置(検出位置)における糸5の有無を検出する。貯留量センサ56は、検出位置における糸5の有無を示す検出信号をユニット制御部15へ送信する。
【0056】
糸貯留装置23は、糸貯留ローラ51の外周面に糸5を一時的に貯留することができるので、糸5の一種のバッファとして機能する。これにより、紡績装置22における紡績速度と、巻取速度(パッケージ7に巻き取られる糸5の走行速度)と、が何らかの理由により一致しないことによる不具合(例えば、糸5の弛み等)を解消することができる。
【0057】
紡績装置22と糸貯留装置23との間には、糸監視装置47が設けられている。糸監視装置47は、糸貯留装置23よりも上流側(紡績装置22側)で糸5の状態を検知する。紡績装置22により生成された糸5は、糸貯留装置23により貯留される前に糸監視装置47を通過する。
【0058】
糸監視装置47は、走行する糸5の品質を光センサによって監視し、糸5に含まれる糸欠点を検出する。糸欠点としては、例えば、糸5の太さの異常、及び/又は、糸5に含まれる異物等がある。糸監視装置47は、糸5の糸欠点を検出した場合、ユニット制御部15へ糸欠点検出信号を送信する。糸監視装置47は、光センサの代わりに、例えば静電容量式のセンサを用いて糸5の品質を監視してもよい。糸監視装置47は、糸5のテンションの異常を糸欠点として検出するように構成されていてもよい。
【0059】
ユニット制御部15は、糸監視装置47の検出結果に基づいて、糸5を切断するか否かを判定する。糸5の切断は、ユニット制御部15が、紡績装置22による紡績を停止するように制御することにより実現される。糸5の切断は、ドラフト装置21によるドラフト(例えば、バックローラ対41の回転)を停止することによって実現されてもよい。ドラフト装置21から紡績装置22への繊維束4bの供給が停止される場合でも、紡績装置22による紡績は実質的に中断されることになる。紡績ユニット2にカッタを備え、ユニット制御部15がカッタにより糸5の切断を行ってもよい。カッタによって糸5が切断される場合でも、ユニット制御部15は、紡績装置22による紡績が実質的に中断するように制御する。
【0060】
捕捉装置24は、紡績装置22と巻取装置25の間で糸5が分断された場合、又は、後述の糸端準備処理を行う場合に、糸5を吸引する。捕捉装置24は、糸貯留装置23よりも下流であって、巻取装置25よりも上流に配置されている。更に、捕捉装置24は、糸貯留装置23から巻取装置25までの糸道にある糸5を吸引することにより捕捉可能な位置に配置されている。糸5の走行方向において、捕捉装置24の吸引口62よりも上流側と下流側の各位置には、糸ガイドが1つずつ配置されている。捕捉装置24と下流側の糸ガイドの間には、ワキシング装置が設けられていてもよい。ワキシング装置にはワックスが搭載されていてもよいし、ワックスが搭載されていなくてもよい。これに対し、サクションマウス84は、待機状態では、糸貯留装置23から巻取装置25までの糸道から離れた位置に配置されている。本実施形態では、捕捉装置24は糸道に対する距離が変化しないように固定されているが、多少移動可能であってもよい。例えば、捕捉装置24は、糸道に対して少しだけ接近及び退避する方向に移動可能であってもよい。言い換えると、捕捉装置24の移動可能長さは、サクションマウス84の移動可能長さよりは短い。後述の糸継台車80が当該紡績ユニット2に対して作業を行うとき、捕捉装置24は、糸継台車80が備える糸継装置82よりも上流側に位置する。捕捉装置24は、糸5を、糸継装置82よりも上流側で捕捉することができる。
【0061】
糸5の分断が発生した場合、ユニット制御部15は、捕捉装置24の使用/不使用を決定し、当該決定に基づいて捕捉装置24を適宜制御する。捕捉装置24及びサクションマウス84は、パッケージ7側の糸5の捕捉のために択一的に選択されて用いられる。従って、捕捉装置24の使用はサクションマウス84の不使用を意味し、捕捉装置24の不使用はサクションマウス84の使用を意味する。
【0062】
図4に示すように、捕捉装置24は、吸引管61と、糸捕捉検知センサ63と、を備える。吸引管61の先端(長手方向一端)に吸引口62が形成されている。吸引口62は、紡績ユニット2に形成される糸道に向かって開口している。捕捉装置24の吸引口62は、捕捉のための糸道に向かって開口するように設けられていてもよい。吸引管61は、配管等を介して、ブロア113等の負圧源に接続されている。これにより、吸引口62(吸引管61内)に吸引流(吸引力)を発生させることができる。捕捉装置24に図略のシャッターを設け、必要な場合にシャッターを開くことによって、吸引口62に吸引流を発生させるようにしてもよい。糸捕捉検知センサ63は、本実施形態では捕捉装置24の吸引口62のすぐ下流側に配置されている。糸捕捉検知センサ63は、捕捉装置24による糸5の捕捉の成否を検出する。
【0063】
巻取装置25は、糸貯留装置23を通過した糸5を巻き取ってパッケージ7を形成する。巻取装置25は、糸貯留装置23よりも下流側に配置されている。
【0064】
巻取装置25は、クレードル装置71と、パッケージ回転装置72と、トラバース装置73と、を備える。
【0065】
クレードル装置71は、1対のクレードルアーム74を備える。クレードル装置71は、糸5を巻き取るためのボビン7a(ひいてはパッケージ7)を、1対のクレードルアーム74の間で回転可能に支持することができる。クレードルアーム74は、支軸75を中心として回転することができる。
【0066】
パッケージ回転装置72は、巻取ドラム76と、ドラム駆動モータ77と、を備える。巻取ドラム76は、ボビン7a又はパッケージ7の外周面に接触することができる。ドラム駆動モータ77の出力軸は、適宜の手段により巻取ドラム76に連結されている。ドラム駆動モータ77によって巻取ドラム76を駆動することで、パッケージ7を巻取方向に回転させることができる。
【0067】
トラバース装置73は、トラバースガイド78と、トラバース駆動モータ79と、を備える。トラバースガイド78は、パッケージ7に巻き取られる糸5を引っ掛けることができる。トラバースガイド78は、パッケージ7の巻幅方向に往復動することができる。トラバース駆動モータ79の出力軸は、適宜の手段によりトラバースガイド78に連結されている。トラバースガイド78が糸5を保持した状態で、トラバース駆動モータ79によってトラバースガイド78を往復駆動することにより、パッケージ7に巻き取られる糸5をトラバースすることができる。
【0068】
巻取装置25は、トラバース装置73のトラバースガイド78を往復動させながら、パッケージ回転装置72の巻取ドラム76を回転させる。これにより、巻取装置25は、糸5をトラバースしつつ、糸5をパッケージ7に巻き取る。
【0069】
本実施形態において、各紡績ユニット2の単一の巻取ドラム76に対して、単一のドラム駆動モータ77が設けられている。また、各紡績ユニット2の単一のトラバースガイド78に対して、単一のトラバース駆動モータ79が設けられている。従って、巻取ドラム76及びトラバースガイド78は、他の紡績ユニット2の巻取ドラム76及びトラバースガイド78に対して独立して動作することができる。
【0070】
図1に示すように、紡績機1には、レール101が設けられている。レール101は、複数の紡績ユニット2が並ぶ方向に沿って延びるように配置されている。糸継台車80は、レール101の上を走行可能に構成されている。これにより、糸継台車80は、複数の紡績ユニット2に対して移動することができる。
【0071】
糸継台車80は、糸5の分断が発生した紡績ユニット2に対応する作業位置まで走行して、当該紡績ユニット2において糸継処理を行う。糸継台車80は、この糸継処理を、紡績ユニット2に備えられた捕捉装置24等と連携しながら、又は、当該糸継台車80が備える装置を用いて行う。
【0072】
糸継台車80は、走行車輪81と、糸継装置82と、サクションパイプ83と、サクションマウス84と、糸継制御部85と、を備える。
【0073】
走行車輪81は、図略の駆動手段(例えばモータ)によって回転駆動可能に構成されている。走行車輪81が駆動されることによって、糸継台車80が複数の紡績ユニット2のそれぞれに対して走行することができる。
【0074】
サクションパイプ83は、パイプ状の部分を有する部材である。サクションパイプ83の先端には開口が形成されている。サクションパイプ83は適宜の負圧源(例えばブロア113)に接続されている。従って、サクションパイプ83の先端の開口に吸引流を発生させることができる。サクションパイプ83は回転可能に支持されている。サクションパイプ83が回転することにより、その先端の開口を、紡績装置22に対して接近させて、給糸部側の糸5(紡績装置22側の糸5)を捕捉することができる。
【0075】
サクションマウス84は、パイプ状の部分を有する部材である。サクションマウス84の先端には開口が形成されている。サクションマウス84はブロア113等の負圧源に接続されている。従って、サクションマウス84の先端の開口に吸引流を発生させることができる。サクションマウス84は回転可能に支持されている。サクションマウス84が回転することにより、その先端の開口を、巻取装置25に対して接近させて、パッケージ7側の糸5を捕捉することができる。
【0076】
糸継装置82は、
図2及び
図4に示すように、糸継部82aと、カッタ82b,82cと、を備える。糸継装置82は、図略の糸寄せレバーを動作させることにより、給糸部側の糸5と、パッケージ7側の糸5と、を取り込むことができる。カッタ82bは、パッケージ7側の糸5を、糸継部82aと、捕捉装置24又はサクションマウス84と、の間で切断する。カッタ82cは、給糸部側の糸5を、糸継部82aと、サクションパイプ83と、の間で切断する。糸継部82aは、給糸部側の糸5と、パッケージ7側の糸5と、の糸継ぎを行う。本実施形態において、糸継装置82は、旋回空気流により糸端同士を撚り合わせるスプライサ装置である。糸継装置82は、前記のスプライサ装置に限定せず、例えば機械式のノッタ等とすることもできる。
【0077】
糸継制御部85は、図示しないCPU、ROM、RAM等を有する公知のコンピュータとして構成されている。糸継制御部85は、糸継台車80が備える各部の動作を制御する。
【0078】
図1に示すように、紡績機1には、レール102が設けられている。レール102は、複数の紡績ユニット2が並ぶ方向に沿って延びるように配置されている。玉揚台車90は、レール102の上を走行可能に構成されている。これにより、玉揚台車90は、複数の紡績ユニット2に対して移動することができる。
【0079】
玉揚台車90は、パッケージ7が満巻になった紡績ユニット2まで走行する。満巻とは、パッケージ7が所定の径となった状態である。紡績ユニット2は、パッケージ7が満巻になった場合、巻取装置25による糸5の巻取りを停止する。紡績ユニット2は、紡績装置22による糸5の生成も停止してもよい。玉揚台車90は、該当する紡績ユニット2に対して玉揚処理及び巻取準備処理を行う。玉揚処理とは、満巻になったパッケージ7をクレードル装置71から取り外して排出する処理である。巻取準備処理とは、クレードル装置71に新たなボビン7a(糸5が巻かれていないボビン7a)を供給して、糸5の巻取りの準備(バンチ巻き等)を行う処理である。
【0080】
図1及び
図2に示すように、玉揚台車90は、走行車輪91と、クレードル操作アーム92と、支持部93と、糸吸引部94と、ボビン供給部95と、を備える。
【0081】
走行車輪91は、図略の駆動手段(例えばモータ)によって回転駆動可能に構成されている。走行車輪91が駆動されることによって、玉揚台車90が複数の紡績ユニット2のそれぞれに対して走行することができる。
【0082】
クレードル操作アーム92は、クレードル装置71を操作することにより、クレードル装置71がボビン7aを挟み込んで保持している状態を解除することができる。例えば、クレードル操作アーム92は、1対のクレードルアーム74のうち、一方のクレードルアーム74を他方のクレードルアーム74から離すことにより、クレードル装置71がボビン7aを挟み込んで保持している状態を解除する。これにより、クレードル装置71に保持されたパッケージ7を外すことができる。
【0083】
支持部93は、クレードル装置71から取り外されたパッケージ7を受け止めて、パッケージ7を支持した状態で下方に移動する。これにより、パッケージ7は、傾斜面96に沿って載置部97まで案内される。載置部97に載置されたパッケージ7は、ベルトコンベア等によりパッケージ回収部に向けて排出される。
【0084】
糸吸引部94は、紡績装置22に向かって延伸し、先端の吸引口に吸引空気流を発生させて紡績装置22から送出される糸5を捕捉した後に下方に移動する。この動作の前、後、若しくは同時に、ボビン供給部95は、玉揚台車90にストックされているボビン7aを把持した後に巻取装置25に向かって回動して、クレードル装置71へのボビン7aの供給を行う。その後、図略の糸案内機構及びバンチ巻き機構によって、糸吸引部94が捕捉した糸5が新たなボビン7aに巻き付けられて、巻取装置25によるパッケージ7の巻取りが開始される。なお、バンチ巻き機構は、巻取装置25により実現されてもよいし、玉揚台車90に設けられていてもよい。
【0085】
玉揚台車90の各部は、玉揚制御部98により制御されている。玉揚制御部98は、図示しないCPU、ROM、RAM等を有する公知のコンピュータとして構成されている。玉揚制御部98は、玉揚台車90が備える各部の動作を制御する。
【0086】
このように、玉揚台車90は、玉揚処理及び巻取準備処理を行うことができる。しかし、満巻のパッケージ7が発生する頻度が高い場合、玉揚台車90による玉揚処理及び巻取準備処理が追い付かず、処理待ち状態の紡績ユニット2が多く発生する可能性がある。例えば、太い糸5を巻き取ってパッケージ7を製造する場合又は、満巻径が小径であるパッケージ7を製造する場合は、ボビン7aへの糸5の巻き始めからパッケージ7が満巻になるまでの時間が短いため、玉揚台車90の処理が追い付かなくなる可能性がある。
【0087】
また、複数種類のパッケージ7を1つの紡績機1において製造する場合、異なる種類のパッケージ7同士が同じ経路(載置部97)へ排出されることになり、後で仕分けを行う必要が生じる。更には、1つ又は少数(例えば8つ)の紡績ユニット2により試験的にパッケージ7を製造する場合も、同じ理由により、後で仕分けを行う必要が生じる。なお、試験的にパッケージ7を製造する紡績ユニット2は、制御ボックス112の近くに配置されている紡績ユニット2であってもよい。
【0088】
オペレータが手作業で玉揚処理及び巻取準備処理を行うことができれば、上記の事態に対応できる。しかし、巻取準備処理は、パッケージ7にバンチ巻きを形成する処理等が含まれるため、オペレータが手作業で行うことは困難であるか又は手間が掛かる。この点、本実施形態の紡績機1は、玉揚台車90を用いることなく、紡績ユニット2、糸継台車80、及びオペレータが共同して、ボビン7aにバンチ巻きを形成することができる。以下、具体的な処理の流れを説明する。
【0089】
オペレータは、玉揚台車90を用いずに(言い換えればオペレータの補助により)バンチ巻きを形成する紡績ユニット2を予め指定できる。この紡績ユニット2を以下では、「オペレータ補助対象の紡績ユニット2」と称する。この指定は、例えば、オペレータが操作部117を操作して行う。これにより、中央制御装置115は、紡績ユニット2毎にオペレータ補助対象であるか否かを設定する。オペレータは、例えば、他とは種類が異なるパッケージ7を製造する紡績ユニット2を指定したり、試験的にパッケージ7を製造する紡績ユニット2を指定したりする。また、玉揚台車90の処理が追い付かないことが想定される場合、オペレータは、特定の紡績ユニット2(例えば、並列方向の端部の1又は複数の紡績ユニット2)を指定する。なお、オペレータが指定する構成に代えて、中央制御装置115が、オペレータ補助対象の紡績ユニット2を指定してもよい。
【0090】
糸5を巻き取ってパッケージ7を形成する巻取作業中において、ユニット制御部15は、紡績ユニット2のパッケージ7が満巻になったか否かを判定する(S101)。この判定は、例えば、パッケージ7の巻き太りに伴って回転するクレードルアーム74の回転角度に基づいて判定してもよいし、パッケージ7に巻き取った糸5の長さに基づいて判定してもよい。また、ユニット制御部15が複数の紡績ユニット2を管理する場合、ユニット制御部15は、それぞれの紡績ユニット2に対してステップS101以降の処理を行う。
【0091】
ユニット制御部15は、パッケージ7が満巻であると判定した場合、紡績装置22による紡績を停止する(S102)。次に、ユニット制御部15は、紡績ユニット2が、オペレータ補助対象の紡績ユニット2か否かを判定する(S103)。この判定は、上述したオペレータ又は中央制御装置115の指定に基づいて行われる。ユニット制御部15は、紡績ユニット2が、オペレータ補助対象の紡績ユニット2に該当しないと判定した場合、中央制御装置115を経由して玉揚台車90に玉揚処理及び巻取準備処理を行うように要求する(S104)。この場合、紡績装置22による紡績の停止で生成された糸端をパッケージ7に最後まで巻き取る。
【0092】
ユニット制御部15は、該当の紡績ユニット2が、オペレータ補助対象の紡績ユニット2であると判定した場合、糸端準備処理を行う。つまり、オペレータ補助対象として設定された紡績ユニット2は、言い換えれば、糸端準備処理を行う対象として設定された紡績ユニット2でもある。糸端準備処理とは、オペレータの補助を用いてバンチ巻きを形成するための準備の1つである。本明細書では、第1の糸端準備処理と、第2の糸端準備処理と、を説明する。第1の糸端準備処理及び第2の糸端準備処理は、何れか一方のみが選択的に行われる。糸端準備処理は、パッケージ7が満巻になった後であって、新たに供給されたボビン7aにバンチ巻きが形成される前に行われる。
【0093】
第1の糸端準備処理では、初めに、ユニット制御部15は、巻取装置25を制御して、糸5をパッケージ7に最後まで巻き取らせる(S105)。即ち、ステップS102において紡績を停止することにより、紡績装置22と糸貯留装置23を接続する糸5が切れ、糸貯留装置23よりも上流側に糸端が形成される。糸5を最後まで巻き取ることにより、当該糸端を含む糸5がパッケージ7に巻き取られる。
図4には、糸5を最後までパッケージ7に巻き取った状態が示されている。巻取装置25は、当該パッケージ7と巻取ドラム76が接触している状態を維持してもよい。あるいは、当該パッケージ7と巻取ドラム76が非接触状態となるように切り替えてもよい。
【0094】
次に、ユニット制御部15は、紡績装置22を制御して、糸出し紡績を行わせる(S106)。糸出し紡績とは、繊維束4bの繊維に旋回空気流を作用させて撚りを加えながら糸5を生成し、生成した糸5を下流側に送る紡績である。言い換えれば、糸出し紡績は、種糸を紡績装置22に挿通することなく、紡績装置22が単独で糸5を生成して送り出す紡績である。
【0095】
次に、ユニット制御部15は、サクションパイプ83及び糸貯留装置23を制御して、糸貯留ローラ51に糸5を貯留させる(S107)。具体的には、ユニット制御部15は、サクションパイプ83を回転させて、サクションパイプ83の吸引口を紡績装置22に近接させ、紡績装置22が送り出した糸5をサクションパイプ83に捕捉させる。その後、ユニット制御部15は、糸5を捕捉した状態でサクションパイプ83を待機位置に移動させ、その過程で糸5が糸掛け部材53に掛けられることにより、糸貯留ローラ51に糸5が貯留されるようになる。糸貯留ローラ51は、糸5が貯留され始める前には、停止状態から回転状態に切り替えられている。
図5には、糸貯留ローラ51に糸5が貯留され始めた状態が示されている。糸貯留ローラ51には、少なくともバンチ巻きに必要な長さ以上の糸5が貯留される。糸貯留ローラ51に必要な長さの糸5が貯留されると、ユニット制御部15は、糸貯留ローラ51の回転を停止させる。
【0096】
次に、糸継装置82のカッタ82bを動作させて、糸貯留ローラ51とサクションパイプ83の間で繋がっている糸5を切断する。カッタ82bによる糸5の切断の直前、同時、又は直後に、ユニット制御部15は、捕捉装置24を制御して、糸貯留ローラ51の糸5の下流側糸端を捕捉装置24に捕捉させる(S108)。カッタ82bにより切断された糸5において、カッタ82bよりも下流側の糸5はサクションパイプ83により吸引除去される。その後、サクションパイプ83の吸引流を停止することが好ましい。
図6には、糸貯留ローラ51から解舒された糸5を捕捉装置24が捕捉した状態が示されている。
【0097】
図6に示す状態、即ち、糸貯留ローラ51に糸5が貯留されており、当該糸5の下流側(パッケージ7側)の糸端を捕捉装置24が捕捉している状態を実現することが、糸端準備処理の目的である。糸貯留ローラ51に貯留されている糸5は、後述するように、バンチ巻きに用いられる。また、糸貯留ローラ51に貯留されている糸5の糸端が捕捉装置24に捕捉されていることにより、オペレータは糸端を容易に見つけることができる。
【0098】
次に、
図7から
図10を参照して、上記とは別の糸端準備処理である、第2の糸端準備処理について説明する。なお、
図7のフローチャートのステップS201からS204は、
図3のフローチャートのステップS101からS104と同じ処理であるため、説明を省略する。また、ステップS205からS207が第2の糸端準備処理である。
【0099】
第2の糸端準備処理では、糸貯留ローラ51に糸5が貯留されており、かつ、糸貯留ローラ51とパッケージ7の間で糸5が繋がっている状態において、ユニット制御部15が巻取装置25を制御して、巻取装置25を停止させる(S205)。具体的には、ユニット制御部15は、巻取ドラム76の回転とトラバースガイド78の往復動を停止させる。なお、糸5を巻き取ってパッケージ7を形成している状態では、基本的に糸貯留ローラ51に糸5が貯留されている。従って、紡績の停止に伴って形成される糸端が糸貯留ローラ51よりも下流側に到達するまでは、糸貯留ローラ51とパッケージ7の間で糸5が繋がっている。つまり、ユニット制御部15は、紡績の停止後に即座に巻取装置25を停止させてもよい。あるいは、ユニット制御部15は、紡績の停止後であって、貯留量センサ56が糸5を検出しなくなったタイミング(又は糸5を検出しなくなってから所定時間経過後のタイミング)で巻取装置25を停止させてもよい。
図8には、このタイミングで巻取装置25を停止させた状態が示されている。ユニット制御部15は、巻取装置25の停止制御と関連して、糸貯留ローラ51の回転を停止させるか、糸貯留ローラ51の回転速度を減速させてもよい。
【0100】
次に、ユニット制御部15は、糸貯留ローラ51とパッケージ7の間で繋がっている糸5を切断する(S206)。具体的には、糸貯留ローラ51の回転とパッケージ7の回転が停止している状態において、糸5を切断する。本実施形態では、ユニット制御部15は、糸継台車80に糸5の切断を要求し、糸継台車80のカッタ82bが糸5を切断する。なお、糸5を切断する切断装置は、糸継装置82のカッタ82bに限られない。切断装置は、紡績ユニット2に設けられていてもよい。また、紡績機1が糸5を切断する構成に代えて、オペレータに糸5の切断を要求する構成であってもよい。
図9には、糸貯留ローラ51とパッケージ7との間で繋がっていた糸5を切断した後の状態が示されている。
【0101】
次に、ユニット制御部15は、捕捉装置24を制御して、切断された糸5を捕捉装置24に捕捉させる(S207)。具体的には、糸貯留ローラ51とカッタ83bの間の糸5が捕捉装置24により捕捉される。S206において糸5が切断されることにより、糸貯留ローラ51から下流側に延びる糸5には張力が掛からないので、捕捉装置24を用いて的確に糸5を吸引して捕捉することができる。捕捉装置24により糸5を捕捉する動作に関連して、糸貯留ローラ51を回転させてもよい。
図10には、切断された糸5を捕捉装置24が捕捉した状態が示されている。
【0102】
捕捉装置24が糸5を捕捉した後、ユニット制御部15は、糸貯留ローラ51を回転させていた場合は、糸貯留ローラ51の回転を停止させる。カッタ82bよりも下流側に位置する糸5は、パッケージ回転装置72が巻取ドラム76を巻取方向へ追加で回転させることにより、パッケージ7に最後まで巻き取られる。その後、巻取ドラム76の回転は停止される。巻取装置25は、当該パッケージ7と巻取ドラム76が接触している状態を維持してもよい。あるいは、当該パッケージ7と巻取ドラム76が非接触状態となるように切り替えてもよい。
【0103】
次に、糸端準備処理が行われた後の処理について、
図11から
図13を参照して説明する。
【0104】
図11に示すように、紡績機1(紡績ユニット2)による糸端準備処理が行われた後には、オペレータによるバンチ巻き準備処理が行われる。バンチ巻き準備処理は、処理1から処理3を含んでいる。
【0105】
処理1は、満巻のパッケージ7を排出する処理(玉揚処理)である。具体的には、オペレータは、クレードル装置71に保持されたパッケージ7を取り外して、所定の位置まで運ぶ。例えば、他の紡績ユニット2とは異なる種類のパッケージ7又は試験的に製造したパッケージ7を取り外した場合、オペレータは、これらのパッケージ7を回収する場所まで当該取り外したパッケージ7を運ぶ。また、玉揚台車90の作業を補助する場合、オペレータは、パッケージ7を載置部97に置く。あるいは、玉揚台車90又はオペレータにより、例えば、試験的に製造した複数のパッケージ7のみが載置部97に置かれた状況を実現し、べルトコンベア等により当該複数のパッケージ7をパッケージ回収部に向けて排出してもよい。
【0106】
処理2は、新たなボビン7aをクレードル装置71にセットする処理である。処理3は、捕捉装置24に捕捉された糸5を新たなボビン7aに固定する処理である。糸5をボビン7aに固定する方法は様々である。オペレータは、例えば、クレードル装置71とボビン7aの間に糸5を挟み込むことにより、糸5をボビン7aに固定する。
【0107】
次に、オペレータは、紡績ユニット2に対してバンチ巻きを指示する(処理4)。この指示は、紡績ユニット2に設けられた操作部、又は、制御ボックス112に設けられた操作部117を用いて行われる。
【0108】
ユニット制御部15は、バンチ巻きの指示を受信すると、バンチ巻きを行う(処理5)。具体的には、ユニット制御部15は、巻取装置25のトラバース装置73のトラバース位置を固定した状態で、巻取ドラム76を回転させることによりボビン7aを回転させる。ボビン7aに固定された糸5は、糸貯留ローラ51に繋がっており、糸貯留ローラ51には糸5が貯留されている。従って、ボビン7aを回転させることにより、糸貯留ローラ51から糸5が解舒されて、ボビン7aに棒巻き(バンチ巻き)が形成される。つまり、本実施形態では、糸貯留ローラ51に貯留されていた糸5を用いてバンチ巻きが形成される。このとき、糸貯留ローラ51の回転は停止している。本実施形態では、巻取装置25を用いてバンチ巻きを行うが、別の装置(例えばバンチ巻きのための専用の装置)を用いてバンチ巻きを行ってもよい。
図12には、バンチ巻きが行われる状態が示されている。
【0109】
ユニット制御部15は、バンチ巻きが完了した後に、トラバース巻きを行う(処理6)。具体的には、ユニット制御部15は、通常の巻取り時と同様に、トラバース装置73のトラバースガイド78の位置を変化させながら、巻取ドラム76によりボビン7aを回転させる。このトラバース巻きについても、糸貯留ローラ51に貯留されていた糸5を用いて行われる。バンチ巻きの後のトラバース巻きを形成しておくことにより、仮にその後の糸継ぎで失敗が発生して糸5をボビン7aから解舒したとしても、バンチ巻きが解舒されることを回避できる。なお、トラバース巻きは必須ではなく省略することもできる。
【0110】
次に、ユニット制御部15は、捕捉装置24を制御して、糸貯留ローラ51の糸5を捕捉装置24に捕捉させる(処理7)。捕捉装置24による糸5の捕捉の前又は後において、糸貯留ローラ51に貯留されていた糸5が全て解舒されることにより、パッケージ7側(ボビン7a側)の糸5を捕捉装置24が捕捉した状態になる。
図13にはこの状態が示されている。
【0111】
また、捕捉装置24が糸5を捕捉したタイミング(詳細には糸捕捉検知センサ63が糸5を検出したタイミング)で巻取装置25による糸5の巻取りが停止される。これにより、捕捉装置24が捕捉した糸5を、捕捉装置24に保持させることができる。このとき、糸貯留ローラ51の回転も停止されている状態である。
【0112】
また、捕捉装置24が吸引流を発生させるよりも前に、糸端が捕捉装置24を通過することを防ぐために、ユニット制御部15は、貯留量センサ56の検出結果に基づくタイミングで、捕捉装置24に吸引流を発生させてもよい。具体的には、貯留量センサ56が糸5を検出しなくなったタイミング(又は糸5を検出しなくなってから所定時間経過後のタイミング)で、ユニット制御部15は、捕捉装置24に吸引流を発生させてもよい。
【0113】
その後、ユニット制御部15は、紡績装置22を制御して、糸出し紡績を行わせる(処理8)。次に、ユニット制御部15は、サクションパイプ83を制御して、給糸部側の糸5を糸継装置82に案内する。具体的には、サクションパイプ83を回転させて、サクションパイプ83の吸引口を紡績装置22に近接させ、紡績装置22が送り出した糸5をサクションパイプ83に捕捉させる。サクションパイプ83が糸5を捕捉した状態を維持しつつ、サクションパイプ83を待機位置に移動させることにより、糸5が糸継装置82に案内される。
図14には、サクションパイプ83が糸5を糸継装置82に案内した状態が示されている。サクションパイプ83を待機位置に移動させる過程において、糸5は糸掛け部材53に引っ掛けられて、糸貯留ローラ51に巻かれていく。
【0114】
次に、ユニット制御部15は、糸継台車80に指示して糸継ぎを実行させる(処理10)。その後、ユニット制御部15は、糸5を巻き取ってパッケージ7を形成する処理を開始する(処理11)。
【0115】
以上に説明したように、本実施形態の紡績機1は、紡績装置22と、糸貯留ローラ51と、巻取装置25と、捕捉装置24と、ユニット制御部15と、を備える。紡績装置22は、糸5を供給する。糸貯留ローラ51は、紡績装置22より糸走行方向の下流に配置され、糸5を外周面に巻き付けて一時的に貯留する。巻取装置25は、紡績装置22が供給した糸5をボビン7aに巻き取ってパッケージ7を形成する。捕捉装置24は、糸走行方向において糸貯留ローラ51と巻取装置25の間の位置であって、かつ、糸貯留ローラ51から巻取装置25までの糸道にある糸5を吸引することにより捕捉可能な位置に配置されている。ユニット制御部15は、ボビン7aにバンチ巻きを形成し始める前において、糸貯留ローラ51が糸5を貯留した状態で、糸貯留ローラ51に貯留されている糸5の下流側糸端(パッケージ7側の糸端)を捕捉装置24に捕捉させる糸端準備処理を含む糸巻取方法を実行する。
【0116】
これにより、バンチ巻きを形成し始める前において、糸貯留ローラ51に貯留されている糸5の下流側糸端が捕捉装置24に捕捉された状態となる。そのため、オペレータの補助により糸5の巻取りを開始する際において、オペレータが糸端を探す手間を軽減できる。
【0117】
本実施形態の紡績機1において、ユニット制御部15は、パッケージ7が満巻になった後であって、かつ、ボビン7aにバンチ巻きを形成し始める前に糸端準備処理を行う。
【0118】
これにより、適切なタイミングで糸端準備処理を行うことができる。
【0119】
本実施形態の紡績機1において、紡績装置22は、空気紡績を行って糸5を供給する。
【0120】
これにより、オペレータの補助により紡績機1における糸5の巻取りを開始する際において、オペレータが糸端を探す手間を軽減できる。
【0121】
本実施形態の紡績機1は、糸継装置82と、サクションパイプ83と、を備える。糸継装置82は、紡績装置22側の糸5とパッケージ7側の糸5とを糸継ぎする。サクションパイプ83は、紡績装置22側の糸5を捕捉して糸継装置82に案内する。捕捉装置24は、パッケージ7側の糸5を捕捉する。捕捉装置24がパッケージ7側の糸5を捕捉している状態において、糸継装置82は当該糸5の一部に対向する。
【0122】
これにより、バンチ巻きのために糸端を保持しておく装置と、糸継装置82による糸継ぎのためにパッケージ7側の糸5を捕捉しておく装置と、を同じ装置により実現することができるので紡績機1の構成を単純化できる。
【0123】
本実施形態の紡績機1では、パッケージ7が満巻になった場合に、以下の第1の糸端準備処理を行う。ユニット制御部15は、パッケージ7に繋がる糸5を最後までパッケージ7に巻き取らせる。ユニット制御部15は、紡績装置22に糸出し紡績を行わせる。ユニット制御部15は、糸出し紡績により供給された糸5を糸貯留ローラ51に貯留させる。ユニット制御部15は、糸貯留ローラ51から解舒された糸5を捕捉装置24に捕捉させる。
【0124】
これにより、パッケージ7に繋がる糸5を最後までパッケージ7に巻き取らせるため、巻取装置25に関する制御を単純にすることができる。
【0125】
本実施形態の紡績機1では、パッケージ7が満巻になった場合に、以下の第2の糸端準備処理を行う。ユニット制御部15は、糸貯留ローラ51とパッケージ7の間で糸5が繋がっている状態で巻取装置25を停止させる。ユニット制御部15は、糸貯留ローラ51とパッケージ7の間で繋がっている糸5が切断された後に当該切断された糸5のうち、糸貯留ローラ51に貯留されている糸5を捕捉装置24に捕捉させる。
【0126】
これにより、糸端準備処理のために新たな紡績を行うことなく、糸端を捕捉装置24に捕捉させることができる。
【0127】
本実施形態の紡績機1は、糸貯留ローラ51とパッケージ7の間で繋がっている糸5を切断するカッタ82bを備える。
【0128】
これにより、オペレータが手動で糸5を切断する場合と比較して、オペレータの手間を軽減できる。
【0129】
本実施形態の紡績機1において、糸端準備処理が完了し、巻取装置25から満巻のパッケージ7が排出され、巻取装置25に新たなボビン7aが供給された後において、以下の処理が行われる。ユニット制御部15は、糸貯留ローラ51に貯留された糸5を用いて、新たなボビン7aにバンチ巻きを形成させる。ユニット制御部15は、糸貯留ローラ51から解舒された糸5を捕捉装置24に捕捉させる。ユニット制御部15は、捕捉装置24が糸5を捕捉したタイミングにおいて、新たなボビン7aへの糸5の巻取りを停止させる。
【0130】
これにより、新たなボビン7aに対して糸5を巻き取る作業の一部を紡績機1側において行うことができる。その結果、オペレータの手間を軽減できる。
【0131】
本実施形態の紡績機1において、新たなボビン7aにバンチ巻きを形成させた後において、ユニット制御部15は、糸貯留ローラ51からの糸5を巻取装置25によりトラバースさせながらボビン7aに巻き取らせる。
【0132】
これにより、仮にバンチ巻きを形成した直後の糸継ぎで失敗が発生して糸5をボビン7aから解舒したとしても、バンチ巻きまでもが解舒されてしまうことを回避できる。
【0133】
本実施形態の紡績機1は、糸貯留ローラ51に貯留された糸5を検出する貯留量センサ56を備える。貯留量センサ56の検出結果に基づいて、捕捉装置24に吸引流を発生させる。
【0134】
これにより、糸貯留ローラ51から解舒された糸5を適切なタイミングで捕捉装置24が捕捉できる。
【0135】
本実施形態の紡績機1は、複数の紡績ユニット2と、玉揚台車90と、糸継台車80と、を備える。紡績ユニット2は、紡績装置22、糸貯留ローラ51、捕捉装置24、及び巻取装置25をそれぞれ備える。玉揚台車90は、複数の紡績ユニット2に対して走行可能であり、満巻になったパッケージ7を排出するとともに新たなボビン7aを巻取装置25に供給する。糸継台車80は、複数の紡績ユニット2に対して走行可能であり、紡績装置22側の糸5とパッケージ7側の糸5とを糸継ぎする。
【0136】
これにより、紡績ユニット2において満巻のパッケージ7が発生する頻度が、玉揚台車90の処理速度を超えた場合であっても、糸端準備処理を行うことにより、玉揚台車90の処理を補助できる。その結果、紡績機1の全体の作業効率を向上できる。
【0137】
本実施形態の紡績機1において、玉揚台車90の設置数が1である。糸継台車80の設置数が2以上である。
【0138】
玉揚台車90の設置数が少ないため、紡績ユニット2において満巻のパッケージ7が発生する頻度が、玉揚台車90の処理速度を超える事態が発生し易い。この点、本発明では糸端準備処理を行うことにより玉揚台車90の処理の一部を省略できる。
【0139】
本実施形態の紡績機1は、糸端準備処理を行うか否かを紡績ユニット2毎に設定可能である中央制御装置115を備える。
【0140】
これにより、各紡績ユニット2の条件に合わせて糸端準備処理を行う紡績ユニット2を設定することにより、紡績機1全体の作業効率を向上できる。
【0141】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0142】
紡績機1は捕捉装置24及びサクションマウス84を備えるが、サクションマウス84を省略することもできる。
【0143】
上記実施形態では、糸端準備処理により、捕捉装置24に糸5を一時的に保持しておくが、捕捉装置24以外の装置(例えば専用の装置)に糸5を一時的に保持してもよい。
【0144】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。例えば、
図7の第2の糸端準備処理において、糸5を切断する前に、捕捉装置24が糸5を捕捉する処理(吸引流を発生させる処理)を行ってもよい。
【0145】
上記実施形態では、捕捉装置24に吸引流を発生させるタイミングを、貯留量センサ56の検出結果に基づき制御している。しかし、貯留量センサ56の代わりに、糸貯留ローラ51上の特定の位置における糸5の有無を検出するセンサを設け、当該センサに基づいて捕捉装置24に吸引流を発生させるタイミングを制御してもよい。
【0146】
上記実施形態においてユニット制御部15が行うと説明した処理の一部を中央制御装置115、糸継制御部85、又は玉揚制御部98が行ってもよい。また、中央制御装置115が行うと説明した処理の一部をユニット制御部15、糸継制御部85、又は玉揚制御部98が行ってもよい。例えば、オペレータ補助対象の紡績ユニット2の設定をユニット制御部15が行ってもよい。
【0147】
上記実施形態において紡績ユニット2が行うと説明した処理の一部をオペレータが行ってもよい。例えば、糸端準備処理において捕捉装置24に糸5を入れる処理をオペレータが行ってもよい。また、
図11の処理5で示すバンチ巻き処理をオペレータが行ってもよい。この場合、オペレータは、バンチ巻きの形成後において、ユニット制御部15にトラバース巻きを指示する。
【0148】
上記実施形態では、オペレータ補助対象の紡績ユニット2を予め設定するが、紡績機1の稼動後において、オペレータ補助対象の紡績ユニット2を設定してもよい。この場合、例えば中央制御装置115は、玉揚台車90による玉揚処理又は巻取準備処理が失敗した場合に、該当の紡績ユニット2をオペレータ補助対象の紡績ユニット2に設定してもよい。
【0149】
上記実施形態では、玉揚台車90は、オペレータ補助対象の紡績ユニット2に対しては何も処理を行わず、それ以外の紡績ユニット2に対しては玉揚処理及び巻取準備処理を行う。これに代えて、玉揚台車90が玉揚処理のみを行い、巻取準備処理についてはオペレータに補助させてもよい。あるいは、玉揚台車90が玉揚処理と、巻取準備処理の一部(例えば新たなパッケージ7の供給)と、を行う構成であってもよい。何れの場合であっても、玉揚台車90の動作時間を短くすることができる。あるいは、紡績機1が玉揚台車90を備えていなくてもよい。上記実施形態及び/又は変形例の紡績機1では、玉揚台車90が故障している場合であっても、オペレータと糸継台車80によって玉揚処理及び巻取準備処理を行い、パッケージ7の製造を継続することができる。また、玉揚台車90が行う処理を紡績ユニット2毎に異ならせてもよい。
【0150】
上記実施形態では、糸貯留装置23により紡績装置22から糸5を引き出しているが、糸貯留装置23の代わりに紡績装置22よりも下流側に引出装置としてのデリベリローラ対を設け、デリベリローラ対により紡績装置22から糸5を引き出すようにしてもよい。この場合、デリベリローラ対よりも下流側に糸貯留装置23が設けられていてもよい。
【0151】
本発明は、紡績機に限られず、例えば自動ワインダ等の他の糸巻取機にも適用できる。本発明を自動ワインダに適用する場合、給糸部は、給糸ボビンがセットされて給糸ボビンから糸を引き出す部分である。
【符号の説明】
【0152】
1 紡績機
2 紡績ユニット(巻取ユニット)
7 パッケージ
22 紡績装置(給糸部)
23 糸貯留装置
24 捕捉装置(第1捕捉装置)
25 巻取装置
51 糸貯留ローラ
80 糸継台車
82 糸継装置
83 サクションパイプ(第2捕捉装置)
84 サクションマウス
90 玉揚台車