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特開2023-145991グルテンフリーベーカリー製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145991
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】グルテンフリーベーカリー製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/066 20170101AFI20231004BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20231004BHJP
   A21D 13/41 20170101ALI20231004BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20231004BHJP
【FI】
A21D13/066
A21D2/36
A21D13/41
A21D13/80
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052942
(22)【出願日】2022-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】597150522
【氏名又は名称】株式会社新昭和
(74)【代理人】
【識別番号】100094617
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 正浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 昭良
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB01
4B032DB32
4B032DG08
4B032DG20
4B032DK14
4B032DK15
4B032DK16
4B032DK17
4B032DK18
4B032DK21
4B032DK29
4B032DK43
4B032DK54
4B032DP08
4B032DP33
(57)【要約】
【課題】グルテンフリー粉を使ってサクサク感と軽い食感が得られるグルテンフリーベーカリー製品の製造方法を提供する。
【解決手段】グルテンフリーベーカリー製品の製造方法は、ミキシング工程と、発酵工程と、成形工程と、焼成工程とを有する。ミキシング工程では、グルテンを含まない複数種類のグルテンフリー粉、可溶性食物繊維、複数種類の増粘剤、植物油、及び水を含む生地を混合する。このミキシングした生地を発酵工程で発酵させ、発酵させた生地を成形工程で成形し、成形した生地を焼成工程で焼成する。そして、上記ミキシング工程において、ミキサーを低速回転と高速回転とを交互に複数回実行する、ことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルテンを含まない複数種類のグルテンフリー粉、可溶性食物繊維、複数種類の増粘剤、植物油、及び水を含む生地を混合するミキシング工程と、
ミキシングした生地を発酵させる発酵工程と、
発酵させた生地を成形する成形工程と、
成形した生地を焼成する焼成工程とを有し、
前記ミキシング工程は、ミキサーを低速回転と高速回転とを交互に複数回実行する、ことを特徴とするグルテンフリーベーカリー製品の製造方法。
【請求項2】
前記複数種類のグルテンフリー粉100に対して、可溶性食物繊維が3%から8%、複数種類の増粘剤が4%から11%である、ことを特徴とする請求項1のグルテンフリーベーカリー製品の製造方法。
【請求項3】
前記グルテンフリー粉が、小麦デンプン、コーンスターチ、米粉、タピオカスターチ、そば粉の内、少なくともいずれか1つを含む、ことを特徴とする請求項1又は2のグルテンフリーベーカリー製品の製造方法。
【請求項4】
前記可溶性食物繊維が、サイリウム、イヌリン、ビートルートの内、少なくともいずれか1つを含む、ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1つの項のグルテンフリーベーカリー製品の製造方法。
【請求項5】
前記増粘剤が、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガムの内、少なくともいずれか1つを含む、ことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1つの項のグルテンフリーベーカリー製品の製造方法。
【請求項6】
前記植物油が、オリーブオイル又はひまわり油を含む、ことを特徴とする請求項1乃至5いずれか1つの項のグルテンフリーベーカリー製品の製造方法。
【請求項7】
前記請求項1乃至6いずれか1つの項に記載のグルテンフリーベーカリー製品が、パン、ピザ生地、お菓子、デザートである、ことを特徴とするグルテンフリーベーカリー製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルテンフリーのパンやピザなどのグルテンフリーベーカリー製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小麦粉パンに含まれるグルテン(小麦グルテン)は、小麦アレルギーやセリアック病症状等の原因となることが知られている。セリアック病は、グルテンに対し異常な免疫反応が生じることで、自分自身の小腸粘膜を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患の一つである。
近年、小麦アレルギーやセリアック病症状等の患者向けのパンの製造を目的として、グリテンフリー粉のみを用いたパンの開発が進められ、それらの患者向け食品としても注目を集めている。
【0003】
例えば、特許文献1,2には、グルテンフリー穀物の代表的な米粉を使った米粉パンとその製造方法が記載されている。特許文献1では、焼成後の密度の範囲を小麦粉パンに近い値とすることで、焼成時に生地が十分に伸びるようにして水分を発散させ、ふっくらふわふわして軽い食感を達成している。一方、特許文献2では、一次発酵工程後の材料の粘度を調製することで焼成後に十分に膨張させ、味、食感、香りともに向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-177701号公報
【特許文献2】国際公開第2020/100516号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2のように、米粉を主原料として用いたパン生地は、生地をミキシングしてもグルテンが生成しないため、モチモチ感があるが口溶け感が悪くなったりして食感が重くなる。このため、小麦粉パンのようにグルテンを含む穀物を主原料とする生地を使ったパンとは食感が異なってしまう、という課題がある。
【0006】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、グルテンフリー粉を使ってサクサク感と軽い食感が得られるグルテンフリーベーカリー製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るグルテンフリーベーカリー製品の製造方法は、グルテンを含まない複数種類のグルテンフリー粉、可溶性食物繊維、複数種類の増粘剤、植物油、及び水を含む生地を混合するミキシング工程と、ミキシングした生地を発酵させる発酵工程と、発酵させた生地を成形する成形工程と、成形した生地を焼成する焼成工程とを有し、前記ミキシング工程は、ミキサーを低速回転と高速回転とを交互に複数回実行する、ことで、上述した課題を解決した。
【0008】
上記のような製造方法によれば、グリテンフリー粉、可溶性食物繊維、増粘剤、植物油及び水を用い、グルテンを形成する材料を用いなくても、生地を発酵工程及び焼成工程で十分に膨化させることができる。これは、グルテンフリー粉中のデンプンを水で膨潤化することで得られたネットワーク構造体を、可溶性食物繊維と増粘剤で補強することで、グルテンフリー粉を使ってサクサク感と軽い食感が得られるグルテンフリーベーカリー製品を製造できる。
【0009】
しかも、グリテンフリー粉と増粘剤を複数種類用い、さらに、可溶性食物繊維を加え、ミキサーを低速回転と高速回転とを交互に複数回実行してミキシングすることで、グルテンに代わる、グルテンフリー粉によるネットワーク構造を作ることができ、サクサク感と軽い食感が得られるグルテンフリーベーカリー製品を製造できる。
【0010】
また、前記複数種類のグルテンフリー粉100に対して、可溶性食物繊維が3%から8%、複数種類の増粘剤が4%から11%であることで、同じく上述した課題を解決した。
【0011】
複数種類のグルテンフリー粉、可溶性食物繊維、複数種類の増粘剤は、複数種類のグルテンフリー粉100に対して、可溶性食物繊維が4%から7%、複数種類の増粘剤が5%から10%であることが好ましい。
【0012】
更に、前記グルテンフリー粉が、小麦デンプン、コーンスターチ、米粉、タピオカスターチ、そば粉の内、少なくともいずれか1つを含むことで、同じく上述した課題を解決した。
【0013】
上記のように、グルテンフリー粉としては、グルテンを含まない様々な穀物を用いることができる。
【0014】
更にまた、前記可溶性食物繊維が、サイリウム、イヌリン、ビートルートの内、少なくともいずれか1つを含むことで、同じく上述した課題を解決した。
【0015】
上記のように、可溶性食物繊維として、サイリウム、イヌリン、ビートルートなどを用いることができる。
【0016】
また、増粘剤が、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガムの内、少なくともいずれか1つを含むことで、同じく上述した課題を解決した。
【0017】
上記のように、増粘剤としては、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガムなどを用いることができる。
【0018】
加えて、前記植物油が、オリーブオイル又はひまわり油を含むことで、同じく上述した課題を解決した。
【0019】
上記のように、植物油としては、オリーブオイル又はひまわり油を用いることができる。
【0020】
また、グルテンフリーベーカリー製品が、パン、ピザ生地、お菓子、デザートであることで、同じく上述した課題を解決した。
【0021】
上記のように、パン又はピザ生地だけでなく様々な食品に適用できる。
【発明の効果】
【0022】
上記のような製造方法によれば、複数種類のグリテンフリー粉、可溶性食物繊維、複数種類の増粘剤、植物油及び水を用い、ミキサーを低速回転と高速回転とを交互に複数回実行してミキシングすることで、グルテンを形成する材料を用いなくても、生地を発酵工程と焼成工程で十分に膨化させることができ、サクサク感と軽い食感が得られるグルテンフリーベーカリー製品の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0024】
本実施形態では、グルテンフリーベーカリー製品としてパンとピザを例に取って説明する。このグルテンフリーベーカリー製品の製造方法は、概略次のようなものである。
尚、現在グルテンフリーの国際基準は、グルテン含有穀物に由来し、グルテン除去処理が施されている原料で(小麦デンプンなど)、食品中のグルテンを1キログラム当たり20ミリグラム未満とする原料であり、ここでは国際基準に合致する原料をグルテンフリーと称する。
【0025】
まず、グルテンを含まない複数種類のグルテンフリー粉、可溶性食物繊維、複数種類の増粘剤、植物油及び水を含む生地を混合する(ミキシング工程)。このミキシング工程では、ミキサーを低速回転と高速回転とを交互に複数回実行する。
【0026】
次に、ミキシングした生地を発酵させ(発酵工程)、発酵させた生地を成形する(成形工程)。そして、成形した生地を焼成してパンを製造する(焼成工程)。
【0027】
次に、上述した各工程についてパンの製造方法を例に詳しく説明する。
[ミキシング工程]
<生地1>
生地(ミックス粉)には、小麦粉でん粉(50%)、コーンスターチ(22%)、スキムミルク(10%)、粉砂糖(5%)食物繊維としてサイリウムとイヌリン(5%)、増粘剤としてグアーガム(5%)及びE464(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)(2%)、香料(1%)を用いる。この生地には、例えば、NOVATERRA ZEELANDIA社(オランダ)製のミックス粉ZERO PROBLEM EXTRAを用いることができる。
【0028】
ミキサーボウルに水1,150g(950g~1150gの範囲が好ましく、製造するパンや温度、湿度等の条件で設定、以下同様)を入れる。このミキサーボウルにドライイースト25g(好ましくは20g~30gの範囲)、砂糖35gを入れ、泡だて器でよくかき回して溶かす。この状態で、5分間酵母を予備発酵させる。
【0029】
次に、上記ミキサーボウルにミックス粉1,300g(好ましくは1,050g~1,300gの範囲)、塩15g(15g~30gの範囲が好ましい)を入れる。続いて、ミキサーボウルをミキサーにセットする。
【0030】
次に、ミキサーを低速回転で回転させ、1分後にオリーブオイル75g(75g~100gの範囲が好ましい)を入れる。30秒後に、ミキサーを高速回転にし、1分30秒後に低速回転、1分30秒後に高速回転にする。そして、1分後に生地の状況を確認してミキシングを終了する。ミキシング工程では、およそ5分~7分間を目安に生地を混合する。生地の最適温度は22℃~28℃が好ましい。
ここで、ミキサーの低速回転は60rpmから180rpmの範囲、高速回転は420rpmから600rpmの範囲の回転を用いると良い。
【0031】
このように、生地にグルテンが無いため、低速回転だけでは生地がまとまりづらく、高速回転だけでも生地がまとまらないため、低速回転と高速回転を交互に使い生地をまとめる。また、グルテンフリー粉は一定の速度でこねるだけでは乾燥してしまうので、低速回転と高速回転を交互に使用する。
【0032】
[発酵工程、成形工程]
続いて、ミキサーボウルから作業台に移し、作業台の上の生地を計量してオリーブオイルを塗り、パン型に入れ、温度35℃湿度70%で20分~40分発酵させる。
【0033】
[焼成工程]
成形及び発酵させた生地を、200℃のオーブンで10分間、190℃で20分焼き上げる。
尚、ピザ生地の材料において、好ましい複数種類のグルテンフリー粉は35%から50%、可溶性食物繊維は1%から3%、複数種類の増粘剤は1%から4%、植物油は1.5%から2.5%、水は35%から45%の範囲である。
【0034】
上記のような製造方法によれば、複数種類のグリテンフリー粉、複数種類の増粘剤、可溶性食物繊維及びオリーブオイルを用いることで、パン生地中にグルテンを形成する材料を用いなくても、パンの生地を発酵工程と焼成工程で十分に膨化させることができる。これはグルテンフリー粉中のデンプンを水で膨潤化することで得られるネットワーク構造を、複数種の増粘剤と可溶性食物繊維で補強することで十分な膨化が可能となるため、グルテンフリー粉を使ってサクサク感と軽い食感が得られるパンを製造できる。
【0035】
具体的には、ミキシング工程で、低速回転、高速回転を交互に繰り返すことにより、加水、加温でグルテンフリー粉のデンプンの膨潤化が起こり、デンプンの水素結合によるミセル構造が壊れ、デンプンの構造に中に水が入り込む。水の入り込んだ部分に増粘剤および可溶性食物繊維が入り込み、生地のネットワーク構造ができると考えられる。
【0036】
つまり、まず、グルテンフリー粉を複数種混合して膨潤化することでネットワーク構造体ができ、さらに、その構造体に増粘多糖類を加えることで、ネットワーク構造体骨格が強化され、さらに、可溶性食物繊維が、ネットワーク構造体をさらに強化することにより、グルテン様構造体ができると考えられる。上記ネットワーク構造が、膨潤化されていないデンプン、オリーブオイル等の疎水性物質で、パッケージされ生地がうまくまとまると考えられる。
【0037】
複数種のグリテンフリー粉を使用する理由
グリテンフリー粉を複数種混合して膨潤化することで得られたネットワーク構造体は、単独で膨潤化したときに認められた欠点とも言える性状が改善され、より優れたネットワーク構造となり得る。また、配合比率によって、任意の特性を引き出すことができる。
【0038】
複数種の増粘剤を加える理由
グリテンフリー粉中のデンプンを水で膨潤化したネットワーク構造体に増粘剤を添加することで、ネットワーク構造体の骨格を強化させる。また、増粘剤は、種類により性質が異なり、異なる性質を持つ増粘剤を組み合わせることにより、生地に適度な粘性を持たせ、発酵時また焼成時にパン生地に適度な膨らみを持たせることができる。
【0039】
具体的には、グアーガムは、高濃度で、高い粘性を示す。
また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、他の増粘多糖類と異なり、加熱するとゲル化し、冷却すると元の粘性溶液に戻るとの性質を持っている。加熱するとメトキシ基同士が疎水結合することでゲル化する。
更に、キンサンタンガムは、高粘度で安定化が得られる。低濃度で高い粘性を示す。それぞれ異なる性質を有し、これらを組み合わせることで相乗効果が得られる。
【0040】
可溶性食物繊維を加える理由
可溶性食物繊維は、水分を吸収して膨らむ性質を有するため、パン生地の成分として適量の可溶性食物繊維を添加することにより、パンに膨らみを与えることができると考えられ、また、良好な食感を長時間付与できる。
【0041】
オリーブオイルを加える理由
生地の伸長性を良くし、伸展性を改善し、のびやかな生地に変化させる。また、グリテンフリー粉は、粘りが強いため、粘着性を抑え、剥がれやすくすると同時に、生地が乾燥するのをオリーブオイルの被膜で防ぐためである。この結果、生地の成形性が向上する。より好ましくは、エキストラバージンオリーブオイルを用いると良い。
【0042】
尚、上述した生地1に代えて、下記生地2~5を用いても同様なグルテンフリーのパンを製造できる。
<生地2>
この生地(ミックス粉)は、小麦粉でん粉(50%)、コーンスターチ(22%)、スキムミルク(10%)、粉砂糖(5%)食物繊維としてサイリウムとイヌリン(5%)、増粘剤としてグアーガム(5%)及びE464(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)(2%)、香料(1%)のミックス粉に、生地の10%程度のスキムミルクを追加したものである。この生地には、例えば、NOVATERRA ZEELANDIA社(オランダ)製のミックス粉ZERO PROBLEM TASTY LFを用いることができる。
【0043】
<生地3>
この生地(ミックス粉)は、コーンスターチ(69%)、米粉(14%)、タピオカスターチ(7%)、砂糖(2.5%)、食物繊維としてサイリウム(2%)、塩(2%)、増粘剤としてグアーガムとE464(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)(3%)、香料(0.5%以下)の生地3を用いる。この生地には、例えば、NUTRI FREE社(イタリア)製のミックス粉MIX PER PANEを用いることができる。
【0044】
<生地4>
この生地(ミックス粉)は、コーンスターチ(65%)、米粉(18%)、そば粉(7%)、砂糖(1.5%)、食物繊維としてサイリウム(1.5%)、塩(2%)、増粘剤としてグアーガムとキタンサンガム(5%)のミックス粉に、生地の10%程度のスキムミルクを追加したものである。この生地には、例えば、NUTRI FREE社(イタリア)製のミックス粉MIX PER PIZZAを用いることができる。
【0045】
次に、上述した各工程についてピザの製造方法を例に詳しく説明する。
[発酵工程]
上述した生地1~4のミックス粉と、業務用浄水器で濾過した冷水700gをミキサーボウルに入れ、生イースト2gを入れ泡だて器でよくかき回して溶かす。更にミキサーボウルにグルテンフリー粉1,000g、ポピーシード10g、キヌア10g、黒ゴマ10g、白ゴマ10gを入れる。
【0046】
このような材料を入れたミキサーボウルをミキサーにセットする。そして、低速回転で運転した後、1分後に塩30g、オリーブオイル40gを入れる。続いて30秒後に高速回転、その1分後に低速回転、1分30秒後に高速回転にして、1分後に生地の状況を確認してミキサーの運転を終了する。このミキシング工程では、およそ8分~10分間を目安に生地を混ぜる。このときの生地の最適温度は22℃~28℃である。
ここで、ミキサーの低速回転は60rpmから180rpmの範囲、高速回転は420rpmから600rpmの範囲の回転を用いると良い。
【0047】
今回、生イーストを2gとしたのは、24時間寝かして、生地の風味、旨みを高めるためである。生イーストの分量により寝かせる時間が変化する。
このように、生地にグルテンが無いため、低速だけでは生地がまとまらず、高速だけでも生地がまとまらないため、低速と高速を交互に使うことで生地をまとめることができる。
グルテンフリー粉は、一定の速度でミキシングすると乾燥してしまうので、低速回転と高速回転を交互に使用している。
【0048】
[発酵工程]
続いて、ミキサーボウルから作業台に移す。そして、作業台の上の生地にオリーブオイル(エキストラバージンオリーブオイル)を塗り、厚さ2cm~3cmになるよう丸く広げ、5分~15分間寝かせる。この生地を適量の重さに分割し、オリーブオイルを生地に塗りながら滑らせてつやを出し丸め番重に配置する。ここでオリーブオイルを使用するのは、グルテンフリー粉のねばりが強いため、剥がれやすくするのと同時に、生地が乾燥するのをオリーブオイルの被膜で防ぐためである。
続いて、丸め番重に配置した生地を常温で4時間~5時間発酵させ、冷蔵庫で寝かせる。
【0049】
[成形工程]
寝かせた生地を取り出し、タピオカ粉(打粉)をまぶし円形に広げる。次に、生地の外周部分(コルニチョーネ)を水で均等に湿らせる。そして、製造するピザの種類に応じて、生地にトマトソース、チーズ、バジルなどの商品に合わせたトッピングを乗せ、オリーブオイルをかける。
【0050】
[焼成工程]
500℃のオーブンに入れ焼き加減を見ながら90秒で焼き上げる。しっかり焼き切ることでイースト感を残さず、グルテンを含む小麦粉以上に軽い胃にもたれないピザになる。
【0051】
上記焼成工程では、500℃の温度で実施しているが、350℃&#12316;500℃の温度が好ましく、家庭用の冷凍や冷蔵のピザの場合には、180℃&#12316;250℃の温度範囲でも良い。焼成時間は、焼き上げ温度により変化する。
尚、ピザ生地の材料において、好ましい複数種類のグルテンフリー粉は35%から50%、可溶性食物繊維は1%から3%、複数種類の増粘剤は1%から4%、植物油は1.5%から2.5%、水は35%から45%の範囲である。
【0052】
上記のような製造方法によれば、複数種類のグリテンフリー粉と複数種類の増粘剤と可溶性食物繊維とオリーブオイルを用いることで、ピザ生地中にグルテンを形成する材料を用いなくても、ピザの生地を発酵工程と焼成工程で十分に膨化させることができ、グルテンフリー粉を使ってサクサク感と軽い食感が得られるピザを製造できる。
【0053】
[完成したパンやピザの品質]
小麦に比べて、膨らみは若干少ないが、食後の感覚は良好で、とにかく軽く、胃にもたれることもなく、胃腸の調子が良い。
また、味はグルテンを含有する小麦製品と比較しても遜色はく、美味しくお腹に優しい製品となる。
しかも、グリテンフリー粉を用いたピザ生地には、ほとんど栄養素を含んでおらず、栄養バランスの点では劣るが、上記副材料を加えることで、生地そのものに高い栄養価を与えることができる。
【0054】
尚、上述した実施形態において、ポピーシード、キヌア、白ゴマ、黒ゴマを使用する理由は健康効果が期待できるためである。期待される効能としては、ポピーシードは、鎮痛及びリラックス効果、便秘の解消、動脈硬化や高血圧の防止が期待される。キヌアは、美容効果、便秘予防と改善、生活習慣病(動脈硬化や心筋梗塞)の予防などが期待でき、白ゴマは、動脈硬化の予防、肥満の予防、血中コレステロールの低減が期待できる。また、黒ゴマは、抗酸化作用、目の機能回復効果などがきたいできる。よって、これらは必須の材料ではなく、ポピーシード等を除いた製造も考えられる。
【0055】
また、ピザ生地作成時のオリーブオイルはエキストラバージンオリーブオイルではなくても通常のオリーブオイルやひまわり油等の植物油でも代替が可能である。
【0056】
更に、スキムミルクを使用する理由は、ミルクの風味と香り付け、及び焼き色を付けるの2点であるが、必ずしも使用しなくてはならないものではなく、スキムミルクを除いた製造も考えられる。
【0057】
更にまた、増粘剤として、グアーガムとE464(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を用いる例を説明したが、キサンタンガムなどを用いることもできる。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルテンを含まない複数種類のグルテンフリー粉、可溶性食物繊維、複数種類の増粘剤、植物油、及び水を含む生地を混合するミキシング工程と、
ミキシングした生地を発酵させる発酵工程と、
発酵させた生地を成形する成形工程と、
成形した生地を焼成する焼成工程とを有し、
前記ミキシング工程は、ミキサーを60rpm~180rpmの低速回転と420rpm~600rpmの高速回転とを交互に複数回実行して、5分~7分間又は8分~10分間を目安に生地を混合する、ことを特徴とするグルテンフリーベーカリー製品の製造方法。
【請求項2】
前記複数種類のグルテンフリー粉100質量部に対して、可溶性食物繊維が3%(質量部)から8%(質量部)、複数種類の増粘剤が4%(質量部)から11%(質量部)である、ことを特徴とする請求項1のグルテンフリーベーカリー製品の製造方法。
【請求項3】
前記グルテンフリー粉が、小麦デンプン、コーンスターチ、米粉、タピオカスターチ、そば粉の内、少なくともいずれか1つを含む、ことを特徴とする請求項1又は2のグルテンフリーベーカリー製品の製造方法。
【請求項4】
前記可溶性食物繊維が、サイリウム、イヌリン、ビートルートの内、少なくともいずれか1つを含む、ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1つの項のグルテンフリーベーカリー製品の製造方法。
【請求項5】
前記増粘剤が、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガムの内、少なくともいずれか1つを含む、ことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1つの項のグルテンフリーベーカリー製品の製造方法。
【請求項6】
前記植物油が、オリーブオイル又はひまわり油を含む、ことを特徴とする請求項1乃至5いずれか1つの項のグルテンフリーベーカリー製品の製造方法。
【請求項7】
前記請求項1乃至6いずれか1つの項に記載のグルテンフリーベーカリー製品が、パン、ピザ生地、お菓子、デザートである、ことを特徴とするグルテンフリーベーカリー製品の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明に係るグルテンフリーベーカリー製品の製造方法は、グルテンを含まない複数種類のグルテンフリー粉、可溶性食物繊維、複数種類の増粘剤、植物油、及び水を含む生地を混合するミキシング工程と、ミキシングした生地を発酵させる発酵工程と、発酵させた生地を成形する成形工程と、成形した生地を焼成する焼成工程とを有し、前記ミキシング工程は、ミキサーを60rpm~180rpmの低速回転と420rpm~600rpmの高速回転とを交互に複数回実行して、5分~7分間又は8分~10分間を目安に生地を混合する、ことで、上述した課題を解決した。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
[完成したパンやピザの品質]
小麦に比べて、膨らみは若干少ないが、食後の感覚は良好で、とにかく軽く、胃にもたれることもなく、胃腸の調子が良い。
また、味はグルテンを含有する小麦製品と比較しても遜色はなく、美味しくお腹に優しい製品となる。
しかも、グリテンフリー粉を用いたピザ生地には、ほとんど栄養素を含んでおらず、栄養バランスの点では劣るが、上記副材料を加えることで、生地そのものに高い栄養価を与えることができる。