(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146007
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】媒体搬送装置及びこれを用いた媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
B65H 7/06 20060101AFI20231004BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B65H7/06
G03G15/00 480
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052968
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】玉井 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】大石 竜我
(72)【発明者】
【氏名】山路 亮典
【テーマコード(参考)】
2H072
3F048
【Fターム(参考)】
2H072AA03
2H072AA16
2H072AA22
2H072AA29
2H072AB27
2H072CA01
2H072HB05
2H072HB07
3F048AA01
3F048AB01
3F048BA11
3F048BA20
3F048BB02
3F048BB05
3F048BC03
3F048BD07
3F048CA03
3F048CC03
3F048DA06
3F048DB06
3F048DB09
3F048DB18
3F048DC05
3F048DC12
3F048EA01
3F048EA11
(57)【要約】
【課題】媒体の先端位置の位置合せに伴って、簡単な構成で媒体のしわの有無を判別する。
【解決手段】媒体Sの先端位置を位置合せした後に当該媒体Sを搬送する位置合せ搬送手段1と、位置合せ搬送手段1よりも媒体搬送方向上流側に設けられ、位置合せ搬送手段1に向けて媒体Sを搬送する上流側搬送手段2と、位置合せ搬送手段1よりも媒体搬送方向下流側に設けられ、媒体Sの搬送方向に交差する基準線Lの複数の箇所にて位置合せ搬送手段1を通過する媒体Sの先端又は後端が過るタイミングを検出する複数の検出手段3と、複数の検出手段3の検出結果を用いて媒体Sのしわの有無を判別する判別手段4と、を備えた態様、又は、複数の検出手段3の検出結果を用いて、媒体Sの搬送方向先端の斜行状態及び媒体Sのしわの有無を判別する判別手段4と、を備えた態様が挙げられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の先端位置を位置合せした後に当該媒体を搬送する位置合せ搬送手段と、
前記位置合せ搬送手段よりも媒体搬送方向上流側に設けられ、前記位置合せ搬送手段に向けて前記媒体を搬送する上流側搬送手段と、
前記位置合せ搬送手段よりも媒体搬送方向下流側に設けられ、前記媒体の搬送方向に交差する基準線の複数の箇所にて前記位置合せ搬送手段を通過する前記媒体の先端又は後端が過るタイミングを検出する複数の検出手段と、
前記複数の検出手段の検出結果を用いて前記媒体のしわの有無を判別する判別手段と、
を備えたことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
媒体の先端位置を位置合せした後に当該媒体を搬送する位置合せ搬送手段と、
前記位置合せ搬送手段よりも媒体搬送方向上流側に設けられ、前記位置合せ搬送手段に向けて前記媒体を搬送する上流側搬送手段と、
前記位置合せ搬送手段よりも媒体搬送方向下流側に設けられ、前記媒体の搬送方向に交差する基準線の複数の箇所にて前記位置合せ搬送手段を通過する前記媒体の先端又は後端が過るタイミングを検出する複数の検出手段と、
前記複数の検出手段の検出結果を用いて前記媒体の搬送方向先端の斜行状態及び前記媒体のしわの有無を判別する判別手段と、
を備えたことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の媒体搬送装置において、
前記複数の検出手段は、前記媒体の搬送方向先端の斜行状態を検出する検出手段を共用することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の媒体搬送装置において、
前記複数の検出手段は、前記位置合せ搬送手段を通過した直後に設けられることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の媒体搬送装置において、
前記複数の検出手段の全部又は一部は、前記媒体の搬送方向に交差する幅方向両端部寄りに分かれて配置されていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の媒体搬送装置において、
前記複数の検出手段は二つであり、前記媒体の搬送方向先端及び後端が過る前記タイミングを検出することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載の媒体搬送装置において、
前記判別手段は、前記媒体の搬送方向先端及び後端の前記基準線に対する傾斜量差が予め決められた閾値より大きい条件で、前記媒体にしわ有りと判別することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の媒体搬送装置において、
前記複数の検出手段は三つ以上であり、前記媒体の搬送方向先端及び後端が過る前記タイミングを検出することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項9】
請求項8に記載の媒体搬送装置において、
前記判別手段は、前記媒体の搬送方向先端又は後端の前記基準線に対する傾斜量が前記媒体の幅方向に対して一律でない条件で、前記媒体にしわ有りと判別することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の媒体搬送装置において、
前記判別手段は、前記媒体の搬送方向先端の斜行状態が予め決められた閾値を超える条件で前記媒体の搬送姿勢が斜行過多と判別し、前記閾値以下である条件で前記媒体のしわの有無を判別することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項11】
請求項10に記載の媒体搬送装置において、
前記判別手段は、前記媒体が予め決められた厚さ以下の薄い媒体であるときに、前記媒体のしわの有無を判別することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の媒体搬送装置において、
前記判別手段が前記媒体にしわ有りと判別したときに、当該しわ有りの媒体を搬送経路から取り除くための除去処理を実施する除去処理手段を備えることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項13】
請求項12に記載の媒体搬送装置において、
前記判別手段が前記媒体にしわ有りと判別したときに、当該媒体がしわ有りであることを告知する告知手段を備えることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の媒体搬送装置と、
前記媒体搬送装置にて搬送される前記媒体に予め決められた処理を施す処理手段と、
を備えたことを特徴とする媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置及びこれを用いた媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の媒体搬送装置としては例えば特許文献1に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、繰り出される媒体のしわあり,しわなし等の媒体の表面状態を検知し、媒体の繰り出し状態制御時に、媒体の走行状態の検知情報にこの媒体の表面状態の検知情報を併せ、媒体の走行状態に応じて左右の繰り出しローラと分離ローラの噛み合い量を調整する際に、媒体の表面状態に応じて異なる量で調整する媒体分離繰り出し装置の媒体制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-24716号公報(実施例,
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、媒体の先端位置の位置合せに伴って、簡単な構成で媒体のしわの有無を判別することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の技術的特徴は、媒体の先端位置を位置合せした後に当該媒体を搬送する位置合せ搬送手段と、前記位置合せ搬送手段よりも媒体搬送方向上流側に設けられ、前記位置合せ搬送手段に向けて前記媒体を搬送する上流側搬送手段と、前記位置合せ搬送手段よりも媒体搬送方向下流側に設けられ、前記媒体の搬送方向に交差する基準線の複数の箇所にて前記位置合せ搬送手段を通過する前記媒体の先端又は後端が過るタイミングを検出する複数の検出手段と、前記複数の検出手段の検出結果を用いて前記媒体のしわの有無を判別する判別手段と、を備えたことを特徴とする媒体搬送装置である。
【0006】
本発明の第2の技術的特徴は、媒体の先端位置を位置合せした後に当該媒体を搬送する位置合せ搬送手段と、前記位置合せ搬送手段よりも媒体搬送方向上流側に設けられ、前記位置合せ搬送手段に向けて前記媒体を搬送する上流側搬送手段と、前記位置合せ搬送手段よりも媒体搬送方向下流側に設けられ、前記媒体の搬送方向に交差する基準線の複数の箇所にて前記位置合せ搬送手段を通過する前記媒体の先端又は後端が過るタイミングを検出する複数の検出手段と、前記複数の検出手段の検出結果を用いて前記媒体の搬送方向先端の斜行状態及び前記媒体のしわの有無を判別する判別手段と、を備えたことを特徴とする媒体搬送装置である。
【0007】
本発明の第3の技術的特徴は、第1又は第2の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記複数の検出手段は、前記媒体の搬送方向先端の斜行状態を検出する検出手段を共用するものであることを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第4の技術的特徴は、第1又は第2の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記複数の検出手段は、前記位置合せ搬送手段を通過した直後に設けられることを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第5の技術的特徴は、第4の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記複数の検出手段の全部又は一部は、前記媒体の搬送方向に交差する幅方向両端部寄りに分かれて配置されていることを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第6の技術的特徴は、第1又は第2の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記複数の検出手段は二つであり、前記媒体の搬送方向先端及び後端が過る前記タイミングを検出することを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第7の技術的特徴は、第6の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記判別手段は、前記媒体の搬送方向先端及び後端の前記基準線に対する傾斜量差が予め決められた閾値より大きい条件で、前記媒体にしわ有りと判別することを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第8の技術的特徴は、第1又は第2の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記複数の検出手段は三つ以上であり、前記媒体の搬送方向先端及び後端が過る前記タイミングを検出することを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第9の技術的特徴は、第8の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記判別手段は、前記媒体の搬送方向先端又は後端の前記基準線に対する傾斜量が前記媒体の幅方向に対して一律でない条件で、前記媒体にしわ有りと判別することを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第10の技術的特徴は、第1又は第2の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記判別手段は、前記媒体の搬送方向先端の斜行状態が予め決められた閾値を超える条件で前記媒体の搬送姿勢が斜行過多と判別し、前記閾値以下である条件で前記媒体のしわの有無を判別することを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第11の技術的特徴は、第10の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記判別手段は、前記媒体が予め決められた厚さ以下の薄い媒体であるときに、前記媒体のしわの有無を判別することを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第12の技術的特徴は、第1又は第2の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記判別手段が前記媒体にしわ有りと判別したときに、当該しわ有りの媒体を搬送経路から取り除くための除去処理を実施する除去処理手段を備えることを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第13の技術的特徴は、第12の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記判別手段が前記媒体にしわ有りと判別したときに、当該媒体がしわ有りであることを告知する告知手段を備えることを特徴とする媒体搬送装置である。
【0008】
本発明の第14の技術的特徴は、第1又は第2の技術的特徴を備えた媒体搬送装置と、前記媒体搬送装置にて搬送される前記媒体に予め決められた処理を施す処理手段と、を備えたことを特徴とする媒体処理装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の技術的特徴によれば、媒体の先端位置の位置合せに伴って、簡単な構成で媒体のしわの有無を判別することができる。
本発明の第2の技術的特徴によれば、媒体の先端位置の位置合せに伴って、簡単な構成で、媒体の斜行状態及び媒体のしわの有無を判別することができる。
本発明の第3の技術的特徴によれば、媒体の先端位置の位置合せに伴って、媒体の斜行状態を検出する検出手段を共用することで、媒体のしわの有無を判別することができる。
本発明の第4の技術的特徴によれば、複数の検出手段が位置合せ搬送手段から離れて設けられる場合に比べて、位置合せされた媒体の斜行やしわの有無状況を早く把握することができる。
本発明の第5の技術的特徴によれば、媒体の搬送方向先端又は後端の位置情報を広い範囲で検出することが可能である。
本発明の第6の技術的特徴によれば、二つの検出手段を用いて、媒体のしわの有無を簡単に判別することができる。
本発明の第7の技術的特徴によれば、媒体の搬送方向先端及び後端の傾斜量の差に着目することで、媒体のしわの有無を判別することができる。
本発明の第8の技術的特徴によれば、三以上の検出手段を用い、媒体のしわの有無を簡単に判別することができる。
本発明の第9の技術的特徴によれば、媒体の搬送方向先端又は後端の傾斜量が媒体の幅方向に対して一律か否かに着目し、媒体のしわの有無を判別することができる。
本発明の第10の技術的特徴によれば、媒体の搬送状態を監視する上で、斜行過多の媒体に対して媒体のしわの有無をチェックする無駄な事態を回避することができる。
本発明の第11の技術的特徴によれば、媒体搬送時にしわが発生し易い薄い媒体に対してのみ、媒体のしわの有無をチェックすることができる。
本発明の第12の技術的特徴によれば、しわ有りの媒体を搬送経路から容易に取り除くことができる。
本発明の第13の技術的特徴によれば、搬送経路中にしわ有りの媒体が存在することをユーザに告知することができる。
本発明の第14の技術的特徴によれば、媒体の先端位置の位置合せに伴って、簡単な構成で媒体のしわの有無を判別することが可能な媒体搬送装置を含む媒体処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は本発明が適用される媒体搬送装置を組み込んだ媒体処理装置の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)に示す媒体搬送装置をB方向から見たときの複数の検出手段の構成例を示す説明図、(c)は同複数の検出手段の他の構成例を示す説明図である。
【
図2】実施の形態1に係る媒体処理装置としての画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【
図3】実施の形態1に係る画像形成装置で用いられる媒体搬送装置の要部を示す説明図である。
【
図4】(a)は実施の形態1に係る媒体搬送装置に用いられる位置センサの構成例を示し、(b)は実施の形態2に係る媒体搬送装置に用いられる位置センサの構成例を示す説明図である。
【
図5】実施の形態1に係る媒体搬送装置の紙しわ判別処理を示すフローチャートである。
【
図6】(a)は正常搬送時の用紙と二つの位置センサとの相対位置関係を示す説明図、(b)は斜行搬送時の用紙と二つの位置センサとの相対位置関係を示す説明図、(c)は紙しわ有りの用紙と二つの位置センサとの相対位置関係を示す説明図である。
【
図7】(a)は正常搬送時の用紙(
図6(a))に対する二つの位置センサの出力例を示す説明図、(b)は斜行搬送時の用紙(
図6(b))に対する二つの位置センサの出力例を示す説明図、(c)は紙しわ有りの用紙(
図6(c))に対する二つの位置センサの出力例を示す説明図である。
【
図8】実施の形態2に係る媒体搬送装置の紙しわ判別処理を示すフローチャートである。
【
図9】(a)は正常搬送時の用紙と三つの位置センサとの相対位置関係を示す説明図、(b)は斜行搬送時の用紙と三つの位置センサとの相対位置関係を示す説明図、(c)は紙しわ有りの用紙と三つの位置センサとの相対位置関係を示す説明図である。
【
図10】(a)は実施の形態1,2のいずれも判別可能な紙しわのパターン例を示す説明図、(b)は実施の形態1では判別が難しいが、実施の形態2では判別可能な紙しわのパターン例を示す説明図である。
【
図11】正常搬送時の用紙(
図9(a))に対する三つの位置センサの出力例を示す説明図、(b)は斜行搬送時の用紙(
図9(b))に対する三つの位置センサの出力例を示す説明図、(c)は紙しわ有りの用紙(
図9(c))に対する三つの位置センサの出力例を示す説明図、(d)は紙しわ有りの用紙(
図10(a))に対する三つの位置センサの出力例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用される媒体搬送装置が組み込まれた媒体処理装置の実施の形態の概要を示す説明図である。
同図において、媒体処理装置は、媒体Sを搬送する媒体搬送装置10と、媒体搬送装置10にて搬送される媒体Sに予め決められた処理を施す処理手段11と、を備えたものである。
本例において、媒体搬送装置10の代表的態様は、媒体Sの先端位置を位置合せした後に当該媒体Sを搬送する位置合せ搬送手段1と、位置合せ搬送手段1よりも媒体搬送方向上流側に設けられ、位置合せ搬送手段1に向けて媒体Sを搬送する上流側搬送手段2と、位置合せ搬送手段1よりも媒体搬送方向下流側に設けられ、媒体Sの搬送方向に交差する基準線Lの複数の箇所にて位置合せ搬送手段1を通過する媒体Sの先端又は後端が過るタイミングを検出する複数の検出手段3と、複数の検出手段3の検出結果を用いて媒体Sのしわの有無を判別する判別手段4と、を備えたものである。
【0012】
また、媒体搬送装置10の別の代表的態様は、媒体Sの先端位置を位置合せした後に当該媒体Sを搬送する位置合せ搬送手段1と、位置合せ搬送手段1よりも媒体搬送方向上流側に設けられ、位置合せ搬送手段1に向けて媒体Sを搬送する上流側搬送手段2と、位置合せ搬送手段1よりも媒体搬送方向下流側に設けられ、媒体Sの搬送方向に交差する基準線Lの複数の箇所にて位置合せ搬送手段を通過する媒体Sの先端又は後端が過るタイミングを検出する複数の検出手段3と、複数の検出手段3の検出結果を用いて媒体Sの搬送方向先端の斜行状態及び前記媒体のしわの有無を判別する判別手段4と、を備えたものである。
つまり、前者の代表的態様は、複数の検出手段3を用いて媒体Sのしわの有無を判別する態様であり、後者の代表的態様は、複数の検出手段3を用いて媒体Sの斜行状態及び媒体のしわの有無を判別するものである。
【0013】
このような技術的手段において、位置合せ搬送手段1の位置合せ方式は、対構成の位置合せロールを停止させて媒体Sの先端をせき止め、上流側搬送手段2による媒体Sの挟持状態(ニップ)を解除することで、媒体Sの先端位置を位置合せロールに沿って合わせる手法を始め、公知の手法を適宜選定して差し支えない。
また、複数の検出手段3としては、媒体Sの先端、後端が過るタイミングを検出可能なものであれば、光学式のものを始め、機械式など適宜選定して差し支えない。また、複数の検出手段3としては、
図1(b)(c)に示すように、基準線Lの複数の箇所に対応して設けられていればよく、連続的に検出可能なラインセンサのようなものは含まない。
更に、判別手段4については、媒体Sの斜行状態(スキュー)、しわの有無を判別する手法を備えたものを広く含む。
【0014】
次に、本実施の形態において、媒体搬送装置10の構成要件の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、複数の検出手段3の代表的態様としては、媒体Sの搬送方向先端の斜行状態を検出する検出手段を共用するものが挙げられる。本例によれば、媒体Sの搬送方向先端の斜行状態を検出する検出手段を既に搭載した媒体搬送装置10であれば、媒体Sの紙しわの有無判別のために専用の検出手段を用いる必要がなく、その分、複数の検出手段3としてのコストを低減することが可能である。
また、複数の検出手段3としては、媒体Sの斜行状態や媒体Sのしわの有無を早期に把握するという観点からすれば、位置合せ搬送手段1を通過した直後に設けられることが好ましい。そして、本例においては、媒体Sの搬送方向先端又は後端の位置情報を広範囲に検出するという観点からすれば、複数の検出手段3の全部又は一部は、媒体Sの搬送方向に交差する幅方向両端部寄りに分かれて配置されている態様が好ましい。
【0015】
また、複数の検出手段3の好ましい態様としは、
図1(b)に示すように、複数の検出手段3は二つ(具体的には3a,3b)であり、媒体Sの搬送方向先端及び後端が過るタイミングを検出するものが挙げられる。この場合、判別手段4は、媒体Sの搬送方向先端及び後端の基準線Lに対する傾斜量差が予め決められた閾値より大きい条件で、媒体Sにしわ有りと判別するようにすればよい。
更に、複数の検出手段3の別の好ましい態様としては、
図1(c)に示すように、複数の検出手段3は三つ以上(例えば3a~3c)であり、媒体Sの搬送方向先端及び後端が過るタイミングを検出するものが挙げられる。この場合、判別手段4は、媒体Sの搬送方向先端又は後端の基準線Lに対する傾斜量が媒体Sの幅方向に対して一律でない条件で、媒体Sにしわ有りと判別するようにすればよい。
【0016】
また、判別手段4の好ましい態様としては、媒体Sの搬送方向先端の斜行状態が予め決められた閾値を超える条件で媒体Sの搬送姿勢が斜行過多と判別し、閾値以下である条件で媒体Sのしわの有無を判別する態様が挙げられる。この場合、全ての媒体Sに対してしわの有無を判別するようにしても差し支えないが、媒体Sが予め決められた厚さ以下の薄い媒体であるときにしわが発生し易いことを考慮すると、媒体Sが予め決められた厚さ以下の薄い媒体であるときに、媒体Sのしわの有無を判別するようにしてもよい。
【0017】
更に、判別手段4が媒体Sにしわ有りと判別したときに、当該しわ有りの媒体Sを搬送経路から取り除くための除去処理を実施する除去処理手段6を備えるようにしてもよい。ここでいう除去処理手段6には搬送停止モードで当該媒体Sの搬送を停止させてユーザが取り除く手法、搬送継続モードで別の排出収容手段に排出する手法が含まれる。更に、判別手段4が媒体Sにしわ有りと判別したときに、当該媒体Sがしわ有りであることを告知する告知手段7を備えるようにしてもよい。
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は実施の形態1に係る媒体処理装置としての画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
-画像形成装置の全体構成-
同図において、画像形成装置の基本的構成は、装置筐体20内に例えば複数の色成分画像を作製するための作像エンジン21を搭載し、この作像エンジン21の下方には作像エンジン21に対して媒体を搬送する媒体搬送系80と、作像エンジン21にて作製された画像を媒体に定着させる定着装置70とを備えたものである。
そして、本例では、作像エンジン21は、複数の色成分(本実施の形態ではイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の一般色の画像を形成する画像形成部22(具体的には22a~22d)と、各画像形成部22にて形成された各色成分画像を順次転写(一次転写)して保持するベルト状の中間転写体30と、中間転写体30上に転写された各色成分画像を媒体(用紙又はフィルム)に二次転写(一括転写)する二次転写装置(一括転写装置)50と、を備えている。尚、
図2中、符号40は画像形成装置を操作するための操作パネルである。
【0019】
-画像形成部-
本実施の形態において、各画像形成部22(22a~22d)は、夫々ドラム状の感光体23を有し、各感光体23の周囲には、感光体23が帯電されるコロトロンや転写ロール等の帯電装置24、帯電された感光体23上に静電潜像が書き込まれるレーザ走査装置等の露光装置25、感光体23上に書き込まれた静電潜像がYMCKの各色成分トナーにて現像される現像装置26、感光体23上のトナー画像が中間転写体30に転写される転写ロール等の一次転写装置27及び感光体23上の残留トナーが除去される感光体清掃装置28を夫々配設したものである。
また、中間転写体30は、複数(本実施の形態では三つ)の張架ロール31~33に掛け渡されており、例えば張架ロール31が図示外の駆動モータにて駆動される駆動ロールとして用いられ、当該駆動ロールにて循環移動するようになっている。更に、張架ロール31,33間には二次転写後の中間転写体30上の残留トナーを除去するための中間転写体清掃装置35が設けられている。
【0020】
-二次転写装置(一括転写装置)-
更に、二次転写装置(一括転写装置)50は、例えば中間転写体30の張架ロール33に対向した部位に転写ロール55を圧接配置すると共に、中間転写体30の張架ロール33を転写ロール55の対向電極をなす対向ロール56としたものである。ここで、本例では、転写ロール55は金属製シャフトの周囲に発泡ウレタンゴムやEPDMにカーボンブラック等が配合された弾性層を被覆した構成になっており、対向ロール56(本例では張架ロール33を兼用)には導電性の給電ロール(図示せず)を介して転写電源(図示せず)からの転写電圧を印加し、一方、転写ロール55を接地することで、転写ロール55及び対向ロール56間に所定の転写電界を形成し、転写ロール55と対向ロール56との間で挟持した中間転写体30のニップ領域を二次転写域(一括転写域)TRとして機能するようにしたものである。尚、二次転写装置50は転写ロール55を使用した態様であるが、これに限られるものではなく、転写ロール55を張架ロールの一つとして転写ベルトを掛け渡した転写ベルトモジュール等を用いてもよいことは勿論である。
【0021】
-定着装置-
定着装置70は、媒体の画像保持面側に接触して配置される駆動回転可能な加熱定着ロール71と、当該加熱定着ロール71に対向して圧接配置され、加熱定着ロール71に追従して回転する加圧定着ロール72とを有し、両定着ロール71,72間の定着領域に媒体上に保持された画像を通過させ、当該画像を加熱加圧定着するものである。
ここで、加熱定着ロール71は例えばロール本体内にヒータを内蔵したり、あるいは、ロール本体外周面に外部ヒータを接触させることでロール本体を加熱するようになっており、また、加圧定着ロール72には必要に応じてヒータを付加するようにしてもよいことは勿論である。尚、本例はロール対構成例を示すものであるが、これに限られるものではなく、加熱定着ロール71を例えば電磁誘導加熱方式を採用した加熱定着ベルトで構成するなど適宜選定して差し支えない。
【0022】
-媒体搬送系-
更に、媒体搬送系80は、複数段(本例では二段)の媒体供給容器81,82を有し、媒体供給容器81,82のいずれかから供給される媒体を略鉛直方向に延びる鉛直搬送路83から略水平方向に延びる水平搬送路84を経て二次転写域TRへと至り、その後、転写された画像が保持された媒体を、搬送ベルト85を経由して定着装置70による定着部位に至り、装置筐体20の側方に設けられた媒体排出受け86に排出するものである。
そして更に、媒体搬送系80は、水平搬送路84のうち定着装置70の媒体搬送方向下流側に位置する部分から下方に向かって分岐する反転可能な分岐搬送路87を有し、当該分岐搬送路87で反転された媒体を戻し搬送路88を経て再び鉛直搬送路83から水平搬送路84へと戻し、二次転写域TRにて媒体の裏面に画像を転写し、定着装置70を経て媒体排出受け86へ排出するようになっている。尚、分岐搬送路87には途中から分岐し且つ反転された媒体を媒体排出受け86側に搬送する分岐戻し搬送路89が設けられている。
また、媒体搬送系80には媒体の位置を整合して二次転写域TRに供給する位置合わせ搬送手段としての位置整合ロール90のほか、各搬送路83,84,87,88,89には適宜数の搬送ロール91が設けられている。更にまた、装置筐体20の媒体排出受け86の反対側には水平搬送路84に向かって手差し媒体が供給可能な手差し媒体供給器92が設けられている。
【0023】
-紙しわの有無判別の必要性-
この種の画像形成装置においては、媒体として厚さの異なる用紙(厚紙から薄紙まで)を広く用いたいという要請がある。このような要請の中で、例えば80gsm以下の薄紙、特には60gsm以下の薄紙を使用する場合に、紙しわの発生が懸念されてきている。
この種の紙しわのディフェクトについては、従前、例えば媒体の搬送路にILS(Image Line Sensor)を配置し、通過する媒体の紙しわを検査するようにしたり、あるいは、自動検査装置を導入し、媒体排出受けに排出された出力物に対して紙しわの有無を検査する方式が既に提供されている。
しかしながら、ILSの設置に当たっては、検査精度を上げるために水平搬送路等を選定することが必要になり、設定場所に制約があるほか、ILSのサイズも大きく、また、高コストである。また、自動検査装置は、媒体の出力物を検査する方式であるため、画像形成装置に後付けすることになり、設置スペースが嵩むほか、サイズも大きく、また、高コストである。
そこで、本実施の形態では、既存の媒体搬送装置の構成例を有効に利用することで、紙しわの有無を判別する安価な方式を採用することを検討したものである。
【0024】
-媒体搬送装置の基本構成-
本実施の形態において、媒体搬送装置100は、
図2及び
図3に示すように、媒体Sを二次転写域TRに搬送するに当たって、媒体Sの先端位置を整合し、媒体Sの搬送姿勢が斜行していない状態で二次転写域TRに至るような基本構成を備えている。
本例では、この種の媒体搬送装置100は、媒体Sの先端位置を整合する位置合せ搬送手段としての位置整合ロール90と、この位置整合ロール90に対して媒体Sの搬送方向上流側に配置される上流側搬送手段としての搬送ロール91f(91)と、位置整合ロール90よりも媒体Sの搬送方向下流側に設けられ、位置整合ロール90を通過した媒体Sの先端が斜行状態にあるか否かを検出するための複数の検出手段としての二つの位置センサ110(具体的には111,112)と、を備えている。
【0025】
<位置整合ロール>
位置整合ロール90は、所謂レジロールに相当するものであり、回転軸の周囲にロール本体を有する駆動ロール121と、この駆動ロール121に接触して従動回転し、回転軸の周囲にロール本体を有する従動ロール122とを備えている。駆動ロール121には図示外の駆動伝達部品を介して駆動モータ123が駆動連結され、また、従動ロール122はニップリリース機構124に支持され、駆動ロール121に対して接離(ニップリリース)可能に移動し、駆動ロール121との間に媒体Sを挟持する接触域(ニップ域)を形成する一方、接触域から離れた退避位置に移動するようになっている。尚、位置整合ロール90は、媒体Sの先端を位置合せする場合には、駆動ロール121に対する従動ロール122のニップ状態は維持され、駆動モータ123による駆動ロール121の駆動は一時停止する。
<搬送ロール>
搬送ロール91fは、位置整合ロール90と同様に駆動ロール131及び従動ロール132を備え、駆動ロール131は図示外の駆動伝達部品を介して駆動モータ133に駆動連結され、従動ロール132はニップリリース機構134に支持されている。
【0026】
<位置センサ>
本例において、位置センサ110(111,112)は、
図3及び
図4(a)に示すように、位置整合ロール90を通過した直後(本例では位置整合ロール90からmだけ離れた部位)に媒体Sの搬送方向に交差する幅方向に沿う基準線Lの複数の箇所(本例では二箇所)に設置されている。そして、本例の位置センサ110(111,112)は、媒体Sの搬送方向に交差する幅方向両端部寄りに分かれて配置されており、位置センサ111,112を含む両者間の幅寸法wは、使用可能なサイズの媒体Sの幅寸法よりも短く設定され、位置整合ロール90を通過する媒体Sの先端又は後端が過るタイミングを検出することを可能とするものである。
ここで、位置センサ110(111,112)としては、発光部と受光部とを有し、媒体Sが過るときに発光部からの反射光を受光部で検出することで、媒体Sの搬送方向先端から後端までの領域とそれ以外の領域との境界部分が受光部の出力変化として現れる光学式センサが採用されている。尚、位置センサ110としては、媒体Sの搬送方向先端、後端の位置が把握可能なものであれば、光学式センサ以外に機械的センサや電気式センサを用いることも可能である。
【0027】
-媒体搬送装置の制御系-
本例では、
図3に示すように、媒体Sの紙しわの有無を判別するための制御装置150が設けられている。
この制御装置150は、各種プロセッサを含むマイクロコンピュータにて構成されている。ここでいう「プロセッサ」とは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0028】
本例において、制御装置150は、図示外のメモリに、媒体Sの位置整合動作プログラムや「紙しわの有無判別プログラム(
図5参照)」等の必要なプログラムを予めインストールしておき、媒体Sの位置整合動作(位置整合ロール90による整合(レジ)動作に相当)を実施した後に、位置整合ロール90を通過した媒体Sが位置センサ110(111,112)を通過するときの当該位置センサ110(111,112)からの検出情報をプロセッサに取り込み、「紙しわの有無判別プログラム」を実行し、媒体Sの紙しわの有無を判別するようにしたものである。
【0029】
<媒体の位置整合動作>
図5に示すように、媒体Sの紙しわの有無の判別を実施する前に、位置整合ロール(レジロール)90による媒体Sの位置整合動作が行われる。これは、位置整合ロール90をニップ状態のまま駆動を停止し、搬送ロール91fで媒体Sを搬送して位置整合ロール90に媒体Sの先端を突き当て、媒体Sの先端が位置整合ロール90の軸方向に沿うようにスキュー補正するものである。
<媒体の搬送再開動作>
前述した媒体Sの位置整合動作が完了すると、位置整合された媒体Sは位置整合ロール90により搬送動作が再開される。
すると、媒体Sの先端が基準線Lを通過するときに位置センサ110(111,112)を過る。
ここで、位置センサ110(111,112)は媒体Sの先端スキューを検出することから、先端スキュー量が予め決められた閾値T0以下か否かの判別がなされる。ここでいう閾値T0は、媒体Sが斜行過多で走行が困難になる先端スキュー量を指すものであり、閾値T0を超えた条件では、媒体Sの搬送動作が停止され、制御装置150の表示部151に「スキュー異常」が表示される。
【0030】
媒体Sの先端スキュー量が閾値T0以下の場合には、媒体Sの後端が基準線Lを通過するときに位置センサ110(111,112)を過る。これにより、位置センサ110(111,112)は媒体Sの後端スキューを検出することから、媒体Sの先端スキュー量、後端スキュー量の差分(スキュー量差)を計算し、このスキュー量差が予め定められた閾値ΔT以下か否かの判別がなされる。
ここで、スキュー量差が閾値ΔT以下の条件では、通常の搬送動作が行われ、スキュー量差が閾値ΔTを超える条件では、媒体Sに紙しわが存在しているものとして取り扱う。
このとき、スキュー量差の閾値ΔTについては、媒体Sの先端と後端とに対して位置センサ110(111,112)が過るタイミングが先端側と後端側とで相違する場合を指すものである。この相違量が許容値内であれば紙しわ無しと判断しても差し支えないが、この相違量が紙しわの発生につながる可能性の高い閾値を超えるような場合を想定して「紙しわ」の有無を判別するようにすればよい。
本例では、搬送停止モードが選択されていれば、媒体Sの搬送動作を停止し、制御装置150の表示部151に「紙しわ有り」と表示する。一方、仮に、搬送停止モードではないと仮定すると、搬送継続モードを実施し、紙しわ媒体は別の図示外の媒体排出受けに排出される。
【0031】
-位置センサ出力と紙しわ判別との関係-
(1)正常搬送
図6(a)に示すように、媒体S1(S)が正常搬送されていると仮定すると、
図7(a)に示すように、位置センサ110(111,112)が媒体S1の先端及び後端を過るタイミングは同じになり、この出力パターンにより媒体S1が正常搬送していることが判別される。
(2)斜行搬送
この斜行搬送は、主として斜行過多の場合を想定するものであり、前述したスキュー異常につながるケースである。
図6(b)に示すように、媒体S2(S)がスキューして斜行搬送されていると仮定すると、
図7(b)に示すように、位置センサ110(111,112)が媒体Sの先端及び後端を過るタイミングはいずれも同じ時間Δtだけずれることになり、この出力パターンにより媒体S2が斜行搬送していることが判別される。
【0032】
(3)紙しわ有り
図6(c)に示すように、媒体S3(S)の後端寄りの幅方向両側のいずれかに紙しわNGが存在していると仮定すると、
図7(c)に示すように、位置センサ110(111,112)が媒体Sの先端及び後端を過るタイミングは先端側は同じになるが、後端側は時間Δtだけずれることになり、この出力パターンにより媒体Sに紙しわNGが存在していることが判別される。
尚、本例では、紙しわNGが媒体Sの後端寄りに存在しているが、媒体Sの先端寄りに存在したとしても、先端側で時間Δtのずれがある出力パターンが得られ、媒体Sに紙しわNGが存在していることが判別される。
【0033】
-媒体種判別器との組み合わせ-
本例では、全ての媒体Sに対して紙しわの有無判別処理を実施するようにしているが、これに限らず、例えば
図3に仮想線で示すように、媒体種判別器160からの媒体種の判別情報をプロセッサに取り込み、薄紙等の薄い媒体Sのときにのみ紙しわの有無を判別するようにしても差し支えない。
ここでいう媒体種判別器160は、媒体Sが薄紙であるか、薄紙以外の厚紙であるかを直接検出する厚み検出器や、制御装置150内のメモリに使用可能な媒体種テーブルを用意しておき、この媒体種テーブルから使用する媒体Sを指定する媒体指定器などを含むものであり、これらの情報に基づいて判別された媒体種情報が制御装置150に取り込まれるようにすればよい。
【0034】
◎実施の形態2
図4(b)は実施の形態2に係る媒体搬送装置の要部を示すものである。
同図において、媒体搬送装置100は、実施の形態1と同様な位置整合ロール90、搬送ロール91fを備えているが、位置センサ110の構成(本例では三つ111~113)、及び、位置センサ110の検出出力に基づく紙しわの有無の判別処理が異なっている。尚、実施の形態1と同様な構成要素については、実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
同図において、位置センサ110(111~113)は、
図3及び
図4(b)に示すように、位置整合ロール90を通過した直後(本例では位置整合ロール90からmだけ離れた部位)に媒体Sの搬送方向に交差する幅方向に沿う基準線Lの複数の箇所(本例では三箇所)に設置されている。そして、本例の位置センサ110(111,112)は、実施の形態1と同様に、媒体Sの搬送方向に交差する幅方向両端部寄りに分かれて配置されており、位置センサ111,112を含む両者間の幅寸法wは、使用可能なサイズの媒体Sの幅寸法よりも短く設定されている。また、位置センサ110(具体的には113)は、両側の位置センサ111,112の中間で媒体Sの幅方向中央部に略対応して設置されている。このため、本例では、三つの位置センサ110(111~113)が位置整合ロール90を通過する媒体Sの先端又は後端が過るタイミングを検出することを可能とするものである。
【0035】
-媒体搬送装置の制御系-
本例において、制御装置150は、図示外のメモリに、媒体Sの位置整合動作プログラムや「紙しわの有無判別プログラム(
図8参照)」等の必要なプログラムを予めインストールしておき、媒体Sの位置整合動作(位置整合ロール90による整合(レジ)動作に相当)を実施した後に、位置整合ロール90を通過した媒体Sが位置センサ110(111~113)を通過するときの当該位置センサ110(111~113)からの検出情報をプロセッサに取り込み、「紙しわの有無判別プログラム」を実行し、媒体Sの紙しわの有無を判別するようにしたものである。
【0036】
<媒体の位置整合動作>
図8に示すように、媒体Sの紙しわの有無の判別を実施する前に、実施の形態1と同様な位置整合ロール(レジロール)90による媒体Sの位置整合動作が行われる。
<媒体の搬送再開動作>
前述した媒体Sの位置整合動作が完了すると、位置整合された媒体Sは位置整合ロール90により搬送動作が再開される。
すると、媒体Sの先端が基準線Lを通過するときに位置センサ110(111~113)を過る。
ここでは、実施の形態1と略同様に、先端スキュー量が予め決められた閾値T0以下か否かの判別がなされ、閾値T0を超える条件でスキュー異常の有無についての判断がなされる。
【0037】
そして、媒体Sの先端スキュー量が閾値T0以下の場合には、媒体Sの後端が基準線Lを通過するときに位置センサ110(111~113)を過る。これにより、位置センサ110(111~113)は媒体Sの後端スキューを検出することから、媒体Sの先端スキュー量、後端スキュー量を見て媒体Sの先端、後端の傾きが一律か否かの判別がなされる。
ここで、媒体Sの先端、後端の傾きが一律の条件では、通常の搬送動作が行われ、媒体Sの先端、後端の傾きが一律でない条件では、媒体Sに紙しわが存在しているものとして取り扱う。
本例では、搬送停止モードが選択されていれば、媒体Sの搬送動作が停止され、制御装置150の表示部151に「紙しわ有り」と表示される。一方、仮に、搬送停止モードではないと仮定すると、搬送継続モードが実施され、紙しわの媒体は別の図示外の媒体排出受けに排出される。
【0038】
-位置センサ出力と紙しわ判別との関係-
(1)正常搬送
図9(a)に示すように、媒体S1(S)が正常搬送されていると仮定すると、
図11(a)に示すように、位置センサ110(111~113)が媒体S1の先端及び後端を過るタイミングは同じになり、この出力パターンにより媒体が正常搬送していることが判別される。
(2)斜行搬送
この斜行搬送は、主として斜行過多の場合を想定するものであり、前述したスキュー異常につながるケースである。
図9(b)に示すように、媒体S2(S)がスキューして斜行搬送されていると仮定すると、
図11(b)に示すように、位置センサ110(111~113)が媒体S2の先端及び後端を過るタイミングはいずれも同じ時間Δtだけずれることになり、この出力パターンにより媒体S2が斜行搬送していることが判別される。
【0039】
(3)紙しわ有り
図9(c)に示すように、媒体S3(S)の後端寄りの幅方向中央部に紙しわNGが存在していると仮定すると、
図11(c)に示すように、位置センサ110(111~113)が媒体Sの先端及び後端を過るタイミングは先端側は同じになるが、後端側は、位置センサ113が位置センサ111,112より時間Δtだけ早くずれることになり、この出力パターンにより媒体S3に紙しわが存在していることが判別される。
また、本例の場合、位置センサ110(111~113)は媒体Sの幅方向両側部と幅方向中央部との三箇所に分かれて配置されているため、
図10(a)に示すように、紙しわNGが媒体Sの後端寄りの幅方向両側部のいずれかに配置されていたとしても、
図11(d)に示すように、後端側は、位置センサ112が位置センサ111,113より時間Δtだけ早くずれることになり、この出力パターンにより媒体Sに紙しわが存在していることが判別される。
【0040】
このように、本実施の形態では、
図10(a)(b)に示すように、紙しわNGが媒体Sの後端寄りの幅方向両側部、あるいは、幅方向中央部のいずれかに配置されていたとしても、いずれの場合も紙しわNGが存在していることが判別される。この点、実施の形態1では、紙しわNGが媒体Sの後端寄りの幅方向中央部付近に配置されている場合には、二つの位置センサ110(111,112)では時間Δtのずれが検出し難い傾向にあるため、本実施の形態の方が実施の形態1に比べて紙しわNGの判別制度が高い点で好ましい。
尚、本例では、紙しわNGが媒体Sの後端寄りに存在しているが、媒体Sの先端寄りに存在したとしても、先端側で時間Δtのずれがある出力パターンが得られ、媒体Sに紙しわNGが存在していることが判別される。
また、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、媒体種判別器160からの媒体種情報を制御装置150に取り込み、薄紙等の薄い媒体Sについてのみ紙しわの有無の判別処理を実施するようにしてもよい。
更に、位置センサ110の個数を三より多く設置するようにすれば、更に紙しわNG判別精度を向上させることも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…位置合せ搬送手段,2…上流側搬送手段,3(3a~3c)…検出手段,4…判別手段,6…除去処理手段,7…告知手段,10…媒体搬送装置,11…処理手段,S…媒体,L…基準線