(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146008
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】媒体搬送装置及びこれを用いた媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20231004BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B65H5/06 D
G03G15/00 420
B65H5/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052969
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】大石 竜我
(72)【発明者】
【氏名】山路 亮典
(72)【発明者】
【氏名】玉井 宏幸
【テーマコード(参考)】
2H072
3F049
【Fターム(参考)】
2H072AA16
2H072AA22
2H072CA01
2H072CB00
2H072HA00
2H072HB05
2H072JA02
2H072JA08
3F049AA01
3F049CA04
3F049CA32
3F049DA11
3F049DA12
3F049DB01
3F049DB11
3F049EA27
3F049LA01
3F049LB01
(57)【要約】
【課題】厚さの異なる媒体搬送を両立するために、厚さの異なる媒体に対して適切な搬送力を付与し、かつ、厚さの薄い媒体に対するしわの発生を抑制する。
【解決手段】媒体搬送装置は、搬送可能な最小サイズの媒体Sの搬送方向長さの範囲内前後に設けられ、媒体Sを挟持して搬送する前側及び後側の第1の搬送手段1と、第1の搬送手段1の間に設けられ、媒体Sを挟持し且つ挟持された当該媒体Sを搬送方向に交差する幅方向外側に向けて引張しながら搬送する第2の搬送手段2と、媒体Sが予め決められた厚さ以下の薄い媒体であるとき、第2の搬送手段2のみを用いて媒体Sを挟持して搬送する一方、媒体Sが薄い媒体以外であるとき、第1の搬送手段1及び第2の搬送手段2を用いて媒体Sを挟持して搬送するように制御する制御手段3と、を備える。また、これを含む媒体処理装置も対象である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送可能な最小サイズの媒体の搬送方向長さの範囲内前後に設けられ、前記媒体を挟持して搬送する前側及び後側の第1の搬送手段と、
前記第1の搬送手段の間に設けられ、前記媒体を挟持し且つ挟持された当該媒体を搬送方向に交差する幅方向外側に向けて引張しながら搬送する第2の搬送手段と、
前記媒体が予め決められた厚さ以下の薄い媒体であるとき、前記第2の搬送手段のみを用いて前記媒体を挟持して搬送する一方、前記媒体が前記薄い媒体以外であるとき、前記第1の搬送手段及び前記第2の搬送手段を用いて前記媒体を挟持して搬送するように制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記第2の搬送手段は、駆動回転体及び前記駆動回転体に接触して追従回転する従動回転体からなり、前記従動回転体は軸方向中心を境に一組のロール部材を対称的に備え、各ロール部材の外周面を軸方向外側に向かって外径が次第に拡大する外径拡大部として形成したことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の媒体搬送装置において、
前記外径拡大部は前記ロール部材の外周面を軸方向外側に向かって外径が連続的に拡大する傾斜部として構成されていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項2に記載の媒体搬送装置において、
前記第2の搬送手段は、前記従動回転体の表面硬度に比べて前記駆動回転体の表面が低硬度であることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記第2の搬送手段は、前記第1の搬送手段による媒体挟持圧よりも小さい媒体挟持圧を有することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項6】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記第1の搬送手段は、接離可能な駆動回転体及び前記駆動回転体に接触して追従回転する従動回転体からなり、前記制御手段は、第2の搬送手段のみを用いる場合には、前記第1の搬送手段の駆動回転体と従動回転体とを離して接触状態を解除することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載の媒体搬送装置において、
前記第1の搬送手段の前側に位置する要素は、前記媒体の搬送方向先端位置を位置合わせする位置合わせ用搬送手段を兼用していることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項8】
請求項7に記載の媒体搬送装置において、
前記第2の搬送手段は、前記第1の搬送手段の後側に位置する要素よりも前側に位置する要素寄りに配置されることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項9】
請求項7に記載の媒体搬送装置において、
前記制御手段は、前記第1の搬送手段の前側に位置する要素に媒体の先端位置を位置合わせするときには、前記第1の搬送手段の前側に位置する要素を接触状態のまま駆動を停止し、前記媒体の厚さに合わせて、前記第1の搬送手段の後側に位置する要素及び前記第2の搬送手段を制御することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項10】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記媒体の厚さを判別する判別手段を有し、
前記制御手段は、前記判別手段の判別結果に基づいて前記第1の搬送手段及び第2の搬送手段を制御することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項11】
請求項1に記載の媒体搬送装置と、
前記媒体搬送装置にて搬送された媒体に対して予め決められた処理を施す処理手段と、
を備えたことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の媒体処理装置において、
前記媒体搬送装置は、湾曲した媒体搬送路に沿って設けられることを特徴とする媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さの異なる媒体を搬送する媒体搬送装置及びこれを用いた媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の媒体搬送装置としては、例えば特許文献1~3に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、互いに圧接回転する駆動ローラ及び従動ローラから成り、従動ローラの軸方向における一部のローラ径が他部のローラ系より小さい用紙搬送機構が開示されている。
特許文献2には、坪量が小さい薄紙の場合、駆動部で移動体を回転して基部から本体内に突出させ、給紙ローラを紡錘形に膨らませて用紙との接触面積を小さくし、坪量が大きい厚紙の場合、駆動部で移動体を回転して本体内から基部に引き込み、給紙ローラを円筒形に復元して用紙との接触面積を大きくする給紙装置が開示されている。
特許文献3には、エキスパンタロールにて連帳紙を幅方向外側に引っ張り、連帳紙のしわを抑制する画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-109778号公報(発明の実施の形態,
図1~
図3)
【特許文献2】特開2017-24844号公報(発明を実施するための形態,
図4)
【特許文献3】特開2019-215499号公報(発明を実施するための形態,
図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、厚さの異なる媒体搬送を両立するために、厚さの異なる媒体に対して適切な搬送力を付与し、かつ、厚さの薄い媒体に対するしわの発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の技術的特徴は、搬送可能な最小サイズの媒体の搬送方向長さの範囲内前後に設けられ、前記媒体を挟持して搬送する前側及び後側の第1の搬送手段と、前記第1の搬送手段の間に設けられ、前記媒体を挟持し且つ挟持された当該媒体を搬送方向に交差する幅方向外側に向けて引張しながら搬送する第2の搬送手段と、前記媒体が予め決められた厚さ以下の薄い媒体であるとき、前記第2の搬送手段のみを用いて前記媒体を挟持して搬送する一方、前記媒体が前記薄い媒体以外であるとき、前記第1の搬送手段及び前記第2の搬送手段を用いて前記媒体を挟持して搬送するように制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする媒体搬送装置である。
【0006】
本発明の第2の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記第2の搬送手段は、駆動回転体及び前記駆動回転体に接触して追従回転する従動回転体からなり、前記従動回転体は軸方向中心を境に一組のロール部材を対称的に備え、各ロール部材の外周面を軸方向外側に向かって外径が次第に拡大する外径拡大部として形成したことを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第3の技術的特徴は、第2の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記外径拡大部は前記ロール部材の外周面を軸方向外側に向かって外径が連続的に拡大する傾斜部として構成されていることを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第4の技術的特徴は、第2の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記第2の搬送手段は、前記従動回転体の表面硬度に比べて前記駆動回転体の表面が低硬度であることを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第5の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記第2の搬送手段は、前記第1の搬送手段による媒体挟持圧よりも小さい媒体挟持圧を有することを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第6の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記第1の搬送手段は、接離可能な駆動回転体及び前記駆動回転体に接触して追従回転する従動回転体からなり、前記制御手段は、第2の搬送手段のみを用いる場合には、前記第1の搬送手段の駆動回転体と従動回転体とを離して接触状態を解除することを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第7の技術的特徴は、第6の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記第1の搬送手段の前側に位置する要素は、前記媒体の搬送方向先端位置を位置合わせする位置合わせ用搬送手段を兼用していることを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第8の技術的特徴は、第7の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記第2の搬送手段は、前記第1の搬送手段の後側に位置する要素よりも前側に位置する要素寄りに配置されることを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第9の技術的特徴は、第7の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記制御手段は、前記第1の搬送手段の前側に位置する要素に媒体の先端位置を位置合わせするときには、前記第1の搬送手段の前側に位置する要素を接触状態のまま駆動を停止し、前記媒体の厚さに合わせて、前記第1の搬送手段の後側に位置する要素及び前記第2の搬送手段を制御することを特徴とする媒体搬送装置である。
本発明の第10の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた媒体搬送装置において、前記媒体の厚さを判別する判別手段を有し、前記制御手段は、前記判別手段の判別結果に基づいて前記第1の搬送手段及び第2の搬送手段を制御することを特徴とする媒体搬送装置である。
【0007】
本発明の第11の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた媒体搬送装置と、前記媒体搬送装置にて搬送された媒体に対して予め決められた処理を施す処理手段と、を備えたことを特徴とする媒体処理装置である。
本発明の第12の技術的特徴は、第11の技術的特徴を備えた媒体処理装置において、前記媒体搬送装置は、湾曲した媒体搬送路に沿って設けられることを特徴とする媒体処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の技術的特徴によれば、厚さの異なる媒体搬送を両立するために、厚さの異なる媒体に対して適切な搬送力を付与し、かつ、厚さの薄い媒体に対するしわの発生を抑制することができる。
本発明の第2の技術的特徴によれば、薄い媒体搬送用の第2の搬送手段を容易に構築することができる。
本発明の第3の技術的特徴によれば、薄い媒体搬送用の第2の搬送手段の外径拡大部を簡単に構築することができる。
本発明の第4の技術的特徴によれば、第2の搬送手段を構成するロール部材の外径拡大部の形状を保つことができ、薄い媒体に対するしわの抑制作用を有効に発揮することができる。
本発明の第5の技術的特徴によれば、第2の搬送手段による媒体挟持圧を調整することで、薄い媒体に対して適切な搬送力を付与することができる。
本発明の第6の技術的特徴によれば、簡単な構成で、第2の搬送手段のみによる媒体の搬送動作を実現することができる。
本発明の第7の技術的特徴によれば、厚さの異なる媒体を位置合わせした状態で、適切な搬送力を付与し、かつ、厚さの薄い媒体に対するしわの発生を抑制することができる。
本発明の第8の技術的特徴によれば、第1の搬送手段の後側に位置する要素寄りに第2の搬送手段を設ける場合に比べて、第1の搬送手段による媒体の位置合わせ動作を安定的に実現することができる。
本発明の第9の技術的特徴によれば、厚さの異なる媒体の位置合わせ動作と、搬送動作とを両立することができる。
本発明の第10の技術的特徴によれば、媒体の厚さについての判別結果から制御手段による搬送手段の選定を容易に実現することができる。
本発明の第11の技術的特徴によれば、厚さの異なる媒体搬送を両立するために、厚さの異なる媒体に対して適切な搬送力を付与し、かつ、厚さの薄い媒体に対するしわの発生を抑制することが可能な媒体搬送装置を含む媒体処理装置を提供することができる。
本発明の第12の技術的特徴によれば、湾曲した媒体搬送路に薄い媒体を搬送したとしても、しわの発生を有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は本発明が適用された媒体搬送装置の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図、(c)は薄い媒体以外を搬送する場合の媒体搬送装置の動作例を示す説明図、(d)は薄い媒体を搬送する場合の媒体搬送装置の動作例を示す説明図である。
【
図2】実施の形態1に係る媒体処理装置としての画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【
図3】実施の形態1で用いられる媒体搬送装置及びその周辺部を示す説明図である。
【
図4】(a)は媒体搬送装置の各搬送要素のレイアウトを示す平面説明図、(b)は中段の搬送要素の構成例を示す説明図、(c)は中段の搬送要素の他の構成例を示す説明図である。
【
図5】実施の形態1で用いられる媒体搬送装置による媒体の搬送制御を示すフローチャートである。
【
図6】(a)は薄い媒体以外の媒体を位置合わせする場合の媒体搬送装置の挙動を示す説明図、(b)は(a)中B方向から矢視図、(c)は薄い媒体以外の媒体を位置合わせ後に搬送する場合の媒体搬送装置の挙動を示す説明図、(d)は(c)中D方向から見た矢視図である。
【
図7】(a)は薄い媒体を位置合わせする場合の媒体搬送装置の挙動を示す説明図、(b)は(a)中B方向から矢視図、(c)は薄い媒体を位置合わせ後に搬送する場合の媒体搬送装置の挙動を示す説明図、(d)は(c)中D方向から見た矢視図である。
【
図8】(a)は薄い媒体を位置合わせする場合の比較の形態1に係る媒体搬送装置の挙動を示す説明図、(b)は(a)中B方向から矢視図、(c)は薄い媒体を位置合わせ後に搬送する場合の比較の形態1に係る媒体搬送装置の挙動を示す説明図、(d)は(c)中D方向から見た矢視図である。
【
図9】(a)は比較の形態1に係る媒体搬送装置で薄い媒体を搬送したときに発生した紙しわの一例を示す説明図、(b)は紙しわの他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用された媒体搬送装置の実施の形態の概要を示す説明図であり、同図(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。
同図において、媒体搬送装置は、搬送可能な最小サイズの媒体Sの搬送方向長さの範囲内前後に設けられ、媒体Sを挟持して搬送する前側及び後側の第1の搬送手段1と、第1の搬送手段1の間に設けられ、媒体Sを挟持し且つ挟持された当該媒体Sを搬送方向に交差する幅方向外側に向けて引張しながら搬送する第2の搬送手段2と、媒体Sが予め決められた厚さ以下の薄い媒体であるとき、
図1(d)に示すように、第2の搬送手段2のみを用いて媒体Sを挟持して搬送する一方、媒体Sが薄い媒体以外であるとき、
図1(c)に示すように、第1の搬送手段1及び第2の搬送手段2を用いて媒体Sを挟持して搬送するように制御する制御手段3と、を備えたものである。
そして、この種の媒体搬送装置は、媒体Sに対して予め決められた処理を施す図示外の処理手段を備えた媒体処理装置に組み込まれ、処理手段に対して媒体Sを搬送し、あるいは、処理手段で処理された媒体Sを搬送する機能を具現化する装置として用いられる。
尚、ここでいう処理手段には、媒体Sに対して画像を形成する作像手段のほか、媒体Sに対して孔開け処理、裁断処理、仕分け処理、折り処理等の各種処理を施すものを広く含む。
【0011】
このような技術的手段において、薄い媒体としては、第1の搬送手段1の前後の要素で搬送した場合に、しわが発生する可能性のあるものを適用対象とすればよく、例えば60gsm以下の媒体を薄い媒体とする等適宜選定して差し支えない。
また、第1の搬送手段1、第2の搬送手段2としては媒体Sを挟持して搬送する態様であれば広く含み、代表的には駆動回転体及び駆動回転体に接触して追従回転する従動回転体とを含むものが挙げられる。ここでいう駆動回転体あるいは従動回転体にはロール構成に限らず、ベルト構成のものでもよく、ロール対構成やロールとベルトとの組合せも含む。
更に、第2の搬送手段2については、媒体を搬送方向に交差する幅方向外側に引張しながら搬送するものであれば、回転軸の軸方向の両側に対称的に配置されるロール部材や、一本のロール部材の周面形状を工夫し、ロール部材が回転するときに媒体Sに対して搬送方向成分の他に、搬送方向成分に交差する幅方向外側に引張する成分を適量に付与するようにすればよい。
【0012】
また、制御手段3については、薄い媒体のときに第2の搬送手段2のみを用い、それ以外については第1の搬送手段1及び第2の搬送手段2を用いるように制御するものであればよい。ここで、制御手段3が第1の搬送手段1を用いないときの第1の搬送手段1については、媒体Sを挟持しない状態になっていればよく、例えばロール対構成の態様であれば、一方のロールを他方のロールに対して接離可能とし、使用時には接触配置し、非使用時には接触状態を解除するように一方を他方から離すようにすればよい。尚、第2の搬送手段2は厚さの異なる媒体Sのいずれに対しても挟持して搬送するものであればよく、常に搬送動作に寄与することから、第1の搬送手段1のように、接離可能な構成は必ずしも必要ないが、媒体Sのジャム処理などを考慮すると、少なくとも手動では接触状態を一時的に解除可能な構成であることが好ましい。
【0013】
次に、本実施の形態に係る媒体搬送装置の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、第2の搬送手段2の代表的態様としては、駆動回転体5及び駆動回転体5に接触して追従回転する従動回転体6からなり、従動回転体6は軸方向中心を境に一組のロール部材7を対称的に備え、各ロール部材7の外周面を軸方向外側に向かって外径が次第に拡大する外径拡大部8として形成した態様が挙げられる。本例は、第2の搬送手段2のロール部材7の形状を外径拡大部8として形成したものであり、外径拡大部8の存在によって外径拡大部8に接触する媒体Sに対して幅方向外側に向けて引張力を付与する作用を奏する。
ここで、外径拡大部としては、外径が連続的に拡大する傾斜部に限らず、外径の異なる分割ロール体を多段に組み込んだ多段分割型ロールをも含む。
【0014】
また、第2の搬送手段2の好ましい態様としては、従動回転体6の表面硬度に比べて駆動回転体5の表面が低硬度である態様が挙げられる。本例は駆動回転体5と従動回転体6との接触部間の好ましい硬度関係を示すもので、従動回転体6のロール部材7の外径拡大部8の形状を維持し、媒体Sに対して幅方向外側への引張力を有効に作用させることを企図したものである。
更に、第2の搬送手段2の好ましい態様としては、第1の搬送手段1による媒体挟持圧よりも小さい媒体挟持圧を有する態様が挙げられる。本例は、第2の搬送手段2に対して好ましい媒体挟持圧の設定手法であり、薄い媒体Sに対し、第1の搬送手段1による媒体挟持圧以上の媒体保持圧を設定すると、媒体Sを幅方向外側に引張する力が大き過ぎ、薄い媒体Sが破損する懸念があるため、薄い媒体Sに対しては、第1の搬送手段1による媒体挟持圧よりも小さい範囲で、しわが発生せずに搬送可能な媒体挟持圧を適宜選定することが好ましい。
【0015】
また、第2の搬送手段2のみを用いるときの代表的態様としては、第1の搬送手段1は、接離可能な駆動回転体及び駆動回転体に接触して追従回転する従動回転体からなり、制御手段3は、第2の搬送手段2のみを用いる場合には、第1の搬送手段1の駆動回転体と従動回転体とを離して接触状態を解除する態様が挙げられる。本例は、第1の搬送手段1の前側の要素1f、後側の要素1rの両方を接離可能な駆動回転体及び従動回転体で構成し、第2の搬送手段2のみによる媒体Sの搬送を可能にするようにした態様である。
本例において、第1の搬送手段1の前側に位置する要素1fは、媒体Sの搬送方向先端位置を位置合わせする位置合わせ用搬送手段を兼用することが可能である。つまり、本例は、第1の搬送手段1の前側に位置する要素1fを位置合わせ用搬送手段と兼用し、接離可能な駆動回転体と従動回転体とを接触状態のまま駆動を一時停止することで、媒体Sの先端位置の位置合わせするようにすればよい。
【0016】
このとき、媒体Sの位置合わせ用に適した態様としては、第2の搬送手段2は、第1の搬送手段1の後側に位置する要素1rよりも前側に位置する要素1f寄りに配置されることが好ましい。本例は、位置合わせ時に、位置合わせ用搬送手段としては媒体Sの先端位置を整合する基準となる突き当て部を構成し、後側に位置する要素1rとしては、整合時に媒体Sをループさせるようにするが、第2の搬送手段2が後側に位置する要素1r寄りに配置された場合にはループを作成し難いことを踏まえ、ループを作成し易くするほか、前側に位置する要素1fとの駆動を共有し易くする点で好ましい。
更に、媒体Sの位置合わせ用に適した別の態様としては、制御手段3は、第1の搬送手段1の前側に位置する要素1fに媒体Sの先端位置を位置合わせするときには、第1の搬送手段1の前側に位置する要素1fを接触状態のまま駆動を停止し、媒体Sの厚さに合わせて、第1の搬送手段1の後側に位置する要素1r及び第2の搬送手段2を制御する態様が挙げられる。本例は、媒体Sの位置合わせ時には、位置合わせ用搬送手段を兼用する第1の搬送手段1の前側に位置する要素1fを、位置合わせ用のせき止め部材として使用するようにしたものである。
【0017】
また、媒体搬送装置の別の好ましい態様としては、媒体Sの厚さを判別する図示外の判別手段を有し、制御手段3は、判別手段の判別結果に基づいて第1の搬送手段1及び第2の搬送手段2を制御する態様が挙げられる。本例において、判別手段には、媒体の厚さ(厚さに付随するパラメータも含む)を判別するものであればよく、媒体Sの厚さを検出するもの、あるいは、媒体Sを指定するものなどが挙げられる。
更に、媒体搬送装置のレイアウトとしては、媒体処理装置の任意の媒体搬送路に設けるようにしても差し支えないが、湾曲した媒体搬送路に沿って設けるようにすることが有効である。本例は、湾曲した媒体搬送路が、直線状の媒体搬送路に比べて薄い媒体Sに対するしわの発生頻度が高い傾向があることを踏まえ、有効利用する上で好ましい。
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は実施の形態1に係る媒体処理装置としての画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
-画像形成装置の全体構成-
同図において、画像形成装置の基本的構成は、装置筐体20内に例えば複数の色成分画像を作製するための作像エンジン21を搭載し、この作像エンジン21の下方には作像エンジン21に対して媒体を搬送する媒体搬送系80と、作像エンジン21にて作製された画像を媒体に定着させる定着装置70とを備えたものである。
そして、本例では、作像エンジン21は、複数の色成分(本実施の形態ではイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の一般色の画像を形成する画像形成部22(具体的には22a~22d)と、各画像形成部22にて形成された各色成分画像を順次転写(一次転写)して保持するベルト状の中間転写体30と、中間転写体30上に転写された各色成分画像を媒体(用紙又はフィルム)に二次転写(一括転写)する二次転写装置(一括転写装置)50と、を備えている。尚、
図2中、符号40は画像形成装置を操作するための操作パネルである。
【0019】
-画像形成部-
本実施の形態において、各画像形成部22(22a~22d)は、夫々ドラム状の感光体23を有し、各感光体23の周囲には、感光体23が帯電されるコロトロンや転写ロール等の帯電装置24、帯電された感光体23上に静電潜像が書き込まれるレーザ走査装置等の露光装置25、感光体23上に書き込まれた静電潜像がYMCKの各色成分トナーにて現像される現像装置26、感光体23上のトナー画像が中間転写体30に転写される転写ロール等の一次転写装置27及び感光体23上の残留トナーが除去される感光体清掃装置28を夫々配設したものである。
また、中間転写体30は、複数(本実施の形態では三つ)の張架ロール31~33に掛け渡されており、例えば張架ロール31が図示外の駆動モータにて駆動される駆動ロールとして用いられ、当該駆動ロールにて循環移動するようになっている。更に、張架ロール31,33間には二次転写後の中間転写体30上の残留トナーを除去するための中間転写体清掃装置35が設けられている。
【0020】
-二次転写装置(一括転写装置)-
更に、二次転写装置(一括転写装置)50は、例えば中間転写体30の張架ロール33に対向した部位に転写ロール55を圧接配置すると共に、中間転写体30の張架ロール33を転写ロール55の対向電極をなす対向ロール56としたものである。ここで、本例では、転写ロール55は金属製シャフトの周囲に発泡ウレタンゴムやEPDMにカーボンブラック等が配合された弾性層を被覆した構成になっており、対向ロール56(本例では張架ロール33を兼用)には導電性の給電ロール(図示せず)を介して転写電源(図示せず)からの転写電圧を印加し、一方、転写ロール55を接地することで、転写ロール55及び対向ロール56間に所定の転写電界を形成し、転写ロール55と対向ロール56との間で挟持した中間転写体30のニップ領域を二次転写域(一括転写域)TRとして機能するようにしたものである。尚、二次転写装置50は転写ロール55を使用した態様であるが、これに限られるものではなく、転写ロール55を張架ロールの一つとして転写ベルトを掛け渡した転写ベルトモジュール等を用いてもよいことは勿論である。
【0021】
-定着装置-
定着装置70は、媒体の画像保持面側に接触して配置される駆動回転可能な加熱定着ロール71と、当該加熱定着ロール71に対向して圧接配置され、加熱定着ロール71に追従して回転する加圧定着ロール72とを有し、両定着ロール71,72間の定着領域に媒体上に保持された画像を通過させ、当該画像を加熱加圧定着するものである。
ここで、加熱定着ロール71は例えばロール本体内にヒータを内蔵したり、あるいは、ロール本体外周面に外部ヒータを接触させることでロール本体を加熱するようになっており、また、加圧定着ロール72には必要に応じてヒータを付加するようにしてもよいことは勿論である。尚、本例はロール対構成例を示すものであるが、これに限られるものではなく、加熱定着ロール71を例えば電磁誘導加熱方式を採用した加熱定着ベルトで構成するなど適宜選定して差し支えない。
【0022】
-媒体搬送系-
更に、媒体搬送系80は、複数段(本例では二段)の媒体供給容器81,82を有し、媒体供給容器81,82のいずれかから供給される媒体を略鉛直方向に延びる鉛直搬送路83から略水平方向に延びる水平搬送路84を経て二次転写域TRへと至り、その後、転写された画像が保持された媒体を、搬送ベルト85を経由して定着装置70による定着部位に至り、装置筐体20の側方に設けられた媒体排出受け86に排出するものである。
そして更に、媒体搬送系80は、水平搬送路84のうち定着装置70の媒体搬送方向下流側に位置する部分から下方に向かって分岐する反転可能な分岐搬送路87を有し、当該分岐搬送路87で反転された媒体を戻し搬送路88を経て再び鉛直搬送路83から水平搬送路84へと戻し、二次転写域TRにて媒体の裏面に画像を転写し、定着装置70を経て媒体排出受け86へ排出するようになっている。尚、分岐搬送路87には途中から分岐し且つ反転された媒体を媒体排出受け86側に搬送する分岐戻し搬送路89が設けられている。
また、媒体搬送系80には媒体の位置を整合して二次転写域TRに供給する位置整合ロール90のほか、各搬送路83,84,87,88,89には適宜数の搬送ロール91が設けられている。更にまた、装置筐体20の媒体排出受け86の反対側には水平搬送路84に向かって手差し媒体が供給可能な手差し媒体供給器92が設けられている。
【0023】
-紙しわ対策の必要性-
この種の画像形成装置においては、媒体として厚さの異なる用紙(厚紙から薄紙まで)を広く用いたいという要請がある。このような要請の中で、例えば80gsm以下の薄紙、特には60gsm以下の薄紙を使用する場合に、紙しわの発生が懸念されてきている。
ここで、紙しわの発生要因について検討してみるに、薄紙搬送時には、例えば対構成のロール部材からなる搬送ロールの軸方向両端部の僅かな外径差によって紙しわが発生したり、薄紙以外の厚紙搬送を実施する上で、厚紙に対して適切になるように搬送ロールによる搬送力を高く設定する手法が採用されているため、薄紙の場合には、搬送ロールによる搬送力に伴う接触域での押圧に負けてしまい、紙しわの発生が懸念される。
【0024】
従前にあっては、厚さの異なる用紙に合わせて搬送力を調整する調整機構を追加し、紙しわの発生を抑制する技術が既に提案されている。また、個別対応で薄紙専用に媒体搬送装置をチューニングすることで対応する機種も既に提案されている。
しかしながら、前者の対策にあっては、搬送力の調整機構を導入するには、モータやセンサ等の各種部品が必要になり、構成が煩雑でかつ部品点数が増加すると共に、調整機構を設置するためのスペースを確保することが必要になってしまう。このため、比較的大型の高機能機種にはこの種の調整機構を導入することは可能であるが、安価かつ小型の機種に導入することは困難であった。
また、後者の対策にあっては、個別対応で薄紙に対応するために媒体搬送装置のチューニングを実施してしまうと、厚紙搬送性能が著しく低下してしまい、厚紙搬送が困難になるばかりか、厚紙搬送を可能にするためには、別途専門作業員による修復作業が必要になるという虞れもある。
【0025】
そこで、本実施の形態では、既存の媒体搬送装置の構成例を前提とし、薄い媒体の搬送に適した搬送部品を追加することで、厚さの異なる媒体の搬送性能を両立する方式を採用することを検討したものである。
-媒体搬送装置の基本構成-
本実施の形態において、媒体搬送装置100は、
図3及び
図4(a)に示すように、媒体Sを二次転写域TRに搬送するに当たって、媒体Sの先端位置を整合した後に、二次転写域TRに至る領域に組み込まれたものである。
【0026】
本例では、媒体搬送装置100は、搬送可能な最小サイズの媒体Sの搬送方向長さの範囲内の前後に設けられ、媒体Sを挟持して搬送する第1の搬送手段としての前後の搬送ロールR1(具体的には前側に位置する前段搬送ロールR1f及び後側に位置する後段搬送ロールR1r)と、前段搬送ロールR1f及び後段搬送ロールR1rの間に設けられ、媒体Sを挟持し且つ挟持された当該媒体Sを搬送方向に交差する幅方向外側に向けて引張しながら搬送する第2の搬送手段として中段搬送ロールR2mと、媒体Sが予め決められた厚さ以下の薄い媒体であるとき、中段搬送ロールR2mのみを用いて媒体Sを挟持して搬送する一方、媒体Sが薄い媒体以外であるとき、前段の搬送ロールR1(R1f,R1r)及び中段搬送ロールR2mを用いて媒体Sを挟持して搬送するように制御する制御装置160と、を備えている。
【0027】
本例において、前段搬送ロールR1fは、
図2、
図3及び
図4(a)に示すように、媒体Sの先端位置を整合する位置整合ロール90を兼用している。
また、後段搬送ロールR1r、中段搬送ロールR2mは、位置整合ロール90に対して搬送方向上流側に設置される搬送ロール91(具体的には91a,91b)に相当する。
【0028】
-前段搬送ロール-
前段搬送ロールR1fとしての位置整合ロール90は、
図3及び
図4(a)に示すように、金属製の回転軸の周囲にロール本体を有する駆動ロール121と、この駆動ロール121に接触して従動回転し、金属製の回転軸の周囲にロール本体を有する従動ロール122とを備えている。ここで、各ロール本体はポリウレタンゴム等の円筒状の弾性体を回転軸の周囲に積層すると共に弾性体の表面を保護層(フッ素系樹脂の離型層など)で被覆したものである。
そして、駆動ロール121には図示外の駆動伝達部品を介して駆動モータ123が駆動連結され、また、従動ロール122はニップリリース機構124に支持され、駆動ロール121に対して接離(ニップリリース)可能に移動し、駆動ロール121との間に媒体Sを挟持する接触域(ニップ域)を形成する一方、接触域から離れたリトラクト位置に移動するようになっている。本例において、接触域のニップ圧(媒体Sを挟持する接触圧に相当)は35~40N/m
2程度になるように選定されている。
尚、位置整合ロール90は、媒体Sの先端を位置合わせする場合には、駆動ロール121に対する従動ロール122のニップ状態は維持され、駆動モータ123による駆動ロール121の駆動は一時停止する。
【0029】
-後段搬送ロール-
後段搬送ロールR1rとしての搬送ロール91aは、位置整合ロール90と同様に駆動ロール131及び従動ロール132を備え、駆動ロール131は図示外の駆動伝達部品を介して駆動モータ133に駆動連結され、従動ロール132はニップリリース機構134に支持されている。
尚、搬送ロール91aも、接触域のニップ圧が位置整合ロール90と同様に35~40N/m2程度に選定されている。
【0030】
-中段搬送ロール-
中段搬送ロールR2mとしての搬送ロール91bは、
図2、
図3及び
図4(a)(b)に示すように、位置整合ロール90と同様に駆動ロール141及び従動ロール142を備え、本例では、搬送ロール91bは、後段搬送ロールR1rとしての搬送ロール91aに比べて、位置整合ロール90寄りに配置されている。
ここで、駆動ロール141は駆動伝達ギア列等の駆動伝達機構143を介して駆動モータに駆動連結されているが、位置整合ロール90寄りに配置されていることから、位置整合ロール90の駆動モータ133を共用している。一方、従動ロール142は、前段搬送ロールR1f、後段搬送ロールR1rと異なり、ニップリリース機構には支持されていない。但し、ジャム処理時には駆動ロール141に対して従動ロール142を手動で一時的に退避可能な支持構造にはなっている。
また、本例では、位置整合ロール90の駆動モータ123は搬送ロール91bの駆動をも兼用しており、媒体Sの位置合わせ時において、位置整合ロール90の駆動を停止し、かつ、搬送ロール91bを駆動するケースがあるため、駆動モータ123と駆動ロール121との間には駆動の伝達を断続するクラッチのような駆動断続機構125が設置されている。
【0031】
<中段搬送ロールの形状>
従動ロール142は、
図4(a)(b)に示すように、回転軸145の軸方向中心を境に一組のロール部材146を対称的に備え、各ロール部材146の外周面を軸方向外側に向かって外径が次第に拡大する外径拡大部147として形成したものである。
特に、本例では、外径拡大部147は外径が小径D
Sから大径D
Bに向かって次第に連続的に拡大する傾斜部148として構成されており、この傾斜部148は軸方向に平行な基準線に対して傾斜角θで傾斜配置されている。ここで、傾斜角θとしては0.13~0.17°程度に選定されている。
本例において、傾斜部148は、外径拡大部147の一例であり、例えば一組のロール部材146ではなく、一本のロール部材(図示せず)につき、回転軸145の軸方向中心を境として対称的な位置に傾斜部148を形成するようにしてもよい。
【0032】
<中段搬送ロールの接触域>
本例において、ロール部材146は、例えばポリウレタンゴム等で中空の円錐台状に形成され、回転軸145の周囲に嵌め込まれ、その周面を保護層(例えばフッ素樹脂等からなる離型層など)で被覆したものである。
一方、駆動ロール141は、回転軸の周囲にロール本体を有するものであるが、ロール本体の外径は同径に保たれており、従動ロール142のロール部材146の表面硬度は駆動ロール141のロール本体よりも高硬度になっており、駆動ロール141及び従動ロール142の接触域は、ロール部材146の傾斜部148が駆動ロール141のロール本体に食い込んだ状態で形成されている。
そして、駆動ロール141及び従動ロール142の接触域のニップ圧(媒体Sを挟持する接触圧に相当)は、位置整合ロール90や搬送ロール91aに比べて十分に小さく、例えば9~11N/m2程度に選定されている。
【0033】
-媒体搬送装置の周辺部構成-
<位置センサ>
図3において、符号170は、位置整合ロール90よりも媒体Sの搬送方向下流側の直後に設けられ、位置整合ロール90を通過した媒体Sの先端が斜行状態にあるか否かを検出する位置センサである。この位置センサ170は、媒体Sの搬送方向に交差する幅方向両端部寄りに分かれて二つ配置され、位置センサ170を含む両者間の幅寸法は、使用可能なサイズの媒体Sの幅寸法よりも短く設定され、位置整合ロール90を通過する媒体Sの先端又は後端が過るタイミングを検出することを可能とするものである。
この位置センサ170により、媒体Sの走行姿勢が斜行状態にない真っ直ぐであることを確認することが可能である。
【0034】
<媒体種判別器>
本例では、例えば
図3に示すように、媒体種判別器180が設けられている。この媒体種判別器180は、媒体Sとしての用紙が例えば60gsm以下の薄紙であるか、薄紙以外の厚紙であるかを直接検出する厚み検出器や、制御装置160内のメモリに使用可能な媒体種テーブルを用意しておき、この媒体種テーブルから使用する媒体を指定する媒体指定器(例えば
図2の操作パネル40に具備)などを含むものである。
【0035】
-媒体搬送装置の制御系-
本例では、
図3に示すように、厚さの異なる媒体Sを適切に位置合わせし、かつ、適切に搬送するための制御装置160が設けられている。
この制御装置160は、各種プロセッサを含むマイクロコンピュータにて構成されている。ここでいう「プロセッサ」とは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0036】
本例において、制御装置160は、図示外のメモリに、「媒体搬送制御プログラム(
図5参照):媒体Sの位置整合動作も含む」等の必要なプログラムを予めインストールしておき、媒体種判別器180からの媒体Sの判別情報に基づいて、媒体搬送制御プログラムを実行し、厚さの異なる媒体Sの位置整合動作(
図5では「レジ動作」と表記)を適切に実施した後に、厚さの異なる媒体Sを適切な搬送力で二次転写域TRに向けて搬送するようにしたものである。
【0037】
-媒体搬送装置の制御動作-
<媒体の位置整合動作>
図5に示すように、制御装置160は、媒体種判別器180からの判別信号に基づき、搬送対象となる媒体Sとしての用紙が薄紙か、薄紙以外の厚紙かを認識する。
◆通常モード
先ず、媒体Sが薄紙以外の厚紙S1である場合について説明すると、制御装置160は、媒体Sの位置整合動作(レジ動作)仕様を「通常モード」にする。
このとき、通常モードは、
図6(a)(b)に示すように、前段搬送ロールRf1としての位置整合ロール(
図5では「レジロール」と表記)90をニップ維持のまま駆動断続機構125(
図3参照)を駆動遮断状態にすることで駆動を停止し、一方、後段搬送ロールR1rとしての搬送ロール(
図5では「後段ロール」と表記)91aをニップ維持のまま駆動し、更に、中段搬送ロールR2mとしての搬送ロール(
図5では「中段ロール」と表記)91bをニップ維持のまま駆動するようにするものである。
【0038】
この状態において、媒体(厚紙)S1は搬送ロール91a,91bによって搬送され、搬送ロール91aによる搬送力P1に加えて、搬送ロール91bによる搬送力P2が作用する。このため、搬送ロール91aだけで位置整合動作を行う場合に比べて、媒体S2に対する搬送力がP1+P2になり、増加する。
この後、媒体S1の先端位置が位置整合ロール90に突き当たった段階で、媒体S1の先端側には、
図6(a)に仮想線で示すように、位置整合のための補正用ループLPが形成される。しかる後、ニップリリース機構134により搬送ロール91aのニップ状態を解除すると、媒体S1の補正用ループLPは平面状に戻りながら媒体Sの先端位置が位置整合ロール90によって整合される。この間、搬送ロール91bはニップ維持のまま駆動し、媒体S1を位置整合ロール90側に押し付けているが、搬送ロール91bのニップ圧は小さく、その搬送力P2も小さいため、媒体Sの位置整合動作の邪魔にはならない。
【0039】
◆薄紙モード
次に、媒体Sが薄紙S2である場合について説明すると、制御装置160は、媒体Sの位置整合動作(レジ動作)仕様を「薄紙モード」にする。
このとき、薄紙モードは、
図7(a)(b)に示すように、前段搬送ロールR1fとしての位置整合ロール(
図5では「レジロール」と表記)90をニップ維持のまま駆動断続機構125を駆動遮断状態にすることで駆動を停止し、一方、後段搬送ロールR1rとしての搬送ロール(
図5では「後段ロール」と表記)91aをニップリリース機構134にてニップ状態を解除し、更に、中段搬送ロールR2mとしての搬送ロール(
図5では「中段ロール」と表記)91bをニップ維持のまま駆動するようにするものである。
【0040】
この状態において、搬送ロール91aはニップ状態が解除されているため、駆動ロール131は回転駆動されるものの、搬送ロール91aから媒体S2には搬送力P1は伝達されない。このため、媒体(薄紙)S2は搬送ロール91bのみによって搬送され、搬送ロール91bによる搬送力P2が作用する。このとき、搬送ロール91bによる搬送力P2は、媒体S2の搬送方向成分に加えて、媒体S2の幅方向外側に向かう成分を有しているため、媒体S2は、幅方向外側に引張されながら位置整合ロール90側に搬送される。これにより、媒体S2には搬送ロール91aによる強い搬送力P1が作用せず、幅方向外側に引張されながら弱い搬送力で搬送されることになり、位置整合動作時に媒体S2に紙しわが発生する懸念はない。
この後、媒体S2の先端位置が位置整合ロール90に突き当たった段階で、媒体S2の先端側には、
図7(a)に仮想線で示すように、位置整合のための補正用ループLPが形成されるが、搬送ロール91aのニップ状態は解除されたままであるため、媒体S2の補正用ループLPは平面状に戻りながら媒体Sの先端位置が位置整合ロール90によって整合される。この間、搬送ロール91bはニップ維持のまま駆動し、媒体S2を位置整合ロール90側に押し付けているが、搬送ロール91bのニップ圧は小さく、その搬送力P2も小さいため、媒体Sの位置整合動作の邪魔にはならない。
【0041】
<媒体の搬送動作再開>
前述した媒体の位置整合動作が完了すると、位置整合された媒体S(S1又はS2)の搬送動作が再開される。
◆通常モード
先ず、媒体Sが薄紙以外の厚紙S1である場合について説明すると、制御装置160は、媒体Sの搬送動作仕様を「通常モード」にする。
このとき、通常モードは、
図6(c)(d)に示すように、前段搬送ロールRf1としての位置整合ロール(
図5では「レジロール」と表記)90をニップ維持のまま駆動断続機構125を駆動伝達状態にすることで駆動を開始し、一方、後段搬送ロールR1rとしての搬送ロール(
図5では「後段ロール」と表記)91aをニップ維持のまま駆動し、更に、中段搬送ロールR2mとしての搬送ロール(
図5では「中段ロール」と表記)91bをニップ維持のまま駆動するようにするものである。
【0042】
この状態において、媒体(厚紙)S1は位置整合ロール90及び搬送ロール91a,91bによって搬送され、位置整合ロール90による搬送力P1、搬送ロール91aによる搬送力P1に加えて、搬送ロール91bによる搬送力P2が作用する。このため、媒体S2には位置整合ロール90及び搬送ロール91a,91bの全ての搬送力が作用することになり、位置整合ロール90から二次転写域TRに向けて搬送を再開する。
このとき、媒体S1への搬送力は、位置整合ロール90及び搬送ロール91aの2つの搬送部材による場合に比べて、搬送ロール91bによる搬送力P2が追加されることから、より強い搬送力で安定的に搬送される。尚、媒体(厚紙)S1についてはもともと剛性が高いため、紙しわが発生する懸念はない。
【0043】
◆薄紙モード
次に、媒体Sが薄紙S2である場合について説明すると、制御装置160は、媒体Sの搬送動作仕様を「薄紙モード」にする。
このとき、薄紙モードは、
図7(c)(d)に示すように、前段搬送ロールRf1としての位置整合ロール(
図5では「レジロール」と表記)90をニップリリース機構124にてニップ状態を解除し、かつ、駆動断続機構125を駆動伝達状態にすることで駆動を開始し、一方、後段搬送ロールR1rとしての搬送ロール(
図5では「後段ロール」と表記)91aをニップリリース機構134にてニップ状態を解除し、更に、中段搬送ロールR2mとしての搬送ロール(
図5では「中段ロール」と表記)91bをニップ維持のまま駆動するようにするものである。
【0044】
この状態において、位置整合ロール90、搬送ロール91aはニップ状態が解除されているため、駆動ロール121、駆動ロール131は回転駆動されるものの、位置整合ロール90、搬送ロール91aから媒体S2には搬送力P1は伝達されない。このため、媒体(薄紙)S2は搬送ロール91bのみによって搬送され、搬送ロール91bによる搬送力P2が作用する。このとき、搬送ロール91bによる搬送力P2は、媒体S2の搬送方向成分に加えて、媒体S2の幅方向外側に向かう成分を有しているため、媒体S2は、幅方向外側に引張されながら位置整合ロール90側に搬送される。これにより、媒体S2には搬送ロール91aによる強い搬送力P1が作用せず、幅方向外側に引張されながら弱い搬送力で搬送されることになり、位置整合動作時に媒体S2に紙しわが発生する懸念はない。
【0045】
◎比較の形態1
次に、本実施の形態に係る媒体搬送装置の性能を確認する上で、
図8を用いて比較の形態1に係る媒体搬送装置について説明する。
比較の形態1に係る媒体搬送装置100’は、
図8(a)(b)に示すように、前段搬送ロールR1fとしての位置整合ロール90と、後段搬送ロールR1rとしての搬送ロール91aと、を備え、中段搬送ロールR2mとしての搬送ロール91bを備えていない態様である。
本例において、例えば媒体Sとして厚紙S1、薄紙S2のいずれを使用する場合であっても、媒体Sの位置整合動作及び位置整合後の媒体Sの搬送動作の再開については同様の制御が行われる。
先ず、媒体Sとして薄紙S2を使用する場合の位置整合動作としては、前段搬送ロールRf1としての位置整合ロール90をニップ維持のまま駆動を停止し、一方、後段搬送ロールR1rとしての搬送ロール91aをニップ維持のまま駆動する。
この状態において、媒体S2には搬送ロール91aによる強い搬送力P1が作用し、また、搬送ロール91aによる搬送力P1には媒体S2の幅方向外側に向かう引張力も作用しないことから、位置整合動作時において媒体S2に紙しわが発生する懸念がある。
【0046】
また、媒体Sとしての薄紙S2の搬送動作の再開時には、
図8(c)(d)に示すように、前段搬送ロールR1fとしての位置整合ロール90をニップ維持のまま駆動を開始し、一方、後段搬送ロールR1rとしての搬送ロール91aをニップ維持のまま駆動する。
この状態において、媒体S2には、位置整合ロール90及び搬送ロール91aによる強い搬送力P1が作用し、また、位置整合ロール90及び搬送ロール91aによる搬送力P1には媒体S2の幅方向外側に向かう引張力も作用しないことから、媒体S2の搬送動作の再開時において媒体S2に紙しわが発生する懸念がある。
【0047】
ここで、「紙しわ」の発生パターンについて補足しておくと、例えば
図9(a)(b)に示すように、媒体Sとしての薄紙S2の搬送方向後端寄りの幅方向両側部、あるいは、幅方向中央部付近に紙しわNGが顕在化することがある。また、薄紙S2の搬送方向先端寄りの幅方向両側部、あるいは、幅方向中央部付近に顕在化することもある。
このように、比較の形態1に係る媒体搬送装置100’では、媒体Sとして薄紙S2を使用した場合には、紙しわNGが発生する懸念があるのに対し、実施の形態1に係る媒体搬送装置100では媒体Sとして薄紙S2を使用したとしても、紙しわNGの発生は有効に抑制される点で好ましい。
【0048】
本実施の形態では、外径拡大部147として傾斜部148の構成例が開示されているが、これに限られるものではなく、例えば以下に示す変形の形態1のように構成することも可能である。
◎変形の形態1
外径拡大部147の他の構成例について説明する。
本例では、従動ロール142は、例えば
図4(c)に示すように、回転軸145の軸方向中心を境に一組のロール部材146を対称的に備え、各ロール部材146としては外径寸法が軸方向外側に向かって段階的に拡大する分割ロール体151~153を多段に配置し、多段分割ロール体150(151~153)の段階的に変化する外周部分を外径拡大部147としたものである。ここで、分割ロール体151~153の外径差は、駆動ロール141と従動ロール142との間の接触域に媒体Sを挟持したときに、分割ロール体151~153の外周部分が弾性変形により段差なくつらなる程度に抑えることが好ましい。
【0049】
また、実施の形態1では、媒体搬送装置100は位置整合ロール90を含む箇所に適用したものが開示されているが、これに限定されるものではなく、例えば以下に示す変形の形態2のように構成することも可能である。
◎変形の形態2
変形の形態2は、例えば
図2に示すように、媒体の搬送路83,84,87,88,89のうち、位置整合ロール90を兼用しない箇所に媒体搬送装置100を適用するものである。
また、実施の形態1では、水平搬送路84に媒体搬送装置100を設置するようにしたものであるが、これに限定されるものではなく、鉛直搬送路83、分岐搬送路87等の略鉛直方向に延びる搬送路に媒体搬送装置100を設置してもよい。更に、
図2中、例えば鉛直搬送路83から水平搬送路84に移行する箇所には湾曲搬送路95が存在することがあるが、特に、媒体Sとして薄紙S2を搬送する場合には、直線搬送路に比べて、湾曲搬送路95の方が紙しわが発生し易い傾向があるため、このような湾曲搬送路95を含む箇所に本例の媒体搬送装置100を設置することは紙しわの発生を抑えるという点で有効である。
【符号の説明】
【0050】
1…第1の搬送手段,1f…第1の搬送手段の前側に位置する要素,1r…第1の搬送手段の後側に位置する要素,2…第2の搬送手段,3…制御手段,5…駆動回転体,6…従動回転体,7…ロール部材,8…外径拡大部,S…媒体