(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146016
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】研磨パッド及び研磨パッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20231004BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B24B37/24 C
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052981
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】栗原 浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
(72)【発明者】
【氏名】越智 恵介
(72)【発明者】
【氏名】川崎 哲明
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158DA12
3C158DA17
3C158EB19
3C158EB29
3C158ED00
5F057AA03
5F057AA09
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5F057BA11
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5F057CA11
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5F057EB07
5F057EB08
5F057EB09
5F057EB13
5F057EB30
5F057FA39
(57)【要約】
【課題】 段差解消性能及びディフェクト性能に優れ、かつ、耐摩耗性にも優れた研磨パッドを提供する。
【解決手段】 イソシアネート末端プレポリマー及び硬化剤由来のポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドであって、X線小角散乱法により測定される前記研磨層におけるハードセグメント間の距離が9.5nm以下である、研磨パッド。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート末端プレポリマー及び硬化剤由来のポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドであって、
X線小角散乱法により測定される前記研磨層におけるハードセグメント間の距離が9.5nm以下である、研磨パッド。
【請求項2】
前記イソシアネート末端プレポリマーが、ポリイソシアネート化合物由来構成単位と、高分子量ポリオール由来構成単位とを含み、
前記高分子量ポリオール由来構成単位は、少なくともポリプロピレングリコール構成単位と、ポリエステルジオール構成単位とからなる、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記ポリプロピレングリコール構成単位が、前記高分子量ポリオール由来の構成単位に対して、60重量%未満である、請求項2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記ポリエステルジオール構成単位を形成するためのポリエステルジオールが、600~2500の数平均分子量である、請求項2に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂発泡体の平均気泡径が5μm以上20μm未満である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記イソシアネート末端プレポリマーのNCO当量が500~600である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項7】
X線小角散乱法により測定される前記研磨層におけるハードセグメント間の距離が3.0~9.5nmである、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項8】
ポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、
イソシアネート末端プレポリマーと、硬化剤とを混合し、反応させ、前記ポリウレタン樹脂発泡体を得る工程と、
前記ポリウレタン樹脂発泡体を成形し、研磨層の形状にする工程と、を含み、
X線小角散乱法により測定される前記研磨層におけるハードセグメント間の距離が9.5nm以下である、研磨パッドの製造方法。
【請求項9】
イソシアネート末端プレポリマーと、硬化剤とを混合する際に、未膨張バルーンも共存させる、請求項8に記載の研磨パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッドに関する。詳細には、本発明は、光学材料、半導体ウエハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板等の研磨に好適に用いることができる研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
光学材料、半導体ウエハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板の表面を平坦化するための研磨法として、化学機械研磨(chemical mechanical polishing,CMP)法が一般的に用いられている。
【0003】
CMP法について、
図1を用いて説明する。
図1のように、CMP法を実施する研磨装置1には、研磨パッド3が備えられ、当該研磨パッド3は、保持定盤16に保持された被研磨物8に当接するとともに、研磨を行う層である研磨層4と研磨層4を支持するクッション層6を含む。研磨パッド3は、被研磨物8が押圧された状態で回転駆動され、被研磨物8を研磨する。その際、研磨パッド3と被研磨物8との間には、スラリー9が供給される。スラリー9は、水と各種化学成分や硬質の微細な砥粒の混合物(分散液)であり、その中の化学成分や砥粒が流されながら、被研磨物8との相対運動により、研磨効果を増大させるものである。スラリー9は溝又は孔を介して研磨面に供給され、排出される。
【0004】
ところで、半導体デバイスの研磨には、イソシアネート成分(トルエンジイソシアネート(TDI)など)及び高分子量ポリオール(ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)など)を含むプレポリマーとジアミン系硬化剤(4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)など)を反応させて得られた硬質ポリウレタン材料を研磨層4として用いた研磨パッドを用いることが一般的である。プレポリマーに含まれる高分子量ポリオールはウレタンのソフトセグメントを形成し、その取り扱いやすさや適度なゴム弾性を示すPTMGが高分子量ポリオールとして従来からよく用いられていた。
【0005】
しかし、近年、半導体デバイスの配線の微細化に伴い、従来の研磨パッドでは、段差解消性能やディフェクト性能が不十分である場合があり、高分子量ポリオールとしてPTMG以外を用いる検討がなされている。
【0006】
上記のような課題を検討した文献として、特許文献1には、プレポリマーの高分子量ポリオールとして、ポリプロピレングリコール(PPG)を用いることで、段差解消性能が高く、スクラッチが少ない研磨パッドが開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、プレポリマーの高分子量ポリオールとして、PPG及びPTMGの混合物を用いることで、欠陥率を低減した研磨パッドがそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-157415号公報
【特許文献2】特開2011-040737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の研磨パッドは、研磨層の耐摩耗性が悪く研磨パッドのライフが短いという問題点があった。また、特許文献2に記載の研磨パッドは、段差解消性能やディフェクト性能が十分なものではないという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、段差解消性能やディフェクト性能に優れ、さらに耐摩耗性に優れた研磨パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意研究の結果、研磨パッドが有する研磨層に使用する材料において、ハードセグメント間の距離を特定の長さであるような構造である場合に、段差解消性能やディフェクト性能に優れ、さらに耐摩耗性に優れた研磨パッドになることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] イソシアネート末端プレポリマー及び硬化剤由来のポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドであって、
X線小角散乱法により測定される前記研磨層におけるハードセグメント間の距離が9.5nm以下である、研磨パッド。
[2] 前記イソシアネート末端プレポリマーが、ポリイソシアネート化合物由来構成単位と、高分子量ポリオール由来構成単位とを含み、
前記高分子量ポリオール由来構成単位は、少なくともポリプロピレングリコール構成単位と、ポリエステルジオール構成単位とからなる、[1]に記載の研磨パッド。
[3] 前記ポリプロピレングリコール構成単位が、前記高分子量ポリオール由来の構成単位に対して、60重量%未満である、[2]に記載の研磨パッド。
[4] 前記ポリエステルジオール構成単位を形成するためのポリエステルジオールが、600~2500の数平均分子量である、[2]に記載の研磨パッド。
[5] 前記ポリウレタン樹脂発泡体の平均気泡径が5μm以上20μm未満である、[1]に記載の研磨パッド。
[6] 前記イソシアネート末端プレポリマーのNCO当量が500~600である、[1]に記載の研磨パッド。
[7] X線小角散乱法により測定される前記研磨層におけるハードセグメント間の距離が3.0~9.5nmである、[1]に記載の研磨パッド。
[8] ポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、
イソシアネート末端プレポリマーと、硬化剤とを混合し、反応させ、前記ポリウレタン樹脂発泡体を得る工程と、
前記ポリウレタン樹脂発泡体を成形し、研磨層の形状にする工程と、を含み、
X線小角散乱法により測定される前記研磨層におけるハードセグメント間の距離が9.5nm以下である、研磨パッドの製造方法。
[9] イソシアネート末端プレポリマーと、硬化剤とを混合する際に、未膨張バルーンも共存させる、[8]に記載の研磨パッドの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の研磨パッドが有する研磨層は、特定の長さのハードセグメント間の距離を有し、それにより、段差解消性能やディフェクト性能に優れ、さらに耐摩耗性に優れた研磨パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】
図3は、実施例1及び比較例1の研磨パッドのそれぞれの研磨層のX線小角散乱法による測定結果である。
【
図5】
図5は、極大を求めやすいように
図4のグラフを補正させた図である。
【
図6】
図6は、段差研磨量試験における段差状態の模式図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、発明を実施するための形態に限定されるものではない。
【0015】
<<研磨パッド>>
研磨パッド3の構造について
図2(a)を用いて説明する。研磨パッド3は、
図2(a)のように、研磨層4と、クッション層6とを含む。研磨パッド3の形状は円盤状が好ましいが、特に限定されるものではなく、また、大きさ(径)も、研磨パッド3を備える研磨装置1のサイズ等に応じて適宜決定することができ、例えば、直径10cm~2m程度とすることができる。
なお、本発明の研磨パッド3は、好ましくは
図2(a)に示すように、研磨層4がクッション層6に接着層7を介して接着されている。
研磨パッド3は、クッション層6に配設された両面テープ等によって研磨装置1の研磨定盤10に貼付される。研磨パッド3は、研磨装置1によって被研磨物8を押圧した状態で回転駆動され、被研磨物8を研磨する(
図1参照)。
【0016】
<研磨層>
(構成)
研磨パッド3は、被研磨物8を研磨するための層である研磨層4を備える。研磨層4を構成する材料は、特定のポリウレタン樹脂である。
研磨層4の大きさ(径)は、研磨パッド3と同様であり、直径10cm~2m程度とすることができ、研磨層4の厚みは、通常1~5mm程度とすることができる。
研磨層4は、研磨装置1の研磨定盤10と共に回転され、その上にスラリー9を流しながら、スラリー9の中に含まれる化学成分や砥粒を、被研磨物8と一緒に相対運動させることにより、被研磨物8を研磨する。
研磨層4は、中空微小球体4Aが分散されていてもよい。中空微小球体4Aが分散されている場合は、研磨層4が摩耗されると中空微小球体4Aが研磨面に露出され研磨面に微少な空隙が生じ、この微少な空隙がスラリーを保持することで被研磨物8の研磨をより進行させることができる。
【0017】
研磨層4は、イソシアネート末端プレポリマーと、硬化剤(鎖伸長剤)と、必要により中空微小球体4Aとを混合した混合液を注型し硬化させたポリウレタン樹脂発泡体をスライスすることで形成されている。すなわち、研磨層4は、乾式成型されている。
【0018】
(ハードセグメント間の距離)
研磨層4を構成する材料は、X線小角散乱法により測定されるハードセグメント間の距離が9.5nm以下である。ハードセグメント間の距離が9.5nm以下であると、その研磨層を備える研磨パッドは、優れた段差解消性能、優れたディフェクト性能及び、優れた耐摩耗性を有する。
ハードセグメント間の距離は、好ましくは3.0~9.5nm、より好ましくは、4.0~9.0nmである。
【0019】
ハードセグメント間の距離は、X線小角散乱法により測定される。ここで、X線小角散乱法とは、試料に対してX線を入射することで、散乱したX線を検出器で得る方法であり、散乱する角度により、測定対象のサイズ・形状・構造相関などのデータを非破壊で得ることができるものである。
ポリウレタン樹脂発泡体の研磨層4に対して、X線小角散乱法で測定すると、
図3のような曲線を得ることができる。
【0020】
なお、本明細書において、ハードセグメントとは、研磨層4を構成するポリウレタン樹脂におけるイソシアネートと硬化剤との反応により形成されるウレタン結合又はウレア結合から構成される部分を意味する。
一般的に、X線小角散乱法で測定した場合、得られたデータの強度(Intensity)をそのまま用いるのではなく、以の式を用いて補正した強度で検討する。本発明においても、この計算により補正している。
補正後の強度=(対象サンプルの強度/対象サンプルの透過率)-(空気の強度/空気の透過率)
【0021】
ハードセグメント間の距離は、
図3で囲んだ部分において、極大のときのQの値から算出する。すなわち、ハードセグメント間の距離は、距離=2π/Qから求めることができる。したがって、Qの値が小さいと、ハードセグメント同士の距離が大きいものとなる。
【0022】
図3を用いて説明する。
図3の曲線において、透過率などを用いて補正をしたものである。この
図3の平坦部分の最も高いピークの場所に着目し、そのX軸がハードセグメント間の距離に対応する。このように得られるハードセグメント間の距離が9.5nm以下であると、その研磨層を備える研磨パッドは、優れた段差解消性能、優れたディフェクト性能及び、優れた耐摩耗性を有する。
【0023】
ここからさらに、極大を求めやすいように変換する。以下の方法でグラフ再描画する。
(再描画方法)
(1)得られた曲線のうち、強度が右肩下がりとなる部分から接線を導出する。例えば、
図3の測定結果から、Qが0.1~0.2付近の強度から接線を導出する。
(2)上記(1)で導出した接線のQ値(X)から強度を求め、変曲点付近における補正後の強度との差を計算する。例えば、
図3の測定結果から、Qが0.3~1.2に変曲点があるため、接線の式にQを代入して得た強度を求める。その後、補正後の強度から、接線の式で得られた強度を引いて差を求める。
(3)上記(2)で求めた差から、強度差のグラフ(正規分布)を作成する。
(4)正規分布のピーク(
図5で示すグラフのピーク)がハードセグメント間距離と推定される。
【0024】
なお、強度差のグラフの傾斜がなだらかな場合、ハードセグメントの大きさがバラバラである傾向(ハードセグメントの大きさがバラついている傾向)があり、強度差のグラフの傾斜が急な場合、同じ大きさのハードセグメントが多い傾向(ハードセグメントの大きさが揃っている傾向)がある。
【0025】
すでに説明したように、ハードセグメント間の距離が9.5nm以下であると良好な特性を得ることができるが、このハードセグメント間の距離は、研磨層4の材料の変更や製造方法を変更することによって、調整することができる。
例えば、研磨層4の材料である高分子量ポリオールが、ポリプロピレングリコールと、ポリエステルジオールの両方を用いて得る場合、ポリプロピレングリコール及びポリエステルジオールの割合を変えることによって、ハードセグメント間の距離が変わる。すなわち、ポリプロピレングリコール及びポリエステルジオールの割合を変更することにより、ハードセグメント間の距離を調整することができることができる。
【0026】
(中空微小球体)
本発明の研磨パッドにおける研磨層4に含有してもよい中空微小球体4Aは、研磨層4の研磨面や研磨層4の断面に中空体として確認でき、当該中空体は、通常、2~200μmの開口径(中空微小球体4Aの直径)を有する。平均気泡径としては、好ましくは、5μm以上20μm未満である。中空微小球体4Aの形状は、球状、楕円状、及びこれらに近い形状のものが挙げられる
【0027】
中空微小球体4Aは、市販のバルーンを用いることができるが、既膨張タイプのもの、及び、未膨張のものが挙げられる。未膨張のものは、加熱膨張性微小球状体であり、製造過程で加熱膨張させ、所定の大きさの気泡にすることができる。本発明では、必要に応じ適宜使用することができる。
【0028】
(溝加工)
本発明の研磨層4の被研磨物8側の表面には、溝加工を設けることができる。溝は、特に限定されるものではなく、研磨層4の周囲に連通しているスラリー排出溝、及び研磨層4の周囲に連通していないスラリー保持溝のいずれでもよく、また、スラリー排出溝とスラリー保持溝の両方を有してもよい。スラリー排出溝としては、格子状溝、放射状溝などが挙げられ、スラリー保持溝としては、同心円状溝、パーフォレーション(貫通孔)などが挙げられ、これらを組み合わせることもできる。
【0029】
<クッション層>
(構成)
本発明の研磨パッド3は、クッション層6を有する。クッション層6は、研磨層4の被研磨物8への当接をより均一にすることが望ましい。クッション層6の材料としては、樹脂を含浸させた含浸不織布、合成樹脂やゴム等の可撓性を有する材料、気泡構造を有する発泡体等のいずれから構成されていてもよい。例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリブタジエン、シリコーン等の樹脂や天然ゴム、ニトリルゴム、ポリウレタンゴム等のゴムなどが挙げられる。密度及び圧縮弾性率の調整の観点で、含浸不織布が好ましく、不織布に含浸させる樹脂材料にポリウレタンを用いることが好ましい。
【0030】
また、クッション層6は、スポンジ状の微細気泡を有するポリウレタン樹脂製のものも好ましく用いられる。
【0031】
本発明の研磨パッド3におけるクッション層6の圧縮弾性率、密度、気泡は特に限定されるものではなく、公知の特性値を有するクッション層6を用いることができる。
【0032】
<接着層>
接着層7は、クッション層6と研磨層4を接着させるための層であり、通常、両面テープ又は接着剤から構成される。両面テープ又は接着剤は、当技術分野において公知のもの(例えば、接着シート)を使用することができる。
研磨層4およびクッション層6は、接着層7で貼り合わされている。接着層7は、例えば、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系から選択される少なくとも1種の粘着剤で形成することができる。例えば、アクリル系粘着剤が用いられ、厚みが0.1mmに設定することができる。
【0033】
本発明の研磨パッド3は、段差解消性能やディフェクト性能に優れ、しかも、耐摩耗性に優れたものである。
ここで、段差解消性能とは、研磨に伴い段差(凹凸)を有するパターンウエハの段差を少なくする性能のことを言う。段差解消性能を測定する実験の模式図を
図6に示す。被研磨物において3500オングストロームの段差がある場合、段差解消性能が高い研磨パッド(点線)と、相対的に段差解消性能が低い研磨パッド(実線)を用いた場合の段差の解消状態を示す。
図6の(a)の時点では差がないものの、研磨が進み、研磨量が2000オングストロームのときに、良好な段差解消性能がある研磨パッド(点線)は、相対的に段差解消性能が低い研磨パッド(実線)に比べて、段差が少ないことが示されており((b))、段差解消性能が高い研磨パッドは、相対的に早く段差が解消する((c))。点線で示す研磨パッドは、実線の研磨パッドよりも相対的に段差解消性能が高いと言える。
【0034】
また、「ディフェクト」とは、被研磨物の表面に付着した細かい粒子が残留したものを示す「パーティクル(Particle)」、被研磨物の表面に付着した研磨層の屑を示す「パッド屑(Pad Debris)」、被研磨物の表面についた傷を示す「スクラッチ(Scratch)」等を含めた欠陥の総称を意味し、ディフェクト性能とはこの「ディフェクト」を少なくする性能のことを言う。
【0035】
そして、耐摩耗性とは、摩耗に対する耐性のことを言う。
【0036】
<<研磨パッドの製造方法>>
本発明の研磨パッド3の製造方法について説明する。
【0037】
<研磨層の材料>
研磨層の材料としては、本発明では、主成分としてはポリウレタン樹脂である。具体的な主成分の材料としては、例えば、イソシアネート末端プレポリマーと硬化剤とを反応させて得られるポリウレタン樹脂発泡体材料を挙げることができる。
【0038】
イソシアネート末端プレポリマーと硬化剤とを用いた研磨層4の製造方法としては、例えば、イソシアネート末端プレポリマーを調製する調製工程;イソシアネート末端プレポリマー、硬化剤、任意選択的な添加剤、及び任意選択的な中空微小球体を準備する材料準備工程;イソシアネート末端プレポリマー、硬化剤、任意選択的な添加剤、及び任意選択的な中空微小球体を混合して成形体成形用の混合液を得る混合工程;前記成形体成形用混合液から研磨層を成形する硬化工程、を含む製造方法が挙げられる。
【0039】
以下、調製工程;材料準備工程、混合工程、成形工程に分けて、それぞれ説明する。
【0040】
<調製工程>
本発明で用いられるイソシアネート末端プレポリマーは、ポリイソシアネート化合物と、ポリプロピレングリコールやポリエステルジオール等の高分子量ポリオールとを反応させることにより得ることができるものであり、イソシアネート基を分子末端に含むものである。イソシアネート末端プレポリマーは、市販のものがあればそれを用いることができるが、通常は、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを部分的に反応させたものをプレポリマーとして用いる。前記反応に特に制限はなく、ポリウレタン樹脂の製造において公知の方法及び条件を用いて付加重合反応すればよい。例えば、40℃に加温したポリオール化合物に、窒素雰囲気にて撹拌しながら50℃に加温したポリイソシアネート化合物を添加し、30分後に80℃まで昇温させ更に80℃にて60分間反応させるといった方法で製造することができる。
【0041】
イソシアネート末端プレポリマーのNCO当量は、特に限定されるものではないが、好ましくは500~600である。500未満だと、ディフェクト性能が悪化する場合があり、600を超えると、所望の研磨レートが得られず段差解消性能が悪化する場合があるからである。
【0042】
以下、各成分について説明する。
【0043】
(ポリイソシアネート化合物)
イソシアネート末端プレポリマーは、ポリイソシアネート化合物を原料として用いる。
【0044】
ポリイソシアネート化合物としては、市販されているものを用いてもよく、特に限定されるものではない。
本明細書において、ポリイソシアネート化合物とは、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。
ポリイソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有していれば特に制限されるものではない。例えば、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物としては、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネー卜(MDI)、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1、4-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン-1,4-ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることができる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリイソシアネート化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
ポリイソシアネート化合物としては、2,4-TDI及び/又は2,6-TDIを含むことが好ましい。
【0046】
(イソシアネート末端プレポリマーの原料としての高分子量ポリオール)
本明細書において、「ポリオール」とは、分子内に2つ、またはそれ以上の水酸基(OH)を有する化合物を意味する。また、「高分子量」とは、分子量500以上のことを言う。
本発明では、イソシアネート末端プレポリマーの原料としての高分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール等のジオール化合物、トリオール化合物等;ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(又はポリテトラメチレンエーテルグリコール)(PTMG)等のポリエーテルポリオール化合物;ポリエステルジオールを挙げることができる。
中でもハードセグメント間の距離を調整できる観点から、ポリプロピレングリコールとポリエステルジオールを組み合わせて使用することが好ましい。以下、ポリプロピレングリコールとポリエステルについて、説明する。
【0047】
本発明で用いることができるポリプロピレングリコールは、特に限定されるものではなく、例えば、500~2000、より好ましくは650~1000の数平均分子量(Mn)を有するポリプロピレングリコールが挙げられる。
なお、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)により測定することができる。なお、ポリウレタン樹脂からポリオール化合物の数平均分子量を測定する場合は、アミン分解等の常法により各成分を分解した後、GPCによって推定することもできる。
【0048】
本発明では、イソシアネート末端プレポリマーの原料としての高分子量ポリオールとして、ポリエステルジオールを用いることができる。本明細書において、ポリエステルジオールは、2つ以上のエステル結合と、2つの水酸基(OH)を有する。
ポリエステルジオールは、例えば、ジカルボン酸化合物と、ジオール化合物とを反応させることにより得ることができる。
ジカルボン酸化合物としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和結合含有ジカルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸およびこれらの無水物等の芳香族ジカルボン酸;等が挙げられ、単独でも組み合わせても用いることができる。
【0049】
ポリエステルジオールの合成に用いられているジオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられ、単独でも組み合わせても用いることができる。
【0050】
上記の中で、アジピン酸と、1,4-ブタンジオールとのポリエステルジオール、及び、アジピン酸と、ジエチレングリコールとのポリエステルジオールが好ましい。
【0051】
ポリエステルジオールの数平均分子量は、ソフトセグメントとして研磨パッドに必要なゴム弾性を示す観点から、600~2500であることが好ましい。
【0052】
ポリプロピレングリコールは、高分子量ポリオール全体に対して、60重量%未満が好ましい。60重量%以上の場合、耐摩耗性が悪くなってしまう場合がある。好ましくは、ポリプロピレングリコールは、高分子量ポリオール全体に対して30~50重量%である。
また、ポリエステルジオールは、高分子量ポリオール全体に対して、70重量%以下が好ましい。70重量%を超えると、段差解消性能が悪くなってしまう場合がある。好ましくは、ポリエステルジオールは、高分子量ポリオール全体に対して50~70重量%である。
ポリプロピレングリコールとポリエステルジオールの合計量は、高分子量ポリオール全体に対して80重量%以上であることが好ましい。80重量%以上であれば、効果が顕著に表れるためである。
【0053】
本発明において、高分子量ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール等も用いてもよく、高分子量ポリオール全体に対して、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。10重量%を超えて含むと、段差解消性能やディフェクト性能が不十分になる場合がある。
【0054】
<材料準備工程>
本発明の研磨層4の製造のために、イソシアネート末端プリポリマー、硬化剤、任意選択的な添加剤、及び任意選択的な中空微小球体を準備する。イソシアネート末端プレポリマーについては、すでに説明したので、ここでは、硬化剤、添加剤、及び中空微小球体について説明する。
【0055】
(硬化剤)
本発明の研磨層4の製造方法では、混合工程において硬化剤(鎖伸長剤ともいう)をイソシアネート末端プレポリマーなどと混合させる。硬化剤を加えることにより、その後の成形体成形工程において、ウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物の主鎖末端が硬化剤と結合してポリマー鎖を形成し、硬化することができる。
硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4-メチル-2,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[3-(イソプロピルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(1-メチルプロピルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(1-メチルペンチルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス(3,5-ジアミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,6-ジアミノ-4-メチルフェノール、トリメチルエチレンビス-4-アミノベンゾネート、及びポリテトラメチレンオキサイド-di-p-アミノベンゾネート等の多価アミン化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-4,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールメタン、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール等の多価アルコール化合物が挙げられる。また、多価アミン化合物が水酸基を有していてもよく、このようなアミン系化合物として、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等を挙げることができる。多価アミン化合物としては、ジアミン化合物が好ましく、例えば、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンビス-o-クロロアニリン)(以下、MOCAと略記する。)を用いることがさらに好ましい。
【0056】
(添加剤)
研磨層4の材料として、酸化剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。本発明においては、本発明の効果を阻害するものでなければ、特に限定されるものではない。
【0057】
(中空微小球体)
研磨層4は、必要により、外殻を有し、内部が中空状である中空微小球体4Aを含む。上記したように、中空微小球体4Aの材料としては、市販のものを使用することができる。あるいは、常法により合成することにより得られたものを使用してもよい。中空微小球体4Aの外殻の材質としては、特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエーテルアクリライト、マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル及び有機シリコーン系樹脂、並びにそれらの樹脂を構成する単量体を2種以上組み合わせた共重合体が挙げられる。また、市販品の中空微小球体としては、以下に限定されないが、例えば、エクスパンセルシリーズ(アクゾ・ノーベル社製商品名)、マツモトマイクロスフェア(松本油脂(株)社製商品名)などが挙げられる。
【0058】
中空微小球体4Aの材料は、イソシアネート末端プレポリマー100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは1~5質量部、さらにより好ましくは1~3質量部となるように添加する。
【0059】
また、上記の成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、従来使用されている発泡剤を、中空微小球体4Aと併用してもよく、下記混合工程中に前記各成分に対して非反応性の気体を吹き込んでもよい。該発泡剤としては、水の他、炭素数5又は6の炭化水素を主成分とする発泡剤が挙げられる。該炭化水素としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサンなどの鎖状炭化水素や、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素が挙げられる。
【0060】
プレポリマーを製造する方法は、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ポリプロピレングリコールと、ポリエステルジオールとを混ぜて反応させてもよいし、ポリイソシアネート化合物とポリプロピレングリコールとの混合物1と、ポリイソシアネート化合物とポリエステルジオールとの混合物2とを、混合することによって、反応させてもよい。
【0061】
<混合工程>
混合工程では、前記準備工程で得られた、イソシアネート末端プレポリマー、硬化剤、任意選択的な添加剤、任意選択的な中空微小球体を混合機内に供給して攪拌・混合する。混合工程は、上記各成分の流動性を確保できる温度に加温した状態で行われるが、加熱しすぎると、中空微小球体が、膨張してしまい、所定の開口分布を有さなくなってしまうため、注意が必要である。
【0062】
<成形工程>
成形体成形工程では、前記混合工程で調製された成形体成形用混合液を30~100℃に予熱した型枠内に流し込み一次硬化させた後、100~150℃程度で10分~5時間程度加熱して二次硬化させることにより硬化したポリウレタン樹脂(ポリウレタン樹脂成形体)を成形する。このとき、イソシアネート末端プレポリマー、硬化剤が反応してポリウレタン樹脂発泡体を形成することにより該混合液は硬化する。
イソシアネート末端プレポリマーは、粘度が高すぎると、流動性が悪くなり混合時に略均一に混合することが難しくなる。温度を上昇させて粘度を低くするとポットライフが短くなり、却って混合斑が生じて得られる発泡体に含まれる中空微小球体の大きさにバラツキが生じる。特に、反応温度が高すぎると、未膨張タイプの中空微小球体を用いた場合、必要以上に膨張してしまい、所望の開孔を得られなくなる。反対に粘度が低すぎると混合液中で気泡が移動してしまい、中空微小球体が略均等に分散した発泡体を得ることが難しくなる。このため、イソシアネート末端プレポリマーは、温度50~80℃における粘度を500~4000mPa・sの範囲に設定することが好ましい。このことは、例えば、イソシアネート末端プレポリマーの分子量(重合度)を変えることで粘度を設定することができる。イソシアネート末端プレポリマーは、50~80℃程度に加熱され流動可能な状態とされる。
【0063】
成形工程では、必要により注型された混合液を型枠内で反応させ発泡体を形成させる。このとき、イソシアネート末端プレポリマーと硬化剤との反応によりイソシアネート末端プレポリマーが架橋硬化する。
【0064】
成形体を得た後、シート状にスライスして複数枚の研磨層4を形成する。スライスには、一般的なスライス機を使用することができる。スライス時には研磨層4の下層部分を保持し、上層部から順に所定厚さにスライスされる。スライスする厚さは、例えば、1.3~2.5mmの範囲に設定されている。厚さが50mmの型枠で成型した発泡体では、例えば、発泡体の上層部および下層部の約10mm分をキズ等の関係から使用せず、中央部の約30mm分から10~25枚の研磨層4が形成される。硬化成型ステップで内部に中空微小球体4Aが略均等に形成された発泡体が得られる。
【0065】
得られた研磨層4の研磨面に、必要により溝加工を施してもよい。本発明においては、溝加工の方法及びその形状は特に限定されない。
【0066】
このようにして得られた研磨層4は、その後、研磨層4の研磨面とは反対側の面に両面テープが貼り付けられる。両面テープに特に制限はなく、当技術分野において公知の両面テープの中から任意に選択して使用することが出来る。
【0067】
<クッション層6の製造方法>
クッション層6は、樹脂を含浸してなる含浸不織布で構成することが好ましい。不織布に含浸させる樹脂としては、好ましくは、ポリウレタン及びポリウレタンポリウレア等のポリウレタン系、ポリアクリレート及びポリアクリロニトリル等のアクリル系、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル及びポリフッ化ビニリデン等のビニル系、ポリサルホン及びポリエーテルサルホン等のポリサルホン系、アセチル化セルロース及びブチリル化セルロース等のアシル化セルロース系、ポリアミド系並びにポリスチレン系などが挙げられる。不織布の密度は、樹脂含浸前の状態(ウェッブの状態)で、好ましくは0.3g/cm3以下であり、より好ましくは0.1~0.2g/cm3である。また、樹脂含浸後の不織布の密度は、好ましくは0.7g/cm3以下であり、より好ましくは0.25~0.5g/cm3である。樹脂含浸前及び樹脂含浸後の不織布の密度が上記上限以下であることにより、加工精度が向上する。また、樹脂含浸前及び樹脂含浸後の不織布の密度が上記下限以上であることにより、基材層に研磨スラリーが浸透することを低減することができる。不織布に対する樹脂の付着率は、不織布の重量に対する付着させた樹脂の重量で表され、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは75~200重量%である。不織布に対する樹脂の付着率が上記上限以下であることにより、所望のクッション性を有することができる。
【0068】
<接合工程>
接合工程では、形成された研磨層4およびクッション層6を接着層7で貼り合わせる(接合する)。接着層7には、例えば、アクリル系粘着剤を用い、厚さが0.1mmとなるように接着層7を形成する。すなわち、研磨層4の研磨面と反対側の面にアクリル系粘着剤を略均一の厚さに塗布する。研磨層4の研磨面Pと反対側の面と、クッション層6の表面と、を塗布された粘着剤を介して圧接させて、研磨層4およびクッション層6を接着層7で貼り合わせる。そして、円形等の所望の形状に裁断した後、汚れや異物等の付着が無いことを確認する等の検査を行い、研磨パッド3を完成させる。
【実施例0069】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0070】
各実施例及び比較例において、特段の指定のない限り、「部」とは「質量部」を意味するものとする。
【0071】
また、NCO当量とは、“(ポリイソシアネート化合物の質量(部)+ポリオール化合物の質量(部))/[(ポリイソシアネート化合物1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物の質量(部)/ポリイソシアネート化合物の分子量)-(ポリオール化合物1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物の質量(部)/ポリオール化合物の分子量)]”で求められるNCO基1個当たりのプレポリマー(PP)の分子量を示す数値である。
【0072】
(研磨層の製造)
表1に記載の割合になるように、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、高分子量ポリオールを混合し、PP1とPP2をそれぞれ調製し、それを表2の割合になるように混合し得られるNCO当量約520のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー100部に、殻部分がアクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体からなり、殻内にイソブタンガスが内包された未膨張タイプの中空微小球体3.5部を添加混合し、混合液を得た。得られた混合液を第1液タンクに仕込み、保温した。次に、第1液とは別途に、硬化剤としてMOCA23.1部を第2液タンクに仕込み、第2液タンク内で保温した。第1液タンク、第2液タンクの夫々の液体を、注入口を2つ具備した混合機に夫々の注入口からプレポリマー中の末端イソシアネート基に対する硬化剤に存在するアミノ基及び水酸基の当量比を表わすR値が0.90となるように注入した。注入した2液を混合攪拌しながら80℃に予熱した成形機の金型へ注入した後、型締めをし、30分間、加熱し一次硬化させた。一次硬化させた成形物を脱型後、オーブンにて120℃で4時間二次硬化し、ウレタン成形物を得た。得られたウレタン成形物を25℃まで放冷した後に、再度オーブンにて120℃で5時間加熱してから1.3mmの厚みにスライスし、研磨層1~4を得た。
【0073】
(クッション層の製造)
ポリエステル繊維からなる不織布をウレタン樹脂溶液(DIC社製、商品名「C1367」)に浸漬した。浸漬後、1対のローラ間を加圧可能なマングルローラを用いて樹脂溶液を絞り落として、不織布に樹脂溶液を略均一に含浸させた。次いで、室温の水からなる凝固液中に浸漬することにより、含浸樹脂を凝固再生させて樹脂含浸不織布を得た。その後、樹脂含浸不織布を凝固液から取り出し、さらに水からなる洗浄液に浸漬して、樹脂中のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を除去した後、乾燥させた。乾燥後、バフィング処理により表面のスキン層を除去し厚み1.3mmのクッション層を作製した。
【0074】
(実施例及び比較例)
研磨層1~4およびクッション層を厚さ0.1mmの両面テープ(PET基材の両面にアクリル系樹脂からなる接着剤を備えるもの)で接合した。
なお、表1において、TDIは2,4-トルエンジイソシアネート、PPG1000は数平均分子量1000のポリプロピレングリコールであり、エステルは、アジピン酸とブタンジオールとを反応させて得られた数平均分子量1000のポリエステルジオールである。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
(ハードセグメントンの距離)
研磨層1~4のハードセグメントの距離を上記説明した内容に基づいて以下の測定条件により測定した。
[測定条件]
装置 :BL8S3(あいちシンクロトロン光センター)
波長 :1.5オングストローム
測定検出器 :R-AXIS IV++
測定時間 :120sec
測定カメラ長:3976.88mm
研磨層1(実施例1)と、研磨層3(比較例1)の測定データを
図3、
図4、
図5に示す。データから得られたハードセグメントの距離(HS距離)と、そのときのピーク時のQの値、及び透過率を表3に示す。
【0079】
(密度)
研磨層の密度(g/cm3)は、日本工業規格(JIS K 6505)に準拠して測定した。
【0080】
(D硬度)
研磨層のD硬度は、日本工業規格(JIS-K-6253)に準拠して、D型硬度計を用いて測定した。ここで、測定試料は、少なくとも総厚さ4.5mm以上になるように、必要に応じて複数枚の研磨層を重ねることで得た。
【0081】
(摩耗試験)
得られた研磨パッドについて、小型摩擦摩耗試験機を用いて、下記条件にて摩耗試験を行った。得られた摩耗試験結果において、表3では0.15mm以下のとき、○と表記し、0.15mmを超えるときに×と表記した。
【0082】
(摩耗試験条件)
使用研磨機:小型摩擦摩耗試験機
圧子側:PAD(17φ)
定盤側:♯180サンドペーパー
荷重:300g
液:水
流量:45ml/分
定盤回転数:40rpm
時間:10分
厚み測定荷重:300g
【0083】
適切なハードセグメント距離である実施例1乃至2は、優れた摩耗性能を示すが、イソシアネート末端プレポリマーにおける高分子量ポリオールがPPGのみやエステルのみの研磨層を用いた比較例1乃至2では、良い結果ではなかった。
【0084】
得られた実施例1、2、比較例1及び2の研磨パッドを用いて、下記研磨条件で研磨試験を行い、研磨性能(段差解消性能及びディフェクト性能)を評価した。
(研磨条件)
使用研磨機:F-REX300X(荏原製作所社製)
Disk:A188(3M社製)
研磨剤温度:20℃
研磨定盤回転数:85rpm
研磨ヘッド回転数:86rpm
研磨圧力:3.5psi
研磨スラリー(金属膜):CSL-9044C(CSL-9044C原液:純水=重量比1:9の混合液を使用) (フジミコーポレーション製)
研磨スラリー流量:200ml/min
研磨時間:60秒
被研磨物(金属膜):Cu膜基板
パツドブレーク:35N 10分
コンディショニング:Ex-situ、35N、4スキャン
【0085】
(段差解消性能試験)
研磨パッドを、研磨装置の所定位置にアクリル系接着剤を有する両面テープを介して設置し、上記研磨条件にて研磨加工を施した。段差解消性能は、120μm/120μm、100μm/100μm、50μm/50μm、10μm/10μmの各配線幅におけるディッシングを段差・表面粗さ・微細形状測定装置(KLAテンコール社製、P-16+)で測定することにより評価した。
7000オングストローム膜厚、3000オングストロームの段差を有するパターンウエハに対して、1回の研磨量が1000オングストロームになるように研磨レートを調整して研磨を実施し、段階的に研磨を行い都度ウエハの段差測定を実施した。すべての配線幅において、研磨量が6000オングストローム以下で段差が解消したものを○、研磨量が6000オングストロームを超えた後に解消したものや段差が解消しなかったものを×と表記した。
【0086】
(ディフェクト性能評価)
研磨処理枚数が16枚目・26枚目・51枚目の基板を、表面検査装置(KLAテンコール社製、Surfscan SP2XP)の高感度測定モードを用いて、大きさが155nm以上となるディフェクト(表面欠陥)を検出した。検出された各ディフェクトについて、レビューSEMを用いて撮影したSEM画像の解析を行い、スクラッチの個数を計測した。実務上必要と考えられる10個以下のスクラッチ数であれば○と表記し、10個を超えるスクラッチ数であれば×と表記した。