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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146037
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20231004BHJP
   E06B 3/44 20060101ALI20231004BHJP
   E05D 13/00 20060101ALI20231004BHJP
   E05F 17/00 20060101ALI20231004BHJP
   E06B 7/082 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/44
E05D13/00 L
E05D13/00 M
E05F17/00 C
E06B7/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053018
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏典
(72)【発明者】
【氏名】村山 克哉
(72)【発明者】
【氏名】松村 心互
【テーマコード(参考)】
2E014
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E014AA03
2E014FA01
2E014FB03
2E036JA03
2E036JC02
2E036KB01
2E036LA03
2E239CA14
2E239CA22
2E239CA28
2E239CA32
2E239CA44
(57)【要約】
【課題】障子の組付効率及び防火性能を向上することができる建具を提供する。
【解決手段】建具は、窓枠と、左右の摺動部品が取り付けられた外障子と、内障子と、第1端部が前記外障子に連結され、第2端部が前記内障子に連結されたワイヤとを備える。前記ワイヤの第1端部には、軸部と、該軸部の先端に設けられ、該軸部よりも大径の頭部とを有し、前記摺動部品に連結されるねじが設けられている。前記摺動部品は、前記ねじが連結されるワイヤ取付片が設けられた連結金具を有する。前記連結金具は、前記ワイヤ取付片に設けられ、前記軸部の外径よりも大きく、且つ前記頭部の外径よりも小さい穴幅を有する係止孔と、前記係止孔に連通すると共に前記係止孔とは異なる面に設けられ、前記頭部の外径よりも大きい穴幅を有する挿入孔とを有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具であって、
左右の縦枠を有する窓枠と、
前記窓枠に支持されると共に、前記左右の縦枠に沿ってガイドされる左右の摺動部品が取り付けられ、閉鎖時に前記窓枠の上部室外側に配置される外障子と、
前記窓枠に支持され、閉鎖時に前記窓枠の下部室内側に配置される内障子と、
第1端部が前記外障子に連結され、第2端部が前記内障子に連結され、前記第1端部と前記第2端部との間が滑車に巻掛けされることで、前記外障子と前記内障子とを互い違いに上下動させるワイヤと、
を備え、
前記ワイヤの第1端部には、軸部と、該軸部の先端に設けられ、該軸部よりも大径の頭部とを有し、前記摺動部品に連結されるねじが設けられ、
前記摺動部品は、前記ねじが連結されるワイヤ取付片が設けられた連結金具を有し、
前記連結金具は、
前記ワイヤ取付片に設けられ、前記軸部の外径よりも大きく、且つ前記頭部の外径よりも小さい穴幅を有する係止孔と、
前記係止孔に連通すると共に前記係止孔とは異なる面に設けられ、前記頭部の外径よりも大きい穴幅を有する挿入孔と、
を有する
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記連結金具は、
前記外障子の下框に連結される連結片と、
前記ワイヤ取付片と前記連結片との間に設けられ、前記挿入孔が形成された中間板部と、
を有する
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項2に記載の建具であって、
前記連結金具は、前記中間板部が前記ワイヤ取付片と前記連結片との上下方向に起立するように設けられ、全体として略クランク形状の金属板で構成されている
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項3に記載の建具であって、
前記連結金具は、前記挿入孔側とは逆側で前記係止孔に連通すると共に、前記下框の見込み方向に沿って延び、前記軸部の外径よりも大きく、且つ前記頭部の外径よりも小さい穴幅を有する長孔をさらに有する
ことを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の建具であって、
戸体をさらに備え、
前記窓枠は、前記戸体に取り付けられた通風ユニットを構成する
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上げ下げ窓の建具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外障子と内障子とを備える上げ下げ窓の建具において、外障子に取り付けた取付金具にワイヤの端部を連結した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4412555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成では、ワイヤの端部に設けた端子部材を取付金具に対して横向きのねじで固定している。このため、この構成では、ワイヤを取付金具に固定した後、ねじを回して外障子の上下位置の微調整を行うことができず、障子の組付効率が低下する。そこで、ワイヤの端子部材取付金具に引っ掛けて、外障子の上下位置の微調整を可能とする構成も考えられる。ところが、この場合は、火災時に外障子の框が変形すると、ワイヤの端子部材が取付金具から脱落し、外障子が落下する懸念がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、障子の組付効率及び防火性能を向上することができる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る建具は、左右の縦枠を有する窓枠と、前記窓枠に支持されると共に、前記左右の縦枠に沿ってガイドされる左右の摺動部品が取り付けられ、閉鎖時に前記窓枠の上部室外側に配置される外障子と、前記窓枠に支持され、閉鎖時に前記窓枠の下部室内側に配置される内障子と、第1端部が前記外障子に連結され、第2端部が前記内障子に連結され、前記第1端部と前記第2端部との間が滑車に巻掛けされることで、前記外障子と前記内障子とを互い違いに上下動させるワイヤと、を備え、前記ワイヤの第1端部には、軸部と、該軸部の先端に設けられ、該軸部よりも大径の頭部とを有し、前記摺動部品に連結されるねじが設けられ、前記摺動部品は、前記ねじが連結されるワイヤ取付片が設けられた連結金具を有し、前記連結金具は、前記ワイヤ取付片に設けられ、前記軸部の外径よりも大きく、且つ前記頭部の外径よりも小さい穴幅を有する係止孔と、前記係止孔に連通すると共に前記係止孔とは異なる面に設けられ、前記頭部の外径よりも大きい穴幅を有する挿入孔と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、障子の組付効率及び防火性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る建具の縦断面図である。
図2図1に示す建具の横断面図である。
図3】外障子の縦断面図である。
図4】外障子の一部を拡大した正面図である。
図5】外障子に取り付けられたクレセント受け及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図6A】外障子の摺動部品及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図6B図6Aに示す摺動部品の本体部を省略した斜視図である。
図7】連結金具及び端子部材の斜視図である。
図8】連結金具に端子部材を連結する動作を示す側面断面図である。
図9】連結金具の係止孔及び長孔と端子部材との関係を示す平面図である。
図10A】下框の中央部を拡大した平面図である。
図10B図10Aに示す下框の側面断面図である。
図11】第1変形例に係る下框の中央部を拡大した平面図である。
図12A】第2変形例に係る下框の中央部を拡大した平面図である。
図12B図12Aに示す下框の側面断面図である。
図13A】上框と縦框の連結構造を示す分解斜視図である。
図13B図13Aに示す開口溝補強材同士を連結し、さらに上框と縦框を連結した状態を示す斜視図である。
図14】戸体框の下框及びその周辺部を拡大した縦断面図である。
図15】戸体框の下框の平面図である。
図16】戸体框の下框の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る建具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
1.建具の全体構成の説明
先ず、一実施形態に係る建具10の全体構成を説明する。
【0011】
図1及び図2に示すように、本実施形態の建具10は、建物躯体の開口部に固定される開口枠12と、開口枠12に開閉可能に支持される戸体14と、戸体14に取り付けられた通風ユニット16とを備える。建具10は、例えば勝手口ドアとして用いられる。
【0012】
本出願において、見込み方向とは建具10の奥行方向(図中に矢印Zで示す方向)をいい、見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な縦枠28cや縦框39c等の場合はその長手方向に直交する左右方向(図中に矢印Xで示す方向)をいい、左右方向に長尺な上枠28aや上框39a等の場合はその長手方向に直交する上下方向(図中に矢印Yで示す方向)をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。枠内側とは、枠状部材である窓枠28等の内側部分をいう。枠外側とは、枠状部材である窓枠28等の外側部分であり、例えば窓枠28の戸体框20に支持される外周部分をいう。枠内方向とは、枠状部材の枠外側から枠内側に向かう方向をいう。枠外方向とは、枠状部材の枠内側から枠外側に向かう方向をいう。
【0013】
図1図3に示すように、開口枠12は、上枠12aと、下枠12bと、左右の縦枠12c,12dとを枠組みしたものである。各枠12a~12dは、アルミニウム合金等の押出形材である。各枠12a~12cの枠内側見込み面の室内側部分には、それぞれ塩化ビニル樹脂(PVC)等で形成された樹脂製のアタッチメント部材18が装着されている。
【0014】
図1及び図2に示すように、戸体14は、開口枠12に支持され、見込み方向に開閉可能な片開き構造のドアである。戸体14は、戸体框20の枠内側に通風ユニット16を支持した構成である。戸体14は、開口枠12に対してスライド可能に支持された引戸等でもよい。
【0015】
先ず、戸体框20は、上框20aと、下框20bと、吊元框20cと、戸先框20dとを框組したものである。戸体框20は、アルミニウム合金等の押出形材で構成した金属框材と、PVC等の押出形材で構成した樹脂框材とを組み合わせた複合構造を有する。金属框材は、金属上框21a、金属下框21b、金属吊元框21c、及び金属戸先框21dを有する。樹脂框材は、樹脂上框22a、樹脂下框22b、樹脂吊元框22c、及び樹脂戸先框22dを有する。
【0016】
上框20aは、金属上框21aの室内側見付け面に樹脂上框22aを装着したものである。下框20bは、金属下框21bの室内側見付け面に樹脂下框22bを装着したものである。吊元框20cは、金属吊元框21cの室内側見付け面に樹脂吊元框22cを装着したものである。戸先框20dは、金属戸先框21dの室内側見付け面に樹脂戸先框22dを装着したものである。
【0017】
戸体14は、吊元框20cがヒンジ24を介して縦枠12cに回動可能に連結されている。図1中の参照符号25はドアクローザーであり、図2中の参照符号26はドアハンドルである。これにより戸体14は、開口枠12に対して見込み方向に移動し、開口枠12の枠内開口部を開閉する。
【0018】
次に、通風ユニット16は、戸体14を閉じた状態で室内外での空気の流通を可能とするための通風窓である。本実施形態では、通風ユニット16として、上げ下げ窓を例示している。通風ユニット16は、窓枠28と、外障子29及び内障子30と、格子装置31とを有する。
【0019】
窓枠28は、上枠28aと、下枠28bと、左右の縦枠28c,28dとを枠組したものである。各枠28a~28dは、アルミニウム合金等の押出形材で構成した金属枠材と、PVC等の押出形材で構成した樹脂枠材とを組み合わせた複合構造を有する。金属枠材は、金属上枠33a、金属下枠33b、及び金属縦枠33c,33dを有する。樹脂枠材は、樹脂上枠34a、樹脂下枠34b、及び樹脂縦枠34c,34dを有する。
【0020】
上枠28aは、金属上枠33aの枠内側見込み面に樹脂上枠34aを装着したものである。本実施形態の金属上枠33aは、戸体框20の金属上框21aの一部でもある。下枠28bは、金属下枠33bの枠内側見込み面及び室内側見付け面に樹脂下枠34bを装着したものである。本実施形態の金属下枠33bは、戸体框20の金属下框21bの一部でもある。縦枠28c,28dは、それぞれ金属縦枠33c,33dの枠内側見込み面及び室内側見付け面に樹脂縦枠34c,34dを装着したものである。
【0021】
縦枠28c,28dの枠内側見込み面には、見込み方向に並んだ開口溝35a,35bがそれぞれ設けられている。本実施形態の通風ユニット16は、室内外方向に並んだ2枚の障子29,30を備える。開口溝35a,35bは、それぞれ障子29、30の側縁部が上下動可能に挿入される。樹脂縦枠34c,34dは、室外側の開口溝35aの室内側見付け面を覆うように設けられている。そこで、縦枠28c,28dは、さらに、PVC等で形成され、室内側の開口溝35bの室内側見付け面を覆う樹脂製の縦枠アタッチメント部材36をそれぞれ備える。これにより縦枠28c,28dの室内側見付け面は、実質的に縦枠アタッチメント部材36で形成されている。
【0022】
外障子29及び内障子30は、通風障子である。外障子29は、面材38の四周を框体39で支持したものである。内障子30は、面材40の四周を框体41で支持したものである。外障子29は、閉鎖時に窓枠28の上部室外側に配置される。内障子30は、閉鎖時に窓枠28の下部室内側に配置される。面材38,40は、例えばスペーサを介して2枚の板ガラスを並べた複層ガラスである。框体39,41は、アルミニウム合金等の押出形材で構成した金属框材と、PVC等の押出形材で構成した樹脂框材とを組み合わせた複合構造を有する。
【0023】
格子装置31は、障子29,30を室外側から覆うように設けられている。格子装置31は、窓枠28の室外側見付け面に固定された格子枠31aと、格子枠31aに支持されて上下方向に並んだ複数の格子31bと、格子31bの室内側に設置された網戸31cとを有する。格子31bは、例えば横桟である。格子装置31は、省略されてもよい。
【0024】
2.建具の各部の説明
次に、建具10の各部の具体的な構成とその作用効果について説明する。
【0025】
2.1 先ず、外障子29の具体的な構成を説明する。
図3及び図4に示すように、外障子29は、横框である上框39a及び下框39bと左右の縦框39c,39dとを有する框体39で面材38を支持した構成である。上記したように、各框39a~39bは、アルミニウム合金等で形成された金属框材の室内側見付け面等にPVC等で形成された樹脂框材を装着した構造である。
【0026】
上框39aは、面材38の上縁部を保持する開口溝44を有する。下框39bは、面材38の下縁部を保持する開口溝45と、開口溝45の枠外側に隣接する中空部46とを有する。縦框39c,39dも開口溝44、45と同様な開口溝47を有する(図2及び図13Bも参照)。
【0027】
図3図6Bに示すように、上框39aの開口溝44には、金属製の開口溝補強材48が配置されている。下框39bの開口溝45には、金属製の開口溝補強材49が配置されている。左右の縦框39c,39dの開口溝47にも、金属製の開口溝補強材50がそれぞれ配置されている。開口溝補強材48~50は、断面略コ字状に形成され、それぞれ各框39a~39dの略全長に亘って延在している。開口溝補強材48~50は、框39a~39dを構成するアルミニウム合金よりも剛性や融点が高い金属材料で形成されており、例えばステンレス製或いはスチール製である。
【0028】
下框39bの中空部46には、金属製の中空部補強材51が配置されている。中空部補強材51は、断面略コ字状に形成され、下框39bの略全長に亘って延在している。中空部補強材51の材質は、開口溝補強材48~50と同一又は同様でよい。
【0029】
図3に示すように、下框39bの下面である枠外側見込み面39b1には、摺動部品54が取り付けられている。摺動部品54は、外障子29のスライド動作をガイドするガイド部品である。摺動部品54は、外障子29を吊下げるためのワイヤ55が連結されるワイヤ連結部品でもある。摺動部品54は、下框39bの左右端部にそれぞれ設けられている。左右の摺動部品54は、左右対称構造でよい。
【0030】
2.2 次に、ワイヤ55及び摺動部品54を用いた防火構造を説明する。
図4に示すように、ワイヤ55は、例えば金属撚り線である。ワイヤ55は、2本用いられ、障子29,30の左右外方にそれぞれ設けられる。各ワイヤ55は、第1端部55aが外障子29に連結され、第2端部55bが内障子30に連結される。第1端部55aは、端子部材56が固定され、この端子部材56を介して摺動部品54に連結される。第2端部55bは、金属板57が固定され、この金属板57を介して内障子30に連結される。
【0031】
各ワイヤ55は、端部55a,55b間が滑車58に巻掛けされ、これにより外障子29と内障子30とを互い違いに上下動させる。滑車58は、開口枠12の縦枠28c,28dの金属縦枠33c,33dの枠内側見込み面にねじ止めされる。
【0032】
図3及び図6Aに示すように、摺動部品54は、本体部60と、連結金具61とを有する。本体部60は、連結金具61に装着された樹脂部品であり、縦框39c,39dに対する摺動部となる。
【0033】
図6A図7に示すように、連結金具61は、ワイヤ取付片61aと、連結片61bと、中間板部61cとを有する。ワイヤ取付片61aは、ワイヤ55の第1端部55aが連結される部分である。連結片61bは、樹脂製の本体部60の側面、具体的には縦枠28c,28d側とは逆側で下框39b側を向いた見込み面から突き出すように設けられ、下框39bに連結される部分である。中間板部61cは、ワイヤ取付片61aと連結片61bとの間の部分である。
【0034】
連結金具61は、ワイヤ取付片61a及び連結片61bがXZ平面に沿って段違いに配置され、その間でXY方向に沿う中間板部61cがY方向に起立している。これにより連結金具61は、全体として略クランク形状の金属板で構成されている。連結金具61の材質は、上記した開口溝補強材48~50や中空部補強材51と同一又は同様でよい。
【0035】
連結金具61には、係止孔62aと、挿入孔62bと、長孔62cとが形成されている。
【0036】
係止孔62aは、ワイヤ55の端子部材56を係止するための孔部である。係止孔62aは、ワイヤ取付片61aの長手方向(X方向)に沿って延びている。係止孔62aは、一端部が挿入孔62bに連通し、他端部が長孔62cに連通している。ここで、端子部材56は、ワイヤ55の第1端部55aにねじ止めされるL字状の金属板56aと、金属板56aに形成されたねじ孔に螺合されたねじ56bとを有する。係止孔62aの穴幅は、ねじ56bの軸部56b1の外径よりも大きく、且つ頭部56b2の外径よりも小さい。これにより係止孔62aは、端子部材56のねじ56bを抜け止めした状態で係止することができ(図4及び図9参照)、これによりワイヤ55が摺動部品54に連結される。
【0037】
挿入孔62bは、ワイヤ55の端子部材56を挿入するための孔部である。挿入孔62bは、中間板部61cの長手方向(Y方向)に沿って形成されることで、係止孔62aとは異なる面に設けられ、且つ係止孔62aと連通している。挿入孔62bの穴幅は、頭部56b2の外径よりも大きい。これにより挿入孔62bは、端子部材56のねじ56bの頭部56b2を円滑に挿入することができる。挿入孔62bに頭部56b2が挿入されたねじ56bは、図7中に1点鎖線の矢印で示すように、そのまま係止孔62aまで移動させ、軸部56b1を係止孔62aに挿通させた状態で、頭部56b2を係止孔62aに係止することができる。
【0038】
長孔62cは、係止孔62aで係止された端子部材56の見込み方向での位置を調整するための孔部である。長孔62cは、ワイヤ取付片61aの幅方向(Z方向)、つまり下框39bの見込み方向に沿って延びている。長孔62cは、挿入孔62b側とは逆側で係止孔62aに連通している。長孔62cの穴幅は、係止孔62aの穴幅と略同一でよく、ねじ56bの軸部56b1の外径よりも大きく、且つ頭部56b2の外径よりも小さい。これにより長孔62cは、係止孔62aに抜け止めされたねじ56bを見込み方向に移動させることができる(図9参照)。すなわちワイヤ55は、滑車58に巻掛けられているため、下框39bの見込み方向中心よりも一方側に位置ずれした位置に垂下されている。長孔62cは、このワイヤ55の見込み方向での位置ずれを解消し、ワイヤ55を可能な限り鉛直に垂下させることを可能とする。長孔62cは省略されてもよい。
【0039】
図7図9に示すように、ワイヤ取付片61aは、中間板部61c側とは逆側の端部に係止孔62aや長孔62cが開口していない。つまり係止孔62aは、挿入孔62b側とは逆側が長孔62cを介して閉塞されている。換言すれば、係止孔62aは、挿入孔62b側とは逆側が開口しない閉じた孔部である。
【0040】
図6A図8に示すように、連結金具61は、さらに、連結片61bに設けられた複数の連結孔63と、中間板部61cに設けられた複数の装着孔64とを有する。装着孔64は、本体部60と連結金具61とを連結するねじ65が挿通される孔部である。連結孔63は、連結金具61を下框39bに固定するねじ66が挿通される孔部である。ねじ66は、連結孔63に挿通された状態で、下框39bの枠外側見込み面39b1に形成された孔部を通して中空部補強材51のねじ孔51bに螺合される。つまり連結金具61は、中空部補強材51に連結されている。この際、ねじ66の頭部は、連結金具61の連結片61bに係止され、その周囲に本体部60等の樹脂部品が配置されていない。
【0041】
このように、本実施形態の摺動部品54は、樹脂製の本体部60の側面から突出した連結金具61の連結片61bが下框39bに対して直接的にねじ止めされて外障子29に取り付けられる構成としてもよい。これにより下框39bと連結片61bとを連結するねじ66は、周囲が金属部材のみで囲まれ、樹脂製の本体部60から離間した位置に設置される。このため、火災時、建具10は、ねじ66による連結金具61の下框39bに対する連結状態が長時間維持され、ワイヤ55によって外障子29を長時間吊下支持しておくことができる。その結果、建具10は、火災時に外障子29が落下や下降を抑制でき、高い防火性能が得られる。この際、連結金具61は、略クランク形状の金属板で形成された高強度の構造を有するため、一層安定して外障子29を支持できる。特に、連結金具61は、下框39bの中空部補強材51に連結されることで、外障子29の落下や下降を一層抑制できる。
【0042】
また、連結金具61は、係止孔62aから連続する挿入孔62bを有するため、端子部材56のねじ56bの頭部56b2を円滑に連結することができる。このため、建具10は、外障子29を窓枠28に設置する際、端子部材56に予め取り付けたねじ56bを容易に摺動部品54に連結することができる。さらに、ねじ56bは、係止孔62aに係止された際、下から上に向かう姿勢となる。このため、ねじ56bは、係止孔62aに係止後に頭部56b2をドライバ等の工具で容易に回転させることができ、外障子29の高さ位置の微調整も容易であり、外障子29の組付効率を向上させることができる。
【0043】
この際、挿入孔62bが係止孔62aとは異なる面に設けられていることで、火災時等にワイヤ55がX方向に揺れた場合に挿入孔62bから脱落することを抑制できる。挿入孔62bを設ける面は、Y方向に起立した中間板部61cに限られず、例えば連結片61bでもよい。連結金具61はクランク形状以外でもよく、この場合も挿入孔62bは係止孔62aと異なる面に設けられるとよい。
【0044】
2.3 次に、クレセント受け70を用いた防火構造を説明する。
図3図5図10A及び図10Bに示すように、外障子29の下框39bは、クレセント受け70が取り付けられている。クレセント受け70は、内障子30の框体41の上框41a(図1参照)の枠外側見込み面に取り付けられたクレセント71が係合される金属部品である。クレセント受け70は、外障子29の召合せ框となる下框39bの長手方向の略中央部に取り付けられている。クレセント受け70は、ステンレスやスチール等の金属板に折り曲げ、切り抜き、及び切り起こし等を形成したものである。クレセント受け70及びクレセント71は、例えばステンレス等の金属製である。
【0045】
図5図10A及び図10Bに示すように、クレセント受け70は、取付部70aと、係合部70bとを有する。
【0046】
取付部70aは、略矩形状の金属板であり、XY平面に沿って配置される。取付部70aには、左右一対のねじ孔70cが形成されている。ねじ孔70cは、クレセント受け70を下框39bに固定するためのねじ72が螺合される。取付部70aは、開口溝45を形成する一対の壁部のうち、一方の室内側壁部74に固定される。
【0047】
係合部70bは、取付部70aから室外側に多少屈曲しつつ上方に向って突出した後、室内側に向かって2回屈曲されることで、下向きのフック形状に形成されている。係合部70bは、クレセント71が係合されると、このクレセント71を上から把持したように吊下支持された係合状態となる。
【0048】
下框39bは、クレセント受け70が取り付けられる室内側壁部74に孔部74aを有する。孔部74aは、ねじ72を挿通可能な貫通孔であり、いわゆるバカ穴である。また、下框39bの開口溝45に配置された開口溝補強材49は、その長手方向の略中央部に切り起こし片49aを有する。切り起こし片49aは、開口溝補強材49の見込み面を形成する底板の一部を切り欠いて枠外側へと屈曲させた板片である。開口溝補強材49は、室内側壁部74と対向する室内側突出片49bに規制穴49cを有する。規制穴49cは、室内側突出片49bの切り起こし片49aを含む部分に形成されている。
【0049】
クレセント受け70の取付部70aは、下框39bの室内側壁部74と、開口溝補強材49の室内側突出片49bとの間に挟み込まれた状態で、ねじ72により室内側壁部74と締結される。具体的には、ねじ72は、室内側から室外側に向かって孔部74aに挿通された状態でねじ孔70cに螺合され、ねじ孔70cを挿通した先端部が規制穴49cに挿入される。
【0050】
このように、ねじ72は、クレセント受け70を下框39bに締結した状態で、先端部が規制穴49cに挿入され、XY方向に係止される構成としてもよい。そうすると、ねじ72は、クレセント受け70と開口溝補強材49との間の上下方向への相対移動を規制する規制部材として機能する。
【0051】
例えば建具10が室外からの火災の影響を受けると、窓枠28の上部室外側にある外障子29は内障子30よりも高温になり易く、框体39が軟化する可能性がある。本実施形態の建具10は、このように外障子29の框体39が軟化した場合であっても、外障子29よりも熱影響を受けにくい内障子30に締結されたクレセント71でクレセント受け70の下への移動が規制される。そして、ねじ72は、面材38の下縁部を保持する開口溝補強材49とクレセント受け70との上下方向の相対移動を規制している。すなわち、開口溝補強材49は、ねじ72を介してクレセント71に吊下支持された状態となっているため、面材38や外障子29自体の落下や下降を抑制できる。このようにクレセント受け70と開口溝補強材49との相対移動を規制する規制部材は、所定の強度を有する金属部材等であればねじ以外でもよい。また、規制穴49cは、上方が閉じた切欠き穴等でもよい。
【0052】
上記したように、規制穴49cは、室内側突出片49bの切り起こし片49aを含む部分に形成されている。このため、図3に示すように、ねじ72は、規制穴49cに安定して係止できるように、十分な長さのものを用いても、規制穴49cを抜けた先端が面材38やその下縁部を保持するガスケット等に干渉することを防止できる。
【0053】
なお、建具10は、上記したワイヤ55による連結金具61を介して下框39bの吊下による防火構造と合わせて、クレセント受け70による防火構造も備えることが好ましい。そうすると、ワイヤ55によって下框39bの左右両端部を支持でき、クレセント受け70によって下框39bの中央部を支持できるため、下框39bがバランスよく3点支持される。その結果、建具10は、面材38や外障子29の落下や下降を一層抑制できる。
【0054】
ところで、ねじ72の先端部は、開口溝補強材49の規制穴49cに挿入されているだけである。このため、仮に火災時に下框39bが変形し、開口溝補強材49が室外側に移動した場合は、ねじ72が規制穴49cから脱落する懸念もある。
【0055】
そこで、図10A及び図10Bに示す構成例では、2本のねじ72を跨ぐように追加した2本のねじ76を備える。下框39bの室内側壁部74には、各ねじ76が挿通される孔部74bが形成され、開口溝補強材49には各ねじ76が螺合されるねじ孔49dが形成されている。ねじ76は、孔部74bを挿通した状態でねじ孔49dに螺合される。これにより下框39bと開口溝補強材49とが締結され、開口溝補強材49の室外側への移動が規制されるため、ねじ72が規制穴49cから脱落することを確実に抑制できる。例えばねじ72を十分深くまで規制穴49cに挿入できる場合等には、図11に示すように、ねじ76、孔部74b及びねじ孔74dは省略してもよい。
【0056】
クレセント受け70と開口溝補強材49との連結構造は、図10A図11に示す構成例以外でもよい。例えば図12A及び図12Bに示す連結構造は、クレセント受け70と開口溝補強材49とを裏板78を用いて締結した構成である。裏板78は、開口溝補強材49の規制穴49cと同軸上にねじ孔78aを有する。なお、クレセント受け70は、ねじ孔70cに代えて、いわゆるバカ穴である挿通孔70dを有する。
【0057】
従って、図12A及び図12Bに示す構成例では、ねじ72は、室内側から室外側に向かって、孔部74a、挿通孔70d及び規制穴49cに挿通された状態で裏板78のねじ孔78aに螺合される。これにより、この構成でも、ねじ72は、クレセント受け70を下框39bに締結した状態で、先端部が規制穴49cで係止されるため、面材38や外障子29の落下や下降を抑制できる。
【0058】
2.4 次に、連結金具61を用いた防火構造とクレセント受け70を用いた防火構造とを連係させた防火構造を説明する。
上記したように、火災時に高温になり易い外障子29は、連結金具61がワイヤ55を介して滑車58及び内障子30によって支持され、クレセント受け70がクレセント71を介して内障子30によって支持されることで、高い防火性能を有する。本実施形態の建具10は、さらに、これら2つの防火構造同士を連係させ、防火性能を一層向上させることができる構造を備えてもよい。
【0059】
図3図6Bに示すように、外障子29では、クレセント受け70と連結された開口溝補強材49が中空部補強材51と連結されている。開口溝補強材49は、X方向でクレセント受け70を跨ぐ位置に一対の孔部49eを有する。中空部補強材51は、各孔部49eと上下方向にオーバーラップする位置にねじ孔51aを有する。ねじ孔51aは、中空部補強材51の上側の板部に形成されている。
【0060】
従って、外障子29は、ねじ80を開口溝補強材49の上から孔部49eに挿通させ、ねじ孔51aに螺合させることで、開口溝補強材49と中空部補強材51とが連結される。なお、下框39bの開口溝45と中空部46とを仕切る壁部には、孔部49e及びねじ孔51aと同軸上に貫通孔が形成され、ねじ80は孔部49eとこの貫通孔を通してねじ孔51aに螺合される。
【0061】
上記のようにクレセント受け70と開口溝補強材49を介して連結された中空部補強材51は、摺動部品54の連結金具61とも連結されている。中空部補強材51は、連結金具61の連結片61bに形成された各連結孔63と上下方向にオーバーラップする位置にねじ孔51bを有する。ねじ孔51bは、中空部補強材51の下側の板部に形成されている。
【0062】
従って、外障子29は、ねじ66を連結片61bの下から連結孔63に挿通させ、ねじ孔51bに螺合させることで、開口溝補強材49と連結金具61とが連結される。なお、下框39bの下面である枠外側見込み面39b1を形成する壁部には、ねじ孔51b及び連結孔63と同軸上に貫通孔が形成され、ねじ66はこの貫通孔を通して設置される。
【0063】
このように、外障子29は、クレセント受け70から連結金具61までが金属製の開口溝補強材49、中空部補強材51、及び金属製のねじ72,80,66で連結される。これにより外障子29は、下框39bの左右両端部を吊下支持するワイヤ55及び連結金具61と、下框39bの中央部を吊下支持するクレセント71及びクレセント受け70との間が全て金属部材によって連結される。その結果、建具10は、一層高い防火性能が得られ、面材38や外障子29の落下や下降を一層抑制できる。
【0064】
2.5 次に、外障子29の下框39bの開口溝補強材49と他の框39a,39c,39dの開口溝補強材48,50との連結による防火構造を説明する。
上記したように、火災時に高温になり易い外障子29は、上記した連結金具61やクレセント受け70を用いた防火構造と共に、又はこれに代えて、各框39a~39dの開口溝補強材48~50同士を適宜連結することで、防火性能を向上させることができる構造を備えてもよい。
【0065】
先ず、図3図6Bに示すように、下框39bの中空部補強材51は、縦框39c,39dの開口溝補強材50とそれぞれ連結されている。なお、図4図6Bでは、一方の縦框39cの開口溝補強材50と中空部補強材51との連結構造を例示しているが、他方の縦框39dの開口溝補強材50と中空部補強材51との連結構造はこれと左右対称構造でよい。
【0066】
縦框39c,39dの開口溝補強材50は、全長の大部分が断面コ字状の金属板であるが、下端部に略L字状の屈曲片50aを有する。屈曲片50aは、開口溝補強材50の見込み面を形成する板部の一部を下方に突出させると共に、枠内側に屈曲させた板片である。屈曲片50aのXZ平面に沿う板部には、ねじ孔50bが形成されている。中空部補強材51は、ねじ孔50bと上下方向にオーバーラップする左右端部に孔部51cを有する。孔部51cは、中空部補強材51の上側の板部に形成されている。
【0067】
ここで、本実施形態の框体39は、縦框39c,39dの開口溝47に下框39bの左右両端部を印籠した縦勝ち構造を採用している。このため、中空部補強材51を開口溝補強材50の枠内側見込み面に突き当てると、屈曲片50aが開口溝45に小口から挿入され、中空部補強材51の枠内側見込み面である上面とオーバーラップする。なお、屈曲片50aと中空部補強材51との間には、下框39bの開口溝45と中空部46とを仕切る壁部を介在する。つまり屈曲片50aが開口溝45に小口から挿入される。
【0068】
従って、外障子29は、ねじ82を下から孔部51cに挿通させ、ねじ孔50bに螺合させることで、中空部補強材51と開口溝補強材50とが連結される。その結果、縦框39c,39dの開口溝補強材50が、中空部補強材51を介して下框39bの開口溝補強材49とも連結される。つまり下框39bの開口溝補強材49と縦框39c,39dの開口溝補強材50とが相対的に連結される。勿論、開口溝補強材49,50同士が直接的に連結されてもよい。なお、下框39bの開口溝45と中空部46とを仕切る壁部には、孔部51c及びねじ孔50bと同軸上に貫通孔が形成され、ねじ82はこの貫通孔を通して設置される。
【0069】
次に、図3図13A及び図13Bに示すように、上框39aの開口溝補強材48は、縦框39c,39dの開口溝補強材50とそれぞれ連結されている。なお、図13A及び図13Bでは、一方の縦框39cの開口溝補強材50と開口溝補強材48との連結構造を例示しているが、他方の縦框39dの開口溝補強材50と開口溝補強材48との連結構造はこれと左右対称構造でよい。
【0070】
上框39aの開口溝補強材48は、全長の大部分が断面コ字状の金属板であるが、左右の両端部に略L字状の折曲片48aを有する。折曲片48aは、開口溝補強材48の見込み面に沿う板部の一部を延長すると共に、上方に向かって折り曲げたXY方向に沿う板片である。折曲片48aのXY平面に板部には、ねじ孔48bが形成されている。
【0071】
縦框39c,39dの開口溝補強材50は、見込み面に沿う板部の上端部の一部に突出片50cを有する。突出片50cは、開口溝補強材50の見込み面の一部を上方に突出させた部分である。突出片50cには、孔部50dが形成されている。
【0072】
ここで、本実施形態の框体39は、縦框39c,39dの開口溝47に上框39aの左右両端部を印籠した縦勝ち構造を採用している。このため、開口溝補強材48を開口溝補強材50の枠内側見込み面に突き当てると、折曲片48aが突出片50cの見込み面に対向配置され、ねじ孔48bと孔部50dとが同軸配置される。従って、外障子29は、ねじ84を枠外側から枠内側に向かって孔部50dに挿通させ、ねじ孔48bに螺合させることで、開口溝補強材48と開口溝補強材50とが連結される。その結果、縦框39c,39dの開口溝補強材50が、上框39aの開口溝補強材48とも連結される。
【0073】
なお、上框39aと縦框39c,39dとを連結する際は、例えば上記のように開口溝補強材48,50をねじ84で連結した後、開口溝補強材48の外側から上框39aを被せ、開口溝補強材50の外側から縦框39c,39dを被せる。そして、上框39aと縦框39c,39dとをねじ86で締結する(図3も参照)。これにより、上框39aと縦框39c,39dとが、互いの開口溝補強材48,50同士が連結された状態で連結される。図13A中の参照符号87は、開口溝補強材48と上框39aとを締結するねじであり、参照符号88は、開口溝補強材50と縦框39c(39d)とを締結するねじである。
【0074】
このように、外障子29は、下框39bと左右の縦框39c,39dの開口溝補強材49,50同士が中空部補強材51を介して連結され、上框39aと左右の縦框39c,39dの開口溝補強材48,50同士が連結される。これにより外障子29は、四周の框39a~39dの開口溝補強材48~50間が一体的に連結され、開口溝補強材48~50が実質的に高剛性の枠体を形成する。その結果、外障子29は、四周の開口溝補強材48~50が強固に面材38を保持することができる。さらに、外障子29は、連結金具61やクレセント受け70と連結された下框39bの開口溝補強材49を他の開口溝補強材48,50で支持することができる。その結果、建具10は、一層高い防火性能が得られ、面材38や外障子29の落下や下降をより一層抑制できる。
【0075】
特に、外障子29は、通風ユニット16の構成要素であり、建物躯体に固定される開口枠12よりも軟化し易い戸体框20に支持されているため、その脱落が一層懸念される。そこで、ワイヤ55で吊られた下框39bの開口溝補強材49と他の框39a,39c,39dの開口溝補強材48,50とを連結しておくことで、面材38や外障子29の脱落防止効果が一層向上する。
【0076】
2.6 次に、建具10が備える他の防火構造について説明する。
本実施形態の建具10は、上記した各防火構造と共に、又はこれらに代えて、他の防火構造を備えてもよい。
【0077】
先ず、図14に示すように、内障子30は、閉塞時には、框体41の下框41bの下部が窓枠28の下枠28bの溝部90に飲み込まれて保持される。すなわち、下框41bは、枠外側見込み面の室外側端部から垂下された室外側突出片92aと、室内側端部から垂下された室内側突出片92bとを有する。溝部90は、室外側突出片92aの室外側で対向する室外側壁部90aと、室内側突出片92bの室内側で対向する室内側壁部90bとを有する。図14中の参照符号94は、タイト材である。これにより内障子30は、火災時には突出片92a,92bが壁部90a,90bで保持されることで室内外への脱落や移動が抑制される。
【0078】
ところが、下枠28bの金属下枠33b及びこれと一体に形成された戸体框20の金属下框21bは、アルミニウム合金で形成されているため、火災時に軟化する可能性がある。これら金属下枠33b及び金属下框21bは、軟化した状態で内障子30の重量を受けると変形し、内障子30の窓枠28からの脱落や下降を生じる懸念がある。
【0079】
そこで、本実施形態の建具10は、金属下枠33bの室外側壁部90aの室内側面に保持金具96を設けた構成としてもよい。保持金具96は、ステンレスやスチール等の金属板を略クランク形状に屈曲させたものである。保持金具96は、ねじ孔を有し、室外側壁部90aを貫通したねじ98を用いて室外側壁部90aに締結される。保持金具96は、上向きに屈曲した略L字状の保持片96aが内障子30の室外側突出片92aを受け止めるように設置される。これにより内障子30は、室外側突出片92aが保持金具96で保持されるため、火災時に金属下枠33bが軟化した場合にも、その転落や下降が抑制される。
【0080】
次に、図14図16に示すように、戸体框20の金属下框21bは、溝部90との間の仕切り壁100を挟んで隣接する中空部102を有する。中空部102には、ステンレスやスチール等の金属製の補強材104が配置されている。なお、図15では仕切り壁100の図示を省略している。
【0081】
補強材104は、金属下框21bの室外側見付け面を形成する室外側壁部21b1の内面に沿って起立する縦板104aと、縦板104aの上部から室内側に突出した上板104bと、縦板104aの下部から室内側に突出した下板104cとを有する構成としてもよい。縦板104a及び上板104bは、金属下框21bの長手方向の略全長に亘って延在している。下板104cは、室外側壁部21b1の下部に形成された左右の排水口21b2とオーバーラップする位置にそれぞれ設けられている。なお、図16では室外側壁部21b1の図示を省略している。
【0082】
補強材104の縦板104a及び上板104bは、金属下框21bの仕切り壁100の下面に形成されたビスホール108を包含するように設けられている(図14参照)。上板104bの左右両端部から中央側に多少オフセットした位置には、ビスホール108の室内側で起立する起立片104dが設けられている。ビスホール108は、金属下框21bと金属吊元框21c及び金属戸先框21dとを締結するねじが螺合される部分である。
【0083】
排水口21b2は、中空部102内に流入した雨水等を排水するものである。排水口21b2には、排水弁106が装着されている。仕切り壁100には、左右一対の排水孔100aが形成されている。補強材104の上板104bは、左右の排水孔100aからX方向に位置ずれした位置にそれぞれ切欠穴104eが設けられている(図15参照)。従って、建具10は、障子29,30の表面を流れて溝部90で受け止められた雨水等が排水孔100aを通して中空部102内に流入し、切欠穴104eを通過した後、下板104cの側部を通過して排水口21b2へと円滑に排水される。
【0084】
このように、戸体框20は、通風ユニット16の重量を受ける金属下框21bと、左右の金属吊元框21c及び金属戸先框21dとを締結するねじが固定されるビスホール108を補強材104で囲んでいる。このため、例えば火災時に、排水口21b2から中空部102内に火炎が侵入した場合であっても、補強材104でビスホール108が遮熱保護される。その結果、建具10は、火災時に金属下框21bと左右の金属吊元框21c及び金属戸先框21dとが分離することを抑制できる。また、補強材104の縦板104aは、中空部102の上下方向の略全高に亘って延在しているため、金属下框21bの潰れ自体も抑制できる。
【0085】
次に、図14図16に示すように、補強材104及びその周辺部には、熱膨張性部材110,111,112,113,114,115を設けた構成としてもよい。熱膨張性部材110~115は、例えば加熱されると発泡して膨張する黒鉛等の加熱発泡材である。
【0086】
熱膨張性部材110は、補強材104の上板104bの上面において、排水孔100aとオーバーラップする位置に粘着固定されている。熱膨張性部材111は、仕切り壁100の上面において、排水孔100aの近傍に粘着固定されている。熱膨張性部材112は、補強材104の上板104bの上面における室外側端部に設けられ、熱膨張性部材110と見込み方向に並んでいる。熱膨張性部材113は、補強材104の縦板104aの室内側表面において、X方向で両端にそれぞれ粘着固定され、Y方向に延在している。熱膨張性部材114は、補強材104の下板104cの下面において、排水口21b2とオーバーラップする位置に粘着固定されている。熱膨張性部材115は、金属下框21bの枠外側見込み面に粘着固定され、金属下框21bの略全長に亘って延在している。
【0087】
このように、戸体框20の金属下框21bは、外部に連通する排水口21b2の直上にある下板104cに熱膨張性部材114を設け、中空部102から溝部90に連通する排水孔102aの直下にある上板104bに熱膨張性部材110を設けている。このため、建具10は、火災時に排水口21b2から中空部102を通して溝部90へと連続する火炎や煙の貫通孔が形成されることを抑制できる。
【0088】
建具10は、これら熱膨張性部材110~115以外にも、各所に熱膨張性部材が設けてもよい。そこで、熱膨張性部材110~115以外の熱膨張性部材については、図1図3及び図14中で参照符号116を付して示している。なお、図14図16中の参照符号118は、仕切り壁100(金属下框21b)に上板104bを締結するねじである。
【0089】
3.建具の一態様の説明
本発明の一態様に係る建具は、左右の縦枠を有する窓枠と、前記窓枠に支持されると共に、前記左右の縦枠に沿ってガイドされる左右の摺動部品が取り付けられ、閉鎖時に前記窓枠の上部室外側に配置される外障子と、前記窓枠に支持され、閉鎖時に前記窓枠の下部室内側に配置される内障子と、第1端部が前記外障子に連結され、第2端部が前記内障子に連結され、前記第1端部と前記第2端部との間が滑車に巻掛けされることで、前記外障子と前記内障子とを互い違いに上下動させるワイヤと、を備え、前記ワイヤの第1端部には、軸部と、該軸部の先端に設けられ、該軸部よりも大径の頭部とを有し、前記摺動部品に連結されるねじが設けられ、前記摺動部品は、前記ねじが連結されるワイヤ取付片が設けられた連結金具を有し、前記連結金具は、前記ワイヤ取付片に設けられ、前記軸部の外径よりも大きく、且つ前記頭部の外径よりも小さい穴幅を有する係止孔と、前記係止孔に連通すると共に前記係止孔とは異なる面に設けられ、前記頭部の外径よりも大きい穴幅を有する挿入孔と、を有する。このような構成によれば、連結金具は、係止孔から連続する挿入孔を有するため、ねじの頭部を挿入孔を通して係止孔に円滑に挿入し、係止させることができる。この際、ねじは、係止孔に係止された頭部を容易にドライバ等の工具で回転させることができ、外障子の高さ位置の微調整も容易であり、外障子の窓枠への組付効率を向上させることができる。また、この構成によれば、挿入孔と係止孔とが異なる面に設けられていることで、火災時にワイヤや連絡金具の位置がずれた場合にもねじが係止孔は勿論、挿入孔から脱落することも防止される。その結果、当該建具は、火災時にも長時間ワイヤによって外障子を吊下支持しておくことができ、防火性能が向上する。
【0090】
前記連結金具は、前記外障子の下框に連結される連結片と、前記ワイヤ取付片と前記連結片との間に設けられ、前記挿入孔が形成された中間板部と、を有する構成としてもよい。そうすると、連結金具は、係止孔と挿入孔との形成面を容易に異ならせることができる。
【0091】
前記連結金具は、前記中間板部が前記ワイヤ取付片と前記連結片との上下方向に起立するように設けられ、全体として略クランク形状の金属板で構成された構成としてもよい。そうすると、建具は、連結金具の強度が向上し、火災時の外障子の支持が一層強固になる。
【0092】
前記連結金具は、前記挿入孔側とは逆側で前記係止孔に連通すると共に、前記下框の見込み方向に沿って延び、前記軸部の外径よりも大きく、且つ前記頭部の外径よりも小さい穴幅を有する長孔をさらに有する構成としてもよい。そうすると、建具は、ワイヤの連結金具に対する見込み方向での配置を容易に調整でき、ワイヤを可能な限り鉛直に垂下させることができる。
【0093】
戸体をさらに備え、前記窓枠は、前記戸体に取り付けられた通風ユニットを構成する構成としてもよい。この場合、通風ユニットは、建物躯体に固定された開口枠ではなく、この開口枠に支持された戸体の戸体框に支持された構成となる。このため、建具は、火災時に外障子が一層脱落し易くなるが、これを連結金具等による防火構造によって効果的に抑制できる。
【0094】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0095】
10 建具、12 開口枠、14 戸体、16 通風ユニット、20 戸体框、20a,39a,41a 上框、20b,39b,41b 下框、28 窓枠、29 外障子、30 内障子、39c,39d 縦框、48~50 開口溝補強材、51 中空部補強材、54 摺動部品、55 ワイヤ、56 端子部材、60 本体部、61 連結金具、61a ワイヤ取付片、61b 連結片、61c 中間板部、70 クレセント受け、71 クレセント
図1
図2
図3
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図6A
図6B
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図10B
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図12B
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図13B
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