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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146048
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】車両用電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20231004BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20231004BHJP
   G06F 15/78 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B60R16/02 660N
B60R16/023 P
G06F15/78 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053032
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】富沢 寛
(72)【発明者】
【氏名】藤生 貴仁
【テーマコード(参考)】
5B062
【Fターム(参考)】
5B062AA08
5B062CC05
5B062HH04
(57)【要約】
【課題】車両用電子制御装置が備えるマイクロコンピュータが、バッテリ接続に伴って誤動作することを抑止する。
【解決手段】本発明に係る車両用電子制御装置において、マイクロコンピュータは、車載ネットワークを介して送信されたウェイクアップ信号に基づき電源投入されて起動するとともに、車両の駆動力源の運転・停止のメインスイッチのオン信号に基づき電源投入されて起動するよう構成され、バッテリからの電源供給を自ら遮断するセルフシャットオフ機能を有し、起動したときに、起動要因に関する信号を取得し、前記バッテリの接続による起動の場合、通常処理に遷移せずにセルフシャットオフを実施する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロコンピュータを備えた車両用電子制御装置であって、
前記マイクロコンピュータは、
バッテリを電源とし、
車載ネットワークを介して送信されたウェイクアップ信号に基づき電源投入されて起動するとともに、車両の駆動力源の運転・停止のメインスイッチのオン信号に基づき電源投入されて起動するよう構成され、
前記バッテリからの電源供給を自ら遮断するセルフシャットオフ機能を有し、
起動したときに、起動要因に関する信号を取得し、
前記バッテリの接続による起動の場合、通常処理に遷移せずにセルフシャットオフを実施する、
車両用電子制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電子制御装置であって、
前記車両用電子制御装置は、前記車載ネットワークを介して前記ウェイクアップ信号を受信する通信ICを備え、
前記マイクロコンピュータは、
起動したときに、前記通信ICの起動要因の信号を取得し、取得した起動要因の信号に基づいて、前記バッテリの接続による起動であるか否かを判別する、
車両用電子制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用電子制御装置であって、
前記車両用電子制御装置は、前記マイクロコンピュータのシャットオフ後も常時通電されるサブマイクロコンピュータを備え、
前記マイクロコンピュータは、
起動したときに、前記サブマイクロコンピュータの起動要因の信号を取得し、取得した起動要因の信号に基づいて、前記バッテリの接続による起動であるか否かを判別する、
車両用電子制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用電子制御装置であって、
前記マイクロコンピュータは、
前記メインスイッチのオフ状態で起動したときに、ウェイクアップに伴う処理要求の信号を、前記車載ネットワークを介して取得したか否かに基づいて、前記バッテリの接続による起動であるか否かを判別する、
車両用電子制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用電子制御装置であって、
前記マイクロコンピュータは、
前記バッテリの接続による起動後にセルフシャットオフを実施しているときに、前記メインスイッチがオフからオンに切り替わった場合、前記セルフシャットオフを中断して前記通常処理に遷移する、
車両用電子制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用電子制御装置であって、
前記マイクロコンピュータは、
前記バッテリの接続による起動後にセルフシャットオフを実施しているときに、ウェイクアップに伴う処理要求の信号を取得した場合、前記セルフシャットオフを中断して前記処理要求にしたがった処理を実行する、
車両用電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の車両用制御装置は、電装品を制御する制御部と、電装品を作動させるスイッチからのウェイクアップ信号に基づいて制御部をウェイクアップさせるウェイクアップ回路と、スイッチからウェイクアップ回路へ供給されるウェイクアップ信号を、ウェイクアップの指示から所定時間経過後に遮断するウェイクアップ停止回路とを具備し、ウェイクアップの指示から所定時間経過後に、スイッチの状態に拘わらず、ウェイクアップ停止回路でウェイクアップ信号を強制的に遮断して当該車両用制御装置をスリープさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-172503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マイクロコンピュータを備えた車両用電子制御装置においては、車載ネットワークを介して送信されたウェイクアップ要求に基づくウェイクアップ信号と、車両の駆動力源の運転・停止のメインスイッチ(たとえば、イグニッションスイッチ)のオン信号との論理和に基づき、バッテリからマイクロコンピュータへの電源供給が制御される場合がある。
ここで、車載ネットワークを介してウェイクアップ要求を受信する通信ICの仕様によっては、バッテリ接続によって起動したときにウェイクアップ信号を立ち上げる場合がある。
つまり、バッテリが接続されたときに、通信ICが、実際にはウェイクアップ要求を受信していないのにウェイクアップ信号を立ち上げることで、車両用電子制御装置のマイクロコンピュータが無用に起動し、誤動作を引き起こす可能性があった。
【0005】
本発明は、従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、マイクロコンピュータが、バッテリ接続に伴って誤動作することを抑止できる、車両用電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用電子制御装置は、その1つの態様において、マイクロコンピュータを備えた車両用電子制御装置であって、前記マイクロコンピュータは、バッテリを電源とし、車載ネットワークを介して送信されたウェイクアップ信号に基づき電源投入されて起動するとともに、車両の駆動力源の運転・停止のメインスイッチのオン信号に基づき電源投入されて起動するよう構成され、前記バッテリからの電源供給を自ら遮断するセルフシャットオフ機能を有し、起動したときに、起動要因に関する信号を取得し、前記バッテリの接続による起動の場合、通常処理に遷移せずにセルフシャットオフを実施する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マイクロコンピュータが、バッテリ接続に伴って誤動作するバッテリ接続に伴って誤動作することを抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両制御システムを示すブロック図である。
図2】車載ネットワークIC(通信IC)のモード遷移を示す図である。
図3】イグニッションスイッチのオンオフに応じたマイクロコンピュータ及び車載ネットワークICの状態変化を示すタイムチャートである。
図4】OTAアップデートが実施されるときのマイクロコンピュータ及び車載ネットワークICの状態変化を示すタイムチャートである。
図5】バッテリ接続による起動時におけるマイクロコンピュータ及び車載ネットワークICの状態変化を示すタイムチャートである。
図6】バッテリ接続に因る起動時におけるセルフシャットオフ機能の第1実施形態を示すフローチャートである。
図7】バッテリ接続に因る起動時にセルフシャットオフ処理を実施するときのマイクロコンピュータ及び車載ネットワークICの状態変化を示すタイムチャートである。
図8】バッテリ接続に因る起動時のセルフシャットオフ処理中にイグニッションスイッチのオンまたはウェイクアップ要求があったときのマイクロコンピュータ及び車載ネットワークICの状態変化を示すタイムチャートである。
図9】バッテリ接続に因る起動時におけるセルフシャットオフ機能の第2実施形態を示すフローチャートである。
図10】ウェイクアップ用の初期化処理を示すフローチャートである。
図11】イグニッションスイッチのオンオフに応じたマイクロコンピュータ及び車載ネットワークICの状態変化を示すタイムチャートである。
図12】ウェイクアップ要求に因る起動時のマイクロコンピュータ及び車載ネットワークICの状態変化を示すタイムチャートである。
図13】バッテリ接続に因る起動時のマイクロコンピュータ及び車載ネットワークICの状態変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用電子制御装置の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、車両に搭載される車両制御システム100を示す構成図であって、車両制御システム100は、本発明に係る車両用電子制御装置200を含んでいる。
【0010】
車両制御システム100は、車両用電子制御装置200のマイクロコンピュータ210を含む複数のマイクロコンピュータやデバイスが、車載ネットワークを介して接続されたシステムであり、CAN(Controller Area Network)などの通信プロトコルにしたがって、複数のマイクロコンピュータやデバイスが相互に通信できるように構成される。
なお、車載ネットワークの通信プロトコルとしては、「CAN」、「LIN(Local Interconnect Network)」、「FlexRay」などがあるが、本実施形態は、CANを採用したシステムとする。
【0011】
車両制御システム100を構成する、車両用電子制御装置200及び他の車両用電子制御装置(またはデバイス)300-500は、それぞれCANバス600に接続されている。
ここで、車両用電子制御装置200が車載ネットワークを介して相互に通信するデバイスとして、車両の外部と無線通信するための無線通信ユニットを含むことができる。
係る無線通信ユニットは、無線通信の利用によるプログラム更新(OTAアップデート、OTA:Over The Air)などに用いられる。
【0012】
車両用電子制御装置200は、バッテリ700を電源として動作する。
また、車両用電子制御装置200は、マイクロコンピュータ210(メインマイクロコンピュータ)、電源リレー220、電源回路230、OR回路240、通信ICである車載ネットワークIC250、サブマイクロコンピュータ260を備える。
【0013】
マイクロコンピュータ210は、たとえば、車両の駆動力源であるエンジンの制御信号を出力する機能を有するコントローラである。
マイクロコンピュータ210は、電源回路230から動作電圧の電源供給を受け、電源回路230は、電源リレー220を介してバッテリ700に接続される。
【0014】
ここで、電源リレー220は、OR回路240の出力によってオンオフが切り替えられる。
詳細には、OR回路240の出力が「1(ハイ)」であるときは、電源リレー220がオンになってバッテリ700と電源回路230とが電気的に接続され、電源回路230からマイクロコンピュータ210に電源供給される。
一方、OR回路240の出力が「0(ロー)」であるときは、電源リレー220がオフになって、バッテリ700と電源回路230とが電気的に遮断され、電源回路230からマイクロコンピュータ210への電源供給が停止される。
【0015】
OR回路240(論理和回路)は、マイクロコンピュータ210が出力する自己保持信号MRLY、イグニッションスイッチ800のオンオフ信号、及び、ウェイクアップ信号を入力信号として、これらの入力信号の論理和を求める。
なお、イグニッションスイッチ800は、車両の駆動力源であるエンジンの運転・停止のメインスイッチである。
【0016】
OR回路240は、自己保持信号MRLYがハイ、イグニッションスイッチ800がオン、ウェイクアップ信号がウェイクアップ要求状態を示すハイのうちの少なくとも1つが成立するときに、出力が「1(ハイ)」となる。
一方、OR回路240は、自己保持信号MRLYがロー、かつ、イグニッションスイッチ800がオフ、かつ、ウェイクアップ信号がロー(ウェイクアップ要求無し)であるときに、出力が「0(ロー)」となる。
【0017】
ここで、イグニッションスイッチ800がオフからオンに切り替わるか、または、ウェイクアップ信号がローからハイに切り替わると、OR回路240の出力が「0(ロー)」から「1(ハイ)」に切り替わる。
そして、OR回路240の出力が「0(ロー)」から「1(ハイ)」に切り替わるとマイクロコンピュータ210に電源回路230から電源が投入されるようになり、マイクロコンピュータ210が起動する。
【0018】
起動したマイクロコンピュータ210は、自己保持信号MRLYをハイに立ち上げることで、イグニッションスイッチ800がオフであっても自身に電源供給される状態を保持できるようにする。
そして、マイクロコンピュータ210は、イグニッションスイッチ800のオフ状態で、自己保持信号MRLYをハイからローに切り替えることで、自身への電源供給を遮断することができる。
つまり、マイクロコンピュータ210は、自己保持信号MRLYをオンからオフに切り替えることによって自身への電源供給を遮断する、セルフシャットオフ機能を有する。
【0019】
車載ネットワークIC250は、CANバス600に接続されるとともに、バッテリ700に直接接続されて常時通電される。
そして、車載ネットワークIC250は、マイクロコンピュータ210と、他の車両用電子制御装置300-500のいずれかが備えるマイクロコンピュータとの間でのデータの送受信を仲介する。
【0020】
また、車載ネットワークIC250は、車載ネットワークを介してウェイクアップ要求を受信すると、OR回路240に出力するウェイクアップ信号をハイに立ち上げる。
また、車載ネットワークIC250とマイクロコンピュータ210とは、SPI(Serial Peripheral Interface)などの通信規格に基づき、クロック信号に同期する同期通信を行う。
【0021】
サブマイクロコンピュータ260は、バッテリ700に直接接続されて常時通電され、たとえば、車両の駆動力源であるエンジンの停止時間の計測を行う機能などを備える。
つまり、車載ネットワークIC250及びサブマイクロコンピュータ260は、マイクロコンピュータ210のシャットオフ後も常時通電される。
マイクロコンピュータ210とサブマイクロコンピュータ260は、SPIなどの通信規格に基づき、クロック信号に同期する同期通信を行い、サブマイクロコンピュータ260からマイクロコンピュータ210に、時間計測の結果などを送信する。
【0022】
車載ネットワークIC250は、一態様として、リセットモード、スリープモード、スタンバイモード、ノーマルモードの4種類モードを有し、これらのモード間で遷移する。
ここで、リセットモードは電源供給が遮断された状態、スタンバイモードはCAN通信が不可の状態、ノーマルモードはCAN通信が可能である状態、スリープモードは低消費電力状態であってウェイクアップ待ちの状態である。
【0023】
そして、車載ネットワークIC250は、スタンバイモード及びノーマルモードのときに、OR回路240に出力するウェイクアップ信号の出力をハイ(オン)に設定する。
また、車載ネットワークIC250は、リセットモード及びスリープモードのときに、OR回路240に出力するウェイクアップ信号の出力をロー(オフ)に設定する。
【0024】
図2は、車載ネットワークIC250のモード遷移を示す図である。
車載ネットワークIC250は、エンジンの停止状態(換言すれば、イグニッションスイッチ800のオフ状態)でバッテリ700が接続されている状態では、スリープモードに設定される。
このとき、マイクロコンピュータ210が、イグニッションスイッチ800のオンによって起動すると、初期化処理において、車載ネットワークIC250との間でのSPI通信によって車載ネットワークIC250をスリープモードからノーマルモードに遷移させる。
【0025】
また、車載ネットワークIC250は、スリープモードのときにウェイクアップ要求を受信することで、スタンバイモードに遷移し、OR回路240に出力するウェイクアップ信号の出力をハイに設定する。
そして、ウェイクアップ信号に基づき起動したマイクロコンピュータ210は、初期化処理において、車載ネットワークIC250との間でのSPI通信によって車載ネットワークIC250をスタンバイモードからノーマルモードに遷移させる。
【0026】
また、マイクロコンピュータ210は、セルフシャットオフ処理において、車載ネットワークIC250との間でのSPI通信によって車載ネットワークIC250を、ノーマルモードから、OR回路240に出力するウェイクアップ信号の出力をロー(オフ)に設定するスリープモードに遷移させる。
さらに、車載ネットワークIC250は、バッテリ700が外されるなどして電源供給が遮断されたリセットモードの状態で、バッテリ700が接続されて電源投入されると、リセットモードからスタンバイモードに遷移し、OR回路240に出力するウェイクアップ信号の出力をハイ(オン)に立ち上げる仕様になっている。
【0027】
図3は、イグニッションスイッチ(IG-SW)800のオンオフに応じてエンジンの始動、停止が実施されるときの、車両用電子制御装置200の状態変化、及び、車載ネットワークIC250のモード遷移を示すタイムチャートである。
車両用電子制御装置200のシャットオフ状態で、かつ、車載ネットワークIC250がスリープモードであるときに、イグニッションスイッチ800がオフからオンに切り替えらえると、OR回路240の出力が「0(ロー)」から「1(ハイ)」に切り替わることでマイクロコンピュータ210に電源投入されて、マイクロコンピュータ210が起動する。
【0028】
起動したマイクロコンピュータ210は、初期化処理を実施し、係る初期化処理の中で、自己保持信号MRLYをローからハイに切り替え、また、車載ネットワークIC250をCAN通信が可能なノーマルモードに遷移させる。
マイクロコンピュータ210は、初期化処理を終了すると、エンジン制御などを含む通常処理を実施する。
なお、本願における通常処理は、初期化処理プログラムの終了後に実行される通常処理プログラムを示し、制御動作と称することができる。
【0029】
マイクロコンピュータ210は、通常処理中に、イグニッションスイッチ800がオンからオフに切り替えられたことを検知すると、セルフシャットオフ処理に移行し、係るセルフシャットオフ処理中に、SPI通信によって車載ネットワークIC250をスリープモードに遷移させる。
その後、自己保持信号MRLYのハイからローへの切り替え設定によって、OR回路240の出力が「0(ロー)」に切り替わって電源リレー220がオフになり、マイクロコンピュータ210への電源供給が遮断されることで、マイクロコンピュータ210はセルフシャットオフ状態になる。
【0030】
図4は、エンジンの停止状態(換言すれば、イグニッションスイッチ800のオフ状態)で、車載ネットワークIC250が、OTAアップデートのためのウェイクアップ要求(換言すれば、OTAアップデート要求若しくはリプログラム要求)を受信したときの、車両用電子制御装置200の状態変化、及び、車載ネットワークIC250のモード遷移を示すタイムチャートである。
車両用電子制御装置200のシャットオフ状態で、かつ、車載ネットワークIC250がスリープモードであるときに、車載ネットワークIC250がウェイクアップ要求を受信すると、車載ネットワークIC250は、スタンバイモードに遷移し、スタンバイモードへの遷移に伴いOR回路240に出力するウェイクアップ信号をハイに立ち上げる。
【0031】
車載ネットワークIC250がOR回路240に出力するウェイクアップ信号を立ち上げると、OR回路240の出力が「0(ロー)」から「1(ハイ)」に切り替わることでマイクロコンピュータ210に電源投入され、マイクロコンピュータ210が起動する。
起動したマイクロコンピュータ210は、初期化処理を実施し、係る初期化処理の中で、自己保持信号MRLYをローからハイに切り替え、また、車載ネットワークIC250をSPI通信によってノーマルモードに遷移させ、OTAアップデート要求(換言すれば、OTAリプログラム要求)などを受信できるようにする。
【0032】
マイクロコンピュータ210は、初期化処理を終了すると通常処理に遷移する。
マイクロコンピュータ210は、通常処理において、OTAアップデート要求(換言すれば、OTAリプログラム要求)を受けると、通常処理からプログラム更新処理(アップデート処理)に遷移し、メモリに格納されているプログラムを更新する処理を実施する。
【0033】
マイクロコンピュータ210は、プログラム更新処理が完了すると、セルフシャットオフ処理に移行し、係るセルフシャットオフ処理中に、車載ネットワークIC250をSPI通信によってスリープモードに遷移させる。
その後、マイクロコンピュータ210は、自己保持信号MRLYがハイからローに切り替えることで、OR回路240の出力が「0(ロー)」に切り替わって電源リレー220がオフになるようにする。
これにより、マイクロコンピュータ210への電源供給が遮断されることで、マイクロコンピュータ210はシャットオフ状態になる。
【0034】
図5は、バッテリ700が外された状態から接続されたときであって、イグニッションスイッチ800がオフに保持されるときの、車両用電子制御装置200の状態変化、及び、車載ネットワークIC250のモード遷移を示すタイムチャートである。
なお、マイクロコンピュータ210は、後で詳細に説明するように、バッテリ700の接続による起動の場合、通常処理に遷移せずにセルフシャットオフを実施する機能を有するが、図5のタイムチャートは、係るセルフシャットオフ機能を備えない場合での状態遷移を示す。
【0035】
車載ネットワークIC250は、バッテリ700が外されていてリセットモードであるときに、バッテリ700が接続されて電源投入されると、リセットモードからスタンバイモードに遷移し、OR回路240に出力するウェイクアップ信号をハイに立ち上げる。
車載ネットワークIC250がOR回路240に出力するウェイクアップ信号をハイに立ち上げると、OR回路240の出力が「0(ロー)」から「1(ハイ)」に切り替わることでマイクロコンピュータ210に電源投入されて、マイクロコンピュータ210が起動する。
【0036】
そして、起動したマイクロコンピュータ210は、初期化処理を実施し、係る初期化処理の中で、自己保持信号MRLYをローからハイに切り替え、また、車載ネットワークIC250をSPI通信によってスタンバイモードからノーマルモードに遷移させる。
マイクロコンピュータ210は、初期化処理が終了すると通常処理に遷移し、係る通常処理で、信号出力や車載ネットワークIC250を用いたCAN送信を実施する。
【0037】
つまり、イグニッションスイッチ800のオフ状態でバッテリ700が接続されたときは、エンジンの運転要求がなく、また、OTAアップデートなどのウェイクアップによる処理要求もない状態であって、本来的にはマイクロコンピュータ210を起動させる必要はない。
しかし、車載ネットワークIC250が、バッテリ700の接続による電源投入に基づいてリセットモードからスタンバイモードに遷移し、OR回路240に出力するウェイクアップ信号をハイに立ち上げることで、マイクロコンピュータ210が起動する。
【0038】
そして、起動したマイクロコンピュータ210が通常処理を実施することで、信号出力やCAN送信を実施し、誤って他の電子制御装置を起動させてしまうなどの誤動作が発生する可能性がある。
また、マイクロコンピュータ210が無用に起動して処理を実施することで、電力を無駄に消費することになる。
【0039】
ここで、マイクロコンピュータ210は、イグニッションスイッチ800のオンオフ信号を取得するので、イグニッションスイッチ800がオフ状態であれば、車載ネットワークIC250がOR回路240に出力するウェイクアップ信号をハイに立ち上げたことによる起動であることは判別できる。
しかし、マイクロコンピュータ210は、OR回路240が取得するウェイクアップ信号の立ち上がりが、車載ネットワークを介して送信されたウェイクアップ要求に因るものであるのか、バッテリ700の接続によって車載ネットワークIC250がスタンバイモードになったことに因るものであるのかを区別できず、バッテリ700の接続で起動した場合であっても、起動後は初期化処理から通常処理へと遷移することになってしまう。
【0040】
そこで、マイクロコンピュータ210は、バッテリ700の接続による起動の場合、通常処理に遷移せずにセルフシャットオフを実施する機能を備える。
「第1実施形態」
図6は、バッテリ接続で起動した場合におけるセルフシャットオフ機能の第1実施形態を示すフローチャートである。
【0041】
マイクロコンピュータ210は、起動すると(ステップS901)、まず、初期化処理を実行する。
なお、マイクロコンピュータ210が、バッテリ接続またはウェイクアップ要求に基づき起動するとき、車載ネットワークIC250はスタンバイモードになっている。換言すれば、バッテリ接続またはウェイクアップ要求に基づき車載ネットワークIC250がスタンバイモードに遷移することで、マイクロコンピュータ210が起動する。
【0042】
マイクロコンピュータ210は、初期化処理において、自己保持信号MRLYをローからハイに切り替える処理(ステップS902)を実施する。
また、マイクロコンピュータ210は、初期化処理において、起動要因がバッテリ700の接続に因るものであるか否かを判別する処理である起動要因判定処理を実施する。
【0043】
ここで、車載ネットワークIC250は、バッテリ700の接続によって、リセットモードからスタンバイモードに遷移してOR回路240に出力するウェイクアップ信号をハイに立ち上げるため、これによって、マイクロコンピュータ210に電源投入される。
また、車載ネットワークIC250は、車載ネットワークを介してウェイクアップ要求を受信したとき、スリープモードからスタンバイモードに遷移してOR回路240に出力するウェイクアップ信号をハイに立ち上げるため、これによっても、マイクロコンピュータ210に電源投入される。
【0044】
つまり、マイクロコンピュータ210が起動して初期化処理を開始したときに、イグニッションスイッチ800がオフであれば、車載ネットワークIC250は、バッテリ700が接続されたときとウェイクアップ要求を受信したときとの双方でスタンバイモードである。
このため、マイクロコンピュータ210は、イグニッションスイッチ800のオンオフ及び車載ネットワークIC250のモードからは、バッテリ700の接続に因る起動であるのか、ウェイクアップ要求に因るものであるかを区別できない。
【0045】
そこで、マイクロコンピュータ210は、起動要因判定処理として、車載ネットワークIC250またはサブマイクロコンピュータ260の起動要因を示す信号(起動要因ステータス)を、車載ネットワークIC250またはサブマイクロコンピュータ260からSPI通信によって取得する(ステップS903)。
そして、マイクロコンピュータ210は、取得した起動要因を示す信号に基づき、車載ネットワークIC250またはサブマイクロコンピュータ260の起動要因がバッテリ700の接続であるか否かを判断する(ステップS904)。
【0046】
車載ネットワークIC250またはサブマイクロコンピュータ260は、バッテリ700の接続によって自身が起動したとき、起動要因がバッテリ700の接続であることを示す起動要因ステータスを設定し、設定した起動要因ステータスを保持する機能を有している。
ここで、車載ネットワークIC250及びサブマイクロコンピュータ260は、同じバッテリ700を電源として常時通電されるから、バッテリ700が接続された場合、車載ネットワークIC250及びサブマイクロコンピュータ260の起動要因はともにバッテリ700の接続(換言すれば、Power On Reset)となり、係る起動要因の情報を保持することになる。
【0047】
一方、マイクロコンピュータ210は、車載ネットワークIC250がバッテリ700の接続またはウェイクアップ要求の受信によってスタンバイモードに遷移することで電源投入されて起動する。
したがって、車載ネットワークIC250またはサブマイクロコンピュータ260の起動要因がバッテリ700の接続であれば、マイクロコンピュータ210も、バッテリ700の接続を要因として起動したことになる。
【0048】
ここで、マイクロコンピュータ210は、車載ネットワークIC250またはサブマイクロコンピュータ260から取得した起動要因の情報が、バッテリ700の接続による起動ではないことを示す場合、自身の起動要因も、バッテリ700の接続ではないと判断する。
マイクロコンピュータ210は、バッテリ700の接続による起動ではないと判断した場合、初期化処理として、SPI通信によって車載ネットワークIC250をノーマルモードに遷移させ(ステップS905)、初期化処理が完了すると、通常処理、若しくは、OTAアップデートなどのウェイクアップによる処理要求を実行する(ステップS906)。
【0049】
一方、バッテリ700の接続による起動である場合、マイクロコンピュータ210は、初期化処理において、車載ネットワークIC250とのSPI通信によって、車載ネットワークIC250の初期設定を行い(ステップS907)、さらに、車載ネットワークIC250をスリープモードに遷移させる(ステップS908)。
次いで、マイクロコンピュータ210は、セルフシャットオフ処理として、自己保持信号MRLYをローとする設定を行う(ステップS909)。
【0050】
つまり、マイクロコンピュータ210は、バッテリ700の接続による起動である場合、初期化処理から通常処理に遷移せずにセルフシャットオフを実施する。
マイクロコンピュータ210は、係るセルフシャットオフ処理を実施することで、バッテリ700の接続によって起動したときに、通常処理に遷移して誤動作することを抑止できる。
【0051】
マイクロコンピュータ210は、自己保持信号MRLYをローとする設定を行ってから実際に電源供給が遮断されるまでの間において、イグニッションスイッチ800がオンになったか、または、車載ネットワークIC250が車載ネットワークを介してウェイクアップ要求を受信したかを判断する(ステップS910)。
なお、車載ネットワークIC250は、ウェイクアップ要求を受信したときに、スリープモードからスタンバイモードに遷移する。
したがって、マイクロコンピュータ210は、車載ネットワークIC250のモードが、スリープモードのままであるか、スリープモードからスタンバイモードに遷移しているかを判別することで、車載ネットワークIC250がウェイクアップ要求を受信したか否かを判断できる。
【0052】
マイクロコンピュータ210は、セルフシャットオフの処理中に、イグニッションスイッチ800がオンになるか、または、ウェイクアップ要求の受信があった場合、電源供給状態を維持して、通常処理若しくはOTAアップデートなどのウェイクアップによる処理を実行する。
そのため、マイクロコンピュータ210は、自己保持信号MRLYをローとする設定を行ってから実際に電源供給が遮断されるまでの間において、イグニッションスイッチ800がオンになるか、または、ウェイクアップ要求の受信があった場合、セルフシャットオフ処理を中断し、自己保持信号MRLYをハイに戻す設定を行う(ステップS912)。
【0053】
その後、マイクロコンピュータ210は、SPI通信によって車載ネットワークIC250をノーマルモードに遷移させ(ステップS905)、通常処理、若しくは、OTAアップデートなどのウェイクアップによる処理要求を実行する(ステップS906)。
また、マイクロコンピュータ210は、自己保持信号MRLYをローとする設定を行ってから実際に電源供給が遮断されるまでの間において、イグニッションスイッチ800がオンにならず、換言すれば、オフ状態を維持し、かつ、ウェイクアップ要求の受信もなかった場合、そのまま電源供給が遮断されてシャットオフ状態なる(ステップS911)。
【0054】
このように、マイクロコンピュータ210は、起動したときに、車載ネットワークIC250またはサブマイクロコンピュータ260の起動要因の信号を取得し、取得した起動要因の信号に基づいて、バッテリ700の接続による起動であるか否かを判別する。
そして、マイクロコンピュータ210は、バッテリ700の接続による起動である場合、通常処理に遷移せずにセルフシャットオフを実施する。
したがって、バッテリ700が外された状態から接続され、車載ネットワークIC250がスタンバイモードに遷移することでマイクロコンピュータ210が起動したときに、マイクロコンピュータ210が通常処理に遷移して誤動作することを抑止できる。
【0055】
図7は、マイクロコンピュータ210がバッテリ700の接続によって起動してセルフシャットオフ処理を実施する場合であって、イグニッションスイッチ800がオフに維持され、かつ、ウェイクアップ要求が無い状態での、車両用電子制御装置200の状態変化、及び、車載ネットワークIC250のモード遷移を示すタイムチャートである。
車載ネットワークIC250は、バッテリ700が外されていてリセットモードであるときに、バッテリ700が接続されて電源投入されると、リセットモードからスタンバイモードに遷移し、OR回路240に出力するウェイクアップ信号をハイに立ち上げる。
【0056】
車載ネットワークIC250がOR回路240に出力するウェイクアップ信号をハイに立ち上げると、OR回路240の出力が「0(ロー)」から「1(ハイ)」に切り替わることでマイクロコンピュータ210に電源投入されて、マイクロコンピュータ210が起動する。
そして、起動したマイクロコンピュータ210は、初期化処理を実施し、係る初期化処理において、起動要因判定処理を実施する。
【0057】
マイクロコンピュータ210は、起動要因判定処理において、SPI通信によって車載ネットワークIC250またはサブマイクロコンピュータ260から起動要因に関する信号(起動要因ステータス)を取得し、起動要因がバッテリ700の接続であるか否かを判定する。
ここで、マイクロコンピュータ210は、車載ネットワークIC250またはサブマイクロコンピュータ260の起動要因がバッテリ700の接続であると判断すると、初期化処理から通常処理に遷移せずにセルフシャットオフ処理に移行し、セルフシャットオフ処理において車載ネットワークIC250をスリープモードに遷移させ、また、自己保持信号MRLYをローに切り替える設定を行なう。
これにより、マイクロコンピュータ210は、電源供給が遮断されてシャットオフ状態になる。
【0058】
図8は、マイクロコンピュータ210がバッテリ700の接続によって起動してセルフシャットオフ処理を実施する場合であって、セルフシャットオフ処理中に、イグニッションスイッチ800のオン、または、ウェイクアップ要求の受信があった場合での、車両用電子制御装置200の状態変化、及び、車載ネットワークIC250のモード遷移を示すタイムチャートである。
図8のタイムチャートにおいて、マイクロコンピュータ210が、起動要因判定処理においてバッテリ700の接続による起動であると判断し、通常処理に遷移せずにセルフシャットオフ処理に移行するまでは、図7のタイムチャートと同じであり、詳細な説明を省略する。
【0059】
セルフシャットオフ処理に移行したマイクロコンピュータ210は、車載ネットワークIC250をスリープモードに遷移させる。
その後、マイクロコンピュータ210は、イグニッションスイッチ800のオン、または、車載ネットワークIC250におけるウェイクアップ要求の受信(換言すれば、車載ネットワークIC250のスタンバイモードへの遷移)を検出すると、初期化処理に戻って、自己保持信号MRLYをハイに戻し、また、SPI通信によって車載ネットワークIC250をノーマルモードに遷移させる。
そして、マイクロコンピュータ210は、初期化処理が完了すると通常処理に移行し、イグニッションスイッチ800がオンに切り替えられた場合はエンジン制御を実施し、OTAアップデートのためのウェイクアップ要求時であれば、OTAアップデートを実施する。
【0060】
「第2実施形態」
図9は、バッテリ接続で起動した場合におけるセルフシャットオフ機能の第2実施形態を示すフローチャートである。
第2実施形態において、マイクロコンピュータ210は、バッテリ700の接続によって起動したか否かを、イグニッションスイッチ800のオフ状態でウェイクアップに伴う処理要求(たとえば、OTAアップデート要求)を取得したか否かに基づき判別する。
つまり、マイクロコンピュータ210は、イグニッションスイッチ800のオンオフ信号、及び、ウェイクアップに伴う処理要求の信号を、起動要因に関する信号として取得する。
【0061】
マイクロコンピュータ210は、起動すると(ステップS921)、まず、初期化処理を実行する。
なお、マイクロコンピュータ210の起動は、イグニッションスイッチ800のオン、ウェイクアップ要求の受信、バッテリ700の接続のいずれかを要因として実施され、ウェイクアップ要求の受信に基づく起動時及びバッテリ700の接続に基づく起動時においては、車載ネットワークIC250はスタンバイモードに設定される。
【0062】
マイクロコンピュータ210は、初期化処理において、自己保持信号MRLYをローからハイに切り替えるなどの処理(ステップS922)を実施する。
また、マイクロコンピュータ210は、初期化処理において、起動要因判定処理としてイグニッションスイッチ800のオンオフ信号の取得を行う(ステップS923)。
そして、マイクロコンピュータ210は、イグニッションスイッチ800がオンであるか否かを判断する(ステップS924)。
【0063】
イグニッションスイッチ800がオンである場合、換言すれば、ウェイクアップ要求の受信に基づく起動及びバッテリ700の接続に基づく起動のいずれでもない場合、マイクロコンピュータ210は、車載ネットワークIC250をノーマルモードに遷移させるなどの通常の初期化処理を実施する(ステップS925)。
そして、マイクロコンピュータ210は、初期化処理を完了すると、通常処理を実施する(ステップS926)。
【0064】
一方、イグニッションスイッチ800がオフであって、ウェイクアップ要求の受信に基づく起動またはバッテリ700の接続に基づく起動である場合、マイクロコンピュータ210は、ウェイクアップ用の初期化処理を実施する(ステップS927)。
そして、マイクロコンピュータ210は、ウェイクアップ用の初期化処理を完了した後に、通常処理若しくはOTAアップデートを実施する(ステップS928)。
【0065】
図10は、図9のステップS927におけるウェイクアップ用の初期化処理の詳細を示すフローチャートである。
マイクロコンピュータ210は、SPI通信によって車載ネットワークIC250の初期設定を行なう(ステップS951)。
さらに、マイクロコンピュータ210は、SPI通信によって車載ネットワークIC250をノーマルモードに遷移させ、車載ネットワークIC250をCAN通信可能に設定する(ステップS952)。
【0066】
次いで、マイクロコンピュータ210は、車載ネットワークIC250が、ウェイクアップによる処理要求であるOTAアップデート要求を、車載ネットワークを介して受信するのを一定時間だけ待つ(ステップS953)。
なお、マイクロコンピュータ210がOTAアップデート要求の受信を待つ前記一定時間は、通常のOTAアップデートにおいては超えることのない時間に設定される。
【0067】
したがって、マイクロコンピュータ210は、起動(若しくは車載ネットワークIC250のノーマルモード遷移)から前記一定時間だけ待ってもOTAアップデート要求を受信しなかった場合、今回のウェイクアップはOTAアップデートのためのウェイクアップではなく、バッテリ700の接続によるウェイクアップ(換言すれば、Power On Reset)であると判断する。
そして、マイクロコンピュータ210は、バッテリ700の接続に因る起動を判断すると、車載ネットワークIC250をスリープモードに遷移させ、自己保持信号MRLYをローに設定する(ステップS954-ステップS955)。
【0068】
ここで、マイクロコンピュータ210は、セルフシャットダウンが実行されるまでに、イグニッションスイッチ800のオン若しくはOTAアップデートのためのウェイクアップ要求があると、自己保持信号MRLYをハイに戻し、車載ネットワークIC250をノーマルモードに遷移させ、通常処理若しくはOTAアップデートを実行する(ステップS956-ステップS959)。
また、マイクロコンピュータ210は、セルフシャットダウンが実行されるまでに、イグニッションスイッチ800のオン及びOTAアップデートのためのウェイクアップ要求がないと、そのままセルフシャットオフ状態に遷移する(ステップS960)。
【0069】
なお、マイクロコンピュータ210が、バッテリ接続によって起動したときに実施する処理は、図6のフローチャートに示した第1実施形態の処理と同様である。
一方、マイクロコンピュータ210は、一定時間内でOTAアップデート要求を受信した場合、OTAアップデートの処理を実行する(ステップS959)。
【0070】
図11は、第2実施形態において、マイクロコンピュータ210がイグニッションスイッチ800のオンで起動したときの、車両用電子制御装置200の状態変化、及び、車載ネットワークIC250のモード遷移を示すタイムチャートである。
マイクロコンピュータ210は、起動後の初期化処理において、イグニッションスイッチ800のオンオフを判定し、イグニッションスイッチ800がオンであると判定することで、車載ネットワークIC250をノーマルモードに遷移させるなどの通常の初期化処理を実行する。
【0071】
その後、マイクロコンピュータ210は、初期化処理から通常処理に遷移し、エンジン制御などを実行する。
そして、マイクロコンピュータ210は、通常処理中にイグニッションスイッチ800のオフを検知すると、セルフシャットオフ処理として、車載ネットワークIC250をノーマルモードからスリープモードに遷移させ、また、自己保持信号MRLYをローに設定する。
【0072】
図12は、第2実施形態において、マイクロコンピュータ210がOTAアップデートのためのウェイクアップで起動したときの、車両用電子制御装置200の状態変化、及び、車載ネットワークIC250のモード遷移を示すタイムチャートである。
この場合、車載ネットワークIC250は、ウェイクアップ要求の受信によってスタンバイモードに遷移することで、OR回路240に出力するウェイクアップ信号の出力をハイ(オン)に設定する。
係るウェイクアップ信号の出力によって、マイクロコンピュータ210は、電源投入されて起動する。
【0073】
マイクロコンピュータ210は、起動後の初期化処理において、イグニッションスイッチ800のオンオフを判定し、イグニッションスイッチ800がオフであると判定することで、車載ネットワークIC250をノーマルモードに遷移させ、かつ、OTAアップデート要求の受信を待つ、ウェイクアップ用の初期化処理を実行する。
ここで、マイクロコンピュータ210は、OTAアップデート要求を受信すると、OTAアップデートの処理を実行する。
そして、マイクロコンピュータ210は、OTAアップデートの処理を完了すると、セルフシャットオフ処理として、車載ネットワークIC250をノーマルモードからスリープモードに遷移させ、また、自己保持信号MRLYをローに設定する。
【0074】
図13は、第2実施形態において、マイクロコンピュータ210がバッテリ700の接続によって起動したときの、車両用電子制御装置200の状態変化、及び、車載ネットワークIC250のモード遷移を示すタイムチャートである。
マイクロコンピュータ210は、起動後の初期化処理において、イグニッションスイッチ800のオンオフを判定し、イグニッションスイッチ800がオフであると判定することで、車載ネットワークIC250をノーマルモードに遷移させ、かつ、OTAアップデート要求の受信を待つ、ウェイクアップ用の初期化処理を実行する。
【0075】
ここで、バッテリ700の接続に因る起動であるため、マイクロコンピュータ210は、一定時間だけ待ってもOTAアップデート要求を受信せず、バッテリ700の接続による起動であると判断する。
このとき、マイクロコンピュータ210は、通常処理に遷移せずにセルフシャットオフに遷移して、車載ネットワークIC250をノーマルモードからスリープモードに遷移させ、また、自己保持信号MRLYをローに設定する。
【0076】
上記実施形態で説明した各技術的思想は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合わせて使用することができる。
また、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【0077】
たとえば、車両用電子制御装置200のウェイクアップ要求を、OTAアップデートのためのウェイクアップ要求に限定するものではなく、診断処理やエンジン始動などの処理を車両用電子制御装置200に行わせるためのウェイクアップ要求とすることができる。
また、車両用電子制御装置200は、エンジンを制御する車両用電子制御装置に限定されず、自動変速機を制御する車両用電子制御装置などであってもよい。
【符号の説明】
【0078】
100…車両制御システム、200…車両用電子制御装置、210…マイクロコンピュータ、220…電源リレー、230…電源回路、240…OR回路、250…車載ネットワークIC(通信IC)、260…サブマイクロコンピュータ、600…CANバス、700…バッテリ、800…イグニッションスイッチ(メインスイッチ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13